古村治彦です。

 最新刊『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)では、後半部でアメリカにおける分断についての分析も行っています。是非お読みください。

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

  今年11月に実施されるニューヨーク市長選挙本選挙を前に、民主党の候補者を決める予備選挙(primary)の集計が続いたが、エリック・アダムス(Eric Adams)というアフリカ系アメリカ人の元警部が当選した。ニューヨーク市内には5つの行政区(Borough、バラ)があり、アダムスはブルックリン行政区の区長を務めている。20年以上、ニューヨーク市警察に勤務し、その後はニューヨーク州上院議員を務め、その後は区長を務めていた。警察出身ということもあり、「警察に予算をつけるな(defund the police)」運動には反対しており、ニューヨーク市第14選挙区(ブロンクス地区を中心とする)から出ている、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)連邦下院議員が属する進歩主義派といは一線を画している。
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エリック・アダムス
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ニューヨーク市の地図

 AOCは現職のビル・デブラシオ市長の補佐官を務めたマヤ・ワイリーを応援していたが、3位で敗退ということになった。デブラシオ市長は新型コロナウイルス感染拡大対策での失敗を批判されており、その前からも評判が良くなかった。アマゾンの第2本社をニューヨークに置くという話に対して、優遇税制を適用するという市長の発言も格差に苦しむ低所得者や労働者階級からの反発を買った。ワイリーはデブラシオ市長を批判する立場を取ったが、デブラシオ市長の補佐官だったという経歴が報道されたことで支持が拡大しなかったようだ。
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マヤ・ワイリーとAOC(左)
 2位となったキャサリン・ガルシアはニューヨーク市政府(市庁)で公務員として勤務してきた。デブラシオ市長の下、衛生局長としてごみ収集やごみ問題に対処した。新型コロナウイルス感染拡大時期では、「食料配給の皇帝(Food Czar for New York's COVID-19 emergency response)」と呼ばれ、生活に困窮した市民に食料を提供する部門の責任者を務めた。『ニューヨーク・タイムズ』紙は選挙戦期間中に、ガルシア支持(endorsement)を紙面で公表した。
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キャサリン・ガルシア

 今回の予備選挙で採用された優先順位付選挙制度とは、複数の候補者が出る場合に、有権者は候補者たちに順番(1位から〇位まで、今回の選挙では5位まで)をつけて投票するというものだ。1回目の集計で、1位の投票が過半数を超える候補者が出ればその人が当選となる。過半数を占める人が出なかった場合には、最下位になった候補者は敗退となる。再開となった候補者への投票は、残りの候補者たちに順位に応じて分配される。それを繰り返していく。この選挙制度のメリットは死に票が少なくなり、民意が反映されやすいというものだ。デメリットは投票はそこまで複雑ではないが、集計が複雑になって時間と手間がかかるというものだ。

 市警出身、市庁出身の共に行政での経験が豊富なアダムスとガルシアの接戦ということになり、最後はアダムスが勝利を収める結果となった。AOCが支持したワイリーが3位で敗退したということは、進歩主義派の勢いは大したものだが、やはりまだまだ民主党内での支持基盤は大きくないということを示すものだ。進歩主義派が民主党内で大きな勢力になるにはまだまだ時間と労力が必要ということになる。また、人々は今回、経験豊かな人物による安定した市政運営を求めているという意思表示を行ったということにもなるだろう。

(貼り付けはじめ)

エリック・アダムスがニューヨーク市長選挙民主党予備選挙で勝利(Eric Adams wins New York City mayoral primary

ジョーダン・ウィリアムズ、タル・アクセルロッド筆

2021年7月6日

https://thehill.com/homenews/campaign/559574-eric-adams-wins-new-york-city-mayoral-primary?rl=1

ニューヨーク市長選挙民主党予備選挙に置いて、ブルックリン行政区区長(Brooklyn Borough President)のエリック・アダムスが勝利を収めた。民主党候補者が11月の市長選挙本選挙において勝利の可能性が極めて高い中で、自身で勝利宣言を行った。

優先順位付投票制による予備選挙(ranked-choice primary)の最新の結果が火曜日午後に発表され、AP通信はアダムスの勝利を報じた。

ニューヨーク市警察で警部を務めたアダムスは予備選挙で先頭走者であり続けた。ニューヨーク市衛生局長を務めたキャサリン・ガルシア、大統領選挙にも出馬したアンドリュー・ヤン、公民権擁護に熱心な弁護士マヤ・ワイリーといった人々が参加した予備選挙で、アダムスは常に支持率トップを守った。

アダムスは本選挙で、共和党の候補者カーティス・スリワと一対一で対決することになる。スリワは「ガーディアン・エンジェルス」の創始者である。

選挙で勝利者が確定する直前、アダムスは声明を発表し、その中で、「現在も少数ではあるが数えられていない投票が残っている状態であるが、選挙結果は明白となった。労働者階級のニューヨーク市民たちによる、歴史的な、多様性を持つ5つの行政区の連合によって、ニューヨーク市長選挙民主党予備選挙に置いて、私たちに勝利がもたらされた」と述べた。

「私たちは11月の本選挙での勝利に集中しなければならない。本選挙で勝利を収めることで、この偉大な都市が、現在苦しんでいる人々と安全で、公正で、暮らしやすい未来を全てのニューヨーク市民にもたらそうと奮闘している人々に対して行った約束を、私たちが果たすことができるようになるのだ」。

火曜日にニューヨーク市選挙管理委員会が発表した集計によると、アダムスは50.5%対49.5%の僅差でガルシアをリードしていた。先週の集計では、51.1%対48.9%だった。

ワイリーは先週の第8回目の集計で3位となった。その結果として、ワイリーは9回目と10回目の集計からはずされることになった。

今回の予備選挙では、選管は、優先順位付投票制度を実施した。これはまず有権者に5名の候補者に順位(1位から5位までの)をつけて投票してもらうものだ。

1回目の集計で、1位の投票が全体の50%以上(過半数)を得る候補者が出ない場合、最も支持が少なかった候補者がはずされて、投票が再び数え直され、集計し直される。勝利者が確定するまでこれが続く。

しかし先週、この選挙過程が混乱に陥ってしまった。ニューヨーク市選管が13万5000票のテスト用の「投票」が正式な投票から排除されず、非公式の選挙結果の中に混入していることを報告したのだ。

集計の不手際によって選管にはアダムス、ガルシア両陣営、更には共和党から批判が寄せられた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側