古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ビジネス社

 古村治彦です。

 

 今回は『今の巨大中国は日本が作った』(副島隆彦著、ビジネス社、2018年4月28日)をご紹介します。この本は現在の中国の最新の情報と分析が詰まった一冊となっています。

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今の巨大中国は日本が作った

 

 この本では、森嶋通夫、青木昌彦という2人の日本人経済学者(ノーベル賞に近い日本人学者と言われた)が中国から派遣された優秀な留学生を教え、その留学生たちが現在、中国を運営している、その代表が中国共産党中央政治局常務委員の王滬寧(おうこねい)であることを明らかにしています。

 

 中国は高度経済成長期の日本をよく研究し、参考にしています。1960年代から70年代にかけての日本の高度経済成長の最大の特徴は、大きな格差を生み出さない経済成長(economic growth without inequality)です。経済成長には大きな格差が生じ、それが社会を不安定にするというのが定説ですが、日本では所得の再配分(redistribution of income)によって社会の安定を維持しながら経済成長することに成功しました。中国が目指す路線もまさにこれです

 

 この他にも「中国は民主政治体制(デモクラシー)に移行する」という大胆な予測もなされています。現在、独裁的な力を持つ習近平国家主席の下でこそデモクラシーが実現するというのは興味深い話です。

 

 こうした新しい情報や予測が満載の本となっています。以下にまえがき、目次、あとがきを掲載します。是非手にとってご覧ください。宜しくお願いいたします。

 

(貼り付けはじめ)

 

まえがき

 

この本は、私の中国研究の最新の成果の報告である。いくつか大きな発見があった。

 

本の中心部分は、昨201710月の第19回中国共産党大会(19[だい]という)から今年3月の全人代[ぜんじんだい](中国の国会)で新しいトップ人事が決まったことを受けて、これからの5年の中国はどうなってゆくか、だ。そして、さらにその次の5年後も考える。

 

つまり2022年。そして2027年(習近平時代の終わり)。それまでに中国はどうなってゆくかをテーマとする。

 

2012年に始まった習近平体制は、通常であれば2期目の5年で終わりだった。だが、さらにその次の5年も習近平が政権を担う。3月の全人代で「任期の上限を撤廃する憲法改正案」が採択された。「習近平の独裁体制が死ぬまで続く」と、専門家たちが解説したが、そんなことはない。習近平は2027年(あと9年)で辞める。

 

私の今度の中国研究で行き着いた大事な発見は、その次の2022年からの5年で、中国はデモクラシー(民主政体[せいたい]・民主政治)を実現するということだ。これからの5年間は、確かに習独裁(、、、)である。彼に強い力が集中して、戦争でも騒乱鎮圧でも残酷にやる。だが、その次の2022年からの5年は、中国がデモクラシー体制に移行する準備期間となるだろう。そうしないと世界が納得しないし、世界で通用しないからだ。

 

この説明に際し言っておきたいのは、私は「民主主義」という言葉を使わない。「デモクラチズム(、、、)」という言葉はない。だから、×民主主義は誤訳(ごやく)である。

 

デモクラシー(代議制[だいぎせい]民主政体[せいたい])とは世界基準の政治知識であり、次のようになる。

 

    普通選挙制度 ユニバーサル・サファレッジ universalsuffrage

    複数政党制 マルチ・パーティ・システム multi-party system

 

である。この「①普通選挙」と曲がりなりにも、とにかくも「②複数政党制」を完備すれば、デモクラシー国家と言える。①の普通選挙[エレクション]制度は、18歳以上の男女すべてに一人一票を与え、無記名の投票(ボウティング)で代表者を選ぶ(エレクション)政治体制である。中国は、これに必ず移行していくと私はみている。

 

今のままでは、中国国民の反発、不満も限界に達する。現在の一党独裁は、世界がもう許さない。このことを習近平自身がしみじみとよく分かっている。

 

①の普通選挙制度の前提として、②の複数政党制が必要だ。少なくとも2つ、あるいは3つ、4つの大政党ができなければいけない。そして、選挙で勝った政党によって、中国の政権が作られる政治体制に変わっていくのだ。そのための移行期が2022年からだ。そこでは、もう習近平独裁は行われない。

 

どうして中国がそのように変わるのか。

 

そうした政治体制に変わらなければ世界が納得しないからである。このことは、党の長老も含めた最高指導者たちによる昨年8月に北戴河[ほくたいが](渤海[ぼっかい]湾に面した中国の避暑地)で行われた会議で決定された。

 

習近平が去年の夏、長老たちをねじ伏せるようにして、次の5年と、さらにその次の5年も自分がやると宣言した。そしてここで中国共産主義青年団(共青団[きょうせいだん])系と、習近平の勢力が折り合い、合意した。その証拠の記事をあとのP25に載せた。

 

前国家主席である胡錦濤(こきんとう)が、その場で習近平を一所懸命なだめる形で、「2017年から5年間の政治体制にも、共青団系を半分くらい入れてほしい」と望んだ。習近平はこれを拒否した。かろうじて李克強(りっこきょう)首相(国務院総理。首相)と汪洋(おうよう)副首相が共青団で、チャイナセブンと呼ばれる政治局常務委員、中国のトップ7に入った。

 

その他5人は、すべて習近平の系統で占められた。いやナンバー7の韓正(かんせい)は、どうも江沢民(こうたくみん)の派閥(上海閥[ばつ])である。どうしても古い勢力を1人は入れないと済まないのだろう。共青団系はギリギリまで譲歩せざるを得なかった。

 

江沢民に育てられた習近平(当時、副主席だった)を10年間、熱心に教育したのは胡錦濤だ。「指導者になる者に必要なのは、我慢に我慢だ。私たちは派閥抗争などやっていてはいけない。中国は世界を指導する国になるのだ」と育てた。

 

だが、もっと深く習近平を見込んで育てたのは、鄧小平[とうしょうへい]1904生~1997死)だ。

 

鄧小平が、地獄の底から這い上がった中国を、

「中国は豊かな国になる。もうイデオロギー優先の愚かな国であってはならない。民衆を

貧困から救い出さなければいけない」

として、今の巨大に成長した中国の基礎を作った。鄧小平(89歳のとき。その4年後の

1997年に93歳で死去)は、1993年に40歳のときの習近平と会っている。

 

「お前は、(私の敵である)江沢民(こうたくみん)、曽慶紅(そけいこう)が育てた人材だ。だが、私はお前を次の時代の指導者に選ぶ」と言って、「それまで我慢せよ。指導者に大切なのは我慢することだ」と切々と説いた。

 

だから2017年からの5年間、つまり2022年までは、習近平独裁体制が続く。ここで国内を政治的にも経済的にも安定させながら、「偉大なる中華民族の復興」は、やがて「デモクラシーの政治体制」として実現する。この主張が、この本の揺るぎない骨格である。

 

この本での2つ目の大発見は、今の巨大に成長した中国を作ったのは、特定の日本人経済学者たちであった、という大きな事実だ。

 

今、大繁栄を遂げた中国にその計設図(ドラフト)、OS[オウエス](オペレーティング・システム)を伝授した日本人学者たちがいる。中国が貧しい共産主義国から脱出して急激に豊かになってゆくためのアメリカ理論経済学(、、、、、)の真髄を、超(ちょう)秀才の中国人留学生たちに教えたのは、森嶋通夫[もりしまみちお]1923生~2004死。19701989年ロンドンLSE(エルエスイー)教授。『マルクスの経済学』1974年刊、東洋経済新報社)である。それを名門スタンフォード大学で中国人大(だい)秀才たちに長年、丁寧に授業して叩き込んだのは青木昌彦(まさひこ)教授(1938生~2015死)である。

 

この2人が、「マルクス経済学である『資本論』を、ケインズ経済学のマクロ計量モデルにそのまま置き換えることができるのだ」と計量経済学(エコノメトリックス)の高等数学の手法で、中国人たちに教え込んだ。これが1980年代からの(もう40年になる)巨大な中国の成長の秘訣(ひけつ)、原動力になった。

 

「マルクスが描いた資本家による労働者の搾取率(さくしゅりつ)は、そのままブルジョワ経済学(近代[きんだい]経済学)の利潤率[りじゅんりつ](利益率)と全く同じである」

 

と森嶋通夫が、カール・マルクスの理論を近経[きんけい](=アメリカ経済学)の微分方程式に書き換えた(置き換えた)ものを青木昌彦が教えた。それが今の巨大な中国を作ったOS(オウエス)、青写真、設計図、マニュアル(手法)になったのだ。

 

大秀才の中国人留学生たちは、全米中の大学に留学していた。彼らは電話で連絡を取り合って、巨大な真実を知った。自分たちが腹の底から渇望(かつぼう)していた大きな知識を手に入れた。「この本で私たちは、欧米近代= 近代資本主義(モダンキャピタリズム)とは何だったのかが、分かった。これで中国は大成長(豊かさ)を手に入れることができる」と皆で分かった。

 

このときの留学生とともに、今の中国指導者のナンバー2の王岐山(おうきざん)、つい最近まで中国人民銀行(中国の中央銀行)の総裁だった周小川(しゅうしょうせん)、そして、中国の国家理論家(国師[こくし]。現代の諸葛孔明[しょかつこうめい])の王滬寧(おうこねい)らがいる。彼らはズバ抜けた頭脳を持った人々なのである。日本人は今の中国の指導者たちの頭脳をナメている。自分の足りない頭で、中国人をナメて、軽く見て、見下くだしている。何と愚かな国民であることか。

 

やはり、鄧小平が偉かったのだ。

 

鄧小平が毛沢東の死(197699日)後、1978年から「改革開放」を唱えて、「中国人はもう貧乏をやめた。豊かになるぞ」と大号令をかけた。そしてヘンリー・キッシンジャーと組んで、中国を豊かにするために外国資本をどんどん中国に導入(招き入れ)した。そして驚くほどの急激な成長をとげた。

 

と同時に、鄧小平はキッシンジャー・アソシエイツ(財団)の資金とアメリカ政府の外国人留学生プログラムに頼って、何万人もの優秀な若者を留学生としてアメリカに学ばせた。そのなかの秀才たちが、らんらんと目を輝かせて、「資本主義の成長発展の秘密」を、森嶋通夫と青木昌彦という2人の日本人学者から学び取った。それが今の巨大な中国を作ったのである。この大事なことについては、本書の第3章で詳しく説明する。

 

副島隆彦

 

=====

 

●目次

 

まえがき   3

 

第1章中国国内の権力闘争と2022年からのデモクラシーへの道

 

この先5年と次の5年、民主中国の始まり   22

 

タクシー運転手が知っていた中国の未来像   27

 

習近平の知られざる人生の転機   30

 

鄧小平が40歳の習近平を見込んだ理由   34

 

腐敗の元凶となった江沢民と旧国民党幹部の地主たち   41

 

中国の金持ちはこうして生まれた   42

 

デモクラシーへの第一歩となった共産党の新人事   46

 

今後のカギを握る王岐山の力   49

 

中国を動かす重要な政治家たち   54

 

中国初の野党となる共青団   60

 

台湾はどこへ向かうのか   62

 

バチカン(ローマ・カトリック)と中国の戦い   66

 

人類の諸悪の根源はローマ・カトリック   72

 

チベット仏教について物申す   75

 

第2章人民解放軍vs.習近平のし烈な戦い

 

北朝鮮〝処理〟とその後   82

 

北朝鮮が〝処理〟されてきた歴史   88

 

近い未来に訪れる朝鮮半島の現実   90

 

鄧小平が行った中越戦争[ちゅうえつせんそう]1979年)がモデル   91

 

7軍区から5戦区へと変わった本当の意味   96

 

軍改革と軍人事の行方   101

 

勝てる軍隊作りとミサイル戦略   109

 

第3章今の巨大な中国は日本人学者が作った

 

中国を冷静に見られない日本の悲劇   116

 

日本はコリダー・ネイションである   122

 

日本国の〝真の敗北〟とは何なのか   124

 

現実を冷静に見るということ   126

 

国家が仕込んだ民間スパイ   130

 

中国崩壊論を言った評論家は不明を恥じよ   132

 

「日本は通過点に過ぎない」とハッキリ言い切った人物   136

 

本当のデモクラシーではないのに他国に民主化を説くいびつさ   138

 

アメリカに送り込まれた中国人エリートたちのとまどい   141

 

今の中国の政治社会のOSは日本が作った   144

 

森嶋通夫との浅からぬ縁   146

 

中国社会を作ったもう1人の日本人   151

 

森嶋、青木の頭脳と静かに死にゆく日本のモノづくり   155

 

そしてアメリカは西太平洋から去っていく   158

 

尖閣防衛と辺野古移転というマヤカシ   162

 

第4章 大国中国はアメリカの言いなりにならない

 

中国の成長をバックアップしたアメリカ    170

 

ロックフェラー、キッシンジャーからのプレゼント   175

 

米軍と中国軍は太平洋で住み分ける   182

 

米・中・ロの3大国が世界を動かしている   186

 

チャイナロビーは昔の中国に戻ってほしい   191

 

アメリカと中国の歴史的な結びつき   192

 

中国とイスラエルの知られざる関係   194

 

第5章 AIIB と一帯一路で世界は中国化(シノワゼイション)する

 

日本のGDP25年間で500兆円、中国は今や1500兆円   200

 

世界の統計は?ばかり   204

 

アメリカの貿易赤字の半分は中国   207

 

貿易戦争というマヤカシ   210

 

一帯一路は今どうなっているのか   216

 

アフリカへと着実に広がる経済網   229

 

次の世界銀行はアルマトゥという都市   238

 

世界の〝スマホの首都〟は深?である   242

 

あとがき   250

 

=====

 

●あとがき

 

私は、この10年で計10冊の中国本を書いて出版してきた。この本で11冊目である。

 

この本で書いたとおり、今の巨大中国の設計図(OS[オウエス])を作って与えたのは、森嶋通夫(もりしまみちお)先生(京都大学、ロンドンLSE教授)である。故森嶋通夫は、私の先生である小室直樹先生の先生である。私に、碩学の二人の遺伝子が伝わっている。それでこの本が出来た。お二人の霊にこの本を献(ささ)げる。

 

この本を書いている途中にも中国は次々と新しい顔を見せる。その変貌の激しさにこの私でも付いてゆくのがやっとである。同時代(コンテンポラリー)に私たちの目の前で進行したあまりにも急激な巨大な隣国(しかし帝国[ディグオ])の変化に私自身がたじろいでいる。一体、中国はこれから何をする気か。それでも私は、中国に喰らい付いて、この先も調査研究を続ける。

 

この本の担当編集者の大森勇輝君が大きく尽力してくれた。唐津隆社長からも気配りをいただいた。記して感謝します。

 

20184

副島隆彦

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)


※私の仲間である石井利明さんのデビュー作『福澤諭吉フリーメイソン論』が2018年4月16日に刊行されました。大変充実した内容になっています。よろしくお願いいたします。

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(仮)福澤諭吉 フリーメイソン論

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 古村治彦です。

 

 今回は『世界権力者図鑑2018』(副島隆彦、中田安彦著、ビジネス社、2017年)を皆様にご紹介いたします。発売は2017年11月21日です。

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世界権力者図鑑2018

 

本作は、『世界権力者 人物図鑑 世界と日本を動かす本当の支配者たち』(副島隆彦著、日本文芸社、2010年)、『ヨーロッパ超富豪 権力者図鑑』(中田安彦著、副島隆彦編集、日本軍米社2010年)、『新興大国 権力者図鑑』(副島隆彦責任編集、中田安彦著、日本文芸社、2011年)、『アメリカ権力者図鑑―崩壊する世界覇権国の今を読み解く』(副島隆彦、中田安彦著、日本文芸社、2011年)、『最新版 世界権力者 人物図鑑』(副島隆彦著、日本文芸社、2013年)と続いたシリーズの最新版です。出版社は変わりましたが、副島隆彦と中田安彦のコンビで、現在の世界を人物から分析する好著です。

 

 今月初め、ドナルド・トランプ米大統領とメラニア夫人がアジア歴訪とAPEC参加の第一歩として日本を訪問しました。その前には娘のイヴァンカ・トランプ大統領補佐官が日本を訪問しました。トランプ大統領には娘婿であるジャレッド・クシュナー補佐官が同行しました。こうした人々については本書で写真付きで紹介し、日本では紹介されていないレア情報を書いています。

 

私たちは「これまでとは違う世界に向かう」世界の中に生きています。そうした中で、世界を理解するためには、「世界を動かしているのはどういう人間たちなのか」ということを知ることは、現状を分析し、未来を予測するために大変有益なことです。

 

 ぜひ本書を手に取ってお読みください。よろしくお願い申し上げます。

 

(貼りつけはじめ)

 

はじめに

 

世界政治というと、なにか難しいことのように思える。だが国家も企業も、あらゆる組織・団体も結局はキーパーソンによって動かされている。その時代の精神を最も体現する人物が世界の最高権力者になるのだ。

 

2017年末現在で、世界の中心人物は、やはりアメリカ合衆国大統領のドナルド・J・トランプだろう。このド汚い大規模土建屋あがりの経営者で、テレビスターでもあったが、政治家の経験のない男が、世界最大の軍事国家でもある大国の指導者にのし上がった。このことで世界政治にとてつもない影響を現在進行の形で日々与えている。

 

2次世界大戦後に成立した秩序に対抗して延々と積み重なった、アメリカの草の根大衆の「怒り」をうまく体現した人物が大統領になったのだ。トランプが出馬表明した2015616日、あるいは彼が当選した2016119日は、世界政治の大きな転換点であるだろう。

 

この変化に呼応して、世界中の指導者たちも、立ち位置を変えざるを得ない。世界のあと二つの中心は疑いもなく「中国」と「ロシア」だ。アメリカが世界単独覇権(はけん)を唱える時代は終わった。この三大国(G3)が世界を動かしていく。どこの国でも権力者というのは大衆や庶民からの支持や賞賛、あるいは嫉妬や嫌悪や激しい憎しみの対象である。これからは、娘のイヴァンカたちトランプ一族が大衆の嫉妬の視線に晒される。

 

前作までと同様に世界の大きな枠組みの「再編成(リアラインメント)」の主役たち122人を、グラビア写真集として、的確な説明文と真実を伝える生々しい人物写真のインパクトで伝える。これらの政治家たちは決して「闇の権力」などではない。権力ドラマを日々生きている生身の人間たちである。

 

201711月 中田安彦

 

=====

 

おわりに

 

 この「世界権力者 人物図鑑」シリーズは、2010年から始まった。前作(2013年)から4年が経過し、世界権力者の顔ぶれもだいぶ替わった。私は、このシリーズを出版する意義として、「日本人は、世界の主要な指導者たちの考えや行動を大きく理解することで、世界の全体像を摑まえるべきだ」とした。ところが、日本人は世界情勢に興味を持たなくなっている。1年前のトランプ当選で日本人もアメリカという大国に関心を向けた。だがトランプ大統領がどういう思想の持ち主でどういう政治勢力を代表しているのかについて知ろうとしない。「北朝鮮の金正恩と同じような乱暴者」という程度の認識力しかない。アメリカに現れた最新型の政治勢力のことが理解できないのだ。日本のメディアもトランプ大統領が登場しても、全く報道姿勢は変わっていない。「この人本当に大丈夫なの」程度である。

 

 世界は変動のさ中にある。先ごろ行われた中国共産党の5年に一度の党大会「19大(たい)」で、習近平が新しい陣容で自分の権力基盤を強固にした。ロシアでも来年、プーチンがまた大統領選挙に勝利するだろう。日本人はこの激流に飲み込まれないために、世界基準(world values ワールドヴァリューズ)の政治思想を勉強すべきだ。私は、「世界は、米中露の〝第2次ヤルタ会議体制〞に向っている」と考えている。

 

 東アジア(かつて極東[ファーイースト]と言った)の一国である日本国の国民が、感性を研ぎ澄まして、この本に居並ぶ権力者たちの表情を凝視することで、これからの世界はどのような思想によって動かされていくのかを、大まかでいいから知るべきだ。本書が皆さんの政治知識の学習のお役に立つことを強く希望する。

 

201711月 副島隆彦

 

(貼りつけ終わり)

 

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世界権力者図鑑2018

(終わり)






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 古村治彦です。

 

 今回は、私の先輩であり、友人でもある下條竜夫・兵庫県立大学准教授の最新刊『物理学者が解き明かす思考の整理法』を皆様にご紹介します。2017年2月10日に発売となります。


物理学者が解き明かす思考の整理法

物理学者が解き明かす思考の整理法

 

 下條さんは昨年、『物理学者が解き明かす重大事件の真相』という本を出版し、評判となりました。私も読みましたが、福知山線での脱線事故や和歌山カレーヒ素殺人事件といった、世の中に良く知られている事件の原因、また、あの当時、世間を大いに騒がせたSTAP細胞騒動について、分かりやすく書かれていました。


 


 私は子供のころから算数、理科、長じては数学や物理化学といった教科が大の苦手で、高校に入った後は落ちこぼれてしまい、いつも赤点ばかりでした。ですから、数字や方程式が出てくると、拒否反応が起きてしまうという恥ずかしいことになってしまいます。

 

 しかし、下條さんの本は、彼が直接私に説明してくれるような感覚で、分かりやすいものでした。実際に下篠さんと会って、話をしてみると、気さくに難しい話をできるだけ分かりやすく説明してくれる方で、それが著作にも反映されています。

 

 今夏は前作の第二弾ということに加えて、理科系から見た文化系というテーマもあるようです。

 

 多くの方に読んでいただければと思います。よろしくお願い申し上げます。

 

(貼りつけはじめ)

 

はじめに

 

 2016年の1月に『物理学者が解き明かす重大事件の真相』という本を出版した。福島原子力発電事故や地球温暖化問題などの重要事件、重要問題について、私の忌憚のない見方を文章にして本にしたものだ。

 

 正直、この本を出す前は、不安だった。まず、こんな小難しい本を読んでくれる人がいるのかが心配だった。また、私の専門でない技術分野について言及することが多かったのも不安のひとつだった。自分の専門分野以外に口を出すことは、理科系の研究者ではタブーに近い。

 

 ところが、予想に反して、多くの人からお褒めの言葉をもらった。様々な人からメールや手紙をいただいたが、ほとんどは好意的な意見であった。同じ大学の先生たちからも、いたく褒められた。毒物の専門家であるコロラド大学のA. T. Tu 先生は、この本を読んで、わざわざ私に会いに来てくれた。びっくりするぐらい好評だった。

 

 皆さん、本当にどうもありがとうございました。

 

 ただ、私の研究室の学生たちだけは、この本をバカにしていた。「下條先生、こんな本だしてるよ、おもしれえなあ」「下條先生、小保方晴子が天才とか書いてる、笑える、わははははは」とか言っていたそうだ。まあ、そんなものかなあと思う。

 

 この本は、その『物理学者が解き明かす重大事件の真相』に続く、第二弾である。

 

 前回は、様々な事件とその背景を理科系の視点から見て解説した。マスコミが伝える事件の顛末ではなく、「実際はこうだろう」という、自分の思考に基づいた事件の原因と背景を描いた。今回も同様な形で、哲学、古代史、経済学、文章の書き方など、文科系の学問を『理科系から見た文科系』という視点で書いた。

 

 本文で取り上げた『理科系の作文技術』という本の次に、大学の生協で売れているのが外山滋比古著『思考の整理学』という本だ。いかに思考すれば新しいアイデアが生まれるかをエッセイの形で説明した本である。今の若い人たちにとっては、「どういう方法で思考すればいいのか、どうやれば新しい考えを生み出すことができるのか」ということが重要らしい。

 

 しかし、残念ながら、『思考の整理学』という本には実例がない。だから、どういうテーマをどのように考えればいいのか、実感がわかない。

 

 そこで、よかったら、この本を『思考の整理学』の実例集として参考にして下さい。この本で取り上げたテーマは私の専門ではない。専門家に比べ、私の知識は圧倒的に不足している。少ない知識から、どうやって思考して整理して簡潔な主張に持って行くか、それが勝負である。いかに思考すればいいかの参考例としては最適だ。

 

 しかし、この本の中には、専門家の方からみれば、「ここは完全に勘違いしているなあ」というのがあるだろう。その時は gejo@sci.u-hyogo.ac.jp までメールを下さい。必ず、ご返事差し上げます。

 

 副島隆彦先生には、企画からずっと本当にお世話になりました。ここに謝意を表します。また、ビジネス社の岩谷健一さんにもお世話になりました。ここに御礼申し上げます。

 

   2017年1月

 

                                   下條竜夫

 

=====

 

物理学者が解き明かす思考の整理法 目次

 

はじめに 3

 

第1章 なぜ日本人は哲学がわからないのか ─── 11

    「哲学」とはアリストテレス哲学のことである

 

プラトンとアリストテレス 13

哲学を信じて虐殺された女哲学者ヒュパティア 16

哲学者とはアリストテレス哲学を信奉する人たちという意味である 21

『薔薇の名前』にでてくるアリストテレス哲学 25

現代につながるアリストテレスの哲学 29

 

第2章 星占いの科学 ─── 33

    なぜ日本人は星占いが大好きなのか

 

現代の星占い 35

四神(朱雀、玄武、青竜、白虎)とは四方にある星座のことである 38

西暦150年に完成していた中国天文学 44

木星の動きからつくられた十二支 48

北極星の移動に見る中国と日本の政治思想 55

陰陽師が行っていた星占いとは何だったのか 63

 

第3章 歴史の謎を天文学から明らかにする ─── 67

    女王卑弥呼とは誰だったのか?

 

日本に伝わる妙見信仰 68

西播磨の大避神社が示す北斗七星と北極星 73

昔の北極星の位置にある大倉山山頂 76

歴史から大避神社が星の位置にある理由を探る 78

二十四節気が明らかにする日本の古代史 79

日本に入ってきた道教 84

女王卑弥呼の正体 87

道教国家・日本 89

 

第4章 金融工学とはどういう学問か ─── 93

    なぜ儲けることができるのか

 

金融工学という錬金術 95

金融工学の想定外、ファットテイル(fat tail) 100

経済物理(econophysics)が予言した2014年1月の株式市場の暴落 107

20世紀は数学が世界を席巻していた時代である 111

 

第5章 現代物理学は本当に正しいのか? ─── 115

    副島隆彦氏との対談

 

物理学とはどのような分野に分かれるのか? 117

現代物理学は正しいのか 119

エルンスト・マッハの科学哲学 126

科学とは思考を節約するためにある 134

文科系の人間は「一定の条件において」を認めない 138

 

 

第6章 STAP事件の真実 ─── 147

    なぜ小保方晴子著『あの日』は陰謀論と呼ばれたか

 

業績を奪われ激怒していたハーバード大学バカンティ教授 149

STAP事件に関する異常な世論誘導 157

再現実験での丹羽仁史副チームリーダーの実験データ 162

STAP特許はまだ生きている 167

STAP細胞関連でファンドを獲得しているバカンティ教授 170

故笹井芳樹氏の見た夢 171

 

第7章 AIとは何か ─── 175

    経験は知恵に勝る

 

プロ棋士と互角の戦いをする将棋プログラム『ボナンザ』 177

将棋プログラムの強さは「特徴ベクトル」によって決まる 178

プロ棋士の指手をまねる 182

「特徴ベクトル」を自分で見つける最近のAI 186

脳の機能に似ている深層学習 189

 

第8章 なぜ日本人は論理的な文章が書けないのか? ── 193

    論理とはことばとことばの連結である

 

論理的な文章とはどういうものか 196

パラグラフ・ライティング 198

実際の文章例 203

文章に必要な要素① flow(流れ) 206

テーマの糸 212

文章に必要な要素② clarity(明快さ) 214

プレゼンテーション(パワーポイント)への応用 216

現代日本語は英語の文章作法を基礎としている 217

 


(貼りつけ終わり)







アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22






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 古村治彦です。

 

 新年あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。


 この度、私の仲間であり、先輩である、下條竜夫博士の著書が発売となります。私は高校1年生で数学と理科で赤点を取り始めて以来、理科系に関しては並以下の知識しかありません。今回の本は下條さんが世の中で起きた自然科学に関する事件を分かりやすく説明されています。私は下條さんに何度も会ってお酒を飲んだり、話をしたりしていますが、いつも穏やかに、笑顔を湛えながら、私(たち)の馬鹿な質問にも答えてくれる方です。

 今回の本では、福島第一原発事故や福知山線脱線事故、小保方晴子氏の「STAP細胞」騒動、和歌山カレーヒ素混入事件などが取り上げられています。数字や数式、化学物質の名前などは、文科系の私(高校1年生の早い段階で理系科目は赤点の常連になりました)には難しく感じましたが、それでも書いてある内容は刺激的です。小保方さんの騒動やカレーヒ素混入事件は、物理学者(自然科学の訓練を受けた人)から見たら、そう見えて、世間の「常識」とは大きく違うことが「確かなこと」、もしくは「確からしい」のだということが分かります。


 そして、自然科学の研究や分析の結果は得てして、「文科系」の最たるものである政治や経済に捻じ曲げられたり、すり替えられたりして、うまく利用されるのだということも分かります。そして、「自然科学のお墨付き」を使って、私たちは騙されてしまうこともあるということも分かります。


 「すべてを疑え」とはよく言われることですが、日本で生まれ育ち、暗記型の学校教育を受けてしまっては、どうやっていいか分かりません。その時に、下條さんが提唱している「批判的思考(critical thinking、クリティカル・シンキング)」が役に立ちます。是非、手に取ってお読みください。宜しくお願い申し上げます。


butsurigakushagatokiakasujudaijkennoshinso

 

 是非、手に取ってお読みください。

 ※ウェブサイト「副島隆彦の学問道場」内の「今日のぼやき」でも宣伝をしております。こちらもお読みいただければ幸いです。http://snsi.jp/tops/kouhou/1872

 

=====

 

推薦文

                            副島隆彦

 

 下條竜夫(げじょうたつお)氏は、気鋭の物理学者(1964年生まれ)であり、大変優れた人である。私が主宰する副島国家戦略研究所(通称SNSI エスエヌエスアイ)の研究員を10年前からやってくださっている。私たちは政治評論や歴史研究をする、いわゆる文科系知識人の集まりである。その中にあって最先端の物理学を専攻している、純粋に理科系の下條氏に加わっていただいて大変感謝している。


 彼は私たちの発表している論文集に、すでに数多く寄稿している。地球温暖化という虚偽を暴いた本『エコロジーという洗脳 地球温暖化サギ、エコ利権を暴く』(成甲書房、2008年)で、二酸化炭素の増加は地球温暖化にはほとんど寄与していないことを証明した。


 下條君は公立大学の若手の准教授で、大学では「物理化学」なる高度な学問を教えている。彼は私たち文科系人間には理解できない難しい物理公式や数式が、すらすらと理解できる。しかも、この本で証明するとおり、彼は政治や思想などの文科系の知識と学問までも習得した。だから下條竜夫氏(現在51歳)は、この科学(サイエン)と政治(ポリティクス)の2つの学問を両輪にして大きな真実に迫ることができている。


 このことが、はっきりわかるのは第1、2章の「福島第一原発事故」の解明である。


 2011年3月11日に東日本大地震が起き、翌日から(正確には25時間後)福島で原発の爆発と放射能漏れが起きた。現地に行きもせず、遠くのほうから知ったかぶりをして、「放射能はコワイ」「子供たちが危ない」と騒いだ人々がたくさん出た。原子力工学と放射能医学の専門家の中にも、ごく少数であるが自然科学(ナチュラル・サイエンス)の正確な知識のふりをして、「危険だ、危険だ」と多くの虚偽を書いた人々がいる。


 私は、事故直後から弟子たちと現地(原発正門前)に入って放射線量を測定した。だから、あのとき放出された放射線量がどれくらい低いものであるかをはっきり知った。私は、あの後の国民的集団狂躁状態に、あきれ返った。その後も続いた怖いコワイの国民的、世界的な馬鹿騒ぎのことも腹の底から苦々しく思っている。


 福島の現地では、事故からやがて5年が経つが、赤ちゃん一人作業員一人誰も事故後の放射能のせいで発病している者はいない。「福島第1原発の事故の結果、日本でおよそ1600人が死亡した。この圧倒的大多数は避難がうまく行われなかったことと、ストレスに起因しており放射能が死因ではない」とニューヨーク・タイムズ紙(2015年9月21日付)は報じた。放射能をコワイコワイと煽(あお)って現地の人々を過剰に避難させたことで、人々にストレスがたまって死に至ったということだ。冷静に事実を現地で見て自分の脳(頭)で考えるということをすべきなのだ。

 

 原発事故のあのとき、日本で〝ショック・ドクトリン〟という政策が実行されたのである。『ショック・ドクトリン』とは、カナダ人の女性評論家のナオミ・クラインが書いた本の書名だ。2011年に岩波書店から日本語訳も出た。大災害や戦争、テロ事件などによって、国民大衆を、一瞬のうちに大きな恐怖に陥(おとしい)れ、ショックとパニックで、正常な判断力を国民から奪い取る。権力者、為政(いせい)者たちによる計画的な悪辣(あくらつ)なやり方だ。このことを、著者のナオミ・クラインは徹底的に暴いた。そのために原子力発電を過剰にコワがる言論と風潮が生まれる。そのことで電力(電気)をつくるコスト(費用)が異常に高くなった。


 これがショック・ドクトリンだ。大惨事を利用して一気に大量に政府が問題を解決するという戦略である。


 この「恐怖と扇動で国民を支配せよ」という手法の恐ろしい実験場が、福島原発の放射能漏れ事故を利用して日本でも実行されたのである。〝ショック・ドクトリン〟のために動転した日本国民は、コワイ、コワイと大騒ぎして、冷静な思考と判断力を失った。


 東大と東工大の原子力工学の専門学者たちは、日本の国策(こくさく)(国家政策)として育てられた人材だ。彼らは原発の製造から運転まで自分たちが行ってきたので、こんな微量の放射線量では誰にも被害が出ないし発病しない、とわかっていた。このことを早い時期に私は知った。ところが、その後、放射線医学の専門医師と、原子力工学の専門工学者たちのほとんどは、政府の命令で黙らされて鬱屈させられている。国民に真実を伝える術(すべ)を奪われた。


 だから、下條竜夫氏のような原発の製造管理の専門家ではないが、原子力工学も放射線物理も十分にわかっていて、しかも文科系の知識人としても話ができる人間が日本に出現したことを私たちは大きな喜びとする。理科系の本物の学者たちが、徹底的にわかりやすく事件や事故について説明しなければならない。そうでなければ福島の原発事故の真実はこれからも見えてこない。ここにこの本の価値がある。

 

 この本で特筆すべきは、第8章の仁科芳雄(にしなよしお)を扱った評伝だ。


 今こそ、〝日本の原爆の生みの親(まだだけど)〟の仁科芳雄(陸軍省委託。戦後のサイクロトロン実験も彼が主導した)の偉大さに日本国民の理解を求めなければいけない。下條氏は、ここに貴重な灯をともしてくれた。本当に頭脳明晰の日本人の理科系の人々であるならば、このことに気づいているはずだ。この仁科芳雄の復活、復権は今後、下條氏の功績となるだろう。


 敗戦後ひどい目にあった仁科芳雄(1951年死去)に私は非常に共感し同情した。仁科芳雄が、隼(はやぶさ)戦闘機を設計した日本ロケットの父、糸川英雄(いとかわひでお)と二人して、日本で一番頭がよかった科学者(ああ、科学者! という不思議なコトバ)だとずっと考えてきた。


 下條氏の仁科芳雄理解の土台は、「湯川秀樹と朝永振一郎は、仁科芳雄が、手塩にかけて育てた彼の忠実な弟子だ」である。彼ら二人は、戦後、アメリカ・ロックフェラー財団に尻尾を振って、パグウオッシュ会議に参加した。ここでアインシュタインという神格化された、相対性理論(そうたいせいりろん)という、何を言っているのか今も誰にも本当はわからない数式の山の理科系という宗教の大神官(グランド・マジシャン)の教徒になった。この二人の本当の先生は仁科芳雄だ。


 朝永振一郎も、湯川秀樹も、恩師である仁科芳雄のことを、戦後まったく書かなかった。自分の先生であり、自分たち二人を育てた仁科芳雄に対して、「戦争期の不都合なことは話さない」として。仁科が死んだときも追悼もしなかった。朝永振一郎と湯川秀樹は、パグウォッシュ会議で、アインシュタインとバートランド・ラッセルの子分になって、ぬくぬくと戦後世界で、「平和のための物理学」という、血塗られた過去を消し去る作業に加担した。


 仁科芳雄は本当に偉大だった。1925年に、コペンハーゲン大学で、ニールス・ボーアが、量子力学(クオンタム・フィジックス)を生み出し誕生させた。その記念すべき現場に若き理論物理学者として立ち会っている。デンマーク、ドイツ人物理学者たちの興奮の渦の中にいて、その激論の中に、たった一人、日本から仁科芳雄がいたのだ。


 今は、〝理研のワカメちゃん〟になってしまってお騒がせ事件を起こしたりしている。この理研(理化学研究所 りかがくけんきゅうじょ)という日本国の理科系の最高級の研究機関の闇の部分にも、そのうち、下條氏がきっと鋭く迫ってくれるだろう。理研は、アメリカからの監視がきついので、今はアメリカ様(さま)に屈服しているように見える。だが本当は、今でも、第三帝国(ダス・ドゥリテ・ラヒ! 嗚呼、偉大なるドイツ民族!)に、密かに忠誠を誓っているだろう。それは日本で最も優れた頭脳をもって生まれた理科系の人間たちの自然な運命である。

 

 宇宙物理学(スペイス・フィジックス)の分野にも、世界宇宙物理学界の体制派(アインシュタイン信奉者。その流れから出たビッグバン宇宙モデルの信奉者たち)に異議をとなえた優れた学者たちが世界中にたくさんいる。コンノケンイチ(1936〜2014)という人がいて、この国の基準では何の学歴もない人だったが、世界中の反アインシュタインや、反ビッグバン理論家たちの文献を懸命に丁寧に日本に紹介した。それを徳間書店が、「スピリチュアル本の中の一冊として」本にした。『ビッグバン理論は間違っていた』(1993年刊)という本である(現在は2011年にヒカルランドから文庫版で出ている)。90年代にものすごくよく売れた本だ。


 それに対する防御として、日本の宇宙物理学の体制派である佐藤勝彦(さとうかつひこ)氏や池内了(いけうちさとる)氏が反撃に出た。彼らは、体制、権力の側の学者であり、民衆、大衆を、「私たちが、おまえたちに教育と試験問題を与えるのだから、私たちが教えるとおりの答えを書きなさい。それ以外は、許しません」と強圧し威圧の態度をとる。池内了氏は『疑似(ぎじ)科学入門』(岩波新書、2008年)という本を出している。「私たちに逆らう者は、理科系の学者、研究者としてはろくな生活はおくらせない」という態度だ。それが支配、体制、権力というものだ。国民教育とか、メディア(報道機関)というのも国民洗脳の一種だ。これに反抗して大きな真実の指摘をする者たちは、何十年も何百年も抑えつけられ、苦しい思いをする。


 それでも大きな真実は、時間の経過とともに塗り壁の後ろから剥がれ落ちるように次第に明らかになる。権力(パウア)、支配(コントロール)、秩序(オーダー)よりも、事実(ファクト)と真実(トルース)そして、それを勇気を持って書いて、書物にして残す者たちのほうが、時間と時代の波に耐えて勝つ。下條竜夫氏は、第7章の「現代物理学は正しいのか」という文章で、このことにも風穴を開けてくれた。みなさん、読んでください。


 私が下條氏と話していて心底ビックリしたのは、「ビッグバン理論(宇宙膨張説)は、数学的には証明されているのです。だから私たち物理学者はそれに従うしかない。しかし天文学者(てんもんがくしゃ)たちによる観測(かんそく)と、実験からは何の証明もされていません」とのことだった。

 

 日本国で大切なのは、彼ら理科系の人々だ。ところがちっとも恵まれていない。


 理科系の中でも本当に大切なのは、理科系の学者たちではなく、理科系の技術者たちだ。理科系の技術者たちこそが日本の宝である。日本の製造業の大企業に、そういう優秀な技術者が、500万人くらいいるだろう。日本の繁栄はこの理科系の技術者たちのおかげだ。もっとハッキリ書くと、日本の先端技術は、工業高校や高専、そして聞いたこともないような地方の工業大学を卒業した技術屋(エンジニア、テクニシャン)たちがつくりあげたのだ。しかし、彼ら理科系の技術者たちも属国(ぞっこく)技術屋の集団でしかない。ほとんどが計算ロボットのようにされているかわいそうな人たちなのだと、最近、私は本当によくわかる。


 下條竜夫氏は、理科系の物理学者だが、技術屋(エンジニア)だ。実験屋(じっけんや)というらしい。その彼がなんとか、文科系の世界までもわかろうとして、こうして侵入、侵略してきて、文科系の世界にも風穴を開けようとしている。稀有な人である。世によくある本だが、理科系の学者が取り澄まして、文科系が主である一般書籍の読み手に向かって、高みからムズカしいことを講釈している本ではない。


 理科系と文科系という二つの世界をガッシリと繋ぐ人が、こうして出現して、文科系の人々の文の書き方までも必死で習得して書きあげた。この一点がこの本の本当のすばらしさだ。


 「理科系の世界の真実」がもっともっと、明らかにされなければならない。下條氏は、手始めにこの本でそれをやってくれた。しかし、まだまだ、もっと多くの隠された真実がある。彼が、私たちのために今後それらを明らかにしてくれることを、私は強く望みます。

 

  2015年12月                          副島隆彦

 

 

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目次

 

推薦文……… 副島隆彦

はじめに 

第1章 理科系の目からみた福島第一原発事故⑴

    福島第一原発事故の放射性物質放出量の過大評価とそのねらい

      日本がチェルノブイリと同じようになるという恐怖

      風評被害を拡大させた政府の発表

      報告されている数値から予測される放射性物質放出量

      実際に起きなかった健康被害

      高レベル放射性廃棄物最終処分場という原子力村の夢

第2章 理科系の目からみた福島第一原発事故⑵

    マスコミが伝えない原発事故の真実

      福島第一原発の1号機は電源車の電源をつないだために水素爆発を起こした

      3月15日に大量の放射性物質が放出されたのは

        班目委員長の指示によるものだろう

      官邸がSPEEDIの情報を出さなかった理由

      放射性廃棄物の最終処分場を探す

        行政法人NUMO(ニューモ)によってつくられた土壌汚染地図

      地上のセシウム量からがん罹患率を求めたトンデル氏は、

        すでに自分の論文が間違いであったことを認めている

第3章 福知山線脱線(尼崎JR脱線)事故は車両の軽量化が原因である

    理系の目から事件の真相を解明する

      カーブで転倒して脱線した電車は過去にない

      事件の概要と原因が特定されていった過程を追う

      〝なぜ転倒したか〟が書いてある本がある

      揺れて倒れやすかった事故車両

      情報が出てこないJRという会社

第4章 STAP細胞と小保方晴子氏について

    緑色に光る小さな細胞は本当に存在する

      リケジョの星の失墜

      理化学研究所という国の独立行政法人

      30歳の研究者は、ひとりでは、まともな英語論文は書けない

      確かに存在する緑に光る小さな細胞

      小保方晴子氏は天才実験家である

      STAP細胞の捏造は、小保方氏個人ではなく、若山研究室の問題である

      「常温核融合問題」と同じになるだろう論

第5章 和歌山毒カレー事件の犯人を林眞須美被告と特定した証拠は本物か?

    理科系の「科学的に証明された」ということばが、いつも正しいとは限らない

      事件の経緯

      蛍光X線分析法で何がわかったのか?

      鑑定結果に対する疑問点

      鑑定に異議をとなえた京都大学・河合潤教授

      【ふたりの論争内容その1】鑑定結果が意味するもの

      【ふたりの論争内容その2】犯人ではないことを証明した蛍光X線分析測定

      【ふたりの論争内容その3】谷口・早川鑑定について

      犯罪者である証明責任は、観察側にある

第6章 排出権取引に利用された地球温暖化問題

    科学では地球の未来はわからない

      地球温暖化や寒冷化は本当に起きているのか?

      クライメートゲート事件とホッケースティック曲線の捏造

      地球の二酸化炭素濃度が2倍になると気温は何度あがるか?

      では地球は寒冷化するのか?

      コンセンサスという名の世論誘導

      政治的には終わってしまった地球温暖化議論

第7章 現代物理学は本当に正しいのか?

    正しさの判定基準は、物理学の体系との整合性にある

      世に出回る数々の現代物理「否定」本

      マッハの科学哲学

      マッハの哲学を思想の歴史からひもといてみる

      現代物理学は、観測不可能のものを、実際に存在しているとみなしている

      数学的にだけ証明されている現代物理

第8章 仁科芳雄(にしなよしお)こそが「日本物理学の父」である

    政治的に葬られた日本の物理学の英雄をここに復活させる

      新庄尋常小学校の神童

      理化学研究所

      コペンハーゲン大学理論物理学研究所

      日本でただひとり量子力学を理解していた仁科芳雄

      サイクロトロンの建設と宇宙線の観測

      日本の原爆開発

      東京湾に捨てられた仁科芳雄のサイクロトロン

      戦後の仁科芳雄

      仁科芳雄の弟子たち




(終わり)


アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12






メルトダウン 金融溶解
トーマス・ウッズ
成甲書房
2009-07-31






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ダニエル・シュルマン
講談社
2015-09-09



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12





 古村治彦です。

 今回は副島隆彦先生の最新作『中国、アラブ、欧州が手を結びユーラシアの時代が勃興する』(ビジネス社、2015年7月25日刊)を皆様にご紹介いたします。

 本ブログでもご紹介しましたが、現在ロシアと中国が中心となって「ユーラシア連合」結成の動きが出ています。この動きはやがて南米にも拡大し、「アメリカ包囲網」となるでしょう。ただ、アメリカを攻撃して没落させようというものではなく、「アメリカは今まで勝手気ままに好き勝手やってきたけど、世界唯一の超大国として大変な所も担ってきてくれてどうもありがとう、ご苦労様」ということで、アメリカを普通の大国にするためのショックアブソーバーの役割を果たすものになると思います。

 副島先生の最新刊、世界の流れを捉えた名著の予感がします。夏休みに是非お読みいただければと思います。

 どうぞよろしくお願い申し上げます。


==========

eurasia_obi

 


(貼りつけはじめ)


中国、アラブ、欧州が手を結び ユーラシアの時代 が勃興する 目次

 

 

  まえがき

 

第1章 今こそ人民元、中国株、中国金を買うべき

  中国の株はどん底の今が買い時

  1人民元= 20円の時代

  上昇する人民元の実力

  中国がロンドンの金価格決定に参加

  金価格の決定権をめぐる闘い

  台湾人の不動産"爆買い"

 

第2章 中国が目指新しい世界

  ユーラシア大陸の時代が到来する

  AIIBで中国、アラブ、欧州がつながる

  中国はアラブ世界とも連携していく

  中国の幹部たちの腐敗問題

 

第3章 「一帯一路」で世界は大きく動く

  広大な砂漠でも、水さえあれば人は生きていける

  日本企業の海水真水化プラント

  中国が打ち出した大きな世界戦略「一帯一路」

  中国は、戦争をしない。する必要がない

  インドと中国の問題もいずれ解決する

  中国と敵対する日本の反共右翼たち

  戦争は帝国を滅ぼす

  アメリカの危険な軍産複合体

  ウクライナ危機の行方とプーチンの手腕

  2007年に中国はイスラエルとの関係を切った

  帝国は民族の独立を認めない

  「香港の一国二制度」は中国民主化へのステップ

  中国の南米戦略と焦るアメリカ

  人類の歴史は理想主義では進まない

 

第4章 南沙諸島をめぐる紛争の火種

  中国が南沙諸島での実行支配を着々と進めている

  南沙諸島はもともと各国の主張がぶつかり合う紛争地域だ

  中国が南沙諸島の領有を主張する根拠

  フィリピンは中国に対抗できるのか

  日本が中国を強く非難できない理由

  領土問題は話し合いと調停で解決すべき問題である

 

第5章 欧州とアジアをつなぐアラブ、イスラム教徒の底力

  副島隆彦のイラン、ドバイ探訪記

  遊牧民が築いた帝国

  中国は大清帝国の自信を取り戻す

  イスファン(エスファハーン)とテヘランの位置関係

  アラビアのロレンスとは何者か?

  アラブ世界を分断したアメリカの力

  ペルシャ湾岸の豊かな国々

  アブダビで見たオイルマネーの威力

  アラブもヨーロッパもアメリカに騙された

 

  あとがき

 

巻末付録 主要な中国株の代表的銘柄32


まえがき

 

 世界の経済が急激に変動を始めた。この612日まで中国の株式が暴騰していたのに、大きく下落した。だからこそ今こそ日本人は中国株と人民元(じんみんげん)を買うべきなのだ。日本の株式(証)やニューヨークの株なんか買うものではない。


 中国はこれからもますます隆盛(りゅうせい)する。私は孤立無援の中でずっとこのように書いてきた。 この本は私の中国研究本の7冊目だ。


 中国を中心に世界の流れが変わった。さらに一段階、突き抜ける感じで中国の存在感(プ レゼンス)が増している。中国は強い。中国は崩れない。だから中国を買え、である。


 私が書いてきたとおり、この10年間に中国株を買い、中国で金(きん)を買い、人民元預金をした人の勝ちである。

 

 3ページの人民元の表にあるごとく、1元=20円を突破した。


 20123月には1元=123円だった。201212月から急激な上昇トレンドが起きた。今や人民元は、16円、18円を突き抜けて、20156月に20円台に乗せた。


 人民元預金をした人の勝ちだ。このあとも人民元高(円安)は続き、1元=30円を目指す。だから今からでも私たち日本人は人民元預金をすべきである。この5年間で、日本の主要な銀行でも人民元預金はできるようになった(25参照)

 

 今も日本には中国を腐(くさ)して中国の悪口ばかり言っている人々がいる。


 そんなことでいいのか。中国で暴動が起きて共産・中国は崩れる、の中国崩壊論を唱えてきた人々の大合唱が出版界で続いた。この人々の頭は大丈夫か。中国は崩壊などしない。私たちは嫌がらないで中国を正面から見据えなければいけない。

                                    副島隆彦

 

あとがき

 

中国指導者の真意は16億人の国民を食べさせること

 

 中国についての本を、私はこの10年で対談をふくめると10冊書いた。この本はビジネス社から出す中国研究本の7冊目である。


 2007年に出した1作目の『中国 赤い資本主義は 平和な帝国を目指す』から8がたつ。まさしく私が予測(予言)したとおり、赤い資本主義(レッドキャピタリズム)である中国の巨大な隆盛は世界中を驚かせている。


「中国の不動産市場が崩れて、株式も暴落して中国は崩壊しつつある」はウソである。昨年末からの急激な中国株の上昇(2.5倍になった)のあと、612日から暴落が起きた。そして下げ止まった。だから今こそ日本人は中国株を買うべきである。外国人としての冷静な目で中国の今後を見るべきである。


 中国の不動産(高層アパートの価格)は高値のまま安定している。1割でも下げればそれを買う若い人たちのぶ厚い層がいる。2年前の私の中国本は、『それでも中国は巨大な成長を続ける』(2013年刊)であった。このコトバどおり今も巨大な成長を続けている。


 いちばん新しい中国の話題は、AIIB(エイアイアイビー)アジアインフラ投資銀行の設立である。そして中国政府が4月に打ち出した「一帯一路」(いったいいちろ)構想は、これからの世界に向かって中国が示した大きなヴィジョンだ。ユーラシア大陸のド真ん中に、10億人の新たな需要(デマンド)が生まれる。中国とロシアと、アラブ世界とヨーロッパ(インドも加わる)が組んで、新たなユーラシアの時代が始まるのだ。


 AIIBは今年の3月から急に大騒ぎになった。イギリスが参加表明したからだ。アメリカは「裏切り者」と思った。中国が音頭をとって世界中から参加国を募っている。57

国が参加を表明し(P59の表)、これらの国々は剏立メンバーになる。今年2015年の終わりから営業を始めるらしい。


 このアジアインフラ投資銀行の動きに取り残されたのが、アメリカ合衆国と日本である。ところが日本の財務省はコソコソと中国と裏取引をして、いつの間にかオブザーバー参加という形にするだろう。


 日本の安倍政権は、公然と中国ギライであり中国包囲網を敷いている。中国を敵視して対中国の軍事(安全保障)戦略まで敷いている。このように日本はアメリカにべったりとしがみついて中国と対決、対抗する姿勢のままである。日本国内は奇妙な選挙をやって国会議員の数で安倍政権が圧勝しており、彼らが国家権力を握っている。国民は身動きがとれない。日本の金持ち(富裕層)はどんどん外国に資金資産)を移し、住宅も買い、自分も逃げ出しつつある。


 不況(デフレ経済)のままの日本のことなどお構いなしに、中国の巨大な成長は続く。中国は、日本やアメリカとの敵対、対立など考えていない。そんなことをやっているヒマはない。自分が経済成長(エコノミック・グロウス)を続けることのほうが大事だ。南シナ海と東シナ海で軍事衝突を起こさないほうが、中国にとってはいいのだ。


 中国にとっていちばん大事であり、中国の指導者たちが本気で考えているのは、いますでにいる16億人の国民(公称は13億人。だが実際には17億人になるだろう)を食わせることだ。国民をなんとか食べさせて、自分たちがもっと豊かになってゆくこと。そのための大きな計画さえあれば中国の隆盛は続いてゆく。それが「一帯一路」でつくられてゆくユーラシア大陸の中心部の大開発である。ユーラシアの時代の幕開けだ。

 

  2015年7月                           副島隆彦

(貼りつけ終わり)














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