古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:ミルトン・フリードマン

 古村治彦です。

 今回は経済学批判の記事を紹介する。『ニューヨーク・タイムズ』紙の編集委員で経済記者として活躍しているビンヤミン・アップルバウムが昨年、著書『経済学者たちの時間:間違った予言者たち、自由市場、社会の分断(The Economists' Hour: False Prophets, Free Markets, and the Fracture of Society)』を出した。この紹介記事の中で、経済学と経済学者たちへの批判を行っている。

 経済学者たちが政策立案や実行に関わるようになり、最高幹部クラスの地位に就くようになったのは20世紀中盤以降のことだった。そして、「自由市場至上主義(市場によって均衡がもたらされて何事もうまくいく)」という宗教的な信念に近い原理を政策に応用するようになった。アップルバウムはその結果が格差の拡大だと述べている。そして、「経済学の発展は格差拡大の主要な理由である(The rise of economics is a primary reason for the rise of inequality.)」とさえ述べている。

 日本の「失われた30年」を振り返って考えてみても、このアメリカの20世紀中盤からの動きにそっくりだ。政府の役割の縮小と市場原理の導入によって、「日本特有の特徴のある資本主義(Capitalism with Japanese characteristics)」は破壊された。その結果が今日の惨状を生み出している。

 経済学の自由市場原理(free market principles)は宗教のドグマ(教義、dogma)とそっくりだ。また、原理から生み出された政策は非現実的である。たとえば、異次元の金融緩和について考えてみる。「経済が好調(好況、好景気)だと通貨供給量が増える」という事実がある。それをひっくり返して「通貨供給量を増やせば経済が好調になる」と「経済学者の頭」で考えた。そして、現在の日本ではそれを行っている。しかし、好景気になどなっていない。このような演繹的な(deductive)政策に対する、帰納的な(inductive)反撃として起きているのがMMT理論だと私は考える。

 経済学は社会科学の中で最も「科学的」であると言われてきた。しかし、実際には宗教的なドグマに凝り固まって、悲惨な結果をもたらすということを私たちは認識すべき時である。

(貼り付けはじめ)

私たちが取り込まれているゴミを生み出したのは経済学者たちで彼らに責任がある(Blame Economists for the Mess We’re In

―なぜアメリカは私たちには「より多くの富豪とより多くの破産」が必要なのだと考えた人々の話に耳を傾けてしまったのか?

ビンヤミン・アップルバウム(Binyamin Appelbaum)筆

アップルバウム氏は『ニューヨーク・タイムズ』紙編集委員であり、最新刊『経済学者たちの時間:間違った予言者たち、自由市場、社会の分断(The Economists' Hour: False Prophets, Free Markets, and the Fracture of Society)』の著者である。

2019年8月24日

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2019/08/24/opinion/sunday/economics-milton-friedman.html

1950年代前半、ポール・ヴォルカー(Paul Volcker、1927―2019年、92歳で死亡)という名前の若い経済学者はニューヨーク連邦準備銀行の建物の奥にある事務室で計算手として勤務していた。ヴォルカーは決定を下す人々のために数字を高速処理していた。ヴォルカーは妻に対して自分が昇進する機会はほぼないと思うと話していた。中央銀行の最高幹部には銀行家、法律家、アイオワ州の豚農家出身者はいたが、経済学者は一人もいなかった。連邦準備制度理事会議長はウィリアム・マクチェスニー(William McChesney、1906-1998年、91歳で死亡)という名前の株式仲買人出身者だった。マクチェスニーはある時訪問者に対して、自分はワシントンにある連邦準備制度の本部の地下に少数の経済学者を閉じ込めているのだと語った。経済学者たちが本部の建物の中にいるのは、彼らが素晴らしい質問をするからだと語った。そして経済学者たちを地下に閉じ込めておく理由は、「彼らは自分たちの限界を分からない」からだと述べた。

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若き日のポール・ヴォルカー

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ウィリアム・マクチェスニー

 マクチェスニーの経済学者嫌いは20世紀中盤のアメリカのエリート層において共有されていた。フランクリン・デラノ・ルーズヴェルト(Franklin Delano Roosevelt、1882-1945年、63歳で死亡)大統領は、その世代の最重要の経済学者ジョン・メイナード・ケインズ(John Maynard Keynes、1883-1946年、62歳で死亡)を、非現実的な「数学専門家」に過ぎないと非難した。アイゼンハワー(Dwight David Eisenhower、1890-1969年、78歳で死亡)大統領は大統領退任演説の中で、テクノクラートを権力から遠ざけるようにすべきだとアメリカ国民に訴えた。連邦議会が経済学者に諮問することなどほとんどなかった。政府の規制機関は法律家たちが率いていた。裁判所では裁判官たちが経済的な証拠は重要ではないとして退けていた。

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ジョン・メイナード・ケインズ

しかし革命が起きた。第二次世界大戦終結から四半世紀が過ぎ成長が止まる時期になると、経済学者たちは権力の諸機関に入るようになった。経済学者たちは政治家たちに経済を運営するにあたり政府の役割を小さくすることで成長を再び促進させることができるという助言と指導を与えた。経済学者たちはまた不平等(格差)を抑えようとする社会は、低成長という代償を払わねばならないという警告を発した。新しい経済学に属するイギリスのある学者は、世界には「より多くの富裕層とより多くの破産」が必要だ、という発言を残した。

1969年から2008年まで40年間で、経済学者たちは富裕層の課税の引き下げと公共投資の削減に主導的な役割を果たした。経済学者たちは輸送や通信といった社会の主要な諸部門の規制緩和を監督した。経済学者たちは大企業を称賛し、企業の力の集中を擁護した。そして、彼らは労働組合を悪しざまに罵り、最低賃金法のような労働者保護策を反対した。経済学者たちは、規制に価値があるかどうかを評価するために、人間の生命をドルの価値に換算することを政治家たちに訴えた。人間の生命は2019年の段階で1000万ドルである。

経済学者たちの革命は、それまでの多くの様々な革命と同様、行き過ぎた。成長が鈍化し、格差が拡大する中で悲惨な結果をもたらした。経済政策の失敗の最も深刻な結果は、アメリカの平均寿命の減少であろう。富の偏在は健康の格差を生み出した。1980年から2010年の期間、アメリカの豊かな上位20%の平均寿命は伸びた。同じ30年間、アメリカの貧しい怪20%の平均寿命は短くなった。衝撃的なことは、アメリカ国内の貧しい女性と富裕な女性の平均寿命の差が3.9年から13.6年へと拡大したことだ。

格差の拡大は自由主義的民主政治体制の健全性を損ねている。「私たち人間」という概念は消え去りつつある。格差が拡大し続けているこの時代、私たちは共通に持っているものは少なくなっている。その結果、教育や社会資本への公共投資のような長期間にわたる広範囲な繁栄をもたらすために必要な政策への支持を形成することがより難しくなっている。

経済学者たちの多くは20世紀中盤に公共サーヴィスの分野に入り始めた。政治家たちは連邦政府の急速な拡大を統制するために苦闘していた。政府に雇用されている経済学者たちの数は1950年代には約2000名であったが、1970年代末には6000名にまで増えた。経済学者たちが採用されたのは政策実行の正当化のためであったが、すぐに政策目標の形成を始めるようになった。アーサー・F・バーンズ(Arthur Frank Burns、1904-1987年、83歳で死亡)は1970年に連邦準備制度理事会議長になったが、彼は議長になった最初の経済学者になった。その2年後、ジョージ・シュルツ(George Pratt Shultz、1922年―、99歳)は経済学者として財務長官に就任した。1978年、ヴォルカーは連邦準備制度内での昇進を極め、ついに議長に就任した。

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アーサー・F・バーンズ

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ジョージ・シュルツ
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議長時代のヴォルカー

しかし、最も重要な人物はミルトン・フリードマン(Milton Friedman、1912-2006年、94歳で死亡)だった。妖精のようなリバータリアンで、アメリカ政府で地位を得ることを拒絶した。しかし、彼の著作や発言は政治家たちを魅了した。フリードマンはアメリカが抱える諸問題に対して、明快で単純な答えを提示した。それは、政府は関わらない、というものだ。フリードマンは、「官僚たちがサハラ砂漠を管理するようになると、すぐに砂の不足を訴えるようになるだろう」というジョークを飛ばした。

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ミルトン・フリードマン

フリードマンは勝利を期待できない戦いで大勝利を収めた。彼はニクソン(Richard Nixon、1913-1994年、81歳で死亡)大統領に助言して1973年に徴兵を終わらせた。フリードマンやその他の経済学者たちは、市場レートに沿った報酬を支払う志願兵だけで構成される軍隊は財政的に実行可能でかつ政治的に人々から受け入られ易いものだった。

ニクソン政権は、ドルと外国通貨の為替レートを市場に決定させるというフリードマンの提案を採用した。また、ニクソン政権は規制に対する制限を正当化するために人間の生命に値段をつけた最初の政権となった。

しかし、市場志向は無党派のテーマであった。連邦所得税の削減はケネディ大統領下で始まった。カーター(Jimmy Carter、1924年―、95歳)大統領は、1977年に民間商業航空に対する監督を行う官僚組織を廃止するために経済学者アルフレッド・カーン(Alfred Kahn、1917-2010年、93歳で死亡)を任命することで、規制緩和時代の扉を開いた。クリントン大統領は、1990年代に経済が上昇する中で連邦政府の支出を抑制した。 クリントン大統領は「大きな政府が終わった時代」を宣言した。

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アルフレッド・カーン

リベラルと保守派の経済学者たちは公共政策における主要な疑問に関する戦いを主導した。しかし、両派の経済学者たちが合意した分野はより重要であった。自然はエントロピー(entropy、均質化)に向かう傾向があるが、経済学者たちは市場が均衡(equilibrium)に向かう傾向にあることに自身を持っていた。経済学者たちは経済政策の重要な目標は国家の生産高のドルの価値を高めることであるということに同意していた。経済学者たちは格差を緩和するための努力に対する辛抱強さをほとんど持っていなかった。カーター政権の経済諮問会議議長を務めたチャールズ・L・シュルツ(Charles Louis Schultze、1924―2016年、91歳で死亡)は1980年代初頭に、「経済学者たちは効率的な政策の実行のために戦うべきだ。たとえその結果が得敵の諸グループの所得が大きく減少することになっても戦うべきだ。効率的な政策を実行することで所得は下がるものであるが」。それから30年ほど経過した2004年、ノーベル経済学賞受賞者ロバート・ルーカス(Robert Lucas、1937年―、82歳)は格差緩和のための努力の復活に警告を発した。「健全な経済を傷つける、最も人々を惹き付けかつ私の意見で最も有害な傾向は、配分に関する疑問に集中することだ」。

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チャールズ・L・シュルツ

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ロバート・ルーカス

格差の拡大に対する説明は宿命論的なものだ。格差問題は資本主義特有の結果である、もしくはグローバライゼーションや技術の進歩といった要素が理由であるという説明がなされている。そうなると格差問題は政治家たちが直接コントロールできないものということになる。しかし、失敗の大部分は私たち自身の中にある。効率を最優先し、富の集中を促進する政策を採用するという私たちの集合的な決定が私たちの失敗である。そうした政策は、機会を均等化し、所得再配分するための政策は否定された。経済学の発展は格差拡大の主要な理由である(The rise of economics is a primary reason for the rise of inequality.)。

私たち自身が問題を生み出しているならば、解決策は私たちの中にあるのは事実だ。

市場は人々が作り出し、人々によって選択された諸目的のためのものだ。そして、人々は規則を変更できる。社会は格差を無視すべきだという経済学者たちによる判断を捨てる時期だ。格差の減少は公共政策にとっての主要な目標であるべきだ。

市場経済は人類の素晴らしい発明の一つであることは確かだ。市場経済は富の創造を行う強力なマシーンである。しかし、社会の質を測定する方法は、社会全体、全ての階層の生活の質を見ることである。トップの生活の質だけを見るのではない。そして、次々と出される研究結果が示しているのは、現在、低い階層に生まれた人々は前の世代に比べて、豊かになる、もしくは社会全体の福祉に貢献する機会を持てないようになっているということだ。それでも現代社会で貧しいと言っても歴史的に見れば豊かではある。

これは苦しんでいる人たちだけにとって悪いことではない。それでも十分に悪いことではあるのだが。これは豊かなアメリカ人にとっても悪いことである。富が少数の人々に握られている現在において、消費総額は減額し、投資も減少しているという研究結果が出ている。各企業と豊かな家庭はどんどんスクルージ・マクダックに似るようになっている。企業と豊かな家庭はスクルージのように、山のようなお金の上に座っているが、生産的な形でお金を使うことができていないのだ。

これまでの半世紀、繁栄の分配に対する頑なな無関心は、自由主義的民主政治体制の存在がナショナリズムに基づいた煽動家たちからの試練に直面している主要な理由である。ロープにいつまで掴まっていられるのか、ロープはどれくらいの重さまで耐えられるのかについて私は全く見通しを持てないままでいる。しかし、私たちが負担を減らせる方法を見つけることができれば、私たちの絆はより長く存続することになるだろうということは分かっている。

=====

ビンヤミン・アップルバウム著『経済学者たちの時間:間違った予言者たち、自由市場、社会の分断(The Economists’ Hour: False Prophets, Free Markets, and the Fracture of Society)』

『パブリッシャーズ・ウィークリー』誌

2019年9月

https://www.publishersweekly.com/978-0-316-51232-9

『ニューヨーク・タイムズ』紙記者アッブルバウムはサブプライムローンに関する報道でジョージ・ポーク賞を受賞した。アップルバウムは、彼が「経済学者たちの時間」と名付けたおおよそ1969年から2008年の時期の公共政策における経済学者たちの重大な影響力を時系列的にまとめた。アップルバウムはアメリカ国内で経済学者たちがどのように重要な地位を占めるように至ったかを詳述している。経済学者たちはワシントンで低い地位にとどまっていたのが、財務長官と連邦準備制度理事会議長のような最高位の役割を果たすようになった。アップルバウムは経済学者たちの繁栄を生み出すという錬金術のような力に対して極めて懐疑的である。特にミルトン・フリードマンやアラン・グリーンスパン(Alan Greenspan、1926年―、93歳)のような自由市場原理を猛進していたが、自由市場原理は大恐慌と収入格差を促進したのだとアップルバウムは主張した。アップルバウムは、世界各国は経済理論を考慮している。しかし、技術者たち(台湾)や国家(中国)が主導する経済の方が経済理論を重視するアメリカ経済よりもうまくいっている。アメリカは市場に対する政府の介入を最小化する政策を採用している。アップルバウムは健康と安全に関する規制、産業に対する規制、反トラスト訴訟に関する自由市場哲学の有害な影響についても詳細に研究している。そして、アップルバウムは自由市場に対する妄信によって少数に富が集中する結果をもたらしたと結論付けた。『経済学者たちの時間』では、経済哲学に関する徹底的に研究された、包括的な、批判的説明がなされている。本書は半世紀にわたり政策を支配してきた経済学哲学を強力に告発している書である。

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アラン・グリーンスパン

(貼り付け終わり)
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経済学という人類を不幸にした学問: 人類を不幸にする巨大なインチキ(終わり)
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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 今回は、ミルトン・フリードマンの理論が間違っていたという内容の記事を紹介する。フリードマンの理論とは「シェアホルダー[株主]優先理論(shareholder theory)」で、下に紹介している記事では「CEOは株主に雇用されている『被雇用者』であるので、CEOは株主の利益のために行動する義務がある」という内容だと書いている。CEOはお金を出している(資本を投資している)株主の利益(配当)を最大化するために行動する、というもので、私たちからすれば「何を当たり前のことを仰々しく理論などと言うのか、馬鹿らしい」ということになる。
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 一方に存在するのは「ステイクホルダー[利害関係者]優先理論(stakeholder theory)」である。これは企業、経営陣は株主の利益の最大化を最優先するのではなく、従業員、顧客、市民など、企業と関係を持つ人々の利器を最大化するべきだというものだ。慈善事業や社会的に意義のある活動にも資金を出すというようなことである。

 1970年代からアメリカの市場原理主義の中でシェアホルダー理論が主流であったが、ここのところステイクホルダー理論が注目されるようになっているようだ。

 市場原理主義のアメリカで「ステイクホルダー理論」が影響力を増しているというのは、アメリカでそして経済の分野で何かが起きていることを示す。市場を崇拝してばかりでは、経済はうまくいかない、そもそも大企業になれば競争から逃れ独占を望み、それで労働者や消費者から搾取をして利益を最大化する、政府に対する影響力を行使してそのような独占を守るような方策を採るではないか、という批判が大きくなっている。下の記事では、「実際、巨大企業が自由市場の保護者であるという考えは極めて非現実的なものである。巨大企業とは我が国の市場経済という海の中に浮かぶ社会主義の島々ということになる」と書かれている。

 経済学に対する不信感をたどると、「科学(science、因果関係から法則を見つける行為)だと威張っていたが、そんなことはできず、宗教のドグマのように市場至上の教理を押し付けてきた」「経済学が自分たちの生活に脅威を与えてきた(リーマンショックからの経済不況など)」ということが挙げられる。経済学だけ、自然法則で人為よりも素晴らしいということにはならないということだ。そこの点を認めることが出発点ということになるだろう。

(貼り付けはじめ)

ミルトン・フリードマンの考えは間違っていた(Milton Friedman Was Wrong

―高名な経済学者の唱えた「シェアホルダー理論」は企業が消費者の諸権利と信頼を損なうための大き過ぎる余地を与えた

エリック・ポズナー筆(シカゴ大学法科大学院教授)

2019年9月22日

『ジ・アトランティック』誌

https://www.theatlantic.com/ideas/archive/2019/08/milton-friedman-shareholder-wrong/596545/

月曜日、各産業分野の大企業のCEO(最高経営責任者)で構成しているグループ「ビジネス・ラウンドテーブル」は、「企業の目的」について考えを変えると宣言した。その目的とは、株主たち(shareholders)の利益の最大化ではなく、被雇用者、顧客、市民を含む株主以外の「利害関係者たち(stakeholders)」の利益を追求するということだ。

今回の宣言は、大きな影響を持つが中身が不明確な企業責任理論(シェアホルダー[株主]優先理論)の否定ということになる。しかし、この新しい哲学(ステイクホルダー[利害関係者]優先理論)を提唱することになっても、企業の行動様式を変化させることはできないだろう。一般の人々の利益を追求するように企業に行動させる唯一の方法は、法的な規制に従わせることだ。

シェアホルダー理論は、シカゴ大学で教鞭をとった経済学者にしてノーベル経済学賞受賞者であるミルトン・フリードマンが生み出したものと一般には考えられている。1970年に『ニューヨーク・タイムズ』紙に掲載された有名な論説の中で、フリードマンは、CEOは株主に雇用されている「被雇用者」であるので、CEOは株主の利益のために行動する義務があると主張した。その結果としてCEOは可能な限り最高の報酬を得ることができる、と主張した。フリードマンは、もしCEOが企業の資金を環境保護や貧困対策プログラムに寄付するということになると、その資金は、消費者たち(より高い価格を通じて)、労働者たち(より低い賃金を通じて)、株主たち(より低い配当を通じて)から奪い取られたもので、そうしたお金をCEOが寄付していることに過ぎないと指摘した。CEOは他人に対して「税金」を課し、集めたお金を彼もしくは彼女の専門外の社会的な大義のために使っているだけのことだ、ということになる。それならば、消費者、労働者、投資家たちに本来自分が手にするべきお金を使って、自分が望む慈善事業への寄付をしてもらう方がより良いことだということになる。

フリードマンのシェアホルダー理論は広く受け入れられている。それは、シェアホルダー理論によって、企業は難しい道徳上の選択を行うことを免れ、利益を上げている限りは人々からの批判から企業が守られることになるからだ。同時に、CEOたちは、「公共の責任について考えない」という主張を否定したが、強い怒りの対象となっていた。確かに、1970年の時点で彼らは怒りの対象であった。そして、ウォール街は企業の利益のみを追求するという姿勢を貫いていた。

しかし、フリードマンの主張には1970年の時点でも読者たちにも明白に分かったであろう矛盾を抱え込んでいた。フリードマンは、経営陣が賃金と物価の統制を支持していることについて非難した。後にリチャード・ニクソン大統領はこの政策を実施した。フリードマンは、賃金と物価の統制は経済を損なうだろうと確信していた。従って、経営陣は「かなり遠くの将来のことを見通すことができ、自分たちのビジネスについて明確な思考もできる」のに、公的な問題になると「途端に極めて近視眼的かつ混乱した思考」をするようになるとフリードマンは主張した。

しかし、経営陣の心理についてのこのような疑わしい理論など使わなくても、もっと単純に説明することができる。経営者の多くは賃金と物価の統制は、労働コストやそのほかの資源の投入に関わるコストを低く抑えることで当然の結果として、彼らのビジネスの利益に貢献すると認識していた。また、彼らの行動によって経済全体にマイナスな結果が生じることが起きるかどうかについて全く関心を持たなかった。

フリードマンはこの可能性について気づくべきだったし、おそらく気づいていただろう。既存のビジネスは競争をなくすことで最大の利益を生み出すことになる。そのための効果が実証済みの方法は、新しい企業が市場に参入することを阻止する法律を成立させるように政府に働きかけることであり、もしくは競争によるコストを引き下げることである。そして、ビジネスの目的が、フリードマンが主張しているように「利益を増大させる」ことであるならば、ビジネス界がその政治的影響力を使ってフリードマンが称賛している自由市場をなくすようにすることが、「明確な思考に基づいた」、正当化される方法ということになる。

実際、巨大企業が自由市場の保護者であるという考えは極めて非現実的なものである。巨大企業とは我が国の市場経済という海の中に浮かぶ社会主義の島々ということになる。つまり、巨大企業はその巨大性によって消費者と労働者にとって利益となる競争から守られている。製品と労働の市場が独占状態になっている中で資本を投資した人々が利益を上げるということになれば、CEOとしては投資家たちに協力するのは願ったりかなったりということになる。

フリードマン流のビジネスが利益を最大化するためのありふれた方法が他に様々に存在する。ビジネスマンたちは(フェイスブックと同様)、消費者たちのプライヴァシーを尊重するという約束を破ることができる。ビジネスマンたちは(ツイッターとグーグルと同様)、ヘイトスピーチの伝達を促進することで広告収入を生み出すことができる。ビジネスマンたちは(エクソンがそうであったように)、気候変動に関する研究に反対する宣伝活動を行うことができる。ビジネスマンたちは(ジミー・ジョンズと同様)、非熟練労働者たちが低賃金の仕事から離れないように違法な契約条件を使うことができる。ビジネスマンたちは(タバコ会社と現在のテック企業と同様)、子供たち向けの中毒性の高い製品を売り込み、(パデュー・ファーマと同様)麻薬中毒の人々を生み出すことができる。ビジネスマンたちは企業によるロビー活動に関与することができる。フリードマンの理論に関する最大の問題は、フリードマンの理論によると、各企業は連邦議会に対する影響力を利用して各企業が人々に対して不都合なことを行わないようにするための法律を可決することを阻止する、ということだ。

フリードマンは経営陣が株主たちの被雇用者であるという主張は正しくない。法律的に見て、経営陣は企業の被雇用者である。企業を監督するには株主ではなく、経営陣の存在が必須だ。株主は企業とは契約に基づいた関係を持っている。株主は契約に基づいて企業が上げた利益を受け取り、企業の重要な決定について投票する権利を持つ。株主たちが企業に対して社会的に責任のある行動をとるように提案するときには、CEOたちはいつも自分たちが持つ企業に対する力を使って株主を遠ざけてきた。雇用者が被雇用者に「ジャンプせよ」と言えば、その被雇用者はジャンプするものだ。株主たちが最高経営責任者に「ジャンプせよ」と言えば、最高経営責任者は株主たちを裁判所に訴えることだろう。

フリードマンの最大の主張は、実業界のリーダーたちは企業の資金を公共のために使用することを決定できるだけの資格がないとしている点だ。「ステイクホルダー」理論への転換があってもそれで企業が責任感を持って行動することを保証することはできないというのにこのことが理由となる。企業に環境汚染、詐欺行為、独占化させないための効果が実証されている唯一の方法は法律を通じてそのような行為を行った企業を罰することである。

※エリック・ポズナーはシカゴ大学法科大学院教授である。

(貼り付け終わり)
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経済学という人類を不幸にした学問: 人類を不幸にする巨大なインチキ(終わり)
amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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