古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:マイク・ポンぺオ

 古村治彦です。

 新型コロナウイルス感染拡大はアメリカと中国の争いの最前線となっている。アメリカは「中国が初期対応を誤ったために世界中に感染拡大してしまった、責任を取れ」「国際調査団に中国のウイルス学研究所の徹底調査をさせろ」ということを主張している。中国政府は新型コロナウイルスが実験室などで人の手によって造られたものではないと主張し、また、中国が発祥ということはないと反発している。

 「新型コロナウイルスはアメリカが作った、いやいや中国が作った」という討論がずっと続いている。そうした中で、アメリカのドナルド・トランプ大統領とトランプ政権は中国に対して厳しい姿勢を維持している。その急先鋒は、マイク・ポンぺオ国務長官だ。ポンぺオ国務長官は最近になってトーンダウンしたが、「新型コロナウイルス発祥は中国だという証拠はたくさんある」と述べ、世界的な感染拡大の責任は中国にあると述べてきた。

 2020年5月24日の段階で、世界中で約540万の感染者、死者数が34万3000、回復者数が約225万となっている。アメリカは感染者数約167万、死者数が約9万8000、回復者数が約45万となっている。日本は感染者数約1万6500、死者数は808、回復者数は約1万3000となっている。アメリカは感染者数、死者数で世界の約30%を占めている。新型コロナウイルスは今年初めには中国、特に武漢市で猛威を振るったが、今や欧米、特にアメリカで猛威を振るっていると言ことになる。トランプ政権の初期対応の誤りによってアメリカが最大の感染者数年者数を出すということになったという批判もなされている。そうした批判をかわすためにもトランプ政権としては、中国に責任を押しつけたいということになる。

 マイク・ポンぺオという人物が中央政界で知られるようになったのは、2010年の連邦下院議員選挙からだ。2008年にバラク・オバマが大統領選挙で勝利した直後から、アメリカでは保守派の草の根運動としてティーパーティー運動が始まった。小さな政府を標榜し、国民皆保険を目指すオバマケアに反対する、「納税者」の運動を展開した。この運動の資金源は、世界的な大富豪であるコーク兄弟であった。ポンぺオはティーパーティー運動に参加し、2010年の中間選挙で連邦下院議員に当選した。その後、4期連続で当選した。トランプ政権のマイク・ペンス副大統領とポンぺオ国務長官はそれぞれ連邦下院議員の経験があるが、その時のスポンサーだったのはコーク兄弟だった。

 2016年の大統領選挙でドナルド・トランプが勝利を収めると、アメリカの情報・諜報機関CIAの長官に就任した。2018年にレックス・ティラーソンがトランプ大統領のツイッターでの書き込みによって解任された後、ポンぺオが国務長官に就任した。

 マイク・ポンぺオという人物はコーク兄弟の後ろ盾を受けて、中央政界に進出し、CIA長官を務め、現在は最重要閣僚である国務長官を務めている。ポンぺオはコーク兄弟の代理人だ、という記事もあったが、現状を見ればそれはとても甘い見方であったことが分かる。コーク兄弟をはじめとするリバータリアンは対外戦争に反対だ。しかし、ポンぺオの言動や行動はとても危なっかしい。中国やロシアとはいつでもやってやるぞという姿勢だし、トランプ大統領が始めた北朝鮮との直接交渉にしても、北朝鮮側から「ポンぺオ国務長官を外して欲しい」という要請をされてしまうほどだ。

 ポンぺオは複数の勢力とつながり、利用してここまでやってきたと考えることが妥当だろう。それはマイク・ペンス副大統領にも言えることだ。その勢力の中には、アメリカを対外戦争に引きずり込もうという勢力もある。表面ではネオコンや人道的介入派として出ている勢力であるが、その裏がどうなっているのか分からないが、かなり恐ろしい勢力がいるのではないかと私は考えている。トランプ政権は反中央政府、反ワシントン既成政治を旗印に誕生したが、更に一回り大きな勢力に利用されているのではないかと私は危惧を持っている。

(貼り付けはじめ)

●「沈黙のバットウーマン 武漢の研究者、コロナで先駆  米中対立の火種に」

2020/5/20   日経新聞   北京=多部田俊輔、編集委員 滝順一

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59338010Q0A520C2EA1000/

 中国の湖北省武漢市で世界で初めて感染が確認された新型コロナウイルスの発生源を巡って、米中の対立が止まらない。武漢ウイルス研究所が発生源だと主張する米国側に対し、中国側は「捏造(ねつぞう)」だと否定する。真相のカギを握るとみられているのが同研究所の石正麗氏だ。コウモリ由来のウイルス研究者の石氏は「バットウーマン(コウモリ女)」の異名も持つが、このところ動静が途絶えている。

「石氏が家族とともに1千ページに及ぶ秘密文書を持って欧州に逃亡した」。5月はじめ、武漢研究所「発生源」説がくすぶる中、こんな情報が米欧を駆け巡った。すぐに中国メディアは石氏が中国のSNS(交流サイト)に「国を裏切り亡命したとのデマはありえない」と投稿したと報じ、亡命説を否定。しかし石氏は表に出てこない。

「新型コロナウイルスは自然が人類に与えた懲罰であり、自分の命をかけて研究所か

らの流出はない」。石氏は2月初旬に中国のSNSで友人らにこのような趣旨の投稿をしてから、新型コロナの発生源に関して発言を控えている。

石氏は1964年生まれ。大学で遺伝学を学んだ後、政府直属の最高研究機関「中国科学院」傘下の武漢ウイルス研究所に入った。医学などの研究で名門とされる仏モンペリエ大学で2000年にウイルス学の博士号を取得し、武漢に戻った。

石氏が有名になったのは0203年に中国で流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の発生源究明での実績だ。各地の洞窟で野生コウモリを捕まえて体液を分析し、SARSウイルスの起源がコウモリだと証明した。13年に英科学誌ネイチャーで発表し、「バットウーマン」と呼ばれるきっかけにもなった。

15年には今回の新型コロナを予言したともいえる研究成果も、米ノースカロライナ大学のラルフ・バリク教授と共同で公表していた。バリク氏はコロナウイルス研究の第一人者。2人はコウモリのコロナウイルスが変異すると、SARSウイルスの治療薬が効かない新種のウイルスが生まれる恐れがあると、ネイチャー姉妹誌で公表した。

さらに石氏らの研究チームは1月に湖北省政府から新型コロナの研究を命じられると、22月初旬にいち早く、新型コロナもコウモリ由来の可能性が高いと発表していた。

一方、トランプ米大統領やポンペオ米国務長官は武漢ウイルス研究所が新型コロナの発生源だと主張する。最も危険性の高い病原体を扱える「バイオセーフティーレベル(BSL―4」の施設で、最初に感染者が出たとされる野生動物を売買する市場からも約30キロしか離れていない。

米ワシントン・ポストによると、18年に同研究所を視察した米当局者が「コロナウイルスの研究をしているが安全対策が不十分」と警告する公電を米国へ送っていた。ポンペオ氏は研究所の立ち入り検査を求めている。

ただウイルスが意図的に研究所から漏れたとみる専門家は少ない。米メディアによると、カリフォルニア大学の感染症専門家のジョナ・マゼット氏は新型コロナの感染が始まる前に「石氏の研究所には新型コロナウイルスはなかった」と指摘。武漢研究所が発生源だとする米政権の主張に反論する。実情を知る石氏は口を閉ざしたままだ。

大統領選を控えるトランプ政権は「中国たたき」が得票につながるとみて強硬姿勢に傾く。習近平(シー・ジンピン)指導部はポンペオ氏を標的に「人類共通の敵」などと対米批判を繰り返す一方、国内では研究者を含めた情報統制を強める。

「共産党の指導が厳しく愛国的なテーマを掲げないと研究が難しくなっている」。中国の有力大学で教える外国人専門家は漏らす。関係者によると、新型コロナも研究者らが自由に発信することは許されない。コロナ禍の克服には変異を繰り返しながら感染を広げるウイルスの正体を突き止めることが必要だ。中国の情報開示が問われている。

(北京=多部田俊輔、編集委員 滝順一)

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●「ポンペオ氏、新型コロナ発生源は「不明」 武漢研究所説から転換」

2020.05.18 Mon posted at 10:15 JST CNN

https://www.cnn.co.jp/usa/35153896.html

ワシントン(CNN) ポンペオ米国務長官は新型コロナウイルスが中国・武漢のウイルス研究所から発生したとの説から方向転換し、発生源は不明との立場を示した。米ニュースサイト、ブライトバートが16日に配信したインタビューの中で語った。

ポンペオ氏はこの中で、新型ウイルスの発生源を特定するため、支援チームの派遣を繰り返し要請してきたと述べた。

同氏はまた、ワクチン開発に取り組む研究者らにとって、発生源を知ることは重要な「鍵」になると強調。そのうえで中国の対応は透明性を欠くと改めて非難し、米国による制裁の可能性に言及した。

ただし制裁の具体的な手段については、トランプ大統領が十分な説明を受けたうえで決断を下すことを望むと述べた。

ポンペオ氏はこれまで、新型ウイルスが武漢のウイルス研究所から発生したと主張。今月初めのインタビューでは「大量の証拠」があると述べたが、その後「確信はない」と軌道修正していた。

トランプ氏も同様に「証拠を見たことがある」と主張したが、研究者らや国際情報共有網からは「可能性は極めて低い」との見解が出され、米情報機関は両方の可能性を検討中と述べていた。

中国政府は研究所説を、トランプ氏の再選に向けた中傷作戦だと批判している。

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ポンぺオ国務長官が険悪な雰囲気の記者会見の中で武漢の実験室をめぐる主張を擁護した(Pompeo defends Wuhan lab claims in combative press conference

ロウラ・ケリー筆

2020年5月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/496356-pompeo-defends-wuhan-lab-claims-in-combative-press-conference

マイク・ポンぺオ国務長官は水曜日、記者たちと言い争いを行った。中国のある実験室から新型コロナウイルスの感染拡大が始まったのかどうかという疑問についてやり合った。こうした主張は情報諜報機関の幹部や衛生の専門家たちから否定されている。

ポンぺオはBBCの記者バーバラ・プレット・アッシャーからのウイルスの起源に関する諜報について質問に対して次のように答えた。「バーバラ、バーバラ、いったん落ち着きましょう。」

Your efforts to try and find — just to spend your whole life trying to drive a little wedge between senior American officials … it's just false,”

ポンぺオは、中国の武漢ウイルス学研究所でウイルスに接したことで新型コロナウイルスの感染が始まったという理論を主張している。中国の武漢ウイルス学研究所である科学者がウイルスに接触したことが始まりという話だ。こうした主張を基にして、アメリカ政府は感染拡大に関して中国政府が国際的な調査団による中国国内の調査を許可すること、世界規模の拡大に責任を取ることを求めている。

ポンぺオは日曜日に行ったあるインタヴューの中で、「武漢という中国の都市にあるある実験室からウイルスが流出したことを示す“多くの証拠”が存在する」と述べた。しかし、この発言に対しては政府高官と衛生の専門家たちから否定されている。

米統合参謀本部議長であるマーク・ミリー大将は火曜日、ウイルスの発生は自然なものであり、実験室から偶然にもしくは意図的に流出したことを示す「決定的な証拠」は存在しないと述べた。

世界的な科学者たちの合意は、今回の新型コロナウイルスはある動物の中に発生して、人間に感染したというものだ。アメリカ国立アレルギー・感染症研究所所長でホワイトハウスの対コロナウイルスのタスクフォースの主要メンバーであるアンソニー・ファウチは、ウイルスはある実験室から流出したものという主張を否定し、この疾病は野生から出てきたと述べた。

国務省は「多くの証拠」を肯定する新しい情報を得ているのかと問われ、ポンぺオは、アメリカ政府はウイルスがある実験室から発生したのかどうか、そして証拠があるのかどうかについて関知していないと答えた。

ポンぺオ国務長官は「これらの噺はどちらも全体として首尾一貫しています」と述べた。

ポンぺオは次のように述べた。「あなたが分からないことについて私も確実なことは何も言えないのですよ。新型コロナウイルスがある実験室から発生したという主張には確実性はなく、明らかな証拠もありません。ウイルス発生の起源と証拠についてのアメリカ政府の声明はどちらも正しい可能性があります。渡したこれら2つの主張を行います。政権幹部も同様に2つの主張を行います。これらはすべて真実です」。

先週、アメリカの情報機関の幹部たちは公開声明を発表した。これは極めて珍しいことだ。この声明の中で、幹部たちは今回の新型コロナウイルスはある動物の中で発生したという世界的な科学者たちの合意に同意したが、ある実験室での事故で発生した結果であるのかどうかについて調査を継続しなければならないと主張した。

中国は昨年12月末に世界保健機関(WHO)に対して肺炎の「奇妙な」ケースの発生を報告した。そして同時に、武漢市の海鮮市場での販売員と消費者のクラスターが発生したとも報告した。

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中国との言論戦の中で、ポンぺオが先鋒として登場(Pompeo Emerges as Point Man in War of Words With China

―ポンぺオを批判する人々は、ポンぺオは感染拡大に対する世界規模での対応のために強調するよりも中国攻撃に狂奔していると述べている。ポンぺオを支持する人々は、ポンぺオは中国の責任追及をしているのだと述べている。

ロビー・グラマー筆

2020年5月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/05/01/coronavirus-trump-pandemic-pompeo-attack-china/

最近の数週間、マイク・ポンぺオ米国務長官は、トランプ政権の強硬な対中国戦略の顔として出てきている。コロナウイルス感染拡大に関して中国非難のメッセージの拡散のために保守系メディアに依存している。多くのフォックスニュースや保守系のラジオのトークショーで中国叩きが行われており、ポンぺオはそれらに依存している。

ポンぺオはダン・“オックス”・オクスナーに対して「私たちの姿勢は明確であり、それは中国共産党は特別の責任を負っているというものだ」と述べた。オクスナーは保守系のラジオのトークショーの司会者であり、ポンぺオは木曜日だけでこうしたラジオのトークショー4番組に出演した。その中にオクスナーの番組も含まれていた。「このウイルスは武漢で発生しました。中国は世界とデータ、情報を共有する特別な責任を持っています。そして、透明性を確保する必要があります」。

外交分野以外の人々と元外交官たちにとっては、ポンぺオ国務長官のメディアを使った大規模な宣伝によって保守派の人気を高めている。これはドナルド・トランプ大統領の支持基盤を活性化するように見える。感染拡大によるロックダウンによって世界経済は減退し、アメリカ国内の失業数は急増している。このような状態の中で、保守派の活性化は2020年の選挙にとって重要である。批判者たちは、ポンぺオ国務長官が感染拡大に対する世界的な反応を協調させることではなく、政権による攻撃の急先鋒になっていると述べている。ポンぺオ国務長官の支持者たちはこうした批判を党派性の強い情報操作(spin)に過ぎないとしている。

中国はポンぺオ国務長官に反撃をしている。先週、中国は国営メディアを使って、通常では考えられない規模で個人攻撃を行った。この時、中国政府は、「中国がウイルスの感染拡大の初期段階で対応を誤り、世界規模で感染が拡大した」というアメリカからの批判をかわそうと躍起になっていた。中国共産党機関紙『人民日報』紙のある論説には次のような一節があった。「ポンぺオのような政治家の頭の中には、偏見、憎悪、個人の利益しか存在しない。ポンぺオの発言や行動は人々を困惑させている。そのようないじめと荒唐無稽な発言で“アメリカを再び偉大にできる”などと彼は考えているのか、と」。

今年の4月だけで、ポンぺオ国務長官は90以上のアメリカ国内と外国の報道機関のインタヴューに応じた。これは感染拡大初期と比べると大きな変化である。4月、ポンぺオ国務長官は米国務省内でほぼ定期的な記者会見も開いていた。様々な報道機関からの記者たちが彼に質問をすることができる機会だ。加えて、国務省は、感染拡大やその他の問題についての国務省の対応について、国務省の幹部職員たちにほぼ毎日電話でのブリーフィングを行ってきた。

外交官出身者の中には、ポンぺオ国務長官が特定の政治的志向を持つ選ばれた国内の聴衆に集中し過ぎていると批判している。ポンぺオ国務長官が一対一のインタヴューやトークショーに出演しているが、その多くは保守系メディアである。国務省は一般の人々にも利用できるように、ポンぺオと報道機関のインタヴューの文字起こしを発表している。複数の元外交官たちは本誌の取材に対して、ポンぺオ国務長官がトランプを擁護しているメディアにこだわっているのは、こうしたメディアにばかり出ることで、厳しい質問を受けることがないからだ。また、外国メディアからのインタヴュー受ける代わりに保守系メディアのインタヴューを受けている。外国メディアの取材に応じることは、アメリカの政策について諸外国の人々により良く説明する機会となるがそれを放棄している。

職業外交官出身で、バラク・オバマ大統領時代のホワイトハウスで国際社会関与担当の部長を務めたブレット。ブラエンは次のように述べた。「ポンぺオ国務長官は、トランプ政権が採用している政策の理由について世界とコミュニケーションするためにほとんど時間を使っていません。彼は、国務長官の役割をより党派性の強いものにしてしまいました。歴史的に見て、国務長官は争いから超然としていようとしてきました。私が現在の政権の政策に同意できないにしても、国務長官の仕事は、世界各国のメディアに対して、アメリカ政府の政策の正当性を説明することであり、そのために最前線に立つことなのです」。

アメリカ国務省は、感染拡大によって民間航空のキャンセルが相次ぎ、渡航禁止などを実施する外国が増えている中で、海外で足止め状態になっている数万単位のアメリカ国民の帰国というこれまでにない仕事を実行しなければならなくなっている。そうした中で、ポンぺオ国務長官は国内のメディアにばかり登場しているのはこれらの仕事の実行に役立たないと指摘している人々もいる。世界各国に置かれているアメリカ大使館と領事館は今年1月以降、これまでに7万人以上のアメリカ国民の帰国を援助している。国務省の幹部たちは、在外公館は民間航空とチャーター機を使ってアメリカ国民を帰国させていると述べている。

ポンぺオ国務長官がメディアに頻繁に登場しているのは、トランプ政権のより大枠の戦略である、中国が感染拡大への対応を誤ったのかどうかについての独立機関による調査を求めることとウイルスの起源について疑問が多く出ている中で国際機関による調査官たちに中国国内のウイルス研究施設の調査を許可するように中国政府に圧力をかけること、この2点に沿った動きなのである。トランプ政権はまた、世界保健機関(World Health OrganizationWHO)の世界的な感染拡大への対応における役割について非難している。WHOは中国からの圧力に屈ししていると攻撃している。トランプ政権を批判している人々は、政権が感染拡大に対する対応が遅れたことを隠すために批判を行っていると述べている。アメリカ国内では110万以上の感染者数を確認し、死者は約6万5000名に達している。

トランプ政権は、世界保健機関が中国の圧力に屈しているかを調査するために、しばらくの間予算供与を停止すると発表した。

民主党所属の連邦議員たちはこのような手段を批判している。彼らは、確かにWHOは失敗をしたが、アメリカからの支援を必要としている、と発言した。連邦上院少数派(民主党)院内総務チャック・シューマー連邦上院議員、連邦上院外交委員会で民主党側の最上位のメンバーであるボブ・メレンデス連邦上院議員、その他の連邦上院議員たちは4月20日付で書簡をポンぺオ国務長官に送付した。その中で次のように述べている。「感染拡大への対応と封じ込めに関しては複雑さを増している。そうした中で、国際的な対応を強調させるためには更なるアメリカの指導色が必要となる。WHOにおける中国の影響力の増大に対する解決策は、アメリカの指導力と関与であって、アメリカが不在となることではない」。

水曜日の記者会見でポンぺオは次のように述べた。「アメリカは世界保健機関に最大の資金提供を行っています。世界保健機関は目的達成に失敗しました。きちんとした結果を得るためにアメリカの納税者のお金をどのように使うべきかを把握するために調査を行っています。私たちは“健康(保健、health)”を名前につけているある故草木機関が実際に私たちが必要としている結果をもたらしていると言いつくろいながら、ウソをつくようなことをすべきではないのです」。

※ロビー・グラマー:『フォーリン・ポリシー』誌の外交と国家安全保障担当記者

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 ロイター通信がドナルド・トランプ大統領と民主党の大統領選挙候補者に内定しているジョー・バイデン前副大統領に関する世論調査を実施した。五大湖周辺の「ラスト・ベルト(Rust Belt)」に属するミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルヴァニア州での世論調査を実施した。2016年の米大統領選挙ではこの3つの州で、トランプ大統領が予想外の勝利を収め、大統領に当選した。ラスト・ベルトは伝統的に工業地帯で、労働組合が強く、民主党の金城湯池であった。今回の大統領選挙でもこの3つの州は激戦州であり、民主党は奪還を目論んでいる。

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ラスト・ベルトの地図

 今回の世論調査の結果は、3つの州ともバイデンがトランプをリードしているというものだった。しかし、その差は小さいものであり、接戦となっている。しかし、問題は、トランプ大統領は新型コロナウイルスとの戦いの最高司令官、「戦時大統領」であり、二期目を目指す現職なので、バイデンをリードしていなければならない立場にある。トランプ大統領は大美厳しい立場にある。

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 大統領選挙は選挙人の総取りであり、ペンシルヴァニア州には20名、ミシガン州には16名、ウィスコンシン州には10名が配分されている。合計すると46名だ。前回の大統領選挙ではトランプ大統領は306名、ヒラリー・クリントンが232名という結果だった。トランプ大統領がこの3つの州を失うということになれば選挙人の過半数270名に到達できないということになる。

 有権者の最大の関心事は新型コロナウイルス対策であり、次に経済問題、更には医療制度と続く。トランプ大統領としては、新型コロナウイルス感染拡大を止め、経済活動を再開させて、支持を取り戻さねばならない。しかし、その道筋はまだついていない。そもそもトランプ大統領はマイク・ペンス副大統領を責任者にしたはずだが、毎日の記者会見に臨むことになって、ペンスに責任転嫁したのに、それがうまくいっていない。

 ペンスもマイク・ポンぺオ国務長官もトランプ大統領の陰に隠れ目立たないようにしているが、時にメディアで話題になるのは対中強硬姿勢だ。トランプを隠れ蓑、盾(たて)として使いながらやりたい放題という感じだ。そもそもこの2人はジョージ・W・ブッシュ政権の副大統領だったディック・チェイニーに連なる人物たちで、一部では「まるでチェイニー政権ではないか」とまで言われている。

 バイデンは誰にでも良い顔をするし、何よりも民主党のグローバリスト系だ。連邦上院議員だった2003年にイラク戦争開戦に賛成票を投じたように、「アメリカの世界支配」は正当だと考える人物だ。トランプ政権内に、イラク戦争を副大統領として主導したチェイニー系がおり、民主党にはバイデンがいる。これではトランプ大統領は四面楚歌(しめんそか)の状態で、味方は娘のイヴァンカとイヴァンカの夫ジャレッド・クシャナーくらいということになる。

 トランプ大統領はアイソレーショニズム(国内問題解決優先主義)、「アメリカ・ファースト」を訴えて当選した。だからこの4年間、アメリカは大きな戦争をしなくて済んだ。しかし、それでは困る勢力がいる。それが共和党系ならばネオコン(Neoconservatives)、民主党系ならばヒラリーたちの介入主義派(Interventionism)である。軍産複合体とも呼ばれる人たちだ。民主党系は、昔はリベラル・ホークとも呼ばれていた。

 バラク・オバマ前大統領がいまだにバイデン支持を表明していない、という奇妙な事実も考え合わせると、トランプ大統領の再選を阻もうとしている勢力は民主、共和両党に幅広く存在しているのではないかと考えられる。

(貼り付けはじめ)

世論調査:バイデンは重要な3つのラスト・ベルトの州でリード(Biden leads in three crucial Rust Belt states: Poll

ザック・バドリック筆

2020年4月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign-polls/494241-biden-leads-in-three-crucial-midwestern-states-poll

水曜日に発表されたロイター通信の世論調査によると、3つの「ラスト・ベルト」に属する3つの州でジョー・バイデン前副大統領がトランプ大統領をリードしていることが明らかになった。これらの3つの州は2016年のトランプ大統領の勝利にとって重要な役割を果たした。

ロイター通信・イプソス社の世論調査の結果では、ミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルヴァニア州の登録済み有権者の45%がバイデン支持と答え、39%がトランプ支持と答えた。

各州の結果を見ると、バイデンはトランプ大統領に対して、ウィスコンシン州で3ポイント、ペンシルヴァニア州で6ポイント、ミシガン州で8ポイントの差をつけてリードしている。

別のロイター通信・イプソス社の全国規模の世論調査の結果によれば、バイデンはトランプ大統領に対して8ポイントの差をつけてリードしている。

今回の世論調査の結果では、3つ全ての州でトランプ大統領の支持率は不支持率を下回った。それでも支持率と不支持率の差は全国規模での差に比べて小さいものであった。ウィスコンシン州の登録済み有権者の47%がトランプ大統領を支持し、53%が不支持と答えた。一方、ペンシルヴァニア州では支持率は48%、不支持率は52%だった。ミシガン州では、支持率は44%、不支持率は56%だった。

3つの州全ての有権者の最大の懸念としてコロナウイルスの感染拡大を挙げた。3つの州の有権者の48%がコロナウイルスの感染拡大は自分たちの共同体において最重要の問題だと答えた。15%が経済を、12%が医療制度を、2%が移民制度を最重要の問題に挙げた。

トランプ大統領とバイデンは、誰がウイルスの感染拡大と経済後退に大勝するのに最適かという設問では接戦を演じている。有権者の50%がバイデンと答え、47%がこの仕事にはトランプ大統領が最適だと答えた。

3つの州の有権者の約47%はトランプ大統領の感染拡大への対処を支持すると答えた。一方で、67%はそれぞれが住む州の知事たちの対処を支持すると答えた。

イプソス社は、ミシガン州の登録済み有権者612名、ペンシルヴァニア州の登録済み有権者578名、ウィスコンシン州の登録済み有権者645名を対象に、4月15日から20日かけて世論調査を実施した。この世論調査の全体の結果の誤差は3ポイントで、各州の世論調査の結果では誤差は5ポイントだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 イランのイスラム革命防衛隊少将でエリート部隊であるコッズ部隊の司令官だったカシーム・スレイマニが2020年1月3日に殺害された。同時にイラクのシーア派民兵組織カタイブ・ヒズボラの最高指導者アブ・マフディ・アル・ムハンディスも殺害された。この殺害はイラク国内、バグダッド国際空港近くで実行された。
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スレイマニ

 イラク国内でアメリカ関連施設に対しての攻撃が実行され、アメリカ人の犠牲者が出て、それに対してアメリカは報復措置としてカタイブ・ヒズボラの施設を空爆し死傷者が出た。この攻撃に対してバグダッドにあるアメリカ大使館に対して激しい抗議活動が行われたが、2019年年末で一応収束していた。カタイブ・ヒズボラが抗議活動を止めるように命じた。これで一応の安定が図られたが、2020年1月3日にスレイマニが殺害された。
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スレイマニ葬儀の様子
 これによって事態は一気に緊迫感を増した。これまでアメリカもイランも事態を緊迫化させないようにしてきた。しかし、アメリカのドナルド・トランプ大統領は事態を大きく変化させ、中東情勢を一気に緊迫化させた。下の記事のタイトルは「トランプ大統領は中東で危険な火遊びをしている」だ。
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ドナルド・トランプ
 トランプ政権はイランが大規模かつ深刻な反撃をしてこないという前提で、スレイマニ殺害を行った。それどころか、「戦争を止める」ためにスレイマニ殺害を行ったとしている。これに対してイランが同等の報復ということになると、アメリカ政府の最高幹部の暗殺か、アメリカ人を多数殺害することであるが、これだと全面戦争になってしまう。これはアメリカもイランも望んでいない。そうなれば、イランは屈辱を受け入れて忍従するということになる。しかし、これではイラン国内の不満を抑えることは難しい。だから、どうしてもある程度の報復を行うことになる。
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ポンぺオ
 そもそも外国の戦争や政権転覆にアメリカは関わらない、米軍は撤退するという主張でトランプ大統領は当選した。今回、イラク国内でこのような事件を起こしておいて、イラクにいづらくなることは確実だ。米軍のイラクからの撤退ということになると、イラクはイランの勢力圏にはいるということになる。そうなればイランのシリア支援も更に高度に続くことになる。イランからのシリア支援はますます実行しやすくなる。イランにイラクを与える(米軍の撤退)代わりにスレイマニを殺害したということは考え過ぎだろうか。

そのような事態まで想定しての今回のスレイマニ殺害ということだとすると、トランプ政権の深謀遠慮ということになるが、下の記事では慎重に検討せずにやってしまったという評価である。

 国防総省、アメリカ軍は慎重な姿勢であったことを考えると、スレイマニ殺害は諜報機関、CIAが実行した可能性が高い。マイク・ポンぺオ国務長官は連邦下院議員から2017年1月にトランプ政権のCIA長官に就任した(2018年4月まで)。その後、政権内の横滑り(地位としては上昇)して国務長官に就任し、現在に至っている。無人機による攻撃が可能になってから、CIAとアメリカ軍(特殊部隊)は暗殺などの特殊作戦をめぐって争っている。今回はCIA主導、ポンぺオ主導で攻撃が行われたと考えられる。

 アメリカとイランが共に全面戦争に突入したくないと考えているのは救いだ。しかし、状況をコントロールできるかは不透明だ。不測の事態によって人間のコントロールなど簡単に無力化してしまう。ショックから少し落ち着きが出てきているが、楽観は禁物だ。

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領は中東で危険な火遊びをしているTrump Is Playing With Fire in the Middle East

―アメリカ大統領トランプはイランのスレイマニに対する攻撃は「戦争を止める」ためだったと主張するかもしれないが、攻撃は彼の意図通りにはいかないだろう

コリン・カール筆

2019年1月4日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/01/04/trump-is-playing-with-fire-in-the-middle-east/

2011年6月、アメリカ軍がイラクから撤退しつつある中、イランが支援している民兵組織がアメリカ軍の各基地に一連の強烈なロケット弾攻撃を行った。10名以上のアメリカ軍将兵が死亡した。これは1か月で亡くなった米軍将兵の数で最大数となった。当時のオバマ政権の前には報復のための2つの選択肢が存在した。1つはイラン国内を攻撃し、イランの工作員たちを殺害することで、もう1つはイラクの民兵組織のロケット弾部隊に対して、イラク国内で攻撃するがその際にはアメリカ軍の特殊部隊だけを使用することだった。イランとのより大規模な戦争状態に進むことを思いとどまらせるために、オバマ政権は後者を選択した。

2019年12月27日にキルクーク近郊の基地に対してロケット弾攻撃が行われ、アメリカ人の建設請負業者1名が死亡し、アメリカとイラクの複数の作業員が負傷した。これに対する報復として、先週、トランプ政権はカタリブ・ヒズボラに対して空爆を実行した。カタリブ・ヒズボラはイラクの民兵組織で、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)と緊密な関係を持っている。しかし、イラク時間の先週金曜日午前(アメリカでは木曜日夕方)、ドナルド・トランプ米大統領は後先を考えることなく、無人機による攻撃を許可した。そして、バグダッド空港の近くでイスラム革命防衛隊のコッズ部隊の司令官であり、イランの最重要の指導者の一人であるカシーム・スレイマニ少将とイラク民兵組織の指導者たちが殺害された。

スレイマニの死によって、アメリカ政府とイランとの間の圧力と挑発の綱引きのサイクルは1カ月間も続き、更に極めて危険な段階に進んでいる。地域全域に火の手が広がるリスクはこれまでよりも高まっている。攻撃の直前、米国防長官マーク・エスパーはアメリカ軍を防衛するために予防的行動をとると警告を発した。エスパーは「ゲームは変化した」と述べた。しかし、これはゲームではない。アメリカとイラン両方の掛け金は高くはない。

アメリカ人でスレイマニのために涙を流す人はいないだろう。イランのエリート準軍事的組織であるコッズ部隊司令官として、スレイマニは、アメリカのイラク占領期間中、イラク国内のシーア派民兵組織を糾合してアメリカ軍を攻撃させ、数百名のアメリカ軍将兵の命を奪った。彼はまたレバノンのヒズボラ、ガザ地区の聖戦主義者たち、イエメンのフーシ派民兵組織、シリアの残忍なバシャール・アル・アサド政権への支援というイランの政策の方向性を決定づけた。彼はイラン国外でのイランによるテロ攻撃と国内での反体制派に対する残忍な弾圧に責任を持つ人物であった。

トランプ政権は2015年のイランとの間の核開発に関する合意を放棄し、イランに対する経済制裁の更なる強化のための圧力を強めている。こうした動きに対抗するために、イラン政府は最近になって、スレイマニの関与を示唆するような一連の挑発を行った。その中にはイラクに駐留するアメリカ軍への脅迫も含まれていた。米軍統合参謀本部議長マーク・ミレイは、2019年10月以降頻発しているイラク国内へのアメリカ関連施設へのロケット弾攻撃についてはイランが支援している複数の組織が関与していると発言している。しかし、2019年12月27日の時点ではアメリカ人の血が流れるということはなかった。しかし、2019年12月27日にアメリカ人の死亡者が出ると、アメリカ政府はすぐに報復を実行した。イラクとシリアにある民兵組織カタイブ・ヒズボラの複数の拠点などを攻撃した。この報復攻撃に対して、シーア派民兵組織の幹部たちは人々を扇動してバグダッドにあるアメリカ大使館への抗議を行わせた。これはベンガジ事件を想起させるものとなった。これがトランプ大統領のスレイマニ殺害の決定までの事情である

テロリストの親玉が一人死亡したことはアメリカ人の基底にある正義の感覚にとにもかくにもかなうものではあるが、彼の暗殺によってこれから起きることが統御不能のスパイラルに陥り、アメリカ国民とアメリカの国益をより危険に晒すことになるという現実的な見方を曖昧にするべきではない。

ブッシュ(息子)政権とオバマ政権は統御不能になる懸念からスレイマニに対して直接攻撃を行わないという決断を下した。これには国防総省と諜報関係部門が共有していた。攻撃をすれば事態が一気に悪化するということに同意していた。2019年春、国防総省はホワイトハウスに対してイスラム革命防衛隊を外国のテロリスト組織と指定することに対して懸念を表明した。国防総省はそうすることでイラクやその他の場所にいるアメリカ政府関係者の声明を重大な危険に晒すと主張した(トランプは結局そのようにしたのだが)。2019年6月、当時の米軍統合参謀本部議長ジョセフ・ダンフォードはイランによるアメリカの無人機撃墜の報復のためにイラン本土を攻撃しないようにと訴えた。これまで続いてきた慎重な姿勢は覆された。

トランプ大統領とマイク・ポンぺオ国務長官は、スレイマニの攻撃についてアメリカ軍へのこれ以上の攻撃を防ぐために必要な措置であったと正当化している。トランプ大統領に言わせれば「戦争を止めるため」ということであった。トランプ政権が重要な情報を発表していない中でこれらの主張を評価することは難しい。一方、国防総省が発表した声明では今回の攻撃について抑制的であり、イランからの差し迫った攻撃については言及しなかった。更に言えば、いくつかの報道によれば、トランプ大統領がスレイマニを標的とすることを許可したのは2019年12月27日のロケット弾攻撃の後であった。また、アメリカ軍特殊部隊はそれ以降攻撃の機会のために待機していた。こうしたことから、スレイマニに対する攻撃がバグダッドにあるアメリカ大使館への抗議が終わり、イラクでの状況が深刻化していない中で起きた理由を説明できることになる。

それにもかかわらず、トランプ大統領と彼の最側近たちはスレイマニ殺害のための理論を持っていることは明らかだった。彼らは、イランは張子の虎であり、鼻面をこっぴどく殴りつければ、穴の中に引っ込んでしまうと確信していた。過去においてイランのイスラム政権はより強力な敵意に直面すると慎重さを示したというのは事実だ。また事態の深刻化に対処するために、イランの指導者たちは歴史的に見て自分たちの否定されるべき行為を隠すために非公然の攻撃を行う、もしくは外国にいるイランの代理勢力や味方勢力がアメリカ、イスラエルの攻撃対象となっている場合には別の方法を模索してきたということもあった。

しかし、スレイマニに対する攻撃はこれまでの状況とな大きく異なっている。今回の攻撃はイラン国内で二番目に重要な最高幹部と想定される人物に対する公然の攻撃であった。イラン側から見れば、今回の暗殺はアメリカで言えばCIA長官、国防長官、陰の国務長官の役割を一手に引き受けていたような最重要人物が殺害されたに等しいということになる。アメリカ側が認めるにしても認めないにしても、イラン側はこれを戦争行為だと見なす。イランの政権は自分たちの選ぶタイミング、場所、方法で対応することになるだろう。なぜならば、イランの政権がアメリカとの衝突よりも恐れているのは、政権に対するこのような直接的な挑戦に対して引いてしまうことだからだ。

スレイマニの殺害に対して、イランの最高指導者アル・ハメネイ師は「昨晩のスレイマニと他の殉教者たちの流血を手につけている罪人たちに対しては強力な復讐」を行うと警告を発した。復讐は様々な形を取ることになるだろう。イランはシーア派民兵組織に対してイラク国内のアメリカ政府関係者に対するロケット弾とロードサイド爆弾による攻撃を激化する、またバグダッドにあるアメリカ大使館に対する更なる抗議と攻撃を組織化する許可を与える可能性がある。イランの代理勢力は、シリア東部の油田を防衛している数百名単位のアメリカ軍将兵を標的とする、もしくはアフガニスタンに駐留する米軍への直接攻撃を行う可能性がある。イランはイラク国内もしくはペルシア湾岸地域にあるアメリカ関連施設に対して弾道ミサイルを発射する可能性も高い。また、ホルムズ海峡での国際海運を妨害の度合いを高めるかもしれない。中東地域の重要なエネルギー関連施設に対してミサイルもしくは無人機を使った攻撃を仕掛けるかもしれない。レバノンのヒズボラやパレスチナの民兵組織を焚きつけてイスラエルを攻撃させるかもしれない。イラン政府は中東地域のアメリカ人やアメリカの利益に対してのテロ攻撃を組織化する可能性がある。1980年代のベイルートや1996年にサウジアラビアのコーバー・タワーでの出来事が再現されるかもしれない。もしくはアメリカ国内での攻撃を計画するかもしれない。これは2011年にワシントンで駐米サウジアラビア大使に対しての攻撃が計画されたことを想起させる。イランは現在急速に発展させているサイバー攻撃能力を使ってアメリカ本土を攻撃する可能性もある。

もしイランによる報復によってアメリカ国民の血が更に流されることになると、アメリカは報復攻撃を行うことになる。それは国防総省の最新の声明から言葉を借りるならば、「将来のイランによる攻撃計画を抑止する」ことを目的とするものとなる。そして、イランの指導者たちは、アメリカによる更なるイランの軍事組織や利益に対する攻撃が行われる可能性に直面する中で、アメリカ政府と同様の計算を行うことになるだろう。アメリカもイランも全面戦争は望まないだろう。しかし、どちらかが事態を深刻化させ、それに対して相手も深刻化に付き合うとなり、双方は独自の論理で「自分たちは自衛をしているだけだ」と主張することになる。そして、この激しいスパイラルから完全に抜け出すことは難しくなる。

アメリカとイランが地域戦争を避けることになっても、双方はスレイマニの殺害によって引き起こされる副次的結果は避けられないだろう。スレイマニ対する攻撃に対してイラク国民は憤激している。この結果、イラク国内におけるアメリカの立場は脆弱なものとなる可能性が高い。イラクの暫定首相アディル・アブドゥル・マウディは今回の攻撃はイラクの主権に対する侵害であり、イラク国民に対する侵略行為であると非難している。また、イラク国民議会が短期間でのアメリカ軍のイラクからの完全撤退を求めるようなことになっても驚きはないとも発言している。トランプ大統領は「アメリカに対して感謝のない」同盟諸国を支援することに対して長年疑義を呈してきたので、その機会を利用して米軍を撤退させる可能性もある。米軍の撤退はトランプの支持者たちには評価されるだろう。しかし、そうなればイラク国内におけるイランの影響力がさらに高まることになり、イスラム国の再建をチェックし阻止することは更に難しくなる。

核開発についても、イランは更に長髪の度合いを高める可能性が高い。2019年、トランプ大統領による核開発をめぐる合意の放棄に対して、イラン政府は各開発プログラムの一部を徐々にではあるが再開させている。アメリカとの緊張関係を高める中で、更に劇的なことが起きる可能性が高い。その中にはさらに高いレヴェルでのウラニウム濃縮も含まれている。そして、イランが核兵器のための燃料を製造する能力獲得に近づけば近づくほど、これはつまり外交的解決がどんどん遠ざかることを意味するが、アメリカもしくはイスラエルと軍事的対峙状態が出現するようになるだろう。

これらの危険の中で、トランプ政権は戦略と計画をアメリカ国民に示して、アメリカ国民の動揺を抑えねばならない。アメリカ政府は攻撃を正当化し、攻撃によって起きる可能性のある様々なリスクを軽減するためにも情報を国民に与える必要がある。もしトランプ以外の人物が政権を率いていたら、中東地域にいるアメリカ軍将兵や外交官の安全を確保するために首尾一貫した国家安全保障プロセスを維持しただろうし、民間人脱出計画も準備しただろうし、中東地域とアメリカ国内の重要な社会資本へのイランが支援するテロ攻撃やサイバー攻撃に対する防御を強化しただろうし、アメリカ軍がイランとの関係を深刻化させることを防ぐ、もしくは統御できるようにするために公のメッセージを発せるように準備させていたことだろう。現在まで、トランプ大統領は上記のような慎重さを示すようなことは何もしていない。トランプ政権は上記のようなことを実行するための能力があることを示してもいない。現在、トランプ大統領が行った極めて重要な決定のために、トランプ政権は重大な試練に直面している。アメリカが真っ暗な海に頭から飛び込む時、政権が先を全く見通せない状態でかじ取りを任せることになる、これが本当の危険なのだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 少し古い記事ですが、2回目の米朝首脳会談直前の首脳会談に関する分析記事をご紹介します。

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 記事の内容は、トランプ政権内に北朝鮮に対する姿勢で2つの流れがあり、北朝鮮に対して融和姿勢を取る派(トランプ大統領とスティーヴン・ビーガン特別代表)と強硬姿勢を取る派(ジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官やマイク・ポンぺオ国務長官)があり、強硬姿勢派が影響力を強めている、というものです。また、北朝鮮は本当に非核化を進める意図はないのだということも主張しています。核兵器を持ちつつ、経済発展の道を進む、ということが北朝鮮にとっては最善の道である、ということを述べています。

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 李英哲、マイク・ポンぺオ、スティーヴン・ビーガン

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手前からジョン・ボルトン、ポンぺオ、トランプ

 「朝鮮半島の非核化(denuclearization of Korean Peninsula)」という言葉は、受け取り方でどうとでも解釈できるものです。このブログでも以前に書きましたが、朝鮮半島の非核化となると、多くの人々は、北朝鮮が核兵器を廃棄すること、と解釈します。しかし、この言葉は朝鮮半島であって、北朝鮮(North Korea)ではなく、朝鮮民主主義人民共和国(Democratic People’s Republic of KoreaDPRK)の非核化とは書いていません。北朝鮮からすれば、自国が非核化するならば、韓国の非核化、韓国は核兵器を保有していませんから、韓国に対するアメリカの核の傘を取り去ること、これが朝鮮半島の非核化ということになります。こうなると、まず言葉の定義から問題になって、先に進むことが難しくなります。

 

 2回目の首脳会談はワーキングランチが取りやめになり、共同宣言が出ず、金正恩北朝鮮国務委員会委員長は不機嫌な態度で会場を後にしました。北朝鮮としては、アメリカから何かしらの譲歩があるのではないかと期待したところがあったのかもしれません。トランプ大統領は交渉を継続すると明言しましたが、それ以外に何の成果もありませんでした。決裂しなかったということが唯一の救いということになりました。

 

 下に紹介している記事は、首脳会談直前に発表されたものですが、この記事は今回の首脳会談の結果を言い当てています。そうなると、今回の首脳会談に関しては、ジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官とマイク・ポンぺオ国務長官の影響がかなり強く出ており、何も決めないで先送りするということになったのだろうと思います。ボルトンやポンぺオが北朝鮮に対して強硬姿勢を取ることをトランプ大統領に助言し、トランプ大統領がこのような意見が政権内にあり、かつ、国内問題で大変な時期なので、と金正恩委員長に説明し、金委員長もまぁしぶしぶ受け入れたというところではないかと思います。

 

 気になるのは、この首脳会談に前後して、スペインの首都マドリードにある北朝鮮大使館に賊が侵入し、一時館員を捕まえ、コンピューターなどを盗んだという事件、金正恩委員長の兄で、金委員長が殺害命令を出して殺害したと言われる金正男氏の長男金漢率(キムハンソル)氏を保護しているという団体「千里馬民間防衛(CCD)」が団体名を「自由朝鮮」と変更し、併せて朝鮮臨時政府発足を発表したという出来事です。

 

 こうした動きの裏にアメリカがいるのではないか、諜報戦、情報戦が水面下で激しく戦われているのではないかと思われます。CCD(自由朝鮮)の動きは北朝鮮政府にとって神経を逆なでされる出来事です。この裏にアメリカ、特にアメリカ政府内の高官、具体的にはジョン・ボルトンやマイク・ポンぺオがいるのではないかと私は考えています。

 

 シンガポールでの1回目の首脳会談で出された共同宣言が有効である以上、北朝鮮もアメリカもお互いに安全を保証する(攻撃をしない、ミサイルを飛ばさない)ということになりますが、この共同宣言を無効化するような動きが出てくると危険だと考えられます。

 

(貼り付けはじめ)

 

本当の北朝鮮に関する頂上会談はトランプ政権内部で起きている(The Real North Korea Summit Is Inside the Trump Administration

―現在までに、北朝鮮が核交渉の中で提示したいと望んでいることは明らかになっている。アメリカはそれにどう対処するかについて疑問が出ている。

 

ジェフリー・ルイス筆

2019年2月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2019/02/26/the-real-north-korea-summit-is-inside-the-trump-administration/

 

一方の側にはアメリカ特使のスティーヴン・ビーガンと恐らく大統領自身が立っている。こうした人々は何十年も続いたアメリカの北朝鮮関与政策を退けたいと望んでいる。彼らの望む政策は、サンシャイン・ポリシー(太陽政策)と呼ばれるものの流れに沿っている。このアプローチは金大中から文在寅まで続く韓国の進歩主義派によって採用されてきた。考えは極めてシンプルだ。敵意をもって接すれば金正恩は核兵器に固執する。それは北風によって人々は来ているコートの襟を固く掴み、自分の片田に引き寄せるようなものだ。しかし、暖かい日の光が当たれば、人々はコートを脱ぎたいと思うようになる。太陽政策はこれと同じく、金正恩に核兵器を放棄させる、もしくは少なくとも近隣諸国に対しての敵意を放棄させるというものだ。

 

北風を代表しているのは、アメリカ政府の官僚たちの大部分ということになる。国家安全保障問題担当大統領補佐官ジョン・ボルトンは特に北風を吹き付け続けることに熱意を持っているように見える。こうした政府高官たちはアメリカと北朝鮮との間の緊張を緩和するには、北朝鮮がまず武装を解くことが必要だという確信を持ち続けている。ボルトンに対して公平な評価をすると、この姿勢はこれまでの歴代政権が一貫して採用してきた考えであり、交渉における厳格さの度合いはそれぞれの政権で違いが存在した。

 

これまでの数週間、ハノイでの首脳会談に先立ち、北朝鮮の核兵器の放棄に向かってはほぼ進展はないのではないか、北朝鮮がどれほど強硬に要求をしてくるかということについて、アメリカ政府高官の大部分が懸念を持っている様子を伝える報道が多くなされた。『ポリティコ』誌は、アメリカ政府高官たちは「国際舞台で勝利宣言をしたいために、トランプ大統領は非核化の空約束と引き換えに大幅な譲歩を行うのではないか」と懸念している、と報じた。アメリカ側による譲歩が選択肢の中に入っているかどうかは明確ではない。しかし、朝鮮戦争は終了したという宣言、外交関係の構築、経済制裁の解除が行われる可能性は存在する。

 

情報のリークはビーガン特別代表にも向けられている。2019年2月25日、フォックスニュースのジョン・ロバーツはツイッター上で、「ある政権幹部はフォックスニュースに対して、ホワイトハウス、国務省、国防省、財務相、エネルギー省では、トランプ大統領が任命した対北朝鮮特別代表スティーヴン・ビーガンが北朝鮮との交渉で“彼に与えられた権限から大きく逸脱している”という懸念が存在している、と語った」と書いている。

 

ビーガンが彼に与えられた権限から大きく逸脱している。この表現は、ジョージ・W・ブッシュ(子)政権の一年目に、1994年に結ばれた米朝合意が崩壊した時のことを思い出させるものだ。当時のコリン・パウエル国務長官は、ブッシュ大統領は、ビル・クリントンが放置した北朝鮮と対話を行うと公式の場で発言した。それに対しては反撃が起こり、パウエルはテレビ放送の中で、自身を否定する発言をしなければならなくなった。パウエルは、対話するかどうかは大統領自身が決定することで、その決定はまだなされていないと発表した。パウエルはCNNのアンドレア・コッペルに対して、「私は自分に与えられた権限から逸脱した」と述べた。それから2年もしないうちに、米朝合意の枠組みは無力化され、北朝鮮は核開発の道筋をたどり、2006年に初めての核実験を実施するまでになった。(ボルトンは、パウエルが恥をかいたことについて、回想録の中で大きな喜びを込めてわざわざ書き残している。)

 

こうした動きに私たちは驚いている。ボルトンと側近たちは北朝鮮政策では敗北を喫したので、中東での政策的な勝利に集中するのだろうと私たちの多くは考えていた。(イランが自滅するような動きはないだろうと私は考えている。)しかし、最近になってマスコミが報じているリーク情報から見るとボルトンは、北朝鮮との関与についてもう一つの方向に進めようと活発に動き回っていることが考えられる。そして、驚くべきことに、マイク・ポンペオ国務長官は、ビーガンに対して一切擁護していないように見える。

 

北朝鮮の非武装化がアメリカの関与の主要な目的だとするならば、トランプ大統領は側近たちにうまくあしらわれているということになる。ここで、ある一つのことを明確に理解することが重要だ。それは、北朝鮮は非武装化を提示してはいないということだ。北朝鮮は「朝鮮半島の非核化(denuclearization of the Korean Peninsula)」という特別な言葉を使用している。この言葉が意味するところは、北朝鮮が非核化するならば同程度にアメリカも非核化せよということなのだ。金正恩委員長が非核化について言及する際、彼の父親と祖父と同様に、彼の声明もまた大いなる希望を述べる内容になっている。これと対比すべきなのは、プラハでのバラク・オバマ大統領(当時)の演説だ。この演説でオバマは、核兵器が廃絶された平和と安全保障を目指すと訴えた。これについて、誰も、オバマ大統領に対する的外れな批判をするような人たちでも、アメリカだけが一方的に非核化を進めることなどないと考えるはずだ。

 

北朝鮮が現在提示しているのは、見せかけの非武装化のジェスチャーである。アメリカとの新しい関係を築きたいという見せかけのステップである。例えば、北朝鮮は核実験施設を閉鎖し、ロケットエンジンの実験施設を一部破壊し、寧辺の核施設の閉鎖を提案している。これらのステップでは、朝鮮人民軍に既に配備されている北朝鮮の核兵器の脅威を減少させることにつながらない。また、北朝鮮が核兵器と、アメリカにまで達する長距離ミサイル を製造し続けることを止めることも出来ない。

 

言い換えると、北朝鮮が要求しているのはイスラエルが享受している立場に似たものなのである。イスラエルが核兵器を保有していることは誰もが知っている。しかし、イスラエルは公式には核兵器の所有を認めていない。私の言い換えは完璧なものではない。私の同僚であるヴィパン・ナランはインドとの方がより正確な類似を示す比較となると考えている。しかし、基本的な考えは理解しやすいものだ。2017年の北朝鮮による一連の核実験とミサイル実験は、トランプ政権の神経を逆なでし、トランプ大統領個人に屈辱感を与えるものであった。朝鮮戦争の終結を宣言し、外交関係を樹立し、アメリカと国際社会による経済制裁を解除することの引き換えに、北朝鮮は国際社会とうまく付き合い、核実験やミサイル実験をすべて中止し、実験施設などを閉鎖することで北朝鮮が世界にとって良いニュースの主人公となりたいと北朝鮮は述べている。

 

私は、これは試してみる価値があると考えるが、このアプローチの限界について正直に目を向けねばならないとも思っている。結局のところ、これが意味するところは、金正恩が自身の統治を維持するために暴力的な政治手法を使うことを容認し、共存することに慣れるということなのだ。もし北朝鮮が思い通りに行動できないとなると、北朝鮮は多くの場合、挑発行為を行い、その結果としてアメリカや韓国の軍隊から犠牲者が出るということが続いてきたという酷い事実もまた存在する。40名以上の韓国海軍将兵が死亡した天安の撃沈事件から10年も経っていないのだ。この攻撃の主謀者が金英哲だったことは明白であり、この金英哲がアメリカを訪問し、ドナルド・トランプ大統領に対する親書を手渡したのだ。しかし、ここに明白な事実がある。北朝鮮は核兵器を保有している。これは、核抑止余力がいかに機能するかということを私たちに教えてくれている。サダム・フセインやムアンマール・カダフィがもし核兵器を保有していたら、両者ともにまだ健在だった可能性は極めて高い。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 今年も残り2カ月半というところになってきました。今年6月にシンガポールで、初の米朝首脳会談が開催され、ドナルド・トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長が握手をし、直接話をするという歴史的な出来事がありました。その後、共同宣言が発表され、朝鮮半島の非核化が進むかと思われましたが、その後、米朝交渉は停滞気味のようです。

 

 先月、アメリカ政府は、スティーヴン・ビーガンという人物を国務省の対北朝鮮特別代表に任命しました。米朝交渉を実質的に取り仕切ることになりました。ビーガンについては、本ブログでいち早くご紹介しました。ビーガンについては、共和党系の外交政策分野の人材であり、ヨーロッパとロシアを専門としている人物であることをご紹介し、ビーガンの説く米代表就任は、北朝鮮問題に関して、アメリカがロシアを巻き込むことを意図しているとブログの記事で私は書きました。

stephenbiegun001
スティーヴン・ビーガン


 実際、ビーガンは2018年10月16日にロシアの首都モスクワを訪問し、ロシア政府関係者と北朝鮮問題について協議しています。以下に記事を貼り付けます。

 

(貼り付けはじめ)

 

米の特別代表がロシア訪問 北朝鮮への働きかけ協議か

20181016 2057

 

2回目の米朝首脳会談に向けてアメリカ政府で実務レベルの協議を担うビーガン特別代表がロシアのモスクワを訪れ、16日、モルグロフ外務次官と協議しました。北朝鮮の非核化をめぐって働きかけを強めるようロシアに求めたとみられます。

 

アメリカ政府で北朝鮮問題を担当するビーガン特別代表は16日、モスクワを訪れて、ロシア外務省のモルグロフ次官と協議し、ロシア外務省は協議のあと、「核を含めた問題の政治的、外交的な解決に向けて努力していくことで一致した」と発表しました。

 

ビーガン特別代表は、今月、アメリカのポンペイオ国務長官とともに北朝鮮を訪問し、2回目の米朝首脳会談の早期開催に向けて実務レベルの協議を進めることでキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長との間で合意しました。

 

ただ、朝鮮戦争の終戦宣言を要求する北朝鮮と、非核化に向けた北朝鮮の具体的な措置が先だとするアメリカとの立場の隔たりは埋まっておらず、実務レベルの協議を担うビーガン特別代表としてはモルグロフ次官に対し、非核化をめぐって北朝鮮への働きかけを強めるよう求めたとみられます。

 

ビーガン特別代表は、このあとフランスのパリ、ベルギーのブリュッセルを訪れ北朝鮮問題について関係者と協議する見通しです。

 

(貼り付け終わり)

 

※2018年9月4日付記事「米朝交渉は停滞気味のようだ」でご紹介しております。↓

http://suinikki.blog.jp/archives/76831743.htmlからどうぞ。


 米朝直接交渉はあまり進展が見られません。北朝鮮はこれまでもアメリカとの交渉ではあの手この手で中身を骨抜きにしたり、思い切って合意を破ったりで、アメリカ側を翻弄してきました。そのために経済制裁を科されることにもなりましたが、中国とロシアという後ろ盾があり、これまである意味ではうまく生き残ってきました。そのために、国民に大きな被害が出ていることをかんがえると、うまくという言葉は適切ではありませんが。

 

 そうした中で、北朝鮮に一定程度影響力を持つロシアを巻き込んでの問題解決ということになり、ビーガンに白羽の矢が立ったということになるのでしょう。以下に紹介する記事は、ビーガンの特別代表就任について書かれたものです。その中で、ビーガンはヴェテランで、特別代表に適任だが、北朝鮮との交渉の経験がないこと、そして、トランプ大統領が移り気で首尾一貫していないので、トランプ大統領に振り回されるであろうことを不安材料に挙げています。

 

 今後、北朝鮮問題がどのように動いていくか、注目されます。

 

(貼り付けはじめ)

 

ポンぺオの新しい対北朝鮮特別代表は外交上の地雷原に勇躍攻撃を仕掛ける(Pompeo’s New North Korea Envoy Wades Into Diplomatic Minefield

―スティーヴン・ビーガンは対北朝鮮特別代表に適任だと多くの人が考えている。しかし、Stephen Biegun is widely considered a great pick for the job. But it may be an impossible task in the first place.

 

ロビー・グラマー筆

2018年9月25日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2018/09/25/north-korea-mike-pompeo-stephen-steve-biegun-state-department-trump-kim-jong-un-diplomacy-nuclear-negotiations-united-nations-general-assembly/

 

就任してから1カ月、トランプ政権における対北朝鮮政策におけるキーマンであるスティーヴン・ビーガンは、北朝鮮の指導者金正恩委員長とアメリカのドナルド・トランプ大統領との間の2度目の首脳会談実現に向けた、彼にとっての最初の試練に直面している。

 

マイク・ポンぺオ国務長官は今週の国連総会において、トランプ大統領と金委員長との間の2度目の首脳会談の地ならしを行っていると明言した。

 

ビーガンは国務省の北朝鮮に対する特別代表に新たに就任した。第2回目の米朝首脳会談が実現する場合、ビーガンはこの動きの中心的役割を果たすことになるだろう。ビーガンは、ジョージ・W・ブッシュ政権で働いた経験を持つ。この時に世界で最も手ごわい、経験と知識を持つ交渉者を相手に交渉をしていた。北朝鮮はこれまで数十年間にわたり、アメリカの平和と核を巡る交渉の邪魔をしてきた。そうした北朝鮮の現体制を維持することを至上命題にしている高官たちに対してはビーガンの対北朝鮮特別代表就任は大きな負担となるだろう。

 

同時に、ビーガンは、北朝鮮問題に取り組みたいと考えているトランプ大統領の矛盾したメッセージやころころと変更される目標をうまく誘導しなければならない。今週ニューヨークで開催された国連総会において、トランプは金委員長の「勇気」に感謝し、米朝両首脳が近々再び会談を行うと示唆しつつ、北朝鮮は非核化に向けて「大きな進歩」を遂げていると発言した。しかし、多くの専門家たちは、金委員長はこれまでに重要なことは何も放棄していないということに同意している。

 

これら2つの挑戦はビーガンの任命が抱えるパラドックスを浮き彫りにしている。ビーガンは適格だと多くの人々は評価しているが、ビーガンの任務の遂行は不可能ではないかという懸念も出ている。

 

ポンぺオは、先月、ビーガンをフォード社から引き抜いた。そして、アメリカの外交政策において最も厳しい挑戦に対する責任を与えることになった。この挑戦は大統領が個人的に重視しているものだ。ビーガンは、フォード社に入社する前に、連邦議会のスタッフとして15年間、外交政策に関して専門性を涵養していた。ビーガンの任命に対して、共和党の外交政策専門家たちの間からは、適任だという好意的評価が出ている。

 

しかし、ビーガンを称賛している専門家や元政権幹部たちは、ビーガンの任務は最初からつまずくだろうとも述べている。トランプは6月にシンガポールで行われた金委員長との首脳会談において、何も具体的なことは決まっていない段階においてツイッター上で勝利宣言をしてしまった。この後では特別代表の任務は難しいものになると専門家たちは述べている。「北朝鮮からの核の脅威はもはや存在しない」とトランプはツイッター上で明言した。

 

ジョージタウン大学所属のアジア専門家ヴィクター・チャは、次のように語っている。ちなみにチャはトランプ政権の駐韓米国大使になると目された人物だ。「トランプ政権において北朝鮮との交渉者になることは困難なことである。交渉者はトランプ大統領が既に獲得したと宣言したものを獲得するために交渉を行わねばならない立場に追い込まれる。このような立場に追い込まれるのは喜ばしいことではない」。

 

ジョージ・W・ブッシュ政権の国家安全保障会議(NSC)に勤務したピーター・フィーヴァーは次のように述べた。「北朝鮮に対しては民主党も共和党も25年にわたって失敗を重ねてきた。従って、誰がやっても北朝鮮との交渉を妥結させることはできないのではないかと考えている。しかし、私は同時に、ビーガンは少なくとも北朝鮮に騙されることはないと断言できる」。

 

今回の記事を書くにあたり、ビーガンへのインタヴューを国務省に申請したが、却下された。報道担当官はまた、今秋国連において、ポンぺオとビーガンが北朝鮮の担当者と面会するのかどうかについてコメントを拒否した。「国務省には発表すべき新たな会談の予定はない」とだけ発表した。

 

本紙では10名を超える現職、元職の外交政策に関係する政権関係者に取材を行った。彼らは、ビーガンについて、複雑な外交政策の様々な問題に対処してきた経験を持つと称賛している。1990年代、ビーガンはジェシー・ヘルムズ連邦上院議員の上級顧問を務めた。当時、ヘルムズ議員は連邦上院外交委員会委員長を務めていた。この時、ビーガンは裏方として、冷戦期にワルシャワ条約機構に加盟し、西側と敵対していた東欧諸国をNATOに加盟させてNATOの規模を拡大させるという計画を立案し、成功させた。この作業には、保守的なタカ派の人々をクリントン政権に協力させることが必要不可欠であった。また、NATOの加盟国増大に関してはアメリカ連邦上院の承認が必要であった。

 

ブッシュ政権において国防総省に勤務し、連邦上院に属するビーガンと一緒に仕事をした経験を持つイアン・ブレジンスキーは「ビーガンがNATOの拡大において極めて重要な役割を果たした」と語っている。ブレジンスキーは更に、ビーガンは当時の連邦議会のタカ派的な考えを、具体的な、実現可能な法律にするために役割を果たしたと述べた。この法律によって、NATOの地図は書き換えられることになった。

 

それから数年後、ビーガンは、国家安全保障会議(NSC)の上級秘書としてホワイトハウスに勤務し、2002年にブッシュ政権が発表した「国家安全保障戦略(NSS)」の策定において中心的な役割を担った。国家安全保障戦略の策定は数カ月にも及ぶ苦行であった。それぞれ異なった目的を持つ官僚や政府機関を説得し、最終的に、大統領の考えを反映させた一つの文書に落とし込み、それに同意させるということは困難な任務であった。

 

ブッシュ大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたスティーヴン・ハドリーは、ビーガンはこれまでの経験を対北朝鮮特別代表という新たな任務に活かすことが出来ると述べた。

 

ハドリーは本紙の電話取材に対して次のように述べた。「ビーガンのこれまでの経験と知識は対北朝鮮特別代表という任務にとって適したものだと考えている。アジア地域の政治、核拡散問題、北朝鮮問題についても理解している。ビーガンはポンぺオ国務長官とトランプ大統領を助けて、対北朝鮮政策全体をうまく構築することが出来るだろう」。

 

それでも、ビーガンはヨーロッパとロシアの専門家であって、北朝鮮との交渉では経験したことのない言葉遣いや複雑さにぶつかることだろう。北朝鮮との交渉では進展や成果は幻のように消え去ってしまう可能性もある。北朝鮮の交渉者たち、特にヴェテランの交渉者たちは、交渉の文書の中の一つの単語、一つの文を動かして、妥協を台無しにしてきた。

 

CIAに勤務した経験を持ち、現在はブルッキングス研究所上級研究員を務めるジュン・パクは、ビーガンの北朝鮮に関する知識や経験不足は「諸刃の剣」となると指摘する。パクは、次のように指摘する。「北朝鮮問題にかかわってこなかった人々は、北朝鮮問題解決のための“斬新な”考えを持つことができる。彼らは歴史を振り返ることで苦境に陥るというようなこともないだろう。また、北朝鮮との交渉で苦渋を飲まされてきたという経験に束縛されることもないだろう」。

 

パクは続けて、「しかし、こうした長所に、彼らの短所も潜んでいる。深い歴史的な背景が必要な場面が出てくるが、経験がない人々にはそれがない」とも述べている。

 

ビーガンは外交上の二正面作戦を行わなければならないだろう。一方は対北朝鮮、一方は対ワシントン(トランプ政権)である。

 

トランプ大統領は米朝首脳会談直後に北朝鮮が核兵器放棄を約束したと喧伝したが、北朝鮮政府は核兵器保有にこだわり、交渉を長引かせようとしている。ジーナ・ハスペルCIA長官は月曜日、珍しく公の場で発言し、その中で、北朝鮮が核兵器を放棄するのかどうか疑念を持っていると述べた。しかし同時に、米朝関係は、トランプ大統領による金委員長に対する働きかけによって、1年前に比べて格段に改善していると持述べた。

 

ポンぺオ自身は、今年6月に訪朝して、北朝鮮の高官たちがどれほど掴みどころもなく、予測不可能な動きをするのかを実感したはずだ。この時の訪朝では、金正恩はポンぺオと会談を持つことを拒絶することで、ポンぺオを鼻であしらった。そして、その直後に発表した声明では、ポンぺオが行った様々な要求は「ギャングが行うような」内容であったと批判したのだ。

 

ここでビーガンの経験と才能が必要となる。ビーガンはワシントンにおいては尊敬を集めているが、大統領から権限を与えられた特別代表として北朝鮮がきちんと対応するのか、アメリカ側からのこれまでは別の邪魔が出てくるのかということは明確になっていない。こうした障害のために、北朝鮮側はトランプ自身と意思を確認するために苦闘することになる。

 

CIA朝鮮半島担当部門の次長を務め、ワシントンに本部を置くシンクタンクであるヘリテージ財団に在籍するブルース・クリングナーは次のように述べている。「ポンぺオが金正恩と会談を持つことや交渉の進展をもたらすことに苦労しているのなら、それよりも低い地位の官僚たちが大統領の意向を受けて交渉に行って、何か成果を上げることが出来るのだろうか?」

 

北朝鮮の指導者として初めてアメリカ大統領と一対一の首脳会談を行った金正恩は、トランプとだけしか話したくないのだ。北朝鮮政府は巧妙にトランプを批判することを避けている。ワシントンの国家安全保障問題の専門家たちを攻撃しながら、トランプ大統領を称賛するような発表を行っている。

 

ビーガンはトランプ大統領の気まぐれな政策と格闘しなければならなくなるだろう。トランプは北朝鮮政府を戦争で脅迫していたが、それが金正恩を称賛するようになり、それからも戦争と称賛の間の複雑なメッセージを次々と発してきた。

 

シンガポールでの首脳会談の後、トランプ大統領は一方的に、米軍の韓国軍との共同軍事演習を延期すると発表し、共同宣言を発表したが、専門家たちは中身が曖昧過ぎて本当の進展を明確にすることはできないと評価する内容であった。ビーガンが特別代表に任命された後の今年8月、トランプ大統領は突然、ポンぺオとビーガンによる包丁を中止すると発表した。その理由として、交渉での進展がなかったことが挙げられた。

 

一方、ポンぺオ国務長官は先週、北朝鮮と韓国との対話を取り上げながら、非核化に向けた交渉はトランプ政権の第一期目の任期が終わるまでには終了することになるだろうと述べた。しかし、ポンぺオは月曜日には、自身の発言内容から後退する発言を行った。ニューヨークで開催された国連総会の記者会見で、交渉に期限を区切るというのは「馬鹿げた」ことだと発言した。

 

ブルッキングス研究所のパクは、「トランプ政権からは複雑で事実が歪曲されたメッセージが多数発信されている」と述べている。

 

このような批判に対して、国務省の報道担当官はEメールで次のように発言している。「私たちは完全に証明される非核化を望んでいる。大統領は北朝鮮が最終的に完全に非核化され、核兵器が再び問題にならないようにしたいと望んでいる」。

 

トランプと金正恩が再び会談を持ち、別の合意に達することがある場合、トランプ大統領は合意内容を具体化できる有能な高官を必要とし、ビーガンはその任務にふさわしいと複数の専門家たちが口を揃えている。しかし、トランプと側近たちが最終的なものだと発表する合意内容は多くの北朝鮮専門家たちを苛立たせるものとなるだろう。

 

ジョージタウン大学のヴィクター・チャは次のように述べている。「トランプと金正恩は合意に達することはできると思う。しかし、問題は、その合意が素晴らしい合意か、悪い合意か、嘘の合意か、ということだ」。

 

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