古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:人道的介入主義派

 古村治彦です。
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ジョン・ボルトン回顧録 (仮)

 大変古い記事であるが、重要な記事をご紹介する。これは2018年に『イスラエル・ロビー』の共著者であるハーヴァード大学のスティーヴン・M・ウォルト教授が書いた記事だ。アメリカ外交政策エスタブリッシュメントはネオコンと人道的介入主義派で占められており、ネオコンのジョン・ボルトンはその主流派の一人である。そして、これら主流派の人々は自分たちの主張が実現されてもたらされた悲惨な結果について反省をしない、そして再び政権に入ることで失敗を繰り返す。これがアメリカの構造的な欠陥だとウォルトは書いている。

 そして、ネオコンと人道的介入主義派をまとめて「チェイニー主義」と名付けている。そして、チェイニー主義がアメリカの構造的な欠陥だと喝破している。チェイニー主義をウォルト教授は次のように描写している。

(貼り付けはじめ)

チェイニー主義とは、「脅威を増幅し、真剣な外交を拒絶し、同盟諸国を負担だと考え、国際機関を軽蔑し、アメリカは強力であり、他国に最後通牒を突き付け、他国が従うことを期待しているものと私は定義している。より言えば、外交政策に関わるより多くの問題を何かを吹き飛ばすことで問題を解決することができると信じることを言うのだ。

(貼り付け終わり)

 トランプ大統領は外交政策エスタブリッシュメント、主流派をこき下ろしていた。しかし、それでもそうした人物たちを起用しなければならない時もある。それでも行き過ぎれば、解任してきた。だから、北朝鮮との戦争は起きなかったし、中国とも決定的な決裂には至っていない。その点でドナルド・トランプ大統領は極めて優秀だ。ヒラリー・クリントンが大統領になっていたら世界は悲惨なことになっていただろう。本格的な戦争と新型コロナウイルス感染拡大が同時並行的に起きていたらアメリカはもたなかっただろう。

 問題はジョー・バイデンもヒラリーとあまり変わらないということだ。彼の政権も「チェイニー政権(チェイニー主義政権)」になってしまう可能性は大きい。下の記事にも名前が出てくるスーザン・ライスが副大統領になればそれは極めて危険なことだ。

(貼り付けはじめ)

ディック・チェイニー政権へようこそ(Welcome to the Dick Cheney Administration

―ジョン・ボルトンに関する問題は彼が少数派の過激な人物(extremist)だということではない、問題は彼が主流派(mainstream)であることだ。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2018年3月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2018/03/23/welcome-to-the-dick-cheney-administration/

もう片方の靴が落ちた。トランプ大統領はレックス・ティラーソン国務長官をツイッター上でのツイート一つで解任するという臆病な手段を取った。この時同時に、ドナルド・トランプは大統領国家安全保障問題担当補佐官のHR・マクマスターを解任し、後任にジョン・ボルトンを選んだ。ボルトンは元米国国連大使で強硬派として知られた人物だ。超タカ派(Uber-hawk)のマイク・ポンぺオはCIA長官であるが、国務長官に就任することになった。そして、CIAに忠誠を誓うジーナ・ハスペルがポンぺオの後任に決まった。ハスペルは、ジョージ・W・ブッシュ政権時に拷問施設を運営し、CIAが行っていたことを記録したヴィデオテープの破棄に同意した。こんな恐ろしいことが他にあるだろうか?

これらの出来事はトランプ政権内の混乱に対する2つの重要な反応だと考えられる。一つ目の解釈としては、今回の人事交代はトランプの政権内から「大人たち」を排除する動きというものだ。大人たちは過去1年間、ツイッター最高司令官(tweeter-in-chief)を何とか制御しようとしてきた。そうした人々を、トランプと同じように世界を見て、「トランプをトランプ」らしく行動させる人々に交代させたのである。こうした見方からすると、新しいティームは、トランプ大統領を制御しようとはせず、2016年の時のトランプに戻そうとするだろう。この時のトランプは、アメリカの外交政策は「完全に隅から隅まで厄災である」と主張し、「アメリカ・ファースト」の実現を訴えた。トランプ大統領自身は、自分で望ましい人物たちを集めてティームを作ると訴えることで、こうした考えを強調してきた。(これは一つの大きな疑問を生起させる。それは、誰が最初のティームの構成員を選んだのか?二番目のティームは?その答えは明白だ)

二つ目の解釈はより人々の警戒心を強め、皆さんの家の裏庭に防空壕を掘らせるようにさせるくらいのものだ。この解釈では、ティラーソンとマクマスターの更迭とボルトン、ポンぺオ、ハスペルの起用はタカ派が力を持つことになることを示す。この人々は、イランの核開発をめぐる合意を破棄し、拷問を復活させ、北朝鮮との戦争を始めるだろう。これはただの「強硬な姿勢」を超えたものだ。ホワイトハウスにボルトンが入ることで戦争を嫌なものだと考えたことがない人物からトランプ大統領は助言を受けることになる。(戦争を嫌なものだと考えないのはもちろん彼が安全な距離まで離れているからだ)

明確にしておきたい。ボルトンはこれまでトランプ大統領が行った選択肢のほとんどと同じもので、厄災となるであろうものだ。ボルトンの外交政策について考え方は原理主義的で、好戦的なものだ。政策の主導者、そして専門家としてのボルトンの経歴はどんなに良く言っても、信頼に足るものではない。ボルトンは自分の過去の誤りから学んでいるようには見えない。そして、マクマスターとティラーソンは、アメリカの国際的な評判と重要な同盟関係に対して、トランプ大統領が与えた損害を何とか限定的にしようと努力したが、ボルトンの外交官としての技能はアメリカの友人たちを攻撃するための新たな方法を見つけることになるだろうと思われる。

しかし、ボルトンの起用は2016年の大統領選挙の段階のトランプの考えに戻るということではないのだ。トランプは選挙期間中に外交政策に関する専門家たちやエスタブリッシュメント全体を攻撃した。トランプはこうした人々は無能で、無責任、アメリカを意味のない戦争に引きずり込むと主張した。しかし、大統領に就任して以来、トランプ大統領は国防予算を増額し、アフガニスタンの米軍を増強し、国防総省とわがままなアメリカの同盟諸国がより多くの場所でより強力な軍隊を使用することを許可し(その結果は失望)、外交政策により軍事偏重の姿勢を取ることでハイリスクな選択をした。これは、ビル・クリントン、ブッシュ(子)、バラク・オバマの各政権で失敗したやり方だ。ボルトンの起用(トランプの外の人事異動と同様)は、「アメリカ・ファースト」に向けた大胆な動きということではない。「アメリカ・ファースト」という言葉は、アメリカの海外での負担を削減し、アメリカの戦略的位置を改善し、アメリカ国民をより安全により豊かにするためのより堅実なそしてより抑制された外交政策を意味するはずだ。

その代り、トランプが知っていたかどうかは分からないが、ボルトン、ポンぺオ、ハスペルを最重要の地位に就けたのは、「チェイニー主義(Cheneyism)」への逆戻りなのである。チェイニー主義とは、「脅威を増幅し、真剣な外交を拒絶し、同盟諸国を負担だと考え、国際機関を軽蔑し、アメリカは強力であり、他国に最後通牒を突き付け、他国が従うことを期待しているものと私は定義している。より言えば、外交政策に関わるより多くの問題を何かを吹き飛ばすことで問題を解決することができると信じることを言うのだ。

いいですか皆さん、チェイニー主義は、アメリカがそれを採用した最後の機会できちんと機能しましたか?トランプ大統領のような洗練された外交政策の専門家は再びチェイニー主義を採用したいと望んでいるのは間違いないところだ。

従って、ボルトン起用の真のレッスンはボルトン自身のことではなく、アメリカの外交政策エスタブリッシュメントについてである。より微妙な地位に野蛮な急進派の人物を就けることの危険性についてこれから数週間、心のこもったそして怒りに満ちた評論を多く読むことになることは間違いない。しかし、単純な事実としては、アメリカの外交政策共同体の中で変わった人物ではないということだ。トランプが左派からメディア・ベンジャミンを、右派からランド・ポールを起用することとは違う。もしくは、チャールズ・W・フリーマン・ジュニアやアンドリュー・バセヴィッチのような経験豊富なそして知識豊富な逆張り主義者を起用することも違う。そうではなくて、ボルトンはタカ派の考えを持っているが、ワシントンにおいて「受け入れ可能な」コンセンサスの中に入っているのである。

ボルトンの考えや経歴を見てみよう。彼はイェール大学とイェール大学法科大学院の卒業生だ。彼はワシントンDCにある著名な法律事務所コンヴィントン・アンド。バーリングで働いた。この事務所ではディーン・アチソンも働いていたことがある。ボルンとは長年、保守系ではあるが主流のアメリカン・エンタープライズ研究所で上級研究員を務めている。彼は曖昧な、粗雑で野蛮な、「急進的な」文章を数多く発表している。その中には『ウォールストリート・ジャーナル』紙、『ニューヨーク・タイムズ』紙、そして『フォーリン・ポリシー』誌も含まれている。ここまで見て、あなたが考える「おかしな」人物にボルトンは当てはまるだろうか?

確かに、ボルトンはイラク戦争を声高に支持していた。しかし、そのことで彼を狂人(weirdo)だと考える人はほとんどいない。確かにボルトンはイラク戦争を声高に支持した。しかし、しかし、だからと言って奇人変人という訳ではない。ボルトンも指摘しているように、そのほか多くの人々も同様であった。ヒラリー・クリントン、ジョー・バイデン、ジェイムズ・スタインバーグ、アン=マリー・スローター、スーザン・ライス、ロバート・ゲイツなどなど数多くの「尊敬すべき」人物たちがイラク戦争に賛成した。これらの人物たち以外にもイラク戦争という厄災を夢見て実現させた天才たちのことも忘れてはいけない。ウイリアム・クリストル、ジェイムズ・ウールジー、ロバート・ケイガン、ブレット・スティーヴンス、マックス・ブート、エリオット・コーエン、デイヴィッド・フラム、ポール・ウォルフォヴィッツなどは今でも外交政策エスタブリッシュメントの中では尊敬を集めている。しかし、こうした人々は、悲惨な戦争を始め、多くの人々を死に至らしめたことについて、自分たちの誤りを認めず、公の場で後悔の念を示したこともない。

トランプ大統領と同様、ボルトンはイランと北朝鮮に対して特に懸念を持っているように見える。しかし、連邦議員の多くとワシントンDCにあるシンクタンクの多くもまた同様である。実際のところ、現在のイランとの核開発をめぐる合意を強く支持している人々は多くいるが、こうした人々はアメリカ政府がイラン政府に対してより強硬な姿勢を取るべきだと考えている。北朝鮮に対して軍事行動を取ることを提案しているワシントンDCにいる人間はボルトンだけではない。結局のところ、ボルトンの前任者である、更迭されたマクマスターが北朝鮮に対する厳しい姿勢を取ることを主張していた。

ボルトンはイスラム教嫌いで知られており、かつ国際機関に対して極めて懐疑的だ。しかし、こうしたことはアメリカの外交政策分野において特殊という訳ではない。彼は軍事力の行使を特に好む傾向があるように見える。しかし、外交政策分野での高名な知識人たちの中で軍事力行使に反対し、それに反対する態度を取りそのように発言する人たちの数はどれほどいるだろうか?私はそのような人物は極めて少ないと言わざるを得ない。それは、ワシントン(アメリカ政府)でトップの仕事に就きたいと狙っているような人物で「ソフトだ」と見られることを望むような人は一人もいない。シリアのバシャール・アル・アサド政権に対して戦略的に見て全く無意味な巡航ミサイル攻撃をトランプ大統領が許可した時、どれだけの数の民主党所属の政治家と共和党所属の政治家が彼に向って拍手を送ったかを読者の皆さんは覚えておられるだろうか?この単純な事実によって次のことを説明することができる。アメリカは10か国以上の国々で様々な種類の戦争を行ってきているが、終わりを想定することなしにまた反対しにくい形で始めている。ボルトンは外交政策共同体のコンセンサスの内部にいる、声が大きいメンバーであるに過ぎない。

誤解しないでもらいたい。私は今回のボルトンの起用を「正常なこと」であると位置づけ、心配するなと述べているのではない。そうではなく、もしボルトンについて懸念を持っているならば、次の疑問を自分自身に問いかけてみるべきだ。それは「政府高官の地位にボルトンのような考えを持つ人物が就くことを許すような政治システムはどのようなものか?」というものだ。このシステムは、この人物を政府高官の地位に就けて、アメリカを悲惨な戦争に駆り立てながら、自身の失敗に対する後悔を示すこともなく、更に次の10年も同じことをより熱を持って主張する。同じ間違いを犯すために2回目のチャンスを得ることができる。

これはただただ最悪なのだ。しかし本当の問題はボルトンではない。本当の問題は、彼のような人物を何度も失敗させて、何度も引き上げてくれるシステムの存在だ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 

 アメリカでは反トランプの動きが活発化しています。ヒラリーの選挙運動を支援した、民主党内のヒラリー派(人道的介入主義派)とネオコンが合同して、ロシア問題を突破口にして、トランプ政権に反撃を加えようとしています。


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 今年の8月に、「民主政治体制を守るための同盟(Alliance for Securing DemocracyASD)」は、ロシアのアメリカ政治やヨーロッパ各国の政治への介入について徹底的に調査し、それを公表することで、ロシアからの攻撃から民主政治体制を守るのだと高らかに宣言しています。

 

  ASDには、ネオコンの大物ビル・クリストル(雑誌『ザ・ウィークリー・スタンダード』誌編集長)とジェイク・サリヴァン(ヒラリー・クリントンの側近、ヒラリー選対の外交政策責任者を務めた)が顧問として名前を連ねています。ネオコンについて、そしてジェイク・サリヴァンという人物の重要性については、2012年の拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)で詳しく述べました。あわせてお読みください。

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ジェイク・サリヴァン

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ビル・クリストル

この新しいグループの母体となっているのは、ジャーマン・マーシャル・ファンド(German Marshall FundGMF)です。GMFは1972年にヨーロッパでマーシャル・プランが発動されて25周年を記念して当時の西ドイツ政府によって創設されたシンクタンクです。ヨーロッパとアメリカの相互理解と協力の促進を活動目的にしています。ジャーマン・マーシャル・ファンドには、若手の日本とトルコの専門家であり、ヒラリーの側近とも言われるジョシュア・ウォーカー(プリンストン大学で博士号、幼少期を日本で過ごし、日本が堪能)が研究員として在籍しています。

 

 ASDのウェブサイトを見ますと、ロシアがツイッターなどで流す嘘情報の出どころなどを示すダッシュボードという機能があり、これに「HAMILTON 68」という名前が付けられています。名前の由来の説明はないようですが、これは、ジョージ・ワシントン初代アメリカ大統領時代に国務長官を務めたアレクサンダー・ハミルトンにちなんでいることは明白です。現在、全米でミュージカル「ハミルトン」が大人気です。これはアレクサンダー・ハミルトンの生涯をミュージカル化したもので、ラップを使い、白人である登場人物たちを黒人など少数派が演じることで話題になっています。ハミルトンの外交姿勢は、積極的な関与ということで、ネオコンや人道的介入主義派の源流と言えます。そうしたことに目をつぶって、ハミルトンのミュージカルに熱狂しているアメリカ人や、一部の、感覚が鋭いと思われたい日本人はアホとしか言いようがありません。まあアメリカ人は良いとしても、日本人で訳も分からずにアメリカで人気だからということで飛びつくような人間は浅はかだと言うしかありません。


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 ネオコンと人道的介入主義派の合同は、世界にとって危険な兆候です。

 

現在、北朝鮮によるミサイル発射など挑発的な行為が続いています。挑発がエスカレートするようだと、交渉以上の、軍事的な行動が必要だという主張が勢いを増すことになります。アメリカが北朝鮮を見る場合に、北朝鮮単独でみることはありません。地理的にも、政治経済的にも近い、中国とロシアも念頭に置いています。ですから、北朝鮮に対する攻撃ということは、中国やロシアにもダメージを与えるということになります。これは、ネオコンや人道的介入主義派にとって最良のシナリオということになります。

 

 トランプ政権がこのシナリオに乗っていくのかどうか、ですが、現在の日本や韓国に対する態度や、今回紹介した動きを見ていると、問題は攻撃があるのかどうか、ではなく、どの程度の攻撃になるかということになっているように思われます。

 

(貼り付けはじめ)

 

国家安全保障問題専門家たちはロシアの悪影響に対応するためのプロジェクトを始動させる(National security figures launch project to counter Russian mischief

 

ジョシュ・ロジン筆

2017年7月11日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/news/josh-rogin/wp/2017/07/11/national-security-figures-launch-project-to-counter-russian-mischief/?utm_term=.47a48556bae4

 

アメリカとヨーロッパにおけるロシアによるハッキング、介入、プロパガンダに関して様々な議論がなされている。そうした中で、国家安全保障問題分野の専門家たちの間で、ロシアの活動を阻止するための対応が十分になされていないという懸念が広がっている。こうした懸念から、民主、共和両党に属する専門家たちが、ロシアによる政治介入、インターネット上における破壊行為、フェイクニュースの拡散を追跡し、徹底的に対処するための新しい試みが開始されることになった。

 

「民主政治体制を守るための同盟(Alliance for Securing DemocracyASD)」という名前の新プロジェクトに参加する署名をしたのは、民主、共和両党に所属する国家安全保障問題の専門家たちだ。顧問会議に名前を連ねたのは次の人々だ。元国土安全保障長官(ジョージ・W・ブッシュ政権)マイケル・チャートフ、元CIA長官代理(バラク・オバマ政権)マイケル・モレル、元連邦下院諜報特別委員会委員長マイク・ロジャース(共和党)、元欧州連合軍最高司令官ジェームス・スタヴリディス海軍大将(退役)、ジョー・バイデン前副大統領国家安全保障問題担当補佐官ジェイク・サリヴァン、前エストニア大統領トーマス・イルヴェス。

 

今回のプロジェクトの母体となるのは、ジャーマン・マーシャル・ファンド(German Marshall FundGMF)だ。そして、日常業務はローラ・ローゼンバーガーとジェイミー・フライが率いるスタッフが行う。ローゼンバーガーはオバマ政権で国務省高官を務めた。フライはマルコ・ルビオ連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)の国家安全保障問題担当補佐官を務めた。

 

ローゼンバーガーは次のように語っている。「私たちの民主政治体制が現在直面している脅威は国家安全保障に関する問題となっています。ロシアは私たちに対して戦争を仕掛けてきているのです。彼らは通常の戦争で使われる武器とは異なる様々な武器で私たちを攻撃しています。私たちはロシアが使用している武器についてより深く理解する必要があります。彼らが使っている武器は将来、ロシア以外の国々が民主的な機構を害することに使うでしょう。ロシアからの脅威に晒されているヨーロッパの同盟諸国とも協力しなければなりません」。

 

アメリカとヨーロッパにおけるロシアによる政治に影響を与えるための諸活動についての討論の場と情報収集・蓄積の場を作るという考えは、協力の基礎となるものだ。そして、アメリカとヨーロッパ双方の専門家のための分析材料も提供されることになり、これでロシアによる介入を押し返すことができる。

 

「民主政治体制を守るための同盟」の目的は、SNSにおけるロシアの偽情報提供、インターネット上の動き、資金の流れ、国家レヴェルでの協力、そして、ヨーロッパ諸国の極左、極右に対するロシアの支援といったことを明確にあぶりだすことである。

 

モレルは筆者の取材に対して次のように答えた。「もし完全な社会があるなら、何が起きているか、ロシア人たちが何をしたのか、これから国家として自分たちを守るために何をすべきか、プーティンがこのようなことを繰り返さないようにするために何をすべきか、といったことを把握するための国家レヴェルの委員会が存在することでしょう。しかし、こんなことが実際には起きないことはわかっています。ジャーマン・マーシャル・ファンドの試みのようなことは、理想と現実のギャップを小さくするうえで極めて重要なことと言えるでしょう」。

 

「民主政治体制を守るための同盟」は、ロシアからの偽情報がフェイクニュースに紛れ込む、ロシアのSNSによって拡散されているストーリーが拡散されている様子を視覚化するデジタルダッシュボードをインターネット上に発表することになる。「民主政治体制を守るための同盟」は、ロシア政府が拡散している情報がどのようにしてアメリカとヨーロッパのメディアの中でどのように拡散しているかを明確にする試みを行うことになる。

 

モレルは更に次のように語った。「ロシア人たちは選挙以外の様々な問題において幅広く活動しています。ロシア人たちが同性愛結婚や人種問題で私たちを分裂させようとしているということが分かっても私は全く驚きません」。

 

このプロジェクトの目的は2016年のアメリカ大統領選挙についてほじくり返すことではない。また、トランプ選対がロシア政府と共謀したのかどうか、もしくはロシアのアメリカへの介入政策の一部としてロシアに利用されたのかどうかを調査することでもない。ロシアの介入は継続しているし、ロシアの介入を理解し、徹底的に対処するための方策が不十分だということが前提となっている。

 

チャートフは次のように語った。「ロシア問題について懸念を持っている人々は党派の違いを乗り越えて、私たちのプロジェクトの下に結集する時がやってきたということです。2018年(中間選挙[アメリカ連邦議会の選挙]がある年)が近づいてくる中で、ロシアへの対処が十分に行われていない状況です。このままだと恐ろしいことが起きますよ」。

 

「民主政治体制を守るための同盟」は、FBIや連邦議会の諸委員会によって現在行われている操作や調査と重複することを望んでいない。しかし、「民主政治体制を守るための同盟」が調査を行うことで、ロシアの活動についてアメリカ政府とアメリカ連邦議会の関心、その阻止と反撃を促すことになるだろうと考えられている。

 

フライは次のように語った。「問題なのは、トランプ政権がロシア問題についていかに対処すべきかについていくつも勧告が出ているのに、それを取り上げていないことです。トランプ政権がアメリカとヨーロッパの民主政治体制を守るために必要なことを進んでやるのかどうかの結論はまだ出ていません」。

 

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民主党タカ派とネオコンサヴァティヴスとの間の邪悪な同盟が出現中(The emerging unholy alliance between hawkish Democrats and neoconservatives

 

カトリナ・ヴァンデン・ハウヴェル筆

2017年8月8日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/opinions/the-emerging-unholy-alliance-between-hawkish-democrats-and-neoconservatives/2017/08/08/3c1c7676-7bb5-11e7-9d08-b79f191668ed_story.html?utm_term=.b9c6a8248199

 

外交政策分野のエスタブリッシュメントの失敗に対してトランプ大統領は愚弄している。また、トランプ大統領は粗雑な「アメリカ・ファースト」政策を推進しようとしている。これに対して、タカ派の共和党ネオコンサヴァティヴスと「アメリカは掛け替えのない国(indispensable-nation)」を標榜する民主党員たちと緊密に協力することになった。考えを変えないエスタブリッシュメントは抵抗し始めた。アメリカが妄想的か、破滅的かの二者択一を避けようとするならば、外交政策に関する新たな進歩的立場が必要である。

 

ビル・クリストル、マックス・ブート、ディック・チェイニーのようなネオコンたちは、ジョージ・W・ブッシュ元大統領によるイラク侵攻を推進したイデオロギー上の原動力となった。イラク侵攻はヴェトナム戦争以来最悪の外交政策上の失敗だ。ヒラリー・クリントン、マデリーン・オルブライト、ミッシェル・フロノイのような「アメリカは掛け替えのない国」を主張する人々は当初、イラク戦争を支持していた。また、バラク・オバマ大統領のアフガニスタンへの「増派」を擁護し、リビアにおける破滅的な体制転換を組織化する支援を行った。ネオコンにしても、「アメリカは掛け替えのない国」を主張する人々は失敗から学ぶこともなく、怯むこともなかった。

 

グレン・グリーンワルドは、新たな同盟関係の出現を、単なるワシントンの外交政策専門家たちの集合では済まないと書いている。その同盟関係こそが、 「民主政治体制を守るための同盟(the Alliance for Securing DemocracyASD)」である。ASDは、ロシアを集中的に取り上げる「超党派、環大西洋的な試み」であるとグリーンワルドは述べている。ASDの目的は「ロシアやそのほかの国家やグループによる関与から防衛し、関与を防止し、関与のコストを上げるための総合的な戦略を立案し、アメリカとヨーロッパの民主政治体制転覆を狙ったウラジミール・プーティンの現在も進行している試みを白日の下に晒す」というものだ。ASDは、イラク侵攻を強く主張した、1997年に発足したプロジェクト「ニュー・アメリカン・センチュリー(New American CenturyNAC)」の最新版である。NACを創設したのは、ネオコンに属する言論人クリストルとロバート・ケーガンであった。ASDの顧問会議のメンバーは、ヒラリー・クリントン選対の外交政策責任者でアドヴァイザーだったジェイク・サリヴァン、オバマ政権でCIA長官代理を務めたマイク・モレル、クリストル、ジョージ・W・ブッシュ政権の国土安全保障長官だったマイク・チャートフ、元連邦下院議員で共和党内タカ派として知られるマイク・ロジャースである。外交政策の悲劇的な大失敗をしたエスタブリッシュメントたちが同盟を組んで反撃に出ようとしている。

 

トランプ政権の無策やエスタブリッシュメントの失敗よりもうまくやれるはずなのだ。バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)とエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)に率いられている進歩派は、国内政策についての激しい議論を主導している。これに対して、チャールズ・E・シューマー連邦上院民主党院内総務(ニューヨーク州選出、民主党)とナンシー・ペロシ連邦下院民主党院内総務(カリフォルニア州選出、民主党)は経済政策に特化した新しい提案を発表した。民主党指導部は、過去に民主党が明確で大胆な経済政策を打ち出すことに失敗したことを認め、そのような過ちは繰り返さないと宣言している。

 

しかし、外交政策に関しては、民主党は現在も漂流中だ。2016年の大統領選挙においてトランプ選対がロシアのハッキングを共謀したという疑いの追及は、ロシアからの脅威についての懸念を増大させている。ネオコンは今でも熱狂的な冷戦の戦士である。ネオコンはこのロシアに対する懸念を利用して、民主党の国家安全保障の専門家たちに近づいたのだ。

 

進歩派の人々の声は必要だ。ロー・カンナ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は、アメリカの外交政策における抑制とリアリズムを主張している。タルシ・ガバード連邦下院議員(ハワイ州選出、民主党)は外国の体制転換にアメリカが関与することに反対している数少ない政治家だ。クリス・マーフィー連邦上院議員(コネチカット州選出、民主党)はサウジアラビアによるイエメンの爆撃という恥ずべき行為をアメリカが支持したことに勇気を持って反対を表明した。そして、「軍事的介入か、孤立か」の間の「二つの選択」という選択肢を主張している。「戦場についての再考」という報告書の中で、マーフィー議員は、スマート・パワー、外交、海外援助、開発援助の分野において中国、ロシア、ISと対抗する21世紀版のマーシャル・プランといった新しい「道具立て」を強く主張している。

 

マーフィーが主張する「道具立て」の多くは説得力を持っている。マーフィーが「アメリカの軍事覇権の大規模軍事力」と呼ぶものについての懐疑もまた説得力を持っている。しかし、マーフィーは、アメリカは世界の警察官であるべきだと主張している。彼は「世界各地のアメリカ軍の存在を強化する」ことを求めている。マーフィーは、「アメリカがコストのかかる軍事介入をする前に、内戦や争いを阻止する」ことが必要だとも述べている。 アメリカにとっての重要な安全保障上の課題と世界中をパトロールして回ることを分離して考えることが重要だという主張に耳を傾ける人の数は少ない。

 

ニック・タースが『ザ・ネイション』誌で書いたように、今年の前半でアメリカの特殊部隊が作戦実行したのは137か国で、全世界の70%に達した。特殊部隊作戦は国家を防衛するための政策ではない。特殊部隊の利用は機構上の、そして帝国主義的な思い上がりでしかない。共和党のネオコンと民主党の「掛け替えのない国」派は両派ともに、オバマ大統領に対して、「弱い態度に終始した、シリアに対して十分な空爆をしなかった、ロシアに対して十分に強硬な態度を取らなかった」として、激しく非難した。しかし、オバマ大統領が退任する時点で、アフガニスタン、イラク、シリアに米軍の人員を派遣したままで、7か国でドローンを使って空爆し、南シナ海で中国と対立し、ロシアとの間で新しい冷戦を始めようとするような状況となっていた。オバマ政権最後の予算では、既に巨額に達している国防予算の更なる増加を求めた。これは実質価値に換算すると、冷戦の終結の年に匹敵する規模となった。外交政策の専門家にとってみれば、これでもオバマ大統領はアイソレーショニズムに傾倒している、ということになる。

 

トランプは、これまでの外交政策の失敗を厳しく批判しているが、現実的な代替案を提示してはいない。 エスタブリッシュメントが反撃に出たのは自然の成り行きだ。しかし、トランプもエスタブリッシュメントも現代世界におけるアメリカに適した、現実的なかつ考え抜かれた戦略を提示できていない。アメリカには国家安全保障に関して新しい戦略が必要になっているのだ。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12






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 古村治彦です。

 

 トランプとプーティンが電話会談をし、その中で、米ロ関係の改善に協力していくことで合意したということが報じられました。トランプは、選挙期間中に北朝鮮の金正恩委員長とも話し合っても良いと発言していましたから、民主国家ではないという理由で、一概に悪いくにだと決めつける(それなのに、アメリカに役立つ非民主国家である中東の産油国や中央アジアの独裁国家を悪とは決めつけない)人道的介入主義派やネオコンとは全く異なる外交姿勢を取ることになるでしょう。

 

 しかし、問題は国務長官の人選であり、その下の副長官、国務次官、国務次官補くらいまでの人選です。国務長官には、ルディ・ジュリアーニの名前が出ていますが、ジョージ・W・ブッシュ政権のネオコンのジョン・ボルトン、ヘンリー・ポールソン財務長官、日本人にもなじみ深いリチャード・アーミテージ国務副長官の名前が出ています。

 

 トランプの現実主義的な外交姿勢を政策と実行するためには、ネオコンという訳にはいきません。そもそもネオコンの人々は、トランプに反対していました。ネオコンの代表的な論客ロバート・ケーガンはヒラリーのために資金集めパーティーまで計画していたほどです。

 

 トランプが結局、ワシントンのエスタブリッシュメントに絡め取られてしまうかどうか、注目です。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプはプーティンと話をし、「永続的な」関係構築を楽しみにしていると述べる(Trump talks to Putin, looks forward to 'enduring' relationship

 

クリスティーナ・ウォン筆

2016年11月14日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/business-a-lobbying/305929-putin-tells-trump-he-wants-dialogue-based-on-non-interference

 

ドナルド・トランプ次期大統領は月曜日、ウラジミール・プーティンからの大統領選挙勝利に対する祝福を受け入れ、ロシア大統領に対して、「私はロシアとロシア国民との間で強力なそして永続的な関係を築くことを楽しみにしている」と述べた。

 

トランプの政権移行ティームは声明を発表し、トランプとプーティンは「アメリカとロシアが直面している脅威と挑戦、戦略的な経済諸問題、過去200年以上の米ロ関係の歴史」について議論したと述べた。

 

クレムリンは声明の中で、指導者2人が「現在の米ロ関係の冷え切った状態を評価することに同意し、関係正常化に向けた協力関係に向けた話し合いを行った。話し合いは諸問題について建設的な協力を行う方向性を持って行われた」。

 

クレムリンは声明の中で、「両指導者は、米ロ間の貿易と経済協力の発展を通じて両国間の堅固な基礎を構築する重要性を強調した」と述べた。

 

トランプは選挙期間中、プーティンを強力な指導者として賞讃してきたことはよく知られている。それに対して、共和党と民主党から批判が出ていた。トランプはテロリストとの他戦いでロシアとの協力が必要だと述べ、NATOとの再交渉ついてのトランプのコメントはロシア政府から評価された。

 

アメリカとロシアとの関係はここ10年間、冷え切っている。オバマ政権は、2014年にロシアがウクライナ領であったクリミア半島を併合したことを厳しく非難した。

 

トランプの政権移行ティームの論調は全体として協力的なトーンであった。一方、オバマ大統領とプーティン大統領との会談の論調は、全体として米ロ間の同意できない点を強調するものであった。

 

クレムリンは声明の中で、プーティンとトランプはこれからも電話を通じて対話を続け、会談実現に向けて協力していくと述べた。声明は、両指導者がテロリズムと過激主義との戦いのために協力して対処していくことに必要性とシリアにおける危機を終結させることについて議論したと述べた。

 

クレムリンは声明の中で更に、「プーティン大統領は、トランプ次期大統領との電話の中で、平等、相互尊重、内政不干渉といった諸原則に基づいて、新政権と対話を築きたいと語った」とも述べた。

 

プーティンは更に、「実践的な、相互利益をもたらす協力(両国の利益に適う)、世界の安定性と安全」への復帰することも止めた。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)









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ダニエル・シュルマン
講談社
2015-11-25



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 現在のアメリカの外交について、「弱腰」「妥協的(宥和的)」という評価があります。日本でも「早くオバマが辞めて次の大統領に、できたら共和党の候補者になって欲しい」という意見があります。

 

 私は拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)でも書きましたが、オバマ政権の外交政策(ヒラリー・クリントン前国務長官は除いて)こそは現実主義(Realism)外交だと考えます。この現実主義外交は、アメリカの国力と世界の状況を注視して、出来ることをやって「完璧さを求めるのではなく、少しでもより良い状況を作る」ということです。

 

 外交におけるリアリズムについて、私はウェブサイト「副島隆彦の学問道場」()の「郷のぼやき・会員ページ」で「「1528」 アメリカのネオコン・人道主義的介入派とは全く別の流れであるリアリストの現在の動きについてご紹介します 古村治彦 2015年5月9日」と題して書きました。お読みになりたい方は、是非、学問道場の会員になっていただければと思います。

 

外交における現実主義の真骨頂は、「not let the perfect be the enemy of the good」です。直訳すれば、「完璧さを良い目的の敵にしてはいけない」となります。これは「完璧さを求める余りにかえって良い目的の達成を阻害してはいけない(本末転倒してはいけない、角を矯めて牛を殺すようなことをしてはいけない)」という意味になります。英語では、「The best is the enemy of the good(最高を目指すことが良い目的の敵となる)」という言葉もあります。これはフランスの啓蒙思想家であるヴォルテールの言葉です。

 

 オバマ外交の「つまらなさ」こそがリアリズム外交の真骨頂なのです。

 

==========

 

オバマの外交政策は一言の引用でまとめられる(Obama’s Foreign Policy Summed Up in One Quote

 

エリアス・グロール筆

2015年2月9日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/02/09/obamas-foreign-policy-summed-up-in-one-quote/

 

 大統領に就任して6年、バラク・オバマの外交政策は多くの名前が付けられてきた。彼は「(野球で言う)単打と二塁打ばかり」と言われたり、側近の一人は「大統領は“後ろから率いる”という考えを信じている」と述べたり、「結局のところ、臭い物にはふたをするということしかしていない」と批判されたりしている。

 

 オバマに対する批判者たちは、オバマは無定見であり、人々を納得させられず、世界に対処するための戦略を持っていないと批判する。インターネットのニュースサイト「ヴォックス」とのインタビュー記事が月曜日に発表された。彼はインタビューの中で、これまでで最も簡潔に外交政策について語っている。

 

 オバマはヴォックスの編集責任者マット・イグレシアスを相手に次のように語った。「勝てるとなったらきちんと勝つ。それで物事はほんの少し良い方向に向かう。ほんの少し悪くなるよりはずっと良いでしょう。アメリカが衰退しているという考えに対して妥協している訳でもないし、私たちにできることは少ないと考える訳でもないんですよ。私がやっているのは、世界がどのように動いているかについての現実的な判定をするということなんです」。

 

 こうしたオバマの外交政策に関する考えに対しては、右派と左派からそれぞれ厳しく批判されている。ネオコン派右翼は、オバマ大統領はこうした考えを持っているから、国際的な舞台で「指導力」に欠けているし、オバマ大統領がどのように指導力を発揮すべきかということを議論することすらできない、と主張する。人権活動家たち左派は、オバマが勝利を確実なものにしようとして行動することで、エジプトやミャンマーの政府と人権状況に関して妥協してしまっていると批判する。

 

 オバマがいみじくも喝破しているように、この議論は、アメリカがどの程度世界の出来事に対して影響を与える能力を実際に有しているのかということに行きつく。アメリカの力は無制限ではないと認めることはアメリカ政治では受け入れがたい主張である。オバマを批判する人々は、世界のあちこちで火の手が上がっているのに、オバマ大統領は慎重すぎるので、絶好の機会を失ってしまっていると主張している。そして、オバマ大統領は「アメリカは偉大である」という考えを放棄していると批判している。中東にアメリカの意向に沿う民主政体を導入しようとして失敗したイラク戦争を経験して、オバマ大統領は、革命ではなく穏健な改良を目指す哲学を追い求めているのだ。

 

 オバマは次のように語った。「素晴らしい外交政策の目標は、ヴィジョンと大きな希望、そして理想を持つことだと思います。しかし、同時に世界をあるがままに認識し、その状況を確認し、どうすれば以前よりも少しでも改善できるか、そのポイントを理解することもまた重要だと思います。完璧を求めるのではなく、より良い状況を求めるということになると思います」。

 

 シリア内線では20万人の死者が出ている。ウクライナ東部ではロシアが支援している反体制運動に巻き込まれている。イスラム国はシリアとイラクの大きな部分を支配している。こうした状況で、世界の「より良い部分」に目を向けることは難しい。オバマは、「この惑星の進む方向は、暴力の削減、寛容の増大、争いと貧困の減少である」と発言している。それぞれの危機について、人々はオバマが何もしないことで状況が悪化していると批判している。しかし、彼らはアメリカがこれらの危機がコントロール不能に陥る前に良い方向に導くだけの力を持っているはずだと単純に確信しているのだ。

 

 オバマが毎日直面し対処していることについて、何かを言うことは本当に難しい事なのだ。彼は次のように語った。「私の許には人々の死亡、破壊、紛争、無秩序に関する分厚い報告書が届けられます。私は毎朝、この報告書を読みながら朝のお茶を飲んでいるのです」。

 

(終わり)







野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

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