古村治彦です。

 アメリカは民主党と共和党の二大政党制(two-party system)ということは広く知られている。しかし、連邦議会のほぼ全議席を占めているのが民主、共和両党であるので二大政党とも言えるのだが、この2つの政党以外にも数多くの政党が存在する。しかし、選挙制度が二大政党に有利になっていることもあって、第三党の勢力はなかなか拡大しない。リバータリアン党や緑の党といった政党は大統領選挙で数%の得票率を記録するがそれ以上のことはない。

 そうした中で、アメリカ国内では第三党待望論、第三党があっても良いのではないか、今の二大政党では自分たちの考えを正しく反映できていないという考えが出てきているようだ。それは下の記事の中で紹介されている。最新の世論調査の結果では二大政党制でうまくいっていると答えたのは4分の1程度だったということだ。
 2020年のアメリカ大統領選挙、2021年のニューヨーク市長選挙で民主党予備選挙(本選挙で民主党の候補者となるための選挙)に出馬したアンドリュー・ヤンは昨年、所属していた民主党を離党し、前進党(フォワード党、Forward Party)を結成した。極端な主張に与するのではなく、穏健な主張を行うということのようだ。今年に入り、民主党や共和党で連邦議員や知事を務めた経験を持つ出身者たちが作った諸団体と前進党が合同した。第三党を求める人々の声に応えるという動きでもあるようだ。

 アンドリュー・ヤンの掲げる政策は中道的であるが、注目を集めるのは「ベイシック・インカム」である。ベイシック・インカムとは簡単に言うと、国民全員に毎月一律の金額を配布するというものだ。

 前回もご紹介したが、直線的な政治スペクトラムでの右と左の二項対立という構図は変化しつつある。民主、共和両党はそれぞれアレクサンドリア・オカシオ・コルテスらの左派、トランプを支持する右派が力を持ち、それぞれ左と右に引っ張っている状況だ。これは既成の民主、共和両党内部のエスタブリッシュメント派やエリートたちに対する反発の動きでもある。ヤンたちの行動は既成の民主、共和両党から飛び出した外での行動ということになる。

 二大政党制がすぐに崩れるということはないだろうが、二大政党制に対する不信感や無力感がアメリカ国民の間で広がっているのは確かなようだ。それはアメリカ政治全体に対する不満ということを基にしている。このまま続けば、アメリカ政治は変容を余儀なくされることだろう。

(貼り付けはじめ)

ヤン率いる前進党(フォワード党)と元共和党幹部たちが率いるグループと合併(Yang’s Forward party merges with groups led by former GOP officials

サラ・ポラス筆

2022年7月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/3577267-yangs-forward-party-merges-with-groups-led-by-former-gop-officials/

ニューヨーク市長選挙と大統領選挙の民主党予備選挙に出馬した経験を持つアンドリュー・ヤンが、元共和党、民主党、無党派の人々と共同して「前進党(フォワード党、Forward Party)」として政党を結成した。水曜日にヤン自身が発表した。

前進党は昨年10月に結成されたが、現在は3つのグループが合併し構成されている。ヤン自身が結党した前進党、トランプ政権下でホワイトハウス職員を務めたマイルズ・テイラーが率いる元共和党員たちが結成した「リニュー・アメリカ・ムーヴメント(Renew America Movement)」、民主党出身者、無党派、共和党出身者が結成し、元連邦下院議員のデイヴィッド・ジョリー(フロリダ州選出、共和党)が代表を務める「サーヴ・アメリカ・ムーヴメント(Serve America Movement)」である。

ヤンは本誌への声明の中で、「積極的な統一された第三党運動(third party movement)を構築することは困難な事業である。しかし、何百万人ものアメリカ人が待ち望んでいたことでもあるのだ。だからこそ、私たちは成功を収めることになるだろう」と述べた。

前進党のリーダーたちは、政治における極端な考えや主張を排除し、共通点を追求すると述べ、アメリカ国内最大の第三政党になると主張している。

前進党のウェブサイトに掲げられているスローガンは「左派でもなく、右でもない。右でもない。前進だ」となっている。

2021年10月に民主党を離党する際、ヤンは離党発表声明の中で同様の思いを語っている。

声明の中でヤンは「この国には、政治を再編成し、国を引き裂く二極化を逆転させるための新しいタイプの政党が必要だと考えた」と書いている。

ヤン、ジョリー、クリスティン・トッド・ホイットマン元ニュージャージー州知事(共和党)は、ワシントンポスト紙に寄稿した水曜日の論説の中で、「前進党はアメリカ国民を団結させるだろう」と述べている。

彼らは「アメリカは新しい政党を本当に必要としている。穏健で常識的な多数派を反映する政党が必要なのだ」と書いている。

ヤンの声明によると、前進党は現在、既にいくつかの州で投票用紙に候補者の名前を記載している。

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Just 1 in 4 say two parties good enough to represent Americans’ political views: poll

世論調査:アメリカ国民の政治的見解を代表する政党は2つで十分と答えた人は4人に1人(Just 1 in 4 say two parties good enough to represent Americans’ political views: poll

USAトゥディ』紙とサフォーク大学の最新の共同全国世論調査によると、調査対象者の約26%が第三政党は必要だと考えており、約33%が3つ以上の複数の政党が必要だと回答していることが明らかになった。

シリン・アリ筆

2022年728

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/changing-america/respect/diversity-inclusion/3578382-just-1-in-4-say-two-parties-good-enough-to-represent-americans-political-views-poll/

要約:

USAトゥディ』紙とサフォーク大学による最新の世論調査によると、アメリカ人の約4分の1が、政党の選択肢に満足していないことがわかった。

・約26%は第三政党が必要だと考えていると答えた。

ニューヨーク市長選挙と大統領選挙の民主党予備選挙に出馬したアンドリュー・ヤンが「前進党(フォワード党)」という新しい政党の血統を発表した。彼の願いは叶うかもしれない。

アメリカ人は現在の政党の選択肢に満足していないようで、最新の全米規模の世論調査で登録済有権者の4分の1は第三極が必要だと考えていることが明らかになった。

USAトゥディ』紙とサフォーク大学の最新全国世論調査によると、調査対象者の約26%が第3の政党が必要だと考えており、約33%が3つ以上の複数の政党が必要だと回答していることが明らかになった。

現在の民主・共和両党による二大政党制で十分だと答えたのは約24%に過ぎない。

ジョー・バイデン大統領の経済的支持率が30%を記録し、4月時点より5ポイント低下した。また、ドナルド・トランプ前大統領を11ポイントも下回っている。そうした中でこのような結果が出た。

USAトゥディ』紙とサフォーク大学の世論調査は、全米の登録済有権者1000人を対象に行われ、回答者の約76%が、この国は間違った方向に進んでいると考えていることが明らかになった。

「連邦議会選挙が今日行われるとしたら」という質問には、約44%が民主党の候補者に投票すると答え、約40%が共和党の候補者を選ぶと答えた。

しかし、47%近くが「バイデンにほとんど歯向かう新しい連邦議会を見たい」と答え、約42%が「大統領に協力的な議会を見たい」と答えた。

ニューヨーク市長選挙と大統領選挙の民主党予備選挙に出馬したアンドリュー・ヤンが「前進党(フォワード党、Forward Party)」と呼ばれる新党を発表した直後に、この厳しい内容の新しい調査データが発表された。

これは、ヤン氏の前進党(フォワード党)、「リニュー・アメリカ・ムーヴメント」、「サーヴィス・アメリカ・ムーヴメント」という3つの別々の政党の合同を意味する。3つとも、民主党出身者、共和党出身者、無党派層で構成されている。

前進党(フォワード党)のウェブサイトによると、極端な政治を否定し、アメリカ政治に代表されない大多数の人々のための問題に取り組む意向であるとしている。

「前進党は、党派的な極端さを捨て、この国をより良くするための実際的な方法を見つけようとする全ての人のための政治的な拠点を作る。民主党か共和党か、あるいは無党派かどうか、ID(指示や立場)をチェックするようなことはしない」と、前進党のウェブサイトは述べている。

前進党は、今度の中間選挙の投票用紙に独自の候補者を立てないが、厳選された候補者への支持を提供する予定だ。この新政党は、今年末までに15の州で、2024年末までにアメリカのほぼ全ての州で法的承認を得ることを望んでいる。

データによると、新しい政党を導入するには良い時期かもしれないが、前進党がアメリカ国民に受け入れられるかどうかはまだ分からない。

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ヤンの新党は「前進党(フォーワード党)」と呼ばれる(Yang’s new party will be called ‘The Forward Party’

モニク・ビールズ筆

2021年923

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/technology/573653-yangs-new-party-will-be-called-the-forward-party/

大統領選挙に立候補したアンドリュー・ヤンの新しい第三党の名称は「前進党(フォワード党)」になる。ヤンが最新刊の中で明らかになった。

『ビジネス・インサイダー』誌は、この名前が明らかになったのは、ヤンの『前進:私たちの民主政治体制の未来に関する覚書(Forward: Notes on the Future of Our Democracy)』と題された本の最後の部分にその名前が明らかになったと報じた。

この著書には、ヤンの新しい政党の指針となる理念も詳しく書かれている。「優先順位付投票制と開かれた予備選挙(ranked-choice voting and open primaries)」、「事実に基づく統治(fact-based governance)」、「人間中心の資本主義(human-centered capitalism)」などが挙げられている。また、2020年の大統領予備選で彼が一定の支持を得たアイデアである「ユニバーサル・ベイシック・インカム(universal basic income)」を推進するとも書かれている。

ヤンはまた、アメリカの二大政党制(two-party system)の「複占(duopoly、訳者註:ある市場に2つしか企業が存在しない状態)」を批判しており、これはアメリカが最近耐えている「危機の連鎖(cascade of crisis)」に対応するために作られたものではないと主張している。『ビジネス・インサイダー』誌が報じた。

『ビジネス・インサイダー』誌によると、ヤンは著書の中で、「機能不全は私たちを殺すだろう(The dysfunction is going to kill us)」と述べている。「更に悪いことに、それが変わると考えられる理由はない。民主、共和の既成政党が勝つ戦争に私たちははめ込まれてしまうだろう。彼らは依然として、国内で最も裕福な地域の一つで権力を売買してうろつくだけであろうし、国民は敗北してしまうだろう」。

2020年の大統領選挙民主党予備選挙から撤退した後、ヤンはニューヨーク市長の座を狙っていたが、より実績のある候補者たちよりも長く選挙戦にとどまった。

彼の著書は10月5日に発売予定だ。

(貼り付け終わり)

(終わり)