古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:マーク・エスパー

 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領の「アイソレーショニズム(国内問題解決優先主義、Isolationism)」「アメリカ・ファースト(America First、アメリカ国内の状況を第一に考える)」という言葉は日本で通じる言葉で言えば「アメリカ国民の生活が第一」ということになる。2016年のトランプの選挙公約は、「世界中に展開しているアメリカ軍を撤退させる」というものだった。これに人々が惹きつけられた。

 2008年のバラク・オバマ旋風も「チェンジ」「イエス・ウィ・キャン」というスローガンで隠されているが、ジョージ・W・ブッシュ政権の外交政策や国家安全保障政策、ネオコンが主導した諸政策の失敗に対する反対が根底にあった。しかし、オバマ政権第一期では、選挙で激しく戦ったはずのヒラリー・クリントンを国務長官に起用した。案の定、ヒラリーとその一派は余計なことをして中東を混乱に陥れてしまった。また、リビアではベンガジ事件が起き、ヒラリーの側近クリストファー・スティーヴンス大使が死亡することさえ起きた。ヒラリー派は「人道的介入主義派」と呼ばれ、共和党系のネオコンと親和性が高い。世界中に介入して、「世直し」をしてやろう、そうすることが世界平和への道だと宗教のよう信じ込んでいる人々だ。

 2003年のイラク戦争には、当時、民主党所属の連邦上院議員だったヒラリー・クリントンもそしてジョー・バイデンも賛成している。「好戦的な戦争屋(war monger)」の最たるものではないか。

 ジョー・バイデン政権(仮)で、国家安全保障政策や外交政策の分野で、どれだけヒラリー派の人々が登用されるのだろうかと私は心配している。「トランプ大統領が負けた、やったやった」と日本で投票権もないのに喜んでいるのは、単細胞の考えの足りない人々だ。これからどれだけの厄災が起きるのか、と常に悲観的に備えておくことが考え深い人たちのやることだ。
christophercmiller001

クリストファー・ミラー
 トランプ政権はアメリカ軍の撤退を進めようとしている。マーク・エスパー国防長官が解任され、クリストファー・ミラーが国防長官代理に任命された。ミラーは「全ての戦争は終わらせられなければならない(All wars must end)」という衝撃的な言葉を発した。好戦的なアメリカの国防長官が戦争を止めようと言ったのだ。「アメリカと一緒になって、中国と韓国をやっつけてやる」と言葉だけはお勇ましい日本国内のアホ右翼に聞かせてやりたい。彼らは「それじゃジョン・レノンと同じじゃないか!」と呆れて驚き、自分たちが上ったはしごが外されたと感じるだろうか。

 エスパー国防長官とその側近たちが更迭されているのは、トランプ大統領の意向に沿う動きをしなかったからだ。それがアメリカ軍の撤退であり、こうした人間たちは自分たちは快適なオフィスにいて、下っ端のことなど書類上の数字でしかとらえない。

 クリストファー・ミラーはジョージ・ワシントン大学時代にROTC(士官養成プログラム)を利用して、大学を卒業後に米軍に入隊している。特殊作戦部隊(グリーンベレー)に所属していたこともある。また、大学在学中には、ワシントン市内を警護する、3400名の将兵を擁するワシントン・コロンビア特別区陸軍州兵部隊(District of Columbia National Guard)の憲兵を務めていたこともある。ミラーを国防長官代理に登用したということは、トランプ大統領はワシントンを固めようとしているのだろうということが分かる。

 バイデンが勝って良かった、良かったと言っている人たちはよく考えた方が良い。あなたたちが考えているよりも事態はより深刻でかつ危険なのだ。

(貼り付けはじめ)

●「アフガン停戦協議の加速を 米長官、タリバンと会談」

2020/11/22 09:12 (JST)

©一般社団法人共同通信社

https://this.kiji.is/702996862120199265?c=39550187727945729

 【ワシントン、イスラマバード共同】ポンペオ米国務長官は21日、アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンの交渉団とカタールの首都ドーハで会談し、恒久停戦に向けアフガン政府との協議を加速させるように促した。アフガン政府交渉団にも同様の考えを伝えた。国務省が発表した。

 2月の米タリバン和平合意に基づきカタールで停戦協議が続いているが、タリバンが各地で攻撃を続けているため進展していない。

 トランプ米大統領は大統領選での敗北を認めておらず、米政権は17日にアフガン駐留米軍を現在の約4500人から来年115日までに約2500人に削減すると発表している。

(貼り付け終わり)

 

 

(貼り付けはじめ)

新しい国防長官は海外派遣の米軍の数を減らす可能性を示唆している:「全ての戦争は終わらせられねばならない」(New Defense chief signals potential troop drawdown: 'All wars must end'

セリーヌ・キャストロヌオヴォ筆

2020年11月14日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/525967-new-defense-chief-signals-potential-troop-drawdown-all-wars-must-end

クリストファー・ミラー国防長官代理は金曜日に国防総省のスタッフに宛てたメモにおいて中東における米軍の数を削減する可能性を示唆した。メモの中でミラーは「全ての戦争は終わらせなければならない」と書いている。

ミラーは、今週になってトランプ大統領が国防長官だったマーク・エスパーをツイッターでの書き込みで解任した後を受けて、国防長官となった。ミラーはメモの中で、現在の様々な衝突が終わっていないことを認めながらも、「私たちは永続戦争を行う国民ではない」と書いている。

ミラーは、アフガニスタンでの戦争に言及しながら、次のように述べている。「私たちが将来に備える中で、2001年に我が国にアルカイーダがもたらした戦争を終わらせるための努力を続けねばならない。この戦争は終わってなどいない」。

ミラーは続けて次のように述べている。「私たちはアルカイーダと協力者たちを敗北の淵にまで追い込んでいる。しかし、私たちは、戦いを終わりにまで導くことができなかった過去の戦略的な誤りを避けねばならない。実際のところ、この戦いは長期化し、私たちの払った犠牲は多大なものとなっている。そして、多くの国民は戦争に疲弊している」。

ミラー国防長官代理は「現在の段階は、私たちが指導的な役割から支援的な役割に移行するための重要なものなのである」とも書いている。

ミラーは「私たちは永続戦争を叩か国民ではない。私たちが支持するもの、私たちの先祖が戦ったもの二大して永続戦争は反対する考えだ」と述べ、「全ての戦争は終わらせられなければならない」と続けた。

ミラーは「戦争を終わらせるためには、妥協とパートナーシップが必要となる。私たちは困難に直面した。私たちは全ての力を注ぎこんだ。そして今、私たちはアメリカに帰る時なのだ」と書いている。

トランプ大統領が今週エスパーを解任してから、アフガニスタンから米軍将兵の撤退を促進するのではないか、国防総省の幹部たちの人事を大きく変更するのではないかという疑念が大きくなっている。

2016年の大統領選挙で、トランプは「終わりのない戦争」を終わらせ、外国の争いから米軍将兵を撤退させることを公約として選挙戦を戦った。しかし、19年間も続くアフガニスタン戦争におけるアメリカ軍の存在を削減しようとする試みは困難であることが証明され続けた。

トランプ政権は今年初めにタリバンとの間に条件付きの講和条約を締結した。その内容は、タリバンがアフガニスタンにおけるアルカイーダの存在を拒否するために努力することで、アメリカは来年5月までに完全撤退をするというものだ。トランプ大統領は米軍撤退のペースに不満を募らせているという報道がなされている。

先月、トランプ大統領はツイッター上に、アフガニスタンに駐留している米軍はクリスマスまでにアメリカ本土に帰還させるべきだ、と投稿した。

今週になって国防長官代理に任命され、その直後に、ミラーはダグラス・マクレガー退役陸軍大佐を自身の上級顧問として採用した。

マクレガーは過去、頻繁にアメリカ政府は米軍を中東の争いから撤退させるように主張してきた。そうしたマクレガーを国防総省に迎えたということは、トランプ大統領が任期の終わりの時期にアメリカ軍を中東から引き上げさせる試みが行われる可能性を示唆している。

人事変更については報復だという見方も出ている。トランプ大統領に対して厳しい批判を展開している元CIA長官ジョン・ブレナンは金曜日、トランプ大統領が国防総省の人事を大幅に変更したのは「復讐」をしているのだと述べた。

ブレナンはCNNとのインタヴューの中で次のように述べた。「大統領は人々に対して個人的に忠誠を誓うように求めます。従って、マーク・エスパーを解任し、国防総省内の幹部クラスの文官たちを更迭したことは、トランプ氏の個人的な恨みを晴らす行動に過ぎないのです」。

エスパーの解任以降、国防総省の幹部たちの中から辞任を示唆する動きが出ている。国防総省の政策担当のトップであるジェイムズ・アンダーソン、国防総省の情報部門のトップであるジョセフ・カーナン、エスパーの首席補佐官ジェン・ステュワート、次席補佐官アレクシス・ロスが辞任の動きを見せている。

国防総省の元幹部職員で、現在の国防総省の幹部クラスの状況について詳しい人物は今週、マクラッチーに対して次のように語った。「今回の選挙では自分が勝利したというトランプ大統領の主張を促進するために、米軍を積極的に使用する準備のため、国防総省の幹部文官たちを解任することはトランプ大統領にとって重要なことなのです」。

ある幹部職員は国防総省の人事の更迭と招聘について次のように述べた。「これはこうした種類の決定を行うにあたり、恐らく最悪の、最も極端な理由となるでしょう」。

先週、ジョー・バイデンが大統領選挙の勝者となったと大手メディアは報じた。しかし、トランプ大統領は敗北を認めることを拒絶し、民主党による選挙を盗む試みとして、激戦諸州で不正選挙が実施されたということを繰り返し主張している。

これらの主張は選挙の専門家、地方の選挙関連職員たち、そして裁判所によって反論され、覆されている。

ミラーは金曜日、指導部の変更があっても、米軍は「極力な体制」を維持し続けると述べた。

リトアニアからの訪問団との会談の前に、国防総省でミラーは次のように発言した。「アメリカ国民と我が国の同盟諸国とパートナー諸国について、国防総省は強力な体制を維持し、アメリカの国土、アメリカ国民、世界規模での我が国の国益を保護し続けるという重要な仕事を継続するということを明確にしておきたいと思います」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 ミネソタ州ミネアポリス市で警察官が丸腰の黒人男性ジョージ・フロイドを制圧する際に、膝を首に押し付け、そのまま数分間も圧(の)し掛かり、フロイドが死亡するという事件が起きた。フロイドは「息ができない(I can’t breathe)」と訴え、周囲の目撃者たちも助けるように求めていたが、白人警察官は制圧を続けた。事件に関わった警察官たちは殺人罪で訴追された。

 この事件を受けて全米各地で抗議運動が発生し、抗議活動が過激化し、破壊行為や暴力行為にまで及ぶ者たちが出てきた。また略奪や破壊も行われる事態ともなっている。警察も催涙ガスを発射したり、手荒い対応をしたりということで、対立は激化している。

アメリカにおける人種差別は根深い。私は子供の頃にアメリカは「人種のるつぼ(melting pod)」と習った。これは「アメリカという国に来れば、全ての人々が溶け合って、アメリカ人になる」という意味だったと思う。しかし、現在は「サラダボウル(salad bowl)」という言葉になっている。これは「それぞれの野菜がそのままで魅力を発揮しているように、人種などの違いがありながらも協調していく」という意味だ。しかし、これはあくまで理想論であり、現実はなかなかうまくいかない。

 アメリカでも都市部であれば、様々な人種の人々と触れ合う機会はある。しかし、アメリカでも地方や田舎に行けば、ほぼ白人しかいないという場所も沢山ある。そういうアメリカと都市部のアメリカでは意識や考え方に大きな違いがある。非白人であるために、日常生活で不公平な扱いを受けたり、教育や就業の機会が制限されたりということはまだまだ残っている。そうした状況下で何とか這い上がろうという気概を持てる人は少なくて、諦観が広がる。そうなると非白人共同体で負の連鎖、スパイラルが続くということになる。

 抗議活動はワシントンDCでも行われ、ホワイトハウスの周辺にも多くの人々が集まった。ドナルド・トランプ大統領は地下壕に退避したという報道もあった。そうした人々に対して警察は催涙ガスを発射して鎮圧を試みた。トランプ大統領がホワイトハウスから歩いていける距離にある教会に向かう様子をレポートしていたジャーナリストたちは、空中に浮遊する催涙ガスの残留物によってせき込んでいたということだ。

 こうした中で、トランプ大統領は暴動や略奪、破壊行為に対応するために、アメリカ軍を派遣すると述べた。州兵(national guards)は対外戦争に動員されることもあるが、主にアメリカ国内が活動の場だ。アメリカ軍は警察活動の支援には向かない。そのために、そのような活動は行わないことになっている。ただ、反乱法という法律があり、アメリカ大統領はこの法律が適用されれば、米軍をアメリカ国内に派遣することが可能となる。1992年のロサンゼルス暴動の際にこの法律が適用された。この時、ロサンゼルス北部の高級住宅街を守るために、暴動が始まったロサンゼルス南部(サウスセントラルと呼ばれた、全米でも屈指の治安の悪い地域)と北部の間にあるコリアタウンが犠牲にされたという説がある。略奪者や破壊者に対して、徴兵で軍隊経験のある韓国人移民の男性たちが銃を取って応戦する姿が見られた。白人を守るために、非白人同士が戦わされたという話になる。

 軍隊と警察は共に武器を独占的にかつ合法的に所持し使用することが認められているが、その目的は異なる。軍隊は「国家の独立を守る」が、警察は「市民の安全と財産を守る」、これらが目的だ。軍隊は市民の生命や財産を守ることが主目的ではない。たまたまそのような結果になることが多いが、結局は国家を守る、政府を守るのが仕事だ。トランプ大統領が軍隊の派遣に言及したことの意味は大きい。

 ホワイトハウスの目の前でも激しい抗議活動が行われ、トランプ大統領は一時地下壕に退避したという報道もなされた。単純に怖がったということもあるだろう。しかし、軍隊の派遣がなされるというのは、国家の独立や体制が脅かされる時だ。トランプ大統領は、今回の抗議活動やデモ、略奪や破壊活動が体制への挑戦だと捉えているのだろう。アメリカの「偉大さ」「例外主義(アメリカは他国とは違う)」「デモクラシーの主導者」「世界秩序の保護者」という輝かしい主張は、国内の大きな矛盾、経済格差や人種差別などを基礎にしつつ、それらを覆い隠している。経済格差や人種差別をある程度までゆっくり進めることはアメリカの主流派、白人も受け入れられることだろうがそれを急進的に進めることは「革命」として捉える。

2016年と2020年のアメリカ大統領選挙民主党予備選挙で善戦したバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は自身を革命家だと形容した。「民主社会主義者」にして「革命家」はアメリカでは多数派にはなれない。しかし、サンダースが述べていることは、日本やヨーロッパ諸国では何も過激なことではない。アメリカは自由主義、デモクラシー、資本主義を標榜し、世界をリードすると威張りながら、実際には内部に大きな矛盾を抱えている。その矛盾を解決しようという動きが出ると、それを「革命」と糾弾し、その動きを止めようとする。そうこうしているうちにうやむやで終わる。

 新型コロナウイルス感染拡大による社会的、経済的不安が広がる中、古典的とも言える白人警察官による無実のアフリカ系アメリカ人男性の殺害という事件が起きた。アメリカの抱える矛盾を解決しようという動きが出てきた。トランプ大統領はアメリカの抱える矛盾を象徴するような人物だ。彼が身の危険を感じ、軍隊を投入するとまで言及したことは

象徴的な発言である。衰退していくアメリカの叫び、とでも言えるだろう。

(貼り付けはじめ)

エスパーは命令変更後にワシントンDC周辺にいる米軍将兵の内数百名に帰還を命令(Esper orders hundreds of active-duty troops outside DC sent home day after reversal

エレン・ミッチェル筆

2020年6月4日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/501232-esper-orders-hundreds-of-active-duty-troops-outside-dc-sent-home-day-after

マーク・エスパー国防長官は、ワシントンDCに入るために準備をしていた現役の米軍将兵数百名をそれぞれの駐屯基地に帰還させている。これは水曜日になされた帰還命令が同日に変更された後、また帰還命令が下された。

国防総省のある幹部は本誌に対して、国防総省は「首都地域に派遣されている現役部隊の一部を自分たちの駐屯基地に戻す決定を下した」ことを認めた。

この幹部は続けて、米軍上層部は「現在の変動の激しい状況を継続的に注視して」おり、首都地域にとどまっている現役部隊のメンバーたちの基地への帰還は「状況次第(conditions-based)」だと述べた。

多くの報道機関が報じているところでは、ノースカロライナ州フォート・ブラッグを基地とする第82空挺師団から派遣された将兵は首都地域に派遣されている1600名の米軍将兵の一部を構成している。この米軍将兵たちは、先週武器を持っていなかったアフリカ系アメリカ人ジョージ・フロイドがミネアポリス市警察に殺害された後に発生している市民暴動に対応のために首都地域に派遣されたが、実際には使用されていない。

エスパー長官が将兵の基地への帰還を命じて2日の内に2回の命令変更が行われた。水曜日午前、エスパー長官は派遣されている米軍に基地に帰還するように命令を出した。しかし、同日に行われたホワイトハウスでの会議後に命令を変更した。将兵に対して、更に24時間、「高次の警戒」を保つようにという命令が出された。

首都地域へ派遣された将兵の帰還と命令が更に変更になったのは、ホワイトハウスのメッセージとエスパー長官の発言が異なるものとなった後だ。水曜日、エスパー国務長官は記者団に対して、1807年に制定された反乱法の適用を支持しないと述べた。この法律を使えば、トランプ大統領は、抗議活動に対応するために、現役の米軍将兵を全米に派遣することが可能となる。

トランプ大統領は月曜日、州知事たちが「制圧」をせず、州兵を派遣しないのならば、抗議活動を鎮めるために軍隊を派遣すると警告を発した。しかし、水曜日に録画されたインタヴューの中で、トランプ大統領はこの主張を続けないという姿勢を示唆した。

トランプ大統領は、自身の首席報道官を務めたシーン・スパイサーとのニュースマックでのインタヴューの中で、「状況によるでしょう。州兵の派遣はやらなければいけないということではありません」と述べた。

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国防総省の長はトランプ大統領に反対し、反乱法の適用に反対する(Pentagon chief breaks with Trump, opposes invoking Insurrection Act

レベッカ・キール筆

2020年6月3日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/500877-us-defense-chief-does-not-support-invoking-insurrection-act

マーク・エスパー国防長官は水曜日、トランプ大統領が、ジョージ・フロイドの死亡事件から発生している全米規模の抗議活動の中で、国内の法の強制(domestic law enforcement)を実行するために米軍を投入することができるようになる法律の適用を支持しないと発言している。

エスパー長官の発言はトランプ大統領の発言と対立するものだ。トランプ大統領は、各州の知事たちがデモ参加者たちを「制圧」しないならば、抗議活動を鎮めるために、現役の軍部隊(active-duty troops)を派遣すると警告を発した。

エスパー長官は水曜日の記者会見に置いて次のように発言した。「私は常に確信し、確信し続けているのですが、州兵はこのような状況下では実際の方の強制を支援するために、国内の自治体や役所を支援することに最も良いパフォーマンスを発揮する存在です」。

エスパー長官は続けて次のように述べた。「私は国防長官としてだけではなく、元兵士、そして元州兵として申し上げています。法の強制の役割に現役の軍部隊を使用するという選択肢は最終手段としてのみ、最も切迫した恐ろしい状況でだけで使用されるべきです。私たちは現在、そのような状況には立ち至っていません。私は反乱法(Insurrection Act)の適用を支持しません」。

フロイドがミネアポリス警察による拘禁行為の過程で殺害された先週から抗議活動は全国各地に拡大している。一人の警察官が8分間にわたりフロイドの首に膝を押し付け上からのしかかった。抗議活動参加者の一部は略奪行為の中、暴力行為を激化させている。

火曜日までに、28州の知事とワシントンDCの市長は、群衆のコントロールを支援させるために州兵の派遣を決定した。州兵総局の発表によると、火曜日の時点で2万400名の州兵が「市民暴動(civil unrest)」に対応しているということだ。

アメリカ軍は通常、アメリカの国土において法の強制を実行することは禁止されている。しかし、1807年に制定された反乱法ではこの禁止を乗りこえることができる。反乱法が最後に使用されたのは1992年のことで、ジョージ・HW・ブッシュ元大統領が、ロドニー・キング事件に端を発する暴動(Rodney King riots)を鎮めるために、カルフォルニア州知事の要請に基づいて適用を行った。

国防総省はいくつかの現役の陸軍部隊がワシントンDC地域に派遣され、必要と見なされればいつでも首都に入るために準備をしているということを認めた。エスパーの反乱法適用反対の発言は、国防総省が陸軍部隊の派遣を認めた後に行われた。

火曜日夜に国防総省首席報道官のジョナサン・ホフマンが発表した声明によると、ノースカロライナ州フォート・ブラッグからの歩兵1個大隊(infantry battalion、訳者註:1個大隊は300名から800名によって構成)、フォート・ブラッグからの憲兵旅団(brigade、訳者註:旅団は複数の大隊で構成)、ニューヨーク州フォート・ダラムからの憲兵1個大隊が「首都地区にある複数の基地にいるが、ワシントンDCには入っていない」ということだ。

ホフマン報道官は続けて次のように述べた。「合計で1600名の将兵は「高次の警戒の中にあるが、合衆国法典第10編の下にとどまっている。そして、修正や地方自治体の施策を支援することには参加していない」。

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催涙ガスが群衆に撃ち込まれる中、トランプ大統領が抗議運動参加者たちを鎮めるためにワシントンDCに軍隊を動員(Trump mobilizes military in DC to quell protests as tear gas fired into crowds

ブレット・サミュエルズ、モーガン・チャルファント筆

2020年6月1日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/500576-trump-mobilizes-military-in-dc-to-quell-protests-as-tear-gas-fired

月曜日、トランプ大統領は、全米各地で起きている抗議運動を取り締まるために、「連邦政府の全ての資源、文民と軍隊」を動員するだろうと述べた。トランプ大統領は自分自身を「法と秩序の大統領」だと宣言した。この時、警察はホワイトハウスの外に集まった抗議する人々を攻撃的に解散させた。

トランプ大統領はワシントンDCに軍隊を派遣すると述べた。そして、全米各州の知事たちに州兵を派遣して道路を「占拠(dominate)」するように求めた。知事たちがそれを拒否するならば、アメリカの各都市に軍隊を派遣するだろうと述べた。

トランプ大統領は次のように述べた。「各市長と知事たちは、暴力が鎮静するまで、圧倒的な法の強制の存在を構築しなければならない。もし都市や州が住民たちの生命と財産を守るために必要な行動を取ることを拒絶するならば、私はアメリカ軍を派遣し、問題を即座に解決するだろう」。

州知事が要請することなしに、トランプ大統領が各州へ巡視のために米軍将兵を派遣する権限をトランプ大統領が持っているのかどうかは即座に明確にすることができなかった。国防総省のある幹部は、トランプ大統領は反乱法(Insurrection Act)を実行することはないと述べた。この法律は大統領にアメリカの国土に軍隊を派遣する力を与えている。この法律は1992年に最後に使用された。この時は、ロドニー・キング殴打事件で起訴された警察官たちに無罪評決が出された後に起きた暴動に対応するためだった。

トランプ大統領はまた、首都ワシントンDCにおいて、「暴動、略奪、破壊行為、暴行、財産の破壊を阻止するために、数千人単位の重武装した兵士たち、軍の将校、警察官を」派遣すると述べた。

トランプ大統領の発言は、ジョージ・フロイドの死亡事件の発生後にアメリカ国内で起きている分裂を促すことになった。トランプ大統領がローズガーデンで演説を行っているが、ホワイトハウスから道一つを挟んで位置するラファイエット公園に数百名の人々が集まり、4夜連続で抗議活動を行った。

トランプ大統領が演壇に立つ直前に大きな爆発音が数発聞こえた。平和的な抗議活動参加者たちに対して警察が催涙ガスを発射した。その前には、ウイリアム・バー司法長官がラファイエット公園への警察の配置について見直しを行った。

ワシントンDCの市長はワシントンDC全体への夜間外出禁止令(curfew)を出したが、午後7時から効力を発する予定だ。州兵は警察を支援するためにワシントンDCに集結している。ニューヨーク市やその他の都市部は無法な抗議活動を封じ込めるために同様の夜間外出禁止令を出している。

トランプ大統領は、ワシントンDCに夜間外出禁止令が出される場合、これは厳しく取り締まられることになるだろうと述べた。

武器を携帯していなかったアフリカ系アメリカ人のフロイドは、1週間前にミネアポリス市警察の拘禁によって殺害された。一人の白人警察官がフロイドの首に膝を押し付け、のしかかったのだ。その時の様子は周囲にいた目撃者たちによって映像として記録されていた。そして、インターネット上で拡散した。そして、アメリカ全土での大きな怒りを引き起こした。

ホワイトハウスのローズガーデンでのトランプ大統領の演説は、アメリカ全土が動揺している中で、トランプ大統領は正式な演説を行うべきか、そうではないかという議論がなされた後に、実施された。

しかし、トランプ大統領の準備された演説ではフロイドの死亡に関しては簡単に触れただけだった。そして、抗議活動を引き起こした警察の暴力については言及しなかった。その代わりに、トランプ大統領は無法なデモ参加者たちに対して、「法と秩序」が勝利するのだと述べた。

トランプ大統領は次のように述べた。「 私の政権はジョージの家族に正義がもたらされるように完全に責務を遂行します。ジョージの死を無駄にすることはありません。しかし、私たちは、平和的な抗議活動の参加者たちの正当な叫びが怒りに任せて動く群衆によってかき消されることを許しません」。

トランプ大統領は演説の中で、ここ数日で起きている警察に対する攻撃と商店などに対する破壊行為の具体例を挙げた。抗議活動参加者に対する警察の暴力行為や活動家たちの負傷や死亡事例についてトランプ大統領は言及しなかった。

トランプ大統領は、ホワイトハウスの近くにある、歴史の長い聖ジョセフ教会に対する放火に言及し、この放火や他の事件について、「国内におけるテロ」だと述べた。

トランプ大統領は次のように述べた。「私は皆さんを守るために戦います。私は皆さんのための、法と秩序(law and order)の大統領でありますし、平和的な抗議活動参加者の皆さんの仲間です。しかし、ここ数日、職業アナーキスト、暴力的な群衆、放火魔、犯罪者、暴動扇動者、アンティファ(antifa)、その他の人々がこの国を揺り動かしています」。

トランプ大統領は続けて「今回のテロを組織する人々に対しては、厳しい刑法上の罰を受け、刑務所に長期間入ることになる、ということを予め告知しておきます」と述べた。

トランプ大統領は演説終了直後、聖ジョセフ教会に徒歩で向かった。そして、政権幹部たちを従えて、板を打ち付けられた状態の建物を視察した。トランプ大統領は聖書を掲げ、写真を撮影させ、記者団に対しては、ホワイトハウスに向かう途中で、アメリカを「素晴らしく、そして安全な」国として保つと述べた。

抗議活動参加者たちを排除するために発射された催涙ガスの残留物が空気中に漂い、その中でジャーナリストたちはトランプ大統領の教会訪問を取材する中で、咳をしながらレポートしていた。

トランプ大統領は月曜日午前中の電話会議において、知事たちに対して道路を州兵で「占拠」する必要があると述べ、また各州の知事たちのデモに対する初期対応を「弱腰」だと非難した。トランプ大統領の言葉遣いは民主党所属の知事たちの一部からの批判を巻き起こした。こうした知事たちはトランプ大統領が緊張を更に申告させており、状況をさらに悪化させていると警告を発した。

イリノイ州知事JB・プリッツアー(民主党所属)はトランプ大統領との電話の中で、トランプ大統領の言葉遣いについて「大変な懸念を持っている」と述べた。プリッツアーは、ローズガーデンでのトランプ大統領の演説の後に、CNNに出演し、トランプ大統領は、トランプ大統領に熱を下げて欲しいと望んでいる人々からの忠告を聞きたがらないと述べた。

プリッツアーは次のように発言した。「大統領は法と秩序対自分たちの権利のために立ち上がっている人々という雰囲気を作り出したいだけなのでしょう。そして、彼はすぐに人々の諸権利を押さえつけてしまうでしょう」。

ローズガーデンでの大統領の演説は土曜日夜以来、初めてカメラの前で行われた発言である。土曜日の夜、フロリダ州ケープ・カナベラル空軍基地で行われたスペースXの歴史的な打ち上げについて大統領が演説を行ったが、その冒頭でフロイドの死亡と抗議活動について触れた。トランプ大統領はフロイドの殺害を「容易ならない悲劇(grave tragedy)」と呼び、一方で抗議活動の参加者たちが破壊活動を行っていると批判し、アンティファ(antifa)と「いくつもの急進的な左派グループ」による暴力的なデモを非難した。

全米各地でのデモは過去48時間の間に緊張感を高めている。警察は群衆に向かって催涙ガスやゴム弾を発射し、抗議運動の参加者たちの一部は略奪と破壊行為を行っている。

抗議活動は先週から週末にかけて、フロイドが殺害されたミネアポリスで発生し、全米各地に拡大している。こうした中で、トランプ大統領は抗議活動についてコメントを行った。トランプ大統領は初源の言葉遣いについて批判を受けている。共和党の一部からは大統領のツイートは問題解決に役立っていないとしている。

トランプは金曜日午前中、ミネアポリスの抗議運動参加者たちは「暴漢たち」だと述べ、「略奪(looting)が始まれば、射撃(shooting)も始まる」と警告を発した。この言葉は、公民権運動が盛んな時代に、アフリカ系アメリカ人居住地域に対する攻撃的な警察の施策について、白人のマイアミ市警察本部長が使ったものだ。トランプ大統領は先週、この言葉の起源について関知しないと主張した。

週末にホワイトハウス周辺で抗議活動が激化した後、ホワイトハウスにあまりに近づきすぎるならば、デモ参加者たちは「危険な犬たち」と「強力な武器」に直面することになるだろうとトランプ大統領は警告を発した。

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