古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。よろしくお願いします。

タグ:バラク・オバマ

 古村治彦です。

 

 2020年のアメリカ大統領選挙に関して、これまで若手のスターで、候補者になりうる人物たちをご紹介してきました。今回は、大物であるジョー・バイデン前副大統領です。バイデンは、2016年の大統領選挙で、民主党の候補者として待望されていましたが、直前に長男ボウ・バイデンが脳腫瘍で亡くなったこともあり、家族で相談して、バイデンは出馬しないという決断をしました。これで、ヒラリー・クリントンが民主党の大統領選挙候補者となり、最終的に敗れてしまいました。

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ジョー・バイデン

 

 2020年の大統領選挙に向けて、民主党は新規まき直しを図っていますが、民主党内の分裂が深刻で、2020年もまた共和党、トランプに勝てないのではないかという悲観論すらも出ています。そうした中で、バラク・オバマ前大統領の幻影と重なるジョー・バイデンの待望論も一部にあります。オバマ―バイデンのラインであれば、民主党がまとまっていけるというのがその理由ということになります。

 

 しかし、バイデンは既に70代と高齢で、2020年には78歳となります。任期中に80代となってしまいます。それで世界一の激務であるアメリカ大統領が務まるのかどうか、ということはどうしても心配になります。ですので、2020年に大統領選挙出馬するということは難しいと思います。

 

 バイデンは2016年の選挙に出馬して、ヒラリーではなく、彼が民主党の大統領選挙になっておくべきでした。そうすれば、ヒラリーが候補者になったために離れた支持者たちがバイデンに投票して、バイデン大統領になっていたと思われます。しかし、結局、出馬しませんでした。そして、タイミングを逃したということが言えるでしょう。

 

 歴史とはこういうことの積み重ねなのだろうと思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

バイデンの娘:父が2020年の大統領選挙に出馬することを望む(Biden's daughter: I hope he runs in 2020

 

マックス・グリーンウッド筆

2017年9月8日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/campaign/349804-bidens-daughter-i-hope-he-runs-in-2020

 

ジョー・バイデン前副大統領の娘は、父ジョーが2020年の米大統領選挙に出馬する準備をしてほしいと語ったが、同時に、「現在まで準備はしていない」とも語った。

 

アシュリー・バイデンは、『ウイメンズ・ウェア・デイリー』誌の取材に応じ、父親が出馬する計画を持っているのかどうかと質問され、「そうあって欲しいと思う」と答えた。アシュリーは続けて次のように語った。「父はこれまで以上に忙しい日々を送っています。彼は現在、バイデン財団とキャンサー・ムーンショットの仕事と、民主党の議員や候補者たちが次の選挙で当選するように応援活動に忙しいのです。彼は自身の選挙の準備をしていません。最愛の息子を失った後、父は毎日そのことを考えています。彼は時がいたれば決断するでしょう」。

 

アシュリーは次のように語る。「決断をするかしないかは紙一重だと思います。4年間あれば多くのことが起きます。私たち家族はそのことを実感しています。父は健康状態が良好で、その時点の状況を判断して、最終的に決断するでしょう。幸運を祈りたいと思います」。

 

これまで、前副大統領が大統領選挙に出馬する準備をしているのかどうか、人々の注目を集めている。バイデンは2015年に長男ボウ・バイデンが脳腫瘍で死去した後、2016年に大統領選挙の出馬をしないと決断した。

 

2017年1月に正式に退任して以降、バイデンは比較的明確な態度を維持し、バイデン財団を発足させ、今年の夏には、バイデン・キャンサー・イニシアティヴをスタートさせた。

 

アシュリー・バイデンは、健康問題がなければ、父ジョーは大統領選挙に出馬すると考えている。アシュリーは、物事はいつでも変化するということを認めながら、バイデンは「エネルギーに溢れている」と述べた。

 

アシュリーは次のように述べている。「父はエネルギーに溢れています。ですから、決断する時期が来たら、決断するでしょう。この3年間で多くのことが起きるでしょう。何が起きるかは分かりません。人生では何が起きるか分かりません。神のご加護で、私たちが健康に恵まれたら、選挙に出馬するでしょう。何が起きるかは誰にも分かりません」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 アメリカの民主党は2020年の大統領選挙に危機感を持っているということは前回お知らせしました。その大きな原因となっているのが、民主党内の分裂であり、その分裂が大きくなっているのは、ヒラリー・クリントンが原因です。このブログでも以前、ヒラリーが選挙後も精力的に表舞台に出てきて、選挙で負けたことをいつまでも話し、自分の至らなさを反省するならまだしも、他人を攻撃ばかりしていることに、民主党内部でも批判が出ていることはお知らせしました。

 

 今回は、ヒラリーが2017年9月12日に出版する最新刊What Happenedでも反省ではなく、民主党批判を行っていること、それで民主党内部の分裂はますます大きくなるであろうこと、ヒラリーには多くの人々がうんざりしていることを紹介している論稿をご紹介します。論稿では、このトランプ時代に、ヒラリーとヒラリーを支持する時代遅れのエスタブリッシュメントは民主党のリーダーたり得ない、ということを訴えています。

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 ヒラリーが文句を言っているのは、第一にバーニー・サンダース連邦上院議員です。サンダースは民主党の予備選挙でヒラリーと激しく戦いました。ヒラリーは、サンダースがヒラリーに対して行った攻撃が最後までダメージを与え、サンダースの行った攻撃をトランプが利用して、「嘘つきヒラリー」という批判を浴びせてきた、と主張しています。また、サンダースの支持者たちは、性差別主義的であるとも批判しています。また、オバマ大統領はヒラリーに対して、サンダースからの批判に反論しないようにと助言し、それに従ったところ、結局、サンダースからの批判が尾を引いて本選挙で勝てなかったとオバマ大統領を批判しています。また、ジョー・バイデン副大統領にも不平をぶちまけています。

 

 「敗軍の将兵を談ぜず」は古今東西、敗れた人物のたしなみです。半生を語るならまだしも、不平不満、愚痴を述べることは下策中の下策です。ヒラリーは個人的なカタルシスのために言いたい放題、やりたい放題をすればいいわけですが、組織としての民主党は、それで分裂が深まるということになれば、次の選挙もどうなるか分からないということになります。

 

 ですから、ヒラリーには静かに余生を送ってもらいたいと思っている人が多いと思いますが、祟り神とヒラリーが元気に暴れまわれば回るほど、民主党は力を落としていくということになります。

 

 

 民主党の内部にも「いっそヒラリーが逮捕されないかな」と思っている人は多いと思います。それほど迷惑をかけているヒラリーなのです。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプからの「嘘つきヒラリー」という攻撃について、クリントンはサンダースを批判(Clinton blames Sanders for Trump’s ‘Crooked Hillary’ attack

 

ジョナサン・イースリー筆

2017年95

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/campaign/349197-clinton-blames-sanders-for-trumps-crooked-hillary-attack

 

2016年の大統領選挙で民主党候補者ヒラリー・クリントンは、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)に対して、自分の選挙運動に「最後まで続くダメージ」を与え、トランプ大統領の「嘘つきヒラリー」という攻撃の「道筋をつけた」と攻撃している。

 

ヒラリーの選挙戦回顧録となる最新刊『ワット・ハップンド(What Happened)』の中で、ヒラリーは、サンダースから大企業の恩恵を受けていると批判されたのだが、それに対して、オバマ前大統領をはじめとする人々からそれに対して沈黙を守るように助言された、と書いている。

 

ヒラリーは次のように書いている。「予備選挙期間中、バーニーからの攻撃に対していつも反撃したいと考えていた。我慢しなさい、と自分自身に語りかけていた。バーニーの計画は全く理解できないものだった。彼の計画は中流階級の世帯の増税を意味し、空想以上のものではなかった。彼は私を進歩派ではないと主張していたが、空想的な計画は彼の主張を補強するものだった。私のティームは、私に対して、バーニーの支持者たちを離れさせたくないということを常に念頭に置くようにと助言してくれた。オバマ大統領は私に対して、バーニーの批判を相手にしないように助言した。私は束縛されているように感じた」。

 

 

ヒラリーは、「バーニーびいきの野郎たち(Bernie Bros)」と呼ばれるサンダース支持者たちを激しく非難した。彼らのヒラリーに対する攻撃の中には「性差別的」なものがあり、サンダースは「ヒラリーは大企業から依頼された講演で数百万ドルを稼いだ」と攻撃したが、このために本選挙において進歩派の有権者にアピールできなかった、とヒラリーは主張している。

 

ヒラリーは次のように書いている。「バーニーびいきの野郎たちのようなバーニーの支持者たちは、私の支持者たちに対してインターネット上で嫌がらせをした。その内容は醜悪で、性差別主義的であった」。

 

ヒラリーは続けて次のように書いている。「私は予備選挙の討論会で一度だけバーニーに反撃したことがあった。私が大企業からの献金を受けて姿勢を変えたことや連邦議会での採決の投票を変えたことがあったと言うなら、一つでいいからその具体例を明示して欲しい、と言った。彼は何も言えなかった。しかし、バーニーからの攻撃は私にダメージを与え続けた。本選挙で進歩派の人々を一つにすることが難しくなった。そして、トランプによる“嘘つきヒラリー”という攻撃キャンペーンがしやすくになってしまった」。

 

ヒラリーの最新刊からの抜き書きは親ヒラリーのツイッターアカウントでインターネット上に掲示され、CNNによって初めて報道された。

 

選挙戦の後の様々なインタヴューの中で、ヒラリーは、ロシアによる介入、彼女の私的なEメールサーヴァーに関する刑事事件捜査に対するジェイムズ・コミー前FBI長官の対処、潜在的な女性差別主義を自身の衝撃的な敗北の理由に挙げた。

 

ヒラリーは、自身の選挙運動の欠点について責任を取ることを拒絶していると批判されている。

 

ヒラリーは敗北の理由として、サンダースと彼の支持者たちを挙げているが、これによって、予備選の時にできた古い傷を再び開けてしまうことになった。

 

サンダースの熱心な支持者たちは、民主党全国委員会に率いられている民主党エスタブリッシュメント派がヒラリーを民主党の候補者にするために、サンダースに対して共謀を行ったと考えている。サンダース支持者たちは、自分たちが民主党から厄介者と扱われたと主張している。民主党はサンダース支持者たちを取り込もうとせず、草の根のエネルギーを動員することに失敗した。

 

ハーヴァード大学・ハリス共同世論調査の結果で、サンダースは現役政治家の中で最も人気のある人物で、支持率は54%、不支持率は36%である。ヒラリーは表舞台から去っても、支持率は改善していない。彼女の支持率は42%、不支持率は53%と不支持率が上回っている。

 

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ヒラリーによる恨み言が民主党員を苛立たせている(Clinton’s score-settling frustrates Democrats

 

ジョナサン・イースリー筆

2017年9月7日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/campaign/349548-clintons-score-settling-frustrates-democrats

 

ヒラリーは選挙戦回顧録となる最新刊で恨み言を述べている。これに対して、民主党員たちは怒っている。

 

来週発売となる選挙戦回顧録『ワット・ハップンド』の中で、ヒラリーは民主党の中で人気のある人物たちに対して言いたい放題の批判をし、ドナルド・トランプに対する衝撃的な敗北に至るまでの過程で積み重なった不満を発散した。

 

本の中で、ヒラリーは予備選挙期間中にオバマ大統領によって「束縛」されたと書いている。オバマ大統領は予備選挙でヒラリーのライヴァルになったバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)を攻撃しないようにと助言をしたということだ。これは、大統領選挙本選挙を前にして民主党を分裂させることを恐れたためだ。

 

ヒラリーはジョー・バイデン前副大統領の「ヒラリーは民主党が中間層を助ける用意があるということを人々に納得させることに失敗した」という内容の発言に怒りをぶつけた。

 

ヒラリーはサンダースの提案した政策を空想でありと批判し、「バーニーびいきの野郎」と呼ばれるSNS上のサンダース支持者は性差別主義的だと決めつけた。

 

ヒラリーはサンダースからの攻撃は、本選挙まで「ダメージを継続」させるものだったと書いている。ヒラリーは、サンダースからの攻撃が、トランプがヒラリーを大企業の手先だと言い、「嘘つきヒラリー」というニックネームを「つけやすく」したと非難した。

 

サンダースは水曜日に本紙の取材を受け、その中で、民主党は「未来を見るべきで、過去を振り返る」時ではないと述べた。

 

彼女の発言を喜ばない人も多い。民主党がトランプ時代に対応するために新しいアイデンティティを作り出そうとしている時に、ヒラリーが2016年の大統領選挙のことをほじくり返してばかりしていることに、ヒラリーの支持者たちでさえも嫌気がさしている。

 

ヒラリーに資金提供をし、民主党全国大会で重要な役割を担った、ヒラリーの代理を務めたある人物は「ヒラリーが今できる最良のことはいなくなることです。彼女は自己中心的で、そのために私たちにとって害悪になることを行っています。率直に言って、彼女には口を縫い付けてどっかに引っ込んでもらいたいと思っています」。

 

選挙で敗北して以降、ヒラリーは選挙戦の敗北における自身の責任を認めることを拒絶しているように見えるために、民主党内の2つ派から批判を浴びている。

 

ヒラリーはロシアのハッカー、性差別主義、ジェイムズ・コミー前FBI長官を敗北の理由に挙げている。しかし、自身の選挙活動の欠点について語ることは少ない。

 

ヒラリーは選挙戦での失敗について語りたがらない。これがかえってサンダースとの予備選挙での激しい戦いで受けた古い傷を再び開かせることになっている。民主党の人々は、党がラストベルトの有権者にアピールする経済的なメッセージを見つけ出すべきであったと異口同音に述べている。ラストベルトの有権者たちは民主党を見捨ててトランプを支持した。

 

2018年の中間選挙に向けて、民主党の進歩派と主流派をまとめることが緊急に必要である。民主党は、トランプがヒラリーを破った州での連邦上院議員選挙で現職が敗れるかもしれないという可能性に直面している。

 

こうした厳しい状況に直面して、民主党の中には、選挙後のヒラリーの言いたい放題に腹を立てている人たちが多くいる。

 

オバマの側近だった人物は次のように述べている。「ヒラリーの言いたい放題は党にとって少しも良いことはない。100%、ヒラリーによるヒラリーのためのショーでしかない。私たちは頭を抱え、彼女はいったい何がしたいのだろうと考えるだけだ。民主党のためにならないことだけは確かだ」。

 

サンダース支持者たちは暴発しやすい。

 

ヒラリーの最新刊はサンダースのエネルギーに溢れた支持者たちを再び起こらせる危険がある。この人たちの多くは既に民主党から離れている。ロシアが支援したハッカーたちが民主党全国委員会のスタッフたちが予備選でサンダースが勝利しないようにしようと言い合ったEメールをハッキングして暴露して以降、民主党離れが進んでいる。選挙以降、サンダース支持者たちと民主党の有力代理人たちとの間で、このトランプ時代に党の方針を決めるのがヒラリーと関係の深い時代遅れのヴェテランばかりだということについて頻繁に衝突が起きている。

 

 

進歩派の活動家で作家のジョナサン・タシニは次のよう述べている。「民主党員そして全有権者は2つの異なった考えが存在することを目撃している。この2つの考えは昨年の民主党予備選挙で最後まで争った2人に集約される」。

 

「一方の人は選挙が終わっても国中を休みなく行脚し、オバマケアを守り、富裕層への減税に反対し、最低時給15ドルに賛成し、今日も集会で人々の中に飛び込んでいる。もう一方の人は、トランプが国を分裂させている間に、森の中を長時間散歩し、シャルドネワインを飲み、有名人たちと派手な交際を楽しみ、過去10年から20年の党のエスタブリッシュメントたちの失敗に全く言及しない本を執筆している。人々はどちらがより好ましいかを選ぶことができる」。

 

現在でも、民主党内部でヒラリーを支持する人たちがいる。

 

ジョン・ラーソン連邦下院議員(コネチカット州選出、民主党)は次のように述べている。「ヒラリーは女性指導者としての能力を備えている。彼女はアーカンソー州知事夫人、大統領夫人、連邦上院議員、国務長官を務めたのだ。現在の民主党の女性政治家でヒラリーほど長くこのような地位を保った人を見つけることは難しい」。

 

本誌が取材した民主党員の多くはヒラリーを批判したくないと述べた。彼女の敗北に同情し、彼女はその敗北を何とか受け止めようとしているのだと考えている。

 

民主党のストラティジストであるスティーヴ・マクマホンは「ヒラリーの敗北は心痛に耐えず、彼女の被った敗北の痛みは想像を絶する。ヒラリーの最新刊はそれらを解消するカタルシスなのだ」と語っている。

 

民主党の中には、ヒラリーの繰り返しの愚痴に飽き飽きしていながらも、ヒラリーの発言内容に同意している人たちも多くいる。

 

ビル・パスクレル連邦下院議員(ニュージャージー州選出、民主党)は次のように語った。「予備選挙がスタートする時点で、私はバーニー・サンダースには何でもやる権利を持ってはいるが、彼の選挙運動によって民主党はまとまるどころか分裂することになると言っていました。私の予測は当たったと思います。ヒラリーがバーニーについて語ったことはその内容は間違っていなかったと思いますが、すべてはもう終わってしまったことです」。

 

SNS上で「バーニーびいきの野郎」たちの怒りを直接経験した人々は、彼らの批判には性差別的な要素があったと主張している、そして、そうした攻撃をバーニー・サンダース自身が止めなかったとも述べている。

 

サンダースは民主党の予備選挙の結果がほぼ予想され、敗北がほぼ確定的になっても選挙戦を続け、ヒラリーを攻撃し続けた。これがヒラリーに更なるダメージとなった。この是非については2016年の選挙戦の反省として議論になるだろう。

 

しかし、民主党の人々の多くは、ヒラリーがすでに終わった選挙に関する怒りをぶちまけるよりも党のために意味のあることをやってほしいと強く願っている。

 

民主党テキサス州委員会委員長ギルバート・ヒノホサは次のように語っている。「ヒラリーは素晴らしい人で、外交政策、経済問題、統治について素晴らしい考えを持っています。人々が彼女に望むもの、党が必要としているものは、彼女の指導です。彼女は未来に向けて私たちがいかに行動するかを示してくれます。ヒラリーは大統領になるために必要な有権者全員に考えを理解してもらうことはできなかったが、彼女はより多くのものを私たちに与えてくれます。彼女は過去に起きたことで後悔することはないのですよ」。

 

民主党の人々は2016年の選挙で学んだ教訓は、民主党はより強い経済に関するメッセージを出す必要があり、この経済に関するメッセージは民主党の死角で、そこをトランプにつかれて敗北した、ということであったと述べている。この目的から逸らせるような行為は生産的ではないと彼らは確信している。

 

民主党のストラティジストであるスティーヴ・シェールは次のように書いている。「選挙から一夜明けた朝、フェイスブックに、私たちは自分たちを見つめなおし反省し、未来に向けて注力しなければならないと書いた。私は今でもこれは正しいと確信している。そして、2016年について語るのを止めるのが早ければ早いほど、民主党はまとまり、2018年の中間選挙に必要な組織を構築することができる。そしてこれは2018年の中間選挙だけでなく、2020年の大統領選挙にも役に立つものだ」。シェールは2016年の大統領選挙でバイデンの出馬を画策した。

 

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サンダース:コルバートは選挙について「語り続けること」を止めるように求めるべきだ、と発言(Sanders: Colbert should ask Clinton to stop ‘arguing’ about election

 

ジョシュ・デレク筆

2017年9月8日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/349774-sanders-colbert-should-ask-clinton-to-stop-arguing-about-election

 

バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は、ヒラリー・クリントンに対して、2016年の大統領選挙について語ることを止め、トランプ大統領に対抗する進歩的な運動を一本化するように求めた。サンダースはテレビ番組『ザ・レイト・ショー』に出演してこのように発言した。

 

「私たちは、彼女に前進するための助けをお願いしたい。2016年の大統領選挙について語りづけるのは止めてもらいたい。一緒になって、私たちを分裂させたいというトランプの野望に対処しようではないか。進歩的な政策を進めようではないか。彼女にそのように求めよう」。

 

サンダースは、番組の司会者スティーヴン・コルバートに対して、今月後半にコルバートの深夜番組にヒラリーが出演する際に、自分が語った内容をヒラリーに頼んでもらいたいと述べた。ヒラリーは選挙終了後、初めて深夜番組に出演する。

 

ヒラリー・クリントンは彼女の最新刊『ワット・ハップンド』の発刊から1週間後の9月19日にこのテレビ番組に出演する予定だ。番組では、2016年の大統領選挙とトランプ政権について話すことになっている。

 

ヒラリーが選挙戦の回顧録となる最新刊の中で、サンダースが民主党予備選挙中にヒラリーに対して行った批判が、選挙戦全体で「最後まで影響を与えた」と批判していることについて、サンダースは今週初めに反論した。

 

サンダースは次のように語った。「クリントン長官がアメリカ史上最も人気のない候補者に対抗して出馬し、敗れたことは理解している。彼女はこのことで怒り狂った。そのことも理解できる。しかし、私たちの責務は過去にこだわることではない。前進することだ」。

 

サンダースは続けて次のように語った。「2016年の選挙について語り続けることはいささか馬鹿げている」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


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 古村治彦です。

 

 先日、安倍晋三首相がバラク・オバマ米大統領と共にハワイのパールハーバーを訪問しました。「謝罪」ではなく、「慰霊」のための訪問ということでした。そして、2人は演説を行いました。

 

安倍首相の演説では、和解、友情といった言葉が並べ立てられていましたが、全く心に響きませんでした。日本の演説の中に、わざわざ英語の「power of reconciliation」「the Brave respect the brave」を入れたのは、この点をアメリカ人にも分かって欲しかったからだと思われますが、「和解の力」「勇者は勇者に敬意を表する」というのは、いかにもアメリカ人に媚びた言葉であると思います。

 

 安倍首相はここから始まった戦いとも述べましたが、1941年12月8日は、15年間も続いた、アジア・太平洋戦争の終幕の最後の約4年間ということになります。それ以前の11年間に日本は既に多くの犠牲をだし、かつ多くの犠牲を強いていました。この11年間の戦いに関する和解は進んでいるかと言えばそれは残念ながら続いていません。ハワイのパールハーバーという軍港を宣戦布告なしに攻撃したことは卑怯なことですが、それ以上に、謀略や恫喝を駆使して満州から華北地域を侵略し、占領したということははるかに多くの犠牲と傷を中国に強いました。日本軍は立派だった、日本が支配した方が良かったなどと言うのは欺瞞であって、それは戦後日本に進駐してきたアメリカ軍が立派だった、アメリカの支配が良かったという心性の裏返しに他なりません。

 

 安倍首相が仕えた小泉純一郎元首相でさえ(と敢えて書きますが)、謝罪はしませんでしたが、盧溝橋事件の現場を訪れました。安倍首相が戦後を終わらせると大見得を切るのなら、ある意味では「楽な道」であるアメリカとの和解演出などではなく、北方領土問題やアジア諸国との和解を行うべきですが、そちらはうまくいっていないというのが現状です。

 

安倍首相のパールハーバー訪問が終了するのを待っていたかのように、今村雅弘復興相が靖国神社を参拝しました。そして、「時期が重なった安倍晋三首相の米ハワイ・真珠湾での慰霊に関し『(み霊に)報告しておいた』と語った」ということです。また、ハワイから帰国したばかりの稲田朋美防衛相が靖国神社を参拝しました。

 

 国内リヴィジョニストにしてみれば、してやったりでしょうし、既に退任まで1カ月を切っているオバマ政権は怖くないのですから、こういうことができたのでしょう。安倍首相をはじめとする人々は、「次のトランプ大統領は日本の防衛負担の増加や核武装の可能性まで言及した。これを利用して日本の防衛予算の増大と核武装の準備も行えばよい」と単純な頭で考えているようです。米中露韓北朝鮮台湾に囲まれた中で、日本が貧乏くじを引かされないために、最悪の事態に追い込まれないために、アメリカの政権交代を利用して何ができるかという思考が、日本の軍事力強化ではあまりにも単純すぎる話です。

 

2017年、超大国アメリカの指導者がドナルド・トランプに代わります。トランプは、オバマ政権とは違う新機軸を打ち出そうとしています。外交面で言えば、オバマ民主党政権を結局のところ引きずっていってしまった、人道的介入主義派の政策とは違う、リアリズム(現実主義)的、アイソレーショニズム(アメリカ国内問題解決優先主義)的政策を実施することになるでしょう。世界各国に介入・干渉することを手控えるようになるでしょう。そして、アメリカとは体制が違う国々、具体的には中国とロシアとの関係を改善していくことになります。もちろん、何でも仲良しという関係にはなりませんし、貿易問題や資源問題などではバチバチやり合うことになるでしょう。そのためには大変複雑で難しい駆け引きが行われるでしょう。その一環として、トランプは台湾に肩入れする姿勢を見せ、中国を慌てさせながら、中国のアメリカにおける代言者とも言うべき、ヘンリー・キッシンジャーを重用し、汗をかいてもらうことをしています。「相手とは最終的な手切れにならないようにし、基本的に仲良くしながら、しかし、安心させない」ということをやっているように思います。

 

そうした中で、トランプに最初に会談相手に「選ばれ(御しやすい、ちょっと強く言えばアメリカの軍需産業から戦闘機やらを買うだろうと値踏みされて)」、オバマ大統領には広島に行ってやったのだからお前はハワイに来いと言われればホイホイと行って、和解だ、友情だの薄っぺらい三文芝居をやりながら、「これでお許しが出たし、国内向けのこともある」と閣僚が2人早速靖国神社に訪問する、中国との関係は改善の兆しも見えない。ロシアのプーティン大統領を日本に招きながら懸案の北方領土問題で、大見得を切った割には何も進展させることができなった。アメリカ、中国、ロシア、台湾、韓国といった国々に囲まれて、丁々発止の複雑な外交交渉や政策を実施して、国益を守らねばならないというのに、この程度の指導者をいただきながら、抱えながら、私たちは2017年を迎えなければならない、というのは何とも悲しいことです。

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22


 

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 古村治彦です。

 

 先日、国連安保理でイスラエルの、ヨルダン川西岸地区、ガザ地区、東エルサレム地区における入植地拡大に対する非難決議が採択されました。この種のイスラエル非難決議に対しては、アメリカが拒否権を発動して採択にまで至らないのが通常なのですが、今回は、アメリカは賛成、反対を表明しない棄権を選択し、賛成14、棄権1で採択されました。

 

 アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国は国連安全保障理事会(U.N. Security Council)の常任理事国(permanent members)で、決議案などを可決できないようにする拒否権(veto)を持っています。残り10カ国は非常任理事国(non-permanent members)で任期付の持ち回りで、私の記憶では、日本は最多の回数と年数理事を務めていると思います。

 

 今回、オバマ政権のサマンサ・パワー米国連大使(サマンサ-・パワーについては、拙著『アメリカ政治の秘密』をご参照ください)は拒否権を発動せず、ホワイトハウスもそれを支持したことで、オバマ政権になって初めて、イスラエル非難決議が採択されました。イスラエルはこれに対して非難を行っていますが、オバマ大統領とネタニヤフ首相との間が冷え切っているために、イスラエル側は、ドナルド・トランプ次期大統領の政権移行ティームに働きかけて、オバマ政権に拒否権発動をさせようとしたということです。

 

 トランプ自身もツイッターを使って、拒否権発動を求めましたが、オバマ政権はこれを拒絶することを意味する棄権を選択しました。トランプは自分が大統領になったら国連自体も変えてやるとツイートしています。

 

 トランプの女婿ジャレッド・クシュナーはユダヤ系アメリカ人で、クシュナーと結婚したトランプの娘イヴァンカはユダヤ教に改宗しています。トランプはイスラエル大使として、自身の弁護士も務めたデイヴィッド・フリードマンを指名し、現在、テルアヴィヴにある駐イスラエル米国大使館をエルサレムに移転させると述べています。

 

 イスラエルとすれば、任期が残り1カ月を切ったオバマ政権に最後に大きな置き土産を残された形になりますが、もうすでにトランプ大統領就任、始動に向けて、政権移行ティームに接触して、トランプを通じてアメリカ政治を動かそうとしています。『アトランティック』誌のある記事では、「2人の大統領がいる」と書いていました。

 

 トランプ政権は、対イスラエル政策ではオバマ政権とは全く別の方向性を取ることになりそうです。これが、中東和平を遠のかせ、イスラエルとパレスチナの二国共存という解決を遠のかせてしまうことになるでしょう。しかし、歴代の各政権が二国共存を進めることはできず、イスラエルとの関係が冷え切ったオバマ政権は全く動かすことすらできませんでした。そう考えると別のアプローチから何か新しいものが生まれることを期待するべきでしょう。

 

 

(貼り付けはじめ)

 

国連安保理でのイスラエル入植非難の決議採決でアメリカが棄権(U.S. Abstains From U.N. Vote Condemning Israeli Settlements

 

コラム・リンチ、ロビー・グラマー、エミリー・タムキン

2016年12月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/12/23/u-s-abstains-from-u-n-vote-condemning-israeli-settlements/

 

金曜日、国連安保理はヨルダン川西岸地区、ガザ地区、東エルサレム地区におけるイスラエルの入植活動を不法と宣言し、拡大を停止するように求める決議を採択したが、オバマ政権はそれに対して傍観(黙認)する姿勢を取った。これは、ドナルド・トランプ次期大統領が決議案に反対票を投じるようにと求めたツイッターを通じたアピールに対するオバマ政権からの手厳しい拒絶となった。

 

決議案の採決は賛成票が14票で、棄権したのはアメリカだけであった。この採決の前、アメリカの次期大統領が、現職の大統領を揺さぶって決定を変化させようと外交上の争いに直接関わろうとした。これはアメリカの外交にとって異例の日となった。トランプは採決の後に国連とオバマ政権を激しく非難した。トランプは金曜日に行われた採決の後、ツイッター上で、「2017年1月20日以降、全く別のことが起きるだろう。これは国連に対しても同様だ」と発言した。

 

今回の棄権は、オバマ政権が阻止に動かず、安保理がイスラエルを非難するに任せた初めてのケースとなった。採決の後にサマンサ・パワー米国連大使は、棄権の正当性を主張し、レーガン政権まで遡り歴代の共和党、民主党の政権の諸政策と今回の棄権を同一のラインにあると主張した。

 

パワーは採決の後、安保理の場で次のように発言した。「1967年にイスラエルが占領した領域におけるイスラエルの入植活動はイスラエルの安全保障を損なう行為であり、高尚による二国共存という解決の可能性を著しく低下させ、平和と安全の見込みを失わせるものだ」。

 

オバマ大統領のホワイトハウスは、入植によって二国共存という解決の可能性が低下する危険があると強調した。戦略的コミュニケーション担当国家安全保障担当大統領副補佐官ベン・ローズは、記者たちとの電話による質疑応答の中で、「イスラエルによる入植活動が促進されることで、二国共存という解決の可能性は危険に晒される。良心に基づいた判断に従い、決議案に拒否権を発動できなかった」と発言した。

 

決議案はパレスチナ国家が起草し、エジプトによって「提案」され、共同提案者としてマレーシア、ニュージーランド、セネガル、ヴェネズエラが名前を連ねた。決議案では、イスラエルに対して、「パレスチナの土地における全ての入植を即座にかつ完全に停止する」ことを求めていた。そして、「入植行為は二国共存による和平の可能性を著しく損なう」とも述べている。決議は更に「東エルサレムを含むイスラエル入植地の建設は、法的な正当性を持たず、国際法に対する紛れもない違反である」とも述べている。

 

決議はイスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相に対する厳しい一撃となった。ネタニヤフは安保理内の唯一のアラブ世界からのメンバーであるエジプトに大きな圧力をかけて決議案採決の日程を木曜日にまで遅らせようとした。そして、ネタニヤフの側近がトランプの政権移行ティームに接触し、オバマ政権に拒否権発動をさせるように求めた。

 

イスラエルの国連大使ダニー・ダノンは「今日は安保理にとって暗黒の日となった。採決が行われた決議は偽善の最たるものだ」と発言した。ダノンは更に、決議案に賛成することは、安保理が進歩と故障に反対票を投じすることだとも主張した。また、今回の決議は、「国連の反イスラエル決議の長くそして恥ずべきリストに新たな1つが加えられたことになる」とも主張した。

 

ダノンは次のように発言した。「あなた方はユダヤ人がイスラエルの土地に、そして私たちの歴史的な首都エルサレムに故郷を建設することを非難する投票を行った。エルサレムは、ユダヤ人の心であり、魂なのだ。あなた方はパリにおいてフランス人が建設を行うことを禁止するのか?モスクワでロシア人が建設することを禁止するのか?ワシントンでアメリカ人が建設することも?」ダノンは安保理においてイスラエルはこれからも民主国家であり、ユダヤ人国家であり続けると断言した。

 

パレスチナ国家派遣国連常任オヴザーバーであるリヤド・マンスールは、今回のことが、パレスチナ・イスラエル、アラブ・イスラエルの和平に向けたプロセスのスタートとなることを希望すると述べた。マンスールは安保理に出席し、「法律と歴史の正しい側面によって、事態が進行することを望む」と述べた。

 

トランプはアメリカ政府に対して決議案に拒否権を発動するように求めた。これは、彼が来年1月に大統領に就任してから対イスラエル政策を劇的に変化させるという公約の一環である。トランプはアメリカ大使館をテルアヴィヴからエルサレムに移転すると述べ、イスラエル大使に、批判の多い強硬派デイヴィッド・フリードマンを指名した。

 

トランプは木曜日、「アメリカがこれまで長年にわたり主張してきたとおり、イスラエルとパレスチナとの間の和平は両者の直接交渉によってのみもたらされることになるだろう。国連による条件の強制では決して達成されない」と発言した。

 

2011年2月、オバマ政権は国連安保理で、イスラエルの入植政策が中東地域の和平努力を不法に阻害するものであるいう非難決議の採択を防ぐために初めて拒否権を発動した。当時の米国連大使スーザン・ライスは、アメリカの拒否権発動は、「正当な行為」ではないと考えられているイスラエルの入植を擁護するものと認識されるべきではないと発言した。 しかし同時に、ライスは、安保理理事国15のうち14が支持した決議案について、「両者の立場を硬化」させ、パレスチナ国家建国の可能性を損なう危険を伴うとも発言した。

 

それから5年が経過して、任期を終えようとしているオバマ政権は計算を明確に変えている。もしくは、イスラエルとの冷え切った関係のためにこれまでの態度を変えることになったとも言えるかもしれない。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22



 古村治彦です。

 

 今回は昨年(2015年)の9月に『』誌に掲載された記事をご紹介します。記事の著者であるアダム・ゴプニックは、2011年にホワイトハウス担当記者協会が年1回開催する夕食会に出席し、そこで目撃した情景を大統領選挙に絡めて書いています。

 

 夕食会の席上、バラク・オバマ大統領は挨拶に立ちました。その挨拶の中で、出席者の一人であったドナルド・トランプを材料にしたジョークを長々と語りました。出席者たちは大笑いでしたが、ジョークの材料となったドナルド・トランプは笑いもできず、ただこわばっていた、ということです。

 

 当時、オバマ大統領には「ケニア生まれで、アメリカの市民権を持っていない」という批判がなされていました。ドナルド・トランプもその主張をしていました。そこで、オバマ大統領はハワイ州政府に対して、自分の詳しい出生記録を公表するように求め、実際に公表された後でした。オバマ大統領としては、自分の出生の疑惑を主張したトランプを笑いものにして、うっぷんを晴らそうとしたのでしょう。それに対して、トランプは、屈辱感でこわばるほどに怒りました。

donaldtrump2011001 

 2011年のホワイトハウスでの夕食会におけるドナルド・トランプ
 

ゴプニックは、トランプの大統領選挙出馬とトランプの台頭の原動力になったのは、ホワイトハウスでオバマ大統領から受けた侮辱と恥辱(屈辱感、humiliation)だろうと推測しています。トランプ当選が現実のものとなった今、トランプを大統領にまで押し上げたのは、オバマ大統領が気軽にトランプを笑いものにした行為が原因とも言うことができ、「オバマ大統領の自業自得」です。

 

 トランプはオバマ大統領から屈辱を受けましたが、南部とラストベルトのトランプを支持した人々(大学教育を受けていない白人男性の労働者たち)もまた、屈辱感を基礎にして動いていると論稿の著者ゴプニックは書いています。民主党、共和党両党のエスタブリッシュメントから無視されているという屈辱感やもちろん、自分たちの祖父母や両親の時代に比べて生活水準が下がっているという屈辱感、外国から侮られているという屈辱感を感じています。

 

 私が翻訳した本に『野望の中国近現代史 帝国は復活する』(オーヴィル・シェル、ジョン・デルリー著、ビジネス社、2014年)があります。これは、アヘン戦争以降の歴史を中国の近代化に貢献した人々を各省で1人ずつ取り上げたもの(列伝)です。この本の背骨(バックボーン)となるテーマは、「中国はアヘン戦争以降、恥辱の世紀(a century of humiliation)を過ごしてきた(これ以降、中国は外国に侵略され、富を奪われていきました)。近代化に貢献した人々(改革者)は、この恥辱をそそぎ、富強(wealth and power)の復活を目指してきた(アヘン戦争直前まで中国は力を落としつつありましたが世界最大の経済大国でした)」というものです。

 


 トランプを支持した人々は、トランプの掲げた「アメリカを再び偉大に(
Make America Great Again)」こそが、自分たちの主張そのものだと感じ、トランプを支持しました。逆に言うと、トランプが時代の「空気」を的確につかむことに成功しました。この「昔偉大だった我が国は今凋落している。それを再び偉大にするのだ」という思考は、中国近現代史と相通じるものがあります。

 

 今回の大統領選挙のキーワードは、「屈辱感」であったと言えると思います。トランプがオバマ大統領から与えられた屈辱感、戦後アメリカの輝ける中産階級(アメリカの勝利と帝国化の富の配分にあずかった人々)の子孫の抱えている屈辱感、これらが結びつき、トランプが大統領となりました。屈辱感は大きな物事をもたらす原動力となるということは、今回の事例でまた歴史上の教訓となりました。

 

 トランプは「改革者」としてワシントンに乗り込みます。『野望の中国近現代史』をお読みいただけると分かりますが、清朝末期には改革派と守旧派の間で、激しい権力闘争があり、近代化が中途半端になってしまいました。この点では日本の幕末から明治維新にかけては、ある意味であっさりすぎるほど、近代化(西洋化)がほぼ抵抗なく受け入れられていきました。ワシントンにも守旧派が手ぐすね引いて待っています。この人々を如何に御していくか、トランプの手腕に注目が集まります。

 

(貼り付けはじめ)

 

TRUMP AND OBAMA: A NIGHT TO REMEMBER

 

By Adam Gopnik , SEPTEMBER 12, 2015

http://www.newyorker.com/news/daily-comment/trump-and-obama-a-night-to-remember

 

Once, and only once, in 2011, have I attended the annual White House Correspondents’ Association dinner in Washington, D.C., on the grounds, as I explained then, that Voltaire is said to have cited when he declined a second invitation to an orgy: once a philosopher, twice a pervert. Luckily for the philosopher in me, it turned out to be an auspicious night. Not only, as we did not know then, was President Obama in the midst of the operation that would lead shortly to Osama bin Laden’s killing; it was also the night when, despite that preoccupation, the President took apart Donald Trump, plastic piece by orange part, and then refused to put him back together again.

 

Trump was then at the height of his unimaginably ugly marketing of birther fantasies, and, just days before, the state of Hawaii had, at the President’s request, released Obama’s long-form birth certificate in order to end, or try to end, the nonsense.  Having referred to that act, he then gently but acutely mocked Trump’s Presidential ambitions: “I know that he’s taken some flack lately—no one is prouder to put this birth-certificate matter to rest than the Donald. And that’s because he can finally get back to the issues that matter, like: did we fake the moon landing? What really happened in Roswell? And—where are Biggie and Tupac?” The President went on, “We all know about your credentials and breadth of experience. For example—no, seriously—just recently, in an episode of Celebrity Apprentice”—there was laughter at the mention of the program’s name. Obama explained that, when a team did not impress, Trump “didn’t blame Lil Jon or Meatloaf—you fired Gary Busey. And these are the kinds of decisions that would keep me up at night.”

 

What was really memorable about the event, though, was Trump’s response. Seated a few tables away from us magazine scribes, Trump’s humiliation was as absolute, and as visible, as any I have ever seen: his head set in place, like a man in a pillory, he barely moved or altered his expression as wave after wave of laughter struck him. There was not a trace of feigning good humor about him, not an ounce of the normal politician’s, or American regular guy’s “Hey, good one on me!” attitude—that thick-skinned cheerfulness that almost all American public people learn, however painfully, to cultivate. No head bobbing or hand-clapping or chin-shaking or sheepish grinning—he sat perfectly still, chin tight, in locked, unmovable rage. If he had not just embarked on so ugly an exercise in pure racism, one might almost have felt sorry for him.

 

Some day someone may well write a kind of micro-history of that night, as historians now are wont to do, as a pivot in American life, both a triumph of Obama’s own particular and enveloping form of cool and as harbinger of—well, of what exactly? A lot depends on what happens next with the Donald and his followers. Certainly, the notion that Trump’s rise, however long it lasts, is a product of a special skill, or circumstance, or a new national “mood,” is absurd. Trumpism is a permanent part of American lifein one form or another, with one voice or another blaring it out. At any moment in our modern history, some form of populist nationalism has always held some significant share—whether five or ten per cent – of the population. Among embittered white men, Trump’s “base,” it has often held a share much larger than that. Trump is not offering anything that was not offered before him, often in identical language and with a similarly incoherent political program, by Pat Buchanan or Ross Perot, by George Wallace or Barry Goldwater, or way back when by Father Coughlin or Huey Long. Populist nationalism is not an eruptive response to a new condition of 2015—it is a perennial ideological position, deeply rooted in the nature of modernity: a social class sees its perceived displacement as the result of a double conspiracy of outsiders and élitists. The outsiders are swamping us, and the insiders are mocking us—this ideology alters its local color as circumstances change, but the essential core is always there. They look down on us and they have no right to look down on us. Indeed, the politics of Trump, far from being in any way new, are exactly the politics of Huck Finn’s drunken father in “Huckleberry Finn”: “Call this a govment! Just look at it and see what it’s like . . . . A man can’t get his rights in a govment like this.” Widespread dissatisfaction with all professional politicians, a certainty of having been “sold out,” a feeling of complete alienation from both political parties—“Not a dime’s worth of difference between them” was George Wallace’s formulation, a half century ago—these are permanent intuitions of the American aggrieved. The feelings may be somewhat aggravated by bad times, or alleviated by good ones, but at the height of the prosperous fifties a significant proportion of Americans were persuaded that the entire government was in the hands of saboteurs and traitors at the pay of a foreign power, while in the still more prosperous nineties a similar faction was persuaded that the liberal President was actually a coke dealer who had murdered a friend.

 

Nor is it at all surprising to find a billionaire businessman representing this ideology, because it is not really members of the economic élite who are its villains—it is the educated élite, and the uneducated outsiders, who are. It is, on the historical record, much more a response to the ceaseless anxieties of modern life than to any financial angst of the moment. Probably the best student of this modern ideology is the conservative historian John Lukacs, whose 2005 book “Democracy And Populism: Fear and Hatred” makes clear how different the nationalist formula is from patriotism properly so called: it rests not on a sense of pride in place or background but in an intense sense of victimization. The cry of the genuine patriot is “Leave us alone to be the people we have always been.” The populist nationalist cries, “We have been cheated of our birthright, and the Leader will give it back.”

 

The ideology is always available; it just changes its agents from time to time.

 

And this is where memories of the President’s performance come into play and take on a potency that one might not have understood at the time. For the politics of populist nationalism are almost entirely the politics of felt humiliation—the politics of shame. And one can’t help but suspect that, on that night, Trump’s own sense of public humiliation became so overwhelming that he decided, perhaps at first unconsciously, that he would, somehow, get his own back—perhaps even pursue the Presidency after all, no matter how nihilistically or absurdly, and redeem himself. Though he gave up the hunt for office in that campaign, it does not seem too far-fetched to imagine that the rage—Lukacs’s fear and hatred—implanted in him that night has fuelled him ever since. It was already easy to sense at the time that something very strange had happened – that the usual American ritual of the “roast” and the roasted had been weirdly and uniquely disrupted. But the consequences were hard to imagine. The micro-history of that night yet to be written might be devoted largely to the double life of Barack Obama as cool comedian and quiet commander—or it might be devoted to the moment when new life was fed into an old ideology, when Trump’s ambitions suddenly turned over to the potent politics of shame and vengeance. His even partial triumph in the primary still seems unlikely—but stranger jokes have been played on American philosophers over the centuries.

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)









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