古村治彦です。
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 アメリカ大統領選挙民主党予備選挙は終戦に向かって進んでいる。ジョー・バイデンが全国規模の世論調査での数字を伸ばしている。バーニー・サンダースはエリザベス・ウォーレンの支持者も取り込んでいるようだが、それだけでは過半数には届かない。左派、右派、保守派、中道派などとグループ分けをしてはいるが、それらのグループ単独では民主党内で過半数を握ることはできない。あくまで横に広がっていくことが大事だ。
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 民主党予備選挙は3月17日にアリゾナ州、イリノイ州、フロリダ州、オクラホマ州で予備選挙の投開票が実施される。今のところ、各種世論調査の筋を見ても、バイデンがリードしている。500名以上の代議員が配分されているこの日の各州での予備選挙で逆転ができなければサンダースの予備選挙全体の逆転もほぼ不可能である。
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 今回紹介する記事は、バイデンのここまでの勝因を投票者数の増加、特にアフリカ系アメリカ人と穏健派の有権者たちの投票参加の増加が理由であるという分析記事だ。ここまで行われた各州の予備選挙では軒並み投票参加者数が増加している。前回2016年の時よりも多くなっている。このことについて、「サンダースが民主党の指名候補になったらトランプに負ける」という危機感がサンダースを支持しない人々の間に醸成されたという分析である。
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民主党支持有権者穏健派の支持率
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民主党支持有権者アフリカ系アメリカ人有権者の支持率
 2016年の時はヒラリー・クリントン前国務長官とバーニー・サンダースの一騎打ちの構図だった。サンダースが予想外の大善戦で、ミシガン州では事前の各種世論調査の数字をひっくり返して勝利を収めた。この時よりも投票参加者数が増えている。これは、「ヒラリーなんて大嫌いだ、サンダースはよく分からないが社会主義者だと自分から言っている、どちらもダメだ」と考える有権者がかなりいたことを示している。

今回の構図は、「バイデンは頼りないところもあるが、政治経験は豊富だし、あのオバマ大統領に8年も副大統領として仕えた人物だ。少なくとも嫌いではない。サンダースは社会主義者とか言って危険な存在だ、周囲の政治家たちや支持者たちも若い奴らでうるさいだけの連中だ」ということで、人々が投票所に向かうようになったということになる。サンダースは特定のグループや層から深く熱心に支持されているが、バイデンは嫌われる要素が少なく浅く広く支持を広げている。この人たちは選挙集会に参加したり、戸別訪問をしたり、インターネット上に書き込んだりすることはないが、投票所に行くくらいはするという人たちだ。
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民主党党支持有権者(18歳から22歳)の支持率
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民主党支持有権者(23歳から38歳)の支持率
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民主党支持有権者ヒスパニック系有権者の支持率
 サンダースは若者からの支持が圧倒的に多く、またヒスパニック系有権者からの支持も高い。こうした人々が投票所に向かえばサンダースが勝利するとサンダース陣営は主張し続けた。確かにヒスパニック系有権者が多いネヴァダ州ではサンダースは完勝した。しかし、その後の予備選挙では、若者たちの投票率が期待よりもずっと低かったことが明らかになった。若者たちも投票所に向かったであろうが、前回行かなかったであろう、元々数の多いアフリカ系アメリカ人と穏健派の有権者がそれを上回る勢いで投票所に向かったということも言える。

 インターネット、特にSNSの世界では書き込みの数が多い、もしくは勢いの良い書き込みが多いことは目立つし、勢いを感じるが、これが現実世界を反映しているとは言えない。実際に投票に足を運んで一票を入れてもらわねば何の意味もない。また、世論調査の数字もあくまで数字であって動向を掴むことはできるが、世論調査で「投票に行く」と答えた人々が全員正直に行動するものでもない。

サンダース陣営はそのことを周知させただろうが、その勢いを上回る人々が、サンダースが大統領候補になる懸念に動かされて投票所に向かった。進歩主義派、左派に属する政治家たちはある種の嫌われぶりというか支持が横に広がっていかないことの限界を今回思い知らされただろう。

 今回のアメリカ大統領選挙民主党予備選挙の構図は私たちにいろいろなことを教えてくれる。日本の現状を変えるためにも是非ここから教訓を得るべきだと思う。

(貼り付けはじめ)

投票参加者数の増加は予備選挙においてバイデンに力を与える(Turnout surge powers Biden in primaries

マックス・グリーンウッド筆

2020年3月11日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/487106-turnout-surge-powers-biden-in-primaries

火曜日に実施されたミシガン州、ミズーリ州、ミシシッピ州でのアメリカ大統領選挙民主党予備選挙における投票参加者数が10年以上の期間の中で最高のレヴェルに達した。

投票参加者の増加はアフリカ系アメリカ人、穏健者、郊外居住者が投票所に向かったからだ。ここ数週間の予備選挙でジョー・バイデン前副大統領の勝利に貢献したのはこの人々が投票所に向かったからだ。

こうした流れは先月末のサウスカロライナ州から始まった。そして、バイデンの選挙運動を崩壊寸前から予備選挙での多くの勝利へと引き上げた。

ミシガン州では、民主党支持の有権者たちは火曜日に歴史的な数が投票に参加した。約160万人の有権者たちが予備選挙で投票した。2016年に比べて33%も増加した。この時には120万名弱が投票に参加した。

バイデンはミシガン州でバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)を破った。これは進歩主義派である対抗馬に強烈な一撃となった。4年前にはサンダースがヒラリー・クリントンをミシガン州で破ったのだ。

民主党幹部や党員にとって、2016年にトランプ大統領に敗れた中西部諸州の一部を奪還しようとしている時に、ミシガン州で投票者数が伸びたことは前途有望なことを示す出来事となった。

ミシガン州民主党委員長ラヴォラ・バーンズはミシガン州での投票参加者の増加をトランプに対する広範な人々の反対の意思表明が火をつけた「投票爆発」と名付けた。

バーンズは声明の中で次のように述べた。「医療と清潔な水を確保することに対するトランプ大統領の攻撃からミシガン州における製造業の雇用増大の失敗まで、トランプ大統領はミシガン州に対して行った公約をことごとく破っています。昨日、民主党支持の有権者たちはこれらの事実に対して大統領の責任を問う用意があることを明確に示したのです」。

最新の開票報告によると、ミシシッピ州では2016年に比べて投票者数は19%増加した。ミズーリ州では投票者数の4年前に比べての増加率は5%とより緩やかなものとなった。バイデンは投票参加者数が増えた両州で勝利を収めた。

ノースダコタ州の民主党党員集会参加者数は2016年に比べて4倍となった。4年前には3400名以下だったが、火曜日は約1万5000名だった。ノースダコタ州では今回から党員集会に新しいルールを導入し、より予備選挙に近い形式となった。

火曜日に予備選挙が実施された残り2つの州であるワシントン州とアイダホ州でも民主党予備選挙の投票数が大きく増加した。しかし、これまでとの比較は難しい。その理由は、両州ともに今回からこれまでの党員集会形式から予備選挙形式に変更したことだ。概して予備選挙形式の方が参加者数は大きくなる。

サンダースにとって、火曜日の予備選挙の結果はまた失望となってしまった。

サンダースは最終的にノースダコタの党員集会で勝利した。そして現在開票作業が続いているワシントン州では僅差でバイデンをリードしている。

サンダースはミシガン州で敗れた。スーパーチューズデーでの幾多の敗戦の後、有力候補者としての立場を再び手にしたいと望んでいたが、そのために勝利が必要であったミシガン州で敗れた。このことで、サンダースがこれまで一貫して主張してきた、自分のポピュリスト的メッセージと大胆な政治的、経済的変革の訴えは工業中心の中西部各州の労働者階級に共感を得られて、11月にミシガン州で民主党が勝利することに貢献すると主張してきたことの説得力が一気に低下した。

また、サンダースはより若い有権者たちが多く投票所に向かうと述べていたことについても、予備選挙から得られた証拠に基づくと、疑義が呈されてしまう。ミシガン州の18歳から44歳までの有権者の間ではサンダースはバイデンよりも2倍の支持を集めた。しかし、今回の予備選挙に参加したのはこの層の人々が占める割合は全投票参加者の中で38%にとどまった。2016年の時には45%だった。

火曜日のミシガン州での予備選挙に参加した有権者の中で45歳以上の有権者たちが占める割合は約62%だった。出口調査の結果を見ると、その内の3分の2の有権者が予備選挙でバイデンを支持したということであった。

火曜日の各州での予備選挙の結果は、サンダースがアフリカ系アメリカ人有権者からの支持を集めることに苦労していることでも起きた。アフリカ系アメリカ人有権者は民主党に最も忠実な有権者グループである。ミシガン州、ミズーリ州、ミシシッピ州において、サンダースはアフリカ系アメリカ人有権者の支持でバイデンに大敗を喫した。これらの各州ではアフリカ系アメリカ人有権者が民主党予備選挙の有権者の約70%を占めていた。

水曜日、地元ヴァーモント州バーリントン市で記者団に対して、サンダースは自身の選挙運動について厳しい評価を下した。サンダースは民主党予備選挙において「イデオロギーに関する討論」に勝利しているが、「当選可能性に関する討論」では負けていると述べた。サンダースは、有権者の多くがバイデンを支持しているのはトランプを倒せる可能性が最も高い候補者はバイデンだと考えているからだと述べた。

しかし、サンダースは自分が若い有権者たちから力強い支持を受けていると主張した。彼は予備選挙において「世代に関わる討論」で勝利していると述べた。

サンダースは次のように述べた。「ジョー・バイデンはより年齢の高いアメリカ国民からの支持を集めています、特に65歳以上の人々からの支持は圧倒的です。一方、私たちの選挙運動は若い人々の中の圧倒的大多数からの支持を勝ち取り続けています。私は20代の人々とだけ話しているのではなく、30代、そして40代の人々とも対話を行っています。我が国のより若い世代の人々の数多くが私たちの選挙運動を支持し続けてくれています」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側