古村治彦です。
2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が発売になりました。アメリカ政治についても分析しています。是非手に取ってお読みください。
アメリカ大統領選挙に関しては、現在のところ、各種世論調査を見てみると、トランプが僅差で優勢、バイデンが追う展開となっている。私は2024年大統領選挙はジョー・バイデンが勝利するが、それによってアメリカは混乱に陥る、分断が深刻化すると考えている。そのことを最新刊でも書いた。バイデンがやはり現職大統領であり、政治の世界でのキャリアが長く、政治の裏も表も知り尽くしているということは、合法・非合法あらゆる手段を取ることができるということになる。
しかし、バイデンの不人気ぶりは目を覆うばかりだ。問題は、2020年の大統領選挙で、バイデンの当選に貢献した有権者層や有権者グループでの支持率が落ちていることだ。このブログでもご紹介したが、バイデンを大統領に押し上げたマイノリティ、特にアフリカ系アメリカ人、ヒスパニックの支持率が落ちている。また、若者層での支持も落ちている。
そのことの理由について、下に掲載した論稿では分析をしており、元々トランプを支持している若者たちは「経済に関してはやはりトランプ」という考えを変えていない。問題は、民主党系、進歩主義的な若者たちで、彼らはバイデンが社会変革に消極的、能力不足ということで「幻滅」しているために、支持できないと考えているということだ。民主党系の若者有権者たちがトランプに投票するということはあまりないであろうが、前回の大統領選挙では、大差でバイデンを支持する人が多かった若者層で、トランプが支持を伸ばすとなると、バイデンとバイデン陣営にとっては大きな痛手となる。
1月15日には、アイオワ州で大統領選挙予備選挙が始まる。アイオワ州の予備選挙の方法は、党員集会(Caucus)である。民主党はバイデン以外に有力候補は出ていない。一方、共和党は複数の候補者が出ているが、トランプが圧倒的な人気を誇っている。これから、民主党系の市民団体などが、「トランプには大統領選挙に出る資格がない」ということを訴えての裁判戦術が本格化するだろうが、トランプが共和党の大統領選挙候補者になるのは確実である。
(貼り付けはじめ)
メモ:バイデンに対する幻滅が蔓延する中で、トランプに対して、若者層有権者たちの間で驚くべき支持拡大が起きている(The Memo: Trump gets surprise boost with young voters amid Biden
disillusionment)
ナイオール・スタンジ筆
2023年12月20日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/administration/4368796-the-memo-trump-gets-surprise-boost-with-young-voters-amid-biden-disillusionment/'/
ジョー・バイデン大統領が直面する現在の問題は、ただ単に世論調査の炊事が悪いということではない。
バイデンが直面している問題は、民主党の主要な支持層から支持が離れていること、そして宿敵であるドナルド・トランプ前大統領が驚くほど順調に支持を伸ばしていることだ。
最も顕著な例は、若い有権者の間で起こっている。
火曜日に発表された『ニューヨーク・タイムズ』紙とシエナ・カレッジの共同世論調査では、30歳以下の登録済有権者の間で、トランプ支持がバイデン支持を6ポイント上回った。
この結果が実際の選挙に反映されれば、トランプ勝利は確実なものとなる。
2020年の大統領選挙では、主要な出口調査の結果によると、30歳以下の有権者の間で、バイデンはトランプに24ポイント差をつけて圧勝していた。そして、選挙人獲得において勝利を収めた。
最新の世論調査の結果を異常値(outliner)として片付けることはできない。
先月(2023年11月)のNBCニューズの調査でも、35歳以下の有権者では、46%対42%と、4ポイント差でトランプがバイデンを上回っており、よく似たパターンを示していた。バイデン大統領就任後初のNBCニューズの世論調査であり、2ポイント差という僅差ではあったが、トランプが現職大統領であるバイデンを総合的に上回った。
こうした調査結果は、2つの絡み合った疑問を提起している。なぜバイデンは若い有権者の間で支持が減っているのか? そして、トランプはどうしてうまく言っているのか?
1つ目の質問は答えやすい。
81歳のバイデンは、比較的穏健派であるが、頑固な制度主義者であり、若い有権者にとって特に刺激的な人物であったことはない。
若い進歩主義者たちは、彼が気候変動から選挙権まで、優先課題に対してより広範な行動を取らなかったことに失望している。学生ローンの返済は、多額の学生負債を免除しようとしたバイデンの努力が最高裁によって阻止された後、10月に再開された。
そのため、バイデンは脆弱な立場に置かれたが、10月7日のハマスの襲撃でイスラエル人約1200名が死亡した後、イスラエルがガザに猛烈な攻撃を開始したことで状況は急激に悪化した。
アメリカの若い世代は全体的に、上の世代よりもパレスチナ人にはるかに同情的である。世論調査によれば、そのような有権者の多くは、パレスチナ人の死者が増える中、バイデンがイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相を強力に支持していることに反発している。
ニューヨーク・タイムズの世論調査では、30代以下の有権者は、バイデンの中東紛争への対応について、不支持72%対支持20%となっており、不支持が大差をつけている。
左派団体の「ジャスティス・デモクラッツ」の広報担当者ウサマ・アンドラビは、「それが明らかに全体像の一部であるにもかかわらず、何よりも若い有権者をバイデンから遠ざけているのはこのことだ」と語った。
バイデンは先週、イスラエルは「無差別爆撃(indiscriminate bombing)」のせいで支持を失い始めていると発言するなど、最近はイスラエルに対してより厳しい発言をするようになっている。
しかし、アンドラビのような進歩主義者にとっては、それでは不十分なのだ。
アンドラビは「“無差別爆撃”を慎重に批判するのは、200万人近いパレスチナ人を避難させることになった容赦ない作戦が始まって2カ月半も経ってからすべきことなのだろうか?
慎重になるには少し遅すぎる。現時点では、強い最終防衛線(red lines)、つまり強い反対を表明すべきだ」と語った。
だからと言って、バイデンの政策に対する左派の嫌悪感が、トランプの好調ぶりを完全に説明するものではない。結局のところ、トランプ大統領の誕生によってパレスチナ人により同情的なアプローチをアメリカ政府が採用するとは考えづらい。
さらに、トランプ前大統領はバイデンと同世代で、4つの刑事事件で91の罪に問われ、2021年1月6日の連邦議事堂暴動に関与したことで弾劾訴追された。
火曜日(2023年12月19日)の午後、コロラド州最高裁判所は、トランプの2020年1月6日前後の行為について、選挙資格を剥奪する判決を下し、コロラド州の共和党予備投票からトランプを除外する決定を下した。
この判決については、上告する期間が認められており、トランプ陣営のスポークスマンであるスティーヴン・チャンは、「アメリカ合衆国最高裁判所への上告を速やかに行う」ことを約束する声明を発表した。
しかしながら、トランプを支持する若者たちは、支持の理由としていくつかの異なる要素を挙げている。
彼らが強調するのは、低迷する経済が日常生活や経済的な階段を上る希望に与える影響、トランプの破壊力への好感、バイデンの下でアメリカが弱体化し、より分断されているという感覚である。
カムリン・キンゼイは、彼女が選挙権を持つ年齢になった最初の大統領選となった2020年にトランプを支持した。彼女は現在もトランプ前大統領を支持している。
キンゼイは「トランプが今、若い有権者の世論調査でリードしている理由は、経済的な懸念だと思う。若い有権者は自分の経済状況を考えて投票している。家の購入から食料品の値段に至るまで、バイデン大統領の下では、持続不可能なライフスタイルだ」と語った。
「若い有権者は、トランプが抱える様々な問題のせいで彼から遠ざかることが予想されるという議論にどう反論するか」と質問されたキンゼイは、「私たちがバイデン政権によって得ているものは、アメリカにとって望ましい結果ではない」と答えた。
キンゼイは、経済だけでなく、国家安全保障やグローバルな舞台でのアメリカの強さに対する尊敬の喪失など、様々な懸念について説明した。そして彼女は、若者のトランプ支持を、「若い有権者が自分たちの国を健全に愛している(young voters have a healthy love for their country)」ことの証拠であるとし、愛国的な言葉を使って表現した。
若い進歩主義者は、キンゼイのようなトランプ支持者とは正反対の世界観を持っている。しかし、バイデンによる真の変革の欠如(lack of real change)がトランプに隙を与えたと主張する点で、彼らは意外な共通点を持っている。
若者向けの進歩主義的組織である「サンライズ・ムーヴメント」の政治担当責任者ミシェル・ワインドリングは「より大きなリスクは若者が選挙に参加しないことだが、このニューヨーク・タイムズの世論調査では、その代わりにトランプに投票する割合が示されている。そこから読み取れるのは、若者たちは民主党が過去4年間、自分たちの生活に具体的な変化をもたらすことができなかったと感じているということだ」と述べた。
ワインドリングは、国家と自分たちの世代が複数の危機に直面していると考える若い有権者は、「システムを揺るがしたい(to shake up the system)」という衝動を感じており、今彼らはその衝動を「どのように扱えば良いのか分からない」のだと語った。
さらにワインドリングは、バイデンのイスラエル問題(「戦争支援」)やエネルギー問題(「掘削賛成」)などが、若い進歩主義派を幻滅させていると主張した。彼女は、ホワイトハウスは「幻滅の深刻さ(severity of the disillusionment)を見過ごし続ける」ことに満足しているようだと警告した。
ジャスティス・デモクラッツのアンドラビは、トランプ支持は、トランプ前大統領への実質的な支持というより、むしろバイデンに対する反射的な拒否反応であると主張している。
アンドラビは、「トランプ以外の人物であっても同じ結果のはずだ」と述べた。
しかし、ホワイトハウスにとっては何の安心材料もない。特にガザでの戦争が続いており、国内では経済に対する先行きが不透明なままだ。
アンドラビは、「若者たちは、バイデン大統領は自分たちが望んでいる人物ではないと言っている。バイデン大統領の行動は、私たちが望んでいるものではないのだ」と語った。
(貼り付け終わり)
(終わり)
ビッグテック5社を解体せよ