古村治彦です。
パナマで開かれた米州首脳会談において、アメリカのオバマ大統領とキューバのカストロ議長の会談が行われました。その詳しい内容が書かれた記事を皆様にご紹介します。
オバマ大統領は「体制転換(regime change)」のためにキューバに圧力をかけることはないと述べました。ここが会談の肝です。これでヒラリーや共和党を縛ることになりました。北米、中米、南米各国の指導者たちが集まる米州首脳会談でこうした発言を行ったことは大きな意味があります。もしこの発言とは違うことをするとなると、アメリカに対する信頼と敬意は大きく傷つけられてしまうからです。
翻って日本の指導者、政治家、官僚、知識人について考えてみると、何とも暗澹たる気持ちになります。
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オバマとラウル・カストロが会談(Obama meets with Raúl
Castro)
エリオット・スミロウウィッツ・マーク・ヘンシュ筆
2015年4月11日
『ザ・ヒル』誌
http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/238537-obama-meets-with-cuban-leader-raul-castro
オバマ大統領は土曜日午後、キューバの指導者ラウル・カストロ(Raul Castro)と会談した。オバマ大統領はこの会談を「歴史的会談」と呼んだ。
取材した記者団によると、パナマ・シティで開催された米州首脳会議の場で、キューバの指導者カストロ議長に対して、「私たちは今、共に未来に向かう道筋を進む位置に立っています」と述べた、ということだ。
オバマ大統領は続けて「ゆっくり時間をかけて、私たちはページをめくり、2国の間の新しい関係を構築することが出来ます」と述べた。
オバマ大統領は、アメリカとキューバが最初にやるべき仕事は、それぞれの国の首都に大使館を開設することだと語った。
カストロ議長は通訳を介して、オバマ大統領の発言に全面的に同意すると述べた。カストロ議長は更に自分たちはお互いに対して敬意を払いつつ、一致できない点には不同意を表明することが出来ると述べた。
カストロ議長は次のように述べた。「私たちは全ての議題について議論をしたいと思っているが、それには忍耐も必要です。大変な忍耐が必要となるでしょう。今日同意できないことでも、明日には同意できるということも出てくるでしょう」
2人の指導者たちは、新たに大使館を開設することに向けての大きなハードルは実務面になるだろうと述べた。
オバマ大統領はアメリカの外交官たちにとってキューバで職務を遂行するにあたり、アクセスの緩和を必要とするだろうと述べた。彼は両国の大使がそれぞれ国境を越えて自由に行き来できるようになることを希望すると述べた。
オバマ大統領は「私たちは、アメリカの外交官たちがキューバ国内で自由に行動できるための能力を持つことが必要だと考えている」と述べた。
カストロ議長は、アメリカに開設されるキューバ大使館がアメリカの銀行と取引ができるようになることを希望した。
議長はオバマ大統領に対して、アメリカがキューバに科している禁輸措置の撤廃と米国務省のテロ支援国家のリストからキューバを外すように求めた。
オバマ大統領はカストロ議長に対して、「数日中に」テロ支援国家からキューバを外す決定を行うだろうと応じた。
政府関係者たちは、会談が「率直」な雰囲気の中で行われ、緊張はなかったと述べた。2人の指導者は「部屋の中で歴史の重さ」を感じていたようだと語った。
カストロ議長はアメリカとキューバそれぞれの代表団は指導者たちの言うことをよく聞いた方が良いだろうと冗談を言い、オバマ大統領はカストロ議長と共に笑った。
2人の指導者は隣合って腰掛けた。ホワイトハウスの大統領執務室で大統領が政府高官と打ち合わせをする時のように椅子が並べられたのだ。
会談後の記者会見で、オバマ大統領は、キューバ国内での状況は改善しているが、アメリカはこれからも自由と人権に関して関与していくと述べた。同時に、オバマ大統領は、カストロ政権がどれほど続くかに関係なく、体制に対してアメリカが圧力をかけることはないと述べた。
オバマ大統領はキューバ政府との将来におけるかかわりに関して、「私たちは体制転換(retime
change)に関与することはありません」と述べた。
オバマ大統領は続けて次のように述べた。「私たちはある種の考えを持っていますし、それを表明することを躊躇することはありません。説得を通じて私たちの支持する価値観を引き上げていくことが出来ると私は自身を持っています」。
オバマ大統領はキューバと再び連絡ができるようになることは、世界政治において大きな転換であると主張した。
オバマ大統領は「私たちが何をやろうとそれとはかかわりなく、キューバでは大きな変化が起きることでしょう」と述べた。
長年人々が待ちわびていたのは、それは50年以上行われなかった2国間の指導者たちの最も重要な接触であり、会談であった。
土曜日の朝、オバマ大統領は米州首脳会談の場で、自分とカストロ議長は「歴史的な第一歩を記すために」私たちは喜んで体面を果たすだろうと述べた。
「アメリカの外交政策の変更は米州地域全体のターニングポイントになるでしょう」とオバマ大統領は述べた。
オバマ大統領はキューバとの関係で冷たい部分は存在しないと示唆した。
オバマ大統領は「私が生まれる前に始まった争いを続けていくことに興味も関心もありません。冷戦はとっくの昔に終わっているではありませんか」と述べた。
土曜日の朝のこの時、カストロ議長はオバマ大統領に対して「深甚からの」謝罪を表明した。
「私はオバマ大統領とその他ここにおられる皆さんに謝罪を申し上げます。私はオバマ大統領に謝罪したい。それはオバマ大統領にはアメリカとキューバとの間にある争いに関して何の責任もないからです」とカストロ議長は述べた。
キューバに対するアプローチを刷新するために、オバマ大統領は「何か新しいことを試す時が来たのです」と述べた。
オバマ大統領とカストロ議長は対話を握手から始めた。金曜日の夜、既に2人は実際に対面して握手を交わした。これはキューバとアメリカの指導者の50年ぶりの物理的接触となった。
土曜日、このような外交上のジェスチャーに対して共和党の大統領選挙候補者たちからすぐに批判が浴びせられた。
元フロリダ州知事ジェブ・ブッシュは「オバマ大統領はカストロと会談しているが、ネタニヤフとの会談は拒否した」とツイッターで発信した。これは先月、オバマ大統領がイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフを冷たく扱ったことを指している。
ジェブ・ブッシュは更に「どうして抑圧的な体制の冷酷な独裁者を合法化できるのだろうか?」と発信した。
マルコ。ルビオ連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)の両親はキューバ人である。ルビオもまたこの雪解けに対して攻撃を行った。カストロ体制が長年にわたりアメリカの苦役に対して敵対してきたのに交渉開始を申し入れたことは不合理極まりないと発言した。
ルビオはオバマ政権の政策変更を激しく非難した。彼は「全く持って馬鹿にしている。何をやっているのか全く理解できない」と述べた。
水曜日の夕方、米国務省はオバマ大統領からテロ支援国家のリストからキューバを外すように要請を受け、木曜日にはその手続きの最終確認を行い、大統領に報告した。
オバマ大統領はキューバをリストから外す手続きを進めることになる。リストからの削除はカリブ海の島国キューバに対するアメリカの善意がその方向を変えて向けられることになることを示す。
オバマ大統領が初めてキューバとの国交正常化を行う決断を下したと発表したのが昨年12月であった。政権が正式に禁輸措置と渡航禁止措置の緩和を発表したのは今年の1月15日であった。
キューバとアメリカは1959年にキューバ革命が成功した後に衝突した。ラウル・カストロの兄フィデル・カストロ率いる共産主義者の反乱軍が政府を打ち倒し、ソヴィエト連邦と同盟関係を樹立した。
冷戦が終わるまで、キューバとアメリカは厳しく対立し続けた。ラウル・カストロは兄であるフィデル・カストロが2008年2月に権力の座から退いた後に国家評議会議長に就任した。
(終わり)