古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:ヒラリー・クリントン

 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。今回取り上げるヴィクトリア・ヌーランドについても詳しく書いています。是非手に取ってお読みください。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカの強硬な対ロシア政策とウクライナ政策をけん引してきた、ヴィクトリア・ヌーランド政治問題担当国務次官(省内序列第3位)が退任することが、上司であるアントニー・ブリンケン米国務長官によって発表された。ロシア政府関係者は「ヌーランドの退任はアメリカの対ロシア政策失敗の象徴」と発言している。まさにその通りだ。ウクライナ戦争に向けて散々火をつけて回って、火がコントロールできなくなったら、責任ある職から逃げ出すというあまりにも無様な恰好だ。ヌーランドは職業外交官としては高位である国務次官にまで昇進した。しかし、その最後はあまりにもあっけないものとなった。

 アメリカ政治や国際関係に詳しい人ならば、ヌーランドが2010年代から、ウクライナ政治に介入し、対ロシア強硬政策を実施してきたことは詳しい。私も第3作『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)、最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)で詳しく書いてきた。ヌーランドは家族ぐるみでネオコンであり、まさにアメリカの対外介入政策を推進してきた人物である。
 ウクライナ戦争はその仕上げになるはずだった。アメリカがロシアを屈服させるために、ウクライナに誘い込んで思い切り叩く、それに加えて経済制裁も行って、ロシアをぼろぼろにするということであった。しかし、目論見はものの見事に外れた。現在、ウクライナ戦争はウクライナの劣勢であり、アメリカが主導する西側諸国の支援もなく、情勢はロシア有利になっている。ヌーランドはまずこの政策の大失敗の詰め腹を切らされた形になる。

 そして、バイデン政権としては、ウクライナ問題で消耗をして、泥沼に足を取られている状態を何とかしたい(逃げ出したい)ということもあり、アジア重視に方針を転換しようとしている。対中宥和派であったウェンディ・シャーマン国務副長官が昨年退任し、国務次官ヌーランドが代理を務めていた。彼女としては、このまま国務副長官になるというやぼうがあったはずだ。しかし、バイデン政権は、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)でインド太平洋調整官(アジア政策担当トップ)を務めていたカート・キャンベルを国務副長官に持ってきた。先月には連邦上院で人事承認も行われた。ヌーランドは地位をめぐる政治的な争いに負けたということになる。また、アジア重視ということで、ヌーランドの重要性は失われて、居場所がなくなったということになる。

 ヌーランドは7月からコロンビア大学国際公共政策大学院で教鞭を執ることも発表された。ヌーランドが国務省j報道官時代に直接仕えた、ヒラリー・クリントン元国務長官がこの大学院の付属の国際政治研究所教職員諮問委員会委員長を務めており、ヌーランドは客員教員を務めることになっている。この大学院の大学院長であるカリン・ヤーヒ・ミロはイスラエルで生まれ育った人物で、国際関係論の学者であるが、アメリカに留学する前はイスラエル軍で情報将校を務めていたという経歴を持っている。ネオコンは、強固なイスラエル支持派でもあるということもあり、非常に露骨な人事である。

 ヌーランドがバイデン政権からいなくなるということは、ウクライナ戦争の停戦に向けての動きが出るということだ。アメリカは実質的にウクライナを助けることが難しくなっている。ウクライナ支援を強硬に訴えてきた人物がいなくなるということは、方針転換がしやすくなるということだ。これからのアメリカとウクライナ戦争の行方は注目される。

(貼り付けはじめ)

長年の対ロシアタカ派であるヴィクトリア・ヌーランドが国務省から退任(Victoria Nuland, Veteran Russia Hawk, to Leave the State Department

-仕事熱心な外交官であり、ウクライナ支持を断固として主張してきたヌーランドは、国務省のナンバー4のポストから辞任する。

マイケル・クロウリー筆

2024年3月5日(改訂:3月7日)

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2024/03/05/us/politics/victoria-nuland-state-department.html

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2021年に連邦上院外交委員会で証言する政治問題担当国務次官ヴィクトリア・ヌーランド

国務省で序列4位の高官であり、ウラジーミル・V・プーティン政権のロシアに対する強硬政策を断固として主張してきたヴィクトリア・J・ヌーランドが、30年以上の政府勤務を終えて今月退職する。

アントニー・J・ブリンケン国務長官は火曜日、自由、民主政治体制、人権、そしてアメリカによるこれらの大義の海外での推進に対するヌーランドの「激しい情熱(fierce passion)」を指摘する声明の中で、ヌーランドの国務次官職からの辞任を発表した。

ブリンケンは、ウクライナに関するヌーランドの取り組みを指摘し、それは「プーティン大統領の全面的な侵略に対抗するために不可欠(indispensable to confronting Putin’s full-scale invasion)」であると述べた。

ヌーランドは報道官など国務省の役職を数多く歴任し、ディック・チェイニー副大統領の国家安全保障問題担当副大統領次席補佐官を務めたこともある。しかし、ヌーランドは、プーティンの領土的野心と外国の政治的影響力に対して強い抵抗を組織することを長年主張し、ロシアの専門家として名を残した。

オバマ政権時代には国務省のロシア担当高官として、ウクライナ軍の対戦車ミサイル武装を主張したが失敗したが、バイデン政権ではより多く、より優れたアメリカ製兵器をウクライナに送ることを最も支持してきた。

熟練した官僚的実務家であるヌーランドは、鋭い機知と率直な態度で自分の主張を展開し、同僚から賞賛と恐怖が入り混じった反応を引き出した。ブリンケン国務長官は声明の中で、「彼女はいつも自分の考えを話す」と穏やかな表現を使った。

ヌーランドは2014年、ウクライナ政治に関する電話での通話で、ヨーロッパ連合(European UnionEU)を罵倒するような発言をしたことがきっかけとして、多くの人々に知られるようになったが、その通話は録音され、その録音が流出した。アメリカ政府当局者たちはこの流出をロシアの仕業だという確信を持っている。

バイデン政権下、ヌーランドはアメリカのウクライナ支援に懐疑的な人々の避雷針(lightning rod)となった。テスラの共同創設者イーロン・マスク氏は昨年2月、ソーシャルメディアサイトXに、「ヌーランドほどこの戦争を推進している人はいない」と書いた。

ヌーランドはロシアを弱体化させ、更にはプーティンを打倒しようという共同謀議を企てていると見なされている、ワシントン・エスタブリッシュメントの代理人(化身)としてモスクワで非難された。ロシア政府当局者や露メディアは、2014年初頭にキエフの中央広場で、最終的にクレムリンが支援するウクライナ指導者を打倒した、当時欧州・ユーラシア問題担当米国次官補だったヌーランドがデモ参加者たちに食料を配った様子を常に回想している。

ロシアのセルゲイ・V・ラブロフ外相は昨年、「2014年にウクライナでヴィクトリア・ヌーランド国務次官がテロリストにクッキーを配った後、政府に対するクーデターが起きた」と述べた。ヌーランドさんはクッキーではなくサンドイッチを配ったと語っている。

ヌーランドの辞任は、クレムリン支援の英語ニュースサイトRTによって重大ニューズとして扱われ、トップページに赤いバナーと「ヌーランド辞任」という見出しが掲げられた。

RTはロシア外務省報道官マリア・ザハロワの発言を引用し、ヌーランドの辞任は「バイデン政権の反ロシア路線の失敗」によるものだと述べた。ザハロワは、「ヴィクトリア・ヌーランドがアメリカの主要な外交政策概念として提案したロシア恐怖症(Russophobia)が、民主党を石のようにどん底に引きずり込んでいる」と非難した。

ヌーランドは、バイデン政権の最初の2年半の間、国務次官を務めた。その間、国務副長官を務めたウェンディ・シャーマンの退任に伴い、国務副長官代理を兼務して過去1年の大半を費やした。

ヌーランドはシャーマンの後任としてフルタイムで当然の候補者と見なされていた。しかし、ブリンケン長官は、国家安全保障会議(National Security CouncilNSC)アジア担当トップのカート・キャンベルを国務副長官に抜擢した。キャンベルの国務副長官就任は2月6日に連邦上院で承認された。

ブリンケン長官は、後任が決まるまで国務省のジョン・バス管理担当国務次官が代理としてヌーランドの職務を引き継ぐと述べた。

アナリストの一部は、ロシアのウクライナ侵略がバイデンの外交政策の多くを消耗させたにもかかわらず、キャンベルの選択を、バイデン大統領とブリンケン国務長官がアメリカと中国との関係の管理を最優先事項と考えていることの表れと解釈した。

ヌーランドは先月、人生の何百時間も費やしてきたウクライナの将来について公に語った。

ヌーランドは、ワシントンの戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)での講演で、「プーティ大統領がウクライナで勝利すれば、そこで止まることはないだろうし、世界中の独裁者たちは力ずくで現状を変えようと大胆になるだろう」と警告した。

ヌーランドは、「プーティンは私たち全員を待っていられると考えている。私たちは彼が間違っていることを証明する必要がある」と述べた。

2024年3月7日に訂正:この記事の以前の版ではヴィクトリア・ヌーランドの国務省での序列について誤って記述した。ヌーランドは序列第4位の役職であり、序列3位の外交官である。

※マイケル・クロウリー:『ニューヨーク・タイムズ』紙で国務省とアメリカの外交政策を取材している。これまで30カ国以上から記事を送り、国務長官の外遊に同行している。

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国務省の主要なリーダーであるヴィクトリア・ヌーランドがバイデン政権から離脱(Victoria Nuland, key State Dept. leader, to exit Biden administration

-長年外交官を務めてきたヌーランドはロシアに対する厳しい姿勢で知られていた。クレムリンはヌーランドの反ロシア姿勢を悪者扱いしてきた。

マイケル・バーンバウム筆

2024年3月5日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/national-security/2024/03/05/victoria-nuland-retires/

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2022年、キプロス。記者会見でメディアに対して話すヴィクトリア・ヌーランド

アントニー・ブリンケン国務長官は火曜日、ジョー・バイデン政権の最も強硬なロシア強硬派の1人で国務省序列第3位のヴィクトリア・ヌーランドが数週間以内に退任する予定であり、中東の危機を受けてアメリカ外交のトップに穴が開くと述べた。そしてウクライナでは大規模な大火災が発生する恐れがある。

ヌーランド政治問題国務次官は、以前はバラク・オバマ政権時代に国務省のヨーロッパ担当外交官のトップを務め、国務省の職員たちの間で広く人気があった。時には当たり障りのない態度や用心深さが報われる厳格な官僚制の中で、彼女はありのままの意見とクレムリンに対する厳しいアプローチで際立っており、クレムリンは彼女を悪者扱いした。

ヌーランドはウェンディ・シャーマンの退任後、昨年から7カ月間、国務省序列第2位の役職である国務副長官代理を務めていた。しかし彼女は、先月承認された元ホワイトハウスアジア戦略官トップのカート・キャンベルの国務副長官正式就任を巡る政権内争いに敗れた。バイデン大統領の決定は彼女の辞任の要因の1つであった。今回の人事異動により、国務省の最上級指導者トリオの中に女性は1人も残らないことになる。

ブリンケンは火曜日の声明で、ヌーランドが国務省内の「ほとんどの職」を歴任し、「幅広い問題や地域に関する百科全書的な知識と、私たちの利益と価値観を前進させるためのアメリカ外交の完全なツールセットを駆使する比類のない能力」を備えていたと述べた。

ヌーランドは1990年代にモスクワに勤務し、その後、ヒラリー・クリントン国務長官の下で国務省報道官になるまで、NATO常任委員代表を務めた。2013年末にキエフでクレムリン寄りの指導者に対する抗議活動が発生し、ロシアの不満の焦点となった際、彼女はヨーロッパ問題を担当するアメリカのトップ外交官として、キエフでのアメリカ外交で積極的な役割を果たした。記憶に残るのは、当時の大統領が打倒される前に、彼女がキエフ中心部マイダンでキャンプを張っていた抗議活動参加者たちにクッキーとパンを配ったことだ。

ヌーランドは、ドナルド・トランプが大統領に就任した後の2017年初頭に国務省を離れ、2021年に序列第3位の政治問題担当国務次官として復帰した。

ブリンケンは、ヌーランドの「ウクライナに関する指導層について、外交官や外交政策の学生が今後何年も研究することになる」と述べ、ロシアが2022年2月の侵攻に先立って軍を集結させる中、キエフを支援するヨーロッパ諸国との連合構築の取り組みをヌーランドが主導したと指摘した。

ロシア外務省はヌーランドの退職の機会を利用し、これはアメリカの対ロシア政策が間違っていたことを示す兆候だと宣言した。

ロシア外務省報道官マリア・ザハロワはテレグラムに「彼らは皆さんに理由を教えてくれないだろう。しかし、それは単純だ。バイデン政権の反ロシア路線の失敗だ。ヴィクトリア・ヌーランドがアメリカの主要な外交政策概念として提案したロシア恐怖症は、民主党を石のようにどん底に引きずり込んでいる。」と書いた。

職業外交官で管理担当国務次官を務めるジョン・バスが一時的にヌーランドの代理を務めることになる。

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反ロシア主張で知られる米幹部外交官であるヴィクトリア・ヌーランドが近く退職(High-ranking US diplomat Victoria Nuland, known for anti-Russia views, will retire soon

ブラッド・ドレス筆

2024年3月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/4509471-victoria-nuland-anti-russia-retire-ukraine/
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2023年1月26日、連邦議事堂にて。連邦上院外交委員会でロシアの侵攻について証言する政治問題担当国務次官ヴィクトリア・ヌーランド(中央)、国際安全保障問題担当国防次官補セレステ・ワーランダー(左)、米国際開発庁(U.S. Agency for International Development)ヨーロッパ・ユーラシア担当副長官エリン・マッキー。

ウクライナへの熱烈な支持と反ロシアで、タカ派の主張で知られるヴィクトリア・ヌーランド政治問題担当国務次官が数週間以内に退任する

アントニー・ブリンケン国務長官は火曜日にこのニューズを発表し、ヌーランドが「私たちの国と世界にとって重要な時期に外交を外交政策の中心に戻し、アメリカの世界的リーダーシップを活性化させた」と称賛した。

ブリンケンは声明の中で、「トリア(ヴィクトリア)を本当に並外れた存在にしているのは、彼女が堅く信じている価値、つまり自由、民主政治体制、人権、そしてそれらの価値観を世界中に鼓舞し推進する、アメリカの永続的な能力のために戦うことへの激しい情熱だ」と述べた。

ヌーランドは30年以上国務省に勤務し、6人の大統領と10人の国務長官の下で様々な役職を務めた。ヌーランドはキャリアの初期に、モスクワの米大使館で働き、モンゴル初の米国大使館の開設に貢献した。

ヌーランドは国務省の東アジア太平洋局にも勤務し、中国の広州に外交官として赴任した。 2003年から2005年まで副大統領(ディック・チェイニー)の国家安全保障問題担当補佐官を務め、その後、NATO常任委員代表を務めた。ヨーロッパ・・ユーラシア問題担当国務次官補を務め、2021年にジョー・バイデン大統領の下で国務次官に就任した。

ヌーランドはおそらく、2014年の事件で最もよく知られている。この事件では、彼女が駐ウクライナ米大使との通話中に「ファックEU」と発言した録音が漏洩し、世界中のメディアの注目を集めた。

ヌーランドのロシアに対する強い主張とウクライナへの支持は、彼女のその後のキャリアを決定付け、その間、キエフで親ロシア派の大統領が追放された後、モスクワがクリミア半島を不法併合した際の紛争で中心的な役割を果たした。

ヌーランドはロシアに対するタカ派的主張を理由に、アメリカの一部の右派から標的にされていた。彼女のコメントは、昨年クレムリンが非武装化されたクリミアに関する彼女のコメントを非難したことも含め、ロシア国内でも厳しい非難を集めた。

それでも、ブリンケンは、自分とバイデン大統領はヌーランドに感謝していると語った。ブリンケンは、彼女が「常にアメリカの外交官を擁護し、彼らに投資し、彼らを指導し、高揚させ、彼らとその家族が彼らにふさわしいもの、そして私たちの使命が求めるものを確実に得られるようにしている」と語った。

ブリンケンは火曜日、声明の中で次のように発表した。「ヌーランドは最も暗い瞬間に光を見出し、最も必要なときにあなたを笑わせ、いつもあなたの背中を押してくれる。彼女の努力は、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領の全面的なウクライナ侵略に対抗し、プーティン大統領の戦略的失敗を確実にするために世界的な連合を組織し、ウクライナが自らの足で力強く立つことができる日に向けて努力するのを助けるために必要不可欠だった」。

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ヴィクトリア・ヌーランド大使がコロンビア大学国際公共政策大学院の教員に加わる(Ambassador Victoria Nuland Will Join SIPA Faculty

2024年3月6日

https://www.sipa.columbia.edu/news/ambassador-victoria-nuland-will-join-sipa-faculty

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ヴィクトリア・ヌーランド大使は30年以上にわたりアメリカの外交官を務め、最後の3年間は政治問題担当国務次官を務めた。更には2023年7月から2024年2月まで国務副長官代理を務めた。ヌーランドは7月1日付で、コロンビア大学国際公共政策大学院(School of International and Public AffairsSIPA)国際外交実践担当キャスリン・アンド・シェルビー・カロム・デイヴィス記念教授に就任することが決定した。

ヌーランドはまた、国際公共政策大学院国際フェロープログラムの指揮を執る。このプログラムは、国際問題を研究するコロンビア大学の大学院生たちのための学際的なフォーラムを提供するものだ。更には、国際政治研究所(Institute of Global PoliticsIGP)客員教員に加わる。国際政治研究所は、国際政治研究所の使命を推進するための研究プロジェクトを実行する選ばれた学者と実務形で構成されている。

国務次官として、ヌーランドは地域および二国間政策全般を管理し、とりわけ世界中のアメリカ外交使節団を指導する国務省の複数の地域部門を監督した。

2021年に国務次官に就任する前、ヌーランドは民間のコンサルタント会社であるオルブライト・ストーンブリッジ・グループの上級顧問を務めていた。彼女はまた、ブルッキングス研究所、イェール大学、民主政治体制のための全米基金(National Endowment for DemocracyNED)でも役職を務めた。

国際公共政策大学院長カリン・ヤーヒ・ミロは次のように述べている。「ヴィクトリア・ヌーランド大使を私たちの教員として迎えられることを大変光栄に思う。ワシントンおよび海外での経験を反映した彼女の、苦心して獲得した多様な専門知識は、私たちの教室の教員として、また政策活動のリーダーとしての彼女の貢献をさらに高めることになるだろう。民主党と共和党の両政権の下で勤務した高官として、トリア(ヴィクトリア)は党派間の隔たりを乗り越える能力を実証しており、あまりに分断されている現在の社会を考えると、彼女は生徒たちのモデルとなるだろう。私は国際公共政策大学院コミュニティ全体を代表して、彼女を迎えることができて本当に嬉しく思う」。

ヌーランドの国務省からの退職は、3月5日にアントニー・J・ブリンケン米国務長官によって発表された。ヌーランドはオバマ政権下、国務省報道官(2011年5月-2013年4月)、ヨーロッパ・ユーラシア担当国務次官補(2013年9月-2017年1月)を務めた。国務省報道官時代は、当時のヒラリー・クリントン国務長官に直接仕えた。ヒラリー・クリントンは現在、国際公共政策大学院付属の国際政治研究所教職員諮問委員会委員長を務めている。

ヌーランドは、2005年6月から2008年5月まで、ジョージ・W・ブッシュ(息子)大統領の下で、アメリカ合衆国NATO常任委員代表を務めた。

ヌーランドは、ロシア語とフランス語に堪能であり、ブラウン大学で学士号を取得した。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。準備中に、イスラエルとハマスの紛争が始まり、そのことについても分析しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカは戦後、中東地域で大きな影響力を保持してきた。親米諸国と反米諸国が混在する中で、石油を確保するために、中東地域で超大国としての役割を果たしてきた。1993年にはオスロ合意によって、イスラエルとパレスティナの和平合意、二国間共存(パレスティナ国家樹立)を実現させた。しかし、中東に平和は訪れていない。パレスティナ問題は根本的に解決していない。今回、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はパレスティナ問題を「最終解決」させようとしているかのように、徹底的な攻撃を加えている。アメリカは紛争解決について全くの無力な状態だ。イスラエルを抑えることもできていないし。パレスティナへの有効な援助もできていない。

 アメリカの中東政策について、下の論稿では、「社会工学(social engineering)」という言葉を使っている。この言葉が極めて重要だ。「社会工学」を分かりやすく言い換えるならば、「文明化外科手術」となる。はっきり書けば、非西洋・非民主的な国々を西洋化する(Westernization)、民主化する(democratization)ということだ。日本も太平洋戦争敗戦後、アメリカによって社会工学=文明化外科手術を施された国である。アメリカの中東政策は、アラブ諸国に対して、西洋的な価値観を受け入れさせるという、非常に不自然なことを強いることを柱としていた。結果として、アメリカの註徳政策はうまくいかない。それは当然のことだ。また、アメリカにとって役立つ国々、筆頭はサウジアラビアであるが、これらに対しては西洋化も民主化も求めないという二重基準、ダブルスタンダード、二枚舌を通してきた。

 アメリカの外交政策の大きな潮流については、私は第一作『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所)で詳しく書いたが、大きくは、リアリズムと介入主義(民主党系だと人道的介入主義、共和党系だとネオコン)の2つに分かれている。第三作『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)で、私は「バイデン政権は、ヒラリー・クリントン政権である」と結論付けたが、ヒラリー・クリントンは人道的介入主義派の親玉であり、バイデンはその流れに位置する。従って、アラブ諸国を何とかしないということになるが、それではうまくいかないことは歴史が証明している。それが「社会工学」の失敗なのである。

 最新作『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)で、私は世界が大きく「ザ・ウエスト(西洋諸国)対ザ・レスト(西洋以外の国々)」に分裂していくということを書いたが、西洋による社会工学=文明化外科手術への反発がその基底にある。私たちは、文明化外科手術を中途半端に施された哀れな国である日本という悲しむべき存在について、これから向き合っていかねばならない。

(貼り付けはじめ)

「バイデン・ドクトリン」は物事をより悪化させるだろう(The ‘Biden Doctrine’ Will Make Things Worse

-ホワイトハウスは中東に関して、自らの利益のために野心的過ぎる計画を策定している。

スティーヴン・A・クック筆

2024年2月9日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/09/biden-doctrine-israel-palestine-middle-east-peace/

アメリカに「中東についてのバイデン・ドクトリン(Biden Doctrine for the Middle East)」は必要か? 私がこの質問を発するのは、トーマス・フリードマンが先週の『ニューヨーク・タイムズ』紙でバイデン・ドクトリンについて述べていたからだ。どうやらバイデン政権は、「イランに対して強く毅然とした態度(a strong and resolute stand on Iran)」を採用し、パレスティナの国家化(statehood)を進め、サウジアラビアに対して、サウジアラビアとイスラエルとの関係正常化(normalization)を前提とした、防衛協定(defense pact)を提案する用意があると考えられている。

フリードマンのコラムがホワイトハウス内の考え方を正確に反映しているなら、そしてそうでないと信じる理由はないが、私は「ノー」の評価を下すことになる。これまで中東変革を目的とした大規模プロジェクトを避けてきたジョー・バイデン大統領とその側近たちは、特にパレスティナ国家建設に関しては、噛みつく以上に多くのことを実行しようとしている。これが更なる地域の失敗になる可能性が高い。

第二次世界大戦後のアメリカの中東外交を振り返ると、興味深いパターンが浮かび上がってくる。政策立案者たちがアメリカの力を使って悪いことが起こらないようにした時は成功したが、ワシントンの軍事、経済、外交資源を活用して良いことを起こそうとした時は失敗してきた。

中東地域で国際的な社会工学(social engineering 訳者註:文明化外科手術)にアメリカが公然と取り組もうとしたきっかけは、1991年にまでさかのぼる。その年の1月から2月にかけて、アメリカはイラクの指導者サダム・フセインのクウェート占領軍を打ち破った。そしてその10ヵ月後、ソ連の指導者たちはこの連合を終わらせることを決定した。アメリカは、唯一残された超大国として独り立ちしたのである。冷戦に勝利したワシントンは、平和を勝ち取ること、つまり世界を救済することを決意した。中東でこれを実現するために、アメリカ政府高官が求めた主な方法は「和平プロセス(the peace process)」だった。

フセインによるクウェート吸収への努力が行われ、イスラエルとその近隣諸国との紛争との間に関連性がほとんどなかったにもかかわらず、イスラエルとアラブとの間に和平を築こうとするアメリカの努力は、砂漠の嵐作戦後のワシントンの外交の中心となった。もちろん、抽象的なレベルでは、イラクもイスラエルも武力によって領土を獲得していたが、1990年8月のイラクのクウェート侵攻と1967年6月のイスラエルの先制攻撃はあまりにも異なっていたため、比較の対象にはなりにくかった。

中東和平へのアメリカの衝動は、国際法(international law)というよりも、アメリカの力がより平和で豊かな新しい世界秩序の触媒になりうるという信念に基づくものだった。もちろん、これは主流の考え方から外れたものではなかった。結局のところ、アメリカは世界をファシズムから救ったのであり、ジョージ・HW・ブッシュ大統領がマドリードで平和会議を招集した当時、ソヴィエト共産主義は死にかけていた。

あらゆる努力にもかかわらず、ブッシュの中東における目標は依然として主にアラブとイスラエルの和平問題の解決に限定されていた。和平プロセスが決定的に変化する様相を呈したのはクリントン政権になってからである。 1993年の同じ週、イスラエルのイツハク・ラビン首相とパレスティナ解放機構の指導者ヤセル・アラファトが、当時のアメリカのアメリカ大統領ビル・クリントンと国家安全保障問題担当大統領補佐官アンソニー・レイクの支援と許可のもとでオスロ合意の最初の合意に署名した。ビル・クリントンとアンソニー・レイクは、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題大学院(SAIS)の学生と教職員の前に現れ、冷戦直後の世界におけるクリントン政権の米国外交政策の目標を述べた。クリントン大統領のアプローチの中心は、レイクが「民主政治体制の拡大(democratic enlargement)」と呼んだものだった。

クリントン率いるティームが中東の変化を促進する方法はパレスティナを通じてであった。クリントンは、イスラエル人とパレスティナ人の間の和平は、より平和で繁栄した統合された地域を生み出し、それによって中東の国家安全保障至上国家群の存在の理論的根拠を損なうことになると推論した。平和の後、アラブ世界では権威主義が民主的な政治制度に取って代わられることになる。主要な側近の一人の言葉を借りれば、「クリントンは変革の目標を自らに設定した。それはアラブ・イスラエル紛争を終わらせることによって中東を21世紀に移行させることだ」ということだ。

和平が政治的変化をもたらすという考えは魅力的だったが、クリントンはこの地域の権威主義的な政治の理由を見誤っていた。いずれにせよ、イスラエル人とパレスティナ人の間で紛争終結に向けた合意を成立させようとしたクリントンの努力は、ほぼ10年かけても実を結ばなかった。クリントンが大統領を退任すると、暴力がイスラエルとパレスティナの両地域を巻き込み、第2次インティファーダ(Intifada)が発生した。

クリントンの次の大統領ジョージ・W・ブッシュは当初、クリントンが中東和平に割いた時間とエネルギーに懐疑的だったが、実はブッシュはパレスティナ国家をアメリカの外交政策の目標と宣言した最初の大統領だった。そこに到達するために、彼は前任者の論理をひっくり返した。ブッシュのホワイトハウスにとって、パレスティナの政治機構を民主的に改革し、ヤセル・アラファトを追放して初めて和平が成立するということになっていた。

クリントン前大統領と同様、ブッシュは失敗した。大統領執務室をバラク・オバマ大統領に譲った時、パレスティナの民主政治体制も和平もパレスティナ国家も存在しなかった。クリントンとブッシュは、中東に対するアプローチがまったく異なる2つの政権にもかかわらず、中東の政治的・社会的変革という共通の野心的目標を共有していた。

イラクの変革であれ、いわゆるフリーダム・アジェンダによる民主政体の推進であれ、パレスティナ国家建設の努力であれ、中東においてアメリカは失敗を繰り返していると認識していながら、オバマもドナルド・トランプ大統領もバイデンもそのことを念頭に置いていなかった。新しい中東を社会工学的に設計したいという願望を持っていた。バイデンの場合、彼はイスラエル人とパレスティナ人を交渉させ、和平協定に署名させるための当時の国務長官ジョン・ケリーの奮闘を監督したが、二国家解決には悲観的な見方をした。バイデンの側近たちは就任直後、過去の政権の地域的野望は繰り返さないと明言した。

そして、2023年10月7日、ハマスによる約1200名のイスラエル人の残忍な殺害と、イスラエルによるガザ地区での徹底的な破壊を伴う軍事的対応が始まった。トーマス・フリードマンによれば、イスラエルとハマスの戦争が続き、ほとんどがパレスティナの民間人である死体が積み重なる中、バイデンは中東で成し遂げたいこと、つまり、石油の自由な流れを確保すること、イスラエルの安全保障に対する脅威を防ぐ手助けをすること、中国を出し抜くこと、は、再び外部から中東の変化を促すような新しく野心的なアメリカのドクトリンなしには実現しそうにないという結論に達したということだ。

公平を期すなら、イランがワシントンとの新たな関係を望んでいないことをホワイトハウスが理解したことは好ましい進展だ。また、サウジアラビアとの防衛協定は、中国との世界的な競争という点では理にかなっている。しかし、パレスティナの国家建設にアメリカが多額の投資をすることは、以前の取り組みのように失敗に終わる可能性が高い。

確かに、今回は違いがある。10月7日以降、専門家たちが何度も繰り返してきたように、戦争は新たな外交の機会を開く。しかし、イスラエルとパレスティナという2つの国家が並んで平和に暮らすことで、現在の危機から脱するチャンスが訪れると信じる理由はほとんど存在しない。

バイデンと彼のティームは、二国家解決を追求するしかないと感じているかもしれないが、自分たちが何をしようとしているのかを自覚すべきである。今回のイスラエル・パレスティナ紛争は、アイデンティティ、歴史的記憶、ナショナリズムといった、とげとげしい、しかししばしばよく理解されていない概念に縛られている。

イスラエル人とパレスティナ人の闘争には宗教的な側面もある。特にハマスとメシアニック・ユダヤ人グループ(messianic Jewish groups)は、ヨルダン川と地中海の間の土地を神聖化している。パレスティナの政治指導者たち(ハマスもパレスティナ自治政府も)は、ユダヤ教とパレスティナの歴史的つながりを日常的に否定している。これらの問題から生まれる対立的な物語は、バイデン政権が現在思い描いているような共存には向いていない。

そして、イスラエルとパレスティナの社会における残忍な政治が、長年にわたる当事者間の膠着状態を助長してきた。ガザを中心としたイスラエルとハマスの闘争は、イスラエル人がパレスティナ人の和平のための最低限の要求(完全な主権を持つ独立国家[a fully sovereign independent state]、エルサレムに首都設置[a capital in Jerusalem]、難民の帰還[a return of refugees])を受け入れることをより困難にする可能性が高い。同様に、パレスティナ人は、自分たちの鏡像であるイスラエルの最低限の和平要求に同意することはできないだろう。 イスラエル人が求めているのは、エルサレムをイスラエルの分割されていない永遠の首都とすること、1967年6月4日に引かれた線を越えて領土が広がる国家とすること、そしてパレスティナ難民を帰還させないことである。

新しいアイデアを失い、ガザ戦争で世界の競争相手である中国に立場を譲ることを懸念し、若い有権者たちからの支持の喪失を懸念しているバイデンとそのティームは、和平プロセスにしがみついているが、失敗に終わった事業であり、過去30年間で、今ほど、これ以上成功する見込みはない時期は存在しなかった。

ある意味、大統領を責めるのは難しい。和平プロセスの努力をしていれば安全なのだ。大統領の党内にはそれを支持する政治的支持がある。彼は努力したと言うことができる。中東を変革しようとするこの最新の動きが、おそらく何年にもわたる交渉の結論の出ない交渉の末にパレスティナ国家を生み出せなかった時、バイデンはとうに大統領職を終えていることだろう。

その代わりにアメリカは何をすべきか? これはとても難しい問題だ。それは、この問題が、解決不可能な紛争を解決するためのアメリカの力の限界を認識するように、特にアメリカの政策立案者、連邦議会議員、そしてワシントン内部(the Beltway、ベルトウェイ)の政策コミュニティに求めているからだ。

それでも、アメリカにできる重要なことは存在する。それは、イランがこれ以上地域の混乱を招くのを防がなければならないということだ。ワシントンは、既に起こっている地域統合の後退を食い止めるために努力しなければならない。そしてアメリカの指導者たちは、イスラエル人に対し、なぜイスラエルを支持する政治が変わりつつあるのかを説明することができる。ある意味では、これはイスラエル人とパレスティナ人の間の和平について、より利益をもたらす環境作りに役立つだろうが、それが実現し、実際に利益をもたらす保証はない。

2001年のある出来事を思い出す。イスラエルのアリエル・シャロン首相との記者会見で、コリン・パウエル米国務長官(当時)は「アメリカは当事者たち以上に和平を望むことはできない(The United States cannot want peace more than the parties themselves)」と発言した。これこそがバイデン大統領が陥っている罠なのである。

※スティーヴン・A・クック:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、米外交評議会中東・アフリカ研究部門エニ・エンリコ・マテイ記念上級研究員。最新作『野心の終焉:中東におけるアメリカの過去、現在、未来(The End of Ambition: America’s Past, Present, and Future in the Middle East)』が2024年6月に発刊予定。ツイッターアカウント:@stevenacook

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』が発売になる。今回の記事は、最新刊の中で言及した人物たちの重要な論文をご紹介する。論文の著者はカート・M・キャンベルとイーライ・ラトナーだ。それぞれ、前著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』でも詳しくご紹介し、最新刊でも取り上げているが、バイデン政権におけるアジア政策立案の主要人物たちである。キャンベルはバイデン政権で、ホワイトハウスの国家安全保障会議(National Security Council)のインド・太平洋調整官(Coordinator for the Indo-Pacific)を務め、最近になって、米国務副長官(Deputy Secretary)に指名された人物である。ラトナーは、米国防次官補(インド太平洋安全保障担当)を務めている。ここで重要なのは、両者の肩書についている「インド太平洋」という言葉だ。これは、アメリカが対中封じ込めのために生み出した言葉である。アジアへ軸足を移す、Pivot to Asiaという、ヒラリー・クリントン国務長官が打ち出した重要な概念が根底にある。
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カート・キャンベル
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イーライ・ラトナー

 下の記事で重要なのは、アメリカがあくまで中国と潰し合いにならないようにしながら、競争していくということだ。そして、アメリカ一国では中国に対応できる段階を過ぎており、アジア地域の同盟諸国だけではなく、ヨーロッパ諸国にも対中封じ込めに参加させるということだ。ウクライナ戦争勃発後、NATOは対中、対ロシア政策のために、アジア太平洋地域への進出を企図し、東京に事務所を設置するということを発表した。それに対して、フランスが反対論を唱えている。また、キャンベルが肝いりでスタートさせた、日米豪印4カ国のQUAD(クアッド)や米英豪3か国のAUKUS(オーカス)という枠組みは、対中封じ込めのための枠組みである。しかし、オーストラリアとインドは米中両にらみの形を取り、日本だけが真面目にアメリカ一辺倒の姿勢を取っている。こうしたことを最新刊で詳しく取り上げている。

 下に掲載した論文が発表されたのが2014年だ。今から10年も前のことだが、この論文に書かれていることが現在、実現している。著者のキャンベルとラトナーは、2016年の選挙でヒラリー・クリントンが勝利することを前提にして、論文を書いたと思われる。そして、2017年のヒラリー政権で、現在と同じような役職に就いて、対中封じ込め政策を行おうと考えていただろう。それが、ドナルド・トランプの勝利によって4年ずれたということになる。こうした重要論文を読むことは、これから先を予想する上でも非常に重要なのである。

(貼り付けはじめ)

極東の誓約(Far Eastern Promises

-ワシントンがアジアに集中すべき理由

カート・キャンベル、イーライ・ラトナー筆

2014年5・6月号

『フォーリン・アフェアーズ』誌

https://www.foreignaffairs.com/articles/east-asia/2014-04-18/far-eastern-promises

アメリカは、アジア太平洋地域により大きな関心と資源を投入するために外交政策を方向転換する(reorienting its foreign policy to commit greater attention and resources to the Asia-Pacific region)という、重大な国家プロジェクトの初期段階にある。このアメリカの優先事項の再定義は、南アジアと中東への10年以上にわたる熱心な関与の後、戦略的再評価が切望されている時期に現れたものである。この地域はアメリカのリーダーシップを歓迎し、政治的、経済的、軍事的投資に対するプラスの見返りによってアメリカの関与に報いる地域である。

その結果、オバマ政権は、アジアへの「軸足移動(ピヴォット、pivot)」「再均衡(リバランシング、rebalancing)」として知られる外交、経済、安全保障の包括的な構想を打ち出している。この政策は、クリントン政権とジョージ・W・ブッシュ政権による重要な措置を含め、1世紀以上にわたってアメリカがこの地域に関与してきたことを基礎としている。バラク・オバマ大統領が正しく指摘しているように、アメリカは現実的にも、レトリック上も、既に「太平洋の大国(Pacific power)」である。しかし、リバランシングは、アメリカの外交政策におけるアジアの位置づけを大幅に引き上げるものである。

ヒラリー・クリントン国務長官が2011年に『フォーリン・ポリシー』誌に寄稿した論文で、この戦略の最も明確な表現である「ピヴォット」という言葉を初めて使ったときから、新しいアプローチの目的と範囲に関する疑問が浮上していた。それから約3年、オバマ政権はいまだにこの概念を説明し、その約束を果たすという難題に直面している。しかし、この政策が直面した厳しい監視や短期的な挫折にもかかわらず、大きな転換が進行中であることは疑いない。そして、ワシントンが望むと望まざるとにかかわらず、アジア地域の繁栄と影響力の増大、そしてアジア地域が突きつける巨大な課題のおかげで、アジアはアメリカからより多くの注目と資源を集めることになるだろう。問題は、アメリカがアジアを重視するかどうかではなく、必要な決意と資源と知恵をもってアジアを重視できるかどうかである。

●東向きにそして南下(EASTBOUND AND DOWN

アジア太平洋地域には、逃れられない引力がある。世界人口の半分以上が居住し、世界最大の民主政治体制国家(インド)、第2位と第3位の経済大国(中国と日本)、最も人口の多いイスラム教徒国家(インドネシア)、そして10大軍隊のうち7つが存在する。アジア開発銀行は、今世紀半ばまでにこの地域が世界の経済生産の半分を占め、世界10大経済大国のうちの4つ(中国、インド、インドネシア、日本)を占めるようになると予測している。

しかし、アジアをこれほど重要な地域にしているのは、そのめまぐるしい規模だけでなく、進化の軌跡である。フリーダム・ハウスによれば、過去5年間、アジア太平洋地域は世界で唯一、政治的権利(political rights)と市民的自由(civil liberties)において着実な改善を記録してきた。また、新興市場(emerging markets)が急速な経済成長を維持できるのかという疑問があるにもかかわらず、アジア諸国は、低迷し不透明な世界経済の中で、依然として最も有望なビジネスチャンスの一端を担っている。同時にアジアは、北朝鮮の挑発的な行動、地域全体の国防予算の増大、東シナ海や南シナ海での関係を揺るがす厄介な海洋紛争、自然災害や人身売買、麻薬取引といった非伝統的な安全保障上の脅威など、慢性的な不安定要因(sources of chronic instability)とも闘っている。

アメリカは、アジアが今後どのような道を歩むかについて、否定できないほどはっきりした関心を持っている。アメリカ国勢調査局によれば、アジアはアメリカの主要輸出先であり、ヨーロッパを50%以上も上回っている。アメリカ経済分析局によれば、アメリカの対アジア直接投資とアジアの対米直接投資はともに過去10年間で約2倍に増加しており、アメリカの海外直接投資先として最も急成長している10ヵ国のうち4カ国を中国、インド、シンガポール、韓国が占めている。アメリカはまた、この地域に5つの防衛条約の同盟国(オーストラリア、日本、フィリピン、韓国、タイ)を持ち、ブルネイ、インド、インドネシア、マレーシア、ニュージーランド、シンガポール、台湾とは戦略的に重要なパートナーシップを結んでいる。日本と韓国にある主要な米軍基地は、ワシントンがアジアとそれ以外で力を発揮するための中心的存在である。

アメリカの軍事同盟は数十年にわたり、この地域の安全保障を支えてきたが、軸足移動の主な目的の一つは、そうした結びつきを深めることにある。近年ワシントンは、大国間の紛争を防ぎ、シーレーンを開放し、過激主義と闘い、非伝統的な安全保障上の脅威に対処するよう、アジアのパートナーに働きかけている。日本と韓国はアメリカとの共同作戦でますます重要な役割を担う態勢を整え、アメリカ軍はオーストラリアと協力して水陸両用能力を開発し、フィリピンと協力して自国の海岸を取り締まる能力を高めている。その結果、より強力な同盟関係と、より安全な地域が実現した。

これらは、いずれも中国を包囲したり、弱体化させたりする努力を示唆するものではない。それどころか、北京との関係をより強固で生産的なものにすることは、リバランシング戦略の主要な目標である。中国を封じ込めようとするどころか、アメリカはここ数年、前例のないほど頻繁なトップレヴェルの会談を通じて、より成熟した二国間関係を構築しようと努めてきた。軍事対軍事の関係さえも軌道に乗りつつあり、時には北京が提案する活動レヴェルに米国防総省がついていけないこともある。

●アジアへ軸足を移す、そしてアジア域内で軸足を築く(A PIVOT TO -- AND WITHIN – ASIA

リバランシング戦略はまた、アジア太平洋地域の多国間機関へのアメリカの関与(U.S. engagement)を大幅に増やすことも求めている。オバマ政権の下、アメリカは東アジア地域の首脳が毎年集う東アジア・サミットに加盟し、東南アジア友好協力条約に調印して東南アジア諸国連合(ASEAN、アセアン)に対するアメリカの関与を強化し、ジャカルタにアセアン担当の常任大使を置いた。これらの重複する制度は、そのスローペースとコンセンサスの必要性から不満が溜まることもあるが、地域協力を促進し、国境を越えた複雑な課題に対処するためのルールとメカニズムのシステム構築に役立っている。たとえば2013年6月、アセアンは18カ国から3000人以上が参加した初の人道支援・災害救援演習を開催した。

一方、アメリカは、アジア太平洋地域がますます世界経済の成長を牽引するという新たな現実に対応している。オバマ政権は、2012年に米韓自由貿易協定を発効させ、12カ国による大規模な自由貿易協定である環太平洋パートナーシップ協定(Trans-Pacific PartnershipTPP)の交渉完了を強力に推し進めることで、アメリカの経済的利益を促進してきた。TPP交渉に参加する国の多くは、マレーシアやシンガポールなど東南アジアの活気ある市場であり、この地域の地政学的重要性(geopolitical importance of that subregion)の高まりを反映している。実際、アメリカのアジアへの軸足を移すことは、アジア内での軸足を築くことである。ワシントンは、北東アジア諸国への歴史的な重点を、インドネシア、フィリピン、ヴェトナムといった東南アジア諸国への新たな関心とバランスを取りながら、世界で最も活気のある経済圏のいくつかとの双方向の貿易と投資を強化しようとしている。2010年、ワシントンとジャカルタは、医療、科学技術、起業家精神など幅広い分野での協力を深めるため、「包括的パートナーシップ(comprehensive partnership)」を締結した。

米国防総省が同地域の軍事態勢に変更を加えたのも、同地域におけるアメリカの優先順位を再調整したいという同様の願望が背景にある。北東アジアの米軍基地は、ワシントンの戦力投射(to project power)や戦争遂行能力の中心であり続けているが、ミサイル攻撃に対してはますます脆弱になっており、南シナ海やインド洋における潜在的な災害や危機からは比較的遠い場所にある。一方、東南アジアの国々がアメリカの軍事訓練や災害対応への援助を受けることに関心を高めていることから、アメリカはこの地域における軍事的足跡を多様化し、オーストラリアのダーウィンに数百人のアメリカ海兵隊を駐留させ、シンガポールに2隻の沿岸戦闘艦を配備している。

アメリカ軍の姿勢に対するこうした変更は、挑発的である(provocative)、もしくは無意味である(meaningless)と批判されている。どちらの容疑も的外れだ。こうした取り組みは攻撃性を示すものではない。彼らは主に自然災害への対応などの平時の活動に貢献しており、アメリカの戦闘能力には貢献していない。そして、参加した海兵隊員や艦船の数が一見控えめに見えることは、アメリカ軍との共同演習や訓練の比類のない機会を得ることができる、アメリカのパートナー諸国の軍隊に提供する大きな利益を覆い隠している。

オバマ政権はアジアへの軸足を移すことで、アメリカの経済的・安全保障的利益を高めるだけでなく、文化的・人的交流を深めることを目指している。オバマ政権はさらに、この軸足の移動によって、アメリカがこの地域の人権と民主政治体制を支援することを期待している。ミャンマー政府は、政治犯の釈放、長年の懸案であった経済改革の実施、組織的権利の促進や報道の自由拡大など、目覚ましい前進を遂げている。特に少数民族の保護など、さらなる進展が必要ではあるが、ミャンマーはかつて閉鎖的で残忍だった国が変革の一歩を踏み出した強力な例であり、アメリカは当初からこの改革努力にとっての不可欠なパートナーであった。

●外交政策は決してゼロサムゲームではない(FOREIGN POLICY IS NOT A ZERO-SUM GAME

ピヴオット反対派は、主に3つの反対論を唱えている。第一に、ピヴォットによって不必要に中国と敵対することを懸念する声がある。この誤解は、北京との関与を深めることがリバランシング政策の中心的かつ反論の余地のない特徴であるという事実を無視している。新たなアプローチの例としては、「米中戦略・経済対話(U.S.-China Strategic and Economic Dialogue、米国務・財務長官と中国側担当者が出席する包括的な一連の会議)」の年次開催や、「戦略的安全保障対話(Strategic Security Dialogue)」の設置が挙げられる。戦略的安全保障対話では、日中両国は海上安全保障やサイバーセキュリティといった機密事項について、これまでにないハイレヴェルの話し合いを行ってきた。アジアにおけるアメリカ軍のプレゼンスが高まり、ワシントンが中国の近隣諸国への働きかけを強めているため、緊張が高まるかもしれない。しかし、米中二国間の関係は、ピヴォットによって生じるいかなる意見の相違も、より安定し協力的な米中関係という広い文脈の中で対処されるような形で発展している。

第二の反対論は、アフガニスタンやシリアでの紛争、エジプトやイラクでの不安定な情勢、イランと欧米諸大国との長期にわたる対立を考えれば、ワシントンの焦点を中東からアジアに移すのは賢明でない、あるいは非現実的だという主張から生じている。しかし、この批判はリバランシング戦略を表面上でとらえての浅い理解に依拠している。この見方によれば、中東と南アジアは米国の力(power)と威信(dignity)を奪っており、ピヴォットは実際には、より平和で収益性の高いアジア太平洋の海岸に目を向けることで、切り捨てて逃げ出そうとしているということになる。オバマ政権が中東におけるアメリカの存在感を減らそうとしているのは確かだ。しかし、資源は有限であるとは言いながら、外交政策はゼロサムゲームではない。アジアにより多くの関心を払うことは、中東での戦略的敗北を認めることになるという批判は、決定的な現実を見逃している。過去10年間、ワシントンがより多くの関心を払いたいと考えているアジア諸国は、中東と南アジア全域の平和と安定の推進に大きな利害関係を静かに築いており、アメリカがこれらの地域での影響力を維持することを強く望んでいる。

つい最近までは、アジア諸国の大半は自国の開発ばかりに関心を寄せ、他地域の問題は他人事と考える傾向があった。ジョージ・W・ブッシュ大統領のアジア政策の最も重要な成功の一つは、この地域の新興大国(region’s rising powers)が世界の他の地域でより多くの貢献をするよう促したことだ。ブッシュ政権下で、多くの東アジア諸国政府は初めて「地域外(out of area)」という視点を打ち出し、中東や南アジアでの外交、開発、安全保障により多く関与するようになった。日本はアフガニスタンの市民社会発展(civil society development)の主要な支援者となり、学校や市民団体に資金を提供し、刑事司法、教育、医療、農業の分野でアフガニスタンの人々を訓練した。「アラブの春(Arab Spring)」をきっかけにして、韓国は中東全域の開発を支援し始めた。インドネシア、マレーシア、タイは、アフガニスタンとイラクの医師、警察官、教師の訓練プログラムに物資援助を提供し、オーストラリアとニュージーランドはアフガニスタンで戦うために特殊部隊を派遣した。中国でさえも、イランの核開発への野心を抑制し、公海上の海賊行為に対処し、アフガニスタンの将来を形作ることを目的とした舞台裏の、非公式の外交(behind-the-scenes diplomacy)により積極的である。

もちろん、ワシントンからの働きかけは、アジア諸国が中東への関与を強めている要因の一つにすぎない。アジアは毎日約3000万バレルの石油を消費しており、その量はEUの2倍以上である。アジア各国の政府は、アメリカが中東から早急に撤退すれば、自国のエネルギー安全保障と経済成長に受け入れがたいリスクが伴うことを知っている。その結果、彼らは10年以上にわたって、アメリカの安定化の役割を代替するのではなく、補完するために、中東に多額の政治的・財政的資本を投資し、場合によっては軍を派遣してきた。端的に言えば、ワシントンのアジアのパートナーは、軸足の移動を支持するが、アメリカが中東から離脱するという見通しを支持することはないだろう。

軸足移動方針に反対する3つ目の反対論は、予算削減の時期におけるこのアプローチの持続可能性(sustainability)に関するものである。国防費が減少する中、懐疑論者たちは、アメリカがアジア地域の同盟諸国を安心させ、挑発しようとする者たちを思いとどまらせるために必要な資源をどのように投資できるのか疑問に思っている。特に中国の力と影響力が増大し続けている中で。答えは、アジアに向けたリバランスには劇的な新たな資金は必要ない、ということだ。むしろ、米国防総省はより柔軟になり、より良い支出方法を見つける必要があるだろう。例えば、アメリカは陸軍全体の規模を縮小する中で、アジアにおける軍事的プレゼンスを維持し、地域の安全保障環境により適した海空軍の能力に投資すべきだ。そして、アメリカの国防費がすぐには大幅に増加する可能性が低いことを考慮すると、アメリカ政府は、より多くの教育的および専門的交流を実施し、多国間軍事演習を強化し、アメリカ軍が不要になった装備を引き継ぎ、アジア各国の軍事能力を向上させるために共同計画を推進するなど、努力を行うべきだ。

●バランス(均衡)を取る行動(BALANCING ACT

リバランスに反対する最も一般的な議論は精査に耐えないが、それでもこの政策は大きな課題に直面している。その最たるものが人的資本の不足であろう。10年以上にわたる戦争と反乱に対する闘争の後、アメリカはイラクにおける民族間の対立、アフガニスタンにおける部族間の違い、紛争後の復興戦略、アメリカ軍特殊部隊と無人機の戦術に精通した兵士、外交官、情報専門家の全世代を育成し、登用してきた。しかしワシントンは、アメリカ政府全体にアジア専門家たちの持続的な幹部を育成するための同等の努力をしておらず、驚くほど多くの政府高官が、キャリアの終わりに近い高官の地位に就いてから初めてこの地域を訪問している。どんなに優秀な公務員であっても、アジアでの経験がなければアジアの複雑な問題に対処するのは難しいからだ。したがって、アジアへの軸足移動は、米国防総省だけでなく、非軍事部門の政府機関の予算にも影響を与えるだろう。なぜなら、アメリカは、アメリカの外交官、援助要員、通商交渉担当者、情報専門家たちが、仕事をうまくこなすために必要な語学力とアジアでの経験を確保するために、より多くの投資を行うからである。

軸足移動はまた、他の地域、特に中東が確実に供給し続ける危機の着実な流れに振り回されることになるだろう。同時に、「アメリカ軍の帰国」を求める圧力が強まることも間違いなさそうだ。第一次世界大戦から1990年から91年にかけての湾岸戦争に至るまで、アメリカの近代的な紛争は全て、国民が政治家や政府関係者に国内問題に集中するよう圧力をかけてきた。過去13年間に起きた各戦争は、この本能的な偏狭さ(instinctive insularity)を再び引き起こした。金融危機後の経済回復が遅々として進まないことにアメリカ国民が苛立ちを募らせており、偏狭さが増大している。アメリカ政治には国際主義や強力な防衛を求めることで起きるひずみが依然として存在するが、アメリカ連邦議会には、アメリカが海外に関与することは、たとえアジアのような、アメリカの経済的安寧にとって重要な地域であっても、より困難な新時代を迎えるかもしれないという微妙な(そしてそうでない)兆候が出現しつつある。アジアに関しては、オバマ政権の残り数年間、そしてそれ以降も、やるべきことは山積している。

●軸足移動を行うためのパートナー諸国(PIVOT PARTNERS

アジアでは、経済と安全保障は切っても切れない関係にあり、アメリカは軍事力だけではリーダーシップを維持できない。だからこそ、TPPを成功させることは、海外でも議会でも厳しい交渉を必要とするが、最優先事項なのである。この協定はアメリカ経済に即効的に利益をもたらし、保護主義に引きずられることのない長期的な貿易システムをアジアに構築するだろう。交渉においてアメリカにさらなる影響力を与えるため、連邦議会は貿易促進に関する迅速な権限を速やかに復活させるべきだ。この制度の下で、TPPやその他の自由貿易協定を交渉した後、ホワイトハウスは連邦議会での賛否を問う投票を実施するように働きかける。オバマ政権はまた、アメリカのエネルギーブームを活用し、アジアへの液化天然ガスの輸出を加速させ、アジアにおける同盟諸国やパートナー諸国のエネルギー安全保障を強化するとともに、アジアの発展に対するアメリカの強い関与を示すべきである。

南シナ海における潜在的な危機を管理する一方で、イランと北朝鮮に対するアプローチの協調を強めることで、ワシントンと北京の深化し続ける関与はすでに成果を上げている。しかし、1998年にビル・クリントン大統領が表現したように、「戦略的パートナー(strategic partner)」であると同時に、後にジョージ・W・ブッシュ(子)大統領が表現したように、「戦略的競争相手(strategic competitor)」でもある、台頭する中国との関係をうまく取り扱うことは、アメリカにとってますます難しくなっている。

中国が東シナ海と南シナ海における領有権の現状を変えようとしていること、たとえば、東シナ海で日本が管理する島々の上に「防空識別圏(air defense identification zone)」を設定することは、当面の課題である。アメリカは中国に対し、修正主義的な行動は安定した米中関係、ましてや習近平国家主席がオバマ大統領に提案した「新しいタイプの主要国関係(new type of major-country relationship)」とは相容れないことを明確にしなければならないだろう。ワシントンは最近、政権高官たちが中国の広範な領有権主張の合法性に公の場で疑問を呈し、南シナ海に2つ目の防空識別圏を設定することに警告を発したことで、正しい方向へ進むための一歩を踏み出した。

東シナ海の向こう側では、日本の安倍晋三首相が数十年にわたる経済停滞から脱却し、日本に新たな誇りと影響力を与えようとしている。ワシントンは東京に対し、特に日本の帝国主義的過去をめぐる論争に関しては、自制心と繊細さ(restraint and sensitivity)をもって行動するよう促し続けなければならないだろう。安倍首相は最近、靖国神社を参拝した。靖国神社には、第二次世界大戦中に犯した戦争犯罪で有罪判決を受けた人々を含む、日本の戦没者が祀られている。この参拝は、国内では安倍首相を支持する政治家もいたかもしれないが、国際的には高い代償となった(The visit might have helped him with some political constituencies at home, but the international costs were high)。ワシントンにおいては疑問が生じ、韓国との関係をさらに悪化させ、中国は安倍首相が政権を握っている限り、日本と直接交渉したくないという姿勢を強めた。

この緊迫した外交情勢の中で、アメリカは、日本がアジア地域と世界において安全保障上の役割をより積極的に果たせるよう、日本の自衛隊と協力することになる。これには、実際には完全に合理的な措置であり、長い間待ち望まれていたにもかかわらず、日本の憲法再解釈と軍事近代化を反動的または軍国主義的であると特徴づける中国のプロパガンダに対抗することが含まれる。アメリカはまた、日韓関係改善に多大な政治資本を注ぎ続けなければならないだろう。この日韓二国間の関係強化は、北朝鮮がもたらす巨大かつ増大する脅威に対処するのに役立つだろう。

東南アジアの課題は北東アジアの課題とはまったく異なるが、アメリカの国益にとって重要であることに変わりはない。カンボジア、マレーシア、ミャンマー、タイを含む東南アジアの多くの国々は、程度の差こそあれ、外交政策を変更しかねない政治的混乱を経験している。このような状況の中で、ワシントンは民主政治体制と人権の基本原則を守らなければならないが、その際、独断的に行ったり、アメリカの影響力を低下させたりするようなことをしてはならない。勝者に賭けるのではなく、教育、貧困削減、自然災害への対応など、誰が政権を握ろうともこの地域の人々にとって最も重要な問題に焦点を当てることが最善のアプローチとなるだろう。

アジアの多国間フォーラムへのアメリカの参加を増やすことに加え、ワシントンは、南シナ海の主権紛争に対処するために国際法と仲裁を利用する努力を全面的に支援することによって、ルールに基づく地域秩序の発展を支援すべきである。フィリピンは、中国と競合する領有権を国際海洋法裁判所に提訴した。具体的な主張の是非について、今のところ判断を下すことなく、ワシントンはアジア地域の全ての国に対し、このメカニズムを公に支持するよう呼びかけることで、国際的なコンセンサス(合意)を形成する手助けをすべきだ。

アメリカは単独でアジアへのリバランスを行うことはできない。国際法や制度構築などの分野で多大な貢献ができるヨーロッパ諸国の参加が不可欠である。二国間関係が許せば、ワシントンはインドやロシアとも東アジアにおける協力拡大の機会を探るべきだ。そしてもちろん、この地域、特に東南アジアの国々が、アメリカの努力を補完するリーダーシップとイニシアティヴ(主導権)を発揮することも必要である。アジアへの軸足移動の重要点は、各国政府が強制や武力ではなく、ルールや規範、制度を使って対立を解決する、開かれた平和で豊かな地域を育成することである。アジアへの軸足移動はアメリカのイニシアティヴであるが、その最終的な成功はワシントンだけが実現するものではない。

※カート・キャンベル(KURT M. CAMPBELL):アジア・グループ会長兼CEO。2009年から2013年まで米国務次官補(東アジア・太平洋担当)。イーライ・ラトナー(ELY RATNER):新アメリカ安全保障センター上級研究員、アジア太平洋安全保障プログラム副部長。ツイッターアカウント: @elyratner

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 今年の5月、ジョー・バイデン大統領の国内政策担当大統領補佐官・ホワイトハウス国内政策会議議長を務めた、スーザン・ライスが退任した。ライスは外交政策の専門家として知られ、バラク・オバマ政権では国家安全保障問題担当大統領補佐官と米国連大使を務めた。2つの役職は共に閣僚級のポジションだ。オバマ政権下での国務長官就任が確実視されていたが、2011年のリビア・ベンガジ事件についてテレビ番組に出演しての発言で大きな批判を浴び、連邦上院の人事承認が必要な役職に就くことが不可能になった。
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バラク・オバマとスーザン・ライス
 ジョー・バイデン政権が発足し、ライスは国内政策担当大統領補佐官・ホワイトハウス国内政策会議議長に起用された。ライスは大学院時代から外交政策畑一筋であったため、国内政策担当に起用されたことは驚きをもって迎えられた。ライスは国内政策担当大統領補佐官・ホワイトハウス国内政策会議議長として、新型コロナウイルス感染拡大阻止、学生ローン救済問題、糖尿病患者に必要なインシュリンの上限額設定、移民問題、南部国境問題などを担当した。よりはっきりと書けば、副大統領格として政権内部を取り仕切った。政権発足から2023年2月までバイデン大統領の首席補佐官となったロン・クレインとスーザン・ライスはオバマ政権下においてエボラ出血熱対応でタッグを組んだ間柄であった。バイデン政権の国内問題はライスが対応したということになる。カマラ・ハリスにはそうした能力がないということは分かっていたから、スーザン・ライスが起用された。スーザン・ライスが退任と言うのは国内問題についての一応の対応が終わったという政権内の判断もあるだろう。

そして、後任にはニーラ・タンデンが起用された。タンデンは国内政策の専門性を持ち、ビル・クリントン政権時代からホワイトハウスで働いていた。ファースト・レイディだったヒラリーの国内政策担当補佐官を務めた経験を持つ。また、オバマ政権下では医療保険制度改革(オバマケア)で重要な役割を果たした。バイデン政権では大統領上級顧問(医療保険制度・デジタル担当)、大統領秘書官を務めてきた。
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ニーラ・タンデンとジョー・バイデン

  ニーラ・タンデンはヒラリー派のど真ん中の人物であり、カマラ・ハリスとの関係も深い。タンデンは自身が設立メンバーとなり2003年に創設されたシンクタンク「アメリカ進歩センター(Center for American ProgressCAP)」において2011年に所長となった。このCAPはヒラリー派の牙城である。タンデン自身も「クリントン・ロイヤリスト(Clinton Royalist):ヒラリー・クリントンの忠実な支持者」と『ニューヨーク・タイムズ』紙に報道されたことがある。

そして、カマラ・ハリス副大統領の妹であるマヤ・ハリスが研究員を務めていた。タンデンとハリス姉妹にはインド系という共通点もある。CPAという場所と妹を通じて、ヒラリー・クリントンとカマラ・ハリス副大統領はつながっている。そのキーパーソンがニーラ・タンデンである。

カマラ・ハリスはバイデン政権一期目のここまで、目立った仕事はさせてもらえない。南部国境問題を担当させてもらったが、うまくいかなかった。国内政策担当大統領補佐官がスーザン・ライスということで、ライスに対して批判は集まったが、ハリスはほぼ無視されている状況だ。批判さえされないというのは、「好き嫌い」を超えての「無関心」ということになる。ハリスは透明人間のような存在感だ。ライスが退任し、タンデンが国内政策担当大統領補佐官・国内政策会議議長就任で、ハリスの存在感が増すことになるだろう。より正確に言えば、ヒラリーの代理人として行動するということになるだろう。
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ヒラリー・クリントンとマヤ・ハリス
 タンデンはバイデン政権発足時にホワイトハウス行政予算管理局長に指名された。この役職は連邦上院の人事承認が必要だ。タンデンはツイッター上で共和党を攻撃していたが、それだけでなく、同じ民主党内の進歩主義派や保守派を揶揄し批判した。そのために、人事承認を得られずに、就任は否決された。「タンデンはヒラリー派の重要人物だ」ということで、人事が否決させたことも考えられる。そのタンデンがバイデン政権で重要な役職に就くことになった。
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カマラ・ハリスとヒラリー・クリントン(若い頃)

今回の人事について考えられることは、バイデン政権二期目はヒラリー色が強まるということだ。スーザン・ライスはベンガジ事件によって国務長官就任の可能性を断たれた。ベンガジ事件はヒラリー・クリントン国務長官(当時)の失策であったにもかかわらず、だ。そのため、ライスにはヒラリーのために働く気などない。ヒラリー色が強まる、ヒラリー院政と言うべきバイデン政権二期目に付き合う義理などない。アントニー・ブリンケン米国務長官、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官もバイデン政権一期目で退任するだろう(サリヴァンが国務長官に就任する可能性は残っているが)。大統領の任期8年間を全うするというのは大変なことだ。外交政策分野の重要な役職でヒラリー系の人物たちがバイデン政権二期目になって登場してくるということになると、2024年からの世界は不安定化するということになる。それまでにウクライナ戦争は停戦しておかねばならない。また、世界に不安定をもたらす要素をできるだけ減らしておく必要もある。

 宣伝になって恐縮だが、ここに出てくる人物たちは全て拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』で取り上げている。バイデン政権について理解するためには拙著は非常に有効であると自負している。今からでもぜひ読んでいただきたい。

(貼り付けはじめ)

スーザン・ライスがバイデン大統領の国内政策担当大統領補佐官を退任(Susan Rice to step down as Biden domestic policy adviser

アレックス・ガンギターノ筆

2023年4月24日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/3966064-susan-rice-to-step-down-as-biden-domestic-policy-adviser/

ジョー・バイデン大統領は月曜日、スーザン・ライス国内政策担当大統領補佐官が退任すると発表した。

ライスはバイデン政権発足当初から補佐官を務め、銃乱射事件から学生ローンまで、政治色の強い国内問題を数多く担当した。バイデン大統領は声明の中でライスの功績を称揚し、「スーザン・ライスほど能力が高く、アメリカ国民のために重要な事績を成し遂げようとする決意に満ちた人物は存在しない」と述べた。

バイデンは続けて次のように述べた。「リーダーとして、また同僚としてのライスを際立たせている要素は、彼女が自分の役割に真剣に取り組み、緊急性と粘り強さをもたらすこと、行動と結果に対する彼女の方向性、そして彼女がこの仕事に取り組む誠実さ、謙虚さ、ユーモアである」。

バイデン大統領はライスの退任日がいつになるかは明言しなかったが、NBCは彼女が5月26日にホワイトハウスを去る予定であると報じた。

バイデンがこれから選挙モードに突入し、早ければ火曜日にも再選を表明すると見られている中でのライスの補佐官退任発表となった。

バイデン政権の移民問題や南部国境の危機への対応には批判が集まっている。またジェフ・ザイアントが新しい大統領首席補佐官が就任してわずか数カ月後に、ライスの退任が発表された。NBCによると、ライスとザイアントは高校時代からの知り合いだということだ。

ライスはオバマ政権時代に国家安全保障問題担当大統領補佐官と国連大使を務めた。バイデンは声明の中で、ライスの外交政策における経歴に触れ、彼がライスを国内政策最高責任者に指名した当初は人々を驚かせたと述べた。

バイデンは、ライスが国家安全保障問題担当大統領補佐官と国内政策担当大統領補佐官の両方の役職を担当できる能力を持つ唯一の人物であることを指摘した。

バイデンは、医療保険制度改革法(オバマケア)の拡大、国家精神衛生戦略への取り組み、インシュリン費用35ドルの上限設定、銃乱射事件削減への取り組み、警察改革の推進、マリファナへの新たなアプローチの設定、学生の債務救済、移民制度への取り組みなど、彼女の功績に感謝した。

バイデン大統領は「功績を挙げれば切りがないが、どれもスーザンなしでは実現不可能だっただろう」と述べた。
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スーザン・ライスがバイデン大統領の国内政策担当大統領補佐官を退任(Susan Rice to Step Down as Biden’s Domestic Policy Adviser

-ライスはバイデン政権でより政局化されている諸問題のいくつかを監督してきた。それらの問題の中には銃規制、学生ローン救済、移民が含まれる。

ゾラン・カンノ=ヤングス、アイリーン・サリヴァン筆

2023年4月24日

https://www.nytimes.com/2023/04/24/us/politics/susan-rice-biden.html#:~:text=WASHINGTON%20%E2%80%94%20Susan%20Rice%2C%20President%20Biden's,Ms.

ワシントン発。ジョー・バイデン大統領の国内政策担当大統領補佐官であったスーザン・ライスは、移民問題、銃規制、学生ローン救済など、バイデン政権下で、最も政治問題化された諸問題のいくつかに対処してきたが、来月退任するとホワイトハウスが月曜日に発表した。

バラク・オバマ大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官や国連大使を歴任したライスは、ホワイトハウスがアメリカ南部国境での不法移民の越境をめぐる圧力に直面し、バイデン政権が国境捜査官による移民追放を許可したトランプ時代の公衆衛生法第42条を解除する準備を進める中で退任する。

ライスの補佐官としての最後の勤務日は5月26日だ。

ライスの在任中、インシュリン価格の上限設定、医療保険の拡大、超党派の銃制度改革の可決など、立法面での功績が目立った。しかし、彼女はまた、移民問題や他の分裂問題に対する政権のアプローチについて批判を浴びた。

本『ニューヨーク・タイムズ』紙は先週、ライスのティームに対しては移民児童労働危機の拡大を示す証拠を繰り返し示されていたと報じ、その中には複数のスタッフが人身売買の兆候が増加していると警告した2021年のメモも含まれていたと、内部事情に詳しい関係者が暴露する内容も含まれている。

退任が発表された後にインタヴューを受けたライスは「児童労働や移民の児童労働に関するシステム上の問題について私たちは報告を受けたことはなかった。私はそのことを報告するメモを目にしたことはない」と述べた。

ライスは、当初から補佐官としての勤務は2年間にすると予定していたという。

ライスは「勤務期間もだいたい2年半くらいになる。もし2年半くらいになるなら、夏前に退任して、夏を楽しみ、家族と一緒に過ごしたり、ちょっと旅行したりする時期にしようと考えていた」と語った。

バイデン大統領は、国内政策会議をリードする役割にライスを指名したことで多くの人々を驚かせた。この会議は、国家安全保障会議に比べてより規模が小さく、名前もよく知られていなかった。2020年の大統領選挙においては、ライスはバイデンの副大統領候補として名前が挙がっていたし、これまでの経歴から国務長官と関係がある役職に就く可能性があった。

しかし、2012年にリビアのベンガジにあるアメリカ公使館がテロ攻撃を受け、4人のアメリカ人が死亡した事件への対応をめぐって共和党の攻撃の的となっていた。この論争により、彼女が連邦議会の承認を必要とする役職に就ける可能性は低くなった。

「ライスはバイデン大統領が国内政策担当に選んだことに驚いていた」とロン・クレインは述べている。クレインはバイデン大統領の前首席補佐官であり、政権移行期間中にライスに電話をかけてこのニューズを伝えた人物である。

クレインは次のように述べている。「彼女は、“あなたも知っているでしょう、私は国内政策の専門家じゃないのよ”と言っていた。私は“そのことは分かっているよ、スーザン、しかし、私はこれまで君がホワイトハウスで働いてきたことを見ていて、困難な問題にも対処して、仕事をやり遂げることができる人だと知っている”と答えた」。

月曜日、バイデン大統領はライスの業績を称えた。

バイデンは声明の中で、「国家安全保障問題担当大統領補佐官と国内政策担当大統領補佐官の両方を務めた唯一の人物として、スーザンの公的な職における業績は歴史に残るものだ」と述べた。

ライスの退任を最初に報じたのは、NBCニューズであった。

ライスは、自動保育ややホームヘルス分野の補助員への投資など、バイデン大統領の気候変動・社会支出パッケージの全てを議会で法案通過させられなかったことを後悔していると述べた。ライスは、メンタルヘルスの問題を含む様々な問題への取り組みについて誇りに思うと語った。彼女は「もし私たちがそうした問題に懸命に取り組まなければ、より厳しい問題が起きたことだろう」と述べた。

複数の政府関係者は、ライスが2022年1月に警察改革の大統領令の初期草案が流出し、警察組合の支持を危うくした後、警察組合との交渉に没頭した時のことを記憶している。彼女は、警察による殺人に関して人種間格差について言及することを譲らないことを明らかにした、と複数の当局者が語った。警察組合は結局、バイデン政権が殺傷力の行使に関する部分の文言を変更したことに満足し、支持を表明した。

ライスはバイデンを長年にわたりよく知っている。オバマ政権の国家安全保障問題担当補佐官を務めた時、彼女のオフィスは副大統領のオフィスと非常に近く、お手洗いの場所が一緒だった。ライスは、バイデンが当時彼女のオフィスを「アポなし(unannounced)」訪問することが多く、そのことを気に入っていたと述べた。

国境管理問題のバイデン政権のアプローチに関して、民主党と共和党両方が激しく批判し、ライスはその批判に耐えてきた。最近、ニュージャージー州選出のボブ・メネンデス連邦上院議員(民主党)は、政権のアプローチによって、バイデン大統領は「亡命者否定大統領(asylum denier in chief)」になったと述べ、ライスが制限的な強制措置の背後にいると非難した。

移民の権利擁護団体であるナショナル・デイ・レーヴァラー・オーガナイジング・ネットワークのパブロ・アルバラードは「ライス補佐官の在任中は、移民の権利と人権に関するホワイトハウスの悪しき決定が次から次へと下された」と述べている。

ライスは月曜日、移民問題は「純粋に強制執行だけで対処できるものではない」と述べた。

ライスは「私たちは法を執行する責務を担っている。しかし、同時に、正当な保護ニーズや難民申請をしている人々の主張を聞き、彼らのケースを法的に判断することを可能にする義務もある」と述べた。

※ゾラン・カンノ=ヤングス:バイデン政権のホワイトハウスで、国土安全保障と過激主義を含む国内問題と国際問題を幅広く担当するホワイトハウス特派員。2019年に国土安全保障担当の特派員として『ニューヨーク・タイムズ』紙に入社した。

※アイリーン・サリヴァン:国土安全保障省担当のワシントン特派員。AP通信で働いた経験を持ち、調査報道の分野でピューリッツア賞を受賞している。

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バイデン大統領は二―ラ・タンデンを新しい国内政策担当大統領補佐官に指名(Biden names Neera Tanden as new domestic policy adviser

アレックス・ガンギターノ筆

2023年5月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/3990218-biden-neera-tanden-domestic-policy-adviser/

ジョー・バイデン大統領は金曜日、退任するスーザン・ライスの後任として、ニーラ・タンデンを国内政策担当大統領補佐官に指名すると発表した。

タンデンはバイデン政権下で大統領上級顧問とホワイトハウス秘書官の2つの役職を務めてきたが、後任にステファニー・フェルドマンが就任する。フェルドマンは長年バイデンの補佐官を務めており、大統領次席補佐官兼ホワイトハウス国内政策上級顧問を務めている。

バイデンは声明の中で、「ニーラ・タンデンが引き続き、経済的流動性や人種的公平性から医療、移民、教育に至るまで、私の国内政策の立案と実施をこれから推進することを発表でき、それを嬉しく思う」と述べた。

タンデンは、ホワイトハウスの3大主要政策会議のいずれかを率いる史上初のアジア系アメリカ人となる。タンデンは、センター・フォ・アメリカン・プログレスとセンター・フォ・アメリカン・プログレス・アクション・ファンドの会長兼CEOを務めた経験を持つ。

バイデンは政権発足当初の2021年、タンデンを行政管理予算局長に指名した。彼女は、アメリカ進歩センターでの仕事に端を発した論争の中で、連邦上院民主党の中道派からの任命支持が得られず、指名を取り下げた。彼女は、ミッチ・マコーネル連邦上院少数党(共和党)院内総務(共和党)を『ハリー・ポッター』の登場人物ヴォルデモートに例えるなど、危険なツイートをしていた。

タンデンは以前、オバマ前大統領の下で医療保険制度改革担当の上級顧問を務めていた。

バイデンは声明の中で「タンデンは、医療保険制度改革法(オバマケア、Affordable Care Act)の策定に関して重要な役割を果たし、クリーン・エネルギー補助金や効果の高い銃制度改革など、私のアジェンダの一部となった主要な国内政策の推進に貢献した。ニーラは実績を積む過程で、彼女が国内政策担当大統領補佐官として監督することになる重要なプログラムのいくつかに関して知識と経験を蓄え、その洞察力が私の政権とアメリカ国民に大いに貢献すると確信している」と述べた。

タンデンは大統領選挙における選挙運動にも携わっており、国内政策担当大統領補佐官への昇格は、大統領が再選を目指して動き出した1週間後のことだ。彼女はオバマ・バイデン大統領選挙キャンペーンで国内政策担当部長、ヒラリー・クリントン大統領選挙キャンペーンで政策担当部長を務めた。

バイデン大統領は先月、ライスが国内政策担当大統領補佐官から退任すると発表した。ライスは政権発足当初から国内政策担当大統領補佐官を務め、銃規制から学生ローンまで政治問題化した諸問題に対処した。

フェルドマンはバイデンが副大統領時代にバイデンの下で働いた。オバマ政権が終了後にはデラウェア大学で働き、その後2020年の大統領選挙でバイデン陣営に参加し、そして、ホワイトハウスで働くようになった。バイデンはフェルドマンについて、「もっと長く働いてくれて、最も信頼できる補佐役の一人」と述べている。

バイデンは更に金曜日、ザイン・シディクを国内政策会議の筆頭副議長に昇格させると発表した。シディクは以前、経済流動化担当大統領次席補佐官を務めた。
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バイデンが国内政策担当大統領補佐官にニーラ・タンデンを指名(Biden names Neera Tanden as his domestic policy adviser

-タンデンはスーザン・ライスの後任となる。ライスは今月末に政権から離れる予定となっている。

アダム・キャンクリン、エリ・ストコロス筆

2023年5月5日

『ポリティコ』誌

https://www.politico.com/news/2023/05/05/biden-to-name-neera-tanden-as-his-domestic-policy-adviser-00095566

ジョー・バイデン大統領は金曜日、ニーラ・タンデンが次のホワイトハウス国内政策会議議長を務めると発表した。

タンデンは、長年にわたり民主党側の有能な人物として活躍してきた。今月末に政権を去る予定のスーザン・ライスの後任として補佐官に就任する。タンデンはこの1年半、ホワイトハウスの上級顧問や秘書官(staff secretary)を務めてきた。政権発足当初は行政管理予算局(Office of Management and Budget)の責任者に指名されたものの、連邦上院の反対でこの人事は流れてしまった。

バイデンは人事交替発表の声明の中で次のように述べている。「ニーラは、実力を蓄積していく過程で、彼女が国内政策担当大統領補佐官として監督することになる重要なプログラムに関わってきた。その洞察力は、私の政権とアメリカ国民に貢献してくれると確信している」。

さらにホワイトハウスは、オバマ政権時代から長年バイデンの補佐官を務めているステフ・フェルドマンがタンデンの後任として秘書官を務めると発表した。

バイデンは再選キャンペーンを準備しているが、彼の再選はインフラ整備、気候、ヘルスケアにまたがる一連の国内政策の成果を効果的に実施できるかどうかにかかっている。こうした重要な状況下で、タンデンは国内政策担当大統領補佐官に起用されることになった。ライス議長下の国内政策会議は、来週から解禁されるトランプ政権時代の厳格な国境政策である公衆衛生法第42条を置き換えるための政権の戦略を考案する際にも中心的な役割を果たしていた。

タンデンは民主党の政策サークルで豊富な経験を持ち、以前は進歩主義的なシンクタンクであるセンター・フォ・アメリカン・プログレスを運営していた。また、オバマ政権では医療保険担当の高官を務め、医療保険制度改革法(オバマケア、Affordable Care Act)の策定に貢献した。

彼女の起用は共和党側、そして、攻撃的だった彼女のツイッターアカウントの標的になっていた民主党側の各連邦議員からも不安視されそうだ。

彼女の攻撃的なツイートが原因で、共和党やジョー・マンチン上院議員(ウエストヴァージニア州、民主党)は、タンデンの行政管理予算局長指名に強固に反対したのだ。国内政策会議議長の役割は連邦上院の承認を必要としない。

タンデンにコメントを求めたが返事はなかった。

(貼り付け終わり)

(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ジョー・バイデン大統領のワシントンDCにある古い事務所とデラウェア州ウィルミントンにある自宅ガレージから、バラク・オバマ政権の副大統領を務めていた時代の政府機密文書が発見された。発見は昨年11月2日の中間選挙直前であったが、アメリカ政府はこの事実をすぐには発表せず、今年に入ってCBSニューズがスクープ報道して、それに追随する形でホワイトハウスは事実として認めた。

 ヒラリー・クリントンが国務長官時代に私的なEメールアドレスと私的なサーバを使って、機密情報を含む公的な情報をやり取りしていたこと、ドナルド・トランプ前大統領の邸宅からも政府機密文書が発見されたこと、そして、今回のバイデン大統領の事務所と自宅から機密文書が発見された。子のようなことが続くというのは、アメリカの公文書管理に関して緩みが出ているということになるだろう。そして、公文書のほとんどは大した中身のものではなくて、あってもなくても良いものがほとんどということなのだろうと推察される。

 バイデン政権にとっての問題は、現在、連邦下院で過半数を握っている共和党が、バイデン大統領と息子のハンター・バイデンのウクライナとの関係について追及しているが、見つかった公文書の中にウクライナ関連のものがあったということである。これは、共和党側からすれば、バイデン父子がウクライナを「個人所有」「私有化」していた論理構成で攻勢をかけるということになる。

 中間選挙の前に公文書発見が公表されなかったのは、ヒラリー・クリントンに結び付けられ、ヒラリーの二の舞となることを避けたかったという意図があったのは間違いないところだ。これが選挙前に発表されていたら、ヒラリーのEメール問題に絡められ、「Lock Him Up !(彼を逮捕せよ!)」というスローガンが全米各地で叫ばれていたことだろう。民主党側としては、この問題を大きくしたくないところだろう。しかし、政治とはけたぐり合いであり、より過激に言えば殺し合いである。どんな材料でも相手を攻撃できるとすれば利用する。利用されないように問題を封じ込めるという守りも必要だ。

 その守りが甘ければ、蟻の一穴から堤防が崩壊するということが起きる。バイデンのホワイトハウスは守りが甘いということになる。特に「きまじめ」「きちんとしている」ということを売りにバイデンは大統領に当選しているので、このような問題は意外なダメージを与えることになる。

(貼り付けはじめ)

更に5つの機密文書がバイデンのウィルミントンの自宅から発見と弁護士たちが発言(Five more classified documents found at Biden’s Wilmington home, lawyer says

ブレット・サミュエルズ筆

2023年1月14日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/3813424-five-more-classified-documents-found-at-bidens-wilmington-home-lawyer-says/

ホワイトハウスは土曜日、ジョー・バイデン大統領の副大統領時代の機密文書が、木曜日にデラウェア州ウィルミントンのバイデンの自宅で更に5通発見されたと発表した。

バイデン大統領特別顧問であるリチャード・サウバーは声明の中で、水曜日の夜にバイデンの自宅のガレージに隣接する部屋で1通の機密文書が発見されたと述べた。その文書を発見した弁護士は、セキュリティクリアランス(機密文書取扱適格性)を持っておらず、結果として捜索を一時中断したとサウバーは述べた。

セキュリティクリアランスを持っているサウバーは、司法省(DOJ)への文書の転送を促進するために木曜日の夜にウィルミントンに到着した。

サウバーは「同行した司法省の職員に機密文書を移している間に、一緒にあった資料の中からさらに5ページ、合計6ページの分類記号が発見された。同行した司法省の職員はすぐにそれらを手に入れた」と述べた。

5通の資料が更に発見されたことで、バイデンの古い事務所とウィルミントンの自宅で発見された機密表示のある資料の数は、およそ20通になった。バイデンは金曜日の夜にウィルミントンの自宅に到着した。バイデンは頻繁に週末を自宅で過ごしている。

サウバーは、追加の質問について、この問題を今後検討するために木曜日に任命された特別検察官に照会し、ホワイトハウスが特別検察官に協力することを改めて表明した。

サウバーは声明の中で次のように述べた。「大統領の弁護団は、ペンシルヴァニア大学バイデンセンターの文書を公文書館に、ウィルミントンの自宅にある文書を司法省に提供するために、直ちに自発的に行動した。私たちは発見された文書について、どのように判別され、どこで発見されたか、具体的な詳細について公表した」。

バイデン大統領の弁護団は11月2日、ペンシルヴァニア大学の名誉教授を務めていたバイデンが2017年から2019年にかけて使っていたワシントンDCの事務所で、機密事項が記されたおよそ10通の書類を発見した。その発見は、CBSニューズが報道した後、月曜日にホワイトハウスによって事実確認がなされた。

水曜日には、2カ所目で更なる文書が見つかったと報じられた。ホワイトハウスは木曜日、事務所での文書発見後、弁護士がデラウェア州ウィルミントンとレホボトビーチにあるバイデンの自宅を捜索し、バイデンのウィルミントンの自宅ガレージで機密資料を発見し、さらに隣の部屋でも1通の文書を発見したことを確認した。

5つの追加文書は木曜日の夕方に発見されたが、土曜日の朝まで調査結果は公表されなかった。

ホワイトハウスは、このプロセスに関する質問について、司法省へ注意が向くように何度も逸らした。メリック・ガーランド司法長官は、文書の取り扱いに関する調査を担当する特別検察官(special counsel)を任命した。

しかし、バイデン政権に対しては、調査結果について国民に開示するのが遅いという批判を浴びている。

バイデン大統領の個人弁護士であるボブ・バウアーは、土曜日に発表した声明で、「本職は適切な場合には、公共の透明性の重要性と、調査の完全性を守るために必要な確立した規範と制限のバランスを取ろうとした」と述べました。

バウアーは「これらの考慮は、捜査が進行中の間、捜査に関連する詳細の公開を避けることを必要とする。定期的な情報公開は、当局が新しい情報を得る能力を弱めるか、状況が進展するにつれて情報が不完全になる危険性がある」と付け加えて述べた。

バイデン大統領は、副大統領時代の機密文書が見つかったことについて驚いていると述べ、政府の機密資料の取り扱いについて真剣に受け止めていると繰り返し述べている。

バイデン大統領は、自宅のガレージは施錠されていると述べており、ある時点で、文書のいくつかは彼の個人的な図書館で見つかった可能性があると示唆した.

今回の特別検察官の任命により、直近の2名の大統領が機密文書をどのように扱ったかを審査する特別検察官が2人存在することになるが、それぞれのケースの内容は大きく異なっている。

ガーランド司法長官は11月、トランプ前大統領の機密資料の取り扱いに関する調査を監督する特別検察官を任命した。連邦政府当局は昨年、トランプ前大統領のフロリダ州の邸宅で、最高機密と記された文書を含む数百点の政府機密資料を発見した。

トランプ大統領と彼のティームが数カ月にわたって捜査当局の捜査活動を妨害し、国立公文書館が求める文書の引き渡しに協力しなかったため、FBI8月にトランプの邸宅の式内を捜索した。
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民主党はバイデンに関する議論がクリントンのEメール問題の再来となるのではないか危惧している(Democrats worry Biden controversy will be Clinton emails repeat

エイミー・パーネス筆

2023年1月14日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/3812626-democrats-worry-biden-controversy-will-be-clinton-emails-repeat/

民主党は、ジョー・バイデン大統領のデラウェア州ウィルミントンの自宅と前事務所で見つかった機密文書をめぐる論争が、予想される再選キャンペーンに大きく立ちはだかることを懸念しているようだ。

民主党側は、バイデン大統領がこの問題を克服できると確信していると述べる一方で、多数の機密文書の一斉公開が、選挙戦開始を控えた大統領にとって問題を複雑にしているとも述べている。

非公式の場では、民主党側はバイデンが何が起こったかを説明し、2016年の民主党大統領候補ヒラリー・クリントンのメール論争(元国務長官クリントンが政府の仕事をする際に私用メールアカウントを使用していたことを認めた)と比較することがどれほど厳しいことになるだろうかと考えている。

また、2022年8月に機密文書が押収されたフロリダ州の邸宅をFBIが捜索したことをめぐり、トランプ前大統領に対する民主党の攻撃を複雑化させ、共和党に贈り物を与えることになる。

この問題について率直に話すために匿名を条件にした民主党系のあるストラティジストは次のように語っている。「これは大統領にとってかなり大きな問題になるだろう。共和党は常にスキャンダルを煽動するのが得意で、ここでのバイデン大統領の状況はトランプに関わる状況とは全く異なるにもかかわらず、彼らはこれが大きな問題であるかのように行動するだろう」。

民主党は内心ではこの問題の存在と重要性を認めているが、公の場ではトランプとバイデンの状況は劇的に異なると反論している。

民主党系ストラティジストのヴェテランであるロデル・モリノーは「リンゴとオレンジ位に違うのだ」と語った。同時に、民主党は「共和党がこれをウォーターゲート事件以来の大スキャンダルに仕立て上げることに対して徹底的に準備する必要がある」と警告を発した。

モリノ-は「この事件は確実な武器ではないが、共和党側は試してくるだろう」と述べた。

連邦下院監視・説明責任委員会の共和党側委員たちは今週、バイデンが所有していた機密文書について調査を開始した。

共和党全国委員会(RNC)は今週、プレスリリースやソーシャルメディア上で、バイデンが自家用のコルヴェットを自宅のガレージにバックで入れている映像ファイルの公開などこの話題に多くのエネルギーを注いでいる。「これは、ジョー・バイデンが機密文書を隠していた、鍵のかかったガレージの映像だ」と、共和党全国委員会のリサーチアカウントからツイッター上に投稿されたものもあった。

テッド・クルーズ連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)はツイッターで、2016年に進行中のクリントンの問題と冗談交じりに結びつけた。「ビッグストーリーが明日やってくる。ヒラリーのサーバもジョーのガレージにあった」とジョークを述べた。

木曜日と金曜日、記者たちは、このニューズがバイデンの再選出馬の決断に影響を与えるかどうか政権関係者たちに厳しく質問した。

金曜日に行われたホワイトハウスの記者会見で、大統領上級顧問ケイシャ・ランス・ボトムズ(公共関与担当)は、「機密文書の発見が再出馬の決断に影響するか」と記者団から質問された。

ボトムズは「そのような質問があったことは大統領にお知らせする。大統領自身がこの質問について話すだろう」と答えるにとどめた。

機密文書の発見がバイデン大統領の再出馬の決断に影響を与えるかどうか質問されたホワイトハウスのアンドリュー・ベイツ副報道官は「それはない」と答えた。

ベイツは「バイデン大統領は、司法省の独立性を尊重し、政治から切り離すという約束を守っている 。バイデン大統領の政策が評価され、民主党大統領として60年ぶりの中期選挙の好結果をもたらした後も含めて、出馬の意向を彼から直接聞いているはずだ」とも述べた。

ベイツは次のように述べた。「インフレ率の低下、過去50年間で最低の失業率、アメリカ国内の雇用の回復、薬剤費の引き下げなど、全て先週だけのことですが、大統領の関心はアメリカの家族のためにさらなる進歩を遂げることだ。また、連邦下院共和党のヴィジョンである富裕層の減税のための中間層への増税、インフレの悪化、中絶の禁止などに直面している」。

2020年の大統領選挙でバイデン選対に参加したある側近は、もし機密文書の開示が問題になければ、共和党は何か別のことで大統領を攻撃しているだろうと語った。しかし、文書問題でバイデンを追及することは、同じテーマでトランプがお荷物になっているため、彼らにとっては負け戦になる。

この側近は、トランプが何ページもの公文書を所有しいて、それを提出するようにというFBIの要求になぜ抵抗したのかという疑問に対して共和党は答えるのが難しいはずだと述べた。この側近はまた、中間選挙で実証されたように、誰がより法律を守っているかで争うことは共和党にとって勝ち目のない状況になると述べ、FBIへの資金提供拒否、1月6日の連邦議事堂への侵入者の擁護、2020年大統領選挙結果についての陰謀論を指摘した。

最終的には、有権者たちはインフレ率の低下を含む問題にもっと関心を持つだろうとこの側近は語った。

機密文書論争が起こる前、バイデン大統領と側近たちは一連の良いニューズの流れに乗っていた。

それは、中間選挙が予想以上に成功を収め、民主党が連邦上院の過半数を握り、2024年の大統領再選に向けてバイデンの地位が強化されたからだ。

共和党は、2024年に誰が党を率いるべきか、党はトランプから脱却する必要があるのか、といった議論に分断されているように見える。先週の連邦下院議長選挙も共和党内の分裂を浮き彫りにした。

バイデンは世論調査の数字を少しずつ上げ、インフレの鈍化など経済も改善の兆しを見せている。

こうした一連の良いニューズは、バイデンが大統領選への再出馬を表明する準備として、幸先のよいスタートを切ることになった。

しかし、バイデンが機密文書を所持していることが、最初はワシントンのかつてのオフィスで、その後ウィルミントンの自宅ガレージ内で発見されたことから、民主党は神経質になっている。木曜日の特別検察官の任命は更に不安を煽った。

木曜日の夜、MSNBCに出演したバイデン大統領の元報道官ジェン・サキは、その不安の一端を口にした。

サキは「誰も特別検察官任命を望んでいない。大統領選に出馬するかもしれない前の年に、『今年は特別検察官がいて欲しい』と考えることはないだろう。誰もそんなことは望んでいない」と述べた。ホワイトハウスは、これは「政権移行期のずさんなスタッフの仕事」であり、「長期的には、たとえ短期的な痛みを伴っても、彼らの利益になる」可能性があると確信しているとサキは付け加えた。 

連邦議会民主党議会選挙対策委員会委員長を務めたスティーヴ・イスラエル元連邦下院議員(ニューヨーク州)は、オバマ前大統領が2012年に再選に成功する前のティーパーティーの多数派から学んだ教訓を指摘し、共和党が機密文書の発見に過剰に反応する可能性があると述べた。

イスラエルは次のように語った。「オバマ大統領は順調に再選を果たし、民主党は連邦下院で8議席上回って過半数を獲得した。何が起こったかというと、共和党の多数派が手を出しすぎたのだと私は考える。彼らは自分たちの支持基盤を発奮させたが、しばらくして、毎日の詮索ではなく、集中力と日常の課題を求める穏健派有権者を失った」。

しかし、非公式の場では、民主党側はバイデンが2023年を迎えることを望んでいた方法ではないことを認めた。

あるクリントン選対に参加したあるヴェテランは「誰もが好き勝手なことを言えるが、これでバイデンは完全に弱体化した。この問題はいつまで経っても解決しないだろう」と述べた。

クリントンの元側近は続けて次のように述べた。「迷惑な話だし、彼らが好むと好まざるとにかかわらず、この問題は残り続けるだろう。そしてつぎのような疑問が生まれるだけだ。もし彼がガレージでコルヴェットと一緒に書類についてこんなに軽薄なことをしているなら、他に何をやっているのか誰にも分からないだろう」。

共和党系ストラティジストであるスーザン・デルペルシオは、機密文書の発見は共和党への贈り物だと語った。

デルペルシオは機密文書発見について「これは大皿に盛られたものだ。それ自体は大したことではないが、共和党がそれをどう武器にするかだ」と述べた。

現在まで、共和党がバイデンに対して持っていたのは、バイデンの息子ハンター・バイデンに関する税金やビジネス取引に関する論争と経済に関する問題だけだったとデルペルシオは言う。

デルペルシオは次のように語った。「バイデンが出馬しない理由を探していたのならこれはかなり良い理由だ。彼はこんな選挙戦を望んではいないはずだ。釈明ばかりしていたら負けてしまうことになる」。
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ホワイトハウスはなぜもっと早く機密文書発見を公表しなかったのか説明するよう圧力を受けている(White House under pressure to explain why it didn’t reveal documents discovery earlier

アレックス・ガンギターノ筆

2023年1月14日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/3812679-white-house-under-pressure-to-explain-why-it-didnt-reveal-documents-discovery-earlier/

ホワイトハウスは、バイデン機密文書の発見がなぜすぐに公表されなかったのか説明するよう圧力を受けており、中間選挙を控えて最初の発見について沈黙を保っておこうとする意図的な試みがあったのではないかという批判が公然となされている。

最初の文書が最初に発見されたのは2022年11月2日で、選挙からわずか6日後のことだった。しかし、ホワイトハウスは、今週初めにCBSニューズが報道するまでこの発見について公表しなかった。

ホワイトハウスのカリーヌ・ジャン=ピエール報道官は金曜日、機密文書発見時にすぐに明らかにしなかったのは大統領を政治的ダメージから守るためだったのかという質問に対して、「それはあなたの言い分に過ぎない」と答えた。

ジャン=ピエール報道官は「私はここで非常に明確にしてきたし、ここ数日、異なる機会で何度もその質問に答えてきた。ここにはプロセスがあり、私たちはそのプロセスを尊重するつもりだ」と付け加えて答えた。開示のタイミングについてスタッフが戦略の立案に関与したかとの質問には「ノー」と答えた。

2022年12月20日にバイデンのデラウェア州ウィルミントンの自宅のガレージの収納スペースから2回目の機密文書が発見され、今週も隣の部屋の収納資料の中から1ページの文書が発見された。バイデンの自宅の捜索は水曜日に終了した。

メリック・ガーランド司法長官は、バイデン大統領のウィルミントンの自宅で更に機密文書が発見されたとの公表を受け、機密文書発見を調査する特別顧問としてロバート・ハーを木曜日に任命した。また、ホワイトハウスが機密文書を発見した際、リアルタイムで通知されたと述べた。

バイデンの長年の盟友で情報将校出身のクリス・カーニー元連邦下院議員(ペンシルヴァニア州選出、民主党)は、「機密文書発見のタイミングは実に不思議だ」と述べた。カーニーは更に「バイデン大統領は、この厄介なエピソードについて説明責任を果たし、その責任を受け入れなければならない。ここで最も重要なことは、個人的な政治的恥辱を防ぐことではなく、我が国の安全保障を守ることだ」と発言した。

記者たちは金曜日、ジャン=ピエール報道官は機密文書について、1週間を通して質問に答えたというが、CBSがニューズを流したために、彼女は全く質問に直面しなかったと指摘した。彼女は、調査が進行中だからだと主張した。

報道官は「司法省は独立した機関であり、私たちはその調査プロセスを尊重する」と述べた。

連邦議会共和党も公表のタイミングに疑問を呈しており、連邦下院監督・説明責任委員会は今週、公文書に関する調査を開始した。

今週、ジェイムズ・コマー連邦下院監督・説明責任委員会委員長(共和党)は「よく見て欲しい、これは11月2日の出来事だ。ジョー・バイデンはアメリカ史上最も透明性の高い大統領になると述べた。なぜ今になってこのことが分かったのか? CBSは素晴らしい仕事をした、CBSの報道がなければ私たちは知ることができなかった」とCBSで語った。

ホワイトハウスが公表しないまま、11月と12月に機密文書がバイデンの自宅から発見されたというニューズは、12月にインフレが鈍化したという連邦政府の報告などの今週の他の政治的展開に影を落としている。

共和党系のストラティジストであるダグ・ヘイは、もし11月に発見が明らかになったとしても、同じことが起こっただろうと主張した。そして、民主党は選挙の最終週に自分たちのメッセージから注意をそらすことを望まなかっただろうとも述べた。

ヘイは「これは、タイミングについて、非常に合理的に出てくる最初の質問の一つです。2022年の選挙に大きな影響を与えただろうか? これについてははっきりしないが、過去にさかのぼってその影響を否定することはできない」と述べた。

ヘイは更に「民主党側が主張していたのが、『トランプの信奉者である非常識な人たちが立候補しているのを見よ』というものだったことを考えると、明らかに民主党が望んでいたメッセージとは違う」とヘイは述べた。

ジョージワシントン大学の法学教授で元司法省職員のスティーヴン・サルツバーグは、2016年の選挙直前にジェームズ・コミー前FBI長官が当時の大統領候補ヒラリー・クリントンに対する捜査について詳細を発表したやり方が、多くの人の口に「後味の悪さ(bad taste)」を残したと指摘している。

サルツバーグ「とは言っても、選挙が終わった後、なぜ積極的に公表しなかったのか分からない。発見された際、マスコミはこぞってそれを取り上げ、それで彼らは守勢に回った」と述べた。

ホワイトハウスは、特に選挙の前に、この発見を黙っておこうとする意図的な試みがあったかどうかという質問に対して、本誌に以前の声明を紹介した。これらの声明の中では、司法省の調査は進行中であり、ホワイトハウスが発言できることは限られていると繰り返し述べている。

バイデンのワシントンオフィスでは、副大統領時代から2020年の大統領選出馬までの間に使用した、機密事項が記された10通の文書が、他の個人的な資料と混ざって発見されたと伝えられている。それらの文書には、ウクライナ、英国、イランに関するブリーフィング資料が含まれていたとされる。

現在ノサマン社の上級政策顧問を務めるカーニーは「ワシントンで政治家を指弾するのはよくあることだが、管理されていない情報文書がこの国の安全保障に与えうる損害を忘れることはできない。バイデンであれ、トランプであれ、あるいは他の誰であれ、文書を管理できなくなれば、国家の重大な損害につながる可能性がある」と述べている。

カーニーは更に、機密文書を扱ったことのある人間として、「国の指導者が情報報告に対してこれほどまでに軽率になれることに激怒している」と付け加えた。

バイデンのティームは、機密文書が発見された直後に国立公文書館と司法省に警告を発したとホワイトハウスは発表している。

これは、トランプ前大統領の政府文書の取り扱いとは明確に区別される。当局者は昨年夏にFBIの捜査が行われる前に、トランプに複数回にわたり文書返還を要求していた。

バイデンは今週、メキシコでの記者会見で、自身の古いワシントンオフィスで機密文書が見つかったと知って驚いたとコメントした。また、その文書が何についてであったかは知らないと付け加えた。

しかし、ホワイトハウスが当時この発見を公表しなかったことについて、大統領を守るために発見を非公開にしたかったのかどうかなど、機密文書の中身以上に疑問を生じさせている。

ヘイは次のように述べた。「バイデンの記者会見とカリーヌのブリーフィングの間に、私は政治には古い一線があることを思い知らされた。釈明していたら負けだ。昨日は、良い経済ニューズの日であったはずなのに、釈明の日になってしまった」。

ブレット・サミュエルズはこの記事の作成に貢献した。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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