古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ヴィクトリア・ヌーランド

 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。今回取り上げるヴィクトリア・ヌーランドについても詳しく書いています。是非手に取ってお読みください。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカの強硬な対ロシア政策とウクライナ政策をけん引してきた、ヴィクトリア・ヌーランド政治問題担当国務次官(省内序列第3位)が退任することが、上司であるアントニー・ブリンケン米国務長官によって発表された。ロシア政府関係者は「ヌーランドの退任はアメリカの対ロシア政策失敗の象徴」と発言している。まさにその通りだ。ウクライナ戦争に向けて散々火をつけて回って、火がコントロールできなくなったら、責任ある職から逃げ出すというあまりにも無様な恰好だ。ヌーランドは職業外交官としては高位である国務次官にまで昇進した。しかし、その最後はあまりにもあっけないものとなった。

 アメリカ政治や国際関係に詳しい人ならば、ヌーランドが2010年代から、ウクライナ政治に介入し、対ロシア強硬政策を実施してきたことは詳しい。私も第3作『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)、最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)で詳しく書いてきた。ヌーランドは家族ぐるみでネオコンであり、まさにアメリカの対外介入政策を推進してきた人物である。
 ウクライナ戦争はその仕上げになるはずだった。アメリカがロシアを屈服させるために、ウクライナに誘い込んで思い切り叩く、それに加えて経済制裁も行って、ロシアをぼろぼろにするということであった。しかし、目論見はものの見事に外れた。現在、ウクライナ戦争はウクライナの劣勢であり、アメリカが主導する西側諸国の支援もなく、情勢はロシア有利になっている。ヌーランドはまずこの政策の大失敗の詰め腹を切らされた形になる。

 そして、バイデン政権としては、ウクライナ問題で消耗をして、泥沼に足を取られている状態を何とかしたい(逃げ出したい)ということもあり、アジア重視に方針を転換しようとしている。対中宥和派であったウェンディ・シャーマン国務副長官が昨年退任し、国務次官ヌーランドが代理を務めていた。彼女としては、このまま国務副長官になるというやぼうがあったはずだ。しかし、バイデン政権は、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)でインド太平洋調整官(アジア政策担当トップ)を務めていたカート・キャンベルを国務副長官に持ってきた。先月には連邦上院で人事承認も行われた。ヌーランドは地位をめぐる政治的な争いに負けたということになる。また、アジア重視ということで、ヌーランドの重要性は失われて、居場所がなくなったということになる。

 ヌーランドは7月からコロンビア大学国際公共政策大学院で教鞭を執ることも発表された。ヌーランドが国務省j報道官時代に直接仕えた、ヒラリー・クリントン元国務長官がこの大学院の付属の国際政治研究所教職員諮問委員会委員長を務めており、ヌーランドは客員教員を務めることになっている。この大学院の大学院長であるカリン・ヤーヒ・ミロはイスラエルで生まれ育った人物で、国際関係論の学者であるが、アメリカに留学する前はイスラエル軍で情報将校を務めていたという経歴を持っている。ネオコンは、強固なイスラエル支持派でもあるということもあり、非常に露骨な人事である。

 ヌーランドがバイデン政権からいなくなるということは、ウクライナ戦争の停戦に向けての動きが出るということだ。アメリカは実質的にウクライナを助けることが難しくなっている。ウクライナ支援を強硬に訴えてきた人物がいなくなるということは、方針転換がしやすくなるということだ。これからのアメリカとウクライナ戦争の行方は注目される。

(貼り付けはじめ)

長年の対ロシアタカ派であるヴィクトリア・ヌーランドが国務省から退任(Victoria Nuland, Veteran Russia Hawk, to Leave the State Department

-仕事熱心な外交官であり、ウクライナ支持を断固として主張してきたヌーランドは、国務省のナンバー4のポストから辞任する。

マイケル・クロウリー筆

2024年3月5日(改訂:3月7日)

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2024/03/05/us/politics/victoria-nuland-state-department.html

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2021年に連邦上院外交委員会で証言する政治問題担当国務次官ヴィクトリア・ヌーランド

国務省で序列4位の高官であり、ウラジーミル・V・プーティン政権のロシアに対する強硬政策を断固として主張してきたヴィクトリア・J・ヌーランドが、30年以上の政府勤務を終えて今月退職する。

アントニー・J・ブリンケン国務長官は火曜日、自由、民主政治体制、人権、そしてアメリカによるこれらの大義の海外での推進に対するヌーランドの「激しい情熱(fierce passion)」を指摘する声明の中で、ヌーランドの国務次官職からの辞任を発表した。

ブリンケンは、ウクライナに関するヌーランドの取り組みを指摘し、それは「プーティン大統領の全面的な侵略に対抗するために不可欠(indispensable to confronting Putin’s full-scale invasion)」であると述べた。

ヌーランドは報道官など国務省の役職を数多く歴任し、ディック・チェイニー副大統領の国家安全保障問題担当副大統領次席補佐官を務めたこともある。しかし、ヌーランドは、プーティンの領土的野心と外国の政治的影響力に対して強い抵抗を組織することを長年主張し、ロシアの専門家として名を残した。

オバマ政権時代には国務省のロシア担当高官として、ウクライナ軍の対戦車ミサイル武装を主張したが失敗したが、バイデン政権ではより多く、より優れたアメリカ製兵器をウクライナに送ることを最も支持してきた。

熟練した官僚的実務家であるヌーランドは、鋭い機知と率直な態度で自分の主張を展開し、同僚から賞賛と恐怖が入り混じった反応を引き出した。ブリンケン国務長官は声明の中で、「彼女はいつも自分の考えを話す」と穏やかな表現を使った。

ヌーランドは2014年、ウクライナ政治に関する電話での通話で、ヨーロッパ連合(European UnionEU)を罵倒するような発言をしたことがきっかけとして、多くの人々に知られるようになったが、その通話は録音され、その録音が流出した。アメリカ政府当局者たちはこの流出をロシアの仕業だという確信を持っている。

バイデン政権下、ヌーランドはアメリカのウクライナ支援に懐疑的な人々の避雷針(lightning rod)となった。テスラの共同創設者イーロン・マスク氏は昨年2月、ソーシャルメディアサイトXに、「ヌーランドほどこの戦争を推進している人はいない」と書いた。

ヌーランドはロシアを弱体化させ、更にはプーティンを打倒しようという共同謀議を企てていると見なされている、ワシントン・エスタブリッシュメントの代理人(化身)としてモスクワで非難された。ロシア政府当局者や露メディアは、2014年初頭にキエフの中央広場で、最終的にクレムリンが支援するウクライナ指導者を打倒した、当時欧州・ユーラシア問題担当米国次官補だったヌーランドがデモ参加者たちに食料を配った様子を常に回想している。

ロシアのセルゲイ・V・ラブロフ外相は昨年、「2014年にウクライナでヴィクトリア・ヌーランド国務次官がテロリストにクッキーを配った後、政府に対するクーデターが起きた」と述べた。ヌーランドさんはクッキーではなくサンドイッチを配ったと語っている。

ヌーランドの辞任は、クレムリン支援の英語ニュースサイトRTによって重大ニューズとして扱われ、トップページに赤いバナーと「ヌーランド辞任」という見出しが掲げられた。

RTはロシア外務省報道官マリア・ザハロワの発言を引用し、ヌーランドの辞任は「バイデン政権の反ロシア路線の失敗」によるものだと述べた。ザハロワは、「ヴィクトリア・ヌーランドがアメリカの主要な外交政策概念として提案したロシア恐怖症(Russophobia)が、民主党を石のようにどん底に引きずり込んでいる」と非難した。

ヌーランドは、バイデン政権の最初の2年半の間、国務次官を務めた。その間、国務副長官を務めたウェンディ・シャーマンの退任に伴い、国務副長官代理を兼務して過去1年の大半を費やした。

ヌーランドはシャーマンの後任としてフルタイムで当然の候補者と見なされていた。しかし、ブリンケン長官は、国家安全保障会議(National Security CouncilNSC)アジア担当トップのカート・キャンベルを国務副長官に抜擢した。キャンベルの国務副長官就任は2月6日に連邦上院で承認された。

ブリンケン長官は、後任が決まるまで国務省のジョン・バス管理担当国務次官が代理としてヌーランドの職務を引き継ぐと述べた。

アナリストの一部は、ロシアのウクライナ侵略がバイデンの外交政策の多くを消耗させたにもかかわらず、キャンベルの選択を、バイデン大統領とブリンケン国務長官がアメリカと中国との関係の管理を最優先事項と考えていることの表れと解釈した。

ヌーランドは先月、人生の何百時間も費やしてきたウクライナの将来について公に語った。

ヌーランドは、ワシントンの戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)での講演で、「プーティ大統領がウクライナで勝利すれば、そこで止まることはないだろうし、世界中の独裁者たちは力ずくで現状を変えようと大胆になるだろう」と警告した。

ヌーランドは、「プーティンは私たち全員を待っていられると考えている。私たちは彼が間違っていることを証明する必要がある」と述べた。

2024年3月7日に訂正:この記事の以前の版ではヴィクトリア・ヌーランドの国務省での序列について誤って記述した。ヌーランドは序列第4位の役職であり、序列3位の外交官である。

※マイケル・クロウリー:『ニューヨーク・タイムズ』紙で国務省とアメリカの外交政策を取材している。これまで30カ国以上から記事を送り、国務長官の外遊に同行している。

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国務省の主要なリーダーであるヴィクトリア・ヌーランドがバイデン政権から離脱(Victoria Nuland, key State Dept. leader, to exit Biden administration

-長年外交官を務めてきたヌーランドはロシアに対する厳しい姿勢で知られていた。クレムリンはヌーランドの反ロシア姿勢を悪者扱いしてきた。

マイケル・バーンバウム筆

2024年3月5日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/national-security/2024/03/05/victoria-nuland-retires/

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2022年、キプロス。記者会見でメディアに対して話すヴィクトリア・ヌーランド

アントニー・ブリンケン国務長官は火曜日、ジョー・バイデン政権の最も強硬なロシア強硬派の1人で国務省序列第3位のヴィクトリア・ヌーランドが数週間以内に退任する予定であり、中東の危機を受けてアメリカ外交のトップに穴が開くと述べた。そしてウクライナでは大規模な大火災が発生する恐れがある。

ヌーランド政治問題国務次官は、以前はバラク・オバマ政権時代に国務省のヨーロッパ担当外交官のトップを務め、国務省の職員たちの間で広く人気があった。時には当たり障りのない態度や用心深さが報われる厳格な官僚制の中で、彼女はありのままの意見とクレムリンに対する厳しいアプローチで際立っており、クレムリンは彼女を悪者扱いした。

ヌーランドはウェンディ・シャーマンの退任後、昨年から7カ月間、国務省序列第2位の役職である国務副長官代理を務めていた。しかし彼女は、先月承認された元ホワイトハウスアジア戦略官トップのカート・キャンベルの国務副長官正式就任を巡る政権内争いに敗れた。バイデン大統領の決定は彼女の辞任の要因の1つであった。今回の人事異動により、国務省の最上級指導者トリオの中に女性は1人も残らないことになる。

ブリンケンは火曜日の声明で、ヌーランドが国務省内の「ほとんどの職」を歴任し、「幅広い問題や地域に関する百科全書的な知識と、私たちの利益と価値観を前進させるためのアメリカ外交の完全なツールセットを駆使する比類のない能力」を備えていたと述べた。

ヌーランドは1990年代にモスクワに勤務し、その後、ヒラリー・クリントン国務長官の下で国務省報道官になるまで、NATO常任委員代表を務めた。2013年末にキエフでクレムリン寄りの指導者に対する抗議活動が発生し、ロシアの不満の焦点となった際、彼女はヨーロッパ問題を担当するアメリカのトップ外交官として、キエフでのアメリカ外交で積極的な役割を果たした。記憶に残るのは、当時の大統領が打倒される前に、彼女がキエフ中心部マイダンでキャンプを張っていた抗議活動参加者たちにクッキーとパンを配ったことだ。

ヌーランドは、ドナルド・トランプが大統領に就任した後の2017年初頭に国務省を離れ、2021年に序列第3位の政治問題担当国務次官として復帰した。

ブリンケンは、ヌーランドの「ウクライナに関する指導層について、外交官や外交政策の学生が今後何年も研究することになる」と述べ、ロシアが2022年2月の侵攻に先立って軍を集結させる中、キエフを支援するヨーロッパ諸国との連合構築の取り組みをヌーランドが主導したと指摘した。

ロシア外務省はヌーランドの退職の機会を利用し、これはアメリカの対ロシア政策が間違っていたことを示す兆候だと宣言した。

ロシア外務省報道官マリア・ザハロワはテレグラムに「彼らは皆さんに理由を教えてくれないだろう。しかし、それは単純だ。バイデン政権の反ロシア路線の失敗だ。ヴィクトリア・ヌーランドがアメリカの主要な外交政策概念として提案したロシア恐怖症は、民主党を石のようにどん底に引きずり込んでいる。」と書いた。

職業外交官で管理担当国務次官を務めるジョン・バスが一時的にヌーランドの代理を務めることになる。

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反ロシア主張で知られる米幹部外交官であるヴィクトリア・ヌーランドが近く退職(High-ranking US diplomat Victoria Nuland, known for anti-Russia views, will retire soon

ブラッド・ドレス筆

2024年3月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/4509471-victoria-nuland-anti-russia-retire-ukraine/
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2023年1月26日、連邦議事堂にて。連邦上院外交委員会でロシアの侵攻について証言する政治問題担当国務次官ヴィクトリア・ヌーランド(中央)、国際安全保障問題担当国防次官補セレステ・ワーランダー(左)、米国際開発庁(U.S. Agency for International Development)ヨーロッパ・ユーラシア担当副長官エリン・マッキー。

ウクライナへの熱烈な支持と反ロシアで、タカ派の主張で知られるヴィクトリア・ヌーランド政治問題担当国務次官が数週間以内に退任する

アントニー・ブリンケン国務長官は火曜日にこのニューズを発表し、ヌーランドが「私たちの国と世界にとって重要な時期に外交を外交政策の中心に戻し、アメリカの世界的リーダーシップを活性化させた」と称賛した。

ブリンケンは声明の中で、「トリア(ヴィクトリア)を本当に並外れた存在にしているのは、彼女が堅く信じている価値、つまり自由、民主政治体制、人権、そしてそれらの価値観を世界中に鼓舞し推進する、アメリカの永続的な能力のために戦うことへの激しい情熱だ」と述べた。

ヌーランドは30年以上国務省に勤務し、6人の大統領と10人の国務長官の下で様々な役職を務めた。ヌーランドはキャリアの初期に、モスクワの米大使館で働き、モンゴル初の米国大使館の開設に貢献した。

ヌーランドは国務省の東アジア太平洋局にも勤務し、中国の広州に外交官として赴任した。 2003年から2005年まで副大統領(ディック・チェイニー)の国家安全保障問題担当補佐官を務め、その後、NATO常任委員代表を務めた。ヨーロッパ・・ユーラシア問題担当国務次官補を務め、2021年にジョー・バイデン大統領の下で国務次官に就任した。

ヌーランドはおそらく、2014年の事件で最もよく知られている。この事件では、彼女が駐ウクライナ米大使との通話中に「ファックEU」と発言した録音が漏洩し、世界中のメディアの注目を集めた。

ヌーランドのロシアに対する強い主張とウクライナへの支持は、彼女のその後のキャリアを決定付け、その間、キエフで親ロシア派の大統領が追放された後、モスクワがクリミア半島を不法併合した際の紛争で中心的な役割を果たした。

ヌーランドはロシアに対するタカ派的主張を理由に、アメリカの一部の右派から標的にされていた。彼女のコメントは、昨年クレムリンが非武装化されたクリミアに関する彼女のコメントを非難したことも含め、ロシア国内でも厳しい非難を集めた。

それでも、ブリンケンは、自分とバイデン大統領はヌーランドに感謝していると語った。ブリンケンは、彼女が「常にアメリカの外交官を擁護し、彼らに投資し、彼らを指導し、高揚させ、彼らとその家族が彼らにふさわしいもの、そして私たちの使命が求めるものを確実に得られるようにしている」と語った。

ブリンケンは火曜日、声明の中で次のように発表した。「ヌーランドは最も暗い瞬間に光を見出し、最も必要なときにあなたを笑わせ、いつもあなたの背中を押してくれる。彼女の努力は、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領の全面的なウクライナ侵略に対抗し、プーティン大統領の戦略的失敗を確実にするために世界的な連合を組織し、ウクライナが自らの足で力強く立つことができる日に向けて努力するのを助けるために必要不可欠だった」。

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ヴィクトリア・ヌーランド大使がコロンビア大学国際公共政策大学院の教員に加わる(Ambassador Victoria Nuland Will Join SIPA Faculty

2024年3月6日

https://www.sipa.columbia.edu/news/ambassador-victoria-nuland-will-join-sipa-faculty

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ヴィクトリア・ヌーランド大使は30年以上にわたりアメリカの外交官を務め、最後の3年間は政治問題担当国務次官を務めた。更には2023年7月から2024年2月まで国務副長官代理を務めた。ヌーランドは7月1日付で、コロンビア大学国際公共政策大学院(School of International and Public AffairsSIPA)国際外交実践担当キャスリン・アンド・シェルビー・カロム・デイヴィス記念教授に就任することが決定した。

ヌーランドはまた、国際公共政策大学院国際フェロープログラムの指揮を執る。このプログラムは、国際問題を研究するコロンビア大学の大学院生たちのための学際的なフォーラムを提供するものだ。更には、国際政治研究所(Institute of Global PoliticsIGP)客員教員に加わる。国際政治研究所は、国際政治研究所の使命を推進するための研究プロジェクトを実行する選ばれた学者と実務形で構成されている。

国務次官として、ヌーランドは地域および二国間政策全般を管理し、とりわけ世界中のアメリカ外交使節団を指導する国務省の複数の地域部門を監督した。

2021年に国務次官に就任する前、ヌーランドは民間のコンサルタント会社であるオルブライト・ストーンブリッジ・グループの上級顧問を務めていた。彼女はまた、ブルッキングス研究所、イェール大学、民主政治体制のための全米基金(National Endowment for DemocracyNED)でも役職を務めた。

国際公共政策大学院長カリン・ヤーヒ・ミロは次のように述べている。「ヴィクトリア・ヌーランド大使を私たちの教員として迎えられることを大変光栄に思う。ワシントンおよび海外での経験を反映した彼女の、苦心して獲得した多様な専門知識は、私たちの教室の教員として、また政策活動のリーダーとしての彼女の貢献をさらに高めることになるだろう。民主党と共和党の両政権の下で勤務した高官として、トリア(ヴィクトリア)は党派間の隔たりを乗り越える能力を実証しており、あまりに分断されている現在の社会を考えると、彼女は生徒たちのモデルとなるだろう。私は国際公共政策大学院コミュニティ全体を代表して、彼女を迎えることができて本当に嬉しく思う」。

ヌーランドの国務省からの退職は、3月5日にアントニー・J・ブリンケン米国務長官によって発表された。ヌーランドはオバマ政権下、国務省報道官(2011年5月-2013年4月)、ヨーロッパ・ユーラシア担当国務次官補(2013年9月-2017年1月)を務めた。国務省報道官時代は、当時のヒラリー・クリントン国務長官に直接仕えた。ヒラリー・クリントンは現在、国際公共政策大学院付属の国際政治研究所教職員諮問委員会委員長を務めている。

ヌーランドは、2005年6月から2008年5月まで、ジョージ・W・ブッシュ(息子)大統領の下で、アメリカ合衆国NATO常任委員代表を務めた。

ヌーランドは、ロシア語とフランス語に堪能であり、ブラウン大学で学士号を取得した。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 日本では大型連休に入って、多くの人出があり、すっかり穏やかな日々となっているが、アメリカではファースト・リパブリック・バンクの経営破綻、債務上限引き上げ問題(6月1日が期限、所得税収入が予想よりも少なくて早まった)があり、モスクワではクレムリンに対して無人機攻撃があった。当たり前のことだが、世界は日本の大型連休など関係なく動いている。日本など世界の動きから隔絶して、人出が多い、渋滞が凄いということが報道の中心になっていても何も困らない。その程度の国である。

 クレムリンに対する攻撃については、(1)ウクライナによる攻撃、(2)ロシアによる自作自演攻撃、(3)ロシア国内の反プーティン勢力による攻撃(外国からの協力もあり)というシナリオが取り沙汰されている。事件発生直後、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」が即座に、ロシアによる自作自演だと発表したことで、「ああ、これはウクライナ戦争の継続を望む(停戦を望まない)勢力、アメリカ国内で言えばネオコンが起こしたものだな」と考えた。

 アメリカでは国防総省(ペンタゴン)の機密文書がリークされて、その中ではウクライナに関して悲観的な評価が並べられていた。国防総省はウクライナが勝てない、不利だという評価を行っている。ヴォロディミール・ゼレンスキー大統領が主張するような、クリミア半島を含むウクライナ東部の奪還など夢のまた夢、ということだ。それでも5月に入って、ウクライナ側は「春季大攻勢、反転大攻勢をかける」と勇ましく述べている。

 私はまずこのウクライナの動きについて、ブラフなのか、太平洋戦争末期の日本の基本方針となった「一撃講和論」のようなものかと考えた。そもそも、本当に反転大攻勢で大反撃に出て、ロシア側を大きく押し返すということをしたいならば、「予告」などするはずがない。相手のスキや意表を突いて、一気に押し返すのが定石だ。そんな予告をすれば、相手も備えるに決まっている。備えているところに飛び込んでいっても犠牲を増やすだけのことだ。日本でもさんざん「反転大攻勢」という言葉が報道されている。ロシア側ももう分かってしまっている。それでは反転大攻勢にならない。

 だから、私はこの反転大攻勢は一種のブラフではないかと考えた。もしくは「ロシアに大きな打撃を与えて怯(ひる)ませておいて、停戦交渉で有利な条件を引き出す」ことで、ウクライナ国民を納得させようということではないかと考えた。これは太平洋戦争末期に日本が模索したシナリオである。結局、一撃を与えることはできず、逆に日本側が完膚なきまでに叩きのめされた。しかし、それならば、大攻勢を「予告」してしまったら効果はない。繰り返しになるが、相手に準備をさせてしまうことになるからだ。

 ゼレンスキー大統領は中国の習近平に呼びかけを行うなど、停戦に向けた動きを行っている。最大の支援国であるアメリカもウクライナ不利と見ているので、停戦は歓迎するだろう。しかし、このウクライナ戦争が続くことが喜ばしい、自分たちの利益になると考える勢力にとって、停戦は望ましいことではない。イギリスとアメリカ国内の狂信的な好戦勢力(共和党内のネオコンと民主党内の人道的介入主義派)にとっては戦争継続こそが望ましい。そのための「カンフル剤」として、戦争が膠着状態に入ってダレている状況で、「活気づける」ために今回の攻撃を行ったということになる。ウクライナにとってもロシアにとっても得にはならないことを外部勢力がやった、しかもそれはアメリカ政府の正式な意向ということでもない。国務省内のヴィクトリア・ヌーランド国務次官アタリが画策したのではないかと私は考えている。

 ウクライナ戦争開戦後、戦争についての分析を一手に担っている戦争研究所の所長はキンバリー・ケーガンである。キンバリーの夫はフレデリック・ケーガンという。フレデリックの兄はロバート・ケーガンだ。ロバートとフレデリックの父ドナルド・ケーガンはネオコンであり、息子たちもネオコンだ。ロバートの妻がヴィクトリア・ヌーランドである。一家揃ってネオコンの名士であり、ケーガン家はネオコン内の「王朝(dynasty、ダイナスティ)」だ。ケーガン家の「嫁連合」であるヴィクトリア・ヌーランドとキンバリー・ケーガンが協力体制でウクライナ戦争を煽っているというのは何とも恐ろしい話である。

(貼り付けはじめ)

ワールド

20235410:44 午後18時間前更新

ロシア、クレムリン無人機攻撃「背後に米国」 非難の矛先変更

ロイター編集

https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-russia-kremlin-may4-idJPKBN2WV14T

[4日 ロイター] - ロシアは4日、プーチン大統領殺害を目的としたクレムリンへのドローン(無人機)攻撃について、背後に米国の存在があると指摘した。証拠も示さないロシアの主張に、米政府はすかさず否定した。

ロシアは前日、ウクライナが夜間にドローンを使ってプーチン大統領殺害を図ったものの未遂に終わったと表明。これに対しウクライナのゼレンスキー大統領は最大の関心はロシアの侵攻から自国を守ることだとし、関与を否定していた。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は4日、「このような行動やテロ攻撃に関する決定は、キエフでなくワシントンで下されることを、われわれはよく知っている」と述べ、米国が攻撃の背後にいることは「間違いない」と述べた。

これに対し、米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官はMSNBCテレビに対し、ロシアの主張は虚偽であり、ワシントンはウクライナに対し国外への攻撃を促すことはなく、そんなことはできないと述べた。

ドローン攻撃があった時、プーチン大統領はクレムリンにおらず無事だったが、ロシアは報復を示唆。メドベージェフ安全保障会議副議長は、ゼレンスキー大統領とその「一派」を「排除」する以外の選択肢はないと述べている。

ペスコフ氏は、ロシアがゼレンスキー大統領を正当な標的として見ているか、明言を避けた。

プーチン氏は4日はクレムリンに滞在しており、職員は通常通り勤務しているという。

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クレムリン“ドローン”攻撃 「ロシアの自作自演」米研究機関が分析 戦争への動員が狙いか
FNN
プライムオンライン

国際取材部

202354日 木曜 午後2:35

https://www.fnn.jp/articles/-/523741

アメリカの研究機関は3日、ロシア政府が発表した、クレムリンに対するウクライナのドローン攻撃を、ロシアによる自作自演だとする分析を発表した。

アメリカの「戦争研究所」は3日、クレムリンが、ウクライナのドローン2機による攻撃を受けたというロシア大統領府の発表について、「戦争を国民に身近に感じさせ、動員するための条件整備」を目的とする自作自演との見方を示した。

具体的な理由として、ドローンがモスクワ周辺の厳重な防空網を突破し、クレムリン上空で映像が鮮明に撮影される状況は「可能性が極めて低い」と指摘した。

また、ロシアの整然とした対応について「内部で演出されたものでなかったら、公式反応はもっと無秩序なものであった可能性が非常に高い」とした。

さらに戦争研究所は、ロシア政府が第二次世界大戦に勝利した、「59日の戦勝記念日に近い時期にこの事件を演出した」との分析も示した。

今後、ウクライナ側が指摘する大規模な反転攻勢を前に、ロシア側が自作自演による作戦や、偽情報を増やす可能性にも言及した。(画像:「Ostorozhno Novosti」)

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 このブログでもご紹介したが、ピューリッツア賞受賞のヴェテランのジャーナリストであるシーモア・ハーシュが自身のウェブサイトに論稿を発表した。その内容は、昨年9月に爆発事故を起こして稼働できなくなった、ロシアとドイツを結ぶノルドストリーム・パイプラインについて、爆破はアメリカ軍が、ジョー・バイデン政権の最高幹部たち(アントニー・ブリンケン国務長官、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官、ヴィクトリア・ヌーランド国務次官など)の共同謀議による作戦立案とバイデン大統領の命令を受けての攻撃だったというものだ。

 今回は、ハーシュがドイツのジャーナリストであるファビアン・シードラーのインタヴューに答える形で記事が出た。ドイツは自分たちがノルドストリーム爆破の直接の被害者であるから関心が高いはずだ。しかし、いまのどいつのショルツ政権ではアメリカに対して、ほんのちょっとでも抗議をすることなどできもしないだろう。日本はその点で同じだ。

 ショルツ政権の副首相・経済・気候保護大臣であるロベルト・ハーベック、外務大臣であるアンナレーナ・ベアボックは共に緑の党から出ているが、彼らは対中、対ロシアに対して強硬である。原発が稼働停止するドイツでロシアからの天然ガスはエネルギーにおける命綱であるはずだが、彼らは喜んで命綱を切断し、国民に塗炭の苦しみを味合わせる。「それがSDGsよ」「なんてエコな暮らし」と言いながら、耐乏生活、窮乏生活をさせるのだ。これは私の推測だが、彼らはアメリカによるノルドストリーム爆破に了承を与えていたのではないかとすら思えてしまう。

 バイデン政権は犯罪政権である。しかし、ノルドストリーム爆破をバイデン政権が実行したことは報道されないし、明らかにされないだろう。バイデンの寿命はそこまで長くないだろうが、爆破に関わったブリンケン、サリヴァン、ヌーランドはこれからある程度の期間は生きるだろうし、アメリカ政治の枢要に参画するだろうから、彼らを犯罪者にはできないということに短期的にはなるだろう。しかし、流れが逆転するということもある。アメリカの覇権が崩れ始めて、これまでのアメリカの犯罪が暴かれる際には彼らは当事者として逮捕されるだろう。そうしたことが起きないために(少なくとも短期的には)、彼らは何が何でもバイデンの大統領選挙再建に突き進む。

 それでも、バイデンの再選に暗雲が立ち込めている。それはアメリカ経済の失速から崩壊の可能性が高まっていることだ。アメリカで「経済のことならトランプだ」という機運が高まれば、バイデンの再選も難しい。バイデンが選挙に落ちるようなことがあれば、アメリカ政治、アメリカ政界は大混乱に陥る可能性がある。

(貼り付けはじめ)

シーモア・ハーシュ:アメリカがノルドストリーム・パイプラインを破壊した(Seymour Hersh: The US Destroyed the Nord Stream Pipeline

シーモア・ハーシュとのインタヴュー

インタヴュアー:ファビアン・シードラー

2023年2月15日
『ジャコバン』誌

https://jacobin.com/2023/02/seymour-hersh-interview-nord-stream-pipeline

先週、高名な調査報道ジャーナリストであるシーモア・ハーシュは、ロシアからドイツへ天然ガスを輸送するために利用されてきたノルドストリーム・パイプラインの破壊はアメリカの責任だと主張する内容の論稿を発表した。

2022年9月26日、ロシアからドイツに到るノルドストリーム天然ガスパイプラインが、バルト海において複数回の爆発によって広範囲に破壊された。先週、賞を受賞した経験を持つ調査報道ジャーナリストであるシーモア・ハーシュが、1名の匿名の情報源からの情報を基にした論稿を発表した。その内容は、バイデン政権とCIAに爆発の責任があるというものだ。

ハーシュは1970年にピューリッツア賞を受賞した。授賞理由は、アメリカ兵が非武装の市民を300から500人殺害したミライ虐殺事件の報道で果たした役割であった。ハーシュは『ジャコバン』誌のために、ファビアン・シードラーに最新の記事で取り上げた疑惑とCIAと国家安全保障部門がアメリカの外交政策に及ぼす影響について話した。

ファビアン・シードラー:

最初にあなたの発見について詳細にご説明いただきたい。あなたの情報源からの情報から、正確に何が起きたか、誰が関与したのか、この行為の裏にある誘因は何か?

シーモア・ハーシュ:

私は行っていることは明らかなことを単純に説明しているに過ぎない。それは単に語られるべき物語に過ぎない。2022年9月下旬、8個の爆弾が爆発するはずだった。6個はバルト海のボーンホルム島付近の水面下、やや浅いところで爆発した。その爆発でノルドストリーム12の4本の主要パイプラインのうち3本を破壊した。

ノルドストリーム1は、長年、非常に安い価格でドイツにガス燃料を供給してきた。そして、両方のパイプラインが爆破され、なぜ、誰がやったのかが問題になった。2022年2月7日、ウクライナ戦争を前に、アメリカのジョー・バイデン大統領は、ドイツのオラフ・ショルツ首相とホワイトハウスで記者会見し、「ノルドストリームを止めることができる」と発言した。

シードラー:

ジョー・バイデンの正確な文言は、「もしロシアが侵攻してきたら、ノルドストリーム2はなくなる。私たちはパイプラインに終止符を打つ」というものだ。そして、このプロジェクトがドイツの管理下にあることを踏まえ、具体的にどのようにそれを行うつもりかという記者団からの質問に対して、バイデンは、「私たちはそれを行えることだと約束できる」とだけ答えた。

ハーシュ:

バイデン政権の国務次官であるヴィクトリア・ヌーランドは、2014年に彼らがマイダン革命と呼ぶものに深く関与しており、その2週間前に同様の言葉を使用した。

シードラー:

パイプラインの撤去は、バイデン大統領によってもっと前に決定されていたということになる。あなたの記事によると、国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンが、統合参謀本部、CIA、国務省、財務省から新たに結成されたタスクフォースの会議を招集した2021年12月から時系列で、最初から話を整理している。サリバンは、ノルドストリーム・パイプラインを破壊するための計画を立案する意図を持っていたのだ。

ハーシュ:

このタスクフォースは当初、この問題を研究するために12月に召集された。彼らはCIAなどに呼び寄せられ、極秘のオフィスで会議を持った。ホワイトハウスのすぐ隣に、行政府庁舎と呼ばれるオフィスビルがある。そこは地下トンネルでつながっている。その最上階に、大統領情報諮問委員会と呼ばれる外部顧問の秘密グループの会議場がある。私はホワイトハウスの人々に、私が何かを知っていることを知らせるために、このことを報告したに過ぎない。

会議は、ロシアが戦争を仕掛けてきたらどうするのかという問題を検討するために招集された。ウクライナ戦争の3カ月前、2022年のクリスマス前のことだ。ハイレヴェルなグループだった。おそらく違う名前だったと考えられるが、私はただ「省庁間グループ」と呼んでいる。正式な名前があったのかどうかは分からない。CIAと通信を監視・傍受する国家安全保障局、資金を供給する国務省と財務省、そしておそらく他にもいくつかのグループが関与していた。その他に、統合参謀本部も参加していた。

制裁や経済的圧力の強化といった可逆的なものから、爆発物など不可逆的なものまで、ロシアを止めるために何をすべきかを提言するのが彼らの大きな仕事だった。情報源を守らなければならないので、特定の会議について具体的に話したくない。何人が会議に参加していたのか分からない。私の言っていることが理解できるだろうか?

シードラー:

論稿の中で、2022年初頭、 CIAの作業部会がサリヴァンンの省庁間グループに報告し "パイプラインを爆破する方法がある" と提言したと書いているが?

ハーシュ:

彼らは方法を知っていた。アメリカでは「機雷戦」と呼ばれているものを理解している人たちがいた。アメリカ海軍には、潜水艦に入るグループと、原子力工学に関する司令部があり、機雷戦司令部も存在する。機雷こそは非常に重要であり、熟練した鉱夫がいるのです。機雷戦従事者の訓練で最も重要なのは、フロリダの田舎にあるパナマシティという小さなリゾート地である。

そこで非常に優秀な人材を育成し、活用している。機雷戦従事者はとても重要な存在だ。港への入港を妨害したり、邪魔なものを吹き飛ばしたりすることが可能なのである。ある国の海底石油パイプラインが気に入らなければ、それも爆破することができるという訳だ。いいことばかりではないが、彼らはとても秘密主義である。ホワイトハウスにいたグループにとって、パイプラインを爆破できることは明らかだった。C-4と呼ばれる爆発物がある。これは非常に強力で、特に使用量が多いと壊滅的だ。水中ソナー装置を使って遠隔操作することができる。水中ソナーは非常に低い周波数の信号を送る。

2022年1月初旬には、ホワイトハウスにそのことが伝えられた。2週間か3週間後に、ヴィクトリア・ヌーランド国務次官が「できる」と言ったのだ。これは1月20日のことだったと考えられる。そして、大統領もオラフ・ショルツ独首相と一緒にいる場所で、2月7日に「できる」と言った。ショルツは具体的なことは何も言わず、曖昧な態度に終始した。しかし、もし私がドイツ議会で公聴会を開催できるとしたら、ショルツにこう質問するだろう。「バイデン大統領からパイプライン爆破について聞いたか? その時、なぜ彼が爆破できると確信したのか話をしたか?」

まだ計画は具体的には存在しなかったが、爆破能力があることは分かっていた。

シードラー:

作戦においてノルウェーはどのような役割を果たしたのか?

ハーシュ:

まず、ノルウェーは海洋大国であり、地下エネルギーも保有している。また、西ヨーロッパ諸国やドイツに販売できる天然ガスの量を増やすことを強く望んでいる。そしてそれを実現し、輸出量を増やしている。従って、経済的な理由から、アメリカと一緒にこうどうするということになったのではないか? また、ロシアに対する嫌悪感も根強く残っている。

シードラー:

論稿の中で、あなたはシークレットサーヴィスとノルウェー海軍が作戦に参加し、スウェーデンとデンマークは説明こそ受けたが全ては教えられなかったと書いている。

ハーシュ:

私に言わせれば、「伝えなかったのは、伝える必要はなかったから」ということだ。つまり、自分がやっていることを相手も知っていて、何が起こっているのかも理解しているのに、誰もイエスと言わないということだ。私はこの問題に関して情報源と一緒に真剣に取り組んだ。要するに、この任務を遂行するために、ノルウェーは適切な場所を探さなければならなかった。パナマシティで訓練を受けていた潜水士達は、重い潜水タンクを使わずに、酸素と窒素とヘリウムの混合物だけで水深300フィート(約90メートル)まで到達できる。

ノルウェーは、バルト海のボーンホルム島沖に水深260フィート(約78メートル)の場所を見つけ、そこで活動できるようにした。そこまで到達したらゆっくり戻ってこなければならない。減圧室があるノルウェーの潜水艦「ハンター」を使用した。4本のパイプライン爆破に送られた潜水士はわずか2名だった。

バルト海を監視している人たちにどう対処するかという問題もあった。バルト海の監視は非常に徹底しており、公開されている情報も多いので、そのための担当者を34人用意した。そして、私たちが行ったことは実にシンプルなことだ。地中海とバルト海を管轄するアメリカ海軍第6艦隊は、21年前から毎年夏にバルト海でNATO加盟諸国の海軍のための演習(バルト海作戦)を行っている。そして、海軍の空母や大型艦船を動員する。非常にオープンなものだ。ロシアは確かにそのことを知っていた。私たちは公の場で爆破作戦を実行した。そして、このバルト海でのNATOによる作戦では、歴史上初めて新しいプログラムが実施されました。10から12日間の期間をかけて、地雷を落として発見する演習を行う予定を組んでいた。

いくつかの国が機雷作戦ティームを派遣し、あるグループが機雷を落とすと、自国の別の機雷作戦グループがそれを捕捉して爆破する。だから、爆破するまでにはある時間があったのだが、その間にノルウェー軍は深海潜水士を回収することができた。2本のパイプラインは1マイルほど離れて走っており、少し土の下にあるが、到達するのは難しくないし、彼らは作戦を実行した。爆弾の設置には数時間しかかからなかった。

シードラー:

それは2022年6月のことか?

ハーシュ:

そうだ。6月に入って10日過ぎた頃、演習の最後に爆破を実行する予定だったのだが、最後の最後でホワイトハウスがナーヴァスになった。バイデン大統領は、実行することが怖いと語ったのだ。そして、いつでも爆弾を落とせるように、いつでも遠隔操作で爆弾を落とせるようにと命令した。レイセオン製の通常のソナーを使って作戦実行。上空を飛行し、シリンダーを落とす。低周波の信号を送る。フルートのような音で、様々な周波数を発することができる。しかし、心配だったのは、水中に長く放置しておいて爆弾が作動しないことだった。そのため、グループ内では適切な手段を見つけようとパニックになり、実際には他の情報機関にも問い合わせる必要があった。論稿ではそのことは書かなかった。

私は、ブリンケンやその他の政権幹部たちが思慮深い人間ではないと考えている。

シードラー:

そして、その時に何が起きたのか? 彼らが爆弾を設置し、遠隔地からコントロールする方法を見つけた・・・。

ハーシュ:

ジョー・バイデンはパイプラインを爆破しないと決定した。それは6月上旬のことだった。当時はウクライナ戦争が始まって約5カ月だった。しかし、9月になって、バイデンは爆破を決断した。

あることをあなたに教えよう。作戦にかかわった人々、つまりアメリカのために能動的な活動を行う人たちは、大統領の命令通りにする。彼らは当初、これは交渉に使える便利な武器だと考えていた。

しかし、ある時点で、ロシアが侵攻した後で、パイプライン爆破作戦が完了すると、爆破作戦を実行した人々にとって、これはますます嫌なものになった。彼らはよく訓練された人々で、最高レヴェルの秘密情報機関に所属している。彼らはこのプロジェクトに背を向けた。彼らは、これは非常識なことだと考えた。そして、原爆投下の1週間後、あるいは3、4日後、彼らが命令されたことを実行した後、多くの怒りと敵意が生まれた。これは私が取材してあきらかになったことだ。

そして、もう1つ言っておきたいことがある。アメリカやヨーロッパでパイプラインを建設している人たちは、何が起こったかを知っている。私は今重要なことを話している。パイプラインを建設する会社を経営している人たちは、この話を知っている。私は彼らから話を聞いた訳ではないが、彼らが爆破事件について知っていることはすぐに分かった。

シードラー:

それでは昨年6月の状況に戻ろう。ジョー・バイデン大統領は爆破作戦を直接行わず、延期するように決定を下した。それなのに、どうして9月になって作戦を実行したのか?

ハーシュ:

アンソニー・ブリンケン米国務長官は、パイプラインが爆破されて数日後の記者会見の席上で、プーティンから経済的にも、そして軍事的にも大きな力が奪われてしまったと述べた。ブリンケンは、「ロシアがパイプラインを武器化することができなくなったことでもあり、これは大きな機会となった、それは、ロシアがつまり、今回の戦争において、西ヨーロッパ諸国がアメリカを支援しないように強制することができなくなったのだから」と述べた。西ヨーロッパがこれ以上戦争に付き合わないようになることを恐れたのです。その時にやろうと思ったのは、西側諸国にとって戦争がうまくいっていないこと、そして冬が来ることを恐れていたのだと思う。ノルドストリーム2はドイツから制裁を受けているが、アメリカは厳しい冬になってドイツが制裁を解除することを恐れていた。

シードラー:

あなたのお考えでは、その裏側にはどのような動機があったと言えるだろうか? アメリカ政府がパイプラインに反対した理由は様々だ。ロシアと西ヨーロッパ、特にドイツとの結びつきを弱めたいから反対した、という人もいる。しかし、アメリカ経済と競合するドイツ経済を弱体化させるためでもあったとも考えられる。ガス価格の高騰で、企業はアメリカに移転し始めている。アメリカ政府がパイプラインを爆破した場合、その動機についてあなたはどのように考えるか?

ハーシュ:

彼らはよく考えていないと思う。奇妙に聞こえるかもしれないが、私は ブリンケンをはじめとする政権の一部の人たちが深い考えを持った人たちだとはとても思えない。アメリカ経済には、私たちがより競争力を持つという考えを好む人たちが確かにいる。私たちはLNG、液化ガスを極めて大きな利益で売っている。これはアメリカ経済にとって長期の景気浮揚策になる、と考えた人たちもいたことだろう。

しかし、あのホワイトハウスでは、常に再選に執着し、戦争に勝ちたい、勝利を得たい、ウクライナに何とか魔法のように勝ってほしいと思っていたのだろうと私は考える。

ドイツ経済が弱くなれば、私たちの経済にとって良いことかもしれないと考える人もいるかもしれないが、それはおかしな考えだ。私は、基本的に、私たちはうまくいかないものに深く食い込んでしまったと考える。戦争はこの政府にとって良い結果をもたらすことはないだろう。

シードラー:

この戦争はどのように終結すると考えるか?

ハーシュ:

私が何をどう考えるかは重要ではない。私に分かっているのは、この戦争が思い通りにならないこと、そして、この先どうなっていくのか分からないということだ。大統領がこのようなことを望んでいたのなら、私はそのことに恐怖を感じている。

そして、この作戦を行った人々は、バイデン大統領がドイツの人々に何をしているのか、うまくいっていない戦争に対して罰を与えていることに気づいていると信じていた。そして長い目で見れば、これは大統領としての評判だけでなく、政治的にも非常に不利になることだろう。アメリカにとって汚点となることだろう。

CIAは王冠のために働くのであって、憲法のために働くのではないと理解されている。

つまり、ホワイトハウスは状況が自分たちにとって悪くなると考えていた。ドイツや西ヨーロッパ諸国が武器を提供しなくなり、ドイツの首相がパイプライン稼働を再開かもしれない。ホワイトハウスは常にこうした事態を恐れていた。私にはドイツのオラフ・ショルツ首相に質問したい事項がたくさんある。例えば、2月に大統領と一緒にいたときに何を知ったのか、ということなどだ。この作戦は大きな秘密で、大統領はこの作戦遂行能力について誰にも話してはいけないことになっていた。でも、彼は喋ってしまうのだ。話したくないことも話してしまう人だ。

シードラー:

あなたの話は、欧米諸国のメディアでは、ある程度の抑制と批判をもって報道された。あなたの評判を貶めるために攻撃したり、匿名の情報源は1つだけであり、それでは信頼に足る話ではないと主張したりする人々がいる。

ハーシュ:

私が情報源について語ることなどあるだろうか? 私はこれまで匿名の情報源を元に多くの記事を書いてきた。もし誰かの名前を明らかにしたら、彼らは解雇されるか、最悪、投獄されるだろう。厳しい法律がある 私は誰についても暴露したことなどない。もちろん、この記事のように、情報源はあくまで情報源であると書いている。そして長年にわたって、私が書いた記事はいつも受け入れられてきた。この記事には、『ニューヨーカー』誌で一緒に働いていた時と同じレヴェルの熟練したファクトチェッカーを起用した。当然の話として、私に伝えられた不明瞭な情報を検証する方法はたくさんある。

それに、私に対する個人攻撃は本質を突いていない。バイデンはこの冬、ドイツに厳しい冬を過ごさせることを選んだ。アメリカ大統領は、ドイツがウクライナ戦争に協力的でない可能性よりも、エネルギー不足のために、ドイツの人々が厳しい寒さの中で生活するのを見たいのだろう。私にとっても、作戦に参加した人たちにとっても、これは酷いことだ。

シードラー:

ロシアだけでなく、西側の同盟諸国、特にドイツに対する戦争行為と受け止められる可能性があることもポイントだ。

ハーシュ:

単純に考えてみよう。この作戦に関わった人々は大統領が短期的な政治的目標のためにドイツを冷遇することを選んだと見ており、それが彼らを恐怖に陥れたと言えるだろう。これは、アメリカに強烈な忠誠心を持つアメリカ人についての話だ。CIAでは、私が論稿で述べたように、彼らは王冠のために働き、憲法のために働かないということが理解される。

CIAの長所は、米連邦議会で自分の主張を通せず、誰も耳を貸さない大統領が、ホワイトハウスのローズガーデンの裏庭をCIA長官と散歩して、8000マイル(約1万2800キロ)離れたところで誰かを傷つけることができる、ということだ。CIAのセールスポイントについては、小唄内容であるため、私は問題視している。しかし、そのCIAでさえ、勝ち目のない戦争を支援するためにヨーロッパを冷遇することを選んだことに愕然としている。パイプライン爆破は極悪非道な行為だと私は考える。

シードラー:

論稿の中であなたは攻撃の計画は米連邦議会に報告されなかったと述べている。秘密作戦の場合でも連邦議会に報告しなければならないそうだが。

ハーシュ:

米軍の多くの部署に対しても報告はなされなかった。他の政府機関の幹部たちも知っておかねばならないことであったが、情報提供はなされなかった。作戦はどこまでも秘密で実行された。

シードラー:

バルト海沿岸の船舶や航空機に関するオープンソースインテリジェンス(OSINT 訳者註:公表されているデータを収集し、分析する諜報活動)の評価に携わっている人々から、「9月26日やその前の日に爆発地点で直接検知されたノルウェー機はない」という批判もあった。

ハーシュ:

本格的な秘密作戦はOSINTを考慮し、それに対処するために実行される。私が言ったように、この問題に対処する人が任務に就いていた。

シードラー:

あなたの職業において勇気はどのような役割を果たすのか?

ハーシュ:

真実を伝えることに何か勇気が必要であろうか? 私たちの仕事は恐れることではない。そして時には醜くなることもある。私の人生にもそのようなときがありました。理解してもらえると思うが、私はそのことについて話さない。脅迫されるのは、私のような人間ではなく、私のような人間の子どもだ。酷い目にあったこともある。しかし、気にしないことだ。ただ、自分のやるべきことをやるだけだ。

※シーモア・ハーシュ:ピューリッツア賞受賞のアメリカの調査報道ジャーナリスト。

※ファビアン・シードラー:ベルリンを拠点とするジャーナリスト。著書に『巨大マシーンの終焉:衰退しつつある文明の概略史(The End of the Megamachine: A Brief History of a Failing Civilization.)』がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争開戦後、世界のエネルギー価格は高騰し、その影響は現在も続いている。日本の消費者物価指数は4.2ポイント上昇ということを盛んに報道されているが、特に電気代やガス代、ガソリン代や灯油代の高騰に驚き、不平不満を持っている人たちも多い。物価高、インフレ、生活コストの上昇ということで言えば、世界は第三次次世界大戦下にあると言える。

 ウクライナ戦争開戦後、欧米諸国はロシアへの制裁の一環として、天然資源の輸入を取り止めると発表した。しかし、実際にはロシアからの天然資源、特に天然ガスの輸出は続いていた。これまでロシアとドイツを結ぶノルドストリーム・パイプラインによって、安価な天然ガスが供給され、それがヨーロッパ諸国の生活を支えていた。それが急に途絶することはヨーロッパ諸国の人々の生活が成り立たないことを意味する。そのため、ロシアに制裁を科しながらも、「少しずつ輸入を減らしていきますからね」ということで、輸入が続いていた。

 しかし、昨年にノルドストリーム・パイプラインが物理的に破壊されたことで、ロシアからの天然ガス供給は望めなくなった。そのために北海油田を持っているイギリスやノルウェーの石油、アメリカからの液化天然ガス輸入に頼らざるを得なくなった。もちろん、これまでのロシアからの天然ガスよりも高価な買い物である。それでも背に腹は代えられないということで、ドイツをはじめとするヨーロッパ諸国は天然資源の供給源の変更を余儀なくされた。

 「高く買ってくれる人に売る」は人間の自然な性向である。エネルギー価格が高騰する中でもヨーロッパ諸国はまだ買えるから良い。貧しい国々は買いたくてもお金がない。そうなれば、買う量を減らして、耐乏生活に突入するしかない。新興国ならまだ良いが、貧困国では停電の頻発、停電時間の長期化が続いている。これらの国々に対して、先進諸国に援助できるほどの余裕はない。自分のところだって高い価格のエネルギーを買っていて他を助ける余裕はない。

 それではこうした国々に対して、エネルギー産出国、具体的にはロシアやサウジアラビアが値引きした値段でエネルギーを供給したらどうなるだろうか。これまでこのブログで散々書いてきているが、世界は「西洋(the West)」対「それ以外(the Rest)」で分裂している。中露が率いる「それ以外」が発展途上国、貧困国を助ければ、そちらの味方になるのは自明の理だ。実際にロシアはインドや中国に割引で天然資源を販売している。

 ウクライナ戦争が終結しなければ、こうした状況はこれまでも続いていくだろう。ウクライナ戦争が始まって1年、今こそ停戦に進むべきである。更に言えば、ノルドストリーム・パイプライン破壊を命じたジョー・バイデン大統領の「大統領の犯罪行為」と、手下たち(アントニー・ブリンケン米国務長官、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官、ヴィクトリア・ヌーランド国務次官)による「権力者共同謀議」による「戦争行為」は世界人類に対する罪である。

(貼り付けはじめ)

貧しい国々に負担を強いるヨーロッパのガスの深刻な不足(Europe’s Hunger for Gas Leaves Poor Countries High and Dry

-豊かな国々は、世界の他の国々の犠牲の上に、エネルギーの安全保障を追求している。

ヴィジャヤ・ラマチャンドロン筆

2023年2月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/02/01/europe-energy-natural-gas-lng-russia-africa-global-south-climate/

ロシア軍のウクライナ侵攻から約1年、モスクワのヨーロッパ向け天然ガス輸出は、パイプライン「ノルドストリーム」の妨害行為、ヨーロッパの購入量減少、欧米諸国のウクライナ支援に対する報復としてのモスクワの供給調整などにより、半分以下にまで減少している。天然ガスは、家庭や産業界の暖房用エネルギーとして、また化学製品の原料として重要な役割を果たしている。天然ガスは、家庭や産業の暖房に欠かせないエネルギー源であり、化学製品の原料として、肥料、セメント、鉄鋼、ガラスなど、多種多様な製品の製造に欠かせない要素となっている。また、発電にも広く利用されており、2021年のヨーロッパの発電量のうち、ガス火力発電所は34%を占めている(アメリカは38%)。

ロシアからの供給が失われたことへの反応として、ヨーロッパ各国はあらゆる天然ガス供給源に依存し、大量の備蓄を抱えることになった。ロシアからのパイプラインによる供給が激減したため、ヨーロッパは需要の多くを世界各国から船で輸送される(液化天然ガス(LNG)にシフトさせた。その結果、2022年半ばのガス備蓄のピーク時には、液化天然ガス(LNG)の世界価格は2年前の新型コロナウイルス感染拡大時の安値から1900%上昇した。

この天然ガスの価格高騰は、ヨーロッパの産業界にもダメージを与えたが、貧しい国々に住む何億人もの人々にとっては、まさに壊滅的な打撃となった。インドとブラジルは、自国の経済を十分に支えるだけの天然ガスを確保できず、輸入を控えるようになった。バングラデシュとパキスタンは、合わせて5億人近い人口を抱えているが、産業消費と発電のニーズを満たすことができず、停電に見舞われた。液化天然ガス供給者は、より高い価格を支払う富裕層向けの貿易にシフトすることを希望している。数ヶ月あるいは数年前に締結された契約にもかかわらず、貧困国向けの貨物がヨーロッパに迂回されたり、単に全く配達されなかったりしている状態だ。

停電は単なる不便な出来事と言うだけではない。パキスタンのように、毎年45度を超える熱波が襲い、国土の3分の1を水没させた洪水からの復興に苦闘している国では、電力は生死に関わる問題である。この数カ月間、連日連夜、企業、家庭、学校、病院が数時間電気がない状態に陥っている。それは、政府が、発電所の4分の1を占めるガス火力に十分な天然ガスを輸入できないからだ。パキスタン政府によると、主要な液化天然ガス供給会社は契約を履行せず、未納の違約金を払い、より高い利益を得るために富裕国へ供給を送ることを好んでいるとのことだ。

2022年7月、パキスタン政府が行った液化天然ガス72隻分(10億ドル相当)の入札には、供給会社からの入札が全くなかった。国際通貨基金(IMF)のプログラムからの現金支給が遅れたため、パキスタンはスポット市場でガスを購入するのに苦労し、工場やレストラン、その他の事業で働く人々は労働時間の短縮と低賃金を余儀なくされている。政府機関は電力消費量を30%削減するよう命じられ、国内の街灯の半分が消灯している。

貧しい国々にとって状況が好転する兆しはない。北半球の多くの地域で暖冬が続き、ガス価格が下がっているとはいえ、既に来年にも天然ガスが不足することが懸念されている。破壊工作が行われたノルドストリーム・パイプラインは2023年も使用できない可能性が高く、ヨーロッパ諸国はこの夏、重要な貯蔵施設に補充する液化天然ガスへの依存度を更に高めることになる。さらに、EU加盟諸国は既に、今後数年間に供給が開始される可能性のある新たなガス供給を賄うための長期契約締結に強い関心を示している。ドイツやその他のヨーロッパ諸国は、今後数年間に浮体式貯蔵・再ガス化設備に追加投資し、更に多くの液化天然ガス(LNG)を吸収できるようにしようとしている。一方、世界有数の液化天然ガス輸出国であるオーストラリアは、ガス不足の可能性を懸念し、自国でのガス供給量を増やすための対策をとっている。

貧しい国々が貧困から脱却し、干ばつや洪水、暴風雨、熱波に対して強靭になるためには、豊かな国々が享受しているのと同じように、信頼性が高く、豊富なエネルギー資源を必要としている。こうした国の多くは自然エネルギーに投資しており、さらに多くの投資を計画している。しかし、中期的なエネルギー安全保障の観点からは、富裕な国々と同様にガスが必要であることに変わりはない。発電だけでなく、農作物の収穫量を上げるための肥料や、耐震性の高い建物やあらゆるインフラのためのコンクリートや鉄などの工業生産にガスは欠かせない。また、暖房や調理にもガスは必要で、日照や天候に左右される風力や太陽光発電のバックアップ電源にもなっている。

自国のエネルギー安全保障の確保を急ぐヨーロッパは、アフリカや南アジアなどの指導者たちが気づかないうちに、偽善をむき出しにしている。ヨーロッパのいくつかの国は、国際的な化石燃料プロジェクトに対する公的支援を全て打ち切ると公約している。これらのヨーロッパ諸国は、信頼できる電力と経済成長をもたらす可能性のある下流のガスインフラを建設するための資金を、貧しい国々に提供してはならないと主張している。その一方で、アメリカやEUを拠点とする多国籍企業は、東アジアやヨーロッパの富裕な国々に輸出するために、自らの資本で貧しい国々のガス埋蔵量を開発することを止めない。

この偽善の基盤は明らかだろう。EU諸国は、自国のエネルギー安全保障のために化石燃料を最大限柔軟に使用できるようにする一方で、貧しい国々が貧困と悲惨から抜け出すために不可欠なエネルギー供給を増やすための資金援助には厳しい制限を課すという、陰湿なグリーン・コロニアリズム(green colonialism、グリーン植民地主義)を推進し続けている。その一方で、自国のエネルギー安全保障のために化石燃料を使用する自由度は最大限に高めている。石炭使用量の急増による排出量の増加については、ドイツに質問してみるとよいだろう。つまり、豊かな国々がガスの備蓄や世界中の生産者との複数年の購入契約を自画自賛している間に、貧しい国々は家庭や学校、病院、工場に十分な燃料がない状態に置かれなければならない。ガスプロジェクトへの融資を阻止するヨーロッパの政策は、貧困を緩和するものでも、気候変動に対処するものでもない。

これは、欧州の政府がエネルギー転換の橋渡し燃料として天然ガスを利用することを非難するものではない。特に、石炭を代替する場合や再生可能エネルギーをバックアップする場合には、天然ガスを利用することは非常に理にかなっているのだ。しかし、アフリカやアジアの貧しい国々にとっても、自国と同様にエネルギーの安全保障と信頼性が最も重要であることを、自国の国民に配慮しているのと同様に認識すべきだ。富裕な国々は、天然ガスが豊富に埋蔵されているアフリカにおける基本的なインフラ投資のわずかな排出量にこだわるよりも、貧しい国々が経済成長できるような戦略を採用すべきだ。

パキスタンやバングラデシュのような国々は市場から値崩れし、ヨーロッパが来年も暖冬であることを祈るしかない。自国の消費者を高価なガスやガソリンから守ることには何のためらいもないのに、貧しい国々の高価なガス代を援助することは、化石燃料の補助金とみなされるため、ヨーロッパ政府はおそらく拒否するだろう。しかし、ヨーロッパ諸国は、燃料節約型の再生可能エネルギーの導入や暖房の電化にもっと力を入れることができるだろう。また、世界的なエネルギー危機の最中に原子力発電所を停止させるのではなく、既存の原子力発電所を稼働させるための緊急延長をもっと検討すべきだ。例えば、ベルギーは原子力発電所を停止しているため、より多くの天然ガスを使用する方向にあり、その代償を払うのは貧しい国々である。

最も重要なことは、ヨーロッパ諸国は、エネルギー安全保障、経済成長、貧困緩和、健康な生活に不可欠な、貧しい国々の下流ガスプロジェクトに反対することを止めることだ。

※ヴィジャヤ・ラムチャンドロン:「ブレイクスルー・インスティテュート」エネルギー・発展担当部長。ツイッターアカウント:@vijramachandran

※ジェイコブ・キンサー:「エナジー・フォ・グロウス・ハブ」上級政策アナリスト兼プログラム調整担当。ツイッターアカウント:@jakekincer

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。
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シーモア・ハーシュ
 ハーシュの論稿の最後の3分の1をご紹介する。アメリカとノルウェーは共犯関係になった。ノルウェーにしても北海で産出する石油で大儲けしたいところだった。北海油田で言えばイギリスの方が産出額じゃ多い。ウクライナ戦争によってエネルギー価格の高騰が続くことで利益を得ることができる。イギリスがウクライナに強い後押しをしているのはこういうところにも理由があるのだろう。

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 作戦はバルト海でのアメリカ主導のNATOの演習(毎年開催)に紛れて実行されることになった。各国からの多くの艦艇が参加することで「森の中に木を隠す」ことができ、デンマークやスウェーデンに察知されないということも期待できる。しかし、作戦決行が近づいてまた難題が持ち上がってきた。バイデン大統領が現場に対して、演習の直後ではあまりにも露骨すぎるので、爆薬を遠隔操作で爆発させる方法を見つけ出すように要求してきたのだ。現場は混乱したが、それでも方法は見つかった。それは特定の周波数の合図で爆発させることであった。しかし、海上や海面、海中には様々な音源があり、それらに反応して偶発的に爆発する危険はあった。しかし、作戦は無事に成功した。

 アメリカの主要メディアはノルドストリームの爆破について「不思議だ」「ミステリーだ」などと空っとぼけて報道した。何のことはない、多くの人が「アメリカがやったに決まっている」ということが、ハーシュの論稿で明らかになった。それでもアメリカ政府は「フェイクだ」「嘘だ」「作り話だ」としらを切り通すしかない。アメリカ大統領が秘密命令を出して、他国の施設を攻撃させたというのは犯罪行為であり、何よりも戦争行為である。今回のノルドストリーム爆破を理由にして、ロシア、ドイツ、デンマークがアメリカに宣戦布告してもおかしくはない。ウクライナ戦争の当事国であるロシアに対して、アメリカはウクライナ支援に一定の制限を設けることで直接戦争にならないように気を遣っている。そうした努力が全く無駄になってしまう。

 バイデン個人について言えば、このような犯罪行為が明らかになって、大統領選挙への悪影響は大きいだろう。簡単に言えば、再選の可能性は潰えてしまう。連邦下院で過半数を握っている共和党が議会の調査権を使用してこの問題を追及し、何かしらの証拠や証言が出れば、バイデンはアウトということになるし、たとえ確固とした証拠や証言が出なくても、バイデンへのマイナスの影響は大きい。ノルドストリーム爆破事件はウクライナ戦争を変えるほどの大きな爆弾になる可能性がある。

(貼り付けはじめ)

この時、パナマシティにある海軍の秘密のベールに包まれた深海潜水集団が再び活躍することになる。パナマシティの深海学校の出身者たちがアイビー・ベルズ作戦に参加した。アナポリスの海軍兵学校を卒業し、海軍特殊部隊(ネイヴィーシールズ)、戦闘機パイロット、潜水艦乗りになることを目指すエリートたちにとって、この学校は避けたい場所に映るものである。もし、「ブラック・ショア(Black Shore)」、つまり、あまり好ましくない水上艦の司令部に所属しなければならないのなら、少なくとも駆逐艦、巡洋艦、水陸両用艦の任務が希望される。最も華やかさに欠けるのが機雷戦(mine warfare)である。そして、機雷戦に参加する潜水士たちがハリウッド映画に登場したり、人気雑誌の表紙を飾ったりすることはない。

前述の情報源は「深海潜水の資格を持つ最高の潜水士たちの世界は狭いコミュニティで、最高の中でも最高の潜水士たちが作戦のために採用され、ワシントンのCIAに呼び出されるので心の準備をするようにと言われる」と語った。

ノルウェー政府とアメリカ政府は作戦の実行地域と作戦内容を決めていたが、別の懸念も存在した。それはボーンホルム島周辺海域で異常な水中活動があれば、スウェーデンやデンマークの海軍の注意を引き、通報される可能性があるというものだ。

デンマークはNATOの最初期加盟国の1つであり、イギリスと特別な関係にあることは情報機関でも知られている。スウェーデンは NATO 加盟を申請しており、水中音波と磁気センサーシステムの管理で 優れた技術を有しており、スウェーデン群島の遠隔海域に時々現れては浮上するロシア海軍潜水艦の追跡に成功した実績を持っている。

ノルウェー側はアメリカ側と協力して、デンマークとスウェーデンの高官数名に、この海域での潜水活動の可能性について一般論として説明するよう主張した。そうすれば、上層部の誰かが介入して、指揮系統から報告書を排除することができ、パイプライン破壊作戦の実行を保護することができる。(ノルウェー大使館に対して、この記事についてコメントを求めたが、返答はなかった。)

ノルウェー政府は、他のハードルを解決するための重要な存在だった。ロシア海軍は、水中機雷を発見し、作動させることができる監視技術を持っていることが知られている。アメリカの爆発物は、ロシアのシステムから自然な背景の一部として見えるようにカモフラージュする必要があり、そのためには海水の塩分濃度に適応させる必要があった。ノルウェー側にはその解決策があった。

ノルウェー政府は、この作戦をいつ行うかという重要な問題についての解決策も持っていた。ローマの南に位置するイタリアのガエータに旗艦を置くアメリカ第6艦隊は、過去21年間、毎年6月にバルト海でNATOの大規模演習を主導し、この地域の多数の同盟諸国の艦船が参加してきた。6月に行われる今回の演習は、「バルト海作戦22(BALTOPS 22)と呼ばれるものである。ノルウェー側は、この演習が機雷を設置するための理想的な隠れ蓑になると提案した。

アメリカ政府は1つの重要な要素を提供した。それは、第6艦隊の計画担当者たちを説得して、プログラムに研究開発演習を追加させたことだ。米海軍が公表したこの演習は、第 6艦隊が海軍の「研究・戦争センター」と共同で行うものであった。ボーンホルム島沖で行われるこの海上演習では、NATOの潜水士ティームが機雷を設置し、最新の水中技術で機雷を発見・破壊するのを競い合うという内容だった。

これは有益な訓練であると同時に、巧妙な偽装でもあった。パナマシティの若者たちは、「バルト海作戦」の終了までにC4爆薬を設置し、48時間のタイマーを取り付ける。アメリカとノルウェーの関係者たちは、最初の爆発が起こる頃には、全員いなくなっているという手筈になっていた。

作戦実行日に向けてカウントダウンが始まった。「時計は時を刻み、私たちは任務達成に近づいていた」と前述の情報源は述べた。

そしてこの時、ホワイトハウスは考え直していた。爆弾は「バルト海作戦」の期間中も仕掛けられるが、ホワイトハウスは爆発までの期間が2日間では演習の終了に近すぎるし、アメリカが関与したことが明らかになることを懸念した。

その代わりに、ホワイトハウスは新たな要求を出した。それは、「現場の要員たちで、遠隔地からの命令でパイプラインを爆破できる方法を考えだすことは可能だろうか?」というものだった。

この大統領の優柔不断な態度に、計画ティームの中には怒りや苛立ちを覚える人たちもいた。パナマシティの潜水士たちは、「バルト海作戦」の期間中にパイプラインにC4爆弾を仕掛ける練習を繰り返していた。しかし、ノルウェーのティームは、バイデンが望むような方法、自分の好きな時間に実行命令を出すことができる、について新しい方法を考え出さなければならなくなった。

恣意的な土壇場での変更を任されることは、CIAにとってはこれまでも行ってきたことでもあり慣れていた。しかし、それはまた、作戦全体の必要性と合法性について一部が共有した懸念が新たに出てきた。

バイデン大統領の秘密命令はヴェトナム戦争当時にCIAが抱えていたディレンマを思い起こさせるものとなった。当時のリンドン・ジョンソン大統領は、ヴェトナム反戦運動の高まりに直面し、CIAがアメリカ国内で活動することを禁じた憲章に違反し、反戦運動の指導者がソ連にコントロールされていないかどうかを監視するよう命じた。

CIAは最終的に黙認し、1970年代を通じて、CIAが自ら進んで犯罪王位に手を染めていたことが明らかにされた。ウォーターゲート事件の後、新聞の暴露報道によって、アメリカ市民に対するスパイ活動、書外国の指導者暗殺への関与、サルヴァドーレ・アジェンデの社会主義政府の弱体化にCIAが関与しことが明らかになった。

これらの暴露は、1970年代半ばにアイダホ州選出のフランク・チャーチ連邦上院議員を中心とする連邦上院での一連の派手な公聴会につながり、当時のCIA長官リチャード・ヘルムズが、たとえ法律に違反することになっても大統領の望むことを行う義務があることを認めていたことが明らかになった。

ヘルムズは、書類化されていない、非公開の証言において、大統領からの秘密命令を受けて「何かをするときは、ほとんど無原罪(Immaculate Conception)のようなものだ」と残念そうに説明した。ヘルムズは続けて「それが正しいことであれ、間違っていることであれ、CIAは政府の他の部分とは異なる規則と基本的なルールの下で働いている」。彼は本質的に、CIAのトップとして、憲法ではなく王室のために働いてきたと理解していることを連邦上院議員たちに伝えていた。

ノルウェーで作戦に従事したアメリカ人たちも、同じような行動様式のもとで、バイデンの命令でC4爆薬を遠隔で爆発させるという新しい問題に、ひたすら取り組み始めた。しかし、これはワシントンにいる計画者たちが想像していたよりもはるかに困難な課題となった。ノルウェーのティームには、大統領がいつボタンを押すか分からない。数週間後なのか、数カ月後なのか、半年後なのか、それ以上なのか?

パイプラインに取り付けられたC4は、飛行機で投下されたソナーブイによって短時間に作動するが、その手順には最先端の信号処理技術が使われていた。そのためには最先端の信号処理技術が必要である。いったん設置された遅延装置は、船舶の往来が激しいバルト海では、近海・遠洋の船舶、海底掘削、地震、波、さらには海の生物など、さまざまなバックグラウンドノイズが複雑に絡み合って、誤って作動する可能性がある。これを避けるために、ソナーブイを設置した後、フルートやピアノが発するような独特の低周波音を連続して発し、それをタイミング装置が認識して、あらかじめ設定された時間の遅延後に爆発物を起動させるのだ。「他の信号が誤って爆薬を爆発させるパルスを送らないような強固な信号が必要となる」と私はMITの科学技術・国家安全保障政策の名誉教授であるセオドア・ポストール博士から教えられた。米国防総省の海軍作戦部長の科学アドヴァイザーを務めたこともあるポスドル博士は、バイデン大統領の後からの命令(時間を置いて爆発させたい)のためにノルウェーのグループが直面した問題は偶然の事故であったと述べた。ボストル博士は「爆薬が水中にある時間が長ければ長いほど、ランダムな信号によって爆弾が発射される危険性が高くなる」と述べた。

2022年9月26日、ノルウェー海軍のP8偵察機が一見、日常的な飛行を行い、ソナーブイを投下した。その信号は水中に広がり、最初はノルドストリーム2、そしてノルドストリーム1へと到達した。数時間後、高出力C4爆薬が作動し、4本のパイプラインのうち3本が使用不能に陥った。数分後には、停止したパイプラインに残っていたメタンガスが水面に広がり、取り返しのつかないことが起こったことを世界中が知ることになった。

●副次的な影響(FALLOUT

パイプライン爆破直後、アメリカのメディアはこの事件を未解決のミステリー(unsolved mystery)のように扱った。ホワイトハウスのリークに促され、何度も犯人としてロシアの名前が挙げられたが、単なる報復以上の自虐的行為にしかならない爆破についての明確な動機が明確にされることはなかった。数ヵ月後、ロシア当局がパイプラインの修理費用の見積もりをひそかに取っていたことが明らかになると、ニューヨーク・タイムズ紙はこのニューズを「攻撃の背後にいる人物についての説を複雑にしている」と評した。バイデンやヌーランド国務次官によるパイプラインへの脅しについて、アメリカの主要紙は掘り下げることはなかった。

ロシアがなぜ自国の儲かるパイプラインを破壊しようとしたのか、その理由は決して明らかではなかったが、ブリンケン国務長官が大統領の行動の拠り所となる根拠を示した。

昨年9月の記者会見で、西ヨーロッパで深刻化するエネルギー危機の影響について問われたブリンケン国務長官は、この瞬間は潜在的には良いものであると述べた。彼は次のように述べた。

「ロシアのエネルギーへの依存をなくし、プーティン大統領から帝国主義を推進するための手段としてエネルギーを武器化する手段を取り上げる絶好の機会である。このことは非常に重要であり、今後何年にもわたって戦略的な機会を提供することになる。しかし一方で、私たちは、この全ての結果が、アメリカの、あるいは世界中の市民にとっての大きな負担とならないようにするために、できる限りのことをする決意を固めている」。

更に最近になって、ヴィクトリア・ヌーランドは、最も新しいパイプラインの破壊に満足感を示した。2023年1月下旬の連邦上院外交委員会の公聴会で、彼女はテッド・クルーズ連邦上院議員に対して、「議員と同様に私も、ノルドストリーム2が、あなたが言われるように、海の底の金属の塊になったことを知って喜んでいる。バイデン政権全体もまた非常に喜んでいると思う」と語った。
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前述の情報源は、冬が近づくにつれ、ガスプロムの1500マイル(約2400キロ)以上のパイプラインを破壊するというバイデンの決定について、より一般的な見方を示した。この人物はバイデン大統領について「まあね、あの男には度胸があると認めざるを得ない。彼は実行すると言っていた。そして実際にやったのだ」と述べた。

ロシアが対応に失敗した理由をどう考えるかと質問したところ、この人物は皮肉を交えながら、「おそらくロシア側もアメリカが実行したのと同じことができる能力を手に入れたいと望んでいるからだろう」と答えた。

彼は話を続けて次のように語った。「美しい巻頭の特殊記事のようなものになった。しかし、その裏には、専門家たちを配置した秘密作戦と、秘密の信号で作動する装置があった」。

「唯一の失敗は実行する決定をしたことだ」。

(貼り付け終わり)
(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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