古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:マイケル・グリーン

 古村治彦です。

 

 2016年11月17日(日本時間では18日)に、安倍省はニューヨークに立ち寄り、ドナルド・トランプ次期大統領と会談を行います。食事を摂りながらの会談になると言われています。

 

 トランプが当選し、「青菜に塩」の状態になっていた、マイケル・グリーン先生は以下のような論稿を発表しています。

 

 

「青菜に塩」という言葉を使ったマイケル・グリーン

 

 マイケル・グリーンは、トランプはアジア諸国に対する戦略を明確にしていないので、安倍首相が聞き役に回り、なだめすかしながら、トランプのアジア戦略の輪郭を明確にすべきで、それが出来たら、他のアジア諸国やトランプ自身に対しての大きな貢献となる、と述べています。

 

 トランプから最初に言質を取っておく、日本やアジアの防衛から手を引かないということを明言させるのが安倍首相の役割だとマイケル・グリーンは述べています。これは、「自分はトランプに散々反対してきたから、彼に近づけないので、安倍さん、どうかトランプからこれからも日本を守るという言葉を引き出して、私の関与する場所を確保して欲しい」という願望が下敷きとしてあるのではないかと思います。

 

 日本を操るジャパン・ハンドラーズの若きリーダーがこの自信なさげな感じというのは何とも新鮮です。しかし、恐らくはグリーン先生の思っておられるようにはうまくいかないでしょう。入門編として、日本の首相が一番やりやすい相手でしょう。トランプは選挙期間中にメキシコを訪問して、手痛い反撃を受けていますが、日本に、そして安倍首相にそこまでのことはできないでしょから、慣らし運転という点では最適の相手、露骨に言えば「噛ませ犬」として最適だと判断されて、あべ主将は外国の首脳では初めてトランプ次期大統領と会うということになったと思います。

 

 また、マイケル・グリーンは、「日本の反米主義者、極右、極左がトランプの当選を歓迎している」と書いています。マイケル・グリーン先生に褒めていただいて、大変光栄だと思っておられる日本人もたくさんおられることでしょう。私もその末席を汚す者でありますが。

 

(貼り付けはじめ)

 

ドナルド・トランプの安倍晋三の会談:アジアに関する最初のテスト(Donald Trump’s Meeting With Shinzo Abe: First Test on Asia

 

マイク・グリーン筆

2016年11月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/11/15/donald-trumps-meeting-with-shinzo-abe-first-test-on-asia/

 

2016年11月17日、ドナルド・トランプ次期大統領は、ニューヨーク市のトランプ・タワーで日本の首相である安倍晋三と会談する予定となっている。今回のアジアの指導者との事実上の首脳会談は、11月9日に安倍からの気軽な電話での提案から実現したものだ。2人は昼食か夕食を共にする。安倍首相はアジア太平洋経済協力機構の年次総会でペルーに向かう途中にニューヨークに立ち寄る。アジアとヨーロッパの各国はこの会談を注視するだろう。

 

私は、安倍首相はトランプと協力関係を築けるかどうか疑問に思っている。安倍首相は、最初は聞き役に回るだろう。彼の友人は、モディ、プーティン、ネタニヤフ、エルドアンといった世界各国で強い権力を持っている人たちばかりだ。 安倍首相は反エリートの波によって権力を握った人物ではない。2009年、日本では中道・左派の民主党が選挙で大勝し、権力の座に就いたことがあった。安倍首相は彼独自のナショナリスト的主張を持っている。彼は決断をできる人物だ。トランプはそのことをすぐに認識するだろう。日本は、これからも友好的な姿勢を崩さないであろうが、その表面の裏では、日本は、日本以外のアジア諸国、更には世界と同様、中国と北朝鮮による脅威が増大していく中で、トランプ新大統領は自国の安全保障にとってどんな意味を持つのかについて懸念をも持っている。

 

この不安は、大統領選挙後に日本で行われた世論調査の結果にも出ている。約7割の日本人がトランプ大統領に否定的な見方をしている。選挙前の世論調査でオーストラリア国民の半数は、トランプが当選したらアメリカから距離を置くべきだと答えた。同じ世論調査で、米豪同盟についてはこれまでで最高の支持率を記録したにもかかわらず、だ。トランプの主要なアドヴァイザーの中には、ワシントンにあるアジア諸国の大使館に対して、アメリカ軍の前方展開部隊の駐屯について再考することになる、もしくは国内のテロリズムと経済に関する問題に集中するためにアジア諸国から手を引くと語った人々がいる。 トランプは環太平洋経済協力協定(TPP)に反対してきた。そのため、安倍首相のこの秋の国会運営は難しいものとなる可能性がある。アメリカ国内でTPPに対する支持がしぼんでいく中で、安倍政権はTPPの勢いを持続させるためにTPPの批准を国会で通過させることに注力している。日本国内の反米の主張をする人々、極右、極左は、トランプ当選を歓迎している。そして、アメリカからの更なる別離を主張している。同様の動きは、オーストラリア、韓国、アジア地域のアメリカの同盟諸国で起きている。

 

他方、日本とアジア諸国にとっては、安心感を持てる兆候も存在している。シカゴ外交評議会が行った最新の世論調査では、アメリカ国民の3分の2は、グローバライゼーションは素晴らしいと考え、6割が自由貿易を支持しているという結果が出た。ピュー・リサーチセンターの世論調査では、大多数のアメリカ国民が、日本と韓国が攻撃された場合に、両国を防衛するべきだと答えている。こうした動きが示しているのは、反エスタブリッシュメントの選挙結果は、自国問題解決優先主義(アイソレイショニスト)的な有権者の感情によってもたらされたものではないということだ。マイク・ペンスが副大統領に、レインス・プリーバスが大統領首席補佐官にそれぞれ選ばれたことは、ケリー・アヨッテ、スティーヴ・ハドリー、ボブ・コーカーのようなより常識的な国家安全保障観を持っている人々が、もちろんまだ確定している訳ではないが、国家安全保障を担当するポジションに登用されるという希望を膨らませてくれる人事であった。投開票日の1日前、トランプのアドヴァイザーであるアレクサンダー・グレイとピーター・ナヴァーロは、『フォーリン・ポリシー』誌に、オバマ大統領のアジア回帰政策に対する批判論文を発表した。フォーリン・ポリシー誌には私たち専門家が「シャドウ・ガヴァメント」欄で多く論稿を発表してきた。

 

共和党が過半数を占めている連邦議会は、予算管理法と予算の上限を破る姿勢を示している。そうした中で、日本の防衛省の幹部たちは、アジアの軍事バランスの変化のためにJapanese defense officials also see the prospect of real resources emerging for the military aspects of the rebalance to Asia. グレイとナヴァーロは論稿の中で、アジア地域にあるアメリカの同盟諸国は、防衛負の負担増加を「尊敬を持って」新政権から求められることになると指摘した。しかし、こうした主張は選挙期間中のトランプの発言からかけ離れたものだ。選挙期間中、トランプは、アメリカにたかりきっている同盟諸国など防衛しないと主張し続けた。安倍首相は日本国憲法の解釈を変更することで、日米同盟においてリスクを更に分担することで面目を施すことになると指摘するであろうが、安倍首相はトランプを楽しませねばならない立場に置かれるだろう。もし指導者2人が会談から積極的な結論を得たいと望むならば、協力できる共通の地盤を数多く持つことだ。

 

つまり、日本国民は、トランプが選挙期間中に行った発言を忘れることはないだろう。トランプの一連の発言によって、日本国民のアメリカに対する信頼は揺るがされることになった。日本の官僚たちの中には、安倍首相に対して、TPPと日本の駐留米軍の負担の分担について、トランプに反論するように主張している人々がいる。安倍首相は言いたいことを後ろに隠して、日米関係とアジアに関するトランプの戦略の輪郭を明確にすることに集中するだろう。現在まで、トランプはこれらについての戦略を示していない。こうしたことができれば、安倍首相はアジア諸国とトランプ次期大統領に対して大きな貢献をしたことになる。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)









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 古村治彦です。

 

 今回は、ネオコンの牙城であるシンクタンクCSISの上級副所長にして、先日共和党の外交政策専門家50名による反トランプ書簡にも名前を連ねた、マイケル・グリーン先生による「天皇のお言葉」についての解説です。

 

 天皇は直接的に退位に関することは述べることが出来なかったが、これは政治に関与することが出来ない天皇の立場から当然のことだが、年齢や健康、義務の負担について言及することで、間接的に「退位をしたい」ということが分かるようになっていたという解説は、なかなか良く分かっているなという印象です。

 

 今回の天皇退位の間接的な意思表明について、「これは安倍内閣に対する失望の表明だ」という解釈についても言及しており、これは日本の主要なマスコミでは流されていない話なので、細かくインターネットでも情報を取っていることを示唆しています。この解釈について言及しておいて、これは主要な解釈ではないと書いてあるところは、これは妄説だと切り捨てたいという意思の現れでしょう。

 

 最後の「明確になっているのは、明仁天皇は日本の皇室の伝統を改革するための時期が来たという間接的なシグナルを送ったということである」という部分は、今上天皇が最も言いたかったことを捉えているのだろうと思います。

 

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日本の天皇による珍しいテレビを通した声明(A Rare Television Address by Japan’s Emperor

2016年8月8日

August 8, 2016

https://www.csis.org/analysis/rare-television-address-japan-emperor

 

2016年8月8日、日本の明仁天皇はテレビに出て声明を発表した。これはきわめて珍しい機会であった。天皇は衰えていく健康と日本の高齢化社会に言及し、「天皇もまた恒例となった場合に望ましい天皇の役割」についての個人的な考えを伝えたいと述べた。明仁天皇は現在82歳だ。日本の皇室典範によると亡くなるまで終身天皇の地位にとどまらねばならない。しかし、天皇の声明は、天皇が天皇の位から退きたいと考えているかもしれないという推測を人々に起こさせた。安倍晋三首相は、天皇の発言には真剣に対応すべきだが、天皇退位の可能性についての詳細なコメントはしなかった。

 

問1:天皇が退位問題について直接声明を発表しなかったのはどうしてか?

 

答1:日本の戦後憲法は、天皇を国家の象徴とし、統治に関わる権力を持っていないと規定している。天皇は政治的だと思われる可能性を持ついかなるコメントも行うことは禁止されている。従って、天皇は直接退位について言及しなかった。現在の法律では天皇退位に関する条項は存在しない。しかしながら、天皇は、たとえ高齢になっても国の象徴としての天皇の義務を減らすことはできないこと、そしてもし天皇が義務を果たせなくなったら摂政(恐らく彼の息子)が摂政に任命されるにしても天皇は終身在位し続けるという事実に変更はないことに言及することで、間接的に、退位問題について示唆を与えた。安倍首相は、天皇が直接人々に向かって直接、年齢と天皇の義務に伴う負担について語ったという事実を真剣に受け止め、何ができるのかを考える必要があると述べた。

 

問2:声明はどのように解釈されるか?

 

答2:天皇の衰えいく健康(天皇は前立腺と心臓の手術を受けた)が主要な要素であり、10分間の声明の中で、一度ならず肉体的な状態について言及した。日本国内、国外のマスコミの中には、天皇が安倍内閣の安全保障政策に対して失望を表明しているという憶測が流れている。昨年、安倍内閣は一連の国防政策改革を国会で通過させた。その内容は、集団的自衛権の行使や攻撃されている同盟国の防衛にかけることといったことであった。この改革の意図は、安全保障問題における日本の役割を増やすことであった。しかし、この解釈は、明仁天皇の先の大戦に関する不明帳な発言を基にしている。そして、マスコミ、政治家、官僚の大部分はそのような解釈を行っていない。

 

問3:日本政府はこの問題をどのように対処するだろうか?

 

答3:国会は天皇退位を許可するために皇室典範を見直す必要があるだろう。そしてこの可能性の調査をこの9月から始まる国会の会期で始めるだろう。マスコミの中には、安倍内閣が天皇退位問題研究のために専門家による委員会を創設するだろうという報道をしている社もある。世論は変更について賛成している。週末に行われた朝日新聞の世論調査では、84%が天皇退位を支持している。しかし、この議論が展開されるペースがどれくらいのものになるか、はっきりしていない。明確になっているのは、明仁天皇は日本の皇室の伝統を改革するための時期が来たという間接的なシグナルを送ったということである。

 

※マイケル・J・グリーン:ワシントンにある戦略国際研究センター(CSIS)のアジア担当上級副所長兼日本チェア、ニコラス・セーチェーニ:上級研究員兼日本チェア副部長。

 

(終わり)





 
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 古村治彦です。

 

 今回は、おなじみのマイケル・グリーンCSIS上級副所長兼アジア・日本部長の参院選総括を皆様にご紹介します。以下のCSISのアドレスにあるものを抜粋したものです。

 

 今回はマイケル・グリーンと彼の下にいるニコラス・シェンシェーニが総括を書いたようです。シェンシェーニは経済に強い人物です。CSISに入る前には、ワシントンで、日本のフジテレビのプロデューサーをしていたという人物です。

 

 総括についてまとめると、安倍首相の経済政策(アベノミクス)と国防政策が支持された、憲法の見直しについては、可能性はあるが、まずは経済だ、ということになっています。あまり独自色のある総括ではありません。

 

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Japan's Upper House Election

July 11, 2016

https://www.csis.org/analysis/japans-upper-house-election

 

 

Michael J. Green

Senior Vice President for Asia and Japan Chair

 

Nicholas Szechenyi 

Deputy Director and Senior Fellow, Japan Chair; Asia Program

 

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●今回の選挙の概説

 

・7月10日の参院選挙で連立与党は圧勝を収めた。安倍晋三首相の政治的な力は固められた。彼は経済の再生と国防政策に重点を置いた政策を推進する。

・選挙前の世論調査によると、有権者の最大の関心事(懸念)は経済であった。しかし、大差を付けての勝利で、国会が開会された時、安倍首相はその他の重点事項である憲法の見直しに注力するのではないかという懸念も高まっている。

・選挙後のインタヴューで、安倍首相は今秋、憲法の見直しを国会の憲法審査会で議論することになると述べた。しかし、彼は経済と人々の成長への期待を高めるために努力すると重ねて強調した。

 

●問1:今回の選挙での重要なテーマは何だったか?

 

・金融緩和、財政刺激策、構造改革で構成される「アベノミクス」と呼ばれる安倍首相の経済政策への国民投票であった。

・2012年12月に第二次政権が発足して以来、安倍首相はデフレーションと戦うことを公約としてきた。しかし、積極的な金融緩和を行ってもインフレーション目標には遠く及ばない状況である。史上最大規模の国家予算といくつかの財政刺激策が行われたが、経済成長は緩慢なものにとどまっている。財政緊縮派の批判者たちは、公的債務の規模に懸念を持っている。公的債務の規模は現在、GDPの240%にまで膨れ上がっている。

・2016年第一四半期の日本の成長率は年間換算で1.9%であったが、安倍首相は、経済の失速を恐れて、2度目の消費税増税を延期した。

・構造改革に関する政策は、過去3年間で明らかにされ、貿易の自由化、企業のガヴァナンス、女性の地位向上を含む様々な施策となって出現した。それは大きな衝撃ではなかったが、確実な成長を支援することになった。

・民進党をはじめとする野党は、アベノミクスを失敗だとし、安倍首相の経済刺激策を批判し、経済格差を縮小するために社会福祉を増進させるべきだとした。

・野党側は、集団的自衛を含む自衛隊の活動制限を拡大し、攻撃されている同盟諸国の支援を行うことが出来るようにした、昨年の秋に可決した防衛改革法案を批判した。

・安倍首相はすぐに日本国憲法の戦争放棄条項を見直し、日本の平和杉を放棄すると主張する人々がいる。しかし、このような恐怖を掻き立てる戦術を用いても、連立与党の国会コントロールを弱めることはできなかった。

 

●問2:安倍首相はどの程度政治的な力を固めたのか?

 

・安倍首相率いる自由民主党は、参院の過半数にほんの少し足りないほどの議席を獲得した。連立与党のパートナー公明党と一緒だと、過半数を大きく超える。

・自公の連立与党はより力のある衆議院ではすでに3分の2の議席を獲得している。これで、参院が衆院と異なった可決を行っても覆せるだけの力を得ている。

・今回の選挙の結果は、安倍首相の議会コントロールの力を再び強めたということになる。これでしばらく国政選挙はないということになるだろう。

・次の参院選挙は2019年だし、衆議院議員の任期は2018年までだ。自民党内に安倍首相に挑戦する人はいない。安倍首相の自民党総裁の任期は2018年までだ。しかし、自民党は阿部総裁の任期を最大2期延長できるようにルールを変更することはできる。野党の力は弱い。

・民進党は、2009年から2012年まで与党であった内部がバラバラのグループだ。当時の民主党は2011年の東日本大震災以降、人々の信任を失った。民進党は、共産党を含むより小さい野党と一緒になって、安倍氏の政策を阻止しようと絶望的な試みを行ったが、安倍氏の脅威にはならなかった。

・有権者たちは毛財政帳について厳しい目で監視していたが、こうした要素のため、安倍首相の指導力が維持された。

 

●問3:安倍首相はこれからも経済問題に集中するだろうか?

 

・安倍首相はマスコミに対して、成長戦略を進めると述べた。今秋、安倍首相は、経済刺激のために900億ドル(約9兆円)の補正予算を提案する予定である。TPP批准も行う可能性もある。TPPに関しては、自民党の中核的な支持基盤である農業従事者から激しく非難している。しかし、安倍首相は、TPPは日本の経済競争力を高め、アメリカやその他の価値観を共有する国々と共に地域の経済問題に指導力を発揮するためには必要な手段だと主張した。

・今回の選挙の勝利を利用して、経済から憲法の見直しのような他の問題に力点を移す可能性が高いという疑念が高まっている。改憲には衆議院と参議院両方で3分の2の賛成と国民投票で過半数の賛成が必要だ。

・安倍首相率いる連立与党は、小規模の中道・右派の諸政党と一緒になって参院の3分の2を超えている。しかし、安倍首相は経済政策を犠牲にして、政治的資本を憲法に関する議論のために使うことないであろう。2006年から2007年までの第一次安倍政権下、安倍首相は憲法にばかり注力し、経済問題に関心を払っていないと批判された。

・安倍首相は、彼が優先しているもう一つの政策である安全保障分野において、日本が指導的な役割を拡大させるためには、経済力が根本になると理解している。そのためには成長戦略を維持する必要がある。

・憲法を議論する余地があるのは確かだ。しかし、憲法だけがリストに掲載されている訳ではない。

 

●問4:アメリカにとっての戦略上の意義はあるか?

 

・米日同盟は日本の外交政策の礎石だ。安倍首相は両国間の経済と安全保障の結びつきを教誨しようとしている。彼は既にTPP締結に向けての交渉を始めており、国防政策を改め、安全保障同盟関係を発展させるため、アメリカとの間で新しい防衛ガイドラインを作成した。

・先日のG7では議長を務め、世界共通のルールと規範を支持した。

・安倍首相はアメリカの利益と日本の政治的安定を支える政策を実行している。今回の選挙の結果で、日本の政治的安定は確保された。そして、安倍首相は日米両国間の戦略的な関係を維持することを支持している。

 

(終わり)





 

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 古村治彦です。

 

 アメリカのネオコンの拠点の1つである、戦略国際問題研究所(CSIS)が毎年発表しているグローバル予測の最新版から、所長のジョン・ハムレとジャパン・ハンドラーズの1人マイケル・グリーンの論稿をそれぞれ紹介します。ネオコン派がどのように考えているかが分かるものとなっています。

 

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2016年グローバル予測(2016 GLOBAL FORECAST

 

クレイグ・コーエン(CRAIG COHEN)、メリッサ・G・ダルトン(MELISSA G. DALTON)編

 

戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS

http://csis.org/files/publication/151116_Cohen_GlobalForecast2016_Web.pdf

 

 

アジアへの再接続(Reconnecting of Asia

 

ジョン・J・ハムレ(JOHN J. HAMRE)筆

 

400年前、人類史上初めての純粋に国際的な国家間システムが出現した。この時以前、中国の各王朝と近隣諸王国との相互交流のような地域的な地政学システムはいくつか存在した。しかし、純粋に国際菜的な国家間システムは存在しなかった。国民国家が出現した際のウェストファリア体制は極めて斬新なものを生み出した。個人の忠誠心は王に対する忠節から国民としての意識と国家への同一化へと変化した。この時期、制限責任企業のような組織に関する新しい概念が生まれた。制限責任企業は幅広く資本を集め、対象となる商業的な冒険的試みに大量の資本を投入できるようになった。

 

 これらのヨーロッパの国民国家は、大都市の発展を支えた大富豪を生み出すための世界規模の帝国を創設しようとして相争った。ヨーロッパを中心とする国際的な地政学的システムが生み出された。このシステムは、操作法則として力の均衡(balance of power)を基礎とし、商業主義的な諸原理によって動くものであった。

 

 しかし、この発展には副作用も伴った。ヨーロッパの各帝国は世界各地に商業拠点を獲得しようと躍起になった。この世界システムの経済的ダイナミズムによって、アジアとアフリカの沿岸部にヨーロッパから企業家精神に溢れた人々が押し寄せるようになった。海上輸送が世界的な商業の基礎となった。アジア各地の沿岸部と主要航路沿いに巨大な都市が次々と誕生した。それから400年間、アジアにおいて地政学的に重要であったのは沿岸部であった。

 

 それ以前、アジアにおける商業と地政学の点で重要であったのはユーラシア大陸内陸部であった。国家間の商業活動は、いわゆる「シルクルート(silk routes、シルクロード)」に沿って行われていた。

 

 400年間にわたりアジアにおいては沿岸部に地政学的な中心が置かれてきたが、その状況は変化しつつある。巨大なユーラシア大陸が内陸部で再接続されつつある。ロシアは、極東とヨーロッパを結ぶ鉄道ネットワークを構築するという野心的な計画を明らかにしている。中国は「一帯一路(One Belt, One RoadOBOR)」構想に基づいて様々なもっと野心的な計画を発表している。この計画は、中央アジアと西アジアを貫く形で輸送ネットワークを劇的に拡大するというものだ。中国はその他にもアジアインフラ投資銀行(AIIB)やシルクルート基金のようなより衝撃的で野心的な計画を実行しようとしている。数十の社会資本建設・整備計画が既に発表され、この計画の方向性はすでに示されている。

 

 一帯一路構想は、様々な議論を引き起こした。懐疑論を唱える専門家たちは、この計画は成長が遅れている中国内陸部の開発を促進するための試みだと述べている。また、個の計画は中国国内で建設ラッシュが一段落している建設業者たちに機会を与えるための経済刺激策だと主張する人たちもいる。更には、中央アジア諸国の中国に対する忠誠心を獲得し、属国関係として固定化するための地政学的な設計図に基づいて行われていると主張する専門家たちもいる。

 

一帯一路構想はアメリカにとってどのような意味があるものなのだろうか?これからの数十年間、中国はこの計画にエネルギーを使い、結果として東南アジアに対する圧力が弱まることになるのだろうか?それとも、巨大なアジア大陸全体に中国の覇権を及ぼすという究極的な目標を反映したものなのだろうか?一帯一路構想はアメリカにとって良いものなのだろうか、それともアメリカの国益にとって脅威となるのだろうか?

 

 新しいシルクルートという話はこれまで長い間流布されてきたものだ。インターネットで、「シルクロード」というキーワードを入れて調べてみると、ヒットするものの半数以上はトルコ発のもので、トルコの商業に関するものである。一帯一路構想が地政学的な側面を持っていることは疑いようのないところだが、その根底にある商業的な大きな動きを見逃すと、分析を間違うことになる。アジアの製造業をヨーロッパの市場に結び付けるための最も効率の良い方法は、海上輸送であると思われてきた。しかし、長距離鉄道網を使えば輸送時間を2倍から3倍も短縮することはたやすい。輸送時間を劇的に短縮することで、投資する資本が何も生み出さない時間を減少させることによって、必要な資本を減らすことが出来るのだ。

 

 アメリカ政府はこの巨大な展開を評価するための能力に欠けている。官僚たちは世界を分割してそれぞれ担当しているが、それによってより明確なビジョンを掴むことが出来ないようになっている。米国務省は世界を4つの地域に分けてそれぞれに、東アジア・太平洋担当、ヨーロッパ・ユーラシア担当、近東担当、南アジア・中央アジア担当という担当部局を置いている。国防総省は太平洋司令部を置いており、中国はそこの担当になっている。しかし、その他のアジアは、中央司令部とヨーロッパ司令部の担当になっている。

 

 官僚主義的な機関は創造的な思考には不向きだ。世界を4つに分割し、それぞれの中で見ていれば、この巨大な流れを見逃すことになる。新しい大きな流れの特徴を古い歴史的なフィルターを通じてみてしまうことになる。

 

 ユーラシアの再接続の重要性を見過ごすことは大きな過ちとなる。そして、この動きをアメリカの脅威としてしまうことは危険なことでもある。この巨大な展開においてアメリカの果たすことが出来る役割は限られている。しかし、それは私たち自身がそのようにしてしまっているためなのだ。私たちはこの大きな新しい流れを客観的に評価し、判断しなくてはならず、それには時間が必要だ。一帯一路構想に対処することは次の大統領の政策課題ということになるだろう。

 

(終わり)

 

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私たちが生きる現代にとって正しい戦略を追い求めて(Seeking the Right Strategy for Our Time

 

マイケル・J・グリーン(MICHAEL J. GREEN)筆

 

 アメリカは現在世界のいたるところで守勢に回っているように見える。中国は南シナ海において侵略的な土地埋め立てと島の要塞化計画を進めている。また、アメリカの同盟諸国への影響力を強めることになる、新しいユーラシア秩序の構築を求めている。ロシアはウクライナとシリアに軍隊を派遣することでNATOを侮蔑している。イランはアメリカとの間で内容の乏しい核開発合意を締結したが、中東各地の代理となる諸勢力に武器を与え、衰えることの野心を見せ、宗教的な統一という目標のために動いている。イスラミック・ステイトは暴力的で抑圧的なカリフ制度を求めて活動している。その活動力は落ちているが、規模を縮小させるまでには至っていない。更には、気候変動に関する国際的な協力は、2015年12月にパリで開催されたCOP21の開催前に既に失敗していた。これは、オバマ政権の成立当初からの目的の達成失敗ということになる。

 

 アメリカにとっての大戦略が必要な時期はこれまでほとんどなかったが、今はまさにそのタイミングだ。しかし、現在のアメリカが大戦略を構築し、それを実行することは可能だろうか?大戦略には様々な脅威と障害についての明確な定義が必要だ。努力を向ける目的の優先順位をつけることと、目的の達成のために外交、情報、軍事、経済といった分野の力を統合することが必要である。トクヴィルが明らかにしたように、アメリカの民主政治制度は、そのような意思決定と権威を一つの政府機関に集権化することを阻害するように設計されている。

 

 民主政治体制は、様々な障害が存在するが、何とかして、重要な事業の詳細を規制し、固定化された設計を保ち、その実行を行っている。民主政治体制では秘密で様々な手段を実行することはできないし、長い時間、忍耐を持って結果を待つこともできない。

 

 それにもかかわらず、アメリカは、共和国としての歴史の中で、これまで何度も大戦略を成功させてきた。アメリカ建国の父たちはヨーロッパ型の機構と策謀に大きな疑念を持ちそれをアメリカのシステムに反映させたが、それでも大戦略が成功したことがたびたびあった。アメリカ政府は、19世紀末までに西半球において自分たちに都合の良い国境を策定することができた。19世紀から20世紀に移行する次期、アメリカは太平洋における主要な大国としての地位を獲得した。第二次世界大戦後、ヨーロッパとアジアの民主諸国家との間で同盟関係を固めることができた。そして、25年前にソヴィエト主導の共産主義体制を流血の惨事を引き起こすことなく打ち倒すことが出来た。これらの大戦略が一人の人物によって実行されたことは少ない。それでもセオドア・ルーズヴェルトとヘンリー・キッシンジャーはそれに成功した。しかし、たいていの場合、アメリカの大戦略は、「目的と手段を効率的ではなく、効果的に結びつける巨大なプロセス」から生み出されたのである。ジョン・アイケンベリーが述べているように、戦後に海外で成功したアメリカの戦略は、アメリカ国内における公開性と諸政治機関の競争性によって生み出された。それらによってアメリカ主導の国際秩序において利害関係を持つ参加者たちの力を増大させ、安心感を与えることが出来たのだ。トクヴィルが致命的な弱点だと考えたものが、実際には大きな長所となった。

 

 しかしながら、現在では、アメリカの民主政治体制の政治過程が、同盟諸国やパートナーに対して、安心感ではなく、より厳しいものとなり、警戒感を与えることになっている。また、アメリカの政治指導者たちが、「アメリカは国際的な諸問題で世界を指導できる能力を持っているのか」という疑念を起こさせている。第一次世界大戦とヴェトナム戦争の後、アメリカは大きく傷ついた。アメリカ国民はこれらの時期、世界に対してアメリカが関与していくことを基礎とする地政学を求める指導者を選んだ。イラク戦争後、アメリカの全体的なムードも同じような流れになった。アメリカの外交政策戦略の主要なテーマが「アメリカの世界的な評価を回復する」ということになった。アメリカ政府は地政学ではなく、国際的な脅威に関心を払うようになった。「戦争」か「関与」かの単純な二者択一で政策を行うようになっている。また、「バカなことはやらない」という考えに基づいて受け身的な事なかれ主義になっている。

 

 イラク戦争後のこうした流れによって、伝統的な国民国家、勢力均衡、アジア、東欧、中東に出現しつつある地域的な秩序に関する競争の重要性は減退した。中国、ロシア、イランは、アメリカの影響力を小さくし、アメリカの同盟諸国の力を小さくするための強制的な戦略を用いることで、戦争と関与との間にある「グレーゾーン」を埋めている。同じようなことは南米についても言える。しかし、南米で現在の国際システムに異議を唱えている国々の国際的な秩序に与える脅威はより小さいものと言える。アメリカとの間で相互利益がある地域における ロシア、中国、イランの関与はそれぞれの国益にかなうものであるが、この関与を「大戦略」と呼んでしまうと、オバマ政権が「これまでの国際秩序を作り変えようとする諸大国に地域的な秩序作りを任せてしまっている」という印象を世界中に与えることになってしまっている。一方、これらの大国に対して純粋に競争的な戦略を採用すべきと主張しているリアリストたちは、アメリカの同盟諸国やパートナーの置かれている複雑な立場を分かっていない。これらの国々のほとんどは、特にロシアと中国に対して、冷戦期のような立場をはっきりさせるような戦略を採れないような状況にある。アメリカの大戦略は国家間関係の根本的な理解のために地政学を復活させねばならない。しかし、同時に国際社会で指導的な立場に立つには、信頼されるに足るだけの外交的、経済的、軍事的、価値観に基づいた選択肢を提供する必要があることもアメリカは認識しなければならない。世界の国々に近隣の新興大国、既存の国際システムに異議を唱える大国関係を持たないようにさせようとしても無駄である。

 

 言うまでもないことだが、海外で指導的な役割を果たすためには、国内での経済成長を維持することは欠かせない。しかし、それがアメリカの縮小のための言い訳になってはいけない。アメリカは、これから数年の間、競争が激しい世界秩序から撤退し、世界がボロボロになった後に戻ってくる、などということをやってはいけない。実際、多くの国際協定が締結間近であるが、これらは海外におけるアメリカの影響力を強化するだろうが、アメリカの国内経済を大きく動かすことにもなる。環太平洋経済協力協定(TPP)と環大西洋貿易投資協定(TTIP)によって、アメリカの貿易を促進され、ヨーロッパと太平洋地域をアメリカとより緊密に結びつけることになる新しいルールを構築されることになる。より良い統治の促進、女性の地位向上、法の支配、市民社会が強調されることで、諸外国ではより正義に基づいた、安定した、そして繁栄した社会が生み出されることになる。消費は促進され、知的財産権はしっかり保護されることになる。違法行為を終わらせ、保障関係のパートナーシップを強化することで、各企業はよりまともな戦略を立てることが出来、同盟諸国やパートナー諸国との間で新しいシステムと技術に関してより生産的な発展を進めることが出来る。多くの国々がアメリカとの間の更なる経済的、軍事的な協力関係を望んでいるのだ。実際のところ、近現代史を通じて、現在ほどアメリカとの協力が求められている時期はないのだ。ここで大きな問題となるのは、アメリカ政府は、この新しい流れを利用して、経済、規範、軍事の関与に関するあらゆる手段に優先順位をつけ、それらを統合することが出来るのかどうか、ということである。

 

 この問題に関しては、アメリカ国民の考え方ひとつだ。この問題に関して、歴史は大きな示唆を与えてくれる。1920年代初めに行われたギャロップ社の世論調査では、アメリカ国民の大多数が、第一次世界大戦に参戦したことは間違いであったと答えた。1930年代、連邦議会は国防予算を減額し、保護主義的な関税を導入した。1930年代末、日本とドイツがヨーロッパと太平洋の既存の秩序に脅威を与えるようになった。この時期、ギャロップ社の調査で、数字が逆転し、大多数のアメリカ国民が第一次世界大戦にアメリカが参戦したことは正しかったと答えた。フランクリン・デラノ・ルーズヴェルト大統領は、互恵通商法を成立させ、海軍の再増強に乗り出した。1970年代半ば、アメリカ国民はヴェトナム戦争に反対するようになった。この時、連邦議会は防衛予算を減らし、大統領の外交政策遂行に制限を加えた。それから10年もしないうちに、ソ連が第三世界に対してそれまでにない拡張主義で臨むようになると、アメリカ国民は国防予算を増額し、ソ連の進出を阻止し、冷戦の終結につながる動きを促進する政策を支持した。

 

 最近の世論調査の結果は、アメリカ人の中に国際主義が再び復活しつつあることを示している。国家安全保障は共和党支持者たちにとって最も重要な問題となっている。一方、ピュー・リサーチセンターの世論調査では、大多数のアメリカ国民がTPPを支持している。問題解決は指導者の力量にかかっている。民主、共和両党の大統領候補者予備選挙の始まりの段階では、むちゃくちゃなポピュリズムの旋風が起きている。それでも、国際的な関与を主張する候補者が最終邸には勝利を得られるだろうと考えるだけの理由は存在するのだ。

 

(終わり)

メルトダウン 金融溶解
トーマス・ウッズ
成甲書房
2009-07-31




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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12


 

 古村治彦です。

 

 オバマ米大統領のアジア歴訪(日本、韓国、マレーシア、フィリピン)に合わせて、NYTに、尖閣問題に関する論稿が掲載されました。マイケル・グリーンとジョージタウン大学准教授と呉心伯復旦大学教授がそれぞれ日本と中国の立場から主張を行っています。

 

 これからマイケル・グリーン教授の論稿のポイントをいくつか紹介したいと思います。マイケル・グリーン教授の言いたいことは、「中国はアジア地域で脅威となっているので、日米で緊密な協力関係を築いて、対処しなくてはならない」というものです。しかし、その対処は、外交と対話を通じてということで、オバマ大統領の見解とほぼ同じです。

 

 私は、アメリカ(とそれに追従する日本)の論理に関しては危険を感じています。外交と対話での問題解決を主張しながら、尖閣諸島の主権(sovereignty)を巡る争いと解決にアメリカは関与しないとし、同時に日米安保条約第5条の適用(必ずしも米軍の出動があるとは書いていない)に関して述べているという非常に複雑な論理があります。

 

 こうなると、中国からすれば、主権問題解決のために、沿岸警備隊の艦船などを派遣して、中国の領土であることもアピールし続けるという行動を取ることになり、偶発的な衝突が起きる可能性が出てきます。

 

 また、2012年に行われた尖閣国有化によって中国は態度をますます硬化させましたが、これも元はと言えば、当時の石原慎太郎東京都知事が、アメリカの首都ワシントンDCにあるシンクタンク「ヘリテージ財団」での都による尖閣購入が原因です。表立ったアメリカの関与があったか分かりませんが、日中間で話し合いすらできないようにさせられて、アメリカにとっては日本をかませ犬、番犬として中国と対立させ続けることができるようになりました。

 

 「寝た子を起こす」ことになってしまったのは、こうした複雑な現実を無視した論理性があるのだろうと思います。お互いに触らないようにしよう、時期が来るまで待とうという知恵が論理性の前に保護されてしまったのはかえすがえすも残念です。

 

==========

 

①日米両政府は日中間の緊張を減らすためにより協力することができるが、根本的な問題は、中国が海洋で国境を接している近隣諸国に対して強制力を使うというパターンの存在である。

 

②日本は中国が歴史的な経緯に基づいて尖閣諸島の領有権を主張しているのは歴史修正主義だと主張している。日本は、中国政府が1971年以前に尖閣諸島の主権について何も主張しなかったと主張している。中国側は、2012年に民間の土地所有者(日本人)から尖閣諸島に属するいくつかの島々を日本政府が買い上げたことによって、1970年代から続いてきた、「尖閣諸島を巡る争いは棚上げ(to set the dispute aside)」という日中両国間の暗黙の取り決めを破ったと主張している。

 

③インドやフィリピンの海洋国家は、日中両国間の摩擦を大きな関心と懸念を持って観察している。中国は、中央軍事委員会が5年前に承認した「近海ドクトリン」に基づいた戦術を使って、これらの海洋国に対して、日本に対してと同じような圧力をかけている。「近海ドクトリン」の目的は、東シナ海と南シナ海を中国がコントロールできるようにするというものだ。

 

④より根本的な疑問は、「中国が拡大を続ける経済力と軍事力を国際的な規範やアメリカの力に対する敬意を払うことなしにただ国益追求だけに使うのかどうか」というものだ。

 

⑤日米中は東シナ海での偶発的な衝突を避けるという点で利益が一致している。しかし、最悪の事態は、アメリカ政府が、中国からの圧力を受けて、日本政府に圧力をかけて中国との間で妥協を成立させるというものだ。

 

⑥アメリカの基本線は、アメリカは尖閣諸島を巡る争いを解決するということではなく、将来の西太平洋における力と秩序の構造に関する問題を解決するということである。漁業、天然ガス、ナショナリズムといった個別の問題を解決することではない。ウラジミール・プーチン大統領率いるロシアはウクライナで騒動を起こしているが、それと同じくらいに中国もアジア地域を騒がせている。中国はアジアにおけるアメリカが支持する現状の構造とアメリカと諸国の同盟関係がどれだけ強靭な耐久性を持っているのかテストしているところなのである。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

The Opinion Pages | Op-Ed Contributor

Negotiating Asia’s Troubled Waters

 

New York Times

 

By MICHAEL J. GREENAPRIL 23, 2014

http://www.nytimes.com/2014/04/24/opinion/negotiating-asias-troubled-waters.html?action=click&contentCollection=Opinion&module=RelatedCoverage&region=Marginalia&pgtype=article

 

WASHINGTON — The mounting tensions between Tokyo and Beijing over the small chain of islands in the East China Sea called the Senkaku by Japan and the Diaoyu by China have profound implications for United States interests and the future of Asia.

 

Both Tokyo and Washington can do more to reduce tensions, but the fundamental problem is China’s pattern of coercion against neighbors along its maritime borders. Any American plan to ease the strain between Japan and China should convince Beijing that coercion will no longer work — but that dialogue and confidence building measures might.

 

The competing Japanese and Chinese claims to the islands, which are under Japanese control, are rooted in obscure historical documents and verbal understandings. Japan argues that China’s historical claims to the islands are revisionist, noting that Chinese officials never asserted sovereignty over the islands before 1971. Chinese officials say that by purchasing several of the islands in 2012 from private Japanese landowners, the Japanese government broke a tacit bilateral agreement dating from the 1970s to set the dispute aside.

 

Yet while each side says the other broke the status quo, China has been pressing its claim by increasing maritime patrols in the waters around the islands, embargoing strategic metal exports to Japan (in violation of international agreements), and expanding military operations around — and even through — the Japanese archipelago.

 

Maritime states from India to the Philippines are watching the friction between China and Japan with great concern. Beijing has used similar pressure tactics in disputes with those countries since the Central Military Commission approved a “Near Sea Doctrine” five years ago with the aim of asserting greater control over the waters of the East and South China Seas. The doctrine includes not only the sea, but also the air, as Beijing demonstrated last November when it announced an Air Defense Identification Zone over a range of small islands and waters in the East China Sea administered by Japan and South Korea.

 

Thus the issue at stake is not just the conflict between Japan and China over islets, but the more fundamental question of whether China will use its growing economic and military power to assert its interests without respect to international norms — or to American power.

 

The Obama administration has reiterated that the 1960 U.S.-Japan security treaty covers islands, like the ones in the East China Sea, even though Washington has not taken a position on the underlying sovereignty question.

 

All of the parties have an interest in avoiding an accidental conflict in the East China Sea. But the worst thing Washington could do is push Tokyo to compromise with Beijing in the face of Chinese pressure.

 

The Obama administration did just that with Manila two years ago, and the results were a setback for Washington.

 

At that time, China was also using expanded maritime patrols and mercantile embargoes to compel Manila to compromise in a dispute over the Scarborough Shoal in the Philippine Sea. As the possibility of a clash mounted because Manila insisted on protecting its traditional control of the suddenly contested waters, the Obama administration got nervous and brokered a deal in which both sides would pull back their ships.

 

After a brief withdrawal, China’s maritime forces rushed back in to take control, blocking not only the Philippines’ small navy, but also local fishermen whose families have made their livings around the shoals for generations. Manila has taken the issue to the International Court of Justice and Mr. Obama will announce a new security cooperation and access agreement when he visits the Philippines next week, but China has no intention of accepting the court’s arbitration, and Beijing considers the episode a victory.

 

The United States must not make the same mistake of being overly even-handed in the East China Sea dispute, where the stakes are higher. The best way to avoid an accidental military confrontation would be for China to accept Prime Minister Shinzo Abe’s offer for open dialogue with President Xi Jinping, and the Japanese government’s proposal for military-to-military confidence-building talks, improved communications channels for ships and planes, and activation of a hotline.

 

China has refused all of these overtures. Instead, Beijing has engaged in a propaganda campaign designed to demonize the Japanese prime minister as a militarist — he increased Japan’s defense spending 0.8 percent — and has argued that Mr. Abe must fundamentally change his attitude before there can be a summit meeting between the two leaders.

 

Meanwhile, the People’s Liberation Army has resisted Japanese confidence-building proposals, viewing military tensions and uncertainty as means to force compromise on underlying disputes.

 

Mr. Obama should make Chinese acceptance of these proposals the centerpiece of his public and private discussions about the island standoff when he is in Asia this week and next.

 

At their talks in Tokyo, Mr. Obama and Mr. Abe should also reiterate their intention to finalize new guidelines for bilateral defense cooperation by the end of the year, which would send a strong signal to potential adversaries that the United States and Japan will be ready to stand side-by-side in any regional crisis and that any efforts to isolate Japan from the United States will fail.

 

At the same time, Mr. Obama and Mr. Abe need to talk about measures that will reassure China and offer potential off-ramps to the crisis.

 

One would be to push for resumption of earlier discussions between China and Japan on joint development of resources in the East China Sea. Another would be for Mr. Abe to take advantage of a slight decrease in Chinese operations around the islands this year to see if Beijing might agree to longer-term arrangements accompanied by more open communication and transparency. Any small opening is worth exploring.

 

The bottom line is that the United States is not going to resolve the underlying dispute over the islands, which is about the future structure of power and order in the Western Pacific and not just fish, gas or nationalism. Though nowhere near as brazen as President Vladimir V. Putin of Russia in the Ukraine, China is testing the durability of the American-backed status quo and United States alliances in Asia. This line of thinking in Beijing about the region will not disappear overnight, but if the United States is credibly engaged with allies and partners to dissuade any use of coercion, there will be room for confidence-building measures that reduce tensions and buy time for later diplomatic resolutions. Japan has useful proposals on the table, and deserves international support.

 

Michael J. Green is senior vice president for Asia and Japan Chair at the Center for Strategic and International Studies and associate professor at Georgetown University. He is a contributor to “Debating China: The U.S.-China Relationship in Ten Conversations.”

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)








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