古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。よろしくお願いします。

タグ:バーニー・サンダース

 古村治彦です。

 

 FBIがバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ―モント州選出、無所属)の妻が大学の学長を務めていた時期の詐欺行為について捜査をしていることが明らかになりました。サンダース議員は昨年の大統領選挙の民主党予備選でヒラリー・クリントンに対抗し、多くの支持を集めました。

 

 サンダース議員の妻ジェインが大学の学長だった時に、借入金をするための書類で虚偽記載を行っていた疑いがあるということで、FBIが捜査を行っているという記事が出ました。

 

 ジェイン・サンダースは、2004年から2011年にかけて、ヴァーモント州のバーリントン・カレッジ(1972年創設)という小さな大学の学長を務めました。この大学があったバーリントン市は、1980年代にバーニー・サンダースが市長を務めた町です。

 

 ジェインは学長時代にキャンパス拡張のために資金を借り入れようとした際に、申請書類に、的外れで事実ではない寄付金収入見込みを記載し、借り入れに成功しましたが、キャンパス拡張のために借金をした上に、寄付金も集まらず、バーリントン・カレッジは債務超過に陥りました。そして、2016年に閉校してしまいました。

 

 日本でも少子化のために大学、特に地方の私立大学では定員割れを起こし、経営が成り立たず、地方自治体が経営を引き受け、「公立化」するという流れになっています。公立化することで、国からの補助金も増額となり、学費が安くなり、国公立となるために受験生が増加するという良い流れになりますが、大学を潰したくない、大学を誘致した責任を追及されたくない、ということで公立化しますが、最終的には税金で延命させるということでしかありません。

 

 話がそれましたが、ジェイン・サンダースの虚偽記載が追及されているようです。これは、バーニー・サンダースとは直接関係ない話ですが、ジェインが逮捕されるようなことになれば、バーニー・サンダースに、少なからず影響が出ると思われます。しかし、大きな話にはならないだろうと思われますが、大学経営の大変さということに私自身が関心を持っているので、この話を取り上げました。

 

(貼り付けはじめ)

 

FBIがジェイン・サンダースの銀行に対する詐欺行為容疑を捜査中(FBI investigating Jane Sanders for alleged bank fraud: report

 

オリヴィア・ブリーヴァース筆

2017年5月7日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/senate/332313-fbi-investigating-jane-sanders-for-alleged-bank-fraud-report?rnd=1494197255

 

連邦捜査局(FBI)は現在、アメリカ連邦上院議員バーニー・サンダース(ヴァーモント州選出、無所属)の配偶者ジェイン・サンダースが、バーリントン・カレッジの学長を務めている時に借入金の書類に虚偽の内容を記載したという容疑で捜査を行っている、とフライデー。デイリー・コーラー・ニュース・ファウンデーションが報じた。

 

リベラル・アーツ教育を行っていた小規模大学であったバーリントン・カレッジは、破産し、学位発行認定基準に達しないことになり、2016年5月に閉校した。

 

サンダースが学長であった2004年から2011年の間に、バーリントン・カレッジは財政的に苦境に陥り始めた。2010年にバーリントン・カレッジが新しい校地を購入した際に1000万ドル(約11億円)の債務超過に陥った。

 

ジェイン・サンダースには、学長時代にバーリントン・カレッジのグラウンド拡張のための資金調達の借入金申請書類に虚偽の情報を記載したという容疑がかけられている。

 

デイリー・コーラーは、借入金を申請する際に寄付金を受けることができると銀行側に述べていた寄付者たちに対して、FBIと米連邦預金保険機構(FDIC)が接触を図っている。

 

サンダースは2011年に学長を辞任した。その理由は明らかにされていない。

 

2010年の借入金申請書類によると、サンダースは新たな土地取得のために260万ドルの寄付を集めることができると書いていた。しかし、彼女が最終的に集めることができたのは、4分の1にあたる金額だけで、それ以降の4年間ではたったの676ドルであった。そのために、バーリントン・カレッジは2016年5月に破産してしまった、とデイリー・コーラーは報じている。

 

デイリー・コーラーは、サンダースが借入金申請書類に記載した寄付者の数と実際の数は食い違っていると報じている。

 

2010年の借入金申請書類では、コーリー・ボヴ・マイエッタが5年で1万ドルを寄付する予定だと書かれていた。しかし、マイエッタは自分が死亡したら遺産をバーリントン・カレッジに寄付はするとは申し出ていたが、その金額は特に決めていなかった、とデイリー・コーラーの取材に答えている。

 

マイエッタの税理士であるリチャード・モスはデイリー・コーラーの取材に対して、FBIが連絡をしてきて、マイエッタと一緒に質問を受けて欲しいと依頼されたと述べた。

 

モスはデイリー・コーラーに対して次のように語った。「納税期間である3月か4月のことでした。コーニー・マイエッタさんの現在の住所とバーリントン・カレッジについてお話を伺いたいのだがどこか適当な場所はないですかという問い合わせがありました」。

 

アメリカ連邦上院議員バーニー・サンダースはデイリー・コーラーからのコメントを求められたが答えていない。

 

サンダース議員の報道担当ジェフ・ウィ―ヴァーは、デイリー・コーラーに対して専修出した声明の中で、FBIはジェイン・サンダースに接触していないと述べた。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

 古村治彦です。

 

 昨年の米大統領選挙民主党予備選挙でヒラリー・クリントンを追い詰めた連邦上院議員バーニー・サンダースがトランプの支持者について、「人種差別主義者、性差別主義者、同性愛憎悪者ではない」と発言しました。

 






 トランプを支持した人々は、民主党の支持者だと考えられる人たちでした。南部の白人で、学歴が低く、所得が低いがトランプを大統領に押し上げたということは日本のマスコミでよく語られたことです。本来であればこうした人々の支持を民主党は取り込めたはずですし(オバマ大統領は成功しました)、取り込まなければなりませんでした。

 

 しかし、民主党が労働者の党ではなく、リベラルな理想ばかりを語るエリートたちの党になっていたために、民主党は敗れたのだということをサンダースは、民主党支持者たちの前で言いました。

 

 サンダースはトランプに対して、是々非々の態度で臨むと主張してきました。サンダースにとって民主党主流派は、トランプよりも遠い存在であり、敵なのだという認識だと思われます。共和党主流派に嫌われたトランプ、民主党主流派に嫌われたサンダース、この共通点のために親近感を感じているのだろうと思います。また、インフラ整備などの点では、連携できると思われます。

 

 共和党内部に大きな敵を抱えているトランプにとっては、皮肉なことに、サンダースはまだ味方になってくれる、もしくは最低限邪魔はしないそんざいになるのかもしれません。

 

 

(貼り付けはじめ)

 

サンダースがトランプに投票した有権者を擁護:「私は彼らが人種差別主義者、性差別主義者、同性愛嫌悪者だとは思わない」

 

ブルック・シーペル筆

2017年3月31日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/326820-sanders-defends-trump-voters-i-dont-think-theyre-racists

 

バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は金曜日、ドナルド・トランプを支持した有権者たちを擁護した。サンダースは、大統領選挙では民主党は負けるべくして負けたのであり、民主党は、トランプや他の共和党の連邦議員たちを支持した労働者階級の有権者たちをより良く代表できる政党になる必要があると発言した。

 

サンダースは、同僚のエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)と出席した、ボストンで開催された「アウワ・レヴォリューション」というイヴェントで次のように発言した。「トランプ大統領に投票した人々は人種差別主義者、性差別主義者、同性愛憎悪者、嘆かわしい人々だと考える人たちがいる。私はそうした考えに同意しない。なぜなら私はトランプ大統領に投票した人々と一緒にいたからだ。皆さん方は同意できないであろうことを言わせてもらう。昨年の大統領選挙ではドナルド・トランプが勝ったのではない。民主党が負けたのだ」。

 

サンダースは「将来の選挙に勝つために民主党の根本的な再編が必要だ。現在の民主党の構成が問題なのは、そのために昨年の選挙で人々が民主党ではなく、トランプを支持したというところにある。民主党の選挙での主張が問題だったのではない」と語った。

 

サンダースは「リベラルなエリートの党ではなく、この国の労働者階級の党としての民主党を私たちは必要としている。富豪や力を持つ人々からの資金を集めるために時間を使うのではなく、労働者たちと話をすることに時間を使う候補者たちが集う、草の根の政党としての民主党が必要だ。私たちがこのような変革をすれば、民主党の変革をすれば、アメリカは変わる」と述べた。

 

サンダースは、有権者のほとんどは、右翼的な主張ではなく、進歩的な主張を持っているのだと語った。

 

演説の冒頭、サンダースはウォーレンに対する賛辞を送った。サンダースは、「あなたは自身が敵とする人を通じて、自身の素晴らしさを語らせている。エリザベス・ウォーレンの素晴らしさは、彼女の敵の素晴らしさが教えてくれる」と述べた。

 

サンダースは、ウォーレンの敵にはウォール街、製薬業界、化石燃料業界がいると語り、有権者たちに対して、ウォーレンを上院議員に当選させて、進歩的な主張のために戦えるようにして欲しいと訴えた。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)




このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

古村治彦です。

 

 前回(2016年7月6日)から、アメリカ大統領選挙で、民主党の大統領選挙候補者に内定したヒラリー・クリントン、共和党の大統領選挙候補者に内定したドナルド・トランプの選挙資金について見ています。前回同様も、今回もアメリカの非営利団体「応責政治追求センター(Center for Responsive Politics)」のウェブサイトの数字を参考にします。

 

※「応責政治追求センター(Center for Responsive Politics)」のウェブサイトのアドレスは以下の通りです↓

https://www.opensecrets.org/pres16/
 

 集められたお金がどのように使われているか、ということも気になるところです。上記の応責政治追求センターのサイトではいくつかの項目に分けて支出先も書かれています。これを見ると、ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの間には特徴的な違いがあることが分かります。

2016uspresidentialelectionhillaryclintonexpenditures001
ヒラリー陣営の支出 © Center for Responsirve Politics

 ヒラリー陣営で大きな割合を占めるのは、メディアと人件費です。メディアの中には、テレビや新聞の広告やインターネットのデザインなどが含まれます。目を引くのは、人件費の大きさです。トランプ陣営では、人件費の項目がありません。これは他の項目の中に入れていることも考えられますが、ヒラリー陣営の人件費の大きさは突出しています。これは、彼女が自分の子飼いと民主党系のエリート人材を根こそぎ雇ったことが影響していると思われます。人件費が4400万ドル(約45億円)というのは凄まじいものです。

 

 外交分野の専門家の話になりますが、バーニー・サンダースが陣営に外交政策の専門家を招きいれようとしたところ、有名どころ、めぼしい人材はあらかたヒラリー陣営に入っていて、外交政策担当ティームが結成できるかどうか危ぶまれたほどでした。

 
2016uspresidentialelectiondonaldtrumpexpenditures002
トランプ陣営の支出© Center for Responsirve Politics
 

 トランプ側では、戦略・研究部門への支出がなされていますが、これは、トランプ陣営が選挙戦の戦い方を学びながらここまで勝ち抜いてきたことを示しています。アマチュアたちが始めた戦いがここまで大きくなったというところにトランプ旋風の大きな特徴があります。

 

 次にヒラリー、トランプ両陣営の大口献金者のリストを見てみたいと思います。政治献金は個人や団体問わず年間5000ドルまでという制限が付けられています。しかし、前回説明したように、スーパーPACに対する献金は表現の自由の観点から、無制限となっています。

2016uspresidentialelectionhillaryclintoncontributers001
ヒラリー陣営の大口献金者リスト
© Center for Responsirve Politics

 

 ヒラリー陣営の大口献金者には、金融に従事するニューヨークを本拠とするユダヤ系の人々が多く名前を連ねています。リストには会社の名前になっていますが、一番目には、ハイム・サバン、3番目にはジョージ・ソロスが名前を連ねています。一方、ドナルド・トランプの方には、こちらもニューヨークを本拠とするユダヤ系が名前を連ねていますが、こちらは不動産や小売業に従事している人々です。トランプの婿であるジャレッド・クシュナーのクシュナー家(不動産)やフィリップ・プレヴィスキー(フィリップス・インターナショナル、不動産)が入っています。

 次にヒラリーを最後まで苦しめ、民主党の政策綱領に多くの政策を反映させた、バーニー・サンダース連邦上院議員について見ていきたいと思います。

 サンダースは自分に直接関係のないスーパーPACへの献金を含め2億2280万ドル(約230億円)を集めました。スーパーPACへの献金は70万ドル程度ですから、2億220万ドルは自身の選挙委員会に集まったものです。

2016uspresidentialelectionbarniesanderscampaigngfunds001
サンダースの献金種別 
© Center for Responsirve Politics

 

 サンダースへの献金の60%が小口献金で、40%が大口献金です。社会主義者を自称したサンダースを、一般の人々が支持したことがこれから分かります。

 

 州別で見てみると、カリフォルニア州、ニューヨーク州、ワシントン州、マサチューセッツ州から多くの献金を受けています。3位のワシントン州、4位のマサチューセッツ州は共に民主党が強く、リベラルな気風で有名な州です。また、マサチューセッツ州は、サンダースの地盤であるヴァーモント州の近くにあります。

2016uspresidentialelectionbarniesanderscampaingfundsstates001
サンダースの献金の州別グラフ 
© Center for Responsirve Politics

 

 次にサンダースには、どのビジネス分野からの献金が多かったかを見ていきます。ヒラリーやトランプでは金融や不動産が上位にきましたが、サンダースにはそういう巨額の献金を行う業界からの資金はほとんど流れていませんでした。教育関係や医療関係というのは、先生や看護師といった人々がサンダースを支えていたことがあります。
 
 

 次に大口献金者について見てみたいと思います。リストを見ると分かりますが、アメリカを代表する大企業や連邦政府機関の名前が並んでいます。1位はカリフォルニア大学が来ています。これは、これらの大企業や機関が全体で献金したということではなくて、職員たちが組合などを通じて献金したということです。アメリカの大企業や連邦政府機関には、高学歴でリベラルな人たちが働いており、トランプ支持者たちは真逆であるということが言えます。

  

 サンダース陣営の支出について見てみたいと思います。支出先の半分以上を占めるのは、メディアでした。これは広告宣伝に力を入れていたということです。人件費や事務経費などが少ないのは、ヴォランティアが多かったことと、ヒラリー陣営のように高名な専門家たちを雇っていなかったことを示しています。

 

 かなり間があって2回にわたって、ヒラリー・クリントン、ドナルド・トランプ、バーニー・サンダースの政治資金について簡単に見てきました。ヒラリーは潤沢な資金を使っての横綱相撲、トランプは意外と少ない政治資金で共和党予備選挙を勝ち抜き、さすが嗅覚の鋭いビジネス感覚の持ち主であることを証明し、サンダースは、全米のリベラル派からの支持を受けて、ヒラリーに負けないほどの資金を集めることが出来たということ分かります。

 

 本選挙投票日まで100日を切りました。ヒラリー、トランプ両陣営はこれから総力戦で相手を叩きつぶしにいきます。政治資金では圧倒的にヒラリーが有利ですが、トランプはその優れた嗅覚で、ヒラリーの弱点を徹底的に突いていくことでしょう。その際に、彼は自分の声を直接届けることが出来るツイッターを利用します。このツイッター利用では、トランプに一日の長があります。ツイッター利用にはお金がかかりませんから、お金があろうがなかろうが全く関係ありません。アイディアとひらめきの勝負です。この点では、トランプがヒラリーを大きくリードしています。

 

 2016年のアメリカ大統領選挙はますます目が離せなくなっていきます。

 

(終わり)





 
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

 古村治彦です。

 

 2016年7月25日(日本時間だと26日)から民主党全国大会が始まりました。バーニー・サンダース支持者の野次とブーイングが響く中で、不穏な空気を伴いながら、演説が続きました。ミッシェル・オバマ大統領夫人、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員、バーニー・サンダース連邦上院議員が演説を行いましたが、この不穏な空気は払しょくされませんでした。ヒラリー・クリントン自身は姿を見せず、夫のビル・クリントン元大統領とティム・ケイン副大統領候補の姿がありました。

 

 これだけ不穏な空気になったのは、先週の金曜日にウィキリークスが、民主党全国委員会のEメール2万通をリークし、その中に、バーニー・サンダースの予備選挙での躍進を妨害したいという内容のものが含まれていたことが導火線になりました。サンダースの名前を出さないで、「候補者が困るような質問が出来ないか」といった内容のEメールがありました。こうしたEメール2万通は匿名の人物からウィキリークスに送られてきたということです。

 

 その中には、デビー・ワッサーマン=シュルツ民主党全国委員長(フロリダ州選出連邦下院議員)のEメールも含まれていました。彼女はヒラリーが勝つべきだという内容のEメールをヒラリー支持の全国委員会のスタッフに出していました。民主党全国委員会がヒラリーに肩入れをしているという非難は予備選挙中ずっとサンダース支持者たちから上がっていました。少なくとも公正中立であるべき予備選挙実施団体のトップがスタッフが、ヒラリーを支持していたということが明らかになって、サンダース支持者の怒りは頂点に達しました。

 

 ワッサーマン=シュルツは全国大会後の委員長辞任を発表しましたが、サンダース支持者はこれでは収まらないでしょう。民主党特有の制度である特別代議員制度の撤廃をはじめとする民主党内部の改革を求めるでしょう。そして、これが不十分に終わるなら、ヒラリーには投票しないということになり、ヒラリーの大統領選挙当選は危うくなります。

 

 民主党予備選挙は、伏兵のバーニー・サンダースが大躍進し、善戦し、ヒラリーを追い詰めました。サンダース支持者はヒラリーがイラク戦争に賛成したこと、国務長官時代にリビアのベンガジで失敗したことやISの台頭を許したことを批判してきました。これはトランプ支持者と同じ主張となります。ですから、彼らの中にはトランプへ投票する人たちも出てくるでしょう。もしくは第三党である緑の党のジル・スタインに投票する人が多くなるでしょう。共和党側で言えば、リバータリアン党のゲイリー・ジョンソンに投票する人たちが出てくるのと同じです。

 

 民主党としては、サンダース支持者に対して、改革を約束し、全国委員会の幹部スタッフを更迭するという低姿勢を見せながら、「皆さんはドナルド・トランプを勝たせて、大統領にしてもいいのですか」と訴えることしかできません。「ヒラリーとトランプでどちらがよりましですか」と彼らに聞くしかありません。しかし、彼らにとって恐ろしいことは、「ネオコンに近いヒラリーよりも、トランプの方がましだよ」と答える人たちが出てくるであろうということです。

 

 おそらく、サンダース支持者たちの過半数は、「トランプも酷いし、ヒラリーに入れるしかないか」といやいや、渋々、目に涙を浮かべながら、ヒラリーに投票するでしょう。

 

 私は「8対2」でヒラリー優勢だと考えてきましたが、2つ目のEメール問題で、「6対4」でヒラリーやや優勢の状況になったと考えています。トランプはここを先途と、サンダース支持者を対象に切り崩しの攻撃を行い、「サンダースと闘うはずだった、それならタフな闘いになっただろう。私はサンダースの敵ではない、サンダースの敵はヒラリーと民主党だ」「予備選挙自体が無効なのだから、ヒラリーを民主党の大統領選挙候補者としては認めない」という発言をするでしょう。

 

 民主党とヒラリーは防戦として、「差別主義者で生まれながらの金持ちであるトランプをあなたは支持するのですか」「女性を侮辱し続けてきたトランプを選ぶのか、女性でも大統領になれることを証明することに参加するのか、どちらですか」といった主張を行うでしょう。また、「人権抑圧国で、周辺国への侵略を行っているロシアに対してトランプは友好的だ。ヒラリーは厳しい態度で臨むと言っているので、このような謀略を仕掛けられたのだ。あなたは外国による選挙への介入を許しますか」という訴えも行うでしょう。

 

 私としては、民主党大会後の激戦州の世論調査の結果を注視したいと思います。その数字でまた私なりの予想を変えねばならないと思います。

 

=====

 

サンダースの支持者たちは、民主党全国委員会Eメールリーク事件で民主党の団結は崩れないと述べているが、抗議者たちはそうではないと叫んでいる(Sanders Backers Say DNC Leak Won’t Unravel Party Unity Bid — Protesters Say Otherwise

 

モーリー・オトゥール筆

2016年7月25日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/07/25/sanders-backers-say-dnc-leak-wont-unravel-party-unity-bid-protesters-say-otherwise/

 

フィラデルフィア発。民主党は、クリーヴランドで開催された共和党全国大会は決定的なものとなったと述べた。

 

 ヴァ―モント州選出連邦上院議員バーニー・サンダースの支持者たちは、ブーイングと「ノー」の叫び声の大合唱を行った。これは予備選挙で次点に終わったサンダースが彼が獲得した代議員たちに対してヒラリー・クリントンを支持し、ドナルド・トランプを倒すために団結して努力しようと述べた時に起きた。民主党全国大会を前にしてこのようなことが起きているのは前代未聞のことだ。フィラデルフィアでの民主党全国大会のテーマが「団結してより強く」であるのはあまりにも皮肉めいている。

 

 先週金曜日にリークされた20000通の民主党全国委員会のEメールは、2016年の米大統領選挙について影響を与えるためにロシアのハッカーたちによってリークされたと考えられている。サンダースの主要な支持者たちは、民主党全国委員会がサンダースに対して妨害活動をしていたことをEメールが示しているが、他のサンダース支持者たちがヒラリー・クリントンに投票することを妨げないと述べている。しかし、フィラデルフィアに集結しているサンダースが獲得した代議員と講義をしている人々は全く別のことを叫んでいる。

 

 サンダースは、民主党全国大会が開催されるスタジアムから数キロ離れた集会場に集まった彼が獲得した代議員たちに対して「今まさに、私たちはドナルド・トランプを打ち倒さねばならない」と語った。サンダースは月曜日の夜に民主党全国大会で基調演説を行う予定だ。サンダースは更に「私たちはヒラリー・クリントンとティム・ケインを当選させねばならない」とも述べた。

 

 サンダースが発言を続ける中で、集まった人々は「兄弟たち、姉妹たち、これが私たちの生きている現実世界だ」と叫んだ。

 

 現実世界は、ウィキリークスが民主党全国委員会のEメールをリークしたことによって衝撃を受けている。サンダースが彼の代議員たちを前に演説している最中に、民主党全国委員会のデビー・ワッサーマン=シュルツは『オーランド・サン・センティネル』紙の取材に対して、月曜日の午後に4日間にわたって行われる民主党全国大会の開会宣言を行う大役を辞退すると述べた。フロリダ州選出の連邦下院議員であるワッサーマン=シュルツは日曜日に、全国大会でのいくつかの仕事をこなした後に委員長職を辞任すると表明した。

 

 民主党全国委員会と独立系のアナリストたちは複数のハッカーに対するEメールのリークは、ロシア政府との関係があるのではないかと疑いを持ち調査を行っている。ここ数時起きていることはまさにロシア政府が意図したことであると彼らは考えている。民主党内部の亀裂がどんどん大きくなることでヒラリーへの支持は下がり、トランプにとっては大きな後押しとなる。トランプは共和党の大統領選挙候補者で、彼の選挙戦とビジネスはロシアに対して友好的であった。

 

 フィラデルフィアで抗議活動をする人たちを鎮める方法はない。また、全国大会会場で、ヒラリーと民主党全国委員会に対する反対を明確に記録に残すために候補者指名方法に関して動議を出す計画をサンダース派の代議員たちが出すことを止めることもできないだろう。彼らはヒラリーが不当に依怙贔屓をされて予備選挙に勝ったと不公平感を強めている。

 

 ジム・ゾグビーはサンダースの外交政策顧問であった。ゾグビーは、「民主党全国委員会はEメールのリークにおけるロシアの役割ばかりを強調しているが、銀行強盗をやった人物が、自分を警察に密告した人に文句を言っているようなものだ」と述べた。

 

 「これはよくある行動パターンだ。民主党全国委員会側はこれまで私を非難してばかりきたが、私はそんなバカなことはしてこなかった、他人に自分の間違いの原因を押し付けたりしなかった」と本誌の取材に対して答えた。集会所の外にはサンダース支持者が多数詰めかけていた。

 

 ゾグビーは、アラブ・アメリカン研究所の所長で、フィラデルフィアには特別代議員としてやって来た。また、民主党政策綱領作成委員会の委員であった。彼は長年にわたり、民主党全国委員会のメンバーだが、彼は、サンダースの支持者がヒラリー支持に移る純部は出来ていないと述べた。

 

 「彼らは民主党内のエスタブリッシュメントではない。何が起きるかは分からない」とゾグビーは述べた。

 

 ゾグビーは、サンダースとヒラリーの間には多くの問題で相違点があることは明らかで、これがサンダースの熱心な支持者たちを動かしているので、彼らがドナルド・トランプを倒すことに力を傾けるようには今のところなってはいない」と述べた。

 

 ジャスティン・モリットは月曜日に開催されたサンダースの代議員たちの集会に参加した。モリットはロビン・フッドの帽子をかぶり、自分がサンダースの代議員であることを示していた。彼はコネチカット州の労働組合活動家だ。彼は、サンダース支持者がヒラリー支持に合流できないのは、Eメールスキャンダルのせいではなく、彼女の外交政策がネオコンと同じであることだと述べた。

 

 モリットは「ロシア人を非難するのは簡単だが、今は冷戦下の1985年ではない」と本誌の取材に対して述べた。「問題はリークされたかどうかではなく、Eメールの中身だ。もっと大事なことは、彼女の外交政策だ。彼女の政策によって中東は不幸に見舞われた」とも語った。

 

 ホセ・ナヴァレットは学生で、パートタイム警察官候補生だ。彼はカリフォルニア州サンフェルナンドヴァリーからサンダースの代議員としてフィラデルフィアにやって来た。ナヴァレットは11月には第三党の候補者に投票すると述べた。

 

 ワッサーマン=シュルツが委員長を辞任するだけでは十分ではないとナヴァレットは述べた。

 

 「もし彼らがサンダース支持者の支持を得たいと思うのなら、民主党を本当に改革しなければならない」とナヴァレットは述べた。

 

 「私たちの目を開かせるために外国の力を使うのはどういうことだろう?私たちに何が起きているかを教えるのがロシア人だったのは悲しいことだ」とも述べた。

 

 しかし、サンダースの外交政策ティームのメンバーであったジョセフ・シリンショーンは、サンダースの支持者たちの態度に衝撃を受けていると述べた。シリンショーンは、サンダースがこれほど困らされ侮辱されている姿を見たことがなかったと本誌の取材に答えた。

 

 シリンショーンは、フィラデルフィアでは抗議活動をする人々は大声で叫ぶだろうと予想した。しかし、と彼は続けて、「彼らはサンダース支持者の大部分を代表する人たちではなく、大部分はヒラリー・クリントンが木曜日に指名受諾演説を行う前に既に、彼女を支持するだろう」と述べた。

 

 彼らは民主党全国委員会のEメールのリークにばかり関心を払い、ロシアが後ろについているハッカーたちがEメールをハッキングしたという疑惑には関心を払っていない、とシリンショーンは述べている。

 

 「これは前代未聞のことだ。1800年代初めのフランスのようだ。私たちは大統領選挙に対するあからさまな外国からの干渉が行われているのを目撃している。ロシアが何を望み、ドナルド・トランプが当選することが何を意味するのかについて全てのアメリカ国民に対して警報を発するべきだ」とシリンショーンは語った。

 

(終わり)







このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

 古村治彦です。

 

 今回はアメリカ大統領選挙に絡んで、アメリカ民主党の党政策綱領草稿の中で、特に国際関係に絡む部分を読んでいきたいと思います。党綱領は大統領選挙が行われる4年に1度の民主党全国大会で採択されるもので、民主党候補が大統領になった場合の施政方針となるものです。

 

 今回のアメリカ大統領選挙民主党予備選挙では、ヒラリー・クリントン前国務長官とバーニー・サンダース連邦上院議員が激突し、ヒラリー・クリントンが何とか勝利を収めました。しかし、バーニー・サンダースも多くの代議員を獲得したことで、来たる民主党大会でも大きな発言力を持っています。

 

 今回の党大会では、党綱領(Platform)が採択されるのですが、この党綱領作成委員会にはバーニー・サンダース支持の人々も半数近くを占め、バーニー・サンダースの主張が多く反映されるものとなりそうです。最低賃金の引き上げや学生の債務などに関しては、サンダースの主張が採用されています。また、アメリカの中央銀行である連邦準備制度(Federal Reserve SystemFRS)に関しては、金融業界(ウォール街)への規制を強めることが盛り込まれました。

 

 しかし、環太平洋経済協力協定(TPP)に関しては、バーニー・サンダースは反対していたのですが、反対ということは盛り込まれず、「アメリカの労働者の雇用と労働環境を守る」という内容になりました。

 

 以下のアドレスで民主党の党綱領草稿を見ることが出来ます。

 

=====

 

2016 Democratic

Party Platform

DRAFT

July 1, 2016

 

https://demconvention.com/wp-content/uploads/2016/07/2016-DEMOCRATIC-PARTY-PLATFORM-DRAFT-7.1.16.pdf#page=1&zoom=auto,-265,798

 

=====

 

 今回は、国際関係に関する部分を見ていきたいと思います。

 

目についたのは、党綱領の中で、「原理原則に則った、信念のある指導者像(Principled Leadership)」というセクションを設け、この中で民主党オバマ政権下での業績を強調し、ドナルド・トランプを批判している部分です。

 

 まずここで、民主党は、「アメリカの経済を成長させ、国益を守り、安全で繁栄した国にするために」、アメリカは世界をリードしていかねばならないと規定しています。これは、トランプのアイソレーショニズム(国内問題解決優先主義)と真っ向から対立する、グローバリズムを掲げています。そして、同盟諸国のネットワークは、アメリカにとっての重荷ではなく、戦略的に大きな利益をもたらす存在であるとしています。そして、アメリカの軍事力を使うのは最後の手段であって、そのためには軍の派遣のための条件が明確に整っていなければならないと述べています。

 

 ここで、過去8年間のバラク・オバマ政権ではこれらの原理原則に則って、重要な前進を遂げたと述べています。オサマ・ビン・ラディンに正義の鉄槌を下し、アルカイーダの中核となる指導部を殲滅し、どん底だった経済を建て直し、各国との同盟関係を改善し、キューバとの国交回復、イランとの核開発を巡る合意も実現したと述べています。これらの成果は上の段に挙げた原理原則に則って実現されたとしています。

 

 そして、これからの課題として、テロとの戦い、気候変動への対処、中国の台頭への対処、インターネット上の安全保障の強化を挙げています。

 

 民主党は、党綱領で、ドナルド・トランプを「民主、共和党両党の歴史の中で、最も大統領に適さない候補者」と非難しています。その理由として、「①もっと多くの国に核兵器を持たせる(日本と韓国の核兵器保有を認める発言がありました)、②アメリカ軍に戦争犯罪に関与させる(テロリストの家族の殺害や拷問を擁護する発言がありました)、③人種、宗教、出身に基づいて人々をアメリカに入国させないようにするために壁を作る(メキシコ国境に壁を作れ、イスラム教徒を入国禁止にしろという発言がありました)、④気候変動やISのような脅威に対処する戦略を持っていない、⑤同盟諸国を見捨て、敵を強化しようとしている」といったことが挙げられています。

 

 更に、ドナルド・トランプは、アメリカが弱く、情けない状態になっていると考えていると指弾し、アメリカは世界で最も大きな経済を持ち、軍隊を持ち、独自性を持つ国で、アメリカの価値観が世界の秩序を作っているとしています。そして、「私たちは壁の後ろに隠れているような国ではない」とトランプを揶揄しています。

 

 全体としては、民主党は、トランプに対して、「無責任で、行き当りばったり、原理原則のない人物」であって、「とうてい大統領にはふさわしくない」と批判しています。

 

 国際関係については、「世界規模の脅威に対峙する(Confront  Global  Threats)」と「世界のリーダーとして(A Leader in the World)」という2つのセクションを設けています。

 

 現在の世界規模の脅威として、テロ、イラン、北朝鮮、ロシア、インターネット公益からの安全対策、核拡散、気候変動を挙げています。アメリカと同盟諸国の平和を守るために、外交と発展援助計画を中心とするアメリカの国力をすべて利用する、戦争は最終的な手段だと述べています。

 

 テロに関し、まずISやアルカイーダを挙げ、これらを打ち破り、これ以上テロ組織が出てこないようにすると述べています。そのために、ISがシリアとイラクで支配している地域を奪還することを目的に、同盟諸国、特にペルシア湾岸諸国の地上軍派遣を求めています。また、2001年に認められた「アメリカ議会軍事力使用権威の承認(Congressional Authorization for Use of Military Force)」(緊急時には大統領がアメリカ軍を派遣することを決定できる権限を議会が与えるもの)の更新をするとも述べています。これは、最終的にはアメリカ軍の派遣も視野に入れた内容です。

 

 シリアについては、ISを打倒し、シリアの反体制勢力、国際社会、地域の同盟諸国をまとめ、交渉によってアサド政権の終焉に向かうようにすると述べています。そして、シリアとイラクの戦いで苦しんでいる市民たちへの援助を行うために国際社会をリードするとしています。

 

 アフガニスタンには、NATO主導の同盟諸国と一緒に、民主的に選ばれた政府の成立の手助けし、その政府がテロと戦えるようにすると述べています。パキスタンにも圧力をかけ、パキスタン国内にテロリストを匿わないようにさせるとしています。

 

 民主党は、テロとの戦いを進めるが、自分たちに害をもたらすような戦術は使わないとしています。ドナルド・トランプのイスラム教徒への中傷を否定するとしています。トランプの中傷は、アメリカの基礎となっている宗教の自由を侵害し、ISの極悪な主張を助長し、テロを打ち破るために重要な人物や国家を孤立させると述べています。

 

「トランプは、テロリストと疑わしい人物の家族を殺し、捕虜を拷問せよと提案し、アメリカ軍に戦争犯罪に加担するように求めているが、我々はこれを拒絶する」と述べています。その理由として、トランプの提案は、アメリカの諸原理に反し、道徳を低下させ、無実の人々の生命を失わせ、アメリカ国民を危険に晒すといったことを挙げています。また、ドナルド・トランプは、中東において間違った指導の下で行われる戦争で多くのアメリカの将兵の命を無駄にしようとしているがそれも拒絶すると述べています。

 

 オバマ政権はイランとの核開発を巡る合意を達成しました。これについては支持し、その実施を強く求めています。トランプはこの合意を破棄すると述べていますが、これについては否定しています。同時に、イランに対しては、テロ支援、人権侵害、ホロコーストの否定、イスラエル打倒といった問題があるために、経済制裁を含む断固たる措置を取ることもあると表明しています。

 

北朝鮮に関しては「地球上でもっとも抑圧的な体制」であろうと述べています。トランプが金正恩委員長は若くして政権の座につき、政敵を粛清してきたことを肯定的に述べ、彼と会っても良いと述べたことを捉え、「トランプは北朝鮮の独裁者を称賛し、日本と韓国、2つの同盟諸国を見捨て、アジアに核兵器の拡散をさせようとしている」と批判しています。そして、党綱領では、中国に圧力をかけて、北朝鮮に核開発とミサイル開発を止めさせるとしています。

 

 ロシアは、近隣諸国に対して状況を不安定にさせる行動を取っているとしています。ウクライナの主権を侵害し、アメリカの国益を損なうような影響圏の再構築を行っていると述べています。また、シリアのアサド政権を援助していると批判しています。そして、ここでもトランプを批判していて、「トランプは毎日テロと戦っているNATOを見捨て、ロシアのプーティン大統領と協力することで、50年以上続けられてきたアメリカの外交政策を転換しようとしている」と述べています。しかし、同時に、プーティンと協力して、米ロの核兵器の削減、イランの核開発プログラムの廃棄、北朝鮮への経済制裁、アフガニスタンへの米軍の再派遣と言った問題を解決する用意があるともしています。「ロシアが周辺に拡大することは認めないが、私たちに協力せよ」ということのようです。

 

 核不拡散について、ドナルド・トランプを批判しています。「ドナルド・トランプはアジアと中東における核兵器の拡散を促進し、核不拡散条約を弱め、ISに対する核兵器使用を排除していない」と述べています。そして、核兵器、化学兵器、生物兵器と運搬手段の世界への拡散を防止したいと述べています。

 

 気候変動に関しては国家安全保障にとっての喫緊の課題であるとしています。北極圏地域における環境保護に力を入れると述べています。ここでもトランプを批判しており、「トランプは気候変動を“ウソ”で中国人のためにこのようなことを言っているのだと述べているが、それは正しくない」と述べています。

 

最後に、民主党綱領では、世界をいくつかの地域に分けて、アメリカがどのような役割を果たすかということを述べています。

 

まず出てくるのは、アジア太平洋地域です。ここが最初に出てくるのは、ヒラリー政権が最も重視する地域であることを示しています。

 

まず、太平洋からインド洋にかけて、オーストラリア、日本、ニュージーランド、フィリピン、韓国、タイ(アルファベット順)といった同盟諸国との関係を強化すると述べています。インドとは長期にわたる戦略的関係を築いていくとも述べています。これはアメリカの対中政策にとって重要な事と言えます。

 

この地域の問題として、南シナ海の自由航行権をも待むこと、北朝鮮の攻撃的姿勢に対抗すること、中国がルールに従って行動するようにさせることを挙げています。中国に対しては、不公平な貿易慣習、通貨操作、インターネット上の攻撃に対処し、中国の人権状況、特にチベット人の人権状況を改善するようにするとしています。

 

 民主党は、「一つの中国」政策と台湾関係法を守り、台湾海峡問題の平和的解決を目指すとしています。その際に、台湾の人々の希望と最大の利益を一貫して考慮すると述べています。

 

 アジア太平洋に関しては、同盟諸国との関係を深めながら、中国に対峙するという姿勢を鮮明にしています。中国軍には直接的な言及はありませんが、経済や人権の面で、中国に対して、中国がおいそれと受け入れることのできないことを求めています。

 

 中東に関しては、イラクとシリアのISの支配地域を奪還すること、難民を迎え入れているレバノンとヨルダンに支援を与えること、湾岸諸国との間で安全保障面での協力関係を維持すること、経済的機会と自由を求める人々を支援することを課題としています。

 

 イスラエルは、戦略的な利益と民主政治体制、平等、寛容、多元主義といった価値観を共有しているので、アメリカにとって重要な国だと述べています。そして、イスラエルの自衛権を常に支持するとしています。

 

 イスラエル・パレスチナ紛争の二国共存による解決のために二国間の直接交渉を進めるとしています。二国共存によって、イスラエルは、確定した国境を持つ安全な、そして民主的なユダヤ国家としての将来を保証し、パレスチナの人々に独立した、主権を持つ、尊厳を持つ国家を与えると述べています。イェルサレムは交渉の最大の難関とし、イェルサレムはイスラエルの首都であるべきで、全ての宗教の聖地だと述べています。

 

 中東に関しては、まずISとの戦いを掲げ、そのために中東地域の湾岸諸国の関与を強く求めています。そして、オバマ政権下で、関係が悪化したイスラエルを重視する姿勢を鮮明に打ち出しています。

 

ヨーロッパはアメリカにとってかけがえのないパートナーであり、世界の安全保障の礎石であるとしています。民主党は、ロシアの進攻、ヨーロッパ南部の安全保障の脅威、経済的・社会的変化への対応のために、ヨーロッパの同盟諸国を援助すると述べています。トランプは、「ヨーロッパとNATOの同盟諸国を見捨てると言い、同時にロシアのプーティン大統領を賞賛している」と批判しています。

 

 NATO同盟諸国は、2001年9月11日の同時多発テロ発生後、北大西洋条約第5項(1カ国に対する攻撃は加盟国すべてへの攻撃と見なす)を史上初めて発効させた。アメリカは、NATOの集団安全保障を維持すると述べています。

 

 ヨーロッパに関してはNATOの枠組みを崩さないことを明確にしています。イギリスがEUからの脱退を表明し、ヨーロッパの連帯が揺れている状況ですが、アメリカが率いるNATOの枠組みで集団安全保障を維持していくとしています。

 

 南北アメリカ大陸については、「アメリカにとっては戦略的、経済的、文化的に重要な地域」としています。民主政治体制の促進、経済の発展、麻薬、犯罪、汚職への対処といった問題を挙げ、これらへの対処を謳っています。キューバに関しては、国交を回復したが、これからも民主政治体制と人権擁護を求めていくとしています。また、ヴェネズエラについても同様のことを述べています。「私たちは、ドナルド・トランプが述べているような南の国境に壁を作ることはしない」と述べています。

 

 民主党綱領は、アフリカを「世界で最も経済成長が速い国が多くある」と述べています。そして、アフリカ連合(AU)と協力しながら、オバマ政権時代と同様に、貿易関係を強化し、経済発展や投資、開発や健康などで協力していくとしています。更には地域のテロ組織の壊滅への努力を継続すると述べています。

 

 世界経済については、「ドナルド・トランプは我が国の債務を支払い停止(デフォルト)にして、世界経済を危険に晒し、危機を引き起こすことになる」と批判し、民主党は、パートナーと協力して、金融危機が起きないように努力すると述べています。

 

 民主党綱領では、国際機関や多国籍組織がアメリカの強さと影響力を高める存在であるとしています。これらの機関や組織には改革が必要であるが、ドナルド・トランプが述べているように、これらの機関を放棄することはないと述べています。

 

 民主党はアメリカが戦後に作った国際政治の枠組みを維持するという姿勢を明確にしています。国際機関や地域の多元的な枠組みを重視し、それらを使いながら、アメリカの国益を追求するということになります。日本に関して言えば、中国の台頭に対処するための同盟諸国のネットワークの鎖の輪のひとつとして役割を果たすことが求められています。

 

 アメリカからの要求もあって、日本は安保法制を成立させ、改憲に向かって進んでいます。世界の大きな流れからこうした動きが出てきているという理解をすることが重要であると思います。

 

(終わり)







このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

このページのトップヘ