古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:マイク・ペンス

 古村治彦です。

 もう先週のことになってしまうが、アメリカ大統領選挙副大統領候補者討論会がユタ州の州都ソルトレイクシティのユタ大学のキャンパスで実施された。副大統領候補者討論会は1回だけの実施予定であり、この時だけが一対一の直接対決ということになった。

 共和党からは現職のマイク・ペンス副大統領、民主党からはカマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)が出席した。ペンス副大統領としては、トランプ大統領のサポート、1回目の大東島候補者討論会でのトランプ大統領が混乱を引き起こしたので、何とか低評価からの挽回を図ることが必要だった。ハリスと民主党側からすれば、既に大きなリードをしているので、ハリスが調子に乗って失言をしたり、変な態度を取ったりして批判のネタを与えないということが重要だった。

 副大統領候補者討論会はお互いに司会者からの質問に答えない場面が多かった。トランプは自分の言いたいことをまくしたてて荒々しく質問に答えなかったが、ペンスは静かに司会者からの質問に答えなかった。ハリスは笑顔で司会者とペンスを馬鹿にしながら質問に答えなかった。

しかし、お互いの発言を遮ることは少なかったということもあって秩序だった討論会のように見えた。ただ、私が実感したのは、「やっぱりハリスは人気が出なかったはずだ」ということだ。

考えてみれば、昨年から始まった大統領選挙民主党予備選挙で、ハリスは有力候補と考えられていた。その経歴や年齢、容姿からも支持が集まれば一気に大統領候補になるとも考えられていた。しかし、実際には全く人気が出ず、選挙戦から早々に撤退する羽目に陥ってしまった。討論会でのハリスの姿や言動からは、人間性の悪さが出てしまっていた。ペンスの(演技をしていただけかもしれないが)純朴そうなアメリカのおじさん、という姿が更にハリスの攻撃性や人を馬鹿にする態度を際立させることになった。

 エリートに対する反感、ということはアメリカで大きくなっている。日本でもそうなりつつあると私は感じている。ハリスはそのエリート臭と上から目線が出ないようにしなければ、所属する党の任期だけではなく、個人的な人気も必要となってくる、これからの大統領選挙で勝つことはないだろう。

 討論会の最後に司会者がアメリカの少女からどうして政治家同士が激しく罵り合い、いがみ合うのかという趣旨の質問があったことを紹介して、両候補者に答えを求めた。ペンスは激しく言い合うのは国のためを思ってのことで、それが終われば仲良くやっているし、またそうでなければならない、と答え、ハリスはそうした分裂をしないために、バイデンは出馬した、と最後までバイデンの宣伝に努めた。最後の質問に関しては、パン巣の方が素晴らしい答えだった、大統領選挙ということを離れての答えだった、と私は思う。ハリスは最後の最後まで大統領選挙にこだわり過ぎて、執着が過ぎて、見にくい姿を晒したと私は思う。

 大統領選挙候補者討論会の第2回目は中止となった。開かれていれば明後日にまた放送されていたことだろう。討論会についても考え物だ。お互いが言いたいことを言って相手の発言を聞かず、質問にも答えないという形式で何の意味があるだろう。また、それで説得される有権者がいるとも思えない。前回の大統領候補者討論会を見て、私は自分がアメリカ国民なら棄権するという選択もあるだろうなと思った。政治への関心がアメリカでも下がっていくということになるだろう。アメリカはデモクラシーの総本山と自負しているだろうし、それを世界中に広めなければという考えも根強いが、国内の惨状を俯瞰で見れば、すでに崩壊への道を歩き始めたということになる。

(貼り付けはじめ)

副大統領候補者討論会の5つのポイント(Five takeaways from the vice presidential debate

ナイオール・スタンジ筆

2020年10月7日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/520136-five-takeaways-from-the-vice-presidential-debate

ペンス副大統領とカマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)が水曜日の夜、ソルトレイクシティでただ1回の討論会のために顔を合わせた。

今回の対決はトランプ大統領とジョー・バイデン前副大統領との間の嵐のような1回目の討論会から8日後に行われた。

主要なポイントは何だったろうか?

(1)ハリスは自身の目的を達成した(Harris hit her goals

民主党側のコンビは世論調査で大量リードしている。従って、ペンス副大統領とは引き分けで、大きな失策さえなければハリスにとっては良い討論会だったということになる状況だった。

彼女はそれ以上のことをやり遂げた。

討論会の最初の数分間、トランプ政権の新型コロナウイルス感染拡大への対応を激しく非難した。ハリスは「我が国の歴史上、どの政権も侵さなかった最大の過ち」と表現した。

ハリスは医療制度など他の論点でもパンチを繰り出した。具体的にはトランプ大統領による軍人たちに対する侮辱と財政について攻撃した。

トランプ大統領の多額の負債について最近になって情報公開されたことについて、ハリスは次のように述べた。「アメリカ合衆国大統領であり軍の最高司令官が借金を持っているということを知るのは良いことです。なぜならアメリカ国民には、大統領の決断に影響を与えているものについて知る権利を持っているからです」。

ハリスのパフォーマンスは完璧ではなかった。ハリスは、トランプ大統領が指名したエイミー・コニー・バレットが承認を得ることに成功した場合には、彼女とバイデンが当選した後で、連邦最高裁の定数を増やすかどうかという質問について、全く答えなかった。

しかし、全体を通して、ハリスは、完全な負けを喫しないことが必要であったことを考えると、勝利したと評価できる。

(2)ペンスは自身の仕事を行った(Pence did his job

ペンス副大統領はトランプ大統領よりも極めて正統な政治家である。彼は水曜日の夜にそのことを改めて示した。

副大統領になる前には、自分自身のラジオ番組を持っていたペンスは討論会参加者として力を持っている人物だ。そして、割り込むようなことをする人物ではない。これらのことは、4年前に証明されている。この時はヒラリー・クリントンの副大統領候補者だったティム・ケイン連邦上院議員(ヴァージニア州選出、民主党)が相手だった。

水曜日の討論会で、ペンス副大統領はトランプ大統領の経済政策について説明し、支持を得る方向に進めることができた。ペンス副大統領は通常運転のトランプ大統領よりも、説明が上手くかつ人々を説得する話し方ができる人だ。ペンス副大統領はいくらかの共感を示すこともできる人であり、共感を示すという点はトランプ大統領のウィークポイントだ。

ペンス副大統領に関しては、SNS上で持ち時間を超えて話していたこととハリスの発言に割り込んだことがあったことで批判を受けていた。しかし、ペンス副大統領もまた大きな失策を犯すことはなかったし、時にハリスを守勢に回らせることに成功した。

ペンス副大統領は老練なパフォーマンスを行った。しかし、トランプ大統領が勝利をするためにどうしても必要な新しい支持者の獲得ということはできなかった。

(3)質問に答えないことが多くあった(Whole lotta dodging going on

候補者2人は多くの質問に答えず、そこから派生した議論は行われなかった。

具体例はたくさんある。その一つは、ペンスがトランプ政権のオバマケアを廃止する試みについて質問された時だ。ペンスはこの質問に対して彼自身の中絶反対の信念について語り、バイデンとハリスが連邦最高裁判所の定員を増やすのかについて質問した。ハリスも自分の番になってオバマケアについての質問を避けた。

ペンス副大統領はこのほかにも複数の質問に答えなかった。トランプ大統領の健康状態についての透明性をアメリカ国民は持つべきか、トランプ大統領が落選して権力を移譲する際に平和的に行わないということになったら、ペンス副大統領はどうするかという質問には答えなかった。

討論会の司会者であるスーザン・ペイジは、候補者たちにきちんと質問に答えるようにさせなかったということで批判を受けている。

(4)例のあのハエが勝利した(The fly won

討論会の夜に最も人々の関心を集めた瞬間は疑いなくあの瞬間だった。

討論会の後半、一匹のハエがペンス副大統領の頭にとまった。そしてしばらくの間、そこにとどまった。副大統領は何の反応も示さなかったが、ツイッターは反応した。

いくつものツイッターのアカウントで早速、ハエの考えていることを代弁して核ということが行われた。

バイデン選対は、献金のお願いに合わせて、ジョー・バイデンがハエたたきを持っている写真をツイッターに投稿した。民主党はまたインターネット上のアドレス「flywillvote.com」を登録した。このアドレスを打ち込むと、民主党全国委員会のウェブサイトに飛び、人々に投票のための登録を行うことを促すようになっている。

このハエは極めて暗い選挙戦の中でいささかの軽い休息となった。

ハエの出現は水曜日夜の討論会における最も興味深い出来事の一つとなった。しかし、そのことが示しているのは、水曜日の討論会がいかにありふれたものであったか、特に先週のトランプとバイデンとの間の討論会と比べて平凡なものであったかを示すものである。

(5)ゲームの様相を変えることはできなかった(No game changer

水曜日夜、人々は標準的な、高いレヴェルの政治的な討論会を目撃した。どちらの候補者たちとも相手をノックアウトできなかった。どちらの候補者ともにキャリアを傷つけるような酷い失言をしなかった。

最終的な結果としては、新型コロナウイルス感染拡大、経済、トランプ大統領の衝突と軋轢を生み出す性格といった様々な大きな問題に特徴づけられている選挙戦において、今回の討論会は無視できる程度の影響しか与えなかったということである。

民主党側は選挙戦の様相が変わらないことで利益を得る。

しかし、全ての前例と予測がことごとく覆されている年の中で、次に何が起きるかを分かっている人などいるだろうか?

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世論調査:過半数が副大統領候補者討論会ではハリスがペンスに勝利したと考えている(Poll: Majority believe Harris won VP debate against Pence

ジョン・バウデン筆

2020年10月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/520162-poll-majority-believe-harris-won-vp-debate-against-pence

カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)とペンス福大東慮との間で行われた、水曜日の副大統領候補者討論会を視聴した有権者のうち、10人中6人が、ハリスがペンスを上回ったという印象を持ったことが世論調査の結果で明らかとなった。

CNNSRSS社は、登録済み有権者で水曜日の討論会を視聴した人たちに対して共同世論調査を実施した。59%の人々が討論会の檀上でハリスが上手に討論を行ったと答え、38%がペンスの方がうまかったと答えた。

今回の副大統領候補者討論会に対する認識は性別で分かれている。女性の討論会視聴者の69%が「ハリスが勝利した」と答えた。30%が「ペンスが勝利した」と答えた。男性視聴者の48%が「ハリスの方が上手くやった」と答え、46%が「ペンスの方が上手くやった」と答えた。

CNNの調査によると、視聴者の多くは民主党を支持するようになっているが、討論会の前後での支持率を調べてみると、ハリス副大統領の支持率は41%のままで、ハリスの支持率は56%から63%に上がった。

視聴者の55%が今回の討論会の結果が投票に影響を与えることはないと答えた。討論会の結果が影響を与えると答えた視聴者の過半数は、討論会の結果を受けて、ハリスのランニングメイトであるジョー・バイデン前副大統領(民主党)に投票することになるだろうと示唆した。

CNNSRSS社の共同世論調査は登録済み有権者609名を対象に、討論会直後に実施された。誤差は5.3ポイントだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 新型コロナウイルス感染拡大はアメリカと中国の争いの最前線となっている。アメリカは「中国が初期対応を誤ったために世界中に感染拡大してしまった、責任を取れ」「国際調査団に中国のウイルス学研究所の徹底調査をさせろ」ということを主張している。中国政府は新型コロナウイルスが実験室などで人の手によって造られたものではないと主張し、また、中国が発祥ということはないと反発している。

 「新型コロナウイルスはアメリカが作った、いやいや中国が作った」という討論がずっと続いている。そうした中で、アメリカのドナルド・トランプ大統領とトランプ政権は中国に対して厳しい姿勢を維持している。その急先鋒は、マイク・ポンぺオ国務長官だ。ポンぺオ国務長官は最近になってトーンダウンしたが、「新型コロナウイルス発祥は中国だという証拠はたくさんある」と述べ、世界的な感染拡大の責任は中国にあると述べてきた。

 2020年5月24日の段階で、世界中で約540万の感染者、死者数が34万3000、回復者数が約225万となっている。アメリカは感染者数約167万、死者数が約9万8000、回復者数が約45万となっている。日本は感染者数約1万6500、死者数は808、回復者数は約1万3000となっている。アメリカは感染者数、死者数で世界の約30%を占めている。新型コロナウイルスは今年初めには中国、特に武漢市で猛威を振るったが、今や欧米、特にアメリカで猛威を振るっていると言ことになる。トランプ政権の初期対応の誤りによってアメリカが最大の感染者数年者数を出すということになったという批判もなされている。そうした批判をかわすためにもトランプ政権としては、中国に責任を押しつけたいということになる。

 マイク・ポンぺオという人物が中央政界で知られるようになったのは、2010年の連邦下院議員選挙からだ。2008年にバラク・オバマが大統領選挙で勝利した直後から、アメリカでは保守派の草の根運動としてティーパーティー運動が始まった。小さな政府を標榜し、国民皆保険を目指すオバマケアに反対する、「納税者」の運動を展開した。この運動の資金源は、世界的な大富豪であるコーク兄弟であった。ポンぺオはティーパーティー運動に参加し、2010年の中間選挙で連邦下院議員に当選した。その後、4期連続で当選した。トランプ政権のマイク・ペンス副大統領とポンぺオ国務長官はそれぞれ連邦下院議員の経験があるが、その時のスポンサーだったのはコーク兄弟だった。

 2016年の大統領選挙でドナルド・トランプが勝利を収めると、アメリカの情報・諜報機関CIAの長官に就任した。2018年にレックス・ティラーソンがトランプ大統領のツイッターでの書き込みによって解任された後、ポンぺオが国務長官に就任した。

 マイク・ポンぺオという人物はコーク兄弟の後ろ盾を受けて、中央政界に進出し、CIA長官を務め、現在は最重要閣僚である国務長官を務めている。ポンぺオはコーク兄弟の代理人だ、という記事もあったが、現状を見ればそれはとても甘い見方であったことが分かる。コーク兄弟をはじめとするリバータリアンは対外戦争に反対だ。しかし、ポンぺオの言動や行動はとても危なっかしい。中国やロシアとはいつでもやってやるぞという姿勢だし、トランプ大統領が始めた北朝鮮との直接交渉にしても、北朝鮮側から「ポンぺオ国務長官を外して欲しい」という要請をされてしまうほどだ。

 ポンぺオは複数の勢力とつながり、利用してここまでやってきたと考えることが妥当だろう。それはマイク・ペンス副大統領にも言えることだ。その勢力の中には、アメリカを対外戦争に引きずり込もうという勢力もある。表面ではネオコンや人道的介入派として出ている勢力であるが、その裏がどうなっているのか分からないが、かなり恐ろしい勢力がいるのではないかと私は考えている。トランプ政権は反中央政府、反ワシントン既成政治を旗印に誕生したが、更に一回り大きな勢力に利用されているのではないかと私は危惧を持っている。

(貼り付けはじめ)

●「沈黙のバットウーマン 武漢の研究者、コロナで先駆  米中対立の火種に」

2020/5/20   日経新聞   北京=多部田俊輔、編集委員 滝順一

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59338010Q0A520C2EA1000/

 中国の湖北省武漢市で世界で初めて感染が確認された新型コロナウイルスの発生源を巡って、米中の対立が止まらない。武漢ウイルス研究所が発生源だと主張する米国側に対し、中国側は「捏造(ねつぞう)」だと否定する。真相のカギを握るとみられているのが同研究所の石正麗氏だ。コウモリ由来のウイルス研究者の石氏は「バットウーマン(コウモリ女)」の異名も持つが、このところ動静が途絶えている。

「石氏が家族とともに1千ページに及ぶ秘密文書を持って欧州に逃亡した」。5月はじめ、武漢研究所「発生源」説がくすぶる中、こんな情報が米欧を駆け巡った。すぐに中国メディアは石氏が中国のSNS(交流サイト)に「国を裏切り亡命したとのデマはありえない」と投稿したと報じ、亡命説を否定。しかし石氏は表に出てこない。

「新型コロナウイルスは自然が人類に与えた懲罰であり、自分の命をかけて研究所か

らの流出はない」。石氏は2月初旬に中国のSNSで友人らにこのような趣旨の投稿をしてから、新型コロナの発生源に関して発言を控えている。

石氏は1964年生まれ。大学で遺伝学を学んだ後、政府直属の最高研究機関「中国科学院」傘下の武漢ウイルス研究所に入った。医学などの研究で名門とされる仏モンペリエ大学で2000年にウイルス学の博士号を取得し、武漢に戻った。

石氏が有名になったのは0203年に中国で流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の発生源究明での実績だ。各地の洞窟で野生コウモリを捕まえて体液を分析し、SARSウイルスの起源がコウモリだと証明した。13年に英科学誌ネイチャーで発表し、「バットウーマン」と呼ばれるきっかけにもなった。

15年には今回の新型コロナを予言したともいえる研究成果も、米ノースカロライナ大学のラルフ・バリク教授と共同で公表していた。バリク氏はコロナウイルス研究の第一人者。2人はコウモリのコロナウイルスが変異すると、SARSウイルスの治療薬が効かない新種のウイルスが生まれる恐れがあると、ネイチャー姉妹誌で公表した。

さらに石氏らの研究チームは1月に湖北省政府から新型コロナの研究を命じられると、22月初旬にいち早く、新型コロナもコウモリ由来の可能性が高いと発表していた。

一方、トランプ米大統領やポンペオ米国務長官は武漢ウイルス研究所が新型コロナの発生源だと主張する。最も危険性の高い病原体を扱える「バイオセーフティーレベル(BSL―4」の施設で、最初に感染者が出たとされる野生動物を売買する市場からも約30キロしか離れていない。

米ワシントン・ポストによると、18年に同研究所を視察した米当局者が「コロナウイルスの研究をしているが安全対策が不十分」と警告する公電を米国へ送っていた。ポンペオ氏は研究所の立ち入り検査を求めている。

ただウイルスが意図的に研究所から漏れたとみる専門家は少ない。米メディアによると、カリフォルニア大学の感染症専門家のジョナ・マゼット氏は新型コロナの感染が始まる前に「石氏の研究所には新型コロナウイルスはなかった」と指摘。武漢研究所が発生源だとする米政権の主張に反論する。実情を知る石氏は口を閉ざしたままだ。

大統領選を控えるトランプ政権は「中国たたき」が得票につながるとみて強硬姿勢に傾く。習近平(シー・ジンピン)指導部はポンペオ氏を標的に「人類共通の敵」などと対米批判を繰り返す一方、国内では研究者を含めた情報統制を強める。

「共産党の指導が厳しく愛国的なテーマを掲げないと研究が難しくなっている」。中国の有力大学で教える外国人専門家は漏らす。関係者によると、新型コロナも研究者らが自由に発信することは許されない。コロナ禍の克服には変異を繰り返しながら感染を広げるウイルスの正体を突き止めることが必要だ。中国の情報開示が問われている。

(北京=多部田俊輔、編集委員 滝順一)

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●「ポンペオ氏、新型コロナ発生源は「不明」 武漢研究所説から転換」

2020.05.18 Mon posted at 10:15 JST CNN

https://www.cnn.co.jp/usa/35153896.html

ワシントン(CNN) ポンペオ米国務長官は新型コロナウイルスが中国・武漢のウイルス研究所から発生したとの説から方向転換し、発生源は不明との立場を示した。米ニュースサイト、ブライトバートが16日に配信したインタビューの中で語った。

ポンペオ氏はこの中で、新型ウイルスの発生源を特定するため、支援チームの派遣を繰り返し要請してきたと述べた。

同氏はまた、ワクチン開発に取り組む研究者らにとって、発生源を知ることは重要な「鍵」になると強調。そのうえで中国の対応は透明性を欠くと改めて非難し、米国による制裁の可能性に言及した。

ただし制裁の具体的な手段については、トランプ大統領が十分な説明を受けたうえで決断を下すことを望むと述べた。

ポンペオ氏はこれまで、新型ウイルスが武漢のウイルス研究所から発生したと主張。今月初めのインタビューでは「大量の証拠」があると述べたが、その後「確信はない」と軌道修正していた。

トランプ氏も同様に「証拠を見たことがある」と主張したが、研究者らや国際情報共有網からは「可能性は極めて低い」との見解が出され、米情報機関は両方の可能性を検討中と述べていた。

中国政府は研究所説を、トランプ氏の再選に向けた中傷作戦だと批判している。

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ポンぺオ国務長官が険悪な雰囲気の記者会見の中で武漢の実験室をめぐる主張を擁護した(Pompeo defends Wuhan lab claims in combative press conference

ロウラ・ケリー筆

2020年5月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/496356-pompeo-defends-wuhan-lab-claims-in-combative-press-conference

マイク・ポンぺオ国務長官は水曜日、記者たちと言い争いを行った。中国のある実験室から新型コロナウイルスの感染拡大が始まったのかどうかという疑問についてやり合った。こうした主張は情報諜報機関の幹部や衛生の専門家たちから否定されている。

ポンぺオはBBCの記者バーバラ・プレット・アッシャーからのウイルスの起源に関する諜報について質問に対して次のように答えた。「バーバラ、バーバラ、いったん落ち着きましょう。」

Your efforts to try and find — just to spend your whole life trying to drive a little wedge between senior American officials … it's just false,”

ポンぺオは、中国の武漢ウイルス学研究所でウイルスに接したことで新型コロナウイルスの感染が始まったという理論を主張している。中国の武漢ウイルス学研究所である科学者がウイルスに接触したことが始まりという話だ。こうした主張を基にして、アメリカ政府は感染拡大に関して中国政府が国際的な調査団による中国国内の調査を許可すること、世界規模の拡大に責任を取ることを求めている。

ポンぺオは日曜日に行ったあるインタヴューの中で、「武漢という中国の都市にあるある実験室からウイルスが流出したことを示す“多くの証拠”が存在する」と述べた。しかし、この発言に対しては政府高官と衛生の専門家たちから否定されている。

米統合参謀本部議長であるマーク・ミリー大将は火曜日、ウイルスの発生は自然なものであり、実験室から偶然にもしくは意図的に流出したことを示す「決定的な証拠」は存在しないと述べた。

世界的な科学者たちの合意は、今回の新型コロナウイルスはある動物の中に発生して、人間に感染したというものだ。アメリカ国立アレルギー・感染症研究所所長でホワイトハウスの対コロナウイルスのタスクフォースの主要メンバーであるアンソニー・ファウチは、ウイルスはある実験室から流出したものという主張を否定し、この疾病は野生から出てきたと述べた。

国務省は「多くの証拠」を肯定する新しい情報を得ているのかと問われ、ポンぺオは、アメリカ政府はウイルスがある実験室から発生したのかどうか、そして証拠があるのかどうかについて関知していないと答えた。

ポンぺオ国務長官は「これらの噺はどちらも全体として首尾一貫しています」と述べた。

ポンぺオは次のように述べた。「あなたが分からないことについて私も確実なことは何も言えないのですよ。新型コロナウイルスがある実験室から発生したという主張には確実性はなく、明らかな証拠もありません。ウイルス発生の起源と証拠についてのアメリカ政府の声明はどちらも正しい可能性があります。渡したこれら2つの主張を行います。政権幹部も同様に2つの主張を行います。これらはすべて真実です」。

先週、アメリカの情報機関の幹部たちは公開声明を発表した。これは極めて珍しいことだ。この声明の中で、幹部たちは今回の新型コロナウイルスはある動物の中で発生したという世界的な科学者たちの合意に同意したが、ある実験室での事故で発生した結果であるのかどうかについて調査を継続しなければならないと主張した。

中国は昨年12月末に世界保健機関(WHO)に対して肺炎の「奇妙な」ケースの発生を報告した。そして同時に、武漢市の海鮮市場での販売員と消費者のクラスターが発生したとも報告した。

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中国との言論戦の中で、ポンぺオが先鋒として登場(Pompeo Emerges as Point Man in War of Words With China

―ポンぺオを批判する人々は、ポンぺオは感染拡大に対する世界規模での対応のために強調するよりも中国攻撃に狂奔していると述べている。ポンぺオを支持する人々は、ポンぺオは中国の責任追及をしているのだと述べている。

ロビー・グラマー筆

2020年5月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/05/01/coronavirus-trump-pandemic-pompeo-attack-china/

最近の数週間、マイク・ポンぺオ米国務長官は、トランプ政権の強硬な対中国戦略の顔として出てきている。コロナウイルス感染拡大に関して中国非難のメッセージの拡散のために保守系メディアに依存している。多くのフォックスニュースや保守系のラジオのトークショーで中国叩きが行われており、ポンぺオはそれらに依存している。

ポンぺオはダン・“オックス”・オクスナーに対して「私たちの姿勢は明確であり、それは中国共産党は特別の責任を負っているというものだ」と述べた。オクスナーは保守系のラジオのトークショーの司会者であり、ポンぺオは木曜日だけでこうしたラジオのトークショー4番組に出演した。その中にオクスナーの番組も含まれていた。「このウイルスは武漢で発生しました。中国は世界とデータ、情報を共有する特別な責任を持っています。そして、透明性を確保する必要があります」。

外交分野以外の人々と元外交官たちにとっては、ポンぺオ国務長官のメディアを使った大規模な宣伝によって保守派の人気を高めている。これはドナルド・トランプ大統領の支持基盤を活性化するように見える。感染拡大によるロックダウンによって世界経済は減退し、アメリカ国内の失業数は急増している。このような状態の中で、保守派の活性化は2020年の選挙にとって重要である。批判者たちは、ポンぺオ国務長官が感染拡大に対する世界的な反応を協調させることではなく、政権による攻撃の急先鋒になっていると述べている。ポンぺオ国務長官の支持者たちはこうした批判を党派性の強い情報操作(spin)に過ぎないとしている。

中国はポンぺオ国務長官に反撃をしている。先週、中国は国営メディアを使って、通常では考えられない規模で個人攻撃を行った。この時、中国政府は、「中国がウイルスの感染拡大の初期段階で対応を誤り、世界規模で感染が拡大した」というアメリカからの批判をかわそうと躍起になっていた。中国共産党機関紙『人民日報』紙のある論説には次のような一節があった。「ポンぺオのような政治家の頭の中には、偏見、憎悪、個人の利益しか存在しない。ポンぺオの発言や行動は人々を困惑させている。そのようないじめと荒唐無稽な発言で“アメリカを再び偉大にできる”などと彼は考えているのか、と」。

今年の4月だけで、ポンぺオ国務長官は90以上のアメリカ国内と外国の報道機関のインタヴューに応じた。これは感染拡大初期と比べると大きな変化である。4月、ポンぺオ国務長官は米国務省内でほぼ定期的な記者会見も開いていた。様々な報道機関からの記者たちが彼に質問をすることができる機会だ。加えて、国務省は、感染拡大やその他の問題についての国務省の対応について、国務省の幹部職員たちにほぼ毎日電話でのブリーフィングを行ってきた。

外交官出身者の中には、ポンぺオ国務長官が特定の政治的志向を持つ選ばれた国内の聴衆に集中し過ぎていると批判している。ポンぺオ国務長官が一対一のインタヴューやトークショーに出演しているが、その多くは保守系メディアである。国務省は一般の人々にも利用できるように、ポンぺオと報道機関のインタヴューの文字起こしを発表している。複数の元外交官たちは本誌の取材に対して、ポンぺオ国務長官がトランプを擁護しているメディアにこだわっているのは、こうしたメディアにばかり出ることで、厳しい質問を受けることがないからだ。また、外国メディアからのインタヴュー受ける代わりに保守系メディアのインタヴューを受けている。外国メディアの取材に応じることは、アメリカの政策について諸外国の人々により良く説明する機会となるがそれを放棄している。

職業外交官出身で、バラク・オバマ大統領時代のホワイトハウスで国際社会関与担当の部長を務めたブレット。ブラエンは次のように述べた。「ポンぺオ国務長官は、トランプ政権が採用している政策の理由について世界とコミュニケーションするためにほとんど時間を使っていません。彼は、国務長官の役割をより党派性の強いものにしてしまいました。歴史的に見て、国務長官は争いから超然としていようとしてきました。私が現在の政権の政策に同意できないにしても、国務長官の仕事は、世界各国のメディアに対して、アメリカ政府の政策の正当性を説明することであり、そのために最前線に立つことなのです」。

アメリカ国務省は、感染拡大によって民間航空のキャンセルが相次ぎ、渡航禁止などを実施する外国が増えている中で、海外で足止め状態になっている数万単位のアメリカ国民の帰国というこれまでにない仕事を実行しなければならなくなっている。そうした中で、ポンぺオ国務長官は国内のメディアにばかり登場しているのはこれらの仕事の実行に役立たないと指摘している人々もいる。世界各国に置かれているアメリカ大使館と領事館は今年1月以降、これまでに7万人以上のアメリカ国民の帰国を援助している。国務省の幹部たちは、在外公館は民間航空とチャーター機を使ってアメリカ国民を帰国させていると述べている。

ポンぺオ国務長官がメディアに頻繁に登場しているのは、トランプ政権のより大枠の戦略である、中国が感染拡大への対応を誤ったのかどうかについての独立機関による調査を求めることとウイルスの起源について疑問が多く出ている中で国際機関による調査官たちに中国国内のウイルス研究施設の調査を許可するように中国政府に圧力をかけること、この2点に沿った動きなのである。トランプ政権はまた、世界保健機関(World Health OrganizationWHO)の世界的な感染拡大への対応における役割について非難している。WHOは中国からの圧力に屈ししていると攻撃している。トランプ政権を批判している人々は、政権が感染拡大に対する対応が遅れたことを隠すために批判を行っていると述べている。アメリカ国内では110万以上の感染者数を確認し、死者は約6万5000名に達している。

トランプ政権は、世界保健機関が中国の圧力に屈しているかを調査するために、しばらくの間予算供与を停止すると発表した。

民主党所属の連邦議員たちはこのような手段を批判している。彼らは、確かにWHOは失敗をしたが、アメリカからの支援を必要としている、と発言した。連邦上院少数派(民主党)院内総務チャック・シューマー連邦上院議員、連邦上院外交委員会で民主党側の最上位のメンバーであるボブ・メレンデス連邦上院議員、その他の連邦上院議員たちは4月20日付で書簡をポンぺオ国務長官に送付した。その中で次のように述べている。「感染拡大への対応と封じ込めに関しては複雑さを増している。そうした中で、国際的な対応を強調させるためには更なるアメリカの指導色が必要となる。WHOにおける中国の影響力の増大に対する解決策は、アメリカの指導力と関与であって、アメリカが不在となることではない」。

水曜日の記者会見でポンぺオは次のように述べた。「アメリカは世界保健機関に最大の資金提供を行っています。世界保健機関は目的達成に失敗しました。きちんとした結果を得るためにアメリカの納税者のお金をどのように使うべきかを把握するために調査を行っています。私たちは“健康(保健、health)”を名前につけているある故草木機関が実際に私たちが必要としている結果をもたらしていると言いつくろいながら、ウソをつくようなことをすべきではないのです」。

※ロビー・グラマー:『フォーリン・ポリシー』誌の外交と国家安全保障担当記者

(貼り付け終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 ロイター通信がドナルド・トランプ大統領と民主党の大統領選挙候補者に内定しているジョー・バイデン前副大統領に関する世論調査を実施した。五大湖周辺の「ラスト・ベルト(Rust Belt)」に属するミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルヴァニア州での世論調査を実施した。2016年の米大統領選挙ではこの3つの州で、トランプ大統領が予想外の勝利を収め、大統領に当選した。ラスト・ベルトは伝統的に工業地帯で、労働組合が強く、民主党の金城湯池であった。今回の大統領選挙でもこの3つの州は激戦州であり、民主党は奪還を目論んでいる。

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ラスト・ベルトの地図

 今回の世論調査の結果は、3つの州ともバイデンがトランプをリードしているというものだった。しかし、その差は小さいものであり、接戦となっている。しかし、問題は、トランプ大統領は新型コロナウイルスとの戦いの最高司令官、「戦時大統領」であり、二期目を目指す現職なので、バイデンをリードしていなければならない立場にある。トランプ大統領は大美厳しい立場にある。

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 大統領選挙は選挙人の総取りであり、ペンシルヴァニア州には20名、ミシガン州には16名、ウィスコンシン州には10名が配分されている。合計すると46名だ。前回の大統領選挙ではトランプ大統領は306名、ヒラリー・クリントンが232名という結果だった。トランプ大統領がこの3つの州を失うということになれば選挙人の過半数270名に到達できないということになる。

 有権者の最大の関心事は新型コロナウイルス対策であり、次に経済問題、更には医療制度と続く。トランプ大統領としては、新型コロナウイルス感染拡大を止め、経済活動を再開させて、支持を取り戻さねばならない。しかし、その道筋はまだついていない。そもそもトランプ大統領はマイク・ペンス副大統領を責任者にしたはずだが、毎日の記者会見に臨むことになって、ペンスに責任転嫁したのに、それがうまくいっていない。

 ペンスもマイク・ポンぺオ国務長官もトランプ大統領の陰に隠れ目立たないようにしているが、時にメディアで話題になるのは対中強硬姿勢だ。トランプを隠れ蓑、盾(たて)として使いながらやりたい放題という感じだ。そもそもこの2人はジョージ・W・ブッシュ政権の副大統領だったディック・チェイニーに連なる人物たちで、一部では「まるでチェイニー政権ではないか」とまで言われている。

 バイデンは誰にでも良い顔をするし、何よりも民主党のグローバリスト系だ。連邦上院議員だった2003年にイラク戦争開戦に賛成票を投じたように、「アメリカの世界支配」は正当だと考える人物だ。トランプ政権内に、イラク戦争を副大統領として主導したチェイニー系がおり、民主党にはバイデンがいる。これではトランプ大統領は四面楚歌(しめんそか)の状態で、味方は娘のイヴァンカとイヴァンカの夫ジャレッド・クシャナーくらいということになる。

 トランプ大統領はアイソレーショニズム(国内問題解決優先主義)、「アメリカ・ファースト」を訴えて当選した。だからこの4年間、アメリカは大きな戦争をしなくて済んだ。しかし、それでは困る勢力がいる。それが共和党系ならばネオコン(Neoconservatives)、民主党系ならばヒラリーたちの介入主義派(Interventionism)である。軍産複合体とも呼ばれる人たちだ。民主党系は、昔はリベラル・ホークとも呼ばれていた。

 バラク・オバマ前大統領がいまだにバイデン支持を表明していない、という奇妙な事実も考え合わせると、トランプ大統領の再選を阻もうとしている勢力は民主、共和両党に幅広く存在しているのではないかと考えられる。

(貼り付けはじめ)

世論調査:バイデンは重要な3つのラスト・ベルトの州でリード(Biden leads in three crucial Rust Belt states: Poll

ザック・バドリック筆

2020年4月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign-polls/494241-biden-leads-in-three-crucial-midwestern-states-poll

水曜日に発表されたロイター通信の世論調査によると、3つの「ラスト・ベルト」に属する3つの州でジョー・バイデン前副大統領がトランプ大統領をリードしていることが明らかになった。これらの3つの州は2016年のトランプ大統領の勝利にとって重要な役割を果たした。

ロイター通信・イプソス社の世論調査の結果では、ミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルヴァニア州の登録済み有権者の45%がバイデン支持と答え、39%がトランプ支持と答えた。

各州の結果を見ると、バイデンはトランプ大統領に対して、ウィスコンシン州で3ポイント、ペンシルヴァニア州で6ポイント、ミシガン州で8ポイントの差をつけてリードしている。

別のロイター通信・イプソス社の全国規模の世論調査の結果によれば、バイデンはトランプ大統領に対して8ポイントの差をつけてリードしている。

今回の世論調査の結果では、3つ全ての州でトランプ大統領の支持率は不支持率を下回った。それでも支持率と不支持率の差は全国規模での差に比べて小さいものであった。ウィスコンシン州の登録済み有権者の47%がトランプ大統領を支持し、53%が不支持と答えた。一方、ペンシルヴァニア州では支持率は48%、不支持率は52%だった。ミシガン州では、支持率は44%、不支持率は56%だった。

3つの州全ての有権者の最大の懸念としてコロナウイルスの感染拡大を挙げた。3つの州の有権者の48%がコロナウイルスの感染拡大は自分たちの共同体において最重要の問題だと答えた。15%が経済を、12%が医療制度を、2%が移民制度を最重要の問題に挙げた。

トランプ大統領とバイデンは、誰がウイルスの感染拡大と経済後退に大勝するのに最適かという設問では接戦を演じている。有権者の50%がバイデンと答え、47%がこの仕事にはトランプ大統領が最適だと答えた。

3つの州の有権者の約47%はトランプ大統領の感染拡大への対処を支持すると答えた。一方で、67%はそれぞれが住む州の知事たちの対処を支持すると答えた。

イプソス社は、ミシガン州の登録済み有権者612名、ペンシルヴァニア州の登録済み有権者578名、ウィスコンシン州の登録済み有権者645名を対象に、4月15日から20日かけて世論調査を実施した。この世論調査の全体の結果の誤差は3ポイントで、各州の世論調査の結果では誤差は5ポイントだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 

 トランプ大統領はアメリカとメキシコの国境に壁を建設することを諦めていません。連邦上院では共和党が、連邦下院では民主党がそれぞれ過半数を握っている状況で、壁建設の予算を含めるつなぎ予算案を連邦上院が可決し、壁建設の予算を含めないつなぎ予算案を連邦下院がそれぞれ可決し、お互いに送り合っていますが、どちらも否決ということで、結果として一部政府機能が閉鎖となって2週間以上が経ちました。

 

 トランプ政権では、マイク・ペンス副大統領と、連邦下院議長ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)と連邦上院少数派院内総務チャールズ・シューマー連邦上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)の補佐官たちが、連日交渉を持ち、落としどころを探っているようです。

 

 トランプ大統領は週末、大統領の公式別荘であるキャンプ・デイヴィッドで終日補佐官たちと会議を開き、その後、「コンクリート製ではなく、鋼鉄製の壁を建設する」という発表を行いました。「芸術的な外見で、より強靭な壁」を鋼鉄で作る、ということだそうです。

 

 民主党は壁建設そのものに反対しています。しかし、国境警備の装備や技術の向上には参政しています。トランプ大統領は壁建設のために50億ドルの予算を要求し、民主党側は壁建設には予算を投下せず、国境警備の装備や技術向上のために13億ドルの予算を計上しています。しかし、どちらも壁建設の立場を譲らず、膠着状態に陥り、一部政府機能の閉鎖が継続しています。

 

 アメリカ南部の国境は砂漠地帯が続き、そこには一部にフェンスや壁が既に建設されています。しかし、そのような人工物を乗りこえて不法移民が押し寄せているのが現状です。不法移民は、メキシコのカルテル(マフィア)にお金を払って入国の手引きをしてもらいます。多くの場合は既にアメリカにいる家族や親族がカルテルにお金を払います。その額は日本円で数十万円ですが、貧しい国の貧しい人々からしてみれば年間収入をはるかに超える大きな金額です。

 

 今資金が全額払えない場合には、人身売買の対象となり、男性は危険で厳しい仕事、女性は売春をさせられることになります。犯罪に加担させられることもあります。そうして、カルテルは人々を食いものにして肥え太っていきます。麻薬と人間で膨大なお金を稼ぎだしています。麻薬と安くて使い捨て出来る労働力の需要がアメリカ国内である限り、この動きは止められません。どんなに壁を作って、その壁を高くしようが、この流れを止めることはできません。その規模やスピードを小さく遅くすることはできるでしょうが。

 

 どんなに強固な壁が建設されてもカルテルはその裏をかく、壁自体に隙間を見つける、国境警備の公務員たちに賄賂を渡して見逃してもらう、などの方法を駆使して麻薬と人間をアメリカに送り続けるでしょう。壁が出来ればそれらにかかるコストが大きくなったということで、彼らが吹っ掛ける金額が大きくなるだけのことでしょう。

 

 アメリカの肉体労働の現場、危険な職場、きつい農園での作業は不法移民がいなければ成り立たないことになっています。そこを無視してただ壁だけを作って、しかも完全に流れを止めることが出来ないとなると、壁は無駄ということになります。

 

 この不法移民の問題に関しては、アメリカ国民の意識の変化というか、未来に対する怯えというものが根源にあるように思います。アメリカが勢いがあり、「帝国」として余裕がある頃は良かったのですが、アメリカの衰退というようなことが言われ出してから、アメリカの没落が、ローマ帝国と同じように、外国人の流入によって引き起こされるという考えが強まったように思います。帝国としての栄耀栄華が終わろうとしていることの怯え、そこから生まれる怒りがこのような矛盾に満ちた状況(不法移民には反対、しかし使い捨ての安い労働力として必要不可欠)を生み出している、ということになります。

 

 トランプ大統領と議会民主党執行部がどのような形で妥協するのか、ということになりますが、トランプ大統領は突っぱねるだけ突っぱねて、その間に相手との妥協点を探り、それと自分の要求の距離感を測り、まぁいいかというところが見つかったら、エイヤ、とあっさり自分の要求を引っ込めるということが出来る人です。その点は融通無碍で、今、強気の態度を示しながら、妥協点を見つけ出そうとしています。民主党執行部も何かの妥協や理屈を見つけ出そうとしています。

 

 日本では国会のねじれ状態ということについて批判も多いですが、確かに時間がかかることはマイナスかもしれませんが、アメリカでもこのようなことが起きており、しかも最後まで話し合い妥協点を探るという努力が続けられているということは評価されねばなりません。日本でもねじれ状態のある種評価できる面に光が当たって欲しいところです。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプ大統領は国境にコンクリート製の壁ではなく、鋼鉄製の壁を建設する計画を推進(Trump pushing for steel barrier instead of concrete wall at border

 

ブレット・サミュエルズ筆

2019年1月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/424080-trump-says-hes-pushing-for-steel-barrier-instead-of-concrete-wall-at

 

トランプ大統領は日曜日、トランプ政権はアメリカ南部の国境に沿って、コンクリート製ではなく鋼鉄製の壁(wall)を建設する計画を推進すると述べた。壁建設のために予算を巡る議論が平行線をたどり、そのために一部政府機能が閉鎖されているがこれに対しての、「素晴らしい解決策」だとトランプ大統領は語った。

 

トランプ大統領は土曜日を丸一日使い、キャンプ・デイヴィッド(米大統領の別荘施設)において補佐官たちと会議を行った。同日、マイク・ペンス副大統領は連邦議会民主党執行部の補佐官たちとの会談を行った。トランプ大統領の鋼鉄製の壁導入宣言は、これらの会談の後に発表された。トランプ大統領は、壁の材質の変更によって民主党側を宥めることが出来ると示唆したが、民主党は壁そのものに、効果の面から反対している。

 

トランプ大統領は、キャンプ・デイヴィッドから帰還してすぐに記者団に対して次ように述べた。「私たちは数多くの人々と連絡を取り、連携している。私はそうした人々に、私たちは鋼鉄製の壁を建設すると伝えた。鋼鉄製だ。壁は鋼鉄で作られる。外見上そこまで目立たないもので、より強力なものだ」。

 

トランプ大統領は、鋼鉄製にすることで、「より大きな強靭さを備える」ことになると述べ、民主党はコンクリート製の壁だから反対しているのだと示唆した。

 

トランプ大統領は「民主党側はコンクリート製が気に入らないのだ。だから、私たちは鋼鉄製の壁にすると言うつもりだ」と述べた。そして、鋼鉄製の壁は「美しく」、コンクリート製よりも「強靭だ」とも述べた。

 

トランプ大統領は日曜日のできるだけ早い時間にユナイテッド・ステイツ・スティール社をはじめとする各鉄鋼会社の経営幹部たちに連絡を取り、デザインについて研究するように連絡するつもりだと述べた。

 

日曜日の夕方、トランプ大統領はツイッター上で、彼の計画は鋼鉄製の壁に集中することになると述べた。ペンス副大統領とナンシー・ペロシ連邦下院議長(カリフォルニア州選出、民主党)と連邦上院少数党院内総務のチャールズ・シューマー(ニューヨーク州選出、民主党)の代理人たちとの間で「国境警備に関しての詳細な点」について「生産的な会談」が行われたとトランプ大統領は語った。

 

この会談について詳細を知っているある民主党関係者はトランプ大統領の会談に関する説明内容を否定し、「進展は何もなかった」と述べている。ホワイトハウスは、壁建設による予算増加を相殺するために国土安全保障省関係の予算を削減するということは提案していない。また、この関係者は、先週連邦下院で可決された、政府機能再開のための複数の予算と法律をトランプ大統領が支持することはない、とペンス副大統領が会談の中で示唆したとも述べた。

 

この関係者は、日曜日夕方にペンス副大統領と議会民主党の代理人たちとの会談が再び行われる予定はないとも語った。

 

ここ数週間、トランプ大統領はアメリカ・メキシコ国境に壁を建設する希望を巡り、言葉遣いを変化させてきた。トランプ大統領は複数回にわたり、構造物を「囲い(fencing)」と呼ぶことになり、「芸術的なデザイン」となるだろうと述べた。

 

民主党側は、壁建設に反対しているのは、道徳と効果の面が理由であるとこれまで述べてきた。連邦議会民主党は、壁建設を行っても不法移民の抑制にはつながらない、予算は国境警備の技術の発展に投下されるべきだと主張してきている。

 

トランプ大統領は壁建設に50億ドルの予算を要求し、民主党側はより国境警備の施策に対して13億ドルの予算を投じるが、壁建設には予算を投下しないと主張している。

 

トランプ大統領と連邦議会民主党側との間で合意がなされないことで、一部の政府機能が閉鎖され、この事態が16日間続き、これからも続くことになる。

 

ペンス副大統領は土曜日に続いて日曜日にも連邦議会民主党の代理人たちと国境警備について会談を持った。トランプ大統領は、今週ずっと「真剣な話し合い」が続けられることになると述べた。

 

トランプ大統領は日曜日にも、議会の承認を得ないで壁建設を進めるために国家非常事態宣言を発表することを考慮中だと繰り返した。この件について、民主、共和両党の連邦議員たちは批判している。民主党側はその宣言の合法性について疑義を呈している。

 

トランプ大統領は、国境警備に関する合意に含まれる可能性がある「ドリーマーズ(子供の頃に不法移民の親に連れられてアメリカにやってきた人々)」の保護に関して、冷や水を浴びせた。ドリーマーズは、若年移民に対する国外強制退去の延期措置(DACA)によって守られている。トランプ大統領は、DACAを撤回した。DACAによってアメリカに不法に連れられてきた子供たちが、強制送還の恐怖なしに、生活し、働くことができる。

 

トランプ大統領は、民主党側との合意を求める前に、DACAの合法性について連邦最高裁が最終的な判断を下すことを待ちたいと述べた。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 アメリカの歴代政権は中間選挙の後に人事異動を行うことが通例となっています。ドナルド・トランプ大統領も例外ではなく、ジェフ・セッションズ司法長官を解任し、国家安全保障問題担当次席大統領補佐官であったミラ・リカーデルを異動させる決定を行いました。

 

 また、トランプ大統領はジョン・ケリー大統領首席補佐官が年末で退任すると正式に発表しました。「2020年まではその職にとどまる」とホワイトハウスも発表していましたが、交代ということになりました。これによって、カースティン・ニールセン国土安全保障長官の交代も近いのではないかと言われています。ニールセンはケリーの側近であり、その後押しで国土安全保障長官に就任したので、ケリーがいなくなれば後ろ盾がいなくなるということになります。

 

 ジョン・ケリーの後任には、現在、マイク・ペンス副大統領の首席補佐官を務めているニック・エイアーズが就任すると噂されています。

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ニック・エイアーズとトランプ大統領
 

ニック・エイアーズはジョージア州を中心に活動してきた人物です。2003年から2011年までジョージア州知事を務め、現在はトランプ政権で農務長官を務めているソニー・パーデューの州知事選挙の責任者を務めました。エイアーズの妻はパーデューの親族であり、エイアーズはジョージア州知事選挙出馬に興味を持っているのではないかと報じられたこともあります。

 

2007年から2010年にかけては、共和党所属州知事会の事務局長を務めることで、中央政界への足掛かりを掴みました。そして、2010年から2011年にかけて共和党全国委員会で委員長を務めたラインス・プリーバス(トランプ政権で最初に大統領首席補佐官を務めた)を補佐しました。この時は、エイアーズも委員長候補として名前が挙がりましたが、それを断って、補佐役に回ったということです。20代で共和党全国委員会委員長の候補として名前が出るというのは、相当な力量がある人物ということになります。その後はコンサルタントに転じました。2011年の米大統領選挙ではティム・ポーレンティー陣営の幹部を務め、それ以降も各州の知事選挙で助言を行いました。

 

 2016年に当時インディアナ州知事を務めていたマイク・ペンスの再選のために選挙陣営に参加し、そこからペンスとの関係が出来ました。そして、2016年の大統領選挙では、ペンスが副大統領候補に選ばれることに尽力しました。そして、2017年1月からはペンス副大統領の首席補佐官を務めています。

 

 エイアーズは、36歳の若さで、大統領首席補佐官の候補者として名前が挙がるほどの人物です。20代で州知事選挙のスタッフから政治の世界に入り、中央政界での手掛かりを掴み、インディアナ州知事だったマイク・ペンスを副大統領に押し上げた手腕を持っています。

 

 NBCが報じるところによると、エイアーズと妻は6歳になる三つ子を育てているのだそうですが、ジョージア州に帰りたいと考えており、トランプ大統領からの首席補佐官就任に難色を示しているとも言われています。しかし、エイアーズにとっては大統領首席補佐官に就任し、再選に貢献するということになれば、これ以上の箔はなく、その後はジョージア州知事でも連邦議員でも、転身の成功可能性は高まることになるでしょう。

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マイク・ペンスと家族の前で宣誓するエイアーズ
 

 エイアーズが大統領首席補佐官に就任ということになると、マイク・ペンス副大統領の影響力が大きくなることも考えられます。しかし、トランプの周囲には娘であるイヴァンカと義理の息子ジャレッド・クシュナーがおり、この2人との関係が悪くなれば、エイアーズが切られるということになり、最悪の場合には、ペンスが途中で交代ということにすら発展しかねません。ですから、エイアーズとしては、大統領選挙の再選のために自分は首席補佐官になると割り切って、他のことにはあまり首を突っ込まないという態度を取るようになるかもしれません。

 

 民主党は中間選挙で連邦下院では過半数を奪還しましたが、選挙人制度である大統領選挙でこのような逆転が出来るのかどうか、今のままではかなり厳しいということになるでしょう。民主党では大統領選挙に向けて多くの名前が出ては消えてという現状で、有力な候補者が出て来ていません。そうした中で、再選に向けて動き出せるということは、やはり現職にとっては強みということになります。

 

(貼り付けはじめ)

 

ジョン・ケリーは今年末までにホワイトハウスを離れる(John Kelly to leave White House at year's end

 

ジョーダン・ファビアン、タル・アクセルロッド筆

2018年12月8日

『ザ・ヒル』誌

 

トランプ大統領は土曜日、ジョン・ケリー大統領首席補佐官が年末で退任すると発表した。11月の中間選挙での共和党の敗北以降、最新のそして最も高位の人事異動となる。

 

ケリーは2017年7月、混乱していたホワイトハウス内部に秩序を確立するためにトランプ大統領から指名を受けた。しかし、両社の関係は徐々に悪化していった。退役海兵隊大将であるケリーが大統領の行動を制限しようとすることに、トランプ大統領が反発するようになった。

 

土曜日、トランプ大統領はホワイトハウスの記者団に対して、「1日か2日か」の間に、代理という形でケリーの後任を選ぶことになるだろうと述べた。

 

トランプ大統領はフィラデルフィアで行われる陸軍士官学校対海軍兵学校のアメリカンフットボールの試合に向かう前に、ホワイトハウスの南庭で記者団に対して次のように語った。「ジョン・ケリーは職を離れることになる。引退、いや、引退という言葉を使えるのかどうか分からないな。それはともかく、彼は偉大な人物だ。ジョン・ケリーは今年いっぱいで退任することになる」。

 

加えて、トランプは「彼の奉仕と献身に大変感謝している」とも述べた。

 

ペンス副大統領の首席補佐官を務める共和党の戦略専門家であるニック・エイアーズは、トランプの最側近としてケリーの後任として選ばれる最有力候補だと考えられている。

 

エイアーズは36歳、政治に関する豊富な経験を有している。トランプ大統領に近い人々は2020年の米大統領選挙で再選に向けて動き始めねばならないと考えている。この時期にエイアーズの起用は当然だということになる。ケリーはトランプ政権入りするまでは、約40年にわたり、海兵隊で勤務していただけで、政治に関わる仕事をやったことはなかった。

 

しかし、エイアーズはトランプの周辺人物の中でも毀誉褒貶の多い人物であり、大統領の側近の中にはエイアーズの起用に抵抗している人たちもいる。

 

人事異動はトランプ大統領にとって重要な時期に行われる。トランプ大統領は来年には連邦下院で過半数を握っている民主党と妥協しなければならず、ロシアに関する捜査も更に進むという現実に直面している。

 

トランプ大統領は金曜日、元司法長官のウィリアム・バーを司法省の支配権を再び確立するために起用すると発表した。バーの司法長官就任が連邦議会で承認されれば、バーは司法長官として、ロバート・ムラー特別検察官の捜査を指揮監督することになる。

 

歴代の大統領は中間選挙後に政権内の人事異動を行うことを伝統としてきた。しかし、今回の人事異動はトランプによるドラマの一部という色合いが強いものとなっている。

 

トランプ大統領は中間選挙の翌日にツイッターを通じてジェフ・セッションズ司法長官の解任を発表した。そして、それから数週間を経てバーの起用を発表した。中間選挙の前日、ホワイトハウスでの記者会見で、トランプ大統領はセッションズとケリーに対して信頼していると言及することを拒否した。

 

トランプ大統領はケリーについて質問された際に次のように答えた。「私に何も大きな秘密はない。これまで多くの政権が中間選挙後に人事異動を行った。多くの点において、私は自分の政権と内閣についてとても満足していると言いたい」。

 

ケリーが退任するのかどうかについて重ねて質問され、トランプ大統領は、ケリーの退任については「聞いていない」としながらも、「人々は退任するものだ」と発言した。

 

トランプ大統領は更に「首席補産官の仕事はとても消耗する仕事だ。仕事を始める時には若くても、2年も続ければ、年を取ってしまって退任するということになる」と述べた。

 

ケリーが退任するということになり、人々の関心は、カースティン・ニールセン国土安全保障長官が政権高位の人物で次に退任することになるのではないかということに集まる。ニールセンはケリーに近い人物で、トランプ大統領はニールセンの移民関係の法律の執行状況を批判している。

 

セッションズの解任後、ケリー以外にこれほど長く退任が噂された人物はいなかった。

 

ケリーの退任は間近だとする報道が相次ぎ、ホワイトハウスは今年7月、ケリーは2020年の大統領選挙まで大統領首席補佐官の職にとどまると発表していた。

 

しかし、ホワイトハウスによる発表がなされても、ケリーが首席補佐官を退任するという噂は沈静化することはなかった。

 

金曜日、複数のメディアは、ケリーは数日のうちに辞任を発表すると報じた。『ニューヨーク・タイムズ』紙は、ケリーは月曜日に上級スタッフに辞任を伝える計画だと報じた。

 

しかし、トランプ大統領は土曜日にホワイトハウスの南庭で記者団に対しての発言の中で、ケリーの退任を認めた。

 

この発表は金曜日の夜にあらかじめ決まっていた、ホワイトハウスでのケリーとトランプ大統領、大統領の側近たちとの夕食会の後でなされた。

 

ケリーとトランプ大統領との関係は、トランプ大統領が首席補佐官の希望を無視して自由に行動すると主張したことで、悪化した。トランプ大統領は友人や支援者に記録に残らない形で電話をし、2016年の大統領選挙で陣営のスタッフだった人物たちのホワイトハウス訪問を受け入れるなど自由な行動を行った。

 

複数のメディアが報じているように、ケリー大統領首席補佐官の立場は徐々に弱くなっていっていた。複数のメディアは、ケリーが陰でトランプを嘲笑し、トランプの家族と政権幹部や上級の補佐官たちと衝突していると報じてきた。

 

ジャーナリストであるボブ・ウッドワードは著作『恐怖の男』の中で、ケリーがトランプ大統領を「情緒不安定」「愚か者」と呼び、ホワイトハウスを「狂った町」と形容していると書いている。ケリーはウッドワードの著作に書かれた、大統領を愚か者と呼んでいるということを否定した。

 

しかし、ケリーは大統領首席補佐官の職にとどまり続けた。これについて、各種メディアは、トランプは四つ星の海兵隊大将を解任することで批判が起きることを憂慮して、解任できないでいると報じた。

 

ケリーの洗練されたイメージが傷つき始めたのは2017年秋からだ。この時、民主党所属のフレデリカ・ウィルソン連邦下院議員(フロリダ州選出)は、トランプ大統領のある亡くなった兵士の家族に対するコメントについて批判を行ったが、これに対して、ケリーが誤解に基づいて批判を行ったことでケリーは批判を受けた。

 

ケリーは、今年2月に更なる議論に巻き込まれた。ケリーの側近で、ホワイトハウスのスタッフだったロブ・ポーターの家庭内の暴力についてのケリーの対処について批判が起きた。

 

先月、ジョン・ケリーは国家安全保障問題担当大統領補佐官ジョン・ボルトンと移民をめぐり、怒鳴り合いになったと報じられた。これについてホワイトハウスは否定しなかった。ケリーは、大統領の無スト義理の息子であり、上級補佐官を務めるイヴァンカ・トランプとジャレッド・クシュナーとの間で摩擦を起こしていると長い間噂されてきた。

 

トランプの補佐官を務めたオマロサ・マニゴウルド・ニューマンとアンソニー・スカラムチは、大統領首席補佐官であるケリーを厳しく批判している、2人は、ケリーがスタッフの士気を下げ、スタッフに対して虐めをしていると批判している。ホワイトハウスは2人の主張を否定している。

 

次期大統領首席補佐官はホワイトハウスにおけるトランプのティームの再構築を行うという厳しい仕事に直面することになる。この仕事は、ホワイトハウスから離れる人数が多くなるという事実によって、更に難しいものとなる。

 

トランプは金曜日、フォックス・ニュースの司会者を務め、現在は国務省の首席報道官を務めるヘザー・ナウアートをニッキー・ヘイリーの後任の国連大使に起用すると発表した。

 

しかし、上級、中級、下級の政権内のポジションの多くはまだ埋まっていない。ビル・スティーヴン、ジャスティン・クラークの両政治顧問は先週、トランプ大統領の再選に向けて、ホワイトハウスを離れた。年末に向けてさらにホワイトは数はなれる人数は多くなると見込まれている。

 

トランプは歴代のホワイトハウスでは人事異動は普通のこととして行われてきたと発言しているが、歴代の各政権に比較して、人事異動の割合は記録的に高い数字となっている。

 

ブルッキングス研究所の研究員キャサリン・ダン・テンパスが調査した数字によると、ホワイトハウスの上級補佐官の62%は既に辞任し、政権内の別の仕事に就くか、政権から離れるかした、ということだ。この数字にはケリーの退任は含まれていない。

 

トランプ大統領は以前、彼の前任者であるバラク・オバマ大統領(当時)を、首席補佐官の交代が多いことで批判していた。

 

2012年1月、トランプはツイッター上で次のように書いている。「大統領に就任して3年も経っていない間に3人目の首席補佐官。バラク・オバマ大統領が彼の公約を実行できないことの理由の一つとして、首席補佐官の頻繁な交代を挙げることが出来る」。

 

ケリーの後任はトランプ大統領にとって、大統領就任3年も経たないで3人目の首席補佐官となる。ケリーは、昨年ラインス・プリーバスの後任となった。プリーバスは大統領首席補佐官として6カ月の間、ホワイトハウスの混乱は収まらなかった。

 

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