古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:リズ・チェイニー

 古村治彦です。

 このブログでも以前に取り上げ、拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』でも取り上げたリズ・チェイニー連邦下院議員(ワイオミング州選出、共和党)が今年11月の中間選挙での共和党議員選挙の共和党予備選挙(共和党の候補者を決める選挙)で、ドナルド・トランプが支持する挑戦者に敗れて、本選挙に共和党候補者として出馬できないことになり、下院議員の議席を失うことになった。
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リズ

 連邦下院議員は2年ごとに全員が選挙ということになり(任期が2年)、選挙に追いまくられる生活を強いられる。また、2年おきに選挙があるので、野心がある人間が常に挑戦者となって迫ってくる。勝ち続けるということは難しい。しかし、リズの父親ディック・チェイニーもワイオミング州選出の連邦下院議員を務め、その後は国防長官や副大統領(ジョージ・W・ブッシュ政権で実質的な指揮を執った)を務め、「王朝(ダイナスティ、dynasty)」と形容されるほどの地盤を誇った。また、政治資金集めも親の七光りもあって成功していた。しかし、今回脆くも敗れ去った。

 リズ・チェイニーは元々ドナルド・トランプに好意的な人物であった。2016年の大統領選挙ではいち早く支持を表明し、トランプが女性スキャンダルに見舞われた際にも指示を変えなかった。トランプ政権下での連邦下院での法案への投票行動の記録では、トランプの意向に沿った形で、93%の割合でトランプの望むような投票行動を取った。トランプがリズについて「ワイオミングの人々は素晴らしい政治家を持っている」と称賛したこともあった。
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リズとドナルド・トランプ
 しかし、2020年の大統領選挙でトランプが敗北とされたことに対して異議を申し立てたあたりから、2人の関係は変わり、リズ・チェイニーはトランプ批判を行うようになった。そして、2021年1月6日の連邦議会にトランプ支持派が進入するという事件が起きてから、そのトーンは激しくなった。連邦下院でトランプ弾劾に関する投票が行われ(結果は否決)、共和党からは10名が賛成に投票した。その中にリズが含まれていた。

 トランプはリズに対する批判を強めた。そして、今年の中間選挙に関して、各地で自身が誰を支持するかということで、賛成派を増やし、反対派を議会から追い出すという戦略を取っている。リズに関しては議会から追い出すということで、トランプが支持する挑戦者が共和党予備選挙に出馬し、現職であり、チェイニー王朝の当主リズ・チェイニーを破った。連邦下院でトランプ弾劾に賛成した10名の共和党所属の下院議員のうち、4名は元々引退を決めていた。4名が再選を目指していたが共和党予備選挙で敗退した(ここにリズも含まれる)。2名が共和党予備選挙を突破したが、1名は選挙区の区割りが変わり、民主党が優勢となったために本選挙で敗れる可能性が高い。そうなると、1名だけが来年の議会に戻ってくるということになる。

 リズ・チェイニーを反トランプの結集軸、象徴にしようという声が出ている。リズの知名度と反トランプ姿勢を評価してのことだ。具体的には2024年の大統領選挙に向けて、2023年から具体的に始まる大統領選挙の共和党予備選挙に出馬すべきだという声だ。現在、各種世論調査で「2024年の大統領選挙の共和党候補者は誰が良いか」という設問に対して、ドナルド・トランプが1位という結果が出ている。トランプ自身はまだ何も言っていないが、共和党員や共和党支持者の間でトランプ待望論が根強い。これは現在、共和党内部で清新なリーダーが見当たらないということもある。
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リズとディック・チェイニー
 こうした動きを阻止するために、「トランプに共和党の候補者指名を受けさせないために邪魔をする」ということでリズ・チェイニーの待望論が出ている訳だ。しかし、チェイニーは反トランプの結集軸となり得るだろうか? 私はあまりにも「タマが悪い」と考える。リズの後ろにはアメリカを泥沼の対外戦争に引き込んだネオコン派がいる。そもそも父親ディック・チェイニーがネオコン派の総帥なのだ。また、トランプ政権下ではトランプと蜜月の関係にあった。そのことから、反トランプ派(共和党内部、民主党、無党派)がどれだけリズを一枚岩で押し上げるというのは難しいと私は考えている。

2024年の大統領選挙の共和党予備選挙で、2020年の大統領選挙本選挙でトランプが敗れた各州でリズが勝利すれば、トランプの候補者指名を阻止できる可能性はある。しかし、そう言うことになれば共和党は深刻な分裂状態、共和党が優勢な南部とそれ以外の地域で分裂が起きる。そうなれば漁夫の利を得るのは民主党側だ。トランプの候補者指名を阻止するために出るという後ろ向きの立候補は共和党に深刻なダメージを与えることになる。そうなれば共和党エスタブリッシュメント派でもあるリズ・チェイニーは、共和党破壊の張本人となってしまう。彼女にそれを甘受できるほどの覚悟はできないのではないかと思う。

 今年の中間選挙では共和党が連邦下院で過半数を獲得すると見られている。そして、共和党予備選挙ではトランプが支持する候補者たちが勝利している。来年の連邦議会はより反バイデン姿勢を取るようになり、バイデン政権の活動はより厳しくなるだろう。

(貼り付けはじめ)

ワイオミングでのチェイニーの敗北の重要なポイント(Key takeaways from Cheney’s loss in Wyoming

マックス・グリーンウッド筆

2022年8月17日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/3604803-key-takeaways-from-cheneys-loss-in-wyoming/

リズ・チェイニー連邦下院議員(ワイオ州選出、共和党)が火曜日にドナルド・トランプ前大統領の支持する予備選挑戦者に敗れた。この出来事は、前大統領が党内から批判者を排除しようとする努力の重要な一里塚の1つとなった。

チェイニーは、2021年1月6日の連邦議会議事堂での暴動に関与したトランプ前大統領の弾劾において、昨年連邦下院で行われた弾劾に賛成投票を行った数少ない連邦下院共和党議員の1人で、前大統領への批判の手を緩めることなく、「トランプは依然として法の支配とアメリカの民主政治体制に対する脅威である」と最後まで主張した。

しかし、チェイニーの連邦下院議員選挙共和党予備選は、トランプがホワイトハウスから追放されてから約2年後の共和党の未来と、その有権者の立ち位置について、いくつかの示唆を与えてくれるものだ。

チェイニーの選挙からの5つのポイントについて見ていく。

(1)トランプの共和党への支配力と掌握力はこれまでと変わらずに強い(Trump’s grip on GOP as strong as ever

火曜日にチェイニーが敗れたことで、トランプの批判者たちの間に残っていた、党の有権者たちが前大統領に逆らい、自分たちの進むべき道を切り開く準備ができたかもしれないという希望は打ち砕かれた。

また、少なくとも共和党優勢州の共和党員たちの間で、トランプの影響力がこれまでと同様に強いことが明確に認識されることになった。

トランプ前大統領はホワイトハウスから何百マイルも離れているが、共和党の有権者を自分の好む候補者に誘導し、不誠実とみなす人物からは遠ざけることができることをこれまでに繰り返し証明してきた。もちろん、例外もある。たとえば、ジョージア州知事のブライアン・ケンプは、トランプが支援する予備選挑戦者を簡単に敗退させた。

しかし、トランプが現代の共和党においておそらく最も強力な存在であることに疑いの余地はなく、この事実は、2024年にホワイトハウスへの復帰を検討しているトランプにとって特に好都合な兆候である。

(2)弾劾賛成派の共和党員たちは減少し続けている(Pro-impeachment Republicans are dwindling

来年、第118回連邦議会が召集される時、一つだけ確かなことがある。昨年、トランプ弾劾に賛成投票した共和党所属の連邦下院議員の大半は、その場にいないことになる。

トランプ前大統領の弾劾に賛成した連邦下院共和党議員10名のうち、4名は今年の選挙に立候補しないと発表している。チェイニーを含む別の4名は再選に挑戦したが、トランプが支持する予備選挙挑戦者たちに打ち負かされた。

共和党予備選で生き残ったのは2名だけとなった。デイヴィッド・ヴァラダオ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)と、ダン・ニューハウス(ワシントン州選出、共和党)である。

ニューハウスの地元は共和党が強い選挙区であることから、今年の再選は間違いなさそうだが、ヴァラダオは政治的にかなり不安定な立場にある。今年6月の予備選を辛うじて突破したが、現在は区割り変更のおかげで、民主党支持が多い選挙区からの出馬となる。

新しい選挙区割りによって、民主党は攻勢を強めており、ヴァラダオは民主党議会選挙委員会(Democratic Congressional Campaign CommitteeDCCC)の2022年中間選挙のターゲット者名簿に名前が載ってしまい、来年議会に戻ることを望むであろうが、厳しい戦いになることを示唆している。

ヴァラダオが仮に当選しても、これまでで最も親トランプ的な連邦下院共和党の中に身を置くことになる。

(3)反トランプの共和党内での戦略には限界がある(There are limits to the anti-Trump GOP strategy

反トランプ派の共和党所属の議員たちはトランプの猛烈な攻撃に耐えられるだけの幅広い有権者層をまとめられるはずだと期待していた人たちにとって、チェイニーの敗北は明らかな失望となってしまった。

しかし、そのような戦略の限界を思い知らされるものでもあった。チェイニーは、トランプ自身と彼による2020年の選挙は盗まれたものだという虚偽の主張を痛烈に批判したため、共和党の保守基盤となる人々の間で孤立し、不人気となった。

しかし、彼女のレトリックは、無党派層や民主党議員をしっかりと味方につけるには不十分だった。穏健派の多くは、共和党で最も強力な人物に挑む彼女の意志を賞賛したかもしれないが、他の問題についての彼女の保守的な投票記録は、彼女への投票を厳しいものにしたようだ。

しかし、チェイニーは民主党員や民主党支持者に自信に投票するよう働きかけなかった訳ではない。この夏の初め、彼女の選挙キャンペーンは、ウェブサイトや郵便物を通じて指示を出し始めていた。

(4)チェイニー氏は傷ついたが、めげずに頑張る(Cheney may be bruised, but she’s undaunted

敗北を認める前から、チェイニーの運命は明らかだったようだ。

彼女はトランプに償いをしようとはしなかったし、トランプの支持者に自分がまだ味方であることを訴えようともしなかった。彼女の締めくくりの選挙広告の一つには、父親であるディック・チェイニー元副大統領がトランプを激怒させる様子が描かれていた。

火曜日に敗北を認めた際も、チェイニーは断固として自分の信念を貫いた。リズ・チェイニーは、2020年の選挙の余波でトランプに味方していれば、予備選に勝てたかもしれないが、単にそうする気がなかったと述べた。

ただ、注目すべきは、彼女の敗北受諾演説には、次に何が起こるかについての潜在的なヒントが含まれていたことだ。彼女は、トランプを再び大統領にしないために「必要なことは何でもする」と誓い、リンカーン元大統領に言及し、彼もホワイトハウスを手に入れる前に選挙に負けたことを指摘したのである。

この言及と、トランプとトランプ主義に対する十字軍を続けるというチェイニーの誓いは、彼女がまだ政治のスポットライトから降りる準備ができていないことを示唆しており、彼女自身がホワイトハウスへの立候補を検討しているという憶測を更に掻き立てるかもしれない。

(5)トランプ氏の総選挙でのアピールポイントに焦点(Focus shifts to Trump’s general election appeal

チェイニーの敗北は、トランプが共和党から批判者を一掃しようとするドラマのクライマックスのようなものであった。彼女は、今年、予備選に臨む弾劾に賛成投票をした最後の下院共和党議員だった。

これでトランプの関心は今年11月の中間選挙に移り、共和党員や共和党支持者だけでなく全ての有権者がトランプが推薦する候補者たちに評決を下すことになる。

ワイオミング州は強固な共和党優勢州なので、ヘイグマンが次期連邦下院議員になることはほぼ確実だが、トランプが推薦した他の候補者はもっと厳しい戦いになると見られている。

例えばペンシルベニア州は、上院議員選挙の激戦区で、民主党のジョン・フェッターマン副知事が、トランプが支持する共和党の競争相手である、著名な医師メフメト・オズに大差をつけてリードしているとの世論調査結果が出ている。

ジョージア州でも同様の状況が展開されており、上院議員のラファエル・ウォーノック(民主党)が、トランプが選挙戦序盤に支持した元NFLのスター選手ハーシェル・ウォーカーに対して優位を保っている。

問題は、トランプの影響力が今年の共和党予備選のように、中間選挙で発揮されるかどうかだ。

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リズ・チェイニーの政治的な将来に関する5つの疑問(Five questions about Liz Cheney’s political future

マイケル・シュニール、ジュリア・マンチェスター筆

2,022年8月16日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/3604524-five-questions-about-liz-cheneys-political-future/

リズ・チェイニー連邦下院議員(ワイオミング州選出、共和党)は、火曜日に行われた連邦下院議員選挙共和党予備選挙で、トランプが推薦する弁護士ハリエット・ヘイグマンに敗れ、新たな政治的将来に向かうことを余儀なくされた。

共和党内部の政治的な王朝出身で、3期目の連邦下院議員を務めていたチェイニーは、連邦議会での任期が終了したら何をするのかということに関する憶測は着実に大きくなっており、2024年の大統領選挙に出馬するのかどうか、明確に示していない。

チェイニーは火曜日の夜、反抗的な演説を行い、トランプ前大統領と彼が作り出した運動、そして2020年の選挙について彼の主張を繰り返す候補者たちを非難した。それは同時に、敗北を受け入れる演説であり、これからも公職に関わる将来を約束するものとなった。

チェイニーは「だから、今夜皆さんにお願いしたいことがある。それは、ここを去るとき、私たちの共和国を破壊する者たちに対して、共和党員、民主党員、無党派層が共に立ち上がることを決意するというものだ」と語った。

しかし、「ドナルド・トランプが二度と大統領執務室に近づかないようにするために必要なことは何でもする」と誓いながらも、チェイニー自身が次に具体的に何をするのかについてはほとんど言及しなかった。

チェイニーは「この予備選挙は終わったが、これからが本当の仕事の始まりだ」と述べた。

リズ・チェイニーの政治的な将来については5つの疑問が存在する。

(1)チェイニーは2024年大統領選挙に出馬するだろうか?(Does she launch a 2024 presidential campaign?

ディック・チェイニー元副大統領の娘であるリズ・チェイニーは、2024年の大統領選挙出馬の可能性についての質問をかわし、トランプをホワイトハウスから締め出すという彼女の主な目標に話を戻したがった。

チェイニーはこれから、ケーブルテレビで仕事をする、シンクタンクに入る、本を書くといったことができるが、ジョージ・W・ブッシュとチェイニーのホワイトハウスで働いた共和党所属のストラティジストであるスコット・ジェニングスは、チェイニーがその目標を達成するための「次の論理的」ステップは2024年の大統領選挙への立候補であると語った。

ジェニングスは「できることは色々とあるだろうが、選挙戦を行うこと以上に良いプラットフォームがあるだろうか?」 と本誌とのインタヴューの中で述べている。

ジェニングスは続けて次のように述べた。「リズ・チェイニーが大統領選挙に出馬すれば、彼女が受ける報道の量、メディアの注目度は、世論調査での彼女の地位を大きく押し上げることは間違いないところだろう。もし、共和党支持の人々に、自分が重要だと思う考えを話したいと思っているのなら、大統領選の時期にそれをするのが最良の方法だと私は考える」。

論理的に言えば、チェイニーの大統領選挙出馬は可能だ。

チェイニーは連邦下院議員として、2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件を調査する連邦下院特別委員会の副委員長としての仕事を通じて、全国的な知名度を急上昇させた。NBCニューズによると、彼女は高い知名度を誇り、共和党内部に強いコネを持ち、3週間前の時点で選挙口座には740万ドルの資金が残っている状態であった。

そしてチェイニーは、パターン通り、火曜日の演説の多くをトランプとトランプ主義に集中させたが、2024年については何も否定しなかった。

(2)彼女はホワイトハウスを勝ち取るために出馬するのか、それともトランプを排除するために出馬するのか?(Does she run to win the White House — or keep Trump out of it?

2024年の共和党大統領選挙候補の座を勝ち取ることは、チェイニーにとって苦しい戦いになるだろうというのが関係者の共通認識だ。

「2024年の大統領選挙で共和党の候補者は誰が良いか」という世論調査のほとんどで、トランプが首位をキープしている。トランプ氏の政策を推進するフロリダ州知事ロン・デサンティス(共和党)が2位となっている。そして、まだ予備選挙の開票作業中ではあるが、チェイニーはトランプから30ポイント以上の差をつけられているようだ。

しかし、勝てる見込みがほとんどなくても、チェイニーは大統領選挙の共和党予備選挙の結果を左右するために出馬するかもしれない。

ジェニングスは次のように語った。「“成功の定義をどうするか?”ということになる。彼女にとっては、指名を獲得することよりも、トランプを指名させないようにすることの方が重要かもしれない。だから、成功をどう定義するか次第だと思う」。

彼女の存在は、トランプと彼の政策やレトリックを信奉する人々によって支配されている大統領選の会話からほとんど締め出されている反トランプの共和党員や死者たちに声を与えることにもなる。

マイク・ペンス元副大統領の補佐官を務めたオリヴィア・トロイは、「“アメリカを再び偉大に(MAGA)”運動全体に参加していない人、共和党の方向性に満足していない人、私のように昔ながらの伝統的な保守的共和党員にとって、リズ・チェイニーはより魅力的な選択肢に思える」と語った。

トロイは「彼女のような人が、政治の世界で、起きていることについて主張をし、真実を伝え続けようとする姿勢が重要だと思う」と述べた。

チェイニーは火曜日、米国の統一を維持するために戦ったリンカーン元大統領に言及した。

「私たちの党の偉大な勝利者、エイブラハム・リンカーンは、最重要な選挙に勝つ前に、連邦上院と連邦下院の選挙で敗れたのである。リンカーンは最終的に勝利を収め、連邦を救い、歴史に残るアメリカ人としての義務を定義した」と彼女は語った。

(3)彼女は残された任期で何をするのか?(What does she do with her time left in office?

2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件を調査する連邦下院特別委員会は、11月に共和党が議会の主導権を握ることを見越して、今後数カ月以内に調査を終結させようと、既に時間との戦いに突入している。

しかしそれ以前に、委員会はさらに公聴会を開き、トランプが自身の権力を維持するための計画の中心にいたという主張を補強するための追加情報を提示することを明確に誓っている。チェイニーはこのプレゼンテイションにおいて、おそらく大きな役割を果たすであろう。

アダム・キンジンガー連邦下院議員(イリノイ州選出、共和党)は先月、連邦議事堂で記者団に次のように語った。「私たちは現在負けてはいない。証言を名乗り出る人々が殺到しているのを見るのは素晴らしいことだ。退く時ではない」。

チェイニーはこれまでにも委員会の公聴会で中心的な役割を果たし、開会宣言や閉会宣言を行い、委員会で証言する証人たちに質問を行ってきた。

その際、トランプや共和党の同僚を批判することも臆することなく行っており、このやり方は残り数カ月の任期中も、強化はしないまでも、続けることになりそうだ。

共和党所属のストラティジストであるダグ・ヘイは、リズ・チェイニーが共和党予備選挙敗北後にどのような道を歩もうとも、委員会での仕事をスタートに、アメリカ政治における発言力のある存在であり続けることを確認すると『ザ・ヒル』誌に語った。

ヘイは「はっきりしているのは、彼女の声がどこにも届かないということだ。そしてそれは、16日調査委員会の次の公聴会から始まり、その後、彼女が決めたどんな形であれ、続けていくことになる」と述べた。

(4)今後、彼女はどのようなサポートを受けるのだろうか?(What kind of support does she have for future moves?

チェイニーは予備選挙で敗れたものの、全国に広大な支持者と献金者のネットワークを持っており、今後の政治活動に役立てることができるだろう。

リズ・チェイニー議員は、今年の第1四半期に自身の記録を更新し、300万ドル近くを集め、第2四半期には290万ドルという途方もない額を記録した。

チェイニーは、草の根の寄付に加えて、ジョージ・W・ブッシュ元大統領、ブッシュ元大統領の補佐官を務めたカール・ローブ、映画プロデューサーのジェフリー・カッツェンバーグ、億万長者のヘッジファンドマネージャー、セス・クラーマンなど全米の共和党・民主党の著名な寄付者たちからも資金を得ている。

しかし、共和党の大統領予備選挙では、チェイニーは共和党の予備選挙に参加できる有権者たちにアピールする必要がある。そして、反トランプの共和党員は彼女だけとは限らない。メリーランド州知事のラリー・ホーガン(共和党所属)は、2024年の共和党の希望として繰り返し浮上しており、まだ出馬を否定していない。

トロイは「より穏健な有権者にどのようにアプローチするかが重要になると思う」と述べた。

トロイは続けて「彼らは長年にわたり共和党で尊敬を集めてきた人物だ。そして、彼らの声は、多くの人ができない方法で聴衆に届けることができる」。

(5)大統領選出馬以外にできることは何か?(What could she do besides run for president?

2024年の大統領選挙への出馬が最も話題になっているが、チェイニー連邦下院議員には、トランプ大統領に対する闘争を続けるために追求できる別の道もある。

1つは、ケーブルニューズのコメンテイターやアナリストとして参加し、トランプ前大統領に対抗し、2020年の大統領選挙が盗まれたという彼の誤った主張を糾弾するための大きなプラットフォームを手に入れることであろう。

このルートは、元議員に人気のあるルートだ。2018年に当時のミズーリ州司法長官ジョシュ・ホウリー(共和党)に落選させられたクレア・マッカスキル元連邦上院議員(ミズーリ州選出、民主党)は、選挙の数カ月後に政治アナリストとしてNBCニューズとMSNBCに入社し、ジェイソン・チャフェッツ元連邦下院議員(ユタ州選出、共和党)は2017年に連邦下院を辞めた翌日に寄稿者とコメンテイターとしてフォックス・ニューズに採用された。

チェイニーは、今年11月の中間選挙に出馬しないキンジンガーのように、シンクタンクに参加したり、自身の政治行動委員会(PAC)を設立したりすることも可能である。

キンジンガー(トランプ批判のもう1人のトップで、1月6日事件調査委員会ではチェイニーの同僚の共和党議員)は、トランプを受け入れる共和党に異議を唱える運動として、「カントリー・ファースト(Country First)」と称する政治行動員会(PAC)を立ち上げた。

チェイニーにとってもう1つの選択肢は、ワシントンを去るトップ政治家がよくやる、本の執筆だ。2020年の選挙で3期目出馬を取り止めたウィル・ハード前議員(テキサス州選出、共和党)は、トランプを何度も批判した後、『アメリカの再起動:大きな問題を終わらせる(American Reboot: An Idealist's Guide to Getting Big Things Done)』と題した本を執筆した。

チェイニーが次の行動に何を選ぶかはまだ分からないが、ジェニングスによれば、チェイニー議員は最近の、そして今後の政治的な動きを推進する計画を持っている可能性が高いと語っている。

ジェニングスは次のように語った。「私はチェイニー家のことをよく知っているし、彼らがいかに賢く、どのように行動しているかも知っている。リズ・チェイニーは、ドナルド・トランプをホワイトハウスから締め出すことが自分の使命だと考えているのだろう。だから、それが使命なら、その使命を達成しようとする計画を構築するような人たち、それがチェイニー家なのだ」。

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リズ・チェイニーがワイオミング州での予備選挙で敗北(Liz Cheney defeated in Wyoming primary

マックス・グリーンウッド筆

2022年8月16日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/3604628-liz-cheney-defeated-in-wyoming-primary/

ドナルド・トランプのかつての盟友で、彼の最も熱心な共和党内部の批判者の1人となったリズ・チェイニー下院議員(ワイオミング州選出、共和党)は、トランプ前大統領と彼の共和党有権者への影響力に逆らって生き残るための長丁場の戦いの末、火曜日の予備選挙で敗れる見通しとなった。

NBCニューズとCBSニューズは、いずれも東部時間午後10時過ぎに選挙戦の結果を報じた。

チェイニーは、弁護士で共和党全国委員会(Republican National Committee RNC)委員を務め、昨年トランプから支持を受けたハリエット・ヘイグマンに大敗した。ヘイグマンは来年、共和党が圧倒的優勢な州の唯一の連邦下院議員としてチェイニーの後を継ぐ大本命となる。

選挙結果が決まった後、チェイニーは支持者たちに対して、ヘイグマンに電話で選挙の敗北を受け入れると伝えたと述べた。

「私たちの共和国は、選挙結果を誠実に受け入れるという、全ての候補者の善意に依拠している。そして今夜、ハリエット・ヘイグマンがこの予備選挙で最も多くの票を獲得した。彼女は勝ったのだ」と、チェイニーは熱弁をふるった。

火曜日のヘイグマンの勝利は、2021年16日の連邦議会議事堂襲撃事件で、昨年トランプ弾劾に賛成投票した10名の共和党議員を連邦下院から排除しようとするトランプの努力における最後の、そしておそらく最も重要な一里塚であった。

その10名のうち、4名は今年の選挙に出馬しないことを選択し、チェイニーを含む4名はトランプが支持する挑戦者に共和党予備選挙で敗れている。これまで予備選の挑戦者に買って生き残ったのは2名だけだ。デイヴィッド・ヴァラダオ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)とダン・ニューハウス(ワシントン州選出、共和党)である。

チェイニーの共和党予備選敗北は、特にトランプにとって象徴的な勝利である。チェイニーは昨年、前大統領の弾劾に賛成した後、トランプについて「アメリカ合衆国憲法をほとんど顧みない反民主政治体制の強者」と頻繁に批判し、トランプ主義に対する共和党の防波堤として台頭してきた。

そうした批判によって共和党の同僚たちと揉め、連邦下院共和党議員会会長を解任されることになった。

しかし、事態はそれだけにとどまらなかった。

共和党全国委員会とワイオミング州共和党は昨年、チェイニーの問責決議案を提出し、多くの同僚共和党議員たちがヘイグマンに賛同してチェイニーを更迭しようとした。

しかし、チェイニーは反抗的な態度を維持した。チェイニーは、2021年1月6日の暴動を調査する下院特別委員会のメンバーに選ばれた2名の共和党員のうちの1名であり、最終的には副委員長に昇格した。

その間、チェイニーは予備選挙で厳しい逆風に直面し、トランプはワイオミングでのレースに特に強い関心を寄せていた。彼のティームは数カ月かけてチェイニーに対する共和党の予備選挙挑戦者候補を面接し、元大統領自身も何人かの候補者と面接を行った後、ヘイグマンを予備選挙挑戦者に選んだ。

その結果、予備選挙の候補者は大幅に絞られ、不動のトランプ前大統領の同盟者かとチェイニーかという明確な二者択一となった。

火曜日の夜の演説でチェイニーは、2020年の選挙に関するトランプの虚偽の主張と投票を覆す努力に付き合っていれば、自分が予備選で勝っていただろうと訴えた。結局のところ、そうする気になれなかったとも述べた。

チェイニーは次のように語った。「2年前、私はこの予備選挙で73%の得票率で勝利した。また同じことをするのは簡単なことになるはずだった。道は明らかだった。しかし、そのためには、2020年の選挙に関するトランプ大統領の嘘に、私が1人で付き合わなければならなかっただろう。民主政治体制を崩壊させ、共和国の根幹を攻撃しようとする彼の継続的な努力を無視しなければならなかっただろう。それは私にはできないし、しない道だった」。6年前の2016年のホワイトハウス立候補の際、チェイニーはトランプを支持し、トランプが女性について下品な発言をしている録音が公開され、多くの共和党議員がトランプと距離を置く中でもその支持を維持した、チェイニーのトランプ前大統領への痛烈な批判は、ワイオミング州選出の3期連続の連邦下院議員として、異例の展開となった。

データ専門ウェブサイト「ファイヴサーティーエイト(FiveThirtyEight)」によると、チェイニーは連邦下院議員として、約93%の割合でトランプの立場に沿った票を投じていたということだ。

しかし、2020年大統領選の余波と、選挙が自分に不利に操作されているというトランプの主張が、チェイニーを二度と戻れない限界点まで追い詰めることになった。

火曜日の予備選に向けて、世論調査でヘイグマンに大差をつけられていても、チェイニーはトランプを堂々と批判していた。今月初め、彼女の父親であるディック・チェイニー元副大統領は、彼女のために選挙広告に出演し、トランプを「私たちの共和国に対する脅威」と激しく非難した。

リズ・チェイニーもまた、保守派を自分の大義に結集させることはほとんどしなかった。ワイオミング州選出連邦下院議員リズ・チェイニーは、予備選挙で行われた唯一の討論会で、最後の発言で有権者に対し、自分の政治方針に同意できないのであれば、他の候補者に投票すべきだと述べた。

チェイニーは次のように語った。「私が連邦下院議員に就任する際の宣誓の言葉を破ることは決してないということを皆さんに理解して欲しい。もし私の宣誓とは異なる考えを持つ人を探しているのなら、このステージにいる他の人に投票して欲しい」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 今年2022年はアメリカでは中間選挙(連邦上院の一部・連邦下院の全議席・州知事の一部)が実施される。ジョー・バイデン政権と民主党が過半数を握っている上下両院の仕事ぶりに対する、「中間試験」が実施される。現在のところ、民主党が上下両院で過半数を失う見通しとなっている。バイデン大統領の仕事ぶりに対しては、低い支持率となっている。

 2024年には大統領選挙が実施される。現在のバイデン大統領の低支持率のため、「2024年大統領選挙にバイデンは出られない、バイデンは出るべきではない」という考えが広まっている。そうした中で、2024年の大統領選挙で、「ヒラリー・クリントンが出るべきだ」という声も上がっているようだ。また、「バイデンが出るならば共和党のリズ・チェイニーを副大統領にして超党派の政権を目指すべきだ」「とりあえず民主党と共和党の連合政権を目指すべきだ」という考えが出ている。以下の記事にあるように、『ニューヨーク・タイムズ』紙の著名なコラムニストであるトーマス・フリードマンがこのような考えを述べている。

 二大政党制であるアメリカで、民主党と共和党が連合を組んだら誰と戦うのかということが問題になる。第三党もあるにはあるが、その勢力は吹けば飛ぶようなものだ。民主党と共和党が連合政府となれば実質的には一党独裁と変わらない。トーマス・フリードマンはそこまでおかしくなっているのかと驚くばかりだ。
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リズ・チェイニーとグータッチをするバイデン
 しかし、トランプ対反トランプということならば戦いになる。ポピュリズム対エスタブリッシュメントとの戦いとも言い換えることができる。しかしそうなれば、現在の民主、共和の二大政党制の枠組みは変更しなければおかしなことになる。「人民の生活が一番党(America First Party)」対「ワシントンのエスタブリッシュメントが一番党(Washington DC First Party)」とでもしなければならない。

 「バイデンでは勝てない」「トランプが再び出てきて勝利してしまう」という恐怖感が、民主党内を支配しているようだ。今年の中間選挙において上下両院で民主党が過半数を失えば、政権運営はますます厳しくなるばかりで、バイデンの年齢も考えると2024年の大統領選挙は別の人でということになるのは自然だ。しかし、副大統領であるカマラ・ハリスの評価も低いままということになると、「ここはやっぱりヒラリーで」という考えが出てくる。しかし、それは時計の針を強引に戻すようなものだ。

 そこで出てくるのが「トランプの当選を阻止する」ということに主眼を置いた、ワシントンDCのエスタブリッシュメント連合である「民主党のバイデン大統領と共和党のリズ・チェイニー副大統領」の超党派政権の発足ということだ。リズ・チェイニーが反トランプの旗頭であることはこのブログでも再三ご紹介した。「民主政治体制を守るため」と言いながら、このような民主政治体制を愚弄するような馬鹿げた考えが出てくるというのは、アメリカの断末魔を聞いているかのようだ。

 そして、ドナルド・トランプ前大統領の影響力の大きさに驚くばかりだ。中間選挙での共和党側議員たちの構成もどうなるのか、という点にも注目していかねばならない。

(貼り付けはじめ)

ヒラリーが2024年に?戦いということを考えるならば、ヒラリーが民主党側にとって最高の希望ということになるかもしれない(Hillary 2024? Given the competition, she may be the Dems' best hope

ジョー・コンチャ筆

2021年12月15日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/585843-hillary-2024-given-the-competition-she-may-be-the-dems-best-hope

来たる2024年に行われるホワイトハウスの主の座をめぐるレースは再戦という形になる可能性がある。しかし、私たちは「バイデン対トランプ・ラウンド2」について話しているのではない(なんてことだ)。

そうではなくて、2016年の大統領選挙民主党候補だったヒラリー・クリントンが、80代になるジョー・バイデン大統領が2期目を目指さないことを決めた場合、有力な候補者を探さなければならないが、その選考の過程で興味深い存在となる。このように考えられる理由は何か?IアンドITIPPによる世論調査の結果によると、バイデンに2期目も大統領を務めて欲しいと考える有権者は22%しかいなかった。民主党支持者に限って言えば、バイデン大統領の2期目に向けた出馬を望む有権者はわずか36%で、「他の誰か」と名付けられた、ある大物候補は44%の支持を得て1位になっている。

民主党のベンチは、最近のニューヨーク・ジェッツ並に厳しい状況になっている。カマラ・ハリス副大統領はどうだろうか?USAトゥディ紙の世論調査によると、彼女の支持率は28%だった。アンドリュー・クオモ前ニューヨーク州知事はどうだろうか?彼はもう知事の座から追い落とされ、徹底的に痛めつけられた。ギャビン・ニューサム州知事(カリフォルニア州選出、民主党)はどうだろうか?彼は今年(2021年)初めにリコール選挙の対象となり、民主党が圧倒的に優位なカリフォルニア州で州知事の座から追放されるのを避けるために、多くの時間と資源を選挙対策に費やさなければならなかった。

ピート・ブティジェッジ運輸長官はどうだろうか?40歳になったばかりで、政治家としての経歴における知識と経験不足が指摘されている。バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、民主党)はどうだろうか?エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)はどうだろうか?コーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)はどうだろうか?

こうした人々が選択肢の中に入るのなら、ヒラリーが入らないということがあるだろうか?ヒラリーは現在74歳だ。バイデンに比べれば、まるで若返りの泉に浸かっているようなものだ。そして彼女は、5年経った今でも、実際にドナルド・トランプに負けたことに呆然としている。実際、ヒラリーは自分が負けた理由や、どうせ選挙はトランプとロシアに盗まれたのだ、とずっとぶつぶつと文句を言っている。この敗北を素直に受け入れていない点ではヒラリーとトランプと変わらないようだ。このような発言はトランプにとっては受け入れがたいのだが、ヒラリー(あるいはステイシー・エイブラムス)がやればOKなのだ。不公平な感じであるが、ルールはルールだ。

トランプがホワイトハウスを奪還する可能性について、ヒラリー・クリントンは最近になって次のような警告を発した。「私たちは、これらの嘘や虚偽情報、法の支配や制度を弱体化させる組織的な努力に屈するのか、それとも立ち向かうのか?」。

そうなのだ、これは現実的な可能性を持っているのだ。最近実施された複数の世論調査の結果によると、「2024年の大統領選挙でトランプ対バイデンとなったらどちらを支持するか?」という仮説的な質問について、トランプがバイデンを上回っている。昨年(2020年)のアメリカ大統領選挙で民主党候補者だったジョー・バイデンがアメリカ史上最多の得票数8100万票をかくとくしたことを考えると、この結果は驚くべきものだ。

ヒラリーが2024年大統領選挙に出馬するかもしれない可能性を示すもう一つの兆候は、2016年に読むはずだった勝利演説を読むという彼女の奇妙な決定の形で現れている。これは「マスタークラス」というヴィデオ配信の一部で行われた。それは、読者である皆さん方が今までに見たこともないような、最もぞっとするようなものだった。

元大統領夫人(ファーストレディ)、連邦上院議員、国務長官を務め、民主党大統領選挙候補となった人物が、選挙の敗北演説を読んだ。もちろん、もし私が『ニューヨーク・タイムズ』紙から85%の確率で当選すると言われた選挙で、一度も公職に就いたことのない人物に負けたとしたら、私だって納得して受け入れられないだろう。

しかし、いずれは、5年以上経ったヒラリーが、気品を示すと思う人もいるだろう。謙虚さとある程度の成熟を示すことになるだろうと。そして、もうこのことについて頻繁に話すことはないだろう。

その代わりに、ヒラリーはまだ前面に立っている。5年前に読むはずだった勝利演説を読む敗北候補、それがヒラリーだ。敗北した大統領選挙候補がこんなことをしたことがあるのかと聞かれたら 答えはノーだ。

2016年大統領選挙以来、ヒラリーは、女性差別、性差別、有権者ID法、バーニー・サンダース、前FBI長官ジェームズ・コミー、マット・ラウアー、その他数十の要因とともに、敗因を非難している。(彼女はウィスコンシン州での選挙活動を怠ったことや、“私は彼女と共にある(I'm With Her)”が掴み所のない選挙スローガンであったことは取り上げていない)

ヒラリーの行動は、白昼公の場所で5年間公開セラピーを続けているようなものだ。そして、まともな世界なら、こんな演説を読んだ彼女は失笑されたことだろう。しかし、これはむしろ、クリントンというブランドに対する欲求がまだあるかどうかを確かめるための試運転のように感じられた。

カマラ・ハリスはバイデンのプランBとなるはずだった。彼女は我が国の歴史上初の女性大統領になるよう仕向けられるはずだった。しかし、ハリス副大統領にとってはうまくいっていない。ハリスは既に、世論調査の支持率の数字が低いおかげで、政府高官たちが驚くべき速さで離反している。

ヒラリー・クリントンは、「女性初の大統領」という称号が自分にとって生まれながらの権利であると常に考えていたようだ。そして、ジョー・バイデンが出馬するかどうかにかかわらず、民主党側の人材がいかに哀れであるかを考えると、彼女は、夫があれほど威信を傷つけた米国大統領職を勝ち取るための2度目のチャンスを得ることができるかもしれないのだ。

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ヒラリー・クリントンが2024年大統領選挙でトランプが再び出馬するだろうと予測(Clinton predicts Trump will run again in 2024

マウリーン・ブレスリン筆

2021年12月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/media/585518-clinton-predicts-trump-will-run-again-in-2024

元米国国務長官で2016年大統領選挙民主党候補だったヒラリー・クリントンは、トランプ前大統領が2024年にもう一度大統領の座を狙うとの見方を示し、彼が再び当選した場合、アメリカの民主政治体制の「終焉を迎える可能性がある」と述べた。

クリントンは、NBCのテレビ番組「サンデー・トゥデイ」で放送された、NBCのウィリー・ガイストとのインタビューでこのように述べ、更に「私は賭け事はしないのだが、もし賭け事をする人間ならば、現在の時点では、トランプが再出馬すると言うだろう」とも述べた。

ヒラリーは更に「トランプが準備をしているように見える。そして、彼がこれまで起こしたことの責任を取らないとなれば、また同じことを繰り返すことになる」とも述べた。

ヒラリーはまた、共和党がトランプという「煽動政治家(デマゴーグ)」に乗っ取られていると批判し、彼女の元同僚である共和党議員たちが「選挙に通って議員を続けるために、自分たちの信念を壁にかけてしまっている」と述べた。 "オフィスに入るときに背骨を壁に掛けている

ヒラリー・クリントンは、トランプが再び大統領になる場合、それは民主政治体制にとっての重要な「分岐点」となるだろうと予測した。

ヒラリーは次のように述べた。「民主政治体制の終焉になるだろうと考えている。あまり過激なことを言うつもりはないが、今が分岐点になり得ることを理解してもらいたい。もし、トランプ自身や彼のような人物が再び大統領に選ばれ、彼の言いなりになる議会を持ったとしたら、皆さんはそれがアメリカ、私たちの国だなどとは考えないだろう」。

ヒラリーは、2016年の大統領選挙で敗北を喫したことについて「責任と罪悪感を持つ瞬間があった」とも述べた。

ヒラリーは次のように語った。「私は人々に警告を発しようとしていた。これは本当に危険なことなのだと訴えようとした。トランプが同盟を結んでいる人たち、彼らが言っていること、彼がするかもしれないことは本当に危険なのだと。ジム・コミーと大統領選挙の10日前に彼が行った決定がなければ、私は勝利していただろうと今でも考えている」。

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ヒラリー・クリントンが2016年大統領選挙で読むはずだった勝利演説を初めて公の場で読み上げる(Hillary Clinton publicly reads her 2016 victory speech for the first time

2021年12月10日

ロイター通信

https://www.reuters.com/markets/rates-bonds/hillary-clinton-publicly-reads-her-2016-victory-speech-first-time-2021-12-10/

2021年12月10日付(ロイター通信)。ヒラリー・クリントンは、2016年大統領選挙でドナルド・トランプ前米大統領に勝利した場合に行うはずだった勝利演説を初めて公の場で読み上げた。

前米国務長官であり大統領夫人を務めたヒラリーが立ち直り力(レジリエンス、resilience)について行う「マスタークラス」というヴィデオ配信での授業において、勝利演説の一部を朗読したと、ヴィデオ配信「マスタークラス」は木曜日にプレスリリースで発表した。

「この授業では、2016年の大統領選挙に勝っていたら行いたいと思っていた勝利演説を皆さんと共有したいと思います。これを通じて私の最も公的な敗北の1つに正面から向き合おうと思います 」と、「NBCトゥディ」のトークショーのウェブサイトにあるヴィデオのナレーションでクリントンは言った。

ヴィデオ映像で、クリントンが原稿を開き、団結の重要性に触れた演説の抜粋を読み上げた。

「アメリカ国民の皆さん、今日、皆さんは全世界にメッセージを送りました.私たちは、お互いの違いによってのみ定義されることはなく、“私たち対彼ら”という分断の国でもありません。アメリカン・ドリームは全ての人にとって十分な大きさです」と彼女は読んだ。

そして、ヒラリーは、米国初の女性大統領となった彼女の勝利が、「アメリカと世界にとって画期的な出来事であった」と演説の中で指摘した。

勝利演説には、「私は、女性が選挙権を持つ前に生まれた女性に会ったことがあります。なぜ女性が大統領になったことがないのか、理解できない少年少女に会ったこともあります」と書かれている。

演説には、「私の勝利は、全てのアメリカ人、男性、女性、少年、少女の勝利です。なぜなら、私たちの国が再び証明したように、天井がないとき、空は無限大だからです」と書かれている。

亡き母の過酷な幼少期や、過去に戻れるなら勝利のために何を言ったかなどを話す際に、ヒラリーは涙ぐんでしまった。ヒラリーの母ドロシー・ハウエル・ローダムは2011年に92歳で死去した。

ヒラリーは「私の夢は、彼女のところに行き、“私を見て、私の話を聞いて。あなたは生き残り、自分の良い家庭を持ち、3人の子供を持つことができた”と言うことです」と語った。

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バイデンが2024年の大統領選挙でハリスが副大統領候補になると発言(Biden says Harris will be his running mate in 2024

アレックス・ガンギターノ筆

2022年1月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/590487-biden-says-harris-will-his-running-mate-in-2024?utm_source=thehill&utm_medium=widgets&utm_campaign=es_recommended_content

バイデン大統領は水曜日、2024年大統領選挙でハリス副大統領が自分の伴走者(副大統領候補)になると明確に述べた。これは彼が出馬することを示している。

バイデンは、ハリスの投票権法案に関する活動に満足しているか、また、彼女が伴走者になることを約束できるかという質問に対して、「両方の質問に対する答えは、はい、そうですとなる」と答えた。

バイデンは、ホワイトハウスでの2回目の単独記者会見で、自分の答えについて追加の説明をしたいかと聞かれ、「その必要はない」と答えた。

「彼女は私の伴走者になる。そして第二に、私が担当させたのだが、彼女は良い仕事をしていると思う」とバイデンは述べ、ハリスが投票権法案について主導していることに言及した。

記者会見のタイミングは、水曜日に投票権に関する法案を推進する連邦上院の民主党議員たちが、投票権に関する法案を可決するためにフィリバスターを変更することを支持するよう同僚に最終的な嘆願を行ったのと一致する。

ハリスは、月曜日のマーティン・ルーサー・キング・ジュニア・デーを記念して、投票権に関する法案を可決することによって公民権の巨人の遺産を尊重するよう議員に促した。

先週、ハリスは2024年大統領選挙で大統領選挙候補者として出馬するかどうかに関する質問について全く気にしないと述べた。そして、こうした質問は「ワシントンD.C.のような場所でよくある評論やゴシップの一部」とも述べた。

「バイデンは2024年にリズ・チェイニー連邦下院議員(ワイオミング州選出、共和党)を副大統領候補に据えて、超党派の大統領選を行うべきだ」という『ニューヨーク・タイムズ』紙のコラムが発した提案について、NBCのクレイグ・メルヴィンから質問された。ハリスはその記事を読んでいないと述べ、「私はこのような問題についての高級なゴシップには本当に関心がない」と付け加えた。

しかし、ハリスは先月(2021年12月)、『ウォールストリート・ジャーナル』紙の取材に対し、バイデンと2024年の選挙戦について議論したことなどないと述べ、2024年大統領選挙民主党候補指名に関する憶測に拍車をかけた。

バイデンと側近たちはこれまで繰り返し、バイデンが2024年の大統領選挙に、2期目を目指して出馬する計画だと述べてきた。しかし、彼の年齢が79歳であること、そして最近の世論調査での支持率が下落し続けていることから、将来の計画について常に疑義が出ているのが現状だ。

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『ニューヨーク・タイムズ』紙コラムニストが2024年大統領選挙でバイデン・チェイニーのコンビを主張(NYT columnist floats Biden-Cheney ticket in 2024

ドミニク・マストランジェロ筆

2022年1月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/media/589363-nyt-columnist-floats-biden-cheney-ticket-in-2024

『ニューヨーク・タイムズ』紙のあるコラムニストが、2024年大統領選挙で、バイデン大統領が共和党のリズ・チェイニー連邦下院議員(ワイオミング州選出、共和党)と組んで超党派の態勢で大統領選を戦うことを提案している。

コラムニストのトーマス・フリードマンは木曜日のコラムで次のように書いている。「これが民主政治体制への脅威を打ち倒すための民主的な方法である。この方法を採用しないことは、民主政治体制の滅亡につながる道だ。これがかなり実現不可能な内容だということを私はちゃんと分かっている。アメリカは議会制度の柔軟性を持っておらず、また比例代表システムを採用していない。しかしそれでも、私はこの方法を提案する価値があると思う。現状は、前例のないほど民主政治体制の崩壊に近づいているのだ」。

フリードマンは、最近、多様な国民連合政府が発足したイスラエル・パレスチナの舞台を、米国も見習うべきなのかと考えたと書いている。

「2024年にアメリカが必要としているのは、ジョー・バイデンとリズ・チェイニーというチケットなのか?あるいは、ジョー・バイデンとリサ・マコウスキー、カマラ・ハリスとミット・ロムニー、ステイシー・エイブラムスとリズ・チェイニー、エイミー・クロブシャーとリズ・チェイニーか?あるいは他の組み合わせでもいい」とフリードマンは書いている。

チェイニーは、2021年1月6日のアメリカ連邦議会議事堂襲撃事件以降、トランプ前大統領とその同盟者たちを批判する代表的な人物として登場した。チェイニーは、襲撃事件を調査する議会特別委員会で共に務める民主党議員たちと同様に、2020年の大統領選挙の完全性に関してトランプが繰り返した虚偽の主張が襲撃事件を引き起こし、選挙に対する国民の信頼を脅かし続け、政治暴力のリスクを高めていると述べている。

政治学者のスティーブン・レヴィツキーはフリードマンに次のように語った。「民主党とのイスラエル型の連合の一部として、リズ・チェイニーについて話す用意があるべきだ。今、最優先の目標はただ一つ、民主主義体制を守ることだ」。

レヴィツキーは続けて次のように述べた。「普通の選挙と同じように扱えば、我々の民主政治体制はコイントス(coin flip)の確率で生き残ることができる。そのような確率は、私は実行したくありません。これは、普通の「ロバ対ゾウ(共和党対民主党)」の選挙ではないことを、国民とエスタブリッシュメントに伝える必要がある。これは民主政治体制対権威主義支持者の選挙なのだ」。

フリードマンは、バイデンが定期的にフォローしているとされるメディアの人物の一人であると言われている。フリードマンは昨年夏、中東のイスラエル人とパレスチナ人の対立をうまく和らげることができれば、大統領はノーベル平和賞を受賞する可能性があると書いている。

フリードマン氏のコラムは、2024年の大統領選挙にヒラリー・クリントン前国務長官が出馬するという「もっともらしい」シナリオを示唆する『ウォールストリート・ジャーナル』紙の論説が広く共有されたのと同日に掲載された。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 連邦下院は2021年7月1日付で、2021年1月6日に連邦議事堂で起きた襲撃事件について調査を行う特別委員会を設置した。英語では「United States House Select Committee on the January 6 Attack」、決まった訳語はないが、「アメリカ連邦議会1月6日襲撃事件特別委員会」と私は訳す。

 2021年1月6日に連邦上院で、大統領選挙の選挙人による投票結果の承認過程中に、議事堂前に集まっていた人々が進入してきた事件であり、複数の死傷者が出た。私はこの事件は誘導されて起きた事件だと考えている。数日前から人々が集まって騒動が起きるということは明白であり、そのことをFBIなどは掴んでいたが、地元警察や議事堂の警備に伝えていなかった。そのために進入前に阻止できなかった。911事件や真珠湾攻撃と同じ構図だ。

 事件後、連邦議会で調査のための特別委員会の設置を求める声が民主党側から上がった。連邦上院と連邦下院で共同の特別委員会設置が望まれたが、連邦上院ではフィリバスター(filibuster)で設置はできなかった。フィリバスターとは、連邦上院の慣習で、ある法案について審議をしていて、打ち切って採決をしようとする際に、6割以上の議員の賛成が必要となる。連保上院は現在50対50の同数であり、6割の賛成で採決に至ることができなかった。

 一方、6月末に連邦下院では委員会設置についての採決が行われ、民主党議員全員と共和党議員2名の賛成、共和党議員16名の棄権、共和党議員190名の反対で、222対190(定数は435)となり、設置が決定した。

 委員の定数は多数党である民主党が7名、少数党である共和党が6名であるが、共和党側で委員になっているのは、リズ・チェイニー連邦下院議員(ワイオミング州選出、共和党)とアダム・キンジンガー連邦下院議員(イリノイ州選出、共和党)の、委員会設置に賛成した2名だけであり、その他の委員は空席となっている。リズ・チェイニーが副委員長(共和党側のトップ)を務めている。2名ともにトランプに対する攻撃姿勢を明確にしている。

 この異常な事態は、連邦下院少数党(共和党)院内総務ケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)が共和党所属の各議員に対して、委員の使命を断るようにと求めたこと、2022年の中間選挙で、トランプ派から対抗馬が出て、選挙で落選させられるのを恐れてのことである。

 このように極めて偏った委員会の構成になっている中で、トランプの側近と元側近たちに対して、委員会に出席し、証言を行うように求める召喚状が出された。これは、トランプ派に対する攻撃である。9月2日にリズ・チェイニーが副委員長に就任してからの動きであることから、このことは明白だ。召喚状を受け取った4名は病気などの理由がない限り、出席しなければならない。しかし、この特別委員会の設立の経緯や構成から、「超党派で正当性を持つものではない」ということを理由にして、出席を拒むことも考えられる。トランプ派と反トランプ派の戦いの一つの前線として、これからの動きが注目される。

(貼り付けはじめ)

1月6日事件調査委員会がトランプの補佐官だったバノンやメドウズに召喚状を送付(Jan. 6 panel subpoenas four ex-Trump aides Bannon, Meadows

レベッカ・ベイッツ筆

2021年9月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/national-security/573743-jan-6-panel-subpoenas-four-ex-trump-aides-bannon-meadows

2021年1月6日の連邦議事堂攻撃を調査する特別委員会は木曜日、トランプ大統領の補佐官だった4名に召喚状を送った。その中にはマーク・メドウズ(Mark Meadows)首席補佐官(Chief of Staff)と戦略担当スティーヴン・バノンが含まれている。

召喚状は、彼ら以外にも、ダン・スカヴィーノ(Dan Scavino)コミュニケーション担当首席補佐官代理(deputy chief of staff for communications)と、クリストファー・ミラー国防長官代理の首席補佐官(chief of staff to then-acting Secretary of Defense)のカッシュ・パテル(Kashyap Patel)に召喚状が送られた。

4名は10月中旬の公聴会での宣誓供述に出席するように求められている。

それぞれの召喚状には、特別委員会がそれぞれの人物に対して、攻撃発生前の出来事への関与を疑ったり、攻撃発生後の対応への関与を疑ったりする根拠が書かれている。

特別委員会はバノンへの召喚状の中で次のように書いている。「貴殿は2021年15日にウィラード・ホテルにおり、連邦議会議員たちに対して翌日の大統領選挙結果承認を阻止するように説得していたこと、1月6日の出来事にも関連していることが確認されている」。

召喚状にはまた次のように書かれている。「貴殿はまた、2020年12月30日に当時のトランプ大統領と連絡を取ったとも言われている。また。その他の日時にも連絡を取った可能性がある。そして、その際に、1月6日の選挙結果承認阻止に向けて、努力をするように促したとされている」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2022年にはアメリカでは中間選挙(Mid-Term Elections)が実施される。連邦下院議員の全議席(435)、と連邦上院議員(100議席)の約3分の1、州知事の一部の選挙が実施される。大統領選挙と大統領選挙の中間に実施される選挙であり、現職大統領に対する「中間テスト」のような意味合いを持つ。任期4年のうちの前半2年の「出来」はどうであったかということで、大統領を出している政党に対する投票で評価が決まる。

 拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』やこのブログでもご紹介してきたが、ジョージ・W・ブッシュ大統領時代の副大統領、実質的には大統領であったディック・チェイニーの娘リズ・チェイニー連邦下院議員(ワイオミング州選出、共和党)の選挙に注目が集まっている。拙著でも書いたように、リズは父親ディック・チェイニーの威光を背景にして、連邦下院議長を目指して連邦下院共和党内部の出世の階段を上っている。詳しくは拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』をお読みいただきたい。

 リズは下の記事にある通り、ドナルド・トランプ前大統領に対する対決姿勢で名前を売った。2021年7月に設置された連邦下院1月6日事件委員会の副委員長(共和党側ではトップ)を務めている。こうしたリズの動きに対して、トランプは反対姿勢を鮮明にし、来年の選挙(連邦下院議員選挙)の共和党予備選挙で現職のリズに挑戦するハリエット・ヘイグマンへの支持を表明した。それに対してリズは「かかって来いよ」と挑発した。

 リズの援軍として、父親ディックにお世話になったジョージ・W・ブッシュ元大統領がおっとり刀で駆けつけて、資金集めパーティーを開催することを決めた。ブッシュ元大統領は、トランプを遠回しに批判し、トランプもまた「バカなくせに偉そうなことを言うなよ」と攻撃している。ワイオミング州下院議員選挙は、ブッシュ、トランプの大統領経験者2人の戦いになりつつある。更に言えば、ワシントンのエスタブリッシュメント派対ポピュリズム派の大きな枠組みの戦いの代理戦争(proxy war)状態になっている。この選挙区はこれからますます注目を集めていくだろう。

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ブッシュがチェイニーのために資金集めパーティーを開催(Bush to hold fundraiser for Cheney

マイケル・シニール筆

2021年9月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/573331-bush-to-hold-fundraiser-for-cheney

ジョージ・W・ブッシュ元大統領は来月、リズ・チェイニー(Liz Cheney、1966年-、55歳)連邦下院議員(ワイオミング州選出、共和党)のために資金集めパーティーを計画していると報じられた。3期連続当然中のリズ・チェイニーは、トランプ前大統領と彼の協力者たちによるチェイニーの追い落とし運動の中で議席を維持しようと戦っている。

今回のチェイニーのための資金集めパーティーは、ブッシュ元大統領にとって、2022年の中間選挙のための最初のイヴェントとなる。今回のパーティーは2021年10月18日にテキサス州ダラスで開催予定だと『ウォールストリート・ジャーナル』紙と報じた。同紙はパーティーの招待状のコピーを入手した。

今回の資金集めパーティーはカール・ローヴが共同主催者となっている。カール・ローヴは、長年にわたりブッシュ元大統領の政治アドヴァイザーを務め、2020年の大統領選挙ではトランプの再選に向けて相談を受けたこともあった。加えて、ケイ・ベイリー・ハッチンソン元連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)も主催者に名を連ねている。ハッチンソンはトランプ政権下で、NATO担当米国大使を務めた。

リズ・チェイニーの父親はブッシュ大統領の任期8年(2期)の間、ホワイトハウスで副大統領を務めた。

今回の資金集めパーティーによって、二人の大統領経験者を戦わせることになる。チェイニーの選挙は2022年の中間選挙において人々の注目を最も集めているものである。

トランプは今月初め、チェイニーに対する挑戦者ワイオミング州検事ハリエット・ヘイグマン(Harriet Hageman)への支持を明らかにした。トランプは、チェイニーが今年1月のトランプ大統領への段階で賛成票を投じ、大統領選挙の結果は盗まれたものだというトランプの主張を否定したことを受け、チェイニーへの反対姿勢を強めた。

チェイニーは1月6日の連邦議事堂進入事件についてトランプに責任があるとして弾劾に賛成票を投じた。また、この反乱事件について調査する委員会のメンバーにもなった。チェイニーはトランプの反対姿勢と対抗馬への支持表明を受け、ツイッターで次のように書いた。「かかって来いよ(Bring it)」。

ブッシュは、2001年9月11日のテロ攻撃を記念する日に演説を行い、その中でアメリカ国内の過激派による脅威を憂慮し、「海外の暴力的な過激派」と「国内の暴力的な過激派」との間には共通点があると指摘した。ブッシュの演説はメディアの注目を集めた。

トランプはブッシュの演説を批判し、第43代大統領は「誰かにものを教えるなんてできない人物だ」と書いた。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 「リズ・チェイニーとは誰だ?」という人も多いだろう。アメリカ政治に詳しい人なら既にピンと来ているだろうが、苗字から推測される通り、ジョージ・W・ブッシュ(子)政権で副大統領を務めたディック・チェイニーの娘である。現在、ワイオミング州選出の連邦下院議員を務めている。

 私は新著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』の第三章で、共和党内部の分裂について取り上げ、このリズ・チェイニーについてかなり詳しく取り上げた。それは、ドナルド・トランプがCPACという政治集会で、ワシントンに巣くう共和党エスタブリッシュメントとして、ミッチ・マコーネル連邦上院議員(ケンタッキー州選出)とリズ・チェイニーの名前を挙げたからだ。リズはエスタブリッシュメントを代表する議員ということになる。

 共和党に属する連邦上院、連邦下院の議員たち、特に2022年(もう来年だ)は、トランプからの支持を欲している。連邦下院議員は全員が2年おきに選挙があるので、いつもいつも選挙に追いまくられているということになる。現在の共和党の支持者の中に、トランプ支持者が多い。トランプに嫌われたら、落選する可能性が高い。

 リズは反トランプ姿勢を鮮明にしている議員だ。そのことが、トランプ支持の同僚議員たちを苛立たせている。今回の動きだけでなく、昨年の11月の選挙直後から、フリーダム議連(トランプ派の議員連盟)がリズを共和党指導部(リズは議員会長を務めている)から追い落とそうとして動いている。また、リズがトランプ弾劾に賛成票を投じたことで、地元の共和党支部からは非難声明が出された。

 リズ・チェイニーをめぐる共和党の動きは、共和党内部の分裂の最前線ということになる。

(貼り付けはじめ)

マッカーシー:連邦下院共和党はチェイニーが職務を遂行できないのではと「懸念」している(McCarthy: House Republicans 'concerned' Cheney can't carry out her job

ミカエル・スキネル筆

2021年5月4日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/551657-gop-leader-tells-fox-members-concerned-cheney-cant-carry-out-her-job

連邦下院少数党(共和党)院内総務(House Minority Leader)であるケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)は火曜日、共和党所属の連邦下院議員たちは、リズ・チェイニー連邦下院議員(ワイオミング州選出、共和党)の共和党所属連邦下院議員会会長としての職務を実行する能力があるかどうか、疑問を持っていると述べた。連邦下院共和党は徐々にチェイニーの反トランプ姿勢について妥協できなくなってきている。

「フォックス・アンド・フレンズ」に出演し、司会者のスティーヴ。ドーシーが、共和党の政治家や支持者たちは、トランプ弾劾に賛成票を投じたチャイニーが指導部にいることについて不満を持っているという報道が出ていることについて質問された際、マッカーシーは、彼女に対する懸念は弾劾での投票についてではなく、共和党としてのメッセージを発する能力についての懸念なのだと答えた。

マッカーシーは次のように述べた。「彼女がダン台でどのような投票をしたかについての懸念はないのです。それはもう既になされたことで、決定が覆ることはないのです。私が同僚議員たちから聞かされているのは、共和党連邦下院議員会会長としての職務を遂行する能力があるのかどうかについて懸念です。彼女は共和党としてメッセージを発信できるのかどうかについて懸念があるのです」。

マッカーシーは続けて次のように述べた。「連邦下院で共和党が過半数を勝ち取るには、私たちは一つになって努力する必要があるのです。よろしいいですか、過半数の議席というものは、待っていれば自然と与えられるというものではありません。自分たちで勝ち取るものなのです。前進するということについてメッセージが必要となるのです」

マッカーシーは更に、連邦下院共和党は、「お互いを攻撃し合うのではなく、まとまって前進するためにはどうしたらよいか」について懸念を持っていると述べた。

チェイニーの報道担当はマッカーシーの発言に対応し、次のような声明を発表した。「チェイニー議員は2020年の選挙に関する“嘘を容認”しないし、2021年1月6日の連邦議事堂進入事件について“ごまかし”もしない。この問題は、マッカーシー議員が院内総務として、議員会長と共に対応していく問題だと述べたものだ」。

リズ・チェイニー議員の報道担当ジェレミー・アドラーは本誌の取材に対して次のように答えた。「これはつまり、共和党が全体として2020年の選挙に関する嘘を容認し、2021年1月6日の連邦議事堂進入事件をごまかし続けるのかどうかの問題だ。リズはそのようなことに加担しない。それが問題とされている」。

共和党内部でチェイニーの反トランプ姿勢について不満が高まり、共和党指導部から排除しようという動きが出ているという報道がなされる中、両者のコメントが発表された。

ある共和党所属の連邦議員は、「彼女をめぐる状況は悪化している」と述べた。

チャイニーはそれでも、彼女の姿勢を和らげる計画があることを示してはいない。月曜日、1月6日の事件についてトランプをこき下ろし、閉ざされたドアの後ろにいて安全を確保しながらの彼の行動は「越えてはいけない線を越えてしまった」ものだと述べた。

月曜日午前、チェイニーは、トランプが繰り返し、選挙は盗まれたという誤った主張をづけていることについて公の場でトランプを非難した。

(貼り付け終わり)
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(終わり)

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