古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。よろしくお願いします。

タグ:中国

 古村治彦です。

 

 ドナルド・トランプ新政権発足まで1カ月を切りました。閣僚人事もほぼ決定しましたが、日本にとって関心のある駐日大使はまだ明らかになっていません。千葉ロッテマリーンズの監督時代にティームを日本一に導いたボビー・ヴァレンタイン氏の名前も出ていましたが、まだ正式には決まっていません。

 

 トランプ政権になってどうなるかということに関心が移っています。トランプは次期大統領(President-Elect)となっての数カ月で、様々な新機軸を打ち出そうとし、また現実政治にも影響を与えようとしています。世界を驚かせたのは、台湾重視の姿勢です。

 

 アメリカは米中国交正常化を行い、「一つの中国政策」を堅持しつつ、台湾に対しても、台湾関係法で関係を維持してきました。アメリカ国内では、チャイナ・ロビー派(この場合のチャイナは中華民国[台湾])と呼ばれる勢力も大きな力を持っています。しかし、公式には台湾は中国の一部であるという立場を取ってきました。

 

 トランプは「王様は裸だ」と言わんばかりに、台湾を重視する姿勢を見せました。これに対して、中国政府は不快感を表明しました。それは当然のことでしょう。

 

 トランプの対中姿勢には前例がありました。そのことをおなじみのマイケル・グリーン先生が教えてくれています。レーガン大統領の時に、国務省の高官人事が決まる前に、国家安全保障会議のメンバーが決まって、そのメンバーが主導して、レーガン大統領は台湾に肩入れする姿勢を取ったということです。また、レーガン大統領はカリフォルニア州知事時代に個人的に台湾指導部との人脈を築いていたということもあったそうです。

 

 1980年代初頭と現在では中国の置かれている立場は大きく異なります。中国はアメリカに次ぐ世界第二位の経済規模を誇り、経済成長率は鈍化しているとは言え、現在でも世界経済の成長エンジンとなっています。

 

トランプ政権の外交調整役になるであろうヘンリー・キッシンジャーの存在もありますから、中国と激しくぶつかるということはないでしょうが、トランプとしては、簡単に言うと、「アメリカからもっとものを買って欲しい、貿易不均衡を押さえて欲しい」ということで、中国に対して色々と注文や要求を出すことでしょう。

 

 今回は、台湾を使って、中国をけん制する、揺さぶるということをやったのではないかと思います。アメリカ、中国、台湾、中国、韓国、日本の中で、本気で米中がぶつかって得をする国はありません。強いて言えば北朝鮮でしょうが、それでも相当なダメージを受けるでしょう。

 

 トランプ政権になってどうなる、と言うことはみんなが関心を持っていることですが、決してそんな無茶をすることはないだろう、特に外交では、と思います。そして、より内政に力を入れていくだろうと思います。そのようなトランプ政権を利用もせずに、「やったやった、日本の防錆予算を増やす口実にできるわい」とくらいにしか思っていない日本の指導部は大局的には大きな間違いをするでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプの台湾への電話がどれほど悪いことなのか?(How Bad Was Trump’s Taiwan Phone Call?

 

マイケル・グリーン筆

2016年12月3日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/12/03/how-bad-was-trumps-taiwan-phone-call/

 

ドナルド・トランプ次期大統領は12月2日に、蔡英文台湾総統に電話をかけた。これに国際社会は驚かされた。1979年にアメリカは台湾との外交関係を転換した。アメリカはこの時に「一つの中国」政策の優越性を認めた。それ以降、アメリカ大統領から台湾総統に電話をかけたことはなかった。専門家たちは、中国政府はトランプの政権移行ティームに激しく対応することになるだろうと警告している。彼らは恐らく正しい。また、今回の出来事で、トランプ・オーガナイゼ―ションが台湾の桃園航空城都市開発計画に参加する希望を持っていることについて、利益相反(利益衝突)に関する疑問が出てくるということを指摘している人々もいる。

 

しかしながら、ここでは歴史的な観点が必要である。今回の外交儀礼と慣習の無視は初めてのことではない。1980年から1981年にかけて、当時のレーガン次期政権は、台湾との関係を正常化すると約束し、大統領就任に関連するいくつかの式典に台湾政府高官を招待した。中国政府は激怒した。政権初期のこのような議論を巻き起こした台湾に対しての働きかけは、レーガンのカリフォルニア州知事時代からの台湾政府指導部との深い繋がりが反映されていた。今回のトランプの電話と同じく、こうしたレーガン大統領の動きも当時のリチャード・アレン率いる国家安全保障会議(NSC)ティームが国務長官や国務省高官が決まる前に計画し、主導したものであった。

 

政権発足後の数カ月、アレンとNSCは、台湾政策を巡って、アル・ヘイグと国務省との間で争った。アレンは中国と対峙させるために戦闘機を台湾に売却することを主張した。一方、ヘイグはソ連と対峙させるために中国に戦闘機を売ることを主張した。政権が発足してから18カ月後には、アレンもヘイグもレーガン政権から追い出された。レーガン大統領は「第三の」米中コミュニケを発表した。このコミュニケは、最初の2つのコミュニケの中で確立された米中関係の要素を再確認するものであった。しかし、附則として、台湾の安全保障にとって重要な諸問題について、台湾の頭越しで何かを行うことはないことを約束する「6つの前提」がつけられていた。

 

レーガンを振り向かせようと考えた中国政府は、最高幹部クラスを含む代表団を送り、レーガンに対して、更なる譲歩と「台湾関係法について何らかの処置を行う」ように圧力をかけた。私は出版予定の著作(By More than Providence: Grand Strategy and American Power in the Asia Pacific Since 1783)のためにジョージ・シュルツにインタヴューを行った。その中でシュルツは、レーガンが代表団をじっと見ながら、「あなた方が仰っていることは正しい。私たちは台湾関係法を強化しなくてはいけない!」と語ったと教えてくれた。中国政府は圧力をかけるのを止め、レーガン政権は、それ以前の政権よりも、より生産的で安定した米中関係を構築することができた。同時に、台湾との信頼関係を深めることにも成功した。

 

トランプの電話は、レーガン政権の時と同じような結果をもたらすことになるだろうか?私は民主的に選ばれた台湾の指導者に更なる尊敬を示したいと思うことには同感だ。しかし、トランプ新政権はこれから中国政府と協力して多くの困難な諸問題に対処していかねばならない中で、台湾重視の動きを維持することは大変に難しいと私は考える。

 

NSCの初期メンバーが国務長官や幹部クラス(彼らはより広範な外交上の利益を主張する)が指名される前に台湾重視の姿勢を打ち出したことで、第一次レーガン政権は中国と台湾の角逐を生み出した。これと同じことがトランプ政権でも起こる可能性はある。もちろん、これは誰が国務長官になるかにかかっている。最近のトランプの行動全てを見ても、彼の最初の電話から長期にわたる結論を導き出すのは早計であると言えるだろう。ただ言えることは次のようなことだ。「次期大統領閣下、台湾に配慮することは賞賛に値しますが、歴史が教えるところでは、中国政府とやり合う前に、包括的なアジア戦略を構築する方がより良い方策と考えられます」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)



アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22




 

 古村治彦です。

 

 今回は、中国の国際的な動きを分析した記事をご紹介します。タイトルに付けた通り、「既存の秩序をより良くする協力者となるか、新たな秩序を構築しようとする競争者となるか」が最大の関心ということになります。筆者自身は答えを出していませんが、私は、単純な二分法ではなく、この2つはそれぞれに当てはまると考えます。そして、前の記事でも書きましたが、中国が覇権国となる動きは止められないだろうと考えます。

 

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中国はどのようなタイプの大国になりたいのか?(What Type of Great Power Does China Want to Be?

 

ロバート・A・マニング筆

2016年1月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/01/05/what-type-of-great-power-does-china-want-to-be/

 

 アメリカ、日本、その他の同盟諸国である世界の諸大国にとって、中国の台頭に対する懸念は1つの流れとなっている。中国は世界経済と既存の国際機関に積極的に参加している。しかし、既存の地域的、世界的秩序に挑戦することになる代替の組織を創設することで大国としての役割を果たそうとしている。ここ数カ月の一連の動き、その中でも特に気になる中東において中国が始めた積極的な外交姿勢は、中国の世界戦略を判断を下す際に、それを複雑なものとしている。

 

 ここ最近の数カ月、世界は、中国外交の興味深い、そして少なくとも戦術的な動きを目撃している。2008年以降、中国は「喧嘩腰」の攻撃的な外交姿勢を取ってきた。それが、より穏やかで友好的な関与へと変わってきている。その一例が昨年の9月に開かれた中国の習近平国家主席とアメリカのバラク・オバマ大統領との間で行われた首脳会談である。この会談で、習近平は、米中間の間で争いの種となっていたインターネット上の安全保障に関してアメリカと協力することを表明した。また、アジア地域に対してはこれまでの姿勢とは全く逆の姿勢を取るようになった。習近平は日本の安倍晋三首相と2度にわたって会談した。また、日中韓の三国メカニズムを復活させた。そして、ヴェトナム、フィリピンとの間の関係を正常化させた。習近平の行動の中で最も創造的で、前例のないものとなったのが、シンガポールでの馬英九台湾総統との会見であった。

 

 ヴェトナム政府とフィリピン政府は南シナ海の南沙諸島をめぐり中国と激しく争っている。中国は友好的な姿勢を打ち出す魅力攻勢を行っているが、これは、攻撃的な姿勢は意図とは逆の結果しか生み出さないこと、そして、アジア地域全体、日本やインドといった国々がアメリカとの同盟やそれぞれとの間の同盟を強化する動きを見せるという、アメリカに対して思いがけない利益を与えてしまっていることに中国が気付いたということを示している。習近平の外交攻勢策の中核をなすのは恐らく、彼のアメリカのアジアにおける「勢力均衡の再構築」に対応するためのユーラシア大陸を西に進むという「軸足の転換」ということである。: 「一帯一路」計画によって、中国は近隣諸国に対して気前の良い援助を行うようになっている。

 

 ここで大きな疑問がわいてくる。それは、中国の気前の良い外交は戦術的な転換に過ぎないのか、それとも中国中心の秩序作りという自分の能力を超えた課題を行うことは困難でありそこから方向転換した方が良いということに気付いたのだろうか、というものだ。

 

 例えば、中国が初めてアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設を提案した時に起きた懸念は、世界銀行、IMF、アジア開発銀行のようなブレトンウッズ体制を構成する諸機関に取って代わることを意図したものではないのか、というものであった。中国は、AIIBは、基準を共有できる世界銀行とアジア開発銀行のパートナーとなり、競争者にはならないと主張した。AIIBが正式に発足してから、しかし現在までのところ、答えは出ていない。

 

しかし、AIIB、BRICS銀行、上海協力機構、習近平が進める「アジア人のためのアジア」という新しい安全保障の枠組み、世界の準備通貨としての人民元、ボアオ・フォーラム(ダボス世界経済フォーラムの代替になる)の存在は、既存の世界秩序と競合するものである。これらは中国が恥辱の世紀を過ごした後に世界においてふさわしい地位を得ようとする努力を示すものである。

 

 それともこうした中国の動きは危険分散戦略に基づいたものなのだろうか?最近の一連の動きは別の流れを示しているとも言える。それは、改革された国際システムの中江中国は、経済的、地政学的な地位にふさわしいより重要な役割を果たそうとしているというものだ。その一例が、IMFにおける中国の役割の拡大である。IMFは最近、特別引出権(SDR)と呼ばれる様々な貨幣のバスケットに人民元を加えることを決定した。その割合は、アメリカ・ドルに次いで第二位(10.9%)となり、イギリス・ポンド、日本・円、ユーロを超えるものとなった。加えて、アメリカ連邦議会が最終的に2010年のIMF改革案を承認したことで、中国はIMFにおける投票権の割合を7.9%にまで拡大させた。

 

 中国は気候変動分野でアメリカと緊密に協力してきている。最近、パリで締結されたCOP21気候変動に関する協定においても重要な役割を果たした。中国は、アメリカとその他のG7諸国が受け入れられる合意内容を認めるように発展途上諸国に対して様々な働きかけを行った。気候変動に関するアメリカの交渉責任者トッド・スターンは後に、「中国以上に我々と協力した国は存在しない」と述べた。

 

 より興味深い動きは、中国が新たに中東全域でより積極的な外交を展開していることである。中国は、アメリカ主導の国際システムの中で、アメリカに対してタダ乗りをすることを中核的な外交指針として正当化してきた。ASEAN加盟諸国がそうしているように、他国の国内問題には不介入という原理を堅持してきている。しかし、2015年12月26日、北京でシリア政府関係者とシリアの反体制の各グループの代表者たちが一堂に会した。この時、中国はシリアの内戦の解決に貢献するという決意を内外に示した。シリア内戦では30万人以上が死亡し、数百万の難民がシリアから避難している状況だ。

 

 国連安全保障理事会は昨年12月に、シリアの和平プロセスの道筋を示すロードマップとなる決議を可決した。その直後、中国はシリア政府関係者を中国に読んで、和平プロセスについて協議した。この動きは、習近平が国家の最高指導者に就任して以降の、中国の積極的な外交姿勢の一環と言える。習近平は、中国の偉大な指導者であった鄧小平の遺した指導方針である「韜光養晦(低姿勢で長時間耐えて力を蓄える)」を明確に否定した。

 

 同様に、アメリカがアフガニスタンからの撤兵を進めている中、中国は、タリバンとアフガニスタン政府との間を仲介しようとしている。中国はより積極的な役割を果たそうとしている。10年前、アメリカと同盟諸国はアフガニスタンで戦った。この時、中国は傍観者としての立場を崩さなかった。そして、アフガニスタンの鉱物生産分野に数十億ドル規模の投資を行い、目立たないようにして利益を得ていた。

 

 中国が中東で果たす役割は大きくなっているが、これは国際社会における地位を高めたいという希望だけではなく、中東における経済的利害が大きくなっていることを反映している。中国は国内で消費する石油の60%を輸入に頼っている。そのほとんどは中東から輸入している。中国の国有石油企業は各社とも中東、特にイラクとイランにおいて油田やガス田に対して積極的に投資を行っている。

 

 中東における中国の新たな積極的外交姿勢は良い結果を生み出すかと言うと、それは難しいと言わざるを得ない。シリアで始まっているが、中東での政治プロセスは大変に難しく、骨の折れるものとなるであろう。そして、イラン、ロシア、サウジアラビアといった内戦に介入している諸大国がそれぞれ受け入れることが出来る結果となるものが生み出されるまで、中国が主導しての内戦終結は難しい。同様に、アフガニスタンにおける内戦状態も終結の気配を見せていない。実際のところ、状況はより複雑化している。それは、イスラミック・ステイト勢力が争いに加わっているからだ。更に言うと、争いが絶えないこれらの地域における中国の影響力は現在のところ限定的なものにとどまっている。

 

 しかし、重要な点は、シリアとアフガニスタンでの中国外交は、アメリカの外交政策に沿ったものとなっているということだ。中東では、複雑に入り組んだ形で民族と宗教を基にした争いがこれからの10年も続くであろうと考えられている。そして、中国がこれからも新しい外交姿勢を堅持すると仮定する。そうするとその結果は、アメリカ外交にとって悩ましいものを中国が肩代わりしてくれるということになり、望ましいということになる。

 

 より大きな疑問は、中国の中東におけるより積極的な動きから、中国の世界システムに対する意図を読み取ることが出来るか、何か結論めいたものを導き出せるのか、というものである。それ以外にも様々な疑問がわいてくる。中国は、既存のシステムの中で更なる力を自国に与えてくれる現在の流れをそのまま受け入れるだろうか?それもと、中国の積極的な外交姿勢は、見直された、中国主導の秩序構築に向けた踏み石なのであろうか?AIIBは世界銀行とアジア開発銀行のパートナーとなるのか、それともその懸念は解消されていない競争者となるのか、どちらだろうか? 南シナ海における争いにおいて中国は妥協の方向に進むのだろうか?中国政府は、アメリカとの間で二国間の投資協定を結び、国内最優先の政策からアメリカ企業が中国市場に参加しやすくするだろうか?また、その中でも特に気になる疑問は、中国は争いが起きやすい分野である、インターネット、航空、宇宙、海上において、国際的な規範を受け入れるだろうか、というものである。

 

 アメリカと日本にとって、何が中国の意図を示す重要な指標となるのかを決定することは重要だ。これまで述べてきた諸問題は、そうした指標策定の手始めとなる。中国の動きのいくつかは、アメリカが推奨している、国際システムにおける「責任ある利害保持者」としての動きとしてはふさわしくないものであるように見える。中国の積極的な動きは、既存の秩序の見直しを求めていることを明確に示している。しかし、現在の時点で、何か結論を出すということは困難である。それは、状況は複雑であることを示しているからだ。この複雑な状況はこれからの20年の間にはっきりと理解しやすいものになっていくだろう。

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 私はインターネット通販のアマゾンで購入することがほとんどです。アマゾンでは本の売り上げの順位が出たり、この本を買った人が他にどんな本を買っているかを本の表紙の写真を並べて表示したりしてくれたりとなかなかサーヴィスが充実しています。ある出版社の方が日本の本の売り上げにおけるアマゾンの占める割合は10%くらいと教えてくれたことがあります。私はそんなものか、もっと大きいんじゃないかなと思いました。

 

それでも私は定期的に本屋さんに行き、書店の棚を見るようにしています。それは立ち読みで面白い本に出会えるし、新刊本の棚で、出版社や書店がどんな本に力を入れて宣伝しているかを見るためです。

 

 中国崩壊論、中国脅威論の本が書店の棚を埋めています。これらの本は異口同音にかつ様々な論点から「中国は大嫌いだ。あんな国は潰れてしまえ」とか「なんで日本の隣にあんな変な国があるんだろう(人間関係では自分が嫌いな相手は自分の姿を映す鏡だなどと言いますが)」と主張しています。

 

しかし、世界は中国について「崩壊するのか、しないのか」という視点では見ていません。「中国はもう大きくなってしまって、崩壊しては困る」、これにつきます。だから、「崩壊しないようにする」ということになります。人口が1100万人のギリシアの債務不履行のためにヨーロッパ各国の指導者たちが集まって、どうする、どうすると額を寄せ合って会議をする時代です。ギリシアの100倍以上の人口を持ち、世界第2位の経済規模を持つ中国がもし崩壊したら、首脳たちが鳩首会議をする暇もなく、各国に致命的な影響が波及していくでしょう。日本で言えば、旅行に来てたくさんの買い物(「爆買い」)をしに来てくれた中国人が来なくなります。

 

日本のテレビが、中国人たちが日本の品物を大量に買って帰る様子を「爆買い」といって報道し、日本の視聴者は「下品だね」と眉をひそめて見ていますが、食べ物を食べたり、バスに乗ったり、品物を買うことでお金を落としてくれるお客さんが一切来なくなるなんてことになったら、どうしようもありません。日本人が中国人の代わりにお金を使うことはありません。

 

 そもそも中国が崩壊するというのはどういうことなのか、というとあまり具体的ではありません。確かにイメージを持つことはできます。人々が中国政府や中国共産党の支配に対して怒り、暴動を起こしてそれが反乱へと発展し、商店や家々を打ち壊したり、略奪したりすること、もしくは株式や不動産の価格が暴落、いわゆるバブル崩壊が起きて、人々が自殺したり、失業者が町に溢れたりということを思い描いているのかもしれません。しかし、中国国内がそうなってしまったら、相互依存関係にある日本もまた無傷ではいられません。その想像したイメージと同じことが日本でも繰り広げられることになる可能性だってあるのです。

 

 世界が求めているのは、「安定」であり、「経済発展」です。その成長センター・エンジンがアジア、特に中国である以上、「中国は汚い」「中国人は野蛮」などといくら言い立ててみても、既に私たちの生活と密接に関わっている(これを相互依存関係interdependenceと英語で言います)以上、もうそんなことも言っていられないのです。

 

 しかし、ここ最近の動きを見ていると、戦後世界において覇権国として、ある程度の安定をもたらしてきたアメリカの力の衰退が起きているようです。そのために世界は不安定になっています。また、アメリカがその衰退を受け入れられずに、じたばたすることで、かえって世界各地に紛争をもたらしていると私は考えます。アメリカの衰退に対して、中国が国力を増進させています。これからの時代は、アメリカから中国へ覇権が移り変わっていく、移行(transition)の時期になっていくと私は考えています。

 

ここで使う覇権国と覇権(hegemony、ヘゲモニー)という言葉は、政治学(Political Science、ポリティカル・サイエンス)、特に国際関係論(International Relations、インターナショナル・リレイションズ)で使われる概念です。政治や国際関係の世界では、どんな人がもしくはどんな勢力が、そしてどんな国が力を持っているのか、そして、それ以外の存在とどのような関係を持っているのかということが重要であり、学問になるとそれを研究します。

 

 「覇権(hegemony)」とは、簡単に言うと、「他からの挑戦を退けるほどの、もしくは挑戦しようという気を起こさせないほどの圧倒的な力を持つこと」が覇権です。そして、国際関係論で言えば、圧倒的な外交力と軍事力と経済力を持ち、他国を自分の言うことに従わせることのできる国のことを覇権国と呼びます。現在の覇権国は言うまでもなくアメリカです。この覇権国が自分の利益になるように、世界のシステムを作り、維持管理する、その恩恵として他の国々は安定とその中で発展することが出来るということになります。覇権国(hegemonic state、ヘゲモニック・ステイト)という言葉は、副島隆彦先生の本を読まれている皆さんには既になじみ深い言葉です。

 

現在の覇権国は、アメリカです。歴史的に見ればスペイン(17世紀)、オランダ(18世紀)、イギリス(19世紀)、アメリカ(20世紀)の各国がそれぞれ歴史の一時期に覇権国として君臨してきました。日本は第二次世界大戦でドイツと共に新旧の覇権国であるアメリカとイギリスに挑戦して敗れ、戦後、アメリカの従属国(tributary state、トリビュータリーステイト)になったというのが世界的な認識です。

 

 この覇権国の歴史を見てみると、全てがヨーロッパの国々です。現在のような国民国家(nation states)による世界の支配・被支配システムができたのは16世紀くらいからです。このシステムを作ったのがヨーロッパであり、大航海時代(Great Navigation)によって世界はこのシステムの中に組み込まれていきました。しかし、このシステムの埒外にあってヨーロッパに匹敵する力を持っていたのが中国です。これまでの西洋中心主義的な世界史に対して、「グローバル・ヒストリー」という研究分野が出現しています。このグローバル・ヒストリーの研究成果から、中国は1800年の段階で世界のGDPの25%を占めていたということが分かっています。しかし、それ以降は海外列強(powers)の食い物にされてしまいます。中国は、「恥辱(humiliation)の時代(1840年第一次アヘン戦争から始まります)」から150年以上を経て、ようやく、元々いた地位に戻っていく過程にあるということが出来ます。

 

 現在のアメリカは、巨大な軍事力を持つ負担に耐えられなくなっている。アメリカは巨額の国債を発行し、中国や日本、サウジアラビアが買い支えている。他国のお金で巨大な軍事力を維持しているのはおかしな話だ。「アメリカの軍事力があるから世界の平和は保たれているのだ。だからその分のお金を払っていると思えば良いのだ」という主張もある。しかし、他国のお金頼みというのは不安定なものだ。国債を買ってもらえなくなればお金が入ってこなくなる。そんなことになれば世界経済は一気に崩壊するから、あり得ないことだという意見もあるが、不安定な状況であることは間違いない。そして、国債を買ってもらっている相手である中国を敵だと考えるのはおかしな話です。敵が国債を買ってくれて手に入れたお金で敵をやっつけてやると息巻いているという図式は間抜けです。

 

 さて、このように外国からのお金で何とか凌いでいるアメリカですが、これで果たして「覇権国」だと大きな顔をしていられるのでしょうか。他国からお金を貢いでもらえるのだから、立派に覇権国だと言えるかもしれませんが、「将来的に覇権国のままでいられないんじゃないの」と考えてしまう人もいると思います。

 

さて、ここからは、国際関係論の分野に存在する覇権に関する理論のいくつかを紹介します。これまで国際関係論という学問の世界で覇権についてどういうことが語られてきたのかを簡単に紹介します。私の考えでは、国際関係論で扱われる覇権に関する理論は現実追認の、「アメリカはやってきていることは正しい」と言うためのものです。それでもどういうことを言っているかを知って、それに対して突っ込みを入れることは現実の世界を考える際に一つの手助けになるでしょう。

 

まず、覇権安定論(Hegemonic Stability Theory)という有名な理論があります。これは、覇権国が存在すると、国際システムが安定するという理論です。覇権国は外交、強制力、説得などを通じてリーダーシップを行使するというものです。このとき覇権国は他国に対して「パワーの優位性」を行使しているということになります。そして、自分に都合の良い国際システムを構築し、ルールを制定します。このようにして覇権国が構築した国際システムやルールに他国は従わないといけなくなります。従わない国々は覇権国によって矯正を加えられるか、国際関係から疎外されて生存自体が困難になります。その結果、国際システムは安定することになります。

 

ロバート・コヘイン(Robert Keohane)という学者がいます。コヘインはネオリベラリズム(Neoliberalism)という国際関係論の学派の大物の一人です。ネオリベラリズムとは、国際関係においては国家以上の上位機関が存在しないので、無秩序に陥り、各国家は国益追求を図るという前提で、各国家は協調(cooperation)が国益追求に最適であることを認識し、国際機関などを通じて国際協調に進む、という考え方をする学派です。

 

コヘインが活躍した1970年代、経済不況はヴェトナム戦争の失敗などが怒り、アメリカの衰退(U.S. Decline)が真剣に議論されていました。そして、コヘインは、覇権国アメリカ自体が衰退しても、アメリカが作り上げた国際システムは、その有用性のために、つまり他の国々にとって便利であるために存続すると主張しました。コヘインは、一種の多頭指導制が出現し、そこでは、二極間の抑止や一極による覇権ではなく、先進多極間の機能的な協調(cooperation)が決定的な役割を果たすだろうと考えました。

 

 覇権国が交替する時には戦争が起きるんだ、ということを主張した学者がいます。ロバート・ギルピン(Robert Gilpin)という人です。ギルピンは、1981年にWar and Change in World Politics(『世界政治における戦争と変化』、未邦訳)という著作を発表しました。ギルピンは、リアリズム(国家は国益の最大化を目的に行動し、勢力均衡状態を志向するとする考え方)の立場から、国際政治におけるシステムの変化と軍事及び経済との関係を理論化した名著、ということになります。アメリカの大学の国際関係論の授業では、この本を教科書として読ませます。国際関係論の分野の古典とも呼ばれています。

 

ギルピンは、覇権安定論(hegemonic stability theory)を主張しました。覇権安定論は、ある国家が覇権国として存在するとき、国際システムは安定するという考え方です。しかし、ギルピンは『世界政治における戦争と変化』のなかで、覇権国の交代について考察しています。

 

『世界政治における戦争と変化』の要旨は次のようになります。歴史上国際システムが次から次へと変わってきたのは、各大国間で経済力、政治力、社会の持つ力の発展のペースが異なり(uneven growth)、その結果、一つの国際システムの中で保たれていた均衡(equilibrium)が崩れることが原因となるとギルピンは主張します。台頭しつつある国が自分に都合がいい国際システムを築き上げるために、現在の国際システムを築き上げた覇権国と覇権をめぐる戦争(hegemonic war)を戦ってきました。台頭しつつある国が勝利した場合、その国が新たに覇権国となり、自分に都合の良い国際システムを構築し、逆に現在の覇権国が勝利した場合、そのままの国際システムが継続することになります。第二次世界大戦について考えてみると、英米が築いた国際システムに勃興していた日独が挑戦したという形になります。

 

現在、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)という各新興大国の経済発展は進んでいる一方で、先進国である欧米、日本の経済成長はほとんどありません。日本のGDPは中国に既に抜かれてすでに久しい状況です。現在世界最大のGDPを誇るアメリカも10年から20年以内に中国に抜かれてしまうという予測もあります。

 

ギルピンの理論は、世界各国の不均衡な発展は覇権戦争を導くとしているので、理論通りになると、アメリカが既存の覇権国で挑戦を受ける側、中国が新興大国で覇権国に挑戦する側になって戦争が起きるということが予測されます。このギルピンの理論は歴史研究から生み出された理論である。スペインが打ち立てた覇権をオランダが奪い、オランダに移った覇権をイギリスが奪取するが、やがてアメリカに奪われるという歴史を踏まえての理論です。

 

それでは、未来のある時点でアメリカと中国が覇権をめぐって戦争するかと問われると、「ここ数年以内という直近の間では戦争はない」と私は考えます。こう考えるにはいくつかの理由がある。第二次世界大戦での日本とドイツ、冷戦でのソ連とアメリカの覇権に挑戦して失敗した国々を見ていれば、「戦争をして覇権を奪取する」と言うのは危険を伴うということは分かります。だから中国の立場からすると戦争をするのは慎重にならざるを得ません。米中それぞれの軍人たちはスポーツ選手が試合をしたくてうずうずしているように「戦争をしてみたい、手合わせをしてみたい」と思っているでしょうが、しかし、政治指導者たちはそんな危険な賭けをすることは考えにくいです。

 

また中国は、アメリカの覇権下で急激な経済成長をしてきたのだから、今のままの環境が維持されるほうが良いのです。アメリカとの貿易がこれからもどんどん続けられ、輸出が出来る状況が望ましいのです。本当はアメリカが不況で輸入が鈍化すると中国も困ります。だから輸出先を多く確保しておくことは重要だが、アメリカがこのまま世界一の超大国であることは現在の中国にとっても利益となります。ギルピンの理論では自国にとって不利なルールが嫌になって新興大国は、戦争をすることの利益と損失を計算したうえで、戦争を仕掛けるということになっています。現在の中国にとっては、現状維持、アメリカが超大国であることが重要だから、自分から戦争を仕掛けるということはないでしょう。アメリカが短期的にそして急速に覇権国としての地位を失い、経済力を失うことを一番恐れているのは、チャレンジャーと目される中国だと私は考えます。

 

また、イギリスからアメリカに覇権が移った過程を考えると、「覇権国が勝手に没落するのをただ見ているだけ」「覇権国の没落をこちらが損をしないように手伝う」という戦略が中国にとって最も合理的な選択ではないかと思えます。イギリスは「沈まない帝国」として世界に君臨し、一時は世界の工業生産の過半を占め「世界の工場」と呼ばれるほどの経済大国となり、その工業力を背景に強大な海軍力を持ちました。イギリスはアメリカの前の覇権国でした。

 

しかし、ヨーロッパ全体が戦場となった第一次、第二次世界大戦によって覇権国の地位はイギリスからアメリカに移動しました。第二次世界大戦においてはアメリカの軍事的、経済的支援がなければ戦争を続けられないほどになりました。アメリカは農業生産から工業生産、やがて金融へと力を伸ばし、超大国となっていきました。そして、自国が大きく傷つくことなく、イギリスから覇権国の地位を奪取しました。イギリスとアメリカの間に覇権戦争は起きませんでした。外から見ていると、アメリカに覇権国の地位が転がり込んだように見えます。中国も気長に待っていれば、アメリカから覇権が移ってくるということでどっしり構えているように見えます。

 

現在の中国はアメリカにとって最大の債務国です。中国はアメリカの国債を買い続けています。中国にとってアメリカが少しずつ緩慢なスピードで没落することがいちばん望ましいのです。「急死」されることがいちばん困る訳です。覇権国が「急死」すると世界は無秩序になってしまい、不安定さが増すことで経済活動が鈍化します。中国としては自国が力を溜めながら、アメリカの延命に手を貸し、十分に逆転したところで覇権国となるのがいちばん労力を必要とせず、合理的な選択と言えます。

 

「覇権をめぐる米中の激突、その時日本はどうするか」というテーマの本や記事が多く発表されていますし、日本でも「日本はアメリカと協力して中国を叩くのだ」という勇ましいことを言う人たちも多いようです。しかし、その勇ましい話の中身も「日本一国ではできないがアメリカの子分格であれば、中国をやっつけられるのだ」というなんとも情けないものです。

 

もし米中が衝突すると、その悪影響は日本にも及びます。日本は中国や韓国といった現在の「世界の工場」に基幹部品を輸出してお金を稼いでいます。米中が戦争をすることは日本にとって利益になりません。だからと言って、日本が戦争を望まなくても何かの拍子で米中間の戦争が起きるという可能性が完全にゼロではありません。このとき、日本がアメリカにお先棒を担がされて中国との戦争や挑発に加担しないで済むようにする、これが日本の選ぶべき道であろうと私は考えます。そして、大事なことは。「日本は国際関係において最重要のアクターなどではない、ある程度の影響力は持つだろうが、それはかなり限定される。そして、アメリカに嵌められないように慎重に行動する」という考えを持つことだと思います。そう考えることで、より現実的な対処ができると思います。

 

(終わり)

野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23




メルトダウン 金融溶解
トーマス・ウッズ
成甲書房
2009-07-31



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野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 昨年末から今年初めにかけて、世界的には何だか元気のない状況になっています。2016年に景気上昇するという予測は立ちづらく、更にはテロの危険が世界各国に拡散しているとして、みんなで盛り上がろう、という感じはありませんでした。

 

 日本では昨年末に、日中戦争、太平洋戦争中の韓国人女性の従軍慰安婦問題について、日韓両国で最終的な解決となる合意がなされました。安倍晋三総理大臣は、従軍慰安婦に関して様々な疑義を呈する立場を取っていましたが、最終的には謝罪の声明を、岸田文雄外務大臣を通じて発表しました。日韓両国で外交関係上は「これ以上、この問題を蒸し返さない」ということになりました。今回の合意について、日本の安倍政権を支える右翼や一部保守派、韓国国内の様々な勢力から批判が出されました。今回の合意に関しては、第三国であるアメリカの意向が強く働いて、ある意味で急転直下の合意ということになりました。安倍晋三政権の「リアリスト(現実主義的)」外交の勝利ということを言う人たちもいましたが、第三国、しかも宗主国の意向を受けて慌てて合意するような外交、自主的に自分たちの抱える問題を解決できないような外交はリアリスト外交とは言いません。

 

 中東では、イスラミック・ステイト(IS)に対するロシアの攻撃があり、ISの勢力が減退しつつあるようです。結局、アメリカ(とサウジアラビア、イスラエル)が直接、間接に育てたISの始末をつけるのに、他人であるロシアの手を借りねばならなくなったという大変情けない状況になりました。いい面の皮となったのがシリアで、シリアのバシャール・アサド大統領の政府軍と反政府軍の内戦だったものが、いつの間にか、中東を巻き込む「代理戦争」となって、シリアは悲惨な状況になってしまいました。

 

 そうした中で起きたのが、サウジアラビア、バーレーンとイランの断交(外交関係の断絶)です。サウジアラビアがイスラム教シーア派の聖職者を処刑したことで、イラン国民の一部が激怒し、テヘランのサウジアラビア大使館を襲撃したことがきっかけで、サウジアラビアがイランの外交団の国外追放を決めました。サウジアラビアとしては全て予定の範囲内の、シナリオ通りの行動と言えるでしょう。

 

 イランはアメリカとの間で核開発を巡り、核兵器を開発しないことで合意に達していました。ここからイランとの間で国交正常化まで進む可能性もあります。そうなると、中東世界におけるサウジアラビアの影響力は低下します。更には、ISの脅威もサウジアラビアにとっては深刻です。ここで、不安定な中東世界にさらに不安定な要素を加えることで、低落傾向が続く原油価格は上昇しますし、アメリカも改めて、サウジアラビアに対するご機嫌取りに動くという計算もあるでしょう。 

 

 中東が不安定さを増す中で、アジアでも不安定さを増す事件が起きました。本日、北朝鮮が水爆実験を行ったと発表しました。これによって、北朝鮮を取り巻く日中韓は難しい状況に置かれてしまいます。アジア地域は経済発展が著しい訳ですが、安全保障環境が不安定になれば経済にも悪影響を及ぼすことになります。

 

 新年早々から、世界は不安定な状況に置かれてしまいました。しかし、こうした状況を利用しようとするのが、アメリカのネオコン(共和党)・人道主義的介入派(民主党)です。考えてみれば、こうした状況ではアメリカの軍事介入が望まれるようになるのですから、アメリカの優越と軍事介入を主張している両グループにとっては、渡りに船の状況です。

 

 サウジアラビアとイランが直接、事を構える(ミサイルを撃ちあう)、それにイスラエルが絡むということになれば、中東で新たな戦争が起きるということもあるでしょう。アジア地域では、北朝鮮の存在のために中国が苦境に立たされることもあるでしょう。

(23:05に加筆します。)

 

 私はオバマ政権最後の1年となった2016年、アメリカと北朝鮮との間で、イランやキューバの場合と同じく、ホワイトハウス主導で緊張緩和があるのではないかと考えていました。しかし、今回、北朝鮮が水爆実験を行いました。北朝鮮内部に、アメリカとの緊張緩和を妨害したい勢力がいるのだろうと推測されます。彼らは北朝鮮の今の体制を維持したいのだろうと思います。そして、こうした勢力はアメリカ国内のネオコン・人道主義的介入派とつながっているのだろうと思います。彼らの使嗾もあって、何カ月も前から水爆実験の準備が進められ、今回行われたのではないかと私は考えます。

 
 年末年始にかけて起きたことを一つの線で見てみて、「誰が一番得をするのか」ということを考えると、ネオコン・人道主義的介入派ということになります。アメリカは今年、大統領選挙の年で、来年には新しい大統領が誕生します。昨年の段階で、既にヒラリーの勝利がほぼ確定的と言えるでしょう。彼女の介入主義にとって、世界が不安定であることは、「得」なことなのです。一連の事件の裏には、アメリカの両グループとそれらに結び付いた現地勢力がいることは間違いないと言ってよいでしょう。
 

 アメリカのネオコン・人道主義的介入派が喜ぶような状況になれば、安保法制を成立させている日本に寄せられる期待(命令)は大きなものとなります。2016年、そして新年早々来年のことを言うと鬼が笑うかもしれませんが、2017年は世界にとって何か大きなことが起きて、多くの人々が苦難に苦しむようなことになるのではないか、と私は危惧しています。

 

(終わり)








 
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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12





 古村治彦です。

 

 今回は、ヘリテージ財団のウェブサイトに掲載された文章をご紹介します。この文章によると、2015年10月にヘリテージ財団の研究員たちが訪日し、早稲田大学でのパネルディスカッションに参加し、防衛省を訪問したそうです。

 

 こうした機会にどういう話があったのかは分かりませんが、「東アジアにおける安全保障環境は悪化している。従って、日本はより大きな負担と責任を負うようにすべきだ」というこの文章の内容から、何となくどういう話があったのかは推測できます。

 

 より厳しい2016年になっていきそうです。

 

==========

 

日本におけるエネルギーと安全保障(Energy and Security in Japan

 

ライリー・ウォルターズ(Riley Walters)筆

2015年11月23日

ヘリテージ財団ウェブサイト

http://dailysignal.com/2015/11/23/energy-and-security-in-japan/

 

 今年の10月、ヘリテージ財団所属の研究者たちの代表団は日本を1週間にわたって訪問する機会を得た。同時期、日本はエネルギーの多様性を高めることとアジア地域における安全保障環境の変化と挑戦について専門家たちが知識を得ることが国益の増進につながることが明白な状況であった。

 

日本国際協力センターを通じて、研究者たちは「カケハシ・プロジェクト:ザ・ブリッジ・フォ・トモロー」に参加した。このプロジェクトに参加することで、ヘリテージ財団の研究員たちは多くの官僚や学者たちと会う機会を得た。

 

 東京にある早稲田大学で一連のパネルセッションが開催された。学者と官僚は、日本の安保法制に関する反対の考え、批判を発表した。日本政府は地域と国際的な安全保障におけるより積極的な役割を果たすことが出来るようになり、集団的自衛権を認める法律を成立させた。日本国民の中には、日本を国際的な紛争に巻き込ませてしまう立法における変化について懸念を持っている人々がいる。早稲田でのセッションでも多く表明された考えがこうした懸念を反映していた。

 

 代表団は日本の防衛省を訪問する機会を得た。この時、代表団はアジア地域における安全保障に関して日本が直面する真の懸念を知ることが出来た。中国、ロシア、北朝鮮それぞれによる軍備増強、軍事予算の拡大、戦略的な軍備配置がそうした懸念を引き起こしている。南シナ海における安全保障環境を一例として挙げたい。日本が輸入する石油と天然ガスの3分の2は南シナ海を通っている。この地域は日本の国益にとって重要である。特に2011年以降、エネルギー輸入量が増加している状況でその重要性は増している。

 

2014年、日本の航空自衛隊は東シナ海と北方領域における中国とロシアの航空機の侵犯に対応するために900回以上のスクランブル発進を行った。

 

 アメリカの政府関係者たちは、日本の安全保障政策の変化を長年待ち望み、その変化を歓迎している。そして、この変化のおかげで日米二国関係が強化されるだろうと述べている。「2016年版インデックス・オブ・USミリタリー・ストレングス」に書かれているように、アジア地域の環境は「好ましい」状況にコントロールされてはいるが、アジア地域に駐留するアメリカ軍の装備は時代遅れになりつつあり、厳しい状況になっている。中国とロシアはアメリカの国益にとってのリスクであり続ける。一方で、北朝鮮の脅威は深刻な状況だ。北朝鮮政府は核開発プログラムを継続している。こうした事態に対応して、東アジア地域のアメリカの同盟諸国は、地域の安全保障に対してより大きな責任を共有することが重要になっている。

 

 アメリカと日本は60年以上にわたり同盟関係を堅持している。そして、これからも同盟関係が堅持され続けることは疑いないところだ。アジア・太平洋地域において古くからの、そして新しい脅威が存続している状況で、脅威に対応するためにアメリカと日本がアジア地域にある他の同盟諸国と緊密に協調することが何よりも重要だ。

 

ライリー・ウォルターズ:ヘリテージ財団付属デイヴィス記念国家安全保障・外交政策研究所研究アシスタント

 

(終わり)







 
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