古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:ミリシア

 古村治彦です。

 アメリカ大統領選挙はジョー・バイデン前副大統領とカマラ・ハリス連邦上院議員の、民主党の正副大統領候補が勝利宣言を出した。バイデンは「全ての票が数えられるまで辛抱強く待ちましょう」と呼び掛けていたのだから、もう少し辛抱強く待てばよかったのにと思うが、週末で決着をつけた形だ。

 ここまで開票作業が遅いということになると、投票方法や開票方法について、アメリカ国内で真剣に反省し、話し合いをして、より効率的でかつ疑いを持たれない方法を作り出す方向に動かなければ、「デモクラシーの本家本元」の名前が廃るというものだ。いや、既にもう廃れてしまっていたのかもしれないが。

 選挙後、民主、共和それぞれの支持者たちが街頭に出て自分たちの主張を提示したり、様々な活動をしたりしている。私は選挙後には武力を用いた衝突が起きて、死傷者が出るのではないかと心配していたが、今のところはそのようなことは起きていない。

 ドナルド・トランプ大統領側が法廷闘争を行うということで、武力を持つ人々がそれを静観しているようだ。法廷闘争も駄目、その結果も駄目ということになればどうなるか分からないが、これは衝突回避にとって良いことだった。しかし、先のことは分からない。

 右派、左派それぞれに暴力を用いる集団や組織がある。戦闘的な姿勢を崩さない者たちがいる。そうしたグループについては、指導者たちや幹部たちの名前と住所、本拠地、人数、参加者リスト、武器の種類や数といったことは既に警察や情報機関で把握済みだろう。そうしたグループにはスパイを潜り込ませたり、参加者をスパイに仕立て上げたり、そういうことをして情報を得ているだろうし、幹部クラスに敵対する勢力や利用をもくろむ勢力の言うことを聞く人間がいて、そうした人間が変な命令を出すこともあるだろう。

 ミリシア組織で言えば、「反トランプ」のために、しなくても良い攻撃をしたり、犯罪に手を染めたりということがあるだろう。そうしたことが起きないためには、組織内を常に引き締め、トップの人間は注意深く行動することが必要なのだろう。トップの決断で難しいのは、戦うべき時と退くべき時を正確に判断することで、それができなければ組織は瓦解する。

 今回の選挙について、「終わった終わった、皆でしゃんしゃんと拍手と握手をして、分断を止めましょうね」ということにはならない。分断の度合いはさらに深まった。あれだけ劣勢を伝えられていたトランプ陣営が約7120万票を獲得した。この7120万票の圧力はこれからもずっと重くアメリカ政治に影響を与え続ける。

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ある研究が、5つの州でミリシア組織による選挙に関連した武力を用いた暴力の危険性が高いと指摘(Study warns five states at high risk for election-related armed violence by militia groups

ジャスティン・コールマン筆

2020年10月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/523078-study-warns-five-states-at-high-risk-for-election-related-armed-violence-by?fbclid=IwAR0KXADux7hA_D0ZwXRnG_tHsRak1KLuPQsybbWk75ooWtjvpQVzbtF9l98

先週発表された調査研究によると、5つの州でミリシア組織による選挙関連の武器を使った暴力を経験する危険性が高いということだ。

「武器を使った衝突の位置と事例データプロジェクト(ACLED)」とミリシアウォッチが先週水曜日に共同で発表した報告によると、ペンシルヴァニア州、ジョージア州、ミシガン州、ウィスコンシン州、オレゴン州では、選挙までの期間にミリシアの活動が増大するリスクが高いということだ。『USAトゥディ』紙は木曜日にこの研究について報じた。

ACLEDとミリシアウォッチは、ミリシアが各州の州都、地方の田舎町、中規模の人口を持つ都市、人口密集地を抱える郊外地域で活動していると警告している。

共同報告書はまた、ノースカロライナ州、テキサス州、ヴァージニア州、そしてニューメキシコ州はミリシア活動が増大する中程度のリスクが存在するだろうとも述べている。

報告書では次のように書かれている。「ミリシア団体とその他の非国家的な武装した活動団体は、アメリカの有権者たちの安全と安全保障に対しての深刻な脅威を与える。夏から選挙までの期間、こうした団体はより攻撃的になり、抗議活動への攻撃から選挙で選ばれた公務員たちを対象にした誘拐計画までを行っている」。

報告書によれば、ミリシア集団は都市での戦闘、そして地方での戦闘の訓練、プロパガンダの使用、インターネット上と対面でのイヴェントを行っている。

報告書には次のように書かれている。「法執行機関の仕事の“肩代わり”をするために組織化されつつあるとするケースが報告されている。そして、特定に地域で警察に並行して“公的な保護”を行っている」。

報告書には、アメリカにおいて「最も活動的な」9つのミリシア団体の名前が挙げられている。これらのミリシア団体は選挙の前後において活動を行うことになるだろう、としている。それらの団体は、「スリー・パーセンターズ」「プラウド・ボーイズ」「オ―ス・キーパーズ」「ライト・フット・ミリシア」「シヴィリアン・ディフェンス・フォース」「アメリカン・コンティンジェンシー」「ペイトリオット・プレイヤーズ」「ブーガロー・ボイス」「ピープルズ・ライツ」である。

ACLEDの広報担当サム・ジョーンズはUSAトゥディ紙に対して、ACLEDとミリシアウォッチは夏の初めから、そのほとんどが右派グループである80以上の組織と団体を追跡調査したと述べた。

ジョーンズは次のように述べた。「それでも、これらのリスクは、暴力が不可避に発生するという意味ではありません。有権者たちは威嚇されるべきではありません。人々はこのデータを使って自分たちの住む地域の脅威を判定し、安全を守るためにまとまることができます。そして、地域における極端な党派性による争いを減らし、究極的には暴力のリスクを回避することができます」。

「出動準備中:右派ミリシア諸グループとアメリカの選挙(Standing By: Right-Wing Militia Groups and the U.S. Election)」というタイトルの共同報告書は、トランプ大統領の第1回目の大統領選挙候補者討論会でのコメントから取られている。この時、トランプ大統領は白人優越主義とプラウド・ボーイズを非難するように求められ、「引っ込んで、準備をする」ようにと答えた。

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(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 共和党のドナルド・トランプ大統領と民主党のジョー・バイデン前副大統領との間の討論会で、最後の方だったと記憶しているが、白人優越主義(White Supremacism)に対して、トランプ大統領は直接非難するような言葉を使わなかった。白人優越主義とつながりがあるプラウド・ボーイズ(Proud Boys)に対して、「スタンバイ(stand by)」するように求めた。

 このスタンバイは日本語にもなっており、「準備を整えていつでも出られるようにしておく、待機しておく」という意味で使われる。インターネット上の英和辞典で調べると、「そばにいる、(何もしないで)傍観する、(いつでも行動できるように)待機する、(放送開始に備えて)待機する、スタンバイする」という意味が書かれている。

 トランプ大統領が「何もしないで傍観する」という意味で使ったのなら、プラウド・ボーイズの過激な行動をしないように求めるという言葉になるし、「いつでも行動できるように待機する」という意味で使ったのなら、プラウド・ボーイズには次の行動に備えて準備をしておくことを求めることになる。今は動いてはいけないということでは一緒だが、その意味は大きく異なる。

 私は下の記事を読んだときに、トランプ大統領の「スタンバイ」は「いつでも行動できるように待機する」のことだったのだろうと考えた。下の記事では、不正投票を防ぐために、自発的に監視団を組織したいとトランプ陣営が考えている、という内容になっている。トランプ大統領はこの監視団にプラウド・ボーイズに参加するように求めているのだろう。

 軽くでも武装したプラウド・ボーイズの面々が選挙に関連する施設の周辺にたむろするということになれば、これは選挙に関わる人、選挙を運営する人たちから実際に投票に行く有権者たちまで大きな心理的圧迫を与えることになる。以前のアメリカ、特に南部では、白人たちが非白人たちが投票に行かないように、投票に行けないように様々な手段を講じた。トランプ陣営の派遣する監視団はこれに近いものになる。

 そうなれば、このトランプ陣営派遣の監視団に対して、反対する組織やグループも周辺にたむろすることになるだろう。Antifaなどは出てくるだろう。

 そうなれば考えられるのは衝突であり、流血の惨事である。死亡者も出るほどの事件が全米各地で起きることが考えられる。それを防ぐために、各州知事(大統領選挙は各州知事が大きな権限を持っている)はアメリカ軍の出動を要請するようになる。

 アメリカ合衆国憲法で認められている存在として「ミリシア(militia)」がある。これは民兵組織と訳されるが、アメリカ独立戦争(革命)で、住民たちが自分たちの銃を手にとって集まってイギリス軍と戦って独立を手にしたということが由来だ。アメリカの銃規制もこのミリシアの存在意義とも関連している。

 ミリシアは政府が圧政的に自分たちの生活や自由を侵害するなら抵抗し、その政府を倒すこともできる。ミリシアは今回の大統領選挙でもトランプ応援の面から日本でも報道されている。

 おそらく、トランプ陣営派遣監視団にはミリシア集団も参加するだろう。そこに米軍がやってきて、自分たちの活動を阻害するような動きに出れば、急進的なミリシア集団は、「米軍が圧政的な政府の手先になっている」ということで省とすることも考えられる。これではもう内戦(civil war)状態である。

 日本では南北戦争と習うが、英語で言えば「Civil War」と書く。アメリカでただ一度、分裂(南北間での)の危機をはらんだ内戦、ということである。先ごろ、ミシガン州知事誘拐計画で逮捕されたミリシア集団は、「内戦を起こすこと」を目的にしていた。今回の選挙が全米各地で内戦状態を生み出すことになれば、「デモクラシーの総本山」アメリカの威信は地に墜ちる。

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トップニュース

202010108:17 午前7時間前更新

焦点:トランプ陣営が投票監視、民主優勢地区に「軍団」動員へ

[フィラデルフィア 7日 ロイター] - 11月の米大統領選を控え、共和党は期日前投票所や郵便投票専用の投函箱を監視するとして、志願者を大規模に動員する構えだ。トランプ大統領は有権者の不正行為がまん延するという根拠のない主張を行っており、そうした主張を裏付ける証拠を見つけようというのだ。

10月7日、11月の米大統領選を控え、共和党は期日前投票所や郵便投票専用の投函箱を監視するとして、志願者を大規模に動員する構えだ。写真は4月、ウィスコンシン州ベロ糸で不在者投票を確認する選挙のボランティア(2020年 ロイター/Daniel Acker

ペンシルベニア、フロリダ、ウィスコンシンといった激戦州で、共和党の投票監視人らが不正探しに乗り出す。特に目を光らせようというのが、新型コロナウイルス感染の大流行で利用が拡大する郵便投票だ。この活動に関わる党幹部ら20人余りが明らかにした。

幹部らは、これまでに何人の志願者を受け付けたか明らかにしていないが、トランプ氏陣営は今年の選挙戦序盤で、目標は全米で5万人としている。

幹部らによると、監視人らの使命は不正行為の写真や動画を撮り、大統領選の結果を巡って法廷闘争が起きた場合に、共和党側の主張を裏付ける証拠として役立てることだ。

米国は今年、武装した市民グループが抗議活動家と各地の街頭で衝突するなど、緊張感に包まれている。そうした中で、こうした監視行為が投票を巡る小競り合いをエスカレートさせかねないと懸念する声も出ている。

共和・民主両党関係者が投票を監視すること自体は、米国の選挙で18世紀から行われている通例の慣習だ。さまざまな州法や地方自治体の規則が適用される。

もっとも投票権活動家らは、今年のトランプ氏陣営のやり方は非常に異例だと指摘する。期日前投票に焦点を絞るのも異例なら、民主党がインチキな大量の郵便投票で選挙を「盗もう」としているという、大統領およびその支持者らの根拠のない主張の証拠集めに重点を置いているのも異例だという。

この「トランプ軍団」への志願者を募るため、9月にツイッターに投稿された動画では、大統領の息子、ドナルド・トランプ・ジュニア氏が、民主党が「不正な投票用紙を数百万枚追加する」計画だという根拠のない主張を展開した。

トランプ氏は、11月の選挙結果が出たら受け入れると確約するのを繰り返し拒んでいる。9月29日の大統領選候補者討論会では支持者らに対し「投票に行って注意深く監視しろ」とあおった。

激戦州での郵便投票の申請者数は、民主党の方が大幅に多くなっている。つまり投票所での投票が始まる前の情勢では、バイデン副大統領がリードする展開となりそうだ。

歴史的に共和党が郵便投票を活用してきたフロリダ州でも、郵便投票を申請した民主党員が約250万人と、共和党の約170万人を上回っている。ペンシルベニア州では民主党の申請者数が150万人超と、共和党の約3倍に達した。

共和党側は、郵便投票を逐一監視する方針を示している。1人で複数の投票用紙を投函する様子を捉えるとして、監視カメラも設置する計画だ。

一部の州は第三者に投函を託す代理投函を認めるが、ペンシルベニア州など複数の州はこれを禁止している。政治的な対立が激しい同州バックス郡の共和党責任者、パット・ディオン氏は「全米的に監視人や監視カメラ、弁護士があふれ、混乱しそうだ」としながらも、共和党の取り組みを支持している。

民主党側と投票権活動家らは、トランプ氏が投票を保護するのではなく抑圧しようとしていると訴える。

超党派の投票権団体、ブレナン・センターのミルナ・ペレズ氏は「きちんと資格のある有権者を怖がらせ、投票に行くと危険な目に遭うと思わせる試みだ」と言い切った。

さらに民主党側は、トランプ氏陣営の活動について、負けた場合に郵便投票結果に異議を唱えるための下地作りだと主張。勝敗の判定を認めず、議会か法廷に決定を委ねようとする可能性があるとしている。

トランプ氏陣営の報道官、シア・マクドナルド氏は「トランプ大統領のための投票監視志願者は、全てのルールが公平に適用されることを見届けるよう訓練を受ける。不正が指摘されれば、トランプ氏陣営は法の執行を求めて法廷に訴える」との声明を出した。

<共和党の存在を知らしめよ>

共和党全国委員会が連邦裁判所の許可を得ず、こうした「投票の安全確保」活動を自在に支援する大統領選は約40年ぶりだ。過去にニュージャージー州の選挙で共和党が、拳銃を所持して「投票セキュリティー・タスクフォース」と書かれたユニフォームを来たチームをマイノリティー住民の居住地域に動員したのを受け、1982年の同意判決でこうした活動は制限されていた。

しかし、同意判決は2018年に期限を迎え、更新を求める民主党の訴えは連邦裁判所で棄却された。

2016年の大統領選でトランプ氏が辛勝したウィスコンシン州の共和党幹部によると、同州では監視人志願者らを民主党優勢の郡に配備する予定だ。

やはり重要な激戦州のペンシルベニア州も、監視活動の中心地となる見通し。同州の選挙人20人を確保できなければ、トランプ氏は再選の道を断たれるも同然なのだ。

共和党が支持者に送った電子メールによると、同党は同州フィラデルフィア郊外のモンゴメリー郡で向こう2週間、約50人の志願者を相手に、11カ所の郵便投票投函箱を監視するための仮想訓練を何度か行う。

ロイターが閲覧したメールには「共和党員がそこにいることを知らしめ、不正が見逃されることはないと有権者に分からせることが極めて重要だ」と書かれていた。

民主党も有権者を守るための独自活動を始めたが、選管に公式登録する投票監視人や弁護士団の動員など、より伝統的な手法を取っている。

<法廷闘争>

選挙専門家らによると、各地の選挙法は投票所での投票を念頭に設計されているため、郵便投票の爆発的な拡大によって、法のあり方が問われることになりそうだ。

フランクリン・マーシャル・カレッジの政治科学教授、テリー・マドンナ氏は、期日前投票所に立ち入ろうとしたり、投票用紙を投函しようとする有権者に盾突いたりする監視人についての規則は、存在しないという。「全ては選挙管理人の判断に委ねられる。選挙管理人が同意した行為は許される。そう考えると、大規模な法廷闘争につながる可能性が高そうだ」と予想する。

ペンシルベニア州フィラデルフィアでは9月下旬、期日前投票所に立ち入ろうとしたトランプ氏陣営関係者が選管理当局から追い返され、既に訴訟に発展。市当局者は、同州の規定では期日前投票所で選挙陣営関係者が「監視」行動を行う権利はないと表明。トランプ氏陣営は即座に提訴し、現在係争中だ。

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(終わり)

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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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