古村治彦です。
サウジアラビアがアメリカ偏重から脱し、中国重視へとシフトしようとしている。現在、
サウジアラビアの実権を握るムハンマド・ビン・サルマン王太子とジョー・バイデン米大統領との間がしっくりいっていない、はっきり言えば険悪になっていることは複数回にわたって報じられている。バイデン大統領が2022年7月にサウジアラビアを訪問した。バイデンは石油価格高騰対策のために、サウジアラビアによる石油増産を求めた。しかし、サルマン王太子の答えは「ノー」だった。それどころか、ロシアと歩調を合わせて、石油の減産を決定した。サウジアラビアの石油減産は、ウクライナ戦争において、ロシアを支持する、ロシアを支援する行為だと西側諸国では受け取られた。アメリカと蜜月関係にあったサウジアラビアがアメリカから離れた、裏切ったということになった。
サウジアラビアからすれば、裏切り者呼ばわりは片腹痛いということになる。サウジアラビアを敵扱いして、見捨てたのはアメリカではないかということになる。バラク・オバマ政権時代に、サウジアラビアの宿敵イランと核開発をめぐる合意を結んだが、サウジアラビアからすれば中途半端な内容で、イランの核開発を止めることができず、イランの脅威を増大させるだけのことだということになった。また、アメリカ国内でシェールガス生産を行うことで、天然資源輸出でアメリカはサウジアラビアのライヴァルとなった。
サウジアラビアはアメリカのライヴァルである中国にシフトした。サウジアラビアに捨てみれば、最大の石油輸出先である中国と親密になるのは当然のことだ。中国に近づくことで、アメリカから軽視されることのリスクを軽減しようという行動に出ている。これは、サウジアラビアの国益という点から見れば、きわめて合理的な行動ということになる。中国からすれば人民元結成を認めてもらえるようになれば、資源確保において大いに利益となる。そして、人民元が世界の基軸通貨に近づくことになる。これはドルの地位の凋落を招くことになる。
私はサウジアラビアの行動は日本の参考になると考える。もちろん、サウジアラビアはアメリカにとっての同盟国であるが、日本は従属国である。従って、サウジアラビアと同じ行動を取ることはできない。しかし、アメリカに対して「バランスを取る」ということはできる。それにはアメリカ一辺倒では無理である。アメリカに依存するだけでは、アメリカの意向に振り回される。そこに中国という要素を入れて初めてバランスが取れるようになる。このように「ただ従うだけ」の状態から脱して、「あんまり理不尽なことをすれば離れますよ」という素振りを見せることで、アメリカとの交渉を少しは有利に進めることができるだろう。そのためにはアメリカの「対中強硬姿勢」に巻き込まれるべきではないのだ。日本が中国にぶつけられるようになるのは愚の骨頂だ。
日本は西側の一員に留まらねばならないのは仕方がないが、少しでも国益のためになるように行動する必要がある。そのためには中国とロシアに対して喧嘩腰で臨むべきではない。
(貼り付けはじめ)
サウジアラビアが中国に向きを変えることを望まない理由(Why Saudis Don’t
Want to Pivot to China)
-私のようなサウジアラビア人にとって、アメリカとの別離ほど心細いものはないだろう。
2022年12月16日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2022/12/16/saudi-arabia-china-xi-bin-salman-biden-oil-opec-geopolitics-security-middle-east/
中国の習近平国家主席は、リヤドで3日間にわたって行われたサウジアラビアのサルマン国王とムハンマド・ビン・サルマン王太子、湾岸協力会議の指導者たち、さらに大きなアラブ政府グループとの一連の首脳会談から帰国したばかりだ。首脳会談マラソンの結果、エネルギー、貿易、投資、技術協力、その他の様々な分野で、公的、非公的に数多くの合意がなされた。このサミットは、経済と安全保障の関係がますます緊密になっていることを証明するものだった。サウジアラビアは中国にエネルギー需要の18%を供給し、石油化学、工業、軍事設備の受注を拡大しているが、その多くはこれまでアメリカから調達していたものだ。
一方、ホワイトハウスは、習近平がペルシア湾地域で中国の影響力を拡大しようとしていることは、「国際秩序の維持に資するものではない(not conducive to maintaining international order)」と指摘した。コメンテーターたちは、習近平のサウジアラビア訪問は、リヤドが従来のワシントンとの関係を捨て、北京に軸足を移そうとしていることの表れであると主張している。
中国の政策は単純明快だ。北京はリヤドに取引を持ち掛けている。石油を売って世界のエネルギー市場の安定化に貢献し、軍事装備はカタログから好きなものを選び、防衛、航空宇宙、自動車産業、医療、技術などの協力で好きなだけ利益を得ようということだ。つまり、中国はサウジアラビアに対して、70年にわたり中東を安定させてきたアメリカとサウジアラビアの取引をモデルにしたような交渉を持ちかけているのだ。
サウジアラビアは、自国の基本的な利益に対して公然と敵対するようになったワシントンに裏切られたと感じている。それに対して中国の宣伝は響く。多くの若いサウジアラビア国民が、アメリカを中国に置き換えるという考えを素朴に口にするようになっているのは、驚くには当たらない。アメリカの大学を卒業し、アメリカのポップカルチャーや消費技術の貪欲な消費者として、教育を受けたサウジアラビアの人々の多くはアメリカを身近に感じている。アメリカのメディアや政策立案者たちが、私たちや私たちの国、指導者、文化に対して不当な攻撃をしていると見なし、いじめられていると感じている。多くの人にとっての選択肢は、中国語を学び、中国の産業と貿易を促進する将来のキャリアを想像することである。
アメリカが作り上げ、長く維持してきた世界秩序は、アメリカ自身以外のいかなる国内的なアクターによっても破壊することはできない。
私のようなサウジアラビア人にとって、アメリカとの別離ほど心細いものはないだろう。1960年代以降、サウジアラビアの人々はアメリカとの強い関係なしに世界を見たことがない。私も、アメリカの文化や偉大さに深い敬意を抱いている若いサウジアラビア国民の1人だ。しかし、この10年、サウジアラビアの人々の多くは、アメリカへの親近感と賞賛が、アメリカの政治家、政策立案者、ジャーナリストから報われていないと感じ、その信頼を失っている。アメリカは、2020年の選挙戦でジョー・バイデン米大統領が約束したように、サウジアラビアを「除け者(pariah)」にしようと決意しているようだ。
この不信感は、バラク・オバマ前米大統領の政権時代にまでさかのぼる。2015年に彼がイランとの核合意を交渉した時、私たちサウジアラビア国民は、彼が両国の安定と強さの源となっていた関係を否定していると理解した。この合意は、テヘランに核爆弾製造の道を開き、イランのイスラム革命防衛隊(Islamic Revolutionary Guard Corps)の軍資金を満たし、既存の秩序を破壊するためにアラブ世界各地で民兵を貪欲に武装させることにつながった。攻撃的で修正主義的な国との取引を正当化するためにオバマ大統領が提唱したバランス感覚を装うことは、決して合理的な意味を持たない。結局のところ、もし友人があなたのニーズとあなたの最悪の敵のニーズのバランスを取ると約束したら、その人はもはやあなたの友人ではないと結論付けるのが公正ではないだろうか。
バラク・オバマ、ジョー・バイデン両政権は共に、イエメンにおけるテロリストの代理人を介したイランの攻撃に対し、アメリカは縮小を求め、求めてもいない紛争をサウジアラビアになすりつけることが頻繁にあった。シリアでは、アメリカは、イラン軍とロシアの爆撃機が支配する隣国という、恐ろしく悲惨な光景を私たちに見せつけた。イランとの核取引の一環として、オバマ政権は数百億ドルをイランに流した。その資金は、イラクの解体、シリアの崩壊、レバノンの混乱、サウジ領に対するフーシ派の攻撃支援に使われた。ロシアのプーティン大統領に地中海東部の戦略的拠点を与えることを決定したのもオバマ政権だ。この戦略は、シリアでの内戦を緩和する方法としてアメリカ国民に盛んに喧伝された。昨年、イエメンからサウジアラビアのインフラにミサイルが殺到したことを受け、バイデン政権はサウジアラビア領内からアメリカのミサイル防衛砲台を撤収させた。
しかし、ワシントンが私たちの裏庭に火をつけても、サウジアラビアは地域の平和構築者として、また私たちが賞賛し続ける国として、サウジアラビアの防衛におけるアメリカの役割に敬意を表そうとした。だからこそ、バイデン政権が2021年に「サウジアラビアとの関係を再調整する」と約束して誕生し、2019年に行った「サウジアラビアに代償を払わせ、事実上の除け者とする」という公約を継続した時、とても痛快で心配になった。
かつての大切なパートナーを切り捨てたことに加え、バイデン政権は、エネルギー転換をどのように管理すべきかについてほとんど現実的な考えを持たずに、炭素ベースのエネルギー源に戦争を仕掛けることを選択したのだ。地球を救うという大げさなレトリックは、OPEC+に対抗する買い手のカルテルを作ること、サウジアラビアの外交政策の最重要部分、国内開発計画という3つの方面からの努力を伴っている。第一に、バイデンはアメリカの戦略石油備蓄から数百万バレルの石油を放出した。その目的は、供給ショックを緩和することであり、市場を操作することではない。第二に、アメリカ、ヨーロッパの同盟諸国、カナダ、オーストラリアは先週、ロシアの石油輸出に価格上限を設けるための市場メカニズムを構築した。第三に、バイデン政権はサウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェートに対し、自国の財政・金融政策によるインフレなどアメリカの国内政治目標達成のために増産を迫っている。このようなバイデン政権の戦略は、OPEC+から原油価格の決定権を奪おうとしているようにサウジアラビアには映る。もしこれが成功すれば、サウジアラビアは自国の開発目標を達成するための収入を得ることができなくなる。
このような背景から、サウジアラビアの人々の多くが東方へ視線を移し始めている理由は明らかだろう。しかし、中国がアメリカに代わってサウジアラビアのパートナーとなることを期待するのは、甘い考えだと私は言いたい。
私は、大学と大学院をアメリカで学び、幸運にも幼少期の一時期をワシントン郊外のヴァージニア州で過ごした。そこで私は、野球をしたり、感謝祭に七面鳥を食べたり、12月になると『クリスマス・キャロル』を見たりと、アメリカの娯楽に触れることができた。最近では、サウジアラビアとアメリカの関係を表現するメタファーとして、このチャールズ・ディケンズの物語を使っている。
アメリカの技術、技術革新、防衛協力、安全保障関係が存在しない地域を、「まだ来ぬクリスマスの亡霊(訳者註:『クリスマス・キャロル』に出てくる第三の幽霊)」が見せてくれると想像して欲しい。個人の自由の利点と限界が、サウジアラビア国民が自国の改革に伴ってますます行っているように、国民とその支配者が議論すべきテーマではなく、神を敵とみなす一党独裁の中央集権国家によって決定されるような地域を想像してみるといい。
アメリカの誤算と無能力を混同するのは愚かなことである。アメリカが作り上げ、長く維持してきた世界秩序は、中国を含むいかなる国際的なアクターによっても破壊することはできない。アメリカ自身によってのみ破壊することができるのだ。善かれ悪しかれ、アメリカとサウジアラビアの両国の運命は不可避的に絡み合っている。アメリカが創り出そうとしている未来に目を向けることで、中東に取り憑いている亡霊を追い払うことができるのではないかと私は考える。
※ムハンマド・アリヤアナ:ベルファー・センター中東部門研究員、ハドソン研究所中東平和・安全保障担当上級研究員。『アル・アラビア・イングリッシュ』紙元編集長。ツイッターアカウント:@7yhy
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習近平のサウジアラビア訪問はリヤドにおけるワシントンとの一夫一婦制の結婚関係終焉を示している(Xi’s Saudi Visit Shows Riyadh’s Monogamous Marriage to Washington Is
Over)
-現在の冷戦2.0では、サウジアラビアはどちらにつくかを選ぶことを拒否するだけでなく、北京やモスクワに接近する可能性もある。
アーロン・デイヴィッド・ミラー筆
2022年12月7日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2022/12/07/xi-jinping-saudi-arabia-trip-mbs-biden/?tpcc=recirc_trending062921
2004年のインタヴューで、当時のサウジアラビア外相サウド・アルファイサルは、アメリカとサウジの関係は、妻が1人しか許されない「カトリックの結婚(Catholic marriage)」ではなく、妻が4人許される「イスラムの結婚(Muslim
marriage)」だと元『ワシントン・ポスト』紙記者デイヴィッド・オッタウェイに語っていることが極めて先見的だった。オッタウェイは「サウジアラビアはアメリカとの離婚を求めていたのではなく、他国との結婚を求めていただけだ」と書いている。
それが今、現実のものとなった。このことがより明確に反映されているのが、中国の習近平国家主席が今週、2016年以来初めてサウジアラビアを訪問することである。習近平の訪問は、「仲直りしよう(let’s mend the fences)」と握手を交わすような気まずい瞬間にはならないだろう。サウジアラビアにとって最大の貿易相手国と中国にとって最大の輸入石油源である中国との、華やかで温かい抱擁の祭典となるのである。
北京は、サウジアラビアにとって最重要の問題、すなわち不安定になっている近隣諸国における安全保障について、ワシントンに取って代わることはできない。しかし、リヤドがワシントンと一夫一婦制で結婚していた時代は時代遅れになっている(going the way of the dodo.)ようだ。冷戦2.0、つまりアメリカと中国・ロシアとの緊張と競争が高まっている現在、サウジアラビアはどちらにつくかを選ぶことを拒否するだけでなく、自国の利益のために北京やモスクワに接近する可能性がある。つまり、サウジアラビアはもはやアメリカ一国だけの妻ではない。
中国との関係改善に対するサウジの関心は、アメリカがサウジの利益にもっと注意を払い、「リヤドは当然自分たちの味方だ」と単純に考えないようにさせるための一時的な戦術と見なしたくなるものだ。サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子とジョー・バイデン米大統領との個人的な関係は、決して友好的とは言えない。サルマン王太子はバイデンが自分をどう思っているか気にしないと述べ、バイデンはサウジアラビアの指導者たちについてあまり考えていないことを明らかにした。バイデンはサウジアラビアを非難する際に控え目に振舞う(wallflower)ことはない。サウジアラビアを呼び出すことになると萎縮する壁の花ではなく、
しかし、アメリカとサウジアラビアの関係を苦しめているのは、バイデン大統領とサルマン王太子の相性の悪さよりもずっと深いところに原因がある。ワシントンはサウジアラビアの石油を必要とし、リヤドはアメリカの安全保障を必要とするという、数十年にわたる関係を支えてきた基本的な相殺取引(トレイドオフ)が、長年にわたるストレスやひずみの積み重ねによって、擦り切れてしまっている。19人のハイジャック犯のうち15人がサウジアラビア人であり、サウジアラビア政府はこの計画をどの程度知っていたのかという疑問が残る911テロ事件、バグダッドにイランの影響を受けやすいシーア派支配の政権をもたらした2003年のアメリカによるイラク侵攻、アメリカの「アラブの春」への対応などでが両国関係を傷つけてきた。アメリカは「アラブの春」に対して、当時のエジプト大統領ホスニー・ムバラクに退陣を迫り、中東や北アフリカの他の地域で民主的な改革を促したが、サウジアラビア王政はこの動きを世界中の権威主義者への脅威、そして自らの権力保持への脅威と考えた。アメリカを石油輸出の競争相手とすることになった、フラッキング技術とシェールガス革命、サウジアラビアの宿敵イランとのオバマ政権の核合意、2019年9月のイランの無人機・巡航ミサイルによるサウジアラビアの主要産油施設2か所への攻撃に対するアメリカの弱腰反応によるリヤド側の懸念拡大、アメリカによるサウジアラビアの安全保障への関与などもあった。
そして最後に、冷酷で無謀なムハンマド・ビン・サルマンが台頭し、サウジアラビアの反体制派でアメリカ在住のジャマル・カショギの殺害を指示したこともあった。
関係を修復しようとする努力は、かえって関係を悪化させるようだ。バイデン大統領訪問の際、バイデンと王太子が兄弟のように握手を交えた場面もあったが、サウジアラビアが優位に立ち、与えた以上のものを得て、バイデン政権と共にウクライナでのロシアや台頭する中国に対抗しようとは考えていないように感じられたのである。両首脳会談で発表された広範な声明やコミュニケの中に、ワシントンの敵対諸国のいずれかを批判する言葉を見つけるのは困難である。10月のOPEC+では、サウジアラビアとロシアが日量200万バレルの減産を決定し、ワシントンではこの決定について、ウラジミール・プーティン大統領のウクライナでの戦争マシーンへの資金提供を直接支援する行為と見なされた。
2022年7月の中東歴訪を前にして、バイデン大統領は『ワシントン・ポスト』紙に寄稿した。その中で、中国に対抗するためにはアメリカ・サウジアラビア関係の改善が必要だと指摘したのは興味深い。もちろん、ムハンマド・ビン・サルマンはまったくそのようには考えていない。彼にとっては、中国カードをいかにサウジアラビアのために使うか、北京とワシントンのどちらかを永久に疎外することなく、両方から得られるものをいかに引き出すかが今のゲームとなっているのだ。
サウジアラビアは何年も前から中国との関係を深めてきた。しかし、これは、より小さくて脆弱な大国が超大国と行う非常に古いゲームに、新しい、そしておそらく戦略的なひねりを加えたものである。超大国(この場合はアメリカ)がある小さな国(あるいはその地域)を優先しないようになると、この小さな国もまたバランスを取る動きに出て、超大国の動きに対して、自国のマイナスを補うために他の大国と手を結ぼうとする。しかし、サウジアラビアが自信を深めていること、サウジアラビアの利益を守るために独自に行動する意志があること、そしてサウジアラビアの計算において超大国としての中国の重要性が増していることように変化したのである。
中国はサウジアラビアに何を提供するのか? ムハンマド・ビン・サルマンにとって、中国は単にアメリカに対抗するためのレヴァーではない。中国自体に真の価値がある。中国は現在、サウジアラビアにとって最大の貿易相手国であり、近年はアメリカとサウジアラビアの二国間貿易を上回っている。『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「中国企業はサウジアラビアに深く入り込み、巨大プロジェクトの建設、5Gインフラの整備、軍事用ドローンの開発などを行っている」と報じている。中国が関与しているのは、インフラだけではない。カーネギー国際平和財団の研究担当副会長エヴァン・A・ファイゲンバウムは、北京はテクノロジーや通信を含む多次元的なアプローチを追求していると『フォーリン・ポリシー』誌に語っている。先月、中国の通信会社「チャイナ・モバイル・インターナショナル」はリヤドと「サウジアラビアのデジタルメディア・エコシステムを推進する」覚書に調印した。
中国はまた、サウジアラビアに対して、人権に関するあらゆる懸念を含め、国内政治への干渉を排除した無条件の関係を提案している。これは両国にとってメリットがある。習近平は新型コロナウイルスの流行が始まって以来、ほとんど中国国外には出ていない。習近平が最初の数回の海外出張にサウジアラビアを選んだのは偶然ではない。同じ権威主義者が統治する国で、ウイグルや香港、新型コロナウイルス感染対策のためのロックダウンに対する最近の中国のデモに対する抗議などに関して、中国に恥をかかせるような報道はないだろう。習近平とビン・サルマンは権威主義者クラブの正真正銘のメンバーとして、改革、民主化、人権促進を求める外圧に対して団結する共通の絆を持っている。
つまり、バイデンのサウジアラビア訪問とは異なり、習近平の訪問は不快感や摩擦を伴わない、相互の温かさに満ちたものになる可能性が高いのである。習近平とサウジアラビア国王、ムハンマド・ビン・サルマン王太子、習近平とペルシア湾岸諸国、習近平とアラブ連盟諸国との3つの首脳会談が予定されているというから、ムハンマド・ビン・サルマンと習近平はともにこの地域における中心的存在としての存在感を発揮することができそうだ。サウジアラビア国営通信によると、30人以上の国家元首や国際機関の指導者たちが出席する予定だという。
アメリカとサウジアラビアの関係は崩壊しそうにない。ワシントンは安全保障と情報協力においてリヤドの重要なパートナーであり続けるだろうし、イランという国外の脅威は、多少傷つきながらも、この特別な関係の少なくとも一面を存続させることを保証しているようだ。中国は、アメリカの兵器の精巧さと有効性に取って代わることはできないし、ペルシア湾の航行の自由(freedom of navigation)を保証する役割を果たすこともできない。実際、ペルシア湾で中国のエネルギー供給を保護し、その確保に貢献しているのはアメリカ海軍である。しかし、バイデン政権は、北京がサウジアラビアの手元にある中国のミサイルをどのように改良し、どのような核協力が行われようとしているのか、注意深く見守る必要がある。
しかしながら、一つだけ確かなことがある。それは、あなたの祖父や祖母の時代のようなアメリカとサウジアラビアの関係ではないのだ。リスクを避け、コンセンサスを重視するサウジアラビアの国王の時代は終わった。その代わりに、リスクを恐れず、自信を持ち、傲慢でさえあるサウジアラビア国王が、グリーン革命があろうとなかろうと、世界が今後何年にもわたってサウジアラビアの算出する炭化水素に依存することを認識している。アメリカは現在でも非常に重要な存在だが、おそらくムハンマド・ビン・サルマンの計算の中心ではないだろう。バイデンは7月の中東歴訪で、サウジや湾岸アラブ諸国の指導者たちに、アメリカは「どこにも行かない」し、この地域にとどまるのだと述べた。しかし、ムハンマド・ビン・サルマンは彼独自の道を進む。中国とそしてロシアもまた、どこにも行かないだろう。
※アーロン・デイヴィッド・ミラー:カーネギー国際平和基金上級研究員。共和党、民主党の各政権で米国務省中東担当アナリストと交渉担当官を歴任。著書に『偉大さの終焉:アメリカはどうしてもう一人の偉大な大統領を持つことができず、持ちたいと望まないのか(The End of Greatness: Why America Can’t Have (and Doesn’t Want)
Another Great President)』がある。ツイッターアカウント:Twitter:
@aarondmiller2
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