古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ロレッタ・リンチ

 古村治彦です。

 

 アメリカのドナルド・トランプ大統領が、2017年5月9日、ジェイムズ・コミーFBI長官を解任しました。解任の際にトランプ大統領がコミー長官に宛てた書簡では、「司法長官と副長官の助言と勧めを受け入れて」解任すると書かれています。

 

 ジェフ・セッションズ司法長官とロッド・ローゼンスタイン司法副長官の助言による

 

ロッド・ローゼンスタインは司法省生え抜きで、ペンシルヴァニア大学を優等で卒業し、ハーヴァード大学法科大学院に進学し、学内誌『ハーヴァード・ロー・レヴュー』の編集に携わりました。バラク・オバマ大統領もこの雑誌の編集に携わりました。大変優秀な人物で、地区検察官も務めました。

 

FBIは捜査機関で、彼らの捜査した内容で起訴するかどうかを決めるのが司法省です。ですから、司法省は検察の役目を果たしています。ヒラリーのケースでは、FBIのコミー長官がヒラリーについて2016年7月6日に「大変不適切な対応はあったが、起訴するには至らない」という助言と勧めを当時のロレッタ・リンチ司法長官に送り、それが採用される形になりました。その後、2016年10月28日になって、別件(アンソニー・ウェイナー元連邦下院議員[ヒラリーの側近フーマ・アベディンの夫]の事件)で捜査中に、ヒラリーの私的Eメールサーヴァー使用に関して、新たなEメールが発見されたということをコミー長官は議会に報告する形で公表しました。

 

 昨年の大統領選挙では、民主党のヒラリー・クリントン元国務長官が下馬評では圧倒的に有利とされ、トランプは劣勢を強いられていました。7月に不起訴の決定がなされた後、トランプ陣営にもスキャンダルが出て、決定打にはなりませんでした。しかし、10月28日に新たなEメールが発見されたという報道がなされ、これがヒラリー陣営にとっては、後から考えると大打撃となりました。

 

 今回、司法省のジェフ・セッションズ長官、ロッド・ローゼンスタイン副長官は、昨年10月28日のFBIの捜査情報の連邦議会送付と公開を問題にしました。これについて「やってはいけない行為」とし、「それについて悪いと思っていない」という点を問題視し、コミー長官を解任しました。

 

 しかし、考えてみると、コミー長官はやるべきことをやった訳ですし、トランプ陣営からすれば、ある意味で、最大の功労者と言うことができます。また、政権が発足して100日以上経過しての突然の解任、しかも、コミー自身は、解任を出張先のロサンゼルスでテレビの速報で知ったということで、このような解任の仕方は、コミーを辱める行為ですが、トランプ政権は敢えてこれを強行しました。

 

 5月3日の連邦議会での公聴会で、コミー長官が、選挙の結果に影響を及ぼしたと思うと、吐き気がするほどだが、私(たち)は間違っていなかったと発言しました。これが突然の解任のきっかけとなったということでしょう。

 

 ここで考えられるのは、FBIが現在、トランプ陣営とロシアとの関係について捜査を行っているという点に何か関連しての突然の解任ではないかということです。コミー長官が「虎の尾を踏んで」しまって、急きょ解任されたという可能性が考えられます。FBIの捜査に関しては、司法省もホワイトハウスもコントロールすることは建前上はできませんから、ヒラリーの捜査情報を連邦議会に送付したコミーが、同じことを再びやるということも考えられるので、慌てて懲罰的な形で解任したということが考えられます。

 

 また、逆の面から見れば、コミーは、ヒラリー落選の最大の戦犯ということになります。ヒラリー陣営や民主党側は、コミーの首を取りたいと考えています。これを代わりに実行したのがトランプと言うことになります。しかも懲罰的に、です。これは、トランプが、ヒラリーの事件をこれ以上蒸し返して、彼女を犯罪者にはしないというメッセージにもなりますし、民主党にも肯定的なメッセージを送ったことになると考えます。

 

 ジェイムズ・コミーFBI長官はとても苦しい経験をしたと言えます。アメリカの方向性を変えた人物となりました。彼は彼なりに職務を忠実に遂行したと言えますが、政治の空白地帯に落ちてしまい、民主、共和両党、ヒラリー、トランプ両陣営の攻撃対象になってしまいました。この点で、コミーは稀有な存在となりました。理不尽な人間悲喜劇の主人公となってしまったと言った方が良いかもしれません。

 私が最後に思ったのは、これは、連合国総司令官ダグラス・マッカーサーの解任に匹敵するものだということです。FBI長官と言えば、エドガー・J・フーヴァーのように、時の大統領の弱みを握って、長く力を保持することも可能ですが、大統領が解任と決めたら、ただの人になってしまいます。民主政治体制におけるシヴィリアンコントロールと権力の抑制と分立ということを改めて認識させられます。

 

(貼りつけはじめ)

 

●「米大統領、FBI長官を解任=メール問題対応「重大な誤り」―捜査妨害と反発も」

 

時事通信 2017年5月10日

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170510-00000012-jij-n_ame

 

トランプ米大統領は9日、連邦捜査局(FBI)のコミー長官(写真)を解任した。クリントン元国務長官のメール問題に関するコミー氏の判断は「重大な誤り」だったとして司法省が長官交代を進言、大統領も受け入れた

 

 【ワシントン時事】トランプ米大統領は9日、連邦捜査局(FBI)のコミー長官を解任した。

 

 ホワイトハウスによると、先の大統領選中、民主党候補クリントン元国務長官の私用メール問題に関する捜査情報を公表したコミー氏の判断は「重大な誤り」だったとして司法省が長官交代を進言、大統領も受け入れた。

 

 大統領はコミー氏への解任通知で「FBIへの国民の信用と信頼を回復できる新しい指導者を見つけることが不可欠だ」と強調した。ただ、FBIは現在、トランプ陣営とロシア政府が結託してクリントン氏の選挙戦を妨害したのではないかという疑惑を捜査している最中で、民主党を中心に捜査妨害だと反発する声も上がっている。

 

 メール問題を捜査していたコミー氏は昨年75日、異例の記者会見を開いてクリントン氏の不訴追を発表。大統領選が11日後に迫った同1028日には、新しい証拠が見つかったとして連邦議会に捜査再開を通知した。いずれの対応も大統領選に不当な影響を与えたと批判を受けたが、コミー氏は53日の議会公聴会で「今でも正しい選択だったと信じている」と語っていた。

 

 ホワイトハウスによれば、ローゼンスタイン司法副長官はセッションズ司法長官に宛てた覚書で、コミー氏の対応は「検事や捜査官が教科書でしてはならないと教わる典型例」と指摘。「誤りだと認めないことも理解できない」と公聴会での発言も批判した。

 

 これを受け、セッションズ氏は大統領への書簡で「FBIには新鮮なスタートが必要だ」と助言。大統領は声明に「きょうが法執行機関の至宝の新しい始まりだ」と記した。発表に先立って大統領は民主党幹部にも電話し、解任の決断を伝達。これに対し、シューマー上院院内総務は、進行中の捜査が滞りかねないとの観点から「大きな間違いだ」と懸念を伝えた。

 

=====

 

●「大統領選への影響「いささか吐き気がする」 FBI長官」

 

BBC News 2017年5月4日

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170504-10001777-bbcv-int

 

米連邦捜査局(FBI)のジェイムズ・コーミー長官は3日、上院司法委員会のFBI監査公聴会で証言し、昨年の大統領選直前にヒラリー・クリントン氏の私用メールサーバー問題について捜査していると公表したことについて、議員たちの追及に答えた。長官は、FBIが選挙結果に影響を与えたかもしれないと思うと「いささか吐き気がする」と述べつつ、今でも正しい判断だったと思っていると述べた。

 

=====

 

●「米大統領、FBIを名指し非難=メディアに情報「漏えい」」

 

時事通信 2017年2月25日

http://www.jiji.com/jc/article?k=2017022500031&g=use

 

 【ワシントン時事】トランプ米大統領は24日、ツイッターに「連邦捜査局(FBI)は、国家安全保障に関わる『漏えい者』を止めることが全くできていない」と書き込んだ。内部情報に基づく報道に関し、組織を名指しして情報管理の甘さを糾弾した。

 

 トランプ氏は、投稿で「機密情報がメディアに渡っており、米国に破壊的な影響を及ぼしかねない」と主張。「今すぐ(漏えい者を)見つけろ!」と調査を求めた。

 

 トランプ政権では、フリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)が就任前に駐米ロシア大使と対ロシア制裁について話していたことが発覚して辞任。トランプ氏は15日の記者会見で、「情報機関から(フリン氏に関する)ペーパーが漏えいした。犯罪行為だ」と非難していた。(2017/02/25-00:40

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 

 副島隆彦先生が日本に紹介した「ヒラリーを逮捕せよ!(Lock Her Up!)」の声は再び強まっているようです。責任追及は、司法省のロレッタ・リンチ長官とFBIの幹部にまで及ぶと思われます。

 

 以下の記事では、FBIの最高幹部だった人物が、クリントン夫妻を「犯罪一家」だと断じています。クリントン財団のことを調べれば、それくらいのことは言いたくなります。そして、重要なことは、この人物は、FBIの現場レヴェルの人々の考えを代弁し、ロレッタ・リンチとFBIの幹部連中が今年の7月にヒラリーのEメール問題を刑事訴追しないと決めたことにも責任がある、と述べていることです。

 

 今回の件は、FBIの失地回復でもあり、面目躍如ということになります。そして、司法省とFBIにおいて幹部クラスの更迭や粛清、左遷といったことがこれから起きることは確実です。しかし、ヒラリーが勝利すれば、この状態は温存されるでしょう。ですが、そうなれば、アメリカ国民がアメリカの現体制に大きな不満を持ち、それがやがて革命にまでつながるかもしれません。アメリカ国民には政府が間違っていれば、それに抗する抵抗権が認められているのですから、それを敷衍すれば、統治機構が腐敗しているから、それを一掃しようということになります。

 

 アメリカの民主政治体制の腐敗とどん底からの再生がこれからのテーマとなっていくでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

FBI幹部:「クリントン家は“犯罪一家”だ」(Ex-FBI official: Clintons are a 'crime family'

 

ハーパー・ニーディグ筆

2016年10月30日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/303458-former-fbi-official-clintons-are-a-crime-family

 

FBI幹部は日曜日、ビル・クリントン、ヒラリー・クリントンは「犯罪一家」を構成する要素であり、ヒラリーが国務長官在任中に私的Eメールサーヴァー使用に関する捜査をFBI幹部が妨害したと主張した。

 

FBI副長官のジェイムズ・コールストロームは、ジョン・キャトシマティディスが司会を務めるラジオ番組に出演し、共和党大統領選挙候補者ドナルド・トランプを賞賛し、その後、クリントン池に対する攻撃を始めた。

 

コールストロームは、「クリントン家は、基本的に犯罪一家と言って良いと思います。組織犯罪によく似ていますね。クリントン財団は汚物だめですよ」と語った。

 

コールストロームは、1990年代後半に発生したTWA800便爆破事件の捜査を主導したことで知られている。コールストロームは、民主党大統領選挙候補者ヒラリー・クリントンは、「病的な嘘つき」だと切って捨てた。

 

コールストロームは、ロレッタ・リンチ司法長官を批判し、リンチがヒラリーの私的Eメールサーヴァー使用の捜査を妨害したと述べた。

 

コールストロームは次のように述べた。「問題は、ヒラリーのEメール問題の捜査がちゃんと進められていなかったことです。これは問題ですよ。司法省は大陪審の手続きをしなかったんです。どうしてそんなことが起きたのか、その理由は、ロレッタ・リンチがそれをさせなかったからですよ」。

 

コールストロームはヒラリーについて、「犯罪者をホワイトハウスに入れることを神はお許しにならないですよ」と述べた。

 

コールストロームは、FBI全体ではなく、ジェイムズ・コミーFBI長官とFBI幹部たちに捜査をやり直す責任があると語った。

 

コールストロームは「FBI捜査官たちは事態の進行に怒り狂っています。それが事実なんですからね」と語った。

 

(貼り付け終わり)

 


(終わり)









このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 

 先週金曜日にFBIのジェイムズ・コミー長官が連邦議会の委員会に出した書簡が民主党とヒラリー選対を揺り動かしています。

 

 この件について、競争相手であるドナルド・トランプは、「FBIは間違いを正す勇気を持っている、それに敬意を表する」と発言しています。ヒラリーのEメール問題によって、アメリカ大統領選挙の最終盤は混沌とした状況になっています。

 

 コミーの書簡送付について、司法省のロレッタ・リンチ長官は政治的な影響を考えて、送付を控えるようにと助言したということです。そもそも、ヒラリーのEメール問題の刑事訴追に関しては、2016年7月にコミーFBI長官が、刑事訴追に足る証拠が見つからなかったとして刑事訴追しないように司法省のリンチ長官に勧告したことでいったん終息することになりました。

 

 FBIと司法省の関係ですが、FBIは捜査を行う部門で、司法省の司法長官は英語では、Attorney Generalで、これは「検事総長」とでも訳すべきものです。そもそも政権内の他の閣僚たち、たとえば国務長官や国防長官は、Secretary of StateSecretary of Defenseと、Secretaryですから、司法長官は職分や立場は違います。

 

 ヒラリーのEメール問題が刑事訴追されるかどうかの時期に、リンチ長官はアリゾナ州の空港で、「ばったりと」ビル・クリントン元大統領に会って、噺をしています。「家族の話をしていた」などと呑気なことを言っていますが、ビル・クリントンのお蔭で出世ができたロレッタ・リンチが微妙な時期に彼に会って、刑事訴追見送りということになる、これはアメリカの司法制度や統治制度がフ反していることを示しています。

 

 これについて、トランプは「アメリカ国民こそがこの腐敗したシステムの被害者なのだ」と発言しました。まさにその通り、であるとしか言えません。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプ:ヒラリーは被害者ではない(Trump: Clinton is not the victim

 

ベン・カミサール筆

2016年10月31日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/campaign/303619-trump-clinton-is-not-the-victim

 

共和党大統領選挙候補者ドナルド・トランプは月曜日、ミシガン州の選挙集会において、「ヒラリー・クリントンに“法的なトラブルが頻発している”のは、誰のせいでもない、自分のせいなのだ」と語った。

 

アンソニー・ウェイナー元連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)のコンピューターから押収された新たなEメールを調査するというFBIの決定を受けて、トランプは大統領選挙のライヴァルであるヒラリーを攻撃した。

 

トランプは、「ヒラリーは自分の周囲で法的なトラブルが頻発していることについて、自分以外の全ての人を非難したいと思っているだろうが、こうしたトラブルは彼女自身がもたらしたものだ」と語った。

 

トランプはミシガン州グランド・ラピッズでの選挙集会で続けて次のように語った。「ヒラリーは自分の犯罪行為を隠すために私的なEメールサーヴァーを利用したのだ。ヒラリーは国務省で、堕落した地位を利用して私腹を肥やすあっせん利得、賄賂の受け取りをやってのけた人間なのだ」。

 

トランプは次のように語った。「ヒラリーは犠牲者ではありません。アメリカ国民こそがこの腐敗したシステムの犠牲者なのです。11月8日こそは皆さんにとってこのシステムを変える唯一のチャンスになります」。

 

ジェイムズ・コミーFBI長官は金曜日、FBIがヒラリーEメール問題について新たなEメールを調査していると発表した。これが最終盤を向けている選挙戦に影響を与えている。ヒラリーのEメール問題(国務長官在任時に私的なEメールサーヴァーを利用した)が再び注目を浴びるようになっている。

 

今年の夏、コミーは、ヒラリーが機密情報を意図的にやり取りしていたことを示す証拠が発見できなかったと発表した。先週金曜日、コミーは、ヒラリーのEメール問題の捜査に関連することが明らかな新たなEメールが発見されたと発表した。

 

民主党側は、コミーFBI長官が選挙に介入しようとしている非難している。そして、コミーの連邦議会委員会への書簡には詳細が書かれていないと批判している。

 

共和党側はコミーを擁護している。コミーの発見は、ヒラリーが国務長官在任時に機密情報を如何に誤って取り扱っていたかを示していると主張している。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)









このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ