古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:中国共産党

 古村治彦です。

 

 2018年5月7日、北朝鮮の最高指導者である金正恩朝鮮労働党委員長が中国東北部の港町である大連を訪問し、中国の習近平国家主席と会談を持ったという情報が出ています。今年の3月末に続いて第2回目の中朝首脳会談です。

 

 前回は金正恩が電車で20時間以上かけて北京を訪問しましたが、今回は大連まで専用飛行機で行ったようです。今回は習近平が中国海軍の空母の試験航行に立ち会うために大連を訪れ、それに合わせて金正恩が訪問したという形になっているようです。習近平が招待したのだろうと思いますが、詳しいことはまだ分かりません。

 

 前回の金正恩による北京訪問が行われた後、次は習近平が北朝鮮を訪問するだろうと考えられていましたが、今回金正恩が再び中国を訪問するということになりました。

 

 今回は鉄道を使わずに慌ただしく飛行機で訪問したことから何か緊急で話しておかねばならなかったことが発生したのではないかと思います。金正恩が慌てて訪問するくらいですから、議題は米朝首脳会談、核兵器に関することであろうと思います。

 

 また、習近平が中国海軍の空母の試験航行に立ち会うことに合わせての訪問ということも気になります。中国が自国の誇る空母がある大連にまで金正恩を呼び寄せた、それに金正恩が応じて慌ただしく飛行機で駆け付けた、という構図になると、これは、北朝鮮は中国に依存するということを示しているのだろうと思います。中国に屈服し、その保護を受けるということになると思います。

 

 中国は今アメリカと軍事的に衝突することは避けると思います。ですから、北朝鮮を保護しながら、北朝鮮の起こしている問題を解決する、そのために中国がアメリカに何とかとりなしを求めるのではないかと思います。米朝首脳会談では物事は決まらないし、アメリカは北朝鮮と対等な形で話をする気はないでしょう。今の世界でアメリカが対等な形を受け入れるとすればそれは中国だけでしょう。

 

 こうなってくると、中国の意向次第で状況は変化していきます。しかし、中国はアメリカに対して軍事的に何かをすることはできません。そうなれば、アメリカを満足させ、中国も体面を保つためには、北朝鮮の核兵器の完全な、検証可能な、逆行しない核兵器の放棄が求められます。中国は裏で北朝鮮に厳しい要求をし、脅しも行っているでしょう。

 

 それでも、北朝鮮が上記のような核兵器の完全放棄を受け入れるとなったら、「北朝鮮は、中国からの親切な助言と、協力して北朝鮮の防衛にあたるという申し出を受け入れて、核兵器を放棄することにした、その検証と保証は中国が行う」という形で、北朝鮮の体面を保つ形に持って行くでしょう。

 

 そうなればアメリカは北朝鮮を許容するということになるでしょう。アメリカによる北朝鮮攻撃の理由もなくなります。しかし、ここで問題は、アメリカとしては、ひとたび自国の安全保障にとっての脅威となった北朝鮮の核兵器に関しては、アメリカの派遣する人員で完全放棄を確認したいということを言うであろうということです。これを北朝鮮が受け入れられるのかどうかということは分かりません。これが拒絶となれば、米朝間での話し合いはつかないということになります。

 

 北朝鮮は中国による保証を求めてぎりぎりのところまで妥協するでしょう。中国もそれに合わせるでしょうが、問題はアメリカがどう出るかということになります。

 

(貼り付けはじめ)

 

金正恩氏 専用機で中国・大連訪問か=習主席も現地へ

 

5/8() 12:16配信 聯合ニュース

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180508-00000025-yonh-kr

 

【北京聯合ニュース】北朝鮮の最高位級の要人が専用機で中国の遼寧省大連市を訪問したもようだ。さまざまな状況から要人は金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長である可能性が高まっている。

 

 習近平国家主席も中国初の国産空母の試験航行イベントに出席するため大連に向かったとされ、中朝首脳の接触の有無に関心が集まっている。

 

 複数の北朝鮮消息筋によると、北朝鮮の最高位級の要人は7日、専用機で大連空港に到着し、中国側と接触しているという。

 

 米国の中国語サイト「多維新聞」は金委員長の専用機と同一機種の旅客機が大連空港で目撃されたと報じた。

 

 中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」では6日から大連空港と市内で厳重な交通規制が行われているとの書き込みが相次いでいる。

 

 消息筋は「北朝鮮から最高位級とみられる要人が大連に来たとみられる」として、「いろいろな儀典上、金正恩委員長である可能性が高まっている」と述べた。

 

 別の消息筋は「習主席が空母の試験航行出席を翌日に控えた7日に大連を訪問し、金正恩委員長の専用機と推定される北朝鮮の航空機も大連で目撃されたという話が出ている」と伝えた。

 

 中国外務省は大連を訪問した北朝鮮要人に関する聯合ニュースの質問に対し、回答していない。

 

 金委員長が3月末に続き再び訪中したとすれば、大連で中国共産党中央対外連絡部の主管で秘密会談が行われる可能性がある。

 

 米国が米朝首脳会談を控え、非核化だけでなく大量破壊兵器の永久的な放棄まで求めているとされ、対応に追われている北朝鮮が再び「中国カード」を切ったといえる。

 

 米中首脳会談が開催される場合、北朝鮮は中国を味方につけることで米朝交渉でバランスを取り、対等な立場から米国と交渉を行う意思をアピールする狙いとみられる。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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今の巨大中国は日本が作った


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真実の西郷隆盛

 
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迫りくる大暴落と戦争〝刺激〟経済
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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今回は習近平国家主席が慣習を破って2022年以降も権力を握り続けるのではないかという内容の記事をご紹介します。この記事を読むと、「習近平が独裁者となるのか」と思わされますが、国際情勢で考えますと、2017年からアメリカはヒラリーが大統領になって2021年までやる訳ですが、その間にどういう「大きな戦争」を東アジアに仕掛けてくるか分かりません。彼女は国務長官時代には「アジアへの回帰(Pivot to Asia)」路線を打ち出したこともありますし、それに対応するための非常的措置ということも考えられるかと思います。また、世界の覇権がアメリカから離れていく時期に、中国国内をしっかり固めておきたいという考えもあるのではないかと思います。

 

==========

 

習近平は永遠に(Xi Jinping Forever

―中国の力を増しつつある国家主席・習近平は伝統を破壊し、彼の支配を永続させようとしているのか?

 

ウィリー・ラム(Willy Lam)筆

2015年4月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/04/01/xi-jinping-forever-china-president-term-limits/

 

 外国の専門家、そして中国国内の専門家は、中国の最高指導者習近平(Xi Jinping)の中国共産党にショックを与えて体制を刷新する巧妙な手腕に驚いている。彼は党、国家、軍の権力を自分に集約しているように見えるがこれもまた人々を驚かせているに違いない。彼が最高指導者の地位に就いて2年半経ったが、国家の最高指導者の支配する期間は10年という制限を壊し、ここ最近のどの指導者よりも長い期間中国を支配しようとしているように見受けられる。

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習近平 
 

 中国共産党最高幹部に近い3人の人物に取材をしたところ、習近平と彼の側近たちは、習近平が少なくとも2027年までは中国を支配できるようにするための計画を立てているということだ。2027年の段階では彼はまだ74才であり、健康であると思われる。

 

私が取材した3名は全員が匿名を希望した。それはエリート政治を議論することはとても微妙なことであるからだ。そのうちの1人は次のように語った。「習近平は党・国家・軍を全て一手に支配している。そして、現在のところ、彼の後継者と目される人物は出ていないし、その人物を訓練しているということもない。この事実が示しているのは、彼が2022年に中国共産党中央委員会総書記の地位を退くことに影響されることなく、それ以降も中国の最高指導者の地位に留まり続けるということである」。習近平の計画は、ライヴァルたちからの反撃、国際社会や国内の危機、健康問題などで覆される可能性もあるが、彼が出来るだけ長く権力の座に就こうと計画しているのは明らかである。

 

 習近平は10年を超えて中国を支配したいと望んでいる。彼の願いを如実に表しているのは、彼が公式の場で自分の後継者となりうる人物を明らかにすることを拒んでいることだ。中国では一般的に、指導者たちは世代によってくくられる。習近平は第五世代に属している。この世代は1950年代に生まれた人々である。そして、習近平は第六世代、もしくは第七世代から後継者を選び出していない。

 

 それでは、習近平の前任者であった胡錦濤(Hu Jintao)の行動について考えてみよう。1942年生まれの胡錦濤は、第四世代の中心的な人物で、2002年から2012年まで中国共産党中央委員会総書記を務めた。1992年にエリートである中国共産党中央政治局常務委員に就任してすぐに、胡錦濤は、習近平(当時は浙江省党委書記)と李克強(Li Keqiang、現・国務院総理で当時は遼寧省党委書記)を含む第五世代の人々を25名の最高幹部で構成される、中国の統治機関である中央政治局に昇格させた。胡錦濤はまた下級の幹部たちも昇進させた。1990年代半ばまでに、第五世代に属する20名ほどの若手のスターたちが各省の副部長以上の地位に就いた。

 

 2007年の第17期中国共産党大会(党大会は5年おきに開催される重要な会議)までの時期に、胡錦濤は30名ほどの第六世代の若手のスターたちを選別し、重要な地位に昇進させたことも見逃せない動きであった。

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胡錦濤、江沢民、温家宝

 

 2005年までに、胡錦濤と江沢民(Jiang Zemin)は、習近平と李克強を、胡錦濤と当時の国務院総理である温家宝を後継者として中国共産党中央政治局常務委員会に入れることを決めたのは明らかであった。そして、2005年末までに、第六世代の20名ほどが各省の副部長以上の地位に昇進した。

 

 支配エリートに新しい血を入れるという中国共産党の伝統に習近平が従うならば、2015年末までに、第七世代の20名ほどを各省の部長、副部長級にまで昇進させているはずである。しかしながら、習近平が2012年11月に党総書記に就任して以降、第七世代では1人だけ、上海市副市長の時光輝(Shi Guanghui、1970年生まれ)だけが副部長級の地位に昇進した。習近平が2015年中にこの他の指導者たちを昇進させる可能性は低いと見られている。

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 時光輝
 

 習近平はもう一つの不文律を破ろうともしているようだ。1980年代末から、中国共産党の最高幹部は非公式ではあるが、「七上八下(七は入れて八は出す)」政策に従ってきた。67歳までの最高幹部は中央政治局常務委員会に入ることが出来るが、68歳以上の人物は入ることが出来ない。5年に1度開催される党大会で、その時に68歳以上の中央政治局常務委員は引退すると予想され、68歳以下の人物は地位に留まる。現在の中央政治局常務委員7名のうち、習近平と李克強を除く5名は2017年までに68才を超えるので、その時の党大会で引退することになる。しかし、その5名の代わりに誰が中央政治局常務委員会に入るのだろうか?

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栗戦書

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王滬寧

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趙楽際

 

 取材に答えてくれた3名の匿名の中国共産党関係者たちは、習近平の信頼の厚い第五世代に属する3名の人物が2017年に中央政治局常務委員に昇格するだろうと語った。その3名は、栗戦書(Li Zhanshu、1950年生まれ)、王滬寧(Wang Huning、1955年生まれ)、趙楽際(Zhao Leji、1957年生まれ)である。更に重要なことは、現在の常務委員であり、腐敗根絶の責任者である王岐山(Wang Qishan、1948年)はそのまま地位に留まる可能性が高いことだ。王岐山は習近平と同じ太子党であり、2人は1950年代からの友人であるが、2017年の第19期中国共産党大会の段階で王岐山は69歳となっている。取材に答えてくれたある人物は、2022年の第20期党大会まで第五世代は党指導部の防波堤として留まる可能性が高く、そうなると、習近平は少なくとも2027年の党大会までは現在の地位に留まろうとしているということになる。

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王岐山

 最高指導者は10年間しかその地位に留まれないという不文律がある中で、習近平はこの確立された伝統をどのように避けようとしているのか?

 

 中華人民共和国憲法は、国務院総理を含む、各省の部長が10年以上地位に留まることを禁止している。しかし、中国共産党の憲法である党憲章には、各省の部長級以上に相当する党の役職の就任期間の制限について明文化された規定は存在しない。その代り、1980年代から90年代にかけて中国の最高指導者であった鄧小平(Deng Xiaoping)が確立した不文律があり、それによると、中央政治局常務委員は10年以上その地位に留まれないことになっている。

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鄧小平

 

 しかし、習近平は国家主席の座を降りてもなお国のトップであり続けることは可能なのである。中国では、中国共産党と政府の組織は並行して存在しているが、実質的には、党が政府に対して優越し、コントロールしている。例えば、湖北省の最高責任者は党委書記である。省長は2番目にランクされる。国政レヴェルでもこれは同じだ。習近平が持つ3つの肩書、国家主席、中国共産党中央委員会総書記、中国人民解放軍を統括する中国中央軍事委員会主席のうち、中国共産党中央委員会総書記の地位が最も重要なのである。

 

 中国共産党中央委員会総書記の地位に留まる以外にも、習近平には他の選択肢がある。1つのシナリオとしては、毛沢東の遺風を弱める一環として鄧小平が1982年に廃止した、中国共産党中央委員会主席の地位を復活させ、自分が主席に就任することがある。これが実現すると、未来の総書記は主席である習近平に従わねばならなくなる。

 

 もう1つのシナリオとしては、中国共産党中央委員会総書記と国家主席を退任しても、中央軍事委員会主席には留まるということが考えられる。これにはいくつかの前例がある。1980年代、鄧小平は中央軍事委員会主席の地位に就いて、中国を支配した。また、江沢民は国家主席を退いてからの2年間、中央軍事委員会主席の地位に留まって影響力を保持し続けた。

 

 2013年末、権力を掌握してから1年後、習近平は党の最高指導部の中に2つの大きな力を持つ組織、中央国家安全委員会と中央全面深化改革領導小組を作った。この2つの組織はそれぞれ、半警察国家と経済政策を一手にコントロールしている。習近平が中央軍事委員会とこの新たに創設された2つの組織の主席に留まるならば、誰が中国共産党中央委員会総書記になろうとも、習近平に従属しなければならない。

 

 もちろん、習近平の権力掌握と彼の徹底した反腐敗キャンペーンは、党内のライヴァルたちの反撃を呼び込む可能性も高い。また、彼が国内政策と外交政策を全てコントロールするとなると、国内や国際社会で予期できない危機が起きた際に、スケープゴートにされることもあるだろう。

 

 習近平の前には困難な仕事が一つ待っている。2022年を越えても権力を保持できるだけの権力基盤の構築に彼が失敗してしまうことも十分にありうる。しかし、習近平が定まった期間に縛られないで最高権力を持つ指導者だけが中国と共産党を版得させることが出来ると考えたらどうだろうか。彼は自分こそそれをやる男とだと考えるだろう。

 

(終わり)










 
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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



「習近平は団派のようなライバル派閥の人々をわきに追いやることに成功しているのか?」という疑問よりも、もっと重要な疑問は、「習近平が権力を拡大し、絶大な力を持つことは彼自身にとって良いことなのか?」という疑問である。中央全面深化改革領導小組を例に採れば、この機関は共産中国史上最大の高度な意思決定機関だと言える。この機関には4名の中国共産党中央政治局常務委員が参加し、主席と副主席を務めている。それ以外に、10名の中央政治局委員が参加している。中央全面深化改革領導小組は良く練られた構成となっている。これによって、習近平は、経済、行政、社会、文化の各方面の諸改革の将来に向けた道筋を直接監督することができるのである。(Finance.Sina.com[北京]、2014年1月24日;BBC中国語放送、2013年12月30日;ドイチェ・ヴェレ中国語放送、2013年12月30日)また、習近平は意思決定において明確な上意下達の命令系統を、中央全面深化改革領導小組を通じて持つことになるだろうと予測されている。第18期中国共産党中央委員会三中全会において示された文書には、諸改革の秩序だった実行について次のように書かれている。「私たちは、状況全体に責任を持ち、様々な部門を調和させるという党の中核的な機能を発達させねばならない」。習近平は中国共産党の最高機関が改革の様々な側面に責任を持つようにすると決意した。しかし、習近平の決意は、李克強が強調した、経済における官僚の介入の度合いの削減と「市場と社会の創造的な力の促進」を妨げるもののように考えられる。( China News Service、2013年11月17日;Caijing.com[北京]、2013年7月13日)

 

 ここで出てくる疑問は、習近平とつながりがある人々の質と能力はどうなのか、というものだ。習近平は自分の派閥に人を集め結束させることに腐心しているようである。従って、側近たちを昇進させる際に、職業上の能力よりも個人的な忠誠心を重視しているように見える。例えば、昨年陳希が中国共産党中央組織部のナンバー2に任命されたことについて考えてみる。陳希は才能あふれる工学の専門家であり、1990年代前半にはスタンフォード大学の客員研究員をしたこともある、陳希はキャリアの大半を清華大学で過ごした。2000年代の7年間は清華大学党委員会書記を務めた。また国務院教育部と中華科学技術協会に勤務していた経験もある。しかし、陳希は人事と組織に関する経験に欠けている。更に興味深いのは、陳希は沈躍躍(Shen Yueyue、1957年~)と交代して組織部副部長に就任したという事実だ。56歳の沈躍躍は陳希よりも若いだけでなく、人事や人材管理についてより知識を持っているのだ。沈躍躍は胡錦濤前国家主席の派閥に属しており、1998年から2002年にかけて浙江省と安徽省で組織部の幹部を経験している。そして、2003年から2013年まで中国共産党中央組織部副部長を務めたのだ。陳希の昇進は、習近平が大学の同級生に対して、人事の専門家であり、誰を政府内に入れるかの門番役である趙楽際の手助けをして欲しいと望んだ結果だと結論付けるのは難しいことではない。習近平派の利益にそぐわないと思われる人物は中央組織部の推薦を受けられずに昇進が難しくなるということになるのだ。(Radio Free Asia、2013年4月30日;大公報、2013年4月18日)江沢民と胡錦濤の組織哲学と同じく、習近平は 彼の最も信頼する人物を中国共産党中央組織部や中国共産党中央宣伝部のような「重要な機関」に配している。江沢民の時は曽慶紅、胡錦濤の時は李源潮が中国共産党中央組織部長となった。彼ら2人は上司である江沢民と胡錦濤にとって掛け替えのない助言者であった。

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沈躍躍

 

 2013年11月の第18期中国共産党中央委員会三中全会で採択された文書の重要性を説明しつつ、習近平は「改革を包括的に深化させることはシステム工学的に言えば、複雑なことである」と指摘している。彼は次のようにも発言している。「必要なことは、トップがデザインをし、包括的に計画を立て計算することだ」。国営の中国新聞は更に次の世に書いている。「習近平の中央全面深化改革領導小組の主席就任は、この機関が充分な権威を持ち、決定がスムーズにかつ有効に行われるということを担保している。習近平はこのような方法で既得権益からの抵抗と妨害を排除しようとしているのだ」。(中国新聞、2013年12月31日;New Beijing Post、2013年11月14日習近平の正統性を更に強化し、人気を高めるために、習近平と彼の側近たちは、「国家主席は改革の速度を加速させるために権力を掌握しつつある」ということを示していかねばならない。彼らといえども毛沢東流の権力の事故強化スタイルから逃れることはできないのだ。

 

(終わり)



 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 習近平は上海市党委書記をわずか6カ月しか経験しなかったが、上海時代の部下たちを北京に呼び寄せている。2007年に習近平が中国共産党中央政治局常務委員に昇進する際に、彼の昇進に関わった人物として上海閥の2名の名前が挙げられる。1人は元国家主席の江沢民、もう一人は元国家副主席の曽慶紅(
Zeng Qinghong、1939年~、そうけいこう)である。指導者第5世代の「中核」と見なされる人々が上海閥の人々を習近平派に送り込んだことは驚くには値しない。上海閥であり習近平派に参加した人物と言えば、丁薛祥(Ding Xuexiang、1962年~)は昨年、中国共産党中央弁公庁(CCP General Office)副主任と中国共産党総書記弁公室(personal office of the President)主任に任命された。51歳の丁薛祥は、習近平が上海市党委書記を務めていた時期、上海市党委員会中央弁公室主任を務めていた。この時、習近平は、丁薛祥の政治的洞察力と組織的手腕に深い印象を受けた。(文匯報[香港]、2013年7月24日;BBC中国語放送、2013年5月17日)もう一人の上海を基盤として昇進してきた人物として、習近平が上海市党委書記をしていた時期の上海市副市長だった楊暁渡(Yang Xiaodu、1953年~)である。2014年1月、上海出身の楊暁渡(61歳)は、中国共産党中央規律検査委員会(CCP Central Commission for Disciplinary InspectionCCDI)副書記に任命された。中国共産党中央規律検査委員会は、中国における反汚職の最高機関である。(人民日報、2014年1月15日;大公報、2014年1月15日)

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曽慶紅       丁薛祥                 楊暁渡

 

 習近平派の中で重要な要素となっているのは、陝西省出身、もしくはキャリアにおいて陝西省で勤務をした経験を持つ人々である。陝西省は習近平と彼の尊敬を集めている父親、習仲勲の出身地である。緩やかな組織体である陝西省組(Shaanxi Gang)には、3名の中国共産党中央政治局常務委員と4名の中央政治局委員が含まれている。中国共産党中央政治局委員の趙楽際(Zhao Leji、1957年~、ちょうらくさい)と栗戦書(Li Zhanshu、1950年~、りつせんしょ)は、彼ら2名が出身地である陝西省で習一族の利益をうまく守った。そのことで習近平と深いつながりを持つことになった。中国共産党中央組織部長の趙楽際(56歳)は、2007年から2012年まで陝西省党委書記を務めていた。栗戦書(63歳)は、興味深いキャリアを積んできている。栗戦書は、陝西省で指導的な地位を歴任したが、1998年から2003年まで西安市党委書記を務めた。習近平が栗戦書と知り合ったのは1980年代初めであった。両者は河北省にある近隣の県の党委書記をそれぞれ務めていた。(サウスチャイナ・モーニング・ポスト、2013年11月23日;陝西日報[西安]、2013年3月17日)

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趙楽際                    栗戦書

 

 習近平は政権内部に彼の高校時代と大学時代の同級生たちを招き入れている。中国共産党中央組織部副部長の陳希(Chen Xi、1953年~)と中国共産党中央財経領導小組(CCP’s Leading Group on Finance and Economics)弁公室主任の劉鶴(Liu He、1952年~)がその代表的人物たちである。陳希(60歳)と習近平は、1970年代に、名門清華大学で共に化学工学を専攻し、ルームメイトであった。(大公報、2013年4月18日;Asia Times Online、2013年2月19日)劉鶴(61歳)と習近平は、北京市海淀区で同じ学区の別々の高校に通っている時に親友となった。劉鶴はハーヴァード大学ケネディスクールで修士号を取得した経済学者である。そして、金融と経済に関する諸改革における習近平のアドヴァイザーとなっている。現在は国務院国家開発改革委員会副主席も兼任している。劉鶴は、昨年11月の第18期中国共産党中央委員会三中全会で承認された経済改革案の起草において重要な役割を果たした。(フェニックステレビ[香港]、2013年10月11日;文匯報、2013年10月11日)

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陳希                        劉鶴

 

 習近平は自身の権力基盤を固める一方で、胡錦濤前国家主席が率いた団派の人々をわきに追いやるために様々な努力を行った。現在の中国共産党中央政治局常務委員で団派は国務院総理の李克強だけである。李克強の団派時代からの同僚たちは、第18期中国共産党大会において中央政治局委員にまで放ってはいるがそれ以上は昇進しなかった。長年の伝統に従えば、国務院総理というのは中央政治局常務委員会において中国経済を担当するメンバーが就任するということになっていた。しかし、李克強は中央全面深化改革領導小組の3名いる副主席の1人に過ぎないのである。残り2人の副主席は、イデオロギーと宣伝の専門家である劉雲山(Liu Yunshan、1947年~、りゅううんざん)と国務院常務副総理の張高麗(Zhao Gaoli、1946年~、ちょうこうれい)である。彼らもまた中国共産党中央政治局常務委員である。そして、この2人は、李克強よりも習近平により近いと考えられている。李克強国務院総理は、第18期中国共産党中央委員会三中全会で採択された経済と社会の改革に関する文書作りに携わった最高レベルのチームから外されていた。このことが意味するのは、李克強は経済に関わる各部をこれからも運営するであろうが、重要な政策決定に関しては、習近平に従わねばならないということだ。(サウスチャイナ・モーニング・ポスト、2014年1月24日;民報、2013年11月17日)


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劉雲山                    張高麗
 

 中央政治局委員で、団派に対して忠誠心を持つ人々は、重要な地位に就けられているようには見えない。中国国家副主席の李源潮(Li Yuanchao、1950年~、りげんちょう)と中国共産党中央宣伝部長の劉奇葆(Liu Qibao、1953年~、りゅうきほう)といった人々がそうである。国家副主席の李源潮は、胡錦濤政権下で台頭するスターであった。彼の重要な仕事の一部は、公的な労働組合、中国共産主義青年団、中華全国婦女聯合会(All-China Women’s Federation)のような「大衆組織」を監督することである。劉奇葆は、党のメディアや広報を担当しているが、中央宣伝部長というのは、通常、メディア全般について大きな権限を持っているものなのである。第18次中国共産党大会以降、劉奇葆は、彼の上司である劉雲山の統制を過度に受けているように見える。(Chinanews.com、2013年4月1日;文匯報、2013年11月20日)

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李源潮     劉奇葆

(続く)



 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 古村治彦です。

 今回から中国国家主席・中国共産党総書記・中国共産党中央軍事委員会主席である習近平に近い人々の顔ぶれを取り上げた論文をご紹介します。


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習近平派の人々を明らかにする(
Members of the Xi Jinping Clique Revealed

 

Publication: China Brief Volume: 14 Issue: 3

 

February 7, 2014 03:43 PM Age: 61 days

ウィリー・ラム(Willy Lam)筆

 

http://www.jamestown.org/programs/chinabrief/single/?tx_ttnews%5Btt_news%5D=41933&tx_ttnews%5BbackPid%5D=25&cHash=c97424fda6de2f64e09ee0e2456c6bb3#.U0VpZH-KBjo

 

 分水嶺となった第18期中国共産党大会から14カ月が過ぎた。習近平(Xi Jinping、1953年~、しゅうきんぺい)国家主席は実力者への道を順調に進んでいる。習近平は、前任者の江沢民元国家主席と胡錦濤前国家主席よりも自身の持つ権力の範囲を拡げ、深化させている。2014年1月、習近平は「国家安全保障委員会(National Security Commission)」の主席に就任した。この国家安全保障委員会は、国家警察、情報機関、司法機関を統制する機能を持つ。それから1カ月前の2013年12月、習近平はもう一つの上位統合機関である「中央全面深化改革領導小組(Leading Group on the Comprehensive Deepening of ReformLGCDR)」の主席に就任した。この機関は、2013年11月に開催された第18期中国共産党中央委員会三中全会(Third Plenum of the 18th Central Committee)の気施錠で設立が決定された。(新華社通信、2014年1月24日;人民日報、2014年1月24日;中国日報、2014年1月22日)習近平は、党、外交問題、軍事問題に加えて、複雑な国家安全保障と法執行にも取り組むことになった。中央全面深化改革領導小組の主要な機能は、経済改革手法をデザインし、実行することである。習近平は、李克強(Li Keqiang、1955年~、りこくきょう)国務院総理から経済政策の最終監督者としての役割を剥奪したように見える。(民報[香港]、2014年1月25日;大公報[香港]、2014年1月25日;“Xi’s Power Grab Towers over Market Reforms,” China Brief, November 20, 2013も参照のこと)習近平は習近平派(Xi Jinping Clique)を形成しつつあるように見える。習近平派のメンバーたちは、党、政府、人民解放軍の重要な地位に就いている。

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習近平             江沢民(左)と胡錦濤        習仲勲

 

 習近平と江沢民、胡錦濤を比較して良く書かれているのは、2人はそれぞれ上海閥と中国共産主義青年団(Communist Youth LeagueCYL)派という2つの派閥のトップであった。習近平は前任者たちのような良く組織化された忠実な追随者を持っていないように見えるということだ。60歳になる習近平は、党の長老で国務院副総理を務めた習仲勲(Xi Zhongxun、1913~2002年、しゅうちょうくん)の息子であり、彼自身は太子党(Gang of Princelings)のトップに君臨していると考えられる場合もある。太子とは党の最高幹部たちの子供たちのことを意味する。しかし、太子党は、関係が緊密な団派に比べて緩やかなグループなのである。通常の派閥であれば、明確な命令系統があり、信条や魅力でつながっている。一方、太子党は「革命の血統(revolutionary bloodline)」を共通点として持つ排他的なクラブに入っている有力な人々の集まり、ということになる。太子党の人々全員が「赤い貴族(red aristocracy)」の特権を維持するという目的を共有してはいるが、それぞれは個別のイデオロギーや野心を持っているので、太子党は一人の指導者に依存するという構造になっていない。中国の最高機関である中国共産党中央政治局常務委員会(Politburo Standing Committee)の2人のメンバーである兪正声(Yu Zhengsheng、1945年~、ゆせいせい)王岐山(Wang Qishan、1948年~、おうきざん)は太子党であるが、中国共産党の指導者第6世代のメンバーたちの多くが高級幹部の子弟たちではないという事実は重要だ。第6世代の人々は1960年代生まれで、現在急速に台頭している。(香港経済報、2013年6月28日;BBC中国語放送、2013年3月14日)

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兪正声                王岐山
            

 現在の中国の太子党の主要な構成要素となっているのは、中国人民解放軍(People’s Liberation ArmyPLA)である。「革命の血統」に連なる将軍たちには、中国人民解放軍総装備部長の張又侠(Zhang Youxia、1950年~、ちょうようきょう)、中国人民解放軍空軍司令員馬曉天(Ma Xiaotian、1949年~、ばぎょうてん)、中国人民解放軍総後勤部政治委員(Political Commissar)の劉源(Liu Yuan、1951年~、りゅうげん)、中国人民解放軍海軍政治委員の劉暁江(Liu Xiaoqiang、1949年~、りゅうぎょうこう)である。

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張又侠            馬曉天

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劉源                  
劉暁江

 

従って、軍人太子党は結成されたばかりの習近平派(Xi Jinping Clique)の主要な構成要素となっている。最高司令官でもある習近平は、軍人太子党からの忠誠心の見返りとして、前任者たちに比べて、将軍たちにより配慮している。習近平は、2012年末に中国共産党総書記と中央軍事委員会(Central Military CommissionCMC)主席になって以来、人民解放軍の全ての軍管区の部隊を訪問している。2014年の旧正月の前、人民解放軍内蒙古軍管区内にある高地に置かれた部隊の将兵を訪問した時、習近平は野戦用の迷彩服を着用していた。より重要なことは、習近平は、人民解放軍の将軍たちが外交や国家安全保障の分野で声高に発言することを許していることである。(人民日報、2014年1月29日;Huaxia.com[北京]、2013年12月27日;新華社通信、2013年12月26日)

 

 習近平派のより重要な人材供給源となっているのが、習近平が福建省(1985~2002年)、浙江省(2002~2007年)、そして上海市(2007年)で勤務していた時の同僚や部下たちである。57歳の黄坤明(Huang Kunming、1956年~)は、1977年から1999年まで福建省で勤務し、その間に順調に昇進していった。1999年に福建省から浙江省に移動してまもなく、黄坤明は浙江省党委書記を務めていた習近平と直接やり取りをするようになった。黄坤明は浙江省の湖州市と嘉興市の党委書記を務めた。昨年末、黄坤明は中国共産党中央宣伝部副部長に任命された。(光明日報[北京]、2013年10月24日;大公報[香港]、2013年10月3日)貴州省長の陳敏汝(Chen Min'er、1960年~)は、習近平が浙江省党委書記を務めていた時、浙江省政府宣伝部長を務めていた。50歳の陳敏汝は、第18期中国共産党大会で中央委員に選出された指導者第6世代の9名のうちの1人だ。(人民日報、2013年10月31日;貴州日報、2013年8月22日)

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黄坤明        陳敏汝 


(続く)


 

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