古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ヴォロディミール・ゼレンスキー

 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。今回取り上げるヴィクトリア・ヌーランドについても詳しく書いています。是非手に取ってお読みください。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカの強硬な対ロシア政策とウクライナ政策をけん引してきた、ヴィクトリア・ヌーランド政治問題担当国務次官(省内序列第3位)が退任することが、上司であるアントニー・ブリンケン米国務長官によって発表された。ロシア政府関係者は「ヌーランドの退任はアメリカの対ロシア政策失敗の象徴」と発言している。まさにその通りだ。ウクライナ戦争に向けて散々火をつけて回って、火がコントロールできなくなったら、責任ある職から逃げ出すというあまりにも無様な恰好だ。ヌーランドは職業外交官としては高位である国務次官にまで昇進した。しかし、その最後はあまりにもあっけないものとなった。

 アメリカ政治や国際関係に詳しい人ならば、ヌーランドが2010年代から、ウクライナ政治に介入し、対ロシア強硬政策を実施してきたことは詳しい。私も第3作『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)、最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)で詳しく書いてきた。ヌーランドは家族ぐるみでネオコンであり、まさにアメリカの対外介入政策を推進してきた人物である。
 ウクライナ戦争はその仕上げになるはずだった。アメリカがロシアを屈服させるために、ウクライナに誘い込んで思い切り叩く、それに加えて経済制裁も行って、ロシアをぼろぼろにするということであった。しかし、目論見はものの見事に外れた。現在、ウクライナ戦争はウクライナの劣勢であり、アメリカが主導する西側諸国の支援もなく、情勢はロシア有利になっている。ヌーランドはまずこの政策の大失敗の詰め腹を切らされた形になる。

 そして、バイデン政権としては、ウクライナ問題で消耗をして、泥沼に足を取られている状態を何とかしたい(逃げ出したい)ということもあり、アジア重視に方針を転換しようとしている。対中宥和派であったウェンディ・シャーマン国務副長官が昨年退任し、国務次官ヌーランドが代理を務めていた。彼女としては、このまま国務副長官になるというやぼうがあったはずだ。しかし、バイデン政権は、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)でインド太平洋調整官(アジア政策担当トップ)を務めていたカート・キャンベルを国務副長官に持ってきた。先月には連邦上院で人事承認も行われた。ヌーランドは地位をめぐる政治的な争いに負けたということになる。また、アジア重視ということで、ヌーランドの重要性は失われて、居場所がなくなったということになる。

 ヌーランドは7月からコロンビア大学国際公共政策大学院で教鞭を執ることも発表された。ヌーランドが国務省j報道官時代に直接仕えた、ヒラリー・クリントン元国務長官がこの大学院の付属の国際政治研究所教職員諮問委員会委員長を務めており、ヌーランドは客員教員を務めることになっている。この大学院の大学院長であるカリン・ヤーヒ・ミロはイスラエルで生まれ育った人物で、国際関係論の学者であるが、アメリカに留学する前はイスラエル軍で情報将校を務めていたという経歴を持っている。ネオコンは、強固なイスラエル支持派でもあるということもあり、非常に露骨な人事である。

 ヌーランドがバイデン政権からいなくなるということは、ウクライナ戦争の停戦に向けての動きが出るということだ。アメリカは実質的にウクライナを助けることが難しくなっている。ウクライナ支援を強硬に訴えてきた人物がいなくなるということは、方針転換がしやすくなるということだ。これからのアメリカとウクライナ戦争の行方は注目される。

(貼り付けはじめ)

長年の対ロシアタカ派であるヴィクトリア・ヌーランドが国務省から退任(Victoria Nuland, Veteran Russia Hawk, to Leave the State Department

-仕事熱心な外交官であり、ウクライナ支持を断固として主張してきたヌーランドは、国務省のナンバー4のポストから辞任する。

マイケル・クロウリー筆

2024年3月5日(改訂:3月7日)

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2024/03/05/us/politics/victoria-nuland-state-department.html

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2021年に連邦上院外交委員会で証言する政治問題担当国務次官ヴィクトリア・ヌーランド

国務省で序列4位の高官であり、ウラジーミル・V・プーティン政権のロシアに対する強硬政策を断固として主張してきたヴィクトリア・J・ヌーランドが、30年以上の政府勤務を終えて今月退職する。

アントニー・J・ブリンケン国務長官は火曜日、自由、民主政治体制、人権、そしてアメリカによるこれらの大義の海外での推進に対するヌーランドの「激しい情熱(fierce passion)」を指摘する声明の中で、ヌーランドの国務次官職からの辞任を発表した。

ブリンケンは、ウクライナに関するヌーランドの取り組みを指摘し、それは「プーティン大統領の全面的な侵略に対抗するために不可欠(indispensable to confronting Putin’s full-scale invasion)」であると述べた。

ヌーランドは報道官など国務省の役職を数多く歴任し、ディック・チェイニー副大統領の国家安全保障問題担当副大統領次席補佐官を務めたこともある。しかし、ヌーランドは、プーティンの領土的野心と外国の政治的影響力に対して強い抵抗を組織することを長年主張し、ロシアの専門家として名を残した。

オバマ政権時代には国務省のロシア担当高官として、ウクライナ軍の対戦車ミサイル武装を主張したが失敗したが、バイデン政権ではより多く、より優れたアメリカ製兵器をウクライナに送ることを最も支持してきた。

熟練した官僚的実務家であるヌーランドは、鋭い機知と率直な態度で自分の主張を展開し、同僚から賞賛と恐怖が入り混じった反応を引き出した。ブリンケン国務長官は声明の中で、「彼女はいつも自分の考えを話す」と穏やかな表現を使った。

ヌーランドは2014年、ウクライナ政治に関する電話での通話で、ヨーロッパ連合(European UnionEU)を罵倒するような発言をしたことがきっかけとして、多くの人々に知られるようになったが、その通話は録音され、その録音が流出した。アメリカ政府当局者たちはこの流出をロシアの仕業だという確信を持っている。

バイデン政権下、ヌーランドはアメリカのウクライナ支援に懐疑的な人々の避雷針(lightning rod)となった。テスラの共同創設者イーロン・マスク氏は昨年2月、ソーシャルメディアサイトXに、「ヌーランドほどこの戦争を推進している人はいない」と書いた。

ヌーランドはロシアを弱体化させ、更にはプーティンを打倒しようという共同謀議を企てていると見なされている、ワシントン・エスタブリッシュメントの代理人(化身)としてモスクワで非難された。ロシア政府当局者や露メディアは、2014年初頭にキエフの中央広場で、最終的にクレムリンが支援するウクライナ指導者を打倒した、当時欧州・ユーラシア問題担当米国次官補だったヌーランドがデモ参加者たちに食料を配った様子を常に回想している。

ロシアのセルゲイ・V・ラブロフ外相は昨年、「2014年にウクライナでヴィクトリア・ヌーランド国務次官がテロリストにクッキーを配った後、政府に対するクーデターが起きた」と述べた。ヌーランドさんはクッキーではなくサンドイッチを配ったと語っている。

ヌーランドの辞任は、クレムリン支援の英語ニュースサイトRTによって重大ニューズとして扱われ、トップページに赤いバナーと「ヌーランド辞任」という見出しが掲げられた。

RTはロシア外務省報道官マリア・ザハロワの発言を引用し、ヌーランドの辞任は「バイデン政権の反ロシア路線の失敗」によるものだと述べた。ザハロワは、「ヴィクトリア・ヌーランドがアメリカの主要な外交政策概念として提案したロシア恐怖症(Russophobia)が、民主党を石のようにどん底に引きずり込んでいる」と非難した。

ヌーランドは、バイデン政権の最初の2年半の間、国務次官を務めた。その間、国務副長官を務めたウェンディ・シャーマンの退任に伴い、国務副長官代理を兼務して過去1年の大半を費やした。

ヌーランドはシャーマンの後任としてフルタイムで当然の候補者と見なされていた。しかし、ブリンケン長官は、国家安全保障会議(National Security CouncilNSC)アジア担当トップのカート・キャンベルを国務副長官に抜擢した。キャンベルの国務副長官就任は2月6日に連邦上院で承認された。

ブリンケン長官は、後任が決まるまで国務省のジョン・バス管理担当国務次官が代理としてヌーランドの職務を引き継ぐと述べた。

アナリストの一部は、ロシアのウクライナ侵略がバイデンの外交政策の多くを消耗させたにもかかわらず、キャンベルの選択を、バイデン大統領とブリンケン国務長官がアメリカと中国との関係の管理を最優先事項と考えていることの表れと解釈した。

ヌーランドは先月、人生の何百時間も費やしてきたウクライナの将来について公に語った。

ヌーランドは、ワシントンの戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)での講演で、「プーティ大統領がウクライナで勝利すれば、そこで止まることはないだろうし、世界中の独裁者たちは力ずくで現状を変えようと大胆になるだろう」と警告した。

ヌーランドは、「プーティンは私たち全員を待っていられると考えている。私たちは彼が間違っていることを証明する必要がある」と述べた。

2024年3月7日に訂正:この記事の以前の版ではヴィクトリア・ヌーランドの国務省での序列について誤って記述した。ヌーランドは序列第4位の役職であり、序列3位の外交官である。

※マイケル・クロウリー:『ニューヨーク・タイムズ』紙で国務省とアメリカの外交政策を取材している。これまで30カ国以上から記事を送り、国務長官の外遊に同行している。

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国務省の主要なリーダーであるヴィクトリア・ヌーランドがバイデン政権から離脱(Victoria Nuland, key State Dept. leader, to exit Biden administration

-長年外交官を務めてきたヌーランドはロシアに対する厳しい姿勢で知られていた。クレムリンはヌーランドの反ロシア姿勢を悪者扱いしてきた。

マイケル・バーンバウム筆

2024年3月5日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/national-security/2024/03/05/victoria-nuland-retires/

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2022年、キプロス。記者会見でメディアに対して話すヴィクトリア・ヌーランド

アントニー・ブリンケン国務長官は火曜日、ジョー・バイデン政権の最も強硬なロシア強硬派の1人で国務省序列第3位のヴィクトリア・ヌーランドが数週間以内に退任する予定であり、中東の危機を受けてアメリカ外交のトップに穴が開くと述べた。そしてウクライナでは大規模な大火災が発生する恐れがある。

ヌーランド政治問題国務次官は、以前はバラク・オバマ政権時代に国務省のヨーロッパ担当外交官のトップを務め、国務省の職員たちの間で広く人気があった。時には当たり障りのない態度や用心深さが報われる厳格な官僚制の中で、彼女はありのままの意見とクレムリンに対する厳しいアプローチで際立っており、クレムリンは彼女を悪者扱いした。

ヌーランドはウェンディ・シャーマンの退任後、昨年から7カ月間、国務省序列第2位の役職である国務副長官代理を務めていた。しかし彼女は、先月承認された元ホワイトハウスアジア戦略官トップのカート・キャンベルの国務副長官正式就任を巡る政権内争いに敗れた。バイデン大統領の決定は彼女の辞任の要因の1つであった。今回の人事異動により、国務省の最上級指導者トリオの中に女性は1人も残らないことになる。

ブリンケンは火曜日の声明で、ヌーランドが国務省内の「ほとんどの職」を歴任し、「幅広い問題や地域に関する百科全書的な知識と、私たちの利益と価値観を前進させるためのアメリカ外交の完全なツールセットを駆使する比類のない能力」を備えていたと述べた。

ヌーランドは1990年代にモスクワに勤務し、その後、ヒラリー・クリントン国務長官の下で国務省報道官になるまで、NATO常任委員代表を務めた。2013年末にキエフでクレムリン寄りの指導者に対する抗議活動が発生し、ロシアの不満の焦点となった際、彼女はヨーロッパ問題を担当するアメリカのトップ外交官として、キエフでのアメリカ外交で積極的な役割を果たした。記憶に残るのは、当時の大統領が打倒される前に、彼女がキエフ中心部マイダンでキャンプを張っていた抗議活動参加者たちにクッキーとパンを配ったことだ。

ヌーランドは、ドナルド・トランプが大統領に就任した後の2017年初頭に国務省を離れ、2021年に序列第3位の政治問題担当国務次官として復帰した。

ブリンケンは、ヌーランドの「ウクライナに関する指導層について、外交官や外交政策の学生が今後何年も研究することになる」と述べ、ロシアが2022年2月の侵攻に先立って軍を集結させる中、キエフを支援するヨーロッパ諸国との連合構築の取り組みをヌーランドが主導したと指摘した。

ロシア外務省はヌーランドの退職の機会を利用し、これはアメリカの対ロシア政策が間違っていたことを示す兆候だと宣言した。

ロシア外務省報道官マリア・ザハロワはテレグラムに「彼らは皆さんに理由を教えてくれないだろう。しかし、それは単純だ。バイデン政権の反ロシア路線の失敗だ。ヴィクトリア・ヌーランドがアメリカの主要な外交政策概念として提案したロシア恐怖症は、民主党を石のようにどん底に引きずり込んでいる。」と書いた。

職業外交官で管理担当国務次官を務めるジョン・バスが一時的にヌーランドの代理を務めることになる。

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反ロシア主張で知られる米幹部外交官であるヴィクトリア・ヌーランドが近く退職(High-ranking US diplomat Victoria Nuland, known for anti-Russia views, will retire soon

ブラッド・ドレス筆

2024年3月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/4509471-victoria-nuland-anti-russia-retire-ukraine/
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2023年1月26日、連邦議事堂にて。連邦上院外交委員会でロシアの侵攻について証言する政治問題担当国務次官ヴィクトリア・ヌーランド(中央)、国際安全保障問題担当国防次官補セレステ・ワーランダー(左)、米国際開発庁(U.S. Agency for International Development)ヨーロッパ・ユーラシア担当副長官エリン・マッキー。

ウクライナへの熱烈な支持と反ロシアで、タカ派の主張で知られるヴィクトリア・ヌーランド政治問題担当国務次官が数週間以内に退任する

アントニー・ブリンケン国務長官は火曜日にこのニューズを発表し、ヌーランドが「私たちの国と世界にとって重要な時期に外交を外交政策の中心に戻し、アメリカの世界的リーダーシップを活性化させた」と称賛した。

ブリンケンは声明の中で、「トリア(ヴィクトリア)を本当に並外れた存在にしているのは、彼女が堅く信じている価値、つまり自由、民主政治体制、人権、そしてそれらの価値観を世界中に鼓舞し推進する、アメリカの永続的な能力のために戦うことへの激しい情熱だ」と述べた。

ヌーランドは30年以上国務省に勤務し、6人の大統領と10人の国務長官の下で様々な役職を務めた。ヌーランドはキャリアの初期に、モスクワの米大使館で働き、モンゴル初の米国大使館の開設に貢献した。

ヌーランドは国務省の東アジア太平洋局にも勤務し、中国の広州に外交官として赴任した。 2003年から2005年まで副大統領(ディック・チェイニー)の国家安全保障問題担当補佐官を務め、その後、NATO常任委員代表を務めた。ヨーロッパ・・ユーラシア問題担当国務次官補を務め、2021年にジョー・バイデン大統領の下で国務次官に就任した。

ヌーランドはおそらく、2014年の事件で最もよく知られている。この事件では、彼女が駐ウクライナ米大使との通話中に「ファックEU」と発言した録音が漏洩し、世界中のメディアの注目を集めた。

ヌーランドのロシアに対する強い主張とウクライナへの支持は、彼女のその後のキャリアを決定付け、その間、キエフで親ロシア派の大統領が追放された後、モスクワがクリミア半島を不法併合した際の紛争で中心的な役割を果たした。

ヌーランドはロシアに対するタカ派的主張を理由に、アメリカの一部の右派から標的にされていた。彼女のコメントは、昨年クレムリンが非武装化されたクリミアに関する彼女のコメントを非難したことも含め、ロシア国内でも厳しい非難を集めた。

それでも、ブリンケンは、自分とバイデン大統領はヌーランドに感謝していると語った。ブリンケンは、彼女が「常にアメリカの外交官を擁護し、彼らに投資し、彼らを指導し、高揚させ、彼らとその家族が彼らにふさわしいもの、そして私たちの使命が求めるものを確実に得られるようにしている」と語った。

ブリンケンは火曜日、声明の中で次のように発表した。「ヌーランドは最も暗い瞬間に光を見出し、最も必要なときにあなたを笑わせ、いつもあなたの背中を押してくれる。彼女の努力は、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領の全面的なウクライナ侵略に対抗し、プーティン大統領の戦略的失敗を確実にするために世界的な連合を組織し、ウクライナが自らの足で力強く立つことができる日に向けて努力するのを助けるために必要不可欠だった」。

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ヴィクトリア・ヌーランド大使がコロンビア大学国際公共政策大学院の教員に加わる(Ambassador Victoria Nuland Will Join SIPA Faculty

2024年3月6日

https://www.sipa.columbia.edu/news/ambassador-victoria-nuland-will-join-sipa-faculty

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ヴィクトリア・ヌーランド大使は30年以上にわたりアメリカの外交官を務め、最後の3年間は政治問題担当国務次官を務めた。更には2023年7月から2024年2月まで国務副長官代理を務めた。ヌーランドは7月1日付で、コロンビア大学国際公共政策大学院(School of International and Public AffairsSIPA)国際外交実践担当キャスリン・アンド・シェルビー・カロム・デイヴィス記念教授に就任することが決定した。

ヌーランドはまた、国際公共政策大学院国際フェロープログラムの指揮を執る。このプログラムは、国際問題を研究するコロンビア大学の大学院生たちのための学際的なフォーラムを提供するものだ。更には、国際政治研究所(Institute of Global PoliticsIGP)客員教員に加わる。国際政治研究所は、国際政治研究所の使命を推進するための研究プロジェクトを実行する選ばれた学者と実務形で構成されている。

国務次官として、ヌーランドは地域および二国間政策全般を管理し、とりわけ世界中のアメリカ外交使節団を指導する国務省の複数の地域部門を監督した。

2021年に国務次官に就任する前、ヌーランドは民間のコンサルタント会社であるオルブライト・ストーンブリッジ・グループの上級顧問を務めていた。彼女はまた、ブルッキングス研究所、イェール大学、民主政治体制のための全米基金(National Endowment for DemocracyNED)でも役職を務めた。

国際公共政策大学院長カリン・ヤーヒ・ミロは次のように述べている。「ヴィクトリア・ヌーランド大使を私たちの教員として迎えられることを大変光栄に思う。ワシントンおよび海外での経験を反映した彼女の、苦心して獲得した多様な専門知識は、私たちの教室の教員として、また政策活動のリーダーとしての彼女の貢献をさらに高めることになるだろう。民主党と共和党の両政権の下で勤務した高官として、トリア(ヴィクトリア)は党派間の隔たりを乗り越える能力を実証しており、あまりに分断されている現在の社会を考えると、彼女は生徒たちのモデルとなるだろう。私は国際公共政策大学院コミュニティ全体を代表して、彼女を迎えることができて本当に嬉しく思う」。

ヌーランドの国務省からの退職は、3月5日にアントニー・J・ブリンケン米国務長官によって発表された。ヌーランドはオバマ政権下、国務省報道官(2011年5月-2013年4月)、ヨーロッパ・ユーラシア担当国務次官補(2013年9月-2017年1月)を務めた。国務省報道官時代は、当時のヒラリー・クリントン国務長官に直接仕えた。ヒラリー・クリントンは現在、国際公共政策大学院付属の国際政治研究所教職員諮問委員会委員長を務めている。

ヌーランドは、2005年6月から2008年5月まで、ジョージ・W・ブッシュ(息子)大統領の下で、アメリカ合衆国NATO常任委員代表を務めた。

ヌーランドは、ロシア語とフランス語に堪能であり、ブラウン大学で学士号を取得した。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が発売になりました。ウクライナ戦争に関しては1章分書いています。是非手に取ってお読みください。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 ウクライナ戦争は2022年2月24日に始まり、長期戦となり、2024年まで続く状況になっている。戦況は膠着状態に陥り、ロシアがやや攻勢を強めているという状況だ。最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも書いたが、アメリカ国民はウクライナ支援に嫌気が差しており、「ウクライナ疲れ」「ゼレンスキー疲れ」の状況になっている。ジョー・バイデン大統領はさらなるウクライナ支援をしたいが、予算はアメリカ連邦議会が決めているため、アメリカ連邦議会下院で多数を握る共和党内にウクライナ支援反対派がいる以上、先行きは不透明である。ウクライナ支援の半分以上を占めるアメリカの支援がなくなれば、ウクライナは戦争継続が難しくなる。

 2023年10月に始まった、パレスティナ紛争(ハマスとイスラエルの戦い)で、アメリカを中心とする西側諸国(the West、ザ・ウエスト)はハマス避難を行い、その後のイスラエルによるガザ地区への攻撃とその攻撃による犠牲者についての非難を行っていない状況である。一方で、西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)は、即時停戦を求め、イスラエルの攻撃によるパレスティナ側の民間人犠牲者の増大を非難している。ここに国際社会、国際政治の最新の分断線がある。

 ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、ハマスによる攻撃発生直後から、ハマス非難、イスラエル支持を明確に表明した。これは、もちろん西側諸国からの支援を期待してのことだ。ハマスをテロ組織、ロシアをテロ国家と呼び、同じ悪だと非難した。その後、イスラエルによるガザ地区攻撃については非難ができない状況になってしまった。「強大な力によって虐げられる弱者」という構図を作りたいならば、ウクライナとパレスティナを並べ、ロシアとイスラエルを並べるのが妥当な状況になっているが、それができないようになった。結果として、西側諸国からの支援が先細りすることが確実な状況で、非西側諸国からの支援が期待できない状況になった。このような状況に陥ってしまったのは、ゼレンスキーの国際感覚の欠如と指導者としての才能の欠落が原因である。どちらにもついて、どちらにもつかないということができなければ、強大な勢力に囲まれた小国は生き抜いていくことはできない。これは日本にとっても教訓となる。

 更に言えば、より悪質なのは、イギリスである。イギリスのシンクタンクであるチャタムハウス(王立国際問題研究所)の研究員は「プランB」があって、戦争は継続できるというようなことを言っている。ウクライナを焚きつけているのはイギリスである。この狡猾さがイギリスを世界帝国にまで押し上げた訳ではあるが、西側の没落によって、イギリスの力も落ちていく。

 ウクライナ戦争は「金の切れ目が縁の切れ目」ということになるだろう。

(貼り付けはじめ)

ウクライナにとっての新たなダメージ:ハマスとガザに対する戦争でイスラエルの側に立つこと(New danger for Ukraine: Taking Israel’s side in war against Hamas and Gaza

イソベル・コシウ筆

2023年10月29日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/world/2023/10/29/ukraine-israel-gaza-russia-support/

キエフ発。ウクライナ大統領ヴォロディミール・ゼレンスキーは、ハマスとの戦闘について、イスラエルに対して即座のそして力強い支持を表明した。これは、キエフがこの1年にわたって行ってきた、ロシアとの戦争における、アラブ・イスラム諸国からの支援を勝ち取るための努力を無駄にする危険がある。

ハマスからの奇襲攻撃の後、ゼレンスキーはすぐの段階でイスラエルを支持する声明を発表した。ハマスの奇襲攻撃によって、1400名以上のイスラエル国民が殺害された。この声明は、ウクライナに対する国際的な関心の維持に役立ち、そして、明確に、ウクライナをアメリカの側に立たせることになった。

ゼレンスキー大統領のイスラエル支持の立場によって、イスラエルの不倶戴天の敵であるハマスの主要スポンサーであり、ロシアにとって無人機やその他の武器の重要な供給国でもあるイランとロシアとの関係がますます緊密になっていることにも注目を集めた。

ゼレンスキー大統領は2023年10月9日にNATO議会で演説しその中で、ハマスとロシアは、「同じ悪であり、唯一の違いは、イスラエルを攻撃したテロ組織があり、ここにはウクライナを攻撃したテロ国家があるということだ(Hamas and Russia are the “same evil, and the only difference is that there is a terrorist organization that attacked Israel and here is a terrorist state that attacked Ukraine)」と述べた。

しかし、イスラエルの軍事作戦が4週目に入り、パレスティナ人の犠牲者が増えるなか、ガザでの戦争は、2022年2月のロシアの侵攻以来、ウクライナにとって最も困難な外交的試練の一つとなっている。

ウクライナに重要な支援を提供してきたトルコ、サウジアラビア、カタールなどの国々は、イスラエルに対する控えめな批判と比較して、ウクライナでの民間人の死亡に対する広範な非難を示唆しながら、ガザにおける二重基準(ダブルスタンダード、double standards)で西側諸国を非難している。

しかし、イスラム諸国やアラブ諸国との緊張は、キエフが直面しているリスクの一つに過ぎない。キエフは現在、世界の関心が中東での新たな戦争に大きく移っていることに加え、ウクライナへの追加援助に反対している連邦下院共和党のマイク・ジョンソン新議長(ルイジアナ州選出)が選出されたばかりの時期に、アメリカの軍事支援に対する競合する要求とも戦わなければならない。

一部の専門家たちは、イスラエルは既にウクライナへの支援拡大で応酬するつもりはないことを明らかにしていると指摘した。

中東研究所の平和構築(peace-building)の専門家であるランダ・スリムは、ロシアがシリアを支配していることもあり、イスラエルはモスクワとの関係を維持するしかなかったと述べ、イスラエルがハマス攻撃後にゼレンスキーの訪問申し出を拒否したことを指摘した。

ゼレンスキー大統領の親イスラエルの立場は「意味がなかった」とスリムは述べ、多くのアラブ・イスラム諸国は、イスラエルとウクライナよりも攻撃的な軍事大国としてのイスラエルとロシアの類似点が多いと見ていると付け加えた。

スリムは次のように述べている。「これがアラブ地域の現状です。彼らはバイデンの言う、ロシアとハマスの比較を受け入れるつもりはない。ロシアとイスラエルを比較するのは、死者数や民間人を標的にすることに関してのことである」。

スリムは続けて次のように述べた。「ゼレンスキーが、ロシアがウクライナでやっていることは、イスラエルがガザでやっていることと同じだと言う用意があれば、もっと多くの友人を獲得できただろう。しかし、ウクライナがそのような発表を行う準備ができている、もしくは進んでやろうとしていると私は考えていない」。

ロシアのウラジーミル・プーティン大統領が当初、イスラエルに直接哀悼の意を表することもなく、ハマスに対する断固とした非難もしなかったように、イスラエルが報復空爆を強化する中、ゼレンスキーはガザのパレスティナ市民を保護する必要性についてなかなか口を開かなかった。

ハマスの攻撃のニューズが最初に流れた時、ゼレンスキーと彼のティームのメンバーはハマスとロシアを比較し、ウクライナ人はイスラエル人に「何が起こっているのか特別に理解している」と述べた。イスラエルには多数のウクライナ人とロシア人移民が住んでいる。

そのわずか10日後、ゼレンスキーは、民間人を保護する必要性と非エスカレーションの必要性を訴え、ガザへの砲撃を間接的に支持した。

一方、ゼレンスキーは、ガザで数千人のパレスティナ市民と少なくとも21人のウクライナ市民が死亡したにもかかわらず、イスラエルの攻撃を批判することを避けている。

捕虜交換(prisoner-of-war exchanges)やロシアによるウクライナの穀物輸出封鎖などの問題でウクライナとロシアの交渉に重要な役割を果たしてきたトルコとカタールの外相は、西側諸国の偽善(hypocrisy)を主張する共同声明を発表した。

カタール外相のムハンマド・ビン・アブドゥルラフマン・アル・タニは「ある文脈では民間人の殺害を非難し、別の文脈ではそれを正当化することは許されない」と述べた。トルコのハカン・フィダン外相は、「西側諸国がガザでの殺害を非難しないのは非常に深刻な二重基準(ダブルスタンダード)だ」と付け加えた。

ヨルダンのラニア女王もCNNのインタヴューで鋭い批判を展開した。女王は「私たちは、銃を突きつけられて家族全員を殺すのはいけないことだが、砲撃して殺すのは構わないと言われているのだろうか?」と述べた。

他の専門家たちは、ゼレンスキーが比較しようとしたところで、アラブ諸国には響かないだろうと述べた。

ライス大学の研究員で、ウクライナとアラブ世界の関係について執筆しているクリスティアン・ウルリクセンは、ウクライナはアラブ世界にとって「最前線に立ったことがない」とし、「彼らにとって、ウクライナは関心のない紛争だ」と述べている。

ウリクセンはさらに、「イスラエルが多くの帯域幅(bandwidth)を占めているので、中東の誰も今ウクライナのことを本当に考えているとは思えない」と付け加えた。

今週末、ウクライナは、占領下のウクライナ領土からロシア軍を一方的に撤退させ、ウクライナの領土主権を完全に回復することを求める「和平計画(peace plan)」への世界的な支持を促進することを目的とした第3回協議の開催を予定していた。

サウジアラビアが主催し、ほぼすべての主要な非同盟諸国(major unaligned powers)の代表が出席した8月の第1回ウクライナ和平公式会合(Ukraine peace formula meeting)とは異なり、サウジアラビアの高官たちが今週末のマルタでのイヴェントに出席するかどうかは不明だった。

ゼレンスキーは月曜日、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子と会談したが、リヤドから発表された会談内容の公式発表では、マルタ会談やウクライナへのさらなる支援についての言及はなかった。

ブルームバーグ・ニューズが報じたところによると、中国はここ数日、ロシアとともにイスラエルとパレスティナの紛争を解決するための二国家解決策(two-state solution)への回帰を求めているが、マルタのイヴェントには参加しなかった。

トルコはマルタへの代表団派遣を計画していたが、ここ数日、トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領はイスラエルに対して強硬に発言し、ハマスを抵抗運動(resistance movement)と表現しており、ゼレンスキー大統領の表明した立場とは全く対照的である。

ロシアが東部戦線での攻撃を強化している今、ウクライナは友好国を失うわけにはいかない。連邦議会の共和党議員たちがウクライナへの援助増額に反対を強めていることを考えれば、なおさらである。

バイデン大統領は、ウクライナへの600億ドルの追加援助を提案し、最近の演説では、イスラエルへの資金援助やアメリカ国内の国境警備の強化と結びつけている。

しかし、ホワイトハウスは、「ウクライナへの追加資金援助に繰り返し反対票を投じ、イスラエルへの援助からウクライナへの資金援助を切り離すつもりだ」とフォックス・ニューズに出演して語ったジョンソン新連邦下院議長に対処しなければならない。

ジョンソンは、ワシントンはウクライナを見捨てないと述べているが、ホワイトハウスの最終目標には疑問を呈している。一方、ヨーロッパでは、ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相が最近、中国での会議の傍らでプーティンと会談し、ヨーロッパ連合(EU)からのウクライナへの500億ユーロの援助案を却下しようとしている。

ヨーロッパ連合(EU)は12月、2023年から2027年にかけての予算案の一部として、加盟27カ国の全会一致で承認される必要がある。

ウクライナの元経済大臣であるティモフィー・マイロバノフは、ゼレンスキー政権がウクライナに対する国際的な支援を再強化し、短期、中期的に戦争への関心を維持するための計画を打ち出すだろうと自信を示した。

ウクライナ外務省、ウクライナ大統領府、そしてゼレンスキー報道官は、彼らの計画がどのようなものなのか、コメントを求めたが回答はなかった。

一方、ロンドンのシンクタンクであるチャタムハウス(王立国際問題研究所)でウクライナ・プログラムの部長を務めるオリシア・ルツェビッチによれば、ウクライナはアメリカの支援が先細りになる可能性に備えてきたという。

ウクライナの「プランB」は、最近のドイツやトルコの武器企業との合弁事業や、イギリスとアメリカのメーカーとの交渉に見られるように、対外政治からできるだけ距離を置くことだとルツェビッチは言う。

ルツェビッチは、「アメリカがウクライナを完全に見捨てたら、それは非常に難しいことだ。しかし、ウクライナは自国の資源とヨーロッパの同盟諸国からの資源で戦い続けるだろう」と述べた。

カリーム・ファヒムがこの記事の作成に貢献した。

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争は二度目の夏を終えようとしている。これから秋、そして冬へと進む中で、状況は膠着状態のままである。ウクライナ側は春季大攻勢という掛け声で、反転攻勢をもくろんだが、失敗に終わった。西側諸国はウクライナに対する援助を続けているが、膠着状態に変化はない。以下の記事にあるように、西側諸国、NATOの軍事専門家たちから見れば、ウクライナ軍は「稚拙な」攻撃を繰り返しているということもその理由になるだろう。「せっかく援助してやって、効果的な作戦の助言もしてやっているのに、ウクライナの馬鹿たちは何をやっているんだ」というところだろう。
ukrainianwarmap20230912001

 ウクライナ戦争も2年目になり、私たちも「慣れて」しまった。「このまま状況が変わらないで、ウクライナもロシアも飽き飽きしたところで停戦交渉という話になって、この停戦交渉がまた半年単位くらいでずるずる続いて、その間に武力衝突が起きたり、止まったりが続いて、ウクライナもロシアも、そして西側諸国をはじめとする世界各国が本格的に嫌になって停戦交渉成立への圧力が高まり、最終的に交渉成立する」というのが多くの人々が考えるシナリオであろう。

 アメリカ政府も中国政府も停戦に向けて舞台裏で静かに働きかけを行っているだろうが、ここまで来ると、ウクライナが「諦める」かどうかということになる。ロシアは自分たちが確保した地域を守備すすることに徹している。ウクライナ側が攻撃を諦めて、停止すれば、自然と停戦ということになる(条件などを決めて停戦合意をしなければならないが)。

 ウクライナ側は現在のところ、停戦する姿勢を見せてはいない。強気に、「クリミア半島を含む全てのロシアの掌握地域を奪還する」と主張し続けている。西側諸国はそんなことは不可能だと考えている。また、そんなことをして欲しくないと考えている。そんなことになれば、ロシアがどのような攻撃を加えてくるか分からない。西側諸国にどのような影響が出るか分からない。

 関係者全員が「早く停戦してくれればよいのに」としらけているのに、ヴォロディミール・ゼレンスキー大統領だけが恫喝しながら、援助を強要し、戦争継続を進めている。「ゼレンスキー疲れ」をどこまで全世界が許容できるかだ。いざとなれば、ゼレンスキーを排除して停戦ということも考えねばならない。

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NATO
とウクライナ軍 戦局打開の「特別作戦」で衝突秘密協議5時間の内幕とは【報道1930

9/19() 6:02配信

TBS NEWS DIG Powered by JNN

https://news.yahoo.co.jp/articles/239ef8708c854448cdb82e718322151ad91cb2b7

先月15日、ウクライナとポーランドの国境のとある場所で、NATOとウクライナ軍の秘密協議が行われました。そこで決まったのは、反転攻勢の戦局を打開する特別な作戦。将軍達の議論は5時間に及びましたが、元NATOの高官は、互いに不満をぶつけあう激しい攻防があったと証言しています。NATOとウクライナ軍は、なぜ衝突したのでしょうか。秘密協議の内幕です。

 NATO高官 ジェイミー・シェイ氏

「まずウクライナ側は、『もっと武器が必要だ』と会談で言いました。そして、彼らは、F16や射程距離の長い大砲、特にATACMS(エイタクムス)と呼ばれる兵器を要求しました。また、ロシア軍の後方の大砲陣地や兵站補給施設まで届くミサイル。例えばイギリスのストームシャドウの供与を増やすことを要求したのです」NATO38年間勤務した元高官で現在はイギリスのエクセター大学の教授、ジェイミー・シェイ氏。8月中旬に行われたウクライナとNATOの秘密会談では、お互いに不満をぶつけ合う激論が交わされたと話します。

NATO高官 ジェイミー・シェイ氏

「ウクライナ側は、『武器の供給が遅すぎる、控えめすぎる。もっと早く、もっと必要だ。武器には、より攻撃的な無人偵察機や、特に長距離砲、地上・空中の巡航ミサイルも含まれるが、これらを手に入れない限り、我々ができることは限られる』とNATO側に訴えたのです。しかし、これを聞いたイギリスやアメリカの将軍たちやNATOの欧州連合軍最高司令官・カボリ将軍らは、『ウクライナは戦術に関して我々の忠告を聞いているのだろうか』という気持ちがあったでしょう。何故なら、反転攻勢に際し、NATOからウクライナ側へのアドバイスは、『敵の最大の弱点である地点を選び、そこに攻撃を集中させる。そして防御に穴を開け、その穴を突く』というものでした。しかし、ウクライナはそれをやっていなかったからです」

反転攻勢の開始後、ウクライナ軍はザポリージャやバフムトなど全長およそ1200キロにも及ぶ前線に広く展開。ロシア軍の弱点を見つけようと規模の小さなピンポイント攻撃を繰り返していたと言います。
これに対しNATO側は、ピンポイント攻撃は多くの労力と弾薬を無駄にしていて、時間もかかりすぎていると、批判的に見ていたと言うのです。

NATO高官 ジェイミー・シェイ氏

「西側が常に言ってきたのは、『南部に兵力を集めて進軍する』という作戦でした。しかしウクライナはまだ明らかに東部のバフムトを取り戻そうとしていました。アメリカの助言は、『バフムトは重要ではない』というものでした。ウクライナ軍はそこであまりにも大きな損害を被っていました。ウクライナにとってバフムトは象徴的な存在になっていますが、アメリカは『頼むから、そこから一線を引いてくれ』と言っていたのです。しかしウクライナ人は誇り高い。自分のやり方でやりたいのです」

誇り高いウクライナ人とNATOの議論は、5時間に及びました。そして

NATO高官 ジェイミー・シェイ氏

NATO側は、『このようなピンポイント攻撃をさらに続ければ、ロシア軍に反攻を開始する準備の機会を与えてしまう。そうなると、あらゆる場所でその反攻を防ぐために多くの戦力を費やすことになる。だから、どうか集中して、一点を選び、そこを突破するために大きな戦力で挑んでほしい』とウクライナを説得したのです」

NATO側が主張する戦略上の問題点と共にウクライナ側が考えなければならなかったのは

NATO高官 ジェイミー・シェイ氏

「ウクライナは、兵器が欲しければ、戦術に従わなければなりません。それは明らかで、ウクライナはそれを理解したようです」

ウクライナ側は、最終的にNATOのアドバイスを受け入れました。兵力を南部戦線に集中し、一点突破を狙った攻撃に戦略を転換したのです。

NATO高官 ジェイミー・シェイ氏

「ウクライナ軍は今明らかに、より効果的に兵力を集中させています。彼らは西側の戦略家の言うことに耳を傾け始めている。と同時に、西側諸国がこれまで差し控えていた兵器や装備を提供する意欲も高まっています」

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「敗北なら世界大戦」 ゼレンスキー氏が警告

ウクライナ侵攻

2023918 17:30 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB181YI0Y3A910C2000000/

【ワシントン=共同】ロシアの侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領は17日放送の米CBSテレビのインタビューで、ウクライナが敗北すればロシアはポーランドやバルト3国に迫り、第3次世界大戦に発展しかねないと警告した。「プーチン(ロシア大統領)を食い止めるか、世界大戦を始めるか、全世界が選ばなければならない」と述べた。

ゼレンスキー氏はこれまでの米国の支援に感謝を表明した。その上で、追加の軍事支援に対する消極的な意見が米国内で広がっているのを念頭に、世界を守るため「最も高い代償を払っているのは実際に戦い、死んでいくウクライナ人だ」と訴えた。インタビューは14日に収録された。

ゼレンスキー氏はニューヨークを訪れ、19日に国連総会一般討論の演説で各国に対ロシアでの結束を訴える見通し。21日にはワシントンでバイデン米大統領と会談する。米政府は追加の軍事支援を発表する方針。

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ウクライナ戦争を終わらせるための妥当な最終手段(A Plausible Endgame to the War in Ukraine

フィリップ・ショート筆
2023年2月23日

『タイムズ』誌

https://time.com/6257800/ukraine-war-end/

※ショートは『プーティン(Putin)』の著者である。彼はまた『毛沢東:その生涯(Mao: A Life)』『ポルポト:悪夢の分析(Pol Pot: Anatomy of a Nightmare』』といった評伝を書いている。BBC,『エコノミスト』誌、『タイムズ』誌のモスクワ、北京、ワシントンDCでの海外特派員を長年務めた。

現代の戦争は全て合成物、ハイブリッド(hybrid)である。軍隊が戦場で成功するためには、市民からの支持と、その支持によって得られる資源がなければならない。これを前提にすれば、ウクライナでは西側諸国が圧勝するはずだ。ウクライナ国民は、ロシアからの侵略者に対する抵抗のためにかつてないほど団結している。ウクライナの支援者であるアメリカとその同盟諸国は、クレムリンが利用できる経済資源を凌駕する経済力を持っている。通常であれば、それは圧倒的な軍事力につながるはずだ。

しかし、ロシアの侵攻から1年経った今、事態はそう単純ではないことが判明しつつある。それは通常の戦争ではないからだ。非標準的なルールのもとで行われる限定的な紛争(limited conflict)であり、直接、間接を問わず、全ての参加者が片腕を縛られた状態で戦っている。西側諸国は、無秩序なエスカレーションを恐れて、ウクライナの国境内にとどまることを確約し、クレムリンは、プーティンがNATOとの戦争には勝てないと知っているからである。この戦争がいかに異例なものであるかを物語っているのは、ジョー・バイデンが「衝突(confliction)」を避けるために月曜日にキエフを訪問することをモスクワが事前に知らされていたことだ。戦争当事国が通常とる行動ではない。

代理紛争(proxy conflict)よりは大規模だが、全面戦争というほどでもない。ウクライナが生き残りをかけて繰り広げている本質的な闘争以上に、ウクライナは世界の3大核保有国が優位を争う血で血を洗うチェス盤となっている。ロシアは、アメリカが衰退し、同盟諸国を守ることができなくなっていることを示したいところだ。アメリカは、西側の「ルールに基づく秩序(rules-based order)」の保証人としての信用を守るために戦っている。「ビッグ・スリー(Big Three)」の中で新参者である中国は、傍観者として控えめにパートナーであるロシアを援助している。その一方で、自由世界のリーダーであり、その支配に憤慨している世界地政学におけるボス(alpha male)にどこまで反抗すべきかを計算しようとしている。

このような紛争では、情報戦(information war)は地上戦に劣らず重要である。今週、3つの核保有国は敵対行為勃発の記念日を利用して、それぞれの立場を二転三転させた。バイデン大統領がキエフを訪れ、現地とワルシャワで確約したのは、ウクライナにアメリカの支援は揺るがないという公的な安心感を与えるためだけでなく、全てのアメリカ人がアメリカの重要な利益であると確信してはいない、遠く離れた戦争に対する国内の支持を補強するためでもあった。ウラジーミル・プーティンは、ロシア連邦議会の合同会議で、ロシアは西側諸国の修正主義との生存に関わる闘争(existential struggle against the revanchism of the West)に従事しており、長期にわたる紛争が待ち受けていると語った。中国は王毅政治局委員(外務担当)をモスクワに派遣し、北京もこの戦いに参加していることを強調した。

これまでのところ、バイデンは西側諸国との同盟関係を維持するだけでなく、強化することに成功している。しかし、ホワイトハウスはヴォロディミール・ゼレンスキー大統領に対して、アメリカは「ここに踏みとどまる」と公言する一方で、西側の関与(commitment)は無限ではないと非公式に警告している。プーティン大統領は、国内での反対派を冷酷に弾圧している。ほとんどのロシア人は、戦争には乗り気ではないものの、プーティンを支持し続けている。プーティンが体調不良やクーデターで倒れるかもしれないという憶測は、希望的観測(wishful thinking)にすぎない。ここ数日、西側諸国によるウクライナへの支援が急増しているが、その根底にあるものがもっと暗いものであることを忘れがちだ。

紛争1年目の大半は、情報戦の霧と戦場での出来事の移り変わりの速さによって、相反する物語が入り組んだ迷路のように入り組んでいた。戦争が2年目に入り、その輪郭がより鮮明になってきた。

プーティンは、痛みを伴わない迅速な勝利という希望が幻であることが証明されたため、少なくとも2024年のロシアとアメリカの大統領選挙まで、そしておそらくそれ以上続くであろう消耗戦(war of attrition)の見通しに不承不承適応しており、更に何万人もの死者を出している。ゼレンスキー大統領とNATOの指導者たちも、この新しい現実に適応しなければならない。今のところ、単なる膠着状態(stalemate)ではなく、袋小路(impasse)に陥っている。プーティンは、遅かれ早かれ西側の支援の流れが弱まり、ロシアはドンバス、クリミア、その間の陸橋、あるいはウクライナの抵抗が揺らげば、より広い領土を固めることができると信じ続けている。

西側諸国がキエフに先進兵器をどの程度供給し続けるかは、戦争の展開を左右する、極めて重要な要素であることに変わりはない。

理論的には、西側の十分な支援があれば、ウクライナはロシアをウクライナ東部から追い出し、クリミアからも追い出すことができるかもしれない。しかし、実際には、ロシアがウクライナ全土を占領するということ以上に、そういうことは起きないだろう。

ポーランド、バルト三国、チェコ共和国は、プーティンをここで止めない限り、次は自分たちの番かもしれないと主張し、ロシアの完全な敗北を追い求めている。しかし、ソ連に支配された歴史や脆弱性を感じ続けていることを考えればそのような主張は理解できるが、そのような懸念は間違いである。ウクライナは特殊なケースだ。NATO加盟国との直接衝突はロシアにとって自殺行為であり、プーティンの戦争中の行動は、それを回避する決意を示している。

誰も直接そうは言わないが、ウクライナがロシア軍の占領している全ての地域から追い出すことを、ホワイトハウスが望んでいるかどうかさえ疑わしい。アンソニー・ブリンケンは慎重な姿勢を示し、ロシアは2014年以前の国境線ではなく、2022年以前の国境線に戻らなければならないと述べている。ウクライナがクリミアに進攻すれば、住民のほとんどがロシア人であり、モスクワの立場からすれば、他の地域と同じロシアの州であるクリミアは、まさにバイデン政権が阻止しようと決意している、厄介なエスカレーションを起こす危険性がある。ここ数カ月、ロシアが戦術核兵器を使用するという話はあまり聞かれなくなった。しかし、プーティンが、モスクワとワシントンの間に残された最後の主要な核軍備管理協定である新START条約への参加をロシアは停止すると発表したことは、核兵器というカードがまだテーブルの上にあることを微妙に思い出させるものだ。

連合国がベルリンを占領して終結した第二次世界大戦とは異なり、ウクライナの国旗がクレムリンの上空に掲げられる日が来るとは誰も想像していない。ロシアの全面的な敗北が否定されるのであれば、最終的には政治的解決が必要となる。最も可能性が高いのは、ロシアがウクライナの占領地を保持し、プーティンがそれなりの成功を主張する一方で、アメリカはウクライナがロシアの支配に抵抗できたのはアメリカの支援が決定的だったと主張できるような、ある種の妥協案[compromise](休戦協定や非公式の分離線[armistice or an informal line of separation])である。

このような結果があらかじめ決まっている訳ではないが、最も発生可能性が高い。もしそうなれば、ウクライナ国民はそれを裏切(betrayal)りと見なすだろう。西側諸国は大規模な復興支援を提供することで、そうした反感をやわらげようとするだろう。

これは幸せな見通しではない。しかし、戦争のほとんどは最悪の結末を迎える。今回のウクライナ戦争はそうではないと考える理由はない。

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ウクライナ戦争における停戦はモスクワに報酬を与え、西側の利益を損なうということになるだろう(A ceasefire in Ukraine would reward Moscow and undermine Western interests

スティーヴン・ブランク筆

2023年6月7日
『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/national-security/4037418-a-ceasefire-in-ukraine-would-reward-moscow-and-undermine-western-interests/

ロシアの侵略が継続中だ。世界情勢への初期段階での影響を最小限に抑えようとしたり、ロシアの勝利を期待したりしていた西側の専門家たちの中には、今や、ワシントンは、事実上、自らの愚かさの代償からモスクワを救う終盤戦戦略(endgame strategy)を打ち出すべきだと主張する人たちもいる。

この戦争には勝てない、何年にもわたる消耗戦になる、核のエスカレートは避けられない、などという多くの意見が出ている。従って、ワシントン(そしておそらくヨーロッパ)は、モスクワに少なくともその不正な目的の一部を管理させたままで、停戦を強制するために介入すべきである。

残念なことに、これらは私たちが昨年聞いて、飽き飽きしている議論と同じであり、戦闘の経過によって、こうした主張の内容は反証されることになった。こうした主張を行っている人々は西側諸国がウクライナを支援し続ける見通しも、ウクライナがフィールドで勝利する見通しも立てていない。この路線の主張者たちはまた、将来のロシアの攻撃を平和の名のもとに確実に抑止するであろうウクライナのNATO加盟についても、それがロシアの征服を正当化し、今後何年にもわたって平和を保障しないことになるとして、懐疑的な目を向けている。

ワシントンとその同盟諸国は、ヨーロッパの平和と安全保障に関してロシアと何らかの合意をすることは不可能であることを理解する時が来た。それどころか、キール・ジャイルズが著作の中で賢明にも示しているように、ロシアは自らの意思で、そして自らの内在的な政治的・文化的構造によって、西側諸国と根本的に戦争状態にあり、そして今もそうであるのだ。西側の政策において、近隣諸国よりもロシアの安全保障上の懸念を優遇する長年の傾向は、明らかに政策立案者たちを行き詰まらせている。ロシアの安全保障は、アメリカの同盟諸国やヨーロッパの安全保障の根拠として、もはや持ち出すことはできない。

ウクライナがNATOに加盟し、西側諸国が武器を供与し、政治的行動を起こすことだけが、ウクライナの勝利をもたらすことができるのは明らかである。米情報長官のアヴリル・ヘインズは現在、ロシアは新たな攻撃を仕掛けられないと考えている。つまり、ロシアの勝利はもはや実現不可能かもしれないが、ウクライナの勝利は、確かに大規模な支援が継続されれば可能なのだ。しかし、モスクワが西側諸国全体と戦争状態にあり、ウクライナがその震源地(epicenter)であり、唯一の動的舞台(kinetic theater)であるからこそ、その支援はアメリカとその同盟諸国の利益のために必要なのである。

従って、なぜこれほどまでに多くの専門家たちが、同盟諸国や私たち自身の利益や価値を犠牲にしてまで、ロシアをその犯罪の結果から救う必要があると考えるのかを問う価値がある。おそらく彼らは、ロシアが自国の力、特に核兵器について主張することに目を奪われているのだ。確かに、核兵器が持つ意図の一つは、見物人にロシアの力と影響力を印象づけることだ。しかし、ロシアの核兵器の威力は、自爆的なロシアへの侵攻を抑止するには十分すぎるほどだが、ウクライナを打ち負かすとなると、あまり役に立たないことが証明されている。

ロシアの力に媚びへつらう知的魅力の源が何であれ、ロシアの侵略と戦争犯罪を継続的に正当化する理由としては効果を持たない。実際、ロシアの侵攻に屈することは、ロシアをその犯罪と愚行の正当な処罰から救うことを意味し、この場合、国際法、秩序、アメリカの利益と価値を犠牲にしている。更に言えば、この戦争に勝利することは不可能であり、アメリカの政策に開かれた唯一の未来は、「停戦を押し付けようとしてロシアの帝国主義を目指す原動力(imperial drive)を永続させることだ」という主張は、ワシントン側の失敗の告白なのである。

この戦争は、その悲劇性は横に置いておいて、リチャード・ニクソン大統領が「平和の構造(a structure of peace)」と呼んだものを、他の場所ではなく、ヨーロッパに構築することを可能にしていることを認識しなければならない。このような構造は、ウクライナをヨーロッパ連合(EU)に加盟させることによって、1991年の失敗を是正し、同時に、ヨーロッパに限らず、恒久的な戦争や冷戦によってのみ達成可能なロシアの帝国的プロジェクトの進展を阻止できるのだ。

この戦争に勝利することはできない、とか、モスクワが勝利と主張できるようなものを与える交渉によってのみ終わらせることができるという考えは、意志と想像力(the will and the imagination)の両方の失敗を表している。道徳的欠陥は別として、この見解はウクライナだけでなくワシントンとその同盟諸国の国益をも裏切るものであるため、リアル・ポリテイーク(Realpolitik)の厳しいテストには合格するものではない。

ウクライナへの継続的な支援は、単に勝利をもたらすだけではない。より耐久性のある新たなヨーロッパにおける安全保障秩序をもたらすことができる。いずれにせよ宥めることなど不可能で、これからも攻撃的であろうモスクワを懐柔する必要性以上の何かに基づく秩序が生み出されるのだ。

※スティーヴン・ブランク(Ph.D.):外交政策研究所(Foreign Policy Research Institute FPRI)上級研究員。米陸軍大学戦略研究所教授(ロシア国家安全保障、国家安全保障問題)、マッカーサー記念研究員を務めた。現在、元ソ連・ロシア・ユーラシアの地政学、地理戦略を専門とする独立系のコンサルタントを務める。

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 古村治彦です。

 「人間は完璧ではない、間違う」ということが国際政治の大前提である。国際関係論という学問分野の一大学派、潮流であるリアリズムはそのように考える。これを前提にして、国際関係、世界政治を分析する。リアリズムを信奉する学者がどのようにウクライナ戦争を分析するかという内容の記事をご紹介する。分析者はリアリズムの大家スティーヴン・M・ウォルト教授である。

 まず、関わる各国の指導者たちは「計算間違い(miscalculation)」をしたということである。プーティンはウクライナに対して早期に目標を達成できると考えていた。キエフを占領して、ウクライナの体制を変更し、NATO加盟阻止、中立化できると考えていた。しかし、それはうまくいかなかった。それでもウクライナ東部保守という再設定された目標は達成されつつある。一方、西側諸国はウクライナとNATOを玩(もてあそ)び、ロシアを挑発し、刺激し続けた。「これくらいなら大丈夫だろう」という西側の甘い分析評価が今回の事態を招いたということになるだろう。そういう点で、計算間違いが引き起こした悲劇ということになる。

 人間は一度思い込んだらそれを変えることは難しい。そして、自制が利かずに過激な主張が幅を利かせることになる。ウクライナ戦争が始まって、私は2月中には「早期停戦」を主張した。しかし、多くの人々は、勇ましい言葉でロシアを非難し、ロシアの体制崩壊までやるんだということを叫び続けた。そうした人々は今でもウクライナをできる限り支援しているのだろうか。口だけでお前ら頑張れと言うのではあまりに無責任だ。

簡単に戦うとか戦争だという人たちこそ「平和ボケ」だと私は考える。本当に真剣に考えていたら、戦争だの戦うだという言葉を簡単に口に出すことはできない。戦場の苛烈さ、過酷さは、リアルな戦争映画なんかで見るよりも、更に厳しいものだということは想像できる。平和な日本にいて、想像力も働かない中で、安易に戦争だという言葉を口にすることこそは平和ボケである。勇ましい言葉が出てくることこそ警戒しなければならない。そのような言葉を口にする人間ほど、最前線には行かないし、自分を危険に晒すことはない。特に政治家でそのような人物は要注意である。

 世界政治は人間がやることだから間違いがあっても仕方がないが、間違いによって人々が受けてしまう被害は大きなものとなってしまう。従って、常に慎重にかつ間違ったと思ったらすぐに修正できるように動くべきである。自分たちの理想や価値観だけで暴走してしまうとそのような柔軟な動きはできない。こうしたことは私たち自身の生活にも適用できる教訓だ。

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ウクライナ戦争1年から得られる5つの教訓(The Top 5 Lessons From Year One of Ukraine’s War

-ヨーロッパにおける野蛮な戦いは厳しいが、教訓を与えてくれる教師である

スティーヴン・M・ウォルト筆
2023年2月9日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/02/09/the-top-five-lessons-from-year-one-of-ukraines-war/

2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻して以来、両軍はそれぞれ10万人以上の死傷者を出し、戦車などの装甲車も数千台失われた。ウクライナの経済はおよそ30%縮小し、人口の30%以上が避難を余儀なくされている。インフラは破壊され、発電能力の40%が損なわれている。どちらかといえば、モスクワ、キエフ、そしてウクライナの西側支援者たちは、妥協(compromise)を許さず、停戦(cease-fire)を検討する気さえないようである。

戦争は、厳しいが教訓を与えてくれる教師だ。ここでは、ウクライナにおける1年間の戦争から、世界中の指導者と国民が学ぶべき5つの教訓を紹介する。

教訓その1:指導者たちは簡単に計算間違いする(It is very easy for leaders to miscalculate

私が昨年末に書いた通りになっている。ウラジミール・プーティン大統領は、「ウクライナに本格的な抵抗はできないし、抵抗しても無駄だ」と考えていたことは今や明らかである。ロシアの軍事力、ウクライナの粘り強さ(tenacity)、そしてロシアに代替するエネルギー源を見つける西ヨーロッパの能力を見誤っていた。しかし、西側諸国にも間違いがあった。何年も戦争の可能性を軽視し、経済制裁(economic sanctions)の威力を誇張し、ウクライナを自国の軌道に乗せようとする西側の努力に対するロシアの反発の深さを過小評価した。この事例では(他の多くの事例と同様)、実際の戦闘が始まるずっと前から、戦場の霧(fog of war、訳者註戦争における不確定要素)が私たちの視界を覆い隠していた。

教訓その2:国家は侵略に対して団結する(States unite to counter aggression

ウクライナ戦争はまた、国際システムの中で国家は通常、明白な侵略行為に反対するために団結することを思い起こさせる。これもプーティンが見落とした教訓である。それは、プーティンは、ウクライナがすぐに陥落すると考えていたことに加え、NATOがこれほど強力に反応することはないと考えていたようだ。ロシアは、弱い相手と1対1で戦うのではなく、GDPがロシアの約20倍もある国家連合に支えられた国を相手に戦争を仕掛けている。その国家連合は、世界で最も洗練された兵器を生産し、ロシアのエネルギー供給から自らを切り離し始めている。後述するように、外部からの支援によってウクライナの勝利が約束される訳ではない。しかし、プーティンが楽勝(cakewalk)だと考えていたことが、長引く不確実な苦難に変わってしまった。この戦争が最終的にどのような結末を迎えるにせよ、ロシアは将来的に大いに弱体化することになる。

国家が侵略者に対してバランスを取って対峙するのは、征服に成功した者がさらなる挑戦をすることを心配するからだ。このような懸念は時に誤りだ。つまり、修正主義的な国家は、自分たちが満足するように現状を変化させれば、満足することができる。しかし、他の国家は、少なくとも当初はこのことを確信できないので、さらなる問題を抑止するために、あるいは抑止が失敗した場合にそれを打ち負かすために、力を合わせる。この傾向は、スウェーデンとフィンランドが数十年(スウェーデンの場合は数百年)の中立を捨ててNATO加盟を目指したことほど明確なものはないだろう。現在支配していない領土の奪取を望む世界の指導者たちは、注意を払う必要がある。露骨な侵略行為は、他の強力な国家を敵に回すことになりかねない。もしそうなれば、軍事作戦が成功しても、侵略者は以前より安全でなくなる可能性がある。

教訓その3:終わりが来るまでは終わりではない[諦めればそれで終わり]It ain’t over till it’s over

アメリカ人は、戦争とは衝撃と畏怖(shock and awe)に満ちた短期間の発作(brief spasm)であり、戦争終了後、勲章が授与され、勝利のパレードが行われるものだと考えたがる。アメリカの最近の対戦相手が三流国であり、それぞれの戦争の初期軍事段階が短くて一方的であったことを考えれば、この傾向は驚くにはあたらない。イラクとアフガニスタンの戦争は結局何年も続いたが、それはアメリカがそれぞれの国を占領し、広範囲に及ぶ政治・社会改革を行うことを選んだからに他ならない。その結果、強力な反乱軍が発生し、許容できるコストで相手を倒すことができなくなった。

ウクライナの戦争は違う。ロシアの最初の攻撃は阻止され、キエフでの迅速な政権交代という目標も達成できなかった。12カ月を経た今も、2つの主権国家の通常戦力が戦場でしのぎを削り、相手側に圧力をかける新しい方法を模索している。何度か運命を変えながらも、両者ともノックアウトの一撃を与えることはできていない。

プーティンは、戦争が短時間で安く済むと誤解していた。ロシアによるキエフへの最初の攻撃が失敗し、ロシア軍が大きな損害を被ったとき、ウクライナとその支援者は、外部からの寛大な援助、ウクライナの決意、大規模な経済制裁によってロシアに決定的な敗北を与え、大国の仲間入りをさせることもできると考えた。昨年夏から始まった反撃の成功は、クリミアを含む全ての領土を取り戻すというキエフの希望を強くした。モスクワでの政権交代を夢見る専門家たちもいる。

しかし、ロシアはウクライナの3倍以上の人口、大規模な軍需産業、軍備を有する大国である。その指導者たちは、この戦争をロシアが勝たなければならない存立危機事態戦争(an existential conflict)と見なしている。ウクライナの都市やインフラに対するミサイルやドローンによる攻撃は、かなりの損害を与えている。消耗戦(grinding war of attrition)はウクライナに有利ではない。それゆえ、最近、ウクライナは戦車を含むより多くの武器と訓練を受けることを急いでいる。外部からの支援により、春にはキエフが戦線を維持し、限定的な利益を得ることができるかもしれないが、現在支配している全ての領域からロシアを追い出すことは、いくら支援を送っても不可能かもしれない。また、核兵器の使用を含むエスカレーションの可能性もあり、この危険性を否定する識者もいるが、完全に排除することはできない。

教訓その4:戦争は過激主義者たちを力づけ妥協が難しくなる(War empowers extremists and makes compromise harder

戦争は利害関係の度合いが大きいため、冷静な理性と慎重な計算(cool reasoning and careful calculation)が特に重視されるべき時である。しかし、残念ながら、その代わりに、威勢のいい言葉(bluster)、希望的観測(wishful thinking)、道徳的な姿勢(moral posturing)、愛国的な大見得(patriotic chest-thumping)、集団思考(groupthink)が支配し、強硬な意見がより冷静な声をかき消してしまうことがしばしばある。その結果、たとえどちらの側にも勝利への明確な道筋がない場合でも、あらゆる種類の妥協(compromise)について議論することが難しくなる。戦争がなかなか終わらない理由はこれだけではないが、重要な理由の1つとなる。

数カ月前に詳述したように、ウクライナをめぐる一般市民の議論は、非常に激しいものとなっている。タカ派の専門家たちは、キエフへの支持を表明することで互いにしのぎを削り、別の視点については、甘さ、不道徳、親ロシア、あるいはそれ以上のものと中傷する。(反対側(ロシア側)でも同じようなことが起きているのかもしれない。つまり、戦争に関するロシアのコメントから信頼できる推論を導くのは難しいが、プーティンの最も声高なロシア人批判者は、プーティンが十分な勢いと冷酷さをもって戦争を遂行しなかったと非難する強硬派が多いようである。

ウクライナの熱烈な支持者が正しく、キエフの全領土解放のために西側諸国は「必要なことは何でもする(whatever it takes)」べきだということはあり得る。しかし、政治外交雑誌『アトランティック』誌やア大西洋評議会に属するタカ派の人々(東ヨーロッパの率直な政治家は言うに及ばず)は、自分たちが間違っているかもしれないと自問したことがあるのだろうかと私は考えてしまう。戦争を長引かせることが、ウクライナにとってより悪い結果をもたらす可能性はないのだろうか。この点については、かなり気になる歴史がある。ヴェトナム、イラク、アフガニスタンでは、現地軍に対する外部からの手厚い支援が戦争を継続させたが、アメリカが最終的に勝利は不可能と判断して帰国した時に、これらの国がより良い状態になることはなかった。確かに、アメリカとNATOの軍隊はウクライナで戦ってはいないが、私たちはこのゲームに多くの利害関係を持っている。平和(peace)や停戦(cease-fire)はまだ先のことかもしれないが、それをどうやって止めるかを考えることは、全ての人にとって、特にウクライナにとって利益となる。

教訓その5:自制の戦略は、戦争のリスクを減らすことができただろう(A strategy of restraint would have reduced the risk of war

最後の教訓は、間違いなく最も重要なことだが、アメリカが外交政策上の自制戦略(strategy of foreign-policy restraint)を採用していれば、この戦争の可能性ははるかに低くなっていたであろうということだ。もしアメリカや西側の政策立案者たちが、ウクライナを西側の安全保障や経済制度に取り込もうとするのではなく、無制限のNATO拡大がもたらす結果についての度重なる警告(ジョージ・F・ケナン、超党派の経験豊富な専門家からなる幅広いグループ、同様の著名外交官や防衛当局者からなるこのグループ、元駐露大使でもあるCIA長官ウィリアム・バーンズの助言など)に従っていれば、ロシアの侵略意欲は大きく減じたはずだ。残虐で違法な戦争を始めた第一の責任はプーティンにあるが、バイデン政権とその前任者たちにも罪はないわけではない。ウクライナの人々は、プーティンの冷酷さだけでなく、欧米諸国の当局者たちの傲慢さ(hubris)と甘さ(naivete)にも苦しんでいる。

ボーナスの教訓:指導者が問題だ(当たり前のことだが)(Leaders matter (duh)

大きな構造的な力(structural forces)を重要視するリアリストたちでも、個々のリーダーが重要な場合もあると認識している。それもかなり重要だと認識している。NATOの拡大(特にウクライナへの拡大の可能性)に反対する声はロシアのエリートの間で広まっていたが、ロシアの指導者がプーティン以外の人物であれば、1年前に「戦争に賭ける(roll the iron dice of war)」ことを選ばなかったかもしれない。また、より想像力に富み、独断的でない米大統領であれば、迫り来る危機を沸点に達する前に和らげるために、もっと多くのことを行ったかもしれない。次に、もしウクライナの大統領がヴォロディミール・ゼレンスキーではなく、ペトロ・ポロシェンコだったら、この戦争はどうなっていたかを考えてみよう。ポロシェンコは、ゼレンスキーのように国民をまとめ、外部からの支持を得ることができただろうか? そうは思えない。あるいは、ジョー・バイデンの代わりにドナルド・トランプがホワイトハウスにいたとしたらどうだろう?

構造的な力は、国家ができることを制約するが、それだけで結果が決まる訳ではない。国家指導者は、直面する状況をどのように乗り切るか、できる限り自由に決定できる限り、主体性をもっている。そして、その選択には最終的な責任がある。この事実を踏まえ、モスクワ、キエフ、ワシントン、ブリュッセル、ベルリンなどで現在指揮を執っている人々は、教訓その3(「終わるまで終わらない(It ain’t over till it’s over」」)、とりわけジョージ・W・ブッシュ(「任務完了(Mission Accomplished)」)の運命に特に注意を払うべきである。この戦争はまだ終わっていない。今日、大胆で効果的なリーダーシップ(あるいは無能な不正行為)として見られるものも、銃声が静まり、最終的な費用が集計されれば、多少違って見えるかもしれない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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古村治彦です。

2月上旬、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領はイギリスをサプライズ訪問した。イギリスではリシ・スーナク首相、リンジー・ホイル下院議長、更にはチャールズ国王と会談を持った。ウクライナ戦争が始まって以来、ウクライナを離れる機会がほぼなかったゼレンスキー大統領がイギリスを直接訪問し、これまでの支援を感謝し、更なる支援、特に戦闘機の支援を求めたことには重大な意味がある。それは、「ウクライナ戦争の停戦が困難なのはイギリスがいるからではないか」「日露戦争をアナロジーとして考えると、ウクライナを利用してロシアを消耗させようとしているのはイギリスではないか」ということが考えられるからだ。
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ウクライナ支援について見ていくと、アメリカが圧倒的な割合を占めている。イギリスは2番目だと威張っても、その割合は小さなものだ。NATO分で出しているという主張もあるだろうが、大英帝国だと威張っている割にはその額は少ない。しかし、戦争が始まって以来、イギリス政府関係者は声高に対ロシア憎悪を言葉にしている。
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 西洋諸国はウクライナ支援を行っているが、ウクライナが求めているジェット戦闘機の供与だけは行っていない。また、飛行禁止区域設定も行っていない。これはそのようなことをすれば、供与を行う国々が戦争当事国となり、ロシアから宣戦布告されて、戦争に巻き込まれ、ロシアからのミサイル攻撃(核兵器使用を含む)を受けるという懸念があるためだ。アメリカ国内ではウクライナ戦争の停戦を求める声、ウクライナへの支援を減額するように求める声、ロシアからの天然資源輸入を再開するように求める声が出ている。アメリカとイギリスの間にはウクライナ戦争をめぐる態度で温度差がある。
 戦争を継続してウクライナ領土の再獲得を目指しているヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は今の状態で停戦すれば、国民からの批判に晒されることが考えられる。クリミア半島を含む1991年に独立した際の領土を全て再獲得するまでは戦争を止めることはできない。戦争を止めれば自身の政権も危うい。そうなると、頼るのはイギリスということになる。アメリカはいつ手の平を返すか分からない。イギリスは北海油田の産油を西ヨーロッパに売りつけたいという意向もある。戦争継続はイギリスとゼレンスキー政権の共通の「利益」である。

 戦争では誰が儲かるのか、利益を得るのかという視点から事態を見ていくことも大事だ。そうすれば戦争の別の側面も見えてくる。

(貼り付けはじめ)

ゼレンスキー大統領が訪英、英首相や国王と会談 議会で演説し戦闘機求める

202328

更新 202329

https://www.bbc.com/japanese/64567813

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が8日、イギリスを訪れ、首相官邸でスーナク首相と会談した。昨年2月にロシアがウクライナに侵攻して以降、ゼレンスキー氏の訪英は初めて。その後、議会で演説し、イギリスの支援に感謝するとともに、戦闘機の供与を求めた。

ゼレンスキー氏の訪英は、イギリス軍がウクライナ兵に実施してきた訓練を、ウクライナの戦闘機パイロットや海軍歩兵にも拡大するとの見方が出ているタイミングで行われた。

ウクライナのパイロットが将来的に北大西洋条約機構(NATO)水準の戦闘機を操縦できるようにする計画は、以前から発表されていた。ウクライナはかねて、これを主要な要請として掲げていた。

首相官邸は、スーナク氏がゼレンスキー氏に対し、ウクライナの重要な国家インフラを標的にするロシアの能力を削ぐ「長距離能力」の提供を申し出るとしていた。

また、イギリスによるウクライナ兵の訓練を拡大し、さらに2万人を対象とする見込みだとした。

イギリスの支援に感謝

ゼレンスキー氏はスーナク氏との会談後、議事堂のウェストミンスター・ホールに移動し、上下両院の議員らを前に英語で演説。「塹壕(ざんごう)の中にいて、ウクライナを敵のミサイルから守ってくれている、戦争の英雄たちの代理として」自分はやって来たのだと述べ、イギリスがウクライナ兵に装備と訓練を提供していることに感謝した。

また、ロシアが侵攻した「初日から」イギリスはウクライナを支援していると強調。ボリス・ジョンソン元首相を名指しし、「ボリス、あなたは絶対に、絶対に無理だと思われていた時に、諸外国を団結させた。ありがとう」と語りかけると、聴衆からは大きな拍手が湧いた。

ゼレンスキー氏はさらに、ウクライナとイギリスの国民は共に、第2次世界大戦で自由を守り抜いたと指摘。「私たちの国民は危機に見舞われた」ものの、粘り強さを発揮したとした。

その上で、「自由は勝利する」、「ロシアが負けるのは明らかだ」と強調し、拍手を浴びた。

戦闘機を求める

ゼレンスキー氏は演説で、戦闘機を「自由のための翼」と表現。ウクライナへの供与を、英議員らと世界に対して要望した。

ロシアが今月後半にも新たな攻勢をかける見通しの中、西側諸国はウクライナへの支援をどう増強するか検討している。

イギリスは戦闘機の供与について、「現実的ではない」としている。スーナク氏の報道官は先週、英軍の戦闘機は「極めて高度で、操縦を覚えるのに何カ月もかかる」と述べた。

一方でイギリスはすでに、主力戦車「チャレンジャー2」を14台供与すると発表している。ウクライナ軍に操作の訓練も提供する予定だ。

これを踏まえてゼレンスキー氏は、演説の中で戦車の供与に言及。「防衛面でのこの強力な一歩について、感謝しています、リシ」とスーナク氏に語りかけた。そして、「世界は本当に自由を守る勇者を助け、新たな歴史を作っていく」と述べた。

ゼレンスキー氏はまた、演説の途中で、リンジー・ホイル下院議長にウクライナの戦闘機パイロットのヘルメットを贈った。

ヘルメットには「私たちには自由がある。それを守るための翼を与えてください」と書かれていた。

英政府はこの日、ロシアへの新たな制裁を発表。IT企業や、ドローンやヘリコプターの部品などの軍事機器を製造する企業などを対象にした。

ゼレンスキー氏は演説で、「ロシアが戦争資金を調達する可能性がなくなるまで」制裁を続けるよう、イギリスと西側諸国に求めた。

英国王と会見

ゼレンスキー氏は議会での演説後、バッキンガム宮殿でチャールズ国王と会見した。

国王がゼレンスキー氏に会うのはこれが初めて。

ゼレンスキー氏は議会での演説で、国王はまだ皇太子だったころからウクライナを支援してくれたとし、全国民の感謝の気持ちを伝えるつもりだと述べていた。

フランス大統領府の報道官によると、ゼレンスキー氏はこの後、パリ・エリゼ宮に移動し、エマニュエル・マクロン大統領と、ドイツのオラフ・ショルツ首相と会談する予定だという。

ゼレンスキー氏は9日には、欧州連合(EU)首脳会合に参加する見込みとなっている。

ゼレンスキー氏は昨年3月、英下院でビデオ演説した

ゼレンスキー氏は昨年3月に、英議会にビデオリンクで参加。英下院で演説した初の外国人首脳となった。

同氏がロシアによる侵攻以降で外国を訪問するのは、昨年12月のアメリカとポーランドに続いて3カ国目となる。

昨年の訪米では議会で演説。「ウクライナは決して降参しない」と述べ、何回かスタンディングオベーションを受けた。

ジョー・バイデン大統領もその際、「パトリオット」ミサイル防衛システムの供与など、ウクライナへの支援拡大を約束した。

ゼレンスキー大統領をめぐっては、今週ベルギーのブリュッセルを訪問するとのうわさが流れていた。9日に欧州議会で演説し、欧州連合(EU)の首脳会談にも参加するとみられている。

ただ、この情報が今週初めに流出したため、セキュリティー上の懸念からブリュッセル訪問は中止になるとの見方も出ている。

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ウクライナでのロシアの戦争が1年近く経過した中で、ゼレンスキーはイギリスを訪問した理由(Why Zelenskyy visited the U.K. nearly 1 year into Russia's war on Ukraine

ウィレム・マルクス筆

2022年2月8日

NPR

https://www.npr.org/2023/02/08/1155360051/zelenskyy-russia-ukraine

ロンドン発。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、約1年前にロシアがウクライナに侵攻して以来、ほぼ行ってこなかった国外訪問の1つとして、イギリスを訪問し、人々を驚かせた。

ゼレンスキー大統領は、予想されるロシアの攻勢と領土を取り戻すためのウクライナの反撃を準備するために、ウクライナの強力な国際的支援者からより高度な武器をウクライナ軍に供与するように求めている。

ウクライナの指導者はリシ・スーナク首相と会談し、イギリス議会で演説を行い、イギリスの支援と兵器に感謝した後、すぐに更なる支援(特に戦闘機)を要求した。また、チャールズ3世とも会談した。

フランス政府は、水曜日にゼレンスキーがパリを訪れ、エマニュエル・マクロン仏大統領とオラフ・ショルツ独首相と夕食を共にすることを確認したばかりで、今回の外遊はゼレンスキーの予告なしのヨーロッパツアーの最初の足取りとなる。木曜日には、EU理事会のシャルル・ミシェル議長が彼を招待したため、他のEU首脳との会談のためにブリュッセルに移動する可能性もある。

ゼレンスキー大統領がイギリスを訪問した理由は以下の通りだ。

●規模第2位のウクライナ支援者(Ukraine's second-biggest backer

イギリス議会によれば、イギリスはアメリカに次いでウクライナにとって2番目に大きな支援国であり、2022年2月以降、27億ドル相当の軍事支援を約束しており、今年もそれに匹敵する支援を約束するとしている。イギリスは、ロシアの侵攻に対して経済制裁を加える上で重要な役割を担っている。そしてスーナク首相もまた、前任者と同様にキエフを訪問している。

また、スーナク首相は先月、ウクライナにチャレンジャー2戦車を贈ることを約束したが、これは米国とドイツが戦車供与を発表する2週間前のことだった。ウクライナ軍の要因たちが1月29日にイギリスに到着し、イギリスの戦車で訓練を受けた。

しかし、ウクライナは更に一歩踏み込んで、戦闘機の提供を求めている。

ウクライナの防空は、ロシアがウクライナ領土の広い範囲を支配することをほぼ防いできた。しかし、自国の格納庫には、ソ連時代のスペアパーツに頼らない運用可能な航空機がほとんど残っていないと英国のシンクタンク「英国王立防衛安全保障研究所(Royal United Services Institute)」の国際安全保障担当部長ニール・メルビンは指摘している。メルビンによれば、西側の航空機システムの採用を拡大しなければ、ウクライナ軍は長期的に、陸上部隊の攻撃力に見合うだけの空戦力を身につけるのに苦労することになると主張した。

●イギリスは戦闘機の訓練を約束したが、今のところジェット機の提供はない(Britain promised warplane training, but so far no jets

ゼレンスキー大統領は、12月のアメリカのように、国防費を決定するイギリス議会から承認を求めるという他の国々で使ってきた戦術を継続した。

水曜日にウェストミンスター・ホールで行われた演説で、彼はリンゼイ・ホイル下院議長に象徴的な贈り物をした。その贈り物とは「我々は自由を持っている、それを守るために翼を与えよ」と書かれた戦闘機パイロットのヘルメットだった。

イギリス政府は、ウクライナ軍に対する軍事訓練を、戦闘機のパイロットまで拡大すると発表した。「この訓練によって、パイロットは将来的にNATO標準の高性能戦闘機を操縦できるようになる」とイギリス政府は声明の中で述べた。

この誓約には戦闘機の提供を約束するとまでは書かれていない。

しかし、ロイター通信は、イギリス政府報道官は記者団に対し、「スーナク首相は国防相に、どのようなジェット機を提供できるかを調査するよう命じたが、はっきり言って、これはウクライナが今最も必要としている短期の能力ではなく、長期の解決策である」と述べたと報じた。

●イギリス国民の支持を維持する(Maintaining public support

何世紀もの歴史を持つイギリス議会の衣装や儀式用ローブの中で、いつものアーミーグリーンのスウェットシャツを着たこの戦時大統領の姿は、イギリス国民にウクライナの軍事的必要性を思い起こさせるものとなるだろう。

ロシアと戦うウクライナに対するイギリス国民の支持は依然として高い。戦争が始まって数カ月、ウクライナ人の家族を家に迎え入れた何万人もの英国人に代表されるように、ウクライナの人々に対する関心も高いのである。

1月24日に発表されたイプソス社の世論調査の結果では、イギリス人はウクライナ人を助け、ロシアを孤立させる努力を続けることに、調査対象の他の国よりも強い支持を表明しているということになった。

ゼレンスキーは、この支持を当然とは考えていないようだ。今回の訪問は、政治家だけでなく、イギリス国民にも戦争がまだ終わっていないことを思い知らせるためのものなのかもしれない。

アレックス・レフがワシントンからこの記事の作成に貢献した。
(貼り付け終わり)

(終わり)

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