古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:中国

 古村治彦です。

 少し前にアメリカのドナルド・トランプ大統領が世界初の核実験75周年で、ロシアと中国に軍縮を呼びかけたというニュースを見た。「アメリカが偉大である」ためには「核兵器の優位」が必要だとでも言うのかと思ったが、核兵器に関しては軍拡競争はしたくないという姿勢を見せた。

 太平洋戦争の最終盤で日本の広島と長崎にそれぞれ原子爆弾が投下されてから、実際の戦争で核兵器が使用されたことはない。アメリカ一国のみが核兵器を保有しているという状態は長くは続かず、1949年にソ連が核実験に成功し、核保有国となった。1964年には中国も核実験を成功させた。世界の核保有国は10か国程度である。第二次世界大戦後の冷戦時代、核兵器の使用はなかったが、キューバ危機では核戦争の危機が高まった。

 核不拡散条約(Non-Proliferation Treaty)は、1968年に締結された。この条約はアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5か国以外の国々の核兵器保有を禁止するというもので、国連常任理事国以外には核兵器を持たせないぞ、というものだ。戦後国際体制を作った戦勝国が世界を支配し、それら以外は従えというものだ。インド、パキスタン、イスラエルはこの条約には加盟していない。また、北朝鮮は1993年に条約から脱退した。そのために、五大国の思惑とは異なり、核兵器は拡散している。

アメリカとロシアはそれぞれ6450発、6490発の核弾頭を保有し、1600発を実戦配備している。イギリス、フランス、中国はそれぞれ200発から300発の核弾頭を保有している。NPTに批准していないインド、パキスタンは100発以上の核弾頭を保有していない。また北朝鮮も100発以内の核弾頭を保有している。イスラエルは正式な核兵器保有を認めていないが、保有が確実視されている。イランは核開発の疑いを持たれている。

 アメリカもロシアも世界を何度も全滅させることができるほどの核弾頭を保有しているが、核兵器軍縮について、「囚人のジレンマ(prisoner’s dilemma)」という考えから見ていこう。

ジレンマとは「板挟み状態」のことだ。2人の犯罪者ABが捕まり、別の場所で取り調べを受ける。ABが両者ともに完全に黙秘をすれば、2人とも懲役2年となる。どちらか一方が自白をすれば、自白をした人間は懲役がなく、もう一方は10年の懲役となる。どちらともに自白をすれば2人とも懲役5年となる。この条件はそれぞれに伝えられているが、ABとも相手が自白をしたかどうかは分からない。

 この場合、Aの置かれている立場を考えてみる。Bが黙秘する場合、Aが黙秘したら懲役2年、Aが自白をしたら懲役0年」となる。これだとAは自白したほうが得となる。Bが自白する場合、「Aも自白をしたら懲役5年、Aが黙秘をしたら懲役10年」となる。この場合もAは自白したほうが懲役が短くなるので得となる。従って、Aは自白をするという選択肢になる。Bにとっても同じことになる。お互いを信じて黙っていたら2年で済むものが結局お互いに自白をして5年の懲役となるが、これが「合理的な」選択となる。懲役なしという最善の結果を得ることはできなくても、自分だけ10年の懲役を喰らうという最悪の事態を避けることができるからだ。ここで黙秘を「協調」、自白を「裏切り」と規定すると、裏切ることがABお互いにとって一番合理的な選択ということになる。

 囚人のジレンマで考えて見ると、一番良い結果は、お互いが協調することだ。しかし、それを阻むのはABが別の場所で取り調べを受けていて、全く連絡が取れないことだ。そのために結局裏切った方が得ということになり、お互いが最善の結果を得ることができないということになる。それならば、お互いが連絡を取り合えれば、「黙秘をした方が得」という合意ができることになる。これを応用すると、核保有諸国は、お互いに他国の意思が分からなければ軍拡競争を続けざるを得ない。使いもしない、使えもしない核弾道を数千発も保有して大きな負担だと嘆いてしまうという不合理な結果になってしまう。しかし、軍縮のためには「協調」が必要ということになる。そのためには「交渉」の枠組みが必要だ。

 アメリカとロシアは6000発以上の核弾頭を保有しているが、冷戦期の馬鹿げた軍拡競争の果ての負の遺産ということになるだろう。管理にかかる予算だけでも膨大なものとなり、かなり負担になるはずだ。米露は年間数十発ずつ減らすことを続けているが、今のペースでは数百年かかるだろう。それなら中国が求めているように、数百発にまで減らしてから何か言ってこい、ということになる。まずは米露で数百発単位の削減を数年間続けて見せてから、本気なのだということを示してから何か言えよ、ということだ。そうでなければ対等に話し合いなどできないということだ。

 新しい冷戦を迎えるためにはまずは古い冷戦の負の遺産を清算してからということだと思う。

(貼り付けはじめ)

核実験75 “ロシアと中国は核軍縮協力を” トランプ大統領

2020717 1022

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200717/k10012519961000.html

アメリカが人類史上初の核実験を行ってから75年となったのにあわせ、トランプ大統領は声明を発表し、核戦力の強化を進めて抑止力を高めると強調する一方、ロシアと中国に対して核軍縮に向けた協力を呼びかけました。

アメリカは75年前の1945716日に西部ニューメキシコ州で人類史上初めてとなる原爆の実験を行いました。

トランプ大統領は16日、声明を出し「実験は第2次世界大戦の終結につながり、世界に前例のない安定をもたらしたすばらしい偉業だ」と称賛しました。そのうえで「強固で多様な核の能力があれば核の拡散を防ぎ、敵を抑止できる」として、核戦力の強化を進め、抑止力を高める方針を強調しました。

その一方で、トランプ大統領はロシアが爆発を伴う核実験を行い中国も実験を行ったおそれがあると指摘し「ロシアと中国には世界を安全にし、軍拡競争を防ぐため、改めて協力を求める」として、核軍縮に向けた協力を呼びかけました。

トランプ政権は、核弾頭の数などを制限したロシアとの核軍縮条約「新START」の有効期限が来年2月に迫る中、条約への参加を拒否している中国に参加を求めるねらいがあるものとみられます。

一方、声明については国務省で軍縮を担当した元高官がツイッターに「このようなつらい日にアメリカが軍拡競争で勝っていると強調するのはこの政権だけだ」と投稿するなど、批判も出ています。

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中国は米露との核兵器削減交渉への参加を拒否(China turns down nuclear arms control talks with US and Russia

マーティー・ジョンソン筆

2020年7月10日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/506792-china-turns-down-nuclear-arms-control-talks-with-us-and-russia

中国はこの問題についての自分たちの姿勢は「明確だ」と繰り返し、中国は米露との核兵器をめぐる交渉に参加しないという姿勢を改めて強調した。

中国外務省のツァオ・リージアン報道官は金曜日、アメリカからのロシアとの交渉に中国も参加してはどうかという提案について「真剣なものでもないし、誠実なものでもない」と述べた。

AP通信によると、ツァオ報道官は記者団に対して次のように述べた。「いわゆる三カ国による兵器削減交渉に対する中国の反対は明確なものです。アメリカ側もそのことをしっかりと認識しています。しかしながら、アメリカは中国の交渉への参加にこだわり、中国の地位を落とそうとしています」。

米露は冷戦期には敵同士で、現在でも世界の中で最大の核兵器を保有する大国同士でもある。両国は先月末ウィーンに集まり、「新スタート(New Start)条約」の延長について動き始めた。新スタート条約は2010年に合意され、来年2月に期限を迎える。

新しいスタート条約にはいくつかの条項が含まれている。その中には、配備済み核弾頭の数を少なくとも1550発までに制限するという条項、そして核弾頭を装備できる武器の配備を規制するという条項がある。条約ではまた、年間18か所の核兵器関連基地の査察を実施するプログラムも創設されている。

トランプ政権は米露に続き世界第3位の核弾頭保有国である中国に対して条約への参加を強く求めているが、中国政府は条約参加への反対を強硬に示している。

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中国がアメリカへ保有核兵器の削減を求める(China urges US to reduce nuclear arsenal

ジョン・バウデン筆

2020年7月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/china/506353-china-urges-us-to-reduce-nuclear-arsenal

水曜日、中国の複数の政府高官は、アメリカが進んで中国のレヴェルにまで保有核兵器を削減するならば、米露との三カ国による核兵器に関する交渉に喜んで参加するだろうがそれは実際には無理な話だと述べた。

新戦略兵器削減条約(New Strategic Arms Reduction TreatySTART)に関する、新たな核兵器に関する交渉を先月から開始した。先月、トランプ政権の軍縮担当の責任者は次のようにツィートした。「中国もまた会議に招待された。中国の代表団は姿を現し、誠意を持って交渉に参加するだろうか?」

ロイター通信は次のように報じている。中国外務省の報道官は、トランプ政権とロシアとの核兵器をめぐる交渉に参加するようにアメリカから招待を受けた件について、アメリカがロシアとの新たな核兵器をめぐる交渉から離脱するという目的のために「関心を別に向けるための謀略以外のものではない」と述べた。

ロイター通信によると、中国外務省の兵器削減部門の責任者であるフー・ツォンは次のように述べた。「私は皆さんに明言しますが、アメリカが中国の核兵器保有レヴェルまで下がってくる用意があると言うならば、中国は明日にでも喜んで話し合いに応じます。しかし、現実には、そんなことは起きないことを私たちは分かっています」。

ツォンは「アメリカの真の目的は、全ての制限を撤廃して、現実のもしくは仮想の敵に対して軍事上の優位を追求するためのフリーハンドを持つことです」とも述べた。

新しいスタート条約はオバマ政権下で交渉されたもので、米露両国で配備できる核弾頭の数を1550に制限するというものだ。条約の有効期限は来年の2月だ。

スタート条約に関する中国側からのコメントがなされたのは、トランプ政権が世界保健機関(WHO)によってアメリカが正式に脱退した次の日のことだった。トランプ大統領は、世界保健機関が中国寄りだと繰り返し非難してきた。そして、コロナウイルス感染拡大への対処が遅すぎたと攻撃している。

世界保健機関と中国を批判する人々は、国際的なコロナウイルス感染拡大への対応が妨害されたのは、感染拡大の初期段階で中国の透明性の欠如が原因だと主張している。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 新型コロナウイルス感染拡大という事態を受け、米中関係は非難合戦の様相を五呈している。ドナルド・トランプ大統領をはじめとする政権幹部たちはウイルス感染拡大を中国の対応のまずさのせいにしている。世界各国で約1000万人が感染し、約50万人が死亡した。感染者数における死亡率は約5%である。今年1月から3月にかけて中国の武漢市を中心に感染が広がった。中国国内の深刻な様子が報道されていたが、現在のところ、中国国内の感染者は約8万3500名、死亡者は4634名だ。アメリカの感染者は約267万名、死亡者は12万名となっている。日本は感染者約18900名、死亡者は971名だ。

 アメリカは新型コロナウイルス感染拡大への対応が遅かったということになるだろう。都市部の人口密度や経済活動などの理由はあるだろうが、中国には人口1000万人を超える大都市が5つもある。日本にも東京、大阪、名古屋、横浜など大都市圏が存在する。

 下の記事は、新型コロナウイルス感染拡大の中で、大統領選挙の選挙運動が勧められており、共和党の現職ドナルド・トランプ大統領、民主党の内定候補者ジョー・バイデン前副大統領が共に相手を「中国に対して弱腰だ」という批判を行っている。こうした状況では、中国との協力は難しいが、それでも、様々な分野で競争相手となる米中両国であるが、疾病の世界的感染拡大、感染爆発という事態には協力して対処しなければならないと主張している。下の記事の著者であるアルバート・ハントはケネディ・大統領の言葉を引用している。その言葉とは、「ライヴァル同士のパートナーシップ(rival partnership)」だ。

 冷戦期、アメリカとソ連は東西両陣営に分かれて鎬を削ったが、徹底的な対決は回避した。これをアメリカの歴史家ジョン・ルイス・ギャディスは「長い平和(Long Peace)」と呼んだ。代理戦争を戦わされた朝鮮半島、ヴェトナム、アフガニスタンの人々にとってはどこが長い平和なのかと怒りを持つであろうが、世界大戦がなかったという意味である。

 21世紀の米中関係に関しても新冷戦という言葉が使われ始めている。下の記事でも取り上げられているが、シンクタンクであるブルッキングス研究所所長を務めるジョン・アレン(退役海兵隊大将)は、アメリカは「自由主義的資本主義」のモデルを提示し、中国は「権威主義的資本主義」のモデルを提示して世界にアピールしている、と述べている。これが新しい冷戦の軸ということになるだろう。

 ソ連は自国の経済を崩壊させ、消滅した。一方、中国は経済力を急速に伸ばし、それにつれて政治力と軍事力を増強している。経済力での米中逆転は視野に入っている。こうした状況になり、冷たい戦争が覇権交代をめぐる熱い戦争にならないためにも、ライヴァル同士のパートナーシップとアメリカの軟着陸が21世紀中盤の重要な要素となるだろう。

(貼り付けはじめ)

パンデミック下の政治と中国との協力(Pandemic politics and cooperation with China

アルバート・ハント筆

2020年5月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/496354-pandemic-politics-and-cooperation-with-china

アメリカ政治で70年前に激しかった議論が形を少し変えて再び復活している。それは、誰に責任があるのか、もっと端的には「中国を失ったのは誰だ?」というものだ。

それが今では「誰が中国に対してより宥和的か?」だ。

トランプ大統領と、今年の秋にトランプ大統領と戦うことになるジョー・バイデン前副大統領は、お互いに相手が中国の支配者たちに対して下手に出ていると非難する攻撃的なテレビCMを流している。

中国はもう一つの世界の超大国として、経済、政治、軍事の分野での成長もあり、アメリカにとって既に政治上の重大な問題となっている。中国から始まった新型コロナウイルス感染拡大は、中国側の1月にわたる隠蔽もあったが、アメリカ国内では党派性を持った批判合戦のテーマとなっている。

トランプ大統領は数週間にわたり中国の新型コロナウイルス対策を評価し、アメリカの対策の遅れを誰の責任にするのかを探していた。それがここにきて新型コロナウイルスを「中国のウイルス」とレッテル張りをし始めた。ホワイトハウスにいる政権幹部の中には、トランプ大統領を見習って、「カン・フルー(Kung Flu)」と呼んでいる(訳者註:Fluはインフルエンザのこと、カンフー[Kung Fu]にかけている)。トランプ大統領は、アメリカ国内で感染拡大が激しくなるにつれて、攻撃を激化させている。そして、選挙での対抗馬であるバイデンを弱腰だと攻撃している。

民主党の候補者に内定しているバイデンは、アメリカ国内で感染が拡大したのは初期段階でのトランプ大統領の無関心のせいだと非難し、自分が大統領であればより早い段階でより厳しい措置を取ったと主張している。

グラハム・アリソンはハーヴァード大学の学者で、国防総省に勤務した経験を持ち、米中対決の可能性と危険性についての著作を持っている。アリソンは新型コロナウイルス感染拡大への対処のために、米中両国は両国関係を変化させるべきだと述べている。アリソンは、米中両国は貿易、民主的な価値観、サイバー上と国家の安全保障に関しては、「厳しいライヴァル関係」となるだろうが、同時に、気候変動、テロリズム、そしてとくに感染症対策ではパートナーとなるべきだと主張している。

米中が協力することは現時点では、政治的に無理な状況だ。トランプ陣営、バイデン陣営ともに来るべき大統領選挙本選挙に向けて、これからの6カ月間は中国に対して宥和的な姿勢を取ることはできない。

バイデン前副大統領は、トランプ大統領が中国側の新型コロナウイルスに関する発表を鵜呑みにして「中国に丸め込まれた」と攻撃している。トランプ大統領は3月中旬まで危険性を否定していた。対照的に世界各国は中国がやっと1月中旬になって危険性を認識し、発表した段階で素早く対応した。

トランプ大統領は3月13日の時点までは中国の習近平国家主席は状況に対してうまく対応していると一貫して称賛してきた。また、危険を示す証拠を信用しなかった。

トランプ大統領陣営は現在、反中国攻撃を大統領選挙本選挙の中心的な要素にしていることは明らかだ。トランプ大統領は、バイデンが中国に「強い態度で臨む」ことに失敗し、オバマ政権の対中国融和政策の策定に関わったと攻撃している。

トランプ大統領に対する中国への攻撃は日々激しくなっている。関税引き上げや不手際に対する裁判提起、更に負債の支払いを拒絶などをと脅している。いつものトランプ大統領のように、この一部はブラフである。しかし、中国攻撃はトランプ大統領の選挙に影響を与えるが、失敗に終わる可能性もある。トランプ大統領は危ない橋を渡っている。

トランプ政権は、全ての選択肢を留保している。マイク・ポンぺオ国務長官が対中政策を主導している。ポンぺオ国務長官は中国に対しては、外交官というよりも党派性の強いガンマンのように振舞っている。

アメリカ連邦議会においては、共和党側の対中国攻撃の急先鋒はアーカンソー州選出のトム・コットン連邦上院議員だ。コットン議員は1月末にウイルスの脅威と中国の隠蔽に対して警告を発した。コットン議員は攻撃を止めていない。そして、ウイルスの発生源は武漢の食肉マーケットではなく、中国のある実験ラボから広がって感染拡大を招いたという理論を支持し、中国を批判している。コットン議員はまた、中国に対する法的手段を取ることを許可する法律の制定や中国人学生がアメリカの大学で科学を学ぶことを禁止する措置を提案している。

しかし、コットン議員は感染拡大ではなく、党派性の強い中国叩きに興味を持っているように見える。彼は中国が感染拡大について1カ月にわたり嘘をつき続けてきたと攻撃していた。しかし、2月25日の時点で、コットン議員はトランプ大統領がウイルスへの対処を「最重要事項」としていると発言した。これは極めて間違っている主張だ。

中国国民はアメリカとの争いを恐れていない。中国は、トランプ大統領が自身の失敗に対する言い訳として、「他の人々を非難している」と批判している。中国国内のSNSでの人々の書き込みを見て見ると、歪曲された内容もあるが、明白にアメリカを非難している。中国は感染拡大に見舞われている国々に医療や医療品の提供を行っている。初期段階ではアメリカに対しても支援を行った。

米中関係の悪化が危険を伴う理由は、世界の超大国2か国は感染拡大への対処のようないくつかの極めて重要な分野でお互いに協力しなければならないがそれができなくなる、というものだ。

ブルッキングス研究所所長で退役アメリカ海兵隊大将(four star general)であるジョン・アレンは米中間の緊張関係の深刻化は避けられないと評価している。アレンは次のように述べている。「中国はアメリカとは別のモデルに沿っている。それは、権威主義的資本主義(authoritarian capitalism)である。これは中国の成功もあり、世界のいくつかの国々にアピールしている。私たちは、私たちのより素晴らしいモデルを使って対抗することになるだろう」。しかし、今回の危機において継続的に中傷を続け、対立することは「世界にとっての最大の危機を解決する為のエネルギーの多くを無駄遣いすることだ」とアレンは述べている。

アレンは別の機会では、「中国を解決に向けて要素に入れなければ、今回のコロナウイルスとの戦いで勝利することはできない」とも述べている。医療分野と科学分野でのつながりを断絶することはったくもって合理的ではない。

アレンはまた次のようにも述べている。新型コロナウイルス対処によって米中両国のライヴァル関係や緊張が和らぐことはないが、冷戦期にジョン・F・ケネディ大統領が述べた「ライヴァル同士のパートナーシップ(rival partnership)」という考えを両国は持つべきだ。

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 古村治彦です。

 古い記事で恐縮だが、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官の新型コロナウイルス感染拡大に関する論考について短くまとめた記事をご紹介する。

 ヘンリー・キッシンジャー元国務長官は、ドナルド・トランプ政権の外交面での「守護神」「橋渡し」の役割を果たしている。トランプ政権は中国とロシアに対して強硬姿勢を取るが、その前後にはキッシンジャーが96歳という高齢にもかかわらず、中国とロシアを訪問して、習近平国家主席、ウラジミール・プーティン大統領と会談を持つということを行っている。北朝鮮外交について関わっているのかは不明だが、中露両国に太いパイプがあるということは、間接的に北朝鮮外交にも影響を与えることができる。

 キッシンジャーは、アメリカが国際協調を主導し、かつ自由主義に基づく世界秩序を維持するために努力しなければならないとしている。また、トランプ政権は新型コロナウイルス感染拡大に対して手堅い仕事(solid job)をしているとも述べている。

 キッシンジャーでもこの程度のことしか言えないのかという内容ではある。しかし、キッシンジャーが述べたという事実が重要だ。

 トランプ政権はマイク・ペンス副大統領、マイク・ポンぺオ国務長官、ロバート・オブライエン国家安全保障問題担当大統領補佐官といった対中強硬派がおり、中国との軋轢を生んでいる。しかし、最後の一線を超えないのは、キッシンジャーがいるからだ。しかし、彼も96歳である。いつまでも健康で生きていられる訳ではない。キッシンジャーが死ぬ時、米中関係が悪化し始めていくだろう。

(貼り付けはじめ)

“失敗によって世界に火がつく可能性がある”:96歳になるヘンリー・キッシンジャー元国務長官は、コロナウイルスが長期間にわたる経済の縮小をもたらす可能性があると警告を発し、アメリカに対しては「自由主義に基づく世界秩序を守る」ように求めている(Failure could set the world on fire.' Former Secretary of State Henry Kissinger, 96, warns coronavirus could spell economic doom for generations and tells US to 'safeguard the liberal world order'

・ヘンリー・キッシンジャー元国務長官は世界規模の経済衰退について警告を発している。

・キッシンジャーは金曜日、『ウォールストリート・ジャーナル』紙に論説記事を発表した。この記事は、「失敗によって世界に火がつく可能性がある」という緊急提言である。

・96歳になるキッシンジャーは、ホワイトハウスは「悲劇的状況の急速な進行を避けるために手堅い仕事」をしていると考えている。

・キッシンジャーはアメリカが治療法の発見を急ぎ、世界経済の再建に努力し、「自由主義を基礎とする世界秩序」を守る必要があると述べている。

・キッシンジャーは「アメリカは独力でウイルスに打ち勝つことはできない」と書いている。アメリカ疾病予防管理センターによると、土曜日の朝の時点で、世界全体で110万件以上の感染と6万400名の死亡が確認されている。

・アメリカ国内では現在のところ、感染者数は27万8602名、死者数は7170名となっている。

チェインヌ・ラウンドトゥリー筆

2020年4月4日

『デイリー・メイル』紙

https://www.dailymail.co.uk/news/article-8187313/Henry-Kissinger-warns-coronavirus-spell-economic-doom-generations.html

ヘンリー・キッシンジャー元国務長官は、適切な手段が取られない場合、新型コロナウイルス感染拡大によって長期間続く可能性がある世界規模の経済の悲劇が起きるだろうと警告を発した。

ニクソン大統領とフォード大統領に仕えたキッシンジャーは金曜日、『ウォールストリート・ジャーナル』紙に論説記事を掲載した。「失敗によって世界に火がつく可能性がある」という切迫した宣言を行った。

96歳になるキッシンジャーは、ホワイトハウスは「悲劇的状況の急速な進行を避けるために手堅い仕事」をしていると考えている。しかし、アメリカの信頼感だけでなく、世界の信頼感を取り戻すために、新型コロナウイルスを打ち倒すために効果的にかつ長期的視野で対応する必要があると考えている。

キッシンジャーは次のように書いている。「COVID-19の感染拡大が終了すれば、多くの国々の諸機関は失敗したと認識されることだろう。この判断が客観的に見て公平かどうかは重要ではない。現実は、アフター・コロナウイルスでは世界はそれ以前とは同じではなくなる」。

キッシンジャーは、アメリカは治療法を発見するために手際よく仕事をしなければならない、また、世界経済を再建し、「自由主義を基盤とした世界秩序」を守らねばならないとしている。更に、「アメリカ一国だけでウイルスを克服するための努力をすることはできない」と付け加えた。

アメリカ疾病予防管理センターによると、土曜日の朝までに、世界で110万人が感染し、6万400人が死亡したということだ。

コミュニティ・ソースド・データ・トラッカーによると、アメリカ国内では、27万8602件の感染が確認され、7170名が死亡した。

治療法はまだ見つからない。医療従事者たちは自分たちの安全を守るために必要な個人装備が十分にないと警告を発した。実際に、医者と看護師の中には患者の治療にあたる中で死亡する人たちが出ている。

キッシンジャーは不足の点を認識している。次のように書いている。「医療物資は、ウイルス拡大に対応するためには不十分だ。集中治療室は限界に達しているし、限界を超えてしまっている状況だ」。

キッシンジャーは次のように書いている。「検査は、感染規模をはっきりさせるための仕事には不十分だ。感染拡大を止めるためには更に不十分だ。ワクチンの開発にはこれから12か月から18か月かかる可能性が高い」。

キッシンジャーは、ウイルスを倒すために、アメリカはアメリカ以外の世界と協力する必要がある、と書いている。彼は、「目下の急務は、世界規模の協力のヴィジョンとプログラムを作ることだ」と述べている。

キッシンジャーは、アメリカはコロナウイルスを倒し、経済を安定化させるために3つのステップを踏む必要があると主張している。最初のステップは、新型コロナウイルスの治療法を見つけることだ。

キッシンジャーは次のように書いている。「感染管理のための新しい技術とテクノロジーを開発し、多くの人々が使用可能となるワクチンを使用できるようにする必要がある」。

キッシンジャーは続けて次のように書いている。「諸都市、諸国家、諸地域は、貯蔵、産学提携、科学の最先端の研究を通じて、感染拡大から人々を守らねばならない」。

次のステップは「世界経済に刻み付けられた傷を癒す」ことだ。

キッシンジャーは、シャットダウンによってもっと影響を受けた人々のダメージを改善する手助けを行うための特別なプログラムの必要性に言及している。

最後に、キッシンジャーは守られるべき自由主義を基調とした世界秩序の諸原理について書いている。彼は、啓蒙主義的な諸原理を守る政府は、「安全保障、秩序、経済的福利、そして正義」を守らねばならないと確信している、と指摘している。

キッシンジャーは次のように買いいている。「感染拡大は時代錯誤を促すことになる。その時代錯誤とは、繁栄が国際貿易と人々の動きに依存している時代に、壁に囲まれた都市の復活という形になる」。

キッシンジャーは続けて次のように書いている。「世界の諸民主政治体制国家は啓蒙思想の諸価値を守り、維持する必要がある。正統性に関して諸大国が均衡している状態から世界が後退することで、国内、そして国際的に社会が崩壊することになる」。

キッシンジャーは1938年にナチスが支配するドイツから両親と一緒に脱出し、ニューヨークに住むようになった。

1950年にハーヴァード大学で政治学博士号を取得後、キッシンジャーはいくつもの会議や政府機関のコンサルタントとしての仕事を始めた。その中には、アメリカ陸軍のオペレーションズ・リサーチ・オフィスや国務省の軍備管理軍縮局は含まれていた。

1960年代、キッシンジャーは共和党の大統領選挙予備選挙に出馬したネルソン・ロックフェラー選対の外交アドヴァイザーを務めた。しかし、1968年の大統領選挙で共和党の大統領選挙指名を獲得したリチャード・ニクソンの選対に転身した。

ニクソンは当選後、キッシンジャーは国家安全保障問題担当大統領補佐官に起用し、後には国務長官に任命した。キッシンジャーはジェラルド・フォードが大統領になった後も国務長官に留まった。

キッシンジャーは1973年にノーベル平和賞を受賞した。北ヴェトナムのレ・ドゥク・トと共にヴェトナム戦争の平和的な解決のための交渉の努力を行った。

中国が発表している公式の数に対して疑義が出ているが、アメリカは最近になってコロナウイルス感染者数が世界最大になっている。

ファウチは、デューク大学男子バスケットボールティームのヘッドコーチであるマイク・シャシェフスキー(Mike KrzyzewskiCoach K)が司会を務めるラジオ番組「バスケットボール・アンド・ビヨンド・ウイズ・コーチK」に出演した。シャシェフスキーはホワイトハウスの新型コロナウイルス対策タスクフォースに参加しているファウチを、COVID-19との戦いにおける「アメリカのポイントガード」だと形容した。COVID-19はウイルスによって引き起こされる疾病だ。

79歳になるファウチは、アメリカは感染拡大にどのように対応しているのか、バスケットボールを使ったたとえで表現するように求められた。

内科医であるファウチは、アメリカ国内のエイズとエボラ出血熱との戦いを含む数多くの戦いを主導してきた。ファウチはニューヨーク市で生まれ育ち、高校時代にはバスケットボールの選手だった。

ファウチは次のように語った。「バスケットボールでたとえるならば、まず私たちはとても強力なティームを作っているということです。相手はもちろんウイルスです。私たちに必要なことは、コート全面を使った厳しいディフェンスです」。

ファウチは続けて次のように述べた。「ウイルスにはドリブルでボールを前に進めさせないようにしなければなりません。私たちはウイルスを圧倒しなくてはなりません。私たちのゲームはまだハーフタイムにもなっていませんよね、コーチK」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 日本政府は「観光立国」を目指している。2020年夏には東京(と札幌やそのほかの地域)でオリンピック・パラリンピックが開催されることもあり、訪日客4000万人を目指している。世界GDPの40%近くを占め、世界経済の成長エンジンとなっているアジア諸国は人々の生活水準も上がり、海外旅行にも行ける人の数が増えており、海外旅行先として日本が選ばれることも多い。日本全国の観光地で様々な言語が飛び交うようになっている。

 私が生まれ育った鹿児島市にもいくつか観光地があり、その最大のものはやはり桜島であり、建造物で言えば、薩摩藩の藩主であり英明で知られた島津斉彬を祀った照国神社や、藩主の別邸を中心とした磯庭園だ。少し足を延ばせば有名な温泉地である指宿もある。こうした場所で、中国、台湾、韓国からの団体旅行客が多く見られるようになった。

 しかし、今回の新型コロナウイルスの感染拡大が起きた。中国で人々が長期休暇となる春節の時期に起きてしまった。この時期は中国から日本に多くの観光客が訪れる。しかし、急遽キャンセルになった。下の記事が示すように影響は大きく深刻だ。

(貼り付けはじめ)

●「新型肺炎、奈良観光に大打撃 人出は「10分の1に」」

2/2() 10:29 配信朝日新聞デジタル

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200202-00000013-asahi-soci

 新型コロナウイルスは奈良の観光にも影響を及ぼしている。奈良県内に住むバス運転手の男性(60代)への感染が判明してから初めての週末を迎えた1日、奈良公園(奈良市)周辺の人出は少なかった。観光バスの出入りは減り、ホテルや旅館ではキャンセルが相次いでいる。

 この日の午前11時過ぎから午後3時半まで奈良公園周辺を歩くと、散策する人の姿はまばら。大勢の外国人観光客がシカにせんべいをやる光景もほとんど見られなかった。例年なら中国の春節にあたり、中国人観光客でにぎわう時期だ。

 鹿せんべいを売る行商組合の男性(58)は「春節なのに、すごく少ない。去年の10分の1くらい。中国人だけでなく全体的に減った感じ。しょうがないですが」と話した。

 中国は感染拡大を防ぐため、1月27日から国外旅行を含む団体ツアーを禁止にしている。翌28日、バス運転手の男性の感染が明らかになった。荒井正吾知事は、男性の運転するバスが奈良公園に1時間ほど立ち寄ったことを明かしたうえで、「県内での感染は想像しにくい」と強調した。

 だが観光客の不安は残る。東大寺や興福寺ではマスク姿の参拝者が目立った。東大寺の近くを家族4人で歩いていた三重県伊勢市の乾智典さん(41)は「子どもがシカを見たいというので連れてきました。ぎりぎりまで迷ったけど、屋外やし大丈夫かなと」

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●「新型コロナウイルスで中国人観光客「40万人減」の可能性」

白井 咲貴日経ビジネス記者 2020130

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00105/013000003/

 新型コロナウイルスの経済面への影響が心配される中、観光業に新たな懸念が出てきた。40万人近い中国人が日本への旅行を取りやめる可能性だ。

 中国人が観光ビザを取得する場合、日本の旅行会社が身元保証人となった「身元保証書」の発行を受ける必要がある。日本旅行業協会(JATA)によると、「127日から3月までに来日する観光客の身元保証書を約40万件発行していた」という。だが、新型コロナウイルスの感染拡大で中国政府が127日以降の海外への団体旅行を禁止した影響もあり、「100%とは言わないが、ほとんどの人が日本への旅行を取りやめることになるだろう」(JATA)。今後、訪日客が激減する可能性がある。

 日本政府観光局(JNTO)によると、20192月の訪日中国人は約72万人、3月は約69万人だった。23月で仮に40万人近くが旅行を取りやめれば、大きな影響が出るのは間違いない。特に今年は「1月中旬までの身元保証書の発行数は前年を大きく上回って推移していた」(JATA)ため、機会損失は大きい。

 すでに影響も出始めている。大手旅行会社の国内旅行責任者は「取引のある旅館でキャンセルが相次いでいる。中国人客のキャンセルの穴を埋めるため、日本人へ積極的にプロモーションしていく」と話す。

 重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した03年時点で44万人だった訪日中国人は、ビザの緩和やLCC(格安航空会社)の増加などで19年には959万人と20倍以上になった。日韓関係の悪化で韓国人観光客が激減する中、中国人観光客は観光業にとって頼みの綱だった。だが、新型コロナウイルスの感染拡大により「40万人減」という大きな打撃を受ける可能性が出てきた。観光関連産業の先行きに不透明感が漂っている。

(貼り付け終わり)

 中国政府は中国国民の海外旅行禁止措置を取っており、現在旅行で滞在している人たちもいずれ帰国することになる。今回の新型コロナウイルスの感染拡大がどれほどの影響を持つものなのかは終息してみて、統計上の数字を見て見なければ最終的なことは分からないが、素人が推計をして見てもかなり深刻であることが分かる。日本政府観光局が出している統計データは大変詳細なものであり、参考になる。

※日本政府観光局のウェブサイト上にある統計データ↓

https://statistics.jnto.go.jp/graph/#category--10

2019年の訪日外国人旅行者の合計は3188万2100名だった。2018年は3119万1856名で、約70万名の増加となった。日本の「観光立国」戦略は推進され、成果を上げている。訪日外国人旅行者の平均滞在日数は約5日間、一人当たりの平均旅行支出額(宿泊・飲食・娯楽など)は約15万3000円(2018年)です。2019年も一人当たりの支出に大きな変化がないものとすると、約3200万人の人が平均15万円のお金を使うということになるから、単純に計算すると、合計で約4兆8000億円のお金を日本で使っているということになる。

foreignvisitorsaverageexpendituregrap20112018001

中国からの旅行者は2019年では959万4300名で、全体の約30%を占めている。中国からの旅行者が国・地域別では第1位です。第2位は韓国からの旅行者で、558万4600名で約17.5%、3位は台湾からの旅行者で、489万600名で約15.4%となっている。

foreignvistorstojapannumbersgraph20182019001 

 訪日観光客の80%は東アジア地域、東南アジア地域プラスインドからとなっている。やはり欧米諸国やアフリカ、南米地域からは「日本は遠い」ということになるのだろう。また、アフリカや南米地域には発展途上国も多く、海外旅行を楽しむ余裕がある人も少ないのだろう。

 訪日観光客数上位3名の国々の平均的な訪問客にはそれぞれ特徴がある。例えば、韓国からの訪問客の滞在日数は平均で2.8日、台湾で3.7日となっている。考えてみれば、私たち日本人も韓国や台湾はお手軽な海外旅行先ということもあり、週末の金曜日の夜から日曜日までという旅程を組む場合が多い。逆から考えれば、韓国や台湾からでも日本は週末に訪れることができるお手軽な国ということになるのだろう。

foreignvisitorsaveragestayingdays2018001

中国人訪日観光客は平均滞在日数が5.2日で、平均で22万円のお金を使う。その内訳を見ると、買い物に11万円を使うとなっている。私たちが報道などで見る「中国人の爆買い」は統計上の数字でも分かり興味深い。約900万人が22万円のお金を使うというのは、総計すると1兆9800億円を使うということになる。訪日外国人観光客全体で4兆8000億円なので、40%以上を中国人訪日観光客(訪問者数で言えば30%)が占めることになる。中国からのお客さんは「お金を落としてくれる上得意」ということになる。

chinesevisitorsaverageexpenditure2018001

今回の事態で中国からの訪日観光客がどれだけ減るのか分からない。事態がピークを越えた、終息に向かっているとなっても、中国政府やWHO(世界保健機関)が終息宣言を出さなければ、中国の人々が海外旅行に出かけるということにはならないだろう。また、他国からの旅行者も減少するだろう。事態の推移を見なければ分からないが、2021年からは回復傾向になっていくであろうが、今年は厳しいと思っていた方が良いだろう。

今年は東京でオリンピック・パラリンピックが開催される。中国もまたメダル大国であり、中国からたくさんの人々が中国選手の応援に来ることが予想される。そうなると厄介なのが訪日中国人に対するヴィザ発給だ。終息宣言があって、また通常通りということになるだろうか。SARSの事例から、新型コロナウイルスがピークを過ぎるのは今年の5月から6月と予測する医学者もいる。オリンピック・パラリンピックの直前だ。

封じ込めは中国国内から人々が出ないということで行われている。終息宣言が出ても、それではすぐにまたいつも通りとなるかどうか、日中両国政府にとって頭が痛い問題だ。日本政府としては日本国内の世論もあり、医師の健康診断を受け、新型コロナウイルスに感染していないことを示す証明書を中国からの訪問客が提出することを義務付けるだろう。これは訪問予定者にとって手間となり、それなら訪日は諦めようということになれば中国からの訪日客は減少する。

また、オリンピックを機会にして中国以外の国々からの訪日も増えることが予想された。しかし、今回のウイルスの封じ込めがいつまでかかるかに依るが、見込まれていた訪日客は減ることが容易に予想される。アジアを一緒くたにして見る傾向が強い欧米諸国では、人々の間で日本は中国の隣で危険だという心情が残る可能性がある。そうなれば海外向けに発売していたチケットがどうなるか分からない。キャンセルされて、それが再発売されるとなれば、日本国内で売れる。しかし、海外との間でのキャンセルと払い戻し手続きを行い、国内で再販売手続きを行うのは大変な手間となる。
 オリンピックの場合、特定の種目で世界の超一流のプロスポーツ選手が出場する。例えば、バスケットボールではアメリカ代表はNBAのスタープレイヤーたちで構成される「ドリームティーム」となる。サッカーも年齢制限があるものの、こちらも各国を代表する若手のスタープレイヤーが多く出場する。新型コロナウイルスが収束して間もない段階で、東京で開催されるオリンピックに、これらのプレイヤーが出場することをサラリーを払っている所属ティームやリーグが快く送り出すかとなると不透明だ。彼らの身体と技能を高額のお金を出して買っているのはこうしたティームだ。どのように判断するか、そして、プレイヤー自身がどのように判断するか不透明だ。もし、世界のスタープレイヤーたちの出場辞退となれば、せっかくの人気の花形種目の観客席がガラガラということにもなりかねない。

訪日観光客が10%減少した場合、単純計算で約5000億円のお金が日本国内に落ちないということになる。上得意の中国からの訪問客数が仮に半分となれば、1兆円近いお金が落ちないということになる。ここで完璧なシミュレーションなどできないので、何とも言えないが、かなり大きなマイナスの影響が出るということは覚悟しておかねばならない。日本のGDPは約550兆円だ。1兆円程度のお金は大したことではないということも言えるが、観光業にとっては大打撃となる。日本政府は既に観光業に対して影響を緩和する政策を実施すると発表している。私は昨年行った消費増税をいったん中止するというくらいのことを実施すべきだと考える。

 また、中国経済全体の減速は避けられない状況であり、そうなれば世界経済全体も沈滞することになる。日本もその影響をまともに受けることになるだろう。そのことを考え、大規模な対策を打ち出さねば、オリンピック・パラリンピックのお祭り気分もなく、沈滞した1年となってしまう。

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 米中貿易戦争は出版の分野にも影響を及ぼしている。アメリカで発刊された書籍の中国への輸入・出版が差し止め状態にあるということだ。もちろん書籍であるので、その中身や著者の思想が中国当局に忌避されて差し止めとなっている場合も多いだろう。不思議なのは、エズラ・ヴォーゲル博士の書籍が出版差し止めとなっている点だ。ヴォーゲルといえば『新版 ジャパンアズナンバーワン』で日本でも有名だ。日本研究分野で一番売れた本である。社会学者であるヴォーゲルは奥さんと子供たちを連れて日本の柏市に住んで、日本について研究してこの本を書いた。

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ヴォーゲル博士は日本研究家として知られているが、実はもともと日本語も中国語も堪能で、2000年代には既に中国に研究の重点を移していた。そのような人物の著作が出版差し止めというのは気になるところだ。日本では最近『リバランス 米中衝突に日本はどう対するか』という本を出した。「中国で一番有名な日本人」として知られる加藤嘉一氏が聞き手として参加している。

 世界の出版市場に占める割合はアメリカが30%、中国が10%、ドイツが9%、日本が7%、フランスが4%、イギリスが4%となっている。日本の出版の売り上げが約1兆5000億円となっているので、アメリカは6兆円超、中国は2兆円超であることが推計される。

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 誰もが名前を耳にしたことがある日本の大手出版社の売り上げは1000億円超から1500億円くらいだ。その多くが漫画、コミックの出版のおかげで何とかなっている。一般書の売り上げは落ち込んでいる。日本の子供、若者も大人も皆日々の生活に忙しくてなかなか本を手にすることはない。電車で熱心に本を読んでいる人を見かけることもあるが、スマホの画面を眺めている人がほとんどだ(電子書籍を読んでいる人はいるかもしれない)。

※出版社の売り上げについてはこちらからどうぞ。

 日本語の壁に守られている日本の出版市場であるが、人口が減っていくということになれば売り上げはまた落ちていく。本を買って読まないということが習慣化されつつあり、これもまた痛手となる。日本の出版物を翻訳しての海外展開はこれから重要になってくる。私は今年夏に深圳を訪問したのだが、そこで書店に入った。書店には日本の書籍の翻訳が多数置いてあったが、一番人気はミステリー作家の東野圭吾氏だと感じた。東野氏だけ、書籍の棚に「東野圭吾」コーナーがあったからだ。また、学生や若い人たちを中心に村上春樹氏やよしもとばなな氏の小説が人気だという話も聞いたことがある。書店は人とすれ違うのが大変なほどに混みあっていた。その様子が下の写真だ。

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全体主義の中国がアメリカを打ち倒すーーディストピアに向かう世界

 学習教材のところには親子連れが多くいたが、それ以外に場所にも多くの子供たちや若者たちが熱心に「座り読み(日本だったら立ち読みになるだろう)」をしていた。座り読みをされたくない本にはビニールでラップがしてあった。出版にとって中国市場はこれから有望である。日本の書籍の人気ぶりを考えると、これからどんどん日本の書籍が翻訳されて紹介されていくだろうし、また逆のことも起きるだろう。実際に、中国発のSF小説・劉慈欣(りゅうじきん)著『三体』が日本でも人気となっている(『三体』は世界的にも評価が高いのではあるが)

 米中貿易戦争は意外なところで影響を及ぼしている。

(貼り付けはじめ)

貿易戦争によって中国国内でのアメリカの書籍出版に打撃(Trade war hits U.S. books in China

レイチェル・フラジン筆

2019年12月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/finance/trade/476089-trade-war-hits-us-books-in-china

米中両国で貿易戦争が戦われている中、中国国内でアメリカの書籍出版が停止されたと報じられている。

『ニューヨーク・タイムズ』紙は、今年に入り貿易戦争が激化したことで、数百冊のアメリカの書籍の出版が中国当局によって差し止められている、と報じた。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、リストには、ボブ・ウッドワード著『恐怖の男:ホワイトハウスのトランプ』、1973年発刊のコーマック・マッカーシー著『神の子供』の翻訳、リサ・ハリディ著『非対称』、ステファニー・クーンツ著『婚姻の歴史』、エズラ・ヴォ―ゲル著『中国と日本』、中国語版のマイケル・J・サンデル著『公共哲学:政治における道徳性緒論』が含まれている。

ニューヨーク・タイムズは次のように報じている。それぞれの書籍の販売が停止されている理由は明確になっていない。ウッドワードの書籍に関しては、貿易戦争よりも政治的な内容がその理由であろうという憶測が流れている。

しかし、ニューヨーク・タイムズは、アメリカの書籍出版の証人はほぼストップしており、そのために出版社はアメリカの書籍から別の書籍に関心を移している、と報じた。

北京のある出版社に勤める編集者アンディ・リューはニューヨーク・タイムズの取材に次のように語っている。「アメリカの書籍を出版するのは現在ではリスクの高いビジネスとなっている。海外の書籍を紹介しようとするにあたっての前提が揺らいでいる」。

中国は検閲があるという評判が立っているがそれでも世界の書籍市場で主要な市場となっている。国際出版業協会によると、2015年の時点で、中国はアメリカに続いて世界第2位の書籍市場となっている。

今月、中国とアメリカは「第一段階」の貿易合意に達した。これによって米中両国は関税を引き下げることになる。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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