古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ルディ・ジュリアーニ

 古村治彦です。

 今回はウクライナ疑惑について、より短い記事をご紹介する。前回は長い記事を何本もご紹介したので読みにくいものとなってしまった。

  今回アメリカで大きな議論となっているウクライナ疑惑について、簡単に言うと、「今年の7月25日にトランプ大統領がウクライナ大統領に電話をして、自分の大統領選挙での再選にとって強敵となるジョー・バイデンと息子についての振りとなる情報を見つけるために捜査をして欲しいと述べた。そして、捜査をさせるための圧力として、アメリカがウクライナに与える国家安全保障援助を停止してみせた。これには大統領周辺の人物も絡んでおり、個人弁護士のルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長もウクライナに働きかけを行った。7月25日の通話記録は国家機密など含まれていなかったが、外に漏れることがないように、より厳しい管理をするようにホワイトハウス高官たちが働きかけた」というものだ。簡単に書いてもこのように長くなってしまう。

  ジョー・バイデンは副大統領としてウクライナに関わり、バイデンの次男ハンター・バイデンはウクライナの天然ガス会社ブリズマの取締役となった(2014―2018年)。これら「バイデン家」とウクライナとのかかわりの中で、ジョー・バイデンの選挙戦にとってマイナスの情報がないかをトランプ大統領がウクライナ政府に探させようとした、ということになる。これが事実ならば権力濫用であり、内政干渉であり、極めて重大な問題だ。

 内部告発者からの告発の書簡の公開をトランプ政権が拒否したことで、連邦下院民主党は弾劾に向けた調査を正式に開始すると発表した。その後、告発書と通話記録の要約が公開された。既に書いたように、弾劾が成立する可能性は今のところ低い。それでも民主党としては今回の話が筋の良いものであると考えているようだ。また、大統領選挙民主党予備選挙でトップを走っているバイデンを狙ったものということで、受けて立つということにもなったのだろう。

  トランプ大統領陣営がバイデンを大統領選挙で脅威に感じているということはあるだろうが、スキャンダル探しを外国政府に圧力をかけてまでやらせようとするだろうかということは前回も書いたが今でも疑問に思っている。

 バイデンの名前が出たことはバイデンにとっては痛手となる。日本のことわざで言えば「火のない所に煙は立たぬ」なのか「痛くもない腹を探られる」ということなのかは分からない。しかし、バイデンを支持しない人々(共和党支持者と民主党支持者で他の候補者を支持している人たち)には何かしらのイメージを与えることになる。

 バイデンのマイナスは民主党の他の候補者、特に三強を形成しているエリザベス・ウォーレンとバーニー・サンダースにとってはプラスとなる。トランプ大統領にとって誰が与(くみ)しやすしとなるかと言えば、ウォーレンかサンダースとなる。全く根拠のない想像での話でしかないが、トランプ自身がこのスキャンダルを仕掛けたのではないかとさえ思えてしまう。

 そして、私は、バイデン家とウクライナの関係の具体的内容について関心を持っている。このことについては近いうちに調べたことをご紹介できればと思う。

(貼り付けはじめ)

バイデンの2020年大統領選挙に対する家族の問題(Biden's 2020 family problem

マイク・アレン、マーガレット・タレヴ、アレクセイ・マクカマンドアップ筆

2019年9月27日

『アクシオス』誌

https://www.axios.com/joe-biden-family-hunter-ukraine-donald-trump-2020-93dec9f4-cd1b-4235-b538-7d902a81ba89.html

ジョー・バイデンの出馬を押しとどめていたのはジョー・バイデンの家族だった。現在、バイデンの家族がバイデンの足を引っ張る可能性が出ている。

何が問題か:エリザベス・ウォーレンが各種世論調査の支持率で追いつている中で、ジョー・バイデン前副大統領は家族に関する疑惑と論争について答えている。

父ジョー・バイデンが副大統領を務めていた時期、次男ハンター・バイデンはウクライナのガス会社の有給の取締役を務めた(現在は退任)。

民主党最高幹部たちはウクライナをめぐるスキャンダルがバイデンにとっての大きな妨げになることを懸念している。なぜならばバイデンが人々の間で不人気な問題とプロセスに関係することになり、ハンター・バイデンに関する質問も避けることはできないからだ。

事実確認記事や「確かな話」を掲載する記事が出ても、巻き添えで負ってしまう損害(collateral damage)を避けることはできないだろう。

今回大統領選挙には関係していないある民主党系ストラティジストは、ハンター・バイデンをめぐる問題は、ウクライナでの彼のビジネス活動に限定されているだけではなく、彼の全ての個人的、ビジネス上の問題に及んでいる、としている。

ハンター・バイデンに関しては全て7月に発行された『ニューヨーカー』誌に掲載されたアダム・エントスの記事で詳述されている。エントスはハンター・バイデンとバイデン選対から多大な協力を得ていた。エントスは記事の中で次のように書いている。「ハンター・バイデンは父の選挙運動を危機に晒すことになるのか?ジョー・バイデンの息子ハンターのビジネス上の取引と騒がしい個人生活について様々な調査がなされている」。

民主党系のストラティジストたちは口を揃えて、「トランプは冷酷に、ハンターに関するスキャンダルを歪めながら利用するだろう」と指摘している。

トランプの計算は心理学上の効果を狙ってのものだ。トランプ大統領はバイデンが彼の息子に関して懸念していることを分かっている。

バイデンにとってプラス面となるのは、トランプ大統領がこのように挑発的な言動をしているのは、トランプ大統領にとってバイデンが最も強大な脅威となっていることを裏付けているというものだ。

ヒラリー側からの視点:ヒラリー・クリントンの長年の側近フィリップ・レインズは本誌に対して、この光景は以前にも見たことがあると述べた。

レインズは次のように述べた。「これは経験、人生、過去の現実とは何も関係していない。人々は自分たちが望む形でイメージを作るものだ。これは誇張などを超えたものだ」。

バイデン選対の思惑:バイデンは何も悪いことをしていない。

バイデンの顧問の一人は私に対して、ウクライナスキャンダルからの巻き添えによる損害は小さいものとなるだろうと述べた。この人物はその理由として、バイデンは副大統領だったので、何も悪いことをしていなくてもこのようなスキャンダルに巻き込まれやすいものだ、と人々は考えるからだとしている。

バイデン選対は資金集めに関して、選挙運動開始2週間目以来最高の資金を今週集めたと発表した。

バイデンはこれからも医療制度、気候変動、銃規制について主張し続ける予定だが、トランプ大統領について無視することはない。

結論:弾劾に関する調査から最大の政治的利益を得るのはエリザベス・ウォーレンということになる。

=====

内部告発者は、トランプ大統領が権力を濫用して、外国への介入を強要したと告発した(Whistleblower alleges Trump abused power to solicit foreign interference

ザカリー・バス筆

2019年9月26日

『アクシオス』誌

https://www.axios.com/trump-ukraine-whistleblower-complaint-released-e2524316-fb2f-

418e-ae57-51892e709a4c.html

トランプ大統領とウクライナに関する論争の中心には内部告発者からの告発がある。内部告発者はトランプ大統領が「2020年の大統領選挙について外国からの介入を誘うために大統領としての権力を利用」したとし、ルディ・ジュリアーニとビル・バー司法長官もこの行為に関与しているようだと指摘している。

何故問題なのか:トランプ政権は最初告発書を後悔することを拒否した。その結果、ナンシー・ペロシ連邦下院議長は火曜日に正式に弾劾に向けての調査を開始するという決定を行うことになった。ペロシ議長の決定の発表からの圧力を受けて、トランプ政権は告発書とその前にトランプ大統領とウクライナ大統領のウォロディミル・ゼレンスキーとの間の7月の通話記録の要約を公開した。

要点:内部告発者は告発した行動を分類している。この行動について、政府高官たちは、「アメリカの国家安全保障に関しリスクを高め、アメリカの国政選挙に対する外国からの介入を防ぐためのアメリカ政府の努力を台無しにする」ものだと考えていると内部告発者に述べた。内部告発者は行動を4つに分類している。

1. 7月25日の大統領による電話:複数のホワイトハウス高官が内部告発者に語ったところによると、彼らはウクライナ大統領ウォロディミル・ゼレンスキーとトランプ大統領との間の電話の内容を知り、「大いにショックを受けた」ということだ。通話の中で、トランプは「ウクライナ大統領が2020年の大統領選挙で再選を助けるような行動をとるように圧力をかけようと」した。

2.この通話の記録へのアクセスを制限する行動:内部告発者は次のように述べている。7月25日の電話の後、ホワイトハウス高官たちは「この通話に関する全記録、特に逐語的に文字起こしされたデータを“厳重に保管”するように介入した」。ホワイトハウスの弁護士たちは、ホワイトハウスのスタッフに対して電子データにした通話記録を、機密情報を含むデータを保管するために使われる別のシステムに移すように指示した。通話記録には国家安全保障に関連する内容は含まれていなかった。

告発書の脚注で言及されているところでは、「トランプ政権が“国家安全保障上微妙な情報を守るからではなく、政治的に微妙な情報を守ることを目的として”、別のシステムを利用しており、今回が初めてのことではない」ということであった。

3.継続される懸念:この通話がなされた後、駐ウクライナ米公使カート・ヴォルカーとEU駐在米大使ゴードン・ソンドランドはウクライナ政府高官たちと会談し、彼らに対してトランプ大統領からの要求にいかにして「対処」すべきかに関し助言を与えた。トランプ大統領の個人弁護士ルディ・ジュリアーニはマドリッドに飛びゼレンスキー大統領の補佐官と面会し、その他のウクライナ政府高官たちと接触し、7月25日の通話に関する「直接的な補足」を行った。

4.7月25日の大統領の通話に至るまでの状況:内部告発所の中で内部告発者が最も多く言及しているのは、ウクライナの検事総長ユーリー・ルツェンコ(2019年8月29日に退任)が2019年3月にジョー・バイデンを含むアメリカ政府高官たちに対する汚職事件の捜査をどのように遂行していたかの詳細だった。この告発が出た後に、ジュリアーニがルツェンコに2度面談し、2020年の大統領選挙でのトランプの再選に関連して捜査を求めるために5月にはウクライナを訪問する計画を立てていた、というニュースが出た。

複数のアメリカ政府高官たちは内部告発者に対して、ジュリアーニの国家安全保障政策決定プロセスを迂回していることに対して「深く憂慮」していると語ったと述べている。

複数のアメリカ政府高官たちはまた内部告発者に対して次のように語ったと述べている。「ウクライナ政府の高官たちは、トランプ大統領とゼレンスキー大統領との間で電話か会談が行われるかどうかは、ルツェンコとジュリアーニによって話し合われた諸問題について“協力”姿勢を見せるかどうかにかかっているということを信じるようになっていった」。

7月中旬、内部告発者はトランプ大統領が行政管理予算局に対してウクライナ向けの国家安全保障援助を全て一時停止するように命令した。行政管理予算局の高官たちはその命令の根拠については分かっていなかった。

明記すべきこと:内部告発者は今回の告発内容について自分で直接目撃していない。しかし、内部告発者に語った政府高官たちの言葉は正確だ、「それは、ほぼ全てのケースで、複数の高官たちが個別で話す内容はそれぞれ一貫していた」からだとも述べている。

情報機関の監察官マイケル・アトキンソンもまた内部告発の内容は信頼性があると述べている。

内部告発から新しい詳細が出ることでこの話は更新されている。

(貼り付け終わり)

(終わり)
ketteibanzokkokunihonron001
決定版 属国 日本論

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領にウクライナ疑惑が持ち上がった。アメリカ政府のある情報機関の内部告発者(whistle blower)が国家情報長官代行や連邦上下両院の情報・諜報委員会委員長に宛てた書簡の中で、トランプ大統領のウクライナ疑惑を告発した。この書簡の内容が機密指定解除され、公表された。その内容に批判が集まり、大統領擁護の主張もあり、議論が白熱している。民主党側はロシア疑惑では弾劾に対して腰が重かったが、今回、弾劾に向けて調査を始めるということになった。
donaldtrumpukranianscandal001
毎日新聞の記事から

 内部告発者の告発内容をまとめると、2019年7月25日にドナルド・トランプ大統領はウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と電話会談を行った。その中で、トランプ大統領は、ウクライナの石油関連企業の役員だった、ジョー・バイデン前副大統領の次男ハンター、更にはバイデン自身のウクライナとのかかわりを捜査してもらいたい、と発言したということだ。
 ゼレンスキー大統領が「協力する(play ball)」するかどうかでアメリカからの国家安全保障に対する援助4億ドルを停止するかどうか決めるという交換条件を持ちしたとも告発されている。これは不当な圧力をかけたということになる。内政干渉(intervention)ということにもなる。実際に議会で承認されたウクライナ向け援助の実行がトランプ政権によって遅延させられたことは事実で、トランプ大統領はこのことについて、他のウクライナの同盟諸国に援助を真剣に考慮、実行させようと望んでのことだったと釈明している。

  バイデンは現在、大統領選挙民主党予備選挙でトップを走っており、2020年大統領選挙本選挙でのトランプ大統領にとっての強力な競争相手となる可能性が高い。そのために、「大統領が大統領執務室で公務を行う中で、自分の私利私欲のために立場を利用した」という批判が出ている。

 アメリカ大統領が大統領執務室(オーヴァルオフィス)で使った電話の通話記録はその内容が一言一句記録される。それは文字情報となるが、現在はデータ化され、コンピューターシステムに保管される。国家機密が含まれる場合にはより安全度が高い別のシステムに保管される。7月25日のゼレンスキー大統領との会話には国家機密は含まれていなかったが、機密が含まれる通話記録と同じ扱いとなった。この通常とは異なる取り扱いを行ったのはトランプ大統領の周辺のホワイトハウス高官たちで、その理由として、「国家安全保障上の懸念ではなく、この通話記録が漏れると政治的に大きな打撃となるから」というものであった。また、その他の通話記録も同様の取り扱いをしているとも言われている。

 大統領の個人的な弁護士をしているルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長が国務省抜きでウクライナとのやり取りを行っていたことも告発された。国務省を迂回して、ウクライナ政府高官とやり取りをし、大統領のメッセージを届けたという疑惑だ。ジュリアーニは圧力があったことを認めている。

 ロシア疑惑と同様、今回の疑惑も大きな柱は「アメリカ大統領選挙と外国のかかわり」ということになる。ロシア疑惑の際には、トランプ候補(当時)の陣営がロシア政府に対して、ヒラリー・クリントンにとって不利な情報の提供を求めたという疑惑であったが、これは嫌疑不十分となっている。今回の場合はウクライナ政府にバイデン家の情報の提供を求めたという形になっている。 

 私が疑問なのは、トランプ側がバイデンにとっての不利な情報が欲しいというのは理解できるが、トランプ大統領自らが記録に残る大統領執務室からの電話を使ってこのようなことを頼むだろうかということだ。こういう汚れ仕事は側近のうちのそれにふさわしい人物にやらせるはずだ。ばれてしまっては意味がない訳で、今回ばれてしまったのでは失敗ということになる。 

 大統領が大統領選挙について側近たちと話をして、バイデンが脅威だと感じたら、それ相応の対策をするようにと言えば、それで事足りるはずだ。トランプ大統領は何でも自分でやらねば気が済まないからだ、軽率な人物だからだという評価もある。しかし、そもそも今回の疑惑は、匿名の内部告発者による情報提供から端を発している。その信頼性について100%と言うことはできない。「トランプ大統領ならやりそうなことだ」ということだけでは弾劾(辞めさせること)まではいかない。

 大統領弾劾の手続きは連邦下院で審理して弾劾相当ということになれば過半数の賛成で訴追することになる。訴追先は連邦上院だ。連邦上院が弾劾裁判所となって審理される。ここで3分の2以上の賛成があれば弾劾が成立する。現状では民主党が連邦下院の過半数を握っており、訴追は可能だ。連邦上院は共和党が過半数を握っている。また、3分の2の賛成という条件も高いハードルになっている。音声録音が出るとか内部告発者が名乗り出て宣誓証言をする(証言だけでは難しいが)などのことがあれば弾劾まで進む可能性はあるが、今のところは厳しい。

 連邦議会民主党執行部としてはロシア疑惑よりは筋が良い話ということで弾劾に乗ったのかもしれないが、先行きは楽観視できない。 

(貼り付けはじめ)

 

●「米民主、もろ刃の弾劾攻勢 ウクライナ疑惑で」

トランプ政権 北米

2019/9/25 18:29

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50186700V20C19A9EA2000/

【ニューヨーク=永沢毅】トランプ米大統領がウクライナに野党・民主党のバイデン前副大統領に関する調査を要求したとされる疑惑は、トランプ氏と民主の全面対決に発展した。民主執行部はこれまでの慎重姿勢を転換し、トランプ氏の弾劾に向けてカジを切った。対立の先鋭化は、2020年大統領選で最有力候補の一人であるバイデン氏に跳ね返るリスクもはらむ。

「大統領職の宣誓や国家安全保障、選挙の清廉さへの裏切りだ」。民主のペロシ下院議長は24日の声明でトランプ氏の行動をこう断じた。

16年の大統領選でトランプ氏がロシアと共謀した疑惑では、民主は弾劾を見送った。国家の分断を懸念して慎重な姿勢を維持してきた民主だが、今回大きく転換した。「現職の大統領」の不正疑惑を追及しなければ、国民の不信の目が自らに向かうとの判断があったからとみられる。

民主が問題視しているのは主に2点ある。1点目はトランプ氏が725日のゼレンスキー・ウクライナ大統領との電話協議で、同国への軍事支援を実施する条件として、バイデン氏の息子が役員をしていたウクライナのガス企業に関する調査をするよう繰り返し圧力をかけた疑惑だ。

米憲法は大統領が「反逆罪、収賄罪またはその他の重犯罪や軽罪」を犯せば弾劾訴追されると定める。トランプ氏が再選をめざす20年大統領選でバイデン氏は最も警戒する相手だ。同氏を追い落とすため外交を政治利用したと議会が認定すれば、弾劾の要件にあてはまる可能性がある。米連邦法は選挙活動に「価値あるもの」を外国人に求めることを禁じており、民主はこうした法令に違反する疑いがあるとみる。

もう1つは、問題の表面化につながった内部告発の中身を政権側が議会に報告するのを阻んだ点だ。電話協議の内容を問題視した米情報当局者は、8月中旬に監察官に内部告発したとされる。

 米連邦法では監察官が告発を「緊急の懸念」などと判断した場合、7日以内に議会に報告する義務があるとされる。しかし、国家情報長官代行は内部告発の報告を拒否し、ペロシ氏は「報告阻止は法令違反だ」と非難した。

強硬策を繰り出した民主に対し、トランプ氏は徹底抗戦の構えをみせる。「大統領への嫌がらせだ!」。24日にはツイッターでこう訴えた。

25日にはゼレンスキー氏との電話協議の内容を公表する方針だ。複数の米メディアによると、ホワイトハウスは内部告発の議会報告も認める方向で調整しているという。いずれも潔白を証明する狙いがあるとみられる。

民主にとって悩ましいのは、今回の疑惑にバイデン氏が関わっている点だ。バイデン氏はオバマ前政権の副大統領だった2016年にウクライナの検事総長の解任を要求したことがある。バイデン氏は解任に応じなければウクライナへの10億ドルの債務保証を保留すると圧力をかけたとされる。

検事総長はバイデン氏の息子ハンター氏が役員を務めていたガス企業の捜査を統括する立場にあった。ハンター氏はこの企業から月5万ドル(約550万円)の報酬を受け取っていたという。民主がウクライナ疑惑への追及を強めれば、バイデン氏にも矛先が向かうのは避けられない。

「問題があるのはバイデンとその息子だ」。トランプ氏はかねてウクライナ問題の調査を訴えていた。20年大統領選の民主候補の指名争いで首位のバイデン氏が失速すれば、2位のウォーレン、3位のサンダース両上院議員には追い風になる。

弾劾には世論の支持や共和の協力が欠かせない。だが共和はトランプ氏擁護の意見が多く、現時点で世論の支持も見通せない。疑惑捜査の進展しだいでは政局優先との批判を浴びる恐れもある。

 ======

 

●「ホワイトハウスはトランプ氏の通話内容を隠そうとした=内部告発者」
BBC

2019年9月27日

https://www.bbc.com/japanese/49848138

ドナルド・トランプ大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の電話会談について、ホワイトハウスの法務顧問たちは、内容に国家機密を含まないにもかかわらず、国家機密専用のデータベースに保存するという異例の対応をとっていた――。大統領の通話内容について情報当局者が書いた書簡には、こうした内容が含まれていたことが明らかになった。米連邦議会が26日、情報当局者が国家情報長官代行や上下両院の情報委員長に送った手紙を公表した。

トランプ氏が今年7月の電話会談でウクライナの大統領に話した内容について、情報機関の内部告発者が監察総監や国家情報長官代行などにあてた手紙には、トランプ氏が「大統領権限を利用し、2020年米大統領選で外国の介入を得ようとしている」ことを、複数の政府担当者が懸念していると書かれている。その上でこの内部告発者は、大統領の行動が「深刻もしくは甚だしい問題」で、「法律に抵触もしくは違反した」と指摘している。

機密扱いを解除して議会が公表したこの書簡によると、ホワイトハウスの法務顧問たちは、通話内容に国家機密が含まれていなかったにもかかわらず、特にデリケートな国家機密を保管するためにある通常とは異なる電子データベースに、この電話の通話記録を保存するよう、ホワイトハウス職員に指示した。また、こういう対応は過去にも何度か行われていたという。

さらに手紙を書いた情報当局者によると、トランプ氏がウクライナのゼレンスキー大統領と直接あるいは電話で会談するかどうかは、ウクライナ側に自分たちの要求に「協力するつもりがある」か、ウクライナ大統領が「どう行動するか」次第だと、複数の米政府関係者が認識していた。また、725日にウクライナの大統領と電話会談する以前に、ウクライナへの軍事援助を停止するよう、大統領が自ら行政管理予算局に指示したという。

26日には民主党が多数を占める下院の情報委員会で公聴会が開かれ、ジョーセフ・マグワイヤ国家情報長官代行が宣誓証言。その中で長官代行は、内部告発者は「誠実に行動」し、「正しいことをした」と述べた。今回のウクライナ疑惑が浮上して以来、トランプ氏をはじめホワイトハウスは、内部告発者は党利党略のために動く民主党支持者だと反論していた。

この電話会談を理由に、トランプ氏に対する正式な弾劾調査の開始を発表した民主党幹部のナンシー・ペロシ議長は、トランプ氏が2020年大統領選で戦うことになる可能性のある民主党のジョー・バイデン前副大統領の評判を汚そうとして外国の手助けを求め、その交渉材料として軍事援助を利用したと非難している。

トランプ氏は、確かにゼレンスキー大統領と電話で話す数日前に、4億ドル分の軍事援助を自ら停止したと認めたものの、バイデン親子への捜査をウクライナに働きかけるための圧力ではなかったと説明している。

内部告発者の手紙公表と下院情報委公聴会の後、ホワイトハウスで記者団を前にしたトランプ氏は、弾劾手続きは「またしてもでたらめな魔女狩り」で、「許されてはならない」と反発した。

「民主党がこの国にしていることはみっともない話で、許されてはならない(中略)裁判所で法的手段を使うなどして、阻止する方法があるべきだ」とトランプ氏は述べた。

トランプ氏が国連総会のため訪れているニューヨークのアメリカ代表部で25日に、内部告発者に情報提供した者は「ほとんどスパイに等しい」と職員に話す録音音声が、浮上している。

トランプ氏は「この国では以前は、みんな頭がよかったころには、どうしたか知ってるだろう? そうだろう? スパイとか国家反逆罪とか、昔は今とは違う対応をしたものだ」と述べている。この発言は、米政府が過去にスパイに対して死刑を適用したことへの言及とみられている。

内部告発者は手紙で何と

情報当局者は725日の電話会談について、複数の政府関係者から聞いた話として、逐語の通話記録をはじめとする内容の記録を一切外部に漏らさないよう、ホワイトハウス幹部が対応したと書いている。

「このことから、ホワイトハウス関係者は電話の内容がいかに深刻なものか理解していたと、私は強く感じた」と、告発した情報当局者は書いた。

ホワイトハウスの法律顧問たちは通話の記録を、「秘密作戦など暗号で保護されるレベルの重要機密を保管するためにある、他のネットワークにつながっていないコンピューター」に保存するという異例の措置を、職員に指示したという。

告発者によると、トランプ政権では国家安全保障に関わる機密ではない内容でも、政治的にデリケートな内容の記録を、こうして機密用のデータベースに保存することが、以前から行われていたという。

告発者は手紙の冒頭で、自分は一連の出来事を「直接目撃したわけではない」と明記しつつ、複数の政府職員が話す内容は「ほとんど常に一致していた」ため、自分が聞いた話は信頼できると判断したと書いている。

議会公聴会では何が

下院情報委員会のアダム・シフ委員長(民主党)は、この日の公聴会冒頭で、トランプ大統領がウクライナの大統領相手に「まさに組織犯罪に典型的な、ゆすりをかけた」と非難した。

これに対してトランプ氏を支持する共和党のデヴィン・ヌネス筆頭委員はこれに反発し、「大統領に対してまたしも情報戦争を仕掛けけて、またしても主要メディアの協力を獲得するに至った見事な才能について、民主党におめでとうと言いたい」と皮肉った。

公聴会に出席したマグワイヤ国家情報長官代行に対してシフ委員長は、内部告発者の手紙を公表する前になぜホワイトハウスの助言を求めたのか問いただした。

これに対してマグワイヤ氏は、告発内容に大統領特権で保護されるべき内容はあるか確認したかったのだと説明。さらに、「本件に関する何もかも、まったく前例がないことだと思う」と述べた。

バイデン氏については

告発者の手紙によると、就任間もないゼレンスキー大統領との電話でトランプ氏は、2016年にウクライナのヴィクトル・ショーキン検事総長が解任された件について話し合った。

トランプ氏は、バイデン前副大統領の息子でウクライナのガス会社ブリスマの取締役だった息子のハンター・バイデン氏について触れ、副大統領だったバイデン氏がショーキン氏の解任をウクライナに働きかけることで、ハンター氏の訴追を回避したのではないかと述べた。

トランプ氏はさらにゼレンスキー大統領に、ウィリアム・バー米司法長官や自分個人の顧問弁護士、ルディ・ジュリアーニ氏と連携しながら、この件を調べるよう働きかけた。

ウクライナのショーキン前検事総長は、ブリスマの所有者ミコラ・ズロチェフスキー氏による不正取引や資金洗浄の疑いを捜査していた。

バイデン氏は副大統領として、複数の欧州首脳と共に、ショーキン検事総長は汚職摘発に及び腰だと批判し、解任を求めていた。ショーキン氏の後任はその後、10カ月にわたりブリスマ社を調べたが、捜査はそこで終わった。

ハンター・バイデン氏のブリスマ役員としての任期は、今年4月に満了している。

バイデン氏側に不正行為があったという証拠は明らかになっていない。

米司法省は25日、トランプ氏はバー司法長官に対して、ウクライナ政府にバイデン親子を捜査させるという内容を話していないし、バー長官はウクライナ政府と接触していないとコメントした。

=====

内部告発者の告発における5つの重大な嫌疑(The five most serious charges in the whistleblower's complaint

ナイオール・ストレンジ筆

2019年9月26日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/463236-the-five-most-serious-charges-in-the-whistleblowers-complaint

トランプ大統領のトラブルは木曜日朝により深刻なそしてより暗いものとなった。それは内部告発者の告発が明らかになったからだ。

トランプ大統領はウクライナとウクライナ大統領ウォロディミル・ゼレンスキーとの間のやり取りについて弾劾を受ける脅威に直面している。連邦下院議長ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)はこれまで弾劾に消極的だったが姿勢を変えて、弾劾の先頭に立った。

トランプ大統領と彼の味方たちはこの嫌疑に対して反論をしている。トランプ大統領はこの問題全部が「でっち上げ(hoax)」であり、私は誤った行為を全くしていないと主張している。
ホワイトハウスのステファニー・グリシャム報道官は木曜日朝に発表した声明の中で、「出来事に関して間接的に又聞きの説明を集めたもので、報道の断片を切り貼りしたものに過ぎず、何も不適切なものを提示しているものではない」と述べた。

しかし、こうした声明が次々に出されても、現在までのところ、嵐は収まっていない。

これから重大な嫌疑についてまとめる。

●ホワイトハウスはトランプ大統領の電話の詳細を隠そうとした(The White House sought to hide details of Trump’s phone call

今回の論争の中心的なエピソードはトランプ大統領の7月25日のゼレンスキーとの電話で、その中で、トランプ大統領はゼレンスキー大統領に対して、実証されていない嫌疑でジョー・バイデン前副大統領とバイデンの次男ハンターについて捜査するように圧力をかけたということだ。

内部告発者の告発の中で暴露された重大な内容は、ホワイトハウスがこの電話の逐語記録を隠そうとしたというものだ。

ホワイトハウスの高官たちによって隠蔽がなされたのは、この電話の内容を知っている人々は「トランプ大統領が個人の利益のために自身の大統領執務室を濫用したことを目撃してしまった」という思いからだと内部告発者は述べている。

内部告発者は続けて「ホワイトハウスの高官たちは「ウクライナ大統領との電話記録の全ての記録を封鎖する」ために介入してきたと述べた。

この介入は コンピューターシステムから「電子データになっている逐語の通話記録」を削除するという形を取ったと内部告発者は述べている。電子データになった通話記録は通常はコンピューターシステムに保管される。しかし、ゼレンスキー大統領との通話記録は機密の内容は入っていないのに通常のシステムとは切り離された、より安全性が確保された、そしてアクセスが制限された別のシステムに移動された。

嫌疑の中心が何かは明らかだ。それは「ホワイトハウスが隠蔽に関与した」ということだ。

ニクソン元大統領が体験したように、このような告発は他の重大な攻撃と同じく政治的に危険をはらむものとなる。

●トランプの協力者たちはウクライナに「協力させる」ために影響力を行使した(Trump allies used leverage to get Ukraine to ‘play ball’

トランプの擁護者たちは、ゼレンスキー大統領に対して交換条件は提示されていないと主張している。

内部告発者はそれとは逆のことを述べている。もっとも、協力させるための交換条件を提案したのはトランプ大統領自身ではなく、大統領の周辺人物たちだとも示唆している。

内部告発者は、「複数のアメリカ政府高官たち」は内部告発者に対して、トランプ大統領とゼレンスキー大統領との電話や会談が行われるのは、「ゼレンスキー大統領が進んで“協力(play ball)”する姿勢を見せるかどうか」にかかっていると発言した、と述べている。

内部告発者は「協力する(play ball)」という言葉を2度使っている。2度目の「協力する」のところでは、次のようなことが述べられている。今年5月のゼレンスキー大統領の就任式にペンス副大統領が出席予定でウクライナを訪問することになっていたが、トランプ大統領がペンスに行かないように「指示」した後にキャンセルとなった。名代としてリック・ペリーエネルギー省長官が出席した。

内部告発者は、名前を明らかにしていないが複数のアメリカ政府高官たちが、ウクライナ政府高官たちに対して、トランプ大統領はゼレンスキー大統領が「大統領の権限を使ってどのような行動を取るかを選択する」ことを見せるまで、ゼレンスキー大統領に会いたいとは望まないということを「明確に」示した、と述べている。

内部告発者は、自分が「協力する」ということについてのより広範な疑問とこの行動が関連しているかは分からないとしている。しかし、「協力」と「交換条件」に付いての疑問は、トランプ大統領、そしてペンス副大統領にとって取り扱いにくい疑問である。

●ホワイトハウスはそれ以外の複数の電話の詳細を隠していた(The White House has hidden the details of other phone calls

内部告発者はトランプ大統領の他の通話記録は安全なシステムに入れられていると述べている。これは正当な国家安全保障の懸念からではなく、政治的な理由からである。

内部告発者は、ホワイトハウスの高官たちはトランプ大統領の通話記録がこの「符号レヴェル」システムに入れられたのは「初めてのことではない」と述べたと発言している。そして、こうしたことが行われたのは、「国家安全保障上神経質にならざるを得ない情報だからという理由ではなく、政治的に神経質とならざるを得ない情報だから」だとアメリカ政府高官たちが認めたと内部告発者と述べている。

こうしたことの詳細は不明確だ。しかし、民主党にしてみれば大統領弾劾の調査を継続するための更なる材料となる。

●政府高官たちはジュリアーニの様々な行動に対して「深い懸念」を持っていた(Officials were ‘deeply concerned’ by Giuliani’s activities

トランプ大統領の個人弁護士であるルディ・ジュリアーニは、ウクライナに対してバイデン家について捜査をするように圧力をかけていることを認めた。

ここ数日、ジュリアーニは彼の役割に関する論争が激化する中で、数多くのメディアに出演しインタヴューを受けている。そこで激しく議論されているのは、ジュリアーニの行動が国務省の幹部たちの承認、もしくは少なくとも同意を得ていたのかどうかということだ。

内部告発者の告発内容はトランプ政権内部の分裂について更なる懸念を募らせるものである。内部告発者は「ジュリアーニ氏が国家安全保障決定政策プロセスを避けて、ウクライナ政府高官と関わろうとし、ウクライナ政府とトランプ大統領との間でメッセージをやり取りができるようにした。これを見て複数のアメリカ政府高官は大きな懸念を持った」と告発している。

ジュリアーニは木曜日CNNに出演し、内部告発の「クソみたいな内容について何も知らない」と述べた。

●ウクライナ政府高官たちはアメリカらの援助が停止される危険に晒されるだろうと分かっていた(Ukrainian officials knew U.S. aid could be in jeopardy

アメリカ連邦議会が提供を可決したウクライナ向けの援助4億ドルがトランプ政権によって援助提供が遅延させられていたことについてはその事実性について誰も反対していない。

疑問として残るのは、この遅延がトランプ大統領のウクライナによるバイデン家についての詳細な捜査を行って欲しいという希望と明確な形でつながっていのかどうかということだ。

内部告発者はこの疑問についてはっきりとは答えていない。

しかし、メディアの報道が出る前に、内部告発者はトランプ大統領がある時点でアメリカのウクライナに対する「国家安全保障援助」を一時停止するように命じたと認めた。

内部告発者は7月23日と7月26日という2つの日付を挙げた。この2日にアメリカ行政管理予算局の高官たちが「ウクライナ向けの援助の一時停止という命令はトランプ大統領から直接出されたものだと明確に述べたが、この命令の根拠について分かっていなかった」と述べた。

内部告発者は8月上旬に「アメリカ政府高官たち」が内部告発者に対して、ウクライナ政府高官はアメリカからの援助が停止される危機に瀕していることを認識していると述べたと語ったが、ウクライナに対する圧力の度合いという観点からこの告発内容は重要だ。

トランプ大統領は、援助供与を遅らせたのは、ウクライナの他の同盟諸国にも援助をさせたいと望んでいたからだと述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

ketteibanzokkokunihonron001
決定版 属国 日本論
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 

 トランプ政権の骨格が固まりつつあります。たくさんの名前が閣僚候補として浮上してきます。こうした名前を出すのは新聞社ですが、何の根拠もなく、記者の思い付きで名前を出している訳ではなく、取材をして、その名前を聞き出してきて記事として出すのですから、それぞれに可能性がゼロ、全くないということはありません。

 

 トランプとしては、自分たちと争った人物であっても能力や考えを認めれば、閣僚にする、重要ポストに就けるということを行っています。女性蔑視だとも攻撃されましたが、能力を認め、ニッキー・ヘイリーを米国連大使に、ベッツィー・ディヴォスを教育長官に起用しました。

 

 今月の19日に選挙人による最終的な投票が行われ、トランプ次期大統領が正式に決定ということになります。そうなると、就任式まで残り1カ月しかないということになりますから、それまでに、重要ポストである国務、国防、財務の各長官を決定しなければなりません。

 

 トランプの年齢のことを考えると、4年後にもう一度出馬するかどうか微妙ですから、この時の「ポストトランプ」を狙う人たちにとっては、トランプ政権入りが吉と出るか、凶と出るか、今は思案のしどころということだと思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプ政権の形が決まりつつある(Trump's Cabinet begins to take shape

 

リサ・ヘイゲン筆

2016年11月24日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/administration/307449-trumps-cabinet-begins-to-take-shape

 

ドナルド・トランプ次期大統領は、来年1月の大統領執務室入りに入るに備えて、彼の支援者たちを政権の重要閣僚に就任させることで報いようとしている。

 

トランプはまた、ライヴァルだった人物たちの関係修復に意欲を見せている。彼らの中から閣僚を選ぼうとしている。

 

これから、これまでにトランプが指名した、もしくは使命を考慮した人々を取り上げていく。

 

●国務長官(Secretary of State

 

ミット・ロムニーは、選挙期間中にトランプとの間で公開の場で争ったが、アメリカの最高の外交官である国務長官の最有力候補になっている、と『ウォールストリート・ジャーナル』紙は報じている。

 

元マサチューセッツ州知事のロムニーは、今年3月に演説を行い、トランプに対する反対を表明した。ロムニーは演説の中で、アメリカ国民に対してトランプについて貴をつけるように警告を発し、トランプを「詐欺師」「偽物」と呼んだ。トランプは直ちに反撃し、ロムニーを2012年の大統領選挙で敗北した「負け犬の候補者」と呼んでやり返した。

 

2人はこれまでのいきさつを水に流しているように見えるが、国家安全保障についての考えの違いは歴然として存在している。特にロシアについての考え方では隔たりがある。

 

トランプがロシア大統領ウラジミール・プーティンを賞賛した昨年末、ロムニーは、プーティンを「悪漢」呼ばわりした。

 

トランプが最も信頼している支援者ルディ・ジュリアーニも国務長官の有力候補と見られている。元ニューヨーク市長ジュリアーニは、ひとたびは最有力候補と見られていた。

 

共和党内部には、ジュリアーニの国務長官就任に懸念を表明している人々がいる。その代表格がランド・ポール連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)で、彼はジュリアーニの国務長官就任について公の場で反対を表明している。

 

ウォールストリート・ジャーナル紙は、国務長官について、ロムニー支持、ジュリアーニ支持、その他の人を探すべきというグループがそれぞれトランプ陣営内に出来て、内部抗争が起きていると報じた。

 

●国防長官(Secretary of Defense

 

トランプは、国防総省を統括する国防長官に、ジェイムズ・マティス米海兵隊退役大将を就任させることを「真剣に考慮している」と語った。

 

トランプはマティスについて、「本物だ」と賞賛している。また、マティスに関しては、連邦上院軍事委員会委員長ジョン・マケイン(アリゾナ州選出、共和党)も支持している。

 

トランプ次期大統領は既にこの退役大将から話を聞いていることを認めている。マティスが国防長官となるためには、連邦議会からの特別な許可を必要とする。

 

火曜日にニューヨーク・タイムズ紙の取材に応じたトランプは、記者たちに対して、「私は水責めなどの拷問についてマティス氏に質問してみたのだが、驚いたことに、彼は反代打といった」と述べた。

 

選挙期間中、トランプは取調べの方法として水責めを認めるという発言をしていた。しかし、そもそも水責めは国際法で実施は禁止されている。

 

●司法長官(Attorney General

 

ジェフ・セッションズ(アラバマ州選出、共和党)は、司法省を統括する地位に就任することが決まった。

 

セッションズは連邦上院議員の中で最初にトランプを支持したじんぶつで、トランプが最も信頼する人物だ。

 

セッションズは、移民に対して強硬な姿勢を取っていることで知られ、セッションズの政策はトランプの国境の安全対策を助けることになっている。

 

セッションズの司法長官使命は、民主党と公民権運動諸団体の間で大きな反対を引き起こした。彼らは、司法省の公民権局をセッションズが統括することに懸念を表明した。

 

1986年、セッションズは連邦判事就任を拒絶された。彼は、全米黒人地位向上協会とアメリカ公民権連合を「非米的」と呼び、クークラックスクランについて、「マリファナさえ吸わなければ存在しても構わない」と発言したという疑惑のために、連邦判事になれなかった。セッションズはこの疑惑のいくつかについてはコメントを拒否し、また別のいくつかについては全くの事実無根だと述べた。

 

セッションズは、共和党が過半数を占めている連邦上院から承認を受けて、司法長官に就任する見通しだ。

 

マイク・ポンペオ連邦下院議員(カンザス州選出、共和党)は、セッションズが司法長官に指名された日に、CIA長官に指名された。

 

●国土安全保障長官(Homeland Security Secretary

 

国土安全保障長官に関しては候補者の名前が複数出ている。

 

連邦下院国土安全保障委員会委員長のマイケル・マコール連邦下院議員(テキサス州選出、共和党)は、選挙期間中にトランプに助言をしてきた。マコールは国土安全保障長官の候補者として名前が挙げられている。

 

マコールは、2018年の中間選挙で、テッド・クルーズ連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)に対して、共和党予備選挙で挑戦したいと考えている。しかし、同時に、トランプ政権に参画することにも関心を持っているとも示唆している。

 

カンザス州州務長官クリス・コバックもまた候補者となっている。コパックはトランプとの会談の写真が新聞の一面を飾った。彼はこの会談の機会に、国土安全保障省に関する自分の計画をトランプに披瀝した可能性がある。

 

ワシントン・ポスト紙はジョン・F・ケリーとフランセス・タウンゼントを候補者として報じている。ケリーは退役海兵隊大将であり、タウンゼントはジョージ・W・ブッシュ政権に参画した国土安全保障と対テロ対策の専門家である。

 

●財務長官(Treasury Secretary

 

ジェブ・ハンサーリング連邦下院議員(テキサス州選出、共和党)は候補者として名前が挙げられ、先週、トランプと会談し、税金と金融規制について議論した。ハンサーリングは、輸出入銀行について声高に反対する人物として知られている。

 

しかし、連邦下院金融サーヴィス委員会委員長ハンサーリングは、財務長官に就任するつもりはなく、そのような要請もないだろうと述べている。しかし、トランプの政権移行ティームから連絡があれば話はするとも語っている。

 

ゴールドマン・サックスの元幹部スティーヴン・ムヌキンは、トランプ選対の全国財政委員長を務めたが、ムヌキンも財務長官候補として名前が挙がっている。

 

●保健福祉長官(Secretary of Health and Human Services

 

トム・プライス連邦下院議員(ジョージア州選出、共和党)は整形外科医出身で、保健福祉長官の最有力候補だ、と複数の人々が本誌に語っている。

 

プライスはオバマケアに対する反対を主導してきた人物で、昨年、オバマケア廃止と新たな制度導入のための法案を連邦議会に提出した。

 

トランプは大統領に就任したら、オバマ大統領が署名した健康保険法の撤回を行うと繰り返し述べている。しかし、ここ最近、トランプは健康保険法のある部分をそのままにしておくつもりだと示唆している。共和党は、連邦上下両院で過半数を握っているライヘンの議会でオバマケアを最重要の議題として設定しようとしている。

 

連邦下院予算委員長プライスは、連邦下院共和党の「より良い方法」法案の健康保険分野の部分の草案を作成した実績を持つ。

 

フロリダ州知事リック・スコットは任期制限を迎えている。そして、スコットはトランプの支援者であった。彼もまた保健福祉長官候補として名前が挙がっているが、CNNとのインタヴューでトランプ政権入りに否定した。

 

●米国連大使(US Ambassador to United Nations

 

トランプは水曜日、サウスカロライナ州知事ニッキー・ヘイリーを国連大使に指名した。

 

ヘイリーは共和党の予備選挙ではマルコ・ルビオ連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)を支持し、トランプとは不仲であった。ヘイリーは、2016年のオバマ大統領の一般教書演説に対する共和党による反対演説に登場し、トランプを批判した。また、2015年にサウスカロライナ州チャールストンの黒人教会で起きた銃撃事件とトランプの発言の関連性について語ったことがあった。

 

ヘイリーはインド系アメリカ人であり、次期政権で最高幹部の職に就く最初の女性でマイノリティとなった。

 

現在州知事として2期目を務めているヘイリーは外国経験が豊富という訳ではない。しかし、サウスカロライナ州へのビジネス誘致で外国との交渉をこなしてきた経験を持っている。彼女の国連大使就任が議会で認められたら、マデリーン・オルブライト以来、他の連邦政府の職を経験することなく、国連大使となる人物ということになる。

 

●教育長官(Secretary of Education

 

ベッツィー・ディヴォスは、公立学校選択制度と特別認可学校制度の唱導者だ。そのディヴォスは水曜日、トランプから教育長官のポジションを提示され、それを受諾したと語った。ディヴォスの指名は、ヘイリーの指名の後に行われたので、ディヴォスはトランプ政権で2人目の女性となった。

 

ディヴォスは現在、公立学校選択制を主張する教育政策専門グループであるアメリカン・フェデレイション・フォ・チルドレンの会長を務めている。

 

元ミシガン州共和党委員会委員長ディヴォスは、大富豪であり、共和党に対する大口献金者だ。また、トランプに対しては支持を控えていた。今年の夏に開催された共和党全国大会には、オハイオ州知事ジョン・ケーシックを支持する代議員として出席した。

 

ディヴォスは、「コモン・コア」を熱心に支持してきたことで根掘り葉掘り調べられるだろう。「コモン・コア」は、教育に関するいくつかの基準を集めたもので、選挙期間中にトランプは批判してきた。ディヴォスは州レヴェルでは「コモン・コア」の採用を支持したが、連邦政府の基準とすることには反対している。

 

●住宅都市開発長官(Secretary of Housing & Urban Development

 

ベン・カーソンは、住宅都市開発長官の職に関心を持っていないと表明した後、今週になって、カーソンは住宅都市開発長官への指名を受けたと述べた。

 

カーソンは水曜日、SNSのフェイスブックで、次期政権の住宅都市開発長官の指名を受諾することを示唆した。それでも、感謝祭の休日期間中に就任について考慮するつもりだとも述べた。

 

カーソンのビジネスアドヴァイザーであるアームストロング・ウィリアムズは、住宅都市開発長官の職はカーソンの関心と一致すると述べている。また、元脳神経外科医のカーソンはデトロイトで貧困の中で育った経験を持っている。そうしたカーソンは、アメリカのインナーシティーの再建を手助けできるだろう。

 

選挙期間中、トランプはマイノリティに向けてアピールを行った。特にアフリカ系アメリカ人とヒスパニックに向けて、インナーシティーの都市機能を強化すると訴えた。

 

カーソンはまだ公式には何の発表をしていないが、ウィリアムズは先週、本誌に対して、カーソンはこれまで政府弟子午後をした経験を持っていないと語った。そして次のように述べた。「彼は大統領への挑戦の道が閉ざされないことを望んでいるのです」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)








このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です

 

 トランプ政権の閣僚に誰がなるか、が現在の注目の的となっています。

 

 アメリカでは大統領府に属する閣僚級の幹部と、連邦政府を構成する各省のトップである長官(セクレタリー)が、政権最高幹部ということになります。江戸時代の例で考えると、将軍に直属する「御側」「御用取次」「側用人」が「奥の役人」、「三奉行(寺社・江戸町・勘定)」「大目付」「若年寄」「老中」が「表の役人」と呼ばれました。大統領府に属する政権幹部は奥の役人、行政府の閣僚は表の役人ということになるでしょうか。江戸時代は、奥の役人は政治に直接かかわることは、建前上は禁止されていましたが、現在のアメリカでは奥の役人は大統領に属し実際の政策立案に閣僚たちと共に関わり、閣僚たちは、官僚を指揮してその政策を実行するということになります。

 

 しかし、表遠くの役人同士で争いが起きるのは古今変わらないようです。五代将軍徳川綱吉の寵臣、柳沢吉保(元々は保明という名前だったが、綱吉からを賜り吉保と改名)は側用人でした。十代将軍徳川家治の側用人は、有名な田沼意次でした。側用人が権勢をふるうということはよくありました。私たちも日本史の授業で、「側用人政治」と言う言葉を習いました。

 

側用人とよく似て、大統領首席補佐官(Chief of Staff)が大統領執務室前に陣取って、大統領のスケジュールや面会の管理をするので、力を持つ場合があります。オバマ政権初期の大統領首席補佐官ラーム・エマニュエル(現シカゴ市長)はそうでした。

 

また、国家安全保障問題担当大統領補佐官(National Security Advisor)は大統領に直属し、毎日、国家安全保障と外交に関して助言を行うことをしており、大変重要なポジションです。国家安全保障会議という大変重要会議にも出席します。ジミー・カーター政権時代、イランでイスラム革命が起き、アメリカ大使館が学生たちに占拠され職員たちが多数人質にされるという事件が起きました。この時、人質救出の方法を巡って、ズビグニュー・ブレジンスキー国家安全保障問題担当大統領補佐官とサイラス・ヴァンス国防長官の間で対立が起きました。ブレジンスキーが軍のエリートによる突入、ヴァンスはそうした強硬策に反対しました。そして、ブレジンスキーが勝ち、ヴァンスは国防長官を辞任しました。

 

 また、沖縄返還に関しては、佐藤栄作首相の意向を受けて密使として交渉にあたった、若泉敬・京都産業大学教授(当時)の著書『他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス』には、交渉相手として、リチャード・ニクソン大統領国家安全保障問題担当補佐官として、若泉の友人であったウォルト・ロストウとロストウの後任のヘンリー・キッシンジャーが出てきます。

 

 以下の記事2本では、これまでトランプを支えてきた人物たちの名前が出てきています。選対本部にいて選挙を取り仕切った人たちはスタッフとして大統領府に入ることが予想されていますが、どのような配置になるか、こちらもまだ決まっていません。

 

 以下の記事では出てきませんでしたが、国家安全保障問題担当大統領補佐官には軍人出身のマイケル・フリンの名前が挙がっています。また、国防長官の名前として、ジョージ・W・ブッシュ大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官スティーヴン・ハドリーの名前が挙がっています。

 

 記事を読むと、今回の人事に関する考え方として、「ワシントンの連邦政府(行政府)を変えるために連邦議会(立法府)からその分野に精通した人物を登用する(ジェフ・セッションズやボブ・コーカー)」というものと、「これまでの共和党政権(主に前回のジョージ・W・ブッシュ政権)での経験を持っている人を登用する(ジョン・ボルトンやスティーヴン・ハドリー)」というものの2つがあるようです。

 

 日本関係で重要なのは、国務長官や国防長官とその下の副長官、次官、次官補、国家安全保障問題担当大統領補佐官、国家安全保障会議アジア部長、国務省日本部長、国務省政策企画局長といったポジションです。こういったポジションにどういう人たちが就任するのか、更に言うと、トランプに反対していた、マイケル・グリーンさんがどういう地位に就かれるのかが注目です。

 

(貼り付けはじめ)

 

準備段階での名簿がトランプ政権の閣僚候補者たちの名前を示す(Preliminary list shows potential Trump Cabinet picks

 

ニキータ・ヴラディミロフ筆

2016年11月9日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/305354-buzzfeed-obtains-preliminary-list-of-trump-cabinet-picks

 

ドナルド・トランプの政権移行ティームは、彼が率いる次期政権の閣僚になる可能性がある人々の名簿を用意している。

 

ウェブサイト「バスフィード・ニュース」が入手した名簿には、ベン・カーソン、ニュージャージー州知事クリス・クリスティ、マイク・ハッカビー、ニュート・ギングリッジなどの名前が挙げられ、その中には一人の人物が複数のポジションの候補者になっている人もいる。

 

名簿には全部で41名の人物の名前と14の行政を構成する各省が記載されている。名簿を提供した人物は、バズフィードの取材に対して、この名簿は最終版ではなく、変更される可能性が高いと語った。

 

司法長官の候補者として、クリス・クリスティ、ジェフ・セッションズ、そしてルディ・ジュリアーニの名前が挙げられている。

 

国務長官の候補者として、ニュート・ギングリッジ、ジョン・ボルトン、ボブ・コーカーの名前が出ている。

 

大統領首席補佐官(首席スタッフ)の候補者には共和党全国委員会委員長レインス・プリーバスの名前しか挙げられていない。大統領府に属する行政管理予算局長として、セッションズの名前が出ている。

 

商務長官候補には、クリスティとハッカビー、教育長官にはベン・カーソンの名前が挙げられている。

 

国土安全保障長官としてクリスティの名前が、保健福祉長官としてカーソン、ギングリッジ、フロリダ州知事リック・スコットの名前が挙がっている。

 

サラ・ペイリンの名前が名簿に出ているのはサプライズであった。ペイリンは、内務長官の候補者の一人として名前が挙がっている。

 

=====

 

トランプは複数の共和党所属の連邦議員たちを閣僚に起用している(Report: Trump eyeing GOP lawmakers for Cabinet posts

 

ハーパー・ニーディグ筆

2016年11月9日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/305348-report-trump-eyeing-gop-lawmakers-for-cabinet-posts

 

水曜日、『ブルームバーグ・ポリティックス』誌は、マイケル・マコール連邦下院議員(テキサス州選出、共和党)、ボブ・コーカー連邦上院議員(テネシー州選出、共和党)、ジェフ・セッションズ連邦上院議員(アラバマ州選出、共和党)が次期ドナルド・トランプ政権の閣僚の候補者となっていると報じた。

 

トランプの考えをよく分かっている人に取材をし、ブルームバーグ誌は、連邦下院国土安全保障委員会委員長マコールは、国土安全保障長官に最有力候補だと報じた。

 

連邦上院外交委員会委員長のコーカーと、ジョージ・W・ブッシュ政権で国連大使を務めたジョン・ボルトンは、国務長官候補として名前が挙がっている。

 

セッションズは国防長官になるだろうと言われている。トランプはこれまで繰り返し、アラバマ州選出の上院議員であるセッションズを閣僚に起用するだろうと述べている。

 

ブルームバーグ誌によると、元ニューヨーク市長ルディ・ジュリアーニは司法長官の最有力候補だと報じている。

 

これまでに名前が挙がっている人々は全てトランプ支持者である。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)







 
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 

 ここ数日、アメリカ大統領選挙関連では、ドナルド・トランプに対する集中攻撃が激しさを増しています。このブログでもご紹介しましたが、発端は、民主党全国大会に登場したカーン夫妻の演説とそれに対するトランプの批判です。イスラム教徒であったカーン大尉はイラクで基地警備中に自動車によるテロで戦死しました。両親はトランプのイスラム教徒入国禁止を批判し、「アメリカ合衆国憲法を読んだことがあるのか、読んだことがなければ私が持っているものを貸しても良い」「あなたは何も自分の関するものを犠牲にしていない」と述べました。

 

 これに対して、トランプは「夫人からも話を聞きたかった(夫人は大会に登場したが何も発言しなかった)、彼女が発言しなかったのは恐らく宗教上の理由からだろう」「私は多くを犠牲にしている」と述べました。これに対して、民主党から、更には共和党内部からも激しい批判が出ています。

 

 また、トランプの報道担当が「カーン大尉の死は、公選規定を変更したバラク・オバマ大統領とヒラリー・クリトン国務長官(当時)のせいだ」とテレビで発言し、失笑を買いました。カーン大尉が戦死したのは2004年で、その当時は共和党のジョージ・W・ブッシュ政権だったからです。

 

 また、トランプ陣営では幹部が解雇されるなど、内部対立があるというような報道もなされています。トランプの支持率は急落しています。共和党全国大会後に支持率は伸びて、ヒラリーを逆転しましたが、民主党全国大会後のヒラリーの伸びに加えて、彼自身の失速も重なってトランプの凋落が際立っています。

 

 これに対して、共和党の幹部たちは、トランプ陣営の立て直しに動き出しています。共和党全国大会でトランプを熱烈に支持する演説を行ったニュート・ギングリッジ連邦下院元議長とルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長がトランプに建て直し案を提案するようです。

 

 具体的には、トランプ陣営でもっと子供たちに選挙運動に参加させて、トランプにどんどん助言をさせて、陣営を引き締める、分裂を防ぐというものです。一部メディアでは、トランプが立候補を取り止める、共和党全国委員会が立候補を取り止めるように圧力をかけているという報道がなされています。

 

 敵は味方の側を分裂させようとします。一部が崩れたら、そこを突破口にして攻め込むことが出来るからです。今、トランプは四面楚歌の状況ですから、どこかに穴が開いてしまうとそこから攻め込まれてしまいます。ですから、その穴が出来てしまうことを防ぐことが重要で、政治のヴェテランであるギングリッジとジュリアーニにはそれが分かっているので、引き締め、建て直しのために忠告をすることになりました。

 

 トランプは現在の危機を乗り越えて9月からのヒラリーとの直接対決を迎えるためには、彼らの意見を素直に聞くべきでしょうし、彼はそうするでしょう。

 

=====

 

プリーバス、ジュリアーニ、ギングリッジがトランプに対する仲介案を提案(Priebus, Giuliani, Gingrich plot Trump 'intervention': report

 

ジェシー・バイルネス筆

2016年8月3日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/290247-priebus-giuliani-gingrich-plot-trump-intervention-report

 

共和党の幹部でドナルド・トランプの政治的な協力者たちが、共和党大統領選挙候補者ドナルド・トランプに対する「仲介案」を提案しようとしている。ここ数日、トランプに対する政治的な大嵐が吹きつけている。この事実は水曜日に報道された。

 

共和党全国委員会委員長レインス・プリーバス、ニューヨーク元市長ルディ・ジュリアーニ、連邦下院元議長ニュート・ギングリッジは、ドナルド・トランプと話したいと考えているとNBCニュースが報じた。

 

プリーバス、ジュリアーニ、ギングリッジをはじめとするグループは、トランプの子供たちに「協力して戦いに参加してもらう(enlist)」ことを希望している。トランプの子供たちは、トランプに対する助言役として重要であることが証明されている。彼らは、亡くなった米軍将校の両親に対する批判をしてから数日、トランプに対する攻撃から抜け出させようと努力している。この騒動に対しては、ニュージャージー州知事クリス・クリスティのようなトランプの政治的協力者たちも不適切だとトランプを批判している。

 

トランプは水曜日の朝、自分の陣営は「固く団結している」とツイートとした。しかし、マスコミによる否定的な関心を集め、トランプ陣営の内部分裂が頻繁に報道されている。

 

不動産業界の大立者トランプは、先週の民主党全国大会に登場して彼を批判した米軍将校の両親を攻撃した。その後、先週末にロシアのヨーロッパ進攻についてのコメントをし、それが激しい批判に晒された。

 

火曜日、『ワシントン・ポスト』紙の取材に対して、連邦下院議長ポール・ライアン(ウィスコンシン州選出、共和党)と連邦上院議員ジョン・マケイン(アリゾナ州選出、共和党)の予備選挙で支持できないと述べた。彼らはトランプを支持しているが、トランプは支持しないと述べたのだ。また、連邦上院議員ケリー・アヨッテ(ニューハンプシャー州選出、共和党)を激しく非難している。

 

(終わり)







 
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ