古村治彦です。
トランプ政権の骨格が固まりつつあります。たくさんの名前が閣僚候補として浮上してきます。こうした名前を出すのは新聞社ですが、何の根拠もなく、記者の思い付きで名前を出している訳ではなく、取材をして、その名前を聞き出してきて記事として出すのですから、それぞれに可能性がゼロ、全くないということはありません。
トランプとしては、自分たちと争った人物であっても能力や考えを認めれば、閣僚にする、重要ポストに就けるということを行っています。女性蔑視だとも攻撃されましたが、能力を認め、ニッキー・ヘイリーを米国連大使に、ベッツィー・ディヴォスを教育長官に起用しました。
今月の19日に選挙人による最終的な投票が行われ、トランプ次期大統領が正式に決定ということになります。そうなると、就任式まで残り1カ月しかないということになりますから、それまでに、重要ポストである国務、国防、財務の各長官を決定しなければなりません。
トランプの年齢のことを考えると、4年後にもう一度出馬するかどうか微妙ですから、この時の「ポストトランプ」を狙う人たちにとっては、トランプ政権入りが吉と出るか、凶と出るか、今は思案のしどころということだと思います。
(貼り付けはじめ)
トランプ政権の形が決まりつつある(Trump's Cabinet begins to
take shape)
リサ・ヘイゲン筆
2016年11月24日
『ザ・ヒル』誌
http://thehill.com/homenews/administration/307449-trumps-cabinet-begins-to-take-shape
ドナルド・トランプ次期大統領は、来年1月の大統領執務室入りに入るに備えて、彼の支援者たちを政権の重要閣僚に就任させることで報いようとしている。
トランプはまた、ライヴァルだった人物たちの関係修復に意欲を見せている。彼らの中から閣僚を選ぼうとしている。
これから、これまでにトランプが指名した、もしくは使命を考慮した人々を取り上げていく。
●国務長官(Secretary of State)
ミット・ロムニーは、選挙期間中にトランプとの間で公開の場で争ったが、アメリカの最高の外交官である国務長官の最有力候補になっている、と『ウォールストリート・ジャーナル』紙は報じている。
元マサチューセッツ州知事のロムニーは、今年3月に演説を行い、トランプに対する反対を表明した。ロムニーは演説の中で、アメリカ国民に対してトランプについて貴をつけるように警告を発し、トランプを「詐欺師」「偽物」と呼んだ。トランプは直ちに反撃し、ロムニーを2012年の大統領選挙で敗北した「負け犬の候補者」と呼んでやり返した。
2人はこれまでのいきさつを水に流しているように見えるが、国家安全保障についての考えの違いは歴然として存在している。特にロシアについての考え方では隔たりがある。
トランプがロシア大統領ウラジミール・プーティンを賞賛した昨年末、ロムニーは、プーティンを「悪漢」呼ばわりした。
トランプが最も信頼している支援者ルディ・ジュリアーニも国務長官の有力候補と見られている。元ニューヨーク市長ジュリアーニは、ひとたびは最有力候補と見られていた。
共和党内部には、ジュリアーニの国務長官就任に懸念を表明している人々がいる。その代表格がランド・ポール連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)で、彼はジュリアーニの国務長官就任について公の場で反対を表明している。
ウォールストリート・ジャーナル紙は、国務長官について、ロムニー支持、ジュリアーニ支持、その他の人を探すべきというグループがそれぞれトランプ陣営内に出来て、内部抗争が起きていると報じた。
●国防長官(Secretary of Defense)
トランプは、国防総省を統括する国防長官に、ジェイムズ・マティス米海兵隊退役大将を就任させることを「真剣に考慮している」と語った。
トランプはマティスについて、「本物だ」と賞賛している。また、マティスに関しては、連邦上院軍事委員会委員長ジョン・マケイン(アリゾナ州選出、共和党)も支持している。
トランプ次期大統領は既にこの退役大将から話を聞いていることを認めている。マティスが国防長官となるためには、連邦議会からの特別な許可を必要とする。
火曜日にニューヨーク・タイムズ紙の取材に応じたトランプは、記者たちに対して、「私は水責めなどの拷問についてマティス氏に質問してみたのだが、驚いたことに、彼は反代打といった」と述べた。
選挙期間中、トランプは取調べの方法として水責めを認めるという発言をしていた。しかし、そもそも水責めは国際法で実施は禁止されている。
●司法長官(Attorney General)
ジェフ・セッションズ(アラバマ州選出、共和党)は、司法省を統括する地位に就任することが決まった。
セッションズは連邦上院議員の中で最初にトランプを支持したじんぶつで、トランプが最も信頼する人物だ。
セッションズは、移民に対して強硬な姿勢を取っていることで知られ、セッションズの政策はトランプの国境の安全対策を助けることになっている。
セッションズの司法長官使命は、民主党と公民権運動諸団体の間で大きな反対を引き起こした。彼らは、司法省の公民権局をセッションズが統括することに懸念を表明した。
1986年、セッションズは連邦判事就任を拒絶された。彼は、全米黒人地位向上協会とアメリカ公民権連合を「非米的」と呼び、クークラックスクランについて、「マリファナさえ吸わなければ存在しても構わない」と発言したという疑惑のために、連邦判事になれなかった。セッションズはこの疑惑のいくつかについてはコメントを拒否し、また別のいくつかについては全くの事実無根だと述べた。
セッションズは、共和党が過半数を占めている連邦上院から承認を受けて、司法長官に就任する見通しだ。
マイク・ポンペオ連邦下院議員(カンザス州選出、共和党)は、セッションズが司法長官に指名された日に、CIA長官に指名された。
●国土安全保障長官(Homeland Security Secretary)
国土安全保障長官に関しては候補者の名前が複数出ている。
連邦下院国土安全保障委員会委員長のマイケル・マコール連邦下院議員(テキサス州選出、共和党)は、選挙期間中にトランプに助言をしてきた。マコールは国土安全保障長官の候補者として名前が挙げられている。
マコールは、2018年の中間選挙で、テッド・クルーズ連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)に対して、共和党予備選挙で挑戦したいと考えている。しかし、同時に、トランプ政権に参画することにも関心を持っているとも示唆している。
カンザス州州務長官クリス・コバックもまた候補者となっている。コパックはトランプとの会談の写真が新聞の一面を飾った。彼はこの会談の機会に、国土安全保障省に関する自分の計画をトランプに披瀝した可能性がある。
ワシントン・ポスト紙はジョン・F・ケリーとフランセス・タウンゼントを候補者として報じている。ケリーは退役海兵隊大将であり、タウンゼントはジョージ・W・ブッシュ政権に参画した国土安全保障と対テロ対策の専門家である。
●財務長官(Treasury Secretary)
ジェブ・ハンサーリング連邦下院議員(テキサス州選出、共和党)は候補者として名前が挙げられ、先週、トランプと会談し、税金と金融規制について議論した。ハンサーリングは、輸出入銀行について声高に反対する人物として知られている。
しかし、連邦下院金融サーヴィス委員会委員長ハンサーリングは、財務長官に就任するつもりはなく、そのような要請もないだろうと述べている。しかし、トランプの政権移行ティームから連絡があれば話はするとも語っている。
ゴールドマン・サックスの元幹部スティーヴン・ムヌキンは、トランプ選対の全国財政委員長を務めたが、ムヌキンも財務長官候補として名前が挙がっている。
●保健福祉長官(Secretary of Health and Human
Services)
トム・プライス連邦下院議員(ジョージア州選出、共和党)は整形外科医出身で、保健福祉長官の最有力候補だ、と複数の人々が本誌に語っている。
プライスはオバマケアに対する反対を主導してきた人物で、昨年、オバマケア廃止と新たな制度導入のための法案を連邦議会に提出した。
トランプは大統領に就任したら、オバマ大統領が署名した健康保険法の撤回を行うと繰り返し述べている。しかし、ここ最近、トランプは健康保険法のある部分をそのままにしておくつもりだと示唆している。共和党は、連邦上下両院で過半数を握っているライヘンの議会でオバマケアを最重要の議題として設定しようとしている。
連邦下院予算委員長プライスは、連邦下院共和党の「より良い方法」法案の健康保険分野の部分の草案を作成した実績を持つ。
フロリダ州知事リック・スコットは任期制限を迎えている。そして、スコットはトランプの支援者であった。彼もまた保健福祉長官候補として名前が挙がっているが、CNNとのインタヴューでトランプ政権入りに否定した。
●米国連大使(US Ambassador to United Nations)
トランプは水曜日、サウスカロライナ州知事ニッキー・ヘイリーを国連大使に指名した。
ヘイリーは共和党の予備選挙ではマルコ・ルビオ連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)を支持し、トランプとは不仲であった。ヘイリーは、2016年のオバマ大統領の一般教書演説に対する共和党による反対演説に登場し、トランプを批判した。また、2015年にサウスカロライナ州チャールストンの黒人教会で起きた銃撃事件とトランプの発言の関連性について語ったことがあった。
ヘイリーはインド系アメリカ人であり、次期政権で最高幹部の職に就く最初の女性でマイノリティとなった。
現在州知事として2期目を務めているヘイリーは外国経験が豊富という訳ではない。しかし、サウスカロライナ州へのビジネス誘致で外国との交渉をこなしてきた経験を持っている。彼女の国連大使就任が議会で認められたら、マデリーン・オルブライト以来、他の連邦政府の職を経験することなく、国連大使となる人物ということになる。
●教育長官(Secretary of Education)
ベッツィー・ディヴォスは、公立学校選択制度と特別認可学校制度の唱導者だ。そのディヴォスは水曜日、トランプから教育長官のポジションを提示され、それを受諾したと語った。ディヴォスの指名は、ヘイリーの指名の後に行われたので、ディヴォスはトランプ政権で2人目の女性となった。
ディヴォスは現在、公立学校選択制を主張する教育政策専門グループであるアメリカン・フェデレイション・フォ・チルドレンの会長を務めている。
元ミシガン州共和党委員会委員長ディヴォスは、大富豪であり、共和党に対する大口献金者だ。また、トランプに対しては支持を控えていた。今年の夏に開催された共和党全国大会には、オハイオ州知事ジョン・ケーシックを支持する代議員として出席した。
ディヴォスは、「コモン・コア」を熱心に支持してきたことで根掘り葉掘り調べられるだろう。「コモン・コア」は、教育に関するいくつかの基準を集めたもので、選挙期間中にトランプは批判してきた。ディヴォスは州レヴェルでは「コモン・コア」の採用を支持したが、連邦政府の基準とすることには反対している。
●住宅都市開発長官(Secretary of Housing & Urban
Development)
ベン・カーソンは、住宅都市開発長官の職に関心を持っていないと表明した後、今週になって、カーソンは住宅都市開発長官への指名を受けたと述べた。
カーソンは水曜日、SNSのフェイスブックで、次期政権の住宅都市開発長官の指名を受諾することを示唆した。それでも、感謝祭の休日期間中に就任について考慮するつもりだとも述べた。
カーソンのビジネスアドヴァイザーであるアームストロング・ウィリアムズは、住宅都市開発長官の職はカーソンの関心と一致すると述べている。また、元脳神経外科医のカーソンはデトロイトで貧困の中で育った経験を持っている。そうしたカーソンは、アメリカのインナーシティーの再建を手助けできるだろう。
選挙期間中、トランプはマイノリティに向けてアピールを行った。特にアフリカ系アメリカ人とヒスパニックに向けて、インナーシティーの都市機能を強化すると訴えた。
カーソンはまだ公式には何の発表をしていないが、ウィリアムズは先週、本誌に対して、カーソンはこれまで政府弟子午後をした経験を持っていないと語った。そして次のように述べた。「彼は大統領への挑戦の道が閉ざされないことを望んでいるのです」。
(貼り付け終わり)
(終わり)