古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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 古村治彦です。

 2022年12月28日に副島隆彦先生の最新刊『習近平独裁は欧米白人(カバール)を本気で打ち倒す』(ビジネス社)が発売になる。年末年始の関係で、全国の書店に並ぶのは来年2023年1月上旬になるが、アマゾンでは日時通りの発売になるとのことだ。

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習近平独裁は欧米白人(カバール)を本気で打ち倒す

 以下にまえがき、目次、あとがきを貼り付ける。

 是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

(貼り付けはじめ)

まえがき

どうやら中国は、本気で欧米白人の支配者たち(カバール)と戦うと決意したようだ。戦いになれば、自分も大きな打撃を受ける。それでも戦う、と。

この中国人の大きな決意を、私たち日本人はまだ甘く考えている。「いや、そんなこと(戦争)にはならない」と。さて、それで、これからの世界が無事で済むか、だ。私たちは、甘い考えを捨てるべきなのである。

中国は、習近平の独裁体制を確立した。

2022年10月23日、第20回中国共産党大会の翌日に、新しい指導部7人、即(すなわ)ち「チャイナナセブン」が決まったときだ。何とすべて全員、習近平の子分であった。習近平は「いつでも戦争ができる体制」を構築した。それは、P5の迷彩服(軍服)姿の習近平とその記事によって明らかである。

習近平が、今すぐアメリカと核戦争を含めた第3次世界大戦を始めることはしない。だが、中国はアメリカを含む西欧との厳しい戦いを覚悟している。中国はウクライナ戦争の始まり(2月24日)から、ロシアのプーチン政権が欧米支配層(ディープステートとカバール)によって、大きく罠(わな)に嵌(は)められ苦戦している事実(すぐに1年になる)を厳しく凝視(ぎょうし)してきた。だから中国は甘い考えを捨てている。

 中国は、もう決断したのである。欧米諸国(カバール)との戦争も辞さず、と。その前に、世界金融や貿易などの経済取引の分野でも規制がかかって混乱が起きて、自国に大きな打撃が行くことも中国はすでに覚悟した。
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 さあ、日本はどういう態度をとるのか。

中国は、私たち日本に対して「日本はどっちの側につくのか。はっきりさせろ」という決断を迫っているのである。ところが日本人は、「そんなことは知りませーん」という態度でヘラヘラと逃げ回っている。まるで「我関せず」、傍観者の構えである。これは決定的にまずい。私はこの本で、厳しい問い詰めを日本人に対して行う。

死んだ(殺された)安倍晋三が盛んに言っていた「台湾有事(ゆうじ)は日本の有事」という考えのままで日本がいて、中国の強さを舐(な)めきって台湾にまで日本軍(自衛隊)を出す、というような甘えた態度をいつまでもとっていると、ヒドいことになるぞ、と中国は警告してきている。

「アメリカ様(さま)の言うとおりにしていれば日本は大丈夫」などと、いつまで言っていられるか、だ。後(うし)ろのP115の記事に載せるとおり、中国は「日本は台湾問題に干渉するな」という激しい警告を発している。

日本政府(岸田政権)が安倍晋三の亡霊に引きずられていると、おそらく日本は今後激しく追い詰められる。

 あと1つ、私ははっきり未来予測をする。習近平の独裁体制が確立したので、これからの習近平3期目の5年間のあいだに、うまくゆけば欧米白人カバール勢力との一触即発の戦争危機を乗り越える目算である。そして、中国が優勢となって世界覇権(ワールド・ヘジェモニー)を握る段階に入るだろう。

そのとき、李克強(りこっきょう)たち〝冷や飯食い〟の共青団(きょうせいだん)の勢力は、中国共産党から集団で脱退して、中国民主党を作る。そして、共産党と政権獲(と)りを競い合う。この時、中国に、① 複数政党制(マルチ・パーティー・システム)ができる。そして普通選挙(ユニヴァーサル・サフレッジ)を行う。この2つでデモクラシー(民主政体[せいたい])である。私は、これまでにもこのように書いてきた。

 だから、今度の党大会の政変ドラマでも、李克強たち共青団(きょうせいだん)は何ら動揺することなく平然とひな壇に座っていた。習近平独裁体制からほぼ排除されて、370人の中央委員およびその候補に、胡春華(こしゅんか)がようやく1人入っているだけに追い詰められた。だが共青団系は、何ら恥じることなく淡々としている。しばらくは冷や飯食いが続くだろうが、それでも構わない。

 ここで大事なのは、欧米白人支配層(カバール)との激しい血みどろの戦争を習近平にやらせる、だ。そこで、500万人、1000万人が死んでも構わない。そのあと、共青団の民主党が政権を獲る時代が来るだろう。

私、副島隆彦はそこまで考えて、先へ先へと近未来の予言をしてきた。だから、習近平の今度の体制は明らかに独裁であるが、これからの5年間の2027年までの予定である。このことがはっきりした。

後ろに載せるP 62の日経新聞の中沢克二記者の、「党の長老たち老人パワーが、習近平への個人崇拝と習近平思想を否定した」が重要である。個人崇拝を英語で、character cult「キャラクター・カルト」と言う。

習近平を毛沢東の再来としなかった。それが中国共産党の規約(パーティー・レギュレイション。中国では憲法よりも重要)となったのである。

これらのことを、この本ではっきりさせる。

なぜ欧米白人を頂点から支配する者たちを、カバールと称するかは、この本のあとのほうで説明する。

副島隆彦

=====

◎習近平独裁は欧米白人(カバール)を本気で打ち倒す◎ もくじ

まえがき ……

第1章 中国衰退論と日本核武装論から見る世界政治の現実

〝知の巨人〟エマニュエル・トッドの「中国崩壊論」の大きな過ち ……16

日本が核を持てばアメリカが喜ぶ、という大きな勘違い ……19

戦争の責任をアメリカとイギリスに求めるトッドの意見は正しい ……24

アメリカに食い荒らされていくヨーロッパ ……27

世界の火薬庫はヨーロッパとアジアしかない ……30

小国がいくら団結しても勝てないという世界政治の大原則 ……33

「日本核武装論」と「中国衰退論」をめぐる争い ……38

そもそもエマニュエル・トッドとは何者なのか? ……47

中国はたとえ核戦争になっても欧米白人と闘い抜く ……52

第2章 習近平は本気で欧米白人支配を打ち破る

党大会で何が本当に起きたのか ……60

習近平は戦争がいつでもできる体制を整えた ……72

すでに5年前に予言していた習近平体制3期目の本質 ……78

鄧小平の思想をいちばん引き継いでいるのが習近平 ……82

衰えゆく善人集団の共青団 ……86

新しい指導者はどういう人物が選ばれたのか ……93

田舎で泥だらけの苦労をした習近平 ……98

習近平はまだまだ虎もハエも叩くことをやめない ……105

第3章 台湾で戦争を起こしたいのはネオコン、ディープステ―ト、そしてカバールだ

習近平の横綱相撲で終わった米中首脳会談 ……110

台湾は平和的に中国の1つの省となる ……114

台湾は国家ではない ……126

台湾は自ら中国へと歩み寄っていく ……129

中国を食い物にしたのはそもそもイギリスである ……134

今の台湾は、アメリカの中国権益の成れの果て ……136

台湾人の多数派も台湾が独立国でありたいとは思っていない ……140

世界中で戦争の臭いを嗅ぎつけ火をつけて回る狂ったネオコンとムーニー ……145

第4章 中国が盟主となる新しい世界の枠組み

戦争を止めに来たキッシンジャー、火をつけに来たヒラリー ……152

世界金融システムに先制攻撃を加える中国 ……159

中間選挙で露わになったアメリカのさらなる没落 ……165

トランプは見抜いていたペロシの正体 ……172

「カバール」という恐ろしい欧米白人の最上流人種たち ……174

上海協力機構が次の世界をまとめるプラットフォーム ……178

トルコが加盟してがらりと変わった地政学的な意義 ……184

第5章 着々と野望を実現する中国の強靭な経済

最悪の状態を脱した不動産業界 ……192

半導体を止められても6G(シックス・ジー)がある ……196

SKハイニックスの裏は中国資本である ……204

追い詰められたヨーロッパは、中国以外に頼る国がない ……212

宇宙強国の橋頭保となる新しい宇宙ステーション「天宮」 ……215

ゼロコロナ抗議の「白紙運動」は、反政府活動家あぶり出しの一環 ……222

汚れきった江沢民の死と上海閥の終焉 ……228

あとがき ……232

=====

あとがき

私のこの、今年の中国研究本を書き終わって思うこと。

それは、本書の中でも書いたが、私は「習近平と父習仲勲(しゅうちょうくん)の親子2代の苦難の人生の物語」を書き残したことだ。

それを、遠藤誉(ほまれ)女史の近著で、大著の『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社刊、2021年3月刊)の、詳細で正確な記述を使いながら、私はこの「親子2代」を描こうと思った。ところが、これを本書に積み込むと、この本が積載過重[せきさいかいじゅう]overload [オウヴァーロウド])になってしまうことが分かった。

私は「父習仲勲と息子習近平の親子2代の物語」を書いて、どうしても日本人に、中国共産党の創立以来の100年(1921年から)の真実の大きな全体像を分からせたい。この仕事は、来年の私の中国本でやります。乞うご期待。

この本を完成させるために、ビジネス社編集部の大森勇輝氏の多大のエネルギーの投入があった。記して感謝します。

私たちは、普通の著者たちのような、読者に甘えきった、上から目線の本づくりはしない。お前たちが書く本はくだらない、つまらない。

私は、この世の本当の真実を、読者(読み手)の脳(頭)に、弾丸をビシッと撃ち込む決意で作っている。

2022年12月

副島隆彦

(貼り付け終わり)
(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 今回は副島隆彦先生と佐藤優先生の共著『欧米の謀略を打ち破り よみがえるロシア帝国』(ビジネス社)が2022年10月21日発売になります。

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欧米の策略を打ち破りよみがえるロシア帝国

 以下に、まえがき、目次、あとがきを貼り付けます。参考にしていただき、是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

(貼り付けはじめ)

まえがき 佐藤 優

今年、2022年は歴史の分水嶺となる年になった。

まず、国際秩序に大きな影響を与えたのが、2月24日のロシアによるウクライナ侵攻だ。

日本の論壇がウクライナ応援一辺倒になっている状況で、副島隆彦氏は、ロシアのプーチン大統領が正しいという立場を鮮明にした稀有な知識人だ。この点、私は副島氏ほど腹が据わっていない。ロシアにどのような理屈があろうとも、武力侵攻はウクライナの主権と領土の一体性を毀損する国際法違反行為で正しくないと考えている。

他方、私はウクライナのゼレンスキー政権を応援する気持ちにはならない。この政権のウクライナ民族至上主義、ステパン・バンデラのようなナチス・ドイツ協力者を英雄視する姿勢(それが現代のネオナチであるアゾフ連隊の思想的基盤になっている)、18歳から60歳までの男性国民の出国を禁じ、最後の1人まで戦えという姿勢にはまったく共感を覚えない。

そもそも、ロシア政府とウクライナ政府が公式に合意した「第2ミンスク合意」に基づいて、ウクライナのルハンスク州とドネツク州における親ロシア派武装勢力が実効支配している地域に、ウクライナが特別の統治体制を認める憲法改正を行う。そして、この地域で国際的な監視団の入った自由選挙を行い、その民意に基づいた解決をすれば、今回の戦争を避けることはできた。しかし、ウクライナは頑(かたく)なに「第2ミンスク合意」の履行を拒否した。その結果、2月24日にロシアによる侵攻を招いたのである。

その後、ロシア軍と親ロシア派武装勢力が実効支配するルハンスク州、一部地域が実効支配されているドネツク州、ザパロジエ州、ヘルソン州で、ロシアとの編入に関する住民投票が9月25〜28日に行われ、「編入賛成」が圧倒的多数だった。プーチン大統領は9月30日に、これら4州の併合を決定した。

地政学的に、ウクライナはロシアと西側(ヨーロッパ諸国+北米諸国)の緩衝地帯である。このような国が、NATO(北大西洋条約機構)というアメリカを中心とする軍事同盟に加わることも、ロシアと軍事同盟を組むことも、地域の緊張を著しく強めることになる。

このように、ウクライナ戦争の将来を予測する際には、地政学的要因が重要になる。地政学を無視して、自由と民主主義というイデオロギーによってウクライナ戦争を強引に解決しようとしているのがアメリカだ。副島氏はアメリカ政治の専門家だ。ネオコン(新保守主義者)の力によって民主主義を世界に拡散するという思想がいかに危険であるか、と以前から警鐘を鳴らしていた。

副島氏は、ドナルド・トランプ前大統領を支持する姿勢を鮮明にしている。たしかにトランプ氏が大統領になったほうが、棲(す)み分けを認めるので、中国、ロシアなどと安定的関係が構築できると思う。アメリカ政治の内在的論理を知る上で、私は副島氏から多くの知的啓発を受けた。この対談における私の貢献は、日本や欧米でほとんど報じられていないロシアの論理について詳しく紹介したことだ。

副島氏は、ウクライナ戦争におけるイギリスの情報操作、謀略に注目する。この点について、本文でも登場するロシア政府系テレビ「第1チャンネル」の政治討論番組「グレートゲーム」が、2022年9月12日の放送で興味深い見方を示しているので紹介する。

* * *

ドミトリー・スースロフ(高等経済大学教授):今日(9月12日)、プーチン大統領は閣

議で西側によるロシアに対する経済制裁は機能していないと述べた。この状況でアメ

リカはウクライナにおける軍事紛争を最大限に引き延ばそうとしている。

 先週末(9月8日)、この関連で3つの出来事があった。バイデン米大統領がG7首脳とウクライナへの軍事的、経済的援助のためのビデオ会議を行った。同日、ブリンケン米国務長官がキエフを訪問し、22億ドルの長期的軍事資金提供を約束した。同日、ドイツのラムシュタイン空軍基地で、オースティン米国防長官が支援国会合で6億7500万ドルの短期支援をウクライナに対して行うと述べた。

 これらから、最低限3つの事柄が明らかになった。

第1は、より攻撃的な重火器をウクライナに提供する意思をアメリカが持っているということだ。9月12日の『南ドイツ新聞』が、米国防総省がウクライナに最新型の戦車を提供する用意があると書いている。

第2に、アメリカがより直接的に紛争に関与しようとしていることだ。『ニューヨーク・タイムズ』は、ハリコフにおけるウクライナ軍の攻勢について、アメリカがウクライナを助けたと報じている。

第3に、この紛争に対するアメリカの実際的関与が、公式に表明されているよりも、はるかに大きいということだ。「ブルームバーグ通信」(9月9日)が報じたところによれば、アメリカはウクライナにかなり以前から公表せずに、GPSによる精密誘導弾エクスカリバーを供与していたということだ。

 われわれは、アメリカのこういった傾向とそれがもたらす結果について、「国益のためのセンター」所長のドミトリー・サイムズ氏、対外情報庁(SVR)中将で戦略研究センター前所長のレオニード・レシェトニコフ氏と話し合いたい。

サイムズさん、私が尋ねたいのは3番目の点についてだ。アメリカは言うこととやることが異なっている。この紛争の基礎になっているのが大きな噓だ。それはキエフ当局だけではない。ウクライナ政府が噓をつくということについて、われわれは幻想を持っていない。

問題はアメリカとNATOだ。武器の供与だけでなく、極めて多くの疑念がある。まったく信頼できない。この状況で、ロシアがアメリカやNATOとなんらかの合意を達成することができるのだろうか。

ドミトリー・サイムズ(米シンクタンク「国益のためのセンター」所長、米国籍):スースロフさん、「戦争による最初の犠牲は真実である」という俚諺(りげん)がある。レシェトニコフさんもこの言葉に賛成すると思う。

敵と情報を共有することは頭の良い者がすることでない。意図的な情報操作がある。われわれはここを攻めると見せかけて、別の場所に攻め込む。有名なのはソ連によるベラルーシ進攻作戦だ。ソ連は意図的にドイツが真実と異なる印象を抱くようになるような情報を流した。

 戦時には、中途半端な真実、あるいはまったく真実でない情報を流すことがある。現在行われている意図的な情報操作は、民主主義を唱道している文明的国家には馴染まない。レシェトニコフさんは、この種の問題についての専門家と思うが、これは英情報機関MI6(エムアイシックス)にとっては通常のことではないのだろうか。

MI6は定期的にインテリジェンス情報を公表している。これはプロパガンダ(宣伝)の要素が強い。これはインテリジェンスの機能と矛盾する。プロパガンダかインテリジェンスか、どちらかを選ばなくてはならない。インテリジェンスであり同時にプロパガンダであるということは困難だ。

ここで米NBCの報道を見てみよう。アメリカが、どのように情報キャンペーンを展開しているかについてだ。

【番組での掲示】

過去との訣別。アメリカはロシアとの情報戦を展開するにあたって、疑わしいインテリジェンス情報を用いている。

多くのアメリカの官僚が、アメリカは信頼性の高くない情報でさえ武器として用いていると述べている。それは以下の思想に基づいている。クレムリンの戦術を阻止し、無効化するためには、ロシアの戦争キャンペーンを困難にしなくてはならない。モスクワの宣伝を妨害し、ロシアが現下の軍事行動に関連して、国際世論への影響を決定づけることがないようにしなくてはならない。ケン・ディラニアン記者、2022年4月6日、NBCニュース

 スースロフさん、1970年代に私がソ連からアメリカに移住してそれほど時間が経っていないときのことだった。私は戦略研究所で働いていた。そして週一回、「ラジオ・リバティー」(米議会が資金を提供する宣伝放送)に原稿を提出していた。

この放送局はソ連に対する敵対的姿勢を公にしていた。私はこんな指示を受けた。まずソ連指導部に対して侮辱的な表現をしてはいけないということだった。それから最も重要なのは、明白な噓をついてはいけないということだった。偏向した情報や正確でない情報も流してはいけないと言われた。

現在、複数のチャネルでさまざまな情報がモスクワに伝えられているが、プロパガンダの嵐のようだ。米国家レベルのチャネルでは、すべての人が同じことを言っている。そのようなことが国家から要請されているわけでもないのに、誰もがプーチンと闘おうとしており、ロシアとの闘争に従事している。少なくとも私にとってこれは不快な状況だ。

* * *

本書では、戦時においてあらゆる国は情報操作を行うという前提で、報じられた内容から真実とそうでない事柄を区別するよう私も副島氏も努力した。2人のあいだで、情報の評価が異なる箇所では、そのことがよくわかるように書いた。

内政に関しては、7月8日の安倍晋三(あべしんぞう)元首相が銃撃され、死亡した事件について扱った。本件に関しては、安倍氏に対する政治的評価のみならず、事実認定についても2人の見解にかなりの対立がある。この点についても無理に調整せず、認識と意見の違いが鮮明になるように努力した。

日本の危機はこれから一層深刻になる。危機から抜け出すためのヒントが本書には多々詰まっていると自負している。

 本書を上梓するにあたっては、ビジネス社の大森勇輝氏、フリーランス編集者・ライターの水波康氏にたいへんお世話になりました。どうもありがとうございます。また忍耐強く私の話に付き合ってくださった副島隆彦氏にも深く感謝申し上げます。

2022年9月23日、曙橋(東京都新宿区)の自宅にて

=====

『欧米の謀略を打ち破り よみがえるロシア帝国』 目次

まえがき 佐藤優 ……

第1章 安倍元首相を殺したのは同盟国アメリカである

世界的な流れのなかで起きた安倍暗殺事件と統一教会排除の動き

山上徹也は本当に安倍元首相を殺害したのか? ……20

〝おもちゃの銃〟と消えた銃弾 ……25

安倍暗殺事件で本当にベネフィットを得たのは誰か ……29

歴史の必然で分裂し始めたアメリカの対日戦略

アメリカ国務省内で起きている激しい対立 ……33

キーパーソンはマーク・ナッパーと福田達夫 ……36

日本の害毒と化した岸田政権 ……39

次のターゲットは竹中平蔵か ……42

追悼文に表れたロシアの安倍評価 ……45

サハリン2新会社設立のポイントはシェル外し ……48

日本は国際政治のゲームに参加できる立場ではない ……52

第2章 日本では絶対に報じられないウクライナ戦争の過去・現在・未来

二度と元には戻れない世界秩序を壊した蛮行

ステパン・バンデラとは何者なのか? ……56

世界が懸念する危険なウクライナ民族主義 ……59

緒戦で欧米の罠にはまったプーチン ……63

心理戦のために仕込まれたゼレンスキー ……66

親友サーシャが教えてくれた「偽旗作戦」の実態 ……70

世界中で行われた「フォーフィチャー」と「シージャー」 ……73

世界のルールを根本的に変えた国家による資産収奪 ……76

ブチャの虐殺を誰が行い、誰が殺されたのか? ……78

虐殺事件後に大きく変わった軍事支援の量と質 ……81

家族と名誉のためなら死もいとわないロシア人 ……84

開戦と同時に激化したプロパガンダ戦と集団洗脳

ロシアにとって戦争の転換点は5月18日 ……90

「佐藤さん、あなたは気持ちも頭もロシア人と通じている」……93

戦争中に行われた集団洗脳の実態 ……95

レーニンに始まるロシア流宣伝と扇動の違い ……99

なぜかロシアのテレビに出るキッシンジャー系知識人 ……102

専門家の分析より大事な政治家が煽る〝風〟……105

第3章 「必勝の信念」から始まる戦争分析の大きな過ち

絶対に信じてはいけない日本のロシア専門家たち

完全に空論と化した「核抑止理論」 ……110

近代500年を支配し続けてきたディープステイト ……113

沖縄人の痛みとウクライナ人の想い ……115

戦争終結へ向けての3つのシナリオ ……117

イギリスが行う卑劣な諜報戦略 ……121

『国民の僕』で描かれたウクライナ国家の終焉 ……125

ノイズにすぎない日本のメディア情報 ……129

正しかった橋下徹の〝特異〟な考え方 ……132

世界を動かしているのはカネではなく政治と思想

データが細かいロシア、大ざっぱなウクライナ ……136

国連憲章にのっとったロシアの軍事行動 ……137

戦場に転がっている兵士の死体の意味 ……140

戦争犯罪人に仕立てられたシベリアの整備工 ……142

政治を上から動かしているのが思想 ……146

第4章 アメリカとイギリスによる戦争犯罪の恐るべき真実

あらかじめセットされていたウクライナという時限爆弾

8年前からウクライナに介入し続けているアメリカ ……150

なぜ同時期にマイダン革命が起き、ISが出現したのか? ……154

ヴィクトリア・ヌーランドとネオコンの思惑 ……160

トッドが語ったウクライナという国をめぐる〝常識〟……165

『ひまわり』と『隊長ブーリバ』に描かれた真実 ……169

隠れた危険国家ポーランドの実態 ……173

ポーランドを巧妙に利用するイギリス ……176

「4州併合」の背景にあったウクライナ軍の蛮行 ……180

時間とともに瓦解していく「西側」という正義の旗印

暴落しないルーブルのひみつ ……187

ロシアが忌み嫌い続けるドイツ ……190

本当のワルはイギリスとバチカンだった ……191

北欧とナチスのあからさまな繋がり ……195

すでに崩壊しているAUKUS ……199

第5章 ウクライナ戦争を乗り越え復活するロシア帝国

中国とロシアの主導で塗り替えられる勢力図

古くて新しい帝国と帝国のぶつかり合い …… 204

中国はロシアを屈服させるのか? ……207

ロシア独特の帝国の作り方 ……211

アメリカから英中に移行する金相場の覇権 ……214

始まったザ・ウエストとザ・レストの戦い ……217

ディープステイトと優生学という大問題 ……220

世界中が見誤った「哲人王」プーチンの底力

実はトランプはそれほど強くない ……227

中東とロシア、ウクライナ関係のカギは食料 ……230

イスラエルのあいまい戦略とイランの核武装 ……233

ゼレンスキー暗殺の可能性 ……234

トラスのイギリスでは何もできない ……238

G7首脳を返す刀で斬り捨てた裸のプーチン ……241

ロシアは勝つが、プーチンのやり方は間違っている ……247

あとがき 副島隆彦 ……253

=====

あとがき 副島隆彦

この本は、私と佐藤優氏の7冊目の対談本である。世界がめまぐるしく動く。時代の転変の中で、次々と押し寄せる暴風雨の中で、自分の考えも木の葉が舞うように飛び散る。

それでも個々の人間の命は有限である。ハイデガーが言った人間という現存在[げんそんざい](ダーザイン)である。佐藤優氏も私も、もうそんなに長くは生きないと思う。佐藤氏は、大病をいくつも抱え、手術で次々と乗り越えて、それでも旺盛に執筆活動をしている。この人は、普通の人間とは違う。恐るべき生命力を持っていて驚嘆する。

 本書の「まえがき」で佐藤氏は、「今年(2022年)を歴史(世界史)の分水嶺」ととらえた。ウクライナ戦争の戦況を大きく描き、そこにロシアの最高級の知識人の名を4人挙げている。彼らがロシアのテレビ討論番組に出演して率直に語る内容が、どれほど重要か、佐藤優の解説が私たちに教えてくれる。

①ドミトリー・スースロフ(政治学者) ②ドミトリー・サイムズ(政治分析者) ③レオニード・レシェトニコフ(SVR 対外情報庁) ウラジーミル・ソロヴィヨフ(番組司会者)の4人である。

②のドミトリー・サイムズ氏は、何と、ロシアから政治亡命して、今はアメリカの国家情報部のために働いている。佐藤氏が、「このサイムズ氏は、米国務省のキッシンジャー系の知識人です」と教えてくれた。

 ④のソロヴィヨフは、ロシアで一番人気のある政治評論家であり、自分のテレビ番組を持っている。ロシア国民を、ウクライナ戦争でのロシアの勝利へ向けて、力強く啓蒙している。だから、ウクライナ政府が放つ殺し屋(ヒットマン)たちに狙われている。

これらのロシア側の当代、最高レベルの知識人たちの堂々たる言論を、佐藤優が、この本で私たち日本人に解説してくれた。それをロシア語で聞き取って高度の価値判断(ヴァリュー・ジャッジメント)ができる。このことは、ものすごく重要なことである。佐藤優に、この任務をもっともっとやってもらわないといけない。

日本国内に溢(あふ)れかえっている、愚劣な、反(はん)ロシアまる出しの「ウクライナでロシアは負けている」の偏狭で浅薄(せんぱく)な煽動言論(軍事問題を含む)と、ニューズ報道ばかり、私たちは見せられている。

 世界政治の現実と真実は、それらとは全く異なる。

私たちは、安倍晋三の死で(7月8日)、じわじわと日本の国家体制に潜入(インフィルトレイト)して、乗っ取っていた気色の悪い反共右翼の特異な宗教団体の束縛(そくばく)と洗脳から自由になって、私たちの国(くに)の存亡の危機を本気で考えなければならない。

担当編集者たちへのお礼は佐藤優が書いたので、私は繰り返さない。

2022年9月

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

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新装版 小室直樹の学問と思想

 今回は2022年9月1日にビジネス社から発売された『新装版 小室直樹の学問と思想』をご紹介します。本書は1992年に弓立社(ゆだちしゃ)から発刊され、2011年にビジネス社で復刊されました。今回、小室直樹先生生誕90周年ということで、新たに「はじめに 副島隆彦」と「おわりに 橋爪大三郎」を収めたものとなっています。

 以下に「はじめに 副島隆彦」、目次、「あとがき 新装・増補版に寄せて 副島隆彦」を貼り付けます。『小室直樹の学問と思想』をまだお読みになったことがない方は是非手に取ってお読みください。

(貼り付けはじめ)

はじめに 副島隆彦

 何ということだろう。西暦2022年の今、世界史にプーチンが率いる「ロシア帝国の大復活」が起きつつある。

 一体全体、何たることか。小室直樹先生の業績『ソビエト帝国の崩壊』(1980年刊)から42年。ロシアが大国になって戻って来て、ロシア帝国となって甦(よみがえ)りつつある。何と言う歴史の皮肉だろう。滅んだはずのソビエト赤色(せきしょく)帝国が、ロシア連邦(フェデレーション)の形で、仰々しく世界勝利者として復権しつつある。逆に、アメリカ帝国と西側(ザ・ウエスト)同盟(NATO[ネイト―]とEU[イーユー])のほうが、ウクライナ戦争で 緒戦(しょせん)の優位が消えて、たじたじとなり、敗勢が濃くなって来た(今年7月)。

 こんなご時勢で、『小室直樹の学問と思想』の再(さい)復刊(初版1992年刊)に私は立ち合うことになった。丁度30年が経たった。私自身が、もう老人になって(古希[こき]70歳)、自分の脳がスリ切れそうだ。知識人などという無残な商売は、わずか30年の時代の変化に耐えられない。私は己(おの)れに向かって冷笑する。

 日本の小室直樹と共にソビエトの崩壊を予言したことで知られる(1976年。邦訳『最後の転落 ソ連崩壊のシナリオ』)フランス知識人のイマニュエル・トッド(1951年生。71歳)が、再び時の人である。トッドは、「ウクライナ戦争の原因と責任は何よりもアメリカとNATOにある」とはっきりと書いた(『第三次世界大戦はもう始まっている』文春新書、2022年6月刊)。何故なら、プーチンがあれほどに、「これ以上NATOの東方拡大(イースターン・エクスパンジョン)をするな。ロシアは絶対に許さない」と何十度も警告を発しウクライナ国境線で軍事演習を行って威圧した。それなのに、西側は故意にプーチンの堪忍袋の緒を切らせた。アメリカとNATO(真実は英と米のディープステイト)は、手ぐすねを引いてロシアを打ちのめし、弱体化(ウィークン)できると思っ

て戦争を仕掛けた。

 ところが西側(ザ・ウエスト)のほうが開戦から4カ月経ったら、〝ゼレンスキー支援疲れ〟でボロボロになった。ロシアの味方に付いた中国とインドとサウジアラビアとブラジル、メキシコ、インドネシアなどの新興国・資源貧乏大国の同盟(新世界[エマージング]8と言う)のほうが大きく勝ち始めた。さらには、ロシアの核兵器のほうが進んでいて超音速(ハイパーソニック)で迎撃(インターセプト)できないので、西側(ザ・ウエスト)は脅し上げられる破目になった。ざまあ見ろである。

 小室直樹先生は、この本が出た時(1992年)言った。

「今こそ、マルクスを勉強し直さなければ。次に滅ぶのは、アメリカ資本主義である」とはっきり私に言った。さすがに大(だい)天才はちがう。そして先生は東ベルリンで刊行されていたドイツ語原書のマルクス・エンゲルス全集を購入して、デーンと書斎に置いた。まさしくアメリカ帝国と西側資本主義が、私たちの目の前で滅び始めている。

 あれから40年の歳月(さいげつ)が経ち、私はあきれかえって茫然(ぼうぜん)として立ちすくむ。思想と学問の研究に人生を入れあげたといっても、何事(なにごと)のことがあろう。この程度のことであったか。

 だがそれでも、本書『小室直樹の学問と思想』は、読者に検証されて世界史の荒波の中に屹立(きつりつ)する岩礁(がんしょう)のようでありたい。

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新装版 小室直樹の学問と思想──目次

はじめに

副島隆彦 1

まえがき 新装・増補版に寄せて橋爪大三郎 3

対談 橋爪大三郎・副島隆彦「小室直樹が我々に残した思想と意志」 8

〈復刻〉 現代の預言者 小室直樹の学問と思想 ソ連崩壊はかく導かれた …… 29

復刻(旧版)目次 …… 30

あとがき 新装・増補版に寄せて副島隆彦 265

おわりに 橋爪大三郎 269

小室直樹 略年譜・主要文献 271

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あとがき 新装・増補版に寄せて 副島隆彦

 今から二八年まえの一九八三年一月二六日。ロッキード事件裁判の検察官による元首相・田中角栄に対する論告求刑(ろんこくきゅうけい)があった。その日のテレビ番組で小室直樹先生が「検察官たちを送電線に逆さ吊りにしろ」と発言し、翌朝の番組では羽交い絞めにされて画面から消えた。私はその番組をたまたま見ていた。このあと、小室直樹先生の「小室ゼミ」のドアを叩いた。小室ゼミの実質の筆頭が橋爪大三郎しだった。このとき、私は二九歳で小室先生は五〇歳だった。そのとき、田中角栄は六四歳、小沢一郎氏は四〇歳である。

 日本の国にとって、田中角栄という偉大な国民政治家が、どれほど重要であるかを、小室直樹という学者が一所懸命に日本国民に説明した。小室は言った。「ロッキード事件が作ってしまった新たな規範とは何か。それは行政権力と司法権力の野合である。こうなったら、もうデモクラシーは、ほかに何があってもたちまち、頓死(とんし)するのである」と。田中角栄が切り拓いた日本国の戦後の成長経済の道は大変すばらしかった。そして私は小室直樹先生から多くを学んだ。

 角栄が検察庁と法務省、裁判所を使ったアメリカによる弾圧を受けてから三四年後の今、今度は、小沢一郎がまったく同じ仕掛けで検察庁から違法な攻撃を受けている。二〇〇人もの若い政治家を育てた小沢一郎というすばらしい政治家を、アメリカべったりの日本の保守勢力が、今もいじめている。田中角栄の遺伝子を正しく受け継いでいる小沢一郎という優れた国民政治家を、行政官僚、司法官僚たちが押さえつけようとしている。目下(もっか)の闘いは、お金の問題、すなわち財務官僚たちとの闘いではない。

 政治 Justice[ジャスティス]の力を政治的に悪用して、国民から選挙では選ばれていない司法・準司法の官僚がなぜ日本国の最高権力となり得るのか。国民から選挙で選ばれた代表である議員(政治家)たちがまったく力を持てない国にされてしまっている。ロッキード事件(一九七六年から)の時とまったく同じように、再びアメリカの力で、小沢一郎へ強制起訴などという非道なことを行っている。今こそ私たちは、日本の官僚体制を破壊しなければならない。

 私はデモクラシーを「民主主義」などと訳さない。「民主政治」と書く。デモクラシー demos-cracy(デモス-クラシィ)とは、代議制民主体制のことである。

 デモス demos- とはピープル、すなわち国民、一般大衆のことだ。クラシィ -cracy とは「体制、制度」のことである。大衆、国民が選挙で選んだ代表たちに本当の力、権力を持たせよということだ。国民に選ばれた代表たち、つまりリーダーたち権力(パウア)を持つということである。日本には本当のデモクラシーが未(いま)だない。官僚(ビューロクラット)たちが実質的に簒奪[さんだつ](盗み取っていること)している。

 小室直樹先生は本物の、日本では珍しい本当の天才でした。しかし、先生の優れた能力、知能、学問、思想を日本国が認めなかった。本当ならば小室先生を東京大学の学長にするべきだった。そうしたら、一〇〇人では済まない、一〇〇〇人のソシアル・サイエンティスト、すなわち近代学問(モダン・サイエンス)の学者たちが育っていただろう。小室直樹の才能をないがしろにして、不遇のままにした日本という国はまことに卑小で矮小(わいしょう)な国である。小室直樹が味わった悲運を払拭していく努力を私たちはこれからしていく。

 小室直樹先生の霊が現れたとしたら、何を私に望むであろうか。

 私たちが小室先生の学統を継いでいく。この私たちもあと一〇年、二〇年で死んでゆく。若い人たちにトーチを、火を繋いでいかなければならない。私には小室ゼミの一〇年間分ぐらいの資料しかない。橋爪さんは、もっと大量にたくさんの資料をお持ちである。その資料を使って、小室先生が話したことを復活させるべく、橋爪さんが小室先生の学問を話して映像で残す講義録をこれから作ってゆきたい。

 小室先生が望んだのは、思考に系統性を持つ世界基準(ワールド・ヴァリューズ)の知識である。立体的に造形的に思考することであり、世界と渡り合える知識人を育てることだった。これからアメリカが衰退するのに乗じて、日本はできる限り自立、独立すべきだ。それには、アジア諸国と戦争せず、戦争を煽動する愚かな考えに騙(だま)されず、アジア人どうし戦わず、平和に交渉し、大人の態度で、本気で対等で、ものおじせず交渉することだ。なにごとにも騙されない、操(あやつ)られない、洗脳されない、そういう国民の自覚、自立が大切である。

 残された私たちは日本の若い人たちに、何を繋いでいくか。小室先生は小室ゼミで、無料(ただ)でお金を一円も取らずに、私たちに教えてくださった。そのご恩に報いるために、私はインターネットを駆使して世界標準での知識・思想を学びたいという若い人間たちを「副島隆彦の学問道場」で育てている。小室直樹先生の御霊(みたま)に対して私が捧げることができるのは、このささやかな努力である。

 本書が、小室直樹の学問を学び継ぐ上での、さらに若い世代にとっての入門書になってほしい。

二〇一一年三月

副島隆彦

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ここ最近、私が所属している「副島隆彦の学問道場」の仕事が忙しく、投稿が出来ず、申し訳ありません。何とか目途が立ったので来週から投稿を頑張ってまいります。ここから言葉を改めます。
hontouwaosoroshiikowaikitte511
本当は恐ろしい! こわい切手

 今回は、内藤陽介(ないとうようすけ)著『本当は恐ろしい! こわい切手』(ビジネス社)をご紹介する。本書は月刊誌『ザ・フナイ』に連載されていた記事に加筆してまとめられた書籍だ。『ザ・フナイ』には副島隆彦先生が現在最長の寄稿者として論稿を発表し、私もこれまでに何度か寄稿している。私もそうした縁から本書の基となっている連載を読んでいた。

 著者の内藤氏については『反米の世界史 (講談社現代新書)』(2005年)を読んでいた。切手から見る国際関係という論点が非常にユニークだった。切手は知っての通り、縦横数センチの小さな紙だが、その中に、色々な思惑や主張が含まれている。日本では切手と言えば国宝級の芸術品や建造物、何か大きなイヴェントの記念切手、最近では映画などのキャラクターの切手が発行されることがほとんどだ。しかし、世界各国では、自国の政策の正当性や歴史問題などを訴えるためのプロパガンダの装置としての一面も持っている。

 歴史学や政治学では、ポスターやビラ、テレビや新聞の広告宣伝(これらには文字が含まれるが)、映画、音楽、写真といった文字以外の、ヴィジュアルに訴えかける媒体の分析を行う手法が発達してきた。日本近代史研究の泰斗であるマサチューセッツ工科大学名誉教授のジョン・ダワーの『容赦なき戦争』『反米の世界史 (講談社現代新書)』はそうした手法の成果によって書かれた名著だ。

 それを敷衍すれば、切手もまたそうした分析手法の対象となる。私は日常生活で手紙を受け取っても切手にはほんの一瞬視線を送る程度のことだ。通常であれば、何の変哲もない切手が貼られている。しかし、大事な手紙(家族宛でも恋人宛でも仕事上でも)となれば、少しでも心証を良くしたいということで、きれいな記念切手を使うということはある。私がそうした手紙を受け取る際に、そうした気遣いを感じて嬉しくなる。切手は小さな紙きれではあるが、やはり目が行くものであり、世界各国政府はそこに何らかのメッセージを入れ込むということになる。

 本書『本当は恐ろしい! こわい切手』のキーワードは「こわい」だ。「怖い」「恐い」「強い」といった漢字があてられるが、幅広い内容で切手とエピソードが紹介されている。最初にそれぞれの章で紹介されている切手のカラーグラビアが掲載されている。私は切手ファンではないが、世界各国の切手を見ることが出来て興味深かった。アフリカの切手などは日常生活でこれまで見たことはなかったし、これからもお目にかかる機会などないと思われるが、色彩が豊かで造形も面白く、大きく引き伸ばして家に飾りたいほどだ。それぞれの章のテーマは「呪いの切手(心霊、ブードゥー教とゾンビ)」「鬼の切手(鬼、忿怒尊)」「伝説の切手(ドラキュラ、クラーケン)」「現代の闇の切手(交通事情、タリバン)」「戦争の切手(ナチス、イラン・イラク戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争、ロシア・ウクライナ関係)」となっている。

 私が政治や国際関係に興味を持っているので、後半の2つの章は興味深く読んだ。イラン・イラク戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争を通じて、自国の行動を正当化し、争っている相手を非難するということで、どぎついヴィジュアルの切手が発行されている。また、歴史的な蛮行に対して、静かにそれを糾弾する内容の切手も発行されている。

 各章の説明が冗長になっている部分もあるが、各章の説明で知識を深めることもできる。切手という小さな紙の中に、人間世界が詰まっている。そのことが分かる一冊だ。

(終わり)

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 古村治彦です。

 副島隆彦先生と佐藤優先生の対談『「知の巨人」が暴く 世界の常識はウソばかり』が2022年2月1日にビジネス社から発売になります。以下にまえがき、目次、あとがきを貼り付けます。参考にしていただき、ぜひ手に取ってお読み下さい。

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「知の巨人」が暴く 世界の常識はウソばかり

(貼りつけはじめ)

まえがき

佐藤優

本書の内容自体は読みやすい。そこで屋上屋(おくじょうおく)を架すようなまえがきを書くことは止め、共著者である副島隆彦氏に対する率直な認識を記すことにする。

私は、ほんものの「知の巨人」は副島氏であると昔から思っている。制度化された学問(いわゆる大学や学会での活動)とは別の、在野にこそ真の知性が宿っている場合のほうが多いからだ。

ちなみに副島氏も、ある時期まで制度化された枠組みの中で教育と研究に従事した。1998年から常葉(とこは)大学教育学部の教授を12年間つとめた。常葉大学は、主に静岡県で活躍する人々を養成する伝統ある大学だ。副島氏のもとで学んだ数百名の学生が、現在は教壇に立っていると思う。大学教授時代の話を尋ねても、副島氏は「研究室で学生と一緒にたこ焼きを作っていた」などと、本質をはぐらかす答えをするのであるが、それは副島氏がシャイだからだ。

情熱を込めて教育を行い、学生たちとも親しく交遊していたのだと私は推察している。副島氏の講義から触発された人たちは、現在、社会の中堅として活躍している。

私も2006年から、母校の同志社大学神学部や生命医科学部、学長が塾長をつとめる学部横断的に学生を集めて精鋭教育を行う新島(にいじま)塾などで教育を手伝っているが、悪戦苦闘している。それには大きく分けて2つの原因がある。そして、その2つの原因は緊密に絡み合っているので解きほぐすのが難しい。

 第1は、高校2年から文科系と理科系にクラスが分かれてしまうので、中等教育(中学は前期中等教育で、高校は後期中等教育である)で必要とされる知識が身に付かないまま大学生になっている人がほぼ全員だという、異常な状態だ。

 私は、高校教育の現場がどうなっているかに関心を持ったので、2018〜20年、母校の埼玉県立浦和高校でも教壇に立った。そこで1年終了の時点で、数学に自信がない生徒が文科系クラスを選択しているという安易な進路選択の状況を見て愕然(がくぜん)とした。私が浦高(うらこう)で教えるようになった若干の成果は、自らの知的関心と将来の夢をよく考えて、文科系、理科系を選択する生徒が増えたことだ。

 話を大学生に戻す。文科系の大学生が総じて苦手感を持つのが数学だ。しかし、数学は経済学、経営学はもとより、社会学や文学や神学(たとえば聖書のテキストマイニングに際しては統計知識が必要)においても不可欠になる。

 高校で文科系を選択すると、数IIBまでは履修することになっているが、これは建前に過ぎず数IAの内容ですら怪しい場合も多い。これは学生たちの責任というよりも、このような状況を放置してきた大人たちの責任である。私は自分が教える学生に対しては、数IIIまで独学が難しければ、通信教育を受けるか学習塾に通う形でもいいので、きちんと勉強するように、と指導している。

 理科系の大学生に関しては、一般的に歴史が弱いと見られているが、これは実態に反する。高校レベルでの現代文が理解できているならば(要は論理的な文章を正確に読む訓練ができていること)、歴史書を読めば理解できるので、理科系の学生でも問題はない。

 むしろ、国公立大学を受験する理科系の学生は、暗記する内容が少ないという理由で政治経済と倫理を選択する傾向がある。理科系の学生のほうが政治や哲学については、入試で日本史、世界史を選択した文科系の学生よりも正確な知識を持っている場合もよくある(受験勉強は意外と真の教養につながるのである)。

 理科系の学生が圧倒的に弱いのは英語だ。理科系の場合、最先端の論文のほとんどが英語で書かれている。また論文を書く場合も、英語で書くのが通例だ。しかし、高校段階でも大学の一般教養でも、そのような英語のノウハウを身に付けるような講義は開講されていない。一部の外国語のセンスが良い人以外は、大学の専門課程以降でも英語の習得に、かなりエネルギーと時間を費やしている。

 あるいは英語文献を扱うのを諦(あきら)めて、日本語文献の範囲内で研究を行う学生もいる。これだと、せっかく優れた問題意識と思考力があっても英語の壁に阻(はば)まれて、学生の可能性を十分に活かすことができない。

 副島氏は、代々木ゼミナールで英語の名物教師をつとめていたことがある。実用英語の使い手(特に読む力)として副島氏は一級である。この分野での副島氏の業績を1つだけ挙げるとするならば、ジョン・J・ミアシャイマー/スティーヴン・M・ウォルト『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策1、2』(講談社、2007年刊)の翻訳だ。本書は国際政治を読み解く際の基本書だ。

 副島氏の国際関係観にも、ミアシャイマー流のリアリズムがある。私は外交官時代、ロシアとの関係に次いでイスラエルとの関係が深かった。現下、日本の論壇でもイスラエルの生存権を認めることから、中東問題については論じなくてはならないと考えている。

 ミアシャイマー氏の見解については、同意できる部分とそうでない部分があるが、副島氏が訳さなければ、私がこの本を読むことはなかったと思う。副島氏の翻訳によって、私の視界は以前よりも広くなった。

 さて日本の中等教育の構造的欠陥は、文科系、理科系に知を分断してしまうだけではない。定向進化を遂げてしまった受験産業の副作用として、試験により偏差値でランク付けされることで高校生、大学生の心が疲れてしまっていることだ。その結果、受験競争の勝者を含め、ほとんどの大学生が勉強嫌いになっている。

 副島氏は、ネットで「学問道場」を主宰している。サイバー空間を通じて、再び人々が知に関心を向ける場を作ろうとしている。私はプロテスタント神学という古い学問を基礎としているので、個別に知を伝授するという方法しか思いつかない。

 中世の神学部では教養課程9年、専門課程15 年が標準的な修業年限だった。私は19歳のとき、神学を学び始めたが、自分で神学的思考を操れるようになったのは40代後半になってからだった。大学院修了後は外交官になり、2002年5月に当時吹き荒れた鈴木宗男事件の嵐に巻き込まれ、東京地方検察庁特別捜査部に逮捕され、東京拘置所の独房に512日間勾留されたときも、神学の勉強だけはずっと続けてきた。

 私が神学部と大学院神学研究科で指導した学生で、研究職志望や牧師志望は1人もいなかった。官僚、新聞記者、スポーツ用品メーカーの国際部門などに就職していったが、いずれも、あと20 年は神学の研究を続ける心づもりでいる(裏返して言うと、そういう心構えを持つ学生だけを選んで指導した)。

 人間、一人ひとりの生命は有限だ。自分自身で知についてある程度の感触を摑(つか)んでから、他者にそれを伝達できる期間は20年もなかったという現実を、現在、末期腎不全(じんふぜん)と前立腺(ぜんりつせん)がんのダブルパンチを受けて闘病を余儀なくされている私としては、ひしひしと感じている。

ところで、副島氏には、「農村が都市を包囲していく」という毛沢東(もうたくとう)流の戦略があると私は見ている。だから、地方で日本経済を現実に支えている経営者を、副島氏は大切にしている。私の場合、得意分野が外交で、人脈も永田町(政界)や霞が関(官界)に偏ってしまう。この点でも、私は副島氏から多くを学んでいる。

 実政治に関して、副島氏は岸田文雄(きしだふみお)首相支持の姿勢を明確にしている。

   日本政治への、私、副島隆彦の一番大きな、最大の希望は以下のことだ。

岸田政権を支える岸田首相本人を含めた8人の有力政治家たちがいる。このまだ若い指導者たち(と言っても、もう皆、50歳、60歳台だ)たち8人(80歳台のひともいる)が用心深く団結することで、安倍晋三たちを自民党から追い出すこと。

   これが政権政党である自民党にとっての最大の目標である。普通の国民には理解されないが、この自民党内の党内闘争、派閥抗争こそは、今の日本政治の中心である。

   この反安倍で、お互いの目くばせと無言の表情だけで、じわーっと結集す8人の政治家の名前は今は書かない。

   自分たちの粘り腰のいかにも日本人らしい慎重さで、自分たちのボロと弱点を露出することなく用意周到に準備する。そして愚劣極まりない、しかし手ごわい安倍晋三 の勢力を、計画的にお山の大将に祭り上げる作戦で孤立させて、やがて自民党から追放すること。これが今年1年の日本政治の最大の見せ場となる。

   反安倍で考えを同じくする有力政治家8人が結集することで、安倍集団を自民党内で孤立させ、のたうち回らさせる。そして安倍たちが自ら暴走、激発することで、実に稚拙で大人げない集団だ、ということが国民に丸見えになるので、彼ら60人ぐらいを自民党から追放する。何故なら安倍党は、すでに特殊な政治宗教団体に純化しているから、自民党と相容(あいい)れないのである。

   それでは自民党の大分裂になる。とてもそんなことは起きない、と考えるのが普通の人々だろう。

   私、副島隆彦は、自分が持つ予言者(プレディクター)の能力で、これから起きることを予想、予言する。世界情勢が一段と厳しくなれば、その影響が日本にも必ず押し寄せる。

   それは、日本政治の担当責任者たちへの圧迫となって必ず表れる。それは、支配政党内の政治抗争となって浮かび上がる。これが日本政治を待ち構える、今年最大のドラマであり、国家スケジュールである。

             (2022年1月2日 副島隆彦の学問道場「今日のぼやき」)

 私は、岸田政権の本質がいまだ何であるかよく理解できないでいる。安倍晋三(あべしんぞう)氏に関しては、現実主義的な北方領土交渉を行ったことを高く評価している。他方、現在、自民党内で世代交代をめぐる暗闘が繰り広げられているという認識を副島氏と共有している。副島氏は、自らを予言者(プレディクター)であると規定するが、国際情勢の変動が日本の支配エリートの分断をもたらすのは必然的現象なのだ。

 最後に私と副島氏の思想に関する共通認識について触れておく。それは若き日のカール・マルクス、フリードリヒ・エンゲルスに共通している。

 

   思想の歴史が証明していることは、精神的生産が物質的生産とともに変化するということでなくて、なんであろうか?あらゆる時代の支配的な思想は、いつでも支配階級の思想にすぎなかった。

(カール・マルクス/フリードリヒ・エンゲルス『共産党宣言』プログレス出版所、モスクワ、1971年、69頁)

 本書で批判の対象となっているのは、米中ロの地政学、戦後日本のリベラリズム、日本共産党のスターリン主義などを含め、現代の「支配的な思想」である。こういう思想が普及することによって、利益を得る集団があるということだ。私と副島氏は、1848年にマルクスとエンゲルスが行った作業を、2022年の日本で少しだけ形を変えて行っているにすぎないのである。

 本書を上梓するにあたっては、編集者でライターの水波康氏、(株)ビジネス社の大森

勇輝氏にたいへんにお世話になりました。どうもありがとうございます。

2022年1月12 日、入院中の都内某大学病院の病室にて

佐藤優

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『「知の巨人」が暴く 世界の常識はウソばかり』  もくじ

まえがき 佐藤優 3

第1章 世界の新潮流を読む

●低成長・マルクス主義の時代

時代の最先端思想は帝国から流れてくる 22

人間の欲望自体を縮小させるという発想 26

デフォルトとなった価値相対主義 29

●マイルドヤンキーが日本の主流

「ヤンキーの虎」が日本の新潮流 36

日本のボリシェヴィキはマイルドヤンキー 38

第2章 戦後リベラルの正体

●構造改革派の思想と田辺元の敗北

「佐高信の正体」と構造改革派 44

構造改革派の思想を生んだ久野収 49

田辺元と「悪魔の京大講義」 54

●日本共産党の正体

日本共産党は、なぜ危険なのか 61

批判されるべき「貧乏人平等主義」 68

日本共産党の暴力革命必然論 70

スパイだった野坂参三――日本共産党最大の事件 79

一国共産主義へと導いた宮本顕治の達観 86

●新左翼とは何だったのか

70年代は殺し合いの内ゲバ時代 94

東大闘争――過激派たちの末路 99

新左翼の誕生とセクトの分裂 102

ソ連から流れた左翼陣営へのカネ 105

繰り返すべきでない新左翼運動の悲劇 108

第3章 米中ロの世界戦略と日本の未来

●アメリカの敗北で起爆するイスラム革命

日本政府のアフガン政策は間違っていなかった 112

インテリジェンス分析の弱さがアメリカ敗北の一因 118.

ロシアが懸念する中央アジア・フェルガナ盆地 123

●宗教対立と戦略なきバイデン政権

ローマ教皇のイラク訪問が意味するもの 131

綱渡り状態が続くイスラエルの内政 135

●中国の台湾侵攻と日本の未来

中国は台湾に侵攻できない 139

日本は中国とケンカすべきではない 144

実現の可能性がある北方領土の二島返還 149

日本は属国のままか、あるいは帝国になれるのか 152

国家を破綻させる「革命」の恐ろしさ 156

欲望の肯定が生み出した中国の巨大な成長 160

平均賃金で韓国に抜かれた日本の最重要課題 165

第4章 ディープ・ステイトの闇

●ディープ・ステイトとは何か

ディープ・ステイトの成り立ちと日本での実態 170

MMT理論とコロナ給付金で崩壊する日本 175

イベント屋と化したディープ・ステイト 180

●世界を支配する闇の真実

ヒトラーはイギリスのスパイだった! 183

ヒトラー暗殺未遂事件が生んだ真の悲劇 186

第5章 間違いだらけの世界の超常識

●世界はデイズム(理神論)に向かっている

この世は物質と霊魂でできている 194

ヘーゲルとマルクスの間違いとは何か 202

●学問の最先端を理解する

形而上学がすべての学問の土台 209

西洋の学問の最上位は神学である 215

「我思う」から「考える葦」、そしてスピノザへ 219

人類を悲惨な状況に追い込んだルソーの絶対平等思想 223.

ドストエフスキーが見抜いた資本主義の本質 229

ポストモダン、構造主義が消えた必然 235

●佐藤優と副島隆彦の生き方哲学

人間には特権的な地位がある 239

キリスト教がいまだに強い真の理由 242.

あとがき 副島隆彦 246

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あとがき

副島隆彦

佐藤優氏との対談本は、これで7冊目である。この本の書名は「知の巨人うんぬん」となっている。私は、知の巨人という奇妙な、気色の悪い言葉を嫌悪(けんお)する。ところが、何とこれが書名になってしまった。知の巨人というコトバは、出版業界の宣伝文句として、文藝春秋のライター上がりの立花隆(たちばなたかし)に奉(たてまつ)られた 冠(かんむり)言葉だ。立花隆は、CIA(米中央情報局)の手先となって、愛国政治家の田中角栄を謀略政治言論で突き殺した当人である。

 この対談本の相手の佐藤優は知の巨人であろうが、私はそうではない。私は九州の田舎から出て来て何とか言論人になろうと、貧乏の中で何のコネもなく自力で這(は)い上がって来た人間だ。だから私は、この世の全ての特権階級、言論お公家(くげ)さま集団が大嫌いである。

 私は、世の中で隠されている諸真実を本に書いて暴き立てることで、出版業界で何とか徒食(としょく)して来た。私は自他共に認める〝真実暴きの言論人〞である。

 佐藤氏は、まえがきで私が静岡の私大で12年間教えたことを、私に何か人生戦略が有るかのように書いてくれている。そんなものは、ありません。私は、年収1000万円の収入が欲しかったから大学教師をしていただけだ。私のアメリカ政治研究の能力を評価してくれた政治家が、推薦してくれた。その前の13年間の予備校講師も、ゴハンを食べる(生活費を稼ぐ)ための必要でやっていたのであって他に理由はない。

 私は、世の中のごく普通の人々の悲しみと苦しみが分かる人間である。私は、権力者や支配者層の人間たちと闘い続けるから、彼らに同調しないし、身を売らない。

 佐藤優は、ロシア語とドイツ語から、宗教(神学)と思想の両方を刻苦勉励して習得した。私は英語しかできない。佐藤優は、日本では稀有な世界基準 world values(ワールド・ヴァリューズ)で、高等知識を取り扱うことができる稀有な思想家である。だから、私は佐藤優と話が合う。互いの知能(インテレクト)を理解し合っている。こういう本物の知識人は、今の日本にあまりいなくなった。昔は少しいた。今の日本の知識人(学者)階級の知能低下は目に余る。ヒドいの一語に尽きる。

 本書のP213でアリストテレスの主要な著作の meta-physica(メタ・フィジカ)と physica(フィジカ)(物理学 ×自然学ではない)の区別を論じた。メタフィジカの「メタ」meta-は、普通言われているような物質世界(フィジカ)の「上」とか「前」とか「後(あと)」ではない。Meta-は「下」である。フィジカの下に有る土台のことだ。

  このことで、私は佐藤氏と一致した。メタ meta-は、この現実の世界 physica(フィジカ)の下に有って、それを支える基礎、土台のことである。このことを2人で確定した。

 meta-physicaを、明治の初めに×「形而上学(けいじじょうがく)」(形あるものの上[うえ]にある学問)と訳した。このことの大間違いが、本書ではっきりした。これは、日本における西洋学問の輸入、移植の際の欠陥、大(だい)誤り、大失敗の指摘と訂正ののろしとなるだろう。

 私が、この30年間抱えてきた学問研究上の疑問の苦悩を佐藤優に一つ一つ問いかけて、

「そうですよ」「そうですよ」と頷(うなず)き(合意)をもらえたことが大きい。日本国におけるヨーロッパ近代学問(これがscience [サイエンス]。P217の表)の受容上の数々の大誤りが、本書で訂正されていった。このことは、日本における学問と思想の大きな前進である。

  私は、「ウィキペディア」を強く疑っている。インターネット上に開かれて、誰でも、どこからでも、自由(フリー)に読める百科事典(エンサイクロペディア)を名乗っている。現代の新たな人類の知識(知能)の管理組織である。その危険性に私は、警鐘を鳴らしてきた。アマゾン、グーグル、アップルら米 big tech(ビッグテック)の危険性と同じだ。だが、今のところ誰も私の主張を聞いてくれない。

 ウィキペディア Wikipediaの、あの膨大な文章は一体、誰が、どんな組織で書いているのか分からない。ウィキペディアンたちがボランティアで書いてます、は人々を欺(あざむ)く謀略言論である。書き手は名無しのゴンベエだ。文章責任(文責[ぶんせき])が全く明らかでない。公共の知のふりをした闇に隠れた支配組織だ。

 ウィキペディアは、80 年前(1938年)にイギリスの大(だい)SF作家のH(エイチ)・G(ジー)・ウェルズがぶち上げた world brain(ワールド・ブレイン)「世界頭脳」というアイデアを元(もと)にしている。この世界頭脳は、世界中のどんな貧しい人々も、ただちに習得できる公共知の提供の構想だった。

 ところが、この世界頭脳(ワールド・ブレイン)は危険である。人類を上から支配する目に見えないビッグ・ブラザー big brotherの片割れである。その現在の姿がウィキペディアである。それなのに、日本の出版業界と知識人層は疑うことも知らず、このウィキペディアにべったりと依存している。だから、出版業界が衰退しジリ貧になるのだ。

 佐藤優と、次の対談本では、これらの問題を話し合いたい。

佐藤優氏が、まえがきで献辞を書いたので私は繰り返さない。

2022年1月

副島隆彦

(貼り付け終わり)

(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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