古村治彦です。

 もう先週のことになってしまうが、アメリカ大統領選挙副大統領候補者討論会がユタ州の州都ソルトレイクシティのユタ大学のキャンパスで実施された。副大統領候補者討論会は1回だけの実施予定であり、この時だけが一対一の直接対決ということになった。

 共和党からは現職のマイク・ペンス副大統領、民主党からはカマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)が出席した。ペンス副大統領としては、トランプ大統領のサポート、1回目の大東島候補者討論会でのトランプ大統領が混乱を引き起こしたので、何とか低評価からの挽回を図ることが必要だった。ハリスと民主党側からすれば、既に大きなリードをしているので、ハリスが調子に乗って失言をしたり、変な態度を取ったりして批判のネタを与えないということが重要だった。

 副大統領候補者討論会はお互いに司会者からの質問に答えない場面が多かった。トランプは自分の言いたいことをまくしたてて荒々しく質問に答えなかったが、ペンスは静かに司会者からの質問に答えなかった。ハリスは笑顔で司会者とペンスを馬鹿にしながら質問に答えなかった。

しかし、お互いの発言を遮ることは少なかったということもあって秩序だった討論会のように見えた。ただ、私が実感したのは、「やっぱりハリスは人気が出なかったはずだ」ということだ。

考えてみれば、昨年から始まった大統領選挙民主党予備選挙で、ハリスは有力候補と考えられていた。その経歴や年齢、容姿からも支持が集まれば一気に大統領候補になるとも考えられていた。しかし、実際には全く人気が出ず、選挙戦から早々に撤退する羽目に陥ってしまった。討論会でのハリスの姿や言動からは、人間性の悪さが出てしまっていた。ペンスの(演技をしていただけかもしれないが)純朴そうなアメリカのおじさん、という姿が更にハリスの攻撃性や人を馬鹿にする態度を際立させることになった。

 エリートに対する反感、ということはアメリカで大きくなっている。日本でもそうなりつつあると私は感じている。ハリスはそのエリート臭と上から目線が出ないようにしなければ、所属する党の任期だけではなく、個人的な人気も必要となってくる、これからの大統領選挙で勝つことはないだろう。

 討論会の最後に司会者がアメリカの少女からどうして政治家同士が激しく罵り合い、いがみ合うのかという趣旨の質問があったことを紹介して、両候補者に答えを求めた。ペンスは激しく言い合うのは国のためを思ってのことで、それが終われば仲良くやっているし、またそうでなければならない、と答え、ハリスはそうした分裂をしないために、バイデンは出馬した、と最後までバイデンの宣伝に努めた。最後の質問に関しては、パン巣の方が素晴らしい答えだった、大統領選挙ということを離れての答えだった、と私は思う。ハリスは最後の最後まで大統領選挙にこだわり過ぎて、執着が過ぎて、見にくい姿を晒したと私は思う。

 大統領選挙候補者討論会の第2回目は中止となった。開かれていれば明後日にまた放送されていたことだろう。討論会についても考え物だ。お互いが言いたいことを言って相手の発言を聞かず、質問にも答えないという形式で何の意味があるだろう。また、それで説得される有権者がいるとも思えない。前回の大統領候補者討論会を見て、私は自分がアメリカ国民なら棄権するという選択もあるだろうなと思った。政治への関心がアメリカでも下がっていくということになるだろう。アメリカはデモクラシーの総本山と自負しているだろうし、それを世界中に広めなければという考えも根強いが、国内の惨状を俯瞰で見れば、すでに崩壊への道を歩き始めたということになる。

(貼り付けはじめ)

副大統領候補者討論会の5つのポイント(Five takeaways from the vice presidential debate

ナイオール・スタンジ筆

2020年10月7日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/520136-five-takeaways-from-the-vice-presidential-debate

ペンス副大統領とカマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)が水曜日の夜、ソルトレイクシティでただ1回の討論会のために顔を合わせた。

今回の対決はトランプ大統領とジョー・バイデン前副大統領との間の嵐のような1回目の討論会から8日後に行われた。

主要なポイントは何だったろうか?

(1)ハリスは自身の目的を達成した(Harris hit her goals

民主党側のコンビは世論調査で大量リードしている。従って、ペンス副大統領とは引き分けで、大きな失策さえなければハリスにとっては良い討論会だったということになる状況だった。

彼女はそれ以上のことをやり遂げた。

討論会の最初の数分間、トランプ政権の新型コロナウイルス感染拡大への対応を激しく非難した。ハリスは「我が国の歴史上、どの政権も侵さなかった最大の過ち」と表現した。

ハリスは医療制度など他の論点でもパンチを繰り出した。具体的にはトランプ大統領による軍人たちに対する侮辱と財政について攻撃した。

トランプ大統領の多額の負債について最近になって情報公開されたことについて、ハリスは次のように述べた。「アメリカ合衆国大統領であり軍の最高司令官が借金を持っているということを知るのは良いことです。なぜならアメリカ国民には、大統領の決断に影響を与えているものについて知る権利を持っているからです」。

ハリスのパフォーマンスは完璧ではなかった。ハリスは、トランプ大統領が指名したエイミー・コニー・バレットが承認を得ることに成功した場合には、彼女とバイデンが当選した後で、連邦最高裁の定数を増やすかどうかという質問について、全く答えなかった。

しかし、全体を通して、ハリスは、完全な負けを喫しないことが必要であったことを考えると、勝利したと評価できる。

(2)ペンスは自身の仕事を行った(Pence did his job

ペンス副大統領はトランプ大統領よりも極めて正統な政治家である。彼は水曜日の夜にそのことを改めて示した。

副大統領になる前には、自分自身のラジオ番組を持っていたペンスは討論会参加者として力を持っている人物だ。そして、割り込むようなことをする人物ではない。これらのことは、4年前に証明されている。この時はヒラリー・クリントンの副大統領候補者だったティム・ケイン連邦上院議員(ヴァージニア州選出、民主党)が相手だった。

水曜日の討論会で、ペンス副大統領はトランプ大統領の経済政策について説明し、支持を得る方向に進めることができた。ペンス副大統領は通常運転のトランプ大統領よりも、説明が上手くかつ人々を説得する話し方ができる人だ。ペンス副大統領はいくらかの共感を示すこともできる人であり、共感を示すという点はトランプ大統領のウィークポイントだ。

ペンス副大統領に関しては、SNS上で持ち時間を超えて話していたこととハリスの発言に割り込んだことがあったことで批判を受けていた。しかし、ペンス副大統領もまた大きな失策を犯すことはなかったし、時にハリスを守勢に回らせることに成功した。

ペンス副大統領は老練なパフォーマンスを行った。しかし、トランプ大統領が勝利をするためにどうしても必要な新しい支持者の獲得ということはできなかった。

(3)質問に答えないことが多くあった(Whole lotta dodging going on

候補者2人は多くの質問に答えず、そこから派生した議論は行われなかった。

具体例はたくさんある。その一つは、ペンスがトランプ政権のオバマケアを廃止する試みについて質問された時だ。ペンスはこの質問に対して彼自身の中絶反対の信念について語り、バイデンとハリスが連邦最高裁判所の定員を増やすのかについて質問した。ハリスも自分の番になってオバマケアについての質問を避けた。

ペンス副大統領はこのほかにも複数の質問に答えなかった。トランプ大統領の健康状態についての透明性をアメリカ国民は持つべきか、トランプ大統領が落選して権力を移譲する際に平和的に行わないということになったら、ペンス副大統領はどうするかという質問には答えなかった。

討論会の司会者であるスーザン・ペイジは、候補者たちにきちんと質問に答えるようにさせなかったということで批判を受けている。

(4)例のあのハエが勝利した(The fly won

討論会の夜に最も人々の関心を集めた瞬間は疑いなくあの瞬間だった。

討論会の後半、一匹のハエがペンス副大統領の頭にとまった。そしてしばらくの間、そこにとどまった。副大統領は何の反応も示さなかったが、ツイッターは反応した。

いくつものツイッターのアカウントで早速、ハエの考えていることを代弁して核ということが行われた。

バイデン選対は、献金のお願いに合わせて、ジョー・バイデンがハエたたきを持っている写真をツイッターに投稿した。民主党はまたインターネット上のアドレス「flywillvote.com」を登録した。このアドレスを打ち込むと、民主党全国委員会のウェブサイトに飛び、人々に投票のための登録を行うことを促すようになっている。

このハエは極めて暗い選挙戦の中でいささかの軽い休息となった。

ハエの出現は水曜日夜の討論会における最も興味深い出来事の一つとなった。しかし、そのことが示しているのは、水曜日の討論会がいかにありふれたものであったか、特に先週のトランプとバイデンとの間の討論会と比べて平凡なものであったかを示すものである。

(5)ゲームの様相を変えることはできなかった(No game changer

水曜日夜、人々は標準的な、高いレヴェルの政治的な討論会を目撃した。どちらの候補者たちとも相手をノックアウトできなかった。どちらの候補者ともにキャリアを傷つけるような酷い失言をしなかった。

最終的な結果としては、新型コロナウイルス感染拡大、経済、トランプ大統領の衝突と軋轢を生み出す性格といった様々な大きな問題に特徴づけられている選挙戦において、今回の討論会は無視できる程度の影響しか与えなかったということである。

民主党側は選挙戦の様相が変わらないことで利益を得る。

しかし、全ての前例と予測がことごとく覆されている年の中で、次に何が起きるかを分かっている人などいるだろうか?

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世論調査:過半数が副大統領候補者討論会ではハリスがペンスに勝利したと考えている(Poll: Majority believe Harris won VP debate against Pence

ジョン・バウデン筆

2020年10月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/520162-poll-majority-believe-harris-won-vp-debate-against-pence

カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)とペンス福大東慮との間で行われた、水曜日の副大統領候補者討論会を視聴した有権者のうち、10人中6人が、ハリスがペンスを上回ったという印象を持ったことが世論調査の結果で明らかとなった。

CNNSRSS社は、登録済み有権者で水曜日の討論会を視聴した人たちに対して共同世論調査を実施した。59%の人々が討論会の檀上でハリスが上手に討論を行ったと答え、38%がペンスの方がうまかったと答えた。

今回の副大統領候補者討論会に対する認識は性別で分かれている。女性の討論会視聴者の69%が「ハリスが勝利した」と答えた。30%が「ペンスが勝利した」と答えた。男性視聴者の48%が「ハリスの方が上手くやった」と答え、46%が「ペンスの方が上手くやった」と答えた。

CNNの調査によると、視聴者の多くは民主党を支持するようになっているが、討論会の前後での支持率を調べてみると、ハリス副大統領の支持率は41%のままで、ハリスの支持率は56%から63%に上がった。

視聴者の55%が今回の討論会の結果が投票に影響を与えることはないと答えた。討論会の結果が影響を与えると答えた視聴者の過半数は、討論会の結果を受けて、ハリスのランニングメイトであるジョー・バイデン前副大統領(民主党)に投票することになるだろうと示唆した。

CNNSRSS社の共同世論調査は登録済み有権者609名を対象に、討論会直後に実施された。誤差は5.3ポイントだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側