古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:佐藤優

 古村治彦です。

 昨年12月27日に刊行した、私の最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を、佐藤優先生が『週刊ダイヤモンド』の「佐藤優 知を磨く読書」コーナーでご紹介くださいました。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

雑誌の86ページに掲載されています。コンビニでは場所によって置いていないところもありますが、駅のキオスク、書店にはありますので、是非お読みください。『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』の第3章で取り上げた、ウクライナ戦争に関する分析について「秀逸だ」「説得力がある」と評価していただきました。佐藤先生、まことにありがとうございます。

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 発売から2カ月が過ぎていますが、大型書店ではまだ購入できます。以下の写真は、2月中旬に私が、東京・池袋にあるジュンク堂書店と東京・新宿にある紀伊國屋書店本店を訪れた際に撮影しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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ジュンク堂書店「陰謀論」コーナーにて

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紀伊國屋書店「話題の本 アメリカ」コーナーにて

 (終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 今回は副島隆彦先生と佐藤優先生の共著『欧米の謀略を打ち破り よみがえるロシア帝国』(ビジネス社)が2022年10月21日発売になります。

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欧米の策略を打ち破りよみがえるロシア帝国

 以下に、まえがき、目次、あとがきを貼り付けます。参考にしていただき、是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

(貼り付けはじめ)

まえがき 佐藤 優

今年、2022年は歴史の分水嶺となる年になった。

まず、国際秩序に大きな影響を与えたのが、2月24日のロシアによるウクライナ侵攻だ。

日本の論壇がウクライナ応援一辺倒になっている状況で、副島隆彦氏は、ロシアのプーチン大統領が正しいという立場を鮮明にした稀有な知識人だ。この点、私は副島氏ほど腹が据わっていない。ロシアにどのような理屈があろうとも、武力侵攻はウクライナの主権と領土の一体性を毀損する国際法違反行為で正しくないと考えている。

他方、私はウクライナのゼレンスキー政権を応援する気持ちにはならない。この政権のウクライナ民族至上主義、ステパン・バンデラのようなナチス・ドイツ協力者を英雄視する姿勢(それが現代のネオナチであるアゾフ連隊の思想的基盤になっている)、18歳から60歳までの男性国民の出国を禁じ、最後の1人まで戦えという姿勢にはまったく共感を覚えない。

そもそも、ロシア政府とウクライナ政府が公式に合意した「第2ミンスク合意」に基づいて、ウクライナのルハンスク州とドネツク州における親ロシア派武装勢力が実効支配している地域に、ウクライナが特別の統治体制を認める憲法改正を行う。そして、この地域で国際的な監視団の入った自由選挙を行い、その民意に基づいた解決をすれば、今回の戦争を避けることはできた。しかし、ウクライナは頑(かたく)なに「第2ミンスク合意」の履行を拒否した。その結果、2月24日にロシアによる侵攻を招いたのである。

その後、ロシア軍と親ロシア派武装勢力が実効支配するルハンスク州、一部地域が実効支配されているドネツク州、ザパロジエ州、ヘルソン州で、ロシアとの編入に関する住民投票が9月25〜28日に行われ、「編入賛成」が圧倒的多数だった。プーチン大統領は9月30日に、これら4州の併合を決定した。

地政学的に、ウクライナはロシアと西側(ヨーロッパ諸国+北米諸国)の緩衝地帯である。このような国が、NATO(北大西洋条約機構)というアメリカを中心とする軍事同盟に加わることも、ロシアと軍事同盟を組むことも、地域の緊張を著しく強めることになる。

このように、ウクライナ戦争の将来を予測する際には、地政学的要因が重要になる。地政学を無視して、自由と民主主義というイデオロギーによってウクライナ戦争を強引に解決しようとしているのがアメリカだ。副島氏はアメリカ政治の専門家だ。ネオコン(新保守主義者)の力によって民主主義を世界に拡散するという思想がいかに危険であるか、と以前から警鐘を鳴らしていた。

副島氏は、ドナルド・トランプ前大統領を支持する姿勢を鮮明にしている。たしかにトランプ氏が大統領になったほうが、棲(す)み分けを認めるので、中国、ロシアなどと安定的関係が構築できると思う。アメリカ政治の内在的論理を知る上で、私は副島氏から多くの知的啓発を受けた。この対談における私の貢献は、日本や欧米でほとんど報じられていないロシアの論理について詳しく紹介したことだ。

副島氏は、ウクライナ戦争におけるイギリスの情報操作、謀略に注目する。この点について、本文でも登場するロシア政府系テレビ「第1チャンネル」の政治討論番組「グレートゲーム」が、2022年9月12日の放送で興味深い見方を示しているので紹介する。

* * *

ドミトリー・スースロフ(高等経済大学教授):今日(9月12日)、プーチン大統領は閣

議で西側によるロシアに対する経済制裁は機能していないと述べた。この状況でアメ

リカはウクライナにおける軍事紛争を最大限に引き延ばそうとしている。

 先週末(9月8日)、この関連で3つの出来事があった。バイデン米大統領がG7首脳とウクライナへの軍事的、経済的援助のためのビデオ会議を行った。同日、ブリンケン米国務長官がキエフを訪問し、22億ドルの長期的軍事資金提供を約束した。同日、ドイツのラムシュタイン空軍基地で、オースティン米国防長官が支援国会合で6億7500万ドルの短期支援をウクライナに対して行うと述べた。

 これらから、最低限3つの事柄が明らかになった。

第1は、より攻撃的な重火器をウクライナに提供する意思をアメリカが持っているということだ。9月12日の『南ドイツ新聞』が、米国防総省がウクライナに最新型の戦車を提供する用意があると書いている。

第2に、アメリカがより直接的に紛争に関与しようとしていることだ。『ニューヨーク・タイムズ』は、ハリコフにおけるウクライナ軍の攻勢について、アメリカがウクライナを助けたと報じている。

第3に、この紛争に対するアメリカの実際的関与が、公式に表明されているよりも、はるかに大きいということだ。「ブルームバーグ通信」(9月9日)が報じたところによれば、アメリカはウクライナにかなり以前から公表せずに、GPSによる精密誘導弾エクスカリバーを供与していたということだ。

 われわれは、アメリカのこういった傾向とそれがもたらす結果について、「国益のためのセンター」所長のドミトリー・サイムズ氏、対外情報庁(SVR)中将で戦略研究センター前所長のレオニード・レシェトニコフ氏と話し合いたい。

サイムズさん、私が尋ねたいのは3番目の点についてだ。アメリカは言うこととやることが異なっている。この紛争の基礎になっているのが大きな噓だ。それはキエフ当局だけではない。ウクライナ政府が噓をつくということについて、われわれは幻想を持っていない。

問題はアメリカとNATOだ。武器の供与だけでなく、極めて多くの疑念がある。まったく信頼できない。この状況で、ロシアがアメリカやNATOとなんらかの合意を達成することができるのだろうか。

ドミトリー・サイムズ(米シンクタンク「国益のためのセンター」所長、米国籍):スースロフさん、「戦争による最初の犠牲は真実である」という俚諺(りげん)がある。レシェトニコフさんもこの言葉に賛成すると思う。

敵と情報を共有することは頭の良い者がすることでない。意図的な情報操作がある。われわれはここを攻めると見せかけて、別の場所に攻め込む。有名なのはソ連によるベラルーシ進攻作戦だ。ソ連は意図的にドイツが真実と異なる印象を抱くようになるような情報を流した。

 戦時には、中途半端な真実、あるいはまったく真実でない情報を流すことがある。現在行われている意図的な情報操作は、民主主義を唱道している文明的国家には馴染まない。レシェトニコフさんは、この種の問題についての専門家と思うが、これは英情報機関MI6(エムアイシックス)にとっては通常のことではないのだろうか。

MI6は定期的にインテリジェンス情報を公表している。これはプロパガンダ(宣伝)の要素が強い。これはインテリジェンスの機能と矛盾する。プロパガンダかインテリジェンスか、どちらかを選ばなくてはならない。インテリジェンスであり同時にプロパガンダであるということは困難だ。

ここで米NBCの報道を見てみよう。アメリカが、どのように情報キャンペーンを展開しているかについてだ。

【番組での掲示】

過去との訣別。アメリカはロシアとの情報戦を展開するにあたって、疑わしいインテリジェンス情報を用いている。

多くのアメリカの官僚が、アメリカは信頼性の高くない情報でさえ武器として用いていると述べている。それは以下の思想に基づいている。クレムリンの戦術を阻止し、無効化するためには、ロシアの戦争キャンペーンを困難にしなくてはならない。モスクワの宣伝を妨害し、ロシアが現下の軍事行動に関連して、国際世論への影響を決定づけることがないようにしなくてはならない。ケン・ディラニアン記者、2022年4月6日、NBCニュース

 スースロフさん、1970年代に私がソ連からアメリカに移住してそれほど時間が経っていないときのことだった。私は戦略研究所で働いていた。そして週一回、「ラジオ・リバティー」(米議会が資金を提供する宣伝放送)に原稿を提出していた。

この放送局はソ連に対する敵対的姿勢を公にしていた。私はこんな指示を受けた。まずソ連指導部に対して侮辱的な表現をしてはいけないということだった。それから最も重要なのは、明白な噓をついてはいけないということだった。偏向した情報や正確でない情報も流してはいけないと言われた。

現在、複数のチャネルでさまざまな情報がモスクワに伝えられているが、プロパガンダの嵐のようだ。米国家レベルのチャネルでは、すべての人が同じことを言っている。そのようなことが国家から要請されているわけでもないのに、誰もがプーチンと闘おうとしており、ロシアとの闘争に従事している。少なくとも私にとってこれは不快な状況だ。

* * *

本書では、戦時においてあらゆる国は情報操作を行うという前提で、報じられた内容から真実とそうでない事柄を区別するよう私も副島氏も努力した。2人のあいだで、情報の評価が異なる箇所では、そのことがよくわかるように書いた。

内政に関しては、7月8日の安倍晋三(あべしんぞう)元首相が銃撃され、死亡した事件について扱った。本件に関しては、安倍氏に対する政治的評価のみならず、事実認定についても2人の見解にかなりの対立がある。この点についても無理に調整せず、認識と意見の違いが鮮明になるように努力した。

日本の危機はこれから一層深刻になる。危機から抜け出すためのヒントが本書には多々詰まっていると自負している。

 本書を上梓するにあたっては、ビジネス社の大森勇輝氏、フリーランス編集者・ライターの水波康氏にたいへんお世話になりました。どうもありがとうございます。また忍耐強く私の話に付き合ってくださった副島隆彦氏にも深く感謝申し上げます。

2022年9月23日、曙橋(東京都新宿区)の自宅にて

=====

『欧米の謀略を打ち破り よみがえるロシア帝国』 目次

まえがき 佐藤優 ……

第1章 安倍元首相を殺したのは同盟国アメリカである

世界的な流れのなかで起きた安倍暗殺事件と統一教会排除の動き

山上徹也は本当に安倍元首相を殺害したのか? ……20

〝おもちゃの銃〟と消えた銃弾 ……25

安倍暗殺事件で本当にベネフィットを得たのは誰か ……29

歴史の必然で分裂し始めたアメリカの対日戦略

アメリカ国務省内で起きている激しい対立 ……33

キーパーソンはマーク・ナッパーと福田達夫 ……36

日本の害毒と化した岸田政権 ……39

次のターゲットは竹中平蔵か ……42

追悼文に表れたロシアの安倍評価 ……45

サハリン2新会社設立のポイントはシェル外し ……48

日本は国際政治のゲームに参加できる立場ではない ……52

第2章 日本では絶対に報じられないウクライナ戦争の過去・現在・未来

二度と元には戻れない世界秩序を壊した蛮行

ステパン・バンデラとは何者なのか? ……56

世界が懸念する危険なウクライナ民族主義 ……59

緒戦で欧米の罠にはまったプーチン ……63

心理戦のために仕込まれたゼレンスキー ……66

親友サーシャが教えてくれた「偽旗作戦」の実態 ……70

世界中で行われた「フォーフィチャー」と「シージャー」 ……73

世界のルールを根本的に変えた国家による資産収奪 ……76

ブチャの虐殺を誰が行い、誰が殺されたのか? ……78

虐殺事件後に大きく変わった軍事支援の量と質 ……81

家族と名誉のためなら死もいとわないロシア人 ……84

開戦と同時に激化したプロパガンダ戦と集団洗脳

ロシアにとって戦争の転換点は5月18日 ……90

「佐藤さん、あなたは気持ちも頭もロシア人と通じている」……93

戦争中に行われた集団洗脳の実態 ……95

レーニンに始まるロシア流宣伝と扇動の違い ……99

なぜかロシアのテレビに出るキッシンジャー系知識人 ……102

専門家の分析より大事な政治家が煽る〝風〟……105

第3章 「必勝の信念」から始まる戦争分析の大きな過ち

絶対に信じてはいけない日本のロシア専門家たち

完全に空論と化した「核抑止理論」 ……110

近代500年を支配し続けてきたディープステイト ……113

沖縄人の痛みとウクライナ人の想い ……115

戦争終結へ向けての3つのシナリオ ……117

イギリスが行う卑劣な諜報戦略 ……121

『国民の僕』で描かれたウクライナ国家の終焉 ……125

ノイズにすぎない日本のメディア情報 ……129

正しかった橋下徹の〝特異〟な考え方 ……132

世界を動かしているのはカネではなく政治と思想

データが細かいロシア、大ざっぱなウクライナ ……136

国連憲章にのっとったロシアの軍事行動 ……137

戦場に転がっている兵士の死体の意味 ……140

戦争犯罪人に仕立てられたシベリアの整備工 ……142

政治を上から動かしているのが思想 ……146

第4章 アメリカとイギリスによる戦争犯罪の恐るべき真実

あらかじめセットされていたウクライナという時限爆弾

8年前からウクライナに介入し続けているアメリカ ……150

なぜ同時期にマイダン革命が起き、ISが出現したのか? ……154

ヴィクトリア・ヌーランドとネオコンの思惑 ……160

トッドが語ったウクライナという国をめぐる〝常識〟……165

『ひまわり』と『隊長ブーリバ』に描かれた真実 ……169

隠れた危険国家ポーランドの実態 ……173

ポーランドを巧妙に利用するイギリス ……176

「4州併合」の背景にあったウクライナ軍の蛮行 ……180

時間とともに瓦解していく「西側」という正義の旗印

暴落しないルーブルのひみつ ……187

ロシアが忌み嫌い続けるドイツ ……190

本当のワルはイギリスとバチカンだった ……191

北欧とナチスのあからさまな繋がり ……195

すでに崩壊しているAUKUS ……199

第5章 ウクライナ戦争を乗り越え復活するロシア帝国

中国とロシアの主導で塗り替えられる勢力図

古くて新しい帝国と帝国のぶつかり合い …… 204

中国はロシアを屈服させるのか? ……207

ロシア独特の帝国の作り方 ……211

アメリカから英中に移行する金相場の覇権 ……214

始まったザ・ウエストとザ・レストの戦い ……217

ディープステイトと優生学という大問題 ……220

世界中が見誤った「哲人王」プーチンの底力

実はトランプはそれほど強くない ……227

中東とロシア、ウクライナ関係のカギは食料 ……230

イスラエルのあいまい戦略とイランの核武装 ……233

ゼレンスキー暗殺の可能性 ……234

トラスのイギリスでは何もできない ……238

G7首脳を返す刀で斬り捨てた裸のプーチン ……241

ロシアは勝つが、プーチンのやり方は間違っている ……247

あとがき 副島隆彦 ……253

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あとがき 副島隆彦

この本は、私と佐藤優氏の7冊目の対談本である。世界がめまぐるしく動く。時代の転変の中で、次々と押し寄せる暴風雨の中で、自分の考えも木の葉が舞うように飛び散る。

それでも個々の人間の命は有限である。ハイデガーが言った人間という現存在[げんそんざい](ダーザイン)である。佐藤優氏も私も、もうそんなに長くは生きないと思う。佐藤氏は、大病をいくつも抱え、手術で次々と乗り越えて、それでも旺盛に執筆活動をしている。この人は、普通の人間とは違う。恐るべき生命力を持っていて驚嘆する。

 本書の「まえがき」で佐藤氏は、「今年(2022年)を歴史(世界史)の分水嶺」ととらえた。ウクライナ戦争の戦況を大きく描き、そこにロシアの最高級の知識人の名を4人挙げている。彼らがロシアのテレビ討論番組に出演して率直に語る内容が、どれほど重要か、佐藤優の解説が私たちに教えてくれる。

①ドミトリー・スースロフ(政治学者) ②ドミトリー・サイムズ(政治分析者) ③レオニード・レシェトニコフ(SVR 対外情報庁) ウラジーミル・ソロヴィヨフ(番組司会者)の4人である。

②のドミトリー・サイムズ氏は、何と、ロシアから政治亡命して、今はアメリカの国家情報部のために働いている。佐藤氏が、「このサイムズ氏は、米国務省のキッシンジャー系の知識人です」と教えてくれた。

 ④のソロヴィヨフは、ロシアで一番人気のある政治評論家であり、自分のテレビ番組を持っている。ロシア国民を、ウクライナ戦争でのロシアの勝利へ向けて、力強く啓蒙している。だから、ウクライナ政府が放つ殺し屋(ヒットマン)たちに狙われている。

これらのロシア側の当代、最高レベルの知識人たちの堂々たる言論を、佐藤優が、この本で私たち日本人に解説してくれた。それをロシア語で聞き取って高度の価値判断(ヴァリュー・ジャッジメント)ができる。このことは、ものすごく重要なことである。佐藤優に、この任務をもっともっとやってもらわないといけない。

日本国内に溢(あふ)れかえっている、愚劣な、反(はん)ロシアまる出しの「ウクライナでロシアは負けている」の偏狭で浅薄(せんぱく)な煽動言論(軍事問題を含む)と、ニューズ報道ばかり、私たちは見せられている。

 世界政治の現実と真実は、それらとは全く異なる。

私たちは、安倍晋三の死で(7月8日)、じわじわと日本の国家体制に潜入(インフィルトレイト)して、乗っ取っていた気色の悪い反共右翼の特異な宗教団体の束縛(そくばく)と洗脳から自由になって、私たちの国(くに)の存亡の危機を本気で考えなければならない。

担当編集者たちへのお礼は佐藤優が書いたので、私は繰り返さない。

2022年9月

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 古村治彦です。

 副島隆彦先生と佐藤優先生の対談『「知の巨人」が暴く 世界の常識はウソばかり』が2022年2月1日にビジネス社から発売になります。以下にまえがき、目次、あとがきを貼り付けます。参考にしていただき、ぜひ手に取ってお読み下さい。

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「知の巨人」が暴く 世界の常識はウソばかり

(貼りつけはじめ)

まえがき

佐藤優

本書の内容自体は読みやすい。そこで屋上屋(おくじょうおく)を架すようなまえがきを書くことは止め、共著者である副島隆彦氏に対する率直な認識を記すことにする。

私は、ほんものの「知の巨人」は副島氏であると昔から思っている。制度化された学問(いわゆる大学や学会での活動)とは別の、在野にこそ真の知性が宿っている場合のほうが多いからだ。

ちなみに副島氏も、ある時期まで制度化された枠組みの中で教育と研究に従事した。1998年から常葉(とこは)大学教育学部の教授を12年間つとめた。常葉大学は、主に静岡県で活躍する人々を養成する伝統ある大学だ。副島氏のもとで学んだ数百名の学生が、現在は教壇に立っていると思う。大学教授時代の話を尋ねても、副島氏は「研究室で学生と一緒にたこ焼きを作っていた」などと、本質をはぐらかす答えをするのであるが、それは副島氏がシャイだからだ。

情熱を込めて教育を行い、学生たちとも親しく交遊していたのだと私は推察している。副島氏の講義から触発された人たちは、現在、社会の中堅として活躍している。

私も2006年から、母校の同志社大学神学部や生命医科学部、学長が塾長をつとめる学部横断的に学生を集めて精鋭教育を行う新島(にいじま)塾などで教育を手伝っているが、悪戦苦闘している。それには大きく分けて2つの原因がある。そして、その2つの原因は緊密に絡み合っているので解きほぐすのが難しい。

 第1は、高校2年から文科系と理科系にクラスが分かれてしまうので、中等教育(中学は前期中等教育で、高校は後期中等教育である)で必要とされる知識が身に付かないまま大学生になっている人がほぼ全員だという、異常な状態だ。

 私は、高校教育の現場がどうなっているかに関心を持ったので、2018〜20年、母校の埼玉県立浦和高校でも教壇に立った。そこで1年終了の時点で、数学に自信がない生徒が文科系クラスを選択しているという安易な進路選択の状況を見て愕然(がくぜん)とした。私が浦高(うらこう)で教えるようになった若干の成果は、自らの知的関心と将来の夢をよく考えて、文科系、理科系を選択する生徒が増えたことだ。

 話を大学生に戻す。文科系の大学生が総じて苦手感を持つのが数学だ。しかし、数学は経済学、経営学はもとより、社会学や文学や神学(たとえば聖書のテキストマイニングに際しては統計知識が必要)においても不可欠になる。

 高校で文科系を選択すると、数IIBまでは履修することになっているが、これは建前に過ぎず数IAの内容ですら怪しい場合も多い。これは学生たちの責任というよりも、このような状況を放置してきた大人たちの責任である。私は自分が教える学生に対しては、数IIIまで独学が難しければ、通信教育を受けるか学習塾に通う形でもいいので、きちんと勉強するように、と指導している。

 理科系の大学生に関しては、一般的に歴史が弱いと見られているが、これは実態に反する。高校レベルでの現代文が理解できているならば(要は論理的な文章を正確に読む訓練ができていること)、歴史書を読めば理解できるので、理科系の学生でも問題はない。

 むしろ、国公立大学を受験する理科系の学生は、暗記する内容が少ないという理由で政治経済と倫理を選択する傾向がある。理科系の学生のほうが政治や哲学については、入試で日本史、世界史を選択した文科系の学生よりも正確な知識を持っている場合もよくある(受験勉強は意外と真の教養につながるのである)。

 理科系の学生が圧倒的に弱いのは英語だ。理科系の場合、最先端の論文のほとんどが英語で書かれている。また論文を書く場合も、英語で書くのが通例だ。しかし、高校段階でも大学の一般教養でも、そのような英語のノウハウを身に付けるような講義は開講されていない。一部の外国語のセンスが良い人以外は、大学の専門課程以降でも英語の習得に、かなりエネルギーと時間を費やしている。

 あるいは英語文献を扱うのを諦(あきら)めて、日本語文献の範囲内で研究を行う学生もいる。これだと、せっかく優れた問題意識と思考力があっても英語の壁に阻(はば)まれて、学生の可能性を十分に活かすことができない。

 副島氏は、代々木ゼミナールで英語の名物教師をつとめていたことがある。実用英語の使い手(特に読む力)として副島氏は一級である。この分野での副島氏の業績を1つだけ挙げるとするならば、ジョン・J・ミアシャイマー/スティーヴン・M・ウォルト『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策1、2』(講談社、2007年刊)の翻訳だ。本書は国際政治を読み解く際の基本書だ。

 副島氏の国際関係観にも、ミアシャイマー流のリアリズムがある。私は外交官時代、ロシアとの関係に次いでイスラエルとの関係が深かった。現下、日本の論壇でもイスラエルの生存権を認めることから、中東問題については論じなくてはならないと考えている。

 ミアシャイマー氏の見解については、同意できる部分とそうでない部分があるが、副島氏が訳さなければ、私がこの本を読むことはなかったと思う。副島氏の翻訳によって、私の視界は以前よりも広くなった。

 さて日本の中等教育の構造的欠陥は、文科系、理科系に知を分断してしまうだけではない。定向進化を遂げてしまった受験産業の副作用として、試験により偏差値でランク付けされることで高校生、大学生の心が疲れてしまっていることだ。その結果、受験競争の勝者を含め、ほとんどの大学生が勉強嫌いになっている。

 副島氏は、ネットで「学問道場」を主宰している。サイバー空間を通じて、再び人々が知に関心を向ける場を作ろうとしている。私はプロテスタント神学という古い学問を基礎としているので、個別に知を伝授するという方法しか思いつかない。

 中世の神学部では教養課程9年、専門課程15 年が標準的な修業年限だった。私は19歳のとき、神学を学び始めたが、自分で神学的思考を操れるようになったのは40代後半になってからだった。大学院修了後は外交官になり、2002年5月に当時吹き荒れた鈴木宗男事件の嵐に巻き込まれ、東京地方検察庁特別捜査部に逮捕され、東京拘置所の独房に512日間勾留されたときも、神学の勉強だけはずっと続けてきた。

 私が神学部と大学院神学研究科で指導した学生で、研究職志望や牧師志望は1人もいなかった。官僚、新聞記者、スポーツ用品メーカーの国際部門などに就職していったが、いずれも、あと20 年は神学の研究を続ける心づもりでいる(裏返して言うと、そういう心構えを持つ学生だけを選んで指導した)。

 人間、一人ひとりの生命は有限だ。自分自身で知についてある程度の感触を摑(つか)んでから、他者にそれを伝達できる期間は20年もなかったという現実を、現在、末期腎不全(じんふぜん)と前立腺(ぜんりつせん)がんのダブルパンチを受けて闘病を余儀なくされている私としては、ひしひしと感じている。

ところで、副島氏には、「農村が都市を包囲していく」という毛沢東(もうたくとう)流の戦略があると私は見ている。だから、地方で日本経済を現実に支えている経営者を、副島氏は大切にしている。私の場合、得意分野が外交で、人脈も永田町(政界)や霞が関(官界)に偏ってしまう。この点でも、私は副島氏から多くを学んでいる。

 実政治に関して、副島氏は岸田文雄(きしだふみお)首相支持の姿勢を明確にしている。

   日本政治への、私、副島隆彦の一番大きな、最大の希望は以下のことだ。

岸田政権を支える岸田首相本人を含めた8人の有力政治家たちがいる。このまだ若い指導者たち(と言っても、もう皆、50歳、60歳台だ)たち8人(80歳台のひともいる)が用心深く団結することで、安倍晋三たちを自民党から追い出すこと。

   これが政権政党である自民党にとっての最大の目標である。普通の国民には理解されないが、この自民党内の党内闘争、派閥抗争こそは、今の日本政治の中心である。

   この反安倍で、お互いの目くばせと無言の表情だけで、じわーっと結集す8人の政治家の名前は今は書かない。

   自分たちの粘り腰のいかにも日本人らしい慎重さで、自分たちのボロと弱点を露出することなく用意周到に準備する。そして愚劣極まりない、しかし手ごわい安倍晋三 の勢力を、計画的にお山の大将に祭り上げる作戦で孤立させて、やがて自民党から追放すること。これが今年1年の日本政治の最大の見せ場となる。

   反安倍で考えを同じくする有力政治家8人が結集することで、安倍集団を自民党内で孤立させ、のたうち回らさせる。そして安倍たちが自ら暴走、激発することで、実に稚拙で大人げない集団だ、ということが国民に丸見えになるので、彼ら60人ぐらいを自民党から追放する。何故なら安倍党は、すでに特殊な政治宗教団体に純化しているから、自民党と相容(あいい)れないのである。

   それでは自民党の大分裂になる。とてもそんなことは起きない、と考えるのが普通の人々だろう。

   私、副島隆彦は、自分が持つ予言者(プレディクター)の能力で、これから起きることを予想、予言する。世界情勢が一段と厳しくなれば、その影響が日本にも必ず押し寄せる。

   それは、日本政治の担当責任者たちへの圧迫となって必ず表れる。それは、支配政党内の政治抗争となって浮かび上がる。これが日本政治を待ち構える、今年最大のドラマであり、国家スケジュールである。

             (2022年1月2日 副島隆彦の学問道場「今日のぼやき」)

 私は、岸田政権の本質がいまだ何であるかよく理解できないでいる。安倍晋三(あべしんぞう)氏に関しては、現実主義的な北方領土交渉を行ったことを高く評価している。他方、現在、自民党内で世代交代をめぐる暗闘が繰り広げられているという認識を副島氏と共有している。副島氏は、自らを予言者(プレディクター)であると規定するが、国際情勢の変動が日本の支配エリートの分断をもたらすのは必然的現象なのだ。

 最後に私と副島氏の思想に関する共通認識について触れておく。それは若き日のカール・マルクス、フリードリヒ・エンゲルスに共通している。

 

   思想の歴史が証明していることは、精神的生産が物質的生産とともに変化するということでなくて、なんであろうか?あらゆる時代の支配的な思想は、いつでも支配階級の思想にすぎなかった。

(カール・マルクス/フリードリヒ・エンゲルス『共産党宣言』プログレス出版所、モスクワ、1971年、69頁)

 本書で批判の対象となっているのは、米中ロの地政学、戦後日本のリベラリズム、日本共産党のスターリン主義などを含め、現代の「支配的な思想」である。こういう思想が普及することによって、利益を得る集団があるということだ。私と副島氏は、1848年にマルクスとエンゲルスが行った作業を、2022年の日本で少しだけ形を変えて行っているにすぎないのである。

 本書を上梓するにあたっては、編集者でライターの水波康氏、(株)ビジネス社の大森

勇輝氏にたいへんにお世話になりました。どうもありがとうございます。

2022年1月12 日、入院中の都内某大学病院の病室にて

佐藤優

=====

『「知の巨人」が暴く 世界の常識はウソばかり』  もくじ

まえがき 佐藤優 3

第1章 世界の新潮流を読む

●低成長・マルクス主義の時代

時代の最先端思想は帝国から流れてくる 22

人間の欲望自体を縮小させるという発想 26

デフォルトとなった価値相対主義 29

●マイルドヤンキーが日本の主流

「ヤンキーの虎」が日本の新潮流 36

日本のボリシェヴィキはマイルドヤンキー 38

第2章 戦後リベラルの正体

●構造改革派の思想と田辺元の敗北

「佐高信の正体」と構造改革派 44

構造改革派の思想を生んだ久野収 49

田辺元と「悪魔の京大講義」 54

●日本共産党の正体

日本共産党は、なぜ危険なのか 61

批判されるべき「貧乏人平等主義」 68

日本共産党の暴力革命必然論 70

スパイだった野坂参三――日本共産党最大の事件 79

一国共産主義へと導いた宮本顕治の達観 86

●新左翼とは何だったのか

70年代は殺し合いの内ゲバ時代 94

東大闘争――過激派たちの末路 99

新左翼の誕生とセクトの分裂 102

ソ連から流れた左翼陣営へのカネ 105

繰り返すべきでない新左翼運動の悲劇 108

第3章 米中ロの世界戦略と日本の未来

●アメリカの敗北で起爆するイスラム革命

日本政府のアフガン政策は間違っていなかった 112

インテリジェンス分析の弱さがアメリカ敗北の一因 118.

ロシアが懸念する中央アジア・フェルガナ盆地 123

●宗教対立と戦略なきバイデン政権

ローマ教皇のイラク訪問が意味するもの 131

綱渡り状態が続くイスラエルの内政 135

●中国の台湾侵攻と日本の未来

中国は台湾に侵攻できない 139

日本は中国とケンカすべきではない 144

実現の可能性がある北方領土の二島返還 149

日本は属国のままか、あるいは帝国になれるのか 152

国家を破綻させる「革命」の恐ろしさ 156

欲望の肯定が生み出した中国の巨大な成長 160

平均賃金で韓国に抜かれた日本の最重要課題 165

第4章 ディープ・ステイトの闇

●ディープ・ステイトとは何か

ディープ・ステイトの成り立ちと日本での実態 170

MMT理論とコロナ給付金で崩壊する日本 175

イベント屋と化したディープ・ステイト 180

●世界を支配する闇の真実

ヒトラーはイギリスのスパイだった! 183

ヒトラー暗殺未遂事件が生んだ真の悲劇 186

第5章 間違いだらけの世界の超常識

●世界はデイズム(理神論)に向かっている

この世は物質と霊魂でできている 194

ヘーゲルとマルクスの間違いとは何か 202

●学問の最先端を理解する

形而上学がすべての学問の土台 209

西洋の学問の最上位は神学である 215

「我思う」から「考える葦」、そしてスピノザへ 219

人類を悲惨な状況に追い込んだルソーの絶対平等思想 223.

ドストエフスキーが見抜いた資本主義の本質 229

ポストモダン、構造主義が消えた必然 235

●佐藤優と副島隆彦の生き方哲学

人間には特権的な地位がある 239

キリスト教がいまだに強い真の理由 242.

あとがき 副島隆彦 246

=====

あとがき

副島隆彦

佐藤優氏との対談本は、これで7冊目である。この本の書名は「知の巨人うんぬん」となっている。私は、知の巨人という奇妙な、気色の悪い言葉を嫌悪(けんお)する。ところが、何とこれが書名になってしまった。知の巨人というコトバは、出版業界の宣伝文句として、文藝春秋のライター上がりの立花隆(たちばなたかし)に奉(たてまつ)られた 冠(かんむり)言葉だ。立花隆は、CIA(米中央情報局)の手先となって、愛国政治家の田中角栄を謀略政治言論で突き殺した当人である。

 この対談本の相手の佐藤優は知の巨人であろうが、私はそうではない。私は九州の田舎から出て来て何とか言論人になろうと、貧乏の中で何のコネもなく自力で這(は)い上がって来た人間だ。だから私は、この世の全ての特権階級、言論お公家(くげ)さま集団が大嫌いである。

 私は、世の中で隠されている諸真実を本に書いて暴き立てることで、出版業界で何とか徒食(としょく)して来た。私は自他共に認める〝真実暴きの言論人〞である。

 佐藤氏は、まえがきで私が静岡の私大で12年間教えたことを、私に何か人生戦略が有るかのように書いてくれている。そんなものは、ありません。私は、年収1000万円の収入が欲しかったから大学教師をしていただけだ。私のアメリカ政治研究の能力を評価してくれた政治家が、推薦してくれた。その前の13年間の予備校講師も、ゴハンを食べる(生活費を稼ぐ)ための必要でやっていたのであって他に理由はない。

 私は、世の中のごく普通の人々の悲しみと苦しみが分かる人間である。私は、権力者や支配者層の人間たちと闘い続けるから、彼らに同調しないし、身を売らない。

 佐藤優は、ロシア語とドイツ語から、宗教(神学)と思想の両方を刻苦勉励して習得した。私は英語しかできない。佐藤優は、日本では稀有な世界基準 world values(ワールド・ヴァリューズ)で、高等知識を取り扱うことができる稀有な思想家である。だから、私は佐藤優と話が合う。互いの知能(インテレクト)を理解し合っている。こういう本物の知識人は、今の日本にあまりいなくなった。昔は少しいた。今の日本の知識人(学者)階級の知能低下は目に余る。ヒドいの一語に尽きる。

 本書のP213でアリストテレスの主要な著作の meta-physica(メタ・フィジカ)と physica(フィジカ)(物理学 ×自然学ではない)の区別を論じた。メタフィジカの「メタ」meta-は、普通言われているような物質世界(フィジカ)の「上」とか「前」とか「後(あと)」ではない。Meta-は「下」である。フィジカの下に有る土台のことだ。

  このことで、私は佐藤氏と一致した。メタ meta-は、この現実の世界 physica(フィジカ)の下に有って、それを支える基礎、土台のことである。このことを2人で確定した。

 meta-physicaを、明治の初めに×「形而上学(けいじじょうがく)」(形あるものの上[うえ]にある学問)と訳した。このことの大間違いが、本書ではっきりした。これは、日本における西洋学問の輸入、移植の際の欠陥、大(だい)誤り、大失敗の指摘と訂正ののろしとなるだろう。

 私が、この30年間抱えてきた学問研究上の疑問の苦悩を佐藤優に一つ一つ問いかけて、

「そうですよ」「そうですよ」と頷(うなず)き(合意)をもらえたことが大きい。日本国におけるヨーロッパ近代学問(これがscience [サイエンス]。P217の表)の受容上の数々の大誤りが、本書で訂正されていった。このことは、日本における学問と思想の大きな前進である。

  私は、「ウィキペディア」を強く疑っている。インターネット上に開かれて、誰でも、どこからでも、自由(フリー)に読める百科事典(エンサイクロペディア)を名乗っている。現代の新たな人類の知識(知能)の管理組織である。その危険性に私は、警鐘を鳴らしてきた。アマゾン、グーグル、アップルら米 big tech(ビッグテック)の危険性と同じだ。だが、今のところ誰も私の主張を聞いてくれない。

 ウィキペディア Wikipediaの、あの膨大な文章は一体、誰が、どんな組織で書いているのか分からない。ウィキペディアンたちがボランティアで書いてます、は人々を欺(あざむ)く謀略言論である。書き手は名無しのゴンベエだ。文章責任(文責[ぶんせき])が全く明らかでない。公共の知のふりをした闇に隠れた支配組織だ。

 ウィキペディアは、80 年前(1938年)にイギリスの大(だい)SF作家のH(エイチ)・G(ジー)・ウェルズがぶち上げた world brain(ワールド・ブレイン)「世界頭脳」というアイデアを元(もと)にしている。この世界頭脳は、世界中のどんな貧しい人々も、ただちに習得できる公共知の提供の構想だった。

 ところが、この世界頭脳(ワールド・ブレイン)は危険である。人類を上から支配する目に見えないビッグ・ブラザー big brotherの片割れである。その現在の姿がウィキペディアである。それなのに、日本の出版業界と知識人層は疑うことも知らず、このウィキペディアにべったりと依存している。だから、出版業界が衰退しジリ貧になるのだ。

 佐藤優と、次の対談本では、これらの問題を話し合いたい。

佐藤優氏が、まえがきで献辞を書いたので私は繰り返さない。

2022年1月

副島隆彦

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 副島隆彦・佐藤優著『』(日本文芸社)が発売になりました。以下にまえがき、目次、あとがきを掲載します。是非手に取ってお読みください。
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ウイルスが変えた世界の構造

(貼り付けはじめ)

「まえがき」

 バイデン政権下、米中緊張が一層強まる

                 佐藤優(作家・元外務省主任分析官)

 副島隆彦氏との共著は、これで6冊目になる。

 2020年は、歴史に残る年だった。この節目の年に副島氏と日本と世界の現状と近未来予測について、徹底的に議論することができた。

 政治情勢や国際関係の評価について、2人の評価が異なる部分があるが、その人の持つ情報、人生経験によって、同じ出来事が異なって見えることがあるので、この点については知的異種格闘技として楽しんでいただきたい。

 本書を読むにあたって押さえておいていただきたいのが時間概念だ。物事を観察し、理解する上で時間概念が死活的に重要である。副島氏も私も欧米的な時間概念で物事を見ている。なぜならそれがグローバル・スタンダード(世界基準)だからだ。

 ギリシア語では、2つの時間概念が存在する。第1は、流れる時間を表すクロノスだ。英語のタイムになる。第2は、ある出来事が起きる前と後では、歴史に断絶が生じるという意味の時間を示すカイロスだ。英語だとタイミングに相当する。

 日本にとって、2020年は3つの意味でカイロスだった。

 第1はコロナ禍だ。コロナ禍により、グローバリゼーションに歯止めがかかり、国家の壁が再び大きな意味を持つようになった。ステイホームで、経済が停滞した。リモートワークが導入されたが、その結果、成果主義が強まった。

 また、リモートワークができない職種に従事する人々の負担も増加した。教育でも一斉休校やリモート化によって、学校間の格差が拡大した。

 コロナ禍によって、国家間、地域間、階層間、ジェンダー間の格差が拡大した。この傾向は今後も続く。特に構造的に弱い立場に置かれた人が、社会的底辺に追いやられ、這い上がれなくなった。

 第2は、アメリカ大統領選挙で民主党のバイデン候補が当選したことだ。

 この対談は1年以上準備して行なったものだ。当初、われわれはトランプ氏が大統領に再選されるものと考えていた。しかし、コロナ禍によって状況が変わった。

 開票が終了し、バイデン氏が当選したとの公式結果が出てもトランプ大統領が不正が行なわれたと主張し、任期が終了した2021年1月20日以降もホワイトハウスに籠城するという見方をする人がいるが、その可能性は極めて低い。

 大統領任期を過ぎればトランプ氏はただの人になる。トランプ氏が権力の座に居続けようとすると、ホワイトハウスを、同氏を支持する人々と反対する人々が取り囲み、流血の危険が生じる。大統領警護部隊(シークレットサービス)や大統領の指揮命令下にあるコロンビア特別州の州兵が、違法行為となるリスクを冒してトランプ氏を防衛することは考えられない。

 トランプ氏は頭が良いので、そのような事態になる前にホワイトハウスから出て行く。米国の政府機構は権力の移行を淡々と行なうことになると思う。

 バイデン氏が大統領に就任しても米国内政の混乱は収まらない。トランプ氏を熱烈に支持した人々はバイデン大統領の正統性を認めない。さらに民主党支持者に関してもトランプ氏という共通の敵を失った後、団結が難しくなる。

 なぜなら民主党がアイデンティティーの政治を追求しているからだ。黒人、ヒスパニック、ジェンダー、エスニック・グループなど、自らが帰属する集団のアイデンティティーを最優先する人々が団結するのは至難の業だ。米国の社会的分断はさらに加速すると思う。外交に関して、米国と中国、北朝鮮との関係は、現在よりも緊張するであろう。民主党は、自由や民主主義という、人権といった価値観を軸に外交を展開する。

 トランプ大統領の場合、価値観よりも、自らの権力基盤を強化するための取引(ディール)を重視する。この例が、トランプ氏と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との3度の首脳会談だ。その結果、朝鮮半島での武力衝突を回避することはできたが、北朝鮮の核保有を米国が事実上、容認することになった。また、米国は北朝鮮の新型弾道ミサイル開発を阻止することもできなかった。

 バイデン氏は、トランプ政権よりも強硬な態度を北朝鮮に対して取ることは間違いない。北朝鮮も対米対決姿勢を強めるであろう。

 トランプ政権時代の対中国経済制裁は、バイデン政権になっても継続される。さらに中国におけるウイグル人への人権抑圧、非公認のキリスト教会に対する弾圧について、人権を重視する立場から、米国は中国に対する批判を一層強めるであろう。

 7月24日に在ヒューストン中国総領事館が閉鎖された際の米高級紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』の社説が情勢分析の上で参考になる。

 〈1つ懸念されるのは、中国政府が米国の新たな姿勢をトランプ大統領による選挙戦略の1つだ として切り捨てる恐れがあることだ。/それは過ちになるだろう。例えば、民主党は米国の対イラン措置を厳しく批判しているものの、トランプ政権が中国政府を攻撃しても、それを支持したり、黙認したりする姿勢を示している。

 この新たな姿勢は、ブルーカラーの有権者から産業界および安全保障分野のエリートに至るまでの層の間で、中国があまりにも長い間、罪を逃れ過ぎているとのコンセンサスが生まれつつあることを反映している。

 ジョー・バイデン氏が次の大統領になったとしても、その政権は、西太平洋の緊張した状況と、米国内における中国の影響力を標的として進められている多数のスパイ防止活動や刑事捜査を受け継ぐことになる〉

        (7月27日付『ウォール・ストリート・ジャーナル』日本語版)

 新型コロナウイルスによる感染症が中国の武漢から拡大していたことによって、米国の一般国民の対中感情が悪化した。それが政治問題と結びつき、中国を懲罰するタイミングに至ったとのコンセンサスが米社会で形成されている。バイデン政権下、米中緊張が一層強まる。日本との同盟関係を重視するという米国の基本的姿勢に変化はない。ただし、慰安婦問題や徴用工問題に関して、韓国のロビー活動に対する米政府の姿勢に変化が生じる可能性がある。

 ロシアとの関係についても、バイデン政権がウクライナ問題やベラルーシ問題を巡ってプーチン政権と緊張を高めるであろう。その結果、北方領土交渉の環境が悪化する可能性がある。もっとも米国は、トランプ大統領により生じたコロナ対策の混乱を収拾するのに今後2年間は集中し、日ロ関係に介入する余裕はないと思う。

 この時間を最大限に活用して、菅義偉首相がロシアのプーチン大統領と鋭意交渉を進めれば、北方領土問題解決の突破口が開けるかもしれないと私は考えている。

 第3は、8月末に安倍晋三首相が健康上の理由で突然辞意を表明し、菅義偉官房長官が首相に就任したことだ。菅氏は、安倍氏と比較すると、イデオロギー色が稀薄だ。プラグマティックな観点から生産性向上を志向することになろう。

 新自由主義的な規制緩和政策を菅政権が採択し、格差が拡大し、社会の分断が高まる可能性がある。さらに司法権、立法権に対する行政権の優位性が高まり、民主主義が機能不全に陥る可能性がある。

 以上の3点が現下日本の大きな問題であるという点については、副島氏も同じ認識と思う。ただし、個別の出来事に関する分析と未来予測はかなり異なる。読者にはこの差異を楽しんで欲しい。

 本書では、イエス・キリストの神性を認めないユニテリアンという教派について多くの頁が割かれている。ユニテリアンを理解することが国際政治の本質を掴む上で重要だという点で、副島氏と私の認識は完全に一致している。

 本書を上梓するに日本文芸社の水波康副編集長とグラマラス・ヒッピーズの山根裕之氏にたいへんにお世話になりました。

 白熱し、時には極論の応酬になった対談を見事に書籍にまとめあげることは、至難の業だったと思います。腹を割って話すだけでなく、腹の底にある宗教や信念体系にまで踏み込んだ議論をしてくださった副島氏にも敬意を表します。どうもありがとうございます。また、このチームで仕事をしたいです。

     2020年11月16日、曙橋(東京都新宿区)の書庫にて    佐藤優

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ウイルスが変えた世界の構造 もくじ

 まえがき バイデン政権下、米中緊張が一層強まる 佐藤優  1

 

1部 パンデミックで変わった世界 近代500年の終わりと内向の時代

アメリカに勝利した中国の全体主義 16

「アメリカの世紀の終わり」を発信した中国官営メディア 16

「自粛」という形で大政翼賛運動をやった日本 21

ショック・ドクトリンで脅された世界の民衆 27

カミュの小説『ペスト』から「神義論」を考える 32

ウイルスはどこからやってきたのか34

石正麗亡命説の真実 34

新型コロナウイルスの人工、人造説 40

余裕がなかったヨーロッパの対応 44

アフターコロナで世界はどう変わるか 49

コロナ後の金融危機と日本の政局55

菅義偉内閣はどうなるか 55

河井夫妻逮捕の裏側 62

日本共産党は赤旗を捨てよ 76

裏金作りの温床となる怪しい国際機関 81

北朝鮮情勢とアメリカのディープ・ステイト88

『愛の不時着』で描かれた『三丁目の夕日』の世界 88

北朝鮮と統一教会の濃厚な関係 95

チュチェ思想における初期マルクスの影響 99

ボルトンが暴いたトランプ政権の内幕 103

アンティファを操るのは誰か 114

アメリカ大統領選とアメリカ政治の行方125

アメリカ没落後の基軸通貨はどうなるか 125

飽きられ始めたトランプの「下品力」 137

トランプを支えるサザンバプテストたち 143

ヒラリー派は現在のリンカーンナイト 150

2部 アメリカの「国教」 ユニテリアンとは何か 世界帝国を支えた宗教思想の秘密

アメリカを作ったユニテリアンたち154

CIA職員に多いユニテリアン 154

ユニテリアンは教派横断的に存在する 164

長老派と会衆派から成る合同改革教会 169

アメリカ独立戦争に金を出したカルヴァン派 175

世界宗教というのは全て体制側にある 180

イギリスが日本の天皇を「神」にさせた 184

クエーカーは良心的兵役義務拒否の思想の原型 188

クエーカーから人類の最先端のテーマが現れた 191

自己防衛も否定するメノナイト 197

非暴力、不服従の思想の凄さ 202

〝坊主〟を作らなかったアナバプテストとクエーカー 206

現代のあらゆる思想の源流となったユニテリアン212

牧師から演説家となったエマーソン 212

マルクス主義もユニテリアンから生まれた 220

福澤諭吉もユニテリアンだった 226

フリーメイソンとユニテリアン 230

ユニテリアンの発想で世界を理解する237

内村鑑三の無教会主義の問題点 237

内村鑑三の背後にはアメリカ帝国がいた 241

社会主義と分裂した内村鑑三 246

AIにもつながるユニテリアンの発想 254

コロナ禍の時代には神学的な思考実験が重要になる 261

あとがき 悪による支配こそ人類の原理 副島隆彦 264

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あとがき    副島隆彦

 「 悪による支配こそ人類の原理、ではない 」       

 この対談本で6冊目になる。本書の第2部の、私と佐藤優氏の宗教についての部分をこそ先に読んでほしい。

 佐藤優氏は、2020年9月16日の菅義偉政権誕生で、自民党と公明党(創価学会)をつなぐ最高顧問のような立場に登った。宗教家(信仰を持つ人)として今や高い境地に達している佐藤優氏こそは、創価学会の次の教主になるべき人だ、と私は本書で彼に説いた。仏教とキリスト教では宗派がちがう、は理由にならない。本書を真剣に読めばその理由が分かる。

 宗教(信仰)とは、人間の魂を救済(サルヴェイション)することである。生きることの苦しみを真剣に受け止めて今の自分の生を肯定することである。そのための道をしっかりと指し示すことができる人が指導者である。

 それに対して私は、ますます偉人、西郷隆盛に似てきた小沢一郎を支持し続け、言論人としては冷や飯喰いのままだ。アメリカ帝国の支配から出来る限り脱出して、日本国の独立自尊(これも偉人 福澤諭吉先生のコトバ)を意地でも追求する立場だ。

 生き方上手は私が取る道ではない。竹中平蔵のような浅ましい策士が、時の顕職に登ることが何ほどのことだろう。あと10年ぐらいで私たちの生も終わる。

 歴史に例を捜すと。五代将軍綱吉の側用人として権勢を振るった柳沢吉保に、見出されて悪知恵の儒官となった荻生徂徠だ。徂徠は、政治学者の丸山眞男が書いた『日本政治思想史研究』(東京大学出版会、1952年刊)によって、日本のマキアヴェッリだと評価された。

 マキアヴェッリは、その『君主論』“Il Principe, 1513”(刊行は1532年)によって、冷酷な現実主義を政治思想に持ち込んだことで、〝近代政治学の祖〟と呼ばれる。君主(統治者)は、民衆に愛されるよりも、恐れられる方がいい。即ち政治は、悪が支配してこそ自然である、という思想の元祖である。

 今では、ちょっと知能の有る人ならこのことを知っている。「支配権(権力者)は民衆に愛されるよりも恐れられる方がいい」と。

 この世を実際に支配するのは悪であって善ではないという思想だ。民衆に嫌われる悪人政治家ほど実力を持つ、という近代政治学の原理がこのとき出現した(1513年)。佐藤優は、本書P32で、このことをキリスト教神学の「神義論」でそれとなく教える。神がこの世界の全てを作ったはずなのに、悪魔の発生には関わらない。無関係であるという詭弁、に読み代えた。キリスト教神学とはこういう議論をすることらしい。

 マキアヴェッリは、若くして天才の頭脳をしていたので、フィレンツェ国の高官を務めた。ところが、共和政が倒れた(1512年)。このあと、失職したマキアヴェッリが、何故、「悪こそが人民統治(ガヴァメント)の技術である」と、『君主論』で書いたか。

 共和国フィレンツェは当時世界一の繁栄した大都市だった。パリもロンドンもウィーンもまだ田舎都市だった。共和政とは、君主(国王)の存在を許さない国家体制のことだ。共和政から、のちに民主政も派生した。

 マキアヴェッリは、支配権を取り戻したメディチ家にすり寄って、何とか顕職に有りつこうと猟官運動をした。

 フィレンツェは共和国からトスカーナ公国という小さな大公国に転落した。それでもメディチ家の大公(国王)は、同時代のガリレオが火刑(焚刑)にカトリック教会から処せられそうになったのを、なんとか救い出して守ったから偉いことは偉い。

 卑屈で卑しくなったマキアヴェッリが、己の就職活動用に書いたのが『君主論』である。

 このことは今のヨーロッパ知識人によく知られている。日本にこの事実を伝えたのは、ガリガリの現実保守の歴史学者である塩野七生女史だ。彼女が、『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』(新潮社、1970年刊)を書いて教えてくれた。「残虐な支配者であることこそが、有るべき人民統治者だ」をチェーザレ・ボルジアの元をマキアヴェッリ自らが訪ねて目撃した。

 チェーザレ(小カエサルの意味)の実の父親は、(叔父ということにしていた)教皇グレゴリウス7世だ。この頃もローマ教皇たちは腐敗していて隠し子を作った(重大な戒律違反)。この極悪人の父教皇の威を借りて、一時期(しかしたったの10年)、北イタリアで次々と都市領主たちを殺害して覇を唱えたのがチェーザレ・ボルジアだ。

 為政者(権力者、大企業経営者も含む)は、国民と従業員に酷薄であればあるほど権力を維持できる、という考えをチェーザレ・ボルジアが体現した。

「菅首相に、入れ知恵しているのは竹中平蔵である」とすぐにメディアで報じられた。

 表に出る悪の権化の竹中平蔵(荻生徂徠)と、それとは異なり身を隠す善の姿の佐藤優の二重重ねで、今の日本の政治は動く。国民にはいよいよ厳しい。

 ただし。チェーザレ・ボルジアは、父教皇が死んだら、後ろ盾を失い憎しみを買って、スペインの山中(ナヴァラ国)まで追いかけられて殺された(31歳)。このマキアヴェッリの、「悪こそ人類の原理である」を、己の金科玉条にすることに、人生経験の中でたどり着いた者たちは、ここまで知った上で、悪の技術を実践するがいい。

 マキアヴェッリより少し前の〝壮麗なるロレンツォ〟(ロレンツォ・イル・マニフィコ。1449─1492)のとき、共和国フィレンツェは、都市自治の人類の理想の頂点を築いた。ロレンツォ・デ・メディチは、民衆に真に愛された。このロレンツォがミケランジェロの育ての親である。ミケランジェロは、復活した共和政のソデリーニ政権でフィレンツェの城壁の防衛責任者となった(1527年)。そして教皇軍・神聖ローマ皇帝国と戦って敗北してローマに逃げのびた(1530年)。

 このことを私たち日本の知識人層に真に教えてくれたのは、碩学・羽仁五郎である。彼の『ミケルアンヂェロ』(岩波新書、1939年刊)と『都市の論理』(勁草書房、1968年刊)である。今なお人類最高の芸術家はミケランジェロである。

 羽仁五郎と比べたら、日本のマキアヴェッリである、荻生徂徠を持ち上げた丸山眞男と、その先生の南原繁は、ワル(悪)の碩学である。丸山は戦後岩波左翼の主座の地位に登って私たちの世代までも幻惑し欺いた。事実は、南原繁(戦後は東大総長という顕職)は、内務省警保局特高警察の系統である。この事実が最近ようやく露呈しつつある。羽仁五郎は、講座派歴史学の志を貫いて『ミケルアンヂェロ』を出版して、北京まで逃げたが特高警察に捕まった。

 私は今これらのことを大きく理解し描くことが出来る。真実を大きく見抜く。

 これが出来ないなら、外務の行政官(官僚)として、民衆への悪を、若くして手づかみで実践して来た佐藤優氏と、渡り合うことはできない。私は、悪の側に身を売らない。私は、変人、狂人、世捨て人となってひとり山に籠る方を選ぶ。時代の顕職など何するものぞ。

 どうせわずか10年、20年のことではないか。牛と豚と羊はメーメー鳴きながら、愚かにも全員マスクをしたまま屠殺場(今は食肉加工場)に送られる。そして、また戦争に連れてゆかれる。この哀れなる国民を茫然と眺めて、隠遁者を気取るしか他にすることがない。人助けと、民衆救済はどうせ出来ない。それよりは、己れひとりを助けて山中(ただし崖下に海が広がる)に閑居する。海から朝日が出る。私は太陽神を崇拝する。

 再び日本文芸社 水波康副編集長と、グラマラス・ヒッピーズの山根裕之君の手をわずらわせた。記して感謝します。本書の書名は、「佐藤優と副島隆彦の宗教問答(あるいは対話)にしなさい。その方が超然として、本が売れますよ」と、私は執拗に粘ったが、ダメでした。勝手にしなさい。

                 2020年10月    副島隆彦

(貼り付け終わり)

(終わり)
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馬鹿ブス貧乏な私たちを待つ ろくでもない近未来を迎え撃つために書いたので読んでください。

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 古村治彦です。

 今回は『21世紀の戦争論 昭和史から考える』をご紹介したい。「歴史探偵」半藤一利氏とロシア専門家佐藤優氏の対談である。ロシア(旧ソ連)の行動原理について佐藤氏が述べ、それを半藤氏が昭和史に当てはめて敷衍して解釈していくという流れになっている。
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21世紀の戦争論 昭和史から考える ((文春新書))

 半藤氏にはノモンハン事件やソ連の満州侵入に関する著作もあり、ソ連の行動について自分なりにも調査研究を重ねてきたが、佐藤氏との対談で腑に落ちることが多かったようだ。

 ロシア(旧ソ連)は目的のためには感傷的にも感情的にもならずに人命など考慮に入れることなく、最短距離を突き進む。これを合理的という。ロシア(旧ソ連)の行動、私たち日本人には不可解な行動もそうした合理的な行動であり、目的を持って行なっている。また、ロシア人の行動原理として、「中間地帯・緩衝地帯がなければ大きな不安に襲われるのでそれを確保することに躍起となる」というものがあることを佐藤氏は指摘している。ヨーロッパで言えば東欧諸国、アジアで言えば中国や北朝鮮、アフガニスタンの共産化を目指したのもイデオロギーというよりもロシア人の行動原理が主な理由であるようだ。スターリンとしては北海道北部を独立・傀儡化させ、日本との間に緩衝地帯を作りたいと考えていたが、それは実現しなかった。そのためにスターリンは意趣返しの意味もあり、日本人のシベリヤ抑留を行なったというのが佐藤優氏の見方だ。

 『21世紀の戦争論』の中身を簡単に振り返っておく。

 細菌戦のための人体実験を行なった731部隊について最初に取り上げられている。ロシア(旧ソ連)は終戦直後に関係者たちを尋問し、既に情報を得ている。その最大の情報は731部隊の細菌戦や人体実験について昭和天皇は知っていた、直接指示があったということだ。これは最大の対日カードとして現在まで温存されている。ロシアあるいは中国が731部隊に関する主張を行なう際には日本側に何か要求があるということになる。

 大日本帝国の陸海軍は1905年に終了した日露戦争以降、大きな戦争をせずに過ごすことができた。その期間は約30年だ。20代前半で少尉任官した若者も順調に出世をしていれば、少将や中将になっている頃だ。もちろん陸軍士官学校や海軍兵学校出身者が全員少将以上になれるわけではない。大部分は大佐くらいで退役となる。実戦がないので戦闘で手柄を上げて出世するということは起きない。

こうした状況で少将以上まで出世をするのは徹底して間違いを犯さない官僚的人間と言うことになる。陸軍士官学校や海軍兵学校での成績が良く、陸軍大学校や海軍大学校に進める人たちであり、勉強秀才から冷徹で手続きに瑕疵を残さない官僚と言うことになる。そうした官僚的人間はこれまでの戦略や戦術には強いであろうが、実際に自分たちが決定を下すと言うことになると果たして強いのかというとどうもそうではない。

 官僚的人間ばかりが出世した日中戦争から太平洋戦争の日本の陸海軍の失敗は、官僚的自分たちによる責任を回避できる組織作りの故であったと半藤・佐藤両氏は結論づけている。両者が詳しいノモンハン事件についてみてみれば、見通しの甘さと情報不足のために、現場の日本軍将兵は奮戦したが惨敗。その責任はしかし司令官が取るのではなく、現場指揮官たちが死をもって取ることになった。生き残った現場指揮官クラスは軒並み自決を強要された。作戦の立案と指導に当たった参謀の服部卓四郎や辻政信は一時期左遷されたが、太平洋戦争直前に復活した。失敗を隠蔽し、失敗を教訓としない日本軍は最終的に解体の憂き目に遭った。

 失敗から学ばず、官僚的組織を作り、上層部が責任を回避するというのは現在の日本でも行なわれる組織作りの特徴ということになる。これを繰り返している限り、日本全体は徐々に、ゆっくりとしたカーブを描きながら落ちていく。

(終わり)

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