古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:ヴォロディミール・ゼレンスキー

古村治彦です。

2月上旬、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領はイギリスをサプライズ訪問した。イギリスではリシ・スーナク首相、リンジー・ホイル下院議長、更にはチャールズ国王と会談を持った。ウクライナ戦争が始まって以来、ウクライナを離れる機会がほぼなかったゼレンスキー大統領がイギリスを直接訪問し、これまでの支援を感謝し、更なる支援、特に戦闘機の支援を求めたことには重大な意味がある。それは、「ウクライナ戦争の停戦が困難なのはイギリスがいるからではないか」「日露戦争をアナロジーとして考えると、ウクライナを利用してロシアを消耗させようとしているのはイギリスではないか」ということが考えられるからだ。
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ウクライナ支援について見ていくと、アメリカが圧倒的な割合を占めている。イギリスは2番目だと威張っても、その割合は小さなものだ。NATO分で出しているという主張もあるだろうが、大英帝国だと威張っている割にはその額は少ない。しかし、戦争が始まって以来、イギリス政府関係者は声高に対ロシア憎悪を言葉にしている。
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 西洋諸国はウクライナ支援を行っているが、ウクライナが求めているジェット戦闘機の供与だけは行っていない。また、飛行禁止区域設定も行っていない。これはそのようなことをすれば、供与を行う国々が戦争当事国となり、ロシアから宣戦布告されて、戦争に巻き込まれ、ロシアからのミサイル攻撃(核兵器使用を含む)を受けるという懸念があるためだ。アメリカ国内ではウクライナ戦争の停戦を求める声、ウクライナへの支援を減額するように求める声、ロシアからの天然資源輸入を再開するように求める声が出ている。アメリカとイギリスの間にはウクライナ戦争をめぐる態度で温度差がある。
 戦争を継続してウクライナ領土の再獲得を目指しているヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は今の状態で停戦すれば、国民からの批判に晒されることが考えられる。クリミア半島を含む1991年に独立した際の領土を全て再獲得するまでは戦争を止めることはできない。戦争を止めれば自身の政権も危うい。そうなると、頼るのはイギリスということになる。アメリカはいつ手の平を返すか分からない。イギリスは北海油田の産油を西ヨーロッパに売りつけたいという意向もある。戦争継続はイギリスとゼレンスキー政権の共通の「利益」である。

 戦争では誰が儲かるのか、利益を得るのかという視点から事態を見ていくことも大事だ。そうすれば戦争の別の側面も見えてくる。

(貼り付けはじめ)

ゼレンスキー大統領が訪英、英首相や国王と会談 議会で演説し戦闘機求める

202328

更新 202329

https://www.bbc.com/japanese/64567813

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が8日、イギリスを訪れ、首相官邸でスーナク首相と会談した。昨年2月にロシアがウクライナに侵攻して以降、ゼレンスキー氏の訪英は初めて。その後、議会で演説し、イギリスの支援に感謝するとともに、戦闘機の供与を求めた。

ゼレンスキー氏の訪英は、イギリス軍がウクライナ兵に実施してきた訓練を、ウクライナの戦闘機パイロットや海軍歩兵にも拡大するとの見方が出ているタイミングで行われた。

ウクライナのパイロットが将来的に北大西洋条約機構(NATO)水準の戦闘機を操縦できるようにする計画は、以前から発表されていた。ウクライナはかねて、これを主要な要請として掲げていた。

首相官邸は、スーナク氏がゼレンスキー氏に対し、ウクライナの重要な国家インフラを標的にするロシアの能力を削ぐ「長距離能力」の提供を申し出るとしていた。

また、イギリスによるウクライナ兵の訓練を拡大し、さらに2万人を対象とする見込みだとした。

イギリスの支援に感謝

ゼレンスキー氏はスーナク氏との会談後、議事堂のウェストミンスター・ホールに移動し、上下両院の議員らを前に英語で演説。「塹壕(ざんごう)の中にいて、ウクライナを敵のミサイルから守ってくれている、戦争の英雄たちの代理として」自分はやって来たのだと述べ、イギリスがウクライナ兵に装備と訓練を提供していることに感謝した。

また、ロシアが侵攻した「初日から」イギリスはウクライナを支援していると強調。ボリス・ジョンソン元首相を名指しし、「ボリス、あなたは絶対に、絶対に無理だと思われていた時に、諸外国を団結させた。ありがとう」と語りかけると、聴衆からは大きな拍手が湧いた。

ゼレンスキー氏はさらに、ウクライナとイギリスの国民は共に、第2次世界大戦で自由を守り抜いたと指摘。「私たちの国民は危機に見舞われた」ものの、粘り強さを発揮したとした。

その上で、「自由は勝利する」、「ロシアが負けるのは明らかだ」と強調し、拍手を浴びた。

戦闘機を求める

ゼレンスキー氏は演説で、戦闘機を「自由のための翼」と表現。ウクライナへの供与を、英議員らと世界に対して要望した。

ロシアが今月後半にも新たな攻勢をかける見通しの中、西側諸国はウクライナへの支援をどう増強するか検討している。

イギリスは戦闘機の供与について、「現実的ではない」としている。スーナク氏の報道官は先週、英軍の戦闘機は「極めて高度で、操縦を覚えるのに何カ月もかかる」と述べた。

一方でイギリスはすでに、主力戦車「チャレンジャー2」を14台供与すると発表している。ウクライナ軍に操作の訓練も提供する予定だ。

これを踏まえてゼレンスキー氏は、演説の中で戦車の供与に言及。「防衛面でのこの強力な一歩について、感謝しています、リシ」とスーナク氏に語りかけた。そして、「世界は本当に自由を守る勇者を助け、新たな歴史を作っていく」と述べた。

ゼレンスキー氏はまた、演説の途中で、リンジー・ホイル下院議長にウクライナの戦闘機パイロットのヘルメットを贈った。

ヘルメットには「私たちには自由がある。それを守るための翼を与えてください」と書かれていた。

英政府はこの日、ロシアへの新たな制裁を発表。IT企業や、ドローンやヘリコプターの部品などの軍事機器を製造する企業などを対象にした。

ゼレンスキー氏は演説で、「ロシアが戦争資金を調達する可能性がなくなるまで」制裁を続けるよう、イギリスと西側諸国に求めた。

英国王と会見

ゼレンスキー氏は議会での演説後、バッキンガム宮殿でチャールズ国王と会見した。

国王がゼレンスキー氏に会うのはこれが初めて。

ゼレンスキー氏は議会での演説で、国王はまだ皇太子だったころからウクライナを支援してくれたとし、全国民の感謝の気持ちを伝えるつもりだと述べていた。

フランス大統領府の報道官によると、ゼレンスキー氏はこの後、パリ・エリゼ宮に移動し、エマニュエル・マクロン大統領と、ドイツのオラフ・ショルツ首相と会談する予定だという。

ゼレンスキー氏は9日には、欧州連合(EU)首脳会合に参加する見込みとなっている。

ゼレンスキー氏は昨年3月、英下院でビデオ演説した

ゼレンスキー氏は昨年3月に、英議会にビデオリンクで参加。英下院で演説した初の外国人首脳となった。

同氏がロシアによる侵攻以降で外国を訪問するのは、昨年12月のアメリカとポーランドに続いて3カ国目となる。

昨年の訪米では議会で演説。「ウクライナは決して降参しない」と述べ、何回かスタンディングオベーションを受けた。

ジョー・バイデン大統領もその際、「パトリオット」ミサイル防衛システムの供与など、ウクライナへの支援拡大を約束した。

ゼレンスキー大統領をめぐっては、今週ベルギーのブリュッセルを訪問するとのうわさが流れていた。9日に欧州議会で演説し、欧州連合(EU)の首脳会談にも参加するとみられている。

ただ、この情報が今週初めに流出したため、セキュリティー上の懸念からブリュッセル訪問は中止になるとの見方も出ている。

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ウクライナでのロシアの戦争が1年近く経過した中で、ゼレンスキーはイギリスを訪問した理由(Why Zelenskyy visited the U.K. nearly 1 year into Russia's war on Ukraine

ウィレム・マルクス筆

2022年2月8日

NPR

https://www.npr.org/2023/02/08/1155360051/zelenskyy-russia-ukraine

ロンドン発。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、約1年前にロシアがウクライナに侵攻して以来、ほぼ行ってこなかった国外訪問の1つとして、イギリスを訪問し、人々を驚かせた。

ゼレンスキー大統領は、予想されるロシアの攻勢と領土を取り戻すためのウクライナの反撃を準備するために、ウクライナの強力な国際的支援者からより高度な武器をウクライナ軍に供与するように求めている。

ウクライナの指導者はリシ・スーナク首相と会談し、イギリス議会で演説を行い、イギリスの支援と兵器に感謝した後、すぐに更なる支援(特に戦闘機)を要求した。また、チャールズ3世とも会談した。

フランス政府は、水曜日にゼレンスキーがパリを訪れ、エマニュエル・マクロン仏大統領とオラフ・ショルツ独首相と夕食を共にすることを確認したばかりで、今回の外遊はゼレンスキーの予告なしのヨーロッパツアーの最初の足取りとなる。木曜日には、EU理事会のシャルル・ミシェル議長が彼を招待したため、他のEU首脳との会談のためにブリュッセルに移動する可能性もある。

ゼレンスキー大統領がイギリスを訪問した理由は以下の通りだ。

●規模第2位のウクライナ支援者(Ukraine's second-biggest backer

イギリス議会によれば、イギリスはアメリカに次いでウクライナにとって2番目に大きな支援国であり、2022年2月以降、27億ドル相当の軍事支援を約束しており、今年もそれに匹敵する支援を約束するとしている。イギリスは、ロシアの侵攻に対して経済制裁を加える上で重要な役割を担っている。そしてスーナク首相もまた、前任者と同様にキエフを訪問している。

また、スーナク首相は先月、ウクライナにチャレンジャー2戦車を贈ることを約束したが、これは米国とドイツが戦車供与を発表する2週間前のことだった。ウクライナ軍の要因たちが1月29日にイギリスに到着し、イギリスの戦車で訓練を受けた。

しかし、ウクライナは更に一歩踏み込んで、戦闘機の提供を求めている。

ウクライナの防空は、ロシアがウクライナ領土の広い範囲を支配することをほぼ防いできた。しかし、自国の格納庫には、ソ連時代のスペアパーツに頼らない運用可能な航空機がほとんど残っていないと英国のシンクタンク「英国王立防衛安全保障研究所(Royal United Services Institute)」の国際安全保障担当部長ニール・メルビンは指摘している。メルビンによれば、西側の航空機システムの採用を拡大しなければ、ウクライナ軍は長期的に、陸上部隊の攻撃力に見合うだけの空戦力を身につけるのに苦労することになると主張した。

●イギリスは戦闘機の訓練を約束したが、今のところジェット機の提供はない(Britain promised warplane training, but so far no jets

ゼレンスキー大統領は、12月のアメリカのように、国防費を決定するイギリス議会から承認を求めるという他の国々で使ってきた戦術を継続した。

水曜日にウェストミンスター・ホールで行われた演説で、彼はリンゼイ・ホイル下院議長に象徴的な贈り物をした。その贈り物とは「我々は自由を持っている、それを守るために翼を与えよ」と書かれた戦闘機パイロットのヘルメットだった。

イギリス政府は、ウクライナ軍に対する軍事訓練を、戦闘機のパイロットまで拡大すると発表した。「この訓練によって、パイロットは将来的にNATO標準の高性能戦闘機を操縦できるようになる」とイギリス政府は声明の中で述べた。

この誓約には戦闘機の提供を約束するとまでは書かれていない。

しかし、ロイター通信は、イギリス政府報道官は記者団に対し、「スーナク首相は国防相に、どのようなジェット機を提供できるかを調査するよう命じたが、はっきり言って、これはウクライナが今最も必要としている短期の能力ではなく、長期の解決策である」と述べたと報じた。

●イギリス国民の支持を維持する(Maintaining public support

何世紀もの歴史を持つイギリス議会の衣装や儀式用ローブの中で、いつものアーミーグリーンのスウェットシャツを着たこの戦時大統領の姿は、イギリス国民にウクライナの軍事的必要性を思い起こさせるものとなるだろう。

ロシアと戦うウクライナに対するイギリス国民の支持は依然として高い。戦争が始まって数カ月、ウクライナ人の家族を家に迎え入れた何万人もの英国人に代表されるように、ウクライナの人々に対する関心も高いのである。

1月24日に発表されたイプソス社の世論調査の結果では、イギリス人はウクライナ人を助け、ロシアを孤立させる努力を続けることに、調査対象の他の国よりも強い支持を表明しているということになった。

ゼレンスキーは、この支持を当然とは考えていないようだ。今回の訪問は、政治家だけでなく、イギリス国民にも戦争がまだ終わっていないことを思い知らせるためのものなのかもしれない。

アレックス・レフがワシントンからこの記事の作成に貢献した。
(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2022年の世界規模の大きな課題は、中国と台湾とアメリカの関係とウクライナとロシアの関係であった。これらについては2021年の段階で既に火種がまかれていた。アメリカでジョー・バイデン政権が発足し、アメリカは対ロシア、対中国で強硬姿勢を鮮明にした。サイバー上でロシアと中国がアメリカに攻撃を加えているので、サイバー安全保障を早急に整えねばならないということをバイデン政権は述べていた。私はバイデン政権の動きから、中露両国とアメリカの間でサイバー上において激しい戦いがあると考え、拙著『』(秀和システム)を書いた。

 しかし、実際には人々の死と大規模な破壊を伴う戦争が起きた。ウクライナは欧米諸国(NATO)の対ロシア最前線であった。欧米諸国はウクライナに中途半端に強力な軍事支援を行ってロシアを挑発した。ロシアという国は敵対する勢力と直接国境を接することを極度に怖がるという習性をもっている。これは歴史的に見ても明らかだ。だから、ロシア本国の周りに緩衝国(buffer state)をつくってきた。

冷戦の終結で、ロシアは身ぐるみをはがされて裸にされた形になり、「冷戦に勝った、勝った」と浮かれた欧米諸国はロシアを馬鹿にするだけ馬鹿にして悦に入っていた。それでも旧ソ連時代からのロシア軍の実力を恐れ、何とか封じ込めようとしてきた。東欧まではロシアもまだ我慢した。しかそ、ウクライナと春と話は別だ。ウクライナが中立でなければロシアの南部国境は危うくなる、黒海周辺でのバランスが大きく変わるということになった。

 ジョー・バイデンがバラク・オバマ政権時代に副大統領としてウクライナを私物化し、軍事支援などを積極的に行ってきたことも今から考えれば、ロシアにしてみれば「バイデンが大統領になったらどういうことになるか分からない」という懸念を強めることになっただろう。国務省次官にヴィクトリア・ヌーランドを起用したこともその懸念に拍車をかけたことだろう。結果として、ロシアは誘い込まれるようにして、ウクライナに侵攻した。欧米諸国がロシアの懸念を理解し、ウクライナの中立化(欧米並みの機能する民主政治体制[ネオナチが排除され、汚職や腐敗が撲滅されたもの]ではあるが軍事力は限定的)を進めていれば世界は不幸にならなかった(軍事産業は不幸だっただろうが)。

 中国と台湾の関係はそのまま中国とアメリカの関係ということになる。「ウクライナの次は台湾だ。中国が台湾を攻める」というスローガンが2022年前半にはやかましかった。しかし、その後は静かになった。そもそもアメリカは中国と本気で事を構えることはしたくない。

ウクライナ戦争でアメリカ軍将兵の生命を損耗することなく、武器だけはじゃんじゃん送ってウクライナ人が命を落としながら、武器を大量消費して軍事産業がウハウハという状態になっているが、アメリカ軍自体の武器貯蔵が減ってきて、生産が追い付かないで困っているという状態である。ウクライナ戦争が終わって、武器の貯蔵が回復するまでは、まず中国軍と戦うことはできない。「アメリカ軍が本気で台湾のために戦ってくれない」ということを台湾の人々は良く認識するようになっているので、「アメリカから煽って火をつけないで欲しい」と窘められる始末だ。

2021年の段階で米中関係、中台関係は戦争まで行かないという予想が大半でそれは当たった。ウクライナ戦争については戦争が起きるだろうか、その目的と地域は限定的で、ロシア系住民の保護のためにウクライナ東部に集中するという予測がなされていたが、それははずれる格好になった。

今年に入ってもウクライナ戦争は継続されてもうすぐ1年ということになる。焦点は停戦合意に向けた話し合いになると私は考える。バイデン大統領が仲介をする形になるだろうが、ウクライナが素直に言うことを聞くだろうかという不安がある。バイデンは再選を控えている。

そうした中で、バイデンのバカ息子であるハンターのウクライナとの関係で、ウクライナ側が何か新事実を出すとか、ハンターと汚職企業の関係を調査するとかと言うことになると再選に響く。そうしたことを行わないことを条件にして支援を続けるように、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領が交渉する(脅す)ことくらいはやりかねない。困ったバイデンの選択はゼレンスキーの排除ということになる。飛行機事故でもヘリコプター事故でも交通事故でも反感を持つに至った側近による暗殺でも、アメリカのCIAがこれまでやってきたオプションから選ぶだけで良い。

属国の指導者の運命とははかないものである。それを私たちは昨年まざまざと見せつけられた。そして、国際政治は非情なものである。

(貼り付けはじめ)

過去を見返すことで2023年に向けて未来を見通す(Looking Ahead to 2023 by Looking Back

-昨年の外交政策の中で今年の外交政策について教えてくれることが可能なものとは。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2023年1月4日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/01/04/looking-ahead-to-2023-by-looking-back/

2023年に入る前に、2022年が私の予想通りであったかどうか、振り返ってみることにした。2021年の最後のコラムで、私は「バイデンの2022年外交政策やること(To-Do)リスト」を紹介した。何が正しくて、何が間違っていたのか、そしてバイデン政権はどの程度の成果を上げたのか?

(1)中国と台湾。私の最初の予想は、「2022年に台湾をめぐる深刻な危機や軍事的対立は起きないだろう」であったが、これは正しかった。2022年8月にナンシー・ペロシ前連邦下院議長が無思慮に台湾を訪問したため、若干緊張が高まったが、冷静さ(cooler heads)が勝り、その後、北京とワシントンの双方が当面の温度を下げることを決定した。北京もワシントンも忙しいのだから、この判断は驚くには当たらない。少なくとも今のところ、ジョー・バイデン政権は中国に対する宣戦布告をせずに済んでいるように見えるが、この作戦が成功するかどうかはまだ分からない。アジア(およびヨーロッパ)の同盟諸国は、先端チップ技術の輸出規制や政権の広範な経済計画の保護主義的要素に不満を持っており、これは中国にとって好機となる可能性がある。私は、2023年に東アジアが平和になることを確信している。

(2)ウクライナ。この件に関しては、一部ではあるが、私は間違っていた。2021年12月下旬の記事で、私は、ロシアは侵攻しないと予想した。しかし、100%の確信があったのではなく、もしモスクワが侵攻してきたとしても、ドンバス地方を中心とした「限定的な目標(limited aims)」の侵攻であり、グルジアと同じような「凍結された紛争(frozen conflict)」になる可能性が高いと予想すると私は述べている。私はなぜそう考えたか? 限定的な作戦であれば、「西側からの強力で統一的な反応を引き起こす可能性が低い」からである。限定的な侵略は、ジョー・バイデン大統領とNATOを「勝ち目のない」状況(“no-win” situation)に追い込むことにもなる。「アメリカから遠く離れ、ロシアのすぐ隣にある地域で銃撃戦を行う意図をアメリカは持たないからだ。ロシアのウラジミール・プーティン大統領は、大規模な侵攻はウクライナの激しい抵抗を引き起こし、「モスクワには到底払えないような費用のかかる痛み」を生じさせることを理解していると私は考えた。

プーティンはロシアの軍事力を過大評価し、ウクライナの軍事力を過小評価し、侵攻に踏み切ったことは私たちが全員知っていることだ。また、ロシアの当初の目的はドンバス地方に限られたものではなかった。しかし、私はロシアの行動がウクライナの激しい抵抗を招き、欧米諸国が「強力で統一された(strong and unified)」反応を示すと考えたがこれは正しいかった。しかし私は見誤った。それ以来、バイデン政権は、ロシアの自信過剰、度重なるロシアの失態、活発で創造的かつ英雄的なウクライナの抵抗に少なからず助けられながら、かなりの戦術的技術で西側諸国の対応を主導してきた。このバイデンの任務は、私の予想とは異なる結果となったが、戦闘が始まってからの彼と彼のティームの総合的なパフォーマンスは高く評価できる。

しかし、前途に見えているのは厳しい状況である。戦争はまだ終わっておらず、バイデン政権、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領が率いる政府、そして他のNATO諸国にとって、2023年は昨年以上に困難な年になると私は危惧している。ロシアによるウクライナのインフラへの攻撃は甚大な被害をもたらしてはいるが、その規模と人口からして、キエフが外部から支援を受けられる限り、消耗戦(war of attrition)が続くが、戦争状態は継続する可能性がある。私が「可能性がある」と言うのは、双方の実損害、予備戦力、将来にわたる戦力維持能力について、公表されている情報だけで信頼できる情報を分析することは困難だからである。ロシアもウクライナも妥協(compromise)しようとする様子がなく、双方が本気で望んでいたとしても、実行可能な取引(workable deal)を考案するのは難しいだろう。ウクライナの戦場での成功は今年も難しいだろう。膠着状態(stalemate)が長引くと、「欧米諸国の支援を強化し、ウクライナがロシアに直接戦いを挑むことを求める」という意見もあれば、「停戦を促すべきだ」とする意見も出てくるはずだ。どちらが勝つかは分からないが、来年もバイデンの話題はウクライナに集中することは間違いない。そして、戦争が長引けば長引くほど、傍観者であり続けた国々(中国、インドなど)が大きな受益者となるであろう。

(3)イスラエルとイラン。2021年、私はバイデンがイランに対する軍事行動への新たな圧力に直面する可能性があると警告した。2022年には、この問題は全く沸騰することはなかった。しかし、ベンジャミン・ネタニヤフがイスラエル首相に返り咲き、イスラエル史上最も右派的な政権を率いている。イランの核開発を制限する新たな合意に達する可能性は、今や夢物語のように思われる。ドナルド・トランプ前大統領は、当初の協定から離脱するという愚かな決断を下したため、テヘランは包括的共同行動計画が有効であったときよりもはるかに爆弾に近づいている。イランの現在の指導部は、新しい制限の交渉よりも、さらに高濃縮ウランの備蓄と核インフラの強化に関心があるようである。イランはウクライナに対抗するためにロシアに無人機(ドローン)を提供することを望んでいるため、この方面での外交的進展はさらに望めなくなった。ネタニヤフ首相はすでに、イランの核開発を阻止することが外交政策の最重要目標の1つであると語っており、それはバイデン政権がより積極的な行動を支持するよう後押しすることを意味する。中東での戦争は、おそらくバイデン大統領とアントニー・ブリンケン米国務長官が今一番望んでいないことだろうが、だからといってネタニヤフ首相とアメリカ国内の彼の同盟者たちが自分たちの主張を押し通すのを止めることはないだろう。何度も何度も繰り返し主張し続けるだろう。

一方、イスラエルの新内閣が占領地におけるイスラエルの不当な制度を深化させることを明確に約束したことは、既に進歩的な人々の間に警鐘を鳴らし、アメリカ国内のイスラエルの支持者の一部からは手厳しい声が上がっている。アメリカは、イスラエルの政策に「懸念(concern)」を表明し、「二国間解決(two-state solution)」という死語のようなお決まりの呪文を唱える以上のことを期待しない方がいい。ネタニヤフ新政権が何を決定しようとも、パレスチナ人の権利を擁護するとか、アメリカがイスラエル支援を縮小するとかと考える人間はネタニヤフ政権にはいない。このような状況は、バイデン政権の民主政治体制と人権に対する美辞麗句と実際の行動との間のギャップを更に露呈することになる。しかし、中東を相手にする場合、このような偽善は目新しいものではない。

(4)信頼性に関する懸念は続く。予想コラムで、私はバイデンには信頼性の問題があると述べた。それは、アフガニスタンからの撤退という彼の正しい決断をしたからではなく、アメリカが世界的な公約を全て果たすことは不可能であり、諸外国はトランプ流のアイソレイショニズム(isolationism)がいずれ再び勢いを増して戻ってくるかもしれないと懸念しているからである。良い点としては、ウクライナ問題への強力かつ効果的な対応と、バイデンがヨーロッパやアジアの伝統的な同盟諸国に働きかけを続けていることが、こうした懸念を一時的に和らげている。しかし、悪いことに、複数のより根本的な構造的問題が残っている。アジアのパートナーたちは、ウクライナが中国への対抗措置の妨げになることを懸念し、ヨーロッパは共和党内にトランプ主義がまだ残っていることを心配し、アメリカ国内のタカ派は、年間1兆ドルに迫る国防予算では米国の遠く離れたグローバルな公約を全て達成するためにはまだ十分でないと言い続けている。

皮肉なことに、アメリカの保護に対する信頼が多少低下しても、他国が自国を守るためにもっと努力するようになり、地域の安定にもっと関与するようになれば、それは有益なことであろう。したがって、バイデンの課題は、今後1年間、アメリカの同盟諸国に対し、もっと頑張るという公約を履行し、今日の決意を明日の能力に変えるよう説得することである。しかし、この目標は、世界的な不況下では、厳しいものとなる可能性がある。

(5)人道的危機(humanitarian crisis)が起きるか? 2021年、私は、人道的危機がどこで、どのような形で発生するかは分からないが、多く発生する可能性が高いと警告した。悲しいことに、これは事実であることが判明した。世界経済フォーラムの報告によると、現在、世界にはウクライナだけで790万人の難民(refugees)が発生し、国内の590万人が国内避難民となっている。ほぼ全ての大陸で悲劇が起こり、大規模な移民の流れ(アメリカ南部国境での危機継続も含む)を助長し続けている。バイデン政権はこれに対する具体的な答えを持っていない。救援物資(relief aid)を送ることしかない。他の誰も答えを持っていない。この問題が来年大幅に減少すると期待するのは、間抜けな楽観主義者だけだろう。この冬、ウクライナの電力網が完全に破壊されれば、本当に恐ろしい結果になる可能性がある。

(6)優先順位を決めそれを守る。2021年、私はバイデンの最後の課題は「最新の危機に巻き込まれないようにすること」だと提案した。その点では、既に手一杯だったという理由だけで、政権はまずまずの成果を上げたといえる。アメリカは今、同時に2つの大国に決定的な敗北をもたらそうとしていることを忘れてはならない。ウクライナがロシアに軍事的敗北を与えるのを助け、中国には先端技術の輸出規制、アメリカ半導体産業への補助金、台湾への軍事支援の強化、そしてアメリカの同盟諸国のほとんどをこれらの取り組みの背後に配置するキャンペーンを通じて、経済的に大きな敗北を与えようと試みている。これらはかなり野心的な目標であり、追加的な聖戦の余地はほとんどない。バイデンはまた、ロシアのウクライナ侵攻の後に、同様の重大な問題が発生しなかったという点で、幸運でもあった。野球選手の故レフティ・ゴメスの「善良であるよりも幸運である方がいい」という言葉には含蓄がある。バイデンの幸運が続くことを望むのみだ。

(7)国内での戦争。国内の機能不全(domestic dysfunction )について私が最も恐れていたことは現実化しなかった。2021年後半、インフレは上昇し、トランプは再出馬の準備を始め、ほぼ全員が中間選挙での「赤い波(red wave)」を予想し、連邦最高裁は、ほとんどのアメリカ人の意見と大きく対立する保守派に取り込まれ、中間選挙が選挙違反や選挙後の悪ふざけで汚されるのではないかという懸念が広がっていた。このような懸念は、私1人だけのものではなかった。私は、この腐敗を解決するには、大幅な憲法改正しかないとまで言い切った。

ここで、私の考えが間違っていることが証明されたことを喜んでいる。中間選挙は深刻な問題なく終了した。トランプの新しい選挙運動はまだ燃えておらず、法的問題は山積みで、彼が支援した候補者の多くは大敗した。共和党は連邦下院で過半数を僅差で獲得したが、連邦上院では過半数を獲得できず、連邦下院での民主党との僅差の議席差と党内の分裂により、大きな害を与える(あるいは大きな利益をもたらす)には限界があるかもしれない。インフレは徐々に抑制され、アメリカ経済は他の先進資本主義諸国を凌駕している。ジョージ・サントスやその他誰であろうとも、選挙やその他の政治的なふざけ合いが思い出させるように、アメリカはまだ危機を脱したとは言えない。しかし、焦土と化した(scorched-earth)政治を終わらせ、建設的で現実に基づいた党派間競争に戻ることを切望する人々は、昨年起こったことに勇気付けられるはずである。それでも心強くはあるが、満足はしていない。

そして、いつもになく明るい雰囲気の中で、私は皆さんにとって幸せな年となることを願っている。理想を言えば、より平和で豊かな年でありたいものだ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

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バイデン:アメリカはサイバー安全保障を改善するために「緊急的な」ステップを進んでいる(Biden: US taking ‘urgent’ steps to improve cybersecurity

マギー・ミラー筆

2021年2月4日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/cybersecurity/537436-biden-says-administration-launching-urgent-initiative-to-improve-nations/

ジョー・バイデン大統領は木曜日、ロシアと中国による悪意のある取り組みへの懸念を指摘し、政権が国家のサイバー安全保障(cybersecurity)を向上させるための「緊急イニシアチヴ(urgent initiative)」を開始すると述べた。

バイデン大統領は、国務省で行われた国家安全保障に関する演説の中で、「私たちは政府内でサイバー問題の地位を高めてきた。私たちは、サイバースペースにおける私たちの能力(capability)、即応性(readiness)、回復力(resilience)を向上させるための緊急イニシアチヴを立ち上げている」と述べた。

バイデン大統領は、サイバーと新興テクノロジー担当の国家安全保障問題担当大統領次席補佐官の新しいポジションの創設を含む、政権による進歩を指摘した。先月、国家安全保障局のサイバー安全保障局長を務めていたアン・ノイバーガーが同職に任命された。

バイデン大統領は、自身の政権が具体的に講じる他の措置について詳しく説明せず、ホワイトハウスは本誌が更なる詳細についてコメントを求めたが答えなかった。

バイデン大統領はこれまでにも、特に最近発覚したロシアによる IT グループ「ソーラーウィンズ(SolarWinds)」社への侵入事件に関するコメントを通じて、サイバー攻撃から国を守ることへの関与を強調しており、連邦政府の大部分に1年以上にわたって危険が及んでいたことを明らかにした。

バイデンは12月の講演で、このハッキングが「国家安全保障に対する重大な脅威(grave threat to national security)」であると述べ、更に同月下旬には、新たなリスクに対処するために国の防衛力を近代化(modernization of the nation’s defenses)することを要求した。

バイデン大統領はまた、1兆9000億ドルの新型コロナウイルス復興提案の一部として、100億ドル以上のサイバー安全保障と情報テクノロジーの資金を盛り込み、提案では国家のサイバー安全保障を「危機(crisis)」と形容している。

バイデン大統領は木曜日午後の演説で、ロシアと中国からの挑戦など、国際的なサイバー安全保障の懸念についても言及した。

バイデン大統領は特にロシアを取り上げ、就任後の最初の電話会談で、ロシアのウラジミール・プーティン大統領に対し、様々な干渉行為に対してバイデン政権が反撃することを強調した。

バイデンは、「私はプーティン大統領に、前任者とは全く異なる方法で、アメリカが攻撃的な行動、選挙への干渉、サイバー攻撃、市民の毒殺に直面する時代は終わったと明言した。私たちは、ロシアに対するコストを引き上げ、私たちの重要な利益と国民を守ることに躊躇しない」と述べた。

バイデン大統領はまた、自身の政権がロシアと中国の両政府と協力できることを望む一方で、彼が「我が国にとっての最も深刻な競争相手(our most serious competitor)」と形容した中国の責任も追及すると指摘した。

バイデンは「私たちは中国の経済的濫用に立ち向かい、人権、知的財産(intellectual property)、グローバルガバナンスに対する中国の攻撃を押し返すために、その攻撃的で強制的な行動に対抗するが、アメリカの利益になるときは北京と協力する用意がある」と述べた。

バイデン大統領のロシアに関する発言は、その日のうちに国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンがホワイトハウスで記者団に語った、選挙妨害やソーラーウィンズ事件のような大規模なハッキングなど、「行われた様々な悪質行為についてロシアの責任を問うための措置をとる」という発言に呼応したものだ。

サリヴァンは「そして、そのようなコストと結果を課すことが、今後のロシアの行動に影響を及ぼすと信じている。もちろん、そうではない。もちろんそうではない。しかし、ロシアの侵略や悪行に対して、より強固で効果的な一線を画すことができるようになると私たちは信じているのか? そのように信じている」と述べた。

ロシアはアメリカの各情報機関からも厳しく監視されており、バイデンは先月、選挙干渉やソーラーウィンズ社へのハッキングの影響などの問題について、ロシアの悪意ある取り組みを分析するよう命じた。

国土安全保障省(DHS)の元長官のグループは木曜日、バイデン大統領に対し、ロシアに対して強い姿勢を取るよう求め、ロシアがサイバースペースにおいて脅威を与え続けていることを強調した。

ジョージ・W・ブッシュ大統領に仕えたマイケル・チェルトフ前国土安全保障長官は、カリフォルニア大学バークレー校が主催したインターネット上のイヴェントで、ロシアに言及し、「次期バイデン政権の大きな問題の1つは、私たちは暴力に苦しむことなく、私たちの統一やシステムを破壊する努力に力強く対応するという非常に明確なメッセージを送ることであろう」と述べた。

バラク・オバマ政権時代の国土安全保障長官ジェイ・ジョンソンは、アメリカが過去1年間選挙の保護に固執していた一方で、ロシアのハッカーたちは、ソーラーウィンズ社へのハッキングを通じて別の方法で連邦政府を攻撃したと指摘し、外国の敵が干渉しうる様々な方法に焦点を当てる必要があることを強調した。

ジョンソンは「私が就任時に国土安全保障省の職員に伝えた考えは、前回の攻撃を想定するのではなく、次の攻撃を想定し、敵の次の動きを予測することだった」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 「ウクライナ戦争はアメリカ(とNATO加盟の西側諸国)の火遊びが引き起こした」「NATOの東側への拡大とウクライナの実質的なメンバー入りと軍備増強がロシアを刺激して戦争にまで発展した」というこれらの主張が説得力を持つようになっている。

 西側諸国がウクライナをおもちゃにして、対ロシア強硬姿勢の最前線としたことで、ウクライナの運命は決した。ウクライナは早晩ロシアと戦わされる運命になっていた。そのために傀儡として、ヴォロディミール・ゼレンスキーが大統領になり、アメリカや西側諸国から中途半端ではあるが、大規模な軍事支援が行われていた。「ロシアがどこで怒り出すか、一つ試してみようじゃないか」という西側諸国の指導者たちの火遊びの結果が、ウクライナ戦争という大火事である。

 アメリカは大火事になっても、自分で何とかしようとはしない。「ありゃ困ったな」という感じである。アメリカ軍を派遣してロシア軍をウクライナから追い出すことはしないし、重要な、ロシア軍を圧倒できるような武器を渡すこともしない。戦闘機を渡さないというのは、ウクライナ軍が制空権を取ることができないということになって、結果として有利に戦いを進めることができないということになる。

 アメリカはロシアが核兵器を使ってウクライナ国内を攻撃してくることを恐れている。第三次世界大戦が起きてしまうことを恐れている。そして、アメリカを「戦争当事国」に認定して核ミサイルでアメリカ本土を攻撃してくることを何よりも恐れている。「アメリカ国民の生命と財産を守る方がウクライナ防衛よりも大事だ」ということになる。

 ウクライナの運命は日本の運命である。「ウクライナの次は台湾だ」というスローガンは間違っている。「ウクライナの次は日本だ」ということの方がより正確だと私は考える。「ウクライナがロシアにぶつけられるように仕向けられた結果としてのウクライナ戦争」を敷衍するならば「日本が中国に仕向けられた結果としての日中戦争」ということになる。日本はウクライナのようになってはいけない。最近の自民党公明党連立政権(+与党補完勢力の日本維新の会)は、先制攻撃の容認と軍事予算の倍増を進めている。これは日中戦争の下準備ということになる。日本国民は騙されることなく、戦争に徹頭徹尾反対しなければならない。
 下記論稿に出てくるジョー・バイデン政権の外交政策分野のキーパーソンたちについては拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』を読んでいただくと理解が深まると思う。是非手に取って読んで欲しい。

(貼り付けはじめ)

バイデンのウクライナに関するソフトな泣き所(Biden’s Soft Underbelly on Ukraine

-バイデン政権は、プーティンを刺激して第三次世界大戦の危険を冒すことを恐れて、ウクライナに対してあまり手を貸さない口実になっている。

The Biden administration’s fear of provoking Putin and risking World War III has become an excuse to do less for Ukraine.

ダニエル・プレトカ筆

2022年10月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/10/12/biden-ukraine-support-putin-armageddon/

2022年の夏の終わり、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は、ジョー・バイデン政権が対ロシアでウクライナ支援を熱心に進めることを改めて宣言した。しかし、「大統領が提供する用意がないと言っている能力もある」とも断言した。その1つが射程300キロの長距離ミサイルだ。「アメリカの重要な目標はウクライナを支援し防衛することだが、もう1つの重要な目標は、第三次世界大戦への道を歩むような状況に陥らないようにすることだ」とサリヴァンは述べた。

数週間後、バイデン政権の「複数の高官」は、ロシアのウラジミール・プーティン大統領の盟友アレクサンドル・ドゥーギンの娘の殺人事件の調査結果を漏洩することに成功した。ダリア・ドゥギナは自動車爆弾で死亡した。ウクライナ政府関係者の一部は、この攻撃はキエフの「ナチス」に対する敵意をかき立てるためのクレムリン側の偽旗作戦(false flag operation)の可能性を示唆した。しかし、「複数のアメリカ政府高官」は、「攻撃はウクライナ人によるものだ」と主張し、「アメリカはこの攻撃に関与していない」と言い添えた。

この2つの出来事は、バイデン政権における厄介な底流(undercurrent)を裏付けている。ウクライナを完全に支援することへの躊躇(hesitation)、重要な兵器の遅配、そしてアメリカ大統領とそのスタッフが繰り返し第三次世界大戦の脅威と表現してきたものに対するほとんど病的な恐怖心などである。このような躊躇は、ウクライナにとってより多くの死者と勝利への道のりの遅れを意味すると米連邦議会の国家安全保障担当者は私に語っている。更に悪いことには、紛争が長引き、コストが上昇し続けた場合、ホワイトハウスはウクライナにモスクワとの交渉による和平を求め、例えば、キエフがクリミアを奪還する前に、あるいはもっと早く戦争を終わらせるように圧力をかけ始めるという深刻なリスクがあることを示唆している。

今年(2022年)の初めの頃はもっと希望に満ちていた。2月のロシア侵攻の数週間前、バイデン政権は、戦争を引き起こしたとしてウクライナを非難するロシアの計画、動き、陰謀に関する情報を狡猾に機密扱いで解除した。この心理作戦(psychological operations)は、冷戦時代の勢いを彷彿とさせる見事な振り付けで、バイデン政権の国家安全保障ティームは、これから起こるであろう事態に備え、本番に臨んでいることを約束するものであった。しかし、奇妙なことに、実際のところ、そうではなかった。

問題は侵攻発生前から明らかだった。2021年のウクライナとの国境でのロシアの軍備増強(最終的に2022年の侵攻に使われる装備の準備)する一方で、バイデン政権は6000万ドルのアメリカ軍の軍備縮小(ミリタリー・ドローダウンズ、military drawdowns)を取り止めた。ドローダウンズはアメリカ政府が既存の軍備貯蔵から軍備品を輸出することを認めるものだ。サリヴァンは、取り止めを否定した後、「ロシアがウクライナに更に侵攻する場合」には、ドローダウンズを許可すると認めた。そして、2021年8月にようやく承認された。2021年9月のウクライナ大統領ヴォロディミール・ゼレンスキーのワシントン訪問のための決定であったと考えられる。

秋までに、バイデン政権は以前のように、ロシアを刺激するとして、スティンガー・ミサイルの納入を阻止した。2021年12月には、2億ドルの供与が阻止された。12月末には、バルト諸国がウクライナにジャベリンとスティンガーを提供する承認を留保した。

2022年1月までに、バイデン政権は、政権内部のある方面(国防総省と聞いた)から出た「ロシアを怒らせるな(don’t anger Russia)」というシナリオを完全に信じ込み、東ヨーロッパでの戦力削減を考えていた。翌2月には戦争が始まり、ウクライナへの情報共有や軍事支援は、ホワイトハウスの弁護士たちが、アメリカを戦争の当事者(party to the war)にしかねないと主張し、議論されることになった。

2022年3月、バイデンはポーランドからウクライナへのMiG-29戦闘機の移送を阻止した(ウクライナには現在でも十分な航空戦力がない)。2022年6月、数ヶ月の遅れの後、バイデン政権は画期的な高機動砲ロケットシステム(ハイマース、HIMARS)を納入したが、米国防総省がアメリカの備蓄をさらに枯渇させることに難色を示したため、わずか16台しか納入しなかった。先週、米国防総省は2年以内にさらに18基のハイマースを納入すると発表した。

ホワイトハウスがロシアとの心理戦(mind games)で見せた戦略的技術(strategic skills)とはほど遠く、ウクライナの軍事防衛の驚くべきサクセスストーリーの各章は、もめごとに満ちている。ホワイトハウスはなぜか先のことを考えず、アメリカの在庫や予算が要求するよりもゆっくりと軍備を縮小し(連邦上下両院の軍事委員会の民主・共和両党の怒りを買った)、20億ドル以上の縮小権限を失効するまで放置している。

実際のところ、ウクライナ軍が米国防総省の期待(決して高くない)を超えるような行動を取る場合、ホワイトハウスは次の段階に進むために説得(persuasion)と口うるさい対応を要求してきた。一歩前進する度に、今度はやりすぎだと手をこまねいているうちに、慎重さ(prudence)が麻痺してしまったのだ。

バイデン政権の擁護者たちは、NATO諸国の中でウクライナに支援を約束しているのはアメリカだけであり、ドイツのオラフ・ショルツ首相の不安定な関与と比較するとバイデン政権は積極的な軍事主義者(positively militant)に見えると主張している。しかし、常に臆病なヨーロッパ諸国とアメリカを並べることは問題ではない。むしろ、ウクライナのためにアメリカができることと、バイデン政権が実際に行っていることを比較する時にこそ、疑問が生じるのである。

バイデン政権の国家安全保障ティームによる答えは、第三次世界大戦(World War III)の見通し、あるいはバイデン大統領が最近民主党の資金調達パーティーで「ハルマゲドン(armageddon)」と表現したものである。ホワイトハウスと国防総省の高官たちは、核兵器のシナリオが「あり得る(probable)」とは考えていないことを強調している。それでも、マスコミはサリヴァンやコリン・カール米国防次官など政府高官たちの言葉を引用して、エスカレーションを懸念する声で一杯だ。しかし、なぜなのか? 世界大戦は本当に起こるのだろうか? プーティンの核の脅威(nuclear threats)は現実的なものか? それとも、「ハルマゲドン」や「第三次世界大戦」は、ホワイトハウスがウクライナの全面的な防衛を避けるために抱えている詭弁を弄する論客たち(straw men)なのだろうか?

アメリカ大統領の最重要の仕事は、アメリカ国民の安全と安心(safety and security)を守ることである。バイデンは、最悪のシナリオを考え、それが実現してしまうことを避けることが正しい。プーティンの脅しに耳を傾け、それを真剣に扱うのは正しい。しかし、ロシア軍がフルダ・ギャップ(Fulda Gap、訳者註:ヘッセンとフランクフルトの間にある地域)から押し寄せるどころか、実質的にロシア軍よりも小規模なウクライナ軍を打ち負かすことができないのはもはや明白になっている。

プーティンは、潜水艦に搭載したミサイルを使ってウクライナに戦術核攻撃を行う可能性があるだろうか? その可能性はあるだろう。しかし、アメリカや他のNATOの同盟諸国に対してはどうだろうか? なぜその可能性はないと言えるだろうか? それは非合理的なだけでなく、非常識な破壊行為であるからだ。最も平和主義的な指導者でさえもロシアに対応して攻撃せざるを得ないことになるだろう。

しかしながら、このような最悪の事態を想定した夢物語(worst-case fever dreams)は、終末(apocalypse)を明確に予見しているというよりも、バイデン政権がクレムリンを「刺激(provoking)」することを恐れ、ウクライナに対してあまり手を出さない理由の1つになっているように思われることが多くなってきた。そして、この仮定(supposition)の真実性を疑うに足る十分な歴史がある。

バイデンの現在の国家安全保障ティームのメンバーの多くは、バラク・オバマ政権でその地位を確立した。サリヴァンは当時のバイデン副大統領の国家安全保障問題担当副大統領補佐官を務めた。アヴリル・ヘインズ国家情報長官は、オバマ大統領の下で国家安全保障問題担当大統領次席補佐官とCIA副長官を務めた。現国務長官のアントニー・ブリンケンは国務副長官を務めた。バイデン副大統領(当時)の補佐官を務めたサリヴァンの後を継いだのは、現在の国防次官(政策担当)であり、現在ではウクライナに関する重要な意思決定者であるコリン・カールである。ウクライナとロシアに関してオバマの安全保障ティームを支配していたのと同じ考え方が、現在バイデン政権を支配しているのは何ら不思議ではない。

クリミア半島のロシア併合をもたらし、2022年の戦争を予感させることになった、2014年のロシアのウクライナ侵攻の後、オバマ政権は、キエフと米連邦議会の両方からの嘆願をはねつけ、ウクライナに意味のある効果を持つ軍事支援をすることを拒否し続けるだけのことだった。2014年3月、アメリカ軍援助の最初の支援物資は、30万食の調理済み食品だった。ホワイトハウスは、「ウクライナ軍の力がロシア軍と同等まで引き上げられるシナリオはないだろう」として、ウクライナにとって「武力行使は望ましい選択肢ではない(use of force is not a preferred option)」と断言した。その後、2014年9月に暗視スコープと毛布が支援物資として提供された。

トランプ政権は、オバマ大統領のウクライナ向け重要装備の禁止を撤回したが、210基のジャベリンミサイルと37基のランチャーは、モスクワに対する「戦略的抑止力(strategic deterrent)」としてのみ使用し、箱に入れておくことが要求された。ドナルド・トランプ大統領も、バイデン一家に関する情報をゼレンスキーから提供されることを期待しながら、2ヶ月近く援助を遅らせた。

トランプ政権の逆転劇の余波を受けた後でさえも、発足したばかりのバイデン政権はウクライナへの子押下的な軍事援助を強化することに慎重であった。2022年2月の『ジ・アトランティック(The Atlantic)』への寄稿で、アレクサンダー・ヴィンドマン退役米陸軍中佐(悪名高いゼレンスキー・コールの件でトランプ時代のホワイトハウスを劇的に辞めた)は、バイデンを「プーティンにフリーハンドを与えた」と非難し、「パトリオット対空ミサイルやハープーン対艦ミサイルといった高度な兵器システムのウクライナへの提供を拒否したが、それはウクライナ軍がそれらを扱うほど高度ではないと判断したためだ」と述べている。そして、それは戦争が始まる前のことである。

共和党が連邦下院(そしておそらく連邦上院も)で過半数を獲得する可能性があるため、更に複雑な事態が予想される。共和党の幹部の多くがホワイトハウスにウクライナへの武器供与のスピードと質を上げるよう求めている一方で、中間選挙後に更に増えるであろう少数派が、ウクライナのために使われる銃弾や予算に反対する声を上げることになるであろう。その少数派の中に、更に自制を主張する政権側のカウンターパートがいるのだろうか?

ウクライナ政策の方向性は、週ごと、月ごとの漸進主義(incrementalism)を除けば不明確である。しかし、バイデンのパターンは明確で、ウクライナへの武器供与のペースと質を上げ下げし、プーティンを怒らせる可能性のあるものを調整し、更に再調整している。そして、ウクライナでの戦術核攻撃に対するバイデンの恐怖(現実か政治ドラマの内容かは別として)が彼の想像力をさらに支配するにつれて、彼は虎を突っつくことについてより一層心配するようになる。

どの時点で、大統領の懸念は、ヘンリー・キッシンジャーのハイパーリアリズムな助言に従って、紛争を凍結し、交渉のテーブルにつくようキエフへの圧力を強めるように指示するだろうか? それは分からない。バイデンはどの時点で、ウクライナに対する戦後復興支援(既に数千億ドルと見積もられている)の見通しを活用し、完全勝利の前に戦争を終わらせるようウクライナに強制するようになるのだろうか? もしかしたら、バイデン大統領はそうしないかもしれない。

しかし、バイデンの国家安全保障ティームの歴史、資金援助と武器売却の証拠、そしてバイデン大統領自身のこれまで以上に困惑したレトリックは、オバマ時代のウクライナ政策の亡霊がますます大きくなり、ウクライナの自由勢力への支援がこれまで以上に制約されることを示唆している。

※ダニエル・プレトカ:アメリカンエンタープライズ研究所名誉上級研究員、ポドキャスト番組「一体全体何が起き居ているのか?(What the Hell is Going On?)」共同司会者。ツイッターアカウント:@dpletka

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 古村治彦です。

 「アメリカは中国とロシアの間を引き離すように中国に働きかけるべきだ」という声が上がっている。現在、ウクライナ戦争を戦っているロシアに対して、中国は表立って支援を行ってはいない。しかし、中露両国間には正式な条約を結んでの同盟関係、相互防衛関係は存在しないが、中露間の関係は緊密になっている。中国の一帯一路計画や上海協力機構(SCO)にロシアは参加し、ユーラシア同盟としての関係を築いている。ロシアはヨーロッパ志向(思考)を捨て、ユーラシア国家として生きていくという道を選択した。

中国はウクライナとの関係も良好であり、中国初の空母「遼寧」は、ウクライナの空母「ワリヤーグ」(1988年竣工)を購入し、改造したものだ。正確に言えば、ソ連時代に建造した空母であるが、造船所がウクライナにあり、ソ連崩壊の混乱とウクライナの独立があり、造船所がウクライナに国有化されるなどしたため、ロシアとウクライナの間での交渉の結果として海外に売却するということになっていた。ウクライナは所有権を持っていただけのことで、建造したのは旧ソ連ということになる。

 中国とロシアの間は離れがたく見えるが、それでも相違点は存在する。中国は現在の国際秩序の中で、自由貿易体制の利点を利用して高度経済成長を達成している。国際秩序の急速な変更は望んでいない。短期的、中期的には現状維持を望んでいる。ロシアは冷戦時代にアメリカと世界を二分して渡り合った。その前にはロシア帝国としてヨーロッパで覇を競った。ソ連崩壊でロシアはプライドを傷つけられた。ロシア国民はプーティン大統領が国民生活を改善し、ロシア帝国を復活させてくれるということで支持している。ロシアは現状に対する挑戦国となっている。ここが中露両国間の相違点だ。

 アメリカは中国を潜在的な脅威として捉えていて、強硬な対中姿勢を取っている。そうなれば、中国としてはアメリカとバランスを取る必要が出てくるので、ロシアの接近を受け入れるということになる。

ドナルド・トランプ大統領時代に「ヤルタ2.0」という風刺写真が出たことがある。1945年のソ連のヤルタでの米ソ英3カ国の首脳会談(フランクリン・D・ルーズヴェルト米大統領、ヨシフ・スターリンソ連共産党書記長、ウィンストン・チャーチル英首相)で戦後世界の管理体制が決められた。

このことを受けて、ドナルド・トランプ米大統領、習近平中国国家主席、ウラジミール・プーティン露大統領の米中露三帝が世界を管理するという意図が風刺写真に込められている。米中露がうまく折り合いをつけてやっていれば、世界は平和だという意図もその写真には込められている。現在は、冷戦初期のような段階になっている。アメリカが中露に対して強硬な姿勢を取り、それぞれとの戦争の可能性も出てきて、世界は第三次世界大戦に近づいている。
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 中国がソ連と中国を離間させて、世界政治を動かしたのはリチャード・ニクソン大統領、ヘンリー・キッシンジャーの国務長官時代のことだ。この時代のことを懐かしみ、「アメリカは中国とロシアの間を引き離すべきだ」という主張が出ている。

 しかし、1970年代と現在では状況が大きく異なっている。アメリカの国力が衰退し、中国とソ連は国力を増大させている。中露は共にアメリカの衰退を待って、国際秩序の変更を行う(その規模やスピードには両国間で相違はあるが)、より露骨に言えば、西洋近代500年の支配を終わらせるという決意をしている。そして、それを西洋以外の新興の国々(the Rest)が支持している。中露は「ザ・レスト」の旗頭になっている。ここでアメリカに近づくことはもうできない。

 ジョー・バイデン政権ではなく、ドナルド・トランプ政権が続いていたら現在の状況はどうなっていただろうかということを考えることがある。そんなことを考えても仕方がない、詮無き事ではあるが、現在のような世界的に厳しい状況になっていなかったのではないかと考えてしまう。2024年にジョー・バイデンが米大統領に再選されることが世界に幸せをもたらすのかということも考えてしまうと、先行きはなかなか暗いと言うしかなくなる。

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ワシントンは中国をロシアに対立させる機会を失いつつある(Washington Is Missing a Chance to Turn China Against Russia

-稀な状況で危機が重なったことで北京が軌道修正する可能性が出てきている。

ロバート・A・マニング、ユン・サン筆

2023年1月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/01/19/us-china-russia-ukraine-allies-war/?tpcc=recirc_latest062921

直感に反するかもしれないが、ロシアのウクライナ戦争、経済の低迷、反ゼロ新型コロナウイルスの反動、中国の習近平国家主席が一連の政策を撤回したこと、これらの出来事が中国に与える政治・経済的コストによって、ウクライナに関する米中協力のスペースを開く可能性がある。また、ウクライナ戦争が台湾への世界的な支持を集めていることも、北京にとって重荷になる可能性がある。

ウクライナ戦争が始まって以来、中国はロシアを言葉の上では支援し、NATOの行動を非難してきたが、モスクワを実質的に支援することを約束することは避けてきた。中露同盟は、西側諸国でよく見られるように、修正主義的な2つの独裁国家の間の単純なイデオロギー的共感ではない。むしろ、現実的でやや取引的な関係であり、アメリカは少なくとも特定の問題に関して、両者を引き離す機会を逸している可能性がある。

第一に、昨年9月に旧ソ連のカザフスタンを訪問した際、習近平は「断固として(resolutely)」カザフスタンの主権を支持すると約束し、モスクワをけん制(a snub to)した。そして、同じ9月の上海協力機構(Shanghai Cooperation OrganizationSCO)の会議で、ロシアのウラジミール・プーティン大統領は、ウクライナ戦争をめぐる中国の「疑問と懸念(questions and concerns)」を前代未聞の形で公に認めた。2022年10月初旬、中国は国連安保理と総会の両方で、ロシアのドンバス併合を非難する投票に反対票を投じず、棄権(abstain)した。北京はまた、インドとともにウクライナ戦争の終結を訴えた。

これは、傷ついた西側諸国との傷ついた外交関係を修復しようとする試みと並行して行われた。ヨーロッパ連合(EU)当局者によれば、北京はNATOを非難する発言を止め、中国政府当局者たちが、中国はロシアの核使用を容認できないと考えていると語ったという。

中国は、「ウクライナの領土はどの範囲になるか」についてのロシアの解釈を支持する余地を十分に残しつつも、一貫してウクライナの「主権と領土保全(sovereignty and territorial integrity)」への支持を繰り返してきた。このような矛盾した、やりにくい努力を続けている。中国は侵略を正当化しているロシアを含む「当事者全て(all parties)」に自制(restraint)を呼びかけ、ウクライナの現在の状況に失望を表明してきた。それでも、 2022年2月 24日以前からウクライナとの強固な経済的および軍事的関係にもかかわらず、中国のメディアは親ロシアおよび反 NATO の偽情報を絶え間なく流しつつ、中国はウクライナに対してはわずか300万ドル程度の人道援助(humanitarian aid)しか提供していない。

ロシアと中国は、国際秩序が自由主義的民主政治体制家によって不当に支配されているという見解とアメリカの優位性(primacy of the United States)を共有することで結びついた。中露両国は自由主義的な国際秩序に対する地政学的な脅威(geopolitical threats)として認識されており、それは当然、欧米諸国、特にアメリカに対する中露両国が持つ脅威認識と同様だ。こうした地政学的な懸念の共有は、2014年、クリミア危機でロシアが孤立し、バラク・オバマ政権のアジアへの軸足転換(pivot to Asia)で、中国の周辺地域の安全保障環境に対する不安が強まりそして加速した。加えて、習近平の冷戦時代からのロシアへの親近感、絶対的政治指導者(strongman)としてのプーティンへの憧れが、中露の緊密な連携に対するトップリーダーのお墨付きをもう1つ与えることになった。

しかし、中国も他の国と同様、自国の利益を最優先しており、その利益はウクライナをめぐるモスクワの利益とますます乖離している。中国は、農業貿易、軍事技術協力、「一帯一路(Belt and Road)」社会資本(インフラ)整備プロジェクトなどで強固な関係を築いてきたロシアがウクライナに侵攻したことで、かなり困惑している。

プーティンがウクライナに侵攻した際、ウクライナには6000人以上の中国人が滞在していた。北京にはほとんど何の事前通報もなかったために、中国人の避難作戦を開始するために中国政府は東奔西走奔走させられることになった。中国政府は非公式に、避難民の一部が殺害されたことを認めている。このことは、プーティンが習近平に対して、戦争について知らされていなかったという中国当局者の主張を裏打ちしており、何が起こるかについてロシアは中国に対して正直ではなかったことを示唆している。プーティンは中国を、ロシアとの「無制限の(no-limits)」協力と、主権と領土保全に関する基本的な外交政策原則を選択的に、自分に都合が良い形で適用するプーティンとの間で、無駄な努力をする立場に追い込んだ。

プーティンのウクライナ戦争は、中国経済が困難な時期に、中国の経済的利益を直撃することになった。ウクライナ戦争による世界経済の混乱は、中国にとって最大の海外市場のいくつかに打撃を与えている。中国は問題を抱えた発展途上諸国への最大の資金の貸し出し者であるため、ウクライナ戦争と欧米諸国の制裁の影響でエネルギー、食糧、肥料の価格が上昇し、中国の融資返済の努力を複雑にしており、中国の巨額の債務問題を悪化させている。

ウクライナは北京が嫌うアメリカとの同盟関係を強化している。そして、次は自分たちだと恐れる旧ソ連諸国とロシアの関係を弱め、これらの国々がワシントンとの対話に関心を高めるように仕向けている。ウクライナ戦争の影響は、中国の大国としての外交政策の信頼性に疑問を投げかけている。プーティンがアメリカ主導の秩序を害する混乱を自らの利益と見なす破壊者(disrupter)であるのに対し、北京は中国の利益に有利なように世界の制度を再編成することに関心を持っている。この点は、米国の政策に織り込まれるべき、両国の間の重要な違いである。

特に、台湾問題に影響を与えている。岸田首相が「東アジアは明日のウクライナになるかもしれない(East Asia could be the Ukraine of tomorrow)」と言ったように、プーティンの戦争に対する西側諸国の反応と台湾へのアナロジー(類推)は、北京が今後の台北に対する行動を考える上で新たな要素を加えたことはほぼ間違いない。

ロシア経済への制裁が強まる中、中国が半導体などの重要なテクノロジーを提供するかどうかが1つの指標になるだろう。問題を抱えるジュニアパートナーとの協力関係を制限しているのは、中国がロシアと距離を置いていることを示すというよりも、巻き込まれての副次的な制裁を恐れてのことなのかもしれない。いずれにせよ、アメリカは、ウクライナに関する米中協力を可能にするのに十分な新しい機会が開かれるかもしれないという命題を検証することで失うものはほとんどない。

もしアメリカが、ウクライナに関するロシアと中国の見解の間の政治的空間が、米中間の慎重な協力のための新たな機会を開くほど広がっている可能性を見分けるのが遅くなっているが、それは初めてのこととは言えない。冷戦時代の反共産主義の影響力は、中ソが国境で短時間ながら激しい対立を繰り広げた時でさえ、アメリカが中ソの緊張を利用するのを複雑化し遅らせた。中ソの緊張は1950年代半ばにはアメリカの情報アナリストにとっては明白であったが、当時のリチャード・ニクソン米大統領とヘンリー・キッシンジャー国家安全保障問題大統領補佐官が中国との国交回復を利用し、この時代最大の戦略転換の1つを生み出したのは1971年になってからのことであった。

米国の近視眼(myopia)と確証バイアス(confirmation bias)は、中露両国を互いに接近させ、中国の対ウクライナ政策を過度に単純化することになる。中露同盟の宣言を額面通りに受け取ることで、アメリカは中露両国のそれぞれの国益とアプローチにおける重要な相違点を捉え損ねている。そこをうまく捉えればアメリカ外交のためのスペースを開く可能性が出てくる。

ウクライナ戦争初頭から、ワシントンは中国をロシアの共犯者として糾弾する「私は糾弾する(J'accuse[訳者註:フランスの作家エミール・ゾラがドレフェス事件で出した著作の書名]」を延々と繰り返してきた。プーティンの侵攻計画を中国が事前に知っていたというリークが何度も報道機関に流れたのは、やってもいない犯罪の責任を中国に負わせることが目的だった。プーティンが白紙委任(blank check)したロシアとの「無制限(no-limits)」の協力を進めた習近平は、確かに軽率であり賢明ではなかったと考えられる。しかし、北京の不可能に近いバランス行動、一種の親ロシア的な中立努力は、戦争への積極的参加とは決定的に異なる。

中国がロシアと経済的な関わりを継続していることは問題だが、インドやトルコ、そして南半球の多くの国々も同様である。北京はロシアへの石油・ガスプロジェクトやアジアインフラ投資銀行への融資を中止している。2022年7月までに、複数のアメリカ政府高官は、中国は、ロシアから制裁を科すという脅しを受けながらも、ロシアが制裁を逃れるのを助けず、モスクワの戦争行為に軍事支援をしなかったことを公然と認めている。

北京がロシアを非難したり、制裁を科したりすることを拒否していることは、もちろん道徳的に問題であり、政治的に役に立たないし、一貫して親ロシア的な国内メッセージも同様である。しかし、これは道徳的な問題であると同時に、実際的な問題でもある。

ワシントンは、中露同盟が確立され、揺るぎないものであるという前提で動いているが、現実には、より限定的な戦略的パートナーシップである。両国間には相互防衛に関する第5条のような協定は存在しない。

アメリカが公然と非難を繰り返したところで何の解決にもならない。アメリカとの戦略的競争が中国の対外関係における最も重要なテーマであり続ける限り、特に台湾をめぐる緊張が高まる中で、北京はアメリカに対抗するために必要なパートナーとしてモスクワを見るだろう。しかし、戦争が長引くにつれ、中国の風評被害と経済的コストは増大し、衰退しつつある戦略的資産との悪い取引と見なされつつあることから、いくつかの問題で北京を遠ざけることができるかもしれない。

アメリカは、中露両国の違いを緩和し、橋渡しするのではなく、中露両国間の断層(Sino-Russian fault lines)を探ろうとするはずである。2022年7月にアントニー・ブリンケン米国務長官が中国側に行ったような道徳的な嘆願は、変化をもたらすというよりも、中国のナショナリズムを煽る傾向がある。戦略的競争という文脈の中で、中国との協力や非干渉という戦術的転換(pivot)は、利害が重なったときに移行し、利害に利益をもたらし、おそらくわずかな信頼を再構築することができる。北京の計算を形成するために、ワシントンは単に懲罰的な行動だけでなく、相互の脆弱性(vulnerability)と懸念の分野を指摘する必要がある。

中国が制裁体制外でロシアに経済貢献することを抑止するためのアメリカの警告は聞き入れられそうにない。中国最高指導部序列第3位である栗戦書は、2022年9月にロシアを訪問した際、貿易、インフラ、エネルギーなどに関して、ロシアとの経済協力の強化を約束した。これは昨年(2022年)12月の習近平・プーティン間のズーム会談で更に確認された。北京の見解では、アメリカは中国とロシアとの経済関係、特にエネルギー関連技術やその他の天然資源の領域での協力を永久に阻止することはできない。

ロシアの意思決定に決定的な影響力を持つ数少ない国の1つとして、中国がウクライナ危機の調停(to mediate)を早くから申し出ていることを検証しておく必要がある。中国は紛争の当事者ではないと主張するかもしれないが、紛争を助長してきたのは事実である。大国として、戦争を早期に終結させる責任から逃れることはできないことを明確にする必要がある。

ウクライナに関する米中対話の入口として考えられるのは、プーティンの核兵器使用の公然たる脅威と、77年間の歴史を持つ核に関するタブーを破ることの結果に対する相互懸念である。ジョー・バイデン米大統領は「ハルマゲドン(Armageddon)」の脅威を口にした。中国は「先制不使用(no first use)」を明言しており、ロシアの核兵器使用は北京を自衛不可能な状態に追い込むことになる。また、ウクライナでの核兵器使用が北朝鮮に対する制限を低くし、北東アジアでの核拡散に拍車をかけるという懸念が共有されているので、予防手段(preemptive measures)の議論が急がれているのであろう。

また、戦争終結の方法と手段、更にはウクライナの経済再建の将来についても、戦争の進む方向を見据えて考えなければならない。アメリカ、ヨーロッパ連合(EU)、日本、世界銀行、国際通貨基金、ヨーロッパ復興開発銀行が協調して経済資源を動員することは、政治的困難と資源の枯渇を考えると非常に困難であろう。世界有数の貸し手である中国に、その議論に加わる機会や努力の調整の機会が与えられなければ、中国独自の復興努力が欧米諸国の努力を複雑にしたり妨害したりすることになりかねない。協調的でグローバルなキャンペーンにおいて、中国が公正な役割を果たすための対話が模索されるべきだろう。

問題は、ウクライナに関して利害が一致する可能性のある分野を探るのに十分な政治的空間を開くために、いかにして米中間の相互不満(mutual grievances)を中断するか、あるいは少なくとも区分けする(compartmentalize)かである。アメリカは道徳的なレトリックを抑えて、まずは北京との静かなバックチャンネル・アプローチで関心を探るのが賢明であろう。また、ブリンケンが近く訪中する際には、問題の範囲が限定的かつ現実的であることを強調し、ウクライナのアジェンダを形成するよう努めるべきであろう。

北京がよりソフトなアプローチを示唆しているにもかかわらず、その困難に幻想を抱いてはならない。しかし、ウクライナ情勢がいかに悲惨なものになっているかを考えると、必要は発明の母(necessity may well be the mother of invention)ということになるかもしれない。

そのためには創造的な外交が必要だが、中露間の対立、北京の広範な利益、戦争を終結させ紛争後のウクライナを再建するために北京が果たせる積極的な役割など、冷静な判断も必要となるだろう。このような利害に基づく取引的なアプローチは、自己実現的な予言である北京・モスクワ同盟の強化を回避するのに有効であろう。

※ロバート・A・マニング:スティムソンセンター、同センター・リイマジニング大戦略プログラム名誉上級研究員。ツイッターアカウント:@Rmanning4

※ユン・サン:スティムソンセンター中国プログラム部長。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 「日本はアメリカ様が中国、ロシア、北朝鮮に対抗する際の礎石(cornerstone)でございますので、いかようにもお使いくださいませ」と岸田文雄首相がホワイトハウスにまで伺候して、ジョー・バイデン米大統領に尻尾を振りに行った。属国日本の奴隷頭、アメリカ様にお取次ぎをする現地人の代表が日本国首相である。バイデンにとって日本の岸田文雄首相とウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は共に、対中、対ロシアのための「礎石」と表向きには言うだろうが、本音を言えば「捨石(sacrificed stone)」である。バイデン大統領に「肩を抱かれて」何かを囁かれるのは、属国の奴隷頭にとっては「厚遇」ということになるようだ。

kishidafumiojoebiden511
 volodymyrzelenskyjoebiden511

 「中国の脅威に対抗する」というお題目を唱えながら、日本は軍拡の途を走らされることになった。世界を見てみれば、西側世界(the West)と呼ばれる、西側先進諸国が異口同音に「ロシア・中国・北朝鮮の脅威」を声高に叫ぶようになり、軍拡、軍事費増大の大義名分にしている。日本の動きもその一環でしかない。西側諸国だ、先進諸国だと威張ってみても、その実態はアメリカの属国の集まりで、奴隷たち(各国の国民)の待遇が多少違う程度のことだ。日本が最低ランクの扱われ方をしている。岸田内閣を取り仕切っている木原誠二内閣官房副長官が不良を気取る中学生のように、やさぐれてしまうのは無理のないところだ(あれで咥えタバコでもしていたらもっと良かったが)。

kishidafumiokiharaseijiwhitehouse511

 私たちは日本の現状をまずは正しく理解することだ。「日本は立派な国だ」という考えを捨てて、情勢を見てみることだ(生活レヴェルでそういう考えを持つのはまだ良いけれど)。そして、西側諸国だ、立派だ立派だという掛け声に騙されないこと、惑わされないことだ。「日本がアメリカの手先、先兵となって、中国やロシアとぶつかるように仕向けられて、人命が損なわれ、生活にも大きな悪影響が出るのではないか」という視点を持つことが重要だ。

 同盟関係は相手を利用するためのものだ。最近やけに日本を持ち上げるような言説が見られ、ヨーロッパの国々と軍事関連で関係を深めているなぁと少し勘の鋭い人々なら気づいているだろう。これは危険な兆候である。日本の国益のためには戦争を起こさないこと、戦争に巻き込まれないことが何よりも重要だ。

(貼り付けはじめ)

日本は東京を中国、ロシアに対する安全保障の米国の基軸として売り込む(Japan sells Tokyo as US linchpin of security against China, Russia

ラウラ・ケリー筆

2023年1月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/3812858-japan-sells-tokyo-as-us-linchpin-of-security-against-china-russia/

日本の岸田文雄首相がジョー・バイデン大統領を訪問したのは、東京が東半球の安全保障の基軸(linchpin)であり、中国や北朝鮮の侵略に対する防波堤(bulwark)であることを売り込むためであった。

これは、島国である日本にとって歴史的な大きな変化の一部であり、第二次世界大戦後に自らに定めた平和主義政策(pacifist policy)を後退させ、軍備を拡大することに関与するようになった。

日本はまた、ウクライナ戦争でロシアに対する制裁に加わったが、キエフに決定的な援助は行っていない。

米外交問題評議会アジア太平洋研究部門上級研究員シーラ・スミスは、「日本は、戦後の自国の軍事に関してためらいを持つ(hesitancy about its military)という型から本当に抜け出した」と述べている。

スミスは更に「ある意味で、国家運営の矢の一つとして軍事力の必要性をためらわない新しい日本が世界の舞台に出ているのだ」と語った。

金曜日にホワイトハウスの大統領執務室において、バイデン大統領は、岸田首相のワシントン訪問を日米同盟にとって「非常に重要な瞬間(remarkable moment)」であると述べた。 

バイデン大統領は「これほどまでに日米両国が緊密な関係にあった時期はなかったと思う」と述べた。

バイデンは続けて「はっきりさせておきたい。アメリカは日米同盟に、そしてより重要なことは、日本の防衛に、完全に、徹底的に、完全に関与する」と語った。

岸田首相は金曜日、日米両国は「最近の歴史の中で最も困難で複雑な安全保障環境に直面している」と述べた。

今後5年間で防衛費を倍増させるという日本の言質(commitment)は、ワシントンで広く歓迎され、東京はバイデン政権から具体的な利益を得て歩んでいる。

バイデン政権の複数の高官は、高度な情報収集や監視などの能力向上で日本駐留のアメリカ軍を強化すると述べた。日米両国はまた、宇宙やサイバーセキュリティをカヴァーするために相互防衛(mutual defense)の約束を拡大している。

また、バイデン政権は、東京が飛来するミサイルによる攻撃から自国を守り、北朝鮮や中国などの侵略者に対して攻撃を仕掛けることができるよう、反撃能力(counterstrike capabilities)を開発するという日本の決断を支持している。

日本は、中国の軍拡を東京への脅威と認識し、ロシアのウクライナ侵攻がインド太平洋地域に波及する可能性があると見ている。

日本政府は2022年12月に発表した国家防衛戦略で、「ロシアのウクライナへの侵攻が証明するように、日本もメンバーである国際社会は深刻な課題に直面しており、新たな危機に陥っている」と書いている。

この国家防衛戦略では続けて、「将来、インド太平洋地域、特に東アジア地域で、戦後の安定した国際秩序の基盤を揺るがすような重大な出来事が起こる可能性を排除することはできない」とも付け加えられている。

日本はアメリカとヨーロッパの対ロシア制裁に加わり、キエフに人道的・防衛的支援を送ってきた。

2022年6月にマドリッドで開催されたNATO首脳会議では、日本を招待するという前例のない異例の措置が取られた。

新アメリカ安全保障センターのインド太平洋安全保障プログラム上級研究員のジェイコブ・ストークスは、日本の防衛政策と日米同盟において「極めて重要な時期(an incredibly important time)」であると語っている。

ストークスは「北東アジアにおける安全保障環境が非常に厳しくなっていることを反映し、日本のアプローチに根本的な変化が起きている。もちろん、中国からの挑戦もあるが、北朝鮮やロシアからの脅威も存在する」と述べた。

ストークスは「アメリカの戦略的観点からすると、日本はこの地域との関わりにおいて、まさに礎石(cornerstone)の国である。また、インド太平洋地域におけるアメリカの最も重要な国家関係を持つ国が日本であることは間違いない」と述べた。

岸田首相は、フランス、イタリア、イギリス、カナダのG7諸国を訪問して、5カ国訪問の最終目的地としてワシントンに到着した。

日本は2023年にG7の議長国を務め、2024年5月に広島で首脳会談を主催する予定だ。広島は、アメリカによる最初の原爆投下の場所だ。日本はまた、2024年1月の国連安保理の議長国でもある。国連安全保障理事会の非常任理事国であり、議長国として2年間の任期を務めている。

東京はこれら2つの場所を利用して、核兵器の軍縮(disarmament)と不拡散(nonproliferation)を求める声を高めたい意向だ。こうした動きは、ロシアのウラジミール・プーティン大統領がウクライナで核兵器を使用すると脅し、中国が核兵器の備蓄を増やし、北朝鮮が核兵器実験の可能性の下地を作っている状況の中でそれに対処するためだ。

外交問題評議会のスミスは「日本は、核軍縮と核兵器使用のリスクを軽減する必要性を強く感じている」と述べている。

東京はこの主張と軍拡(military expansion)の追求のバランスを取っている。水曜日にイギリスと防衛協定に調印し、アメリカとヨーロッパの同盟諸国が定義する「ルールに基づく(rule-based)」国際・経済秩序の防衛と完全に連携している。

スミスは続けて「インド太平洋地域の同盟国、とりわけ日本が、ヨーロッパの同盟諸国とこれまでとは全く異なる形で連携していることは、興味深い認識だと思う。そしてそれは、やはりプーティンのせいだ」と語った。

スミスは「日本が先頭になって、ヨーロッパの同盟諸国とインド太平洋の同盟諸国から、戦後秩序に対する挑戦の瞬間であるという、非常に似たような言葉が出てくるようになった」と述べた。

バイデン政権と日本が完全に一致していない分野の一つは、日本が地域貿易協定(正式名称は環太平洋パートナーシップに関する包括的および進歩的協定[Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership]CPTPP)に参加することを求めたのに、アメリカが応じないことである。

ホワイトハウスのカリーヌ・ジャン=ピエール報道官は金曜日に、「CPTPPに関しては、私たちが検討しているオプションではない」と語った。ジャン=ピエール報道官は、アメリカは2022年5月に開始されたイニシアチヴであるインド太平洋経済枠組(Indo-Pacific Economic Framework)に焦点を当てていると述べた。

CPTPPは、オバマ政権時代の環太平洋パートナーシップ(Trans Pacific PartnershipTPP)の加盟11カ国によって形成された自由貿易協定である。ドナルド・トランプ前米大統領は2017年の就任初日にTPPからアメリカを離脱させた。

イギリスはCPTPPへの参加を目前にしており、中国と台湾はともに加盟を申請している。スミスは、「日本はCPTPPへの加盟を追求する中国に対する防波堤として、アメリカの加盟を強く望んでいる」と述べた。

スミスは次のように述べている。「中国は、その経済力を使って、CPTPPの他の加盟諸国に対して、中国を参加させるのも悪くないと説得し始めるのではないかという懸念が存在する。そして、この地域が求めているのは、カウンターバランス(counterbalance)だと私は考えている。人々は口に出しては言わないかもしれないが、アメリカの中国に対するカウンターバランスは、まさにこのことなのである」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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