古村治彦です。

 

 アメリカ大統領選挙も予備選挙の時期が終わり、民主党はヒラリー・クリントン、共和党はドナルド・トランプが事実上、各党の大統領選挙本選挙の候補者に決まりました。民主党のバーニー・サンダース連邦上院議員は党大会までは撤退もクリントン支持表明もしないでしょうが、民主党内は「まとまってトランプを打倒しよう」という流れになっています。

 

 2016年6月12日に、フロリダ州オーランドのナイトクラブで男性が銃を乱射し、49名が死亡し、50名以上が重軽傷を負うという、アメリカ史上でも最悪の銃犯罪が発生しました。犯人の男性が射殺されたために、動機の解明はいまだ行われていませんが、事件が起きたナイトクラブは、同性愛者が集う場所であったことから、同性愛に対する嫌悪から銃乱射事件を起こした可能性が高いと考えられています。

 

 今回の銃乱射事件は、アメリカ大統領選挙にも影響を与えているようです。私は、2016年6月13日に事件を知り、「今回の事件はトランプにとってはマイナスの影響が出る」と考えました。繰り返される銃乱射事件に対して、アメリカの人々は、「銃を持つ権利(武装する権利)」を過度に言い募ることに対して嫌気がさして、何らかの銃規制を行うことに賛成するのではないか、中道的な穏健な人々は、トランプとヒラリーを比べて、ヒラリーをより自分たちの感覚に近いと考えて支持するのではないかと考えました。

 

以下のウェブサイトにアクセスして、2016年6月13日のツイートをご覧ください。→https://twitter.com/harryfurumura?lang=ja

 

 事件が起きた2016年6月12日を含む、もしくはそれ以降の日にマスコミや世論調査会社によって行われた世論調査の結果が次々と発表されています。

 

 世論調査の数字についてはこちらのウェブサイトが参考になります。→http://www.realclearpolitics.com/epolls/2016/president/us/general_election_trump_vs_clinton-5491.html

 

 世論調査の結果では、ヒラリーがトランプをリードしています。数字はまちまちですが、2016年5月24日には、ほぼ差が無くて並んでいましたが、ヒラリーがリードを広げているという状況です。

 世論調査は各社、もっと詳しく色々なことを質問しています。また、質問者の年齢や性別、人種を分類しています。そこから、いくつかの特徴的な傾向が見受けられます。

 

 アメリカでは有権者であっても自分で郡レヴェルの選挙人名簿に登録してもらう(Voter Registration)ように手続きをしなくては、選挙で投票することが出来ません。有権者登録の際に、自分の支持政党も合わせて登録するのが特徴的です。民主、共和両党に支持政党なしの場合は、Independent(支持政党なし)となります。郵便局や運転免許を扱うDMVDepartment of Motor Vehicles)に手続き用の書類(封筒のようなもの)がありますので、簡単にできるのです。が、英語が読めない移民一世のような人たちは有権者登録をしたがらない傾向にあります。こうした世論調査では、登録した有権者たちに質問をしています。

 

 今回の選挙では、民主党、共和党ともその支持者の約8割はそれぞれヒラリーとトランプに投票すると答えています。支持政党なしの人たちの場合は、ヒラリーとトランプで拮抗している数字が出ています。ヒラリー対トランプで、CBSの世論調査では、35%対37%、ロイター通信の世論調査の場合は、24%対24%、ラスムッセン社の調査では36%対31%でした。支持政党なしの人たちの多く、3分の1から半分がまだどちらに投票するか決めかねているということも言えます。彼らは「ヒラリーとトランプ、どちらがより“まし”か」で投票するかを考えるものと思われます。

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 CBSの世論調査では、有権者の属性別の支持率が詳しく掲載されています。男性ではトランプ(37%対45%)、女性ではヒラリー(40%対28%)、各年代では18歳から44歳までの人たちよりも、44歳以上の人たちの方がトランプの支持率が高い、白人ではトランプ(37%対43%)、黒人ではヒラリー(77%対4%)、白人で大学の学位を持っていない人たちはトランプ(29%対50%)、白人で大学の学位を持っている人たちはヒラリー(51%対30%)という結果が出ています。これは昨年から言われていた通り、トランプを支持しているのは白人で、大学教育を受けておらず、南部から東部にかけての工業地帯(Rust Belt)に住む人々ということを証明しています。

 

 興味深い結果がいくつかあります。ブルームバーグ者の調査で、6月12日に起きた銃乱射事件についての設問がありました。「1年後に同じような事件が起きた場合、大統領はオバマ大統領ではなく、新しい大統領になっています。そのような事件に対処するのに、ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプではどちらがうまく対処するという信頼感が持てますか」というものです。この設問の答えは、ヒラリーが41%、トランプが45%、分からないが15%となりました。

 


 
CBSの調査では、「自分たちの考えていることを述べてくれている人」という設問があり、トランプは56%がそう思うと答え(39%がそう思わない)、ヒラリーに関しては、33%がそう思うと答えました(62%がそう思わない)。支持している有権者が、彼らの考えを代弁していると考えているのは、トランプであって、ヒラリーに対しては支持者でも不満を持っているということが分かります。


 このブログでも以前にご紹介しましたが、3月の予備選挙で、共和党の予備選挙参加者の投票理由で一番多かったのは「彼らの考えを代弁してくれる」であって、「11月の本選挙で勝てる候補者」は3番目に留まりました。上記の調査結果はこの結果を裏付けています。

 

 今回の銃撃事件でヒラリーの支持率が上がり、トランプの支持率は下がっているという状況ですが、今回のような事件ではトランプの力強さが求められ手もいるという結果が出ています。また、支持政党なしの中ではヒラリーとトランプの支持率は拮抗しているので、こちらも予断を許さない状況になっています。

 

(終わり)