古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。よろしくお願いします。

タグ:リアリズム

 古村治彦です。

 

 ドナルド・トランプ次期大統領についてのヘンリー・キッシンジャーの評価についての記事をご紹介します。トランプについてはどのような外交を展開するのか未知数であるというのが一般的な評価で、それが不安をもたらしています。

 


 選挙期間中にイラク戦争には反対だったと語り、ジョージ・W・ブッシュ前大統領を批判し、バラク・オバマ大統領とヒラリー・クリントン前国務長官がIS(イスラム国)を生み出したと斬り捨てています。自分はISを退治することができるが、それは自分を支持する米軍の将軍たちの献策を受け入れるからだとも発言していますが、米軍を中東に派遣する感じはありません。ロシアと関係を改善させたいとし、中国は不公正な貿易を行っていると、1980年代に日本に向けたような批判を行い、台湾を重視するかのような姿勢を取っています。

 

 トランプはめちゃくちゃなことを言っているように見えます。ISをやっつけると言いながら、米軍を出さないということは矛盾しているように見えます。台湾を重視するというのは、中国との軋轢を生み出し、現状では大事にされる台湾も困った立場に追い込まれてしまうことになります。

 

 ヘンリー・キッシンジャーはテレビ番組に出演し、トランプはこれまでの大統領とは違うので、違うアプローチから何か素晴らしいものが出てくる可能性があると発言しました。あくまで、可能性であって、出てこないこともあるということを言いたいようですが、これまでとは違った大統領であり、外交政策も違ったものとなり、それで何か素晴らしいものが生まれて、歴史に名前を残す大統領になるかもしれない、というのがキッシンジャーの評価です。

 

 キッシンジャーは国際関係の学問的潮流で言えば、リアリズム、リアリストに属する人です。アメリカの国益を第一に、理想を追わず、敵とでも手を結ぶということを実践してきた人です。そして、現在は、中国という新興大国を敵にすることなく、G2体制という米中による国際管理体制構築を主張しています。

 

 トランプは国際問題解決優先主義(アイソレーショニズム)であり、アメリカの理想を広めることや人道的な理由から海外に軍隊に出すようなことは反対しています。こうした点では、ビル・クリントン政権、ジョージ・W・ブッシュ政権、バラク・オバマ政権と、濃淡の差はありますが、理想主義に分類される人道的介入主義とネオコンサヴァティヴィズムの人々が外交政策を担当した政権が続いた時期とは違う外交が展開されることになるでしょう。キッシンジャーもこの点を言っているものと思われます。

 

 アメリカの国内問題解決優先主義とは具体的には、すっかりくたびれてしまった社会資本の改善があると思います。アメリカに行って、アメリカの社会資本、インフラは日本よりも劣っているなと思われた人も多くいらっしゃると思います。高速道路はただだけど、路面がデコボコだったとか、都市部でもいきなり停電が起きて何時間も復旧しないとかそういう経験をした方も多いと思います。トランプはこの社会資本の改善や修繕も公約に掲げています。しかし、そうなると、彼の減税政策と矛盾してしまうことになります。

 

 そこで、トランプとしては民間活力活用(民活、Public Private Partnership、PPP)を利用するということになるでしょう。しかし、アメリカ国内だけではどうしようもありません。そこで外国からの資本投資を受け入れたいという考えも持っているでしょう。台湾に肩入れをして、中国を刺激しているのは、台湾と中国を競わせて、アメリカに対する資本投資を刺激しているようにも見えます。私たちの日常生活でも、何かを買う場合には、どこの店が安いかを探したり、複数の店に行って、「あそこはいくらだったからこれくらいに負けて欲しい」などと交渉したりということはやることです。

 

 ヘンリー・キッシンジャーはトランプ当選以降、中国とロシアを訪問し、習近平国家主席とウラジミール・プーティン大統領と会談しています。彼が米中露の関係を保つスタビライザーの役割を果たしています。2020年までにトランプがキッシンジャーという安定装置を使いながら、どのように外交政策を展開していくのか、注目です。

 

(貼り付けはじめ)

 

キッシンジャー:「トランプの外交政策のアプローチから“何か素晴らしい”ものが出てくる可能性がある」(Kissinger: 'Something Remarkable' Could Emerge From Trump's Approach to Foreign Policy

 

キャシー・バーク筆

2016年12月18日

『ニューズマックス』誌

http://www.newsmax.com/Newsfront/henry-kissinger-trump-opportunity-stay-focused/2016/12/18/id/764532/

 

元国務長官で人々の尊敬を集める共和党系の政治学者ヘンリー・キッシンジャーは、ドナルド・トランプ次期大統領の外交政策から「何か素晴らしい」ものが出てくる可能性があり、トランプは「熟慮をした大統領」として歴史に名前を残す機会を持つであろうと述べた。

 

日曜日に放送されたテレビ番組「フェイス・ザ・ネイション」のインタヴューの中で、キッシンジャーは「トランプに対して大きな信頼を持っている。彼はアメリカの状況を分析し、戦略を作り、共和党指導部に打ち勝とうとしている」と述べた。

 

キッシンジャーは次のように述べた。「トランプが大統領選挙候補者になるまで、彼を大統領選挙候補者として考えたことはなかった。彼が大統領選挙候補者として出てきたとき、私はこれを過渡的な現象だと考えた。しかし、今はトランプがこれまで培った技能を国際的な状況に応用することが彼の挑戦なのだと理解している」。

 

キッシンジャーは、「外交・国際関係分野において、トランプは諸外国がこれまでみたことがなかった現象なのだ」と語った。

 

キッシンジャーは、「トランプが大統領に当選したことは諸外国にとってショックな経験である。同時に、トランプが歴史上に思慮深い大統領として名前を残す機会と可能性があると私は考えている」とも語った。

 

キッシンジャーは更に次のように述べた。「トランプはこれまでの大統領が発してこなかった疑問を呈する大統領になる。その質問は素晴らしい何かになるであろうと思われるし、そうなれば新しい大統領の姿を見せることになるだろう。私は必ずそうなるとは言わない。私は彼にはそうなる大いなる機会があると言いたい」。

 

キッシンジャーはまたトランプに対する助言として次のように述べた。「集中して、自分が達成しなければならない基本的なことを明確にせよ」。

 

「最も大変なことは日常の諸問題と根本的な諸問題を区別することだ。根本的な諸問題は長期にわたって影響を残すものだ。また、些細な諸問題で官僚たちとの戦いで消耗しないようにすることだ。」

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22








 古村治彦です。

 

 2016年5月18日、共和党の米大統領選挙候補者(nominee、ノミニー)に決まっているドナルド・トランプが、ニクソン大統領の国家安全保障問題担当補佐官、フォード大統領の国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャー(92歳!)の家で会談を行ったそうです。18日の午後3時にトランプがキッシンジャーの邸宅を訪問し、1時間にわたり、膝を突き合わせて会談したそうです。それまでは何度か電話で会話をしたそうですが、今回、トランプのたっての希望で会談が実現したということです。

 

 一つ目の記事はアメリカのテレビ局NBCのサイトにアップされたもので、トランプとキッシンジャーの会談が行われた事実を簡潔に報道している内容です。

 

 この記事で重要なのは、三段落目で、トランプが北朝鮮の金正恩朝鮮労働党最高委員長と核拡散防止のために会談することには「やぶさかではない」と発言したこと(五月一七日火曜日、ロイター通信とのインタヴューで)が取り上げられています。「このようなトップ会談が行われることになれば、アメリカの対北朝鮮政策の大きな変更を意味することになるだろう」と記事で書かれています。トランプの「奇抜な」発言(メキシコ人は強姦をする、メキシコ国境の壁を作れなどなど)は数多くありますが、なぜこの発言が行われた後にキッシンジャーと会談をしたのかということを考えねばなりません。

 

 二つ目の記事はインターネットの独立系サイトの記事です。この記事で、キッシンジャーについては、ヒラリー・クリントンの師匠(mentor、メンター)で、国際関係論におけるリアリズムの大家であって、同時にヴェトナム戦争拡大に関与した「悪者」だと書かれています。そして、現在では中国の専門家で、米中国交正常化以降、密接につながっていたことが書かれています。

 

 北朝鮮は中国にとっては複雑な存在です。朝鮮戦争で援朝義勇軍を送って以降、知野同盟関係を結んできた国ですが、東アジアの平和と安定を望む現在の中国にとって、不確定要素となる北朝鮮の存在は厄介です。潰れないために支援をしなくてはいけませんが、自分たちの言うことを聞かない厄介者という存在です。北朝鮮が周りを悩ませている(bothering、ボザリング)のは、核兵器開発を行っているからです。そして、この核兵器開発の原点は、「自国の存在(と金日成の家系)が外国、特にアメリカから攻撃されてしまう」という恐怖感と、「核兵器があれば抑止力になるし、アメリカとの交渉材料になる」という計算です。北朝鮮は激しい言葉遣いの中にも、「アメリカと交渉して、国家の生存を認めてもらって、支援も受けたい」という意思を明確に表明しています(静岡県立大学の伊豆見元[いずみはじめ]教授の著作等をご参照ください)。

 

 私は、オバマ大統領の外交姿勢と考えからすれば、キューバとイランとの関係正常化を行ったのであれば、次は北朝鮮だろうと考えています。そして、ホワイトハウスの外交担当の人事からその兆候が見られるということを文章にしました。

 

※「副島隆彦の学問道場」内「今日のぼやき・会員ページ」(「副島隆彦の学問道場」の会員の方がアクセスできるページ)

「「1513」 最終第4クォーターに大攻勢をかける意気込みのバラク・オバマ米大統領 古村治彦・記 2015年2月24日」

http://www.snsi.jp/tops/boyaki/1804

 

 トランプとバラク・オバマ大統領の外交路線はよく似ています。トランプはアイソレーショニズム(Isolationism、国内問題解決優先主義)、アメリカ・ファースト(America First、アメリカ国内のことをまず最優先に考えよう、アメリカが世界一という意味ではない)の観点から、アメリカの積極的な海外への介入に反対しています。一方、オバマ大統領は、リアリズムの観点から、やはりアメリカの海外介入には消極的です。ですから、2人が考えることは同じではないかと私は考えます。そして、今回のトランプの「金正恩と話す」発言です。

 

 ちなみに、中国中央電子台のツイッターによると、2016年5月18日、中国外交部は、トランプが金正恩と話しても良いという意向を持っていることに関して、これを支持すると表明しました。(https://twitter.com/cctvnews/status/732907099919785984

 

 こうしたことから、トランプはアメリカにおける中国の代理人であるキッシンジャーと北朝鮮問題について話したということが考えられます。トランプはキッシンジャーから中国の意向を聞き、キッシンジャーはトランプから外交政策についての考え方を聞き出し、助言を与えたものと思われます。そして、トランプから聴取したことを中国に伝えるのだろうと思われます。

 

 ヒラリーは金正恩と話すなんてことは考えないでしょう。圧力をかけ続けて、最終的には米軍の力で北朝鮮の人々を救いだしたいと思っているでしょう。しかし、そうなれば、北朝鮮と領土を接している中国にも大きな影響が出ますし、東アジアの情勢も不安定となるでしょう。だから、中国としては、「意外に話せる」トランプに好感を持っていると思われます。

 

 トランプは先週、こちらも共和党系の外交分野の大物、ジェイムズ・ベイカーと会談を持ちました。ベイカーはロナルド・レーガン大統領時代の財務長官、次のジョージ・HW・ブッシュ大統領(父ブッシュ)政権では国務長官を務めました。ベイカーもキッシンジャーと同じくリアリズムの系統に属しています。ベイカーは、先週の木曜日に、連邦上院の委員会に証人として呼ばれました。この時に一緒だったのは、民主党系、オバマ大統領の国家安全保障問題担当補佐官だったトム・ドニロンです。ベイカーは、トランプの名前に直接言及しない形で、「NATOがない世界、より多くの国々が核兵器を持つ世界は、現在よりもより安定しない世界になるだろう」と述べました。トランプは、NATOが時代遅れの存在である、日本や韓国が自国防衛のために核兵器を持つことを容認する、と発言しています。

 

 ベイカーは議会に出席した後、トランプと会談を持ったということです。会談内容については分かっていません。ベイカーは「核拡散に対してアメリカはその防止のために努力してきた。その戦いを止めるべきではない」と議会証言の中で述べました。

 

 私は、トランプがベイカーの発言と会談でのアドヴァイスを受けて、金正恩と話しても良いという発言をして、それにキッシンジャー(と中国)が反応したと考えます。ベイカーが国務長官として仕えたジョージ・HW・ブッシュ大統領は2期目を目指す選挙で、ビル・クリントンに敗れたために、「現職大統領なのに、人気が落ちて選挙に負けた」という負のイメージがついてしまいました。興味深いことに、バラク・オバマ大統領は、この所属政党の違う人気のない大統領であった父ブッシュの外交政策を賞賛し続けています(裏を返せば、父ブッシュを破ったクリントン政権の外交は賞賛していません)。父ブッシュの外交政策を担ったのがジェイムズ・ベイカーということになります。

 

 トランプは本選挙に向けて、ペースとイメージを変えようとしています。変な譬えかもしれませんが、暴れん坊の不良学生が態度を改めると、不良仲間からは嫌われるでしょうが、大方の人たちは好感を持ちます。トランプもそのような感じになっている、不良学生がきちんとしようとして、尊敬すべき先生たちの話を聞きに行っているという動きになっています。

 

 このしたたかさと柔軟性と頭の良さを見落としていたことを改めて反省したいと思います。

 

(記事転載貼り付けはじめ)

 

●「Trump and Kissinger Hold Foreign Policy Huddle in New York

 

NBC News  2016/05/18

by KATY TUR and ALI VITALI

http://www.nbcnews.com/politics/2016-election/trump-kissinger-hold-foreign-policy-huddle-new-york-n576336

 

Donald Trump met with Secretary of State Henry Kissinger in New York on Wednesday, the latest in his efforts to strengthen his foreign policy bona fides.

 

Trump's motorcade rolled into Kissinger's home around 3 p.m. where the low-profile meeting that lasted about one hour. Trump aides say the presumptive GOP presidential nominee and 92-year-old diplomat have spoken over the phone multiple times, and Trump requested the face-to-face.

 

The gathering follows Trump telling Reuters he "would have no problem" speaking to North Korean leader Kim Jong Un to prevent nuclear proliferation. Such a conversation would mark a major shift in US policy towards Pyongyang.

 

Trump met with another well-known GOP diplomat, James Baker, last week.

 

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●「Trump Turns to Clinton Mentor for Foreign Policy Advice

 

Independent Voters News

May 18, 2016 By Andrew Gripp in Campaigns

http://ivn.us/2016/05/18/henry-kissinger-trump-clinton/

 

On Wednesday afternoon, presumptive GOP nominee Donald Trump met with Henry Kissinger, the former secretary of state and national security advisor to presidents Nixon and Ford, to discuss foreign policy.

 

The meeting comes after a series of controversial interviews that Trump had on the subject of foreign policy, including with the Washington Post and The New York Times in March. In an interview with Reuters published on May 17, Trump raised eyebrows with his comments about his willingness to talk to North Korea dictator Kim Jong Un and his desire to renegotiate the terms of the Paris accord on climate change.

 

By meeting with Kissinger, Trump hopes to bolster his foreign policy credibility, which has been impugned in recent months, especially by fellow Republicans. In early March, more than 100 Republican national security experts published an open letter stating their opposition to Trump’s candidacy based on his a list of a number of objections.

 

More recently, the leader of Trump’s foreign policy committee, Republican Sen. Jeff Sessions, told ABC’s Martha Raddatz that Trump is “going to need to learn” a lot in the coming months, and former defense secretary Robert Gates criticized Trump for several specific statements Trump has made, including admiring remarks about Vladimir Putin, unclear details about how to defeat ISIS, and his suggestion that he would initiate a “trade war” with China to punish the country for unfair economic and business practices.

 

By meeting with Kissinger, Trump hopes to bolster his foreign policy credibility, which has been impugned in recent months, especially by fellow Republicans.

China was likely a discussion topic during Trump’s visit with Kissinger. Kissinger is an expert on the country: he is credited with helping open diplomatic relations between the U.S. and China under Nixon and has since written a lengthy tome about the country.

 

In many ways, Trump and Kissinger share a similar outlook on foreign affairs. Both largely subscribe to the “realist school” of international relations, which sees states as the central actors in the world. Under this view, states should advance their interests by being prudent in their use of force and limiting their commitments to international organizations and agreements that can constrain their behavior.

 

Based on his remarks in recent months, Trump appears very much to be a realist. He has criticized the U.S.’s use of force in Iraq and Libya to depose dictators, claiming such idealistic adventures in bringing democracy to the Middle East have facilitated the rise of radical Islam, especially ISIS.

 

Trump has also been critical of the U.S.’s adoption of NAFTA, crediting it with hurting America’s manufacturing base, and he has argued that the U.S. is being damaged by its outsized bankrolling of NATO, the Cold War-era security alliance that Trump has called “obsolete.”

 

At 92, Kissinger is still very much respected among foreign policy realists in both parties. Indeed, Hillary Clinton sought Kissinger’s counsel throughout her political career, especially during her tenure as secretary of state, and has referred to him as a friend.”

 

But her friendship with Kissinger became a major point of contention between Clinton and Sanders during their PBS debate in Milwaukee in February. There, Sanders called Kissinger “one of the most destructive secretaries of state in the modern history of this country” and proudly declared, “Henry Kissinger is not my friend.”

 

Kissinger has long been criticized on the left for his political record, including his efforts to prolong and broaden the Vietnam War, overthrow foreign, democratically-elected leaders, and support despots seen as important strategic partners. Kissinger’s actions have been the subject of several books, including The Trial of Henry Kissinger by Christopher Hitchens, Kissinger’s Shadow by Greg Grandin, and The Blood Telegram by Gary Bass.

 

Among the foreign policy actions criticized by these authors relates to his role in the Vietnam War: the cynical subversion of the 1968 Paris peace negotiations to help elect Nixon as president, increased bombing in Southeast Asia, and the expansion of the conflict into Laos and Cambodia.

 

Critics also point to his support for the coup against the president of Chile, Salvador Allende, the provision of military and financial aid to Turkey in its invasions of Cyprus, and for complicity in genocides in Bangladesh and East Timor in order to appease authoritarian allies in Pakistan and Indonesia who were seen as indispensable partners in the global fight against communism.

 

It is because of Kissinger’s controversial legacy that he is described in some circles as an “elder statesman” and awarded the highest civilian honors by the Obama administration, while in others he is deemed “a war criminal” worthy of public trial.

 

At this point, it is hard to estimate what the outcome of Trump’s meeting with Kissinger, beyond a symbolic boost, will be. Is Trump merely going through the motions in an effort to ingratiate himself with the party establishment and with Washington elites, or will he further refine his foreign policy views? Stay tuned.

 

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●「Trump meets with James Baker in DC

 

The Hill

By Ben Kamisar  May 12, 2016, 05:42 pm

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/279760-trump-meets-with-james-baker-in-dc

 

Donald Trump met with former Secretary of State James Baker during his Thursday swing through Washington as the presumptive GOP presidential nominee seeks to unite the Republican Party behind him.

 

The pair met during Trump's visit to Jones Day, the Washington law firm where many members of his legal team practice, NBC News reported.

 

The meeting came hours after Baker criticized some of Trump's key foreign policy proposals during a Thursday Senate hearing, including his call to roll back American involvement in the North Atlantic Treaty Organization (NATO).

 

The criticism came after prodding by Sen. Marco Rubio (R-Fla.), who battled with Trump during his own presidential run this cycle.

 

Rubio asked Baker to "describe a world in which NATO lost its way or perhaps disintegrated," parroting Trump's criticism.

 

"We've got a lot of problems today but you'd have a hell of a lot more if that was the case," Baker responded. "NATO has been the foundation and the base for peace and stability in Europe and on the Eurasian Continent."

 

Rubio also brought up Trump’s call to let Japan and South Korea obtain nuclear weapons, without explicitly mentioning the mogul.

 

"The more countries that acquire nuclear weapons, the more instability there is going to be in the world," Baker said.

 

"Ever since the end of World War II, America has led the fight on against the proliferation of nuclear weapons, weapons that can kill millions and millions of people. We ought not to abandon that fight." 

 

Baker's meeting with Trump came after a series of meetings with major party leaders, including Speaker Paul Ryan and House leadership, as well as Senate leadership.

 

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●「U.S. foreign policy veteran warns Trump would make world less stable

 

Politics | Thu May 12, 2016 6:15pm EDT Related: ELECTION 2016, POLITICS

WASHINGTON | BY PATRICIA ZENGERLE

http://www.reuters.com/article/us-usa-election-trump-foreign-idUSKCN0Y32MP

 

Republican U.S. presidential candidate Donald Trump is surrounded by family members as he speaks during a campaign victory party after rival candidate Senator Ted Cruz dropped out of the race for the Republican presidential nomination following the results of the Indiana state primary, at Trump Tower in Manhattan, New York, U.S., May 3, 2016. REUTERS/Lucas Jackson

Republican U.S. presidential candidate Donald Trump is surrounded by family members as he speaks during a campaign victory party after rival candidate Senator Ted Cruz dropped out of the race for the Republican presidential nomination following the results of the Indiana...

 

Donald Trump's foreign policy proposals would make the world a less stable place, former Secretary of State James Baker told a U.S. Senate hearing on Thursday as the Republican presidential candidate met elsewhere with party congressional leaders.

 

Under questioning from Republican Senator Marco Rubio, a former Trump rival in the presidential race, Baker said the world "would be far less stable" with a weaker NATO or if more countries had nuclear weapons as Trump has proposed.

 

"We've a got a lot of problems today, but we'd have a hell of a lot more if that were the case," Baker told a Senate Foreign Relations Committee hearing, adding that U.S. commitments around the world "promote U.S. security."

 

Trump met with Baker on Thursday at Trump's request, said a Baker spokesman, who declined further comment.

 

The hearing, on "America's Role in the World," was called by the committee's Republican chairman, Senator Bob Corker. Corker praised a foreign policy speech Trump gave in Washington last month. Some U.S. allies worried after Trump's remarks that his invocation of an "America first" agenda is a threat to retreat from the world.

 

Without naming Trump, Rubio referred to the businessman-turned-candidate's suggestions that the United States should rethink the North Atlantic Treaty Organization (NATO) and that Japan and South Korea should consider getting nuclear weapons to defend themselves.

 

"Some have suggested 'why don't you just let Japan and South Korea get their own nuclear weapons and let them defend themselves?'" Rubio asked.

 

"The more countries that acquire nuclear weapons, the more instability there is going to be in the world, in my opinion," Baker said.

 

Tom Donilon, Democratic President Barack Obama's former national security adviser, called Rubio's question an "important thought experiment," as he backed Baker's comments about the importance of NATO.

 

"It's not just a thought experiment, it's actually been proposed," Rubio said.

 

As the hearing took place, Trump was on Capitol Hill meeting with Republican congressional leaders on how to heal divisions within the party, including those between establishment figures like Baker and the insurgent candidate.

 

Baker, a Republican who was secretary of state under President George Bush and Treasury secretary under President Ronald Reagan, testified alongside Donilon.

 

Former Presidents Bush and George W. Bush do not plan to endorse Trump, or any candidate, in this year's White House race.

 

(記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)



 

 古村治彦です。

 

 今回は、アメリカの外交政策雑誌『フォーリン・ポリシー』誌に掲載された、ハーヴァード大学教授スティーヴン・ウォルトの論稿を皆様にご紹介したいと思います。

 

 ウォルトは、アメリカの外交政策の潮流、国際関係論の学派で言えば、リアリズムという流れに属します。リアリズムと対極にあるのがリベラリズム(アイディアリズム)というものです。リアリズムは、自国の国益(国家の生存)を最優先にするが、決して無理なことをしないという考えです。

 

 ウォルトは、アメリカが行ってきた、理想主義的(アイディアリスティック)な外交政策、民主政治体制の拡散、特に軍事介入を行っての政権転覆と民主化に反対しています。今回の論稿では、その理由などについて詳しく分析しています。

 

 ウォルトはオバマ大統領の外交政策に批判的ですが、オバマ自身はリアリストであり、そのような外交政策を展開しました。そして、ウォルトやオバマの考えを読むと、ドナルド・トランプの考えに通じるものがあります。彼らがアメリカ国民から支持されるのは、「アメリカが世界の警察官やら仲裁者、ブローカーをやるのは疲れた。アメリカが外ばかり向いているうちに、国内が疲弊してきた。もうそういう仕事は止めて家に帰ろう」と人々が考えているからだと私は考えています。

 

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アメリカが外国で民主政治体制確立の促進することがうまくいかないのはどうしてなのだろうか?(Why Is America So Bad at Promoting Democracy in Other Countries?

 

アフガニスタン、イエメン、イランのような国々において、短時間で、お金のかからない、もしくは軍事力を使った方法で、平和をもたらす方法など存在しない。今こそ、私たちはこれまでのやり方を変える時だ。それにはまず国内から始めることだ。

 

スティーヴン・M・ウォルト(Stephen M. Walt)筆

『フォーリン・ポリシー』誌

2016年4月25日

http://foreignpolicy.com/2016/04/25/why-is-america-so-bad-at-promoting-democracy-in-other-countries/?utm_content=buffer8e7d6&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

 あなたが熱心なウィルソン主義者であるなら、これまでの25年間は失望の連続だったはずだ。自由主義的民主政治体制こそがグローバル化する(均一化する)世界における唯一の政治体制として生き残ると考えられてきた。そして、これまでの三つのアメリカの政権はウィルソン主義に基づいた理想を掲げ、民主政治体制の拡散をアメリカの外交政策の根幹に据えてきた。ビル・クリントンは、それを「関与と拡大の国家安全保障戦略(National Security Strategy of Engagement and Enlargement)」と呼んだ。ジョージ・W・ブッシュは第二期目の大統領就任演説の中で、「自由に関するアジェンダ(Freedom Agenda)」と呼び、コンドリーザ・ライスのような政権幹部たちもこの言葉を繰り返し使った。バラク・オバマは、前任者たちに比べてウィルソン主義に対する情熱に欠けるところがある。しかし、オバマは、多くの熱心な自由主義的国際主義者(liberal internationalists)を政権に迎え入れた。そして、「自分たちの指導者を選ぶ権利以上に根本的に重要な権利は存在しない」と高らかに宣言した。オバマは、エジプト、リビア、イエメンなどの国々の民主体制への移行(democratic transition)を公的に支持してきた。

 

 もうすぐ出版となる、ラリー・ダイアモンドとマーク・プラットナーが編集を行った編著書で書かれているように、残念なことであるが、民主政治体制の拡散と促進に向けた努力は実を結んでいない。最近、ミャンマーでは軍事政権による支配が終了した。このようなサクセスストーリーもあるが、それと同じくらい、失敗もあった。その具体例がリビア、イエメン、イラクである。また、民主政治体制の後退がトルコ、ハンガリー、ロシア、ポーランドなどで起きている。また、民主政治体制の機能不全がヨーロッパ連合(EU)とアメリカで起きている。ダイアモンドが編著書の中の自身の記事の中で指摘しているように、過去30年で、世界の民主国家の4分の1近くが崩壊、もしくは後退している。

 

 読者の中には、私のようなリアリストは、ある国の国家体制のタイプや国内の政治機構については関心を持たず、民主政治体制の拡散という目標について冷淡だと考えている人たちもいらっしゃるだろう。しかし、それは誤解だ。リアリストは国家体制のタイプや国内の政治機構について関心を持っている。リアリストの大物ケネス・ウォルツは民主的な体制の違いを比較した本を書いているほどだ。リアリストたちは、非民主的な政権を民主的な政権と同じような方向に動かすには、組織化された圧力などよりも、相対的な国力と安全保障の必要性の方がより重要だと考えているのだ。

 

 従って、リアリストやその他の学派の人々は民主政治体制が良いものだと考えてはいるが、同時に、民主体制への意向に伴う様々な危険について危惧するのだ。安定した民主国家は一般的に見て、より長期にわたる経済成長を記録しているし、基本的な人権を守るという点でもより良い実績を残している。民主政治体制にも欠点はある。しかし、民主政体は、飢饉や準備不足の社会工学(social engineering)的な試みで、人を死なせたことは他の体制に比べて少ない。その理由は、民主政治体制の下では、修正するための情報にアクセスすることが出来るし、政治家や官僚たちも説明責任を果たさねばならないようになっているからだ。民主国家はその他の政治体制国家と戦争を始める傾向にあるが、民主国家同士は戦わない傾向にある。これにはかなり信憑性の高い証拠が揃っている。従って、勢力均衡という点から考えても、世界における民主国家の数が増加することは人類のほとんどにとってより良いことだと私も考えている。

 

 しかし、ここでどうしても1つの疑問が生じる。それは「民主化という目標をどのように達成したらよいのか?」というものだ。

 

 乱暴な言い方になるかもしれないが、私たちは何が全く機能しないか、そしてそれがどうしてなのかについての知識を持っている。民主化にとって役に立たないのは、軍事介入だ。これは別名で「外国による押しつけの体制変更」と呼ばれる。アメリカが軍隊を送り、独裁者と周辺人物たちを追い払い、新しい憲法を作り、選挙を2、3回やれば安定した民主国家が出来上がる、一丁上がり!という考えは、その実現性が疑わしい。この考えがうまくいかないことを示す証拠が山ほどあるのに、多くの賢い人々はこの考えに固執する。

 

 民主政治体制を拡散するために軍事力を使うと失敗するということにはいくつかの理由が存在する。第一に、自由な秩序が定着するには憲法や選挙だけではなく、もっと多くの要素が必要となる。効果的な法体系、多元主義、まともな収入と教育、ある選挙で負けた政党も将来はより良い仕事をするチャンスは持っているという人々の確信、現在の民主的な政治システム内で活動をし続けるという誘因が必要なのだ。自由な秩序が機能し、維持されるためには多くの社会的な要因を適切に配置する必要がある。西洋世界において、機能的な民主政治体制が構築されるまでに数世紀の時間を要した。そして、そのプロセスは論争的で、時に暴力にまで発展することもあった。アメリカの軍事力によって手早くそして安価に海外に民主政治体制を輸出できると考えることは、思い上がりも甚だしいことなのである。私たちは失敗した事例をきちんと思い出さねばならない。

 

 第二に、民主政体を拡散するために軍事力を使うと常に暴力的な抵抗を引き起こしてしまう。ナショナリズムなど個々の国々独自のアイデンティティが現在、世界中で力を保っている。そして、軍備を固めた外国の占領者たちからの命令に従うことを嫌う人々は数多くいる。更に言えば、サダム・フセイン失脚後のスンニ派のように、民主政体への移行によって権力、富、地位を失った人々は、民主化に反対するために武器を取って立ちあがるようになってしまう。これは避けがたいことだ。また、ある国の民主化によって自国の国益が影響を受ける近隣諸国は、民主化を阻止、もしくは退行させようとする。こうした動きは民主政体の確立の戦いにおいてどうしても起きる最後の抵抗である。それは、暴力というものは、機能する政治機構を作り上げ、党派の違いを乗り越えて合意を形成し、寛容の精神を促進し、より活発なそして生産的な経済を生み出す能力を持つ人たちよりも、暴力事態をうまく使える人たちによって効果的に行使されてしまうものだからだ。

 

 もっと悪いことに、外国からの占領者たちは地元の人々に中から適材を選び出すための知識を十分に持っていることはほぼないと言ってよい。また、新たに樹立された政府に対して気前のよい、善意の援助をしても、多くの場合、腐敗を生み出し、その国の政治を予測不可能なものとしてしまう。外国に民主政治体制を樹立することは、巨大な社会工学的プロジェクトなのであり、大国がそれを効果的に行うように期待することは、言ってみれば、地震が頻発する地域に、設計図がない状況で、原子力発電所を作ってくれと依頼するようなものである。民主政治体制の場合も、原子力発電所の場合も、どちらも予想されるのはメルトダウンである。

 

 重要なことは、外国勢力がある国の民主政治体制への移行を行うに当たって、手早くできて、安くあがって、確実に結果を出せる、損な方法は存在しないのだ。特に問題のある国が民主政体の経験をほんの少ししか持ってない、もしくは全く持っていない、そして社会各層の分裂が酷い時には、民主化を簡単に行うための方法は存在しない。

 

 民主政治体制の拡散が望ましいものであるのなら、軍事力はそのための正しい道具とはならない。それでは、正しい道具となるのは何であろうか?私は、2つの大きなアプローチを提案したい。

 

 私たちができることの第一は外交だ。民主政治体制を求める、純粋な、重要な、そして真面目な運動が存在する時、外部の有力なアクターは、前身的な民主政体への移行を促進するためにほんの少しの影響力を行使するだけで良い。「ヴェルヴェット革命」が起きた時の東欧や現在のミャンマーがこの事例に当てはまる。アメリカは、韓国やフィリピンにおいて、首尾一貫した、そして粘り強い、非軍事的な方法(経済制裁など)を用いて、これらの国々の民主化を成功させた。これらの事例においては、民主化運動は長い年月をかけて形成され、力を付けていくのに合わせて、広範な社会層からの支持を得るようになっていった。外交を主とすることでは、軍事侵攻が持つ「ショックと恐怖」のような派手さと興奮は起きないであろう。しかし、かかるお金はより少なく、しかも成功の確率はだいぶ上がるのは間違いないのだ。

 

 私たちにできる第二のことは、より良いお手本となることだ。アメリカの民主政治体制の理想は、アメリカがより公正で、繁栄し、活力のある、寛容な社会であると世界中で考えられるならば、真似しようとする国が次々に現れる。しかし、アメリカ社会は格差が酷く、政治指導者たちは外国に対する敵愾心剥き出しの言葉遣いをするし、刑務所に貼っている人の数が世界最大で、空港をはじめとする社会資本の質がどんどん低下している、となると、アメリカの理想など誰も真似しようとはしない。数百万の有権者たちが投票ができないようにされている一方で、少数の大富豪や金融会社がその数に見合わないほどに大きなそして悪い影響をアメリカ政治に与えているのが現状だ。このような状況では、アメリカの理想は、他国に対してかつてほどのアピール力を持たないようになってしまっている。これは当然の帰結だ。グアンタナモ収容所、少数のテロリスト標的にした殺害方法、アブグレイブ刑務所、国家安全保障庁による行き過ぎた諜報活動、政治家たちに対して間違いを犯した時に責任を取らせないようになっている状況などが加味されると、アメリカというブランドは大いに汚されてしまっているということになる。

 

 まとめると、アメリカは、まずは国内に於ける人々の生活を理想に近づけることが出来れば、海外で民主政治体制を拡散することはできる、ということになる。必要な改革の実行は容易なことではない。私はその実行を容易にするための魔法を知らない。しかし、アメリカ国内を改革することは、アフガニスタン、イエメン、その他10年以上にわたって民主政治体制の確立に失敗してきた国々にしっかりとした民主政治体制を作り上げることよりもかなり容易なことのはずだ。

 

より良いアメリカを作り上げることは、より多くのアメリカ人が豊かな、誇りある、安全な、そして希望に満ちた生活ができるようにすることである。私は夢を見ているだけなのかもしれない。しかし、アメリカ国民の生活を改善することが、外国における民主政治体制拡散にとって最善の途ではないだろうか?

 

(終わり)





 

  古村治彦です。

 

 今回は、スーパーチューズデー以降のアメリカの政治の動きについて考えたことを書きたいと思います。大体のことは前回に書いたのですが、そこからさらに考えたことを書きたいと思います。

 

 アメリカには民主、共和両党以外にも実はたくさんの政党があります。しかし、この2つ以外の政党から大統領が出るとか、連邦議会で過半数を取るというようなことはありません。たまに無所属の議員が出ることはありますし、バーニー・サンダース連邦上院議員も民主党所属ではなくて、無所属(ヴァーモント州の地域政党)で、連邦議会では民主党の会派に入っているということになります。

 

 国政レヴェルの政治に参加するということになると、どうしても民主、共和両党に所属するということになります。1955年から1993年の日本で続いた「55年体制」(自民党が国会で常に過半数を維持し、社会党が3分の1前後を維持して改憲を防ぐ)の下の自民党もそうでしたが、そうなると、様々な考えや主張の人たちが1つの政党に所属することになります。アメリカの民主、共和両党にも多くのグループがあります。それを分かりやすく説明しているのが、副島隆彦著『世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち』(講談社+α文庫、1999年)です。この本は20年近く前に書かれた本ですが、人の入れ替わり(亡くなったり、引退したり)はあっても、基本的には本で書かれたアメリカ政治の形は変わっていません。ですから、今のアメリカ政治を理解する上でも重要な本です。

 

 この本の中には以下のような図があります。これは今のアメリカ政治、特に現在起きている現象を理解する上で重要です。この図は、『世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち』に入っているものです。

 

seven-party

 ここで重要なのは、ネオコン派です。この図では、「(こうもり集団)」と書かれています。これについて説明します。ネオコン派とは、ジョージ・W・ブッシュ前政権で外交・安全保障政策の分野で政策を推進した人々です。彼らは911同時多発テロ事件を受けて、アフガニスタンとイラクに対して軍事力を行使しました。そして、これらの政策は大失敗であったという評価になっています。ネオコン派は元々、民主党系でジョン・F・ケネディ大統領を支持していた理想に燃える若者たちでした。ジョン・F・ケネディ大統領と言えば、日本でもイメージの良いアメリカ大統領として今でも有名ですが、彼は反共主義者として、キューバ侵攻(ピッグス湾事件)からキューバ危機を起こしたり、ヴェトナムに介入したりと、結構攻撃的な人でした。彼が暗殺された後大統領になったリンドン・ジョンソン大統領もその路線を踏襲しました。

 

 しかし、ジミー・カーター大統領になって穏健路線に転換し、これに対して、ネオコン派の人々は失望し、集団的に脱党、共和党支持に転換しました。ネオコン派を英語では、NeoconservativesNeoconと書きますが、ここで、ニュー(New)ではなく、ネオ(Neo)という言葉が使われているのが重要です。英語でNeoが使われる場合は、偽物やまがい物という意味が含まれます。ネオナチなどという言葉を思い出していただければわかると思います。彼らは、共和党に移っても、保守本流の人たちからは「あいつらは転向してきた、偽物だ」ということで、Neoが付けられたということになります。

 

 保守本流や上の図にあるリバータリアンの人たちからすると、ネオコン派は信用できない人たちということになります。また、最近で言えば、ジョージ・W・ブッシュ政権の外交、安全保障政策の失敗、更には民主党のバラク・オバマにホワイトハウスを奪われた責任者たちということにもなります。

 

 ここからは、2012年に出した拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所)に書きましたが、アメリカの外交政策の大きな流れとしてリアリズム(現実主義)とアイディアリズム(理想主義)があります。そして、民主、共和両党にそれぞれリアリズムと理想主義の流れがあります。リアリズムとは、外交において理想に走らずに、国益(国家の生存)実現を第一にするというものです。リアリズムの特徴は無理なことはしないし、穏健な方法を模索するということです。もちろん武力行使をしないということではありませんが、理想の実現やある状態を劇的に変化させることを目的にすることはありません。

 

 一方、理想主義的な流れを代表しているのが、民主党では人道的介入主義派であり、共和党ではネオコン派ということになります。人道的介入主義とは、女性やマイノリティなどの人権侵害などがある国で起きた場合、それらの人々を守るために、米軍による攻撃も辞さないというものです。現在、民主党の大統領選挙予備選でリードしている、ヒラリー・クリントン前国務長官は人道的介入派の代表格です。

 

民主党:リアリズム⇔人道的介入主義

共和党:リアリズム⇔ネオコン

 

 人道的介入主義派とネオコン派の外交、安全保障政策はほぼ同じです。ネオコン派は、反共的な立場からスタートしましたが、その後、ソ連の崩壊後には、「世界中の国々を民主化すれば、世界は平和になる。何故なら、民主国家同紙は戦争をしないからだ」という考えに基づいて、世界各国の民主化を理想に掲げました。

 

 前の方で書きましたが、ネオコン派は元々が民主党にいた人々です。ですから国内政策ではリベラルであり、これがまた共和党の保守本流の人々をイライラさせます。

 

 ここまで説明したことと現在のアメリカの政治状況を重ねて見ていきたいと思います。現在、共和党の大統領選挙予備選挙ではドナルド・トランプが大きくリードしています。トランプ旋風に対して、共和党のエスタブリッシュメントは慌てています。何とか、この旋風を抑えようとしています。それは、トランプ現象が、ポピュリズムを基礎にして起きているからです。ポピュリズムとは大衆迎合主義という側面もあります。しかし、それ以外に、「民衆がワシントンで行われている政治が余りにも自分たちの考えとかけ離れていると感じて、それに対して怒りを爆発させて、自分たちの代表者にふさわしい人物を押し立てて、ワシントンを攻撃する」という面もあります。アメリカのポピュリストとして有名なのは、1930年代に活躍したヒューイ・ロングです。フランクリン・D・ルーズヴェルト大統領が「最も危険な男」と呼んだ人物です。今回のトランプ現象は、このポピュリズムが起きているために起きている現象なのです。

 

 人々が何について怒っているのかについては、このブログで前回書きましたので、ここでは繰り返しません。簡単に言ってしまえば、「アメリカらしさの喪失」に対して怒っているのです。そして、「大統領選挙で勝てなくても良いから、自分たちの怒りや不満を全身で受け止めて表現している人物であるトランプに投票する」ということになっています。

 

 彼らは共和党の支持者でありながら、共和党が大統領選挙で勝利することを求めていません。これは、党内の政治家たちを中心とするエスタブリッシュメントにとっては衝撃です。これでは政党の存在意義すら否定することになるではないか、ということになります。

 

 私が翻訳した『アメリカの真の支配者 コーク一族』(ダニエル・シュルマン著、講談社、2015年)の主人公であるコーク兄弟、チャールズ・コーク、デイヴィッド・コークは、多額の政治資金を投入することで政治に大きな影響力を行使しようとしています。彼らは、ドナルド・トランプからは目の敵にされ、彼らからお金をもらう候補者たちはトランプから侮蔑的な言葉をかけられました。

 

 共和党エスタブリッシュメントに属する富豪たちは、トランプ現象を阻止するために動こうとしています。しかし、コーク兄弟は、自分たちの政治資金をトランプ阻止のために投入しないと発表しました。これは、間接的なトランプ支持、ということが言えます。

 

 コーク兄弟の狙いを忖度すると、それは、「共和党をぶっ壊す」ということではないかと思います。そして、より具体的には、「ネオコン派を叩き出す」ということだと思います。そして、破壊の後に再生ということで、共和党を昔のように戻す、ということなのだろうと思います。ネオコン派の外交専門家たちが、トランプに対して不支持を表明する公開書簡を出しましたが、これは、こうした動きを察知しての反応だと思われます。

 

 トランプ現象をただ人々が不満をぶつけているだけと捉えるのは表層的だと思います。そこには政治思想やアメリカ自体の変容が大きく絡んでいると私は思います。

 

(終わり)




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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12

 

 リアリストであれば、オバマ大統領に対して、「アサドは権力の座から退かねばならない」とか化学兵器使用について「レッドライン」をひく、などと言わないように助言するだろう。それはバシャール・アル・アサドが擁護されるべき存在であるからでも化学兵器が戦時における正当な武器であるからでもなく、アメリカの重要な国益に関わらないし、何よりもアサドと彼の側近たちはとにかく権力を掌握し続けたいともがいているとことは明らかであったからだ。最重要なことは、人命をできるだけ損なうことなく内戦を速やかに終結させることであり、そのために必要とあれば、暴力的な独裁者とでも取引をするということであった。数年前にオバマ大統領がリアリストの意見に耳を傾けていたら、シリア内戦は多くの人命が失われ、国土が荒廃する前に集結していた可能性は高い。これはあくまで可能性が高いとしか言えないことではある。

 

 言い換えると、リアリストが過去20年のアメリカの外交政策の舵取りをしていれば、アメリカの国力を無駄に使うことになった失敗の数々を避け、成功を収めることが出来たはずだ。こうした主張に疑問を持つ人もいるだろう。しかし、「アメリカは世界の全ての重要な問題に対処する権利、責任、知恵を持っている」と主張した人々や、現在は馬鹿げたことであったとばれてしまっている、アメリカ政府の介入を執拗に主張した人々に比べて、リアリストは外交政策でより良い、まっとうなことを主張してきたことは記録が証明している。

 

 ここで疑問が出てくる。それは「リアリズムの助言は過去25年にわたり、ライヴァルの助言よりも好成績をあげているのに、リアリストの文章は主要なメディアには登場しない。それはどうしてか?」というものだ。

 

 『ニューヨーク・タイムズ』紙、『ワシントン・ポスト』紙、そして『ウォールストリート・ジャーナル』紙の論説ページに定期的に寄稿しているコラムニストについて考えてみる。この3紙はアメリカにおいて最も重要な紙媒体である。この3紙の記事と論説は他のメディアの論調を決定するくらいの力を持っている。それぞれの新聞のコラムニストは、講演を行ったり、他のメディアに出たりしている。そして、政策決定において影響力を行使している。この3紙はリアリストを登場させることはなく、『ワシントン・ポスト』紙と『ウォールストリート・ジャーナル』紙は、国際政治とアメリカの外交政策についてのリアリズム的な考えに対して敵意を持っている。

 

 『ニューヨーク・タイムズ』紙の場合、外交問題に関して定期的に寄稿しているコラムニストのリストを見てみると、ネオコン1名(デイヴィッド・ブルックス)と有名なリベラル介入派(トーマス・フリードマン、ニコラス・クリストフ、ロジャー・コーエン)が存在する。ロス・ドウサットは伝統的保守派に分類される。しかし、彼が国際問題について書くことはほとんどなく、世界各地へのアメリカの介入政策を様々な理由を挙げて声高に擁護している。『ワシントン・ポスト』紙は、4名の強硬なネオコン、論説ページの編集者フレッド・ハイアット、チャールズ・クラウトハマー、ロバート・ケーガン、ジャクソン・ディールを起用している。過去にはウィリアム・クリストルを起用していたこともある。定期的に寄稿しているコラムニストには、ジョージ・W・ブッシュ前政権のスピーチライターだったマーク・ティエッセンとマイケル・ガーソン、極右のブロガーであるジェニファー・ルービン、中道のデイヴィッド・イグナティウスと論争好きのリチャード・コーエンがいる。言うまでもないことだが、この中にリアリストはいないし、彼ら全員が積極的なアメリカの外交政策を支持している。昨年に『ザ・ナショナル・インタレスト』誌に掲載されたある記事の中でジェイムズ・カーデンとジェイコブ・ハイルブランが書いているように、ハイアットは「『ワシントン・ポスト』紙を頭の凝り固まった戦う知識人たちのマイク」に変えてしまい、「アメリカ国内で最もひどい内容の論説ページ」を作っている。

 

 ここで明確にしたいのは、こうしたコラムニストたちに執筆の機会を与えることは正しいことだし、私が名前を挙げた人々の多くの書く内容は一読に値するものである、ということだ。私が間違っていると考えているのは、現在の世界政治に関してより明確なリアリス的な考えを発表する人間が起用されていないということだ。ごくたまにではあるが、3紙も不定期にリアリストに論説ページに記事を書かせている。しかし、リアリスト的なアプローチを持っている人々で定期的に論説を書いて3紙から報酬を得ている人はいない。読者の皆さんは、ほんの数名のリアリストがフォックス、CNN,MSNBCのようなテレビの他に、この『フォーリン・ポリシー』誌や『ナショナル・インタレスト』誌のような特別なメディアに出ていることはご存じだと思う。それ以外の主流のメディアには出られないのだ。

 

 これら3つの主要な大新聞がリアリスト的な観点を恐れているのはどうしてなのだろう?リアリストはいくつかの極めて重要な問題に対してほぼ正しい見方を提供してきた。一方、これらのメディアで発表の機会を得てきたコラムニストたちの意見はほぼ間違っていた。私にはこんなことがどうして起きたのかその理由は分からない。しかし、現役の外交政策専門家は、アメリカをより豊かにそしてより安全にするにはどの政策がいちばんよいのかということを必死になって考えるよりも、空疎な希望や理想を語りたがっているのではないかと私は考えている。そして、アメリカは既に強力で安全なので、アメリカは繰り返し繰り返し非現実的な目的を追求し、素晴らしい意図のためにそのために何も悪くない人々を犠牲者になって苦しむことになってしまっているのだ。

 

私は、メディア大企業を経営しているルパート・マードック、ジェフ・ベソス、サルツバーガー一族に訴えたい。リアリストを雇ってみてはどうか?国際問題について評論や提案をする人々を探しているのなら、ポール・ピラー、チャス・フリーマン・ジュニア、ロバート・ブラックウェル、スティーヴ・クレモンス、マイケル・デシュ、スティーヴ・チャップマン、ジョン・ミアシャイマー、バリー・ポーゼン、アンドリュー・バセヴィッチ、ダニエル・ラリソンを検討してみてはどうか?こうした人々に週一回のコラムを書かせてみてはどうか。そうすることで、読者の人々に対して、国際的な問題について包括的なそしてバランスのとれた意見を提供することができる。私が言いたいことは、「あんたたちはいったい何を怖がっているんだい?」ということだ。

 

(終わり)

野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23






メルトダウン 金融溶解
トーマス・ウッズ
成甲書房
2009-07-31


 
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