古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:中国

 古村治彦です。

 今回は、タイ南部に建設計画があるタイ運河に関する論考を紹介する。タイ南部半島部の一番狭い地峡(ちきょう)に2本の運河を建設するというものだ。これで、現在、マラッカ海峡に集中している海運が分散されることになる。また、日本や朝鮮半島、中国に向かう航路がだいぶ短縮されることになる。

thaicanalmap001 

タイ運河の計画地図

 このタイ運河を中国の戦略から見れば、「真珠の首飾り(String of Pearls)」と呼ばれる、「インド包囲網」計画と海上の「一対一路」計画において重要な役割を果たすことになる。中国は東南アジア地域に勢力を伸ばしつつあり、インドはそれを警戒している。中国はインド洋にも進出しようとしている。アフリカ東部地域には既に中国から多額の資金が投じられており影響下に入っている。「真珠の首飾り」計画の地図を見ると、インド包囲網計画は進んでいるようである。

stringofpearlschinamap001 

「真珠の首飾り」

 真珠の首飾りの拠点となるのが、カンボジアのシアヌークヴィルとミャンマーのチャウピューだ。タイ運河が完成すれば、この2地点を結ぶことは容易になる。また、タイ運河に関して言えば、シンガポールやマレーシアに封鎖されてしまえば、マラッカ海峡で身動きが取れない(チョークポイントと呼ばれる)ことになり、現在この航路が主要航路であるため、中国にとっては不安材料ということになる。タイ運河計画が決まれば中国は資金と技術を惜しみなく注ぎ込み、すぐに完成させるだろう。インドもただただ黙っている訳ではない。アンダマン・ニコバル諸島のインド空軍と海軍の能力を増強して、中国の進出に対抗しようとしている。

sihanoukvillekyauphyumap001 

シアヌークヴィルとチャウピューの地図

andamannicobarislandsmap001 

アンダマン・ニコバル諸島の地図

 タイの動きが重要となってくるが、下の論稿ではタイはアメリカの同盟国であるが、ここのところだいぶ中国寄りの姿勢を強めているということだ。それであるならば、タイ運河建設計画も進む可能性がある。もちろん、タイ国内の親米派はそれに反対するだろう。実際に、「運河ではなく、鉄道と高速道路を建設して代替にしてはどうか」ということを、運輸大臣が述べている。

 タイは新中国と親米、2つの姿勢を使い分けて自分たちにとって最良の利益を引き出すことだろう。これこそが強国ではない国が生き残る術だ。日本もタイに学ぶということをやるべきだ。アメリカにばかり賭けるというのは大変危険で、愚かしいことなのだ。

(貼り付けはじめ)

インドと中国との争いの次の最前線はタイ運河となるだろう(The Next Front in the India-China Conflict Could Be a Thai Canal

-中国政府がインド洋へより早く着くルートを求めている中でインドは島嶼部防衛を増強しつつある。

サルヴァトーレ・バボーンズ筆

2020年9月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/09/01/china-india-conflict-thai-kra-canal/

アメリカと中国との間の太平洋での新たな冷戦について忘れよう。現在、インドと中国との間のより熱い戦争が起きている。ヒマラヤ山脈地域の高地地域において国境争いがあり、既に少なくとも20名が死亡している。海洋地域では、中国は、同盟諸国と海軍基地でインドを包囲しようとしている。同盟諸国と海軍基地のつながりは刺激的な言葉「真珠の首飾り(string of pearls)」として知られている。中国の、インドを支配するための、対インド洋・インド戦略における最大の脆弱性は、マラッカ海峡にある。マラッカ海峡はシンガポールとスマトラを分ける狭い海洋航路である。この航路を海運のほとんどが通過しなければならず、中国の海運貿易にとっての命綱であり、中国海軍が南アジア、さらに西側に向かう際の主要航路である。中国とインドのライヴァル関係を考慮し、かつ中国のアフリカ、中東、地中海地域などに対する戦略的な野心も考慮すると、敵意を持つ超大国間にある狭いチョークポイントへの依存を削減するものは何であっても、中国にとっては極めて重要である。

中国政府の、賛否両論のある社会資本プロジェクトの一対一路の中で最も野心的なものがある。それはタイ南部のクラ地峡に運河を通すという計画で、長年議論が続けられてきた。クラ地峡はマレー半島の中で最も狭い場所になっている。この運河が開設されると、中国からインド洋につながる2つ目の海上ルートとなるだろう。その結果、中国海軍は、マレーシアを遠回りする700マイルの航路をショートカットして、南シナ海とインド洋に新たに建設した各基地の間で艦船をすばやく移動させることができるようになるだろう。そのため、タイ運河は中国にとって重要な戦略的財産となるだろう。そして、タイの狭い南部半島地域を取り巻く引き縄となる可能性もある。タイが中国に対して運河建設のために300億ドルの投資を認めるならば、中国に関係する弧が永続的に接続されることになるだろう。

長年議論が続いたが、タイ運河は対国内の政治エリートの間で支持が拡大しているように見える。今月に入り、議会の委員会はタイ運河プロジェクトについての勧告を行った。歴史的に政府に対して批判的な『バンコク・ポスト』紙でさえもタイ運河プロジェクトに好意的な論説を発表した。タイ国内における中国の影響力浸透計画は世論形成に大きに寄与している。タイは名目上アメリカと同盟関係を結んでいるが、2014年にアメリカがタイ国軍のクーデターによる政権掌握を承認することを拒絶して以降、タイ政府は中国寄りに大きく傾いている。

タイ運河プロジェクトは「インドを包囲する」という中国政府の計画に適するものとなる。中国海軍はベンガル湾とインド洋に勢力を拡大しようとしている。アフリカ東部にジブチに物資基地を開設し、ミャンマー、バングラデシュ、パキスタン、イラン、そしてロシアの各海軍と同地域で共同軍事演習を行っている。同地域の中国が資金を出している港湾整備計画はインド包囲網を印象付けている。インドは将来の中国との海上での衝突の可能性に備えて海軍を増強している。今年8月、『ヒンドゥスタン・タイムズ』紙は、インド軍は、中国と対抗するために、アンダマン・ニコバル諸島(Andaman Nicobar Islands)にある空軍基地と海軍基地の能力を増強する計画を持っていると報じた。これらのインド領の人口は50万以下であるが、これらの島々はマラッカ海峡とインド洋の航路を結んでいる。また、これらのインド領の島々は、「タイ運河は脅威とはならない」という主張を行う際の根拠となるものだ。

マラッカ海峡は数千年とは言わないが何世紀にもわたり国際商業にとって重要な回廊であった。イタリアの冒険家マルコ・ポーロはフビライ・ハーンの宮廷から帰国する途中でマラッカ海峡を通った。1292年のことだった。1400年代初頭、中国の明王朝の提督であった鄭和はインド、アフリカ、中東に向かう航海でマラッカ海峡を通過した。現在、年間に8万隻以上の船舶がマラッカ海峡を通過している。マラッカ海峡は東アジアにオイルを運び、工業製品を輸出するための重要な回廊となっている。現在のシンガポールの繁栄は戦略的な位置の上に作り出されたものだ。シンガポールは間が狭いマラッカ海峡の東南部の出入り口に位置している。

タイ運河協会(Thai Canal Association)は政治的に有力なタイ国軍と緊密な関係にある。タイ運河協会はタイの発展のために、タイ運河の両端に工業団地と物流拠点の建設することで、アジア地域の物流の大動脈となることができると主張している。確かにその主張には一理ある。工業関係の専門家たちの試算によると、現在の海運のレートと燃料コストを考えるとタイ運河は不経済(儲からない)ものとなるが、現在の航路となっているマラッカ海峡は海運量の点からその対処機能は限界に近付いている。マラッカ海峡に代わる現在の航路としてはインドネシアのスンダ海峡があるが、東側と西側を結ぶ海運にとっては大きな遠回りを強いられることになる。

現在のタイ運河計画は、「9Aルート」計画と呼ばれている。この計画では2つの運河の建設が提案されている。それぞれが30メートルの深さを持ち、幅は180メートルであり、全長は75マイルとなっている。タイ湾のソンクラー(Songkhla)からアンダマン海のクラビー(Krabi)を結ぶ計画となっている。

この提案された計画を進めることで、タイは2つに分裂するリスクを抱えることになる。タイ国内では現在、南部の3つの州で活発な反乱に直面している。これらの地域の人口の過半数はイスラム教徒であり、民族的にはマレー人である。タイ運河は北部のタイ「本土」と南部の分離運動との間の象徴的な境目となるだろう。タイ国軍の反乱に対する攻勢を止めることはできないだろうが、タイ運河はタイを数世紀にわたり分断することになるだろう。ひとたび運河が完成したら、そこには海水が流れ込む。そうなればタイは2つに分断され、タイ運河はタイ政府にとって大いなる失敗ということになるだろう。

これは、コロンビアがかつてパナマと呼ばれる北西部の地峡を掌握していたことを思い出させるだろう。パナマの独立論者たち(分離主義者たち)が1903年に反乱を起こした際、アメリカ海軍は新国家の独立を確保するために介入した。アメリカのパナマ運河地帯委員会(Isthmian Canal Commission)がその1年後にパナマに介入した。そして、1914年にパナマ運河は最終的にビジネスのために開放された。パナマはこれ以降、アメリカの実質的な保護国となっている。スエズ運河は1869年に開業した。1956年までイギリスとフランスの軍事介入の標的となった。スエズ運河は1975年まで地政学的なゲームの対象となった。そして、今日においても、エジプト政府はスエズ運河の対岸のシナイ半島でのイスラム原理主義者の反乱に直面している。

今日、タイの領土保全は比較的安定している。しかし、タイ運河プロジェクトが成功すると、東南アジアの政治的地理を再設定することになるだろう。それによって、中国は永続的な安全保障に関するパートナーとして迎えられることになるだろう。そうなれば、中国を追い出すことは容易なことではなくなる。このことはパナマの事例を見れば明らかだ。カンボジアのシアヌークヴィル(Sihanoukville)とミャンマーのチャウピュー(Kyaukphyu)のような港湾開発への投資計画とまとめて、中国はタイ運河を、「真珠の首飾り」をつなぐための戦略的な運河と考えるだろうタイ政府が中国に対して敵対する姿勢を取るならば、この繁栄の弧を切断する脅威となる。中国が国益を守る必要性を正当化の理由として、対国内に介入し、タイ南部の独立運動を支援し、タイ運河のコントロール権を掌握するという話は全く荒唐無稽ということではない。繰り返しになるが、パナマ建国の事例が教訓になる。

タイ運河が持つ危険性を嗅ぎ取ったのだろうか、タイの運輸大臣サックサヤーム・シットチョーブは最近になって、運河に代わって、地峡に鉄道と高速道路を建設する方が良いと発言するようになった。シットチョーブは、地峡の2つの面に建設する2つの港湾に関する研究のためにタイ政府は資金を提供すると発言した。そして、「大地の橋梁」で2つを結んで物資を運ぶとした。

タイ運河はアメリカ、アメリカの同盟諸国、インドにとってさえも大きな脅威にならないだろう。インドはアンダマン・ニコバル諸島の前進基地の機能を強化することで、中国の拡張主義に効果的に(しかしかなりの予算が必要となるが)対抗することが可能である。本当の懸念は、ミャンマーやカンボジアのような貧しい東南アジア諸国の独立を更に損なうことになるだろうというものだ。これらの国々は国内の市民社会が弱体であり、中国の介入に対して脆弱である。そして、これは究極的にタイにとって大きな危険となる。マラッカ海峡はシンガポールにとって恩恵となってきた。それは、シンガポールが外国からの影響から比較的自由である開放経済体制を持っているからである。タイは、中国に近づいて敢えて危険を冒す前に、これまでの教訓について熟慮すべきなのだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 ジョー・バイデンの息子ハンター・バイデンには金銭スキャンダルが付きまとう。ウクライナや中国でのビジネスに関してのものだ。しかも父ジョーがアメリカ合衆国副大統領に在任していた時期だ。そもそも父ジョーは30年以上連邦上院議員を務めたのだが、その時期にワシントンでロビイストをしていたということもいまから考えれば、「親の七光り、親の威光を使って仕事をしていた」ということになる。アメリカにだって「忖度」はある。「忖度」という言葉の英訳についてはこのブログでも紹介している。

※「「忖度(そんたく、SONTAKU)」、英語にしにくい日本語(2017年3月24日)」↓

http://suinikki.blog.jp/archives/69823078.html

 さて、この息子ハンターの疑惑、スキャンダルについて大手メディアは「黙殺」だった。また、ツイッターなどSNSではこのスキャンダルについて貼り付けたり、記事を紹介したりすることを禁止した。これは、アメリカ国民の「知る権利」を大いに侵害する行為だった。大手メディアがトランプ大統領や彼の家族に関する記事は何でもかんでも掲載し放題だったにもかかわらずだ。

 ある世論調査の結果では、「ジョー・バイデンのバカ息子ハンターのスキャンダル、疑惑について知っていたらジョーには投票しなかった」という有権者が結構な数いるのではないかと推測できる数字が出た。バイデンに投票した有権者の4.6%が、スキャンダルを知らなかったし、知っていればジョーに入れなかったと答えているのだ。

 今回の選挙の結果は総得票数でも、激戦各州の得票数でも僅差だった。従って、バカ息子ハンターの疑惑が知れ渡っていれば、結果は全く違ったものとなっていただろう。ジョー・バイデンが大統領になっても、ハンターのことは父親ジョーにとってアキレス腱、弱点として残り続ける。民主党内で「早くハリスが昇格しないかな」と考えている幹部たちがハンターのことをメディアにリークして、大手メディアが選挙期間中とは異なり、大いに報じることになったら、ジョーは不名誉な辞任も考えられる。生殺与奪の権を他人に握られる。

 ジョー・バイデンにとっては前途多難なことだし、何よりも選挙結果に影響を与えたメディアとSNSの罪は万死に値するということになる。

(貼り付けはじめ)

世論調査:ハンター・バイデンのスキャンダルをメディアが隠蔽したことはトランプの明確な勝利を盗んだ(Media's hiding of Hunter Biden scandal robbed Trump of clear win: Poll

ポール・ベダード筆

2020年11月13日

『ワシントン・イグザミナー』紙

https://www.washingtonexaminer.com/washington-secrets/medias-hiding-of-hunter-biden-scandal-robbed-trump-of-clear-win-poll

ジョー・バイデンに投票した有権者たちの中で十分な数の人々は彼の息子ハンターの金銭スキャンダルについて知っていれば、バイデンに投票しなかったし、それはトランプが明確な勝利を得るのに十分な数だった。

新しい調査によると、バイデンに投票した有権者のうち4.6%が、バイデンの息子の中国に関する金銭スキャンダルについて知っていれば、バイデンには投票しなかっただろうと答えた、ということだ。

「マクローリン・アンド・アソシエイツ」社がメディア・リサーチ・センター(MRC)のために行った世論調査の結果によると、バイデンに投票した有権者のうち36%がハンター・バイデンのスキャンダルについて知らなかった。その内の13%がもしスキャンダルを知っていたらバイデンに投票しなかっただろうと答えた。

bidentwitterwashingtonexammier001

MRCは「バイデンからのそのような有権者の移動は、トランプ大統領が選挙人289名を獲得して勝利していたということを意味する」と指摘している。MRCは2016年と2020年の大統領選挙においてトランプ選対のために働いた。

ハンター・バイデンのスキャンダルに関しては、保守的ではないメディアのほとんどが報じなかった。ツイッターとその他のSNSはスキャンダルに関しての報告の多くを禁止とした。

bidentwitterwashingtonexammier002

リンゼー・グラハム連邦上院議員は、バイデンが副大統領在任中にハンター・バイデンが海外で締結したビジネスに関する合意についての新たな発見は選挙結果を左右するだろうと予見していた。

MRC社の会長ブレント・ボゼルは次のように述べている。「隠蔽の影響について私たちは今良く認識している。バイデンに投票した有権者のうち4.6%がハンター・バイデンのスキャンダルについて知っていればバイデンには投票しなかったと答えている。ハンター・バイデンのスキャンダルは選挙の結果を変える可能性があったのである。メディアとシリコンヴァレーはこのことをよく分かっていたのだ。だから、彼らはハンター・バイデンのスキャンダルがアメリカ国民に届かないようにと積極的に行動したのだ。アメリカ国民は真実を知る価値を持つ人々だった。しかし、もはや時遅し、となってしまった」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 私は常々、子供の頃に見たアニメ「トムとジェリー」の言葉で、「仲よく喧嘩しな」ということが米中関係のみならず、外交関係においての基本だと考えている。人間関係でもそうだが、この「仲よく喧嘩する」はなかなか難しい。自分の方が優位に立とうとして、結局、言わなくても良いことを言ってしまい相手を深く傷つけ、関係を壊してしまうということが起きる。これは友人や知人関係だけでなく、家族関係も起きることだ。

 個人間の関係ならば、連絡をしないとか訴訟をするとかその程度で済むが、国同士の関係となると、国交断絶や戦争ということになれば、犠牲となる人間の数は格段に多くなる。従って喧嘩はしても良いが、決定的な断裂を招くようなことはしない、ということが重要になる。中国の歴史書やヨーロッパ近代の外交関係史はそのことを教えてくれている。

 ヘンリー・キッシンジャーが現在の米中関係について、お互いの非難合戦がエスカレートして取り返しがつかないようにするために「制限を設ける」ことを提唱したということだ。キッシンジャーは国際関係史、特にヨーロッパの歴史の専門家であり、第一次世界大戦のような人類史上初の長期にわたる総力戦が勃発した経緯については熟知している。

 そのキッシンジャーが米中関係の悪化に懸念を持っている。米中間の新しい冷戦(new cold war)という言葉も出て来ている。冷戦は米ソ間の共存という方向に進み、一面では「長い平和(long peace)」ということになった。もちろん、朝鮮半島やインドシナ半島の人々は長期にわたり戦争の厄災に苦しんだ。しかし、米ソ間の直接の戦争は起きなかった。

 米中間での新冷戦も米ソ間の冷戦と同様に直接戦争にならなければよいが、代理で戦争をさせられる国はたまったものではない。アメリカはインド、オーストラリア、日本を使って中国を封じ込めようとしている。アメリカは中国と直接対決するのではなく、これらの国々を使って、キャンキャンと吠え掛からせようとしている。

 アメリカが世界で唯一の超大国であり、警察官であるという構造は終わりを告げた。世界に自国のデモクラシーと資本主義を輸出するというおせっかいな正義感も終わりを告げることになる。今回の大統領選挙一つを取ってみても、デモクラシーの総本山、本家家元の国があの体たらくである。そんな国がデモクラシーの自由のと威張ってみても、「欠陥商品を押し売りするんじゃねぇ」と馬鹿にされるのが関の山だ。

 話が散らばってしまって恐縮だが、米中間は「仲よく喧嘩する」ことが重要である。

(貼り付けはじめ)

ヘンリー・キッシンジャーはアメリカと中国に対して世界大戦に向かう脅威やリスクに「制限」をつけるように求める(Henry Kissinger Calls on U.S., China to Set ‘Limits’ on Threats or Risk World War

ザカリー・エヴァンス筆

2020年10月8日

『ナショナル・レヴュー』誌

https://www.nationalreview.com/news/henry-kissinger-calls-on-u-s-china-to-set-limits-on-threats-or-risk-world-war/

ヘンリー・キッシンジャー元国務長官はアメリカと中国に対して、お互いに対しての脅威、もしくは世界大戦に向かうリスクに制限をつけるように求めた。

リチャード・ニクソン大統領の国務長官として、共産主義中国とアメリカとの間の関係構築を行ったことでキッシンジャーは高い評価を受けている。キッシンジャーは、米中両国の関係樹立の理由は中国の北方と西方で国境を接していたソヴィエト連邦に対する戦略的優位性を得るためとしている。

それから中国は世界第2位の経済大国となり、アメリカにとって最大のライヴァル国となった。両国の敵対関係はそもそも新型コロナウイルス感染拡大の初期から厳しくなっていった。現在97歳のキッシンジャーは水曜日、ニューヨークでの経済倶楽部においてヴァーチャルで講義を行い、その中で米中両国は両国間の争いに制限を設ける必要があるという警告を発した。

キッシンジャーは次のように発言している。「我が国の指導者たちと(中国の)指導者たちは脅威にまで進めないように制限について、そして制限をどのような内容にするかについて議論しなければならない。そんなことは全く不可能なことだという人もいるだろうが、もし不可能なままで推移すれば、第一次世界大戦に似た状況に陥ってしまうことになるだろう」。

キッシンジャーは、アメリカの政策立案者たちが「私たちに脅威を与える国が出てこないような経済世界を考えるべきだが、その目的の達成のために、他国が技術的な可能性を拡大することに対峙しその可能性を減らすような様式を採用するようにすべきではない」と説明した。

キッシンジャー元国務長官は過去にアメリカと中国との間の闘争の可能性について警告を発した。2019年11月、新型コロナウイルス感染拡大が起きる前に、キッシンジャーは北京でのある会合で両国は「冷戦の間際にいる」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 少し前にアメリカのドナルド・トランプ大統領が世界初の核実験75周年で、ロシアと中国に軍縮を呼びかけたというニュースを見た。「アメリカが偉大である」ためには「核兵器の優位」が必要だとでも言うのかと思ったが、核兵器に関しては軍拡競争はしたくないという姿勢を見せた。

 太平洋戦争の最終盤で日本の広島と長崎にそれぞれ原子爆弾が投下されてから、実際の戦争で核兵器が使用されたことはない。アメリカ一国のみが核兵器を保有しているという状態は長くは続かず、1949年にソ連が核実験に成功し、核保有国となった。1964年には中国も核実験を成功させた。世界の核保有国は10か国程度である。第二次世界大戦後の冷戦時代、核兵器の使用はなかったが、キューバ危機では核戦争の危機が高まった。

 核不拡散条約(Non-Proliferation Treaty)は、1968年に締結された。この条約はアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5か国以外の国々の核兵器保有を禁止するというもので、国連常任理事国以外には核兵器を持たせないぞ、というものだ。戦後国際体制を作った戦勝国が世界を支配し、それら以外は従えというものだ。インド、パキスタン、イスラエルはこの条約には加盟していない。また、北朝鮮は1993年に条約から脱退した。そのために、五大国の思惑とは異なり、核兵器は拡散している。

アメリカとロシアはそれぞれ6450発、6490発の核弾頭を保有し、1600発を実戦配備している。イギリス、フランス、中国はそれぞれ200発から300発の核弾頭を保有している。NPTに批准していないインド、パキスタンは100発以上の核弾頭を保有していない。また北朝鮮も100発以内の核弾頭を保有している。イスラエルは正式な核兵器保有を認めていないが、保有が確実視されている。イランは核開発の疑いを持たれている。

 アメリカもロシアも世界を何度も全滅させることができるほどの核弾頭を保有しているが、核兵器軍縮について、「囚人のジレンマ(prisoner’s dilemma)」という考えから見ていこう。

ジレンマとは「板挟み状態」のことだ。2人の犯罪者ABが捕まり、別の場所で取り調べを受ける。ABが両者ともに完全に黙秘をすれば、2人とも懲役2年となる。どちらか一方が自白をすれば、自白をした人間は懲役がなく、もう一方は10年の懲役となる。どちらともに自白をすれば2人とも懲役5年となる。この条件はそれぞれに伝えられているが、ABとも相手が自白をしたかどうかは分からない。

 この場合、Aの置かれている立場を考えてみる。Bが黙秘する場合、Aが黙秘したら懲役2年、Aが自白をしたら懲役0年」となる。これだとAは自白したほうが得となる。Bが自白する場合、「Aも自白をしたら懲役5年、Aが黙秘をしたら懲役10年」となる。この場合もAは自白したほうが懲役が短くなるので得となる。従って、Aは自白をするという選択肢になる。Bにとっても同じことになる。お互いを信じて黙っていたら2年で済むものが結局お互いに自白をして5年の懲役となるが、これが「合理的な」選択となる。懲役なしという最善の結果を得ることはできなくても、自分だけ10年の懲役を喰らうという最悪の事態を避けることができるからだ。ここで黙秘を「協調」、自白を「裏切り」と規定すると、裏切ることがABお互いにとって一番合理的な選択ということになる。

 囚人のジレンマで考えて見ると、一番良い結果は、お互いが協調することだ。しかし、それを阻むのはABが別の場所で取り調べを受けていて、全く連絡が取れないことだ。そのために結局裏切った方が得ということになり、お互いが最善の結果を得ることができないということになる。それならば、お互いが連絡を取り合えれば、「黙秘をした方が得」という合意ができることになる。これを応用すると、核保有諸国は、お互いに他国の意思が分からなければ軍拡競争を続けざるを得ない。使いもしない、使えもしない核弾道を数千発も保有して大きな負担だと嘆いてしまうという不合理な結果になってしまう。しかし、軍縮のためには「協調」が必要ということになる。そのためには「交渉」の枠組みが必要だ。

 アメリカとロシアは6000発以上の核弾頭を保有しているが、冷戦期の馬鹿げた軍拡競争の果ての負の遺産ということになるだろう。管理にかかる予算だけでも膨大なものとなり、かなり負担になるはずだ。米露は年間数十発ずつ減らすことを続けているが、今のペースでは数百年かかるだろう。それなら中国が求めているように、数百発にまで減らしてから何か言ってこい、ということになる。まずは米露で数百発単位の削減を数年間続けて見せてから、本気なのだということを示してから何か言えよ、ということだ。そうでなければ対等に話し合いなどできないということだ。

 新しい冷戦を迎えるためにはまずは古い冷戦の負の遺産を清算してからということだと思う。

(貼り付けはじめ)

核実験75 “ロシアと中国は核軍縮協力を” トランプ大統領

2020717 1022

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200717/k10012519961000.html

アメリカが人類史上初の核実験を行ってから75年となったのにあわせ、トランプ大統領は声明を発表し、核戦力の強化を進めて抑止力を高めると強調する一方、ロシアと中国に対して核軍縮に向けた協力を呼びかけました。

アメリカは75年前の1945716日に西部ニューメキシコ州で人類史上初めてとなる原爆の実験を行いました。

トランプ大統領は16日、声明を出し「実験は第2次世界大戦の終結につながり、世界に前例のない安定をもたらしたすばらしい偉業だ」と称賛しました。そのうえで「強固で多様な核の能力があれば核の拡散を防ぎ、敵を抑止できる」として、核戦力の強化を進め、抑止力を高める方針を強調しました。

その一方で、トランプ大統領はロシアが爆発を伴う核実験を行い中国も実験を行ったおそれがあると指摘し「ロシアと中国には世界を安全にし、軍拡競争を防ぐため、改めて協力を求める」として、核軍縮に向けた協力を呼びかけました。

トランプ政権は、核弾頭の数などを制限したロシアとの核軍縮条約「新START」の有効期限が来年2月に迫る中、条約への参加を拒否している中国に参加を求めるねらいがあるものとみられます。

一方、声明については国務省で軍縮を担当した元高官がツイッターに「このようなつらい日にアメリカが軍拡競争で勝っていると強調するのはこの政権だけだ」と投稿するなど、批判も出ています。

=====

中国は米露との核兵器削減交渉への参加を拒否(China turns down nuclear arms control talks with US and Russia

マーティー・ジョンソン筆

2020年7月10日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/506792-china-turns-down-nuclear-arms-control-talks-with-us-and-russia

中国はこの問題についての自分たちの姿勢は「明確だ」と繰り返し、中国は米露との核兵器をめぐる交渉に参加しないという姿勢を改めて強調した。

中国外務省のツァオ・リージアン報道官は金曜日、アメリカからのロシアとの交渉に中国も参加してはどうかという提案について「真剣なものでもないし、誠実なものでもない」と述べた。

AP通信によると、ツァオ報道官は記者団に対して次のように述べた。「いわゆる三カ国による兵器削減交渉に対する中国の反対は明確なものです。アメリカ側もそのことをしっかりと認識しています。しかしながら、アメリカは中国の交渉への参加にこだわり、中国の地位を落とそうとしています」。

米露は冷戦期には敵同士で、現在でも世界の中で最大の核兵器を保有する大国同士でもある。両国は先月末ウィーンに集まり、「新スタート(New Start)条約」の延長について動き始めた。新スタート条約は2010年に合意され、来年2月に期限を迎える。

新しいスタート条約にはいくつかの条項が含まれている。その中には、配備済み核弾頭の数を少なくとも1550発までに制限するという条項、そして核弾頭を装備できる武器の配備を規制するという条項がある。条約ではまた、年間18か所の核兵器関連基地の査察を実施するプログラムも創設されている。

トランプ政権は米露に続き世界第3位の核弾頭保有国である中国に対して条約への参加を強く求めているが、中国政府は条約参加への反対を強硬に示している。

=====

中国がアメリカへ保有核兵器の削減を求める(China urges US to reduce nuclear arsenal

ジョン・バウデン筆

2020年7月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/china/506353-china-urges-us-to-reduce-nuclear-arsenal

水曜日、中国の複数の政府高官は、アメリカが進んで中国のレヴェルにまで保有核兵器を削減するならば、米露との三カ国による核兵器に関する交渉に喜んで参加するだろうがそれは実際には無理な話だと述べた。

新戦略兵器削減条約(New Strategic Arms Reduction TreatySTART)に関する、新たな核兵器に関する交渉を先月から開始した。先月、トランプ政権の軍縮担当の責任者は次のようにツィートした。「中国もまた会議に招待された。中国の代表団は姿を現し、誠意を持って交渉に参加するだろうか?」

ロイター通信は次のように報じている。中国外務省の報道官は、トランプ政権とロシアとの核兵器をめぐる交渉に参加するようにアメリカから招待を受けた件について、アメリカがロシアとの新たな核兵器をめぐる交渉から離脱するという目的のために「関心を別に向けるための謀略以外のものではない」と述べた。

ロイター通信によると、中国外務省の兵器削減部門の責任者であるフー・ツォンは次のように述べた。「私は皆さんに明言しますが、アメリカが中国の核兵器保有レヴェルまで下がってくる用意があると言うならば、中国は明日にでも喜んで話し合いに応じます。しかし、現実には、そんなことは起きないことを私たちは分かっています」。

ツォンは「アメリカの真の目的は、全ての制限を撤廃して、現実のもしくは仮想の敵に対して軍事上の優位を追求するためのフリーハンドを持つことです」とも述べた。

新しいスタート条約はオバマ政権下で交渉されたもので、米露両国で配備できる核弾頭の数を1550に制限するというものだ。条約の有効期限は来年の2月だ。

スタート条約に関する中国側からのコメントがなされたのは、トランプ政権が世界保健機関(WHO)によってアメリカが正式に脱退した次の日のことだった。トランプ大統領は、世界保健機関が中国寄りだと繰り返し非難してきた。そして、コロナウイルス感染拡大への対処が遅すぎたと攻撃している。

世界保健機関と中国を批判する人々は、国際的なコロナウイルス感染拡大への対応が妨害されたのは、感染拡大の初期段階で中国の透明性の欠如が原因だと主張している。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 新型コロナウイルス感染拡大という事態を受け、米中関係は非難合戦の様相を五呈している。ドナルド・トランプ大統領をはじめとする政権幹部たちはウイルス感染拡大を中国の対応のまずさのせいにしている。世界各国で約1000万人が感染し、約50万人が死亡した。感染者数における死亡率は約5%である。今年1月から3月にかけて中国の武漢市を中心に感染が広がった。中国国内の深刻な様子が報道されていたが、現在のところ、中国国内の感染者は約8万3500名、死亡者は4634名だ。アメリカの感染者は約267万名、死亡者は12万名となっている。日本は感染者約18900名、死亡者は971名だ。

 アメリカは新型コロナウイルス感染拡大への対応が遅かったということになるだろう。都市部の人口密度や経済活動などの理由はあるだろうが、中国には人口1000万人を超える大都市が5つもある。日本にも東京、大阪、名古屋、横浜など大都市圏が存在する。

 下の記事は、新型コロナウイルス感染拡大の中で、大統領選挙の選挙運動が勧められており、共和党の現職ドナルド・トランプ大統領、民主党の内定候補者ジョー・バイデン前副大統領が共に相手を「中国に対して弱腰だ」という批判を行っている。こうした状況では、中国との協力は難しいが、それでも、様々な分野で競争相手となる米中両国であるが、疾病の世界的感染拡大、感染爆発という事態には協力して対処しなければならないと主張している。下の記事の著者であるアルバート・ハントはケネディ・大統領の言葉を引用している。その言葉とは、「ライヴァル同士のパートナーシップ(rival partnership)」だ。

 冷戦期、アメリカとソ連は東西両陣営に分かれて鎬を削ったが、徹底的な対決は回避した。これをアメリカの歴史家ジョン・ルイス・ギャディスは「長い平和(Long Peace)」と呼んだ。代理戦争を戦わされた朝鮮半島、ヴェトナム、アフガニスタンの人々にとってはどこが長い平和なのかと怒りを持つであろうが、世界大戦がなかったという意味である。

 21世紀の米中関係に関しても新冷戦という言葉が使われ始めている。下の記事でも取り上げられているが、シンクタンクであるブルッキングス研究所所長を務めるジョン・アレン(退役海兵隊大将)は、アメリカは「自由主義的資本主義」のモデルを提示し、中国は「権威主義的資本主義」のモデルを提示して世界にアピールしている、と述べている。これが新しい冷戦の軸ということになるだろう。

 ソ連は自国の経済を崩壊させ、消滅した。一方、中国は経済力を急速に伸ばし、それにつれて政治力と軍事力を増強している。経済力での米中逆転は視野に入っている。こうした状況になり、冷たい戦争が覇権交代をめぐる熱い戦争にならないためにも、ライヴァル同士のパートナーシップとアメリカの軟着陸が21世紀中盤の重要な要素となるだろう。

(貼り付けはじめ)

パンデミック下の政治と中国との協力(Pandemic politics and cooperation with China

アルバート・ハント筆

2020年5月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/496354-pandemic-politics-and-cooperation-with-china

アメリカ政治で70年前に激しかった議論が形を少し変えて再び復活している。それは、誰に責任があるのか、もっと端的には「中国を失ったのは誰だ?」というものだ。

それが今では「誰が中国に対してより宥和的か?」だ。

トランプ大統領と、今年の秋にトランプ大統領と戦うことになるジョー・バイデン前副大統領は、お互いに相手が中国の支配者たちに対して下手に出ていると非難する攻撃的なテレビCMを流している。

中国はもう一つの世界の超大国として、経済、政治、軍事の分野での成長もあり、アメリカにとって既に政治上の重大な問題となっている。中国から始まった新型コロナウイルス感染拡大は、中国側の1月にわたる隠蔽もあったが、アメリカ国内では党派性を持った批判合戦のテーマとなっている。

トランプ大統領は数週間にわたり中国の新型コロナウイルス対策を評価し、アメリカの対策の遅れを誰の責任にするのかを探していた。それがここにきて新型コロナウイルスを「中国のウイルス」とレッテル張りをし始めた。ホワイトハウスにいる政権幹部の中には、トランプ大統領を見習って、「カン・フルー(Kung Flu)」と呼んでいる(訳者註:Fluはインフルエンザのこと、カンフー[Kung Fu]にかけている)。トランプ大統領は、アメリカ国内で感染拡大が激しくなるにつれて、攻撃を激化させている。そして、選挙での対抗馬であるバイデンを弱腰だと攻撃している。

民主党の候補者に内定しているバイデンは、アメリカ国内で感染が拡大したのは初期段階でのトランプ大統領の無関心のせいだと非難し、自分が大統領であればより早い段階でより厳しい措置を取ったと主張している。

グラハム・アリソンはハーヴァード大学の学者で、国防総省に勤務した経験を持ち、米中対決の可能性と危険性についての著作を持っている。アリソンは新型コロナウイルス感染拡大への対処のために、米中両国は両国関係を変化させるべきだと述べている。アリソンは、米中両国は貿易、民主的な価値観、サイバー上と国家の安全保障に関しては、「厳しいライヴァル関係」となるだろうが、同時に、気候変動、テロリズム、そしてとくに感染症対策ではパートナーとなるべきだと主張している。

米中が協力することは現時点では、政治的に無理な状況だ。トランプ陣営、バイデン陣営ともに来るべき大統領選挙本選挙に向けて、これからの6カ月間は中国に対して宥和的な姿勢を取ることはできない。

バイデン前副大統領は、トランプ大統領が中国側の新型コロナウイルスに関する発表を鵜呑みにして「中国に丸め込まれた」と攻撃している。トランプ大統領は3月中旬まで危険性を否定していた。対照的に世界各国は中国がやっと1月中旬になって危険性を認識し、発表した段階で素早く対応した。

トランプ大統領は3月13日の時点までは中国の習近平国家主席は状況に対してうまく対応していると一貫して称賛してきた。また、危険を示す証拠を信用しなかった。

トランプ大統領陣営は現在、反中国攻撃を大統領選挙本選挙の中心的な要素にしていることは明らかだ。トランプ大統領は、バイデンが中国に「強い態度で臨む」ことに失敗し、オバマ政権の対中国融和政策の策定に関わったと攻撃している。

トランプ大統領に対する中国への攻撃は日々激しくなっている。関税引き上げや不手際に対する裁判提起、更に負債の支払いを拒絶などをと脅している。いつものトランプ大統領のように、この一部はブラフである。しかし、中国攻撃はトランプ大統領の選挙に影響を与えるが、失敗に終わる可能性もある。トランプ大統領は危ない橋を渡っている。

トランプ政権は、全ての選択肢を留保している。マイク・ポンぺオ国務長官が対中政策を主導している。ポンぺオ国務長官は中国に対しては、外交官というよりも党派性の強いガンマンのように振舞っている。

アメリカ連邦議会においては、共和党側の対中国攻撃の急先鋒はアーカンソー州選出のトム・コットン連邦上院議員だ。コットン議員は1月末にウイルスの脅威と中国の隠蔽に対して警告を発した。コットン議員は攻撃を止めていない。そして、ウイルスの発生源は武漢の食肉マーケットではなく、中国のある実験ラボから広がって感染拡大を招いたという理論を支持し、中国を批判している。コットン議員はまた、中国に対する法的手段を取ることを許可する法律の制定や中国人学生がアメリカの大学で科学を学ぶことを禁止する措置を提案している。

しかし、コットン議員は感染拡大ではなく、党派性の強い中国叩きに興味を持っているように見える。彼は中国が感染拡大について1カ月にわたり嘘をつき続けてきたと攻撃していた。しかし、2月25日の時点で、コットン議員はトランプ大統領がウイルスへの対処を「最重要事項」としていると発言した。これは極めて間違っている主張だ。

中国国民はアメリカとの争いを恐れていない。中国は、トランプ大統領が自身の失敗に対する言い訳として、「他の人々を非難している」と批判している。中国国内のSNSでの人々の書き込みを見て見ると、歪曲された内容もあるが、明白にアメリカを非難している。中国は感染拡大に見舞われている国々に医療や医療品の提供を行っている。初期段階ではアメリカに対しても支援を行った。

米中関係の悪化が危険を伴う理由は、世界の超大国2か国は感染拡大への対処のようないくつかの極めて重要な分野でお互いに協力しなければならないがそれができなくなる、というものだ。

ブルッキングス研究所所長で退役アメリカ海兵隊大将(four star general)であるジョン・アレンは米中間の緊張関係の深刻化は避けられないと評価している。アレンは次のように述べている。「中国はアメリカとは別のモデルに沿っている。それは、権威主義的資本主義(authoritarian capitalism)である。これは中国の成功もあり、世界のいくつかの国々にアピールしている。私たちは、私たちのより素晴らしいモデルを使って対抗することになるだろう」。しかし、今回の危機において継続的に中傷を続け、対立することは「世界にとっての最大の危機を解決する為のエネルギーの多くを無駄遣いすることだ」とアレンは述べている。

アレンは別の機会では、「中国を解決に向けて要素に入れなければ、今回のコロナウイルスとの戦いで勝利することはできない」とも述べている。医療分野と科学分野でのつながりを断絶することはったくもって合理的ではない。

アレンはまた次のようにも述べている。新型コロナウイルス対処によって米中両国のライヴァル関係や緊張が和らぐことはないが、冷戦期にジョン・F・ケネディ大統領が述べた「ライヴァル同士のパートナーシップ(rival partnership)」という考えを両国は持つべきだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ