古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:副島隆彦

 古村治彦です。

zentaishuginochugokugaamericawouchitaosu001

全体主義の中国がアメリカを打ち倒すーーディストピアに向かう世界hongkongmap001

 2019年7月29日の昼過ぎに香港に向かった。香港では香港島西部にある地下鉄の西営盤駅近くのホテルに投宿した。何となくだが深圳から香港に移ると少しホッとするところがある。ホテルにはスマホが置かれており、ご自由にお使いください、とあった。このスマホを使ってもいいし、自分のスマホのためのwi-fiにも使えた。
smartphoneinhotelinhongkong001

hongkongstreetview001
hongkongdoubledecktram001
 香港では通常の観光もそこそこにデモが行われていた場所に向かった。香港島の中心部にある中環(Central、セントラル)から金鐘(Admiralty、アドミラルティ)にかけては金融街で世界各国の銀行や証券会社が支社を置いている。従って、欧米からの駐在員たちも多くおり、デモ隊はここを中心にしてデモをしていた。香港大学からも地下鉄ですぐに行けるということも利点であり、世界各国のメディアに注目を集めることができるという計算もあったようだ。また、香港の立法院や中国人民解放軍の本部も置かれている。
legislationinhongkong001
立法院
chinesepeoplesliberationarmyheadquartersinhongkong001
中国人民解放軍本部
 私たちが香港に滞在した7月末の段階では、デモが過激化する前
で、まだまだ落ち着いていた。ただ、街のあちこちに8月5日にジェネラル・ストライキを行おうという呼びかけのポスターやチラシが貼ってあった。デモがこれから過激化していくだろうと考えられた。
hongkongdemonstration001
hongkongdemonstration002
上から読んでも横から読んでも香港と加油(頑張れ)

 ホテルでシンガポールのテレビ局のニュースを見ていたら(英語での放送なので分かりやすい)、香港の地下鉄でのデモ隊と警察の衝突について放映されていた。地下鉄が動かない、プラットフォームには乗客があふれかえっていた。市民へのインタヴューで、ある男性は本を片手に「今日は本を読みたいと思っていたので、ゆっくり本を読んでいる」と答えて、間接的にデモを支持する発言をしていた。しかし、もちろん怒っている人たちもいた。

hongkongdemonstration003

hongkongdemonstration004

 デモに関する落書きには「Be Water(水のようになれ)」という言葉が散見された。これは、香港が生んだ映画界のレジェンドであるブルース・リーの言葉だ。水は変幻自在に形を変える。静かな時は鏡のようにもなるし、荒れ狂う時には大地を削り、生物の命を奪う。戦国武将の斎藤道三の旗印も水であったことはよく知られている。ブルース・リーは今でも香港の人々に親しまれているということが分かるし、逆にブルース・リーよりも更に香港映画を世界に広めたジャッキー・チェンは大陸側にすり寄ってすっかり人気がなくなっているということが推察される。
bewaterhongkong001

 デモに関しての私見を述べる。中国は外国から食い物にされてきた苦い歴史がある。アヘン戦争(1840―1842年)とその後の南京条約(1842年)によって国の一部が外国の植民地となり、国の富が吸い取られるという苦難を味わった。私は毛沢東が中国共産党を率いて日中戦争、国共内戦を戦い勝利できたのは、彼が自主独立(外国勢力に頼らない)ということを訴えたからだと思う(実態はアメリカからの支援で勝利をした訳だが)。外国からの支援、武器や資金の援助を受けてしまえば、その外国の意向を無視できない。中国の近代化のために、外国に頼ろうとした人たちは最終的にはうまくいかなった。これを敷衍すれば、香港の学生デモは外国に頼ろうとしている時点で、多くの中国人からの支持を得られないのではないかと私は思う。

 観光はそこそこにと決めていたが、九龍半島に渡り、リッツカールトンホテルに行って、香港市街を眺めながら、紅茶を飲んだ。シンガポールのTWGの紅茶が出され、大変においしかった。100階からの眺めも素晴らしかった。
teaofritscarlton001
viewfromrtizcarlton001
 リッツカールトンホテルの下に、中国の高速鉄道の駅である香港西九龍駅がある。この西九龍駅からは中国各地に向けての高速鉄道が出ている。
highspeedrailstation001
highspeedrailstation002

 中国のホテルではフロントでも英語が通じにくかったが、香港のホテルはさすがにどこでも英語は通じた。しかし、香港市街の小さな食堂やコンビニでは英語が通じないことが多かった。これは意外であった。

 また、香港では反大陸、反中国中央政府、反中国共産党の気風が強いようだと感じた。大陸側ではウイチャットペイとアリペイでの決済が既に支配的であるのに、香港では今でも現金が通じた。ある人に聞いたら、大陸で使われているようなものを遣えるかという意識が香港の人々の間にあるらしい。また、中国語(普通語)を話すのも疎まれるようだ。同行したK氏(日本人)がタクシーやレストランで話すと、「あなたは外国人なんだから下手でも片言でも英語を使った方が良い、変に中国語を使うべきではない」と忠告されたということだ。中年以上は広東語を話しており、中国語は下手だということだ。抑揚や発音がうまくないのだそうだ。それでも若い人たちは学校教育を通じて普通語を話せるようになっているようだ。

 「場(トポス)」としての香港についての報告としては小川さやか『チョンキンマンションのボスは知っている: アングラ経済の人類学』が興味深い。

 深圳と香港に行き、日本にはない活力を感じた。「最前線」にいるという感覚は日本では感じることはない。この感覚を味わうだけでも中国を訪問する意義はある。日本は閉鎖された沈みゆく船だ。そのことに気づかされる。それだけでも大きな収穫となる。

 

 以下に、『全体主義中国がアメリカを打ち倒すーディストピアに向かう世界』のまえがき、目次、あとがきを貼り付けます。是非お読みください。よろしくお願いいたします。

 

(貼り付けはじめ)

まえがき   副島隆彦

 

中国は表紙に打ち込んだとおり明らかに全 トータリタリアニズム 体主義国家である。

その別名が「共産中国(きょうさんちゅうごく)」である。みんなに嫌われるはずだ。だが、今後、世界中がどんどん中国のようになる。

 

世界中のすべての国が、中国化するのである。その代表的な具体例かつ証拠は、監視カメラ(CCTV [シーシーティブイ]。今はコミュニティ・サーキットTV[ティビー]と呼ぶ)が、街中のあらゆるところに取り付けられていることだ。アメリカも、ヨーロッパも、日本だって監視カメラだらけの国になっている。

 

中国では監視カメラによる民衆の動きの把握のことを 天 てんもう 網(ティエン・ワン)と言う。「天網恢恢疎にして漏らさず」の天網である。

私は最近、中国に香港から入って 深圳(しんせん)に行った。この中国のITハイテクの最先端の都市を調査してきた。あれこれもの凄(すご)い発展ぶりだなと、思った。それを後(あと)の方で報告する。中国にまったく行きもしないで、中国の悪口ばかり言っている(書いている)人たちは、お願いですから、せめて北京と上海に行ってください。安いホテル代込み10万円で行けます。エクスペディアなどネットで安くで予約するといい。

 中国は国民の生活を監視している国になってしまっている。もうすぐ監視カメラが中国全土に 6 億台取り付けられるそうだ。中国国民14億人の2人に1台の割合だ。まさか個人の家の中までは取り付けられないだろうが、それだって分からない。中国のすべての都市の街路には、既に付いている。

 ところが、これらの中国製の監視カメラ会社に、最初に技術を開発して売ったのは、日本の大手電機会社である。ニコンとキヤノンとパナソニックとソニーが、この公共空間のカメラの技術を一番先に開発した。日本がいまもドイツ(カールツァイスとライカ)にも負けないで、世界一の技術力を誇っているのは、この分野である。専門技術でいえば、フィルムとフィルターとレンズの技術である。ハッセルブラッド社(スウェーデン)は、DJI(中国のドローンの最大手)が買収した。

 あとのほうで載せるが(P61)、キヤノンの御手洗富士夫(みたらいふじお)会長の発言で、「キヤノンは監視カメラで未来を切り開く」と最近堂々と日経新聞に出ていた。

 中国だけが国民を徹底的に監視しようとしている国家なのではない。米、欧、日の先進国も監視国家だ。それに続く新興国も、「国民を監視する国家」になっていくのである。すなわち中国が先導して、他の国々もそれに追随する。これからの人類がたどるのは、このディストピア(幻滅の国。絶望郷[ぜつぼうきょう] 。監視国家)への道である。中国だけがますますひどい国になるのではない。ディストピア(dystopia)はユートピア(utopia、理想郷[りそうきょう])の反対語(アントニム)である。 

 人類が自分の未来を、盲目的、直線的かつ貪欲に突き進む結果、世界はこのあと、いよいよ中国のようになっていく。中国の悪口を言っていればいいのではない。

 国民生活が、権力者や支配者によって徹底的に監視され、統制される政治体制のことを全体主義(totalitarianism トーリタリアニズム)という。この全体主義という言葉を広めたのはドイツ人の女性思想家のハンナ・アーレン人である。彼女が、1951年に書いた『全体主義の起源』で、ソビエト体制を批判した時に使われた言葉である。このコトバの生みの親は、イタリア知識人のジョバンニ・アメンドラである。

 世界がやがて中国のようになっていく、という課題は、私が急に言い出したことではない。すでに感覚の鋭い言論人や知識人たちによって「世界は中国化する」という本も出ている

 もう 20 年前からイギリスのロンドンは、すべての街 ストリート 路に監視カメラが設置されていたことで有名だ。今の日本も主要な生活道路のほとんどにまで、監視カメラが設置されている。このことを日本国民は知らされていない。新宿や池袋のような繁華街だけが、カメラで監視されているのではない。 

 民衆の往来、行き来を、政府や取り締まり当局(警察)がずっと撮影して、画像を保存している国が立派な国であるはずがない。だが、どこの国の警察官僚も、必ずこういうことをやる。官僚(上級公務員)というのは、本性(ほんせい)からしてそういう連中だ。

 これは人類にとっては悲しむべき間違った方向である。科学技術(テクノロジー)の進歩が、コンピューターや通信機器(スマホ他)の異常な発達とともに、こういう監視技術を最高度に発達させた。この監視システムを維持するために、一体どれほどの警察公務員が新たに採用され続けているかについて、誰も関心を払わない。

 それにしても、全 トータリタリアニズム 体主義は強いなあ。世界大恐慌が襲いかかったとき、中国はシャッタード・アイランド(バターンと金融市場を閉じる)ので、ビクともしない。

=====

目次

まえがき 3

 

第1章 中国のディストピア化を追いかける世界

中国は巨大成長したという事実は否定できない 18

世界の知識人が描いてきたディストピア像 22

左右のどっちからも嫌われるのが一番いい 30

全体主義中国を徹底的に叩く 33

ディストピア映画の歴史的系譜 40

 

第2章 貿易戦争から金融戦争へと移り変わった

〝卑屈〟なテンセントが金融戦争に勝利する 52

銀行消滅とCCTV 59

銀行の別名は「信用」 69

アリババはNY市場から締め出されるのか? 70

中国のネット世代と実質的なデモクラシー 75

ファーウェイはアメリカのいじめに負けなかった 82

アメリカと中国の睨み合いは続く 87

中国人は国有企業が嫌い、民間企業大好き 90

半導体製造の切り札、紫光集団 96

 

第3章 中国は最早アメリカとの力相撲を恐れない

中国の技術泥棒を引っ張った「千人計画」 104

結局中国を一致団結させてしまったアメリカのミス 109

米中IT戦争と日本の半導体潰しの意外な共通点 112

サムスンを育てたのはインテル 117

新たな火種となったレアアース 120

 

第4章 中国にすり寄る 韓国、北朝鮮と台湾を巡るつばぜり合い

北朝鮮と韓国による「高麗連邦」の誕生 130

GSOMIA破棄問題で嫌韓が高まった本当の意味 132

アメリカが韓国を切ったのではなく、韓国がアメリカを切った 135

香港問題は台湾問題である 139

2020台湾総統選とテリー・ゴウの動き 142

韓国瑜はアメリカの回し者だった 145

中国は民主化するのか? 150

台湾の中国化とシーレーン問題 152

中国人はヒラリー・クリントンのことが大嫌い 154

もうアメリカの圧力などなくなってしまった 160

警戒の目はファーウェイの海底ケーブルに 164

 

第5章 中国の膨張を招き込んだアメリカの弱体化

腰砕けとなったペンス副大統領 170

「外国にいる米軍の兵隊たちは国に帰って、ゆっくり休め」 174

米中貿易戦争は、今年中に表面上は静かになる 177

イレイン・チャオはチャイナ・ロビー代表で政権ナンバー 3 180

EVの天下を取る中国にひれ伏すマスク 187

 

第6章 アフリカと中央アジアに広がる チャイナネットワーク

アフリカの一帯一路戦略 204

次の世界の中心は中央アジアになる 213

中国はアメリカからアフガンを任された 219

 

第7章 ディストピア中国の不穏な未来

新疆ウイグル問題の真実 224

私は見た、深圳の現実を 236

華強北と中国のジャイアント・ベイビーたち 238

ドローンの恐るべきパワー 248

デジタル人民元の脅威 250

 

あとがき 252

=====

あとがき   副島隆彦

 

この本『全体主義(トータリリアニズム)の中国がアメリカを打ち倒す││ディストピアに向かう世界』は、世界最大の牢獄国家、中国についての、私の 11 冊目の本である。

英文の書名は、“Totalitarian China will finish of America(トータリタリアン・チャイナ・ウィル・フィニッシュ・オフ・アメリカ)”である。このfinish off(フィニッシュ・オフ)という動詞は、「とどめを刺す、息の根をとめる」という強い意味だ。

 

『あと 5 年で中国が世界を制覇する』(2009年刊)という本も、私は書いている。この本は反共(はんきょう)右翼の人々から激しく嫌われた。「何を言うか。中国は暴動が起きて、中国共産党は潰(つぶ)れるのだ」と、彼らは、私の本に最大限の悪罵(あくば)を投げた。それで、現実の世界の動きは、その後どうですか。

 

人も国家も、より強い者に虐(いじ)められながら、這い上がってゆく途中は、善であり、正義である。より強い国の支配の下(もと)で、苦心惨憺(さんたん)しながら勝ち上がってゆく。

しかし、一旦(いったん)、勝者になったら正義[ジャスティス]justice)から 悪[イーヴォ]evil)に転化する。中国が、アメリカ合衆国を打ち負かして世界覇権(はけん)国(ヘジェモニック・ステイト)になったら、その時、巨大な悪[イーヴォ]evil)になるのである。それまであと5年だ。

人も国家も、そして企業も、2番手に付けて1番手(先頭、支配者[ガリバー])の真似をしながら必死で喰い下がっているときが、一番美しい。これまでの40年間(鄧小平[とうしょうへい]の「改革改放宣言」1978年12月18日。 40周年を中国は祝った)、私は、アメリカ帝国の後塵(こうじん)を拝しながら、蔑(さげす)まれながら、泥だらけの極貧(ごくひん)の中から、着実に勝ち上(のぼ)ってきた中国を頼もしく、美しいと思ってきた。

 

この11月20日に北京で、〝世界皇帝代理〞のヘンリー・キッシンジャーが心配した。これに対して、翌日即座に、習近平は、「心配しないで下さい。中国は世界覇権(hegemony、ヘジェモニー。ドイツ語ならヘゲモニー)を求めません(私たちは、これまでにいろいろ苦労して、人類史を学びましたから)」と発言した。

これが一番大きな処(ところ)から見た、今の世界だ。日本という小ぢんまりとした国で世界普遍価値(world values、ワールド・ヴァリューズ)を理解しようとして、私は、独立知識人として(本書第1章を参照のこと)、孤軍奮闘して来た。

 

 本書は書名が決まったのが11月11日。体調不良の中で、2週間で作り上げた。だが手抜きはない。いつもながらの全力投球だ。私の地獄の踏破行(とうはこう)に同行して、命懸けの鎖場(くさりば)にも付き合ってくれたビジネス社大森勇輝編集長に記して感謝します。

 

2019年12月

副島隆彦

(貼り付け終わり)

zentaishuginochugokugaamericawouchitaosu001

全体主義の中国がアメリカを打ち倒すーーディストピアに向かう世界

(終わり)

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。 

 2019年7月27日から31日にかけて中国の深圳と香港を訪問した。副島隆彦先生の調査旅行に同行した。調査旅行の結果は『全体主義中国がアメリカを打ち倒すーディストピアに向かう世界』(副島隆彦著、ビジネス社、2019年12月21日)として結実した。私たちが訪問したのは地図の通りだ。

zentaishugichugokugaamericawouchitaosu003

『全体主義中国がアメリカを打ち倒す』から

zentaishuginochugokugaamericawouchitaosu001

全体主義の中国がアメリカを打ち倒すーーディストピアに向かう世界

 本のタイトルにあるディストピアとは技術が進み、生活全般が豊かに便利になるが、技術の進歩を利用して、政府や権力者が人々を監視したり、コントロールしたりする、一枚めくると非常に怖い世界ということになる。SF小説などのテーマとしてこれまで長く取り上げられている。ディストピア小説としては、ジョージ・オーウェルの『一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)』、アーサー・ケストラーの『真昼の暗黒 (岩波文庫)』、オルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)』が挙げられる。

 私たちは2019年7月27日に日本を午前早くに出発し、昼頃に香港国際空港に到着した。空港では日本人で中国語が堪能のK氏と合流した。空港でK氏が予約していた自動車(運転手付き)に乗り、深圳に向かった。香港と深圳の間に広がる湾にかかっている深港西部通道を通り、数十分で深圳に到着した。香港からは鉄道でも深圳に向かうことができるが、自動車で深港西部通道を使った方が早く便利だそうだ。

hongkongshenzhenwesterncorridormap001
seibudaitsudou001

chineseimmigration001

 昼過ぎに深圳西部にある地下鉄の后海駅近くのホテルに到着した。ホテルは日本からインターネットの予約サイトを使って予約したもので1泊1万円程度だったが、清潔で豪華な部屋に泊まることができた。夕方に近くの火鍋屋で食事を摂り、それからタクシーで深圳の電気街・「華強北(ファーチャンペイ)」に向かった。華強北は電気製品の卸や小売りをしている店が並んでいる場所だ。夜にかけてぶらぶらして、地下鉄を使ってホテルに帰った。

huachanpei001

huachanpei002

 到着翌日の28日、私たちは運転手付きの自動車を雇って深圳を回った。まずは、ファーウェイ(華為技術、Huawei)の本社に向かった。ファーウェイの本社は深圳の北部に位置し、一つの街のように広大な地域を占めている。高い建物はない。なんでも高層ビルにしてエレベーターを使って上り下りをする、エレベーターを待つ時間がもったいないということで低層にしているという話だ。その一角にはファーウェイが経営するゲスト用のホテルまである。

huawei001

huawei002
huawei003 

 ファーウェイの隣の街区には台湾のフォックスコン(鴻海科技集団、中国では富士康)の工場がある。近藤大介の『ファーウェイと米中5G戦争 (講談社+α新書)』によると、1980年代、ファーウェイの創業者・任正非(じんせいひ、Ren Zhengfei、1944年―、75歳)とフォックスコンの創業者・郭台銘(かく たいめい、Guo TaimingTerry Guo、1950年―、69歳)は、両者が30歳代の頃から知り合いで、1980年代から協力し合って会社を大きくしていったそうだ。
foxconn001
foxconn002

 その後、深圳市内を回った。三和人力市場という場所には衝撃を受けた。ここは元々、日雇い労働者たちの街であり、日本語で言えば、ドヤとなる安価な簡易宿泊所が集まる場所だった。今では簡易宿泊所の1階にはコンピューターが所狭しと並べられて、インターネットゲーム(ネトゲ)ができるようになっている。それは何故かと言えば、全国から若者たちが集まって1日中インターネットゲームをしているからだ。簡易宿泊所(1泊数百円)に泊まりながら、ネトゲをしている。日本でも問題になった、ネトゲ廃人たちだ。
sanwajinrikiichiba001

zentaishuginochugokugaamericawouchitaosusanwajinrikiichiba001

 この街を歩き回っていると、この場所を取り仕切っているであろう中年女性が出て来て、私たちに「写真を撮るな、写真を撮るなら金を払え」と迫られて恐怖を感じた。インターネットゲームとゲームに耽溺する若者たちという人類の行き着く先が、地廻りが支配するような場所に存在している混沌が大変に印象的だった。
tencent001
tencent002
baidouheadquarters001
baidouheadquarters002

 その後、テンセントや百度の本社を見て回り、また、福田地区にあるショッピングモールに向かった。ここには日本の無印良品が大型ショップとホテルを展開している。また、モールの中には日本食レストランを集めたフロアも設置されていた。こうして見ると、日本のソフトパワーというのも侮れないものがある。無印良品のショップには日本の商品が日本とほぼ同じ値段で売られていた。家族連れが楽しそうに歩いたり、ソファーに座っておしゃべりをしたりしていた。おしゃれな生活を総合的に提案という形なのだろう。このモールの駐車場や道路には高級外車がずらりと並んでいた。ここでのショッピングや食事を楽しむことが出来るのは金持ちに限られるだろう。

fukudenmujihotel001
fukudenmujishop001
fukudenshoppingcenter001
fukudenshoppingcenter003
fuludenshoppingcenter002

 ホテルの近くにある地下鉄の駅周辺にある店で従業員募集のポスターが出ていた。そのいくつかを見てみると、普通のお店の従業員の賃金は月3000元前後のようだ。1元は15元から16元だから、日本円では5万円程度ということになる。店長クラスはその倍の6000元(約10万円)くらいだ。日本式のエステサロンだと店長は年間20万元(月1万6000元)と表示されていた。日本円だと300万円近くだ。
esteticsalonrecruitment001
bakeryrecruitment001
restaurantrecruitment001
 日本と比べて3分の1くらいだと言えるだろう。物価は中国の方が安いとは言え、大都市の深圳で月5万円で暮らすのは厳しい。福田地区のショッピングモールにある無印良品や日本食レストランで楽しむのは難しい。しかし、日本はこれからも給料が下がっていくことしか考えられないのに対し、中国はこれから伸びていくぞということを実感できるし、自分は自分の力で這い上がってやるという気概も強いので、若者たちは明るい。
starbucks001

starbucks002
starbucks003
 私はスターバックスにも行ってみた。ここで驚いたのは、値段が日本と変わらないことだった。レシートの写真を見てもらえれば分かるが、アイスラテとトーストを頼んで55元、日本円で約800円だ。月5万円の給料でスターバックスに通うことは難しい。しかし、お客さんはこれから増えていくだろう。また、支払いの時に、現金を使ったのだが、店員がレジの下にある引き出しからビニールに包まれた現金を出してきて、面倒くさそうにお釣りを渡してきたことだ。中国本土ではスマホ決済が支配的になっており、アリペイ、ウィチャットペイという決済プラットフォームが利用されている。中国本土の銀行口座がなければ利用できず、外国人旅行者には利用できない。それなのに、旅行者である私たちが支払いをしようとすると面倒くさそうに取り扱われる。舌打ちをされる。中国国内に限定されているという点で、「ガラパゴスじゃないか」とも思うが、16億人が使うプラットフォームである。「大きすぎるガラパゴス」なのだ。

 2019年7月29日の午前中には再び電気街の「華強北」を訪問した。電気街を歩いてみて、日本の電機会社の存在下の低下を痛感した。私が20年前にアメリカに留学した際に、生活用品を整えるために地元の小売店「ベストバイ(Best Buy)」に向かった。この時には、テレビや冷蔵庫、掃除機などは日本の電機会社の製品が並んでいた。それが今では、何とも残念なことに日本の電機会社のロゴを見ることは少なかった。

 考えてみれば、スマートフォン(スマホ)に関しても日本は主役ではない。私たちがスマホに関して話題にする時、日本の家電メーカーの名前を口に出すことがあるだろうか。中国からはoppo(オッポ)や小米(シャオミー)といった聞き慣れない名前の会社が日本に展開しようとしている。格安で質の良いスマホを提供するということだ。日本が貧しくなっていること、かつ日本のモノづくりの地位の低下が示されている。前述の近藤氏が著書で述べているように、「日本は中国の下請け」となっているのだ。
shenchendowntown001

(続く)

zentaishuginochugokugaamericawouchitaosu001

全体主義の中国がアメリカを打ち倒すーーディストピアに向かう世界
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。
zentaishuginochugokugaamericawouchitaosu001
全体主義の中国がアメリカを打ち倒すーーディストピアに向かう世界

 今回は、副島隆彦先生の最新刊『全体主義中国がアメリカを打ち倒すーーディストピアに向かう世界』(副島隆彦著、ビジネス社、2019年12月)を紹介する。

 今回の副島先生の調査旅行には私も同行した。香港から深圳に入る行程だった。深圳では中国の更なる勃興を体感し、香港では激化以前のデモを経験した。深圳ではドヤ街のような三和人力市場にある官位宿泊所付きのネットカフェで、インターネットゲームに没頭する若者たち(日本語で言えばネットゲーム廃人・ネトゲ廃人)の姿には衝撃を受けた。
zentaishuginochugokugaamericawouchitaosusanwajinrikiichiba001

 また、深圳の街中には、ファーウェイ(深圳に本社がある)の協力もあり、最新の監視カメラ網が張り巡らされ、市役所では住民のデータ管理に最新の技術が導入されている。私たちがタクシーに乗るとすぐに運転手がシートベルトを着用するに注意した。これは私たちの安全を気遣ってのことではない。街中に張り巡らされたカメラにシートベルトをしていないことがすぐに映る、自動車のナンバープレートがすぐに解析され、運転手がすぐに分かり、同時に罰金が科される(アリペイやウィチャットペイから引き落とされるという話がある)。

 副島隆彦先生の鋭い観察眼を通した中国の最新の分析がなされている。下にまえがき、目次、あとがきを貼り付ける。

(貼り付けはじめ)

まえがき   副島隆彦

中国は表紙に打ち込んだとおり明らかに全 トータリタリアニズム 体主義国家である。

その別名が「共産中国(きょうさんちゅうごく)」である。みんなに嫌われるはずだ。だが、今後、世界中がどんどん中国のようになる。

 

世界中のすべての国が、中国化するのである。その代表的な具体例かつ証拠は、監視カメラ(CCTV [シーシーティブイ]。今はコミュニティ・サーキットTV[ティビー]と呼ぶ)が、街中のあらゆるところに取り付けられていることだ。アメリカも、ヨーロッパも、日本だって監視カメラだらけの国になっている。

 

中国では監視カメラによる民衆の動きの把握のことを 天 てんもう 網(ティエン・ワン)と言う。「天網恢恢疎にして漏らさず」の天網である。

私は最近、中国に香港から入って 深圳(しんせん)に行った。この中国のITハイテクの最先端の都市を調査してきた。あれこれもの凄(すご)い発展ぶりだなと、思った。それを後(あと)の方で報告する。中国にまったく行きもしないで、中国の悪口ばかり言っている(書いている)人たちは、お願いですから、せめて北京と上海に行ってください。安いホテル代込み10万円で行けます。エクスペディアなどネットで安くで予約するといい。

 中国は国民の生活を監視している国になってしまっている。もうすぐ監視カメラが中国全土に 6 億台取り付けられるそうだ。中国国民14億人の2人に1台の割合だ。まさか個人の家の中までは取り付けられないだろうが、それだって分からない。中国のすべての都市の街路には、既に付いている。

 ところが、これらの中国製の監視カメラ会社に、最初に技術を開発して売ったのは、日本の大手電機会社である。ニコンとキヤノンとパナソニックとソニーが、この公共空間のカメラの技術を一番先に開発した。日本がいまもドイツ(カールツァイスとライカ)にも負けないで、世界一の技術力を誇っているのは、この分野である。専門技術でいえば、フィルムとフィルターとレンズの技術である。ハッセルブラッド社(スウェーデン)は、DJI(中国のドローンの最大手)が買収した。

 あとのほうで載せるが(P61)、キヤノンの御手洗富士夫(みたらいふじお)会長の発言で、「キヤノンは監視カメラで未来を切り開く」と最近堂々と日経新聞に出ていた。

 中国だけが国民を徹底的に監視しようとしている国家なのではない。米、欧、日の先進国も監視国家だ。それに続く新興国も、「国民を監視する国家」になっていくのである。すなわち中国が先導して、他の国々もそれに追随する。これからの人類がたどるのは、このディストピア(幻滅の国。絶望郷[ぜつぼうきょう] 。監視国家)への道である。中国だけがますますひどい国になるのではない。ディストピア(dystopia)はユートピア(utopia、理想郷[りそうきょう])の反対語(アントニム)である。 

 人類が自分の未来を、盲目的、直線的かつ貪欲に突き進む結果、世界はこのあと、いよいよ中国のようになっていく。中国の悪口を言っていればいいのではない。

 国民生活が、権力者や支配者によって徹底的に監視され、統制される政治体制のことを全体主義(totalitarianism トーリタリアニズム)という。この全体主義という言葉を広めたのはドイツ人の女性思想家のハンナ・アーレン人である。彼女が、1951年に書いた『全体主義の起源』で、ソビエト体制を批判した時に使われた言葉である。このコトバの生みの親は、イタリア知識人のジョバンニ・アメンドラである。

 世界がやがて中国のようになっていく、という課題は、私が急に言い出したことではない。すでに感覚の鋭い言論人や知識人たちによって「世界は中国化する」という本も出ている

 もう 20 年前からイギリスのロンドンは、すべての街 ストリート 路に監視カメラが設置されていたことで有名だ。今の日本も主要な生活道路のほとんどにまで、監視カメラが設置されている。このことを日本国民は知らされていない。新宿や池袋のような繁華街だけが、カメラで監視されているのではない。 

 民衆の往来、行き来を、政府や取り締まり当局(警察)がずっと撮影して、画像を保存している国が立派な国であるはずがない。だが、どこの国の警察官僚も、必ずこういうことをやる。官僚(上級公務員)というのは、本性(ほんせい)からしてそういう連中だ。

 これは人類にとっては悲しむべき間違った方向である。科学技術(テクノロジー)の進歩が、コンピューターや通信機器(スマホ他)の異常な発達とともに、こういう監視技術を最高度に発達させた。この監視システムを維持するために、一体どれほどの警察公務員が新たに採用され続けているかについて、誰も関心を払わない。

 それにしても、全 トータリタリアニズム 体主義は強いなあ。世界大恐慌が襲いかかったとき、中国はシャッタード・アイランド(バターンと金融市場を閉じる)ので、ビクともしない。

=====

目次

まえがき 3

 

第1章 中国のディストピア化を追いかける世界

中国は巨大成長したという事実は否定できない 18

世界の知識人が描いてきたディストピア像 22

左右のどっちからも嫌われるのが一番いい 30

全体主義中国を徹底的に叩く 33

ディストピア映画の歴史的系譜 40

 

第2章 貿易戦争から金融戦争へと移り変わった

〝卑屈〟なテンセントが金融戦争に勝利する 52

銀行消滅とCCTV 59

銀行の別名は「信用」 69

アリババはNY市場から締め出されるのか? 70

中国のネット世代と実質的なデモクラシー 75

ファーウェイはアメリカのいじめに負けなかった 82

アメリカと中国の睨み合いは続く 87

中国人は国有企業が嫌い、民間企業大好き 90

半導体製造の切り札、紫光集団 96

 

第3章 中国は最早アメリカとの力相撲を恐れない

中国の技術泥棒を引っ張った「千人計画」 104

結局中国を一致団結させてしまったアメリカのミス 109

米中IT戦争と日本の半導体潰しの意外な共通点 112

サムスンを育てたのはインテル 117

新たな火種となったレアアース 120

 

第4章 中国にすり寄る 韓国、北朝鮮と台湾を巡るつばぜり合い

北朝鮮と韓国による「高麗連邦」の誕生 130

GSOMIA破棄問題で嫌韓が高まった本当の意味 132

アメリカが韓国を切ったのではなく、韓国がアメリカを切った 135

香港問題は台湾問題である 139

2020台湾総統選とテリー・ゴウの動き 142

韓国瑜はアメリカの回し者だった 145

中国は民主化するのか? 150

台湾の中国化とシーレーン問題 152

中国人はヒラリー・クリントンのことが大嫌い 154

もうアメリカの圧力などなくなってしまった 160

警戒の目はファーウェイの海底ケーブルに 164

 

第5章 中国の膨張を招き込んだアメリカの弱体化

腰砕けとなったペンス副大統領 170

「外国にいる米軍の兵隊たちは国に帰って、ゆっくり休め」 174

米中貿易戦争は、今年中に表面上は静かになる 177

イレイン・チャオはチャイナ・ロビー代表で政権ナンバー 3 180

EVの天下を取る中国にひれ伏すマスク 187

 

第6章 アフリカと中央アジアに広がる チャイナネットワーク

アフリカの一帯一路戦略 204

次の世界の中心は中央アジアになる 213

中国はアメリカからアフガンを任された 219

 

第7章 ディストピア中国の不穏な未来

新疆ウイグル問題の真実 224

私は見た、深圳の現実を 236

華強北と中国のジャイアント・ベイビーたち 238

ドローンの恐るべきパワー 248

デジタル人民元の脅威 250

 

あとがき 252

=====

あとがき   副島隆彦

この本『全体主義(トータリリアニズム)の中国がアメリカを打ち倒す││ディストピアに向かう世界』は、世界最大の牢獄国家、中国についての、私の 11 冊目の本である。

英文の書名は、“Totalitarian China will finish of America(トータリタリアン・チャイナ・ウィル・フィニッシュ・オフ・アメリカ)”である。このfinish off(フィニッシュ・オフ)という動詞は、「とどめを刺す、息の根をとめる」という強い意味だ。

 

『あと 5 年で中国が世界を制覇する』(2009年刊)という本も、私は書いている。この本は反共(はんきょう)右翼の人々から激しく嫌われた。「何を言うか。中国は暴動が起きて、中国共産党は潰(つぶ)れるのだ」と、彼らは、私の本に最大限の悪罵(あくば)を投げた。それで、現実の世界の動きは、その後どうですか。

 

人も国家も、より強い者に虐(いじ)められながら、這い上がってゆく途中は、善であり、正義である。より強い国の支配の下(もと)で、苦心惨憺(さんたん)しながら勝ち上がってゆく。

しかし、一旦(いったん)、勝者になったら正義[ジャスティス]justice)から 悪[イーヴォ]evil)に転化する。中国が、アメリカ合衆国を打ち負かして世界覇権(はけん)国(ヘジェモニック・ステイト)になったら、その時、巨大な悪[イーヴォ]evil)になるのである。それまであと5年だ。

人も国家も、そして企業も、2番手に付けて1番手(先頭、支配者[ガリバー])の真似をしながら必死で喰い下がっているときが、一番美しい。これまでの40年間(鄧小平[とうしょうへい]の「改革改放宣言」1978年12月18日。 40周年を中国は祝った)、私は、アメリカ帝国の後塵(こうじん)を拝しながら、蔑(さげす)まれながら、泥だらけの極貧(ごくひん)の中から、着実に勝ち上(のぼ)ってきた中国を頼もしく、美しいと思ってきた。

 

この11月20日に北京で、〝世界皇帝代理〞のヘンリー・キッシンジャーが心配した。これに対して、翌日即座に、習近平は、「心配しないで下さい。中国は世界覇権(hegemony、ヘジェモニー。ドイツ語ならヘゲモニー)を求めません(私たちは、これまでにいろいろ苦労して、人類史を学びましたから)」と発言した。

これが一番大きな処(ところ)から見た、今の世界だ。日本という小ぢんまりとした国で世界普遍価値(world values、ワールド・ヴァリューズ)を理解しようとして、私は、独立知識人として(本書第1章を参照のこと)、孤軍奮闘して来た。

 

 本書は書名が決まったのが11月11日。体調不良の中で、2週間で作り上げた。だが手抜きはない。いつもながらの全力投球だ。私の地獄の踏破行(とうはこう)に同行して、命懸けの鎖場(くさりば)にも付き合ってくれたビジネス社大森勇輝編集長に記して感謝します。

 

2019年12月

 

副島隆彦

 

(貼り付け終わり)

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

価格:1,400円
(2018/3/9 10:43時点)
感想(0件)

ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側[本/雑誌] (単行本・ムック) / 古村治彦/著

価格:1,836円
(2018/4/13 10:12時点)
感想(0件)

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 副島隆彦先生の最新刊『米中激突恐慌』が発売されます。以下にまえがき、目次、あとがきを貼り付けます。参考にして、お手に取ってお読みください。よろしくお願いします。

beichuugekitotsukyoukou001

米中激突恐慌-板挟みで絞め殺される日本 (Econo-Globalists 22)

(貼り付けはじめ)

まえがき

この本を書き上げた直後(9月30日)、私はヨーロッパから情報をもらった。名門ドイツ銀行(ヨーロッパ最大の民間銀行。ドイツの中央銀行[ブンデスバンク]ではない)が破綻(はたん)する。ヨーロッパに金融危機(フアイナンシヤル・クライシス)が起きる。日本円は、激しく円高になる。1ドル=100円を割って80円、60円台になるだろう。

ヨーロッパ(EU)とアメリカ(トランプ政権)の貿易戦争(トレイド・ウオー)も始まった。制裁関税のかけ合いだ。欧米白人文明の内部分裂が起きている(10月2日)。

(きん)が、この6月初めから急激に上がりだした。

1トロイオンス(31.1グラム)が1560ドル(9月4日)まで上がった。日本の国内の価格では、1グラムが5300円(9月5日。卸値[おろしね])になった。「金(きん)を買うように」と、ずっと勧(すす)めてきた私の考えの勝利である。このあと、金(きん)はもっと上がってゆく。これまで金を買ったことのない人は、今のうちに金(きん)の地金(じがね)を買ったほうがいい。長い目で見て、金はもっともっと上がる。今の2倍になる。第2章で、これからの動きを詳しく予測する。

あと一度、下(した)()し(下落)したら、そこでサッと拾い(買い)なさい。

株価は、NY(ニユーヨーク)でも日本でも、最高値を更新しつつあるように見えた。だが、もうすぐ暴落が起きる。いくら上がっていると言っても、ジェットコースターと同じで、急降下する。この動きを2カ月周期で繰り返す。今の世界の金融市場は、きわめて不安定である。

このことを投資家、資産家、企業経営者は、肌身(はだみ)でよく分かっている。私たちは注意深くならなければいけない。常に慎重になって、用心しなければいけない。調子に乗って、また大損して痛い目に遭()うのは自分だ。ただし、生来(せいらい)の博奕(ばくち)打ちの才能のある人は別である。彼らは瞬時(しゅんじ)に動く。そうでないと、勝ち残れない。そういう人々は、私の本から世界の金融の動きの知識と情報だけ、取って行ってください。

この本では、米と中が、防衛(軍事)と金融経済の両面でぶつかることで、世界が不安定になって、金融恐慌が起きることをずっと説明してゆく。

アメリカと中国が貿易戦争(トレイド・ウオー)(ハイテク、IT[アイテイ]戦争でもある)で激しく衝突するたびに、NYや東京の株価が落ちる。そのせいで、世界中が不安定だ。このことを投資家や資産家が、心配して動揺している。自分の金融資産や投資した資金が、安全に守られるか、という根本的な不安を抱えて、そのことを口に出し始めている。

「株や債券の値下がりを見越して、先物(さきもの)の売りで儲けを出そう」とか、「金(きん)の地金(じがね)が値上がり出したので、そっちに短期間だけ資金を移そう」とかいう、安易な考えはダメだ。どうも、アメリカを中心にした戦後76年目の、世界金融体制(金・ドル体制。ブレトンウッズ体制)の崩壊、終わりが近づいている。そのことを投資家や資産家が、肌合いで敏感に感じ取っている。

私は最近、彼らから、直接の苛立(いらだ)ちや訴えを聞くようになった。彼らの、投資家としての動物的な勘(かん)から来る不安に対して、私はどのような理論と対策を立てることができるか、を真剣に考えている。

米と中が、世界覇権(ワールド・ヘジェモニー world hegemony )すなわち、世界の支配権をめぐって激突している。これが今の不安定な金融市場の大きな原因である。この本の英文書名に載()せたとおり、" The US‐China Hegemonic Cold war "「ザ・ユーエス・チャイナ・ヘジェモニック・コールド・ウォー」である。それは去年(2018年)3月に、貿易戦争(トレイド・ウオー)の火ぶたが切られたときからだ。米トランプ大統領が、先制攻撃(プリエンプテイブ・アタツク)で先に手を出した。

「もうこれ以上、中国を放っておくことはできない」と。さあ、それでだ。この戦いは、アメリカと中国の、果たしてどちらが勝つか。

日本国内では、今もなお、保守的な資産家や投資家、企業経営者たちは、「絶対に、アメリカが勝つ」と固く信じている。「やっぱりアメリカは強いんだー」と威勢よく言っている。だから、彼らは「NYや東京の株は、まだまだ上がり続ける」、そして「円ドルの為替(かわせ)相場は、強いドルが続くので、1ドル=130~140円の円安ドル高になる」と予想している。そういう人が多い。果たしてそうか。

私、副島隆彦の本の読者であれば、もう少し深い知恵に基づく、別の見方をする。このことをずっと、この本で説明してゆく。

副島隆彦

=====

目 次

まえがき

第1章 「米中激突 恐慌」と日本

●中国に対する、アメリカ国民の切迫感とは

●なぜトランプは「2人の主要閣僚」を叱りつけたのか

●市場を直撃した大統領のトゥイッター

●消費税10%で日本の景気はどうなるか

●ジェットコースター相場で、下落(11月)上昇(12月)暴落(2020年1月)

●反中国の「フォアマン・レイバラー」とは何か

●〝スプートニク・ショック〟の再来

●アメリカ人は中国への親近感を抱き続けてきた

●これからの株価を予測する

●トランプの「(政策)金利を下げろ」は正しいのか

●逃げ場がなくなる先進国

●2024年、先進国の財政崩壊(フィナンシャル・カタストロフィー)が起きる

●中央銀行総裁と財務長官の違い

●トランプは、アメリカの隠された大借金を無視できない

●「強いドル」の終わり

●恐るべき中国のプラットフォーマー

●銀行が消滅する時代

●日本が買わされたのは、トウモロコシだけではなく大量の兵器

第2章 今こそ金(ゴールド)を握りしめなさい

●金(きん)を買う人、売る人が増えている

●あと2年で金(きん)1オンス=2000ドルに

●世界金価格を決めるのは上海とロンドン

●ウソの統計数字に騙(だま)されてはいけない

●中国とロシアは、米国債を売って金(きん)を買った

●最後の買い場がやってきた

第3章 米中貿易戦争の真実

●米と中の冷戦(コールド・ウオー)はどのように進行したか

●ファーウェイ副社長の逮捕と、中国人物理学者の死

●トランプを激怒させた中国からの政府公電

●「アメリカ政府による内政干渉を許さない」

●なぜトランプは折れたのか

●李()(こう)(しよう)になぞらえられていた劉鶴

●対中国制裁関税「第4弾」の復活

●妥協派と強硬派――アメリカ国内が分裂している

●米国のIT企業とファーウェイ

●アメリカに敗北し続けてきた日本

第4章 米国GAFA 対 中国BATHの恐るべき戦い

●アリババ(BATHのA)の金融商品が与えた衝撃

●追い詰められたアップル社

●トランプはアメリカ帝国の墓掘り人になる

●アリババの歴史と全体像

●7000倍の資産膨張

●貿易戦争からハイテク戦争、そして金融戦争へ

●「中国の手先」と非難されるグーグル

●ホワイトハウスに呼びつけられたグーグルのCEO

●未知なる最先端の何ごとかが進行している

第5章 金融秩序の崩壊

●日本が買わされている米国債の秘密

●ECB総裁が「恐慌突入」を認めた

●2024年、10000円が1000円になる

あとがき

=====

あとがき

この『米中激突 恐慌』は、表紙に打ち込んだとおり、 Econo-Globalists 「エコノ・グローバリスト・シリーズ」の22冊目である。よくもまあ22年間も、私は金融本を毎年、書き続けて、生きながらえたものだ。我ながら感心する。

 この本を書き進めながら、第4章に入ったところで異変が起きた。私の脳にひらめきが起きた。第3章までは、まあ私のいつもの金融と経済(そしてそれを世界政治の動きから見る)の、どぎついあれこれの洞察(どうさつ)である。

第4章に来て、私は急に一気に、高いところに到達した。問題は、米と中の貿易戦争が、IT(アイテイ)ハイテク戦争に姿を変えたことではなかった。現下(げんか)の貿易戦争は、本当は金融戦争だったのである。すでに5(フアイブ)(ジー)の世界規準を握った中国ファーウェイ(華為技術)社をめぐるあれこれの抗争と、米中政府間(かん)の激突ではなかった。問題は、ファーウェイではなく、アリババ(及びテンセント)だったのだ。アリババが先駆(せんく)して握りしめた、スマホ決済と与信(金融)、さらには預金機能(金融商品のネット販売だ)が、世界の金融体制を根底から覆(くつがえ)しつつある。まさしく大(だい)銀行消滅である。クレジット会社もカード会社も銀行も、世界中で消滅してゆく。

 ヨーロッパ近代(モダーン)が始まって、ちょうど500年である。この近代500年間の欧米白人文明が敗北しつつある。問題はファーウェイではなく、アリババだったのだ。真に頭のいい人は、本書の第4章を読んで驚愕してください。ついでに、ソフトバンクの孫正義(そんまさよし)氏の力(ちから)の謎と裏側もバッサリと解いた。乞()うご期待だ。

 私とともに、この20年間、「エコノ・グローバリスト・シリーズ」で走り続けてくれた、担当編集者の岡部康彦氏が、満期退職した。岡部氏が念入りに下ごしらえしてくれたので、本書の第4章の快挙も成し遂げることができた。彼との仕事での長い付き合いは、このあとも続く。記して感謝する。

2019年10月

副島隆彦

(貼り付け終わり)
ginkoushoumetsu005

銀行消滅 新たな世界通貨(ワールド・カレンシー)体制へ (Econo-Globalists 20)

(終わり)

ketteibanzokkokunihonron001
決定版 属国 日本論
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

  『決定版 属国 日本論』(副島隆彦著、PHPエディターズグループ、2019年9月)が2019年9月22日に発売されます。本書は副島先生の主著である『属国 日本論』(1997年)に加筆訂正されたものです。以下にまえがき、目視、あとがきを貼り付けます。参考にして、是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
ketteibanzokkokunihonron001
決定版 属国 日本論

 (貼り付けはじめ)

 

はじめに 

日本は、世界政治の現実からみるとアメリカ合衆国の属国である。私はこの冷酷な現実

認識からすべての話を始めることにしている。
 「日米対等」「イークオル・パートナー」「太平洋の架け橋」「世界で最も重要な二国間関

係」などと、米国から勝手に表面上だけおだてられ、いいように扱われてきたのが、戦後

75年間の日本の姿である。日本は、世界に200ほどある国の中の、主要な30カ国のうちの1国ではある。人口も1億2000万人いる。そしてアメリカ合衆国のアライ(ally、同盟国、友好国)」のひとつである。それ以上ではない。同盟国といえば聞こえはいいが、ソビエト・ロシアの崩壊(1991年12月)のあと世界覇権国であるアメリカが、同盟(アライ)国という言葉に対して持つ真の意味は、米国の言うことをきく国、つまり属国というものである。

 誰もがお茶を濁してこのように露骨に言わないだけのことである。

断っておくが、属国というのは植民地(コロニー)のことではない。朝貢国[ちょうこうこく]tributary State トリビュータリィ・ステイト)のことである。歴史上の類推でいえば、紀元後500年間の世界帝国であった西ローマの、属州(provincia  プロヴァンキア)のことである。中国歴代王朝(中華帝国)の用語でいえば、藩国(はんこく)、あるいは冊封国[さくほうこく](さっぽうこく)という。冊封国の王たちは、中国の歴代皇帝に朝見して、臣下の礼をとった。彼ら属国の代表たちを、皇帝[エンペラー]に対して、「王」あるいは「国王」という。従って、日本の天皇は、エンペラーと自称したが、本当は、王(キング)に過ぎない。 

室町時代に、足利幕府の武家政権は、明(みん)王朝から「日本国王」の称号を頂戴していた。中国からみれば、日本は属国であった。日本は、この事実に反発を感じて抵抗してきた国である。江戸時代には、属国である事実を、隠そうと努力した。

幕末に黒船来航によって、米国インド洋艦隊の提督マシュー・カルブレイス・ペリーの砲艦外交(ガンボートディプロマシー)で、無理やり国をこじあけられ、開国してからの、この160年間は、米国に軍事的、経済的、文化的に服属してきた。

シー・エムパイア(海洋帝国)としての米国と、友好関係を築き続けたことは、日本の近代化にとって幸運であった。ところが、日露戦争から太平洋戦争敗戦までの間に、国家に対する求心力が高まってくると、日本は西欧諸国と米国に反抗的になった。そして、東アジアにおける独自の地域覇権 regional hegemony(リージョナル・ヘジェモニー)を目指した。即ち「大東亜共栄圏」(ザ・グレート・イースト・エイシア・コプロスペリティ・スフィア)構想である。無謀にも世界の大勢を敵に回して戦いを挑み、案の定大敗北した。そしてその後、アメリカの属国として平和な75年があった。 

日本は、冷戦(ザ・コールド・ウォー)時代をソビエトと中国の共産主義に対する〝反共の防波堤〞の役割を東アジアで担い、〝吉田(茂)ドクトリン〞により軍事負担を免れ、上手に行動して、経済的繁栄を勝ち得た。

 私たちは、かつての東欧諸国が、1991年に崩壊するまで、ソビエト帝国(ソビエト連邦)の「衛星国(サテライト・ステイツ)」であると学校の教科書でも習った。では、日本はずっと米国の衛星国ではなかったのか。この疑問に対しては、私たちは目をつぶり、回答を先送りして生きてきた。

先の戦争で日本は米国に完膚なきまでに叩きのめされた。残虐な原子爆弾(アトミック・ボム)まで投下されて敗戦した。日本がポツダム宣言を受諾して無条件降伏したとき、世界中の人々は、日本国民が命乞いをした、と考えた。頭を下げ、生き延びさせてもらった、と。だが、私たち日本人はそうではない。あれはただの「終戦」だ、と思ってきた。このあと米国に屈服して生きてきた。

 米国からすれば、日本は東アジアの1国だ。中日韓鮮台の5カ国の中のひとつに過ぎない。米国の世界戦略からすれば、日本は韓国や北朝鮮や台湾と同じ意味しか持たない。

 米国は、表面だけは、「日米対等」を演出し、ふつうの日本国民に対しては優しい態度を取る。しかし一歩裏に回れば、外交交渉の席で、日本の政治家や官僚や財界人たちを、どなって脅し、「我々の言うことを聞け。もっと金を払え」と抑えつけている。この事実を一般の日本国民は、知らされていない。 

 1996年の4月の「米日安保共同宣言」がいい例だ。この時、「有事法制の整備」と、「米日防衛協力のガイドラインの見直し」と「物品・役務(えきむ)相互提供協定」が話し合われたとされている。その議題(アジェンダ)のすべては、米国の官僚が、協議の場に、まるで「天から降ってくるように」持ち出してくるものである。話し合いというのは名ばかりで、日本の政治家や官僚は、米国から出された要求にただ頷(うなず)くだけだ。

米日間の外交協議の場で、日本に主導権など一切ない。私たちの知らないところで、「次はこの議題について持ち帰って討議しなさい」と、日本は米国から次々と宿題を突きつけられる。彼らは、私たちに憲法を作って与えた。それから日本人に民主主義教育を施した。現在の私たち日本国民を作った。このように日本を枠にはめておきながら、その枠が米国自身の東アジア戦略に合わないと、今度は、あれこれ修正を迫ってくる。これが米日関係の真の姿である。

 日本は、輸出と輸入の4割を、米国に頼っている。日本は、経済的に米国に依存している。経済の生命線である、中東からのオイルの輸送ルートも、米軍の海洋支配力(シーレーン)に守られている。経済が何よりも重要だ。

 私たちは、伝統保守派の人々の、「NOといえるジャパン」、「米国は日本人に民族の名誉を返せ」、という反米主義の論調に、軽々と乗ってはいけない。しかしことさら卑屈になって米国に対して土下座外交をつづければいいということもない。今、大切なのは、日本が置かれている立場を明らかにすることだ。

 私が、本書で、世界帝国アメリカと言うとき、「帝国(エンパイア)」という概念は、「領域支配」を含まない、ということを理解してもらいたい。

 「帝国」というのは、例えば、高校・世界史地図帳の中に、ペルシア帝国の最大領土とか示して、世界地図上に赤色でベッタリと塗ってある。だが、実際の歴史上の帝国(覇権国)はあのようなものではない。属国の服属関係にもいろいろなものがある。完全に武力制圧された国から、政治的には独立したまま、経済交易だけ帝国に従属しているという場合もある。

従って一様に地図を赤色で塗りつぶしたような感覚で帝国というものをとらえてはならない。即ち、帝国とは領域支配を意味しない。このことは、『最後の遊牧帝国』(宮脇淳子著、1995年、講談社選書メチエ)を読むと分かる。

日本は独立国であって、アメリカの属国ではない、といきり立つ人々がおられるだろう。何故、そのようにいきり立つのか、何が不快なのかを、自分の内心に問うてみられるがよい。そうすれば、やはり、アメリカの日本に対する高圧的な支配者然とした態度に行きつく。私は、そこに出現する真実としての米日関係を、冷静に観察している。 

 法律的に立派な制度が完備している。だから日本は、独立国であって、他国のコントロールを受けていない。と強がりを言ってみても始まらない。現実に、日本はアメリカの世界戦略の中に組み込まれて生きていると言わざるを得ない。属国であるか否か、の細かい、政治学、歴史学、法律学上の考察についてこの本で論究する。ふつう日本人が考えているよりも、大きな視点から、この国を概観する。

 私が唱えている「属国 日本論」という言葉は、民族主義的あるいは右翼的な響きがあるので、誤解されやすい。私は伝統保守派からの視点から主張していない。保守思想であっても、私の保守主義(リバータリアニズムと言う)は、日本を外側に開いてゆく。世界の中のひとつの国として、世界資本主義に従い、経済的に繁栄してゆくことが何よりも大切だ、という立場である。日本の保守派は、民族優等の伝統保守派と、世界資本主義を支持するビジネスマンたちに体現される世界保守派に分裂している。私は後者である。 

 幕末、維新期に、はじめ尊王攘夷(そんのうじょうい)を唱えたはずの者たちが、コロリと開国派に態度を変えた。そして政治権力を握ったとたんにイギリスとアメリカに従属した。国難に際して訳も分からず、本能的に切実な排外主義(ショービニズム)である攘夷を唱えた。

 「この国は独立国ですから、どうぞ、お引き取り下さい。自分たちのことはなるべく自分たちでやります。できない分については、ご助力をお願いします」と、欧米列強(ヨーロピアン・パワーズ)に対して、静かに説くことのできる人物がいなかった。現在の状況も、あの当時とそっくりである。

 やるべきことは、米国という大国の内部の、思想勢力のことをもっと本気で本格的に研究することである。そして彼らの意図を見抜くことである。日本の知識層の人たちは、現代のアメリカの政治思想の大きさと強さを、ほとんど知らないまま生きてきた。アメリカ内部の、思想闘争の分析ができなければアメリカ帝国を理解したことにならない。私はすでにこの分野にも手をつけている。

===== 

目次

 

はじめに 5

第一部 属国日本論 日本の本当の姿

 

一、属国日本を検証する・・・24

 

日米対等は虚妄 24

なぜ真実を隠蔽するのか 27

米日安保共同宣言をめぐって 29

ナイとヴォーゲルは左遷された 31

ジョゼフ・ナイの前歴 32

北朝鮮核疑惑と韓半島情勢 35

スパイ衛星写真という切り札 39

TMD日本配備構想とは何か 42

日独の核保有を認める 48

何も知らされていない政治家たち 49

台湾海峡情勢の裏側 52

円安戻し政策(1995年7月)の舞台裏 54

敏腕リチャード・クーの〝日本情報〞 60

日航機墜落事故をめぐって 62

日本の空は米軍によって守られている 65

「ビンの栓」理論 69

何故、米国の製造メーカーを追及しないのか 72

エノラ・ゲイ号をめぐる対立 76

東アジア諸国とアメリカの軍事同盟 81

中東地域とアメリカ軍 89

伝統保守派と世界保守派 91

伝統保守派と世界保守派の分岐線 95

隠蔽するな、事態を語れ 101

 

補諭CIAからの自民党への資金援助問題・・・102

 

ダグラス・マッカーサー二世の拒絶と別ルート 102

なぜ、こんなにしてまでお金を必要としたか 106

今後も続く事実の判明 110

全てがうやむやにされてしまう 111

 

二、なぜ佐藤栄作元首相はノーベル平和賞を受賞したのか・・・119

1974年10月の奇妙な白け 119

世界的偉業に関与したという厳然たる事実 121

「メースB」の撤去は中国へのサインだった 123

20年後につながったニクソンの訪中 130

「天動説」のものには世界政治の「地動説」が視野に入らない 135

デタントの世界的流れの中に位置づけられた日本 139

「隣の小部屋」で交わした文書こそ核心部分 143

政府間経済交渉のはじまりとしての繊維交渉 150

「非核三原則」と「非核四政策」 155

ニクソンが立案し、キッシンジャーが動いた世界戦略の中で 160

 

第二部 世界覇権国(ヘジェモニック・ステイと)アメリカ

 

一、アメリカの世界政策とシンクタンクの実態・・・166

 

日本にない国家戦略研究所 167

政府から独立した研究機開 169

ネオ・コン=クローバリスト系かリバータリアン系か 171

明石特使の首を切ったカークパトリック 176

「安保共同宣言」とマイケル・グリーン 177

ケイトー研究所は温かだった 179

ヘリテイジ財団にみる草の根気風 181

セリッグ・ハリソンの北朝鮮、対日政策 185

研究者を束ねる「国務次官補」 187

グローバリスト官僚と戦後日本 188

 

二、世界を管理するグローバリスト官僚たち・・・192

 

「エイプリルはよくやった」 192

モーゲンソーの弟子たち 195

日本人の腹の底をのぞき込め 202

「戦後民主主義」の正体 208

グローバリスト包囲網 214

 

第三部 属国日本の近代史

 

一、幕末・明治期編・・・222

 

ペリー以来変わらぬアメリカの日本観 224

内部だけでの大騒動 228

変わることのない日本に対する基本認識 232

必要なアメリカ政治についての徹底的な研究 234

アメリカ主導からイギリス主導への移行 237

グラバーの役割とジャーディン・マセソン商会 239

長崎代理店・クラバー商会 242

五代友厚・ジョン万次郎・坂本龍馬の動き 248

アーネスト・サトウという日本研究戦略学者 253

意図的な『一外交官の見た明治維新』 254

サトウの本の出版は半世紀後 258

坂本龍馬とイギリス主導の薩長合作 265

ジョン万次郎という男 267

坂本龍馬の動きの背景 271

育てられた親イギリス派の日本人 275

兵器こそが薩長連合を成立させた 277

寺田屋と情報戦争 281

最終段階で切り捨てられた坂本龍馬 283

松陰の行動力こそ評価すべきだ 285

大村益次郎と後藤象二郎 287

伊藤らのイギリス再訪 292

 

二、敗戦まで・・・296

 

世界覇権をめぐるイギリスとアメリカの対立 299

イギリスを優先するかアメリカとの同盟に入るかの選択 300

不平等条約の改正について 303

「ザ・グレート・ゲーム」について 304

ユーラシア大陸のヘリの国として 305

中央アジアをめぐるイギリスとロシアの闘い 307

間宮林蔵とシーボルト 312

日本の新興資本家たちの苛酷な農業経営 314

決定的に針路を誤った中国進出 318

居留民の過去問題 321

アジアを舞台とした情報戦と人物たち 325

中国人脈のアメリカ人とは 326

マッカーシー旋風はアメリカ国内の恐怖感の表れ 329

ゾルゲ事件をめぐって 334

国家戦略を立案する人材を欠いた日本 340

世界的視点を持っていた吉田茂 343

 

決定版を出すにあたって 345

 

あとがき 357

 

=====

あとがき

日本の戦後の立志伝(りっしでん)中の実業家たちは、商店街の小さな個人商店から身を起こした。そして30年間かけて大企業に成長した。私も自分の思想と言論を、ささやかな個人営業から始める。私の思想と言論に注目してくださる少数の優れた人々の理解と支持に支えられて、着実に自分の足元を固めながら一歩ずつ進んでゆく。

一過性のテレビ文化人活動などに魅(ひ)かれることはない。阿呆どもは時間がたてばどうせ消えていなくなる。

私の言論と思想の構えを、秩序破壊的で、攻撃的で真実暴露の、危険な言論だ、と直観的に毛嫌いして避ける人々がいる。この種の自己保身優先で、組織や集団内の立ち回りだ

けが上手な人種とは、私は、終生(しゅうせい)、相容れない。この本質的に小心者で、他者へのレッテル貼りと噂話だけが得意な人間たちもどうせ消えていなくなる。

私は、ひたすら大きな諸事実、大きな真実を、明瞭に指摘して、自分の言論の活路を見つける。日本国内だけでしか通用しない国内言論は、もうやめにすべきだ。私は、この『属国 日本論』という、およそ生来の保守派の温厚な人々だけでなく、ソビエト崩壊(1991年12月、もう28年前だ)以降、本当は元(もと)左翼なのに、「真性保守」を名乗る者たち、全てから目をそむけられる本を書いて、微塵(みじん)たりとも動じない。私は、外側(すなわち世界)から、冷酷に見られた日本の本当の姿を昂然(こうぜん)と指摘しないわけにはゆかない。

日本が優秀な国民からなる大国だ、というのは噓である。

日本は、他の国々と同様に、世界覇権国(ヘジェモニック・ステイト)アメリカ合衆国の属国(トリビュータリイ・ステイト)のひとつに過ぎない。私の属国研究の結果からは、ドイツどころか、イギリスもフランスさえも、第2次大戦後はアメリカの属国になっている。内部に多くの難問を抱えていようとも、とにかくアメリカが今のところは世界帝国である。言うことを聞かねば周辺国は生き延びられない。

フランス現代思想(サルトルからフーコーまで)も、ドイツ文化マルクス主義哲学(ベンヤミンからハーバマスまで)も大方、雲散霧消した。あれらに入れあげた常に遅れた西ヨーロッパかぶれの知識人だった人々は消滅してしまった。

 日本法制史学者の斎川眞(さいかわまこと)氏が一言うごとく、「東アジアは、とにかく、自大(じだい)主義で、かつ事大(じだい)主義」なのである。「夜郎自大(やろうじだい)で、何でもかんでも、自分のことを大変、力のあるすばらしい国だ、と考えないと気がすまない人々と、その歴史」なのである。全ては劣等感の裏がえしである。

日本だけでなく東アジア地域(リージョン)全体が、ずっとそうらしい。冷静に、冷酷に、自分をみつめることができない。ソビエト・ロシアが崩壊したとき、私たちの周りの余計な壁がパタパタと倒れた。左翼勢力は衰退した。だが同時に、伝統保守派の勝利もない。どちらもその本性(ほんせい)は、反米(反アメリカ)民族主義か、アメリカの手先集団である

民族主義(ナショナリズム)というのは、それぞれの国民[ネイション](あるいは民族[フォルクス])の自己愛感情ということではない。民族主義とは、世界帝国の属国[プロヴァンス](属州)に、各々(それぞれ)発生する防衛感情のことである。だから民族主義者(ナショナリスト)というのは、帝国と厳しい交渉を続けることを運命とする属国の国王(民族指導者)のことである。

日本は世界の大勢が命じる価値観、すなわち、世界普遍価値に従って生きてゆくしかない。世界資本主義に従って、更に経済的繁栄を守ってゆくべきである。政治はそれにつき従うものである。世界普遍価値が、日本に強く改革を要求して世界基準(ワールド・ヴァリューズ)に従った国になれ、と要求するのならば、それに従うしかない。しかし、この7(世界普遍価値)に対する、残りの3の民族固有価値(ナショナリスティック・ヴァリューズ)で、アメリカの理不尽な日本支配と闘わなければならない。「73(しちさん)の構え」である。 

 この本の英文のタイトルは、表紙に打ち込んだ、『猿の惑星に生まれて』`Born on the Planet of the Apes'「ボーン・オン・ザ・プラネット・オブ・ジ・エイプス」である。このタイトルを一目しただけで、欧米の知識階層の人々ならば破顔一笑して、瞬時に意味を理解してくれる。

私の思想と言論は、自力で英語文献を読み込んだ以外は、先生(メンター)である小室直樹(こむろなおき)氏に多くを負っている。小室直樹を、東京大学学長にして、社会科学(ソシアル・サイエンス)の何たるかを講義させつづけたら、日本に2000人の秀れた、世界で通用する社会科学者[ソシアル・サイエンティスト](政治学者、経済学者、社会学者)が育ったはずなのである。日本国は人材育成の点で、決定的な間違いを犯している

日本に、金融危機が、1998年から襲いかかった。アメリカは、「日本に対して、直

接の大銀行たちの乗っ取り占領計画に着手した。1998年10月に、橋本龍太郎政権を脅して圧し切り、外為法(がいためほう)の全面改正(いわゆる〝金融ビッグバン〞)をやらせた。これで日本国内への外資の導入が一気に始まった。日本の大銀行、証券会社、生命保険会社が次々に乗っ取られていった。

 その代表が、長銀[ちょうぎん](長期信用銀行。現[げん]新生銀行)のリップルウッドホールディングズという、ニューヨークの金融ユダヤ人の頭目たちによる、強制買収であった。日本はアメリカの〝金融属国〞にされた。唱い文句は、「金融自由化」だったのに、実際に行われているのは「金融統制」である。

 そして、もうひとつは、安全保障(軍事)の問題である。我々日本人は、日本に5万7000人いる駐留米軍(このうち2万7000人が沖縄にいる)に、撤退(ウイズドロー)してもらいたいのか、それとも、このまま駐留して日本を守ってもらいたいのか。この一番、簡素でストレートな問題に、はっきり答えようとしない。だが、米軍は自分たちの都合で、日本から撤退する時は、する。

 日本は、属国としてアメリカの政治力に屈服している。この事実をはっきりと認めるところから、全てが始まる。この大前提に立って、重厚に練られた国家戦略(ナショナル・ストラテジー)を自分たちの手で、なんとか編み出して、築いてゆくのである。

 本書で指摘したとおり、日本人は、敗戦後75年間、アメリカのネオ・コン=グローバリストと、ニュー・ディーラー(初期グローバリスト)に、うまく飼い殺しにされつづけた。自分たちの頭で、自分たちのことを考える能力を奪われて来た。ネオ・コン派という狂暴な知識人集団のために暴走国家になっているアメリカ帝国につき従っている。

私が、要約して言えるのは次のとおりだ。

「日本は、あと、しばらくはアメリカの保護の下で生きてゆくしかない。しかしなるべくなら自立して自分の力でやれるだけのことはやりたい。従って、駐留米軍には撤退していただきたい。安全保障の点で、実際のところ日本は自力で防衛する力が足りない。この足りない分については助力をお願いしたい。その分の費用については、細かく計算した上で、お支払いする。それ以上の、無理な要求はしないでいただきたい」

このように、冷静沈着に、アメリカ側に言えるようになるべきだ。無闇といきがったり、反対に自己卑下せずに、正直に現実を見極めて、淡々と話せる国民になるべきだ。きわめて幼稚な理論に聞こえるが、これ以外の、どんな態度のとり方があるというのか。日本が世界から尊敬される国になるためには、この程度の、簡潔明瞭さと、正直さを持つべきだ。

この『決定版 属国 日本論』を出すにあたって、PHPエディターズグループの大久

保達也編集長の尽力に預かった。記して感謝します。炎暑の夏が過ぎてゆく。

 

2019年8月

副島隆彦

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

価格:1,400円
(2018/3/9 10:43時点)
感想(0件)

ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側[本/雑誌] (単行本・ムック) / 古村治彦/著

価格:1,836円
(2018/4/13 10:12時点)
感想(0件)


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ