古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。よろしくお願いします。

タグ:バーニー・サンダース

古村治彦です。

 

 前回(2016年7月6日)から、アメリカ大統領選挙で、民主党の大統領選挙候補者に内定したヒラリー・クリントン、共和党の大統領選挙候補者に内定したドナルド・トランプの選挙資金について見ています。前回同様も、今回もアメリカの非営利団体「応責政治追求センター(Center for Responsive Politics)」のウェブサイトの数字を参考にします。

 

※「応責政治追求センター(Center for Responsive Politics)」のウェブサイトのアドレスは以下の通りです↓

https://www.opensecrets.org/pres16/
 

 集められたお金がどのように使われているか、ということも気になるところです。上記の応責政治追求センターのサイトではいくつかの項目に分けて支出先も書かれています。これを見ると、ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの間には特徴的な違いがあることが分かります。

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ヒラリー陣営の支出 © Center for Responsirve Politics

 ヒラリー陣営で大きな割合を占めるのは、メディアと人件費です。メディアの中には、テレビや新聞の広告やインターネットのデザインなどが含まれます。目を引くのは、人件費の大きさです。トランプ陣営では、人件費の項目がありません。これは他の項目の中に入れていることも考えられますが、ヒラリー陣営の人件費の大きさは突出しています。これは、彼女が自分の子飼いと民主党系のエリート人材を根こそぎ雇ったことが影響していると思われます。人件費が4400万ドル(約45億円)というのは凄まじいものです。

 

 外交分野の専門家の話になりますが、バーニー・サンダースが陣営に外交政策の専門家を招きいれようとしたところ、有名どころ、めぼしい人材はあらかたヒラリー陣営に入っていて、外交政策担当ティームが結成できるかどうか危ぶまれたほどでした。

 
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トランプ陣営の支出© Center for Responsirve Politics
 

 トランプ側では、戦略・研究部門への支出がなされていますが、これは、トランプ陣営が選挙戦の戦い方を学びながらここまで勝ち抜いてきたことを示しています。アマチュアたちが始めた戦いがここまで大きくなったというところにトランプ旋風の大きな特徴があります。

 

 次にヒラリー、トランプ両陣営の大口献金者のリストを見てみたいと思います。政治献金は個人や団体問わず年間5000ドルまでという制限が付けられています。しかし、前回説明したように、スーパーPACに対する献金は表現の自由の観点から、無制限となっています。

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ヒラリー陣営の大口献金者リスト
© Center for Responsirve Politics

 

 ヒラリー陣営の大口献金者には、金融に従事するニューヨークを本拠とするユダヤ系の人々が多く名前を連ねています。リストには会社の名前になっていますが、一番目には、ハイム・サバン、3番目にはジョージ・ソロスが名前を連ねています。一方、ドナルド・トランプの方には、こちらもニューヨークを本拠とするユダヤ系が名前を連ねていますが、こちらは不動産や小売業に従事している人々です。トランプの婿であるジャレッド・クシュナーのクシュナー家(不動産)やフィリップ・プレヴィスキー(フィリップス・インターナショナル、不動産)が入っています。

 次にヒラリーを最後まで苦しめ、民主党の政策綱領に多くの政策を反映させた、バーニー・サンダース連邦上院議員について見ていきたいと思います。

 サンダースは自分に直接関係のないスーパーPACへの献金を含め2億2280万ドル(約230億円)を集めました。スーパーPACへの献金は70万ドル程度ですから、2億220万ドルは自身の選挙委員会に集まったものです。

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サンダースの献金種別 
© Center for Responsirve Politics

 

 サンダースへの献金の60%が小口献金で、40%が大口献金です。社会主義者を自称したサンダースを、一般の人々が支持したことがこれから分かります。

 

 州別で見てみると、カリフォルニア州、ニューヨーク州、ワシントン州、マサチューセッツ州から多くの献金を受けています。3位のワシントン州、4位のマサチューセッツ州は共に民主党が強く、リベラルな気風で有名な州です。また、マサチューセッツ州は、サンダースの地盤であるヴァーモント州の近くにあります。

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サンダースの献金の州別グラフ 
© Center for Responsirve Politics

 

 次にサンダースには、どのビジネス分野からの献金が多かったかを見ていきます。ヒラリーやトランプでは金融や不動産が上位にきましたが、サンダースにはそういう巨額の献金を行う業界からの資金はほとんど流れていませんでした。教育関係や医療関係というのは、先生や看護師といった人々がサンダースを支えていたことがあります。
 
 

 次に大口献金者について見てみたいと思います。リストを見ると分かりますが、アメリカを代表する大企業や連邦政府機関の名前が並んでいます。1位はカリフォルニア大学が来ています。これは、これらの大企業や機関が全体で献金したということではなくて、職員たちが組合などを通じて献金したということです。アメリカの大企業や連邦政府機関には、高学歴でリベラルな人たちが働いており、トランプ支持者たちは真逆であるということが言えます。

  

 サンダース陣営の支出について見てみたいと思います。支出先の半分以上を占めるのは、メディアでした。これは広告宣伝に力を入れていたということです。人件費や事務経費などが少ないのは、ヴォランティアが多かったことと、ヒラリー陣営のように高名な専門家たちを雇っていなかったことを示しています。

 

 かなり間があって2回にわたって、ヒラリー・クリントン、ドナルド・トランプ、バーニー・サンダースの政治資金について簡単に見てきました。ヒラリーは潤沢な資金を使っての横綱相撲、トランプは意外と少ない政治資金で共和党予備選挙を勝ち抜き、さすが嗅覚の鋭いビジネス感覚の持ち主であることを証明し、サンダースは、全米のリベラル派からの支持を受けて、ヒラリーに負けないほどの資金を集めることが出来たということ分かります。

 

 本選挙投票日まで100日を切りました。ヒラリー、トランプ両陣営はこれから総力戦で相手を叩きつぶしにいきます。政治資金では圧倒的にヒラリーが有利ですが、トランプはその優れた嗅覚で、ヒラリーの弱点を徹底的に突いていくことでしょう。その際に、彼は自分の声を直接届けることが出来るツイッターを利用します。このツイッター利用では、トランプに一日の長があります。ツイッター利用にはお金がかかりませんから、お金があろうがなかろうが全く関係ありません。アイディアとひらめきの勝負です。この点では、トランプがヒラリーを大きくリードしています。

 

 2016年のアメリカ大統領選挙はますます目が離せなくなっていきます。

 

(終わり)





 
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 古村治彦です。

 

 2016年7月25日(日本時間だと26日)から民主党全国大会が始まりました。バーニー・サンダース支持者の野次とブーイングが響く中で、不穏な空気を伴いながら、演説が続きました。ミッシェル・オバマ大統領夫人、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員、バーニー・サンダース連邦上院議員が演説を行いましたが、この不穏な空気は払しょくされませんでした。ヒラリー・クリントン自身は姿を見せず、夫のビル・クリントン元大統領とティム・ケイン副大統領候補の姿がありました。

 

 これだけ不穏な空気になったのは、先週の金曜日にウィキリークスが、民主党全国委員会のEメール2万通をリークし、その中に、バーニー・サンダースの予備選挙での躍進を妨害したいという内容のものが含まれていたことが導火線になりました。サンダースの名前を出さないで、「候補者が困るような質問が出来ないか」といった内容のEメールがありました。こうしたEメール2万通は匿名の人物からウィキリークスに送られてきたということです。

 

 その中には、デビー・ワッサーマン=シュルツ民主党全国委員長(フロリダ州選出連邦下院議員)のEメールも含まれていました。彼女はヒラリーが勝つべきだという内容のEメールをヒラリー支持の全国委員会のスタッフに出していました。民主党全国委員会がヒラリーに肩入れをしているという非難は予備選挙中ずっとサンダース支持者たちから上がっていました。少なくとも公正中立であるべき予備選挙実施団体のトップがスタッフが、ヒラリーを支持していたということが明らかになって、サンダース支持者の怒りは頂点に達しました。

 

 ワッサーマン=シュルツは全国大会後の委員長辞任を発表しましたが、サンダース支持者はこれでは収まらないでしょう。民主党特有の制度である特別代議員制度の撤廃をはじめとする民主党内部の改革を求めるでしょう。そして、これが不十分に終わるなら、ヒラリーには投票しないということになり、ヒラリーの大統領選挙当選は危うくなります。

 

 民主党予備選挙は、伏兵のバーニー・サンダースが大躍進し、善戦し、ヒラリーを追い詰めました。サンダース支持者はヒラリーがイラク戦争に賛成したこと、国務長官時代にリビアのベンガジで失敗したことやISの台頭を許したことを批判してきました。これはトランプ支持者と同じ主張となります。ですから、彼らの中にはトランプへ投票する人たちも出てくるでしょう。もしくは第三党である緑の党のジル・スタインに投票する人が多くなるでしょう。共和党側で言えば、リバータリアン党のゲイリー・ジョンソンに投票する人たちが出てくるのと同じです。

 

 民主党としては、サンダース支持者に対して、改革を約束し、全国委員会の幹部スタッフを更迭するという低姿勢を見せながら、「皆さんはドナルド・トランプを勝たせて、大統領にしてもいいのですか」と訴えることしかできません。「ヒラリーとトランプでどちらがよりましですか」と彼らに聞くしかありません。しかし、彼らにとって恐ろしいことは、「ネオコンに近いヒラリーよりも、トランプの方がましだよ」と答える人たちが出てくるであろうということです。

 

 おそらく、サンダース支持者たちの過半数は、「トランプも酷いし、ヒラリーに入れるしかないか」といやいや、渋々、目に涙を浮かべながら、ヒラリーに投票するでしょう。

 

 私は「8対2」でヒラリー優勢だと考えてきましたが、2つ目のEメール問題で、「6対4」でヒラリーやや優勢の状況になったと考えています。トランプはここを先途と、サンダース支持者を対象に切り崩しの攻撃を行い、「サンダースと闘うはずだった、それならタフな闘いになっただろう。私はサンダースの敵ではない、サンダースの敵はヒラリーと民主党だ」「予備選挙自体が無効なのだから、ヒラリーを民主党の大統領選挙候補者としては認めない」という発言をするでしょう。

 

 民主党とヒラリーは防戦として、「差別主義者で生まれながらの金持ちであるトランプをあなたは支持するのですか」「女性を侮辱し続けてきたトランプを選ぶのか、女性でも大統領になれることを証明することに参加するのか、どちらですか」といった主張を行うでしょう。また、「人権抑圧国で、周辺国への侵略を行っているロシアに対してトランプは友好的だ。ヒラリーは厳しい態度で臨むと言っているので、このような謀略を仕掛けられたのだ。あなたは外国による選挙への介入を許しますか」という訴えも行うでしょう。

 

 私としては、民主党大会後の激戦州の世論調査の結果を注視したいと思います。その数字でまた私なりの予想を変えねばならないと思います。

 

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サンダースの支持者たちは、民主党全国委員会Eメールリーク事件で民主党の団結は崩れないと述べているが、抗議者たちはそうではないと叫んでいる(Sanders Backers Say DNC Leak Won’t Unravel Party Unity Bid — Protesters Say Otherwise

 

モーリー・オトゥール筆

2016年7月25日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/07/25/sanders-backers-say-dnc-leak-wont-unravel-party-unity-bid-protesters-say-otherwise/

 

フィラデルフィア発。民主党は、クリーヴランドで開催された共和党全国大会は決定的なものとなったと述べた。

 

 ヴァ―モント州選出連邦上院議員バーニー・サンダースの支持者たちは、ブーイングと「ノー」の叫び声の大合唱を行った。これは予備選挙で次点に終わったサンダースが彼が獲得した代議員たちに対してヒラリー・クリントンを支持し、ドナルド・トランプを倒すために団結して努力しようと述べた時に起きた。民主党全国大会を前にしてこのようなことが起きているのは前代未聞のことだ。フィラデルフィアでの民主党全国大会のテーマが「団結してより強く」であるのはあまりにも皮肉めいている。

 

 先週金曜日にリークされた20000通の民主党全国委員会のEメールは、2016年の米大統領選挙について影響を与えるためにロシアのハッカーたちによってリークされたと考えられている。サンダースの主要な支持者たちは、民主党全国委員会がサンダースに対して妨害活動をしていたことをEメールが示しているが、他のサンダース支持者たちがヒラリー・クリントンに投票することを妨げないと述べている。しかし、フィラデルフィアに集結しているサンダースが獲得した代議員と講義をしている人々は全く別のことを叫んでいる。

 

 サンダースは、民主党全国大会が開催されるスタジアムから数キロ離れた集会場に集まった彼が獲得した代議員たちに対して「今まさに、私たちはドナルド・トランプを打ち倒さねばならない」と語った。サンダースは月曜日の夜に民主党全国大会で基調演説を行う予定だ。サンダースは更に「私たちはヒラリー・クリントンとティム・ケインを当選させねばならない」とも述べた。

 

 サンダースが発言を続ける中で、集まった人々は「兄弟たち、姉妹たち、これが私たちの生きている現実世界だ」と叫んだ。

 

 現実世界は、ウィキリークスが民主党全国委員会のEメールをリークしたことによって衝撃を受けている。サンダースが彼の代議員たちを前に演説している最中に、民主党全国委員会のデビー・ワッサーマン=シュルツは『オーランド・サン・センティネル』紙の取材に対して、月曜日の午後に4日間にわたって行われる民主党全国大会の開会宣言を行う大役を辞退すると述べた。フロリダ州選出の連邦下院議員であるワッサーマン=シュルツは日曜日に、全国大会でのいくつかの仕事をこなした後に委員長職を辞任すると表明した。

 

 民主党全国委員会と独立系のアナリストたちは複数のハッカーに対するEメールのリークは、ロシア政府との関係があるのではないかと疑いを持ち調査を行っている。ここ数時起きていることはまさにロシア政府が意図したことであると彼らは考えている。民主党内部の亀裂がどんどん大きくなることでヒラリーへの支持は下がり、トランプにとっては大きな後押しとなる。トランプは共和党の大統領選挙候補者で、彼の選挙戦とビジネスはロシアに対して友好的であった。

 

 フィラデルフィアで抗議活動をする人たちを鎮める方法はない。また、全国大会会場で、ヒラリーと民主党全国委員会に対する反対を明確に記録に残すために候補者指名方法に関して動議を出す計画をサンダース派の代議員たちが出すことを止めることもできないだろう。彼らはヒラリーが不当に依怙贔屓をされて予備選挙に勝ったと不公平感を強めている。

 

 ジム・ゾグビーはサンダースの外交政策顧問であった。ゾグビーは、「民主党全国委員会はEメールのリークにおけるロシアの役割ばかりを強調しているが、銀行強盗をやった人物が、自分を警察に密告した人に文句を言っているようなものだ」と述べた。

 

 「これはよくある行動パターンだ。民主党全国委員会側はこれまで私を非難してばかりきたが、私はそんなバカなことはしてこなかった、他人に自分の間違いの原因を押し付けたりしなかった」と本誌の取材に対して答えた。集会所の外にはサンダース支持者が多数詰めかけていた。

 

 ゾグビーは、アラブ・アメリカン研究所の所長で、フィラデルフィアには特別代議員としてやって来た。また、民主党政策綱領作成委員会の委員であった。彼は長年にわたり、民主党全国委員会のメンバーだが、彼は、サンダースの支持者がヒラリー支持に移る純部は出来ていないと述べた。

 

 「彼らは民主党内のエスタブリッシュメントではない。何が起きるかは分からない」とゾグビーは述べた。

 

 ゾグビーは、サンダースとヒラリーの間には多くの問題で相違点があることは明らかで、これがサンダースの熱心な支持者たちを動かしているので、彼らがドナルド・トランプを倒すことに力を傾けるようには今のところなってはいない」と述べた。

 

 ジャスティン・モリットは月曜日に開催されたサンダースの代議員たちの集会に参加した。モリットはロビン・フッドの帽子をかぶり、自分がサンダースの代議員であることを示していた。彼はコネチカット州の労働組合活動家だ。彼は、サンダース支持者がヒラリー支持に合流できないのは、Eメールスキャンダルのせいではなく、彼女の外交政策がネオコンと同じであることだと述べた。

 

 モリットは「ロシア人を非難するのは簡単だが、今は冷戦下の1985年ではない」と本誌の取材に対して述べた。「問題はリークされたかどうかではなく、Eメールの中身だ。もっと大事なことは、彼女の外交政策だ。彼女の政策によって中東は不幸に見舞われた」とも語った。

 

 ホセ・ナヴァレットは学生で、パートタイム警察官候補生だ。彼はカリフォルニア州サンフェルナンドヴァリーからサンダースの代議員としてフィラデルフィアにやって来た。ナヴァレットは11月には第三党の候補者に投票すると述べた。

 

 ワッサーマン=シュルツが委員長を辞任するだけでは十分ではないとナヴァレットは述べた。

 

 「もし彼らがサンダース支持者の支持を得たいと思うのなら、民主党を本当に改革しなければならない」とナヴァレットは述べた。

 

 「私たちの目を開かせるために外国の力を使うのはどういうことだろう?私たちに何が起きているかを教えるのがロシア人だったのは悲しいことだ」とも述べた。

 

 しかし、サンダースの外交政策ティームのメンバーであったジョセフ・シリンショーンは、サンダースの支持者たちの態度に衝撃を受けていると述べた。シリンショーンは、サンダースがこれほど困らされ侮辱されている姿を見たことがなかったと本誌の取材に答えた。

 

 シリンショーンは、フィラデルフィアでは抗議活動をする人々は大声で叫ぶだろうと予想した。しかし、と彼は続けて、「彼らはサンダース支持者の大部分を代表する人たちではなく、大部分はヒラリー・クリントンが木曜日に指名受諾演説を行う前に既に、彼女を支持するだろう」と述べた。

 

 彼らは民主党全国委員会のEメールのリークにばかり関心を払い、ロシアが後ろについているハッカーたちがEメールをハッキングしたという疑惑には関心を払っていない、とシリンショーンは述べている。

 

 「これは前代未聞のことだ。1800年代初めのフランスのようだ。私たちは大統領選挙に対するあからさまな外国からの干渉が行われているのを目撃している。ロシアが何を望み、ドナルド・トランプが当選することが何を意味するのかについて全てのアメリカ国民に対して警報を発するべきだ」とシリンショーンは語った。

 

(終わり)







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 古村治彦です。

 

 今回はアメリカ大統領選挙に絡んで、アメリカ民主党の党政策綱領草稿の中で、特に国際関係に絡む部分を読んでいきたいと思います。党綱領は大統領選挙が行われる4年に1度の民主党全国大会で採択されるもので、民主党候補が大統領になった場合の施政方針となるものです。

 

 今回のアメリカ大統領選挙民主党予備選挙では、ヒラリー・クリントン前国務長官とバーニー・サンダース連邦上院議員が激突し、ヒラリー・クリントンが何とか勝利を収めました。しかし、バーニー・サンダースも多くの代議員を獲得したことで、来たる民主党大会でも大きな発言力を持っています。

 

 今回の党大会では、党綱領(Platform)が採択されるのですが、この党綱領作成委員会にはバーニー・サンダース支持の人々も半数近くを占め、バーニー・サンダースの主張が多く反映されるものとなりそうです。最低賃金の引き上げや学生の債務などに関しては、サンダースの主張が採用されています。また、アメリカの中央銀行である連邦準備制度(Federal Reserve SystemFRS)に関しては、金融業界(ウォール街)への規制を強めることが盛り込まれました。

 

 しかし、環太平洋経済協力協定(TPP)に関しては、バーニー・サンダースは反対していたのですが、反対ということは盛り込まれず、「アメリカの労働者の雇用と労働環境を守る」という内容になりました。

 

 以下のアドレスで民主党の党綱領草稿を見ることが出来ます。

 

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2016 Democratic

Party Platform

DRAFT

July 1, 2016

 

https://demconvention.com/wp-content/uploads/2016/07/2016-DEMOCRATIC-PARTY-PLATFORM-DRAFT-7.1.16.pdf#page=1&zoom=auto,-265,798

 

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 今回は、国際関係に関する部分を見ていきたいと思います。

 

目についたのは、党綱領の中で、「原理原則に則った、信念のある指導者像(Principled Leadership)」というセクションを設け、この中で民主党オバマ政権下での業績を強調し、ドナルド・トランプを批判している部分です。

 

 まずここで、民主党は、「アメリカの経済を成長させ、国益を守り、安全で繁栄した国にするために」、アメリカは世界をリードしていかねばならないと規定しています。これは、トランプのアイソレーショニズム(国内問題解決優先主義)と真っ向から対立する、グローバリズムを掲げています。そして、同盟諸国のネットワークは、アメリカにとっての重荷ではなく、戦略的に大きな利益をもたらす存在であるとしています。そして、アメリカの軍事力を使うのは最後の手段であって、そのためには軍の派遣のための条件が明確に整っていなければならないと述べています。

 

 ここで、過去8年間のバラク・オバマ政権ではこれらの原理原則に則って、重要な前進を遂げたと述べています。オサマ・ビン・ラディンに正義の鉄槌を下し、アルカイーダの中核となる指導部を殲滅し、どん底だった経済を建て直し、各国との同盟関係を改善し、キューバとの国交回復、イランとの核開発を巡る合意も実現したと述べています。これらの成果は上の段に挙げた原理原則に則って実現されたとしています。

 

 そして、これからの課題として、テロとの戦い、気候変動への対処、中国の台頭への対処、インターネット上の安全保障の強化を挙げています。

 

 民主党は、党綱領で、ドナルド・トランプを「民主、共和党両党の歴史の中で、最も大統領に適さない候補者」と非難しています。その理由として、「①もっと多くの国に核兵器を持たせる(日本と韓国の核兵器保有を認める発言がありました)、②アメリカ軍に戦争犯罪に関与させる(テロリストの家族の殺害や拷問を擁護する発言がありました)、③人種、宗教、出身に基づいて人々をアメリカに入国させないようにするために壁を作る(メキシコ国境に壁を作れ、イスラム教徒を入国禁止にしろという発言がありました)、④気候変動やISのような脅威に対処する戦略を持っていない、⑤同盟諸国を見捨て、敵を強化しようとしている」といったことが挙げられています。

 

 更に、ドナルド・トランプは、アメリカが弱く、情けない状態になっていると考えていると指弾し、アメリカは世界で最も大きな経済を持ち、軍隊を持ち、独自性を持つ国で、アメリカの価値観が世界の秩序を作っているとしています。そして、「私たちは壁の後ろに隠れているような国ではない」とトランプを揶揄しています。

 

 全体としては、民主党は、トランプに対して、「無責任で、行き当りばったり、原理原則のない人物」であって、「とうてい大統領にはふさわしくない」と批判しています。

 

 国際関係については、「世界規模の脅威に対峙する(Confront  Global  Threats)」と「世界のリーダーとして(A Leader in the World)」という2つのセクションを設けています。

 

 現在の世界規模の脅威として、テロ、イラン、北朝鮮、ロシア、インターネット公益からの安全対策、核拡散、気候変動を挙げています。アメリカと同盟諸国の平和を守るために、外交と発展援助計画を中心とするアメリカの国力をすべて利用する、戦争は最終的な手段だと述べています。

 

 テロに関し、まずISやアルカイーダを挙げ、これらを打ち破り、これ以上テロ組織が出てこないようにすると述べています。そのために、ISがシリアとイラクで支配している地域を奪還することを目的に、同盟諸国、特にペルシア湾岸諸国の地上軍派遣を求めています。また、2001年に認められた「アメリカ議会軍事力使用権威の承認(Congressional Authorization for Use of Military Force)」(緊急時には大統領がアメリカ軍を派遣することを決定できる権限を議会が与えるもの)の更新をするとも述べています。これは、最終的にはアメリカ軍の派遣も視野に入れた内容です。

 

 シリアについては、ISを打倒し、シリアの反体制勢力、国際社会、地域の同盟諸国をまとめ、交渉によってアサド政権の終焉に向かうようにすると述べています。そして、シリアとイラクの戦いで苦しんでいる市民たちへの援助を行うために国際社会をリードするとしています。

 

 アフガニスタンには、NATO主導の同盟諸国と一緒に、民主的に選ばれた政府の成立の手助けし、その政府がテロと戦えるようにすると述べています。パキスタンにも圧力をかけ、パキスタン国内にテロリストを匿わないようにさせるとしています。

 

 民主党は、テロとの戦いを進めるが、自分たちに害をもたらすような戦術は使わないとしています。ドナルド・トランプのイスラム教徒への中傷を否定するとしています。トランプの中傷は、アメリカの基礎となっている宗教の自由を侵害し、ISの極悪な主張を助長し、テロを打ち破るために重要な人物や国家を孤立させると述べています。

 

「トランプは、テロリストと疑わしい人物の家族を殺し、捕虜を拷問せよと提案し、アメリカ軍に戦争犯罪に加担するように求めているが、我々はこれを拒絶する」と述べています。その理由として、トランプの提案は、アメリカの諸原理に反し、道徳を低下させ、無実の人々の生命を失わせ、アメリカ国民を危険に晒すといったことを挙げています。また、ドナルド・トランプは、中東において間違った指導の下で行われる戦争で多くのアメリカの将兵の命を無駄にしようとしているがそれも拒絶すると述べています。

 

 オバマ政権はイランとの核開発を巡る合意を達成しました。これについては支持し、その実施を強く求めています。トランプはこの合意を破棄すると述べていますが、これについては否定しています。同時に、イランに対しては、テロ支援、人権侵害、ホロコーストの否定、イスラエル打倒といった問題があるために、経済制裁を含む断固たる措置を取ることもあると表明しています。

 

北朝鮮に関しては「地球上でもっとも抑圧的な体制」であろうと述べています。トランプが金正恩委員長は若くして政権の座につき、政敵を粛清してきたことを肯定的に述べ、彼と会っても良いと述べたことを捉え、「トランプは北朝鮮の独裁者を称賛し、日本と韓国、2つの同盟諸国を見捨て、アジアに核兵器の拡散をさせようとしている」と批判しています。そして、党綱領では、中国に圧力をかけて、北朝鮮に核開発とミサイル開発を止めさせるとしています。

 

 ロシアは、近隣諸国に対して状況を不安定にさせる行動を取っているとしています。ウクライナの主権を侵害し、アメリカの国益を損なうような影響圏の再構築を行っていると述べています。また、シリアのアサド政権を援助していると批判しています。そして、ここでもトランプを批判していて、「トランプは毎日テロと戦っているNATOを見捨て、ロシアのプーティン大統領と協力することで、50年以上続けられてきたアメリカの外交政策を転換しようとしている」と述べています。しかし、同時に、プーティンと協力して、米ロの核兵器の削減、イランの核開発プログラムの廃棄、北朝鮮への経済制裁、アフガニスタンへの米軍の再派遣と言った問題を解決する用意があるともしています。「ロシアが周辺に拡大することは認めないが、私たちに協力せよ」ということのようです。

 

 核不拡散について、ドナルド・トランプを批判しています。「ドナルド・トランプはアジアと中東における核兵器の拡散を促進し、核不拡散条約を弱め、ISに対する核兵器使用を排除していない」と述べています。そして、核兵器、化学兵器、生物兵器と運搬手段の世界への拡散を防止したいと述べています。

 

 気候変動に関しては国家安全保障にとっての喫緊の課題であるとしています。北極圏地域における環境保護に力を入れると述べています。ここでもトランプを批判しており、「トランプは気候変動を“ウソ”で中国人のためにこのようなことを言っているのだと述べているが、それは正しくない」と述べています。

 

最後に、民主党綱領では、世界をいくつかの地域に分けて、アメリカがどのような役割を果たすかということを述べています。

 

まず出てくるのは、アジア太平洋地域です。ここが最初に出てくるのは、ヒラリー政権が最も重視する地域であることを示しています。

 

まず、太平洋からインド洋にかけて、オーストラリア、日本、ニュージーランド、フィリピン、韓国、タイ(アルファベット順)といった同盟諸国との関係を強化すると述べています。インドとは長期にわたる戦略的関係を築いていくとも述べています。これはアメリカの対中政策にとって重要な事と言えます。

 

この地域の問題として、南シナ海の自由航行権をも待むこと、北朝鮮の攻撃的姿勢に対抗すること、中国がルールに従って行動するようにさせることを挙げています。中国に対しては、不公平な貿易慣習、通貨操作、インターネット上の攻撃に対処し、中国の人権状況、特にチベット人の人権状況を改善するようにするとしています。

 

 民主党は、「一つの中国」政策と台湾関係法を守り、台湾海峡問題の平和的解決を目指すとしています。その際に、台湾の人々の希望と最大の利益を一貫して考慮すると述べています。

 

 アジア太平洋に関しては、同盟諸国との関係を深めながら、中国に対峙するという姿勢を鮮明にしています。中国軍には直接的な言及はありませんが、経済や人権の面で、中国に対して、中国がおいそれと受け入れることのできないことを求めています。

 

 中東に関しては、イラクとシリアのISの支配地域を奪還すること、難民を迎え入れているレバノンとヨルダンに支援を与えること、湾岸諸国との間で安全保障面での協力関係を維持すること、経済的機会と自由を求める人々を支援することを課題としています。

 

 イスラエルは、戦略的な利益と民主政治体制、平等、寛容、多元主義といった価値観を共有しているので、アメリカにとって重要な国だと述べています。そして、イスラエルの自衛権を常に支持するとしています。

 

 イスラエル・パレスチナ紛争の二国共存による解決のために二国間の直接交渉を進めるとしています。二国共存によって、イスラエルは、確定した国境を持つ安全な、そして民主的なユダヤ国家としての将来を保証し、パレスチナの人々に独立した、主権を持つ、尊厳を持つ国家を与えると述べています。イェルサレムは交渉の最大の難関とし、イェルサレムはイスラエルの首都であるべきで、全ての宗教の聖地だと述べています。

 

 中東に関しては、まずISとの戦いを掲げ、そのために中東地域の湾岸諸国の関与を強く求めています。そして、オバマ政権下で、関係が悪化したイスラエルを重視する姿勢を鮮明に打ち出しています。

 

ヨーロッパはアメリカにとってかけがえのないパートナーであり、世界の安全保障の礎石であるとしています。民主党は、ロシアの進攻、ヨーロッパ南部の安全保障の脅威、経済的・社会的変化への対応のために、ヨーロッパの同盟諸国を援助すると述べています。トランプは、「ヨーロッパとNATOの同盟諸国を見捨てると言い、同時にロシアのプーティン大統領を賞賛している」と批判しています。

 

 NATO同盟諸国は、2001年9月11日の同時多発テロ発生後、北大西洋条約第5項(1カ国に対する攻撃は加盟国すべてへの攻撃と見なす)を史上初めて発効させた。アメリカは、NATOの集団安全保障を維持すると述べています。

 

 ヨーロッパに関してはNATOの枠組みを崩さないことを明確にしています。イギリスがEUからの脱退を表明し、ヨーロッパの連帯が揺れている状況ですが、アメリカが率いるNATOの枠組みで集団安全保障を維持していくとしています。

 

 南北アメリカ大陸については、「アメリカにとっては戦略的、経済的、文化的に重要な地域」としています。民主政治体制の促進、経済の発展、麻薬、犯罪、汚職への対処といった問題を挙げ、これらへの対処を謳っています。キューバに関しては、国交を回復したが、これからも民主政治体制と人権擁護を求めていくとしています。また、ヴェネズエラについても同様のことを述べています。「私たちは、ドナルド・トランプが述べているような南の国境に壁を作ることはしない」と述べています。

 

 民主党綱領は、アフリカを「世界で最も経済成長が速い国が多くある」と述べています。そして、アフリカ連合(AU)と協力しながら、オバマ政権時代と同様に、貿易関係を強化し、経済発展や投資、開発や健康などで協力していくとしています。更には地域のテロ組織の壊滅への努力を継続すると述べています。

 

 世界経済については、「ドナルド・トランプは我が国の債務を支払い停止(デフォルト)にして、世界経済を危険に晒し、危機を引き起こすことになる」と批判し、民主党は、パートナーと協力して、金融危機が起きないように努力すると述べています。

 

 民主党綱領では、国際機関や多国籍組織がアメリカの強さと影響力を高める存在であるとしています。これらの機関や組織には改革が必要であるが、ドナルド・トランプが述べているように、これらの機関を放棄することはないと述べています。

 

 民主党はアメリカが戦後に作った国際政治の枠組みを維持するという姿勢を明確にしています。国際機関や地域の多元的な枠組みを重視し、それらを使いながら、アメリカの国益を追求するということになります。日本に関して言えば、中国の台頭に対処するための同盟諸国のネットワークの鎖の輪のひとつとして役割を果たすことが求められています。

 

 アメリカからの要求もあって、日本は安保法制を成立させ、改憲に向かって進んでいます。世界の大きな流れからこうした動きが出てきているという理解をすることが重要であると思います。

 

(終わり)







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 古村治彦です。


 今回から数回に分けて、アメリカ大統領選挙のお金の面を見ていきたいと思います。具体的には、民主党の大統領選挙候補者に内定したヒラリー・クリントン、共和党の大統領選挙候補者に内定したドナルド・トランプの選挙資金について見ていきます。アメリカの非営利団体「応責政治追求センター(Center for Responsive Politics)」のウェブサイトの数字を参考にします。

 

※「応責政治追求センター(Center for Responsive Politics)」のウェブサイトのアドレスは以下の通りです↓

https://www.opensecrets.org/

 

 今回は、大まかな金額や各候補者の政治献金の特徴について見ていきたいと思います。民主、共和両党では2016年1月からアメリカ各州やワシントンDCなどで予備選挙を行い、民主党はヒラリー・クリントン、共和党はドナルド・トランプが選挙を勝ち抜き、両党の大統領選挙候補者に内定しました。


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 アメリカの国土は約962万平方キロメートルで、日本の約25倍(約38万平方キロメートル)です。全米50州とワシントンDCで数か月にわたって予備選挙が行われましたが、実質的な選挙は昨年(2015年)後半から既に始まっていました。各候補者たちは、全米各地を飛び回り、演説をしたり、有権者たちと触れ合ったりしました。スタッフを雇い、移動する、これだけでも多額な費用が掛かります。また、テレビやラジオの宣伝にもお金がかかります。

 

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候補者たちが訪問した都市を追跡して出来た地図(予備選挙の最初のアイオワ州とニューハンプシャー州内を細かく訪問していることが分かる)

http://www.theatlantic.com/politics/archive/2016/06/mapping-the-america-political-candidates-actually-care-about/487166/?utm_source=atltw

 

 ここでスーパーPACと呼ばれる組織について説明したいと思います。アメリカでは、労働組合や企業、団体が直接政治家や政党に献金することが禁止されています。そこで、労働組合や企業は政治行動委員会(Political Action Committee)と呼ばれる政治資金団体を作り、そこを通して献金します。こうした政治家や政党に対する献金は個人で年間最高5000ドル(約50万円)までという上限が決められています。

 

 しかし、2010年にCitizens UnitedSpeechhow.orgという団体が連邦選挙管理委員会を訴えた裁判の最高裁判決で、政治家や政党、他のPACに献金しないのであれば、そのPACに対する献金額の上限はない、という判決が出ました。政治活動と言論活動の自由はアメリカ憲法で守られており、選挙の候補者や政党に献金するなどの活動をしなければ、その活動の自由は保障され、その活動に資金的な制限を加えることはおかしいということになりました。

 

これによって、スーパーPACと呼ばれる組織がたくさんできました。ちなみに、スーパーPACは、「独立した支出のみの委員会("independent-expenditure only committees")」とも呼ばれています。このスーパーPACは、候補者や政党とは直接関係ない存在として、側面から候補者や政党を支援する活動を行うことになります。主には、対立候補を誹謗中傷するテレビCMを流すなどの活動を行います。スーパーPACであれば献金に上限はありませんから、数億円単位でお金を出す人たちも出てきます。こうした人たちは、メガドナー(mega donor)と呼ばれます。

 

 アメリカ大統領選挙の候補者の場合、①自分の選挙委員会(campaign committee)に集まって使われるお金(candidate committee money)と、②自分を側面から支援してくれるスーパーPACに集まって支出される「外部資金(outside money)」の2つに分かれます。②の外部資金は候補者個人に流れることはありません。「スーパーPACは、志のある第三者が勝手にやっている」ということになります。

 

①企業、組織、団体(政治行動委員会を作る)・個人―(献金)→政党・候補者

 ※献金の上限は年間5000ドル

 

②企業、組織、団体、個人―(献金)→スーパーPAC

 ※表現の自由を根拠にして献金は無制限

 

 それではこれから、ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの政治資金について見ていきたいと思います。


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各候補者の選挙資金(薄い色が①、濃い色が②) © Center for Responsirve Politics

 

ヒラリー・クリントンは、①の選挙委員会に集まったお金が2億2930万ドル(約240億円)、②の外部資金が8481万ドル(約88億円)となっています。①、②共にだんとつの資金量です。ドナルド・トランプは、①の選挙委員会に集まったお金が6300万ドル(約67億円)、②の外部資金が329万ドル(約3億5000万円)です。ヒラリーとトランプを比べると、①のお金が4倍、②の外部資金が10倍となっています。

 

ちなみに、ヒラリーを最後まで苦しめたバーニー・サンダースを見てみると、①の選挙委員会に集まったお金が2億2222万ドル(約230億円)、②の外部資金が61万ドル(約6400万円)となっています。①の政治献金だけ見ると、トランプをかなり上回っています。共和党予備選挙は2016年5月3日のオハイオ州での予備選挙で、テッド・クルーズ連邦上院議員とジョン・ケーシック・オハイオ州知事が撤退を表明した時点で勝負がつきました。一方、民主党予備選挙はバーニー・サンダースが最後まで勝負を捨てませんでした。その結果、6月まで続きました。そのために、民主党側に政治資金が集まり、これだけの多額になったということは考えられます。

 

 トランプの政治献金で特筆すべきは、「これだけの金額で激戦の共和党予備選挙を勝ち抜いたことの凄さ」です。クルーズやマルコ・ルビオ連邦上院議員といった、大口献金者たちに人気のあったライヴァルたちを、表現は悪いですが、たったこれだけの資金で打ち倒したというのは、凄いことです。「お金をかけなくても選挙は勝てる、人々が何を求めているかをつかみ、タイミングを見極め、メディアをうまく使えば」ということになります。これは、ビジネスでも同じ事なのだろうと思います。トランプのビジネスの才能がいかんなく発揮されたのだと考えます。

 

不思議なのは、バーニー・サンダースにヒラリーに負けないほどの政治資金が集まったことです。スーパーPACの活動資金(②です)は、ヒラリーには全くかないませんが、直接の政治献金(①です)ではほぼ互角でした。サンダースは、社会主義者を自認し、多額の政治献金など集まらないのではないかと考えてしまいます。それが集まったのはどうしてなのかについては、大統領選挙の候補者ではないですが、後ほど見ていきたいと思います。

 

 それでは、次に個別の候補者たちの政治資金の特徴を見ていきたいと思います。


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ヒラリー・クリントンの選挙資金の内訳
© Center for Responsirve Politics


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ドナルド・トランプの選挙資金の内訳 © Center for Responsirve Politics

 

 ヒラリーの政治資金の特徴は、自己資金はゼロということです。そして、個人やPACの献金が占める割合が90%になっています。少額の献金者からの献金が21%、多額の献金者からの献金が79%となっています。トランプの政治資金の特徴は、自己資金が72%を占めるということです。そして、政治献金が占める割合は27%ですが、少額の献金者からの献金が20%、多額の献金者からの献金が7%です。トランプが「政治資金を受け取って、資金を出した人の言いなりになることはない」と常々言っていますが、その通りの結果になっています。そして、ヒラリーは大口献金者の言いなりだ、ウォール街の言いなりだという批判がなされますが、それをまた裏付けている結果です。

 

 次に面白い数字を見ていきたいと思います。「どの州の住む人々、本拠を置く企業や組織、団体から多く献金を受けているか」というものです。ヒラリーは、「カリフォルニア州(24%)、ニューヨーク州(22%)、イリノイ州(7%)、フロリダ州(6%)、その他(41%)」、トランプは、「カリフォルニア州(14%)、テキサス州(12%)、ニューヨーク州(11%)、フロリダ州(11%)、その他(51%)」となっています。


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ヒラリー・クリントンの選挙資金の内訳 © Center for Responsirve Politics


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ドナルド・トランプの選挙資金の内訳 © Center for Responsirve Politics

 

ヒラリーは連邦上院議員をしていた時の地盤であるニューヨーク州から多くの献金を受けています。これはウォール街の金融資本家たちからの献金であることは明白です。また、カリフォルニアのリベラルな金持ちたちから献金を受け取っています。トランプは自分が生まれ育ち、ビジネスで成功を収めたニューヨークは3番目となっています。トランプはテキサス州から多くの献金を受けているのが特徴的です。保守的な層からの支持を集めているということが出来ます。

 

カリフォルニア州、フロリダ州、ニューヨーク州、テキサス州、イリノイ州はそれぞれ、ロサンゼルスとサンフランシスコ、マイアミとオーランド、ニューヨーク、ヒューストンとサンアントニオとダラス、シカゴといった大都市を抱え、富裕層が多く居住しています。そうした人々が政治献金を出していること、富裕層が大きな影響をアメリカ政治に与えていることが分かります。

 

 次にどのようなビジネス分野からの献金が多いかということを見てみます。


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ヒラリー・クリントンの選挙資金の内訳 © Center for Responsirve Politics


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ドナルド・トランプの選挙資金の内訳 © Center for Responsirve Politics


 ヒラリーは、投資・証券の分野がトップです。2番目に退職者が来ます。6番目に非営利組織、7番目に労働組合が来ます。こういうところは民主党の候補者としての特徴ということになります。16番目に「親イスラエル」と出てきます。これは、イスラエルを支持する組織や団体からの献金です。ヒラリーはこれまで一貫してイスラエル支持を明らかにしてきました。中東和平でも、イスラエルを擁護する立場を貫いてきました。

 

トランプの場合は、退職者がトップにきます。トランプ支持者は保守的な姿勢の高齢者が多くいることを示しています。2番目にトランプと同業者の不動産がきて、3番目と4番目に医療系や様々な商売関係が来ています。これらは、人々を直接相手にするビジネスで、いわば裸一貫叩き上げの創業者が多くいます。そういう人たちからトランプが支持されていることが分かります。そして、ヒラリーはウォール街の影響を受けているという批判をまたここでもはっきり示すことになります。

 

 次回は、更にヒラリーとトランプの政治資金について詳しく見ていきます。また、バーニー・サンダースについても簡単に見ていきたいと思います。

 


(終わり)










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 古村治彦です。

 

 今回はアメリカ大統領選挙についての奇妙な動きについて書きたいと思います。

 

  私が翻訳しました『アメリカの真の支配者 コーク一族』(ダニエル・シュルマン著、講談社、2015年)は大変好評をいただいております。日本のマスコミでも「コーク一族」「コーク兄弟」という単語が使われるようになりました。私も今週発売の『週刊朝日』で、翻訳者としてコメントを致しました。是非お読みいただければと思います。

 


 コーク兄弟は、共和党の政治家たちへの大口献金者としてよく知られています。また、反オバマ大統領の「草の根の」保守市民運動であったティーパーティー運動のスポンサーであることも知られています。こうしたことは、『アメリカの真の支配者 コーク一族』に詳しく書かれていますので、是非お読みください。

 

 今回の大統領選挙では、共和党予備選で実業家のドナルド・トランプがリードし、連邦上院議員のテッド・クルーズが追いかける展開になっています。同じく連邦上院議員のマルコ・ルビオは失速しています。このブログでもご紹介しておりますし、私がウェブサイト「現代ビジネス」に寄稿した論稿でも書きましたように、トランプは、コーク兄弟を嫌っています。また、コーク兄弟もトランプを批判してきました。

 

 しかし、下に貼りつけた記事にありますように、コーク兄弟は、自分自身のお金をトランプの共和党大統領選挙候補者指名阻止のためには使わないと表明しています。共和党のエスタブリッシュメントと呼ばれるエリート層や現役の政治家たちはこぞってトランプに反対する動きを取っています。トランプが大統領選挙候補者になっても支持できないということを言っている政治家たちも多く出ています。そうした中で、コーク兄弟はそうした動きには加わらないと表明したことになります。このブログでも書きましたが、この動きは、「共和党の中から元々民主党員であったネオコンたちを追い出すための動き」ではないかと私は考えています。コーク兄弟は彼らが考える「共和党の正常化」を行おうとしているのではないかと私は考えます。

 

 そして、奇妙なことが起きています。チャールズ・コークが2016年2月18日付の『ワシントン・ポスト』紙の論説ページで、「自分とバーニー・サンダース連邦上院議員の間には多くの相違点があるが、全ての人々、特に最も恵まれない人々の犠牲の上に恵まれた少数が助けられているという政治・経済システムについて怒っているという点では一致している」と書きました。アメリカの大企業や富裕層が政府の規制や補助金で利益を得ている、企業が「福祉」を受けていることを批判している点では、コーク兄弟とサンダース議員は一致しています。

 

 そして、昨日、コーク兄弟が支援している「フリーダム・パートナーズ」(これも訳書に頻繁に出てきます)という団体がテレビ広告で、アメリカの輸出入銀行について批判を行い、その中で「バーニー・サンダースが輸出入銀行に対して行った批判は正しい」という表現がなされたそうです。

 

 共和党支持者のはずのコーク兄弟が民主党でも左派のサンダースを支持するかのような主張を行うのは、コーク兄弟がリバータリアニズムという思想を深く信奉しているからです。サンダースは大企業に対する補助金に反対していますが、これは、「企業は市場原理によって成功し、失敗すべきであって、政府は介入すべきではない」というリバータリアニズムの考えに結果として合致します。

 

 こうして共和党支持であるはずのコーク兄弟がサンダースを支持するという奇妙な現象が出てくることになります。

 

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March 09, 2016, 12:15 pm

Koch-backed group features Sanders in Ex-Im ad

By Ben Kamisar

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/272370-koch-backed-group-features-sanders-in-ex-im-ad

 

The Koch-aligned nonprofit Freedom Partners is up with a new video Wednesday that stars Bernie Sanders touting the group's stance on the Export-Import Bank.

 

The video has no narration and instead plays the Vermont senator’s own words from Sunday's Democratic debate to make its point.

 

"Seventy-five percent of the funds going from the federal government to the Export-Import Bank goes to large, profitable corporations," Sanders said during the CNN debate.

 

"I don’t think it’s a great idea for the American taxpayer to have to subsidize through corporate welfare profitable corporations," Sanders said.

 

That quote is bookended by on-screen text that says, "Bernie Sanders is right about the Ex-Im Bank. That's why we oppose corporate welfare across the board."

 

The ad makes for odd political bedfellows — conservative Freedom Partners is far from a typical ideological partner for the progressive Sanders. But the Ex-Im Bank cuts across ideological lines, uniting moderates in both the Republican and Democratic parties against those further to either side on the ideological spectrum.

 

Hillary Clinton shares the view of the moderates that the bank is an essential way to help promote American businesses abroad. But Sanders disagrees and casts the bank as corporate welfare.

 

A bloc of House conservatives successfully delayed the reauthorization of the bank last year over similar concerns. But a bipartisan coalition rallied enough support to overcome that opposition.

 

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March 03, 2016, 08:29 am

Koch brothers won't try to stop Trump: report

By Harper Neidig

http://thehill.com/blogs/ballot-box/271597-koch-brothers-wont-try-to-stop-trump-report

 

The Charles and David Koch, two of the country’s most prolific conservative political donors, will not try to stop Republican presidential front-runner Donald Trump from winning the nomination, Reuters reported Wednesday.

 

We have no plans to get involved in the primary,” said James Davis, a spokesman for Freedom Partners, a nonprofit funded by the brothers.

 

The report added that the Kochs believe money spent against Trump would be wasted since all attacks on the real estate mogul have failed.

The brothers have also reportedly soured somewhat on spending big on presidential elections, having bankrolled failed 2012 Republican candidates Newt Gingrich and Mitt Romney.

 

The announcement comes as a blow to establishment Republicans hoping to topple Trump. Some big donors are pouring their money into anti-Trump super-PACs, and influential establishment figures like Romney are ramping up attacks on the businessman.

 

The Koch brothers’ powerful network of political donors, some of whom are contributing to anti-Trump efforts, have pledged to spend $889 million in the 2016 election.

 

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Charles Koch: This is the one issue where Bernie Sanders is right

 

By Charles G. Koch February 18

Washington Post

https://www.washingtonpost.com/opinions/charles-koch-this-is-the-one-issue-where-bernie-sanders-is-right/2016/02/18/cdd2c228-d5c1-11e5-be55-2cc3c1e4b76b_story.html

 

As he campaigns for the Democratic nomination for president, Vermont Sen. Bernie Sanders (I) often sounds like he’s running as much against me as he is the other candidates. I have never met the senator, but I know from listening to him that we disagree on plenty when it comes to public policy.

 

Even so, I see benefits in searching for common ground and greater civility during this overly negative campaign season. That’s why, in spite of the fact that he often misrepresents where I stand on issues, the senator should know that we do agree on at least one — an issue that resonates with people who feel that hard work and making a contribution will no longer enable them to succeed.

 

The senator is upset with a political and economic system that is often rigged to help the privileged few at the expense of everyone else, particularly the least advantaged. He believes that we have a two-tiered society that increasingly dooms millions of our fellow citizens to lives of poverty and hopelessness. He thinks many corporations seek and benefit from corporate welfare while ordinary citizens are denied opportunities and a level playing field.

 

I agree with him.

 

Democrats and Republicans have too often favored policies and regulations that pick winners and losers. This helps perpetuate a cycle of control, dependency, cronyism and poverty in the United States. These are complicated issues, but it’s not enough to say that government alone is to blame. Large portions of the business community have actively pushed for these policies.

 

Consider the regulations, handouts, mandates, subsidies and other forms of largesse our elected officials dole out to the wealthy and well-connected. The tax code alone contains $1.5 trillion in exemptions and special-interest carve-outs. Anti-competitive regulations cost businesses an additional $1.9 trillion every year. Perversely, this regulatory burden falls hardest on small companies, innovators and the poor, while benefitting many large companies like ours. This unfairly benefits established firms and penalizes new entrants, contributing to a two-tiered society.

 

Whenever we allow government to pick winners and losers, we impede progress and move further away from a society of mutual benefit. This pits individuals and groups against each other and corrupts the business community, which inevitably becomes less focused on creating value for customers. That’s why Koch Industries opposes all forms of corporate welfare — even those that benefit us. (The government’s ethanol mandate is a good example. We oppose that mandate, even though we are the fifth-largest ethanol producer in the United States.)

 

It may surprise the senator to learn that our framework in deciding whether to support or oppose a policy is not determined by its effect on our bottom line (or by which party sponsors the legislation), but by whether it will make people’s lives better or worse.

 

With this in mind, the United States’ next president must be willing to rethink decades of misguided policies enacted by both parties that are creating a permanent underclass.

 

Our criminal justice system, which is in dire need of reform, is another issue where the senator shares some of my concerns. Families and entire communities are being ripped apart by laws that unjustly destroy the lives of low-level and nonviolent offenders.

 

Today, if you’re poor and get caught possessing and selling pot, you could end up in jail. Your conviction will hold you back from many opportunities in life. However, if you are well-connected and have ample financial resources, the rules change dramatically. Where is the justice in that?

 

[Read more: Actually, the “billionaire class” might be more progressive than Sanders says]

 

Arbitrary restrictions limit the ability of ex-offenders to get housing, student or business loans, credit cards, a meaningful job or even to vote. Public policy must change if people are to have the chance to succeed after making amends for their transgressions. At Koch Industries we’re practicing our principles by “banning the box.” We have voluntarily removed the question about prior criminal convictions from our job application.

 

At this point you may be asking yourself, “Is Charles Koch feeling the Bern?”

 

Hardly.

 

I applaud the senator for giving a voice to many Americans struggling to get ahead in a system too often stacked in favor of the haves, but I disagree with his desire to expand the federal government’s control over people’s lives. This is what built so many barriers to opportunity in the first place.

 

Consider America’s War on Poverty. Since its launch under President Lyndon Johnson in 1964, we have spent roughly $22 trillion, yet our poverty rate remains at 14.8 percent. Instead of preventing, curing and relieving the causes and symptoms of poverty (the goals of the program when it began), too many communities have been torn apart and remain in peril while even more tax dollars pour into this broken system.

 

It is results, not intentions, that matter. History has proven that a bigger, more controlling, more complex and costlier federal government leaves the disadvantaged less likely to improve their lives.

 

When it comes to electing our next president, we should reward those candidates, Democrat or Republican, most committed to the principles of a free society. Those principles start with the right to live your life as you see fit as long as you don’t infringe on the ability of others to do the same. They include equality before the law, free speech and free markets and treating people with dignity, respect and tolerance. In a society governed by such principles, people succeed by helping others improve their lives.

 

I don’t expect to agree with every position a candidate holds, but all Americans deserve a president who, on balance, can demonstrate a commitment to a set of ideas and values that will lead to peace, civility and well-being rather than conflict, contempt and division. When such a candidate emerges, he or she will have my enthusiastic support.

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12


 
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