古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。よろしくお願いします。

タグ:人道的介入主義派

 古村治彦です。

 

 トランプとプーティンが電話会談をし、その中で、米ロ関係の改善に協力していくことで合意したということが報じられました。トランプは、選挙期間中に北朝鮮の金正恩委員長とも話し合っても良いと発言していましたから、民主国家ではないという理由で、一概に悪いくにだと決めつける(それなのに、アメリカに役立つ非民主国家である中東の産油国や中央アジアの独裁国家を悪とは決めつけない)人道的介入主義派やネオコンとは全く異なる外交姿勢を取ることになるでしょう。

 

 しかし、問題は国務長官の人選であり、その下の副長官、国務次官、国務次官補くらいまでの人選です。国務長官には、ルディ・ジュリアーニの名前が出ていますが、ジョージ・W・ブッシュ政権のネオコンのジョン・ボルトン、ヘンリー・ポールソン財務長官、日本人にもなじみ深いリチャード・アーミテージ国務副長官の名前が出ています。

 

 トランプの現実主義的な外交姿勢を政策と実行するためには、ネオコンという訳にはいきません。そもそもネオコンの人々は、トランプに反対していました。ネオコンの代表的な論客ロバート・ケーガンはヒラリーのために資金集めパーティーまで計画していたほどです。

 

 トランプが結局、ワシントンのエスタブリッシュメントに絡め取られてしまうかどうか、注目です。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプはプーティンと話をし、「永続的な」関係構築を楽しみにしていると述べる(Trump talks to Putin, looks forward to 'enduring' relationship

 

クリスティーナ・ウォン筆

2016年11月14日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/business-a-lobbying/305929-putin-tells-trump-he-wants-dialogue-based-on-non-interference

 

ドナルド・トランプ次期大統領は月曜日、ウラジミール・プーティンからの大統領選挙勝利に対する祝福を受け入れ、ロシア大統領に対して、「私はロシアとロシア国民との間で強力なそして永続的な関係を築くことを楽しみにしている」と述べた。

 

トランプの政権移行ティームは声明を発表し、トランプとプーティンは「アメリカとロシアが直面している脅威と挑戦、戦略的な経済諸問題、過去200年以上の米ロ関係の歴史」について議論したと述べた。

 

クレムリンは声明の中で、指導者2人が「現在の米ロ関係の冷え切った状態を評価することに同意し、関係正常化に向けた協力関係に向けた話し合いを行った。話し合いは諸問題について建設的な協力を行う方向性を持って行われた」。

 

クレムリンは声明の中で、「両指導者は、米ロ間の貿易と経済協力の発展を通じて両国間の堅固な基礎を構築する重要性を強調した」と述べた。

 

トランプは選挙期間中、プーティンを強力な指導者として賞讃してきたことはよく知られている。それに対して、共和党と民主党から批判が出ていた。トランプはテロリストとの他戦いでロシアとの協力が必要だと述べ、NATOとの再交渉ついてのトランプのコメントはロシア政府から評価された。

 

アメリカとロシアとの関係はここ10年間、冷え切っている。オバマ政権は、2014年にロシアがウクライナ領であったクリミア半島を併合したことを厳しく非難した。

 

トランプの政権移行ティームの論調は全体として協力的なトーンであった。一方、オバマ大統領とプーティン大統領との会談の論調は、全体として米ロ間の同意できない点を強調するものであった。

 

クレムリンは声明の中で、プーティンとトランプはこれからも電話を通じて対話を続け、会談実現に向けて協力していくと述べた。声明は、両指導者がテロリズムと過激主義との戦いのために協力して対処していくことに必要性とシリアにおける危機を終結させることについて議論したと述べた。

 

クレムリンは声明の中で更に、「プーティン大統領は、トランプ次期大統領との電話の中で、平等、相互尊重、内政不干渉といった諸原則に基づいて、新政権と対話を築きたいと語った」とも述べた。

 

プーティンは更に、「実践的な、相互利益をもたらす協力(両国の利益に適う)、世界の安定性と安全」への復帰することも止めた。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)









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ダニエル・シュルマン
講談社
2015-11-25



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 現在のアメリカの外交について、「弱腰」「妥協的(宥和的)」という評価があります。日本でも「早くオバマが辞めて次の大統領に、できたら共和党の候補者になって欲しい」という意見があります。

 

 私は拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)でも書きましたが、オバマ政権の外交政策(ヒラリー・クリントン前国務長官は除いて)こそは現実主義(Realism)外交だと考えます。この現実主義外交は、アメリカの国力と世界の状況を注視して、出来ることをやって「完璧さを求めるのではなく、少しでもより良い状況を作る」ということです。

 

 外交におけるリアリズムについて、私はウェブサイト「副島隆彦の学問道場」()の「郷のぼやき・会員ページ」で「「1528」 アメリカのネオコン・人道主義的介入派とは全く別の流れであるリアリストの現在の動きについてご紹介します 古村治彦 2015年5月9日」と題して書きました。お読みになりたい方は、是非、学問道場の会員になっていただければと思います。

 

外交における現実主義の真骨頂は、「not let the perfect be the enemy of the good」です。直訳すれば、「完璧さを良い目的の敵にしてはいけない」となります。これは「完璧さを求める余りにかえって良い目的の達成を阻害してはいけない(本末転倒してはいけない、角を矯めて牛を殺すようなことをしてはいけない)」という意味になります。英語では、「The best is the enemy of the good(最高を目指すことが良い目的の敵となる)」という言葉もあります。これはフランスの啓蒙思想家であるヴォルテールの言葉です。

 

 オバマ外交の「つまらなさ」こそがリアリズム外交の真骨頂なのです。

 

==========

 

オバマの外交政策は一言の引用でまとめられる(Obama’s Foreign Policy Summed Up in One Quote

 

エリアス・グロール筆

2015年2月9日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/02/09/obamas-foreign-policy-summed-up-in-one-quote/

 

 大統領に就任して6年、バラク・オバマの外交政策は多くの名前が付けられてきた。彼は「(野球で言う)単打と二塁打ばかり」と言われたり、側近の一人は「大統領は“後ろから率いる”という考えを信じている」と述べたり、「結局のところ、臭い物にはふたをするということしかしていない」と批判されたりしている。

 

 オバマに対する批判者たちは、オバマは無定見であり、人々を納得させられず、世界に対処するための戦略を持っていないと批判する。インターネットのニュースサイト「ヴォックス」とのインタビュー記事が月曜日に発表された。彼はインタビューの中で、これまでで最も簡潔に外交政策について語っている。

 

 オバマはヴォックスの編集責任者マット・イグレシアスを相手に次のように語った。「勝てるとなったらきちんと勝つ。それで物事はほんの少し良い方向に向かう。ほんの少し悪くなるよりはずっと良いでしょう。アメリカが衰退しているという考えに対して妥協している訳でもないし、私たちにできることは少ないと考える訳でもないんですよ。私がやっているのは、世界がどのように動いているかについての現実的な判定をするということなんです」。

 

 こうしたオバマの外交政策に関する考えに対しては、右派と左派からそれぞれ厳しく批判されている。ネオコン派右翼は、オバマ大統領はこうした考えを持っているから、国際的な舞台で「指導力」に欠けているし、オバマ大統領がどのように指導力を発揮すべきかということを議論することすらできない、と主張する。人権活動家たち左派は、オバマが勝利を確実なものにしようとして行動することで、エジプトやミャンマーの政府と人権状況に関して妥協してしまっていると批判する。

 

 オバマがいみじくも喝破しているように、この議論は、アメリカがどの程度世界の出来事に対して影響を与える能力を実際に有しているのかということに行きつく。アメリカの力は無制限ではないと認めることはアメリカ政治では受け入れがたい主張である。オバマを批判する人々は、世界のあちこちで火の手が上がっているのに、オバマ大統領は慎重すぎるので、絶好の機会を失ってしまっていると主張している。そして、オバマ大統領は「アメリカは偉大である」という考えを放棄していると批判している。中東にアメリカの意向に沿う民主政体を導入しようとして失敗したイラク戦争を経験して、オバマ大統領は、革命ではなく穏健な改良を目指す哲学を追い求めているのだ。

 

 オバマは次のように語った。「素晴らしい外交政策の目標は、ヴィジョンと大きな希望、そして理想を持つことだと思います。しかし、同時に世界をあるがままに認識し、その状況を確認し、どうすれば以前よりも少しでも改善できるか、そのポイントを理解することもまた重要だと思います。完璧を求めるのではなく、より良い状況を求めるということになると思います」。

 

 シリア内線では20万人の死者が出ている。ウクライナ東部ではロシアが支援している反体制運動に巻き込まれている。イスラム国はシリアとイラクの大きな部分を支配している。こうした状況で、世界の「より良い部分」に目を向けることは難しい。オバマは、「この惑星の進む方向は、暴力の削減、寛容の増大、争いと貧困の減少である」と発言している。それぞれの危機について、人々はオバマが何もしないことで状況が悪化していると批判している。しかし、彼らはアメリカがこれらの危機がコントロール不能に陥る前に良い方向に導くだけの力を持っているはずだと単純に確信しているのだ。

 

 オバマが毎日直面し対処していることについて、何かを言うことは本当に難しい事なのだ。彼は次のように語った。「私の許には人々の死亡、破壊、紛争、無秩序に関する分厚い報告書が届けられます。私は毎朝、この報告書を読みながら朝のお茶を飲んでいるのです」。

 

(終わり)







野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

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