古村治彦です。

 『もうすぐ世界恐慌 そしてハイパー(超)インフレが襲い来る』(副島隆彦著、徳間書店、2019年4月)と『ソフトバンク崩壊の恐怖と農中・ゆうちょに迫る金融危機』(黒川敦彦著、講談社+α新書、2020年3月)から見えてくるのは、それは「アメリカに大事なお金をむしり取られる日本の姿、属国日本の悲しい現実」という冷酷な事実だ。

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もうすぐ世界恐慌 そしてハイパー(超)インフレが襲い来る

 2冊の本が同時に取り上げているのが孫正義氏率いるソフトバンクだ。ソフトバンクに倒産・破綻の危機が迫っているということが書かれている。ソフトバンクの本業は何かはっきりしない会社だ。携帯電話を売っている(ユニークな内容のCMで知られるようになった)ということは誰でも知っているがそれは5000億円程度の規模だ。ソフトバンク自体は「36兆円の資産を持っている」と主張している。私たちがよく知っているソフトバンクの「本業」は資産の70分の1程度だ。このソフトバンクの「資産」をよく見て見ると、そのほとんどは「無形固定資産(知財=のれん=ノウハウ)」だ(『もうすぐ世界恐慌』、167ページ)。『ソフトバンク崩壊の恐怖~』では、「ソフトバンクは既に事業会社ではなく投資会社に変貌している」と書かれている(23ページ)。ここでの問題はソフトバンクの投資先だ。
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ソフトバンク崩壊の恐怖と農中・ゆうちょに迫る金融危機 (講談社+α新書)

 ソフトバンクの投資先企業、ウィーワーク、ウーバー、オヨといった企業には問題が多い。更に、ソフトバンクはビジョン・ファンドという投資会社を作っているが、ビジョン・ファンドが資金提供を受けているのはサウジアラビアのムハマンド・ビン・サルマン皇太子だ。サルマン皇太子からは4兆円の資金提供を受けているが、皇太子からの資金に対して年間7%の利回りを保証している。これは年間2800億円をサルマン皇太子に支払わねばならないということを意味する。

ソフトバンクが持っている中で優良なのは中国のアリババ集団の株式14兆円くらいのものだ。アメリカの通信会社スプリント社を買って失敗、イギリスの半導体会社アーム社を買って失敗という状況もある。そうした中で借金(社債と銀行融資)はどんどん膨らんでおり、総額は27兆円となっている。その内の17兆円はみずほ銀行が貸し付けている。

孫正義氏はスプリント社の買収やアメリカへの500億ドル(約5兆4000億円)規模の投資を当選直後のトランプ大統領に約束した。スプリント社は全米屈指の通信会社と言えば聞こえはいいが、実際にはヴェライゾンなどからは大きく置いていかれている。そんな会社をどうして買ったのかは全くもって不思議だ。また、アメリカへ投資もよく分からない。

こうしたことは、孫正義氏の「上司」「親分」が投資会社ブラックストーンCEOスティーヴン・シュワルツマンとであるということが分かるとなるほどと納得できる。『ソフトバンク崩壊の恐怖~』にはこうしたことは書かれていないが、『もうすぐ世界恐慌』にはっ切りと書かれている。副島隆彦はこれまで繰り返し、孫正義がシュワルツマンの忠実な子分であること、シュワルツマンはデイヴィッド・ロックフェラーの意向を受けて動くこちらも忠実な番頭格の子分であったことを書いてきている。

 『ソフトバンク崩壊の恐怖~』の後半部で指摘されているのは、農林中央金庫とゆうちょが持つ大切な資金が、アメリカの危険な債券に投資されているという実態だ。もちろん、このことは『もうすぐ世界恐慌』でも書かれている。ローン担保証券(Collateralized Loan Obligation、コラタラライズド・ローン・オブリゲーション、CLO)という診療力のない企業への債権を証券化したものだ。これはサブプライムローンと同じだ。焦げ付く危険性が高いものだ。このCLO(黒川氏はアルファベット3文字に略される金融商品は危険だと指摘している)を農林中金とゆうちょが大量に買い込んでいる。それを指導しているのは、ゴールドマンサックス出身の人々だ。また、ゼロ金利で収益が上がらない地方銀行も危険な商品を買い込んでいる。こうした危険な商品が爆発すると、リーマンショック以上の金融爆発が起き、世界恐慌へと進んでしまう。この時、日本人が汗水たらして貯めてきたお金が消え去ってしまう。

 今回の新型コロナウイルス感染拡大は富裕層にもマイナスの影響を及ぼしている。前々回の記事でご紹介したが、トランプ大統領の長年の盟友であり、世界のカジノ産業のトップであるシェルドン・アデルソンは資産を3割も吹っ飛ばしている。4兆円が3兆円になり、1兆円が今年に入って消えてなくなってしまったということだ。フォーブス誌は今年の3月上旬からの12日間で200名以上の富豪が億万長者、ビリオネア(10億米ドル[約1100億円])のステータスから外れたとしている。3月上旬の時点で10億ドル以上の資産を持っている富豪が世界で2200名以上いたが、それが3月18日の時点で2000名になっていたということである。これは3月の中旬時点での数字なので、現在は株式が戻りつつあるにしても、更に億万長者の数は減っているだろう。

 トランプ大統領は就任以来、株高を演出し、好景気だと言い張ることで支持を集めてきた。前回の記事でも名前が出ていた、シェルドン・アデルソンやカール・アイカーンといった、いかがわしい動きをする盟友・友人たちのために株高を演出してきた。日本もその片棒を担がされる形になった。しかし、世界全体が新型コロナウイルス(COIVD-19)感染拡大の悪影響をもろに受けている。これから悪影響はより広く、より深刻に社会や経済に浸透していく。そうなると、世界経済は減速、同時不況ということになる。2008年のリーマンショックを超えるレヴェルとなれば、世界大恐慌ということにもなるだろう。

 不景気、デフレとなれば現金の持つ力は大きくなる。現金と流動性の高い(すぐにお金に換えられる)実物、具体的には金(きん)ということになるというのは、経済に疎い私でも容易に導き出せる考えだ。

(終わり)

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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側