古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ヨーロッパ

 古村治彦です。

 

 今回は世界のGDPについて、分かりやすい記事をご紹介します。数字の羅列を見てもよく分からなくても、視覚化されると分かりやすくなります。世界各国のGDPの大きさについてよく分かるようになっています。

 

世界のGDPに関しては以下のウェブサイトも参考になります。↓

http://ecodb.net/ranking/imf_ngdpd.html

 

 世界で、GDP1兆ドル(約110兆円)を超える国は15しかありません。こうして見ると、日本は400兆円以上ある訳ですから、経済大国であることは間違いないところです。日本は1950年代から1970年代まで高度経済成長を経験しました。そのスピードと成長率(毎年10%以上の成長率が10年近く続いた)は「奇跡」と言われました。この奇跡の経済成長について、もう1つ奇跡と言われたのは、不平等、格差が拡大しない経済成長であったという点です。英語ではeconomic miracle without inequality(格差なき奇跡の経済成長)と言います。この富の再分配を成功させたのは、自民党であり、裏で自民党に協力していた社会党という55年体制でした。


 日本は1980年の段階では世界GDPの約10%、1995年には約17%を占めるまで行きましたが、その後、割合はどんどん小さくなっていきます。現在は5.91%ですから全盛期の約3分の1ということになります。それだけ新興経済大国の伸びが大きいということになります。日本は規模が既に大きいので2%、3%の経済成長でもあれば割合を落とすことはなかったように思いますが、失われた20年でかなり落ちてしまったということが言えます。残念ではありますが、日本は落日の経済大国ということになります。

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 2011年に中国はGDPで日本を逆転しました。1968年に日本が西ドイツを抜いて世界第2位になって以来、日本は40年以上世界第2位の地位を守ってきましたが、第3位になりました。それ以降、中国は経済成長率は鈍化していますが、それでも約7%の経済成長率を維持しているので、日本との差は拡大しています。アメリカと比べたら約60%ほどですが、日本と比較すれば2倍以上になっています。人口を考えると、1人当たりのGDPはまだまだ日本が多いですが、これもいつの間にか逆転ということもあり得るでしょう。

 

 ヨーロッパでは、ドイツを筆頭に上位40カ国にだいたいが入っており、EUでちょうどアメリカと同じくらいの割合(約25%)になっているということで、EUでひとかたまりになっていることは経済的にメリットがあるようですが、ドイツが一人勝ち状態では、イギリスの離脱のように分裂に向かう動きも出てくるでしょう。

 

 世界200カ国以上のうち、下位150カ国のGDPは全体の10%くらいしか占めていないということは、経済成長する、経済大国になるということは並大抵のことではないし、ただ援助を与えたら良いということでもないのだということを改めて認識させられます。そうした中で、経済成長のエンジンとなっているアジア諸国は重要な存在になっている訳で、ここで不安定さをもたらすこと(世界の他の地域ででもそうですが)は愚の骨頂であると言わざるを得ません。

 

(貼り付けはじめ)

 

情報を視覚化した表現手段:世界のGDPは如何にして切り分けられているのか(Infographic: Here’s How the Global GDP Is Divvied Up

 

ロビー・グラマー筆

2017年2月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/02/24/infographic-heres-how-the-global-gdp-is-divvied-up/

 

今月、世界銀行は世界経済の現状に関する新しい統計数字を発表した。この統計数字は興味深い物語を語っている。

 

アメリカは現在でもまだ世界経済を支配している。アメリカは世界のGDP(約74兆1000億ドル[約8151兆円])のほぼ4分の1を占めている。世界経済の動きは中国がアメリカを追い越すことは不可避であるという話が持ちきりであるが、アジアの経済面での巨人はアメリカから10ポイント引き離されている、中国は14.84%を占め、一方、アメリカは24.32%を占める。

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2011年にGDPで中国が日本を抜いて世界第2位となった。それ以降、日本は世界のGDPに占める割合を低下させ、5.91%となっている。

 

ここで数字が大嫌いという人たちのために、コスト情報を提供するウェブサイト「ハウマッチ・ドット・ネット」の専門家たちの協力も得て、最新の統計数字を使って、世界経済をパイに見立ててどのように切り分けられているかを示すことができた。

For the non-number junkies out there, the data and market research gurus over at cost information website HowMuch.net put together a helpful diagram using the new numbers to show just who has what slice of the pie in the global economy:

 

最新の2015年の世界経済の発表したデータを基にした情報を視覚化した表現手段によると、世界経済の上位40か国の名前を示している。アジア地域の占める割合はほぼ3分の1で、33.84%を占める。これは地域別で最大の割合である。北米は2番目で27.95%、ヨーロッパは21.37%である。

 

その上昇率は高いものの、新興国の経済が世界のGDPで占める割合はまだ小さい。インドは世界経済の2.83%、ブラジルは2.39%、ナイジェリアは0.65%を占めるに過ぎない。今回のグラフを作った専門家たちが指摘しているように、「残りの国々(155か国が分類されている)」が占める割合は、アメリカと中国の差とほぼ同じ大きさである。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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ダニエル・シュルマン
講談社
2015-09-09


アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




 

 古村治彦です。

 

 2015年7月5日の日曜日、ギリシアで国民投票が行われました。EUなどの債権者側がギリシアに緊縮財政(年金のカットと増税、国防費の削減)を求め、これに対して、債務者側のギリシアのツィプラス首相が交渉を打ち切り、この債権者側の要求に「イエス」か、「ノー」かを国民に選んでもらうことになりました。結果は「ノー」が多数を占めました。ギリシア国民は債権者側からの要求を拒否しました。ツィプラス首相はこの民意を後ろ盾にして、再交渉をする意向です。

 

 この国民投票の結果を受けて、ギリシアの各銀行に対する支援が打ち切られて経済が麻痺してしまうという懸念から、ギリシアのユーロからの離脱、更にはEUの崩壊という話まで飛び出しています。ツィプラス首相はギリシアがユーロからもEUからも離脱することはなく、債務に関する交渉とそういった問題とは全く別だとしています。

 

 個人と国家とは違うと言われるかもしれませんが、個人が借金をして返せなくなったら、裁判所に行って自己破産をします。債権者側と話し合いをして、「ここまでなら返せる」とか「こんな仕事をしてどれだけの収入を得るので、返済にはこれだけ回せる」という話をして、何とか重たい借金から逃れることになります。その代り、信用はないのですから、新たに借金をすることはできませんし、他にも制限がかかることがあります。信用を失うことは個人として最大のペナルティとなります。

 

 ギリシア側の言い分は、「ドイツは調子が良い時はホイホイとギリシアの身の丈に合わないほどの金額を貸したではないか」「ギリシアがオリンピックの準備で財政を拡大(借金を重ねた)した時、ドイツの製品を色々と買ってやって、それでドイツは潤ったではないか」ということです。ドイツ人たちは「ギリシア人は働きもせずに苦労もせず、借金をしてもあっけらかんとしている」と馬鹿にしつつ非難しています。

 

 2020年に東京でオリンピック・パラリンピック、その前年の2019年には同じく東京でラグビーのワールドカップを開催する日本としては、新国立競技場やスポーツ施設のその後の使われ方と管理費が心配です。ギリシアのようにはならないと思いますが、一時の好景気の後に来る不況でそうした負担が重くのしかかってくることは、今から気分を重くさせる課題です。

 

 ギリシアは人口1000万程度(首都アテネに300万人が住んでいる)で、大した産業(製造業)はありません。輸入が輸出よりも多く、その足りない分は、観光と出稼ぎに行ったギリシア人の送金で埋めているという感じです。お金になりそうな海運と石油・化学製品の輸出も世界的な景気後退でそこまで儲からないようです。ですから、「ギリシア人は昼寝ばかりしている」といくら言ってみても、もともと産業と呼べるようなものはなく、海運と観光で食べていくだけの小さな国であったのに、身の丈に合わない借金を「してしまった」いや、「させられてしまった」と言うことが出来るでしょう。

 

 現在、EUでは頭文字でPIGSと呼ばれる国々が債務危機に陥る危険性を持っていると言われています。ポルトガル、イタリア、ギリシア、スペインです。これにアイルランド(Ireland)を入れる場合もあります。これらの国々はまた、「ヨーロッパ周縁諸国(European Periphery)」とも呼ばれています。このperipheryは、「周縁」とか「辺境」などと訳されます。これに対置する言葉がcoreで「中心」とか「中核」と訳されます。こうした言葉づかいを見ると、私はイマニュエル・ウォーラスティンの「世界システム論」を思い出します。ウォーラスティンについては拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)でも書きましたが、世界経済の分析では今でも有効性を持っていると思います。もちろん、西洋中心主義的であり、現在のグローバル・ヒストリー(世界史)の流れからは批判は多いと思いますが。

 

 EU(ヨーロッパ連合)はヨーロッパを1つにまとめ、ヨーロッパ人を生み出すことを理想としました。しかし、現実は経済力(工業生産力や資本力)が高い国々がそうではない国々に国内の資本を「輸出」し、実は支配・被支配関係、従属関係になっているのではないかと思います。今回のギリシア危機はそうした矛盾が露わになったのではないかと思います。こうした観点からみると、ウラジミール・レーニンの『帝国主義』もまた分析の一助になるのではないかと思います。

 

 ギリシア国民の債権者からの提案に対する「ノー」は、EU中核であるドイツの「帝国主義」に対する大きな反発だったのだろうと思います。

 

 EUの目的は1つのヨーロッパを作ることで、その根幹にあるのは「ヨーロッパ全土を焦土とする大戦争は二度と起こさせない」という考えであり、「ドイツ問題(近代のヨーロッパの大戦争はドイツの膨張に伴って起きた)を解決しなければならない」という考えでもあります。この根幹があるために、EU運動の中心となったフランスなどの国々は、EUを崩す訳にはいきません。ですから、こうした国々は、ギリシアに対しても、ドイツに比べて温和な態度を取ることになります。

 

 ギリシアがユーロから離脱し、EUが崩れていくという予想もあるとは思いますが、「お金で解決できることはお金で解決」というのが世間の知恵です。市場の動きなどを見ていても、そこまで大事にはならないで、ある程度の所で収まるのだろうと思われているようです。EUもユーロも何とかこのまま続いていくのでしょう。しかし、今のままではどん詰まりのジリ貧です。そこで、ユーラシア連合でユーラシアの端にある中国とアジアにつながって経済成長の恩恵、おこぼれをあずかろうとするでしょう。昔であればアメリカが助けたでしょうが、アメリカ自身もアジアのおこぼれにあずかろうとし、太平洋をブロック化しようとしています。何か大きな変動が起きている、そのように感じています。

 

(終わり)








野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


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