古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:マイク・ポンぺオ

 古村治彦です。

 トランプ政権の「強硬な対中姿勢」について日本でも報道されている。先月末には、マイク・ポンぺオ国務長官は、歴代政権の対中政策、「関与政策」が失敗だったと批判する演説を行った。最近になって、中国のバイトダンス社が所有するティックトック社をめぐり、アメリカ国内でのサーヴィスをマイクロソフト社に売却するか、使用禁止にするかを迫る大統領令を出した。

 「アメリカが中国と戦おうとしている」「中国が世界から孤立」している中で、中国寄りと見られる発言をすれば、親中派と罵られる時代だ。しかし、そのような単純な頭での短慮では世界の現状を把握することはできない。

 トランプ政権には2つのラインがある。対中強硬派(封じ込め政策派)と対中現実派(関与政策派)だ。トランプ大統領はこの2つを競わせて、どちらかを選ぶこともあり、また、両方の折衷案を採用する場合もある。現在は強硬姿勢を示しておく方が、選挙対策として有利ということもあり、強硬派が目立つようになっている。

 封じ込め政策派・強硬派はマイク・ペンス副大統領、マイク・ポンぺオ国務長官、ピーター・ナヴァロ国家通商会議ディレクターであり、関与政策派・現実派は、ジャレッド・クシュナー上級補佐官、スティーヴン・ミュニーシン財務長官などだ。下の報道がなされてしばらくして、アメリカが仲介して、イスラエルとアラブ所長国連邦が国交正常化に向けて動き出すという発表があった。トランプ大統領がこの発表を行う際、後ろに控えていたのは、クシュナー、ミュニーシン、ロバート・オブライエン国家安全保障問題担当大統領補佐官だった。この案件はこのラインにやらせてうまくいった、ということをトランプ政権は示している。

 単純に勇ましいことや激しいことばかりを言っているようでは、国家運営はうまくいかない。それは太平洋戦争直前の日本がまさにそうだった。陸軍を押さえようと、陸軍の言うことを聞き過ぎて、かつ、自らアホのように中国との話し合いの可能性を潰して、ひとりよがりで、「南部仏印まで出て行ってもアメリカは戦争しないよね」と思い込んで、突き進んだら、気づいた時には自分たちの行動と言葉に縛られて、滅亡への途しか残っていない、そんなことになってしまった。

 常に複数の選択肢を残し、最悪を回避する、これが今の日本でも出来ているか、今の日本の指導者にできるかと言われて、自信を持って「はい、大丈夫」と言える人は多くないだろう。

 複数のラインを用意する、これはトランプ政権だけではないが、アメリカの強さ、ということになるのだろう。

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ナヴァロ、ミュニーシンがティクトックをめぐり大統領執務室でトランプ大統領の面前で衝突した:ワシントン・ポスト紙(Navarro, Mnuchin clashed in front of Trump in Oval Office over TikTok: WaPo

J・エドワード・モレノ筆

2020年8月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/511192-navarro-mnuchin-clashed-in-front-of-trump-in-oval-office-over-tiktok

ホワイトハウスの貿易問題補佐官ピーター・ナヴァロと財務長官スティーヴン・ミュニーシンは木曜日、大統領令に署名する直前のトランプ大統領の面前で衝突した。大統領令は、ティクトックの親会社バイトダンス社に対して、45日以内にティクトックを売却するか、アメリカ国内でのてぃく特区の使用を禁止するかというものであった。

会議に出席していた補佐官たちが『ワシントン・ポスト』紙に語ったところによると、ミュニーシンはIT最大手マイクロソフト社によるティクトック買収を考慮することを求めたが、ナヴァロはティクトックのアメリカ国内での使用を完全に禁止することを求め、ミュニーシンが中国に対して宥和的過ぎると非難した。ナヴァロがトランプ大統領の面前での議論を主導した。

ワシントン・ポスト紙に語った関係者によると、2人のやりとりは「激しい戦い」だったと形容している。

トランプ大統領は、人気の高いソーシャルメディアをマイクロソフト社が買収することを支持した。

財務省は本誌からのコメントの要請に対応しなかった。

ワシントン・ポスト紙への声明の中で、ナヴァロは記事の基となったリークは「悪意に満ちて」おり、「誇張と事実ではない情報に満ちて」いると述べた。

ナヴァロはワシントン・ポスト紙への声明の中で次のように述べている。「トランプ政権の最大の強さは、大統領が決断に到達するために、強力な、多くの場合自身の考えとは反対の考えにも頼るところである。大統領の決定はアメリカ国民の最良の利益となるものだ」。

「異なる意見も受け入れるということは真実だ。だから、強いアメリカにとって、“大統領執務室で起きることは大統領執務の中にとどめられるべきだ”ということが重要なのだ。従って、私は誇張と誤った情報に満ちた、明らかに悪意に満ちたリークについてコメントしない」。

ティクトックをめぐる論争は、連邦議会とホワイトハウスが共に、ティクトックがアメリカ人ユーザーのデータを中国共産党と共有するのではないかという懸念を表明してから、激しくなっている。バイトダンス社は北京でビジネスを行っているが、ティクトックはアメリカに関するデータはアメリカ国内で保存していると主張している。

木曜日に大統領令を発する前に、トランプ大統領はてぃくっと区のアメリカ国内での使用を完全に禁止することを考えていると述べた。

木曜日の夜、トランプ大統領は大統領令を発した。その中で、アメリカ企業に対してバイトダンス社との取引を45日間禁止し、バイトダンス社とティクトックを切り離すことを求めた。

ティクトックは金曜日、トランプ大統領の大統領令を批判し、「大統領令は法律に則ったものではない」と発表した。そして、土曜日、ティクトックは来週のある時点でトランプ大統領を訴える計画であると発表した。

過去には、ミュニーシンとナヴァロはトランプ政権の貿易についての対応で意見を異にしたこともあった。

2018年、CNNは、米中貿易交渉が行われていた北京の政府庁舎の外の人々の見ている前で、ミュニーシンとナヴァロが「声を荒げ、罵り合っていた」と報じた。

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(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 今回は米中新冷戦に書いていく。

■マイク・ポンぺオのヘンリー・キッシンジャー批判

 米中関係が緊迫化している。アメリカ側の厳しい姿勢に対して中国が戸惑っているという形だ。その中心にはマイク・ポンぺオ(Mike Pompeo、1963年-)国務長官がいる。ポンぺオ国務長官は2020年7月23日にカリフォルニア州で演説し、リチャード・ニクソン大統領が行った米中国交回復以降のアメリの対中「関与政策(engagement policy)」を批判した。「関与政策」に対となる考え方は「封じ込め政策(containment policy)」であり、アメリカの外交官ジョージ・ケナン(George Kennan、1904-2005年)が書いた「X論文」がその基であり、これがアメリカの第二次世界大戦後の冷戦期の対ソ連の基本となった。
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マイク・ポンぺオ
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ジョージ・ケナン

 ポンぺオ国務長官は対中「封じ込め政策」のために、「有志連合」の形成を訴えている。有志連合(coalition of the willing)という言葉は、2003年のイラク戦争の際にも使用されたが、国際連合(United Nations、連合諸国[第二次世界大戦の戦勝国の世界管理に資する枠組み])の決議によらないで、アメリカが他国を攻撃する際に使う他国を「従わせる」ための枠組みである。アメリカは既に「国連は役立たず」と考えており、利用できる時だけ利用すればよい、という姿勢になっている。

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●「米の歴代対中政策「失敗だった」 ポンペオ国務長官」

7/24() 13:08配信

朝日新聞デジタル

https://news.yahoo.co.jp/articles/25bb2028ab3adbac4f0be59a302e68ebcf0f6500?fbclid=IwAR0wmBMsOgo9MFyGrzq1maGqg9a0_YeMzS-Sh_spMTC4KwBjHvvuLqfR_AU

 ポンペオ米国務長官は23日、対中政策について演説し、米国の歴代政権が続けてきた、一定の関係を保つことで変化を促す「関与政策」について、「失敗だった」と訴えた。中国に対抗するため、有志の民主主義国による新たな連合も提唱した。

 ポンペオ氏はカリフォルニア州のニクソン大統領図書館で演説。「無分別な関与という古いパラダイムは失敗した。我々は続けるべきではない」と訴えた。そのうえで、「ニクソン大統領の歴史的な訪中によって我々の関与戦略は始まった。その後の政策当局者は中国が繁栄すれば、自由で友好的な国になると予測したが、関与は変化をもたらさなかった」との見方を示した。

 ポンペオ氏は、閉鎖を命じた在ヒューストン中国総領事館について「スパイ活動と知的財産盗用の中継地だった」とした。

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 ポンぺオのアメリカのこれまでの対中政策批判は、リチャード・ニクソン(Richard Nixon、1913-1994年)政権下で米中国交正常化を行ったヘンリー・キッシンジャー(Henry Kissinger、1923年-)元国務長官が敷いた路線を批判したということになる。これは重大なことだ。ドナルド・トランプ(Donald Trump、1946年-)大統領は大統領選挙中の2016年6月に極秘に(と言ってもマスコミで報道されたが)ヘンリー・キッシンジャーの自宅を訪問している。この橋渡しをしたのは、トランプの娘イヴァンカ(Ivanka Trump、1981年-)の夫ジャレッド・クシュナー(Jared Kushner、1981年-)である。それ以降もたびたびホワイトハウスで会談している。この最重要人物キッシンジャーに対して、「お前のやってきたことは間違っていた、アメリカに大損害をもたらした」と、マイク・ポンぺオは国務長官として公の場で批判したことになる。
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キッシンジャー、周恩来、毛沢東
 現在のところ、トランプ大統領は表立って何かを言ってはいない。しかし、ここで分かることは、トランプ大統領は複数の路線を政権内に握っているということだ。マイク・ポンぺオをはじめとする対中強硬派と、ヘンリー・キッシンジャーを頭目とする対中関与派の2つの路線がある。トランプ大統領はそれらを使い分けようとしている。

 後100日ほどで大統領選挙投開票日を迎える。日本でも民主党の大統領選挙候補者に内定しているジョー・バイデン前副大統領がトランプ大統領を大きくリードしているという報道がなされている。このことについてはあまり言及しないが、全国規模の世論調査の数字だけを見ていては大統領選挙の実態を掴むことはできない。なぜならば、大統領選挙の結果は全国規模の総得票数で決まるのではなく、各州の得票数によって選挙人総取り制度となっているからだ。

 トランプ大統領とバイデン副大統領、どちらも支持者から簡単に支持を得やすいのは対中強硬姿勢だ。不公正な現在の貿易の状況を是正する、とか中国の人権状況を改善するとか言っていれば支持は上がる。特にトランプ大統領の支持者たちは、中国に恐れを抱いているだろうから(アメリカから覇権を奪う国として)、強硬姿勢は重要だ。

 しかし、トランプ大統領はビジネスマンだ。金儲けにならないことは無駄なことだ。ここまで大きくなった中国、世界のGDPの16%を占め、2020年の経済成長予測で世界の大国で唯一経済成長を続ける(それでも1%だが)国、そうした国と商売ができた方が良いに決まっている。だから、決定的な手切れにならないように、「保険」として、キッシンジャーを大事にしている。ポンぺオには好きなように吠えさせておけばよい、しかし、あまりにも行き過ぎたらガツンとやる、更迭もあるということになる。

■スパイ合戦はお互い様でしょう

 アメリカ政府は中国に対してテキサス州ヒューストンにある中国総領事館の閉鎖を命令した。その理由として、ポンぺオ国務長官は「スパイ活動と知的財産窃取の拠点」だったとしている。はっきり言って、スパイ合戦はお互い様だ。どこの国だってやっている。

 「なんでニューヨークとかロサンゼルスとかアメリカの大都市部の総領事館じゃなくてヒュースントンなの?」という疑問がわく。スパイ合戦というならば、イメージとしては、大都市の裏路地で情報提供者とスパイマスターが接触する、ということになる。

 テキサス州はアメリカ国内でも経済成長が著しい地域であり、人口流入が続いている。そして、中国からの投資や移民も多い。テキサス州の大都市であるヒューストン、ダラス、サンアントニオを結ぶ三角形内の人口増加は著しい。前回の大統領両選挙からの約4年間で200万人の人口増があったと報じられている。

移住してくる人の多くは教育水準の高い若者たちが多い。こうした人々の多くは民主党支持者である。テキサスは共和党の金城湯池、レッドステイトであり、レッドステイトしては最大の大統領選挙での選挙人配分数(38名)となっている。しかし、世論調査の数字を見ると、トランプ大統領とジョー・バイデン前副大統領は大接戦となっている。また、大統領選挙と同時に実施される連邦議員選挙でも民主党が議席を伸ばす可能性が高まっている。

 トランプ大統領としては何としてもテキサス州を取りたい。そのために支持者を固めたいところだ。対中強硬姿勢を見せる場所としてヒューストンは格好の場所である。ヒューストンという場所が別の意味で象徴的であるのは、この町が先ごろ亡くなったジョージ・HW・ブッシュ元大統領の町だという点だ。ちなみに息子のジョージ・W・ブッシュ(George Walker Bush、1946年-)元大統領はダラスに住んでいる。ヒューストンとダラスの間を日本の新幹線で結ぼうという計画がある。

 ジョージ・HW・ブッシュ(George Herbert Walker Bush、1924-2018年)元大統領は中国とのつながりが深い。兄や息子が中国とのビジネスをしていたということもあるし、何より、ブッシュ自身が米中国交正常化後、北京に設置された米中連絡事務所(事実上のアメリカ大使館)の初代所長として中国に滞在した。また、ブッシュ政権下で発生した天安門事件の後処理でも強硬な姿勢を取らず、ヘンリー・キッシンジャーやブレント・スコウクロフトを派遣し、関係を継続するなどしている。そのために、ブッシュ家は「親中派」だという主張もある。ブッシュ家の拠点であるヒューストンの中国総領事館に閉鎖命令が出されたことは、アメリカの対中関与政策派に対する攻撃をも意味するものだ。
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北京でのブッシュ夫妻
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●「総領事館は中国のスパイ拠点 習主席を名指しで批判―ポンペオ米国務長官」

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https://www.jiji.com/jc/article?k=2020072400203&g=int

 【ワシントン時事】ポンペオ米国務長官は23日、南部テキサス州ヒューストンの中国総領事館閉鎖命令の理由について、「スパイ活動と知的財産窃取の拠点だったからだ」と明らかにした。現在の中国を「通常の国」として扱うことはできないと述べ、対抗姿勢を鮮明にした。西部カリフォルニア州ヨーバリンダでの演説で語った。

 ポンペオ氏は演説で、歴代米政権の「関与政策」は中国に変化をもたらさず、習近平国家主席は「全体主義の本物の信奉者だ」と批判。知財窃取に加え、南シナ海への進出、人権侵害などを挙げ、「われわれが行動しなければ、中国は法の支配に基づく国際秩序を破壊する」と懸念を示した。

 その上で、国連や先進7カ国(G7)などが中国の脅威に十分に対応できていないと示唆。「新たな民主主義国の連合」による国際的な対中包囲網の形成を模索する考えを示した。詳細には触れなかったが、トランプ大統領はこれまで、G7にインドや韓国、オーストラリアなどを加えて拡大する案を表明している。

 また、ポンペオ氏は「中国共産党は、市民の正直な意見をいかなる敵よりも恐れている」と指摘。天安門事件で民主化を求めた学生リーダー、王丹氏や民主活動家の魏京生氏を演説に招待し、「国家安全維持法」施行で香港への統制を強める中国をけん制した。

 ポンペオ氏の演説に先立ち、過去1カ月でオブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)、レイ連邦捜査局(FBI)長官、バー司法長官が共産党のイデオロギーや、中国のスパイ活動などを批判する演説を行ってきた。政権として強硬姿勢を前面に押し出している。

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 中国政府は、アメリカ政府によるヒューストンの中国総領事館の閉鎖命令に対抗して、四川省成都にあるアメリカ総領事館の閉鎖を求めた。これはヒューストンの中国総領事館閉鎖命令への対抗措置だ。対抗措置の場合、受けた事象よりも過大であってもいけないし、過小であってもいけない。釣り合わねばならない。中国政府は成都の米総領事館が「スパイ活動」の拠点であったと示唆している。ここで思い出されるのは、重慶市党委書記として辣腕を振るった薄熙来(はくきらい、ポーシーライ、1949年-)をめぐる事件だ。2012年、薄熙来の側近だった王立軍(おうりつぐん、ウネンバートル、1959年-)重慶市副市長が成都の米総領事館に逃げこんだ。その後、薄熙来をめぐる様々な事件が明るみに出て、薄熙来は失脚した。

 薄熙来は重慶市のトップである中国共産党重慶市委員会書記として権勢をふるい、「独立王国」を形成し、北京に乗り込む勢いだった。これに対して、当時の胡錦涛(こきんとう、フーチンタオ、1942年-)国家主席と温家宝(おんかほう、ウェンチアパオ、1942年-)国務院総理は深刻な危惧を抱いていた。薄熙来は重慶市を抑えるとともに、成都軍区(現在は西部戦区)人民解放軍も取り込んでいた。一説にはクーデターを画策していたとも言われている。ここからは私の推測だが、薄熙来の後押しをしていたのが成都にある米総領事館だったのではないかとも考えられる。
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北京、瀋陽、上海、武漢、広州、成都
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五戦区(Theater Command)
 アメリカの総領事館は上の地図で表示されているが、中国国内の各戦区と対応している。もちろんそれは各地の大都市に置いてあるのだから当然であるが、この総領事館には米軍の情報将校が派遣されていると見るのが当然だ。そして、人民解放軍内に人脈を広げたり、工作活動を行ったりしているのは間違いない。もちろん、中国側もアメリカ国内で同様の活動を行っているはずだ。

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●「中国、米国に成都の総領事館閉鎖を要求-ヒューストン閉鎖に対抗」

Bloomberg News

2020724 13:36 JST 更新日時 2020724 21:04 JST

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-07-24/QDYHIFT1UM0W01

領事館員としてそぐわない活動に一部が従事-中国外務省報道官

成都の総領事館はチベット情勢の重要な情報収集拠点

中国政府は米国に対し、中国南部の四川省成都にある総領事館を閉鎖するよう要求した。中国外務省が24日に声明で明らかにした。米政府が中国にテキサス州ヒューストンの総領事館閉鎖を迫ったことに対抗する措置。

中国外務省は声明で、「中国が講じた措置は、米国の不当な行為に対する正当かつ必要な対応だ」と主張した。中国の報復は想定されており、ヒューストンの総領事館が撤収期限を迎える数時間前に発表された。米国務省はヒューストンの総領事館がスパイ活動や情報活動の拠点になっていたと非難している。

成都の総領事館閉鎖は米国の外交官を四川省の省都から追放するだけではない。隣接するチベットの動向を把握する上で重要な情報収集拠点の閉鎖も意味するため、武漢の米総領事館の閉鎖を命じられた場合よりも大きな影響があるとみられる。ただ香港や上海の総領事館の閉鎖ほどの影響ではない。

中国外務省の汪文斌報道官は北京での定例会見で、一部の総領事館職員が「領事館員としてはそぐわない活動に従事し、中国の内政に介入、中国の国家安全保障上の利益を損ねた」と説明した。24日午後までに多くの警察官や私服警察官、人民解放軍関係者が成都の総領事館に隣接する通りをパトロールし、写真を撮影した人たちに画像を消去するよう命じていた。

 総領事館の閉鎖はここ数年間の米中関係悪化が警戒すべき水準にまで達したことを示している。中国は世界に対して一段と強硬な姿勢を取るようになり、米国は中国の台頭を阻もうと必死だ。トランプ米大統領とその側近らは11月の大統領選を前に対中攻撃を強めており、スパイ活動からサイバー攻撃、新型コロナウイルスのまん延などあらゆる面で中国政府を非難している。

1985年に開設された成都の総領事館は、中国南西部の四川省と雲南省、貴州省、重慶市を管轄地域としているほか、チベット情勢に関して米国が情報収集する主要拠点の役割も果たしている。

中国共産党機関紙・人民日報系の新聞、環球時報の胡錫進編集長がツイッターに投稿したところによると、中国は成都の米総領事館を72時間以内に閉鎖するよう命じ、米国がヒューストンの中国総領事館の閉鎖を求めたのと同じ期限を設けた。これに基づくと、成都の米総領事館は27日午前10時までに閉鎖する必要がある。

これとは別に米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は今回の件で説明を受けた関係者の話として、中国は閉鎖命令で影響を受ける外交官らに30日以内の国外退去を求めたと報じた。WSJは関係者の氏名を明らかにしていない。

中国外務省は24日、「中国と米国の関係の現況は中国が望むものではない。米国はこの全てに責任がある」と強調。「われわれはもう一度、米国にその誤った決定を直ちに撤回し、二国間関係を軌道に戻すために必要な条件作りを強く求める」と呼び掛けた。

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■「華人対華人」と書かれて、アメリカ人専門家の立場がない

 マイク・ポンぺオ国務長官の対中政策指南役は余茂春(Maochun Miles Yu、1962年―)という人物だ。米海軍兵学校の歴史学部の教授だ。天津にある南開大学を卒業後の1985年にアメリカに留学、フィラデルフィアにあるスワースモア大学で修士号、カリフォルニア大学バークレー校で博士号(歴史学)を取得した。東アジア史、東アジア政治、軍事史を専門とし、教えている。
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ポンぺオ国務長官と余茂春

「華人の軍師」という言葉から見ると、ポンぺオの軍師は余茂春となり、習近平(しゅうきんぺい、シーチンピン、1953年-)国家主席の軍師は、王滬寧(おうこねい、ワンフーニン、1955年-)中国共産党中央政治局常任委員・中央書記処書記・中央精神文明建設指導委員会主任ということになる。王滬寧は江沢民。胡錦涛、習近平に仕えたことから「三朝帝師」と呼ばれている。

 どちらもイケイケ、それぞれ反中、反米の路線で極端に流れがちだ。そのために王滬寧は習近平から叱責を受けたとも言われている。ヘンリー・キッシンジャーのリアリズム(現実主義)と比べれば、やはり一段落ちると感じだ。

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中国もひどく驚いた米国の超強硬圧迫…「国宝」と呼ばれる中国人の作品

7/23() 14:58配信

中央日報日本語版

https://news.yahoo.co.jp/articles/53327d5db0c4c20c8734cfe33bc17a9d7da577ab

米国の「中国バッシング」が中国内で「あくどいこと極まりない」という言葉が出るほど過酷だという評価が出ている。中国共産党員の米国訪問禁止案を議論したかと思えば、ヒューストン駐在の中国総領事館に対して72時間以内の閉鎖を電撃通知した。

想像を超える米国の強硬措置が続き、中国はひどく当惑している様子だ。中国はその都度「米国はおかしい」と非難し、「反撃する」と対抗している。しかし、中国が対応の枠組みを整える前に、米国は別の中国バッシングを披露している。 

過去の政府とは全く異なるトランプ米大統領の対中強硬措置の背後には「米国では国宝、中国では漢奸」と呼ばれる華人がいる。ことし58歳の余茂春氏がその主人公だ。余氏は現在、マイク・ポンペオ国務長官の中国政策首席顧問だ。

余茂春氏のオフィスはポンペオ長官の執務室からわずか数歩しか離れていない。中国から「人類の公敵」と非難されるポンペオ長官は、余茂春氏のことを「我々のチームの中核」と言う。

ポンペオ長官は「中国共産党の挑戦に直面し、このチームは我々に自由をいかに守ることができるかについて提案する」とし、余茂春氏の役割を評価した。デイビッド・スティルウェル米国務省東アジア・太平洋担当次官補は「余茂春先生は国宝」とまで称えている。

マット・ポッティンジャー米国家安全保障副補佐官は、余茂春氏をトランプ政府外交政策チームの「宝のような貴重な資源」と賞賛している。米ワシントン・タイムズや中国環球時報などによると、現在米国の中国バッシングを背後から指揮している人物が余茂春氏だ。

1962年8月に中国重慶で生まれた余茂春氏は、青少年期に狂乱の文化大革命の10年の歳月を経て、1979年から1983年までは周恩来が通ったことのある天津・南開大学で歴史学を学んだ。

1985年に米国に渡り、ペンシルバニア州のフィラデルフィアの南西に位置するスワースモア大学で修士号を、1994年にカリフォルニア大学バークレー校で歴史学の博士号を取得した。同年、米海軍の教官になり東アジアと軍事史を講義した。現在、米国の要職には余氏の学生が少なからず布陣しているという。

トランプ氏の執権以降、米国務省傘下の政策企画室で勤務することになった余茂春氏は、この3年間トランプ政府の対中戦略を立てるために非常に重要な役割を果たした参謀で、米国に中国を戦略的競争相手と規定させた張本人として知られている。

中国語を母国語として学んだ余茂春氏は中国が駆使する外交用語に惑わされるなと主張する。北京がよく使う「Shuangying(ウィン・ウィン)」や「相互尊重」のような言葉は中国語の中の陳腐なことこの上ない古臭い表現で、耳を傾けてはならないと言う。

余茂春氏は米政府が70年代末に北京と修交して以来、米中関係を自らの意のままに導いていけると誇示したのが間違いの始まりだったと言う。トランプ氏以前の米大統領が犯した間違いは、対中政策を立てる際に中国がどう出るかを考慮したことだと主張する。

余茂春氏は「まず、米国の最優先の国家利益が何なのかから検討すべきだった」と言う。これを土台に中国を強く圧迫すべきだということだ。また、余氏は米政府の歴代の対中政策のうち、最大の過ちは中国共産党と中国人民を区別しなかったことだと言う。

米高官が中国共産党政権と中国人民を区別せずに「中国人」と総称したのは間違いだということだ。ポンペオ長官が最近、習近平中国国家主席を「習首席」ではなく「中国共産党総書記」と呼んでいるのには理由があったのだ。

先日、米ニューヨークタイムズが報じた「中国共産党員の米国訪問全面禁止案検討」報道からは余茂春氏の存在が感じられる。中国共産党は伝統的に人民を水、共産党員を魚に例える。余氏の主張は魚を水から離そうとするものだ。

また、余茂春氏は米国はこれまで対中政策を樹立する際に北京の弱点を正確に把握できていなかったと指摘する。余氏は「実のところ、中共政権の核心は脆弱で、自らの人民を最も恐れている」と主張した。 

余茂春氏は現在、米政府で「中国に関する百科事典」で通っている。一方、中国では余氏を「漢奸」と呼ぶ。中国の左派シンクタンク昆侖策の研究員は「南開大学がこんな恩知らずな人物を輩出したのか」と嘆いている。

環球時報の総編集、胡錫進氏は「米国のあくどい対中政策はこの華人から出た。20代前半に中国を離れる時、彼の頭の中には西欧への崇拝でいっぱいだった」とし「彼はインターネットで出回る極端主義勢力の影響を受けた偽の学者に過ぎない」と猛非難した。 

現在展開されている米中の戦いは、ある意味「華人対華人」の構図だ。トランプ執権後、中国は米国の予想外の高校措置にひどく苦戦し、「我々が米国を分かっていない」と嘆いてきたが、実は気づけば米国の背後には華人がいたのだ。

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毛沢東支配下の中国からフォギー・ボトム(引用者註:国務省のこと)へ:マイルス・イーは中国政府に対する私たちの新しいアプローチの重要なプレイヤーである(From Mao's China to Foggy Bottom: Miles Yu a key player in new approach to Beijing

ビル・ゲーツ筆

『ワシントン・タイムズ』紙

2020年6月15日

https://www.washingtontimes.com/news/2020/jun/15/miles-yu-mike-pompeo-adviser-helps-form-china-poli/

マイルス・イーの人生は中国の片田舎で始まった。その当時、中国全土は毛沢東が始めた文化大革命の狂乱の中にあった。狂信的な紅衛兵たちが中国国内の伝統と資本主義の全ての痕跡を破壊し殺害するために国全体を蹂躙していた。

今日、イー氏はマイク・ポンぺオ国務長官の中国に関する政策と企画立案の主要な助言者となっている。国務省7階にある政策企画本部(Policy Planning)の重要なメンバーでもある。政策企画本部はポンぺオ国務長官の執務室から数歩分しか離れていない場所にあり、アメリカの外交政策の最高峰の場所だ。

これはなかなか他の人にはない人生経験であり、彼に深く影響を与えている。

イー氏は本紙の独占インタヴューの中で次のように述べている。「共産中国で生まれ育ち、現在は私自身のアメリカンドリームを生きている中で、私は、世界はアメリカに心から感謝すべきだと確信しています。何故ならば、レーガン大統領が述べたように、アメリカは“地上に残された最後の最善の希望”を象徴しているからです。私は心の底からそれを信じているんです」。

ポンぺオ長官はイー氏を「敬意を持って私に助言を行ってくれているティームの中心的な人物であり、[中国共産党]からの挑戦に直面する中でいかにしてアメリカ人と私たちの自由を守ることを確かなものとするかについて助言を行っている」と称賛している。

国務省政策企画本部はかつてジョージ・ケナンが本部長を務めたこともある。ケナンは1947年に発表された「ミスターX」論文の著者だ。ケナンはアメリカに冷戦期における封じ込め政策のおぜん立てをした人物である。彼の封じ込め政策がソヴィエト連邦を最終的に歴史の灰にうずめさせることになった。

イー氏は数年に渡り、本紙のコラム「インサイド・チャイナ」に論稿を掲載していた。彼は1985年に中国からアメリカにやってきた。彼が渡米して4年後に起きた天安門での抗議活動と弾圧の後、学生として、イー氏は自由と民主政治体制を主張する活動家となった。

(貼り付け終わり)

米中間の新冷戦の行方はどうなるか。アメリカの封じ込め政策派と関与政策派の綱引きということになるだろう。大事なことは、本格的かつ深刻な衝突にならないことだ。トランプ大統領はそのことを心得ている。バイデン前副大統領は心もとない。バイデンが大統領となり、ヒラリークリントンを頭目とする人道主義的介入主義派が外交を牛耳るとなると、ジョージ・W・ブッシュ政権下のネオコンと同様のこととなる。これは大変に怖いことだ。

 米ソ冷戦について「長い平和(Long Peace)」だったとする学説もある。イェール大学教授ジョン・ルイス・ギャディス (John Lewis Gaddis、1941年-)はその名も『ロング・ピース』という著書を1987年に発表し、冷戦期は「長い平和」だったという主張を行った。米ソが直接戦争をするということはなかったという点を見れば「長い平和」であった。もちろん、朝鮮半島やヴェトナム、インドシナ半島の人々からすれば、何を言っていやがる、ということになるだろうが、世界を破滅させるような戦争は起きなった。

 米中の新しい冷戦もまさに「長い平和」となるべきだ。そのためには指導者層の選択が重要となる。猪突猛進的な単細胞の指導者層はこの時期には大変危険である。「中国嫌い嫌い、中国怖い怖い、中国消えろ消えろ」と叫びまわるような政治家たちこそが「怖い」存在であり、「消えて」しまうべきである。過激な方向に進まず、敵とも共存、それこそ、トムとジェリーさながらに、仲良く喧嘩するということができる「知恵」の深い指導者層が必要だ。

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。
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ジョン・ボルトン回顧録 (仮)

 大変古い記事であるが、重要な記事をご紹介する。これは2018年に『イスラエル・ロビー』の共著者であるハーヴァード大学のスティーヴン・M・ウォルト教授が書いた記事だ。アメリカ外交政策エスタブリッシュメントはネオコンと人道的介入主義派で占められており、ネオコンのジョン・ボルトンはその主流派の一人である。そして、これら主流派の人々は自分たちの主張が実現されてもたらされた悲惨な結果について反省をしない、そして再び政権に入ることで失敗を繰り返す。これがアメリカの構造的な欠陥だとウォルトは書いている。

 そして、ネオコンと人道的介入主義派をまとめて「チェイニー主義」と名付けている。そして、チェイニー主義がアメリカの構造的な欠陥だと喝破している。チェイニー主義をウォルト教授は次のように描写している。

(貼り付けはじめ)

チェイニー主義とは、「脅威を増幅し、真剣な外交を拒絶し、同盟諸国を負担だと考え、国際機関を軽蔑し、アメリカは強力であり、他国に最後通牒を突き付け、他国が従うことを期待しているものと私は定義している。より言えば、外交政策に関わるより多くの問題を何かを吹き飛ばすことで問題を解決することができると信じることを言うのだ。

(貼り付け終わり)

 トランプ大統領は外交政策エスタブリッシュメント、主流派をこき下ろしていた。しかし、それでもそうした人物たちを起用しなければならない時もある。それでも行き過ぎれば、解任してきた。だから、北朝鮮との戦争は起きなかったし、中国とも決定的な決裂には至っていない。その点でドナルド・トランプ大統領は極めて優秀だ。ヒラリー・クリントンが大統領になっていたら世界は悲惨なことになっていただろう。本格的な戦争と新型コロナウイルス感染拡大が同時並行的に起きていたらアメリカはもたなかっただろう。

 問題はジョー・バイデンもヒラリーとあまり変わらないということだ。彼の政権も「チェイニー政権(チェイニー主義政権)」になってしまう可能性は大きい。下の記事にも名前が出てくるスーザン・ライスが副大統領になればそれは極めて危険なことだ。

(貼り付けはじめ)

ディック・チェイニー政権へようこそ(Welcome to the Dick Cheney Administration

―ジョン・ボルトンに関する問題は彼が少数派の過激な人物(extremist)だということではない、問題は彼が主流派(mainstream)であることだ。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2018年3月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2018/03/23/welcome-to-the-dick-cheney-administration/

もう片方の靴が落ちた。トランプ大統領はレックス・ティラーソン国務長官をツイッター上でのツイート一つで解任するという臆病な手段を取った。この時同時に、ドナルド・トランプは大統領国家安全保障問題担当補佐官のHR・マクマスターを解任し、後任にジョン・ボルトンを選んだ。ボルトンは元米国国連大使で強硬派として知られた人物だ。超タカ派(Uber-hawk)のマイク・ポンぺオはCIA長官であるが、国務長官に就任することになった。そして、CIAに忠誠を誓うジーナ・ハスペルがポンぺオの後任に決まった。ハスペルは、ジョージ・W・ブッシュ政権時に拷問施設を運営し、CIAが行っていたことを記録したヴィデオテープの破棄に同意した。こんな恐ろしいことが他にあるだろうか?

これらの出来事はトランプ政権内の混乱に対する2つの重要な反応だと考えられる。一つ目の解釈としては、今回の人事交代はトランプの政権内から「大人たち」を排除する動きというものだ。大人たちは過去1年間、ツイッター最高司令官(tweeter-in-chief)を何とか制御しようとしてきた。そうした人々を、トランプと同じように世界を見て、「トランプをトランプ」らしく行動させる人々に交代させたのである。こうした見方からすると、新しいティームは、トランプ大統領を制御しようとはせず、2016年の時のトランプに戻そうとするだろう。この時のトランプは、アメリカの外交政策は「完全に隅から隅まで厄災である」と主張し、「アメリカ・ファースト」の実現を訴えた。トランプ大統領自身は、自分で望ましい人物たちを集めてティームを作ると訴えることで、こうした考えを強調してきた。(これは一つの大きな疑問を生起させる。それは、誰が最初のティームの構成員を選んだのか?二番目のティームは?その答えは明白だ)

二つ目の解釈はより人々の警戒心を強め、皆さんの家の裏庭に防空壕を掘らせるようにさせるくらいのものだ。この解釈では、ティラーソンとマクマスターの更迭とボルトン、ポンぺオ、ハスペルの起用はタカ派が力を持つことになることを示す。この人々は、イランの核開発をめぐる合意を破棄し、拷問を復活させ、北朝鮮との戦争を始めるだろう。これはただの「強硬な姿勢」を超えたものだ。ホワイトハウスにボルトンが入ることで戦争を嫌なものだと考えたことがない人物からトランプ大統領は助言を受けることになる。(戦争を嫌なものだと考えないのはもちろん彼が安全な距離まで離れているからだ)

明確にしておきたい。ボルトンはこれまでトランプ大統領が行った選択肢のほとんどと同じもので、厄災となるであろうものだ。ボルトンの外交政策について考え方は原理主義的で、好戦的なものだ。政策の主導者、そして専門家としてのボルトンの経歴はどんなに良く言っても、信頼に足るものではない。ボルトンは自分の過去の誤りから学んでいるようには見えない。そして、マクマスターとティラーソンは、アメリカの国際的な評判と重要な同盟関係に対して、トランプ大統領が与えた損害を何とか限定的にしようと努力したが、ボルトンの外交官としての技能はアメリカの友人たちを攻撃するための新たな方法を見つけることになるだろうと思われる。

しかし、ボルトンの起用は2016年の大統領選挙の段階のトランプの考えに戻るということではないのだ。トランプは選挙期間中に外交政策に関する専門家たちやエスタブリッシュメント全体を攻撃した。トランプはこうした人々は無能で、無責任、アメリカを意味のない戦争に引きずり込むと主張した。しかし、大統領に就任して以来、トランプ大統領は国防予算を増額し、アフガニスタンの米軍を増強し、国防総省とわがままなアメリカの同盟諸国がより多くの場所でより強力な軍隊を使用することを許可し(その結果は失望)、外交政策により軍事偏重の姿勢を取ることでハイリスクな選択をした。これは、ビル・クリントン、ブッシュ(子)、バラク・オバマの各政権で失敗したやり方だ。ボルトンの起用(トランプの外の人事異動と同様)は、「アメリカ・ファースト」に向けた大胆な動きということではない。「アメリカ・ファースト」という言葉は、アメリカの海外での負担を削減し、アメリカの戦略的位置を改善し、アメリカ国民をより安全により豊かにするためのより堅実なそしてより抑制された外交政策を意味するはずだ。

その代り、トランプが知っていたかどうかは分からないが、ボルトン、ポンぺオ、ハスペルを最重要の地位に就けたのは、「チェイニー主義(Cheneyism)」への逆戻りなのである。チェイニー主義とは、「脅威を増幅し、真剣な外交を拒絶し、同盟諸国を負担だと考え、国際機関を軽蔑し、アメリカは強力であり、他国に最後通牒を突き付け、他国が従うことを期待しているものと私は定義している。より言えば、外交政策に関わるより多くの問題を何かを吹き飛ばすことで問題を解決することができると信じることを言うのだ。

いいですか皆さん、チェイニー主義は、アメリカがそれを採用した最後の機会できちんと機能しましたか?トランプ大統領のような洗練された外交政策の専門家は再びチェイニー主義を採用したいと望んでいるのは間違いないところだ。

従って、ボルトン起用の真のレッスンはボルトン自身のことではなく、アメリカの外交政策エスタブリッシュメントについてである。より微妙な地位に野蛮な急進派の人物を就けることの危険性についてこれから数週間、心のこもったそして怒りに満ちた評論を多く読むことになることは間違いない。しかし、単純な事実としては、アメリカの外交政策共同体の中で変わった人物ではないということだ。トランプが左派からメディア・ベンジャミンを、右派からランド・ポールを起用することとは違う。もしくは、チャールズ・W・フリーマン・ジュニアやアンドリュー・バセヴィッチのような経験豊富なそして知識豊富な逆張り主義者を起用することも違う。そうではなくて、ボルトンはタカ派の考えを持っているが、ワシントンにおいて「受け入れ可能な」コンセンサスの中に入っているのである。

ボルトンの考えや経歴を見てみよう。彼はイェール大学とイェール大学法科大学院の卒業生だ。彼はワシントンDCにある著名な法律事務所コンヴィントン・アンド。バーリングで働いた。この事務所ではディーン・アチソンも働いていたことがある。ボルンとは長年、保守系ではあるが主流のアメリカン・エンタープライズ研究所で上級研究員を務めている。彼は曖昧な、粗雑で野蛮な、「急進的な」文章を数多く発表している。その中には『ウォールストリート・ジャーナル』紙、『ニューヨーク・タイムズ』紙、そして『フォーリン・ポリシー』誌も含まれている。ここまで見て、あなたが考える「おかしな」人物にボルトンは当てはまるだろうか?

確かに、ボルトンはイラク戦争を声高に支持していた。しかし、そのことで彼を狂人(weirdo)だと考える人はほとんどいない。確かにボルトンはイラク戦争を声高に支持した。しかし、しかし、だからと言って奇人変人という訳ではない。ボルトンも指摘しているように、そのほか多くの人々も同様であった。ヒラリー・クリントン、ジョー・バイデン、ジェイムズ・スタインバーグ、アン=マリー・スローター、スーザン・ライス、ロバート・ゲイツなどなど数多くの「尊敬すべき」人物たちがイラク戦争に賛成した。これらの人物たち以外にもイラク戦争という厄災を夢見て実現させた天才たちのことも忘れてはいけない。ウイリアム・クリストル、ジェイムズ・ウールジー、ロバート・ケイガン、ブレット・スティーヴンス、マックス・ブート、エリオット・コーエン、デイヴィッド・フラム、ポール・ウォルフォヴィッツなどは今でも外交政策エスタブリッシュメントの中では尊敬を集めている。しかし、こうした人々は、悲惨な戦争を始め、多くの人々を死に至らしめたことについて、自分たちの誤りを認めず、公の場で後悔の念を示したこともない。

トランプ大統領と同様、ボルトンはイランと北朝鮮に対して特に懸念を持っているように見える。しかし、連邦議員の多くとワシントンDCにあるシンクタンクの多くもまた同様である。実際のところ、現在のイランとの核開発をめぐる合意を強く支持している人々は多くいるが、こうした人々はアメリカ政府がイラン政府に対してより強硬な姿勢を取るべきだと考えている。北朝鮮に対して軍事行動を取ることを提案しているワシントンDCにいる人間はボルトンだけではない。結局のところ、ボルトンの前任者である、更迭されたマクマスターが北朝鮮に対する厳しい姿勢を取ることを主張していた。

ボルトンはイスラム教嫌いで知られており、かつ国際機関に対して極めて懐疑的だ。しかし、こうしたことはアメリカの外交政策分野において特殊という訳ではない。彼は軍事力の行使を特に好む傾向があるように見える。しかし、外交政策分野での高名な知識人たちの中で軍事力行使に反対し、それに反対する態度を取りそのように発言する人たちの数はどれほどいるだろうか?私はそのような人物は極めて少ないと言わざるを得ない。それは、ワシントン(アメリカ政府)でトップの仕事に就きたいと狙っているような人物で「ソフトだ」と見られることを望むような人は一人もいない。シリアのバシャール・アル・アサド政権に対して戦略的に見て全く無意味な巡航ミサイル攻撃をトランプ大統領が許可した時、どれだけの数の民主党所属の政治家と共和党所属の政治家が彼に向って拍手を送ったかを読者の皆さんは覚えておられるだろうか?この単純な事実によって次のことを説明することができる。アメリカは10か国以上の国々で様々な種類の戦争を行ってきているが、終わりを想定することなしにまた反対しにくい形で始めている。ボルトンは外交政策共同体のコンセンサスの内部にいる、声が大きいメンバーであるに過ぎない。

誤解しないでもらいたい。私は今回のボルトンの起用を「正常なこと」であると位置づけ、心配するなと述べているのではない。そうではなく、もしボルトンについて懸念を持っているならば、次の疑問を自分自身に問いかけてみるべきだ。それは「政府高官の地位にボルトンのような考えを持つ人物が就くことを許すような政治システムはどのようなものか?」というものだ。このシステムは、この人物を政府高官の地位に就けて、アメリカを悲惨な戦争に駆り立てながら、自身の失敗に対する後悔を示すこともなく、更に次の10年も同じことをより熱を持って主張する。同じ間違いを犯すために2回目のチャンスを得ることができる。

これはただただ最悪なのだ。しかし本当の問題はボルトンではない。本当の問題は、彼のような人物を何度も失敗させて、何度も引き上げてくれるシステムの存在だ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 新型コロナウイルス感染拡大はアメリカと中国の争いの最前線となっている。アメリカは「中国が初期対応を誤ったために世界中に感染拡大してしまった、責任を取れ」「国際調査団に中国のウイルス学研究所の徹底調査をさせろ」ということを主張している。中国政府は新型コロナウイルスが実験室などで人の手によって造られたものではないと主張し、また、中国が発祥ということはないと反発している。

 「新型コロナウイルスはアメリカが作った、いやいや中国が作った」という討論がずっと続いている。そうした中で、アメリカのドナルド・トランプ大統領とトランプ政権は中国に対して厳しい姿勢を維持している。その急先鋒は、マイク・ポンぺオ国務長官だ。ポンぺオ国務長官は最近になってトーンダウンしたが、「新型コロナウイルス発祥は中国だという証拠はたくさんある」と述べ、世界的な感染拡大の責任は中国にあると述べてきた。

 2020年5月24日の段階で、世界中で約540万の感染者、死者数が34万3000、回復者数が約225万となっている。アメリカは感染者数約167万、死者数が約9万8000、回復者数が約45万となっている。日本は感染者数約1万6500、死者数は808、回復者数は約1万3000となっている。アメリカは感染者数、死者数で世界の約30%を占めている。新型コロナウイルスは今年初めには中国、特に武漢市で猛威を振るったが、今や欧米、特にアメリカで猛威を振るっていると言ことになる。トランプ政権の初期対応の誤りによってアメリカが最大の感染者数年者数を出すということになったという批判もなされている。そうした批判をかわすためにもトランプ政権としては、中国に責任を押しつけたいということになる。

 マイク・ポンぺオという人物が中央政界で知られるようになったのは、2010年の連邦下院議員選挙からだ。2008年にバラク・オバマが大統領選挙で勝利した直後から、アメリカでは保守派の草の根運動としてティーパーティー運動が始まった。小さな政府を標榜し、国民皆保険を目指すオバマケアに反対する、「納税者」の運動を展開した。この運動の資金源は、世界的な大富豪であるコーク兄弟であった。ポンぺオはティーパーティー運動に参加し、2010年の中間選挙で連邦下院議員に当選した。その後、4期連続で当選した。トランプ政権のマイク・ペンス副大統領とポンぺオ国務長官はそれぞれ連邦下院議員の経験があるが、その時のスポンサーだったのはコーク兄弟だった。

 2016年の大統領選挙でドナルド・トランプが勝利を収めると、アメリカの情報・諜報機関CIAの長官に就任した。2018年にレックス・ティラーソンがトランプ大統領のツイッターでの書き込みによって解任された後、ポンぺオが国務長官に就任した。

 マイク・ポンぺオという人物はコーク兄弟の後ろ盾を受けて、中央政界に進出し、CIA長官を務め、現在は最重要閣僚である国務長官を務めている。ポンぺオはコーク兄弟の代理人だ、という記事もあったが、現状を見ればそれはとても甘い見方であったことが分かる。コーク兄弟をはじめとするリバータリアンは対外戦争に反対だ。しかし、ポンぺオの言動や行動はとても危なっかしい。中国やロシアとはいつでもやってやるぞという姿勢だし、トランプ大統領が始めた北朝鮮との直接交渉にしても、北朝鮮側から「ポンぺオ国務長官を外して欲しい」という要請をされてしまうほどだ。

 ポンぺオは複数の勢力とつながり、利用してここまでやってきたと考えることが妥当だろう。それはマイク・ペンス副大統領にも言えることだ。その勢力の中には、アメリカを対外戦争に引きずり込もうという勢力もある。表面ではネオコンや人道的介入派として出ている勢力であるが、その裏がどうなっているのか分からないが、かなり恐ろしい勢力がいるのではないかと私は考えている。トランプ政権は反中央政府、反ワシントン既成政治を旗印に誕生したが、更に一回り大きな勢力に利用されているのではないかと私は危惧を持っている。

(貼り付けはじめ)

●「沈黙のバットウーマン 武漢の研究者、コロナで先駆  米中対立の火種に」

2020/5/20   日経新聞   北京=多部田俊輔、編集委員 滝順一

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59338010Q0A520C2EA1000/

 中国の湖北省武漢市で世界で初めて感染が確認された新型コロナウイルスの発生源を巡って、米中の対立が止まらない。武漢ウイルス研究所が発生源だと主張する米国側に対し、中国側は「捏造(ねつぞう)」だと否定する。真相のカギを握るとみられているのが同研究所の石正麗氏だ。コウモリ由来のウイルス研究者の石氏は「バットウーマン(コウモリ女)」の異名も持つが、このところ動静が途絶えている。

「石氏が家族とともに1千ページに及ぶ秘密文書を持って欧州に逃亡した」。5月はじめ、武漢研究所「発生源」説がくすぶる中、こんな情報が米欧を駆け巡った。すぐに中国メディアは石氏が中国のSNS(交流サイト)に「国を裏切り亡命したとのデマはありえない」と投稿したと報じ、亡命説を否定。しかし石氏は表に出てこない。

「新型コロナウイルスは自然が人類に与えた懲罰であり、自分の命をかけて研究所か

らの流出はない」。石氏は2月初旬に中国のSNSで友人らにこのような趣旨の投稿をしてから、新型コロナの発生源に関して発言を控えている。

石氏は1964年生まれ。大学で遺伝学を学んだ後、政府直属の最高研究機関「中国科学院」傘下の武漢ウイルス研究所に入った。医学などの研究で名門とされる仏モンペリエ大学で2000年にウイルス学の博士号を取得し、武漢に戻った。

石氏が有名になったのは0203年に中国で流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の発生源究明での実績だ。各地の洞窟で野生コウモリを捕まえて体液を分析し、SARSウイルスの起源がコウモリだと証明した。13年に英科学誌ネイチャーで発表し、「バットウーマン」と呼ばれるきっかけにもなった。

15年には今回の新型コロナを予言したともいえる研究成果も、米ノースカロライナ大学のラルフ・バリク教授と共同で公表していた。バリク氏はコロナウイルス研究の第一人者。2人はコウモリのコロナウイルスが変異すると、SARSウイルスの治療薬が効かない新種のウイルスが生まれる恐れがあると、ネイチャー姉妹誌で公表した。

さらに石氏らの研究チームは1月に湖北省政府から新型コロナの研究を命じられると、22月初旬にいち早く、新型コロナもコウモリ由来の可能性が高いと発表していた。

一方、トランプ米大統領やポンペオ米国務長官は武漢ウイルス研究所が新型コロナの発生源だと主張する。最も危険性の高い病原体を扱える「バイオセーフティーレベル(BSL―4」の施設で、最初に感染者が出たとされる野生動物を売買する市場からも約30キロしか離れていない。

米ワシントン・ポストによると、18年に同研究所を視察した米当局者が「コロナウイルスの研究をしているが安全対策が不十分」と警告する公電を米国へ送っていた。ポンペオ氏は研究所の立ち入り検査を求めている。

ただウイルスが意図的に研究所から漏れたとみる専門家は少ない。米メディアによると、カリフォルニア大学の感染症専門家のジョナ・マゼット氏は新型コロナの感染が始まる前に「石氏の研究所には新型コロナウイルスはなかった」と指摘。武漢研究所が発生源だとする米政権の主張に反論する。実情を知る石氏は口を閉ざしたままだ。

大統領選を控えるトランプ政権は「中国たたき」が得票につながるとみて強硬姿勢に傾く。習近平(シー・ジンピン)指導部はポンペオ氏を標的に「人類共通の敵」などと対米批判を繰り返す一方、国内では研究者を含めた情報統制を強める。

「共産党の指導が厳しく愛国的なテーマを掲げないと研究が難しくなっている」。中国の有力大学で教える外国人専門家は漏らす。関係者によると、新型コロナも研究者らが自由に発信することは許されない。コロナ禍の克服には変異を繰り返しながら感染を広げるウイルスの正体を突き止めることが必要だ。中国の情報開示が問われている。

(北京=多部田俊輔、編集委員 滝順一)

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●「ポンペオ氏、新型コロナ発生源は「不明」 武漢研究所説から転換」

2020.05.18 Mon posted at 10:15 JST CNN

https://www.cnn.co.jp/usa/35153896.html

ワシントン(CNN) ポンペオ米国務長官は新型コロナウイルスが中国・武漢のウイルス研究所から発生したとの説から方向転換し、発生源は不明との立場を示した。米ニュースサイト、ブライトバートが16日に配信したインタビューの中で語った。

ポンペオ氏はこの中で、新型ウイルスの発生源を特定するため、支援チームの派遣を繰り返し要請してきたと述べた。

同氏はまた、ワクチン開発に取り組む研究者らにとって、発生源を知ることは重要な「鍵」になると強調。そのうえで中国の対応は透明性を欠くと改めて非難し、米国による制裁の可能性に言及した。

ただし制裁の具体的な手段については、トランプ大統領が十分な説明を受けたうえで決断を下すことを望むと述べた。

ポンペオ氏はこれまで、新型ウイルスが武漢のウイルス研究所から発生したと主張。今月初めのインタビューでは「大量の証拠」があると述べたが、その後「確信はない」と軌道修正していた。

トランプ氏も同様に「証拠を見たことがある」と主張したが、研究者らや国際情報共有網からは「可能性は極めて低い」との見解が出され、米情報機関は両方の可能性を検討中と述べていた。

中国政府は研究所説を、トランプ氏の再選に向けた中傷作戦だと批判している。

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ポンぺオ国務長官が険悪な雰囲気の記者会見の中で武漢の実験室をめぐる主張を擁護した(Pompeo defends Wuhan lab claims in combative press conference

ロウラ・ケリー筆

2020年5月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/496356-pompeo-defends-wuhan-lab-claims-in-combative-press-conference

マイク・ポンぺオ国務長官は水曜日、記者たちと言い争いを行った。中国のある実験室から新型コロナウイルスの感染拡大が始まったのかどうかという疑問についてやり合った。こうした主張は情報諜報機関の幹部や衛生の専門家たちから否定されている。

ポンぺオはBBCの記者バーバラ・プレット・アッシャーからのウイルスの起源に関する諜報について質問に対して次のように答えた。「バーバラ、バーバラ、いったん落ち着きましょう。」

Your efforts to try and find — just to spend your whole life trying to drive a little wedge between senior American officials … it's just false,”

ポンぺオは、中国の武漢ウイルス学研究所でウイルスに接したことで新型コロナウイルスの感染が始まったという理論を主張している。中国の武漢ウイルス学研究所である科学者がウイルスに接触したことが始まりという話だ。こうした主張を基にして、アメリカ政府は感染拡大に関して中国政府が国際的な調査団による中国国内の調査を許可すること、世界規模の拡大に責任を取ることを求めている。

ポンぺオは日曜日に行ったあるインタヴューの中で、「武漢という中国の都市にあるある実験室からウイルスが流出したことを示す“多くの証拠”が存在する」と述べた。しかし、この発言に対しては政府高官と衛生の専門家たちから否定されている。

米統合参謀本部議長であるマーク・ミリー大将は火曜日、ウイルスの発生は自然なものであり、実験室から偶然にもしくは意図的に流出したことを示す「決定的な証拠」は存在しないと述べた。

世界的な科学者たちの合意は、今回の新型コロナウイルスはある動物の中に発生して、人間に感染したというものだ。アメリカ国立アレルギー・感染症研究所所長でホワイトハウスの対コロナウイルスのタスクフォースの主要メンバーであるアンソニー・ファウチは、ウイルスはある実験室から流出したものという主張を否定し、この疾病は野生から出てきたと述べた。

国務省は「多くの証拠」を肯定する新しい情報を得ているのかと問われ、ポンぺオは、アメリカ政府はウイルスがある実験室から発生したのかどうか、そして証拠があるのかどうかについて関知していないと答えた。

ポンぺオ国務長官は「これらの噺はどちらも全体として首尾一貫しています」と述べた。

ポンぺオは次のように述べた。「あなたが分からないことについて私も確実なことは何も言えないのですよ。新型コロナウイルスがある実験室から発生したという主張には確実性はなく、明らかな証拠もありません。ウイルス発生の起源と証拠についてのアメリカ政府の声明はどちらも正しい可能性があります。渡したこれら2つの主張を行います。政権幹部も同様に2つの主張を行います。これらはすべて真実です」。

先週、アメリカの情報機関の幹部たちは公開声明を発表した。これは極めて珍しいことだ。この声明の中で、幹部たちは今回の新型コロナウイルスはある動物の中で発生したという世界的な科学者たちの合意に同意したが、ある実験室での事故で発生した結果であるのかどうかについて調査を継続しなければならないと主張した。

中国は昨年12月末に世界保健機関(WHO)に対して肺炎の「奇妙な」ケースの発生を報告した。そして同時に、武漢市の海鮮市場での販売員と消費者のクラスターが発生したとも報告した。

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中国との言論戦の中で、ポンぺオが先鋒として登場(Pompeo Emerges as Point Man in War of Words With China

―ポンぺオを批判する人々は、ポンぺオは感染拡大に対する世界規模での対応のために強調するよりも中国攻撃に狂奔していると述べている。ポンぺオを支持する人々は、ポンぺオは中国の責任追及をしているのだと述べている。

ロビー・グラマー筆

2020年5月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/05/01/coronavirus-trump-pandemic-pompeo-attack-china/

最近の数週間、マイク・ポンぺオ米国務長官は、トランプ政権の強硬な対中国戦略の顔として出てきている。コロナウイルス感染拡大に関して中国非難のメッセージの拡散のために保守系メディアに依存している。多くのフォックスニュースや保守系のラジオのトークショーで中国叩きが行われており、ポンぺオはそれらに依存している。

ポンぺオはダン・“オックス”・オクスナーに対して「私たちの姿勢は明確であり、それは中国共産党は特別の責任を負っているというものだ」と述べた。オクスナーは保守系のラジオのトークショーの司会者であり、ポンぺオは木曜日だけでこうしたラジオのトークショー4番組に出演した。その中にオクスナーの番組も含まれていた。「このウイルスは武漢で発生しました。中国は世界とデータ、情報を共有する特別な責任を持っています。そして、透明性を確保する必要があります」。

外交分野以外の人々と元外交官たちにとっては、ポンぺオ国務長官のメディアを使った大規模な宣伝によって保守派の人気を高めている。これはドナルド・トランプ大統領の支持基盤を活性化するように見える。感染拡大によるロックダウンによって世界経済は減退し、アメリカ国内の失業数は急増している。このような状態の中で、保守派の活性化は2020年の選挙にとって重要である。批判者たちは、ポンぺオ国務長官が感染拡大に対する世界的な反応を協調させることではなく、政権による攻撃の急先鋒になっていると述べている。ポンぺオ国務長官の支持者たちはこうした批判を党派性の強い情報操作(spin)に過ぎないとしている。

中国はポンぺオ国務長官に反撃をしている。先週、中国は国営メディアを使って、通常では考えられない規模で個人攻撃を行った。この時、中国政府は、「中国がウイルスの感染拡大の初期段階で対応を誤り、世界規模で感染が拡大した」というアメリカからの批判をかわそうと躍起になっていた。中国共産党機関紙『人民日報』紙のある論説には次のような一節があった。「ポンぺオのような政治家の頭の中には、偏見、憎悪、個人の利益しか存在しない。ポンぺオの発言や行動は人々を困惑させている。そのようないじめと荒唐無稽な発言で“アメリカを再び偉大にできる”などと彼は考えているのか、と」。

今年の4月だけで、ポンぺオ国務長官は90以上のアメリカ国内と外国の報道機関のインタヴューに応じた。これは感染拡大初期と比べると大きな変化である。4月、ポンぺオ国務長官は米国務省内でほぼ定期的な記者会見も開いていた。様々な報道機関からの記者たちが彼に質問をすることができる機会だ。加えて、国務省は、感染拡大やその他の問題についての国務省の対応について、国務省の幹部職員たちにほぼ毎日電話でのブリーフィングを行ってきた。

外交官出身者の中には、ポンぺオ国務長官が特定の政治的志向を持つ選ばれた国内の聴衆に集中し過ぎていると批判している。ポンぺオ国務長官が一対一のインタヴューやトークショーに出演しているが、その多くは保守系メディアである。国務省は一般の人々にも利用できるように、ポンぺオと報道機関のインタヴューの文字起こしを発表している。複数の元外交官たちは本誌の取材に対して、ポンぺオ国務長官がトランプを擁護しているメディアにこだわっているのは、こうしたメディアにばかり出ることで、厳しい質問を受けることがないからだ。また、外国メディアからのインタヴュー受ける代わりに保守系メディアのインタヴューを受けている。外国メディアの取材に応じることは、アメリカの政策について諸外国の人々により良く説明する機会となるがそれを放棄している。

職業外交官出身で、バラク・オバマ大統領時代のホワイトハウスで国際社会関与担当の部長を務めたブレット。ブラエンは次のように述べた。「ポンぺオ国務長官は、トランプ政権が採用している政策の理由について世界とコミュニケーションするためにほとんど時間を使っていません。彼は、国務長官の役割をより党派性の強いものにしてしまいました。歴史的に見て、国務長官は争いから超然としていようとしてきました。私が現在の政権の政策に同意できないにしても、国務長官の仕事は、世界各国のメディアに対して、アメリカ政府の政策の正当性を説明することであり、そのために最前線に立つことなのです」。

アメリカ国務省は、感染拡大によって民間航空のキャンセルが相次ぎ、渡航禁止などを実施する外国が増えている中で、海外で足止め状態になっている数万単位のアメリカ国民の帰国というこれまでにない仕事を実行しなければならなくなっている。そうした中で、ポンぺオ国務長官は国内のメディアにばかり登場しているのはこれらの仕事の実行に役立たないと指摘している人々もいる。世界各国に置かれているアメリカ大使館と領事館は今年1月以降、これまでに7万人以上のアメリカ国民の帰国を援助している。国務省の幹部たちは、在外公館は民間航空とチャーター機を使ってアメリカ国民を帰国させていると述べている。

ポンぺオ国務長官がメディアに頻繁に登場しているのは、トランプ政権のより大枠の戦略である、中国が感染拡大への対応を誤ったのかどうかについての独立機関による調査を求めることとウイルスの起源について疑問が多く出ている中で国際機関による調査官たちに中国国内のウイルス研究施設の調査を許可するように中国政府に圧力をかけること、この2点に沿った動きなのである。トランプ政権はまた、世界保健機関(World Health OrganizationWHO)の世界的な感染拡大への対応における役割について非難している。WHOは中国からの圧力に屈ししていると攻撃している。トランプ政権を批判している人々は、政権が感染拡大に対する対応が遅れたことを隠すために批判を行っていると述べている。アメリカ国内では110万以上の感染者数を確認し、死者は約6万5000名に達している。

トランプ政権は、世界保健機関が中国の圧力に屈しているかを調査するために、しばらくの間予算供与を停止すると発表した。

民主党所属の連邦議員たちはこのような手段を批判している。彼らは、確かにWHOは失敗をしたが、アメリカからの支援を必要としている、と発言した。連邦上院少数派(民主党)院内総務チャック・シューマー連邦上院議員、連邦上院外交委員会で民主党側の最上位のメンバーであるボブ・メレンデス連邦上院議員、その他の連邦上院議員たちは4月20日付で書簡をポンぺオ国務長官に送付した。その中で次のように述べている。「感染拡大への対応と封じ込めに関しては複雑さを増している。そうした中で、国際的な対応を強調させるためには更なるアメリカの指導色が必要となる。WHOにおける中国の影響力の増大に対する解決策は、アメリカの指導力と関与であって、アメリカが不在となることではない」。

水曜日の記者会見でポンぺオは次のように述べた。「アメリカは世界保健機関に最大の資金提供を行っています。世界保健機関は目的達成に失敗しました。きちんとした結果を得るためにアメリカの納税者のお金をどのように使うべきかを把握するために調査を行っています。私たちは“健康(保健、health)”を名前につけているある故草木機関が実際に私たちが必要としている結果をもたらしていると言いつくろいながら、ウソをつくようなことをすべきではないのです」。

※ロビー・グラマー:『フォーリン・ポリシー』誌の外交と国家安全保障担当記者

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 ロイター通信がドナルド・トランプ大統領と民主党の大統領選挙候補者に内定しているジョー・バイデン前副大統領に関する世論調査を実施した。五大湖周辺の「ラスト・ベルト(Rust Belt)」に属するミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルヴァニア州での世論調査を実施した。2016年の米大統領選挙ではこの3つの州で、トランプ大統領が予想外の勝利を収め、大統領に当選した。ラスト・ベルトは伝統的に工業地帯で、労働組合が強く、民主党の金城湯池であった。今回の大統領選挙でもこの3つの州は激戦州であり、民主党は奪還を目論んでいる。

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ラスト・ベルトの地図

 今回の世論調査の結果は、3つの州ともバイデンがトランプをリードしているというものだった。しかし、その差は小さいものであり、接戦となっている。しかし、問題は、トランプ大統領は新型コロナウイルスとの戦いの最高司令官、「戦時大統領」であり、二期目を目指す現職なので、バイデンをリードしていなければならない立場にある。トランプ大統領は大美厳しい立場にある。

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 大統領選挙は選挙人の総取りであり、ペンシルヴァニア州には20名、ミシガン州には16名、ウィスコンシン州には10名が配分されている。合計すると46名だ。前回の大統領選挙ではトランプ大統領は306名、ヒラリー・クリントンが232名という結果だった。トランプ大統領がこの3つの州を失うということになれば選挙人の過半数270名に到達できないということになる。

 有権者の最大の関心事は新型コロナウイルス対策であり、次に経済問題、更には医療制度と続く。トランプ大統領としては、新型コロナウイルス感染拡大を止め、経済活動を再開させて、支持を取り戻さねばならない。しかし、その道筋はまだついていない。そもそもトランプ大統領はマイク・ペンス副大統領を責任者にしたはずだが、毎日の記者会見に臨むことになって、ペンスに責任転嫁したのに、それがうまくいっていない。

 ペンスもマイク・ポンぺオ国務長官もトランプ大統領の陰に隠れ目立たないようにしているが、時にメディアで話題になるのは対中強硬姿勢だ。トランプを隠れ蓑、盾(たて)として使いながらやりたい放題という感じだ。そもそもこの2人はジョージ・W・ブッシュ政権の副大統領だったディック・チェイニーに連なる人物たちで、一部では「まるでチェイニー政権ではないか」とまで言われている。

 バイデンは誰にでも良い顔をするし、何よりも民主党のグローバリスト系だ。連邦上院議員だった2003年にイラク戦争開戦に賛成票を投じたように、「アメリカの世界支配」は正当だと考える人物だ。トランプ政権内に、イラク戦争を副大統領として主導したチェイニー系がおり、民主党にはバイデンがいる。これではトランプ大統領は四面楚歌(しめんそか)の状態で、味方は娘のイヴァンカとイヴァンカの夫ジャレッド・クシャナーくらいということになる。

 トランプ大統領はアイソレーショニズム(国内問題解決優先主義)、「アメリカ・ファースト」を訴えて当選した。だからこの4年間、アメリカは大きな戦争をしなくて済んだ。しかし、それでは困る勢力がいる。それが共和党系ならばネオコン(Neoconservatives)、民主党系ならばヒラリーたちの介入主義派(Interventionism)である。軍産複合体とも呼ばれる人たちだ。民主党系は、昔はリベラル・ホークとも呼ばれていた。

 バラク・オバマ前大統領がいまだにバイデン支持を表明していない、という奇妙な事実も考え合わせると、トランプ大統領の再選を阻もうとしている勢力は民主、共和両党に幅広く存在しているのではないかと考えられる。

(貼り付けはじめ)

世論調査:バイデンは重要な3つのラスト・ベルトの州でリード(Biden leads in three crucial Rust Belt states: Poll

ザック・バドリック筆

2020年4月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign-polls/494241-biden-leads-in-three-crucial-midwestern-states-poll

水曜日に発表されたロイター通信の世論調査によると、3つの「ラスト・ベルト」に属する3つの州でジョー・バイデン前副大統領がトランプ大統領をリードしていることが明らかになった。これらの3つの州は2016年のトランプ大統領の勝利にとって重要な役割を果たした。

ロイター通信・イプソス社の世論調査の結果では、ミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルヴァニア州の登録済み有権者の45%がバイデン支持と答え、39%がトランプ支持と答えた。

各州の結果を見ると、バイデンはトランプ大統領に対して、ウィスコンシン州で3ポイント、ペンシルヴァニア州で6ポイント、ミシガン州で8ポイントの差をつけてリードしている。

別のロイター通信・イプソス社の全国規模の世論調査の結果によれば、バイデンはトランプ大統領に対して8ポイントの差をつけてリードしている。

今回の世論調査の結果では、3つ全ての州でトランプ大統領の支持率は不支持率を下回った。それでも支持率と不支持率の差は全国規模での差に比べて小さいものであった。ウィスコンシン州の登録済み有権者の47%がトランプ大統領を支持し、53%が不支持と答えた。一方、ペンシルヴァニア州では支持率は48%、不支持率は52%だった。ミシガン州では、支持率は44%、不支持率は56%だった。

3つの州全ての有権者の最大の懸念としてコロナウイルスの感染拡大を挙げた。3つの州の有権者の48%がコロナウイルスの感染拡大は自分たちの共同体において最重要の問題だと答えた。15%が経済を、12%が医療制度を、2%が移民制度を最重要の問題に挙げた。

トランプ大統領とバイデンは、誰がウイルスの感染拡大と経済後退に大勝するのに最適かという設問では接戦を演じている。有権者の50%がバイデンと答え、47%がこの仕事にはトランプ大統領が最適だと答えた。

3つの州の有権者の約47%はトランプ大統領の感染拡大への対処を支持すると答えた。一方で、67%はそれぞれが住む州の知事たちの対処を支持すると答えた。

イプソス社は、ミシガン州の登録済み有権者612名、ペンシルヴァニア州の登録済み有権者578名、ウィスコンシン州の登録済み有権者645名を対象に、4月15日から20日かけて世論調査を実施した。この世論調査の全体の結果の誤差は3ポイントで、各州の世論調査の結果では誤差は5ポイントだ。

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