古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。よろしくお願いします。

タグ:ベンヤミン・ネタニヤフ



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 イスラエルのネタニヤフ首相の連邦議会演説、総選挙前と当日の人種差別を煽る発言とこれまで積み上げてきたパレスチナ国家樹立をすべて否定する発言、それ以降の動きについて、ホワイトハウスの大統領首席補佐官デニス・マクドノウと、ジョージ・HW・ブッシュ(父)政権時代に国務長官を務めた重鎮ジェイムズ・ベイカーが同じ場所で語った内容について、ご紹介します。

 

 2人は、左派的な親イスラエルのロビー団体Jストリートの年次総会に出席し、演説を行いました。二人の話した内容はほぼ同じですが、それは、2人が所属する政党は違えども、外交政策に関しては「リアリスト」的な立場を同じくしているからです。

 

 日本でリアリストと言うと、中国や北朝鮮と戦争をやるんだというようなことを言う声の大きなオヤジ、という感じですが、本当のリアリストは、慎重に国益を判断し、現状から最善の結果を導き出す考えをする人たちです。私が拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)で取り上げた、また副島隆彦先生の最新刊『日本に大きな戦争が迫り来る』(講談社、2015年)で分析の枠組として使われた、共和党のネオコン、民主党の人道主義的介入派はそれぞれアメリカと西洋文明の理想を世界に広めて「アメリカ版・八紘一宇」の世界を作り上げようとする人たちです。理想のために現実をいじくることはとても危険なことです。しかし、それをやりたがって、悲惨な結果を招くことを何とも思わない人たちです。

 


 私が拙著『アメリカ政治の秘密』で取り上げたように、オバマ大統領の外交政策の理想は、同じ民主党の歴代大統領ではなく、どちらかと言うと人気がなかったジョージ・
HW・ブッシュ(父)大統領時代のものです。このこともきちんと押さえておく必要があります。

 

 私は2015年から定期的に「副島隆彦の学問道場(http://www.snsi.jp/tops/entry)」内の「今日のぼやき」に寄稿することになりました。このリアリストについても「今日のぼやき」で近々論稿を発表したいと思います。恐らく、会員(年会費が一般1万円、学生6000円、困窮者には救済制度もあります)しか読めない場所に掲載されると思いますが、ご興味がある方は是非会員になって、お読みいただければと思います。宜しくお願い申し上げます。

 

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ホワイトハウスはネタニヤフの謝罪ツアーに何の印象も受けず(White House Not Impressed by Netanyahus Apology Tour

 

ジョン・ハドソン、デイヴィッド・フランシス筆

2015年3月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/03/23/white-house-not-impressed-by-netanyahus-apology-tour/

 

 イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフは、月曜日(3月23日)、謝罪ツアーを継続した。イスラエルのアラブ系国民に対して、パレスチナ国家樹立につながる和平合意に対する支持を撤回すると選挙日当日に発表したが、これは有権者の不安感と恐怖感を煽るための戦術ではなかったと弁解した。しかし、ホワイトハウスは今でも懸念を持ち続けており、ベンヤミン・ネタニヤフの発言をすぐに忘却することはないだろうとある高官は述べている。

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ホワイトハウスの大統領首席補佐官のデニス・マクドノウは、ハト派の親イスラエル・ロビー団体Jストリートがワシントンで開催した年次総会に出席し、「これらの発言がなされなかったというふりをすることはできない」と発言した。更には、「総選挙後、ネタニヤフ首相は自分自身の立場を変えていないと発言した。しかし、イスラエル国民の多くと国際社会は、彼の矛盾に満ちた発言を聞くことで、彼の2国共存による解決への関与に関して甥なる疑問を持たざるを得ない状況になっている」とも述べた。

 

マクドノウは続けて、「パレスチナの子供たちは、イスラエルの子供たちと同じく、自分たちの土地で自由を享受する権利を持っている」と述べた。

 

 ネタニヤフがイスラエル国内の少数派の指導者たちを集めた会合で、選挙前にパレスチナ国家樹立を認めないこと、「アラブ人たちが投票所に押し寄せる」と警告を発したことに関して謝罪した。

 

 『エルサレム・ポスト』紙は、ネタニヤフが「私が数日前に発言した内容でイスラエル国民、アラブ系のイスラエル国民の中に感情を害した人々がいることは分かっている。こうした人々の感情を害することは私の意図ではなかったし、申し訳なく思う」と発言したと報じている。

 

 ネタニヤフが発言内容を撤回したのは、2015年3月19日で、MSNBCのアンドレア・ミッチェルに対して、彼自身は「平和的な」2国共存による問題解決を望んでいるが、「そのためには環境が変化しなければならない」と発言した時からだ。

 

 マクドノウは、「アメリカは和平プロセスに対する私たちのアプローチを再考する」というホワイトハウスの立場を繰り返した。これは明瞭な言葉ではないが、アメリカ政府はイスラエル・パレスチナ紛争を国連の場に持ち出すことを示唆する脅しであった。イスラエル政府はこのような動きには徹頭徹尾反対してきた。

 

 オバマ大統領の片腕、デニス・マクドノウは、イスラエルが永続的にヨルダン川西岸地区とガザ地区とを占領し続ける、1国主義的な解決法を、アメリカは「決して支持することはない」と改めて強調した。マクドノウは「イスラエルが、他国の人々を完全に軍事力によって統制し続けることなど不可能なのだ」と発言した。マクドノウは包括的な和平合意を結ぶことが、国連やその他の機関においてイスラエルを孤立させ、経済制裁を加えようとする試みに対しての「致命的な一撃」になるのだと強調した。

 

 現在行われているイランとの核開発を巡る交渉について、マクドノウは最近47名の共和党所属の連邦上院議員たちが署名した、イランの最高指導者に宛てた公開書簡を引き合いに出し、オバマ大統領が結ぶいかなる合意をも避妊できる連邦議会の力に対して憂慮を示した。

 

 マクドノウはリベラルな考えを持つ聴衆に対して、「私たちは外交に成功するチャンスを与える必要がある(We have to give diplomacy a chance to succeed)」と述べた。聴衆は共和党の連邦上院議員たちが発表した公開書簡に話が及ぶと大きなブーイングを発し、不満の意を露わにした。

 

 月曜日、連邦下院外交委員長エド・ロイスは別の書簡を発表した。これには民主、共和両党の367名の連邦議員たちが署名をした。彼らはイランの核開発を巡る交渉から派生して起きる「致命的かつ緊急の諸課題」について懸念を持っていた。3月20日付でオバマ大統領宛てに出された書簡では、イランのウラニウム濃縮プログラムの規模と、イラン政府の国際原子力機関に対する極めて非協力的な態度に関する懸念が書かれていた。

 

 マクドノウは、アメリカはイランが核兵器を所有できないようにこれからも努力を続けると強調した。しかし、同時に、ホワイトハウスは現在行われている交渉に対して連邦議会が介入しようとして行ういかなる試みに対しても、拒否権を使って対抗するとも述べた。

 

(終わり)

 

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ジェイムズ・ベイカーは、ネタニヤフよりも厄介だったイスラエル首相との思い出話を語った(James Baker Recalls An Israeli Prime Minister More Difficult Than Netanyahu

サマンサ・ラクマン筆

2015年3月23日

『ハフィントン・ポスト』紙

http://www.huffingtonpost.com/2015/03/23/james-baker-j-street-_n_6928042.html

 

 ワシントン発。元国務長官ジェイムズ・ベイカーは月曜日、アメリカとイスラエルとの間の関係が低調である現在であっても、イスラエル・パレスチナ間の紛争のための2国共存による解決について「楽観的である」と発言した。

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 ベイカーは、左派のイスラエル・ロビー団体Jストリートの年次総会で基調講演を行った。この中で、ベイカーは、イスラエルの指導者たちと関わった自分自身の経験から、ネタニヤフ首相とバラク・オバマ大統領が現在の低調な両国関係を乗り越えることが出来れば、中東における和平はまだ実現可能だと述べた。ベイカーはジョージ・HW・ブッシュ元大統領に仕え、現在は共和党の米大統領選挙の有力候補ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事に助言を行っている。

 

 ベイカーは、和平合意が出来なければ、「衝突は継続」するとし、「私は現在も楽観している。私は自分が慎重に事態を見ていることを強調しておきたいが、それでも楽観している。それは、2国共存が実現しなければ、イスラエルの将来は厳しいものとなると考えているからだ」と述べた。

 

 共和党側はオバマ大統領が不当にネタニヤフを攻撃していると批判しているが、ベイカーはこうした批判は的外れだと述べた。

 

 「世界中の誰もアメリカのイスラエルに対する関与の深さを疑うことなどできない。現在もそうだし、未来においてもそうだ」とベイカーは述べた。

 

 ベイカーは自身が国務長官在任当時の、イスラエル首相イツハク・シャミルとの緊迫した外交関係についての思い出話を語った。彼は、「自分が国務長官の時には緊張した瞬間があった」と述べ、それでもイスラエルとアメリカの同盟関係が政策の不一致を乗り越えることが出来たと話し出した。ベイカーは1991年に起きたシャミルとの対立について語った。この当時、ソヴィエト連邦の崩壊に伴って多数のユダヤ人たちがイスラエルへの帰還を果たしていた。それに対して、アメリカ政府は100億ドルの住宅ローン保証をイスラエルに与えるとしたのだが、それにはシャミルがこのお金をヨルダン川西岸地区へのユダヤ人入植地建設には使わないと確約することをベイカーとブッシュは条件とした。

 

 「私はアメリカ・イスラエル関係に関して最初はその複雑さに驚き、それから常に論争が起きることに気付いた。私はブッシュ大統領が行ったことは正しいと考えた。これは今も変わらない」とベイカーは述べた。

 

 ネタニヤフが総選挙前に2国共存による解決を支持しないと発表したことを受けて、オバマ政権は、紛争解決のためのアプローチを再考しているが、このことについて、ベイカーは総会の出席者たちに対して、ネタニヤフはアメリカにとって最も扱いにくいイスラエル首相という訳ではないと述べた。ベイカーは、その当時イスラエルの外務次官を務めていたネタニヤフに対して国務省への出入りを禁止しなければならなかったと思い出話を語った。その理由について、ベイカーは、「彼がアメリカの中東に対する外交政策は、“嘘と歪曲”の上に成り立っていると述べたからだ」と語った。

 

 ベイカーは次のように述べた。「皆さんに申しあげたいのは、25年前、イツハク・シャミルはベンヤミン・ネタニヤフを“柔らかすぎる”と評したことだ。これは、ネタニヤフが若くして首相になった時にシャミルが述べた発言だ。アメリカとイスラエルの国益は常にぴったり一致する訳ではない。全く別のものになるということはこれからもあるだろう」

 

 ネタニヤフの行動は「彼の発言内容と一致してこなかった。入植地の建設は勢いが衰えないままに継続されている」とベイカーは指摘した。しかし、同時に、オバマ大統領とネタニヤフ首相は両者の争いを「悪化」させてはならないとも述べた。

 

 イランの核開発を巡る交渉について、「完璧な(perfect)」合意内容の達成をあくまで求めることには懸念を示した。ネタニヤフは連邦議会の演説でアメリカとイランの交渉の道筋について反対を表明した。

 

 ネタニヤフは次のように語った。「ウラン濃縮をイラン側が行わないこと、これ以外に合意は存在しない。アメリカもイスラエルも、本来の目的を忘れて本末転倒のことをすべきではない(not led the perfect be the enemy of the good)」。(←この英語の言葉がリアリストの真骨頂だと思います。訳者註)

 

ベイカーはまた、オバマ大統領は、必ずしも必要ではないにしても、イランとのいかなる内容の合意を結ぼうともそれについて議会の承認を得られるように努力すべきだ。

 

 Jストリートの年次総会でのベイカーの演説は、Jストリートがイスラエルのヨルダン川西岸地区の占領に対して批判的すぎると考える保守派の人々からは批判された。

 

(終わり)








 



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 2015年3月17日にイスラエルで総選挙が行われ、劣勢が伝えられていたベンヤミン・ネタニヤフ首相率いるリクードが第一党となりました。これでネタニヤフ首相は続投となります。

 

 2014年12月の日本の総選挙でも、自民党が300議席に迫る勢いで勝利を収めましたが、この時の衝撃と似ています。

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選挙前のクネセトの議席数 


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選挙後のクネセトの議席数
 

 日本では北朝鮮、イスラエルではイラン(もしくはイスラム国)が「攻めてくる」という恐怖感を煽って、好戦的な政党と政治家が選挙で勝利を収めています。「人々が右傾化している」というよりも、人々が脅されていると言えるのでしょう。

 

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金輪際ネタニヤフを信頼するな(Never Trust Netanyahu

―イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフの最近の政治的な行動が示しているのは、彼が最悪の種類の機会主義者であるということだ。アメリカは彼がこれ以上最悪の行動を取ることを許してはならない。

 

リサ・ゴールドマン筆

2015年3月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/03/19/never-trust-netanyahu-israel-election-obama/

 

 ここ数週間、イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフは権力の座に留まるためなら何でもやる人間であることを示し続けてきた。彼が権力に固執することで、イスラエルの最大の同盟国であるアメリカとの関係を弱めることになっても、彼は構わずに権力を握り続けることに拘る。人種差別的な、昔アメリカに存在したジム・クロウ法のような差別的な選挙法を推し進めることになっても、彼は何も気にせずにそれを推し進めるだろう。彼は判断力があって知識もある人々に向かって嘘をつき続けることになっても、嘘をつき続けることだろう。ネタニヤフの人格を理解する上で重要なことは、彼が自己を満足させるために2つのことを気にかけていることを理解することだ。1つは権力の座に留まることであり、もう1つはゴラン高原とパレスチナ占領地域に対するイスラエルの支配を継続することだ。

 

 2015年3月17日、ネタニヤフは総選挙で勝利した。イスラエル国内のリベラル派と外国の専門家たちは選挙結果に衝撃を受けた。選挙戦を通じて、彼らは一般有権者が安全保障問題やネタニヤフが3月3日に行ったアメリカ議会演説よりも、経済問題により大きな関心を持っていると考えていた。更には、ネタニヤフの3月3日のアメリカ連邦議会での演説は賛否両論を巻き起こしたが、これによってネタニヤフは支持率を引き上げることに失敗し、アメリカとの関係を傷つけたことで、反対票が投じられることになると考えていた。ネタニヤフが「人目を引くような行動」をいくらやっても挽回は無理だろうと私の同僚の一人は語っていた。選挙日直前の最終の世論調査では、ネタニヤフ率いるリクードは20議席を獲得し、主なライヴァルであるザイオニスト・ユニオンは24議席を獲得すると見られていた。ネタニヤフは権力の座に長くい過ぎたために、有権者を理解できなくなっているのではないかと思われていた。

 

 実際には、ネタニヤフは誰よりも有権者を理解していたということになった。選挙直前、ネタニヤフは低俗な、人種差別的な大衆煽動ばかりを行ったのだ。彼は有権者の持つ恐怖感と部族(「リクード族」)への所属感を刺激した。彼らは、イギリス人が贔屓のサッカーチームに対するのと同じように、リクードに対して忠実である。

 

 イスラエルのインターネットのニュースサイトであるNRG(アメリカの大富豪シェルドン・アデルソンが所有している)とのインタビューで、ネタニヤフは、「自分の目の黒い内はパレスチナ国家の成立を許さない」と明確に述べた。フェイスブック、ツイッター、SMS,自動ヴォイスメールを通じて、有権者たちに次のように訴えた。「私は皆さんと左翼が率いる政府の間に立っています。左翼政府はエルサレムを分割し、1967年の段階の国境にまで撤退しようとするでしょう。テルアヴィヴとベン・グリオン空港を見下ろすヨルダン川西岸地区を開放することでそこにイスラム国が入り込んでくるでしょう」

 

 選挙日当日、ネタニヤフはフェイスブックに30秒間の酷い内容の動画を掲載した。その中で、彼は中東の地図を背にして立ち、予備役将兵に対して国家安全保障の緊急事態が起きているかのように訴えた。枯れは次のように述べた。「右派の政府は危機に瀕しています。アラブ人たちが町中の投票所に押し寄せています。左派のNGOがバスを使って彼らを投票所に運んでいるのです」。ネタニヤフは、軍隊の緊急時を示す用語である「ツアヴ8」という言葉を使いさえしたのだ。

 

 イスラエルの有名なジャーナリストであるハノク・ダウムがフェイスブックに挙げた文章を多くの人々がシェアした。そこには、超正統派とパレスチナ人の有権者の票を除くと、3人に1人がリクードに投票したことになると書かれていた。そして、クネセトの過半数の議席は、右派とナショナリズム勢力が占めているとも書かれていた。

 

 イスラエル以外の国々で衝撃が走った。しかし、実際にはイスラエルはもはや右派的な社会となり、人種差別的な言辞が普通に使われるようになっている。例えば、「アラブ風」という言葉は、低俗でけばけばしい意味で使われている。イスラエル国会クネセトの右派的な議員たちはここ数年、アラブ系の議員たちに対して、彼らが演説をしている際に、暴力をふるうようになっている。西洋諸国のリベラル派にとっては衝撃的な事例が数多く起きている。しかし、イスラエル国内では無視されている。クネセトの議員たちは、スーダンからの移民たちを「私たちの体に巣食う癌細胞」などと演説の中で言ってしまう始末だ。

 

 同様に、世界中のマスコミは、ネタニヤフのパレスチナ国家の樹立を拒絶発言に関して、ほとんど取り上げてこなかった。昨年7月、イスラエル国防軍が駐留しない限り、パレスチナ国家の樹立を容認しないとネタニヤフは演説の中で述べた。「イスラエル国防軍の駐留」は別の形での軍事占領である。彼の演説は世界中のマスコミが取り上げず、イスラエル国内のマスコミもほとんど報道しなかった。NRGとのインタビューでネタニヤフは、かなり率直な言葉遣いであった。ここがある種の転換点であった。3月3日のアメリカ連邦議会演説でネタニヤフはバラク・オバマ米大統領を大いに侮辱した。このインタビューはそれに続くものであった。

 

 ホワイトハウスは、2国共存を否認することでイスラエルは外交分野において厳しい状況に追い込まれると示唆した。数カ月前、ハアレツは漏えいしたとされるEUの公式文書をすっぱ抜いた。そこには、イスラエルがヨルダン川西岸地区から撤退すること、パレスチナ国家の樹立の交渉を公式に拒絶した場合には、イスラエルに特別な経済制裁を科すと書いてあった。ネタニヤフはやり過ぎだと世界が見ていることを示していた。

 

しかし、ネタニヤフは態度を豹変させた。総選挙の2日後の2015年3月19日(木)、ネタニヤフはMSNBCの記者に対して穏やかな態度で、2国共存の解決法を否認はしなかった。ネタニヤフは「現実が変化したのだ」と述べた。更には、パレスチナのマウムード・アッバス議長は、イスラエルをユダヤ国家として承認することを拒否し、彼はハマスとの間にイスラエルを破壊するための協定を結んだ、とも述べた。

 

 2つの発言は共に実質的には嘘である。2009年にアッバス議長に対してイスラエルをユダヤ国家として承認するという条件を押し付けて状況を変えたのはネタニヤフ自身である。それまでのパレスチナ側との交渉でこうした条件は持ち出されたことはなく、全く新しい条件であった。ハマスとPLOの間に存在すると言われている協定からすれば、この条件は受け入れがたいものであった。ネタニヤフはただ単に嘘をついたのだ。しかし、彼の発言はもっともらしいものである。ネタニヤフはアメリカのマスコミに対応し、簡単な質問に答える時にその準備をしっかりやっている。ネタニヤフが何年もイスラエルのマスコミからの取材を受けつけずに、アメリカのテレビや新聞の取材には積極的に応じてきたのは何の不思議もない。

 

問題は、アメリカがこれからもネタニヤフの行動を許容し続けるかどうかである。ネタニヤフは、ヘブライ語で「自分の目の黒い内はパレスチナ国家の樹立を許容することはない」と明確に言い切った。それから2日後、彼は穏やかな態度でアメリカ人のジャーナリストたちに対して、英語で、そのようなことは言っていないと述べた。彼は流ちょうな英語を話し、英語を母国語としない人にありがちなアクセントもない。

 

 イスラエルはほぼ50年間にわたってヨルダン川西岸地区を占領してきた。ほぼ10年にわたり軍隊を使って、ガザ地区を封鎖してきた。イスラエルはそうした政策を変更する意図を全く見せていない。これは継続可能な状況ではない。イスラエルが支配する地域には約1300万人が暮らしているが、800万人しか投票権を持っていない。「アメリカとイスラエルは価値観を共有している」と主張するアメリカ人はイスラエルに対して、ジム・クロウ法も共有する価値観なのかどうかを尋ねる必要がある。セルマ自由行進50周年の記念式典で、エドマンド・ペタス橋の上で行ったオバマ大統領が行った演説の感動から考えて、ジム・クロウ法はアメリカの価値観でもなんでもない。オバマ政権はもうネタニヤフが自分たちに嘘をついているなどとは考えてないなどと振る舞うことは止めるべきだし、ネタニヤフが信頼できない人物であるかどうかは分からないなどと言う姿勢を取ることも止めるべきだ。オバマ政権がやるべきことはただ一つ、「イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフは歓迎されざる人物(persona non grata)だ」と宣言することだ。

 

(終わり)








 
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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 3月上旬のイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフのアメリカ連邦議会での演説とイスラエルの総選挙の結果はアメリカ政治に大きな分裂の原因となりました。今回はそれについての記事を皆様にご紹介します。

 

 アメリカ政治における大きな分裂については、副島隆彦先生の最新刊『日本に恐ろしい大きな戦争が迫り来る』(講談社、2015年)でも詳しく分析されていますし、拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)ではその枠組をいち早く提示したという自負もあります。また、本ブログでは重要な情報をご紹介しております。
 

 

 これからもよろしくお願い申し上げます。

 

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ベンヤミンは勝ったが、AIPACは負けた(When Bibi Won, AIPAC Lost

―イスラエルはアメリカ政治においてより分裂を招く問題になってしまった

 

ピーター・ベイナート筆

2015年3月19日

『ジ・アトランティック』誌

http://www.theatlantic.com/international/archive/2015/03/when-bibi-won-aipac-lost/388203/

 

ベンヤミン・ネタニヤフの勝利の裏には破れ去った犠牲者がいる。イサク・ヘルツォグはネタニヤフを首相の座から追いとしたいと考えていた。バラク・オバマは共和党と一緒になって自分を攻撃しない、そしてイスラエルとパレスチナ二国共存によるパレスチナ問題解決を支持する人物がイスラエルの首相になって欲しいと望んでいた。彼らが犠牲者であることは明らかだ。

 

 分かりづらい犠牲者たちも存在する。ここ数カ月の間にネタニヤフ首相が米国イスラエル広報委員会(American Israel Public Affairs CommitteeAIPAC)に対して行ったことを考えてみよう。AIPACはワシントンにおいて、アメリカ・イスラエル同盟のために活動するロビー団体である。AIPACは右派の組織だと批判する人々もいる。しかし、組織内部は全くそのようなことはない。AIPACのスタッフたちは戦闘的であるが、超党派である。つまり、彼らは誰がワシントンで権力を握ってもそれに関係なく影響力を維持できるようにしている。それでも歴史的に見て、AIPACの会員たちは多くが民主党員や民主党支持者である。 ユダヤ系アメリカ人の多くが民主党員や民主党支持者である。従って、巨大な、そしてユダヤ系アメリカ人世界の主流派を形成するAIPACの会員の多くもまた民主党支持となるのも当然のことだ。

 

 AIPACはイスラエルとパレスチナの共存によるパレスチナ問題の解決(two-state solution)を支持している。それは、「イスラエルは民主政治体制であるのだから、アメリカはイスラエルを支持すべきだ」という主張がAIPACの基本にあるからだ。クリスチャン・ユナイテッド・フォ・イスラエルのような宗教右派グループは、イスラエルとアメリカは宗教上の強いつながりがあるからアメリカはイスラエルを支持すべきなのだと主張する。しかし、そのような宗教を絡めた主張を行うことで、AIPAC内部の民主党支持の会員を含む、多くの民主党員をかえってイスラエル支持から離れさせてしまうことになるとAIPACは認識しているのだ。AIPACは、「民主政治体制への関与、法の支配、信教と言論の自由、人権こそは、アメリカとイスラエルが共有している、両国の核となる価値観である」と強調する。イスラエルがヨルダン川西岸地区の数百万のパレスチナ人たちに市民権、投票権、移動の自由を認めずに、戒厳令下で軍事的な支配を続けることをAIPACは望まないし、支持しないのである。従って、AIPACはイスラエルによるヨルダン川西岸地区の支配は一時的なものであり、パレスチナによる反乱に対して民主的な志向を持つイスラエル政府が心ならずも非民主的な対応をせざるを得なかった、悲しい現実なのだと主張しているのだ。

 

 こうした点から、ネタニヤフの最近の行動は、AIPACにとっては迷惑なものなのである。2009年にパレスチナ国家について不承不承支持することに同意したはずなのに、今回の総選挙の選挙運動の最終盤になってネタニヤフはその支持を撤回する発言を行った。AIPACは自分たちのウェブサイト上で「ユダヤ人国家イスラエルと非武装のパレスチナ国家の2つの国家の共存が交渉を通じて合意された」ことを支持すると発表していたが、ネタニヤフの行動によって困った立場に置かれることになった。AIPACがネタニヤフを支持して、2国家共存への支持を放棄すると、AIPACは世俗的な会員、民主党支持の会員、アメリカとイスラエルが共有している民主政治体制を理由にして支持してくれている会員たちが離れてしまう危険性があり、そうした人々がハト派の親イスラエル団体であるJストリートに向かうと考えられる。しかし、AIPACが自分たちとネタニヤフとの間に距離があるということを公に認めてしまうと、よりタカ派的な会員たちが離れてしまう危険がある。彼らはイスラエル首相が誰であれその人物に対するアメリカ政府の批判をいっさい認めない。彼らはネタニヤフを賞賛しているので特に彼に対する批判を容認しない。

 

 更に言うと、ここ数カ月のネタニヤフはアメリカ国内で全く別の分裂した評価を受ける人物となった。共和党は彼を愛している。それは彼がタカ派であるだけでなく、オバマ大統領の敵であるからだ。民主党員の多くは同じ理由から彼を嫌っている。党派性の強いユダヤ人団体にとってそれは都合の良いことであった。民主党に近いJストリートは、会員たちにネタニヤフからの攻撃に対してオバマを擁護するように呼びかけている。ザイオニスト・ユニオン・オブ・アメリカと、右翼の大富豪であるシェルドン・アデルソンからの資金援助を受けているラビのシュマリー・ボテック率いるディス・ワールド:ザ・ヴァリュー・ネットワークのような団体は、オバマからの攻撃からネタニヤフを擁護するように呼びかけている。AIPACはこの2つの間に挟まれ、何も発言できず、取るに足らない存在のようになっている。

 

 AIPACが取るに足らない存在などではない。ワシントンで最も有力なユダヤ系アメリカ人団体である。しかし、AIPACは党派対立やイデオロギー対立の激しくなっているこの時代にそぐわないのである。一般有権者からすると、共和党と民主党ではイスラエルに対する姿勢が異なっており、その相違が大きくなっているように見える。共和党はイスラエルを、アメリカに憎悪を抱いているイスラム教徒たちに包囲されたユダヤ・キリスト教の最前線基地だと考えている。民主党は、イスラエルを母国アメリカでは人気のない「ネオコンサヴァティヴ」派の人々によって率いられている国だと考えている。AIPACはこの分裂がワシントンを二分させないようにする必要がある。AIPACからすると、民主党所属の連邦議員たちには有権者たちの本能に抵抗して欲しいということになる。共和党に対しては、党派的な利益のためにイスラエルを利用して、有権者たちに取り入るのをやめて欲しいと思っている。そして、民主党支持者たちがAIPACからこれ以上離れないようにして欲しいと願っている。

 

 イサク・ヘルツォグはこのような試みにとっては良いパートナーになったことだろう。彼はオバマ大統領を尊敬しており、そのことで民主党側は安心感を得られたことであろう。しかし、彼がイスラエル国民による選挙の結果としてイスラエル首相になることで、共和党側からはその立場に対する尊重を得ることが出来たことであろう。ヘルツォグが選挙に勝利していれば、自然な形で2国共存の解決を支持したことであろう。そうすればAIPACはこれまでの主張を繰りかえることが出来ただろう。それは、「パレスチナ国家が成立しないのはパレスチナ人側の失敗である」というものだ。これから数年間、ネタニヤフが首相の座に留まることになる。それによってイスラエルはアメリカ国内でより分裂を招く問題となることだろう。AIPACにとってみれば、選挙の投開票があった火曜日は最悪の日ということになる。

 

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ベイナーがイランとの交渉最終日にイスラエルを訪問(Boehner to visit Israel on Iran deadline

 

ベン・カミサール筆

2015年3月20日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/236400-boehner-to-lead-trip-to-israel-meet-with-netanyahu

 

 連邦下院議長ジョン・ベイナー(オハイオ州選出、共和党)は共和党所属の連邦議員のグループを引き連れて、3月31日からイスラエルを訪問し、イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフと会談を行う予定であることが明らかになった。3月31日はアメリカとイランとの核開発を巡る交渉の最終日になっている。

 

 イスラエル政府のある高官はCNNに対してベイナーのイスラエル訪問の予定がある子を認め、イスラエルの新聞『ハアレツ』紙は、連邦議員たちは3月31日にイスラエルに到着することになると報じている。この訪問は総選挙前から計画されていたということだ。

 

 共和党の連邦議員たちはオバマ大統領が進めているイランとの交渉に対して批判的であり、交渉によって、イスラエルの破壊を求めているイランに対して行動の自由を認めてしまうことになると主張している。ベイナーは3月上旬に、オバマ政権に相談することなくネタニヤフを議会での演説のために招聘したことでホワイトハウスと民主党の怒りを買った。ホワイトハウスの高官たちはこの行動を外交儀礼に反するものと厳しく批判し、多くの民主党所属の連邦議員たちはネタニヤフの議会演説を欠席した。この演説には政治的な意図が隠されており、数週間後にはイスラエル国会の総選挙が控えていた。

 

しかし、ベイナーと他の共和党所属の連邦議員たちは、ネタニヤフの演説を擁護し、彼が反対しているイランとの核開発を巡る交渉について意見を聞くのは重要だと述べた。

 

 こうした争いはネタニヤフとオバマ大統領の間の冷め切った関係を示すもので、2人は長年にわたり衝突してきた。2012年の米大統領選挙で、ネタニヤフは共和党の候補者ミット・ロムニーを支持したことで批判された。ネタニヤフとロムニーはボストン・コンサルティング・グループで一緒に働いた経験がある。

 

 ネタニヤフは総選挙の前に2国共存への支持を撤回するかのような発言を行ったが、これはここ数十年間のアメリカの外交政策と大きく矛盾するものなのである。ホワイトハウスによると、今週木曜日、オバマ大統領はネタニヤフ首相へ選挙に勝利したことを祝すために電話をかけ、その時に、「アメリカは長年にわたり2国共存による解決のために努力してきたことを再確認」したということである。

 

 ネタニヤフ首相は、NBCのニュース番組「ナリトリー・ニュース」でインタビューを受け、その際に選挙前の発言からトーンを落とした発言を行い、イスラエルとアメリカとの間には強固な関係が存在することを再確認した。

 

 イスラエル国会クネセトの総選挙でリクードが多数を制したことから、ネタニヤフは首相の座に留まると予想されている。

 

(終わり)











 



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 来週火曜日にイスラエルで総選挙が行われます。日本の安倍首相と一緒になって、アメリカの反オバマ・ネオコン・人道主義的介入派ラインを支えている、ベンヤミン・ネタニヤフ首相を率いるリクードは敗北する可能性が高まっています。

 

 それに対して、苛立ったネタニヤフ首相は「外国からの影響」にまで言及するようになっているようです。それでも、ネタニヤフ首相は連立で政権を維持することが出来る可能性もあるようです。

 

 火曜日のイスラエル総選挙は注目です。

 

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ネタニヤフ首相は、彼を追い落とそうとする外国の権力者共同謀議理論の存在を主張(Netanyahu Claims Foreign Conspiracy Is Trying to Depose Him

 

エリアス・グロル(Elias Groll)筆

2015年3月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/03/13/netanyahu_claims_foreign_conspiracy_is_trying_to_depose_him/

 

 イスラエルでは来週火曜日に総選挙が行われる。ベンヤミン・ネタニヤフ首相にとっては先行きは良くない。ネタニヤフは世論調査で野党側の後塵を拝している。彼は退勢を挽回するための時代遅れの戦術を採用している。彼は自分の政治的な苦境を国際規模の権力者共同謀議理論(conspiracy)のせいにしているのだ。

 

 ネタニヤフは金曜日、「フェイスブック」に投稿した。その中で、彼は、リクードの指導者である自分を追い落とすために、外国からの資金が野党側に流れていると主張した。彼は競争相手のイザク・ヘルツォグとツィピ・リヴニに言及しながら、次のように書いた。「右派の支配は危機に瀕している。左派の有権者たちとイスラエル国内と国外のマスコミは、ツィピとボウギを権力の座に就けるために正しくない方法を使うための勢力に参加している」。

 

 ネタニヤフは、結果は悲惨なものとなるだろうと述べている。彼は「1967年時点の国境まで後退し、イェルサレムは分割され、テル・アヴィヴとベン・グリオン国際空港を見下ろす丘に第二のハマススタン(Hamas-stan)が建国されることになる」と述べている。ネタニヤフは、ガザ地区からイスラエルが撤退することで起きであろうと彼が考える結果に対して警告を発するために、かなり前から「ハマススタン」という言葉を使い始めた。イスラエルは、2005年にガザ地区から入植者と兵士たちを撤退させた。それでも航空と沿岸のコントロール権はイスラエルが維持している。それでも、ガザ地区は現在、ハマスによって統治されている。

 

 更に言えば、ネタニヤフはフェイスブックの投稿で、彼とリクードが外国政府と左派勢力、『イディット・アウロノット』紙のジャーナリスト、「イスラエル国内と外国の有力者たち」が共同した権力者共同謀議理論を主張した。

 

 今週金曜日、ネタニヤフは様々なマスコミに登場し、自分を追い落とすために暗躍している外国の政府を明らかにしている。彼はラジオ局コル・イスラエルに出演し、「北欧各国の政府は数百万ドルを投じて、私を権力の座から追い落とそうとしている」と語った。

 

 スウェーデンがパレスチナを承認する決定をしてから数カ月、スウェーデンとイスラエルの関係は冷え切っているが、スウェーデンがイスラエルの総選挙に資金を投じている証拠は存在しない。

 

 今週金曜日、イディット・アウロノット紙の世論調査によると、来週火曜日の総選挙では、ネタニヤフ率いるリクードはヘルツォグとリヴィニ率いるイスラエル労働党に負けているという結果が出た。世論調査では、イスラエル労働党が26議席、リクードが22議席を獲得するという結果が出た。テレビ局「チャンネル10」の世論調査によると、リクードは20議席、イスラエル労働党は24議席をそれぞれ獲得するという結果が出ている。

 

 リクードがイスラエル労働党に続いて第二党になっても、ネタニヤフはまだ権力を掌握することは可能だ。首相となるためには、クネセト(Knesset、イスラエルの国会)の120議席のうち、連立して最低61議席を取る必要がある。ネタニヤフは多数を占める連立を形成する上で、ライヴァルたちよりも有利な立場にある。

 

 各種世論調査で不利な状況に陥ると、ネタニヤフは自身の支持率の下落には不透明な外国の影響があると責任転嫁を始めた。今週火曜日、ネタニヤフ首相は陸軍ラジオに対して、「自分を追い落とすための世界中を巻き込んだ大規模の企てが行われている」と述べた。投票日が近付く中、ネタニヤフ首相は外国の権力者共同謀議理論についての告発を強めるだけしかできない。

 

 ネタニヤフにとって、この外国の権力者共同謀議理論(コンスピラシー)に対する適切な反応は次のようにあるべきだ。それは、「リクードに投票せよ」というものだ。

 

(終わり)





メルトダウン 金融溶解
トーマス・ウッズ
成甲書房
2009-07-31




 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23



 古村治彦です。

 

 今回は、2015年3月3日にアメリカ連邦議会で行われたイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の演説についての短い記事をご紹介します。


benjaminnetanyahucongress001


 ネタニヤフ首相はオバマ政権の対イラン政策を批判し、「強いイラン」は中東と世界にとって有害であると述べました。そして、イスラム国とイランを比較し、イランの方がより深刻な脅威だと断じました。ここはどうも引っかかるところです。

 

 共和党側はこの演説を「オバマ大統領に対する告発」だと賞賛し、民主党側は「侮辱」だとしています。イスラエルに関しては党派を超えて政治問題にならないようにしてきましたが、ネタニヤフによって政治問題化されてしまいました。

 

 今回、明らかになったのは、米共和党はかなり劣化しているということと支持基盤が極端な宗教右派や急進的な右翼になっていることから、良質な穏健保守が隅っこに追いやられていることです。選挙で選ばれた自国の国家元首の政策を外国の首相に批判させて、一緒になって喜んでいるのは情けない限りです。これは日本の自民党と全く同じです。日本の例ですが、日中国交回復に尽力した松村謙三は、中国に行った時に、当時の総理大臣を批判されて、「自分は総理大臣とは考えが違うが、自国の総理大臣を批判されて看過できない」と述べたと言われています。これが政治家というものです。

 

 昨日ご紹介した記事の中で、米国連大使のサマンサ・パワーの発言で、「交渉がうまくいかなかったら武力を用いてもイランの核開発を許さない」とありました。世界は、まさに「戦争か、平和か」の選択を迫られ、危険な情勢になっていると思います。

 

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ネタニヤフ首相の議会演説の重要なポイント(Key Points From Netanyahu's Speech to Congress

 

ピーター・ベイカー(Peter Baker)、アラン・ラペポート(Alan Rappeport)筆

2015年3月3日

ニューヨーク・タイムズ紙

http://www.nytimes.com/interactive/2015/03/03/world/middleeast/netanyahu-congress-key-points.html

 

 イスラエル首相のベンヤミン・ネタニヤフは火曜日、彼自身が全く思慮に欠けていると考えている、核開発に関するアメリカとイランとの間の交渉に対して警告を発した。以下は、彼の演説の重要な部分の抜粋である。

 

「私たちは、悪い内容での合意よりも合意に達しないことの方がより良いと教えられてきました。そうです、現在の交渉の結果として得られる合意は悪い内容での合意なのです。本当に悪い合意なのです。それなら合意に達しないことの方がよほど良いのです」

 

ネタニヤフ首相は、彼が「悪い合意」と呼んだ、イランがある程度の原子力プログラムを維持することを許す内容の合意に対して警告を発し、イランの原子力プログラムが全て放棄されることが合意には必要だと主張した。ホワイトハウスはネタニヤフ首相の考えを非現実的だとしている。ネタニヤフ首相は連邦議会においてオバマ大統領が現在行っている交渉に対して大声で反対を表明した。現在行われている交渉が合意に達しない可能性は高いのである。オバマ大統領は経済制裁を解除することはできるが、イランは恒久的な解除を主張している。それには連邦議会の承認が必要なのである。

 

「中東地域において、イランは現在4つのアラブの国の首都、バクダッド(イラク)、ダマスカス(シリア)、ベイルート(レバノン)、サナ(イエメン)を制圧している。もしイランの侵略がこのまま野放しにされれば、侵略はもっと続いていくことだろう」

 

 ネタニヤフ首相は、イランが近隣諸国4カ国であるイラク、シリア、レバノン、イエメンを制圧していると語った。そして、いかなる合意に達するにしてもその前に、世界の諸大国はイランが近隣諸国に対しての侵略を放棄し、世界中のテロ組織に対する援助を停止し、イスラエルを滅亡させると声高に主張し脅威を与えることを止めるように求めるべきだと述べた。ネタニヤフ首相は、核兵器を所有した場合のイランはテロ組織に対して今よりも多くの資金援助を行い、中東地域に「核兵器を拡散させる」だろうと述べた。更に、現在提案されている内容での合意はギャンブルだとし、現在よりも力を付けたイランがより友好的になるという方に賭けるべきではないと述べた。

 

「私の演説が大きな論争の的になっていることは分かっています。中には私がここに立っていることが政治問題を引き起こしていると考えておられる人がいるのは残念なことです。私にはそのような意図は毛頭ないのです」

 

ネタニヤフ首相は演説の初めで民主、共和間の緊張を和らげようとした。共和党と民主党の間で党派的な分裂が起きた。しかもこれまでは超党派で対応してきたイスラエルを巡る問題で分裂が起きたのだ。50名以上の民主党所属の連邦議員たちは演説を欠席した。民主党の連邦下院院内総務ナンシー・ペロシは演説をアメリカ国民の知性に対する「侮辱」だと呼んだ。一方、共和党は演説をオバマ大統領の外交政策に対する告発と呼んだ。ネタニヤフ首相は、イスラエルとアメリカは同盟国であることを強調し、騒動を鎮静化させようとした。彼はイスラエルが危機に陥った時に強力な支援をしてくれたことを引き合いに出してオバマ大統領を賞賛し、民主、共和両党がイスラエルを支援してくれたことに言及した。

 

「この共存することが出来ない勢力争いにおいて、アメリカもイスラエルも介入する余地を持っていないのです」

 

ネタニヤフ首相はイランとイスラム国を究極的には同じ目的を共有する、ライヴァル関係にあると述べた。軍事的なイスラム主義の盟主の座を争っているのだと示唆した。ネタニヤフ首相はイランがイスラム国よりも深刻な脅威であると主張した。それは、イスラム国が肉切り包丁とソーシャル・メディアを利用しているだけに過ぎないが、イランは敵を攻撃するのに核兵器を使うことになるかもしれないからだと語った。

 

「イランは国際機関の査察官たちの行動を妨害しているだけではなく、査察官たちをうまく手玉に取っているのです」

 

ネタニヤフ首相は、北朝鮮を例に挙げて、国際機関による査察が失敗していることに言及し、そして、過去イランが国際機関の査察を妨害したことに言及した。ネタニヤフ首相は、2005年、2006年、2010年にイランが「国際機関が設置したカメラのスイッチを切った」と指摘した。更に、国際機関による査察は北朝鮮による合意内容の履行違反を防げなかったと述べた。ネタニヤフ首相は、「それから2年か3年以内に、北朝鮮は核兵器を所有することになってしまった」と述べた。

 

(終わり)









 

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