古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:人道的介入主義派

 古村治彦です。

 アメリカの外交を大きく色分けすれば、「介入」と「抑制」となる。介入とは、諸外国が問題を抱えていると判断し、その解決のためにアメリカ政府が干渉をすることである。共和党のネオコン派、民主党の人道的介入主義派が「介入」を推進する勢力である、抑制とは、外国の問題に干渉することを控えることであり、民主、共和両党のリアリズムを信奉する勢力(リアリスト)がその代表的勢力である。バラク・オバマ政権第一期目に関しては少し複雑で、オバマ大統領自身は「ジョージ・HW・ブッシュ(父)大統領の外交姿勢が理想だ」と述べていた。ブッシュ(父)政権の外交政策の舵取りをしたのは、ジェイムズ・ベイカー国務長官であり、彼はリアリストであった。しかし、オバマ政権一期目の国務長官になったのはヒラリー・クリントンだった。「アラブの春」の発生と失敗については拙著『』で書いている。

 アメリカは世界に自分たちのモデルを押し付けるだけの立派なことを国内でしているのか、というのが下記論稿のスティーヴン・M・ウォルトの疑問である。新型コロナウイルス感染拡大に対して、アメリカはうまく対処できなかった。「それはドナルド・トランプ大統領だったからだ」という主張もあるようだが、誰が大統領でも結果はそう変わらなかっただろうというのがウォルトの見解である。

 「自国民にマスクをつけてもらうこともできない政府の言うことを、外国の人々が聞く訳がない」というのがウォルトの主張だ。だから、アメリカが「社会工学的(社会的外科手術的)」に体制転換や国家建設を押し付けてもうまくいくものではないということになる。

 理想主義で物事を推し進める場合、急進的に物事を行い、無理をしてしまって、結局、現実世界を壊してしまうということが起きる。非西洋諸国に、「西洋的価値観が普遍的だ」と言って、何でも押し付けて伝統社会を壊してしまうと、その国が変調をきたしたということはよくあることだ。変化を促すにしても少しずつ、進み具合を見ながら慎重にやっていくという漸進主義こそが成功への近道だ。

 アメリカが体制転換を押し付ける前に、自分たちの体制自体を顧みて、変更すべきは変更するということが出来るようならばまだ希望がある。しかし、それは難しいことだろう。アメリカこそが地上で最高の国という傲慢こそがアメリカの特徴であるから、それが亡くなってしまったらアメリカは存在しえない。しかし、生き残るために変化することが出来なければ結局滅んでいくだけのことだ。We must change to remain the sameという言葉もある。

(貼り付けはじめ)

新型コロナウイルス感染拡大によって体制転換は永久に不可能になるはずだ(The Pandemic Should Kill Regime Change Forever

-もしアメリカが自国のウイルスを止められないなら、他国を支配しよう試み理由はないだろう。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2022年7月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/07/08/the-pandemic-should-kill-regime-change-forever-coronavirus-iraq-afghanistan-libya/

数週間前に、私は次のようにツイートした。「ウイルス感染拡大を止めるために自国の市民にマスクをつけてもらえるように説得することができない国が外国の政府を転覆させ、内情をよく理解していない社会全体を作り直そうとするなんてできないことだ」。このツイートに対して、私の通常のツイートに比べて、より多くのリツイートがされ、「ライク」がつけられた。通常の修正、支持、皮肉な返信もあった。私のツイートの論理はかなり明確だ。

しかし、外交政策上の厄介な問題に対して、体制転換(regime change)がすぐに解決策になると考えている著名な人々や組織がまだ存在するため、この議論をもう少し詳しく解いてみる価値がある。

まず、国づくり(nation-building)の側面から見てみよう。「永遠の戦争(forever wars)」が長引くにつれ、皆さん方も何か考えたかもしれないが、過去25年間で、外国から押し付けられた体制転換はなぜうまくいかないのか、かなりのことが明らかになった。まず、外国政府を倒すと、それまで存在していた政治制度(これが介入の目標である)が必然的に損なわれるか破壊される。つまり、旧体制(old regime)がなくなった後に秩序を維持するための有効な現地の能力が存在しない。専制君主とその直属の部下を排除し、下級官僚はそのまま残すという限定的な作戦でさえ、権威と後援の系統を解きほぐし、その国を不確実な領域へと突き落とすことになる。

また、体制転換はその定義として、勝者と敗者を生み出すものであり、後者(通常は旧体制下で特権的地位にあった人々)は、その地位の低下に不満を持つ可能性が高い。彼らは権力と富を失うことに抵抗し、かつての地位を取り戻そうと武器を手にする可能性が高い。民族的、宗教的、宗派的、あるいはその他の重大な分裂が存在する社会では、名声、欲望、野心の組み合わせによって、別々のグループが地位と権力を求めて争うようになる。外国勢力や国際テロ組織は、既存の制度の崩壊とその結果もたらされるであろう混乱に乗じて、様々な形で素早く干渉してくる。

これに対し、最初に介入した国はその国を占領し、新政府が樹立されるまでの間、自国の軍隊を使って秩序を保たなければならなくなる可能性が高い。しかし残念なことに、外国軍の大規模な駐留は、現地の反感を買い、より暴力的な抵抗を助長する。また、このような事態は介入国からある程度離れた国で起こることが多く、高度な輸送システムがない場合もあるため、占領軍に食料や物資を供給し続けるには莫大な費用がかかる。

現地の習慣や価値観を知らない(ましてや、現地語を話せる職員が一定数存在しない)国家建設者は、重要なポストにふさわしい指導者を選ぶことも、現地住民の目にかなうような新しい制度を設計することもできないだろう。経済発展のために現地の制度やインフラを整備しようとすれば、必然的に汚職(corruption)を助長し、予期せぬ大きな結果を生むことになる。

まとめると次のようになる。体制転換と国家建設は、たとえ最良の状況にあっても、非常に複雑な社会工学的行為(act of social engineering)である。要するに、介入する権力者は、背景が異なる何百万人もの人々に、政治や社会に関する核となる信念や規範を変えさせ、根本的な行動を変えさせようとすることになる。外国による体制転換を成功させるためには、大規模でありながら繊細で、知識を蓄え訓練を積んだ人々によって行われる取り組みが必要である。また、費用と時間がかかるため、自国での継続的な政治的支援も必要であろう。そして、運も必要だ。

言うまでもなく、これらの特徴は、アメリカの最近の不運な出来事には全て欠けていた。対反乱作戦理論(counterinsurgency theory)や「心をつかむ(winning hearts and minds)」ことに注目が集まっていたにもかかわらず、アメリカの取り組みは依然として圧倒的に物理作戦(kinetic operations)と「ハードパワー(hard power)」に依存していた。アメリカ国内では、右派の支持者たちやシンクタンクが、アメリカはこのまま行けば成功すると主張し続けた。しかし、政府関係者たちにすれば、決して成功の確信があった訳ではなく、国民に疑念を抱かせないようにし、問題を先送りしてきた(kicked the can down the road)ことを、私たちは現在知っている。

体制転換や国家建設に関するアメリカの不幸な記録は決して特別なものではない。ナショナリズムが世界中に広がって以来、どの大国も帝国(公式、非公式を問わず)を運営したり、遠い外国の地方政治の行方に口を出したりするのが上手にできなくなった。繰り返すが、問題はこのようなことは、裕福な大国にとってさえ、本当に、本当に困難なことである。

ここで、新型コロナウイルスの課題について考えてみよう。特に、人前でマスクを着用させるという一見平凡な課題を考えてみよう。マスクは重量が15キロもある訳ではなく、装着しても痛くなく、位置情報やその他の個人情報を政府やジョージ・ソロス、グーグルに送信することもなく、お金もかからないということを念頭において欲しい。

この場合、アメリカ政府は外国の人々の行動を変えようとしているのではなく、自国の領土で、アメリカが最もよく知っている人々、つまり国民とともに行動している。感染拡大対策には困難な要素も存在するが、基本的な目標は非常に単純で、よく理解されている。感染拡大を食い止めるには、住民の感染率を下げる必要がある。そのためには、人々が社会的距離(social distancing)を取り、マスクを着用し、その他の危険な行動を避けるようにしなければならない。また、ホットスポットを特定し、健康な人から感染者を隔離するための検査と追跡プロセスを確立し、老人ホームなどでは特別な予防措置をとることが有効だ。また、これまで見てきたように、距離を置くことができず、感染の危険性が高い経済や社会の一部を遮断することも必要だ。

これらの対策の中には、広範囲に及び、短・中期的に重大な影響を及ぼすものもあるが、いずれもアメリカ憲法を書き換え、州間の国境を引き直し、政府のあらゆる部門から何千人もの政府関係者を排除し、社会における宗教の役割や女性の地位を再構築し、アメリカ社会の基本的政治価値や社会価値を放棄する必要は全く無いのである。実際、対応が成功すればするほど、感染拡大による長期的な政治的、社会的影響は少なくなる可能性が高い。

私たちは何故そのように知ることができるのか? 外国の介入による体制転換や国家建設とは異なり(誰がやっても成功することはほとんどないが)、多くの国々が新型コロナウイルスへの対応で素晴らしい成果を上げているからだ。ニュージーランドのような比較的小さな国だけでなく、韓国、日本、ベトナム、ドイツ、ギリシャ、その他多くの国々について私は今考えている。

これらの国々に比べれば、ドナルド・トランプ米大統領の責任は重い。「奇跡のように(like a miracle)」ウイルスが消滅すると思い込んでいたために、アメリカの対応は少なくとも1カ月遅れ、ウイルスの拡散を許してしまった。それ以来、政権の混乱した一貫性のない対応、特にトランプ大統領自身がマスクを着用することを拒否し、国をまとめるために叱咤激励することを拒否したことが、事態を限りなく悪化させている。

しかしながら、大統領が違っても、アメリカの対応は必要なものにはほど遠かったかもしれない。右派の評論家や政治家たちは、当初からこの危険を軽視していたが、『ニューヨーク・タイムズ』紙のブレット・スティーヴンス記者のように、トランプ大統領への忠誠心からそうしていた訳ではない。共和党の科学や政治的に不都合な専門家集団に対する敵意は、トランプや新型コロナウイルスに始まったことではなく、むしろそれは共和党のブランドの決定的な部分になっている。彼らは大気物理学者やその他の科学者が気候変動について語るのを聞こうとはしないし、アメリカのイメージ通りにイラクやアフガニスタンを作り変えようとする前に、それを理解する必要があるとは考えなかった。また、新型コロナウイルス感染拡大に対応できる強固な公衆衛生機関を創設して資金を提供しようともせず、外交を国の第一衝動とし、武力行使を最後の手段とする外交政策へのアプローチを採用しようともしない。

アメリカの右派は知識の代わりに、自由をその決定的なテーマとして祭り上げ(もちろん、あなたが女性で中絶を望んでいる場合を除く)、政府の権限のほとんどの要素を本質的に疑わしいものと見なすよう信奉者に奨励している。ニュート・ギングリッチ元連邦下院議長、フォックス・ニューズのロジャー・アイルズ元CEO、ミッチ・マコーネル連邦上院議員をはじめとする多くの人々は、個人の行動が時に他の人々に影響を与えることを国民に思い出させ、例えばアメリカにはスピード違反の禁止法があることを強調する代わりに、主に文化戦争(culture wars)を起こし、彼らの意見と異なる人を悪魔化すること(demonizing)によって、できるだけ多くの不信と分裂を生み出すことを政治の基盤にしてきた。

驚きだ。このような感情は、マスクを着用したり社会的に距離を置いたりすることを要求するルールを、他の人々を危険にさらす憲法上の権利の侵害とみなす、怒れる人々全てを鼓舞しているのである。トランプ大統領がそうであったように(はっきり言えば、彼のこの緊急事態への対処は大失敗だった)、フランクリン・D・ルーズヴェルトやロナルド・レーガンのような優れたコミュニケーターでさえ、この国の分極化(polarization)とそれが育み反映する汚れた情報環境の度合いを考えれば、問題を抱えることになったことだろう。

新型コロナウイルス感染拡大対策は最善の状況においても簡単なことではないが、イラク、アフガニスタン、リビアなど、アメリカ主導の政権交代が行われた国々で安定した民主政治体制を実現することに比べれば、この中心的な仕事ははるかに容易である。だから、自国民にマスクをつけさせることができない国が、外国の人々に自分の命令に従って社会全体を作り直させることができると考え始めてはいけないのである。

もう一つ、このコラムを読んで、もしアメリカがアメリカ人にマスクを付けさせ、新型コロナウイルスを打ち負かす方法を見つけ出すことができれば、自信を持って体制転換ビジネスに戻ることができると結論付けるとしたらそれは的外れだ。体制転換と新型コロナウイルス対策の2つの課題は実際には同じではない。自国の公衆衛生を向上させるという完全に実現可能な目標を達成することができるとしても、アメリカが海外での国家建設というほとんど不可能な課題に取り組むことが可能になる訳ではない。それでも、亜米利加の新型コロナウイルス感染拡大対策の失敗には、時宜を得た警告が含まれている。もしアメリカ政府が、国内では大規模だが比較的簡単な公共政策、たとえば、マスクを着用すべき時に十分な数の人々が着用するように仕向けることができないなら、自国とはまったく異なる社会ではるかに野心的なことを行おうとするのは愚かなことであろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争はロシアが併合した4州に対するウクライナ軍の攻勢が強まっており、泥沼化から抜け出せない状況だ。ウクライナとしてはロシアに併合された地域を奪還すべく戦いを進めているが、この目的を完全に達成するためには年単位の時間と莫大な資金、そして何よりも更なる人的な犠牲が必要となる。そのようなコストは甘受すべきだという考えもあるだろうが、ウクライナ国内で不満も募っていくだろう。ロシア軍は併合した地域を防衛するための拠点づくり、洋裁づくりを進めていくと考えられる。戦争の鉄則の一つとして、攻撃側と守備側では、攻撃側により大きな犠牲が出る、守備側を抜くためには3倍の兵力が必要だ、というようなことが言われている。以下の地図を見ても、ロシアの併合地域を全て奪還することは不可能だと思われる。また、そのようなことをすれば戦争が長引くだけではなく、戦争が拡大する可能性を秘めている。またヨーロッパ諸国はウクライナ戦争の影響によるエネルギー不足と食料価格の高騰で厳しい冬を迎えることになる。

ukrainewarmap20221020511

 今回のウクライナ戦争は「西側諸国(主にアメリカ)が支援するウクライナ対(VS)西側以外に国々が間接的に支援するロシア」という構図になっている。西側諸国からは「ウクライナ戦争は民主的な政治を独裁政治から守る戦いだ」という声も聞かれる。この主張の根底にあるのは、「自分たちが信奉し、守っている価値観である自由や人権、平等という考えとそれらを実現するための政治制度である民主政治体制こそが最良のものだ」という考えだ。

 拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』『アメリカ政治の秘密 』で書いてきたように、アメリカの共和党系のネオコン、民主党系の人道的介入主義派は、こうした考えに基づいて、「こうした価値観や民主政治体制を世界中に拡散すれば世界は安定し、平和になる」ということになり、世界の独裁政治体制国家や非民主政治体制国家の体制転換(regime change)を行うという結論に至る。このような押し付けがましい考えがアメリカの外交政策の柱になってきた。

 今回のウクライナ戦争では西側諸国はいち早くロシアに対して制裁を科した。「ロシアを素早く敗北に追い込んで、プーティンを引きずり下ろす」という目論見であったが、それは成功しなかった。そして、戦争は泥沼状態になっているが、アメリカは武器をウクライナに送り、ヨーロッパには自国産の高い天然ガスを売りつけて設けるという構図を作り上げている。ロシアの体制転換には失敗したが、転んでもただは起きぬ、とばかりに戦争を利用して金儲けをしている。

 ウクライナが戦争に勝利することでロシアの体制転換を引き起こし、「アメリカの掲げる諸価値と政治体制の優越性」を宣伝し、世界覇権国として、崩れつつあるアメリカ主導の世界秩序の箍(たが)を締めなおすということをアメリカは目指している。しかし、時代は転換点を迎えつつある。体制転換と民主政治体制の構築は各国の国民の意思に基づいて、下から行われるべきであり、上からしかも外国から行われるべきものではない。そして、急激に行うべきものでもない。

 アメリカをはじめとする西側諸国は自国の価値観や政治体制を誇るあまりに傲慢になって、くだけた表現を使えば「上から目線のお説教」をこれまで繰り返してこなかったかを反省しなければならない。そういう時代はもう終わった。ウクライナ戦争後はこのことをよくよく考えねばならない。

(貼り付けはじめ)

ロシアの敗北はアメリカにとっての問題となるだろう(Russia’s Defeat Would Be America’s Problem

-ウクライナでの勝利はワシントンの傲慢さを意味することになる。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2022年9月27日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/09/27/russia-defeat-ukraine-america-problem-hubris/

紀元前431年、スパルタに対する宣戦布告のためにアテネ市民たちを説得するペリクレスの演説の最後に、ペリクレスは、自分は「敵方の装備よりも自分たちの大失策をより恐れている」と明言した。特に、傲慢さ(hubris)と「新たな征服の計画と戦争の遂行(schemes of fresh conquest with the conduct of the war)」を結びつける危険性を戒めた。しかし、彼の警告は聞き入れられず、彼の後継者たちは結局アテネを悲惨な敗北に導いた。

数世紀の後に、イギリスが革命派フランスとの戦争に向かったとき、エドマンド・バークがイギリスの国民に同じような警告を発している。1793年に彼が書いたように、「私は自分たち自身の力と野心(our own power, and our own ambition)に恐れをなしている。つまり、私たちは、この驚くべき、そしてこれまで聞いたこともないような力を乱用することはないと言うかもしれない。しかし、他のどの国も、私たちがそれを乱用すると考えるだろう。遅かれ早かれ、このような事態が、私たちに対抗する団結を生み出し、私たちを破滅に追い込む可能性があるということになる」。しかし、バークの予言は、フランスが敗北した後も、イギリスの野心が限定的であったこともあり実現しなかった。

この2つの暗い予言に触れたのは、アメリカとその西側同盟諸国がウクライナ戦争で明確に勝利する可能性があるからだ。西側諸国がもっと先見の明のある国家運営をしていれば、そもそも戦争は防げたかもしれないし、ウクライナがロシアの手によって被った甚大な破壊を免れたかもしれない。しかし、ロシアの誤算と軍事的な無力、ウクライナの抵抗、西側諸国による強力な軍事・情報支援、モスクワへの強力な制裁が相まって、最終的にはキエフと西側の支援諸国が勝利を収める可能性がある。戦闘がこれ以上拡大せず(その可能性は否定できない)、ウクライナが最近の戦場での成功を継続すると仮定すれば、ロシアの力は今後何年にもわたって大きく低下することになる。ウラジミール・プーティンがモスクワの権力の座から追われる可能性さえある。ロシアが決定的な敗北を喫した場合、「西側諸国の衰退は避けられない」という警告は時期尚早と言わざるを得ないだろう(the inevitable decline of the West will seem premature at best)。

核兵器が使われず、ウクライナが失った領土をほぼ全て取り戻せると仮定すれば、道徳的にも戦略的にもこの結果には多くの好感が持てる。だから、私はこの結果を間違いなく応援している。しかし、その後はどうだろうか。西側諸国、特にアメリカはこの勝利をどう生かすべきか? そして何より、勝利の果実を無駄にしないために、どのような手段をとるべきか?

ウクライナの最終的な結末が不透明である以上、こうした問題を提起するのは時期尚早と思われるかもしれない。しかし、勝利の瞬間が訪れた時のことを考え始めるべきだろう。前回、アメリカが地政学的に大勝利を収めた時(ソ連帝国の平和的崩壊)は、ペリクレスが警告したような傲慢さに陥り、より永続的で平和な世界を構築する機会を無駄にしてしまったのである。もし次の機会があれば、失敗から学び、今度はより良い仕事ができるはずだ。

ここで懸念が出てくる。ウクライナでの成功は誰もが望むところだが、単極支配時代(unipolar era)の逆行する行き過ぎを生み出したアメリカ国内の政治勢力を強化する可能性がある。ウクライナでの勝利は、民主政治体制の本質的な優位性についての主張を強化し、それを海外に広めるための新たな努力を促すだろう。反省しないネオコンサヴァティヴたちと野心的なリベラル派の十字軍は、「30年間も失敗が続いたが、ようやく成功を収めた」と喜ぶだろう。この戦争で大儲けした軍産複合体(military-industrial complex)は、更に何百万ドルも使って、無思慮なアメリカ人たちに、世界を守備範囲に入れ、次の7、もしくは9カ国を合わせたよりも多くの防衛費を使うことでしか安全を確保できないと説得することができるようになる。ロシアはウクライナでやい卜することで、大きく衰退し、経済不況が迫るため、ヨーロッパの防衛力を高めるという現在の公約は効力を失い、アメリカのNATO同盟諸国は、アンクルサム(イギリス)に保護を頼ることに戻るだろう。過去の多くの失敗にもかかわらず、自由主義的覇権(liberal hegemony)の支持者たちは、少なくとも一時的には正当性を主張するだろう。

それの何が問題なのだろうか?

まず、ウクライナ戦争から得た重要な教訓のいくつかを無視することになる。教訓その1は、ある大国が重要な利益と考えるものを脅かすことは、たとえその意図が崇高で良いことであっても危険であるということだ。NATOの開放的な拡大もそうであった。様々な外交専門家たちが、この政策はトラブルを招くと繰り返し警告してきたが、ウクライナ危機が始まった2014年2月以降、その警告を無効とするものは何もなかった。回避できたかもしれない戦争で勝利をもぎ取ることは、同じ過ちを再び繰り返すことの論拠にはならない。私は宥和政策(appeasement policy)を主張しているのではなく、他の大国が重要な利益とみなすものを無視することは本質的に危険であると警告している。

教訓その2は、脅威を誇張することの危険性だ。ウクライナ戦争は、ウクライナが西側諸国の軌道に乗るのを阻止するためにロシアが仕掛けた予防戦争であると理解するのが最も妥当だ。予防戦争(preemptive war)は国際法上違法だが、プーティンは、アメリカが主導するウクライナの武装化と訓練により、モスクワがキエフの地政学的再編(geopolitical realignment)を阻止することが最終的に不可能になると考えた。ヴェトナム戦争でアメリカの指導者たちがドミノ倒し(falling dominos)の危険を誇張し、2003年にサダム・フセインのイラクがもたらした脅威を意図的に誇張したように、プーティンはおそらくウクライナの「喪失(losing)」がロシアにもたらす実際の危険を誇張しすぎていたのだろう。 ロシアの指導者たちは、この結果を「存在を脅かす脅威(existential threat)」、つまり、それを防ぐために戦争をする価値があると繰り返し述べているが、NATOの侵攻や「カラー革命(color revolutions)」がいずれロシアに広がるかもしれないというロシアの指導者たちの懸念は、おそらく誇張されていた(彼らが正直ではなかったと言う訳ではない)。 もしそうだとすれば、この判断ミスがモスクワを高いコストを伴う泥沼(costly quagmire)に導くことになったのだ。私が言いたいのは、脅威を誇張することは、それを軽視することと同じくらいに国家を窮地に陥れるということだ。だからこそ、ドイツのオットー・フォン・ビスマルクは、予防戦争は「死を恐れて自殺する(committing suicide for fear of death)」ようなものだと警告した。アメリカの将来の政策立案者たちは、このことを心に留めておく必要がある。

教訓その3は、プーティンは無視したようだが単純だ。もしあなたが外国を侵略したら、友好的な歓迎を期待してはいけない。それどころか、外国からの侵略者は、それまで分裂していた社会を団結させ、獰猛で非常に効果的な抵抗を鼓舞するのが普通である。ウクライナはその典型であり、戦争犯罪やその他の残虐行為を行う軍隊は歓迎されないということを、この戦争は教えてくれている。この教訓も前面に押し出しておくとよいだろう。

4の教訓は、プーティンはこれを軽視したようだが、明白な侵略は他国を警戒させ、それに対抗する措置を取らせるということだ。もしロシア大統領が、2014年のクリミア奪取に対する比較的穏やかな反応から、2022年の侵略に対して外部勢力はほとんど反対しないと考えたとしたら、彼は、アドルフ・ヒトラーが1939年3月にチェコスロヴァキアの一部を奪取し、その数ヵ月後にポーランドを追ったときと同じ誤りを犯したことになる。バランスを重視する行動は時に非効率的であり、国家はしばしば他国にその責任を転嫁しようとするが、直接的な侵略に直面した場合、効果的なバランスを重視する行動ははるかに起こりにくくなる。一極集中時代のアメリカの冒険主義(adventurism)が、ある国によるソフトバランシング(soft balancing)と他の国によるハードバランシング(hard-balancing)を引き起こし、こうした力学(dynamics)がアメリカの大きな野望を阻止するのに役立ったことを考えれば、私たちはこのことを理解しなければならない。私たちはこの教訓も覚えておくのが賢明であろう。

これら4つの教訓を総合すると、ウクライナで勝利しても、アメリカが世界秩序を思い通りに再構築できる状況にはないことが分かる。中国の台頭、ヨーロッパの経済的脆弱性、発展途上の多くの国々のアメリカに対する二律背反的な態度などを考慮すると、そのような目標は一極支配の最盛期には手の届かぬものであり、全体としての条件は不利なものとなっている。もしアメリカの政策立案者たちがウクライナの勝利を世界規模のリベラル派の聖戦の新たな機会として捉えるならば、再び失敗する運命にある。

むしろ、ウクライナでの成功は、過去50年以上にわたるアメリカの大戦略(grand strategy)を注意深く振り返り、どのアプローチがうまくいき、どのアプローチがうまくいかなかったかを明らかにするきっかけとなるはずである。以下、簡単に振り返ってみよう。 

アメリカの軍事力は、冷戦時代にヨーロッパや北東アジアで行われたように、真の大国のライヴァルに対して強力な抑止態勢を構築するために用いられた場合に有効であったが、「巻き返し(rollback)」や政権交代を目的としたあからさまな努力は避けなければならなかった。このような努力は、強力で有能、かつ正当なパートナーがいる場合には成功したが、不人気で弱く、無能な従属国(client)を支えようとする場合には、あまりうまくいかなかった。アメリカの軍事力は、1991年の湾岸戦争や今日のウクライナのように、いわれのない不法な侵略に対抗する場合には効果的な手段であった。しかし、外国政府を倒し、銃口を向けて民主政治体制を押し付けるために使われた場合は、特に信頼できる現地パートナーがいない場合には失敗した。そのような取り組みが短期的には成功しても(1953年のイラン、2001年のアフガニスタン、2003年のイラク、2011年のリビアなど)、長期的な結果はほとんど常に否定的であった。

より広く言えば、アメリカの外交政策が最も良く機能したのは、国家の相違を認め、地球上の全ての国家がアメリカの政治的価値を受け入れなければならないと主張せず、主として他の国々がそれぞれのペースで、それぞれの方法で具体例を示すことによって民主政治体制を推進した時であった。アメリカの指導者たちが、アメリカ流の自由民主政治体制(liberal democracy)を政治的・経済的成功のための魔法の公式(magic formula)と考え、全ての人間が他の全ての価値よりも自由と解放を切望すると仮定し、アメリカとは大きく異なる国々で「国家建設(nation-build)」を行う方法を知っていると自負していた時には、失敗したのである。

アメリカの対外経済政策は、社会的・経済的安定に十分配慮しつつ、より大きな開放性を奨励しようとした時に成功した。故ジョン・ラギーが古典的な論文で示したように、第二次世界大戦後の「埋め込まれた自由主義(embedded liberalism)」という妥協案は、貿易と成長を奨励する一方で、国内の人々をグローバル化の最も深刻な影響から隔離し、そうした政策の成功例の1つであった。アメリカの対外経済政策は、1930年代のように保護主義(protectionism)に逆戻りした時、あるいは超グローバリズムの新自由主義戦略のように、市場を他の全ての考慮事項より優先させた時に失敗したのだ。後者の場合、政治的に爆発的な不平等が生じ、大規模な金融危機が発生し、サプライチェインは予期せぬショックに対しては脆弱であることが証明された。

アメリカの外交政策は、マーシャル・プランの策定、ヨーロッパとアジアにおける印象的な同盟システムの構築、エジプトとイスラエルの和平交渉、経済パートナーとの貿易取引の成立、敵対国との安定的な軍備管理協定の追求など、外交を優先させることでより多くの成果を上げることができた。アメリカの交渉努力は、他国にも自国の利益があり、成功する取引は全ての参加者にとって価値あるものでなければならないことをアメリカの指導者たちが認識したときに成功する。これとは対照的に、アメリカが真の外交を放棄し、取るか取られるかという単純な思考で交渉する場合、アメリカの努力は失敗してきた。最終通告を行い、制裁を強化するような場合、相互の有益な妥協を否定することになる。

ウクライナでの勝利は、それが実際に起こると仮定しても、旧ソ連帝国の崩壊のような重大な出来事にはならないだろう。なぜなら、中国は1990年代よりもはるかに強くなっており、ウクライナ戦争もその事実を変えることはないからだ。ウクライナの勝利は、アメリカ国内の政治的分極(political polarization)の機能不全を解消するものではない。むしろ、より穏やかな外部環境は、国内での分断を助長し、アメリカが多様で複雑な世界のあらゆる地域の政治を管理・指導する能力を魔法のように手に入れることはないだろう。

実際、ウクライナと西側諸国が勝利した場合、ロシア軍がウクライナ国境を越える前と同じ外交政策上の課題リストに直面することになる。それらの課題とは、(1)破滅的な気候変動の回避と既に顕在化している深刻な影響への対処、(2)中国とのバランスと関与、(3)イランの核武装阻止、(4)低迷する世界経済の管理、(5)次のパンデミックに対する世界の備えなどである。これらの重要な目標を達成するためには、明確な優先順位を設定し、奇想天外な聖戦(quixotic crusades)を避けることが必要である。ウクライナのタカ派が勝利の階段を上るのを止めることはできないが、彼らが西側諸国を過去の過ちの繰り返しに導かないようにすることが肝要である。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。

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 古村治彦です。

 ネオコンという言葉はジョージ・W・ブッシュ(子)政権(2001-2008年)時代に日本でも知られるようになった言葉だ。私の師匠である副島隆彦先生が『現代アメリカ政治思想の大研究 <世界覇権国>を動かす政治家と知識人たち』(筑摩書房)でネオコンについて日本でほぼ初めて紹介したのが1995年で、2000年代に入ってネオコンという言葉が日本のマスコミで使われるようになって「何を今更」の感があった。今回のロシアによるウクライナ侵攻について、アメリカのネオコンの動きがあったということで、ヴィクトリア・ヌーランドの名前を挙げて説明している論稿もあるが、こちらもまた「何を今更」である。私は2012年に出した『アメリカ政治の秘密』でネオコン(共和党)とカウンターパートとして「人道的介入主義派(humanitarian interventionists)」(民主党)について詳しく説明した。ネオコンだけではなく、人道的介入主義派も危険だということは早い段階で指摘した。

 アメリカ政治に詳しい方なら「ネオコンは共和党のジョージ・W・ブッシュ政権の時にアメリカの外交政策と軍事政策を牛耳った人々ではないか。それが民主党のジョー・バイデン政権で重要な政策決定に関与できるのか」という疑問を持つだろう。だから大事なのは、民主党内のネオコンのカウンターパートである、人道的介入主義派なのである。今度は人道的介入主義派の出番ということになるのだ。ネオコンと人道的介入主義派は立場が近い。ネオコンの論客ロバート・ケーガン(共和党員)は2016年の大統領選挙で、ドナルド・トランプ当選を阻止したいと考え、民主党のヒラリー・クリントンの政治資金集めのためのパーティを計画したことがあった。アイソレイショニズムのトランプよりも党は違うヒラリーの考えの方が近いということになるのだ。

 昨年出版した『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』について、ありがたいことに最近になって評価をして下さる方が少しずつであるが増えてきている。私の主張や思考はとにかくシンプルで、バイデン政権とはヒラリー政権が4年遅れでやって来た存在に過ぎず、ヒラリーが当目である人道的介入主義派が多く政権に入ればそれだけ危険だということから思考を組み立てている。私のこれまでの著作を是非お読みいただきたい。

 バイデン政権はウクライナ戦争が勃発してから武器や物資の供与は行うがアメリカ軍が直接関与することは回避している。ウクライナの国土とウクライナ人の生命と財産が失われる状況でアメリカの軍需産業は大儲けをしている。その原資はアメリカ国民の血税であるが、日本人もまた高みの見物ということはできない。日本もまた相応の負担を強いられることになる。急速に進んだ円安とエネルギーコストの急上昇によって生活が苦しくなる一方であるが、それに加えて戦争税が課されることは間違いない。

 アメリカ国内でもアメリカ軍の直接的な関与を求める声が高まっている。そのためのキーワードが「戦争犯罪(war crime)」だ。ロシアによる戦争犯罪を裁く、もしくはウラジミール・プーティンを権力の座から引きずり下ろすためにはアメリカ軍が出張っていってロシア軍を破らねばならない。しかし、そんなことをすれば戦争は拡大し、エスカレートし、その行き着く先がどうなるか予想ができない。核戦争の可能性が大いに高まる。アメリカ国内も安全ということはなくなる。ネオコンと人道的介入主義派の動きは非常に危険だ。私たちは感情と思考を区別して置かれた状況でより賢い選択をするという思考ができるようにしなければ大きく騙されて大事な生命と財産を危険に晒すことになる。

(貼り付けはじめ)

バイデンにとっての最大のウクライナ問題はプーティンではない。それは戦争マシーンだ(Biden’s Biggest Ukraine Challenge Isn’t Putin, It’s the War Machine

-ウクライナ国境で軍事紛争が起きる場合、バイデン政権はアメリカによる介入を煽る応援団に抵抗しなければならない。

マイケル・トマスキー筆

2022年2月16日

『ニュー・リパブリック』誌

https://newrepublic.com/article/165380/ukraine-russia-neocon-media-war

ウラジミール・プーティンは手を引きつつあるのか? 火曜日の朝の『ニューヨーク・タイムズ』紙、『ワシントン・ポスト』紙、『フィナンシャル・タイムズ』紙の見出しは、ロシアがウクライナ国境からいくつかの部隊を撤退させ、他の軍事演習が続いている間にも、そのことを伝えている。プーティンは今日、ドイツのオラフ・ショルツ首相と会談している。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、侵攻は水曜日に行われると一見警戒しているように見えたが、メディアを通過する際に訳がわからなくなった皮肉な発言であったことが判明した。とはいえ、アメリカ政府は一時的に米国大使館をキエフからより安全な西のリヴィウに移した。

このようにまだ明らかになっていないことは多いが、バイデン政権にとっての明確な最低ラインは明確になっている。それは、「戦争に行くな、以上(Don’t go to war. Period.)」だ。

今日のニュースが一時的な休息、あるいは策略であることが判明し、ロシアが侵攻した場合、ケーブルニュースは少なくとも数日間は侵攻の映像を流し続けることになる。ロシアの残虐行為やウクライナ市民の死が強調されることになるだろう。アメリカのネオコンとその一部の上院議員、特に民主党のロバート・メネンデスと共和党のマルコ・ルビオは、ドナルド・トランプの犯罪を謝罪していない時に侵略が進む場合、多くの放送時間を得るだろう。ちなみに、この最後の点は、主流メディアが民主政治体制(democracy)を失敗させている重要な点の一つである。外交政策について優れた演説ができる人物は、たとえ10年か20年の間全てを間違っていたとしても、テレビはその人物を専門家として任命する。

太鼓が鳴り、衣服が裂け始めるだろう。これを見よ! スターリンが再びやって来るぞ!これは民主政治体制の死だ。バイデンを見てみろ、何もしていない! アフガニスタン、そし

て今はウクライナ。そして、この展開を見ている中国が何を考えているか想像してみよう。

しかし、バイデンはこれら全ての誇大広告に対して毅然とした態度で臨まなければならない。バイデン政権はこれまで、ウクライナでいかなる状況が起きてもアメリカ軍を駐留させないという、見事なまでに明確な態度を示してきた。これは良いスタートだ。しかし、プーティンが引き金を引くようなことがあれば、政権も踏ん張らなければならない。

バイデン政権の立場は変わらないと思う。しかし、私は少しばかり神経質になっている。バイデンは連邦上院議員時代、ウクライナをNATOに加盟させることを支持していたが、私はいつもそれを恐れていた。バルト三国の場合はそうだろうが、そこでも私は疑問に思った。アメリカ国民の何%が、聞いたこともないエストニアの町(ナルヴァ)を守るためにアメリカ人の命が失われることを喜んで支持するのだろうか? 世論が外交政策を左右するべきだというわけではない。少なくともヒトラーが宣戦布告をするまでは、ほとんどのアメリカ人は第二次世界大戦でドイツと戦うことに反対していた。しかし、民主的に選ばれた指導者は、ある状況がなぜアメリカの介入を必要とするのか、アメリカ国民に説明しなければならない。ウクライナの場合、それは無理な話だ。

そう、そこにネオコンがいるのだ。ありがたいことに、彼らは2002年から2003年にかけてのイラク戦争のときのように電波を支配しているわけではない。昨年12月、フレデリック・ケーガンは『ザ・ヒル』誌に、アメリカは戦争マシーン(war machine)を強化する必要があると書いた。彼は賢いので「戦争」という言葉は使わなかったが、これらの文章はそのポイントを伝えている。そのポイントは次の通りだ。

・本当に問題なのは、西側諸国がこの戦いに対する気概(stomach)を持っていないことだ。

・空軍力だけでは攻勢を止めるのには十分ではない。

・ティーム・バイデンはプーティンがウクライナを攻撃した場合の防衛について不安を払拭しなければならない。

こうした人々は何事も学ばない。もっとありそうなのは、自分たちの世界観から学ぶべきことを学ぶということだ。つまり、もう少し強力な決意と火力があれば、そして宥和派からの干渉がもっと少なければ、今日の軍事介入は大成功だっただろうという風に考えるということだ。

しかし、私には、歴史的な大成功の記憶はない。その代わり、記録にあるのは、ヴェトナムとイラクの悲惨な泥沼(disastrous quagmires)である。また、軍事や情報諜報の観点から「成功」したとされる介入(interventions)も、広い意味では悲惨な結果に終わったものがほとんどである。1954年、私たちはイランで迅速なクーデターを起こしたが、その後どうなったか。私たちは冷酷な親米政権を設立し、イラン国民は1979年についにこれを追放した。この政権は、ネオコンの好戦によって、冷酷な反米政権に取って代わられ、世界的とは言わないまでも、恐らくすぐに核兵器能力を持つ地域大国に変貌することになった。イランが本格的に核開発を始めたのは、ジョージ・W・ブッシュがイランを「悪の枢軸(axis of evil)」の一部と烙印を押した後であることを思い出そう。

私はかつて、当時の流行語であった「人道的介入(human interventions)」というものをアメリカがうまくやってのけると信じたかった。当時、スーザン・ソンタグやクリストファー・ヒッチェンスといった人々が、血と土(blood-and-soil 訳者註:民族主義的なイデオロギーのスローガン)の暴君に対抗するために、西側はまだ始まったばかりの多民族民主主義を支援しなければならないという道徳的説得力を持つ主張をしていた。その中心となったのは1990年代のボスニアだった。当時のベイカー国務長官が議会で「私たちはこの戦いに関与しない」と発言したことに私は愕然とした。

ボスニアは、ある種の軍事介入が正当化されるケースだった。主にNATOの空爆が行われ、最終的には和平合意(peace accords)に至った。しかし、その10年後、ボスニアのような人道的介入になるという理由で、イラク侵攻を主張する人たちがいたことをよく覚えている。何だと? ある国に攻め込んで、その国の隅々まで作り直すことと、大量殺人者が別の国で大量虐殺を行うのを阻止することが、どうして同じことだと言うのだろう?

そう、違うのだ。そして、ウクライナの状況と似たような比較をするような強制は避けるべきだ。教訓は次のようなものだ。歴史的類似性(historical parallels)を安易に使うことには常に注意を払うこと。ウクライナに軍事的に関与するということは、ロシアとの戦争に巻き込まれるということであり、脅威冷戦時代の越えられない一線、核兵器による消滅というを越えることである。プーティンは引き下がるかもしれない。しかし、彼が引き下がらなかったとしても、ここでの戦いはあくまで経済的なものだ。バイデンがかつてウクライナをNATOに加盟させることを熱望していたとしても、彼は今の状況を理解している。もしプーティンが参戦し、好戦派が国を熱狂の渦に巻き込もうとし始めたら、彼は自分の戦争への非関与を貫くべきだ。

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ネオコンたちがウクライナで新たな惨事を引き起こそうとしている(Neocons bent on starting another disaster in Ukraine

-アメリカの外交政策は、明らかに、毒舌で欲張り、そして何よりも無謀なエリート集団の人質となっている。

ジェイムズ・カーデン筆

2021年12月15日

『アジア・タイムズ』紙

https://asiatimes.com/2021/12/neocons-bent-on-starting-another-disaster-in-ukraine/

いずれにしても、ワシントンのネオコンたちは、生き残るための正確な本能を持っている。2001年9月11日のテロ攻撃以来20年間、イラク戦争からリビアとシリアでの大失敗に至るまで、数々の惨事を引き起こしてきたネオコンたちは、失敗の芸術を完成させているようだ。

ハーヴァード大学のスティーヴン・ウォルトは「ネオコンであることは、決して謝る必要がないということを意味する」と述べたことがある。この点でケーガン一族の話は参考になる。

『ワシントン・ポスト』紙のコラムニストであり、ブルッキングス研究所の上級研究員で、『ザ・ジャングル・グロウズ・バック(The Jungle Grows Back)』のような偽史の著者でもあるロバート・ケーガンは、長年にわたってアメリカの軍国主義(American militarism)の主唱者であった。

弟のフレデリックはネオコンが主流派となっているアメリカン・エンタープライズ研究所の常勤研究員である。2021年12月7日付の『ザ・ヒル』にフレデリック・ケーガンが寄稿し、ロシアがウクライナを支配すれば、ポーランドやルーマニアにも存亡の危機が訪れると主張し、それは新しい鉄のカーテン(Iron Curtain)となりうるものだ、アメリカとヨーロッパの地上・空軍を大規模に展開させることによってのみその状況に対応できる、と主張した。

フレデリック・ケーガンと妻キンバリーは戦争研究所を率いている。夫妻は失脚した元CIA長官デーヴィッド・ペトレイアスの側近だった。実際、フレデリック夫妻は、2007年から2008年にかけて、ジョージ・W・ブッシュ政権が追求した米軍増派戦略のブレインとして頻繁に言及される存在だった。

しかし、ケーガン一族で最も有力なのは、フレデリックの兄ロバートの妻で政治担当国務次官であるヴィクトリア・ヌーランドだ。

バラク・オバマ政権で、ヌーランドは米国務省報道官を務めた。彼女は明らかに不適格であり(現報道官の資質を考慮すればなおさらだ)、その後、ヨーロッパ・ユーラシア問題担当国務次官補に就任した。

2014年2月にウクライナで民主的に選ばれたヴィクトール・ヤヌコヴィッチ大統領の転覆を画策し、国連によると1万3000人以上が死亡した内戦(civil war)を招いたのは、ヌーランドがその役割を担っていたからだ。

アメリカがロシアとの戦争という重大なリスクに晒されている理由の一つは、ここまでに至った政策についてほとんど議論されていないが、ワシントンの外交政策が事実上、排他的なサークルによって行われていることだ。

そして、このサークルはケーガン一族のような人々によって独占され、支配されている。

ワシントンの既存メディアは、官僚機構のための永続的なエコーチェンバーとして機能することで、こうした外交政策を永続させる役割を担っているのである。その証拠としては、『ワシントン・ポスト』の社説では、ウクライナ危機が始まった当初から、外交と関与を求める声を軽率に退け、その代わりに、完全な戦争(outright war)を呼びかけている。

その一例が2014年8月21日にワシントン・ポスト紙の社説に掲載された見解だ。

「停戦や、外交交渉につながる何らかの一時的な停止を模索したくなるところだ。しかし、一時停止と外交で何が達成されるだろうか? ウクライナに禍根を残すような交渉は避けなければならない。受け入れられる唯一の解決策は、ロシアのウラジミール・プーティン大統領の侵略を撤回させることだ」。

『ナショナル・インタレスト』誌の編集者ジェイコブ・ヘリブラウンと私が当時次のようにコメントした。「無慈悲な態度とほぼ同程度に悪いのは、率直さの欠如である。ワシントン・ポストは、プーティンの侵略を逆転させるためにどのような提案をするのかについて何一つ実際に説明していない」。

これは現在でも変わらない。ウクライナをめぐってロシアと戦争すると豪語するアームチェア・ウォリアー(安楽椅子に座って戦争を論じる言葉だけお勇ましい人)たちは、そのような「逆転」がどのように行われるのか、更に言えば、米露間の戦争が成功する確率はどの程度なのか、まったく議論していないのだ。

ウクライナ危機が始まった約8年前からあまり変わっていない。2021年12月7日のアメリカ連邦上院外交委員会(SFRC)でヌーランドが行った「米露政策の最新情報」に関する証言について少し考えてみよう。

ヌーランドは次のように証言した。

"ロシアのプーティン大統領がウクライナへの攻撃や政府転覆を決定したかどうかは分からない。しかし、そのための能力を高めていることは確かだ。この多くは、2014年のプーティンの脚本に沿ったものだが、今回は、より大規模で致命的な規模である。したがって、正確な意図やタイミングが不明であるにもかかわらず、私たちはロシアに方向転換を促すとしても、あらゆる事態に備えなければならない」。

ヌーランドは更に、アメリカ政府は2014年以来、ウクライナに24億ドルの「安全保障分野での支援」を行い、本年度分としてこれまで4億5千万ドルがその中に含まれていると指摘した。

この巨額の投資に対して、アメリカはどのような見返りを得たのだろうか?

連邦上院外交委員会のボブ・メネンデス委員長は、ロシアが自国の国境で圧倒的な軍事的優位性を持っていないという印象を抱いているようだ。同様に、民主党のベン・カーディン連邦上院議員は、ロシアがウクライナに侵攻すれば「私たち(アメリカ)にはエスカレートする必要がある」と言い切った。

一方、共和党所属のトッド・ヤング連邦上院議員は、ヌーランドに対して「ロシアの侵略に対抗するために、政権はどのような方策を検討しているのか」と迫り、民主党所属のジャンヌ・シャヒー連邦上院議員は、エストニアの国会議員との対話の中で「ウクライナ問題に関するヨーロッパの結束」の重要性について語られたと述べた。

また、エストニアの国会議員共に、ポーランドなどの東欧諸国の国会議員たちも、「バルト諸国にさらに軍隊を駐留させるか、させないかについて懸念を表明したとシャヒーン議員は述べた。

この日、最も鋭いコメントをしたのは共和党のロン・ジョンソン連邦上院議員だった。ジョンソン委員は外交委員会が珍しく超党派の合意を達成したことに明らかに誇らしげだった。彼はさらに、アメリカはウクライナを支持し、ロシアに対抗するために「団結」しているのだと強調した。

そしてジョンソンの発言内容は全く正しいものだ。外交委員会は、アメリカが何の条約上の義務も負っていないウクライナをめぐる紛争を望むことで完全に一致した。

実際、ヌーランドも連邦上院外交委員会も、アメリカの国益が存在しない場所を見ているようだ。より心配されるのは、制裁と軍事的脅威を組み合わせることで、アメリカから何千キロも離れた場所で起きている紛争の結果を形成する、アメリカの能力、いや、義務に対する盲信のようなものを持っているように見えることである。

今回の連邦上院外交委員会の公聴会が明確に示したことは、アメリカの外交政策が毒と欲にまみれたおり、そして何よりも無謀なエリート集団の人質になっていることだ。そのエリートには、外交委員会の委員たち、公聴会で証言する政府高官たち、外交委員会にブリーフィングするスタッフたち、スタッフが信頼する学者や政策担当者たち、そして「匿名」の政府筋から聞いたことを無批判に書き写す記者やジャーナリストが含まれる。

このように、われわれが直面している最も緊急な問題は、次のようなものだ。手遅れになる前に、良心のあるアメリカ人はどうやって彼らの権力支配を断ち切るか?、である。

※ジェイムズ・W・カーディン:『ザ・ネイション』誌の外交専門記者を6年間務めた。その他に様々な出版物に記事や論稿を掲載してきた。それまでは米国務省の顧問を務めたサイモン・ウィール政治哲学センター理事、アメリカ・ロシア協力アメリカ委員会上級コンサルタントを務めている。

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ネオコンであることは決して謝罪する必要がないということだ(Being a Neocon Means Never Having to Say You’re Sorry

-この人たちはイラクのあらゆる面で間違っていた。なぜまだ彼らの言うことを聞かなければならないのか?

スティーヴン・M・ウォルト筆

2014年6月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2014/06/20/being-a-neocon-means-never-having-to-say-youre-sorry/

2001年から2006年のある時点まで、アメリカはネオコンヴァティヴィズムを信奉する人々(ネオコン)が外交政策の中核をなすプログラムに従った。この巨大な社会科学的実験の悲惨な結果(disastrous results of this vast social science experiment)は、これ以上ないほどに明らかである。ネオコンのプログラムは、米国に数兆ドルとアメリカ軍将兵の数千人の死傷をもたらし、イラクとその他の地域に殺戮と混沌をもたらした。

リンドバーグやマコーミックのようなアイソレイショニズムの信奉者たちが、第二次世界大戦で、ディーン・ラスク元国務長官がヴェトナム戦争で疎外されたように、ネオコンたちの信用は永遠に失墜するのではないかと考える人もいるだろう。たとえ、ネオコンが自分たちの愚行が引き起こした失敗にもめげず、自分たちの主張に固執し続けるとしても、合理的な社会は彼らにほとんど注意を払わないだろうと予想される。

しかし、アンドリュー・バセヴィッツ、ジュアン・コール、ポール・ウォルドマン、アンドリュー・サリヴァン、サイモン・ジェンキンス、ジェイムズ・ファローズといった、多くの論客が落胆したように、ネオコンの論客たちは今日も健在である。CNNをはじめとするニュースチャンネルの一般視聴者たちは、ポール・ウォルフォヴィッツ、ディック・チェイニー、ビル・クリストルらの空疎な(vacuous)分析に接しているのである。

より懸念されることは、バラク・オバマ大統領が圧力に屈して、イラクの無能で悩めるマリキ政権を助けるために300人のアメリカ軍顧問団を派遣したと思われることだ。いつものように、オバマ大統領は新たな泥沼を警戒し、アメリカの関与を制限しようとしているようだ。しかし、彼は滑りやすい坂道への第一歩を踏み出し、この最初の動きが成功しなければ、もっとやるようにという追加の圧力に直面することになるだろう。

一体何が起こっているのか? ネオコンの最新の戦争推進キャンペーンの論理を破壊している人々がいる。ネオコンの一連の悪いアドヴァイスに対する強力な再反論は、前述の論客たちの記事を読むとよい。あるいは、バリー・ポーゼンが『ポリティコ』誌に寄稿した、ネオコンのあまりにも有名な妨害行為に対する有効な警告を提供している記事も読んで欲しい。

しかし、過去の失敗を考えると、ネオコンがあらゆるレヴェルの説明責任(accountability)から免れているように見えるのはどうしてだろうか? 一つのグループが、これほど頻繁に、これほど高いコストをかけて間違いを犯しながら、それでもなお、上層部でかなりの尊敬と影響力を維持できるのはなぜなのか? アメリカがネオコンに少しでも耳を傾けることは、ワイリー・E・コヨーテにロードランナーの捕まえ方を聞いたり、故ミッキー・ルーニーに結婚のアドヴァイスを求めたり、バーニー・マドフに退職金の運用を任せたりするようなものである。

私の知る限り、ネオコンが奇妙なほど持続しているのは、相互に関連する4つの要因によるものである。

(1)厚顔無恥(No. 1: Shamelessness

ネオコンサヴァティヴィズムが生き残っている理由として、そのメンバーが、自分たちがどれだけ間違っていたか、あるいは善悪そのものを気にしていないことである。トロツキー派やシュトラウス派のルーツに忠実なネオコンは、政治的目標を達成するために、常に真実を弄ぶことを厭わない。例えば、彼らはイラク戦争を売り込むために、情報を捏造し、とんでもない虚偽の主張をした。そして今日、彼らは現在のイラクの混乱に対する自らの責任を否定し、オバマによって浪費された戦争の大成功を描くために、同様に虚偽の物語を構築しているのだ。そして、この運動全体が先天的に誤りを認めることができず、自分たちが浪費したり取り返しのつかない損害を与えたりした何千人もの人々に謝罪することができないようだ。

著名なネオコンの知識人で、イラク戦争の初期の推進者ロバート・ケーガンが、来月行われるヒラリー・クリントンの選挙資金調達パーティのトップを務めることが、『フォーリン・ポリシー』誌によって明らかにされた。この動きは、クリントン陣営が著名な共和党員と関わりを持とうとする姿勢の変化を示すものであり、ドナルド・トランプ大統領の誕生を阻止するために、共和党の離反者がどこまでやる気があるかを示す最新の兆候である。

つまり、リチャード・ニクソンやシルヴィオ・ベルルスコーニと同様に、ネオコンたちは、自分たちが何度間違っていたかを気にせず、世間の注目を浴びるためならどんなことでもする、あるいは言う、という姿勢でカムバックを繰り返している。また、自分たちの度重なる政策の失敗がもたらす悲劇的な人的結果には、まったく無関心であるように見える。ネオコンであることは、決して「申し訳ございません」と言う必要がないことを意味するようだ。

(2)資金援助(No. 2: Financial Support

ネオコンの生き残りの第二の源泉は資金だ。アメリカの開かれた政策アリーナでは、雇用を維持し、活動するためのプラットフォームと組織を提供する資源さえあれば、ほとんど誰でもプレイヤーになることができる。2003年にアメリカを崖っぷちに追い込んだネオコンは、ベルトウェイ(ワシントンの内部)で疎外されるどころか、『ウィークリー・スタンダード』誌、アメリカン・エンタープライズ研究所、カーネギー財団、外交問題評議会、戦争研究所、ハドソン研究所など、資金力のあるシンクタンク、雑誌などを出す組織から支持され続けている。エリオット・エイブラムスのように何度失敗しても、資金力のある外交評議会の上級研究員になれるのなら、アメリカの政策論議において間違ったアドヴァイスが目立つようになるだろう。

(3)言い分をそのまま受け入れ共感するメディア(No. 3: A Receptive and Sympathetic Media

ネオコンは、主流メディアが彼らに注目し続けなければ、その影響力はかなり小さくなる。彼らは自分たちの雑誌を出版したり、フォックス・ニューズに出演したりすることもできるが、大きな力を発揮するのは、『ニューヨーク・タイムズ』紙、『ウォールストリート・ジャーナル』紙、『ワシントン・ポスト』紙などのメディアで彼らが注目され続けていることだ。ネオコンは依然として論説ページに頻繁に登場し、外交政策の様々な問題について記者たちからよく引用されている。

このような傾向は、主要メディアの重要なメンバーが、自らネオコンであったり、その基本的な世界観に強く同調していたりすることも一因となっている。ニューヨーク・タイムズのデイヴィッド・ブルックス、ワシントン・ポストのチャールズ・クラウトハマーとフレッド・ハイアット、ウォールストリート・ジャーナルのブレット・スティーヴンスは、いずれもネオコン信奉者で、もちろん当初から戦争推進派では著名な発言者だった。ニューヨーク・タイムズ紙は2005年にクリストルを起用し、論説コラムを書かせたが、それはイラク情勢が既に悪化していた後だった。クリストルの論稿がそれほど退屈で杜撰な内容でなかったなら、彼は今日もまだコラムニストを続けているかもしれない。

しかし、ネオコンが主要な報道機関に存在し続けるということだけが問題ではないのだ。

ネオコンが影響力を持ち続けているのは、アメリカの他のメディアが「バランス」にこだわっているからであり、無頓着な記者たちは、オバマ政権やよりハト派的な声から何を言われても、いつでもタカ派のネオコンの言葉を引用してバランスを取れることを知っているからである。記者が正確さよりもバランスが重要だと考えている限り、新保守主義者は自分たち特有の外交政策に関する当てにならない商品(スネークオイル、snake oil)を売り込む場所をたくさん見つけることができるのだ。

(4)リベラル派の同盟者(No. 4: Liberal Allies

ネオコンの持続性にとっての最後の源泉は、彼らの近いいとこである、リベラル派の介入主義者(liberal interventionists)から継続的な支持を得ていることである。ネオコンは、イラク侵略というアイデアを作り出したかもしれないが、様々な種類のリベラルなタカ派から多くの支持を得ていたのである。前にも述べたように、この2つのグループが唯一意見を異にする主要な問題は、国際機関の役割についてであり、リベラル派は国際機関を便利な道具と見なし、ネオコンはアメリカの行動の自由を妨げる危険な制約と見なしている。つまり、ネオコンはリベラルな帝国主義者のステロイド版であり、リベラルなタカ派は実際にはより親切で優しいネオコンに過ぎないのだ(Neoconservatives, in short, are liberal imperialists on steroids, and liberal hawks are really just kinder, gentler neocons.)。

リベラル派の介入主義者たちはネオコンの計画に加担しているため、ネオコンをあまり批判したがらない。それは、そんなことをしてしまうと、ネオコンの悲惨な計画における自らの過失に注目が集まるからだ。したがって、ピーター・ベイナートやジョナサン・チェイトのようなリベラルなタカ派が、イラク戦争を支持していたにもかかわらず、最近になって、ネオコンの立場を厳しく批判しつつ、イラクをめぐる新しい議論に参加するネオコンを擁護していることは、驚くにはあたらない。

ネオコンとリベラル派の同盟は、事実上、ネオコンの世界観を再正当化し、アメリカ主導の戦争に対する彼らの継続的な熱意を「正常(normal)」に見せているのである。オバマ政権にサマンサ・パワーやスーザン・ライスのような熱心な介入支持者がいて、アン・マリー・スローターのような元オバマ高官が、シリアに武器を送る必要性についてネオコン的な議論をしているとき、ネオコンは米国政策コミュニティの中で完全に立派な一派のように聞こえ、むしろ彼らの考えが実際にはどれほど極端で信用できないものであるかが強調されているのである。

圧倒的な証拠を前にしてもなお、影響力と地位を維持するゾンビのような能力は、F・スコット・フィッツジェラルドが間違っていたことを教えてくれる。アメリカの人生には実際、無限の「セカンドチャンス」があり、アメリカの政治システムにはほとんど、あるいはまったく説明責任がない。ネオコンの持続力はまた、アメリカが無責任な言説から逃れられるのは、それが非常に安全だからだということを思い起こさせる。イラクは大失敗で、アフガニスタンでの敗北への道を開くことになった。しかし、一日の終わりには、アメリカは帰ってきて、おそらくちょうどいい状態になる。確かに、ネオコンの空想に耳を傾けなければ、何千人もの市民が今日も元気に暮らしていただろうし、1993年以降の彼らの処方箋を儀礼的に無視していれば、アメリカ人は海外でもっと人気があり、国内ではもっと繁栄していただろう。何十万人ものイラク人も生きていただろうし、中東の状態もいくらか良くなっていただろう(これ以上悪くなりようがない)。

ネオコンの影響力を適切な次元(つまり、ほとんどゼロ)まで低下させるものがあるとすればそれは何だろうか? もし、この10年間がネオコンの信用を失墜させなかったとすれば、これからどうなるかは明確ではないということだ。モスクワや北京の指導者たちは、この事実から大きな安心感を得ているに違いない。アメリカが危機から危機へ、そして泥沼から泥沼へと転落し続けることを確実にするためのより良い方法はどんなものだろうか? この社会が、確実に間違っている人ではなく、一貫して正しい人の意見に耳を傾けるようになるまでは、私たちは同じ過ちを繰り返し、同じ悲惨な結果を招くだろう。ネオコンはそんなことを気にしないだろうが。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。
 このブログではどの記事が多く読まれているかを私がチェックできる機能がある。先月から今月にかけて、以前書いたヴィクトリア・ヌーランドに関する記事が閲覧者数で上位に来ている。このブログを読みに来ている皆さんは、アメリカ側の対ロシア政策、対ウクライナ政策についても興味を持っているということが分かる。
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 手前味噌で恐縮だが、私は昨年(2021年5月)に『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
』を発刊した。その中で、ヴィクトリア・ヌーランドについて取り上げている。本の原稿を書いていたのは2021年1月末から3月末までだったが(その後は校正作業などがあった)、その時期はアメリカでジョー・バイデン政権が発足する時期で、私の本『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
』は、ジョー・バイデン政権の外交政策の顔ぶれ分析となった。私はヴィクトリア・ヌーランドが米国務省序列第3位の政治問題担当国務次官に抜擢されたことに驚いた。中国関係は恐らくある程度穏健な方向になるだろうと考えていたところに、ジェイク・サリヴァンが国家安全保障問題担当大統領補佐官に就任したので、その方向は大きくは逸脱しないだろうとある程度の安心感はあった(クアッド路線のカート・キャンベルが国家安全保障会議アジア・太平洋調整官になったので、強硬路線と穏健路線を使い分けるのだろうと考えるようになった)。
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悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

 しかし、ヌーランドの国務次官就任は驚いた。第2位の国務副長官のウェンディ・シャーマンはマデリーン・オルブライト元国務長官系の人材でアジア畑が長い人であったことを考えると、人道的介入主義派のアントニー・ブリンケン米国務長官(ヨーロッパの方が得意、フランス語が話せる)の下でネオコンのヌーランドが一緒に行動することになったら危険だと考えた。ヌーランドが対ロシア政策の最前線に出ることは、バイデン政権の対ロシア路線が強硬なものとなるということを私は書いている。是非お読みいただきたい。
 ヌーランドはウクライナで親露派が政権を取った2014年にそれを追い落とす工作を行ったことがバレている。駐ウクライナ大使との電話での会話が暴露されて、「Fuck the EU」という言葉が広く喧伝された。彼女は親露派を倒すために、ウクライナの極右勢力(反ロシア・反ユダヤのネオナチ)を利用してきた。ヌーランドについては以下にもいくつか記事をご紹介しているので是非お読みいただきたい。
 今回のロシアによるウクライナ侵攻は現象だけ見て感情的に対応するとなれば、「ウクライナ頑張れ、ロシアくたばれ」になる。しかし、その深層については冷静になってよくよく見ていかねばならない。アメリカが世界中で行ってきた介入によってどれだけの人々が不幸になったかということを今一度立ち止まってよく考えてみるタイミングでもある。
(貼り付けはじめ)
●「米ロ外相、今週にも協議か ウクライナ情勢めぐり」
時事通信 2022年01月31日08時38分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022013100187&amp;g=int
 【ワシントン時事】ヌーランド米国務次官は30日、米CBSテレビの番組に出演し、緊迫するウクライナ情勢をめぐり、ブリンケン米国務長官とロシアのラブロフ外相が週内にも協議する可能性があると語った。ロシア軍の国境付近への集結でウクライナ侵攻への懸念が強まる中、緊張緩和を模索するとみられる。
 ヌーランド氏は、米国が北大西洋条約機構(NATO)不拡大を拒否し、軍事演習やミサイル配備の制限を提案した書面回答について、「ロシア側が対話に関心を示している兆しがあると聞いている」と指摘。「ブリンケン長官とラブロフ外相が週内に話す見通しであるという事実も、その一つだ」と語った。
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●「米 ロシアがウクライナ侵攻すれば「厳しい制裁課す」改めて警告」
2022年1月28日 テレ朝ニュース
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000243063.html
アメリカ国務省は、ウクライナ情勢の緊張緩和に向けてロシアに対話の継続を求める一方で、侵攻した場合は厳しい制裁を課すと改めて警告しました。
ヌーランド国務次官:「我々は、(ロシアに)外交を求める意見で一致しているが、仮にロシアが対話を拒否すれば、彼らに対し直ちに厳しい代償を払わせるという決意で一致している」
ヌーランド国務次官は27日、こう述べたうえで必要になった時に備え、あらゆるレベルで何十時間も協議し、ロシアにとって大きな痛みを伴う金融・経済制裁の準備を進めていると改めて警告しました。
ロシアが求めるNATO(北大西洋条約機構)の拡大停止を受け入れないとしたアメリカの回答については、「現在、プーチン大統領が回答内容を精査中だと聞いている」と述べました。
そのうえで、「プーチン氏がこれを戦争の遺産ではなく、安全保障や軍備管理の遺産を残すための機会だと捉えることを願っている」と対話を継続するよう呼び掛けました。
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ロシア政府、アメリカが対ロシア制裁を解除したので、ヌーランドのモスクワ訪問は可能となる(Russia, US lift targeted sanctions so Nuland can visit Moscow)
マイケル・シュニール筆
2021年10月10日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/policy/international/russia/576149-russia-us-lift-targeted-sanctions-so-nuland-can-visit-moscow
ロシアとアメリカは、ヴィクトリア・ヌーランド政治問題担当国務次官が今週モスクワを訪問し、複数のロシア政府関係者と会談できるように、対ロシア制裁を解除した。
ロイター通信が日曜日に報じたところによると、ロシア外務省の報道官マリア・ザハロワは、ヌーランドは入国を禁止する制裁リストに載っていたが、アメリカがロシア国民の入国を禁止していた同様の制限を解除したため、その後削除されたと述べた。
ロイター通信はRIA通信の報道を引用し、「ヌーランドは実際に、国境を越えることができないという意味での制裁リストに載っていた」とザハロワは述べた。
ザハロワ報道官は更に「彼ら(米国)は複数のロシアの政治家や外交専門家を制裁リストに含めている。つまり、この場合、問題は同等に解決された。そう、彼女はロシアに滞在する」と述べた。
ロイター通信によると、ザハロワはその後、ゴボリット・モスクワ・ラジオ局に対し、あるロシア市民がアメリカの制裁リストから外れたと語ったが、その人物が誰であるかは明らかにしなかったという。
国務省内の序列第3位の高官であるヌーランドは、10月11日にモスクワに移動し複数のロシア高官や関係者と会談し、「二国間、地域、世界の多種多様な問題について話し合う」予定であると米国務省は発表している。
ヌーランド次官のモスクワ訪問は、米露関係が緊張状態にある中で実施される。
バイデンは大統領に就任して以降、ロシアの野党指導者アレクセイ・ナヴァルニーの毒殺事件、ソーラー・ウィンズ社のハッキング事件、2020年大統領選への影響工作などに関連して、ロシアに対して多くの制裁を科してきた。
しかしながら、バイデン大統領は2021年6月の首脳会談でロシアのウラジミール・プーティン大統領と一対一で会談し、外交政策の勝利について枠を設定した。
ロシアでの滞在を終えたヌーランドは、2021年10月14日にベイルートを訪れ、レバノンの市民社会グループの各代表や政府の指導者たちと会談し、経済改革や来年の選挙について話し合う予定だ。
2021年10月15日にはロンドンに向かい、「多種多様な世界規模の諸問題」について複数のイギリス政府高官と会談する予定だ。
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ヴィクトリア・ヌーランドとは何者か?バイデンの外交政策ティームに重要なプレイヤーとして参加することは本当に悪い考えだ(Who is Victoria Nuland? A really bad idea as a key player in Biden's foreign policy team)
―オバマ政権下の外交政策を妨害した冷戦の真の信奉者、ヌーランドは国務省にとって巨大なリスクとなってしまう。
By MEDEA BENJAMIN - NICOLAS J.S. DAVIES - MARCY WINOGRAD
2021年1月19日
『サロン』誌
https://www.salon.com/2021/01/19/who-is-victoria-nuland-a-really-bad-idea-as-a-key-player-in-bidens-foreign-policy-team/
ヴィクトリア・ヌーランドとは何者か? アメリカ人の大多数は彼女のことを聞いたことがない。なぜなら、アメリカの大企業メディアの外交政策報道は不毛の地となっているからだ。
ほとんどのアメリカ人は、バイデン次期大統領が政治問題担当の国務次官に選んだ人物が、1950年代の米露冷戦政治の流砂(quicksand)から抜け出せず、NATOの拡大(NATO expansion)、極端な軍拡競争(arms race on steroids)、ロシアに対する更なる包囲網(further encirclement of Russia)の継続を夢見ていることを知らない。 
また、ヌーランドが2003年から2005年まで、つまり敵対的なアメリカ軍によるイラク占領の期間中、ジョージ・W・ブッシュ(子)政権の「ダース・ヴェイダー」であったディック・チェイニー副大統領の外交政策担当補佐官だったことも、アメリカ国民は知らない。
しかし、ウクライナ国民がネオコンに属するヌーランドの名前を聞いたことがあるのは間違いないところだ。2014年2月、駐ウクライナ米国大使ジェフリー・パイアットとの電話会談でヌーランドが「EUなんてクソ食らえ(Fuck the EU)」と言った4分間の音声が流出したのを聞いたことがある人も多い。
悪名高い電話での会話録音の中で、ヌーランドとパイアットは、選挙で選ばれたウクライナ大統領ヴィクトール・ヤヌコヴィッチを追い落として代わりの人物を大統領に据える、あるいはヤヌコヴィッチを弱体化させることを企んでいるようであった。アメリカにとって望ましい第一候補アルセニー・ヤツェニュクではなく、元ヘビー級ボクサーで緊縮財政の主唱者だったヴィタリ・クリチコを首相に推すEUに対して、ヌーランドは外交上の儀礼を欠いた表現で嫌悪感を示した。アルセニー・ヤツェニュクは約3週間後に実際にヤヌコヴィッチ追放後に首相の座についた。
「EUなんてクソ食らえ(Fuck the EU)」という言葉は大流行した。恥をかかされた米国務省は、電話の信憑性を否定することなく、ロシアが電話を盗聴していると非難した。アメリカ国家安全保障局(NSA)がヨーロッパの同盟諸国の電話を盗聴していることを棚に上げてそのような非難を行った。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相は怒り狂ったが、結局誰もヌーランド氏を解雇しなかった。しかし彼女の録音内での発言は、より深刻な話であるウクライナで選挙によって選ばれた政権を転覆させるアメリカの陰謀、そしてウクライナ内戦に対するアメリカの責任を明確に示すものとなった。ウクライナ内戦によって少なくとも1万3000人が死亡し、ウクライナはヨーロッパで最も貧しい国に転落してしまった。
その過程で、ヌーランドと彼女の夫で新世紀アメリカン・プロジェクトの共同創設者であるロバート・ケーガン、そしてネオコンの取り巻き連中は、米露関係を危険な下降スパイラルに陥れ、現在でもそこからまだ回復していない。
ヌーランドは、ヨーロッパ・ユーラシア問題担当国務次官補という比較的軽い地位でこれを成し遂げた。バイデン政権下の国務省の序列第3位の高官として、どれだけの問題を引き起こすことができるだろうか。連邦上院がヌーランドの指名を承認すれば、すぐに明らかになるだろう。
ジョー・バイデンは、バラク・オバマの失敗から、人事が極めて重要であることを学んだはずだ。一期目でで、オバマはタカ派のヒラリー・クリントン国務長官、共和党出身のロバート・ゲイツ国防長官、ジョージ・W・ブッシュ政権から引き継いだアメリカ軍やCIAの指導者たちに、希望と変革というメッセージよりも終わりのない戦争を優先させるように任せてしまった。
ノーベル平和賞受賞者であるオバマは、グアンタナモ湾での告訴も裁判もない無期限拘留、無実の市民を殺害するドローン攻撃の拡大、アメリカのアフガニスタン占領の深化、テロとテロ対策の自己強化サイクル、リビアとシリアでの悲惨な新戦争を指揮することになった。
オバマ政権二期目では、クリントンが退任し、新しい人材がトップに立った。オバマは、自ら外交政策を担当するようになった。ロシアのウラジミール・プーティン大統領と直接会談し、シリアなどの危機を解決するように努めた。プーティンは2013年9月にシリアの化学兵器の撤去と破壊を交渉し、シリア戦争の激化を回避し、JCPOA核合意につながるイランとの中間合意の交渉に協力した。
しかし、ネオコンは、大規模な空爆作戦を命じ、シリアでの秘密裏の代理戦争をエスカレートさせるようオバマを説得できなかったことや、イランとの戦争の見通しが後退したことに、逆上していた。ネオコンは、アメリカの外交政策における自分たちの支配力が低下するのを恐れ、オバマに外交政策における「弱者(weak)」の烙印を押し、自分たちの力を思い知らせようとキャンペーンを始めた。
ヌーランドからの協力を得て、ケーガンは2014年に『ニュー・リパブリック』誌上に、「超大国は引退できない」と題する記事を書き、「この民主的超大国が挫折したからと言って、世界を救うために待機している別の超大国は存在しないのだ」と主張した。ケーガンは、もはや支配できなくなってしまっている多極化した世界に対するアメリカの恐怖を払拭するために、更なる積極的な外交政策を採用することを求めた。
オバマはケーガンをホワイトハウスでの私的なランチに招待した。ネオコンの筋金入りの圧力を受け、オバマは、イラン問題に関しては水面下で進めることができたが、対露外交の規模は縮小せざるを得なかった。
オバマ政権内のよりましな人物たちに対するネオコンの一撃は、ロシアとの国境にあるNATO加盟の戦略的候補であり、負債を抱えるウクライナでヌーランドが2014年に起こしたクーデターであった。
ウクライナのヤヌコヴィッチ大統領が、ロシアから150億ドルの救済を受けるため、アメリカが支援するヨーロッパ連合との貿易協定を拒否したとき、米国務省は怒りを募らせた。
侮蔑された大国の怒りは地獄の怒りのようなものだ。
EU貿易協定は、ウクライナの経済をヨーロッパの輸入品に開放するものだったが、EU市場のウクライナへの相互開放がなければ、ヤヌコヴィッチは受け入れることができない、不利な協定であった。この協定はクーデター後の政府によって承認され、ウクライナの経済的苦境に拍車をかけただけだった。
ヌーランドの50億ドルが投じられたウクライナ国内でのクーデターのための尖兵は、オレーフ・チャフニボーク率いるネオナチ「全ウクライナ連合「自由」(Svoboda)」と表舞台には出てこない、民兵組織「右翼セクター(Right Sector)」所属の民兵たちだった。リークされた電話の中で、ヌーランドはチャフニボークを、アメリカが支援するヤツェニュク首相を内部で助けることができる外部の野党指導者「ビッグ3」の一人と述べた。ヌーランドが称賛したチャフニボークは、かつて第二次世界大戦中にユダヤ人や「その他のカス」(Jews and "other scum")と戦ったウクライナ人を賞賛する演説を行ったチャフニボークともちろん同一人物である。
2014年2月にキエフのマイダン広場での抗議活動が警察との戦闘に発展した後、ヤヌコヴィ
ッチと西側が支援する野党は、フランス、ドイツ、ポーランドが仲介して、国民統一政府を作り、年内に新しい選挙を実施するという協定に署名した。
しかし、アメリカが解き放ったネオナチや極右勢力にとって、それは十分なものではなかった。民兵組織「右翼セクター」が率いる暴力的な暴徒が国会議事堂に進撃し、侵入した。議事堂襲撃に関してアメリカ人は想像できないということはなくなっている。ヤヌコヴィッチと国会議員たちは命からがら逃げ出した。
ロシアは、クリミアのセヴァストポリにある最重要な海軍基地を失うことになり、クリミアがウクライナから離れ、1783年から1954年まで属していたロシアに再び加わることを決めた住民投票の圧倒的な結果(83%の投票率で97%が賛成)を受け入れないといけない。
ウクライナ東部のドネツクとルハンスクというロシア語圏の多数派が一方的にウクライナからの独立を宣言し、アメリカが支援する勢力とロシアが支援する勢力の間で血生臭い内戦が起こり、2021年現在も続いている。
両国の核兵器が依然として私たち自身の存在に対する単一で最大の脅威となっているにもかかわらず、米露関係は一向に回復していない。ウクライナ内戦や2016年の米大統領選挙におけるロシアの選挙干渉疑惑についてアメリカ人が何を信じようと、ネオコンと彼らが仕える軍産複合体(military-industrial complex)が、バイデンがロシアとの重要な外交を行うのを阻止して、私たちを核戦争という自殺行為の道から導くことを許してはならない。
しかし、ヌーランドとネオコンは、好戦的な外交政策と記録的な額の国防総省予算を正当化するために、ロシアや中国とのますます衰弱し危険な冷戦に関与し続けるのだ。2020年7月の『フォーリン・アフェアーズ』誌に掲載された「プーティンを押さえつける(Pinning Down Putin)」という論文で、ヌーランドは、ロシアが「自由主義世界」に対して、かつての冷戦時代にソ連がもたらした以上の脅威を与えているという不条理な主張をしている。
ヌーランドは、ロシアの侵略(Russian aggression)とアメリカの善意(U.S. good intentions)という、全く神話的で非歴史的な物語の上に立っている。彼女は、アメリカの10分の1に過ぎないロシアの軍事予算が「ロシアの対決と軍事化(Russian confrontation and militarization)」の証拠であるかのように装い、アメリカとその同盟諸国に対して、「強固な防衛予算を維持し、アメリカと同盟諸国の核兵器システムの近代化を継続し、ロシアの新兵器システムから守るために新しい通常ミサイルとミサイル防衛を配備する」ことによってロシアに対抗するよう求めている。
ヌーランドはまた、攻撃的なNATOとロシアを対峙させたいと考えている。ブッシュ大統領二期目でのNATO大使時代から、彼女はロシアとの国境までNATOが拡大することを支持してきた。彼女は「NATOの東側国境に沿った恒久的な基地(permanent bases along NATO's eastern border)」の設置を要求してきた。ヨーロッパの地図を見ても、NATOと呼ばれる国には国境が全くない。ヌーランドは20世紀の西側諸国の侵略から自国を守ろうとするロシアの姿勢を、NATOの拡張主義的野心にとって耐え難い障害とみなしている。
ヌーランドの好戦的な世界観は、まさに1990年代以降、ネオコンと「リベラルな介入主義者たち(liberal interventionists)」の影響下で、アメリカが行ってきた愚行(folly)を象徴している。その結果、ロシア、中国、イランなどとの間で緊張を激化させる一方で、アメリカ国民に対する組織的な過小投資を招いたのである。
オバマ大統領は学ぶには遅すぎたのだ。その教訓とは、悪い時に悪い場所にいる間違った人物が、間違った方向に突き進むと、何年にもわたる難解な暴力、混乱、国際的な不和を引き起こしてしまうのだ。ヴィクトリア・ヌーランドは、バイデン政権下の国務省において時限爆弾(time-bomb)となり、オバマ政権二期目の外交を弱体化させたように、バイデンの優れた才能を妨害するために待ち構えているのだろう。
(貼り付け終わり)
(終わり)


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。
 ジョー・バイデンは国務長官に側近のアントニー・ブリンケンを指名した。ブリンケンはどんな人物か。
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アントニー・ブリンケン(右)とバイデン
 ブリンケンの父ドナルドは1944年に米陸軍に入隊し、その後、1948年にハーヴァード大学を卒業した。投資会社ウォーバーグ・ピンカス・カンパニーの創設者の一人だ。ブリンケンは民主党の大口献金者であり、1988年の大統領選挙では民主党候補のマイケル・デュカキスの資金集めを担当した(息子のアントニーも参加した)。そして、民主党のビル・クリントン政権下の1994年から97年にかけて駐ハンガリー米国大使を務めた。

 父ドナルドと母ジュディスが離婚し、ジュディスはパリで弁護士をしていたサミュエル・ピカールと再婚した。それでアントニーもパリに移り、高校時代を過ごした。そのために、アントニーはフランス語に堪能だ。その後、アントニー・ブリンケンはハーヴァード大学を卒業し、コロンビア大学法科大学院を卒業した。

 1993年からは国務省に勤務し、2002年からは上院外交委員会の民主党側スタッフとなった。この時に上院外交委員長を務めていたジョー・バイデンと知り合い、その後、側近となった。2009年からはジョー・バイデン副大統領の国家安全保障問題担当補佐官を務めた。2013年から2015年までは国家安全保障担当大統領次席補佐官を務めた。更に2015年から2017年にかけては国務副長官も務めた。オバマ政権時代には「副」「次席」の立場で外交政策や国家安全保障政策を担った。

 ジョー・バイデン政権ができれば、ブリンケンは初めて「副」や「次席」という言葉が付かない形で外交政策の中心人物となる。

 ブリンケンは「人道的介入主義派(Humanitarian Interventionists)」の一員である。彼の経歴を見ても、連邦上院時代にバイデン委員長の下で、イラク戦争賛成の下準備を行った。また、オバマ政権下ではリリアやリビアへの介入を主導したと言われている。トランプ大統領の外交姿勢を徹底的に批判してきた。彼はヒラリー派の一員である。しかし、同時にバイデンの側近ということを考えると、バイデンが途中で辞任となれば一緒に辞める(辞めさせられる)ということもあるだろう。

 このバイデン政権=ヒラリー・チェイニー政権の外交政策を担うという点では、アントニー・ブリンケンは適任であろう。それが世界にとってどんな厄災をもたらすかは想像すらできないが。「グレイト・リセット」を行い、アメリカと世界はディストピアに陥る。その時に平然と人々を抑圧する側の人間ということになる。

(貼り付けはじめ)

バイデンが国務長官に選んだアントニー・ブリンケンについて知るべき5つのこと(Five things to know about Antony Blinken, Biden's pick for State

オリヴィア・ビーヴァーズ、ロウラ・ケリー筆

2020年11月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/national-security/527650-five-things-to-know-about-antony-blinken-bidens-pick-for-state

大統領選挙当選者バイデンは今週アントニー・ブリンケンを国務長官に起用すると発表した。ブリンケンはバイデンにとって長年の側近であり、バイデンに近い外交政策アドヴァイザーである。

ブリンケンは外交政策分野で広範な経験を持っている。そして、連邦議会で人事が承認されれば、ブリンケンは複数の発生中のそして永続的な諸問題に直面している。その中には危険な新型コロナウイルス感染拡大も含まれている。

ブリンケンについての5つの知るべきことを述べていく。

(1)バイデンは数十年に渡りバイデンと一緒に仕事をしてきた(Blinken has a years-long working relationship with Biden

ブリンケンとバイデンとの間の関係は数十年前までさかのぼることができる。

バイデンが連邦上院外交委員会の委員長と幹部委員を務めた時、ブリンケンは民主党側スタッフ部長を6年間にわたり務めた。バイデンが副大統領に選ばれた際、ブリンケンはバイデンの後を追ってホワイトハウスに入った。ブリンケンはバイデン副大統領の国家安全保障問題担当補佐官を務めた。

ブリンケンは後にオバマ政権内で様々なポジションを経験した。その中にはバラク・オバマ大統領のアシスタントとオバマ大統領の国家安全保障問題担当筆頭次席大統領補佐官が含まれていた。

バイデンが選挙運動を始めた後、ブリンケンは再びバイデンの側近となった。ブリンケンはバイデン選対の外交政策アドヴァイザーに就任した。

ブリンケンは火曜日、国務長官就任を受諾すると述べ、その中で、大統領選挙当選者バイデンとの関係は自分の職業人としての人生の中のハイライトだと述べた。

「大統領選挙当選者であるバイデン氏のために働くこと、そして、あなたを師と友人として仰ぎ見ることができることは、私の職業人としての人生において最大の栄誉です」と述べた。

バイデンは、ブリンケンを国務長官に指名すると発表し、その中で、ブリンケンは「自分に最も近く、最も信頼できるアドヴァイザー」であると発言した。

(2)ブリンケンは中東に過集中している(Blinken has had hyperfocus on Middle East

ブリンケンは、911のテロリストによる攻撃とイラクへのアメリカ軍の侵攻の後に、対中東の外交政策に過剰に集中していることで知られている。

バイデンが連邦上院議員を務めていた機関、ブリンケンはイラクの分割計画を発表する手助けをした。ブリンケンは、イラクを人種や宗教的なアイデンティティを元にして3つのゾーンに分割することを強く主張した。そうすることで、それぞれのゾーンで自治が可能になると主張した。しかし、この考えは、多くの人々の反対に遭った。当時のイラクの主将からも強く反対された。

ブリンケンは対中東のアメリカの外交政策を形作った。

オバマ政権下、ブリンケンは、中東地域でISISに対抗するために十数カ国の連合形成を主導した。ブリンケンは政権内の外交政策の決定を主導した。特にアフガニスタン政策とイラクの核開発プログラムについて政策を主導した。

(3)ブリンケンは国務省の士気を上げたいと考えている(Blinken wants to raise State’s morale

ブリンケンはオバマ政権で国務副長官を務めた。ブリンケンの最後のそしてより記憶に残る瞬間としては、国務省のホリデーパーティーでの姿であった。ブリンケンはギターを手に取り、国務省職員で結成されているバンドに参加して、ボブ・ディランの曲を弾きながら、歌詞を国務省の職員に捧げるものに変えて歌った。

ブリンケン副長官の下、国務省に勤務したハイリー・ソイファーは「ブリンケンは政府において同僚たちと協力しながら仕事を進めました」と述べた。

ブリンケンと親しい人物として、トム・マリノウスキー連邦下院議員(ニュージャージー州選出、民主党)が挙げられる。マリノウスキーは民主政治体制・人権・労働担当国務次官補を務めた。

火曜日、ブリンケンはデラウエア州で国務長官就任を受諾した。その際、オバマ政権とクリントン政権、連邦上院、国務省で一緒に働いた「バンド仲間」に感謝の言葉を述べた。

ソイファーは次のように語っている。「これがまさにブリンケンを象徴しているものです。国務副長官時代、ブリンケンはただのリーダーではなかった。トップダウンでの判断をするのではなく、国務省全体を支援しながら仕事をするリーダーでした」。

ルー・ルーケンズは2018年まで、オバマ政権において、ロンドンの米国大使館で首席公使(deputy chief of mission to the U.S. embassy in London)を務めた。ルーケンズは「穏やかで謙虚」な人物だと評しているが、同時に、国務省に対する深い理解と評価をもたらすだろうとも述べた。更に、ブリンケンは「バイデンが優先政策ついて知識を持っており、深井考えを持っている」とも語った。

ルーケンズは次のように語った。「ブリンケン率いる外交ティームは、国際的な脅威に対処する同盟諸国とパートナー諸国の協力の重要性を認識するであろうことは明らかです。“アメリカ・ファースト、アメリカ・あローン”アプローチを推進する代わりに、志を同じくする諸国と協働することで、テロリズム、感染症拡大、気候変動などの脅威に対処することができるということを彼らは理解しています」。

(4)ブリンケンはホロコースト帰還者の継子だ(Blinken is stepson of a Holocaust survivor

ブリンケンは、自身のアメリカに対する考え方は、第二次世界大戦中に空軍兵士として従軍し、その後駐ハンガリー米国大使となった父親と、ホロコーストを生き抜いた継父の両者によって形成されたと認めている。彼の継父はアメリカを自由の烽火だと考えていた。

ブリンケンは、火曜日に国務長官受諾の演説の中で、父と継父の2つの物語を語った。ブリンケンは父ドナルド・ブリンケンこそが自分にとってロールモデルであり英雄だと述べた。

ブリンケンは更に、彼の継父サミュエル・ピサールの米国に来るまでの物語について語った。ピサールの親族はホロコーストでそのほとんどが殺害された。ピサールはバイエルン州の森の中で隠れ、第二次世界大戦末期の最後の死の行進から逃走した。その時、彼は白い5つの星がペイントされた戦車を目撃した。

ブリンケンは次のように述べた。「彼は戦車に駆け寄りました。戦車のハッチが開きました。アフリカ系アメリカ人兵士が彼を見下ろしました。私の父は膝をついて、彼の母親が教えてくれた3つの英単語を叫びました。それは、“God Bless America(神よ、アメリカに祝福を)”でした。兵士は彼を戦車に引き上げてくれて中に入れてくれました。父はアメリカに、そして自由に入ったのです」。

大使を務め、外交分野で長く勤務したダン・フライドは数十年にわたりブリンケンと新興を持ってきた。フライドは、ブリンケンの継父の物語はブリンケンの外交政策に関する考え方を表現していると考えていると述べた。

フライドは「アトランティック・カウンシル」とのインタヴューの中で次のように語っている。「外交政策についての基本的な考えについて、ブリンケンと話したことはないです。しかし、彼の外交政策についての基本的な考えは、価値観を持つ国としてのアメリカのアイデンティティから出ているということは感じられています。アメリカは、難民であった彼の継父をアメリカに招き入れてくれた国なのです。そして、アメリカは、自国の価値観と国益の増進はリンクしているということを分かっている国なのです」。

(5)ブリンケンには二人の幼い子供たちがいる(Blinken has two young children

ブリンケンは多忙を極める国防長官の職に就くが、彼と彼の妻は現在二人の幼い子供たちを育てている真っ最中だ。ブリンケンは20世紀以降の国務長官の中で、幼児を育てながら職責を果たすことになる最初の長官となる。

ブリンケンは、こちらもアメリカ政界で働いているエヴァン・モウリーン・ライアンと結婚した。二人はクリントン政権で働いている時に知り合った。

政府で仕事をしている間、ブリンケンは幼児教育に対しての関心を示した。2016年9月、ブリンケンは、有名な子供番組「セサミストリート」に出演した。彼は番組の中で、難民の流入と国連の役割について説明した。

オバマ政権で国連大使を務め、ブリンケンと同僚だったサマンサ・パワーは次のようにツイートした。「アメリカのトップ外交官が二人の幼児を育てながら職責を果たす姿を見せることは、働く親御さんたちにとって、元気をもらえることになるだろう。トニーと素晴らしいエヴァン・ライアンが家族を犠牲にして職責を果たしていることに感謝します」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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