古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:中国

 古村治彦です。

 日本政府は「観光立国」を目指している。2020年夏には東京(と札幌やそのほかの地域)でオリンピック・パラリンピックが開催されることもあり、訪日客4000万人を目指している。世界GDPの40%近くを占め、世界経済の成長エンジンとなっているアジア諸国は人々の生活水準も上がり、海外旅行にも行ける人の数が増えており、海外旅行先として日本が選ばれることも多い。日本全国の観光地で様々な言語が飛び交うようになっている。

 私が生まれ育った鹿児島市にもいくつか観光地があり、その最大のものはやはり桜島であり、建造物で言えば、薩摩藩の藩主であり英明で知られた島津斉彬を祀った照国神社や、藩主の別邸を中心とした磯庭園だ。少し足を延ばせば有名な温泉地である指宿もある。こうした場所で、中国、台湾、韓国からの団体旅行客が多く見られるようになった。

 しかし、今回の新型コロナウイルスの感染拡大が起きた。中国で人々が長期休暇となる春節の時期に起きてしまった。この時期は中国から日本に多くの観光客が訪れる。しかし、急遽キャンセルになった。下の記事が示すように影響は大きく深刻だ。

(貼り付けはじめ)

●「新型肺炎、奈良観光に大打撃 人出は「10分の1に」」

2/2() 10:29 配信朝日新聞デジタル

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200202-00000013-asahi-soci

 新型コロナウイルスは奈良の観光にも影響を及ぼしている。奈良県内に住むバス運転手の男性(60代)への感染が判明してから初めての週末を迎えた1日、奈良公園(奈良市)周辺の人出は少なかった。観光バスの出入りは減り、ホテルや旅館ではキャンセルが相次いでいる。

 この日の午前11時過ぎから午後3時半まで奈良公園周辺を歩くと、散策する人の姿はまばら。大勢の外国人観光客がシカにせんべいをやる光景もほとんど見られなかった。例年なら中国の春節にあたり、中国人観光客でにぎわう時期だ。

 鹿せんべいを売る行商組合の男性(58)は「春節なのに、すごく少ない。去年の10分の1くらい。中国人だけでなく全体的に減った感じ。しょうがないですが」と話した。

 中国は感染拡大を防ぐため、1月27日から国外旅行を含む団体ツアーを禁止にしている。翌28日、バス運転手の男性の感染が明らかになった。荒井正吾知事は、男性の運転するバスが奈良公園に1時間ほど立ち寄ったことを明かしたうえで、「県内での感染は想像しにくい」と強調した。

 だが観光客の不安は残る。東大寺や興福寺ではマスク姿の参拝者が目立った。東大寺の近くを家族4人で歩いていた三重県伊勢市の乾智典さん(41)は「子どもがシカを見たいというので連れてきました。ぎりぎりまで迷ったけど、屋外やし大丈夫かなと」

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●「新型コロナウイルスで中国人観光客「40万人減」の可能性」

白井 咲貴日経ビジネス記者 2020130

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00105/013000003/

 新型コロナウイルスの経済面への影響が心配される中、観光業に新たな懸念が出てきた。40万人近い中国人が日本への旅行を取りやめる可能性だ。

 中国人が観光ビザを取得する場合、日本の旅行会社が身元保証人となった「身元保証書」の発行を受ける必要がある。日本旅行業協会(JATA)によると、「127日から3月までに来日する観光客の身元保証書を約40万件発行していた」という。だが、新型コロナウイルスの感染拡大で中国政府が127日以降の海外への団体旅行を禁止した影響もあり、「100%とは言わないが、ほとんどの人が日本への旅行を取りやめることになるだろう」(JATA)。今後、訪日客が激減する可能性がある。

 日本政府観光局(JNTO)によると、20192月の訪日中国人は約72万人、3月は約69万人だった。23月で仮に40万人近くが旅行を取りやめれば、大きな影響が出るのは間違いない。特に今年は「1月中旬までの身元保証書の発行数は前年を大きく上回って推移していた」(JATA)ため、機会損失は大きい。

 すでに影響も出始めている。大手旅行会社の国内旅行責任者は「取引のある旅館でキャンセルが相次いでいる。中国人客のキャンセルの穴を埋めるため、日本人へ積極的にプロモーションしていく」と話す。

 重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した03年時点で44万人だった訪日中国人は、ビザの緩和やLCC(格安航空会社)の増加などで19年には959万人と20倍以上になった。日韓関係の悪化で韓国人観光客が激減する中、中国人観光客は観光業にとって頼みの綱だった。だが、新型コロナウイルスの感染拡大により「40万人減」という大きな打撃を受ける可能性が出てきた。観光関連産業の先行きに不透明感が漂っている。

(貼り付け終わり)

 中国政府は中国国民の海外旅行禁止措置を取っており、現在旅行で滞在している人たちもいずれ帰国することになる。今回の新型コロナウイルスの感染拡大がどれほどの影響を持つものなのかは終息してみて、統計上の数字を見て見なければ最終的なことは分からないが、素人が推計をして見てもかなり深刻であることが分かる。日本政府観光局が出している統計データは大変詳細なものであり、参考になる。

※日本政府観光局のウェブサイト上にある統計データ↓

https://statistics.jnto.go.jp/graph/#category--10

2019年の訪日外国人旅行者の合計は3188万2100名だった。2018年は3119万1856名で、約70万名の増加となった。日本の「観光立国」戦略は推進され、成果を上げている。訪日外国人旅行者の平均滞在日数は約5日間、一人当たりの平均旅行支出額(宿泊・飲食・娯楽など)は約15万3000円(2018年)です。2019年も一人当たりの支出に大きな変化がないものとすると、約3200万人の人が平均15万円のお金を使うということになるから、単純に計算すると、合計で約4兆8000億円のお金を日本で使っているということになる。

foreignvisitorsaverageexpendituregrap20112018001

中国からの旅行者は2019年では959万4300名で、全体の約30%を占めている。中国からの旅行者が国・地域別では第1位です。第2位は韓国からの旅行者で、558万4600名で約17.5%、3位は台湾からの旅行者で、489万600名で約15.4%となっている。

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 訪日観光客の80%は東アジア地域、東南アジア地域プラスインドからとなっている。やはり欧米諸国やアフリカ、南米地域からは「日本は遠い」ということになるのだろう。また、アフリカや南米地域には発展途上国も多く、海外旅行を楽しむ余裕がある人も少ないのだろう。

 訪日観光客数上位3名の国々の平均的な訪問客にはそれぞれ特徴がある。例えば、韓国からの訪問客の滞在日数は平均で2.8日、台湾で3.7日となっている。考えてみれば、私たち日本人も韓国や台湾はお手軽な海外旅行先ということもあり、週末の金曜日の夜から日曜日までという旅程を組む場合が多い。逆から考えれば、韓国や台湾からでも日本は週末に訪れることができるお手軽な国ということになるのだろう。

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中国人訪日観光客は平均滞在日数が5.2日で、平均で22万円のお金を使う。その内訳を見ると、買い物に11万円を使うとなっている。私たちが報道などで見る「中国人の爆買い」は統計上の数字でも分かり興味深い。約900万人が22万円のお金を使うというのは、総計すると1兆9800億円を使うということになる。訪日外国人観光客全体で4兆8000億円なので、40%以上を中国人訪日観光客(訪問者数で言えば30%)が占めることになる。中国からのお客さんは「お金を落としてくれる上得意」ということになる。

chinesevisitorsaverageexpenditure2018001

今回の事態で中国からの訪日観光客がどれだけ減るのか分からない。事態がピークを越えた、終息に向かっているとなっても、中国政府やWHO(世界保健機関)が終息宣言を出さなければ、中国の人々が海外旅行に出かけるということにはならないだろう。また、他国からの旅行者も減少するだろう。事態の推移を見なければ分からないが、2021年からは回復傾向になっていくであろうが、今年は厳しいと思っていた方が良いだろう。

今年は東京でオリンピック・パラリンピックが開催される。中国もまたメダル大国であり、中国からたくさんの人々が中国選手の応援に来ることが予想される。そうなると厄介なのが訪日中国人に対するヴィザ発給だ。終息宣言があって、また通常通りということになるだろうか。SARSの事例から、新型コロナウイルスがピークを過ぎるのは今年の5月から6月と予測する医学者もいる。オリンピック・パラリンピックの直前だ。

封じ込めは中国国内から人々が出ないということで行われている。終息宣言が出ても、それではすぐにまたいつも通りとなるかどうか、日中両国政府にとって頭が痛い問題だ。日本政府としては日本国内の世論もあり、医師の健康診断を受け、新型コロナウイルスに感染していないことを示す証明書を中国からの訪問客が提出することを義務付けるだろう。これは訪問予定者にとって手間となり、それなら訪日は諦めようということになれば中国からの訪日客は減少する。

また、オリンピックを機会にして中国以外の国々からの訪日も増えることが予想された。しかし、今回のウイルスの封じ込めがいつまでかかるかに依るが、見込まれていた訪日客は減ることが容易に予想される。アジアを一緒くたにして見る傾向が強い欧米諸国では、人々の間で日本は中国の隣で危険だという心情が残る可能性がある。そうなれば海外向けに発売していたチケットがどうなるか分からない。キャンセルされて、それが再発売されるとなれば、日本国内で売れる。しかし、海外との間でのキャンセルと払い戻し手続きを行い、国内で再販売手続きを行うのは大変な手間となる。
 オリンピックの場合、特定の種目で世界の超一流のプロスポーツ選手が出場する。例えば、バスケットボールではアメリカ代表はNBAのスタープレイヤーたちで構成される「ドリームティーム」となる。サッカーも年齢制限があるものの、こちらも各国を代表する若手のスタープレイヤーが多く出場する。新型コロナウイルスが収束して間もない段階で、東京で開催されるオリンピックに、これらのプレイヤーが出場することをサラリーを払っている所属ティームやリーグが快く送り出すかとなると不透明だ。彼らの身体と技能を高額のお金を出して買っているのはこうしたティームだ。どのように判断するか、そして、プレイヤー自身がどのように判断するか不透明だ。もし、世界のスタープレイヤーたちの出場辞退となれば、せっかくの人気の花形種目の観客席がガラガラということにもなりかねない。

訪日観光客が10%減少した場合、単純計算で約5000億円のお金が日本国内に落ちないということになる。上得意の中国からの訪問客数が仮に半分となれば、1兆円近いお金が落ちないということになる。ここで完璧なシミュレーションなどできないので、何とも言えないが、かなり大きなマイナスの影響が出るということは覚悟しておかねばならない。日本のGDPは約550兆円だ。1兆円程度のお金は大したことではないということも言えるが、観光業にとっては大打撃となる。日本政府は既に観光業に対して影響を緩和する政策を実施すると発表している。私は昨年行った消費増税をいったん中止するというくらいのことを実施すべきだと考える。

 また、中国経済全体の減速は避けられない状況であり、そうなれば世界経済全体も沈滞することになる。日本もその影響をまともに受けることになるだろう。そのことを考え、大規模な対策を打ち出さねば、オリンピック・パラリンピックのお祭り気分もなく、沈滞した1年となってしまう。

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 米中貿易戦争は出版の分野にも影響を及ぼしている。アメリカで発刊された書籍の中国への輸入・出版が差し止め状態にあるということだ。もちろん書籍であるので、その中身や著者の思想が中国当局に忌避されて差し止めとなっている場合も多いだろう。不思議なのは、エズラ・ヴォーゲル博士の書籍が出版差し止めとなっている点だ。ヴォーゲルといえば『新版 ジャパンアズナンバーワン』で日本でも有名だ。日本研究分野で一番売れた本である。社会学者であるヴォーゲルは奥さんと子供たちを連れて日本の柏市に住んで、日本について研究してこの本を書いた。

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ヴォーゲル博士は日本研究家として知られているが、実はもともと日本語も中国語も堪能で、2000年代には既に中国に研究の重点を移していた。そのような人物の著作が出版差し止めというのは気になるところだ。日本では最近『リバランス 米中衝突に日本はどう対するか』という本を出した。「中国で一番有名な日本人」として知られる加藤嘉一氏が聞き手として参加している。

 世界の出版市場に占める割合はアメリカが30%、中国が10%、ドイツが9%、日本が7%、フランスが4%、イギリスが4%となっている。日本の出版の売り上げが約1兆5000億円となっているので、アメリカは6兆円超、中国は2兆円超であることが推計される。

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 誰もが名前を耳にしたことがある日本の大手出版社の売り上げは1000億円超から1500億円くらいだ。その多くが漫画、コミックの出版のおかげで何とかなっている。一般書の売り上げは落ち込んでいる。日本の子供、若者も大人も皆日々の生活に忙しくてなかなか本を手にすることはない。電車で熱心に本を読んでいる人を見かけることもあるが、スマホの画面を眺めている人がほとんどだ(電子書籍を読んでいる人はいるかもしれない)。

※出版社の売り上げについてはこちらからどうぞ。

 日本語の壁に守られている日本の出版市場であるが、人口が減っていくということになれば売り上げはまた落ちていく。本を買って読まないということが習慣化されつつあり、これもまた痛手となる。日本の出版物を翻訳しての海外展開はこれから重要になってくる。私は今年夏に深圳を訪問したのだが、そこで書店に入った。書店には日本の書籍の翻訳が多数置いてあったが、一番人気はミステリー作家の東野圭吾氏だと感じた。東野氏だけ、書籍の棚に「東野圭吾」コーナーがあったからだ。また、学生や若い人たちを中心に村上春樹氏やよしもとばなな氏の小説が人気だという話も聞いたことがある。書店は人とすれ違うのが大変なほどに混みあっていた。その様子が下の写真だ。

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zentaishuginochugokugaamericawouchitaosu001
全体主義の中国がアメリカを打ち倒すーーディストピアに向かう世界

 学習教材のところには親子連れが多くいたが、それ以外に場所にも多くの子供たちや若者たちが熱心に「座り読み(日本だったら立ち読みになるだろう)」をしていた。座り読みをされたくない本にはビニールでラップがしてあった。出版にとって中国市場はこれから有望である。日本の書籍の人気ぶりを考えると、これからどんどん日本の書籍が翻訳されて紹介されていくだろうし、また逆のことも起きるだろう。実際に、中国発のSF小説・劉慈欣(りゅうじきん)著『三体』が日本でも人気となっている(『三体』は世界的にも評価が高いのではあるが)

 米中貿易戦争は意外なところで影響を及ぼしている。

(貼り付けはじめ)

貿易戦争によって中国国内でのアメリカの書籍出版に打撃(Trade war hits U.S. books in China

レイチェル・フラジン筆

2019年12月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/finance/trade/476089-trade-war-hits-us-books-in-china

米中両国で貿易戦争が戦われている中、中国国内でアメリカの書籍出版が停止されたと報じられている。

『ニューヨーク・タイムズ』紙は、今年に入り貿易戦争が激化したことで、数百冊のアメリカの書籍の出版が中国当局によって差し止められている、と報じた。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、リストには、ボブ・ウッドワード著『恐怖の男:ホワイトハウスのトランプ』、1973年発刊のコーマック・マッカーシー著『神の子供』の翻訳、リサ・ハリディ著『非対称』、ステファニー・クーンツ著『婚姻の歴史』、エズラ・ヴォ―ゲル著『中国と日本』、中国語版のマイケル・J・サンデル著『公共哲学:政治における道徳性緒論』が含まれている。

ニューヨーク・タイムズは次のように報じている。それぞれの書籍の販売が停止されている理由は明確になっていない。ウッドワードの書籍に関しては、貿易戦争よりも政治的な内容がその理由であろうという憶測が流れている。

しかし、ニューヨーク・タイムズは、アメリカの書籍出版の証人はほぼストップしており、そのために出版社はアメリカの書籍から別の書籍に関心を移している、と報じた。

北京のある出版社に勤める編集者アンディ・リューはニューヨーク・タイムズの取材に次のように語っている。「アメリカの書籍を出版するのは現在ではリスクの高いビジネスとなっている。海外の書籍を紹介しようとするにあたっての前提が揺らいでいる」。

中国は検閲があるという評判が立っているがそれでも世界の書籍市場で主要な市場となっている。国際出版業協会によると、2015年の時点で、中国はアメリカに続いて世界第2位の書籍市場となっている。

今月、中国とアメリカは「第一段階」の貿易合意に達した。これによって米中両国は関税を引き下げることになる。

(貼り付け終わり)

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側[本/雑誌] (単行本・ムック) / 古村治彦/著

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 古村治彦です。

 「なぜ中国がここまで強大になるまで気づかなかったのか」「なぜ中国を野放しにしてきたのか」ということがアメリカ国内で、特に反中国派からは声高に叫ばれている。そして、たいていの場合、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官が中国に融和的で、キッシンジャーの息のかかった人物が対中国政策を実行してきたために、このようなことになったのだ、という結論に達する。キッシンジャーが金を貰ってアメリカを中国に売り渡したという過激な主張にまで至ることになる。
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ヘンリー・キッシンジャーと習近平

 米中接近は1971年からだ。共和党のリチャード・ニクソン大統領が中国との国交回復を目指した。当時のアメリカはヴェトナム戦争の泥沼に足をとられ、何とかしようとしていた。そこで目を向けたのが中国だった。国際的に孤立していた中国を国際社会に引き込み、プレイヤーとして機能させるということが目的だった。ソ連やヴェトナムに影響を与えて、ヴェトナム戦争を何とかしようというものだった。
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リチャード・ニクソンとヘンリー・キッシンジャー
 そこで白羽の矢を立てたのがハーヴァード大学教授だったヘンリー・キッシンジャーだった。キッシンジャーは国務長官として中国との関係回復に尽力したのは周知のとおりだ。しかし、ニクソンとキッシンジャーは同床異夢というか、中国観に違いがあった。ニクソンは中国を変革させよう、西側に対する敵対を止めさせようという考えだった。キッシンジャーは中国の考えや国内体制を変えることなしに、利益をもたらすことで国際社会に参加させようという考えだった。
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毛沢東とリチャード・ニクソン
 下の記事はキッシンジャーに対して批判的なトーンである。従って、中国は伝統文化を忌避し反西側の危険な考えを変えることなしに国際社会に参加し、強大な国になってしまった、大変危険だということになる。キッシンジャーの考えが足りなかったということになる。
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ヘンリー・キッシンジャーと毛沢東(真ん中は周恩来)
 それではニクソンが考えていたように、アメリカが手を突っ込んで中国国内の体制を変える、考えを変える、ということをやっていたらどうだっただろうか。中国国内で大きな分裂と争いが起きていた可能性は高い。そのような不安定な中国がアメリカの利益となったかどうか、疑問だ。また、日本にとって不安定な中国は利益とはならなかっただろう。

 中国の言い分を聞き、なだめすかしながら、国際社会に順応させるということをキッシンジャーはやった。これは大変な手綱さばきであったと思う。中国の経済力をここまでにしたのは、アメリカが中国産品の輸入を拡大したからだ。自業自得ということになる。

(貼り付けはじめ)

キッシンジャーの歴史的な中国政策:回顧(Kissinger’s historic China policy: A retrospective

ジョセフ・ボスコ筆

2018年9月26日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/international/408507-kissingers-historic-china-policy-a-retrospective

ヘンリー・キッシンジャーは今でも人々を驚かせ続けている。95歳になるキッシンジャーはリチャード・ニクソン政権で国務長官を務めた。キッシンジャーは最近、ウィルソン・センター創立50周年を記念してインタヴューを受けた。

キッシンジャーの発言を読むと、彼が現代における最も偉大な戦略思想家の1人であると評価されている理由が分かる。1960年代にハーヴァード大学で講義をしていた時代から、博識さには畏怖の念さえ持たれていた。

キッシンジャーは発言の中で、1971年にキッシンジャーとニクソンが初めて言及して以来のアメリカの対中国政策の基盤と失敗について触れている。キッシンジャーが国家安全保障学の分野におけるリアリスト学派を代表する学者ではなかったならば、何も学ばず、何も忘れていないキッシンジャーの何も変化していない中国観について語ったことだろう。そうではなく、彼は中国について悪いことばかりを学び、それらについて決して忘れなかった訳ではない。

キッシンジャーの学術と政治のキャリアの前半分で、キッシンジャーはヨーロッパ、ソヴィエト連邦、冷戦期の核兵器の諸問題に注力していた。キッシンジャーは自身でも認めているように、中国について考えたことも発言したこともほとんどなかった。

ニクソン大統領が歴史的な米中和解というプロジェクトを推進するためにキッシンジャーを政権内に入れようとした際、キッシンジャーは中国については全くの白紙のような状態であった。キッシンジャーは、自分に師匠役の人物が必要であることが分かっていた。そこで、キッシンジャーは、一人の国務省の中国専門家に白羽の矢を立てた。その人物は後に駐中国アメリカ大使を務め、キッシンジャー・インスティチュートの社長を務めることになるスタプレトン・ロイだった。そして、ロイは今回、キッシンジャーにインタヴューを行っている。キッシンジャーは「ステイプは私にとって中国に関する教師だった。従って、私にとって中国との関係構築は同時に教育を受けて、経験を積み重ねるプロセスでもあった」と述べている。

しかしながら、キッシンジャーはインタヴューの冒頭で、中国についての学びのプロセスにおける誤りを明らかにした。キッシンジャーは次のように語った。「米中両国は両国ともに政策実行における例外的な性質を持っていると確信している。アメリカは民主的立憲主義という政治システムを基盤としている。中国は少なくとも孔子とそれ以降の独特な実践にまで遡ることができる発展を基盤としている」。

キッシンジャーが公の場で常に述べているのは、彼が現在の中国は統治に関する神聖な諸原理を持つ誇大な文明の具体化されたもので、現代的な共産党独裁の具現化ではないと考えているということだ。共産党独裁の創設者(訳者註:毛沢東)はキッシンジャーが中国の行動原理と仮定している文化をことごとく非難した。毛沢東は中国の歴史と中国の人々に対して文化大革命を実行した。

実際、インタヴューの中でロイとキッシンジャー2人ともに、現在の中華人民共和国の共産主義的な源流(訳者註:文化大革命)について全く語っていない。同時に、西側の政治的、経済的価値観と諸機構の破壊についても語っていない。毛沢東にとっては西側の政治的、経済的価値観や諸機構は中国の古代文化に次ぐ敵であった。

中国が「その幻想を育て、憎悪を掻き立て、近隣諸国に脅威を与える」ような国家であったならば、キッシンジャーはニクソンの共産中国観を共有することができただろう。ニクソンは中国を国際社会に組み入れることで中国の危険な心性を変化させようとした。後に、ニクソンは自分が行った「戦略的ギャンブル」はうまくいかなかった、いまだに敵意を持っている中国をより強力にしただけだったと後悔した。

キッシンジャーは、中国の世界における見え方をどのように変化させるかを考慮する代わりに、アメリカは中国を世界に順応させるためにできることがあると考えた。キッシンジャーはロイに対して、「私たちの希望は米中両国の価値観はより近くなるだろうと私は考えた」と述べた。

キッシンジャーはニクソンの持っていた懸念について多少の心配はしていたが、全面的には共有しなかった。中国政府が持つ邪悪な世界観の根本からの穏健化なしに、数十年もニクソンが持っていた懸念は続いたままだった。

「外交政策を実施する際に必要なことは、大変化を必要とする目的に反する短期的に実現可能な目的について考慮することだ。そして、中国人は数千年にわたって自分たちの問題を解決するために政策を実行してきた」。

キッシンジャーにとって、中国共産党の国内統治のアプローチの変化は、世界規模のリアルポリティック(現実政治)とは切り離され、従属するものである。キッシンジャーは次のように述べている。「私たちは責務を担っていると感じた。それは平和と安定を守ることである。中国の体制を転換させるような目的は全てを止めてしまうことになる」。

しかしながら、キッシンジャーは、米中両国が直面している「現在における重大な問題」に言及しているが、同時にこの問題について一般化をしている。

キッシンジャーは次のように述べている。「私たちは世界中にある全ての問題と世界中の国々の国内構造を解決することはできない。それでも国内に対しては、私たちはその方向に沿った目的を設定し、できるだけ目的を実現するように努力しなければならない」。

キッシンジャーにとって共産主義中国の残酷な暴政と悪意に満ちた反西洋イデオロギーを穏健化するよりもより優先順位が高いもの「全て」は何であろうか?経済発展によって政治改革が引き起こされることが予期されるか(ニクソンはそのように考えていた)という疑問をロイはキッシンジャーに問いかけたが、キッシンジャーはこの質問には直接答えなかった。キッシンジャーは初期に書いていたものとは違う発言を行った。

「私たちは中国を開国させた。それはロシア、ソ連についての計算という要素を加えるためだった。そして、ヴェトナム戦争とアメリカ国内の分断の時代にアメリカ国民に希望を与えることが目的だった。アメリカ政府はこれまで排除してきた要素(訳者註:中国)を含む世界平和を実現するという考えを持つようになった」。

「これらは2つの主要な目的だった。これらの2つの目的を達成できたが、それは中国側も同じ目的を持っていたからだ」とキッシンジャーは述べた。

ニクソン・イニシアティヴは、(A)ソヴィエトの攻撃から中国を守る、(B)台湾の孤立化をスタートさせる、(C)西洋諸国との貿易と投資を受け入れさせるために中国を開国させる、ことが特徴だとされていたが、これらは全て中国政府にとっても達成したい目的である。ニクソン・イニシアティヴによって、アメリカ政府は、(A)中国政府がアメリカ軍のヴェトナムからの秩序だった撤退を支援する、(B)中国政府の反米意識を減少させる、(C)可能であればソ連政府との緊張関係を緩和することを目的としていた。

キッシンジャーはニクソン・イニシアティヴによって実現したプラスの結果を高く評価している。中国は3つの目的を全て実現させ、アメリカ側は目的を何も実現させることができなかった。キッシンジャーの獲得した外交上の輝かしい業績(米中関係構築)ではなく、彼が実行した政策によって、「現在における重大な問題」が不可避的にもたらすことになった。

驚くべきことは、ニクソン以降のアメリカ大統領全員と毛沢東以来の中国の指導者全員に助言をしてきた人物が今でも米中関係に関わっているということだ。幸運なことは、トランプ大統領は自分自身のやり方を始めようとしている。トランプは元々ニクソンが考えていた中国のプラスの変化をもたらそうとしている。

※ジョセフ・ボスコは2005年から2006年にかけて国防総省中国部長、2009年から2010年にかけて国防総省人道援助・災害復興担当アジア・太平洋部長を務めた。ボスコは米韓研究所と台湾・アメリカ研究所の非常勤研究員、大西洋協会アジア太平洋プログラム非常勤研究員、戦略国際問題研究所東南アジアプログラム非常勤研究員を務めている。国際台湾研究所の顧問も務めている。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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中国は21世紀の覇者となるか?―世界最高の4頭脳による大激論

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全体主義の中国がアメリカを打ち倒すーーディストピアに向かう世界

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 古村治彦です。

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全体主義の中国がアメリカを打ち倒すーーディストピアに向かう世界hongkongmap001

 2019年7月29日の昼過ぎに香港に向かった。香港では香港島西部にある地下鉄の西営盤駅近くのホテルに投宿した。何となくだが深圳から香港に移ると少しホッとするところがある。ホテルにはスマホが置かれており、ご自由にお使いください、とあった。このスマホを使ってもいいし、自分のスマホのためのwi-fiにも使えた。
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 香港では通常の観光もそこそこにデモが行われていた場所に向かった。香港島の中心部にある中環(Central、セントラル)から金鐘(Admiralty、アドミラルティ)にかけては金融街で世界各国の銀行や証券会社が支社を置いている。従って、欧米からの駐在員たちも多くおり、デモ隊はここを中心にしてデモをしていた。香港大学からも地下鉄ですぐに行けるということも利点であり、世界各国のメディアに注目を集めることができるという計算もあったようだ。また、香港の立法院や中国人民解放軍の本部も置かれている。
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立法院
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中国人民解放軍本部
 私たちが香港に滞在した7月末の段階では、デモが過激化する前
で、まだまだ落ち着いていた。ただ、街のあちこちに8月5日にジェネラル・ストライキを行おうという呼びかけのポスターやチラシが貼ってあった。デモがこれから過激化していくだろうと考えられた。
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上から読んでも横から読んでも香港と加油(頑張れ)

 ホテルでシンガポールのテレビ局のニュースを見ていたら(英語での放送なので分かりやすい)、香港の地下鉄でのデモ隊と警察の衝突について放映されていた。地下鉄が動かない、プラットフォームには乗客があふれかえっていた。市民へのインタヴューで、ある男性は本を片手に「今日は本を読みたいと思っていたので、ゆっくり本を読んでいる」と答えて、間接的にデモを支持する発言をしていた。しかし、もちろん怒っている人たちもいた。

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 デモに関する落書きには「Be Water(水のようになれ)」という言葉が散見された。これは、香港が生んだ映画界のレジェンドであるブルース・リーの言葉だ。水は変幻自在に形を変える。静かな時は鏡のようにもなるし、荒れ狂う時には大地を削り、生物の命を奪う。戦国武将の斎藤道三の旗印も水であったことはよく知られている。ブルース・リーは今でも香港の人々に親しまれているということが分かるし、逆にブルース・リーよりも更に香港映画を世界に広めたジャッキー・チェンは大陸側にすり寄ってすっかり人気がなくなっているということが推察される。
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 デモに関しての私見を述べる。中国は外国から食い物にされてきた苦い歴史がある。アヘン戦争(1840―1842年)とその後の南京条約(1842年)によって国の一部が外国の植民地となり、国の富が吸い取られるという苦難を味わった。私は毛沢東が中国共産党を率いて日中戦争、国共内戦を戦い勝利できたのは、彼が自主独立(外国勢力に頼らない)ということを訴えたからだと思う(実態はアメリカからの支援で勝利をした訳だが)。外国からの支援、武器や資金の援助を受けてしまえば、その外国の意向を無視できない。中国の近代化のために、外国に頼ろうとした人たちは最終的にはうまくいかなった。これを敷衍すれば、香港の学生デモは外国に頼ろうとしている時点で、多くの中国人からの支持を得られないのではないかと私は思う。

 観光はそこそこにと決めていたが、九龍半島に渡り、リッツカールトンホテルに行って、香港市街を眺めながら、紅茶を飲んだ。シンガポールのTWGの紅茶が出され、大変においしかった。100階からの眺めも素晴らしかった。
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 リッツカールトンホテルの下に、中国の高速鉄道の駅である香港西九龍駅がある。この西九龍駅からは中国各地に向けての高速鉄道が出ている。
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 中国のホテルではフロントでも英語が通じにくかったが、香港のホテルはさすがにどこでも英語は通じた。しかし、香港市街の小さな食堂やコンビニでは英語が通じないことが多かった。これは意外であった。

 また、香港では反大陸、反中国中央政府、反中国共産党の気風が強いようだと感じた。大陸側ではウイチャットペイとアリペイでの決済が既に支配的であるのに、香港では今でも現金が通じた。ある人に聞いたら、大陸で使われているようなものを遣えるかという意識が香港の人々の間にあるらしい。また、中国語(普通語)を話すのも疎まれるようだ。同行したK氏(日本人)がタクシーやレストランで話すと、「あなたは外国人なんだから下手でも片言でも英語を使った方が良い、変に中国語を使うべきではない」と忠告されたということだ。中年以上は広東語を話しており、中国語は下手だということだ。抑揚や発音がうまくないのだそうだ。それでも若い人たちは学校教育を通じて普通語を話せるようになっているようだ。

 「場(トポス)」としての香港についての報告としては小川さやか『チョンキンマンションのボスは知っている: アングラ経済の人類学』が興味深い。

 深圳と香港に行き、日本にはない活力を感じた。「最前線」にいるという感覚は日本では感じることはない。この感覚を味わうだけでも中国を訪問する意義はある。日本は閉鎖された沈みゆく船だ。そのことに気づかされる。それだけでも大きな収穫となる。

 

 以下に、『全体主義中国がアメリカを打ち倒すーディストピアに向かう世界』のまえがき、目次、あとがきを貼り付けます。是非お読みください。よろしくお願いいたします。

 

(貼り付けはじめ)

まえがき   副島隆彦

 

中国は表紙に打ち込んだとおり明らかに全 トータリタリアニズム 体主義国家である。

その別名が「共産中国(きょうさんちゅうごく)」である。みんなに嫌われるはずだ。だが、今後、世界中がどんどん中国のようになる。

 

世界中のすべての国が、中国化するのである。その代表的な具体例かつ証拠は、監視カメラ(CCTV [シーシーティブイ]。今はコミュニティ・サーキットTV[ティビー]と呼ぶ)が、街中のあらゆるところに取り付けられていることだ。アメリカも、ヨーロッパも、日本だって監視カメラだらけの国になっている。

 

中国では監視カメラによる民衆の動きの把握のことを 天 てんもう 網(ティエン・ワン)と言う。「天網恢恢疎にして漏らさず」の天網である。

私は最近、中国に香港から入って 深圳(しんせん)に行った。この中国のITハイテクの最先端の都市を調査してきた。あれこれもの凄(すご)い発展ぶりだなと、思った。それを後(あと)の方で報告する。中国にまったく行きもしないで、中国の悪口ばかり言っている(書いている)人たちは、お願いですから、せめて北京と上海に行ってください。安いホテル代込み10万円で行けます。エクスペディアなどネットで安くで予約するといい。

 中国は国民の生活を監視している国になってしまっている。もうすぐ監視カメラが中国全土に 6 億台取り付けられるそうだ。中国国民14億人の2人に1台の割合だ。まさか個人の家の中までは取り付けられないだろうが、それだって分からない。中国のすべての都市の街路には、既に付いている。

 ところが、これらの中国製の監視カメラ会社に、最初に技術を開発して売ったのは、日本の大手電機会社である。ニコンとキヤノンとパナソニックとソニーが、この公共空間のカメラの技術を一番先に開発した。日本がいまもドイツ(カールツァイスとライカ)にも負けないで、世界一の技術力を誇っているのは、この分野である。専門技術でいえば、フィルムとフィルターとレンズの技術である。ハッセルブラッド社(スウェーデン)は、DJI(中国のドローンの最大手)が買収した。

 あとのほうで載せるが(P61)、キヤノンの御手洗富士夫(みたらいふじお)会長の発言で、「キヤノンは監視カメラで未来を切り開く」と最近堂々と日経新聞に出ていた。

 中国だけが国民を徹底的に監視しようとしている国家なのではない。米、欧、日の先進国も監視国家だ。それに続く新興国も、「国民を監視する国家」になっていくのである。すなわち中国が先導して、他の国々もそれに追随する。これからの人類がたどるのは、このディストピア(幻滅の国。絶望郷[ぜつぼうきょう] 。監視国家)への道である。中国だけがますますひどい国になるのではない。ディストピア(dystopia)はユートピア(utopia、理想郷[りそうきょう])の反対語(アントニム)である。 

 人類が自分の未来を、盲目的、直線的かつ貪欲に突き進む結果、世界はこのあと、いよいよ中国のようになっていく。中国の悪口を言っていればいいのではない。

 国民生活が、権力者や支配者によって徹底的に監視され、統制される政治体制のことを全体主義(totalitarianism トーリタリアニズム)という。この全体主義という言葉を広めたのはドイツ人の女性思想家のハンナ・アーレン人である。彼女が、1951年に書いた『全体主義の起源』で、ソビエト体制を批判した時に使われた言葉である。このコトバの生みの親は、イタリア知識人のジョバンニ・アメンドラである。

 世界がやがて中国のようになっていく、という課題は、私が急に言い出したことではない。すでに感覚の鋭い言論人や知識人たちによって「世界は中国化する」という本も出ている

 もう 20 年前からイギリスのロンドンは、すべての街 ストリート 路に監視カメラが設置されていたことで有名だ。今の日本も主要な生活道路のほとんどにまで、監視カメラが設置されている。このことを日本国民は知らされていない。新宿や池袋のような繁華街だけが、カメラで監視されているのではない。 

 民衆の往来、行き来を、政府や取り締まり当局(警察)がずっと撮影して、画像を保存している国が立派な国であるはずがない。だが、どこの国の警察官僚も、必ずこういうことをやる。官僚(上級公務員)というのは、本性(ほんせい)からしてそういう連中だ。

 これは人類にとっては悲しむべき間違った方向である。科学技術(テクノロジー)の進歩が、コンピューターや通信機器(スマホ他)の異常な発達とともに、こういう監視技術を最高度に発達させた。この監視システムを維持するために、一体どれほどの警察公務員が新たに採用され続けているかについて、誰も関心を払わない。

 それにしても、全 トータリタリアニズム 体主義は強いなあ。世界大恐慌が襲いかかったとき、中国はシャッタード・アイランド(バターンと金融市場を閉じる)ので、ビクともしない。

=====

目次

まえがき 3

 

第1章 中国のディストピア化を追いかける世界

中国は巨大成長したという事実は否定できない 18

世界の知識人が描いてきたディストピア像 22

左右のどっちからも嫌われるのが一番いい 30

全体主義中国を徹底的に叩く 33

ディストピア映画の歴史的系譜 40

 

第2章 貿易戦争から金融戦争へと移り変わった

〝卑屈〟なテンセントが金融戦争に勝利する 52

銀行消滅とCCTV 59

銀行の別名は「信用」 69

アリババはNY市場から締め出されるのか? 70

中国のネット世代と実質的なデモクラシー 75

ファーウェイはアメリカのいじめに負けなかった 82

アメリカと中国の睨み合いは続く 87

中国人は国有企業が嫌い、民間企業大好き 90

半導体製造の切り札、紫光集団 96

 

第3章 中国は最早アメリカとの力相撲を恐れない

中国の技術泥棒を引っ張った「千人計画」 104

結局中国を一致団結させてしまったアメリカのミス 109

米中IT戦争と日本の半導体潰しの意外な共通点 112

サムスンを育てたのはインテル 117

新たな火種となったレアアース 120

 

第4章 中国にすり寄る 韓国、北朝鮮と台湾を巡るつばぜり合い

北朝鮮と韓国による「高麗連邦」の誕生 130

GSOMIA破棄問題で嫌韓が高まった本当の意味 132

アメリカが韓国を切ったのではなく、韓国がアメリカを切った 135

香港問題は台湾問題である 139

2020台湾総統選とテリー・ゴウの動き 142

韓国瑜はアメリカの回し者だった 145

中国は民主化するのか? 150

台湾の中国化とシーレーン問題 152

中国人はヒラリー・クリントンのことが大嫌い 154

もうアメリカの圧力などなくなってしまった 160

警戒の目はファーウェイの海底ケーブルに 164

 

第5章 中国の膨張を招き込んだアメリカの弱体化

腰砕けとなったペンス副大統領 170

「外国にいる米軍の兵隊たちは国に帰って、ゆっくり休め」 174

米中貿易戦争は、今年中に表面上は静かになる 177

イレイン・チャオはチャイナ・ロビー代表で政権ナンバー 3 180

EVの天下を取る中国にひれ伏すマスク 187

 

第6章 アフリカと中央アジアに広がる チャイナネットワーク

アフリカの一帯一路戦略 204

次の世界の中心は中央アジアになる 213

中国はアメリカからアフガンを任された 219

 

第7章 ディストピア中国の不穏な未来

新疆ウイグル問題の真実 224

私は見た、深圳の現実を 236

華強北と中国のジャイアント・ベイビーたち 238

ドローンの恐るべきパワー 248

デジタル人民元の脅威 250

 

あとがき 252

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あとがき   副島隆彦

 

この本『全体主義(トータリリアニズム)の中国がアメリカを打ち倒す││ディストピアに向かう世界』は、世界最大の牢獄国家、中国についての、私の 11 冊目の本である。

英文の書名は、“Totalitarian China will finish of America(トータリタリアン・チャイナ・ウィル・フィニッシュ・オフ・アメリカ)”である。このfinish off(フィニッシュ・オフ)という動詞は、「とどめを刺す、息の根をとめる」という強い意味だ。

 

『あと 5 年で中国が世界を制覇する』(2009年刊)という本も、私は書いている。この本は反共(はんきょう)右翼の人々から激しく嫌われた。「何を言うか。中国は暴動が起きて、中国共産党は潰(つぶ)れるのだ」と、彼らは、私の本に最大限の悪罵(あくば)を投げた。それで、現実の世界の動きは、その後どうですか。

 

人も国家も、より強い者に虐(いじ)められながら、這い上がってゆく途中は、善であり、正義である。より強い国の支配の下(もと)で、苦心惨憺(さんたん)しながら勝ち上がってゆく。

しかし、一旦(いったん)、勝者になったら正義[ジャスティス]justice)から 悪[イーヴォ]evil)に転化する。中国が、アメリカ合衆国を打ち負かして世界覇権(はけん)国(ヘジェモニック・ステイト)になったら、その時、巨大な悪[イーヴォ]evil)になるのである。それまであと5年だ。

人も国家も、そして企業も、2番手に付けて1番手(先頭、支配者[ガリバー])の真似をしながら必死で喰い下がっているときが、一番美しい。これまでの40年間(鄧小平[とうしょうへい]の「改革改放宣言」1978年12月18日。 40周年を中国は祝った)、私は、アメリカ帝国の後塵(こうじん)を拝しながら、蔑(さげす)まれながら、泥だらけの極貧(ごくひん)の中から、着実に勝ち上(のぼ)ってきた中国を頼もしく、美しいと思ってきた。

 

この11月20日に北京で、〝世界皇帝代理〞のヘンリー・キッシンジャーが心配した。これに対して、翌日即座に、習近平は、「心配しないで下さい。中国は世界覇権(hegemony、ヘジェモニー。ドイツ語ならヘゲモニー)を求めません(私たちは、これまでにいろいろ苦労して、人類史を学びましたから)」と発言した。

これが一番大きな処(ところ)から見た、今の世界だ。日本という小ぢんまりとした国で世界普遍価値(world values、ワールド・ヴァリューズ)を理解しようとして、私は、独立知識人として(本書第1章を参照のこと)、孤軍奮闘して来た。

 

 本書は書名が決まったのが11月11日。体調不良の中で、2週間で作り上げた。だが手抜きはない。いつもながらの全力投球だ。私の地獄の踏破行(とうはこう)に同行して、命懸けの鎖場(くさりば)にも付き合ってくれたビジネス社大森勇輝編集長に記して感謝します。

 

2019年12月

副島隆彦

(貼り付け終わり)

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全体主義の中国がアメリカを打ち倒すーーディストピアに向かう世界

(終わり)

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 古村治彦です。 

 2019年7月27日から31日にかけて中国の深圳と香港を訪問した。副島隆彦先生の調査旅行に同行した。調査旅行の結果は『全体主義中国がアメリカを打ち倒すーディストピアに向かう世界』(副島隆彦著、ビジネス社、2019年12月21日)として結実した。私たちが訪問したのは地図の通りだ。

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『全体主義中国がアメリカを打ち倒す』から

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全体主義の中国がアメリカを打ち倒すーーディストピアに向かう世界

 本のタイトルにあるディストピアとは技術が進み、生活全般が豊かに便利になるが、技術の進歩を利用して、政府や権力者が人々を監視したり、コントロールしたりする、一枚めくると非常に怖い世界ということになる。SF小説などのテーマとしてこれまで長く取り上げられている。ディストピア小説としては、ジョージ・オーウェルの『一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)』、アーサー・ケストラーの『真昼の暗黒 (岩波文庫)』、オルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)』が挙げられる。

 私たちは2019年7月27日に日本を午前早くに出発し、昼頃に香港国際空港に到着した。空港では日本人で中国語が堪能のK氏と合流した。空港でK氏が予約していた自動車(運転手付き)に乗り、深圳に向かった。香港と深圳の間に広がる湾にかかっている深港西部通道を通り、数十分で深圳に到着した。香港からは鉄道でも深圳に向かうことができるが、自動車で深港西部通道を使った方が早く便利だそうだ。

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 昼過ぎに深圳西部にある地下鉄の后海駅近くのホテルに到着した。ホテルは日本からインターネットの予約サイトを使って予約したもので1泊1万円程度だったが、清潔で豪華な部屋に泊まることができた。夕方に近くの火鍋屋で食事を摂り、それからタクシーで深圳の電気街・「華強北(ファーチャンペイ)」に向かった。華強北は電気製品の卸や小売りをしている店が並んでいる場所だ。夜にかけてぶらぶらして、地下鉄を使ってホテルに帰った。

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 到着翌日の28日、私たちは運転手付きの自動車を雇って深圳を回った。まずは、ファーウェイ(華為技術、Huawei)の本社に向かった。ファーウェイの本社は深圳の北部に位置し、一つの街のように広大な地域を占めている。高い建物はない。なんでも高層ビルにしてエレベーターを使って上り下りをする、エレベーターを待つ時間がもったいないということで低層にしているという話だ。その一角にはファーウェイが経営するゲスト用のホテルまである。

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 ファーウェイの隣の街区には台湾のフォックスコン(鴻海科技集団、中国では富士康)の工場がある。近藤大介の『ファーウェイと米中5G戦争 (講談社+α新書)』によると、1980年代、ファーウェイの創業者・任正非(じんせいひ、Ren Zhengfei、1944年―、75歳)とフォックスコンの創業者・郭台銘(かく たいめい、Guo TaimingTerry Guo、1950年―、69歳)は、両者が30歳代の頃から知り合いで、1980年代から協力し合って会社を大きくしていったそうだ。
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 その後、深圳市内を回った。三和人力市場という場所には衝撃を受けた。ここは元々、日雇い労働者たちの街であり、日本語で言えば、ドヤとなる安価な簡易宿泊所が集まる場所だった。今では簡易宿泊所の1階にはコンピューターが所狭しと並べられて、インターネットゲーム(ネトゲ)ができるようになっている。それは何故かと言えば、全国から若者たちが集まって1日中インターネットゲームをしているからだ。簡易宿泊所(1泊数百円)に泊まりながら、ネトゲをしている。日本でも問題になった、ネトゲ廃人たちだ。
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 この街を歩き回っていると、この場所を取り仕切っているであろう中年女性が出て来て、私たちに「写真を撮るな、写真を撮るなら金を払え」と迫られて恐怖を感じた。インターネットゲームとゲームに耽溺する若者たちという人類の行き着く先が、地廻りが支配するような場所に存在している混沌が大変に印象的だった。
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 その後、テンセントや百度の本社を見て回り、また、福田地区にあるショッピングモールに向かった。ここには日本の無印良品が大型ショップとホテルを展開している。また、モールの中には日本食レストランを集めたフロアも設置されていた。こうして見ると、日本のソフトパワーというのも侮れないものがある。無印良品のショップには日本の商品が日本とほぼ同じ値段で売られていた。家族連れが楽しそうに歩いたり、ソファーに座っておしゃべりをしたりしていた。おしゃれな生活を総合的に提案という形なのだろう。このモールの駐車場や道路には高級外車がずらりと並んでいた。ここでのショッピングや食事を楽しむことが出来るのは金持ちに限られるだろう。

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 ホテルの近くにある地下鉄の駅周辺にある店で従業員募集のポスターが出ていた。そのいくつかを見てみると、普通のお店の従業員の賃金は月3000元前後のようだ。1元は15元から16元だから、日本円では5万円程度ということになる。店長クラスはその倍の6000元(約10万円)くらいだ。日本式のエステサロンだと店長は年間20万元(月1万6000元)と表示されていた。日本円だと300万円近くだ。
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 日本と比べて3分の1くらいだと言えるだろう。物価は中国の方が安いとは言え、大都市の深圳で月5万円で暮らすのは厳しい。福田地区のショッピングモールにある無印良品や日本食レストランで楽しむのは難しい。しかし、日本はこれからも給料が下がっていくことしか考えられないのに対し、中国はこれから伸びていくぞということを実感できるし、自分は自分の力で這い上がってやるという気概も強いので、若者たちは明るい。
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 私はスターバックスにも行ってみた。ここで驚いたのは、値段が日本と変わらないことだった。レシートの写真を見てもらえれば分かるが、アイスラテとトーストを頼んで55元、日本円で約800円だ。月5万円の給料でスターバックスに通うことは難しい。しかし、お客さんはこれから増えていくだろう。また、支払いの時に、現金を使ったのだが、店員がレジの下にある引き出しからビニールに包まれた現金を出してきて、面倒くさそうにお釣りを渡してきたことだ。中国本土ではスマホ決済が支配的になっており、アリペイ、ウィチャットペイという決済プラットフォームが利用されている。中国本土の銀行口座がなければ利用できず、外国人旅行者には利用できない。それなのに、旅行者である私たちが支払いをしようとすると面倒くさそうに取り扱われる。舌打ちをされる。中国国内に限定されているという点で、「ガラパゴスじゃないか」とも思うが、16億人が使うプラットフォームである。「大きすぎるガラパゴス」なのだ。

 2019年7月29日の午前中には再び電気街の「華強北」を訪問した。電気街を歩いてみて、日本の電機会社の存在下の低下を痛感した。私が20年前にアメリカに留学した際に、生活用品を整えるために地元の小売店「ベストバイ(Best Buy)」に向かった。この時には、テレビや冷蔵庫、掃除機などは日本の電機会社の製品が並んでいた。それが今では、何とも残念なことに日本の電機会社のロゴを見ることは少なかった。

 考えてみれば、スマートフォン(スマホ)に関しても日本は主役ではない。私たちがスマホに関して話題にする時、日本の家電メーカーの名前を口に出すことがあるだろうか。中国からはoppo(オッポ)や小米(シャオミー)といった聞き慣れない名前の会社が日本に展開しようとしている。格安で質の良いスマホを提供するということだ。日本が貧しくなっていること、かつ日本のモノづくりの地位の低下が示されている。前述の近藤氏が著書で述べているように、「日本は中国の下請け」となっているのだ。
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(続く)

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全体主義の中国がアメリカを打ち倒すーーディストピアに向かう世界
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