古村治彦です。

 

 今回は、2017年6月17日に発売となる『ニーチェに学ぶ「奴隷をやめて反逆せよ!」ーまず知識・思想から』(副島隆彦著、成甲書房、2017年)をご紹介します。

 

 フリードリヒ・ニーチェ(Friedrich Nietzsche、1844―1900年)は、大思想家として日本でも有名です。『ツァラトゥストラはかく語りき』(1885年)、『アンチクリスト』(1888年)といった本も有名です。

 

 私はキリスト教に喧嘩を売った人、「神は死んだ」と言った人くらいの認識しかありません。本も手に取ってみたことはありましたが、難し過ぎて読破できませんでした。カントとニーチェを読破できなかったので、自分は頭が悪い人間なのだろうと思いながら、それがコンプレックスになっています。

 

 しかし、何を言った人なのか、と言うことは良く知りません。それでも『超訳 ニーチェの言葉』という本が10万部以上の売り上げを記録し、適菜収氏のニーチェの訳本や解説本がベストセラーになりました。こうしたことから、ニーチェは「何を言っているのか難し過ぎて分からないけど、何を言っているのか知りたい人」ということになります。

 

 ニーチェについてこうだ、ということを知るために、今回の『ニーチェに学ぶ「奴隷をやめて反逆せよ!」ーまず知識・思想から』が出されました。これを読んで、それからもう一度、原典にアタックしてみようかと私は考えています。

 

 どうぞよろしくお願い申し上げます。

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ニーチェに学ぶ「奴隷をやめて反逆せよ! 」―まず知識・思想から

 

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はじめに ―― ニーチェの「この人を見よ」の本当の意味を知らない日本知識人

 

「この人を見よ」“ Ecce homo(エッケ ホモ) という言葉が非常に重要だ。この「エッケ・ホモ(この人を見よ)」は、1888年末、ニーチェがまだ正気だった年に出た。だからニーチェの脳がすり切れながら、狂躁(きょうそう)的な走り書きで書かれた本だ。

だから、この(12)『この人を見よ(エッケ・ホモ)』を序文とする(10)『アンチクリスト』こそはニーチェ思想の集大成である。(6)『ツァラトゥストラ』なんか読むな。どうせ誰も訳(わけ)が分かりませんから。これを聖書(キャノン)にしてはいけない。それよりも、こっちだ。「エッケ・ホモ」のhomo(ホモ)は「人間」で、Ecce(エッケ)は「見よ、見てみろ」だ。「この男、この哀れな(私という)人間を、見よ、見てみろ」という意味だ。繰り返すが、ニーチェは、この(12)『エッケ・ホモ』と(10)『アンチ(反[はん])クリスト』を、1888年、発狂する間際に書いた。44歳のときだ。

 

 日本のインテリだったら、ニーチェが『この人を見よ』を書いている、ぐらいは知っている。そんなことは知っているよ、と言う。だが、ほとんど誰も読んでない。書名を知っているだけだ。読むと、何だ、このヘンな男は。と思ってしまう。

 

「エッケ・ホモ」とは、ヨーロッパ知識人の間では、共通理解として、前ページの絵のとおりなのである。オランダの偉大なるルネサンス時代の画家ヒエロニムス・ボッシュの絵である。

 

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 本書では、ニーチェの主要な著作について、43ページの一覧のように番号をふる。

 

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目次

 

はじめに ――ニーチェの「この人を見よ」の本当の意味を知らない日本人知識人

 

第1章 これだけは知らねばならないニーチェ思想の骨格

今こそ、ニーチェの思想を大きく理解しよう 012

人生は各人の快楽を追求するためにこそある 021

「ディオニュソスからアリアドネーへ」 023

 

第2章 日本人が分からない本当のニーチェ

この惨めな日本でニーチェを理解するということ 032

家畜のような人間ばかりになった日本 035

「ディオニュソス的」対「ローマ教会キリスト教」の闘い 044

「この人を見よ」の本当の意味を知らない日本知識人 051

本当のイエスは「自分を拝め」と言っていない 058

 

第3章 邪教としてのキリスト教と闘ったニーチェ

ローマ教会キリスト教は精神病院 068

原文忠実訳ではニーチェは分からない 077

ドストエフスキー、マルクス、ヴァーグナー、ニーチェという人間の環 083

キリスト教も社会主義も理想社会の実現に失敗した 094

キリスト教の敵は「現実」 101

イエスに「この世」を否定する理由はない 105

キリスト教=人類最大の不幸=悪そのもの 110

私は適菜収訳の『アンチクリスト』に最大限の敬意を払う 122

 

第4章 ニーチェが生きた西欧19世紀という時代

人間は大なり小なり惨めな生き物 128

思想家ニーチェの始まりは『悲劇の誕生』 130

オペラはギリシア古典劇の正当な嫡子 135

『カルメン』がニーチェに与えた衝撃 142

バーゼル大学就職の隠された背景 146

ニーチェが目指した愛の共同生活は失敗 156

ヴァーグナーは国際指名手配の破壊活動家だった 161

ドイツが隆盛する一番いい時代を生きたニーチェ 171

ヴァーグナーがドイツを誤らせた 179

日本人が理解していないキリストの復活と再臨 185

 

第5章 炎の文献学者ニーチェ

三島由紀夫もニーチェに大きな影響を受けた 194

生まれと幼年時代、青春時代 196

文献学者として出発 ――『悲劇の誕生』に至るまで 200

LGBT(同性愛系)だったヴァーグナーとニーチェ 208

バーゼル時代――実は哲学者、そして文化批判者 219

 

第6章 闘う予言者ニーチェ

病気とイタリアへの出奔 232

計画的に旅をしたニーチェ――放浪したわけではない 241

永劫回帰の思想 250

完成しなかった〝突き抜けた男女の共同体〟256

シルス=マリアでの啓示 268

「神は死んだ」 271

「善」が悪で、「悪」が善だ 276

ニーチェは反ユダヤ主義者ではない。反対だ 278

 

第7章 「狂気の破壊者」と見られて死んだニーチェ

多作な孤独者 286

発狂、廃人、そして終焉 295

 

ニーチェ年譜 304

あとがき 308

 

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あとがき

 

 こうやって「私のニーチェ本」が仕上がった。丸3か月、苦心惨憺(さんたん)して、のたうち回ったあとの「私のニーチェ本の悲劇的誕生」である。地獄の底(ここも煉獄[プルガリオ]か)を這(は)い回った気がした。そして、やれやれ遂(つい)に終わったよ、とその場にへたれ込む感じだ。

 

 この本は、フランス語とドイツ語が本当によく出来る編集者と、私との共同合作によって出来た本である。多大の重荷と負担をお掛けした。

 

「だがしかし。それでもなお」(ニーチェの名言)、何があろうとも、大思想家フリードリヒ・ニーチェ思想の本髄(ほんずい)を日本国民に教えるために、ここで私が、徹底抗戦しなければいけない、と思った。「ニーチェ思想の本当の大きな部分を私が日本人に教えてやるよ。ほら、喰べなさい」という感じだ。

 

 この本を出しておけば、ニーチェ無理解が続いたこの150年間を、一気に縮(ちぢ)めることができる。適菜収(てきなおさむ)氏による『キリスト教は邪教です! 現代語訳「アンチクリスト」』(2005年、講談社+α新書刊)に続く、真実のニーチェ理解の第2波攻撃がこれで敢行された。この世(人間世界)に棲(す)む悪の権化(ごんげ)たちよ、怖れ慄(おのの)くがいい。お前たち“人類の諸悪の根源”の正体を、正面から暴き立て突撃したニーチェの跡(あと)を継いで、さらに世界各国の思想戦闘員(ソート・コマンドウ)による波状攻撃が続く。私は日本という自分の持ち場で戦う。今こそ2千年に渡る人類の敵どもを索敵して、完膚(かんぷ)なきまでに打ち破らなくてはならない。

 

 何のこっちゃ、と戸惑(とまど)い訝(いぶか)しく思う人が大半だろう。だが、そのうち分かる。ひとりひとりの人間が、その人の頭(おつむ)の理解力に合わせて、少しずつ分かってくれればよい。大きな構図で、人類史の巨大な真実が露(あら)わになってゆく。そのために時間がこのまま経(た)ってゆく。それはそれで致(いた)し方ない。

 

 この本は本当に担当編集者のズバ抜けた言語能力に多大に負って完成された本だ。大型書店さえが、そして出版社も、「もう世の中に必要ない(需要[デマンド]がない)」として次々に潰(つぶ)れてゆく時代の変化の荒波の中に「日本ニーチェ真実丸(まる)」の一艘(そう)の船は進水する。どんな苦しみにも耐えてみせる。

 

 この本を作る上で甚大(じんだい)な知能労力を提供してくれた小笠原豊樹編集長に衷心から感謝を申し上げる。

 

二〇一七年五月二五日

                                       

副島隆彦

 

(貼りつけ終わり)

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キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』 (講談社+α新書)

 

(終わり)