古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:リアリスト

 古村治彦です。

 

 最新の情報で、共和党政権下で国務長官を務めた、共和党系リアリストの大物ヘンリー・キッシンジャーとジョージ・シュルツが、共同で民主党大統領選挙候補者ヒラリー・クリントン支持を発表するための議論を行っているという報道が出ました。

 

 『ポリティコ』誌の記者たちがシュルツに取材をして明らかになったようです。キッシンジャーの発言はなく、シュルツのものだけですので、話半分で聞いておく必要がありますが、この動きが本当だとすると、今回の大統領選挙がエスタブリッシュメント対反エスタブリッシュメントの構図であることがさらに明確になります。

 

 更にシュルツの発言で注目なのは、彼がヒラリーの持つメキシコに関する知識の深さに感銘を受けたという点です。メキシコと言えば、水曜日にトランプが訪問し、ペーニャ・ニエト大統領と会談をしました。この後の会見で、トランプは彼の選挙戦の柱中の柱である「メキシコ政府の資金でメキシコ国境に壁を建設する」という主張に関して、「壁を作ることに関しては議論をしたが、資金については議論をしていない」と答えました。しかし、ペーニャ・ニエト大統領は「会談の冒頭で私は、メキシコが資金を出すことはないと明言した」とツイッターに投稿し、報道官もそのことを認めました。

 

 トランプに対しては嘘をついたとか態度を変えたという批判が出てきています。今回のシュルツの発言から考えると、「エスタブリッシュメントがメキシコと共謀して、トランプを罠にはめた」と言えると思います。メキシコはアメリカの隣国で、言わば難しい相手ではありますが、同時に恒に関わらねばならない相手です。そのメキシコの大統領との会談は、トランプが大統領になった場合のシミュレーションということになります。「このシミュレーションで酷い姿を世界に晒せばトランプはつまずく」というシナリオがあったように思います。

 

 このポリティコ誌の記事もその一環で出されたものと思われますが、共和党系の国務長官経験者たちがこれまで誰もヒラリー、トランプどちらを支持するのかを明確にしてこなかった中で、記事のインパクトは大きいと思われます。

 

(貼り付けはじめ)

 

キッシンジャー、ジョージ・シュルツがヒラリー・クリントン支持を考慮中(Kissinger, George Schultz mull Clinton endorsement

 

ジェシー・ヘルマン筆

2016年9月2日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/294245-former-reagan-official-considers-clinton-endorsement-god

 

 

過去の共和党政権で最重要の閣僚を務めた2人の人物が、民主党大統領選挙候補者ヒラリー・クリントンへの支持を検討中だ。彼らはドナルド・トランプに対する違和感をぬぐえないと述べている。

 

リチャード・ニクソン政権では大統領国家安全保障問題担当補佐官、ジェラルド・フォード政権では国務長官をそれぞれ務めたヘンリー・キッシンジャーとロナルド・レーガン政権で国務長官を務めたジョージ・シュルツは、『ポリティコ』誌に対して、2人はヒラリー支持を公然と行うことについて議論していると述べた。

 

ジョージ・シュルツは共同のヒラリー支持表明の可能性について、「私たちは共同でそれを行うことになる。大きなインパクトがあると思う」と述べた。

 

シュルツは、トランプが2人から支持を得られる時間がまだ残っているのかという質問に対して、「いいえ」と答えた。

 

トランプ大統領実現の見通しについて、「私たちには神のご加護がある」と辛らつな言葉を述べた。

 

シュルツは、ヒラリーが「メキシコについて深い知識を持っている」ことに感銘を受けたとも述べた。

 

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ポリティコ「プレイブック」からの抜粋

 

アンナ・パルマー、ジェイク・シャーマン、ダニエル・リップマン筆

2016年9月27日

『ポリティコ』誌

http://www.politico.com/tipsheets/playbook/2016/09/putin-denies-russia-involved-in-dnc-hack-scoop-shultz-alludes-to-joint-clinton-endorsement-with-kissinger-state-dept-to-release-all-clinton-emails-before-election-the-playbook-interview-al-sharpton-216142

 

シュルツとキッシンジャーがヒラリーを支持する?今から数週間前、私たちはスタンフォード大学にいた。元国務長官ジョージ・シュルツは、トランプ大統領実現の見通しを質問され、衝動的に嫌がる動きをした。そして、「私たちには神のご加護がある」と辛らつに述べた。

 

昨日、私たちの同僚ジョン・ハリスとブライアン・ベンダーが訪問した時、シュルツは更に直接的になっており、ヘンリー・キッシンジャーと共同でヒラリー・クリントン支持を表明することについてキッシンジャーと議論しているところだと示唆した。彼はそれを明言しなかったが、ハリスたちが、トランプには二人からの支持を得るための時間が残されているのかという質問に対して、「いいえ」と答えた。

 

スタンフォード大学があるパロ・アルトで、シュルツはハリスとベンダーに対して、協働の支持表明の可能性について「私たちは共同でやることになるだろう」「大きなインパクトがあるだろう」と述べた。シュルツは財務長官と労働長官も歴任したが、ヒラリー・クリントンに感銘を受けたと述べた。シュルツはヒラリーと個人的に会い、「メキシコに関する深い知識を持っている」ことを知り、それに感銘を受けたということだ。シュルツは「次期大統領が就任し、内向きになったら、混乱が増大するだろう」と発言し、トランプに対しての間接的な批判を行った。シュルツは「アメリカ大統領の代役は存在しない」と語った。

 

ベンダーとハリスが発表のタイミングについて質問したところ、「9月5日(レイバーディ)ではない」と答えた。ヒラリー・クリントンの報道担当ジェシー・ファーガソンは「私たちはシュルツとキッシンジャーの動きについて何も関知していない」と答えた。

 

(貼り付け終わり)






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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 イスラエルのネタニヤフ首相の連邦議会演説、総選挙前と当日の人種差別を煽る発言とこれまで積み上げてきたパレスチナ国家樹立をすべて否定する発言、それ以降の動きについて、ホワイトハウスの大統領首席補佐官デニス・マクドノウと、ジョージ・HW・ブッシュ(父)政権時代に国務長官を務めた重鎮ジェイムズ・ベイカーが同じ場所で語った内容について、ご紹介します。

 

 2人は、左派的な親イスラエルのロビー団体Jストリートの年次総会に出席し、演説を行いました。二人の話した内容はほぼ同じですが、それは、2人が所属する政党は違えども、外交政策に関しては「リアリスト」的な立場を同じくしているからです。

 

 日本でリアリストと言うと、中国や北朝鮮と戦争をやるんだというようなことを言う声の大きなオヤジ、という感じですが、本当のリアリストは、慎重に国益を判断し、現状から最善の結果を導き出す考えをする人たちです。私が拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)で取り上げた、また副島隆彦先生の最新刊『日本に大きな戦争が迫り来る』(講談社、2015年)で分析の枠組として使われた、共和党のネオコン、民主党の人道主義的介入派はそれぞれアメリカと西洋文明の理想を世界に広めて「アメリカ版・八紘一宇」の世界を作り上げようとする人たちです。理想のために現実をいじくることはとても危険なことです。しかし、それをやりたがって、悲惨な結果を招くことを何とも思わない人たちです。

 


 私が拙著『アメリカ政治の秘密』で取り上げたように、オバマ大統領の外交政策の理想は、同じ民主党の歴代大統領ではなく、どちらかと言うと人気がなかったジョージ・
HW・ブッシュ(父)大統領時代のものです。このこともきちんと押さえておく必要があります。

 

 私は2015年から定期的に「副島隆彦の学問道場(http://www.snsi.jp/tops/entry)」内の「今日のぼやき」に寄稿することになりました。このリアリストについても「今日のぼやき」で近々論稿を発表したいと思います。恐らく、会員(年会費が一般1万円、学生6000円、困窮者には救済制度もあります)しか読めない場所に掲載されると思いますが、ご興味がある方は是非会員になって、お読みいただければと思います。宜しくお願い申し上げます。

 

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ホワイトハウスはネタニヤフの謝罪ツアーに何の印象も受けず(White House Not Impressed by Netanyahus Apology Tour

 

ジョン・ハドソン、デイヴィッド・フランシス筆

2015年3月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/03/23/white-house-not-impressed-by-netanyahus-apology-tour/

 

 イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフは、月曜日(3月23日)、謝罪ツアーを継続した。イスラエルのアラブ系国民に対して、パレスチナ国家樹立につながる和平合意に対する支持を撤回すると選挙日当日に発表したが、これは有権者の不安感と恐怖感を煽るための戦術ではなかったと弁解した。しかし、ホワイトハウスは今でも懸念を持ち続けており、ベンヤミン・ネタニヤフの発言をすぐに忘却することはないだろうとある高官は述べている。

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ホワイトハウスの大統領首席補佐官のデニス・マクドノウは、ハト派の親イスラエル・ロビー団体Jストリートがワシントンで開催した年次総会に出席し、「これらの発言がなされなかったというふりをすることはできない」と発言した。更には、「総選挙後、ネタニヤフ首相は自分自身の立場を変えていないと発言した。しかし、イスラエル国民の多くと国際社会は、彼の矛盾に満ちた発言を聞くことで、彼の2国共存による解決への関与に関して甥なる疑問を持たざるを得ない状況になっている」とも述べた。

 

マクドノウは続けて、「パレスチナの子供たちは、イスラエルの子供たちと同じく、自分たちの土地で自由を享受する権利を持っている」と述べた。

 

 ネタニヤフがイスラエル国内の少数派の指導者たちを集めた会合で、選挙前にパレスチナ国家樹立を認めないこと、「アラブ人たちが投票所に押し寄せる」と警告を発したことに関して謝罪した。

 

 『エルサレム・ポスト』紙は、ネタニヤフが「私が数日前に発言した内容でイスラエル国民、アラブ系のイスラエル国民の中に感情を害した人々がいることは分かっている。こうした人々の感情を害することは私の意図ではなかったし、申し訳なく思う」と発言したと報じている。

 

 ネタニヤフが発言内容を撤回したのは、2015年3月19日で、MSNBCのアンドレア・ミッチェルに対して、彼自身は「平和的な」2国共存による問題解決を望んでいるが、「そのためには環境が変化しなければならない」と発言した時からだ。

 

 マクドノウは、「アメリカは和平プロセスに対する私たちのアプローチを再考する」というホワイトハウスの立場を繰り返した。これは明瞭な言葉ではないが、アメリカ政府はイスラエル・パレスチナ紛争を国連の場に持ち出すことを示唆する脅しであった。イスラエル政府はこのような動きには徹頭徹尾反対してきた。

 

 オバマ大統領の片腕、デニス・マクドノウは、イスラエルが永続的にヨルダン川西岸地区とガザ地区とを占領し続ける、1国主義的な解決法を、アメリカは「決して支持することはない」と改めて強調した。マクドノウは「イスラエルが、他国の人々を完全に軍事力によって統制し続けることなど不可能なのだ」と発言した。マクドノウは包括的な和平合意を結ぶことが、国連やその他の機関においてイスラエルを孤立させ、経済制裁を加えようとする試みに対しての「致命的な一撃」になるのだと強調した。

 

 現在行われているイランとの核開発を巡る交渉について、マクドノウは最近47名の共和党所属の連邦上院議員たちが署名した、イランの最高指導者に宛てた公開書簡を引き合いに出し、オバマ大統領が結ぶいかなる合意をも避妊できる連邦議会の力に対して憂慮を示した。

 

 マクドノウはリベラルな考えを持つ聴衆に対して、「私たちは外交に成功するチャンスを与える必要がある(We have to give diplomacy a chance to succeed)」と述べた。聴衆は共和党の連邦上院議員たちが発表した公開書簡に話が及ぶと大きなブーイングを発し、不満の意を露わにした。

 

 月曜日、連邦下院外交委員長エド・ロイスは別の書簡を発表した。これには民主、共和両党の367名の連邦議員たちが署名をした。彼らはイランの核開発を巡る交渉から派生して起きる「致命的かつ緊急の諸課題」について懸念を持っていた。3月20日付でオバマ大統領宛てに出された書簡では、イランのウラニウム濃縮プログラムの規模と、イラン政府の国際原子力機関に対する極めて非協力的な態度に関する懸念が書かれていた。

 

 マクドノウは、アメリカはイランが核兵器を所有できないようにこれからも努力を続けると強調した。しかし、同時に、ホワイトハウスは現在行われている交渉に対して連邦議会が介入しようとして行ういかなる試みに対しても、拒否権を使って対抗するとも述べた。

 

(終わり)

 

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ジェイムズ・ベイカーは、ネタニヤフよりも厄介だったイスラエル首相との思い出話を語った(James Baker Recalls An Israeli Prime Minister More Difficult Than Netanyahu

サマンサ・ラクマン筆

2015年3月23日

『ハフィントン・ポスト』紙

http://www.huffingtonpost.com/2015/03/23/james-baker-j-street-_n_6928042.html

 

 ワシントン発。元国務長官ジェイムズ・ベイカーは月曜日、アメリカとイスラエルとの間の関係が低調である現在であっても、イスラエル・パレスチナ間の紛争のための2国共存による解決について「楽観的である」と発言した。

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 ベイカーは、左派のイスラエル・ロビー団体Jストリートの年次総会で基調講演を行った。この中で、ベイカーは、イスラエルの指導者たちと関わった自分自身の経験から、ネタニヤフ首相とバラク・オバマ大統領が現在の低調な両国関係を乗り越えることが出来れば、中東における和平はまだ実現可能だと述べた。ベイカーはジョージ・HW・ブッシュ元大統領に仕え、現在は共和党の米大統領選挙の有力候補ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事に助言を行っている。

 

 ベイカーは、和平合意が出来なければ、「衝突は継続」するとし、「私は現在も楽観している。私は自分が慎重に事態を見ていることを強調しておきたいが、それでも楽観している。それは、2国共存が実現しなければ、イスラエルの将来は厳しいものとなると考えているからだ」と述べた。

 

 共和党側はオバマ大統領が不当にネタニヤフを攻撃していると批判しているが、ベイカーはこうした批判は的外れだと述べた。

 

 「世界中の誰もアメリカのイスラエルに対する関与の深さを疑うことなどできない。現在もそうだし、未来においてもそうだ」とベイカーは述べた。

 

 ベイカーは自身が国務長官在任当時の、イスラエル首相イツハク・シャミルとの緊迫した外交関係についての思い出話を語った。彼は、「自分が国務長官の時には緊張した瞬間があった」と述べ、それでもイスラエルとアメリカの同盟関係が政策の不一致を乗り越えることが出来たと話し出した。ベイカーは1991年に起きたシャミルとの対立について語った。この当時、ソヴィエト連邦の崩壊に伴って多数のユダヤ人たちがイスラエルへの帰還を果たしていた。それに対して、アメリカ政府は100億ドルの住宅ローン保証をイスラエルに与えるとしたのだが、それにはシャミルがこのお金をヨルダン川西岸地区へのユダヤ人入植地建設には使わないと確約することをベイカーとブッシュは条件とした。

 

 「私はアメリカ・イスラエル関係に関して最初はその複雑さに驚き、それから常に論争が起きることに気付いた。私はブッシュ大統領が行ったことは正しいと考えた。これは今も変わらない」とベイカーは述べた。

 

 ネタニヤフが総選挙前に2国共存による解決を支持しないと発表したことを受けて、オバマ政権は、紛争解決のためのアプローチを再考しているが、このことについて、ベイカーは総会の出席者たちに対して、ネタニヤフはアメリカにとって最も扱いにくいイスラエル首相という訳ではないと述べた。ベイカーは、その当時イスラエルの外務次官を務めていたネタニヤフに対して国務省への出入りを禁止しなければならなかったと思い出話を語った。その理由について、ベイカーは、「彼がアメリカの中東に対する外交政策は、“嘘と歪曲”の上に成り立っていると述べたからだ」と語った。

 

 ベイカーは次のように述べた。「皆さんに申しあげたいのは、25年前、イツハク・シャミルはベンヤミン・ネタニヤフを“柔らかすぎる”と評したことだ。これは、ネタニヤフが若くして首相になった時にシャミルが述べた発言だ。アメリカとイスラエルの国益は常にぴったり一致する訳ではない。全く別のものになるということはこれからもあるだろう」

 

 ネタニヤフの行動は「彼の発言内容と一致してこなかった。入植地の建設は勢いが衰えないままに継続されている」とベイカーは指摘した。しかし、同時に、オバマ大統領とネタニヤフ首相は両者の争いを「悪化」させてはならないとも述べた。

 

 イランの核開発を巡る交渉について、「完璧な(perfect)」合意内容の達成をあくまで求めることには懸念を示した。ネタニヤフは連邦議会の演説でアメリカとイランの交渉の道筋について反対を表明した。

 

 ネタニヤフは次のように語った。「ウラン濃縮をイラン側が行わないこと、これ以外に合意は存在しない。アメリカもイスラエルも、本来の目的を忘れて本末転倒のことをすべきではない(not led the perfect be the enemy of the good)」。(←この英語の言葉がリアリストの真骨頂だと思います。訳者註)

 

ベイカーはまた、オバマ大統領は、必ずしも必要ではないにしても、イランとのいかなる内容の合意を結ぼうともそれについて議会の承認を得られるように努力すべきだ。

 

 Jストリートの年次総会でのベイカーの演説は、Jストリートがイスラエルのヨルダン川西岸地区の占領に対して批判的すぎると考える保守派の人々からは批判された。

 

(終わり)








 

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