古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:リアリズム

 古村治彦です。

 ジョー・バイデン政権が成立するならば、外交政策分野では、バイデンが副大統領だったバラク・オバマ政権時代に参加していた人物たちが、主要最高幹部として登場するだろう。以下の記事は、今年の夏ごろの記事だが、ジョー・バイデン陣営には、数多くの外交専門家たちがヴォランティアで数多くのワーキング・グループに参加していることを紹介している。ここで作られた政策提言や助言を取りまとめるのが、インナーサークルと呼ばれる少数によるグループで、このグループのメンバーが政権の外交政策の中枢を担うことになる。これはあくまでバイデン政権が成立しての話だ。

 一言加えておくと、今のところ、ジョー・バイデンとカマラ・ハリスによる勝利宣言はあったが、正式にはまだ選挙人270名獲得を確実にした候補者はいない。まだ5つの州では最多得票の候補者が正式に発表されていないし、その他の州でも選挙の結果や方法について裁判が提起されている。

※「RealClearPolitics」の選挙結果ページは以下の通り↓
https://www.realclearpolitics.com/elections/live_results/2020/president/

バイデンの外交政策の面での側近はアントニー・ブリンケンだ。アントニー・ブリンケンは第一次、第二次ビル・クリントン政権のホワイトハウスで国家安全保障会議のスタッフを務めた。大統領特別アシスタントとして、演説草稿づくりに関わり、ヨーロッパやカナダ担当の上級部長を務めた(ブリンケンはフランスの高校を卒業しているのでフランス語が堪能)。こうしたことからビル・クリントン、ヒラリー・クリントンとの関係も深い。
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バイデン(左)とブリンケン

2008年の大統領選挙では最初はバイデン陣営に加わり、バイデンがバラク・オバマの副大統領候補となってから、オバマ・バイデン陣営に加わった。オバマ政権では、国家安全保障問題担当副大統領補佐官を務めた。
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ヘインズ

 アヴリル・ヘインズは日本の柔道の殿堂・講道館に1年間留学した経験を持つ変わり種だ。物理学の大学院生を辞めてバーや本屋を経営し、その後法科大学院に入って弁護士資格を取得した。その後、連邦上院の外交関係の仕事をしている時にバイデンと知り合ったようだ。バラク・オバマ政権では2013年から15年まで女性初のCIA副長官を務め、15年から17年にかけては、国家安全保障問題担当大統領次席補佐官を務めた。私は2014年末にヘインズについて、このブログで取り上げている。

※「ホワイトハウスの人事に関する記事をご紹介します」(2014年12月29日)↓

http://suinikki.blog.jp/archives/19038692.html

 ジェイク・サリヴァンはオバマ政権内で若手(30代)のエリートとして登場した。拙著『アメリカ政治の秘密』で私はいち早くサリヴァンに注目した。私はこの本を書いたときに、「サリヴァンは将来、大統領になるか、国務長官になるか、くらいの人だ」と述べたが、周囲の人たちからは「それは言い過ぎではないか」とたしなめられた。彼は自分の出身地から連邦議員に出馬することも視野に入れていた時期もあった。しかし、彼は線が細い感じで、表方の人でもないような感じだと私も考え直した。そこがピート・ブティジェッジとは違う点だ。サリヴァンはミネソタ州出身で、今年の大統領選挙民主党予備選挙に出馬した地元選出のエイミー・クロウブッシャー連邦上院議員の首席補佐官を務めていた時に、ヒラリー・クリントンに紹介された。2008年の大統領選挙ではまずヒラリー陣営に参加し、その後、オバマ陣営に参加した。
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訪日時のサリヴァン(右は船橋洋一)
 サリヴァンは2011年から2013年まで国務省政策企画本部長に抜擢された。初代の本部長はジョージ・ケナン、その後はWW・ロストウ、アンソニー・レイク、ポール・ウォルフォビッッツなど後に大物になる人々がこの地位を経験している。外交政策分野における登竜門である。2013年から14年にかけてはバイデン副大統領の、国家安全保障問題担当副大統領補佐官を務めた。イランとの核開発をめぐる合意の根回しを行った。2016年大統領選挙ではヒラリー陣営の幹部を務めた。

※「私がずっと注目している重要人物ジェイク・サリヴァンについての最新記事をご紹介します①」↓

http://suinikki.blog.jp/archives/72472427.html

 東アジア担当のワーキング・グループを率いるのはイーライ・ラトナーとジュン・パクでどちらも日本専門ではなく、中国と朝鮮半島だ。もちろん日本についての知識は他の人たちよりも格段にあるだろうが、日本の専門ではないということだけは確かだ。
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ラトナー
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ジュン・パク

アメリカの大学院留学時代に中国政治関連の勉強会で『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の著者エズラ・ヴォーゲル教授に会った時に少し話をした際に、私が鹿児島出身だと知ると、「ラ・サール出身ですか?(嫌なこと聞くなぁ、中学受験で失敗しました)」とか「大隅半島で活動していたNPOはどうなりましたか?(名前だけは聞いたことがあったけど詳しくないんですよ)」などと日本語で会話した。その頃にはヴォーゲル教授の関心は中国に移っていて、元々日本語同じく流暢だった中国語を使って研究を展開していた。知日派というのはこれくらいの人を言うとなると、アメリカでの知日派というのは減少しているのだろうと思う。

バラク・オバマ政権下では、1期目の4年間はヒラリー・クリントンが国務長官を務め、2期目の4年間はジョン・ケリーが国務長官となった。外交政策としては、人道的介入主義を基にしたものから、現実主義(リアリズム)的なものに変化した。バラク・オバマは、ジョージ・HW・ブッシュ政権の抑制的な外交政策を目指していたが、1期目にヒラリーを国務長官にしてしまったことでそれができなかった。2期目の特筆すべき出来事としては、キューバとの国交回復とイランとの核開発をめぐる合意があった。

 もし、バイデン政権ができたとして、どのようになるかと考えれば、私は最悪だった息子ブッシュ政権のようになるのだろうと考えている。あの政権の実質的な「大統領」は、ディック・チェイニー副大統領だった。そして、ネオコン派が政権内を牛耳った。

 バイデンの役割はトランプに勝ったことで終わった、後は4年間、ホワイトハウスでボヤっとしておけ、ということになり、カマラ・ハリスが実質的に政権内を取り仕切る。この民主党支持者たちの間でもまったく人気のない人物は、「女性によるガラスの天井の破壊」を掲げるだろう。そうなれば、ヒラリー派のスーザン・ライスやミッシェル・フロノイ当たりが出てくるだろう。バイデンの側近たちが活動できる部分は狭くなるだろう。

 私はバイデン政権ができればそれは「チェイニー・ヒラリー連立政権」だと書いた。ネオコンと人道的介入主義派の奇妙な連携で、アメリカが再び世界各地にちょっかいを出し、敵を増やしていく、そういう路線に転換していくということになると考えている。

(貼り付けはじめ)

バイデン選対に助言をしている大規模な外交政策ティームの内部(Inside the Massive Foreign-Policy Team Advising Biden’s Campaign

-もしジョー・バイデンが勝利すると、バイデン政権の上級、中級レヴェルの仕事に招き入れられる可能性がある外交政策の専門家たちのトップたちについて見てみる

コラム・リンチ、ロビー・グラマー、ダーシー・パルダー筆

2020年7月31日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/07/31/inside-biden-campaign-foreign-policy-team/

ジョー・バイデン前副大統領の非公式の外交政策と国家安全保障に関するアドヴァイザーたちによるティームのメンバーは2000名以上になっている。その中には20のワーキング・グループが含まれている。国家安全保障分野における多様性から軍縮、国防、諜報、国土安全保障といった幅広い問題に取り組んでいる。バイデン選対の幹部たちの話と本誌が取得したこれらのグループのワーキング・グループの共同委員長たちの内部名簿から明らかになった。

外交政策ティームの構成を見ると、11月に選挙で当選して大統領になれば、バイデンがどのように外交政策を作り上げようとしているか、難民たちを悪者として示すこと、世界中の女性の性的なそして再生産の権利を制限することのようなドナルド・トランプ大統領の議論を巻き起こした外交政策の一部をどのように変更するか、ということを示唆している。外交政策ティームの構成を見ると、表舞台には出てこない助言者たちの存在を明らかにしてくれる。助言者の中には、バイデンと深い関係にある東アジアの専門家であるエリー・ラトナーと中東の専門家であるダニエル・べナイムが含まれている。助言者たちは、バイデンが大統領に選ばれれば、国防総省、国務省、諜報分野、その他の政府機関でトップ、もしくは中位の職に就くことになる。

49のワーキング・グループの共同委員長にはラトナーとべナイムも含まれている。共同委員長は外交政策、国防、国土安全保障といったより広いコミュニティの門番として機能している。国家安全保障の専門家たちはアイディアを出し、ポリシーペイパーを書き、バイデン選対にフィードバックする。政策ティームに詳しい人々は、「このティームは選対の公式の構成部門ではないが、選対の意向に沿って活動しており、バイデンと意志決定に関与する最高幹部たちに対して非公式の助言を行っている。ワーキング・グループに参加している人々のほとんどは自分たちの活動を公に発表しないようにしている。

共同委員長たちは政府、コンサルティング会社、シンクタンク、国防産業の出身だ。また、オバマ政権下で国務省、国防総省、国土安全保障省で交換を務めた人々も含まれている。『ポリティコ』誌は、バイデン陣営には少なくとも国家安全保障専門家1000名が、20のワーキング・グループに参加している。本紙はバイデン陣営の内部文書を調査し、ワーキング・グループの名前とそれらの共同委員長の名前を把握した。

それぞれのワーキング・グループはその下に小委員会を統括し、イスラエル・パレスチナ闘争、人道主義的救済、難民のような問題について取り扱っている。例えば、調達、テクノロジー、補給担当の国防次官を務めたフランク・ケンドール三世が国防関連ワーキング・グループの共同委員長を務めている。その他には、国防総省の上級顧問を務め、本誌でもコラムを書いていたローザ・ブルックス、国防政策担当国防次官を務めたクリスティーン・ウォーマスが100名から200名の専門家たちを監督している。彼らは予算と地域軍事司令に関する6つの小委員会を統括している。

内部事情に詳しい人々によると、ヨーロッパ担当ティームには100名以上が入っている。オバマ政権で国家安全保障担当の政府高官を務めた3名が共同委員長を務めている。本誌の「シャドウ・ガヴァメント」コラムを最近まで返照していたジュリー・スミス、マイケル・カーペンター、スペンサー・ボイヤーがその3人だ。

アイディアと助言はバイデンの側近たちの小さなインナーサークルに提出されている。インナーサークルには、アントニー・ブリンケン(Antony Blinken)、ジェイク・サリヴァン(Jake Sullivan)、アヴリル・ヘインズ(Avril Haines)、ブライアン・マキオン(Brian McKeon)、ジュリー・スミス((Julie Smith)が入っている。こうした人々はバイデン政権では国家安全保障のブレイントラスト(brain trust)を務めることになる。政策提案を行っている多くの人々にとって自分たちの出した助言がどのように扱われているのかについてはミステリーだ。ある政府関係者は、政策提言のほとんどはブラックホールの中に入って消え去ってしまうようなものだと述べている。

複数のワーキング・グループとやり取りしているある政府職員は「これらのワーキング・グループは意思決定の権限を持っていませんが、インナーサークルは巨大なマシーンを監督しています。このマシーンの中で政策が常に提案され検討されているのです」。

バイデン陣営にヴォランティアで参加している専門家の多くは、トップレヴェルの影響力のあるアドヴァイザーたち以外には、そのことを公言しないし、メディアでも話さない。バイデン選対にヴォランティアで参加している人たちの中には、シンクタンクなど雇い主から参加するように促されている人たちもいる。こうした人たちはインターネット上の紹介で所属を明らかにしている。これが意味するのは、こうした人々が行っている仕事のほとんどは非公開の裏側で行われているということだ。こうしたことは過去の大統領選挙ではなかったことだ。

本誌は今回の記事にあたり、バイデン陣営に公式にもしくは非公式に助言を与えている25名ほどの人物に連絡を取った。多くはコメントの依頼に答えなかった。数名が匿名を条件に取材に応じることに同意した。

バイデンの外交政策ティームの構造は多くの点で、伝統的な政府機関内部の意思決定プロセスを踏襲しようとしている。トランプ政権下では、国家安全保障会議でのこれまでの意思決定プロセスを破壊し、大統領の側近たち、専門家、家族の限られたかつ閉じられた少数の人々によって決定がなされるようになっている。

しかし、バイデン陣営と連絡を取っている民主党系の外交政策専門家たちの一部は、プロセスは不明瞭だと述べている。そして、自分たちが行った助言がバイデンに近い顧問や助言者たちにまで届いているのかを知ることは困難であり、ティームに顧問や助言者が数多く入っているのは、批判者に転じる可能性がある人たちまで含めて、とりあえず全員に「起用されている」という感じを持たせようとしているからではないかとも述べている。

あるワーキング・グループに入っている人物は次のように述べている。「ワーキング・グループの構造は政府のような感じです。ヒエラルキー的で官僚的なところはまさに政府のようです。ワーキング・グループの重要な目的は全ての人々に自分が求められ起用されていると感じてもらうことです。もう一つの目的は、バイデン政権で職に就きたいと望んでいる人々にその足掛かりを与えることです。ワーキング・グループに入ることは、自分の仕事ぶりを見せる機会なのです」。

ワーキング・グループの数や種類など、規模は拡大し続けている。これは「人々の考えが捨てられるのではなくて、理論的には陣営に届けられていることを示す、人々に対する誘因」の役割を果たしていると民主党系の外交政策アドヴァイザーである、ある人物は述べている。この人物は「これがすべて正しいという訳ではありませんが、進歩主義派の陣営かあら人々が次々と参加しているのですが、そのための戦術的な要素ということになります」と述べている。

トランプ政権下でアメリカの外交政策について幻滅している外交政策専門家の中には、民主党の予備選挙で勝利する人なら、誰でもあってもその人を助けたいと熱望していると述べる人たちがいる。予備選挙で有力候補だったエリザベス・ウォーレンとピート・ブティジェッジに助言をしていた専門家たちはバイデン陣営のヴォランティアの外交政策アドヴァイザーのティームに入っている。

今月になって発表された各種世論調査の結果を総合すると、トランプは現在のところ、全国規模で6ポイントの差をつけられてバイデンを追いかけている。そして、民主党の候補者であるバイデンは、ミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルヴァニア州などいくつかの重要な激戦州において数ポイントの差をつけてリードしている。バイデンが勝利すれば、ワーキング・グループに参加している人々の多くが政権入りすることが予想されると、ワーキング・グループに参加している複数の人々が証言している。

世界の各地域をカヴァーする複数のワーキング・グループが作られ、それぞれヴェテランの外交政策専門家たちが主導している。ヨーロッパ・グループ、ニコール。ウィレット、アリソン・ロンバルド、マイケル・バトル率いるアフリカ・グループ、マラ・ラッドマン、ダニエル・べナイム、ダフナ・ランド率いる中東グループ、イーライ・ラトナー(Ely Ratner)とジュン・パク(Jung Pak)率いる東アジアグループ、スモナ・グハとトム・ウエスト率いる南アジアグループ、ダン・エリクソン、ジュアン・ゴンザレス、ジュリサ・レイノソ率いる西半球諸問題グループが存在する。これらについては本誌がバイデン選対に助言を行っている専門家たちの名簿を閲覧し作成した。

バイデン陣営の外交ティームは新たに2つのグループを立ち上げた。一つは感染症拡大対応のもので、もう一つは今年の春にミネアポリスで警察によってジョージ・フロイドが殺害された後に人種間の正義を求める全国的な抗議運動を受けて立ち上げられた。

国際的な取り組みを調整する、新型コロナウイルス対策タスクフォースを担当するワーキング・グループはベス・キャメロン、ブラッド・ベルザック、リンダ・エティムが率いている。キャメロンはバラク・オバマ大統領の下、ホワイトハウスの感染症対策の責任者であった。ベルザックはビジネスコンサルタントで、国家安全保障関連政府機関に勤務の経験を持っている。エティムは米国国際開発庁(USAID)の部長補佐を務めた経験を持つ。

バイデン選対は更に、アメリカの国家安全保障分野における多様性を促進するためのワーキング・グループを立ち上げている。このワーキング・グループを率いるのは、ジーナ・アバクロンビー・ウィンスタンリーとショーン・スカリーだ。アバクロンビー・ウィンスタンリーはアフリカ系アメリカ人外交官で駐マルタ米国大使を務めた。スカリーはLGBTQの権利主導者で、オバマ政権時代に国防総省と運輸省において初の幹部級の職員に任命されたトランスジェンダーの人物である。

このグループの創設は、アメリカの国家安全保障分野における多様性について長年主張がなされてきたことについてのバイデン陣営内にある懸念が反映されている。女性やマイノリティの登用についての諸問題はトランプ政権以前からずっと言われてきたものであるが、トランプ政権になって、トップの補佐官や閣僚たちが白人男性ばかりという同質性が以前よりも高まった。

いくつかの素晴らしい例外を除いで、少数派は民主、共和両党の大統領たちの下で、人口に比べて少ない数しか重要な地位に登用されてこなかったという認識がある。バイデンは、副大統領候補に多くの有能なアフリカ系アメリカ人女性の登用を考慮している。その中には、オバマ大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官と国連大使を務めたスーザン・ライスや大統領選挙民主党予備選挙でバイデンと戦ったカマラ・ハリス連邦上院議員も含まれている。

外部の活動家たちやバイデン支持者たちの中には、2020年の選挙で、国家安全保障分野における女性やマイノリティに対する「ガラスの天井」を打ち壊し、政権内の幹部クラスに登用される女性の数を大幅に増加させる機会になると考えている。バイデンの外交政策ティームにある49のワーキング・グループの共同委員長の半数以上が女性だ。女性と少女に関する問題のワーキング・グループの共同委員長は、カルラ・コッペル、アン・ウィットコウスキー、ジュリア・サントウィッチだ。コッペルはアメリカ合衆国国際開発庁(USAID)の首席戦略担当官を務めた経験を持つ。ウィットコウスキーは政策担当国防次官の下の安定と人道問題担当の国防次官補代理を務めた。サントウィッチはCIAと国務省に勤務した。

バイデンが重視しているのは、トランプ大統領が実施し、議論を巻き起こした政策の一部を変更することである。バイデン陣営のワーキング・グループは、気候変動のスピードを鈍化させること、難民保護、人権保護の強化に重点を置いている。また、国連に関するワーキング・グループもある。その責任者は、管理と改革担当米国連大使を務めたイソベル・コールマン、国連に関する社会運動団体「ベター・ワールド・キャンペーン」の会長ピーター・イエオである。このグループは、アメリカと国連やその他の国際機関との関係を再構築することを目的としちる。

これらのワーキング・グループは、進歩主義派のエリザベス・ウォーレン連邦上院議員とバーニー・サンダース連邦上院議員の支持者たちからの支持を勝ち取るために作られている。両議員はバイデン陣営と協力している。民主党綱領にはサンダース陣営からのインプットも反映されている。進歩主義派が求めていた内容が含まれている。進歩主義派は、無制限の対テロ戦闘の縮小、いわゆる永久戦争(forever wars)の終了、イランをはじめとする各国に対する政治体制転覆(regime change)を行おうとするトランプ政権の試みの放棄、サウジアラビアが主導しているイエメンでの軍事行動に対するアメリカの支援の終了を求めている。

サンダースの首席外交政策顧問マット・ダスは次のように述べている。「素晴らしい結果が出ています。民主党がこれらの疑問に対して大変積極的な方向に進んでいるという事実を

(貼り付け終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 

 トランプ政権のアジア外交政策が混乱している、という内容の記事をご紹介します。私に言わせれば、既得権を持つアジア各国の従米エリートたちが混乱しているという方が正確ではないかと思います。特に、日本のエリート層の混乱ぶりはより大きいものではないかと思います。

 

 トランプの政策はアイソレーショニズム(アメリカ国内問題解決優先主義)であり、世界各国の問題には基本的に関与しないというものです。そして、そうした判断は国益にかなうかどうかで行う、というリアリズムです。それらと反対なのが、グローバリズム、インターヴェンショニズムであり、アイディアリズム(理想主義)です。

 

 アメリカ国内の勢力で分けるならば、リアリズムは民主、共和両党にまたがって存在します(国内問題では意見が異なる場合が多い)。リアリズムではない場合には、共和党はネオコン派、民主党は人道的介入主義派です。ネオコン派の第一世代はもともと民主党支持者たちですから、両者は本家と分家という感じです。

 

 アメリカ国内でトランプを批判しているのは、多くの場合、ネオコン派や人道的介入主義派ということになります。しかし、彼らの批判は今一歩、届きません。なぜなら、ネオコン派はアメリカをアフガン戦争とイラク戦争に引きずり込んだ張本人たちであるということから人々から嫌われてそのために2008年の大統領選挙ではリアリズムを掲げるオバマ大統領が当選しましたし、昨年の選挙では人道的介入主義派のヒラリー・クリントンが落選しました。アメリカ国民はグローバリズム(インターヴェンショニズム)とアイディアリズムを拒否する選択をしたということになります。

 

 ここで私たちは、それでは日本はどの様に行動すべきかということを考える必要があります。アメリカの衰退が既に始まっていますが、まだ時間的に余裕があります。GDPの世界に占める割合で見ると、アメリカは約25%、中国は約14%、日本は約6%であり、アメリカ衰退は確かですが、アメリカはまだまだ世界の超大国です。中国に完全に抜かれた、となるまでは後20年から30年かかるでしょう。中華人民共和国建国100年が、2049年ですから、それまではアメリカの優位は動かないものと考えられます。

 

 その中で、日本の世界における立ち位置と国内政策で何を重点とするかということが重要になります。国内で見れば人口減少と高齢化は現実ですから、新しい箱ものや大規模開発は必要ではなく、余裕のあるコンパクトということが重要になって来るのではないかと思います。そうした中で人間一人あたりにかけるお金を増やしていくということがメインになるべきだと考えます。

 

 外交では、日本は海外での武力行使はできないという立場を堅持し、わざわざ普通の国になる必要もなく、復興の時に最大の力を発揮するという方向に向かうべきです。アメリカと一緒に壊しに行くのではなく、破壊からの再生の際に力を発揮すべきです。自分たちも敗戦時には国土の多くが瓦礫となったがそこから立ち直った、それは自国の力もあったが他国の助けもあった、だから破壊を経験した国として、再建の手助けをするということであれば大いに感謝されるでしょう。そして、アジア地域では地域大国として先頭に立たずに二番手の位置をキープするということになるのだろうと思います。

 

 現在の国土以上を求めず、軍事力を求めず、世界と仲良く交易をして生活していく、これ以上のことは望むべきではないし、これ以上何を望むというのでしょうか。

 

 ですから、現在の世界のヒエラルキーが変化していくであろうここ数十年間で、硬直的にアメリカと一緒に心中していくような方向に進むべきではありません。ですから、中国や韓国とも関係を改善し、ロシアとは改善しつつある関係を後退させないようにするということになるのだろうと思います。

 

 変化に合わせて日本も変わっていかなければならない、と思います。

 

(貼りつけはじめ)

 

トランプのアジア政策はこれまで以上に混乱している(Trump’s Asia Policy Is More Confused Than Ever

 

コリン・ウィレット筆

2017年6月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/06/12/trumps-asia-policy-is-more-confused-than-ever/?utm_content=buffer3b499&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

6月3日、ジェイムズ・マティス国防長官は、アジアの同盟諸国やパートナー国に対して、アメリカはこれまでの70年間行ってきたようにこれからも地域を安定させる役割を果たすということを再認識させるために大いなる努力を行った。マティスはアジアの安全と繁栄にアメリカがこれからも関与し続けると雄弁に述べた。また、第二次世界大戦以降のアジアの成功の基盤となってきたルールに基づいた秩序を守るためにアジア・太平洋地域各国と協力するための方法を見つける必要があるとも述べた。残念なことは、マティスの主張が説得力を持たないことで、それは、マティスが代表しているアメリカの政権がこの秩序を損なおうとしているからだ。

 

マティスの演説の数日前、大統領国家安全保障問題担当補佐官H・R・マクマスターと国家経済会議議長ゲイリー・コーンは、『ウォールストリート・ジャーナル』紙に論説を発表し、その中で、マティスが守りたいとしている「世界共同体」を明確に否定した。この論説は、これまでの考えを否定し、「独立独歩」政策を宣言したものとなった。この政策では、諸国家はむき出しの国家の力に基づいて、有利な立場と利益を得られるように争うようになり、同盟諸国やパートナー国を混乱させるだけでなく、アメリカの国家安全保障を損なってしまう。

 

この論説が発表される2日前、アメリカ海軍は南シナ海で航行の自由を守るための作戦訓練を実施した。これは、アメリカが、国際法が許す場所であればどこでも飛行し、航行する権利を守るという決意を示すものだ。このような行動の法的根拠は何か?国際社会で同意した国連海洋法条約(しかし、アメリカは批准していない)がそれだ。国連海洋上条約では、全ての国家が国際海洋上における権利と義務を保有しているとしている。国利欲に関係なく、一連のルールを遵守することは全ての国々の利益となるとしている。世界各国が相互に合意した国際ルールには不便であっても意味があるということを受け入れないということになるならば、アメリカ海軍は航行の権利を持つと主張することは、中国政府はアメリカ海軍の航行を阻害する権利を持つという主張となんら変わらないことになってしまう。マクマスターとコーンはこのようは合意や同意に疑問を呈している。

 

マティスが演説した同じ日、国連安全保障理事会は今年に入って9回目のミサイル発射実験を行った北朝鮮に対する政策を拡大することを決定した。どうしてこのような行動を取ることが可能になるのか?それは、「北朝鮮の核開発とミサイル開発プログラムは世界のルール、規範、条約に違反している」という国連という国際共同体による同意があるからだ。各国政府が、それがたとえ実行困難であり苦痛を伴うものであっても国際条約は彼らを縛り、守る必要があるのだという考えを受け入れないとなると、国連による制裁は、各国が意図的に利用しもしくは無視することができる道具となってしまう。

 

航行の自由や制裁だけでアジアの緊急の安全保障に関する問題を解決することはできない。しかし、これら2つは重要な道具である。国際的な連合が支援する場合、これら2つは国際的な規範を破る国々に対する圧力をかけるための重要な道具となる。

 

アジア各国はアメリカの複雑なシグナルから何を見出すであろうか?マクマスターとコーンが述べたように、アメリカは自国の直接的な利益が危機にさらされる場合にのみ国際社会と協力するのだろうか?もしそうであるならば、アメリカはアジア各国がアメリカに協力する理由を与えられないということになる。

 

北朝鮮、公海上の航行の自由、軍縮といった諸問題は、アジア諸国の多くにとって、現実的な生活にとって、さほど重要な意味を持たないものとなっている。これらの諸問題への対処のために協力することはコストがかかり、技術的に難しいものであり、時間だけを浪費することになる。しかし、ほとんどの国々が努力をするだろう。それは各国が基盤となっている原理に価値を見出しているからだ。その原理とは、各国の主権と諸権利を守っている国際システムは、自国の利益が危機にさらされていない場合でも各国が責任を果たすことも求めているというものだ。

 

アジアにおける私たちの同盟関係とパートナー関係は一つの考えに基づいて構築されてきた。それは第二次世界大戦後の法と規範のシステムは私たち全員に利益を与え、このシステムを防御するために協力することは、たとえそれが困難であっても、投資をするに値するものだ、というものだ。しかし、アメリカがそのような行動をとらないとなると、他国がそのような行動を取る理由があるだろうか?マティス国防長官はこのことを明確に理解している。しかし、彼が代表しているトランプ政権がこのことに同意しているのかどうかは定かではない。そして、アメリカの友人やパートナーである各国はこの乖離に鋭く気付いていることは疑いのないところだ。

 

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 古村治彦です。

 

 ドナルド・トランプ次期大統領についてのヘンリー・キッシンジャーの評価についての記事をご紹介します。トランプについてはどのような外交を展開するのか未知数であるというのが一般的な評価で、それが不安をもたらしています。

 


 選挙期間中にイラク戦争には反対だったと語り、ジョージ・W・ブッシュ前大統領を批判し、バラク・オバマ大統領とヒラリー・クリントン前国務長官がIS(イスラム国)を生み出したと斬り捨てています。自分はISを退治することができるが、それは自分を支持する米軍の将軍たちの献策を受け入れるからだとも発言していますが、米軍を中東に派遣する感じはありません。ロシアと関係を改善させたいとし、中国は不公正な貿易を行っていると、1980年代に日本に向けたような批判を行い、台湾を重視するかのような姿勢を取っています。

 

 トランプはめちゃくちゃなことを言っているように見えます。ISをやっつけると言いながら、米軍を出さないということは矛盾しているように見えます。台湾を重視するというのは、中国との軋轢を生み出し、現状では大事にされる台湾も困った立場に追い込まれてしまうことになります。

 

 ヘンリー・キッシンジャーはテレビ番組に出演し、トランプはこれまでの大統領とは違うので、違うアプローチから何か素晴らしいものが出てくる可能性があると発言しました。あくまで、可能性であって、出てこないこともあるということを言いたいようですが、これまでとは違った大統領であり、外交政策も違ったものとなり、それで何か素晴らしいものが生まれて、歴史に名前を残す大統領になるかもしれない、というのがキッシンジャーの評価です。

 

 キッシンジャーは国際関係の学問的潮流で言えば、リアリズム、リアリストに属する人です。アメリカの国益を第一に、理想を追わず、敵とでも手を結ぶということを実践してきた人です。そして、現在は、中国という新興大国を敵にすることなく、G2体制という米中による国際管理体制構築を主張しています。

 

 トランプは国際問題解決優先主義(アイソレーショニズム)であり、アメリカの理想を広めることや人道的な理由から海外に軍隊に出すようなことは反対しています。こうした点では、ビル・クリントン政権、ジョージ・W・ブッシュ政権、バラク・オバマ政権と、濃淡の差はありますが、理想主義に分類される人道的介入主義とネオコンサヴァティヴィズムの人々が外交政策を担当した政権が続いた時期とは違う外交が展開されることになるでしょう。キッシンジャーもこの点を言っているものと思われます。

 

 アメリカの国内問題解決優先主義とは具体的には、すっかりくたびれてしまった社会資本の改善があると思います。アメリカに行って、アメリカの社会資本、インフラは日本よりも劣っているなと思われた人も多くいらっしゃると思います。高速道路はただだけど、路面がデコボコだったとか、都市部でもいきなり停電が起きて何時間も復旧しないとかそういう経験をした方も多いと思います。トランプはこの社会資本の改善や修繕も公約に掲げています。しかし、そうなると、彼の減税政策と矛盾してしまうことになります。

 

 そこで、トランプとしては民間活力活用(民活、Public Private Partnership、PPP)を利用するということになるでしょう。しかし、アメリカ国内だけではどうしようもありません。そこで外国からの資本投資を受け入れたいという考えも持っているでしょう。台湾に肩入れをして、中国を刺激しているのは、台湾と中国を競わせて、アメリカに対する資本投資を刺激しているようにも見えます。私たちの日常生活でも、何かを買う場合には、どこの店が安いかを探したり、複数の店に行って、「あそこはいくらだったからこれくらいに負けて欲しい」などと交渉したりということはやることです。

 

 ヘンリー・キッシンジャーはトランプ当選以降、中国とロシアを訪問し、習近平国家主席とウラジミール・プーティン大統領と会談しています。彼が米中露の関係を保つスタビライザーの役割を果たしています。2020年までにトランプがキッシンジャーという安定装置を使いながら、どのように外交政策を展開していくのか、注目です。

 

(貼り付けはじめ)

 

キッシンジャー:「トランプの外交政策のアプローチから“何か素晴らしい”ものが出てくる可能性がある」(Kissinger: 'Something Remarkable' Could Emerge From Trump's Approach to Foreign Policy

 

キャシー・バーク筆

2016年12月18日

『ニューズマックス』誌

http://www.newsmax.com/Newsfront/henry-kissinger-trump-opportunity-stay-focused/2016/12/18/id/764532/

 

元国務長官で人々の尊敬を集める共和党系の政治学者ヘンリー・キッシンジャーは、ドナルド・トランプ次期大統領の外交政策から「何か素晴らしい」ものが出てくる可能性があり、トランプは「熟慮をした大統領」として歴史に名前を残す機会を持つであろうと述べた。

 

日曜日に放送されたテレビ番組「フェイス・ザ・ネイション」のインタヴューの中で、キッシンジャーは「トランプに対して大きな信頼を持っている。彼はアメリカの状況を分析し、戦略を作り、共和党指導部に打ち勝とうとしている」と述べた。

 

キッシンジャーは次のように述べた。「トランプが大統領選挙候補者になるまで、彼を大統領選挙候補者として考えたことはなかった。彼が大統領選挙候補者として出てきたとき、私はこれを過渡的な現象だと考えた。しかし、今はトランプがこれまで培った技能を国際的な状況に応用することが彼の挑戦なのだと理解している」。

 

キッシンジャーは、「外交・国際関係分野において、トランプは諸外国がこれまでみたことがなかった現象なのだ」と語った。

 

キッシンジャーは、「トランプが大統領に当選したことは諸外国にとってショックな経験である。同時に、トランプが歴史上に思慮深い大統領として名前を残す機会と可能性があると私は考えている」とも語った。

 

キッシンジャーは更に次のように述べた。「トランプはこれまでの大統領が発してこなかった疑問を呈する大統領になる。その質問は素晴らしい何かになるであろうと思われるし、そうなれば新しい大統領の姿を見せることになるだろう。私は必ずそうなるとは言わない。私は彼にはそうなる大いなる機会があると言いたい」。

 

キッシンジャーはまたトランプに対する助言として次のように述べた。「集中して、自分が達成しなければならない基本的なことを明確にせよ」。

 

「最も大変なことは日常の諸問題と根本的な諸問題を区別することだ。根本的な諸問題は長期にわたって影響を残すものだ。また、些細な諸問題で官僚たちとの戦いで消耗しないようにすることだ。」

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22








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 古村治彦です。

 

 2016年5月18日、共和党の米大統領選挙候補者(nominee、ノミニー)に決まっているドナルド・トランプが、ニクソン大統領の国家安全保障問題担当補佐官、フォード大統領の国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャー(92歳!)の家で会談を行ったそうです。18日の午後3時にトランプがキッシンジャーの邸宅を訪問し、1時間にわたり、膝を突き合わせて会談したそうです。それまでは何度か電話で会話をしたそうですが、今回、トランプのたっての希望で会談が実現したということです。

 

 一つ目の記事はアメリカのテレビ局NBCのサイトにアップされたもので、トランプとキッシンジャーの会談が行われた事実を簡潔に報道している内容です。

 

 この記事で重要なのは、三段落目で、トランプが北朝鮮の金正恩朝鮮労働党最高委員長と核拡散防止のために会談することには「やぶさかではない」と発言したこと(五月一七日火曜日、ロイター通信とのインタヴューで)が取り上げられています。「このようなトップ会談が行われることになれば、アメリカの対北朝鮮政策の大きな変更を意味することになるだろう」と記事で書かれています。トランプの「奇抜な」発言(メキシコ人は強姦をする、メキシコ国境の壁を作れなどなど)は数多くありますが、なぜこの発言が行われた後にキッシンジャーと会談をしたのかということを考えねばなりません。

 

 二つ目の記事はインターネットの独立系サイトの記事です。この記事で、キッシンジャーについては、ヒラリー・クリントンの師匠(mentor、メンター)で、国際関係論におけるリアリズムの大家であって、同時にヴェトナム戦争拡大に関与した「悪者」だと書かれています。そして、現在では中国の専門家で、米中国交正常化以降、密接につながっていたことが書かれています。

 

 北朝鮮は中国にとっては複雑な存在です。朝鮮戦争で援朝義勇軍を送って以降、知野同盟関係を結んできた国ですが、東アジアの平和と安定を望む現在の中国にとって、不確定要素となる北朝鮮の存在は厄介です。潰れないために支援をしなくてはいけませんが、自分たちの言うことを聞かない厄介者という存在です。北朝鮮が周りを悩ませている(bothering、ボザリング)のは、核兵器開発を行っているからです。そして、この核兵器開発の原点は、「自国の存在(と金日成の家系)が外国、特にアメリカから攻撃されてしまう」という恐怖感と、「核兵器があれば抑止力になるし、アメリカとの交渉材料になる」という計算です。北朝鮮は激しい言葉遣いの中にも、「アメリカと交渉して、国家の生存を認めてもらって、支援も受けたい」という意思を明確に表明しています(静岡県立大学の伊豆見元[いずみはじめ]教授の著作等をご参照ください)。

 

 私は、オバマ大統領の外交姿勢と考えからすれば、キューバとイランとの関係正常化を行ったのであれば、次は北朝鮮だろうと考えています。そして、ホワイトハウスの外交担当の人事からその兆候が見られるということを文章にしました。

 

※「副島隆彦の学問道場」内「今日のぼやき・会員ページ」(「副島隆彦の学問道場」の会員の方がアクセスできるページ)

「「1513」 最終第4クォーターに大攻勢をかける意気込みのバラク・オバマ米大統領 古村治彦・記 2015年2月24日」

http://www.snsi.jp/tops/boyaki/1804

 

 トランプとバラク・オバマ大統領の外交路線はよく似ています。トランプはアイソレーショニズム(Isolationism、国内問題解決優先主義)、アメリカ・ファースト(America First、アメリカ国内のことをまず最優先に考えよう、アメリカが世界一という意味ではない)の観点から、アメリカの積極的な海外への介入に反対しています。一方、オバマ大統領は、リアリズムの観点から、やはりアメリカの海外介入には消極的です。ですから、2人が考えることは同じではないかと私は考えます。そして、今回のトランプの「金正恩と話す」発言です。

 

 ちなみに、中国中央電子台のツイッターによると、2016年5月18日、中国外交部は、トランプが金正恩と話しても良いという意向を持っていることに関して、これを支持すると表明しました。(https://twitter.com/cctvnews/status/732907099919785984

 

 こうしたことから、トランプはアメリカにおける中国の代理人であるキッシンジャーと北朝鮮問題について話したということが考えられます。トランプはキッシンジャーから中国の意向を聞き、キッシンジャーはトランプから外交政策についての考え方を聞き出し、助言を与えたものと思われます。そして、トランプから聴取したことを中国に伝えるのだろうと思われます。

 

 ヒラリーは金正恩と話すなんてことは考えないでしょう。圧力をかけ続けて、最終的には米軍の力で北朝鮮の人々を救いだしたいと思っているでしょう。しかし、そうなれば、北朝鮮と領土を接している中国にも大きな影響が出ますし、東アジアの情勢も不安定となるでしょう。だから、中国としては、「意外に話せる」トランプに好感を持っていると思われます。

 

 トランプは先週、こちらも共和党系の外交分野の大物、ジェイムズ・ベイカーと会談を持ちました。ベイカーはロナルド・レーガン大統領時代の財務長官、次のジョージ・HW・ブッシュ大統領(父ブッシュ)政権では国務長官を務めました。ベイカーもキッシンジャーと同じくリアリズムの系統に属しています。ベイカーは、先週の木曜日に、連邦上院の委員会に証人として呼ばれました。この時に一緒だったのは、民主党系、オバマ大統領の国家安全保障問題担当補佐官だったトム・ドニロンです。ベイカーは、トランプの名前に直接言及しない形で、「NATOがない世界、より多くの国々が核兵器を持つ世界は、現在よりもより安定しない世界になるだろう」と述べました。トランプは、NATOが時代遅れの存在である、日本や韓国が自国防衛のために核兵器を持つことを容認する、と発言しています。

 

 ベイカーは議会に出席した後、トランプと会談を持ったということです。会談内容については分かっていません。ベイカーは「核拡散に対してアメリカはその防止のために努力してきた。その戦いを止めるべきではない」と議会証言の中で述べました。

 

 私は、トランプがベイカーの発言と会談でのアドヴァイスを受けて、金正恩と話しても良いという発言をして、それにキッシンジャー(と中国)が反応したと考えます。ベイカーが国務長官として仕えたジョージ・HW・ブッシュ大統領は2期目を目指す選挙で、ビル・クリントンに敗れたために、「現職大統領なのに、人気が落ちて選挙に負けた」という負のイメージがついてしまいました。興味深いことに、バラク・オバマ大統領は、この所属政党の違う人気のない大統領であった父ブッシュの外交政策を賞賛し続けています(裏を返せば、父ブッシュを破ったクリントン政権の外交は賞賛していません)。父ブッシュの外交政策を担ったのがジェイムズ・ベイカーということになります。

 

 トランプは本選挙に向けて、ペースとイメージを変えようとしています。変な譬えかもしれませんが、暴れん坊の不良学生が態度を改めると、不良仲間からは嫌われるでしょうが、大方の人たちは好感を持ちます。トランプもそのような感じになっている、不良学生がきちんとしようとして、尊敬すべき先生たちの話を聞きに行っているという動きになっています。

 

 このしたたかさと柔軟性と頭の良さを見落としていたことを改めて反省したいと思います。

 

(記事転載貼り付けはじめ)

 

●「Trump and Kissinger Hold Foreign Policy Huddle in New York

 

NBC News  2016/05/18

by KATY TUR and ALI VITALI

http://www.nbcnews.com/politics/2016-election/trump-kissinger-hold-foreign-policy-huddle-new-york-n576336

 

Donald Trump met with Secretary of State Henry Kissinger in New York on Wednesday, the latest in his efforts to strengthen his foreign policy bona fides.

 

Trump's motorcade rolled into Kissinger's home around 3 p.m. where the low-profile meeting that lasted about one hour. Trump aides say the presumptive GOP presidential nominee and 92-year-old diplomat have spoken over the phone multiple times, and Trump requested the face-to-face.

 

The gathering follows Trump telling Reuters he "would have no problem" speaking to North Korean leader Kim Jong Un to prevent nuclear proliferation. Such a conversation would mark a major shift in US policy towards Pyongyang.

 

Trump met with another well-known GOP diplomat, James Baker, last week.

 

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●「Trump Turns to Clinton Mentor for Foreign Policy Advice

 

Independent Voters News

May 18, 2016 By Andrew Gripp in Campaigns

http://ivn.us/2016/05/18/henry-kissinger-trump-clinton/

 

On Wednesday afternoon, presumptive GOP nominee Donald Trump met with Henry Kissinger, the former secretary of state and national security advisor to presidents Nixon and Ford, to discuss foreign policy.

 

The meeting comes after a series of controversial interviews that Trump had on the subject of foreign policy, including with the Washington Post and The New York Times in March. In an interview with Reuters published on May 17, Trump raised eyebrows with his comments about his willingness to talk to North Korea dictator Kim Jong Un and his desire to renegotiate the terms of the Paris accord on climate change.

 

By meeting with Kissinger, Trump hopes to bolster his foreign policy credibility, which has been impugned in recent months, especially by fellow Republicans. In early March, more than 100 Republican national security experts published an open letter stating their opposition to Trump’s candidacy based on his a list of a number of objections.

 

More recently, the leader of Trump’s foreign policy committee, Republican Sen. Jeff Sessions, told ABC’s Martha Raddatz that Trump is “going to need to learn” a lot in the coming months, and former defense secretary Robert Gates criticized Trump for several specific statements Trump has made, including admiring remarks about Vladimir Putin, unclear details about how to defeat ISIS, and his suggestion that he would initiate a “trade war” with China to punish the country for unfair economic and business practices.

 

By meeting with Kissinger, Trump hopes to bolster his foreign policy credibility, which has been impugned in recent months, especially by fellow Republicans.

China was likely a discussion topic during Trump’s visit with Kissinger. Kissinger is an expert on the country: he is credited with helping open diplomatic relations between the U.S. and China under Nixon and has since written a lengthy tome about the country.

 

In many ways, Trump and Kissinger share a similar outlook on foreign affairs. Both largely subscribe to the “realist school” of international relations, which sees states as the central actors in the world. Under this view, states should advance their interests by being prudent in their use of force and limiting their commitments to international organizations and agreements that can constrain their behavior.

 

Based on his remarks in recent months, Trump appears very much to be a realist. He has criticized the U.S.’s use of force in Iraq and Libya to depose dictators, claiming such idealistic adventures in bringing democracy to the Middle East have facilitated the rise of radical Islam, especially ISIS.

 

Trump has also been critical of the U.S.’s adoption of NAFTA, crediting it with hurting America’s manufacturing base, and he has argued that the U.S. is being damaged by its outsized bankrolling of NATO, the Cold War-era security alliance that Trump has called “obsolete.”

 

At 92, Kissinger is still very much respected among foreign policy realists in both parties. Indeed, Hillary Clinton sought Kissinger’s counsel throughout her political career, especially during her tenure as secretary of state, and has referred to him as a friend.”

 

But her friendship with Kissinger became a major point of contention between Clinton and Sanders during their PBS debate in Milwaukee in February. There, Sanders called Kissinger “one of the most destructive secretaries of state in the modern history of this country” and proudly declared, “Henry Kissinger is not my friend.”

 

Kissinger has long been criticized on the left for his political record, including his efforts to prolong and broaden the Vietnam War, overthrow foreign, democratically-elected leaders, and support despots seen as important strategic partners. Kissinger’s actions have been the subject of several books, including The Trial of Henry Kissinger by Christopher Hitchens, Kissinger’s Shadow by Greg Grandin, and The Blood Telegram by Gary Bass.

 

Among the foreign policy actions criticized by these authors relates to his role in the Vietnam War: the cynical subversion of the 1968 Paris peace negotiations to help elect Nixon as president, increased bombing in Southeast Asia, and the expansion of the conflict into Laos and Cambodia.

 

Critics also point to his support for the coup against the president of Chile, Salvador Allende, the provision of military and financial aid to Turkey in its invasions of Cyprus, and for complicity in genocides in Bangladesh and East Timor in order to appease authoritarian allies in Pakistan and Indonesia who were seen as indispensable partners in the global fight against communism.

 

It is because of Kissinger’s controversial legacy that he is described in some circles as an “elder statesman” and awarded the highest civilian honors by the Obama administration, while in others he is deemed “a war criminal” worthy of public trial.

 

At this point, it is hard to estimate what the outcome of Trump’s meeting with Kissinger, beyond a symbolic boost, will be. Is Trump merely going through the motions in an effort to ingratiate himself with the party establishment and with Washington elites, or will he further refine his foreign policy views? Stay tuned.

 

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●「Trump meets with James Baker in DC

 

The Hill

By Ben Kamisar  May 12, 2016, 05:42 pm

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/279760-trump-meets-with-james-baker-in-dc

 

Donald Trump met with former Secretary of State James Baker during his Thursday swing through Washington as the presumptive GOP presidential nominee seeks to unite the Republican Party behind him.

 

The pair met during Trump's visit to Jones Day, the Washington law firm where many members of his legal team practice, NBC News reported.

 

The meeting came hours after Baker criticized some of Trump's key foreign policy proposals during a Thursday Senate hearing, including his call to roll back American involvement in the North Atlantic Treaty Organization (NATO).

 

The criticism came after prodding by Sen. Marco Rubio (R-Fla.), who battled with Trump during his own presidential run this cycle.

 

Rubio asked Baker to "describe a world in which NATO lost its way or perhaps disintegrated," parroting Trump's criticism.

 

"We've got a lot of problems today but you'd have a hell of a lot more if that was the case," Baker responded. "NATO has been the foundation and the base for peace and stability in Europe and on the Eurasian Continent."

 

Rubio also brought up Trump’s call to let Japan and South Korea obtain nuclear weapons, without explicitly mentioning the mogul.

 

"The more countries that acquire nuclear weapons, the more instability there is going to be in the world," Baker said.

 

"Ever since the end of World War II, America has led the fight on against the proliferation of nuclear weapons, weapons that can kill millions and millions of people. We ought not to abandon that fight." 

 

Baker's meeting with Trump came after a series of meetings with major party leaders, including Speaker Paul Ryan and House leadership, as well as Senate leadership.

 

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●「U.S. foreign policy veteran warns Trump would make world less stable

 

Politics | Thu May 12, 2016 6:15pm EDT Related: ELECTION 2016, POLITICS

WASHINGTON | BY PATRICIA ZENGERLE

http://www.reuters.com/article/us-usa-election-trump-foreign-idUSKCN0Y32MP

 

Republican U.S. presidential candidate Donald Trump is surrounded by family members as he speaks during a campaign victory party after rival candidate Senator Ted Cruz dropped out of the race for the Republican presidential nomination following the results of the Indiana state primary, at Trump Tower in Manhattan, New York, U.S., May 3, 2016. REUTERS/Lucas Jackson

Republican U.S. presidential candidate Donald Trump is surrounded by family members as he speaks during a campaign victory party after rival candidate Senator Ted Cruz dropped out of the race for the Republican presidential nomination following the results of the Indiana...

 

Donald Trump's foreign policy proposals would make the world a less stable place, former Secretary of State James Baker told a U.S. Senate hearing on Thursday as the Republican presidential candidate met elsewhere with party congressional leaders.

 

Under questioning from Republican Senator Marco Rubio, a former Trump rival in the presidential race, Baker said the world "would be far less stable" with a weaker NATO or if more countries had nuclear weapons as Trump has proposed.

 

"We've a got a lot of problems today, but we'd have a hell of a lot more if that were the case," Baker told a Senate Foreign Relations Committee hearing, adding that U.S. commitments around the world "promote U.S. security."

 

Trump met with Baker on Thursday at Trump's request, said a Baker spokesman, who declined further comment.

 

The hearing, on "America's Role in the World," was called by the committee's Republican chairman, Senator Bob Corker. Corker praised a foreign policy speech Trump gave in Washington last month. Some U.S. allies worried after Trump's remarks that his invocation of an "America first" agenda is a threat to retreat from the world.

 

Without naming Trump, Rubio referred to the businessman-turned-candidate's suggestions that the United States should rethink the North Atlantic Treaty Organization (NATO) and that Japan and South Korea should consider getting nuclear weapons to defend themselves.

 

"Some have suggested 'why don't you just let Japan and South Korea get their own nuclear weapons and let them defend themselves?'" Rubio asked.

 

"The more countries that acquire nuclear weapons, the more instability there is going to be in the world, in my opinion," Baker said.

 

Tom Donilon, Democratic President Barack Obama's former national security adviser, called Rubio's question an "important thought experiment," as he backed Baker's comments about the importance of NATO.

 

"It's not just a thought experiment, it's actually been proposed," Rubio said.

 

As the hearing took place, Trump was on Capitol Hill meeting with Republican congressional leaders on how to heal divisions within the party, including those between establishment figures like Baker and the insurgent candidate.

 

Baker, a Republican who was secretary of state under President George Bush and Treasury secretary under President Ronald Reagan, testified alongside Donilon.

 

Former Presidents Bush and George W. Bush do not plan to endorse Trump, or any candidate, in this year's White House race.

 

(記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)



 

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 古村治彦です。

 

 今回は、アメリカの外交政策雑誌『フォーリン・ポリシー』誌に掲載された、ハーヴァード大学教授スティーヴン・ウォルトの論稿を皆様にご紹介したいと思います。

 

 ウォルトは、アメリカの外交政策の潮流、国際関係論の学派で言えば、リアリズムという流れに属します。リアリズムと対極にあるのがリベラリズム(アイディアリズム)というものです。リアリズムは、自国の国益(国家の生存)を最優先にするが、決して無理なことをしないという考えです。

 

 ウォルトは、アメリカが行ってきた、理想主義的(アイディアリスティック)な外交政策、民主政治体制の拡散、特に軍事介入を行っての政権転覆と民主化に反対しています。今回の論稿では、その理由などについて詳しく分析しています。

 

 ウォルトはオバマ大統領の外交政策に批判的ですが、オバマ自身はリアリストであり、そのような外交政策を展開しました。そして、ウォルトやオバマの考えを読むと、ドナルド・トランプの考えに通じるものがあります。彼らがアメリカ国民から支持されるのは、「アメリカが世界の警察官やら仲裁者、ブローカーをやるのは疲れた。アメリカが外ばかり向いているうちに、国内が疲弊してきた。もうそういう仕事は止めて家に帰ろう」と人々が考えているからだと私は考えています。

 

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アメリカが外国で民主政治体制確立の促進することがうまくいかないのはどうしてなのだろうか?(Why Is America So Bad at Promoting Democracy in Other Countries?

 

アフガニスタン、イエメン、イランのような国々において、短時間で、お金のかからない、もしくは軍事力を使った方法で、平和をもたらす方法など存在しない。今こそ、私たちはこれまでのやり方を変える時だ。それにはまず国内から始めることだ。

 

スティーヴン・M・ウォルト(Stephen M. Walt)筆

『フォーリン・ポリシー』誌

2016年4月25日

http://foreignpolicy.com/2016/04/25/why-is-america-so-bad-at-promoting-democracy-in-other-countries/?utm_content=buffer8e7d6&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

 あなたが熱心なウィルソン主義者であるなら、これまでの25年間は失望の連続だったはずだ。自由主義的民主政治体制こそがグローバル化する(均一化する)世界における唯一の政治体制として生き残ると考えられてきた。そして、これまでの三つのアメリカの政権はウィルソン主義に基づいた理想を掲げ、民主政治体制の拡散をアメリカの外交政策の根幹に据えてきた。ビル・クリントンは、それを「関与と拡大の国家安全保障戦略(National Security Strategy of Engagement and Enlargement)」と呼んだ。ジョージ・W・ブッシュは第二期目の大統領就任演説の中で、「自由に関するアジェンダ(Freedom Agenda)」と呼び、コンドリーザ・ライスのような政権幹部たちもこの言葉を繰り返し使った。バラク・オバマは、前任者たちに比べてウィルソン主義に対する情熱に欠けるところがある。しかし、オバマは、多くの熱心な自由主義的国際主義者(liberal internationalists)を政権に迎え入れた。そして、「自分たちの指導者を選ぶ権利以上に根本的に重要な権利は存在しない」と高らかに宣言した。オバマは、エジプト、リビア、イエメンなどの国々の民主体制への移行(democratic transition)を公的に支持してきた。

 

 もうすぐ出版となる、ラリー・ダイアモンドとマーク・プラットナーが編集を行った編著書で書かれているように、残念なことであるが、民主政治体制の拡散と促進に向けた努力は実を結んでいない。最近、ミャンマーでは軍事政権による支配が終了した。このようなサクセスストーリーもあるが、それと同じくらい、失敗もあった。その具体例がリビア、イエメン、イラクである。また、民主政治体制の後退がトルコ、ハンガリー、ロシア、ポーランドなどで起きている。また、民主政治体制の機能不全がヨーロッパ連合(EU)とアメリカで起きている。ダイアモンドが編著書の中の自身の記事の中で指摘しているように、過去30年で、世界の民主国家の4分の1近くが崩壊、もしくは後退している。

 

 読者の中には、私のようなリアリストは、ある国の国家体制のタイプや国内の政治機構については関心を持たず、民主政治体制の拡散という目標について冷淡だと考えている人たちもいらっしゃるだろう。しかし、それは誤解だ。リアリストは国家体制のタイプや国内の政治機構について関心を持っている。リアリストの大物ケネス・ウォルツは民主的な体制の違いを比較した本を書いているほどだ。リアリストたちは、非民主的な政権を民主的な政権と同じような方向に動かすには、組織化された圧力などよりも、相対的な国力と安全保障の必要性の方がより重要だと考えているのだ。

 

 従って、リアリストやその他の学派の人々は民主政治体制が良いものだと考えてはいるが、同時に、民主体制への意向に伴う様々な危険について危惧するのだ。安定した民主国家は一般的に見て、より長期にわたる経済成長を記録しているし、基本的な人権を守るという点でもより良い実績を残している。民主政治体制にも欠点はある。しかし、民主政体は、飢饉や準備不足の社会工学(social engineering)的な試みで、人を死なせたことは他の体制に比べて少ない。その理由は、民主政治体制の下では、修正するための情報にアクセスすることが出来るし、政治家や官僚たちも説明責任を果たさねばならないようになっているからだ。民主国家はその他の政治体制国家と戦争を始める傾向にあるが、民主国家同士は戦わない傾向にある。これにはかなり信憑性の高い証拠が揃っている。従って、勢力均衡という点から考えても、世界における民主国家の数が増加することは人類のほとんどにとってより良いことだと私も考えている。

 

 しかし、ここでどうしても1つの疑問が生じる。それは「民主化という目標をどのように達成したらよいのか?」というものだ。

 

 乱暴な言い方になるかもしれないが、私たちは何が全く機能しないか、そしてそれがどうしてなのかについての知識を持っている。民主化にとって役に立たないのは、軍事介入だ。これは別名で「外国による押しつけの体制変更」と呼ばれる。アメリカが軍隊を送り、独裁者と周辺人物たちを追い払い、新しい憲法を作り、選挙を2、3回やれば安定した民主国家が出来上がる、一丁上がり!という考えは、その実現性が疑わしい。この考えがうまくいかないことを示す証拠が山ほどあるのに、多くの賢い人々はこの考えに固執する。

 

 民主政治体制を拡散するために軍事力を使うと失敗するということにはいくつかの理由が存在する。第一に、自由な秩序が定着するには憲法や選挙だけではなく、もっと多くの要素が必要となる。効果的な法体系、多元主義、まともな収入と教育、ある選挙で負けた政党も将来はより良い仕事をするチャンスは持っているという人々の確信、現在の民主的な政治システム内で活動をし続けるという誘因が必要なのだ。自由な秩序が機能し、維持されるためには多くの社会的な要因を適切に配置する必要がある。西洋世界において、機能的な民主政治体制が構築されるまでに数世紀の時間を要した。そして、そのプロセスは論争的で、時に暴力にまで発展することもあった。アメリカの軍事力によって手早くそして安価に海外に民主政治体制を輸出できると考えることは、思い上がりも甚だしいことなのである。私たちは失敗した事例をきちんと思い出さねばならない。

 

 第二に、民主政体を拡散するために軍事力を使うと常に暴力的な抵抗を引き起こしてしまう。ナショナリズムなど個々の国々独自のアイデンティティが現在、世界中で力を保っている。そして、軍備を固めた外国の占領者たちからの命令に従うことを嫌う人々は数多くいる。更に言えば、サダム・フセイン失脚後のスンニ派のように、民主政体への移行によって権力、富、地位を失った人々は、民主化に反対するために武器を取って立ちあがるようになってしまう。これは避けがたいことだ。また、ある国の民主化によって自国の国益が影響を受ける近隣諸国は、民主化を阻止、もしくは退行させようとする。こうした動きは民主政体の確立の戦いにおいてどうしても起きる最後の抵抗である。それは、暴力というものは、機能する政治機構を作り上げ、党派の違いを乗り越えて合意を形成し、寛容の精神を促進し、より活発なそして生産的な経済を生み出す能力を持つ人たちよりも、暴力事態をうまく使える人たちによって効果的に行使されてしまうものだからだ。

 

 もっと悪いことに、外国からの占領者たちは地元の人々に中から適材を選び出すための知識を十分に持っていることはほぼないと言ってよい。また、新たに樹立された政府に対して気前のよい、善意の援助をしても、多くの場合、腐敗を生み出し、その国の政治を予測不可能なものとしてしまう。外国に民主政治体制を樹立することは、巨大な社会工学的プロジェクトなのであり、大国がそれを効果的に行うように期待することは、言ってみれば、地震が頻発する地域に、設計図がない状況で、原子力発電所を作ってくれと依頼するようなものである。民主政治体制の場合も、原子力発電所の場合も、どちらも予想されるのはメルトダウンである。

 

 重要なことは、外国勢力がある国の民主政治体制への移行を行うに当たって、手早くできて、安くあがって、確実に結果を出せる、損な方法は存在しないのだ。特に問題のある国が民主政体の経験をほんの少ししか持ってない、もしくは全く持っていない、そして社会各層の分裂が酷い時には、民主化を簡単に行うための方法は存在しない。

 

 民主政治体制の拡散が望ましいものであるのなら、軍事力はそのための正しい道具とはならない。それでは、正しい道具となるのは何であろうか?私は、2つの大きなアプローチを提案したい。

 

 私たちができることの第一は外交だ。民主政治体制を求める、純粋な、重要な、そして真面目な運動が存在する時、外部の有力なアクターは、前身的な民主政体への移行を促進するためにほんの少しの影響力を行使するだけで良い。「ヴェルヴェット革命」が起きた時の東欧や現在のミャンマーがこの事例に当てはまる。アメリカは、韓国やフィリピンにおいて、首尾一貫した、そして粘り強い、非軍事的な方法(経済制裁など)を用いて、これらの国々の民主化を成功させた。これらの事例においては、民主化運動は長い年月をかけて形成され、力を付けていくのに合わせて、広範な社会層からの支持を得るようになっていった。外交を主とすることでは、軍事侵攻が持つ「ショックと恐怖」のような派手さと興奮は起きないであろう。しかし、かかるお金はより少なく、しかも成功の確率はだいぶ上がるのは間違いないのだ。

 

 私たちにできる第二のことは、より良いお手本となることだ。アメリカの民主政治体制の理想は、アメリカがより公正で、繁栄し、活力のある、寛容な社会であると世界中で考えられるならば、真似しようとする国が次々に現れる。しかし、アメリカ社会は格差が酷く、政治指導者たちは外国に対する敵愾心剥き出しの言葉遣いをするし、刑務所に貼っている人の数が世界最大で、空港をはじめとする社会資本の質がどんどん低下している、となると、アメリカの理想など誰も真似しようとはしない。数百万の有権者たちが投票ができないようにされている一方で、少数の大富豪や金融会社がその数に見合わないほどに大きなそして悪い影響をアメリカ政治に与えているのが現状だ。このような状況では、アメリカの理想は、他国に対してかつてほどのアピール力を持たないようになってしまっている。これは当然の帰結だ。グアンタナモ収容所、少数のテロリスト標的にした殺害方法、アブグレイブ刑務所、国家安全保障庁による行き過ぎた諜報活動、政治家たちに対して間違いを犯した時に責任を取らせないようになっている状況などが加味されると、アメリカというブランドは大いに汚されてしまっているということになる。

 

 まとめると、アメリカは、まずは国内に於ける人々の生活を理想に近づけることが出来れば、海外で民主政治体制を拡散することはできる、ということになる。必要な改革の実行は容易なことではない。私はその実行を容易にするための魔法を知らない。しかし、アメリカ国内を改革することは、アフガニスタン、イエメン、その他10年以上にわたって民主政治体制の確立に失敗してきた国々にしっかりとした民主政治体制を作り上げることよりもかなり容易なことのはずだ。

 

より良いアメリカを作り上げることは、より多くのアメリカ人が豊かな、誇りある、安全な、そして希望に満ちた生活ができるようにすることである。私は夢を見ているだけなのかもしれない。しかし、アメリカ国民の生活を改善することが、外国における民主政治体制拡散にとって最善の途ではないだろうか?

 

(終わり)





 

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