古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:プルトニウム

 古村治彦です。

 

 今回はアジア地域におけるもう一つの核問題であるプルトニウム生産問題についての論稿をご紹介します。この記事の著者たちは、北朝鮮の核兵器の脅威と同様に、日中韓3か国のプルトニウム生産について懸念をもっています。プルトニウムは原子力発電所で使用した燃料を再処理することで出てきます。そして、プルトニウムは核兵器の燃料となるものです。ですから、プルトニウムを大量に生産し、貯蔵することは核兵器開発にとって必要不可欠の前提条件となります。

 

 日本でプルトニウムを生産しても、核兵器を製造することはできません。非核三原則がありますし、アメリカも許さないでしょう。ドナルド・トランプ大統領は選挙期間中、日本と韓国の核武装について言及しましたが、これをすぐに許可することはないでしょう。しかし、プルトニウムが貯蔵されるということは核兵器開発につながるのではないかという懸念を諸外国に持たせることになります。実際には中国が日本に対して懸念を表明しています。

 

 プルトニウム生産について懸念を払しょくする最善の方法は生産しないことだ、と著者たちは述べています。自民党と官僚の一部には、日本の核武装を目指す勢力がいるでしょうから、プルトニウムの生産と貯蔵をやめることはないと思われますが、それが果たして日本の安全保障につながるのかということを考えてもらいたい。諸外国の懸念と恐怖を引き起こして、割に合わないことになると考えられます。何よりもアメリカに疑念を持たせることが一番の問題ということになります。

 

今回ご紹介した論稿で重要なのは、河野太郎外務大臣の存在に焦点を当てている点です。河野太郎外相は外相就任以前から日本の原子力政策に批判的でありながらも建設的な提案をしている数少ない政治家の一人でした。今回の内閣改造で重要ポストである外務大臣に、一言居士の河野太郎氏の起用ということになり、人々は首をひねりました。どうして河野氏が外務大臣になったのか、と。対中国、対韓国の関係改善ということが理由で挙げられています。日本の原子力政策に批判的な河野氏を外相に起用したのは、今回の論稿のテーマであるプルトニウム生産問題について、安倍晋三首相が米中韓の各国にメッセージを発したのだと解釈することも可能です。

 

 このように考えると、河野太郎氏の外務大臣起用はより国際政治とリンクした重要な意味を持つものなのだと言うことができると思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

日本政府とアメリカ政府はもう一つの核にかかわる問題を抱えている(Tokyo and Washington Have Another Nuclear Problem

 

ヘンリー・ソコルスキー、ウィリアム・トビー筆

2017年817

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/08/17/tokyo-and-washington-have-another-nuclear-problem-china-korea/

 

今週、日本の外務大臣・河野太郎と防衛大臣・小野寺五典はワシントンで、アメリカ側の担当者である国務長官レックス・ティラーソンと国防長官ジェイムズ・マティスと会談を持つ。彼らは最近の北朝鮮による挑発行為に日米両国はどのように対処すべきかを議論する。今回の会談は素晴らしいものだ。日本や韓国と緊密に協力し、また中国と共同行動を取る時にのみ、アメリカは北朝鮮が与えている核兵器の脅威に効果的に対処できる。

 

北朝鮮問題は重要であるが、日米両国の担当者たちは、より長期的な、潜在的に深刻なもう一つの核に関する脅威について考慮しなければならない。そのもう一つの脅威とは、日本、中国、そしておそらく韓国におけるプルトニウムの生産量の増加である。この問題は複雑であるが、私たちが協力的に行動しても解決は存在しない。その論理構成は次の通りだ。

 

日本は、膨大な使用済み核燃料を処理するための再処理施設を2018年秋に六ヶ所村に開設する計画を持っている。六ヶ所村の再処理施設は核兵器に利用できるプルトニウムが8000キロ生産されることになる。これは年間1000発以上の核爆弾を製造できる量である。この再処理施設開設の表向きの理由は、再処理された燃料を発電用原子炉と高速炉に供給するためとされている。ここに一つの問題が存在する。現在、日本で稼働している原子炉は5つのみであり、唯一存在した高速炉は廃止されたばかりだ。つまり、これからプルトニウムが貯蔵されるはずもないのに、六ヶ所村の再処理施設を稼働させる必要はないのだ。

 

一方、中国はフランスから六ヶ所村の再処理施設の同規模の施設を購入することに合意した。最初に計画された施設に対しては大規模な反対運動がおこり、中国政府は建設を断念した。中国は再処理施設の稼働を2030年までに開始したいと望んでいる。そして、2040年から2050年にかけてこの施設から生産されたプルトニウムを利用する高速炉を稼働させる計画だ。繰り返しになるが、問題はこれから10年以上続くことになる。中国は核爆発用のプルトニウムを年間約8000キロ生産することになるだろう。

 

これがどうして問題になるのだろうか?中国はすでに数百発の核兵器を保有し、更なる核兵器製造のために必要なプルトニウムを貯蔵していると推定されている。この数字は実態に沿ったものであろう。しかし、中国がロシアやアメリカと対抗したいと望むのならば、中国は更なる数千発の核兵器用の燃料をさらに貯蔵する必要に迫られている。中国政府が核兵器用の燃料を軍事的な野心を露わにしない形で貯蔵したいと望むなら、「平和的」な高速炉プログラムの形を取ることになる。

 

韓国について見てみる。韓国は長年にわたりアメリカ政府に対して不満を表明してきた。アメリカは日本に対して核燃料を与え、その再処理を認めているが、韓国には認めていない。この点を韓国は不満に思っている。韓国の新大統領である文在寅は原子力発電所建設に反対し、米韓民生用原子力協定の下でプルトニウム生産の権利を求めない可能性がある。文大統領は大統領選挙で40%の得票率で当選した。文大統領の政敵たちは権利の存在を確認している。野党の政治家たちの中には韓国の核武装について公の場で主張している人たちが出てきている。

 

日中韓のプルトニウム生産計画はアジア地域における恐怖感と対立を高めている。日本政府の高官は非公式の場で、韓国はプルトニウムの再利用する必要はないと主張している。彼らはまた中国のプログラムについても懸念を持っている。一方、中国政府は、日本政府のプルトニウム生産計画がもたらす核兵器開発の脅威について公の場で避難している。中国政府はまた、アメリカが韓国に対してプルトニウム生産を許可するかもしれないということについて懸念を持っている。

 

このような危機的状況に関しては、簡単な解決法がある。トランプ政権はプルトニウムを燃料とする反応炉を製造する技術に対して政府補助金をゼロにすると決定した。トランプ政権は日本、中国、韓国に対して再処理施設計画を取りやめるように促すべきだ。どうしてそのようなことをすべきなのか?それは、日中韓が再処理施設計画を取りやめることで、資金を浪費するだけで実効性の乏しい核エネルギーの形態である再処理にお金を使わないで済むのだ。政治的にもこれは意味があることだ。中国政府は再処理施設建設を国民に説得できないでいるし、韓国は原子力開発計画をスローダウンさせたいとしている。アメリカ政府が対処に苦しんでいる北朝鮮問題について、同盟諸国や中国との間の協力関係は同氏も必要となる。一方、日本のプルトニウム生産プログラムは技術的にも経済的にも割に合わないものである。

 

今回の日本の代表団のワシントン訪問に話を戻す。今回の代表団には河野太郎外務大臣も参加している。河野大臣は日本国内において、日本のプルトニウム生産プログラムに対する最も厳しい批判を行ってきた人物である。昨年、安倍晋三首相は河野に対して日本政府の予算を削減する方法を質問した。河野は高速増殖炉「もんじゅ」の廃止を主張した。そして、安倍首相は河野の主張に合意した。

 

河野外相は就任後初の記者会見の場で、日米原子力協力協定が2018年7月に自動更新される前に専門家に諮問されるべきと考えるかと質問された。河野外相は諮問されるべきだと答え、日本のプルトニウム生産プログラムが示す安全保障上の諸問題について話し合われるべきだと述べた。今年初め、河野はこれよりさらに踏み込んだ行動をとった。それは、「日本政府は六ケ所村の再処理施設開設を取りやめること、原子力協力協定についてアメリカ政府と話し合うこと、プルトニウムの商業的生産の一時停止についてアメリカ、韓国、中国と協力すること」を内容とする共同宣言に河野は署名したのだ。

 

北朝鮮は重要な問題である。しかし、北東アジア地域における唯一の核に関する脅威ということではない。アメリカ、中国、日本、韓国がプルトニウム生産レースを回避できれば、北朝鮮の核の脅威に対して共同歩調を取ることは難しいことではないし、将来に発生しうるより深刻な脅威を防ぐこともできるだろう。ティラーソン国務長官とマティス国防長官はこのことを十分に考慮すべきだ。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12





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 古村治彦です。


 昨日、共同通信で、そして今朝の東京新聞で報道された、「アメリカからのプルトニウム返還要求」というニュースについて考えたことを書いていきたいと思います。


 このプルトニウム返還に関して、怒りや戸惑いを示す意見が起きています。「世界で最も重要な二国間関係である日米関係を揺るがすものだ」「オバマ政権だからこういうことが起きるのだ」という主張もあります。


 確かにオバマ政権になってから「核セキュリティー」が重視され、核兵器に転用可能な物質の管理を厳しくする動きになっているようです。しかし、これはアメリカ側か見れば、自国の世界の安全と安定のために合理的な動きと言えます。リスクを小さくするのは合理的な動きです。


 「日本がテロリストにプルトニウムを横流しできる訳がない」「IAEAの厳しい監視の下にあるではないか」という反発もあると思います。しかし、日本だから特別扱いする、とか日本の管理体制を絶対的に信頼するという選択肢はアメリカにはないようです。


 このニュースが出たこの時期は、安倍首相が靖国参拝からわずか1カ月後、ダヴォス会議で現在の日中関係を第一次世界大戦前の英独関係に譬えて数日後、オバマ大統領による一般教書演説を直前に控えています。日本では国会が始まり、都知事選の選挙活動の真っ只中です。


 これらのことと結び付けられることは当然ながらニュースソースたちは分かって話をしたと思われます。そのことの意味を考えてみなければなりません。


 言い切ってしまえば、「安倍政権への不信」が根底にあると思います。ほっておくと勝手に「核武装」に向けた動きにまで出るのではないか、日本は数カ月で不完全ではあるが核兵器を作る物理的、人的、知的能力を有している、最悪のシナリオでそれを中国に向けて使うのではないかという懸念をアメリカが持つのは仕方がないことだと思います。


荒唐無稽であることはその通りなんですが、このように考えてもおかしくないほど、安倍政権への不信は高まっているのだと思います。外国から見てみれば、日本の国民一人一人のことは見えませんが、当たり前のことですが、指導者たちの動きはよく見えます。


 2014年に入って、政治的にも経済的にも安倍政権に対する包囲網ができつつあるように感じます。まるで太平洋戦争の直前の時期のように。


(新聞記事転載貼り付けはじめ)


●「米、日本にプルトニウム返還要求 300キロ、核兵器50発分」


2014年1月26日付 共同通信

http://www.47news.jp/CN/201401/CN2014012601001661.html


 核物質や原子力施設を防護・保全する「核セキュリティー」を重視するオバマ米政権が日本政府に対し、冷戦時代に米国などが研究用として日本に提供した核物質プルトニウムの返還を求めていることが26日、分かった。


 このプルトニウムは茨城県東海村の高速炉臨界実験装置(FCA)で使う核燃料用の約300キロ。高濃度で軍事利用に適した「兵器級プルトニウム」が大半を占め、単純計算で核兵器40~50発分程度に相当する。


 日本側ではこれまで「高速炉の研究に必要」と返還に反対する声も強かったが、米国の度重なる要求に折れて昨年から日米間で返還の可能性を探る協議が本格化している。


2014/01/26 19:59   【共同通信】



●研究用プルトニウム300キロ 米、日本に返還要求


2014年1月27日付 東京新聞

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014012702000135.html


 核物質や原子力施設を防護・保全する「核セキュリティー」を重視するオバマ米政権が日本政府に対し、冷戦時代に米国などが研究用として日本に提供した核物質プルトニウムの返還を求めていることが分かった。複数の日米両政府関係者が明らかにした。


 このプルトニウムは茨城県東海村の高速炉臨界実験装置(FCA)で使う核燃料用の約三百キロ。高濃度で軍事利用に適した「兵器級プルトニウム」が大半を占め、単純計算で核兵器四十~五十発分に相当する。


 日本側ではこれまで「高速炉の研究に必要」と返還に反対する声も強かったが、米国の度重なる要求に折れて昨年から日米間で返還の可能性を探る協議が本格化している。米側は三月にオランダで開かれる「第三回核安全保障サミット」を機に返還合意をまとめたい考えだ。


 オバマ政権は核テロ阻止の観点から、兵器転用可能な核物質量の「最少化」を提唱。二〇一〇年に初の核安保サミットを主宰した前後から、東海村にある日本原子力研究開発機構のFCA用のプルトニウム三百三十一キロ(うち核分裂性は二百九十三キロ)を問題視し、日本に返還を求めてきた。


 英国産のプルトニウムも含まれているため、米国は英国の理解を得た上で日本から米国への「第三国移転」を図りたい考え。外交筋によると、日米英三カ国間でも政策調整が進められている。


 文部科学省などはこれまで「研究に必要。他では取れない良いデータが取れる」と主張。日本は原発の使用済み核燃料の再処理によって他にも約四十四トンのプルトニウムを保有するが、「研究用のものと比べ不純物が多く、高速炉研究には使えない」(日本の政府系専門家)という。


 東京電力福島第一原発事故後、日本のプルトニウム消費の見通しが立たず、米政府は日本側に懸念を伝達していた。FCAは高速炉の特性を調べるため造られ一九六七年に初臨界した。


(新聞記事転載貼り付け終わり)


(終わり)





 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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