古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。よろしくお願いします。

タグ:ヒラリー・クリントン

 古村治彦です。

 

 アメリカのドナルド・トランプ大統領が、2017年5月9日、ジェイムズ・コミーFBI長官を解任しました。解任の際にトランプ大統領がコミー長官に宛てた書簡では、「司法長官と副長官の助言と勧めを受け入れて」解任すると書かれています。

 

 ジェフ・セッションズ司法長官とロッド・ローゼンスタイン司法副長官の助言による

 

ロッド・ローゼンスタインは司法省生え抜きで、ペンシルヴァニア大学を優等で卒業し、ハーヴァード大学法科大学院に進学し、学内誌『ハーヴァード・ロー・レヴュー』の編集に携わりました。バラク・オバマ大統領もこの雑誌の編集に携わりました。大変優秀な人物で、地区検察官も務めました。

 

FBIは捜査機関で、彼らの捜査した内容で起訴するかどうかを決めるのが司法省です。ですから、司法省は検察の役目を果たしています。ヒラリーのケースでは、FBIのコミー長官がヒラリーについて2016年7月6日に「大変不適切な対応はあったが、起訴するには至らない」という助言と勧めを当時のロレッタ・リンチ司法長官に送り、それが採用される形になりました。その後、2016年10月28日になって、別件(アンソニー・ウェイナー元連邦下院議員[ヒラリーの側近フーマ・アベディンの夫]の事件)で捜査中に、ヒラリーの私的Eメールサーヴァー使用に関して、新たなEメールが発見されたということをコミー長官は議会に報告する形で公表しました。

 

 昨年の大統領選挙では、民主党のヒラリー・クリントン元国務長官が下馬評では圧倒的に有利とされ、トランプは劣勢を強いられていました。7月に不起訴の決定がなされた後、トランプ陣営にもスキャンダルが出て、決定打にはなりませんでした。しかし、10月28日に新たなEメールが発見されたという報道がなされ、これがヒラリー陣営にとっては、後から考えると大打撃となりました。

 

 今回、司法省のジェフ・セッションズ長官、ロッド・ローゼンスタイン副長官は、昨年10月28日のFBIの捜査情報の連邦議会送付と公開を問題にしました。これについて「やってはいけない行為」とし、「それについて悪いと思っていない」という点を問題視し、コミー長官を解任しました。

 

 しかし、考えてみると、コミー長官はやるべきことをやった訳ですし、トランプ陣営からすれば、ある意味で、最大の功労者と言うことができます。また、政権が発足して100日以上経過しての突然の解任、しかも、コミー自身は、解任を出張先のロサンゼルスでテレビの速報で知ったということで、このような解任の仕方は、コミーを辱める行為ですが、トランプ政権は敢えてこれを強行しました。

 

 5月3日の連邦議会での公聴会で、コミー長官が、選挙の結果に影響を及ぼしたと思うと、吐き気がするほどだが、私(たち)は間違っていなかったと発言しました。これが突然の解任のきっかけとなったということでしょう。

 

 ここで考えられるのは、FBIが現在、トランプ陣営とロシアとの関係について捜査を行っているという点に何か関連しての突然の解任ではないかということです。コミー長官が「虎の尾を踏んで」しまって、急きょ解任されたという可能性が考えられます。FBIの捜査に関しては、司法省もホワイトハウスもコントロールすることは建前上はできませんから、ヒラリーの捜査情報を連邦議会に送付したコミーが、同じことを再びやるということも考えられるので、慌てて懲罰的な形で解任したということが考えられます。

 

 また、逆の面から見れば、コミーは、ヒラリー落選の最大の戦犯ということになります。ヒラリー陣営や民主党側は、コミーの首を取りたいと考えています。これを代わりに実行したのがトランプと言うことになります。しかも懲罰的に、です。これは、トランプが、ヒラリーの事件をこれ以上蒸し返して、彼女を犯罪者にはしないというメッセージにもなりますし、民主党にも肯定的なメッセージを送ったことになると考えます。

 

 ジェイムズ・コミーFBI長官はとても苦しい経験をしたと言えます。アメリカの方向性を変えた人物となりました。彼は彼なりに職務を忠実に遂行したと言えますが、政治の空白地帯に落ちてしまい、民主、共和両党、ヒラリー、トランプ両陣営の攻撃対象になってしまいました。この点で、コミーは稀有な存在となりました。理不尽な人間悲喜劇の主人公となってしまったと言った方が良いかもしれません。

 私が最後に思ったのは、これは、連合国総司令官ダグラス・マッカーサーの解任に匹敵するものだということです。FBI長官と言えば、エドガー・J・フーヴァーのように、時の大統領の弱みを握って、長く力を保持することも可能ですが、大統領が解任と決めたら、ただの人になってしまいます。民主政治体制におけるシヴィリアンコントロールと権力の抑制と分立ということを改めて認識させられます。

 

(貼りつけはじめ)

 

●「米大統領、FBI長官を解任=メール問題対応「重大な誤り」―捜査妨害と反発も」

 

時事通信 2017年5月10日

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170510-00000012-jij-n_ame

 

トランプ米大統領は9日、連邦捜査局(FBI)のコミー長官(写真)を解任した。クリントン元国務長官のメール問題に関するコミー氏の判断は「重大な誤り」だったとして司法省が長官交代を進言、大統領も受け入れた

 

 【ワシントン時事】トランプ米大統領は9日、連邦捜査局(FBI)のコミー長官を解任した。

 

 ホワイトハウスによると、先の大統領選中、民主党候補クリントン元国務長官の私用メール問題に関する捜査情報を公表したコミー氏の判断は「重大な誤り」だったとして司法省が長官交代を進言、大統領も受け入れた。

 

 大統領はコミー氏への解任通知で「FBIへの国民の信用と信頼を回復できる新しい指導者を見つけることが不可欠だ」と強調した。ただ、FBIは現在、トランプ陣営とロシア政府が結託してクリントン氏の選挙戦を妨害したのではないかという疑惑を捜査している最中で、民主党を中心に捜査妨害だと反発する声も上がっている。

 

 メール問題を捜査していたコミー氏は昨年75日、異例の記者会見を開いてクリントン氏の不訴追を発表。大統領選が11日後に迫った同1028日には、新しい証拠が見つかったとして連邦議会に捜査再開を通知した。いずれの対応も大統領選に不当な影響を与えたと批判を受けたが、コミー氏は53日の議会公聴会で「今でも正しい選択だったと信じている」と語っていた。

 

 ホワイトハウスによれば、ローゼンスタイン司法副長官はセッションズ司法長官に宛てた覚書で、コミー氏の対応は「検事や捜査官が教科書でしてはならないと教わる典型例」と指摘。「誤りだと認めないことも理解できない」と公聴会での発言も批判した。

 

 これを受け、セッションズ氏は大統領への書簡で「FBIには新鮮なスタートが必要だ」と助言。大統領は声明に「きょうが法執行機関の至宝の新しい始まりだ」と記した。発表に先立って大統領は民主党幹部にも電話し、解任の決断を伝達。これに対し、シューマー上院院内総務は、進行中の捜査が滞りかねないとの観点から「大きな間違いだ」と懸念を伝えた。

 

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●「大統領選への影響「いささか吐き気がする」 FBI長官」

 

BBC News 2017年5月4日

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170504-10001777-bbcv-int

 

米連邦捜査局(FBI)のジェイムズ・コーミー長官は3日、上院司法委員会のFBI監査公聴会で証言し、昨年の大統領選直前にヒラリー・クリントン氏の私用メールサーバー問題について捜査していると公表したことについて、議員たちの追及に答えた。長官は、FBIが選挙結果に影響を与えたかもしれないと思うと「いささか吐き気がする」と述べつつ、今でも正しい判断だったと思っていると述べた。

 

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●「米大統領、FBIを名指し非難=メディアに情報「漏えい」」

 

時事通信 2017年2月25日

http://www.jiji.com/jc/article?k=2017022500031&g=use

 

 【ワシントン時事】トランプ米大統領は24日、ツイッターに「連邦捜査局(FBI)は、国家安全保障に関わる『漏えい者』を止めることが全くできていない」と書き込んだ。内部情報に基づく報道に関し、組織を名指しして情報管理の甘さを糾弾した。

 

 トランプ氏は、投稿で「機密情報がメディアに渡っており、米国に破壊的な影響を及ぼしかねない」と主張。「今すぐ(漏えい者を)見つけろ!」と調査を求めた。

 

 トランプ政権では、フリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)が就任前に駐米ロシア大使と対ロシア制裁について話していたことが発覚して辞任。トランプ氏は15日の記者会見で、「情報機関から(フリン氏に関する)ペーパーが漏えいした。犯罪行為だ」と非難していた。(2017/02/25-00:40

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22


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 古村治彦です。

 

 ジョー・バイデン副大統領がヒラリー・クリントン敗北の理由として、「彼女自身がどうして選挙戦を戦っているのか分かっていなかった」ということを挙げています。大変ユニークな分析です。

 

 ヒラリーは女性で初めて大統領になるチャンスがある人物として大統領選挙に出馬する責務があると感じてはいたが、有権者に対して語りかけが足りなかった、有権者の声を聞くことが足りなかった、とバイデンは言っています。そして、人々の不満や恐怖心を聞く政党であった民主党がエリート主義になっていたと反省の弁を述べています。

 

 確かに、ヒラリーは能力が十分にあったでしょう。しかし、有権者のためではなく、自分のために選挙に出た、そして、有権者を向かないで、有権者の見ているものを見ないで選挙戦を戦ったということなのでしょう。上滑りする綺麗ごとばかりを、女性初の大統領になるという浮ついた気持ちで語ったところで、今本当に困っている人々には何のアピールにもならなかったのです。ヒラリーが勝利した州は民主党が強い州で、そこでは、誰が出ても民主党の候補者が勝利できたでしょう。しかし、それだけでは勝利はできません。トランプが勝利した州は共和党が自動的に勝つ州にプラスして、人々の不満や恐怖心が渦巻いていた州でした。

 

 政治家が選挙に通って権力を握る、ということは自己利益実現の最たるものです。しかし、それを露骨にやる、もしくは見えてしまうと、その自己利益実現はできないのです。ヒラリーは自分とだけ格闘し、周囲は見えていなかった、だから、自分というものを押し付けることで有権者は拒絶反応を示したということでしょう。

 

 トランプは「アメリカ・ファースト」というスローガンを掲げました。そして、「今苦境の中にいると不満や狂信を持っているアメリカ国民よ、このアメリカはあなた方のことだ」というメッセージを送ることに成功しました。トランプは非常に利己的で、自己中心的のように思われ、実際にそうなのでしょうが、選挙に勝つという自己利益実現に成功しました。見た目では、ヒラリーは謙虚・抑制的(トランプに比べて、ですが)、トランプは我儘・勝手なのに、人々はヒラリーに自己中心、押しつけ、独りよがり、自分たちのことを見ていないということを感じて忌避しました。

 

 こういうことは私たち自身にも置きかえて教訓として活かすことができると思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

バイデン:ヒラリー・クリントンはどうして選挙戦を戦っているのかを理解していなかった(Biden: Clinton never figured out why she was running

 

ジョーダン・ファビアン筆

2016年12月22日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/administration/311591-biden-clinton-never-figured-out-why-she-was-running

 

バイデン副大統領は、ヒラリー・クリントンは大統領選挙で敗れたが、その理由の1つは、ヒラリーが大統領選挙に出馬している理由を彼女自身が理解していなかったことが挙げられると確信していると述べた。

 

木曜日のロサンゼルス・タイムズ紙に掲載されたインタヴューの中で、バイデンは「私は彼女が本当に理解していたとは思えない。話は変わるが、彼女の出馬の決断は困難なことだったと思う」と述べた。

 

選挙期間中にウィキリークスによって公開されたハッキングされたEメールの中で、ヒラリーの側近や協力者たちも非公式に同じような懸念を表明していたということをバイデンは自分の考えを補強する証拠として挙げた。

 

しかし、バイデンはヒラリーを選挙に負けたということだけで非難するのは公正なことではないとも述べた。バイデンは、ヒラリーは選挙運動中に崇高な目的を見つめていた、そして、オバマ大統領がアフリカ系アメリカ人に行ったように、女性の政界での活躍への道を切り開く義務を負っていると感じていた、と述べた。

 

バイデンは次のように語った。「彼女は出馬する以外に選択肢はないと考えたのだ。つまり、大統領に当選するかもしれない機会を与えられた史上初めての女性だったのであり、彼女にとってそれは責務であったと思う」。

 

バイデンのコメントにはオバマ政権の幹部としての直接的な批判が若干含まれている。

 

バイデン副大統領は選挙期間中、十数回にわたり、ヒラリーのために遊説を行った。

 

しかし、バイデンは、ドナルド・トランプは自分の出身地であるペンシルヴァニア州スクラントンのような白人の労働者たちが多く住む地域の人々を熱狂させて、選挙に勝利したがそれはずるいことだと感じた、とも述べた。

 

バイデンはその時の心境を次のように語った。「しまった、私たちは選挙に負けるかもしれない、と感じた。トランプに熱狂している人々は私が一緒に生まれ育った人々だった。もしくはその子供たちだった。彼らは人種差別主義者ではないし、性差別主義者でもない。しかし、私たちは彼らに語りかけなかった」。

 

バイデンは民主党全体が選挙で低調であったが、それは、「私たち民主党が、高卒の大部分が白人であるが、非白人もいる、そういった多くの人々に対して、“民主党は自分たちの抱えている問題を理解している”と思ってもらえるようにしなかったから」だと語った。

 

バイデンは、民主党の志向の中に、エリート主義が入り込んでいた、と述べた。

 

同時に、バイデンは、トランプは、ヒラリーよりも労働者階級の人々に問題解決の方策を提示することに成功している訳ではないとも語った。

 

バイデンは「私は、彼が労働者階級や中流階級の人々を理解しているとは思わない。少なくとも彼は彼らの痛みは認識している。しかし、彼は偏見、恐怖心を利用した。自暴自棄の気持ちを利用したのだ」と語った。

 

トランプは更に「トランプが人々を熱狂させる時に語った言葉には何も積極的で+なものはなかったと確信している」と述べた。

 

バイデン副大統領は民主党予備選挙でヒラリーに挑戦することを検討した。彼が予備選挙に出ていたら、自分はエリートではないというアピールと共に中流階級の人々に向けたメッセージを次々と発したことだろう。

 

しかし、バイデンは最終的には選挙に出ないという選択をした。バイデンは息子ボウの逝去を悼みながら、選挙戦を行うことはできないと述べた。

 

74歳になるバイデンは、これまで複数回の機会を軽視してはきたが、将来の大統領選挙出馬の可能性を排除することを拒絶した。

 

バイデンは、妻ジル・バイデン博士がノーザン・ヴァージニア・コミュニティ・カレッジで教鞭を執っている間はワシントンにたまに居住する計画だと明かした。

 

バイデンは、副大統領退任後に仕事を続けるために、ペンシルヴァニア大学内にオフィスを構える可能性についても説明している。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22








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 古村治彦です。

 

 今回は、大統領選挙が終わる直前に発表されたある論稿をご紹介します。この論稿で著者のジャッド・グレッグは、共和党のドナルド・トランプ、民主党のヒラリー・クリントンがアメリカの統治形態の基礎を攻撃したと主張しています。トランプは選挙システムを、ヒラリーはFBIをそれぞれ激しく批判しました。

 

 著者のグレッグは、候補者2人が当選を目指して選挙システムとFBIを激しく攻撃したために、それらに対するアメリカ国民の信頼が薄らぎ、アメリカの統治システムに対する信頼が揺らぐのではないかと心配しています。

 

 アメリカの有権者は、一部には彼らの主張を真に受けてしまう人たちもいるでしょうが、大部分は、「選挙のためのレトリックだ」と分かっている人たちでしょう。それでも、今回、アメリカの民意は、「ワシントンの大掃除をする」「共和党、民主党関係なく、ワシントンのインサイダー、エスタブリッシュメントをやっつける」ということになりました。これまで共和党に投票しなかった、白人の大学教育を受けていない男性労働者たち(南部では歴史的な経緯から民主党支持、北部では組合に加入していることからずっと民主党支持)がトランプに投票し、民主党側では、党のエスタブリッシュメントに失望した、バーニー・サンダース支持者とオバマを地滑り的勝利で当選に導いたオバマ・コアリッションが不活発だったために、トランプを押し上げ、ヒラリーを引きずりおろす格好になりました。

 

 一部には選挙人制度についての批判も出ていますが、選挙人制度には、小さな州の存在感を確保し、各州の独立性を守るという、反連邦主義的なアメリカの伝統にも則っているという面もあります。トランプが言っている「汚れきった沼から泥水を抜いて綺麗にする」ということが民意であり、それを今回アメリカの民主政治制度がすくい上げたのだということができます。

 

(貼り付けはじめ)

 

ジャッド・グレッグ:傷つけられるデモクラシー(Judd Gregg: Damaging democracy

 

ジャッド・グレッグ筆

2016年11月7日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/opinion/judd-gregg/304610-judd-gregg-damaging-democracy

 

私たちの憲法を基盤にした民主政治体制の強さは、人々の信頼に依っている。

 

リンカーン大統領は、彼独自の明確さと意識をもって、アメリカの民主政治体制の真髄を「人々の、人々による、人々のための統治」と述べた。

 

しかし、政府は自分たちがその一部を形成しているのだ、政府は私たちの生活のためにあるのだという信頼を人々が失ってしまえば、民主政治体制は存続の危機に直面する。

 

このアメリカで、そのようなことが起きるなどとは、かつては創造できなかった。しかし、今回の大統領選挙の残り数週間、民主政治体制の危機が起きる可能性が感じられてしまう状況であった。ありがたいことに、この状況も火曜日には終わる。

 

ヒラリー・クリントン、ドナルド・トランプの両候補とも、彼らがなすべき、人々の信頼を強めるという義務を放棄し、政府の諸機関を攻撃することに終始した。

 

ドナルド・トランプが私たちに語ったことは、彼が同意できないものは全て汚れていて、正しくない、ということだった。彼の攻撃対象リストのトップに来るのは、選挙システムだ。

 

人々が攻勢に実施されているという確信を持つことができる選挙がなければ、民主政治体制を備えているとは言えない。トランプは繰り返し繰り返し、選挙は公正さを欠いていると批判した。

 

「選挙は公正さを欠いている」ということを繰り返し述べることで、トランプは、民主政治体制にとって不可欠な価値を攻撃している。この価値とは、「投票した私の一票はきちんと数えられる、選挙は正当性を持っている」と人々が確信を持つことだ。トランプはこの民主政治体制にとって中核的な価値を傷つけている。

 

ヒラリー・クリントンは彼女自身の失敗と弱点を隠すために、私たちの民主政治体制において重要な機関である連邦政府の法執行機関を攻撃している。

 

FBIは、J・エドガー・フーヴァーが引退して以降、最悪の時期を過ごすことになったことだろう。しかし、これまでの数十年間、FBIはアメリカ国内で第一の法執行機関であり続けてきた。

 

FBIは党派に偏らない、我が国の法律に関する公正な執行者、我が国の守護者という評判を確立してきた。FBI長官にはこれまで誠実さを持つ才能あふれる人々が就任してきた。

 

ヒラリー・クリントンが私的なEメールサーヴァーを使用して国家安全保障を損なったのは、ヒラリー自身の間違いであって、FBIの間違いではなかった。

 

FBIとFBI指導部は、彼らの基本的な義務を果たすために捜査二十舌以上のことはないというのが事実だ。FBIは、いかなる人物も法の上にはいないこと、我が国の安全保障には妥協など許されないことを明確に示してくれた。

 

ヒラリーと彼女の側近たちは、ジェイムズ・コミーFBI長官を激しく批判した。

 

コミー長官は、新たな数千通のEメールが発見されたことを公表しなければならなかった。そうしなければ、彼は事実を隠蔽し、捜査を捻じ曲げたとして訴追されることになっただろう。

 

コミー長官はFBIの捜査過程における誠実さを維持するために適切な行動を行った。ヒラリーは適切な行動を取らなかった。

 

ヒラリーとヒラリーの支持者たちのFBIとFBI長官に対する攻撃は、FBIの信頼性を損なうこと、FBIが独立した、公正な機関ではないと人々に信じさせることを目的としていた。

 

彼らのこうした攻撃は、日曜日にコミー長官が新たに発見されたEメールの中に、彼が7月に出した「ヒラリー・クリントンは訴追されるべきではない」という結論をクスがエス材料は発見されなかったと発表したことで和らぐことになるだろう。しかし、たとえそうなっても、彼らが既に傷つけた大きな傷を癒すことにはならない。

 

ヒラリー・クリントンと彼女の支持者たちによる自己利益中心で、機会主義的な攻撃は、彼らの政治的な利益のために大変重要な政府機関の信頼性を犠牲にするものである。これは今までにはなかった破壊的な行動であった。その苦い影響はこれからもずっと続くだろう。

 

 

この偉大な国の大統領になろうとする人々が我が国の統治形態に対する信頼性を維持することが個人的な利益よりも重要なのだということを理解することがこれほどになっているのは今の時期を置いてない。

 

これは、統治している人々が彼らの失敗について説明責任を果たさなくてもよいということを言っているのではない。そうではなく、そういう時こそ説明責任を果たすべきだと言いたいのだ。

 

しかし、今回の選挙に出馬した主要政党の両候補はリーダーシップを持っていることを示さなかった。それどころか、彼らのアプローチは、ポピュリスト的無秩序(アナーキー)の坂道を登る第一歩であった。

 

火曜日に、今回の選挙は終わる。しかし、選挙がもたらしたダメージや傷は消えないだろう。

 

選挙に勝つのがどちらであれ、これまでのアプローチを根本的に変え、自分の仕事は我が国の統治形態を守ることであるということを認識する必要がある。

 

※ジャッド・グレッグ(共和党):元ニューハンプシャー州知事、元連邦上院議員(ニューハンプシャー州選出、3期)。連邦上院予算委員会幹部委員、委員長、連邦上院議員歳出委員会外交関連計画歳出小委員会幹部委員も歴任した。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)







 
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 古村治彦です。

 

 2016年アメリカ大統領選挙が終わりました。共和党のドナルド・トランプが、民主党のヒラリー・クリントンを大差で破って当選となりました。まだ最終的な開票結果は出ていませんが、ヒラリーはトランプに敗北を認め、祝意を伝える電話をかけたということです。ヒラリー派選挙終盤、選挙が終わったら何をしたいかと質問され、テレビの米デイショーやドラマをたくさん録画しているので、それらを見たいと冗談半分に述べましたが、まさかそれらを見る時間がたっぷり用意されるとは思っていなかったでしょう。

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 選挙直前、PBSのニュース番組に、アメリカ連邦下院民主党院内総務であるナンシー・ペロシが出演していました。彼女は現在のアメリカ政治で最高位にある女性です。「あと数時間で、最高位にある女性という言われ方が終わります」と言っていましたが、彼女がこれからもしばらくはアメリカ政治の最高位にある女性ということになります。

 

 ヒラリー陣営が投開票後の集会を開くための会場にしていた場所はコンヴェンションセンターでした。そこは天井が高くてガラス張りでした。これは、「ガラスの天井(グラス・シーリング、女性は目に見えない壁に阻まれて社会的に上昇できない)を打ち壊す日」を意味するための会場選びだったそうです。しかし、それも今や幻のように消え去りました。アメリカの有権者は、「ヒラリーが女性だから」という理由で彼女を選ばなかったのではないし、女性は大統領にふさわしくないなどとも考えていないでしょう。ヒラリー個人がふさわしいかどうかの判断でありました。彼女の選対は約500億円の政治資金を集めました。トランプの倍です。それでも選挙に勝つことはできませんでした。

 

 私は選挙速報を見ながら、ヒラリー側は関ヶ原の西軍側、石田光成のような気持だったのではないかと思います。軍勢の数や布陣で言えば圧倒的に有利(明治時代に関ヶ原の戦いの布陣図を見たドイツ軍参謀本部の将校は西軍勝利と言ったそうです)だったのに、負けてしまった、それに近いものがあると思います。また、私はトランプを応援していましたから、何となく2009年の日本の政権交代、民主党勝利を思い出していました。

 

 私は2016年11月7日付のブログで、ヒラリーが316、トランプが222で、ヒラリーが当選すると予測しました。これは見事に外れました。現在の情勢では、この数字がほぼ逆で、トランプが勝利ということになるでしょう。私の未熟さと無能さのために、このような恥ずかしいことになったと反省しています。そして、どうしてこうも大きな外し方をしたのか、ということを考えたいと思います。

 

 まず、私の判断材料は世論調査の数字とアメリカのメディアの記事だけでしたが、世論調査が「世論」を反映していなかったということが挙げられます。現実を反映しない世論調査の数字は役に立たないどころか害悪です。世論調査をはじめとする統計調査ではどうしても誤差が出てきますし、今回の場合は激戦州での世論調査で1、2ポイントの差、もしくは引き分けということもあって読みづらいものでした。更には、日本でも一部報道されたそうですが、「隠れトランプ支持者」と呼ばれる、世論調査には出てこないトランプ支持者が多かったということがあるようです。

 

 次に中途半端な経験から、五大湖周辺のラスト・ベルト、ペンシルヴァニア、オハイオ、ミシガン、ウィスコンシンは民主党が連勝しているし、ヒラリーが世論調査の数字で数ポイント分リードしているから、ヒラリーだろうと安易に判断してしまいました。オハイオは最後の方はトランプがヒラリーを追い抜いていましたから、トランプが取るだろうと思っていました。私が7日付のブログで書いた、「こうなったら面白いシナリオ」は、フロリダとノースカロライナをトランプが取ったら、ヒラリーとは接戦になるというものでした。しかし、ヒラリーがペンシルヴァニア、ミシガン、ウィスコンシンを落としたために、接戦とはならず、トランプが300以上を取る結果になりそうです。ラスト・ベルトの大学教育を受けていない白人労働者たちがヒラリーではなく、トランプを支持した、「トランプは俺たちの仲間だ」ということになりました。

 

 ラスト・ベルトが決戦場だということは分かっていましたが、別の点では安易に考えていたために、失敗を犯しました。反省しています。

 

 トランプはポピュリズムのリーダーとして、初めてワシントンに行きます。ウィリアム・ジェニングス・ブライアンやヒューイ・ロングが果たせなかったことを果たしました。映画「スミス都に行く」をもじると「トランプ都に行く」となります。彼はまず連邦政府と共和党の変革を強く求めるでしょう。もちろん、妥協するところも出てくるでしょうが、オバマの「チェンジ」とは異なるポピュリズムによる「革命」をおこすことになるでしょう。外交・防衛政策分野ではネオコン系や人道的介入主義派は一掃されるでしょう。

 

 経済政策は保護主義的になるでしょうし、ポピュリズムですから弱者保護(福祉)も行うでしょう。そうなると、これまでの「共和党=金持ちのための党、民主党=貧乏人のための党」という単純な図式は崩れていくでしょう。私が忘れられないのは、第3回目の討論会で、司会者が「両候補の政策を実行すると、国債のGDP比で言うと、クリントン候補が●●%、トランプ候補が▲▲%になりますね」と言ったことです。この時、ヒラリーよりもトランプの方の数字が大きかったのです。これは、トランプが言葉は悪いですが、ばらまき政策をやることになるということです。この点で、共和党伝統の「国債を減らして、均衡財政を行う」という考えとは全く異なりますから、共和党がトランプという指導者の出現で、変質していく可能性があります。

 

 今回の選挙では私は予測を外すという恥ずかしい失態をしました。人間は失敗をすることで学ぶことができるということもありますが、やはり失敗はできればしない方が良いものです。このことを糧にして精進してまいりたいと思います。

 


(終わり)









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 古村治彦です。

 

 アメリカの歴史学者で、トランプ勝利をずっと唱えている人がいます。ワシントンにあるアメリカン大学の歴史学教授アラン・リクトマンです。リクトマンは予測のために、13カ条からなるポイントフォームを作り、そのうちの6個以上で不利となれば、現職大統領(現職大統領が属している政党の候補者)が負ける(相手が勝つ)と予測しています。

 

 リクトマンによると、「オバマ大統領が現職大統領として選挙に出られないこと、2014年の中間選挙では共和党が勝利したこと、オバマ政権2期目で外交政策と軍事政策で大きな成功がなかったこと、ヒラリー・クリントンにカリスマと国家的ヒーローの資格が欠如していること」で民主党のヒラリー・クリントンに不利な状況にあり、更に、民主党に対する不満がリバータリアン党への支持に向かっていると述べています。

 

 このような状況下、ヒラリーの側近フーマ・アベディンと別居中の夫アンソニー・ウェイナー元連邦下院議員のパソコンから機密情報を含む可能性があるEメールが押収されました。ウェイナーは未成年にわいせつな写真をスマートフォンから送り、その中に幼児である息子が写りこんでいたということで、捜査を受けています。その捜査の過程で、彼のパソコンが押収され、そこに妻アベディンのEメールもあったということのようです。

 

 これによってFBIが再捜査ということになり、ヒラリーにとっては大きなダメージとなります。これによってリクトマン教授の予測も変更されることなく、「トランプ勝利」で固定化されるのではないかと思います。

  

(貼り付けはじめ)

 

30年に渡って選挙を正確に予測した大学教授:トランプが勝つだろう(Prof correct on 30 years of elections: Trump will win

 

マーク・ヘンシュ筆

2016年10月28日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/303239-prof-correct-on-30-years-of-elections-trump-will-win

 

1984年の大統領選挙から30年に渡って、アメリカ大統領選挙の結果を正確に予測してきた大学教授がいる。この大学教授は、今年の選挙はドナルド・トランプが勝利するという予測から撤退していない。

 

アメリカン大学の歴史学教授アラン・J・リクトマンは金曜日の『ワシントン・ポスト』紙に掲載されたインタヴューの中で、「接戦にはなるであろうが、いくつかの重要な要素はまだトランプ勝利を示している」と語っている。

 

リクトマンはワシントン・ポスト紙に対して、現在ホワイトハウスを押さえている民主党について13カ条の文言について「真偽」を決めるシステムで結果を予測していると述べた。

 

リクトマンは、この13カ条の内6カ条以上が偽になった場合、現職の方の政党が選挙に負けることになると語った。

 

リクトマンは2016年の選挙について、「早い段階では私が考える要素は民主党にとって決定的ものではなかったのですが、選挙が近づくにつれて6番目の要素が民主党に偽となり、不利になったのです」と語った。

 

リクトマンは、この決定的な要素とは、第三党の候補者の強さであると述べている。リバータリアン党のゲーリー・ジョンソンは、現在の世論調査の結果を基にすると、5%以上の得票率を見込める。

 

リクトマンは、「この数字は現在ホワイトハウスを押さえている民主党に対する人々の不満を明確に表しているものです。予測はとても難しいのですが、現職大統領が所属する民主党に不利となる6つの重要な要素があるのです」と語った。

 

リクトマンのシステムで、民主党に不利になっている要素は他に次のようなものがある。オバマ大統領が現職大統領として選挙に出られないこと、2014年の中間選挙では共和党が勝利したこと、オバマ政権2期目で外交政策と軍事政策で大きな成功がなかったこと、ヒラリー・クリントンにカリスマと国家的ヒーローの資格が欠如していること、である。

 

リクトマンは、先月の別のインタヴューでもトランプ勝利を予言していた。そして、彼は最近になっても彼の作ったシステムによって、トランプ勝利と予測している。しかし、この予測も2つの要素によって変更されることもある。

 

リクトマンはリバータリアンのジョンソンの世論調査の数字について、「ジョンソンの得票率が5%以下となるようなら、予測を変更することになるでしょう」と述べた。ジョンソンの得票率が低下することは、民主党にとって不利となる要素が除去されることになるのだ。

 

「2つ目の要素はドナルド・トランプです。私はトランプほどの歴史上他に類を見ない、あしき前例となり得る、危険な候補者を見たことがありません。彼は歴史のパターンを変化させる可能性があります。彼は1860年のエイブラム・リンカーン大統領当選以来の選挙のパターンを変えてしまうかもしれません」とリクトマンは述べた。

 

投開票日まで2週間を切った段階で、全国規模と各州での最近の世論調査の結果では、ヒラリーとトランプとの間の差は縮まっている。それでもヒラリーはほとんどの激戦州でリードを保っている。

 

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