古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ヘンリー・キッシンジャー

 古村治彦です。

 私は常々、子供の頃に見たアニメ「トムとジェリー」の言葉で、「仲よく喧嘩しな」ということが米中関係のみならず、外交関係においての基本だと考えている。人間関係でもそうだが、この「仲よく喧嘩する」はなかなか難しい。自分の方が優位に立とうとして、結局、言わなくても良いことを言ってしまい相手を深く傷つけ、関係を壊してしまうということが起きる。これは友人や知人関係だけでなく、家族関係も起きることだ。

 個人間の関係ならば、連絡をしないとか訴訟をするとかその程度で済むが、国同士の関係となると、国交断絶や戦争ということになれば、犠牲となる人間の数は格段に多くなる。従って喧嘩はしても良いが、決定的な断裂を招くようなことはしない、ということが重要になる。中国の歴史書やヨーロッパ近代の外交関係史はそのことを教えてくれている。

 ヘンリー・キッシンジャーが現在の米中関係について、お互いの非難合戦がエスカレートして取り返しがつかないようにするために「制限を設ける」ことを提唱したということだ。キッシンジャーは国際関係史、特にヨーロッパの歴史の専門家であり、第一次世界大戦のような人類史上初の長期にわたる総力戦が勃発した経緯については熟知している。

 そのキッシンジャーが米中関係の悪化に懸念を持っている。米中間の新しい冷戦(new cold war)という言葉も出て来ている。冷戦は米ソ間の共存という方向に進み、一面では「長い平和(long peace)」ということになった。もちろん、朝鮮半島やインドシナ半島の人々は長期にわたり戦争の厄災に苦しんだ。しかし、米ソ間の直接の戦争は起きなかった。

 米中間での新冷戦も米ソ間の冷戦と同様に直接戦争にならなければよいが、代理で戦争をさせられる国はたまったものではない。アメリカはインド、オーストラリア、日本を使って中国を封じ込めようとしている。アメリカは中国と直接対決するのではなく、これらの国々を使って、キャンキャンと吠え掛からせようとしている。

 アメリカが世界で唯一の超大国であり、警察官であるという構造は終わりを告げた。世界に自国のデモクラシーと資本主義を輸出するというおせっかいな正義感も終わりを告げることになる。今回の大統領選挙一つを取ってみても、デモクラシーの総本山、本家家元の国があの体たらくである。そんな国がデモクラシーの自由のと威張ってみても、「欠陥商品を押し売りするんじゃねぇ」と馬鹿にされるのが関の山だ。

 話が散らばってしまって恐縮だが、米中間は「仲よく喧嘩する」ことが重要である。

(貼り付けはじめ)

ヘンリー・キッシンジャーはアメリカと中国に対して世界大戦に向かう脅威やリスクに「制限」をつけるように求める(Henry Kissinger Calls on U.S., China to Set ‘Limits’ on Threats or Risk World War

ザカリー・エヴァンス筆

2020年10月8日

『ナショナル・レヴュー』誌

https://www.nationalreview.com/news/henry-kissinger-calls-on-u-s-china-to-set-limits-on-threats-or-risk-world-war/

ヘンリー・キッシンジャー元国務長官はアメリカと中国に対して、お互いに対しての脅威、もしくは世界大戦に向かうリスクに制限をつけるように求めた。

リチャード・ニクソン大統領の国務長官として、共産主義中国とアメリカとの間の関係構築を行ったことでキッシンジャーは高い評価を受けている。キッシンジャーは、米中両国の関係樹立の理由は中国の北方と西方で国境を接していたソヴィエト連邦に対する戦略的優位性を得るためとしている。

それから中国は世界第2位の経済大国となり、アメリカにとって最大のライヴァル国となった。両国の敵対関係はそもそも新型コロナウイルス感染拡大の初期から厳しくなっていった。現在97歳のキッシンジャーは水曜日、ニューヨークでの経済倶楽部においてヴァーチャルで講義を行い、その中で米中両国は両国間の争いに制限を設ける必要があるという警告を発した。

キッシンジャーは次のように発言している。「我が国の指導者たちと(中国の)指導者たちは脅威にまで進めないように制限について、そして制限をどのような内容にするかについて議論しなければならない。そんなことは全く不可能なことだという人もいるだろうが、もし不可能なままで推移すれば、第一次世界大戦に似た状況に陥ってしまうことになるだろう」。

キッシンジャーは、アメリカの政策立案者たちが「私たちに脅威を与える国が出てこないような経済世界を考えるべきだが、その目的の達成のために、他国が技術的な可能性を拡大することに対峙しその可能性を減らすような様式を採用するようにすべきではない」と説明した。

キッシンジャー元国務長官は過去にアメリカと中国との間の闘争の可能性について警告を発した。2019年11月、新型コロナウイルス感染拡大が起きる前に、キッシンジャーは北京でのある会合で両国は「冷戦の間際にいる」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 古い記事で恐縮だが、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官の新型コロナウイルス感染拡大に関する論考について短くまとめた記事をご紹介する。

 ヘンリー・キッシンジャー元国務長官は、ドナルド・トランプ政権の外交面での「守護神」「橋渡し」の役割を果たしている。トランプ政権は中国とロシアに対して強硬姿勢を取るが、その前後にはキッシンジャーが96歳という高齢にもかかわらず、中国とロシアを訪問して、習近平国家主席、ウラジミール・プーティン大統領と会談を持つということを行っている。北朝鮮外交について関わっているのかは不明だが、中露両国に太いパイプがあるということは、間接的に北朝鮮外交にも影響を与えることができる。

 キッシンジャーは、アメリカが国際協調を主導し、かつ自由主義に基づく世界秩序を維持するために努力しなければならないとしている。また、トランプ政権は新型コロナウイルス感染拡大に対して手堅い仕事(solid job)をしているとも述べている。

 キッシンジャーでもこの程度のことしか言えないのかという内容ではある。しかし、キッシンジャーが述べたという事実が重要だ。

 トランプ政権はマイク・ペンス副大統領、マイク・ポンぺオ国務長官、ロバート・オブライエン国家安全保障問題担当大統領補佐官といった対中強硬派がおり、中国との軋轢を生んでいる。しかし、最後の一線を超えないのは、キッシンジャーがいるからだ。しかし、彼も96歳である。いつまでも健康で生きていられる訳ではない。キッシンジャーが死ぬ時、米中関係が悪化し始めていくだろう。

(貼り付けはじめ)

“失敗によって世界に火がつく可能性がある”:96歳になるヘンリー・キッシンジャー元国務長官は、コロナウイルスが長期間にわたる経済の縮小をもたらす可能性があると警告を発し、アメリカに対しては「自由主義に基づく世界秩序を守る」ように求めている(Failure could set the world on fire.' Former Secretary of State Henry Kissinger, 96, warns coronavirus could spell economic doom for generations and tells US to 'safeguard the liberal world order'

・ヘンリー・キッシンジャー元国務長官は世界規模の経済衰退について警告を発している。

・キッシンジャーは金曜日、『ウォールストリート・ジャーナル』紙に論説記事を発表した。この記事は、「失敗によって世界に火がつく可能性がある」という緊急提言である。

・96歳になるキッシンジャーは、ホワイトハウスは「悲劇的状況の急速な進行を避けるために手堅い仕事」をしていると考えている。

・キッシンジャーはアメリカが治療法の発見を急ぎ、世界経済の再建に努力し、「自由主義を基礎とする世界秩序」を守る必要があると述べている。

・キッシンジャーは「アメリカは独力でウイルスに打ち勝つことはできない」と書いている。アメリカ疾病予防管理センターによると、土曜日の朝の時点で、世界全体で110万件以上の感染と6万400名の死亡が確認されている。

・アメリカ国内では現在のところ、感染者数は27万8602名、死者数は7170名となっている。

チェインヌ・ラウンドトゥリー筆

2020年4月4日

『デイリー・メイル』紙

https://www.dailymail.co.uk/news/article-8187313/Henry-Kissinger-warns-coronavirus-spell-economic-doom-generations.html

ヘンリー・キッシンジャー元国務長官は、適切な手段が取られない場合、新型コロナウイルス感染拡大によって長期間続く可能性がある世界規模の経済の悲劇が起きるだろうと警告を発した。

ニクソン大統領とフォード大統領に仕えたキッシンジャーは金曜日、『ウォールストリート・ジャーナル』紙に論説記事を掲載した。「失敗によって世界に火がつく可能性がある」という切迫した宣言を行った。

96歳になるキッシンジャーは、ホワイトハウスは「悲劇的状況の急速な進行を避けるために手堅い仕事」をしていると考えている。しかし、アメリカの信頼感だけでなく、世界の信頼感を取り戻すために、新型コロナウイルスを打ち倒すために効果的にかつ長期的視野で対応する必要があると考えている。

キッシンジャーは次のように書いている。「COVID-19の感染拡大が終了すれば、多くの国々の諸機関は失敗したと認識されることだろう。この判断が客観的に見て公平かどうかは重要ではない。現実は、アフター・コロナウイルスでは世界はそれ以前とは同じではなくなる」。

キッシンジャーは、アメリカは治療法を発見するために手際よく仕事をしなければならない、また、世界経済を再建し、「自由主義を基盤とした世界秩序」を守らねばならないとしている。更に、「アメリカ一国だけでウイルスを克服するための努力をすることはできない」と付け加えた。

アメリカ疾病予防管理センターによると、土曜日の朝までに、世界で110万人が感染し、6万400人が死亡したということだ。

コミュニティ・ソースド・データ・トラッカーによると、アメリカ国内では、27万8602件の感染が確認され、7170名が死亡した。

治療法はまだ見つからない。医療従事者たちは自分たちの安全を守るために必要な個人装備が十分にないと警告を発した。実際に、医者と看護師の中には患者の治療にあたる中で死亡する人たちが出ている。

キッシンジャーは不足の点を認識している。次のように書いている。「医療物資は、ウイルス拡大に対応するためには不十分だ。集中治療室は限界に達しているし、限界を超えてしまっている状況だ」。

キッシンジャーは次のように書いている。「検査は、感染規模をはっきりさせるための仕事には不十分だ。感染拡大を止めるためには更に不十分だ。ワクチンの開発にはこれから12か月から18か月かかる可能性が高い」。

キッシンジャーは、ウイルスを倒すために、アメリカはアメリカ以外の世界と協力する必要がある、と書いている。彼は、「目下の急務は、世界規模の協力のヴィジョンとプログラムを作ることだ」と述べている。

キッシンジャーは、アメリカはコロナウイルスを倒し、経済を安定化させるために3つのステップを踏む必要があると主張している。最初のステップは、新型コロナウイルスの治療法を見つけることだ。

キッシンジャーは次のように書いている。「感染管理のための新しい技術とテクノロジーを開発し、多くの人々が使用可能となるワクチンを使用できるようにする必要がある」。

キッシンジャーは続けて次のように書いている。「諸都市、諸国家、諸地域は、貯蔵、産学提携、科学の最先端の研究を通じて、感染拡大から人々を守らねばならない」。

次のステップは「世界経済に刻み付けられた傷を癒す」ことだ。

キッシンジャーは、シャットダウンによってもっと影響を受けた人々のダメージを改善する手助けを行うための特別なプログラムの必要性に言及している。

最後に、キッシンジャーは守られるべき自由主義を基調とした世界秩序の諸原理について書いている。彼は、啓蒙主義的な諸原理を守る政府は、「安全保障、秩序、経済的福利、そして正義」を守らねばならないと確信している、と指摘している。

キッシンジャーは次のように買いいている。「感染拡大は時代錯誤を促すことになる。その時代錯誤とは、繁栄が国際貿易と人々の動きに依存している時代に、壁に囲まれた都市の復活という形になる」。

キッシンジャーは続けて次のように書いている。「世界の諸民主政治体制国家は啓蒙思想の諸価値を守り、維持する必要がある。正統性に関して諸大国が均衡している状態から世界が後退することで、国内、そして国際的に社会が崩壊することになる」。

キッシンジャーは1938年にナチスが支配するドイツから両親と一緒に脱出し、ニューヨークに住むようになった。

1950年にハーヴァード大学で政治学博士号を取得後、キッシンジャーはいくつもの会議や政府機関のコンサルタントとしての仕事を始めた。その中には、アメリカ陸軍のオペレーションズ・リサーチ・オフィスや国務省の軍備管理軍縮局は含まれていた。

1960年代、キッシンジャーは共和党の大統領選挙予備選挙に出馬したネルソン・ロックフェラー選対の外交アドヴァイザーを務めた。しかし、1968年の大統領選挙で共和党の大統領選挙指名を獲得したリチャード・ニクソンの選対に転身した。

ニクソンは当選後、キッシンジャーは国家安全保障問題担当大統領補佐官に起用し、後には国務長官に任命した。キッシンジャーはジェラルド・フォードが大統領になった後も国務長官に留まった。

キッシンジャーは1973年にノーベル平和賞を受賞した。北ヴェトナムのレ・ドゥク・トと共にヴェトナム戦争の平和的な解決のための交渉の努力を行った。

中国が発表している公式の数に対して疑義が出ているが、アメリカは最近になってコロナウイルス感染者数が世界最大になっている。

ファウチは、デューク大学男子バスケットボールティームのヘッドコーチであるマイク・シャシェフスキー(Mike KrzyzewskiCoach K)が司会を務めるラジオ番組「バスケットボール・アンド・ビヨンド・ウイズ・コーチK」に出演した。シャシェフスキーはホワイトハウスの新型コロナウイルス対策タスクフォースに参加しているファウチを、COVID-19との戦いにおける「アメリカのポイントガード」だと形容した。COVID-19はウイルスによって引き起こされる疾病だ。

79歳になるファウチは、アメリカは感染拡大にどのように対応しているのか、バスケットボールを使ったたとえで表現するように求められた。

内科医であるファウチは、アメリカ国内のエイズとエボラ出血熱との戦いを含む数多くの戦いを主導してきた。ファウチはニューヨーク市で生まれ育ち、高校時代にはバスケットボールの選手だった。

ファウチは次のように語った。「バスケットボールでたとえるならば、まず私たちはとても強力なティームを作っているということです。相手はもちろんウイルスです。私たちに必要なことは、コート全面を使った厳しいディフェンスです」。

ファウチは続けて次のように述べた。「ウイルスにはドリブルでボールを前に進めさせないようにしなければなりません。私たちはウイルスを圧倒しなくてはなりません。私たちのゲームはまだハーフタイムにもなっていませんよね、コーチK」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 「なぜ中国がここまで強大になるまで気づかなかったのか」「なぜ中国を野放しにしてきたのか」ということがアメリカ国内で、特に反中国派からは声高に叫ばれている。そして、たいていの場合、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官が中国に融和的で、キッシンジャーの息のかかった人物が対中国政策を実行してきたために、このようなことになったのだ、という結論に達する。キッシンジャーが金を貰ってアメリカを中国に売り渡したという過激な主張にまで至ることになる。
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ヘンリー・キッシンジャーと習近平

 米中接近は1971年からだ。共和党のリチャード・ニクソン大統領が中国との国交回復を目指した。当時のアメリカはヴェトナム戦争の泥沼に足をとられ、何とかしようとしていた。そこで目を向けたのが中国だった。国際的に孤立していた中国を国際社会に引き込み、プレイヤーとして機能させるということが目的だった。ソ連やヴェトナムに影響を与えて、ヴェトナム戦争を何とかしようというものだった。
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リチャード・ニクソンとヘンリー・キッシンジャー
 そこで白羽の矢を立てたのがハーヴァード大学教授だったヘンリー・キッシンジャーだった。キッシンジャーは国務長官として中国との関係回復に尽力したのは周知のとおりだ。しかし、ニクソンとキッシンジャーは同床異夢というか、中国観に違いがあった。ニクソンは中国を変革させよう、西側に対する敵対を止めさせようという考えだった。キッシンジャーは中国の考えや国内体制を変えることなしに、利益をもたらすことで国際社会に参加させようという考えだった。
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毛沢東とリチャード・ニクソン
 下の記事はキッシンジャーに対して批判的なトーンである。従って、中国は伝統文化を忌避し反西側の危険な考えを変えることなしに国際社会に参加し、強大な国になってしまった、大変危険だということになる。キッシンジャーの考えが足りなかったということになる。
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ヘンリー・キッシンジャーと毛沢東(真ん中は周恩来)
 それではニクソンが考えていたように、アメリカが手を突っ込んで中国国内の体制を変える、考えを変える、ということをやっていたらどうだっただろうか。中国国内で大きな分裂と争いが起きていた可能性は高い。そのような不安定な中国がアメリカの利益となったかどうか、疑問だ。また、日本にとって不安定な中国は利益とはならなかっただろう。

 中国の言い分を聞き、なだめすかしながら、国際社会に順応させるということをキッシンジャーはやった。これは大変な手綱さばきであったと思う。中国の経済力をここまでにしたのは、アメリカが中国産品の輸入を拡大したからだ。自業自得ということになる。

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キッシンジャーの歴史的な中国政策:回顧(Kissinger’s historic China policy: A retrospective

ジョセフ・ボスコ筆

2018年9月26日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/international/408507-kissingers-historic-china-policy-a-retrospective

ヘンリー・キッシンジャーは今でも人々を驚かせ続けている。95歳になるキッシンジャーはリチャード・ニクソン政権で国務長官を務めた。キッシンジャーは最近、ウィルソン・センター創立50周年を記念してインタヴューを受けた。

キッシンジャーの発言を読むと、彼が現代における最も偉大な戦略思想家の1人であると評価されている理由が分かる。1960年代にハーヴァード大学で講義をしていた時代から、博識さには畏怖の念さえ持たれていた。

キッシンジャーは発言の中で、1971年にキッシンジャーとニクソンが初めて言及して以来のアメリカの対中国政策の基盤と失敗について触れている。キッシンジャーが国家安全保障学の分野におけるリアリスト学派を代表する学者ではなかったならば、何も学ばず、何も忘れていないキッシンジャーの何も変化していない中国観について語ったことだろう。そうではなく、彼は中国について悪いことばかりを学び、それらについて決して忘れなかった訳ではない。

キッシンジャーの学術と政治のキャリアの前半分で、キッシンジャーはヨーロッパ、ソヴィエト連邦、冷戦期の核兵器の諸問題に注力していた。キッシンジャーは自身でも認めているように、中国について考えたことも発言したこともほとんどなかった。

ニクソン大統領が歴史的な米中和解というプロジェクトを推進するためにキッシンジャーを政権内に入れようとした際、キッシンジャーは中国については全くの白紙のような状態であった。キッシンジャーは、自分に師匠役の人物が必要であることが分かっていた。そこで、キッシンジャーは、一人の国務省の中国専門家に白羽の矢を立てた。その人物は後に駐中国アメリカ大使を務め、キッシンジャー・インスティチュートの社長を務めることになるスタプレトン・ロイだった。そして、ロイは今回、キッシンジャーにインタヴューを行っている。キッシンジャーは「ステイプは私にとって中国に関する教師だった。従って、私にとって中国との関係構築は同時に教育を受けて、経験を積み重ねるプロセスでもあった」と述べている。

しかしながら、キッシンジャーはインタヴューの冒頭で、中国についての学びのプロセスにおける誤りを明らかにした。キッシンジャーは次のように語った。「米中両国は両国ともに政策実行における例外的な性質を持っていると確信している。アメリカは民主的立憲主義という政治システムを基盤としている。中国は少なくとも孔子とそれ以降の独特な実践にまで遡ることができる発展を基盤としている」。

キッシンジャーが公の場で常に述べているのは、彼が現在の中国は統治に関する神聖な諸原理を持つ誇大な文明の具体化されたもので、現代的な共産党独裁の具現化ではないと考えているということだ。共産党独裁の創設者(訳者註:毛沢東)はキッシンジャーが中国の行動原理と仮定している文化をことごとく非難した。毛沢東は中国の歴史と中国の人々に対して文化大革命を実行した。

実際、インタヴューの中でロイとキッシンジャー2人ともに、現在の中華人民共和国の共産主義的な源流(訳者註:文化大革命)について全く語っていない。同時に、西側の政治的、経済的価値観と諸機構の破壊についても語っていない。毛沢東にとっては西側の政治的、経済的価値観や諸機構は中国の古代文化に次ぐ敵であった。

中国が「その幻想を育て、憎悪を掻き立て、近隣諸国に脅威を与える」ような国家であったならば、キッシンジャーはニクソンの共産中国観を共有することができただろう。ニクソンは中国を国際社会に組み入れることで中国の危険な心性を変化させようとした。後に、ニクソンは自分が行った「戦略的ギャンブル」はうまくいかなかった、いまだに敵意を持っている中国をより強力にしただけだったと後悔した。

キッシンジャーは、中国の世界における見え方をどのように変化させるかを考慮する代わりに、アメリカは中国を世界に順応させるためにできることがあると考えた。キッシンジャーはロイに対して、「私たちの希望は米中両国の価値観はより近くなるだろうと私は考えた」と述べた。

キッシンジャーはニクソンの持っていた懸念について多少の心配はしていたが、全面的には共有しなかった。中国政府が持つ邪悪な世界観の根本からの穏健化なしに、数十年もニクソンが持っていた懸念は続いたままだった。

「外交政策を実施する際に必要なことは、大変化を必要とする目的に反する短期的に実現可能な目的について考慮することだ。そして、中国人は数千年にわたって自分たちの問題を解決するために政策を実行してきた」。

キッシンジャーにとって、中国共産党の国内統治のアプローチの変化は、世界規模のリアルポリティック(現実政治)とは切り離され、従属するものである。キッシンジャーは次のように述べている。「私たちは責務を担っていると感じた。それは平和と安定を守ることである。中国の体制を転換させるような目的は全てを止めてしまうことになる」。

しかしながら、キッシンジャーは、米中両国が直面している「現在における重大な問題」に言及しているが、同時にこの問題について一般化をしている。

キッシンジャーは次のように述べている。「私たちは世界中にある全ての問題と世界中の国々の国内構造を解決することはできない。それでも国内に対しては、私たちはその方向に沿った目的を設定し、できるだけ目的を実現するように努力しなければならない」。

キッシンジャーにとって共産主義中国の残酷な暴政と悪意に満ちた反西洋イデオロギーを穏健化するよりもより優先順位が高いもの「全て」は何であろうか?経済発展によって政治改革が引き起こされることが予期されるか(ニクソンはそのように考えていた)という疑問をロイはキッシンジャーに問いかけたが、キッシンジャーはこの質問には直接答えなかった。キッシンジャーは初期に書いていたものとは違う発言を行った。

「私たちは中国を開国させた。それはロシア、ソ連についての計算という要素を加えるためだった。そして、ヴェトナム戦争とアメリカ国内の分断の時代にアメリカ国民に希望を与えることが目的だった。アメリカ政府はこれまで排除してきた要素(訳者註:中国)を含む世界平和を実現するという考えを持つようになった」。

「これらは2つの主要な目的だった。これらの2つの目的を達成できたが、それは中国側も同じ目的を持っていたからだ」とキッシンジャーは述べた。

ニクソン・イニシアティヴは、(A)ソヴィエトの攻撃から中国を守る、(B)台湾の孤立化をスタートさせる、(C)西洋諸国との貿易と投資を受け入れさせるために中国を開国させる、ことが特徴だとされていたが、これらは全て中国政府にとっても達成したい目的である。ニクソン・イニシアティヴによって、アメリカ政府は、(A)中国政府がアメリカ軍のヴェトナムからの秩序だった撤退を支援する、(B)中国政府の反米意識を減少させる、(C)可能であればソ連政府との緊張関係を緩和することを目的としていた。

キッシンジャーはニクソン・イニシアティヴによって実現したプラスの結果を高く評価している。中国は3つの目的を全て実現させ、アメリカ側は目的を何も実現させることができなかった。キッシンジャーの獲得した外交上の輝かしい業績(米中関係構築)ではなく、彼が実行した政策によって、「現在における重大な問題」が不可避的にもたらすことになった。

驚くべきことは、ニクソン以降のアメリカ大統領全員と毛沢東以来の中国の指導者全員に助言をしてきた人物が今でも米中関係に関わっているということだ。幸運なことは、トランプ大統領は自分自身のやり方を始めようとしている。トランプは元々ニクソンが考えていた中国のプラスの変化をもたらそうとしている。

※ジョセフ・ボスコは2005年から2006年にかけて国防総省中国部長、2009年から2010年にかけて国防総省人道援助・災害復興担当アジア・太平洋部長を務めた。ボスコは米韓研究所と台湾・アメリカ研究所の非常勤研究員、大西洋協会アジア太平洋プログラム非常勤研究員、戦略国際問題研究所東南アジアプログラム非常勤研究員を務めている。国際台湾研究所の顧問も務めている。

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中国は21世紀の覇者となるか?―世界最高の4頭脳による大激論

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全体主義の中国がアメリカを打ち倒すーーディストピアに向かう世界

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 古村治彦です。

 アメリカは中国のここまでの台頭をどうして許したのか、そして、どうして台頭を許しておいて紛争を起こすのか、ということは不思議だ。日本は高度経済成長の後、アメリカから鼻っ柱を殴りつけられヘナヘナとなってしまった。それどころか、日本の良さをことごとく消される形で、「アメリカ化」が進められている。日本の現状はアメリカの劣化版だ。ただまだ医療保険制度はアメリカよりも進んでいるが(世界の先進国並みであるというだけのことだが)、これもいつまでもつか分からない。
xijinpinghenrykissinger20191122001

 中国のここまでの台頭をアメリカ側で許容したのはヘンリー・キッシンジャー元国務長官だと言われている。そのためにアメリカでは彼に対しての恨み言も噴出している。しかし、中国の伸長を受け入れて、中国とうまく付き合いながら、アメリカへのショックを少なくするというリアリストであるキッシンジャーが両国の間をうまく取り持ってきた。

 キッシンジャーは9月に続いて今週末も中国を訪問した。96歳のキッシンジャーにとってはいくら最高級のファーストクラスでの行き来とは言え、十数時間も飛行機に乗っているのは辛いことだろう。それでも何とか耐えているのは、自分の実入りということはあるだろうが、米中の間で小競り合いは会っても前面衝突まではいかせないという信念があるからだろう。
wanquishanhenrykissinger20191123001

 キッシンジャーは訪中で習近平国家主席と王岐山副主席と会談を持った。習主席と王副主席のコンビで中国の舵取りが行われている。キッシンジャーは衝突してはいけないということを中国側に説き、アメリカに帰れば、おそらくドナルド・トランプ大統領か、ジャレッド・クシュナー上級顧問に会って訪中について話をするだろう。現在米中貿易交渉においてアメリカ側で動いているウィルバー・ロス商務長官やロバート・ライトハイザー米国通商代表よりもキッシンジャーの方が格上で、米中両国の首脳クラスに対して細かい話ではなく、大枠の話、グランドデザインを提示できる立場にある。

 米中は対等な交渉を行える関係にある。日本はそれよりも大きくランクが下がる。私たちはそのことを自覚しなければならない。そして、米中の動きを注視しながら、日本の利益はどこにあり、どのようにすれば最大化できるかということを考えねばならない。昔は新年になると、日高義樹ハドソン研究上研究員が司会として出演していたテレビ東京系の番組にキッシンジャーが出てきて、日本の位置の重要性というようなことをお世辞で言ってくれていた。しかし、今やそのような厚遇はない。日本は米中間で行われているビリヤードのボールの1つに過ぎない。両国の思惑に翻弄されるのだが、何の思慮もなく、ただキューで突かれたり、他のボールにぶつかったりするだけでは芸がない。何とか自分たちの意思で動けるようになる、これが重要だ。そのためには現状をしっかり把握する必要がある。

 米中間を取り持つ人物はキッシンジャーが死亡した後は、“チャイニーズ”・ポールソンと呼ばれる、ハンク・ポールソン元財務長官ということになるだろう。しかし、どれだけの影響力を持つのか、キッシンジャー並みに持てるのかということになるとはなはだ心もとない。キッシンジャー亡き後、米中両国は両国の関係の安定装置を組み込んだ形の構造にしなければならない。

(貼り付けはじめ)

習近平主席、キッシンジャー氏と会見 中米の戦略的意思疎通強化を強調

2019/11/23 09:10 (JST)

©新華社

https://this.kiji.is/570764839332054113?fbclid=IwAR23Bjb4CELvVrV7PfJ_ZwXsQnVIpRkEcDJP5Ayo-CLqA3-NU2DHIZjznpg

 【新華社北京1123日】中国の習近平(しゅう・きんぺい)国家主席は22日、北京の人民大会堂で米国のキッシンジャー元国務長官と会見した。

 習近平氏は次のように指摘した。現在、中米関係は鍵となる時期を迎え、いくつかの困難と試練に直面している。双方は戦略的な問題について意思疎通を強化し、誤解や誤った判断を防ぎ、相互理解を増進すべきだ。双方は両国人民と世界人民の根本的利益を出発点として、互いに尊重し、小異を残して大同を求め、協力・ウィンウィンを図り、中米関係を正しい方向に前進させなければならない。

 キッシンジャー氏は次のように表明した。この50年間、米中関係には起伏や変化があったが、全体的には一貫して前向きである。現在、時代背景が変わり、米中関係の重要性はさらに際立っている。双方は戦略的意思疎通を強化し、意見の相違を適切に解決する方法を見いだすことに努め、各分野の交流・協力を引き続き展開していく必要がある。これは両国と世界にとって極めて重要である。

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王岐山副主席、米国のキッシンジャー元国務長官と会見

20191124 9:44 発信地:中国 [ 中国 中国・台湾 ]

AFP通信

https://www.afpbb.com/articles/-/3256325

 【1124 Xinhua News】中国の王岐山(Wang Qishan)国家副主席は23日、北京の中南海で米国のヘンリー・キッシンジャー(Henry Kissinger)元国務長官と会見した。

 王岐山氏は次のように述べた。中米関係は世界的な影響力を持っており、双方の共通点は相違点をはるかに上回っている。協力すれば双方に利益をもたらし、争えばともに傷つく。協力は双方の唯一の正しい選択である。中米双方は習近平(Xi Jinping)主席とドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が複数回にわたる会談で決めた方向と原則に基づき、より広い視野とより長期的な観点に立ち、両国関係における一連の重大な戦略的問題を客観的かつ理性的に考え、不動心を保ち、困難を克服し、試練に立ち向かい、協調・協力・安定を基調とする中米関係を共同で推進していかなければならない。

 キッシンジャー氏は次のように表明した。米中関係を把握、処理するには幅広い思想と歴史的・哲学的な思考が必要で、対話と意思疎通は両国関係の基礎である。双方が全力を尽くし、両国関係の発展のために創造的で前向きな成果をもたらすことを希望する。(c)Xinhua News/AFPBB News

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習近平中国主席:中国政府は貿易合意を望んでいるが、しかし「反撃」をすることを恐れない(Chinese President Xi: Beijing wants trade deal, but not afraid to 'fight back'

マーティー・ジョンソン筆

2019年11月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/trade/471631-chinas-xi-china-wants-trade-deal-but-not-afraid-to-fight-back

習近平中国国家主席は金曜日、中国は現在もアメリカとの貿易に関する合意のために努力を続けたいが、アメリカに対して「反撃」をすることを恐れはしないと述べた。CNBCが報じた。

習主席はアメリカの経済界代表団に対して次のように述べた。「私たちが常に述べているように、私たちは貿易戦争を始めることは望まないが、それを恐れはしない。必要となれば反撃もするが、貿易戦争にならないように努力を続けたい」。

習主席は続けて「私たちは相互尊重と公平を基にしてフェーズ・ワンの合意に至るように努力したい」と述べた。

アメリカからの代表団の中には元アメリカ政府高官が複数参加しており、代表格としては、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官とハンク・ポールソン元財務長官が挙げられる。

貿易合意をめぐる米中両国のトーンは最近になって肯定的になっているようであるが、「フェーズ・ワン」の貿易協定の詳細については現在も曖昧なままだ。

これまでの18カ月、中国とアメリカは貿易戦争に突入した。両国はそれぞれの製品に対して数十億ドル規模の関税引き上げを複数回実施してきた。.

貿易交渉は進んでいるように見えるが、トランプ大統領は翌月には中国製品1600億ドルぶんに新たな関税を課す予定となっている。

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キッシンジャーは「中国とアメリカは冷戦の途中にある」と懸念を表明(Kissinger warns China, US are in 'foothills of a cold war'

ジョン・バウデン筆

2019年11月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/471460-kissinger-warns-china-us-are-in-foothills-of-a-cold-war

ヘンリー・キッシンジャー元国務長官は木曜日、世界で1位と2位の経済大国の間で様々な紛争が起き、世界規模で緊張関係を深刻化させている中で、アメリカと中国は冷戦に向かって進んでいると懸念を表明した。

ブルームバーグ・ニュースは、北京のニュー・エコノミー・フォーラムで講演を行い、米中両国は双方の主張と立場の違いを理解するために「努力」することを合意すべきだと主張した、と報じた。

キッシンジャーは次のように述べたと報じられている。「私の考えは以下の通りだ。緊張関係が深刻化している時期には緊張関係の政治的な理由は何かを理解し、双方がその理由を解消するために努力することこそが重要だ。現状は手遅れになりつつある。それは米中両国が冷戦に向かう途中にあるからだ」。

キッシンジャーは更に、アメリカと中国との間で継続されている貿易交渉について言及し、両国経済に大きな影響を与えてきた1年以上続く貿易戦争を終了させるための合意に達するようにすべきだと主張したと報じられている。

キッシンジャーは「貿易交渉は政治に関する議論の小さな始まりに過ぎないということは誰も分かっている。私は貿易交渉が成功して欲しいし、その成功を私は支持している。また、政治に関する議論が実現することを望んでいる」と述べた。96歳になるキッシンジャーは1973年から1977年にかけて国務長官を務めた。

アメリカと中国は2018年半ばごろから知的財産権侵害をはじめとする諸問題をめぐって貿易に関して紛争を起こしている。その結果としてそれ以降の数カ月で数度の関税引き上げと報復的関税引き上げが続いている。

アメリカ政府と中国政府との間の交渉はいまだに包括的な合意に達していない。今年初めには合意に達すると見られていた。

米中両国は南シナ海の領有権争いに関して異なる立場に立っている。中国は南シナ海に人工島を建設しその領有権を主張し、アメリカは南シナ海の様々な航路のパトロールを行っている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 11月第2週にヘンリー・キッシンジャーが訪中しました。シンガポールで開催されたブルームバーグの経済フォーラムに出席し、その帰路で北京を訪問し、滞在しているようです。

 

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老体をおして訪中するキッシンジャー

 

キッシンジャーは習近平国家主席と会談を行いました。また、王毅外交部長とも会談を持ったそうです。また、昨日には王岐山国家副主席とも会談を持ちました。おそらく、水曜日から土曜日までの間で、公式の会談だけではなく、非公式の突っ込んだ話があったとも推測されます。

 

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習近平とヘンリー・キッシンジャー

 

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王岐山とヘンリー・キッシンジャー

 

 米中関係については、王岐山がキーパーソンです。副島隆彦先生の最新刊『「トランプ暴落」前夜』(祥伝社)でも書かれているように、王岐山がアメリカで苦境にあるイーロン・マスクを支援しているということです。更に、王岐山はシカゴ市長のラーム・エマニュエル(オバマ大統領第一期の大統領首席補佐官を務めた)も取り込んでいるということです。2018年7月11日、王岐山はラーム・エマニュエルと会談、続く7月12日にはイーロン・マスクとも会談を持ちました。そして、中国の最高指導者たちが住む中南海で、テスラの自動車のお披露目を許可するという優遇策を取りました。

 

 トランプ政権の内部に対して、キッシンジャーの影響力は大きくないという見方もあるようです。しかし、トランプ政権のキーパーソンである、ジャレッド・クシュナー(トランプの娘イヴァンカの夫、トランプの女婿)はキッシンジャーに師事しており、トランプ自身もキッシンジャーには敬意を払っています。今回の訪中も、今月末のG20での米中首脳会談である程度の成果を出すための地ならしということになります。

 

 クシュナーは中東政策を担当しており、東アジアについては詳しくないということもあって、今回、キッシンジャーが老体に鞭を打って、訪中し、中国側の最高指導者たちと会って、米中間での落としどころを探る、ということをやっているのでしょう。

 

 経済ナショナリズムに凝り固まって、中国を攻撃しさえすれば何事もうまくいくという考えのトランプ政権内のロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表やピーター・ナバロ国家通商会議(NTC)委員長の行き過ぎを是正するために、キッシンジャーが出馬して、中国側に、「今回はとりあえず、これくらいのところで我慢してくれないか」「元の切り上げと貿易量の減少をある程度飲んで欲しい」「それ以上のことはさせないから」ということを中国の最高指導者たちの話を聞きながら、説得しているのでしょう。

 

 そもそも95歳になって通常であれば引退していてもおかしくない、20世紀の遺物とさえ言えるキッシンジャーが訪中して、中国国家主席、副主席と会談すること、この事実をもってしても、彼が米中両国の現在の指導者層に厳然たる影響力を持っていることを証明していると私は思います。

 

 日本で言えば、キッシンジャーに比べれば何段階か落ちてしまうでしょうが、自民党の二階俊博幹事長がそうした役割を果たしています。二階氏には毀誉褒貶が付きまといますが、そうした点は評価されるべきです。

 

 話を戻すと、今月末のG20での米中首脳会談でどのような話になるか、注目されます。

 

(貼り付けはじめ)

 

中国とアメリカは相互の戦略をめぐる目的を「正確に判定」すべきだ、と習近平がヘンリー・キッシンジャーに発言(China and US need to ‘accurately assess’ strategic aims, Xi Jinping tells Henry Kissinger

 

・米中間の緊張を減少させるための最新の試みとして、中国国家主席は北京でヴェテラン外交官と会談

・元米国務長官は、米中両国はお互いをよりよく理解するために戦略的な思考と視点を適用すべきだと発言

 

ローラ・シャウ筆

2018年11月8日(11月9日更新)

『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』紙

https://www.scmp.com/news/china/diplomacy/article/2172370/china-and-us-need-accurately-assess-strategic-aims-xi-jinping?utm_source=SupChina+Access+members&utm_campaign=9012e4bc3d-20180920+newsletter_COPY_01&utm_medium=email&utm_term=0_cafcf0fae8-9012e4bc3d-165139315&fbclid=IwAR1d8KY9RBZ5tPGeEaasei1dWAzxKBExov3TAQFNwqvg-28AMTK7DbQdV-E

 

中国国家主席習近平は、中国政府とアメリカ政府は、貿易を巡る緊張が高まる中で、互いの戦略をめぐる意図を「正確に判定」すべきだと述べた。今月後半にドナルド・トランプ米大統領との一対一の会談を前にして、習近平の最新の発言が行われた。

 

この発言は、木曜日にヘンリー・キッシンジャーとの会見の中で行われた。また、元国務長官キッシンジャーに対して、アメリカとは対話を通じて問題を共に解決したい、しかし、同時に、アメリカ政府は中国の発展の道筋と国益を尊重しなくてはならないと発言した。

 

北京で行われた習近平とキッシンジャーとの会見は米中間の摩擦を減少するための最新の試みとなった。ここ数カ月、米中両国は報復合戦の貿易戦争を始め、南シナ海と台湾を巡って対立の中にある。

 

習近平は、人民大会堂で95歳になる外交政策分野の教祖的存在であるキッシンジャーに対して、「時にアメリカ国内で中国に対して否定的な論調が出る。これは注意を要する現象だ」と述べた。

 

習は「中国は、対立的ではない、争いのない、相互に尊重できる協調によって両国が利益を得られるようにするために、アメリカと協力することに尽力している」とも述べた。

 

今週初めにシンガポールで開催されたブルームバーグ・ニュー・エコノミー・フォーラムに出席した後、キッシンジャーは北京を訪問している。中国国営新華社通信は、「キッシンジャーは習近平に対して、米中両国は、お互いをよりよく理解し、相互利益を拡大し、互いの違いにうまく対処するために戦略的な思考と視点を適用すべきだ」と報じた。

 

中国外務部の発表によると、別の会談では、王毅外交部長はキッシンジャーに対して、貿易を巡る対立は対話を通じて解決できるはずだと述べ、キッシンジャーは中国にとってアメリカのライヴァルだとみなされるのは得策ではない、と述べた、ということだ。

 

水曜日、中国共産党政治局員楊潔篪は、金曜日にワシントンで開催される安全保障と外交に関する交渉を前にして、ジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官と会談した。

 

キッシンジャーは1972年に行われたリチャード・ニクソンと毛沢東の会談実現のために大きな役割を果たした。この米中首脳会談は米中間の公式の関係を構築するための道筋をつける契機となった。キッシンジャーの今回の訪中は、今月末にアルゼンチンで開催されるG20に合わせて習近平とトランプとの会談の準備のためのものであった。米中首脳会談によって貿易戦争が休戦となるのではないかという希望的観測が出ている。

 

米中間の緊張は貿易戦争と南シナ海といった問題以外にも飛び火している。アメリカ政府は中国政府がアメリカの国内問題に浸透している、アメリカの技術を盗んでいると非難している。そして、アメリカ国内では、中国と「分離」すべきだという主張も出ている。

 

先週末、習近平とトランプは電話で会談を行った。これは米中首脳会談に向けた動きである。米中首脳会談実現に向けた別の動きとして、金曜日に楊潔篪政治局員と魏鳳和国防部長がマイク・ポンぺオ米国務長官とジェイムズ・マティス国防長官が安全保障と外交についての対話を行う。

 

マティス米国防長官は魏鳳和国防部長と今年9月に会談を行う予定であった。しかし、中国がロシアの武器システムを購入したことを受けてアメリカが経済制裁を科したことで、会談は中止となった。

 

水曜日にホワイトハウスで行われたボルトンとの会談について中国外交部は次のように発表した。楊潔篪は、米中両国は貿易問題について、交渉を通じて受け入れ可能な解決にむけて努力し、習近平とトランプの米中首脳会で結果を出せるようにすべきだと発言した。楊潔篪は更に、米中両国関係にとって戦略的な信頼関係が根本的な要素であり、中国政府にとって台湾問題は「最重要であり、かつ最もデリケートな」問題だと警告を発した。

 

米中関係の専門家たちは、中国政府は緊張を高めないようにするためにキッシンジャーの助言を聞きたいと望んでいるが、ヴェテラン外交官であるキッシンジャーがトランプ政権の中国政策にどれほど影響を与えられるかについては不透明であるとも述べている。

 

中国社会科学院に所属する米中関係の専門家ユアン・ツェンはキッシンジャーの訪問は大きな影響を与えないと考えている。

 

ツェンは次のように述べている。「キッシンジャーはトランプの権力サークルの中核的存在ではない。加えて、キッシンジャーのコンサルタント会社が中国で利益を上げていることについて批判が起きている。そうしたことから、今回のキッシンジャーの中国訪問は米中関係の現状に大きな影響を与えるとは考えられない」。

 

天津にある南開大学の国際貿易を専門とするタン・ジアドン教授は、「中国政府はアメリカ政府との相違点にうまく対処しようとしている」と述べている。

 

タン教授は続けて次のように述べている。「中国は経済上の争いが他の諸分野に拡大させない、そして米中関係を悪化させないようにと望んでいる。従って、現在のところ必要なのは、相互理解を深め、衝突を回避することだ」。

 

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中国国家副主席がヘンリー・キッシンジャーと会談(Chinese vice president meets Henry Kissinger

 

新華社通信

2018年11月10日

http://www.xinhuanet.com/english/2018-11/10/c_137596968.htm

2018年11月10日北京、新華社通信発。中国国家副主席王岐山は土曜日、元米国務長官ヘンリー・キッシンジャー博士と会見した。王岐山副主席は、米中両国は相違点を適切に解決し、将来の両国の関係をより良くするべきだと述べた。

 

会談は北京中心部の最高指導者たちの住む中南海で開催された。会談中、王岐山は、米中関係は40年前に外交関係を樹立して以降、良い時も悪い時もあったが、概ね前進してきたと述べた。

 

王岐山は続けて、米中関係は両国の国民にとって大きな利益を与えただけでなく、世界の平和、安定、繁栄を促進してきたと述べた。

 

中国とアメリカは1979年1月1日付で外交関係を樹立した。

 

王岐山は、「歴史が私たちに教えている通り、相互の敬意、平等な話し合い、相互に利益を与える協力こそが米中関係にとって唯一の正しい選択肢である」と述べた。

 

王岐山は、米中両国は時代の流れに従い、相互理解を深め、様々な分野において交換と協力を強め続けるべきだと述べた。そして、両国の相違点を適切に解決し、新しい環境の下で、米中両国がうまくやっていける方法を模索していくべきで、それによってこれからの40年間の米中関係をさらに発展させることにつながるとも述べた。

 

王岐山は米中間の友好関係に対するキッシンジャー博士の貢献を称賛した。

 

キッシンジャーは、米中間には相違点よりもより多くの共通する利益を持つと発言した。

 

キッシンジャーは、米中両国は平等な対話と話し合いを通じて現在の諸問題を解決する必要があると合意した。そうすることで、将来の米中両国関係を更に発展させることについての共通理解と同意に達することが出来る、その目的のために私は進んで尽力するつもりだ、とも述べた。

 

キッシンジャーは水曜に北京に到着し、日曜日に同地を離れる予定だ。

 

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●「中国、米国に「航行の自由作戦」中止要求 安保対話で溝」

 

11/10() 11:34配信 朝日新聞デジタル

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181110-00000035-asahi-int

 

 米中両政府は9日、ワシントンで米中閣僚級による外交・安全保障対話を開いた。楊潔篪(ヤンチエチー)共産党政治局員は会合後の共同記者会見で「『航行の自由』の名の下、(米国が)軍事行動を取ることは許されない」と述べ、米国が南シナ海で展開する「航行の自由作戦」の中止を要求した。月末にアルゼンチンで予定される米中首脳会談を前に、通商問題以外でも溝の深さが改めて浮き彫りとなった。

 

 会合には米側からポンペオ国務長官、マティス国防長官、中国側から楊氏、魏鳳和(ウェイフォンホー)国務委員兼国防相が参加した。会合後のポンペオ氏の説明によると、米側は中国が軍事拠点化を進める南シナ海問題に懸念を表明したうえで、中国が台湾との国交断絶を関係国に働きかけている問題や、ウイグル族ら中国国内の弾圧の問題を指摘した。

 

 これに対し、中国側は激しく反発。楊氏の説明によると、中国側は会合で南シナ海問題について「中国は疑う余地のない主権を有している」と主張し、逆に米側に「頻繁に軍艦を派遣し、中国の主権と安全を損なう行為を中止するべきだ」と反論した。

 

 台湾問題についても、魏氏が会見で「台湾が中国から分裂しようとするなら、我々はかつて米国が南北戦争でしたように、いかなる犠牲を払ってでも祖国統一を維持する」と強調した。楊氏はウイグル族をめぐる問題についても、「中国の内政であり外国に干渉する権利はない。現在の新疆社会は安定し、経済発展は良好で各民族が調和している。米国が事実を尊重し、中国内政に干渉しないよう望む」と語った。

 

 一方、ポンペオ氏は「米国は冷戦や中国への封じ込め政策を追求していない」と述べ、攻撃的な言動は控えた。また、両国はお互いの誤解に基づくリスクを減らすため、意思疎通を図る仕組みを改善することの重要性では一致した。

 

 ただし、米中関係は最近、「新冷戦」と言われるほど、外交・軍事関係が険悪化している。ペンス副大統領は10月初旬、中国の脅威を前面に打ち出す演説をした。

 

 米中間の外交・安保対話の開催は昨年6月に続き、2回目。当初は10月中旬に北京で開かれる予定だったが、南シナ海などでの軍事的な緊張の高まりを受け、中止になった経緯がある。(ワシントン=園田耕司、北京=冨名腰隆)

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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