古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:停戦

 古村治彦です。

 私は、ウクライナ戦争は一刻も早く停戦すべきだという考えを持っている。しかし、それに対して「間違っている」「ロシアの味方だ」「ウクライナの人々のことを考えないのか」という非難は当然出てくるものとして受け止めている。アメリカをはじめとする欧米諸国が「火遊び」でNATOの拡大(東進)を行い、ロシアを刺激し、不安感を増大させ、戦争が起きた。そして、戦争が起きれば、欧米諸国はロシアと正式な戦闘状態に入り、最悪の場合には核攻撃を受けるという懸念から、ウクライナに武器を送って(それも致命的なダメージを与える種類は送らない)、ウクライナ人に戦わせるだけのことだ。

ウクライナを戦争前にNATOの正式メンバーにしていれば、NATO諸国は正式にロシアと干戈を交えることになっていたはずだ。ウクライナにどんどんと軍事援助を与え、「実質的にはNATOの一員ですよ」と宣伝しておきながら、いざという事態になれば、欧米諸国はウクライナと共に戦うことはしない。これではウクライナもそしてロシアも馬鹿にされているようなものだ。

 私はこのように考えている。しかし、こうした考えに対しては上記のように非難もあるだろう。それは受け止める。しかし、それならばどうしようと言うのだろうか。ヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は停戦を拒絶している。ウクライナの全国土を奪還するまで戦いは止めないとしている。それは2014年の段階でロシアが併合したクリミア半島が入るし、親露勢力の多い東部各州も入る。そのための戦いはどれくらい続くことになるだろうか。クリミア半島までとなると、ロシアにとっては「国土防衛線」ということになる。そうなればこれまで以上に戦争のレヴェルを上げることになる。つまり、核兵器使用の可能性が高まるということになる。

 現在の世界規模での食糧価格の高騰やエネルギー価格の高騰はやはり戦争の影響を受けている。世界規模で、そしてウクライナとロシアの人々のためにも一刻も早い停戦を願っている。そのためにはゼレンスキー大統領の退陣も必要なのではないかとも考えている。太平洋戦争における五本の敗戦直前のことを思えば、指導者の交代で停戦を実現するということもあり得るのではないかと考えている。

 このようなことを書けば「ロシアの手先」と言われてしまうだろう。私としては「そのような時代なのだろう」とそれを淡々と受け止めるしかない。

(貼り付けはじめ)

「平和運動活動家」にとって、戦争はアメリカのことであって、ロシアのことではない(For ‘Peace Activists,’ War Is About America, Never Russia

-彼ら自身の強硬な左翼的世界観は、反西側陣営の侵略者の側につくほど吸収されている。

アレクセイ・コヴァレフ筆

2022年12月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/12/22/russia-ukraine-war-left-progressives-peace-activists-chomsky-negotiations-diplomatic-solution/

ウクライナ戦争が1年に近づくにつれ、いずれ何らかの交渉で終結することを期待するのは当然のことではある。重要なのは、開戦と終戦の責任をどこに置くかだ。欧米諸国の進歩的な左派の一部にとって、「外交を通じての平和(peace through diplomacy)」とは、滅多に表立っては言わないにせよ、1つの意味を持っている。それは、「ウクライナはロシアの条件に従って降伏する(Ukraine’s surrender on Russia’s terms)」というものだ。

将来、どこかの時点で、交渉が行われるに違いない。ロシアが戦場で目的を達成するための窓はとっくに開いている。しかし、ウクライナが西側諸国から攻撃用兵器の種類を増やしてもらわない限り、ウクライナ軍がハリコフ州やケルソン州で見事に成し遂げたような大規模な反撃を行って残りの国土を解放することは非常に困難だろう。従って、ある時点で、どちらか一方または双方が戦争するための資源を失い、両国が停戦の条件を話し合うテーブルに着くことになる。しかし、ロシアのウラジミール・プーティン大統領は、ウクライナが主権国家(sovereign state)として、また独立した国民として存在する権利そのものをまだ認めていない。そうした中で、誠実に交渉し、いかなる合意も守るというロシアの約束は、議論の余地があるという評価以上のことはない。

西側諸国の多くにおいて、国民の大多数はウクライナ支援に賛成している。ウクライナにとって最大かつ最も信頼できるパートナーであるアメリカも同様で、12月21日に行われた米連邦議会合同会議でのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領の歴史的演説では、通路を越えてスタンディングオベイションが起こるなど、ウクライナの主権擁護は超党派の強固な支持を得ている。

しかし、欧米諸国によるウクライナ支援は、政治スペクトルの両端から敵意を呼び寄せている。「アメリカの覇権(U.S. hegemony)」や「アメリカの軍国主義(U.S. militarism)」に反対する西側諸国の強硬左派にとって、彼ら自身の反米・反西西洋的世界観は、反西側陣営のいかなる侵略者の側にも容易に味方するほど吸収されている。同様に、アメリカが支援する国に対しても熱心に反対する。ロシアやイランのような抑圧的な政権に左派の一部が根強く同調するのはこのためだ。抑圧(repression)そのものを肯定しているわけではないが、反米陣営と手を組むことへ傾倒が不支持よりも強いのである。

ウクライナのケースは、以前植民地化された主権国家が、大量殺戮の意図に全く隠さない帝国主義的侵略者から自らを守るという、明確な闘いであることは気にする必要がない。こうした進歩的な極左派は、しばしば平和活動家(peace activists)と自称しているが、ウクライナの社会主義者たちのような、自分たちのイデオロギー的同志から出た証拠であっても無視する。

その代わり、ウクライナに関する極左派の主張は、ウクライナ支援からの撤退を求める西側極右派の主張と見分けがつかないことが多い。進歩的左派の象徴であるジェレミー・コービン元英国労働党党首やフォックス・ニューズの司会者タッカー・カールソンは、クレムリンのお気に入りの論点を自由に繰り返している。たとえば、ウクライナを支援すれば不必要にウクライナ人の苦痛が長引くという皮肉な主張である。

明らかな結果という点では、強硬左派が「ウクライナでの戦争を止めろ(stop the war in Ukraine)」と要求する本当の意味は、「ウクライナの自衛を助けるのを止めろ(stop helping Ukraine defend itself)」ということだ。文書で十分に立証されたロシアの残虐行為、プーティンが宣言したウクライナにおける目標、そして侵略の露骨な植民地主義的性質を無視するように、彼らの自称反戦姿勢には道徳的要請が決して存在しないのだ。このため、論理的な結論は1つしかない。左翼が反対するのは戦争ではなく、一方がアメリカの支援を受ける戦争が存在するという事実である。

ウクライナ人には主体性(agency)がなく、ロシアは代理戦争(proxy wars)の犠牲者であるというこのねじれた世界観は、先月のマンハッタン文化センターでのイヴェントで存分に発揮された。そこでは、このサブカルチャーの最も著名な人物たちが、イヴェントのタイトルの通りに、「ウクライナ和平への真の道(Real Path to Peace in Ukraine)」について議論した。言語学者ノーム・チョムスキー、元アメリカ緑の党大統領候補ジル・スタイン、著名な自称平和活動家メデア・ベンジャミンなど、進歩的左派の象徴的人物が名を連ねていた。

3時間以上にわたる討論は、インターネット上のごく少数の視聴者に向けて配信されたが、ウクライナの平和への第一歩らしきものを提案した発言者は1人としていなかった。このイヴェントの副題は「交渉には賛成!エスカレーションには反対!」だったにもかかわらず、ウクライナ和平への第一歩らしき提案は一人もなかった。「エスカレーションには反対!」という副題がついていたにもかかわらず、誰が交渉するのか、その交渉の立場はどうなるのか、永続的な和平を実現するために誰が何をあきらめるのか、について言及しようとする講演者は1人もいなかった。ウクライナ人の姿はなく、ある講演者は「平和を訴えるのにウクライナ人である必要もロシア人である必要もない」と陳腐な弁明をした。

こうした活動家たちがウクライナの「平和(peace)」や「外交的解決(diplomatic solution)」を訴える際には、必ずと言っていいほど、その詳細は曖昧だ。スタインは、停戦は「ペンのクリックひとつ」で可能だというが、他の講演者と同様、すぐに他の話題に移ってしまった。もちろん、今後の交渉の内容は現時点では机上の空論に過ぎないが、少なくとも他の交渉推進派からは、思惑があるにせよ、具体的な提案が出ている。例えば、ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官は、2月24日以前の現状に戻すことを要求している。

しかし、強硬な左派にとって、外交的解決への要求は常に、「ウクライナへの援助を止め、ロシアに好きなようにさせる」ということに尽きるようだ。例えば、イギリスの「Stop the War Coalition」が2022年11月に出した嘆願書について考えてみよう。ウクライナでの戦争による多大な人的犠牲を認めながら、イギリス政府に「武器の送付を止める」ことを求め、その上で「当事者全てが即時停戦と和平交渉の要求の高まりに耳を傾ける」よう促しているのだ。「ウクライナに平和を」とは、ウクライナの費用で、ロシアの条件での平和を意味するのだ。

「平和推進(pro-peace)」の活動家に長時間マイクを持たせると、親ロシア的な傾向が表れてしまう。「アメリカは悪であり、反米の独裁者は善である」という教義に従ったブログ「グレイゾーン」の共同設立者マックス・ブルメンタールが、ゼレンスキーが到着した日にワシントンでロシア当局者を罵倒せず、戦争を止めるためにできることをするように要求したのは偶然ではないだろう。その代わりに、ブルメンタールと彼の同志たちは、ロシアの残虐行為を否定するか軽視する一方で、ゼレンスキー個人を誹謗中傷することに力を注いでいるのだ。

他の多くの西側「反戦(anti-war)」活動家たちは、親クレムリン的な偏見(pro-Kremlin bias)を隠そうともしない。様々な極左活動家の傘下団体であるANSWER連合のスポークスマンであるブライアン・ベッカーは、プーティンの修正主義論文であり戦争正当化文書である『ロシア人とウクライナ人の歴史的統一について』を彼のインスピレーション源の1つと考えていると述べた。

西側の「反戦」の声が、ロシアの残虐行為を認め、自宅で爆撃されたウクライナの市民に同情を示したとしても、それは必ず、残虐行為がロシアの侵略以外の何かのせいにされる、別の反アメリカ的言辞に押し込められている。この道徳的盲点の典型的な例が、「反軍国主義(anti-militarist)」左派の守護聖人(patron saint)であるチョムスキーである。彼は何度も何度もインタヴューやスピーチの冒頭でロシアの「犯罪的侵略(criminal invasion )」を非難しているが、すぐに戦争の原因を軍産複合体がウクライナに武器を押し付けているとされるアメリカのせいにすることに重点を置いている。彼の世界観は、ウクライナだけでなく、ロシアにも主体性を認めない。ロシアは、邪魔をしないことで回避できる自然災害のような存在として描かれている。この現実的な敗北主義者(pragmatically defeatist)の反戦思想では、ウクライナは何があってもダメなのだ。チョムスキーに言わせれば、ロシアは世界を破壊する力を持っているのだから、ロシアの要求にすべて応じるしかないということになる。それを拒否することで、西側諸国は「恐ろしい賭け(ghastly gamble)」(ニューヨークのイヴェントでチョムスキーがそう呼んだ)に従事していると彼は発言した。

ウクライナをはじめ、大きな隣国に侵略されたり、いじめられたりしている国々にとって幸いなことに、西側の自称反戦左派は、1970年代や80年代のような影響力をもはや持っていない。ニッチなイヴェントでも数百人以上の参加者を集めることはほとんどない。少なくともアメリカでは、ウクライナに対する西側の支持に影響を与えるほど大きな聴衆を動員することはない。しかし、影響力を求めるあまり、少数の人々の心を傷つけることはできるだろう。

※アレクセイ・コヴァレフ:『メドューサ』誌調査担当編集者。ツイッターアカウント:@Alexey__Kovalev

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2022年11月15日、ポーランドのウクライナ国境近くにミサイルの発射体もしくは破片が落下して2人が死亡するという出来事が起きた。この事故について、ロシアのミサイルがポーランドに発射されたものだという非難がウクライナや東欧・中欧の国々から出て、NATOの集団的安全保障が発動されて、NATO軍がウクライナ戦争に参戦することになるのではないかという懸念と緊張が高まった。しかし、当事国ポーランドとアメリカが静観する構えを見せ、ウクライナのミサイルの可能性を指摘して、事態は沈静化した。ロシアはウクライナのポーランドとの国境地帯にミサイルは発射していないと主張している。

 2022年2月24日にウクライナ戦争が起きて、早いもので今年も暮れようとしている。ウクライナ戦争は2022年の世界全体に大きな影響を与えた。ヨーロッパから遠く離れた日本で暮らす私たちの生活にも暗い影を落とした。エネルギー価格と食料価格の高騰によって、生活費が高騰している。買い物に行って以前と同じものを買っても出ていくお金は増えているという状況だ。

 ウクライナ戦争が世界に暗い影を落とすという状況はこれからもしばらく続きそうだ。それは停戦に向けた動きが見えないからだ。ウクライナは西側諸国に対して「どんどん武器と金と物資を送れ。送らないのは正義に反する行為だ。そして、自分たちはウクライナ東部とクリミア半島を奪還する」と主張している。このような「正義」に基づいた主張には表立って反対しにくい。しかし、このブログでも以前に紹介したように、エネルギー価格の高騰、エネルギー不足で一段と厳しい生活を強いられるヨーロッパ各国の国民は「何とか和平を達成してくれないか」という願いを持ち、「平和」を希求している。より露骨に言えば、「ウクライナはもういい加減戦争を止めてロシアと停戦しろ、こっちだって生活が苦しいんだ。しかも人の武器と金で戦争しているんだぞ」ということになる。

 今回のポーランドでの出来事を受けて世界は緊張した。NATO軍、その主力はアメリカ軍ということになるが、NATO軍が参戦することになれば第三次世界大戦、更には核戦争にまで発展するということが人々を恐怖させた。戦争が拡大すれば現在よりも状況が悪化し、世界は不安定になる。そのことを改めて深刻に実感することになった。

 ウクライナ戦争が第三次世界大戦につながる危険性をいち早く指摘したのは、私の師である副島隆彦だ。『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』(2022年6月)を読むと、半年近く経っても状況は全く好転していないということが改めて実感できる。是非お読みいただきたい。

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プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする

 ウクライナが満足する形で停戦が成立するためには、ウクライナ側の主張ヲ基にすれば、ウクライナが東部とクリミア半島を完全に奪還しなければならない。このことがまず可能なのかどうか、そして、可能だというならばそれにかかる時間とコスト(人命、お金、物資など)を冷静に判断しなければならない。そして、ウクライナがこれからどのような国家として存在していくのかということも改めて検討してある程度の道筋をつけなければならない。現在のところ、ウクライナが戦争に勝利して、自分たちの目的を達成することは「ほぼ不可能」である。そのことは、アメリカ軍の制服組トップであるマーク・ミリー米統合参謀本部議長が認めている。そして、ミリーは「政治的解決」を示唆している。これは「停戦交渉をするべき」ということを意味する。

 以下の論稿は正義派の考えに基づいて構成されているが、私が問いたいのは「どのタイミングで停戦交渉するのか」「ウクライナに良いタイミングが来るまで待つというが、そのタイミングはいつ来るのか、そもそもそのようなタイミングが来るのか」ということだ。私たちは太平洋戦争で、ミッドウェー海戦敗北とガダルカナル島失陥以降、アメリカの反転攻勢を受けて日本が追い詰められていく過程で、「何とかアメリカ軍に一撃を加えてそれでアメリカ側をひるませて講和に持ち込む」という「一撃講和論」という楽観主義的な考えによって、戦争が長引き、結果として無残な結果となったことを知っている。ウクライナ戦争でウクライナ側が攻勢に出ているが、ロシアが東部とクリミア半島の防御態勢を整えて、膠着状態に陥った場合、ウクライナの求める条件はまず達成できない。そうなれば戦争がだらだら長引く。ウクライナに対する支援をずっと続けられるのかどうか、という問題も出てくる。西側諸国からの支援がなければウクライナは戦争を継続できない。結局、ウクライナは自分たちの目的を達成する前に停戦ということになる。それは現状とほぼ変わらない段階でのことになるだろう。それならばだらだらと続いた期間とその間のコストは無駄ということになる。

 私は今年の3月の段階で早期停戦すべきだと述べた。その考えは今も変わらない。ウクライナがロシアに一撃を加えた今がタイミングだと思う。このまま戦争がだらだらと続くことは世界にとって不幸だ。

(貼り付けはじめ)

米軍高官「ウクライナ、軍事的勝利は当面ない」 政治解決に期待

11/17() 8:35配信 毎日新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/ea4a4cbf2f1838b30306fd58c9f0bf254c7b891c

 米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は16日の記者会見で、ロシアのウクライナ侵攻に関して「ロシアがウクライナ全土を征服するという戦略目標を実現できる可能性はゼロに近い。ただ、ウクライナが軍事的に勝利することも当面ないだろう」と指摘した。その上で「ロシア軍は大きなダメージを受けており、政治的判断で撤退する可能性はある」と述べ、攻勢に出ているウクライナにとっては交渉の好機だとの考えを示した。

 ミリー氏は「防衛に関して、ウクライナは大成功を収めている。ただ、攻撃に関しては、9月以降にハリコフ州とヘルソン州(の領域奪還)で成功したが、全体から見れば小さな地域だ。ウクライナ全土の約20%を占領するロシア軍を軍事的に追い出すことは非常に難しい任務だ」と指摘した。

 一方で、「ロシア軍は、多数の兵士が死傷し、戦車や歩兵戦闘車、(高性能の)第45世代戦闘機、ヘリコプターを大量に失い、非常に傷を負っている。交渉は、自分が強く、相手が弱い時に望むものだ。(ウクライナの望む形での)政治的解決は可能だ」と強調した。秋の降雨でぬかるみが増える季節を迎えたことで「戦術的な戦闘が鈍化すれば、政治解決に向けた対話の開始もあり得る」との見解を示した。【ワシントン秋山信一】

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ロシアとの交渉は魅力的であり、そして間違っている(Talking With Russia Is Tempting—and Wrong

-ウクライナでの戦争を終結させるための交渉を始めるのは時期尚早である。

ジェイムズ・トラウブ筆

2022年11月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/11/16/talking-with-russia-is-tempting-and-wrong/

1814年の夏、2年前にイギリスがアメリカに侵攻し始まった戦争を終結させるために、米英両国の交渉官たちがヘント(ベルギー)に集まった。イギリスは勝利の確信を持ち、領土に関するアメリカ側の譲歩を求めた。ジョン・クインシー・アダムスとヘンリー・クレイが率いるアメリカ代表団はイギリスからの強硬な条件をはねつけた。イギリスは、ニューイングランドの一部を含む当時の制圧地域を境界線として描き直すことを提案した。10月初旬にヨーロッパに届いたワシントン焼失のニューズは、アメリカ側にも譲歩を促すものだった。

しかし、アメリカ側は良い知らせを待って交渉を長引かせた。良い知らせは、シャンプラン湖周辺とボルチモアでのアメリカの勝利という形ですぐに届いた。クリスマス直前、イギリスは全ての要求を撤回し、最も争点となる問題を将来の議論に任せて先送りすることに同意した。ヘント条約は、アメリカの主権が脅かされていた時代に終止符を打ったのである。

この逸話の教訓は、戦時中の早まった外交は誤りであり、戦場のダイナミズムが交渉の条件を形成することを許さなければならないということである。マーク・ミリー統合参謀本部議長は、ウクライナがロシア軍と「膠着状態(standstill)」まで戦った今、外交の「好機をつかむ(seize the moment)」ようバイデン政権の同僚に呼びかけている。しかし、それは間違った比喩だ。ウクライナ人はまずロシアの猛攻に耐え、その後でそれを押し返した。1914年9月の協定がニューイングランドの大部分を切り落としたように、1カ月前の外交交渉では、ウクライナが取り戻したケルソンの支配をロシアに譲り渡すことになっていたかもしれない。外交のチャンスはいずれやってくるが、それは今ではない。

以前、ウクライナ問題で進歩主義的な民主党所属の政治家たちがジョー・バイデン米大統領に送った書簡について、私はコラムで左派の反戦外交の主張(left’s antiwar case for diplomacy)には抵抗があることを書いた。しかし、より強い主張は、右派、少なくとも左派ではない勢力から出ている。右派は、ウクライナの領土保全への関心は限りなく高いが、欧米諸国には他にも多くの懸念があり、ウクライナ支援とのバランスを取る必要があると正しく指摘している。ユーラシア・グループのクリフ・カプチャン会長は、『ナショナル・インタレスト』誌の記事の中で、戦争がもたらす重大かつ長期的なコストとして、「脱グローバリゼーション(deglobalization)」の加速、食料・エネルギー価格の上昇とそれらが引き起こす社会・政治不安、核の不安定性、そして何よりもロシアとNATOとの戦争、おそらくロシアによる核兵器の使用という見込みを挙げている。

最近、カプチャンの話を聞いたところ、「ロシアとの話し合いを受け入れるべきだと考えるのは少数派だ」と述べていた。彼が最も懸念するのは、軍事的なコストだ。「プーティンのレッドライン(最終譲歩ライン)はまだ見つかっていない」と彼は言った。ロシアのウラジミール・プーティン大統領は、これまで考えられていたようなリスク回避を受け入れる人物ではない。ウクライナ人がそれを払うに値すると考えるかどうかにかかわらず、彼は自分の体制に対する脅威と見なすものには、核兵器であれ何であれ、西側諸国にとって災難となるようなエスカレーションで対応するかもしれない。カプチャンの兄弟でジョージタウン大学のチャールズ・カプチャン教授(国際問題)も、「ロシア軍がウクライナ東部とクリミアから完全に追放された場合、クレムリンの核兵器への依存は現実的な選択肢となる」と主張している。

これはつまり、ウクライナ人が戦場で大成功を収め、プーティンが世界を引きずり込む前に、西側諸国は外交的な最終案を練り始める必要があるという提案を行うもので、これは外交とタイミングに関して本末転倒な主張だ。このような理屈は、もちろん、核の恐喝が使われる要点ということになる。私がクリフ・カプチャンにこのように言うと、彼は戦争の追加的なコスト、つまり何百人ものウクライナの子どもたちの恐ろしい死について指摘した。しかし、これはウクライナ人自身が喜んで負担しているように見えるコストである。

だからといって、プーティンのハッタリに簡単に応じるのは、狂気の沙汰としか言いようがない。バイデン政権はレッドラインの問題を痛感している。ウクライナに4億ドルの軍需物資を追加供与することを承認しながら、ロシア国内の標的を攻撃できる長距離無人機の供与は拒否した。外交上の主張は、事実上、ワシントンはアメリカだけでなくウクライナも制限しなければならないということになる。そうでなければ、国際関係学者のエマ・アシュフォードが最近書いたように、「戦争に対する慎重に調整された対応が、絶対的な勝利という危険なファンタジーに取って代わられるかもしれない」ということになる。アシュフォードは慎重に中立的な立場を取り、交渉による解決は「今日では不可能に思える」が、アメリカの外交官は「そのようなアプローチが伴う困難な問題を公にして、そしてパートナーに対して提起し始めるべきだ」と示唆している。

ウクライナにロシアとの対話を迫ってはいけないが、必ず来るだろう話し合いに向けて準備を始めるべきだということだ。これは論理的に聞こえる。しかし、本当にそうすべきなのか? 外交問題評議会のロシア専門家であるスティーヴン・セスタノビッチにこの問題を提起してみた。セスタノビッチは、可能性のあるシナリオを公開することさえ、最も貴重な要素であるウクライナの意志を奪うことになりかねないと述べた。彼は次のように語った。「そう、ある時点では、ウクライナ人と座って将来について話すことができる。しかし、彼らはどれだけの損害を受容するのかどうかについては敬意を払わなければならない」。セスタノビッチは、1940年5月、ウィンストン・チャーチルがイタリアの外交打診を拒否したのは、イギリスの士気が下がるのを恐れてのことであったという歴史的な類推(analogy)を使用した。

今、外交官の机の中に最終案の計画が残っているのは、タイミングや戦術だけでなく、外交的リアリストが甘く見がちな他の種類のコストにも関係がある。英国は、1812年の戦争後、アメリカがあまりにも強く、立地も良いため、奪還は不可能であることを悟った。しかし、プーティンは2014年の状態より少し良いものを認める協定によって勇み立つだろう。実際、プーティンは、危害を加える能力を保持している限り、近隣諸国と西側諸国にとって脅威であり続けるだろう。セスタノビッチは、ウクライナが東部で前進を続け、失ったものの多くを取り戻せば、「ロシアは完全にパニックモードになり」、プーティン自身の支配が脅かされることになると示唆している。これは事実上、ウクライナ軍の成功の最良のシナリオである。もちろん、最悪のシナリオは、その脅威に対してプーティンが暴発することである)。

根本的な問題は次のようなものだ。問題は、「それがどの程度問題なのか?」ということだ。これまでのところ、アメリカとヨーロッパは、ウクライナにおけるロシアの侵略を阻止することは、それなりの犠牲を払うに値するという結論に達している。欧米諸国が公言する価値観が本物であることが判明したことは、プーティンにとって当然ショックであり、欧米諸国の多くの人々にとっても、非常に喜ばしいショックであったに違いない。しかし、その意志は無限であるとは言い難い。バイデンをはじめとする指導者たちは、ロシアの賠償金とウクライナの領土の隅々までの返還を含むウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領の最大限の条件を達成するために、政治的、経済的負担を負い続けることはないだろう。

外交官たちがその計画を机上から引き上げる時が来るだろう。しかし、その前に、我々の協力でウクライナがプーティンの進撃をどこまで押し返せるか、見届けなければならない。それが私たちの利益であり、ウクライナの利益でもある。

※ジェイムズ・トラウブ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ニューヨーク大学国際協力センター非常勤研究員。著書に『リベラリズムとは何だったか?:過去、現在、そして新しいアイディアの期待(What Was Liberalism? The Past, Present and Promise of A Noble Idea)』がある。ツイッターアカウント:

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 古村治彦です。

 ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は相手によって発言内容を変え、相手が一番聞きたい内容を話す天才だと私は考えている。彼の前職がコメディアン、俳優であり、こうした能力は前職であれば大いに称賛される能力である。政治家としてもまたその能力は活かされている。しかし、そのためにゼレンスキーの真意は、ロシアのウラジミール・プーティン大統領と同様に掴みがたい。

 ゼレンスキーは西側メディアに対しては「一人でも多くのウクライナ国民の命を救うことが勝利だ」「領土はただの領土に過ぎない」と述べながらも、「ウクライナ国民は最後の一都市まで戦う」とも述べた。前半の発言内容であれば、一刻も早い停戦を行って国民の命を救うという考えなのかと私は思ったが、後半部分では徹底抗戦するということを述べているので、停戦はすぐにはできないのではないかと思わされる。ブラフを言いながら、相手と交渉をするというのは常套手段であるが、ゼレンスキーが何を考えているのかはっきりしない。

 ロシアのジャーナリストとのインタヴューでは中立化、非核化、国内でのロシア語使用といった内容を話しており、これはロシア側が聞きたい内容そのものになっている。昨年であればこうした内容以上にウクライナにとって利益になる、有利な条件での合意がロシア側と結べていたということを考えると、ゼレンスキーの一国の指導者としての能力は低いと断じざるを得ない。また、世界各国の議会で戦争を焚きつけに回って、第三次世界大戦の棄権を招来するなどというのは、全くもって世界にとって危険極まりない人物だ。

一刻も早い停戦を望む。ウクライナ国民、ロシア国民の塗炭の苦しみを思い、世界中の人々の生活苦を考えるならば、ウクライナは頑強な抵抗でロシア軍を敗退させている今こそ、より良い条件で停戦ができ、和平交渉ができる時期だ。西側諸国がやっていることは、出血が続いている重傷者の出血を止める措置をしないのに、輸血だけはしているということと同じだ。これでは長期的に見て体が持つ訳がない。ウクライナを根本的に助けるという意思はない。ここは「耐えがたきを耐え忍び難きを忍び」である。

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ゼレンスキー:「勝利とは一人でも多くの命を救うことができることだ」(Zelensky: 'Victory is being able to save as many lives as possible'

マイケル・シュニール筆

2022年3月28日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/600001-zelensky-victory-is-being-able-to-save-as-many-lives-as-possible

ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、彼の国ウクライナの勝利は「できるだけ多くの命を救うことができること」だと述べた。

金曜日に行われた『エコノミスト』誌とのインタヴューの中で、ウクライナにロシアに勝つチャンスがあると思うかと聞かれ、ゼレンスキーは「私たちは勝利を信じる。それ以外を信じることはできない」と発言した。

ゼレンスキーは続けて「ここは私たちの家、私たちの土地、私たちの独立なのだから、私たちは最終的に必ず勝つだろう。あとは時間の問題だけのことだ」と述べた。

ウクライナにとっての勝利とは具体的にどのようなものかと続けて質問されたゼレンスキーはウクライナ国民の安全が最も重要であると強調した。

ゼレンスキーは「勝利とは、できるだけ多くの命を救うことだ。そう、できるだけ多くの命を救うことだ。ウクライナ国民なくしては、何も意味をなさない。私たちの土地は確かに重要だが、最終的にはただの領土に過ぎない」と語った。

ゼレンスキー大統領は、1カ月に及ぶウクライナでの紛争がいつまで続くか分からないとしながら、ウクライナ国民は「最後の1都市まで戦うだろう」と強調した。

「私たちの勝利は一時的なもので、全ての問題を解決することはできないかもしれないが、私たちは進むべき方向を選択した」と続けて述べた。

ロシアのウラジミール・プーティン大統領は2月24日、ウクライナにロシア軍を派遣したが、多くの地域でウクライナ軍の頑強な抵抗を受け、ロシア軍の活動は滞っている。

国連ウクライナ人権監視団によると、紛争が始まって以来、少なくとも1119人の民間人が死亡し、1790人が負傷したと報告されているということだ。しかし国連は、「敵対行為の影響を受けた複数の場所から情報を収集し、検証する能力が著しく阻害されている」と指摘し、実際の数字はもっと大きいとしている。

ゼレンスキー大統領は、紛争を通じて指導力を発揮し、激動の時代の中でキエフに留まり国の舵取りをしている若い大統領に世界中の多くの人々が賞賛を送っている。

ゼレンスキー大統領は、『エコノミスト』誌とのインタヴューの中で、ウクライナに留まるという決断について語り、この決断は「攻撃への対応について人々へのシグナル」であったと語った。

ゼレンスキーは「人は何をすべきか、何をすべきでないかという選択肢を最初から選ぶと、本格的な戦争がどういうものなのか、誰もが分からなくなってしまう。私の仕事は、人々がどう行動すべきかを知るためのシグナルを出すことだ」と述べた。

ゼレンスキーは次のように述べた。「そして、ウクライナがどう行動すべきかを示す時、自分たちもそれに従って行動しなければならない。残るべきか去るべきかの決断の時があった。私たちは皆、同じように傷ついている。残るという決断は攻撃に対してどう対応するべきかという、人々へのシグナルだった。重要なのは結局、戦争がどのように始まり、どのように終わるのか、ということだ。今回の戦争は、私たちがここに立って守っていることで終わる」。

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ゼレンスキーは和平合意の一部に中立の立場を入れる可能性を否定しない(Zelensky opens door to making neutral status part of peace deal

モニク・ビール筆

2022年3月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/599940-zelensky-opens-door-to-making-neutral-status-part-of-peace-deal

ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は日曜日、和平合意の一部として、中立的な立場を第三者が保証し、国民投票にかけられるのであれば、検討すると述べた。

ロイター通信の報道によると、ゼレンスキーは「国家の安全の保障と中立、核兵器の非保有国の立場。私たちはそうした条件のための準備はできている。これが最も重要なポイントだ」と語ったということだ。

ゼレンスキーはまた、ウクライナがロシアとの交渉の一部として、ウクライナにおけるロシア語使用について検討していると述べたが、大統領はモスクワの他の要求については言及することを拒絶した。

ゼレンスキーの発言は、ロシアのジャーナリストとの90分間のヴィデオ通話の中で行われた。ロイター通信は、ロシア当局が事前にロシアのメディアに対し、この通話について報道しないよう警告していたと報じた。

ロシアによるウクライナ侵攻から1カ月以上が経過し、駐米ウクライナ大使のオクサナ・マルカロワは日曜日、ウクライナの主権を守ることができないということは、「残忍性、寡頭制、戦争犯罪者が私たちの住む惑星に充満する」ことを意味すると述べた。

マルカロワ大使は「ウクライナの領土に独立した共和国は存在しない。2014年にロシアが攻撃してきた。ロシアはクリミアとドネツクとルハンスクの一部を不法に占領した。ロシアは、不法に、今、独立国に本格的な戦争を仕掛けている」と述べた。

また、CNBCによると、日曜日、ウクライナのイリーナ・ベレシュチュク副首相は、ウクライナ東部のドネツクとルハンスク地域で2つの人道回廊設置が合意されたと発表した。

国連人権事務局は、2月24日の侵攻開始以来、1119人の民間人が侵攻で死亡し、更に1790人の民間人が負傷したと発表した。人道回廊設置合意の発表は国連人権事務局の発表後に行われた。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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