古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:副島隆彦

 古村治彦です。

 副島隆彦先生の最新刊『米中激突恐慌』が発売されます。以下にまえがき、目次、あとがきを貼り付けます。参考にして、お手に取ってお読みください。よろしくお願いします。

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米中激突恐慌-板挟みで絞め殺される日本 (Econo-Globalists 22)

(貼り付けはじめ)

まえがき

この本を書き上げた直後(9月30日)、私はヨーロッパから情報をもらった。名門ドイツ銀行(ヨーロッパ最大の民間銀行。ドイツの中央銀行[ブンデスバンク]ではない)が破綻(はたん)する。ヨーロッパに金融危機(フアイナンシヤル・クライシス)が起きる。日本円は、激しく円高になる。1ドル=100円を割って80円、60円台になるだろう。

ヨーロッパ(EU)とアメリカ(トランプ政権)の貿易戦争(トレイド・ウオー)も始まった。制裁関税のかけ合いだ。欧米白人文明の内部分裂が起きている(10月2日)。

(きん)が、この6月初めから急激に上がりだした。

1トロイオンス(31.1グラム)が1560ドル(9月4日)まで上がった。日本の国内の価格では、1グラムが5300円(9月5日。卸値[おろしね])になった。「金(きん)を買うように」と、ずっと勧(すす)めてきた私の考えの勝利である。このあと、金(きん)はもっと上がってゆく。これまで金を買ったことのない人は、今のうちに金(きん)の地金(じがね)を買ったほうがいい。長い目で見て、金はもっともっと上がる。今の2倍になる。第2章で、これからの動きを詳しく予測する。

あと一度、下(した)()し(下落)したら、そこでサッと拾い(買い)なさい。

株価は、NY(ニユーヨーク)でも日本でも、最高値を更新しつつあるように見えた。だが、もうすぐ暴落が起きる。いくら上がっていると言っても、ジェットコースターと同じで、急降下する。この動きを2カ月周期で繰り返す。今の世界の金融市場は、きわめて不安定である。

このことを投資家、資産家、企業経営者は、肌身(はだみ)でよく分かっている。私たちは注意深くならなければいけない。常に慎重になって、用心しなければいけない。調子に乗って、また大損して痛い目に遭()うのは自分だ。ただし、生来(せいらい)の博奕(ばくち)打ちの才能のある人は別である。彼らは瞬時(しゅんじ)に動く。そうでないと、勝ち残れない。そういう人々は、私の本から世界の金融の動きの知識と情報だけ、取って行ってください。

この本では、米と中が、防衛(軍事)と金融経済の両面でぶつかることで、世界が不安定になって、金融恐慌が起きることをずっと説明してゆく。

アメリカと中国が貿易戦争(トレイド・ウオー)(ハイテク、IT[アイテイ]戦争でもある)で激しく衝突するたびに、NYや東京の株価が落ちる。そのせいで、世界中が不安定だ。このことを投資家や資産家が、心配して動揺している。自分の金融資産や投資した資金が、安全に守られるか、という根本的な不安を抱えて、そのことを口に出し始めている。

「株や債券の値下がりを見越して、先物(さきもの)の売りで儲けを出そう」とか、「金(きん)の地金(じがね)が値上がり出したので、そっちに短期間だけ資金を移そう」とかいう、安易な考えはダメだ。どうも、アメリカを中心にした戦後76年目の、世界金融体制(金・ドル体制。ブレトンウッズ体制)の崩壊、終わりが近づいている。そのことを投資家や資産家が、肌合いで敏感に感じ取っている。

私は最近、彼らから、直接の苛立(いらだ)ちや訴えを聞くようになった。彼らの、投資家としての動物的な勘(かん)から来る不安に対して、私はどのような理論と対策を立てることができるか、を真剣に考えている。

米と中が、世界覇権(ワールド・ヘジェモニー world hegemony )すなわち、世界の支配権をめぐって激突している。これが今の不安定な金融市場の大きな原因である。この本の英文書名に載()せたとおり、" The US‐China Hegemonic Cold war "「ザ・ユーエス・チャイナ・ヘジェモニック・コールド・ウォー」である。それは去年(2018年)3月に、貿易戦争(トレイド・ウオー)の火ぶたが切られたときからだ。米トランプ大統領が、先制攻撃(プリエンプテイブ・アタツク)で先に手を出した。

「もうこれ以上、中国を放っておくことはできない」と。さあ、それでだ。この戦いは、アメリカと中国の、果たしてどちらが勝つか。

日本国内では、今もなお、保守的な資産家や投資家、企業経営者たちは、「絶対に、アメリカが勝つ」と固く信じている。「やっぱりアメリカは強いんだー」と威勢よく言っている。だから、彼らは「NYや東京の株は、まだまだ上がり続ける」、そして「円ドルの為替(かわせ)相場は、強いドルが続くので、1ドル=130~140円の円安ドル高になる」と予想している。そういう人が多い。果たしてそうか。

私、副島隆彦の本の読者であれば、もう少し深い知恵に基づく、別の見方をする。このことをずっと、この本で説明してゆく。

副島隆彦

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目 次

まえがき

第1章 「米中激突 恐慌」と日本

●中国に対する、アメリカ国民の切迫感とは

●なぜトランプは「2人の主要閣僚」を叱りつけたのか

●市場を直撃した大統領のトゥイッター

●消費税10%で日本の景気はどうなるか

●ジェットコースター相場で、下落(11月)上昇(12月)暴落(2020年1月)

●反中国の「フォアマン・レイバラー」とは何か

●〝スプートニク・ショック〟の再来

●アメリカ人は中国への親近感を抱き続けてきた

●これからの株価を予測する

●トランプの「(政策)金利を下げろ」は正しいのか

●逃げ場がなくなる先進国

●2024年、先進国の財政崩壊(フィナンシャル・カタストロフィー)が起きる

●中央銀行総裁と財務長官の違い

●トランプは、アメリカの隠された大借金を無視できない

●「強いドル」の終わり

●恐るべき中国のプラットフォーマー

●銀行が消滅する時代

●日本が買わされたのは、トウモロコシだけではなく大量の兵器

第2章 今こそ金(ゴールド)を握りしめなさい

●金(きん)を買う人、売る人が増えている

●あと2年で金(きん)1オンス=2000ドルに

●世界金価格を決めるのは上海とロンドン

●ウソの統計数字に騙(だま)されてはいけない

●中国とロシアは、米国債を売って金(きん)を買った

●最後の買い場がやってきた

第3章 米中貿易戦争の真実

●米と中の冷戦(コールド・ウオー)はどのように進行したか

●ファーウェイ副社長の逮捕と、中国人物理学者の死

●トランプを激怒させた中国からの政府公電

●「アメリカ政府による内政干渉を許さない」

●なぜトランプは折れたのか

●李()(こう)(しよう)になぞらえられていた劉鶴

●対中国制裁関税「第4弾」の復活

●妥協派と強硬派――アメリカ国内が分裂している

●米国のIT企業とファーウェイ

●アメリカに敗北し続けてきた日本

第4章 米国GAFA 対 中国BATHの恐るべき戦い

●アリババ(BATHのA)の金融商品が与えた衝撃

●追い詰められたアップル社

●トランプはアメリカ帝国の墓掘り人になる

●アリババの歴史と全体像

●7000倍の資産膨張

●貿易戦争からハイテク戦争、そして金融戦争へ

●「中国の手先」と非難されるグーグル

●ホワイトハウスに呼びつけられたグーグルのCEO

●未知なる最先端の何ごとかが進行している

第5章 金融秩序の崩壊

●日本が買わされている米国債の秘密

●ECB総裁が「恐慌突入」を認めた

●2024年、10000円が1000円になる

あとがき

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あとがき

この『米中激突 恐慌』は、表紙に打ち込んだとおり、 Econo-Globalists 「エコノ・グローバリスト・シリーズ」の22冊目である。よくもまあ22年間も、私は金融本を毎年、書き続けて、生きながらえたものだ。我ながら感心する。

 この本を書き進めながら、第4章に入ったところで異変が起きた。私の脳にひらめきが起きた。第3章までは、まあ私のいつもの金融と経済(そしてそれを世界政治の動きから見る)の、どぎついあれこれの洞察(どうさつ)である。

第4章に来て、私は急に一気に、高いところに到達した。問題は、米と中の貿易戦争が、IT(アイテイ)ハイテク戦争に姿を変えたことではなかった。現下(げんか)の貿易戦争は、本当は金融戦争だったのである。すでに5(フアイブ)(ジー)の世界規準を握った中国ファーウェイ(華為技術)社をめぐるあれこれの抗争と、米中政府間(かん)の激突ではなかった。問題は、ファーウェイではなく、アリババ(及びテンセント)だったのだ。アリババが先駆(せんく)して握りしめた、スマホ決済と与信(金融)、さらには預金機能(金融商品のネット販売だ)が、世界の金融体制を根底から覆(くつがえ)しつつある。まさしく大(だい)銀行消滅である。クレジット会社もカード会社も銀行も、世界中で消滅してゆく。

 ヨーロッパ近代(モダーン)が始まって、ちょうど500年である。この近代500年間の欧米白人文明が敗北しつつある。問題はファーウェイではなく、アリババだったのだ。真に頭のいい人は、本書の第4章を読んで驚愕してください。ついでに、ソフトバンクの孫正義(そんまさよし)氏の力(ちから)の謎と裏側もバッサリと解いた。乞()うご期待だ。

 私とともに、この20年間、「エコノ・グローバリスト・シリーズ」で走り続けてくれた、担当編集者の岡部康彦氏が、満期退職した。岡部氏が念入りに下ごしらえしてくれたので、本書の第4章の快挙も成し遂げることができた。彼との仕事での長い付き合いは、このあとも続く。記して感謝する。

2019年10月

副島隆彦

(貼り付け終わり)
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銀行消滅 新たな世界通貨(ワールド・カレンシー)体制へ (Econo-Globalists 20)

(終わり)

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決定版 属国 日本論
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 古村治彦です。

  『決定版 属国 日本論』(副島隆彦著、PHPエディターズグループ、2019年9月)が2019年9月22日に発売されます。本書は副島先生の主著である『属国 日本論』(1997年)に加筆訂正されたものです。以下にまえがき、目視、あとがきを貼り付けます。参考にして、是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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決定版 属国 日本論

 (貼り付けはじめ)

 

はじめに 

日本は、世界政治の現実からみるとアメリカ合衆国の属国である。私はこの冷酷な現実

認識からすべての話を始めることにしている。
 「日米対等」「イークオル・パートナー」「太平洋の架け橋」「世界で最も重要な二国間関

係」などと、米国から勝手に表面上だけおだてられ、いいように扱われてきたのが、戦後

75年間の日本の姿である。日本は、世界に200ほどある国の中の、主要な30カ国のうちの1国ではある。人口も1億2000万人いる。そしてアメリカ合衆国のアライ(ally、同盟国、友好国)」のひとつである。それ以上ではない。同盟国といえば聞こえはいいが、ソビエト・ロシアの崩壊(1991年12月)のあと世界覇権国であるアメリカが、同盟(アライ)国という言葉に対して持つ真の意味は、米国の言うことをきく国、つまり属国というものである。

 誰もがお茶を濁してこのように露骨に言わないだけのことである。

断っておくが、属国というのは植民地(コロニー)のことではない。朝貢国[ちょうこうこく]tributary State トリビュータリィ・ステイト)のことである。歴史上の類推でいえば、紀元後500年間の世界帝国であった西ローマの、属州(provincia  プロヴァンキア)のことである。中国歴代王朝(中華帝国)の用語でいえば、藩国(はんこく)、あるいは冊封国[さくほうこく](さっぽうこく)という。冊封国の王たちは、中国の歴代皇帝に朝見して、臣下の礼をとった。彼ら属国の代表たちを、皇帝[エンペラー]に対して、「王」あるいは「国王」という。従って、日本の天皇は、エンペラーと自称したが、本当は、王(キング)に過ぎない。 

室町時代に、足利幕府の武家政権は、明(みん)王朝から「日本国王」の称号を頂戴していた。中国からみれば、日本は属国であった。日本は、この事実に反発を感じて抵抗してきた国である。江戸時代には、属国である事実を、隠そうと努力した。

幕末に黒船来航によって、米国インド洋艦隊の提督マシュー・カルブレイス・ペリーの砲艦外交(ガンボートディプロマシー)で、無理やり国をこじあけられ、開国してからの、この160年間は、米国に軍事的、経済的、文化的に服属してきた。

シー・エムパイア(海洋帝国)としての米国と、友好関係を築き続けたことは、日本の近代化にとって幸運であった。ところが、日露戦争から太平洋戦争敗戦までの間に、国家に対する求心力が高まってくると、日本は西欧諸国と米国に反抗的になった。そして、東アジアにおける独自の地域覇権 regional hegemony(リージョナル・ヘジェモニー)を目指した。即ち「大東亜共栄圏」(ザ・グレート・イースト・エイシア・コプロスペリティ・スフィア)構想である。無謀にも世界の大勢を敵に回して戦いを挑み、案の定大敗北した。そしてその後、アメリカの属国として平和な75年があった。 

日本は、冷戦(ザ・コールド・ウォー)時代をソビエトと中国の共産主義に対する〝反共の防波堤〞の役割を東アジアで担い、〝吉田(茂)ドクトリン〞により軍事負担を免れ、上手に行動して、経済的繁栄を勝ち得た。

 私たちは、かつての東欧諸国が、1991年に崩壊するまで、ソビエト帝国(ソビエト連邦)の「衛星国(サテライト・ステイツ)」であると学校の教科書でも習った。では、日本はずっと米国の衛星国ではなかったのか。この疑問に対しては、私たちは目をつぶり、回答を先送りして生きてきた。

先の戦争で日本は米国に完膚なきまでに叩きのめされた。残虐な原子爆弾(アトミック・ボム)まで投下されて敗戦した。日本がポツダム宣言を受諾して無条件降伏したとき、世界中の人々は、日本国民が命乞いをした、と考えた。頭を下げ、生き延びさせてもらった、と。だが、私たち日本人はそうではない。あれはただの「終戦」だ、と思ってきた。このあと米国に屈服して生きてきた。

 米国からすれば、日本は東アジアの1国だ。中日韓鮮台の5カ国の中のひとつに過ぎない。米国の世界戦略からすれば、日本は韓国や北朝鮮や台湾と同じ意味しか持たない。

 米国は、表面だけは、「日米対等」を演出し、ふつうの日本国民に対しては優しい態度を取る。しかし一歩裏に回れば、外交交渉の席で、日本の政治家や官僚や財界人たちを、どなって脅し、「我々の言うことを聞け。もっと金を払え」と抑えつけている。この事実を一般の日本国民は、知らされていない。 

 1996年の4月の「米日安保共同宣言」がいい例だ。この時、「有事法制の整備」と、「米日防衛協力のガイドラインの見直し」と「物品・役務(えきむ)相互提供協定」が話し合われたとされている。その議題(アジェンダ)のすべては、米国の官僚が、協議の場に、まるで「天から降ってくるように」持ち出してくるものである。話し合いというのは名ばかりで、日本の政治家や官僚は、米国から出された要求にただ頷(うなず)くだけだ。

米日間の外交協議の場で、日本に主導権など一切ない。私たちの知らないところで、「次はこの議題について持ち帰って討議しなさい」と、日本は米国から次々と宿題を突きつけられる。彼らは、私たちに憲法を作って与えた。それから日本人に民主主義教育を施した。現在の私たち日本国民を作った。このように日本を枠にはめておきながら、その枠が米国自身の東アジア戦略に合わないと、今度は、あれこれ修正を迫ってくる。これが米日関係の真の姿である。

 日本は、輸出と輸入の4割を、米国に頼っている。日本は、経済的に米国に依存している。経済の生命線である、中東からのオイルの輸送ルートも、米軍の海洋支配力(シーレーン)に守られている。経済が何よりも重要だ。

 私たちは、伝統保守派の人々の、「NOといえるジャパン」、「米国は日本人に民族の名誉を返せ」、という反米主義の論調に、軽々と乗ってはいけない。しかしことさら卑屈になって米国に対して土下座外交をつづければいいということもない。今、大切なのは、日本が置かれている立場を明らかにすることだ。

 私が、本書で、世界帝国アメリカと言うとき、「帝国(エンパイア)」という概念は、「領域支配」を含まない、ということを理解してもらいたい。

 「帝国」というのは、例えば、高校・世界史地図帳の中に、ペルシア帝国の最大領土とか示して、世界地図上に赤色でベッタリと塗ってある。だが、実際の歴史上の帝国(覇権国)はあのようなものではない。属国の服属関係にもいろいろなものがある。完全に武力制圧された国から、政治的には独立したまま、経済交易だけ帝国に従属しているという場合もある。

従って一様に地図を赤色で塗りつぶしたような感覚で帝国というものをとらえてはならない。即ち、帝国とは領域支配を意味しない。このことは、『最後の遊牧帝国』(宮脇淳子著、1995年、講談社選書メチエ)を読むと分かる。

日本は独立国であって、アメリカの属国ではない、といきり立つ人々がおられるだろう。何故、そのようにいきり立つのか、何が不快なのかを、自分の内心に問うてみられるがよい。そうすれば、やはり、アメリカの日本に対する高圧的な支配者然とした態度に行きつく。私は、そこに出現する真実としての米日関係を、冷静に観察している。 

 法律的に立派な制度が完備している。だから日本は、独立国であって、他国のコントロールを受けていない。と強がりを言ってみても始まらない。現実に、日本はアメリカの世界戦略の中に組み込まれて生きていると言わざるを得ない。属国であるか否か、の細かい、政治学、歴史学、法律学上の考察についてこの本で論究する。ふつう日本人が考えているよりも、大きな視点から、この国を概観する。

 私が唱えている「属国 日本論」という言葉は、民族主義的あるいは右翼的な響きがあるので、誤解されやすい。私は伝統保守派からの視点から主張していない。保守思想であっても、私の保守主義(リバータリアニズムと言う)は、日本を外側に開いてゆく。世界の中のひとつの国として、世界資本主義に従い、経済的に繁栄してゆくことが何よりも大切だ、という立場である。日本の保守派は、民族優等の伝統保守派と、世界資本主義を支持するビジネスマンたちに体現される世界保守派に分裂している。私は後者である。 

 幕末、維新期に、はじめ尊王攘夷(そんのうじょうい)を唱えたはずの者たちが、コロリと開国派に態度を変えた。そして政治権力を握ったとたんにイギリスとアメリカに従属した。国難に際して訳も分からず、本能的に切実な排外主義(ショービニズム)である攘夷を唱えた。

 「この国は独立国ですから、どうぞ、お引き取り下さい。自分たちのことはなるべく自分たちでやります。できない分については、ご助力をお願いします」と、欧米列強(ヨーロピアン・パワーズ)に対して、静かに説くことのできる人物がいなかった。現在の状況も、あの当時とそっくりである。

 やるべきことは、米国という大国の内部の、思想勢力のことをもっと本気で本格的に研究することである。そして彼らの意図を見抜くことである。日本の知識層の人たちは、現代のアメリカの政治思想の大きさと強さを、ほとんど知らないまま生きてきた。アメリカ内部の、思想闘争の分析ができなければアメリカ帝国を理解したことにならない。私はすでにこの分野にも手をつけている。

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目次

 

はじめに 5

第一部 属国日本論 日本の本当の姿

 

一、属国日本を検証する・・・24

 

日米対等は虚妄 24

なぜ真実を隠蔽するのか 27

米日安保共同宣言をめぐって 29

ナイとヴォーゲルは左遷された 31

ジョゼフ・ナイの前歴 32

北朝鮮核疑惑と韓半島情勢 35

スパイ衛星写真という切り札 39

TMD日本配備構想とは何か 42

日独の核保有を認める 48

何も知らされていない政治家たち 49

台湾海峡情勢の裏側 52

円安戻し政策(1995年7月)の舞台裏 54

敏腕リチャード・クーの〝日本情報〞 60

日航機墜落事故をめぐって 62

日本の空は米軍によって守られている 65

「ビンの栓」理論 69

何故、米国の製造メーカーを追及しないのか 72

エノラ・ゲイ号をめぐる対立 76

東アジア諸国とアメリカの軍事同盟 81

中東地域とアメリカ軍 89

伝統保守派と世界保守派 91

伝統保守派と世界保守派の分岐線 95

隠蔽するな、事態を語れ 101

 

補諭CIAからの自民党への資金援助問題・・・102

 

ダグラス・マッカーサー二世の拒絶と別ルート 102

なぜ、こんなにしてまでお金を必要としたか 106

今後も続く事実の判明 110

全てがうやむやにされてしまう 111

 

二、なぜ佐藤栄作元首相はノーベル平和賞を受賞したのか・・・119

1974年10月の奇妙な白け 119

世界的偉業に関与したという厳然たる事実 121

「メースB」の撤去は中国へのサインだった 123

20年後につながったニクソンの訪中 130

「天動説」のものには世界政治の「地動説」が視野に入らない 135

デタントの世界的流れの中に位置づけられた日本 139

「隣の小部屋」で交わした文書こそ核心部分 143

政府間経済交渉のはじまりとしての繊維交渉 150

「非核三原則」と「非核四政策」 155

ニクソンが立案し、キッシンジャーが動いた世界戦略の中で 160

 

第二部 世界覇権国(ヘジェモニック・ステイと)アメリカ

 

一、アメリカの世界政策とシンクタンクの実態・・・166

 

日本にない国家戦略研究所 167

政府から独立した研究機開 169

ネオ・コン=クローバリスト系かリバータリアン系か 171

明石特使の首を切ったカークパトリック 176

「安保共同宣言」とマイケル・グリーン 177

ケイトー研究所は温かだった 179

ヘリテイジ財団にみる草の根気風 181

セリッグ・ハリソンの北朝鮮、対日政策 185

研究者を束ねる「国務次官補」 187

グローバリスト官僚と戦後日本 188

 

二、世界を管理するグローバリスト官僚たち・・・192

 

「エイプリルはよくやった」 192

モーゲンソーの弟子たち 195

日本人の腹の底をのぞき込め 202

「戦後民主主義」の正体 208

グローバリスト包囲網 214

 

第三部 属国日本の近代史

 

一、幕末・明治期編・・・222

 

ペリー以来変わらぬアメリカの日本観 224

内部だけでの大騒動 228

変わることのない日本に対する基本認識 232

必要なアメリカ政治についての徹底的な研究 234

アメリカ主導からイギリス主導への移行 237

グラバーの役割とジャーディン・マセソン商会 239

長崎代理店・クラバー商会 242

五代友厚・ジョン万次郎・坂本龍馬の動き 248

アーネスト・サトウという日本研究戦略学者 253

意図的な『一外交官の見た明治維新』 254

サトウの本の出版は半世紀後 258

坂本龍馬とイギリス主導の薩長合作 265

ジョン万次郎という男 267

坂本龍馬の動きの背景 271

育てられた親イギリス派の日本人 275

兵器こそが薩長連合を成立させた 277

寺田屋と情報戦争 281

最終段階で切り捨てられた坂本龍馬 283

松陰の行動力こそ評価すべきだ 285

大村益次郎と後藤象二郎 287

伊藤らのイギリス再訪 292

 

二、敗戦まで・・・296

 

世界覇権をめぐるイギリスとアメリカの対立 299

イギリスを優先するかアメリカとの同盟に入るかの選択 300

不平等条約の改正について 303

「ザ・グレート・ゲーム」について 304

ユーラシア大陸のヘリの国として 305

中央アジアをめぐるイギリスとロシアの闘い 307

間宮林蔵とシーボルト 312

日本の新興資本家たちの苛酷な農業経営 314

決定的に針路を誤った中国進出 318

居留民の過去問題 321

アジアを舞台とした情報戦と人物たち 325

中国人脈のアメリカ人とは 326

マッカーシー旋風はアメリカ国内の恐怖感の表れ 329

ゾルゲ事件をめぐって 334

国家戦略を立案する人材を欠いた日本 340

世界的視点を持っていた吉田茂 343

 

決定版を出すにあたって 345

 

あとがき 357

 

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あとがき

日本の戦後の立志伝(りっしでん)中の実業家たちは、商店街の小さな個人商店から身を起こした。そして30年間かけて大企業に成長した。私も自分の思想と言論を、ささやかな個人営業から始める。私の思想と言論に注目してくださる少数の優れた人々の理解と支持に支えられて、着実に自分の足元を固めながら一歩ずつ進んでゆく。

一過性のテレビ文化人活動などに魅(ひ)かれることはない。阿呆どもは時間がたてばどうせ消えていなくなる。

私の言論と思想の構えを、秩序破壊的で、攻撃的で真実暴露の、危険な言論だ、と直観的に毛嫌いして避ける人々がいる。この種の自己保身優先で、組織や集団内の立ち回りだ

けが上手な人種とは、私は、終生(しゅうせい)、相容れない。この本質的に小心者で、他者へのレッテル貼りと噂話だけが得意な人間たちもどうせ消えていなくなる。

私は、ひたすら大きな諸事実、大きな真実を、明瞭に指摘して、自分の言論の活路を見つける。日本国内だけでしか通用しない国内言論は、もうやめにすべきだ。私は、この『属国 日本論』という、およそ生来の保守派の温厚な人々だけでなく、ソビエト崩壊(1991年12月、もう28年前だ)以降、本当は元(もと)左翼なのに、「真性保守」を名乗る者たち、全てから目をそむけられる本を書いて、微塵(みじん)たりとも動じない。私は、外側(すなわち世界)から、冷酷に見られた日本の本当の姿を昂然(こうぜん)と指摘しないわけにはゆかない。

日本が優秀な国民からなる大国だ、というのは噓である。

日本は、他の国々と同様に、世界覇権国(ヘジェモニック・ステイト)アメリカ合衆国の属国(トリビュータリイ・ステイト)のひとつに過ぎない。私の属国研究の結果からは、ドイツどころか、イギリスもフランスさえも、第2次大戦後はアメリカの属国になっている。内部に多くの難問を抱えていようとも、とにかくアメリカが今のところは世界帝国である。言うことを聞かねば周辺国は生き延びられない。

フランス現代思想(サルトルからフーコーまで)も、ドイツ文化マルクス主義哲学(ベンヤミンからハーバマスまで)も大方、雲散霧消した。あれらに入れあげた常に遅れた西ヨーロッパかぶれの知識人だった人々は消滅してしまった。

 日本法制史学者の斎川眞(さいかわまこと)氏が一言うごとく、「東アジアは、とにかく、自大(じだい)主義で、かつ事大(じだい)主義」なのである。「夜郎自大(やろうじだい)で、何でもかんでも、自分のことを大変、力のあるすばらしい国だ、と考えないと気がすまない人々と、その歴史」なのである。全ては劣等感の裏がえしである。

日本だけでなく東アジア地域(リージョン)全体が、ずっとそうらしい。冷静に、冷酷に、自分をみつめることができない。ソビエト・ロシアが崩壊したとき、私たちの周りの余計な壁がパタパタと倒れた。左翼勢力は衰退した。だが同時に、伝統保守派の勝利もない。どちらもその本性(ほんせい)は、反米(反アメリカ)民族主義か、アメリカの手先集団である

民族主義(ナショナリズム)というのは、それぞれの国民[ネイション](あるいは民族[フォルクス])の自己愛感情ということではない。民族主義とは、世界帝国の属国[プロヴァンス](属州)に、各々(それぞれ)発生する防衛感情のことである。だから民族主義者(ナショナリスト)というのは、帝国と厳しい交渉を続けることを運命とする属国の国王(民族指導者)のことである。

日本は世界の大勢が命じる価値観、すなわち、世界普遍価値に従って生きてゆくしかない。世界資本主義に従って、更に経済的繁栄を守ってゆくべきである。政治はそれにつき従うものである。世界普遍価値が、日本に強く改革を要求して世界基準(ワールド・ヴァリューズ)に従った国になれ、と要求するのならば、それに従うしかない。しかし、この7(世界普遍価値)に対する、残りの3の民族固有価値(ナショナリスティック・ヴァリューズ)で、アメリカの理不尽な日本支配と闘わなければならない。「73(しちさん)の構え」である。 

 この本の英文のタイトルは、表紙に打ち込んだ、『猿の惑星に生まれて』`Born on the Planet of the Apes'「ボーン・オン・ザ・プラネット・オブ・ジ・エイプス」である。このタイトルを一目しただけで、欧米の知識階層の人々ならば破顔一笑して、瞬時に意味を理解してくれる。

私の思想と言論は、自力で英語文献を読み込んだ以外は、先生(メンター)である小室直樹(こむろなおき)氏に多くを負っている。小室直樹を、東京大学学長にして、社会科学(ソシアル・サイエンス)の何たるかを講義させつづけたら、日本に2000人の秀れた、世界で通用する社会科学者[ソシアル・サイエンティスト](政治学者、経済学者、社会学者)が育ったはずなのである。日本国は人材育成の点で、決定的な間違いを犯している

日本に、金融危機が、1998年から襲いかかった。アメリカは、「日本に対して、直

接の大銀行たちの乗っ取り占領計画に着手した。1998年10月に、橋本龍太郎政権を脅して圧し切り、外為法(がいためほう)の全面改正(いわゆる〝金融ビッグバン〞)をやらせた。これで日本国内への外資の導入が一気に始まった。日本の大銀行、証券会社、生命保険会社が次々に乗っ取られていった。

 その代表が、長銀[ちょうぎん](長期信用銀行。現[げん]新生銀行)のリップルウッドホールディングズという、ニューヨークの金融ユダヤ人の頭目たちによる、強制買収であった。日本はアメリカの〝金融属国〞にされた。唱い文句は、「金融自由化」だったのに、実際に行われているのは「金融統制」である。

 そして、もうひとつは、安全保障(軍事)の問題である。我々日本人は、日本に5万7000人いる駐留米軍(このうち2万7000人が沖縄にいる)に、撤退(ウイズドロー)してもらいたいのか、それとも、このまま駐留して日本を守ってもらいたいのか。この一番、簡素でストレートな問題に、はっきり答えようとしない。だが、米軍は自分たちの都合で、日本から撤退する時は、する。

 日本は、属国としてアメリカの政治力に屈服している。この事実をはっきりと認めるところから、全てが始まる。この大前提に立って、重厚に練られた国家戦略(ナショナル・ストラテジー)を自分たちの手で、なんとか編み出して、築いてゆくのである。

 本書で指摘したとおり、日本人は、敗戦後75年間、アメリカのネオ・コン=グローバリストと、ニュー・ディーラー(初期グローバリスト)に、うまく飼い殺しにされつづけた。自分たちの頭で、自分たちのことを考える能力を奪われて来た。ネオ・コン派という狂暴な知識人集団のために暴走国家になっているアメリカ帝国につき従っている。

私が、要約して言えるのは次のとおりだ。

「日本は、あと、しばらくはアメリカの保護の下で生きてゆくしかない。しかしなるべくなら自立して自分の力でやれるだけのことはやりたい。従って、駐留米軍には撤退していただきたい。安全保障の点で、実際のところ日本は自力で防衛する力が足りない。この足りない分については助力をお願いしたい。その分の費用については、細かく計算した上で、お支払いする。それ以上の、無理な要求はしないでいただきたい」

このように、冷静沈着に、アメリカ側に言えるようになるべきだ。無闇といきがったり、反対に自己卑下せずに、正直に現実を見極めて、淡々と話せる国民になるべきだ。きわめて幼稚な理論に聞こえるが、これ以外の、どんな態度のとり方があるというのか。日本が世界から尊敬される国になるためには、この程度の、簡潔明瞭さと、正直さを持つべきだ。

この『決定版 属国 日本論』を出すにあたって、PHPエディターズグループの大久

保達也編集長の尽力に預かった。記して感謝します。炎暑の夏が過ぎてゆく。

 

2019年8月

副島隆彦

 

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 古村治彦です。

 

 2019年6月30日に「副島隆彦の学問道場」主催の定例会(講演会)が開催されます。今回、私も第一部でお話をさせていただく機会をいただきました。アメリカ政治、特に2020年米大統領選挙民主党予備選挙と台頭しつつあるミレニアル世代の若い政治家たちのお話、民主党内部の争いなどについてお話をする予定です。

 

 急なご案内になって申し訳ございませんが、ご検討をいただけますよう、よろしくお願いいたします。

 

*****

 

6/30(日)「学問道場」定例会

『「絶望の金融市場」

及び「国家分裂するアメリカ政治」発刊記念講演会』

 

講師:副島隆彦、

古村治彦、中田安彦

開催日時:2019630()

1215

会場:JR「田町」駅 建築会館ホール

 

・上記定例会のお申し込みは、コチラ↓

http://snsi-j.jp/kouen/kouen.html

 

(貼り付けはじめ)

 

「1828」 2019年6月30日(日)開催の定例会のお知らせ。「全ての経済学を貫く「Y=M」の衝撃()『絶望の金融市場』及び『国家分裂するアメリカ政治』発刊記念講演会」2019年5月21日


副島隆彦の学問道場の須藤と申します。今日は2019521日です。

 

講演会のお知らせです。開催日は2019630日(日)になります。

皆様どうぞふるってご参加下さい。

 

=====

 

41回副島隆彦の学問道場定例会

「全ての経済学を貫く「Y=M」の衝撃()『絶望の金融市場』及び『国家分裂するアメリカ政治』発刊記念講演会」

 

・講師:副島隆彦先生、古村治彦研究員、中田安彦研究員

・開催日時:2019630日(日)1215分開場、13時開演

・会場:JR「田町」駅 日本建築学会 建築会館ホール

・会場住所:東京都港区芝5丁目26番20号

TEL03-3456-2051 FAX03-3456-2058

・地図:

kenchikukaikanannnaizu001


・会場までのアクセス:

JR「田町」駅,都営地下鉄「三田」駅(浅草線・三田線)

 

・当日の予定:

 

開場  12:15

開演  13:00

終了  17:00(予定)

 

※定例会出席のお申し込みはコチラ↓

http://snsi-j.jp/kouen/kouen.html

 

=====

 

副島隆彦先生の講演では、今回は最新刊『絶望の金融市場』で書かれた諸経済学を貫く根源的な発見「Y=M」という式、思想について。

 

この式がいかに重要か、これを理解すれば経済学の歴史の全体像を掴むうえでどれほど有用か、本では伝えきれなかった諸要素もあわせて、お話しされる予定です。どうぞご期待下さい。

 

また新刊『国家分裂するアメリカ政治 七転八倒』の分析を元にアメリカ政治とトランプ政治、また現在の米中貿易戦争の見通し等の最新情勢についてもお話します。

 

 

第一部の、古村治彦研究員と中田安彦研究員の講演では「今までの常識が通用しない、アメリカ政治と、注目すべき政治家たち」と題しまして、前半30分に古村研究員が単独で。後半30分程度に古村研究員と中田研究員の二人が講師をつとめます。

 

2020年アメリカ大統領選挙がすでに始まっています。多くの候補者が出ています。主に民主党予備選の有力候補者達について解説する予定です。日本の政治風土に慣れ親しんでいると想像もできないアメリカ政治の展開の激しさや明快さ、面白さについて、お伝えします。今話題のMMT(現代貨幣理論)についても、中田安彦研究員が解説します。

 

 

※定例会出席のお申し込みはコチラ↓

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須藤よしなお拝

 

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(終わり)

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 古村治彦です。

 

 2019年4月26日に副島隆彦先生の最新刊『絶望の金融市場──株よりも債券崩れが怖ろしい』が発売になります。

 

 以下にまえがき、目次、あとがきを掲載します。参考にしていただき、是非手に取ってお読みください。

 

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 絶望の金融市場 株よりも債券崩れが怖ろしい


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まえがき

 

私は、『「トランプ暴落」前夜』を前年10月に書いて予言を当てた。そして今年である。

 

トランプが「株高[かぶだか](だけ)は死守せよ」に動けば、その周まわりに危機(危険)がはみ出す。

 

株ばっかりを、政治の力で無理やり吊つり上げると、ジャンク債ボンド(ボロくず債[さい])市場が崩れる。ジャンク債ボンドとは、ハイイールド債(さい)であり、各種の高危険[こうきけん](ハイリスク・ハイリターン)債である。日本も含めて投資家たちは、株の儲(もう)けに飽(あ)き足らずに、これらの高ハイリスク危険の仕コンポジット組み債(さい)に手を出している。これらは、株式(ストック)のお化ばけ、である。ETF[イーティーエフ](上場投資信託)やら「インデックス型投信」やら、「BB(ダブルビー) 格(かく)以下の低(てい)信用債券」と言ったりもする。

 

今の世界の金融・経済は、アメリカのトランプ大統領の決断で動いている。彼がズルズルと引きずり回している。

 

年明けにトランプが、FRB[エフアールビー](アメリカの中央銀行)のパウエル議長を、脅し上げて政策金利(短期金利)の利上げをやめさせた(1月30日)。この日からすべてがガラリと変わった。

 

2月27日には、パウエル議長は、議会証言で「(2019年の)年内で、FRB資産の縮小計画を終了する」と言った。すなわち、「FRBが抱える米国債の売却方針を撤回して、このまま抱(かか)え続ける」と発表した。パウエルは今にも泣き出しそうな顔だった。いじめっ子のジャイアンのトランプに、教室でカツアゲを喰くらったノビ太くんのような感じだ。

 

これは米トランプ大統領による〝トランプ独裁(どくさい)〟だ。

 

世界の金融・経済の流れがガラリと大きく変わった。今年の1月からだ。トランプがもの凄すごい剣幕でジェローム・パウエルを脅迫して「コラー、利上げするな。量的引き締め(クオンティテイティブ・タイトニング、quantitative tightening)もするな。緩和[かんわ](イージング・マネー)を続けろ」「私に逆らうと首を切るゾ」と本当に圧力をかけた。前代未聞(ぜんだいみもん)の激しさであった。

 

このために、FRBのそれまでの、①利上げと②通貨量(マネーサプライ)引ひき締しめへの転換の大方針が、ひっくり返った。2015年初めからのFRBの大だい方針が大だい転換した。

 

FRB(連邦準備制度理事会)は、政府から独立した組織である、ということになっている。民間銀行です、というフリまでする。政府の銀行ではありません、と。ここに秘密がある。ここへ豪腕(ごうわん)大統領から、「お前たちが利上げを公表する度(たび)に、株(かぶ)が暴落するじゃないか。それで景気が悪くなる。利上げをやめろー、これ以上景気が悪くなるのを喰くい止めるんだ」と怒鳴られるものだから、FRBの理事や各[かく](全米に12行ある)連銀(れんぎん)の総裁たちが、この剣幕(けんまく)にすっかり脅おびえてしまって、ホワイトハウスに屈服してしまった。

 

昨年12月20日に、パウエルは「来年は予定通り2回、利上げをする」と威厳をもって発表した。

 

そうしたら、12月24日に、クリスマス・イブ暴落が起きた。NY株は3000ドル落ちた。顔色(がんしょく)を無くしたパウエルは、1月30日に、FOMC[エフオーエムシー](米連邦公開市場委員会)のあとの記者会見で、ボッキリと背骨を折られて、利上げと量的引き締め政策を放棄した。

 

アメリカは景気がいい。そしてその頂点(ピーク)にある今のうちに、どんどん金利を上げて、景気を引き締めて過剰資金(加熱した投機、バクチの資金。すなわち過剰流動性[かじょうりゅうどうせい])を、金融市場から奪い取らなければいけないのである。FRBにしてみれば、何も間違った金融政策の舵取りはしていない。おかしいのはトランプの方だ。確かにそうなのだ。トランプの方がメチャクチャだ。だが、このトランプの商売人(都市開発デベロッパー) 上(あが)りの、ドウ猛な決断にも一理ある。アメリカの景気をここで崩したら、あとが大変なことになる。空(カラ)の、見せかけの景気回復であるが、トランプが、この2年間で、自力(じりき)で手塩(てしお)にかけて無理やり作ってきた景気だ。

 

2月27日のパウエル議長の議会証言は、2014年まで続けていた(前の前のバーナンキ議長の)金融緩和[かんわ](イージング・マネー)の方針を復活させる。これからアメリカは、ジャブジャブ・マネー(QE[キューイー]政策)に戻ることを意味する。利上げどころか、利下げをするだろう。ジャブジャブ・マネーの市場への放出もする。「行くところまで行けー」だ。そしてそのあと、この危険な政策が、どのような激しい副作用を起こして、大きな歪(ゆが)みがどこに出てくるか。私たちは凝視するべきだ。行け、行け、どんどんは有あり得えない。調子に乗ると、また、ハシゴを外はずされる。

 

トランプたち(彼への助言者たちも)は、「株価さえ吊(つ)り上げておけば、アメリカ国民は安心する。景気がいいという気持ちになる。FRBよ、邪魔するな」とFRBを脅した。

 

金融引き締めをやらないで、現状のまま金融市場に溢(あふ)れ返る余(あま)った資金で、巨大な金融バクチを、ヘッジファンドどもや、HFT(エイチエフティー)、超(ちょう)高速度株(かぶ)取引業者たち(後述する)に続けさせる。株価をハネ上げ(急上昇)させたり、急に下落させたりして、これで市場参加者(ステイク・ホールダー)たちに儲(もう)けさせる、ことを続ける。

 

“トランプ独裁”の決断は、政治の力で株価を操作、操縦[そうじゅう](マニュピュレイション)しながら、見せかけのアメリカの繁栄をなんとか続けることである。

 

しかし、それでも世界経済は暗雲が立ち込める。今にもどこかで金融危機(ファイナンシャル・クライシス)が起きそうだ、と投資家たちがソワソワして不安がっている。この動物的な心理と反応が正しい。

 

私は、逆張り人間のヘソ曲がり(contrarian、コントラリアン)であるから「反対に反対する」という考え方をいつもする。すると、どういう結論になるのか。元に戻るのか。いや、そうではない。ただちには分からない。私は権力者(支配者)と世の中の大勢(たいせい)が言うことを信じない。自分が持つ予知(よち)能力(近[きん]未来を予言する力)を信じて、次々と押し寄せる新しい事態に、慎重に備える。

 

この国で、ずっと、もう20年間、「もうすぐ金融危機が来る。大恐慌が近づいている」と、書いてきたのは私だ。この私が、大きく態度を変えて、「日本もアメリカも、経済(景気)はしばらく大丈夫です。安心して、さらに値上がり利益を待ちましょう」と言う訳(わけ)がないだろう。私は、「金融市場に対する根本的(根源[こんげん]的) 悲観(ひかん)主義者」だ。

 

私は、「そろそろ危ない。危機が迫っている。用心しなさい」と、本に書いて、金融崩れ、株崩れを事前に警告を発してきた。だから、私の新刊本を買ってササッと読む賢明(けんめい)な人々は、早めにポジション(建たて玉[ぎょく])を手仕舞(てじま)って、大損(おおぞん)を出さないで、ここまで生き延びてきた。

 

だから、今の私は、トランプが号令をかけるアメリカの「行け、行け、どんどん、どこまでも」に反対はしない。あいつらにやらせるしか、ないではないか。どこまでもドンドンやりなさい、その先に地獄が見えるだろうから、と私は唱える。かつ、日本国内でもどうせトランプに追随するから、私が強く主張するのは、「政府や日銀は、金融市場への規制を強めるべきだ」ではない。その反対に「規制をするな。一切するな。全くするな」である。「このままドンドン、ガンガン、行けるところまで行け。地獄まで行け」だ。

 

市場取引に規制をかけると、投資家心理が冷え込んで、株が下落して、それでさらに景気が悪くなる。と、政府(財務省)も日銀もトランプに右に倣ならえ、で思っている。大勢[たいせい](=体制) 順応が彼らの習性だからだ。アメリカのトランプ独裁の影響で、日本もゼロ金利(長期金利市場なら「マイナス金利」)を継続し、金融引き締めをしない(ジャブジャブ・マネーのまま)だ。

 

私が守ればいいのは、私の本を買って読んでくれる人(読者、お客さま)だけだ。

 

私は自分の読者だけをひたすら守る。彼らに間違った判断をして大損をすることをさせない。そうやって、20年間、ここまで、地道に築いて来た自分の信用だ。私は自分の読者(お客)だけは何があっても守る。

 

=====

 

絶望の金融市場──株よりも債券崩れが怖ろしい[目次]

 

まえがき─2

 

第1章 〝トランプ独裁〟が経済を変えた

 

アメリカの金融崩れが阻止された─22

フラッシュ・クラッシュの激震が為替市場を襲った─25

これからは債クレジット券市場が危ない! 32

バフェットまでもが株で大損した─44

ヘッジファンドが〝踏み上げ〟を喰らった─54

ニューヨークの株式市場は大爆発寸前で生き延びた─58

ロシアは米国債を売却して金(ゴールド)を買い増した─62

〝トランプ独裁〟で金融緩和の再開が決まった─65

私たちは危険な投資の時代に突入している─67

 

第2章 金融理論はみんなゴミだった

 

金融理論は全部ゴミくずだったことがバレた─70

トランプは若い頃から民主党リベラル─74

ジャブジャブ・マネーの洪水に呑み込まれる世界─80

もうすぐ何か巨大なことが起こる─103

 

第3章 株よりも債クレジット券市場の崩落が恐ろしい

 

レバレッジをかけてパワーアップした株もどきの金融仕組み債─106

ノックイン債でノックアウトされる恐怖─112

あまりにも危険な不動産担保抵当証券が平気で売られている─114

企業の債務不履行リスクをも対象にする金融派生商品CDS 122

“ヘッジファンドの皇帝”が鳴らす警鐘─124

 

第4章 ボロくず債の暴落から恐慌突入

 

ボロくず債崩れが国債市場をぶち壊す─130

パウエルFRB議長はジャンク債の暴落が怖い─136

日銀黒田総裁は誰と闘っているのか─141

「それでも金融市場は、しばらくは大丈夫。狼狽えるな」─146

ソフトバンク株の上場は二重評価のインチキだ─148

粉飾決算をしてでも株価を維持しようとする社長たち─151

買えなくなるから、今こそ金を買い増すべきだ─154

人騙し業界人のポジション・トークに乗せられるな─160

本当に危険なのはトランプの任期が終わる2024年─166

大戦争か大恐慌か──80年周期で大きな危機が来る─172

 

第5章 経済学はYイールド= Mマネーですべて分かる

 

経済学の理論はたった一つの公式で説明できる─180

「フィッシャーの交換方程式」がマネタリズムを生んだ─185

ケインズの偉大さは過剰生産の発見にある─191

Y = C + I という人類の大原理─197

 

第6章 「政府マネー」は間違っている

 

貨幣数量説は嘘っぱちのインチキ理論─204

マネタリズムに屈服したニューケインジアン─207

インタゲ論は完全に敗北した─210

スイスの国民投票で否決された政府マネー─214

米ドルの信用力が落ちてきた─224

通貨発行は中央銀行の役割でなければならない─227

皇帝や将軍たちも金貸し業をやっていた─233

国民負担率が5割を超したら江戸時代の「五公五民」だ─236

やっぱりケインズが偉大だ─241

第7章 アメリカは北朝鮮を押さえ込む

 

2月28日の米朝会談(トランプと金正恩)の決裂、もの別れ─248

ディールとネゴシエイションの違い─259

トランプはじわじわと金正恩を追い詰める─263

 

あとがき─269

 

【特別付録】隠れたお宝のモノづくり企業 厳選14銘柄─272

 

=====

 

あとがき

 

私の最新作の、この『絶望の金融市場 株よりも債券崩れが怖ろしい』を書き上げる時に、私は大きな謎をひとつ解いた。

 

アメリカは、自国の景気(経済)を必死で維持するために、〝トランプ独裁〟で無理やり利下げと量的緩和[りょうてきかんわ](イージング・マネー。ジャブジャブ・マネー)の再開に舵(かじ)を切った。

 

現代の欧米経済学の根底にあるのは、①実じつ物ぶつ経済(もの、財[ざい]の市場)と②金融(おカネ)経済との関係をどのようにとらえるか、である。

 

私はここで、Y=Mというたったひとつの数式(公式)で、理論経済学はすべてを書き表わしてきたのだ、という秘密を大発見した。

 

Y(もの)=M(お金)という一行の式(方程式)で、経済学(エコノミックス)なるものの謎は解けた。このことを本書の第5章で、大急ぎで書いた。

 

マネタリズム(シカゴ学派)も、ケインジアンも、マルクス経済学も、すべてY=Mで出来ていた。

 

このことが分かれば、日本人の鋭い、生来頭のいい人たちは、「理論経済学という暗黒大陸(あんこくたいりく)」に踏み込んでゆける。日本人にこの100年間、解けなかった西洋人の近代学問(サイエンス)というものの真髄に触れることができる。私が勢い込んで何を一体、書いているのか、分からなくていいですから、どうか、第5章の私の大発見を読んでください。

 

本書をたった一カ月の急ごしらえで(構想には半年かかっている)作るに当たって、徳間書店学芸編集部の力石幸一氏から、いつもながらの強い支援をいただいた。記して感謝します。

 

2019年4月

 

副島隆彦 

 

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 古村治彦です。

 

gekihensurusekaiwosakiyomisurubookcover001
 
激変する世界を先読みする

 

 今回は、副島隆彦先生と佐藤優先生の最新刊『激変する世界を先読みする』をご紹介します。目次を読んでいただくと分かりますが、最新の世界情勢から猫の話まで幅広いテーマが網羅されています。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

 

(貼り付けはじめ)

 

はじめに──混沌とする国際情勢を大胆に予測する_佐藤

 

 国際情勢は実に混沌としている。一方において、アメリカと北朝鮮の関係は劇的に改善している。他方において、日本と韓国の関係が急速に悪化している。

 

 日本とアメリカは軍事同盟国で、韓国とアメリカも軍事同盟国である。国際関係においても、従来は「友達の友達は友達」というルールで動いていた。

 

 しかし、それが現在では、このルールが適用できなくなっている。この関連で興味深いのは日露関係だ。ロシアとアメリカ、ヨーロッパ諸国の関係は非常に悪い。1991年12月にソ連が崩壊した後に限って言えば、ロシアと西側諸国との関係は、現在がいちばん悪い。

 

 しかし、2018年11月14日にシンガポールで、安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領が会談した後、北方領土交渉が本格的に動き始めた。こういう現象の背後にある歴史のダイナミズムをとらえることを、この対談で副島隆彦氏と私は試みた。

 

 歴史のダイナミズムについて、私の個人的体験に即して少々語ることをお許し願いたい。

 

 1987年8月に、私が外交官としてモスクワの日本大使館に赴任した時点で、近未来にソ連が崩壊すると考えていた国際政治の専門家はいなかった。

 

 1991年3月17日には、ソ連維持の賛否を問う国民投票が行なわれた。投票者の76・4%がソ連維持に賛成票を投じた。それにもかかわらず、同年12月25日に、ソ連は崩壊した。ソ連が人造国家で、武力を背景にリトアニア、ラトビア、エストニアのバルト三国を併合したことに無理があった。

 

 バルト海沿岸の三国から始まったソ連からの分離、独立運動が、ソ連崩壊の原因となった。バルト三国の人々の自己決定権確立に向けた意思が、歴史をダイナミックに動かしたのである。

 

 北方領土交渉についても、私には歴史のダイナミズムが皮膚感覚でわかる。

 

 2000年4月4日、モスクワのクレムリン宮殿で、鈴木宗男衆議院議員(当時)が大統領選挙に当選したばかりのプーチン氏と会談した。

 

 この会談を取り付けるうえで、私はそれなりの働きをした。森喜朗首相(当時)からも当時の外務事務次官からも「よくやった」と労いの言葉をかけられた。それが2年後の2002年に事態は暗転し、鈴木氏と組んで、北方領土の四島一括返還を放棄したとバッシングされ、私も鈴木氏も東京地方検察庁特別捜査部によって逮捕された。

 

 それから17年を経た現在、日本政府は、当時、鈴木氏や筆者が進めていた路線よりも、ロシアに対して譲歩した北方領土交渉を行なっている。

 

 具体的には、「主権に関して、歯舞群島と色丹島は日本、国後島と択捉島はロシアにあることを確認して、日露間の国境線を画定し、平和条約を締結する。ただし、国後島と択捉島に関しては、日本人に特別の想いがあることを考慮して、往来・経済活動などについて日本国民のみを対象とした特別の仕組みを作る」という内容に収斂する方向で交渉が進んでいる。

 

 国後島と択捉島に関しては、1855年に、日本とロシアが初めて国境線を画定した際に日本領となった。その後、1945年8月に、ソ連軍が占領するまで、外国の領土であったことはない。

 

 この歴史的経緯があるにもかかわらず、1951年のサンフランシスコ平和条約2条c項で、日本は国後島と択捉島を含む千島列島を放棄した。さらに、それにもかかわらず、日本政府は、1955~56年の日ソ国交回復交渉の過程で、サンフランシスコ平和条約で放棄した千島列島に国後島と択捉島は含まれないという立場に転換した。

 

 アメリカが、日本が歯舞群島と色丹島の返還のみで、ソ連と平和条約が締結されるならば、沖縄をアメリカ領に併合すると圧力をかけてきた。

 

 また、当時の日本の内政を見ると、日本共産党だけでなく社会党も革命を主張していた。歯舞群島と色丹島の返還が実現すると、日本国民の親ソ感情が強まり、革命が起きることを政府は心配した。

 

 そこで、ソ連側が絶対に呑むことのない四島(歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島)一括返還という要求を突きつけ、共産主義の影響力が日本に浸透することを阻止したのである。

 

 四島一括返還とか、北方領土とか、わが国固有の領土というのは、1950年代後半以降に日本政府が作った神話なのである。言い換えると、当時の日本のエリート層が共謀して、日ソ接近を避ける理論を作ったのだ。

 

 副島氏は、世界的規模でも日本国内でも、権力者による共同謀議によって政治や経済が動いていると主張するが、確かにそのような現実が存在することを私は目の当たりにした。だから、副島氏との意見交換から、私は大きな知的刺激を受けているのである。

 

 現下の国際情勢は、極めて複雑だ。2019年末の国際情勢を正確に予測することができると主張している人は、情勢がまったくわかっていないか、嘘つきであるかのいずれかだ。

 

 もっとも正確に予測することはできないにせよ、大きな傾向をつかむことは可能だ。その際には、預言のような大胆な予測が必要とされる。

 

 ちなみに予言と預言は異なる。予言とは、未来に起きることについて述べることだ。対して預言とは、神から預かった言葉を述べることだ。預言には未来予測も含まれるが、それよりも重要なのは、現状に対する批判と人間に対する悔い改めの要請だ。

 

 副島氏は、自らを預言者と呼んでいるが、この規定は正しいと思う。現下の日本と世界の状況に対して警鐘を鳴らすと同時に、われわれ一人ひとりに悔い改めよと要求しているのだ。

 

 私は副島氏の預言を虚心坦懐に受け止めて、悔い改めている。ときには意見が異なり、激しい議論になることもあるが、神の預言を人間の限られた知恵で完全にとらえることはできないので、預言の解釈をめぐって議論が分かれるのは当然のことだ。

 

 いずれにせよ、2019年の世界が、本書に書かれたテーマを中心に動いていくことになる。

 

 本書を上梓するにあたっては、日本文芸社書籍編集部の水波康氏、副島精神を体現している優れた編集者で作家の山根裕之氏にお世話になりました。どうもありがとうございます。

 

2019年2月28日、曙橋(東京都新宿区)の書庫にて 佐藤優 

 

=====

 

激変する世界を先読みする もくじ

 

はじめに混沌とする国際情勢を大胆に予測する 佐藤優       1

 

1章 世界エネルギー覇権と日本の安全保障

 

カルロス・ゴーン逮捕にちらつく産油国の影             18

世界官僚同盟による統制が始まる   18

日産幹部の憎しみを買ったゴーン   23

ゴーン逮捕で普及が遅れる電気自動車          25

無理やりストーリーを作る特捜の手口          29

ゴーン事件は鈴木宗男事件と似ている          32

北方領土交渉と日本のエネルギー戦略          35

米軍基地が北方領土問題の障害となる          35

日本の主権と「属国・日本論」      40

ロシアは2島を返還する気はあるのか          45

国際法と国連憲章から見た北方領土問題      50

色丹島のロシア住民3000人の行方          54

ロシアの天然ガスは日本にとって重要          56

サウジアラビア王家内紛の裏側      59

カショギ事件ではめられたサウジアラビア王太子      59

サウジの宮廷革命を支援したトランプの娘婿             62

国家の悪は裁けるのか      65

世界情勢と日本のエネルギー安全保障        68

 

2章 北朝鮮問題から解読する 極東のパワーバランス

 

金正恩をたらし込んだトランプの「カジノ外交」      72

これからの極東地域の大きなトレンド          72

金正恩が進める北朝鮮カジノ計画   75

予測は「逆問題」で組み立てる      81

ポンぺオ米国務長官をめぐる騒動   83

世界政治におけるトランプの意味   86

核ミサイルは「張り子の虎」か      90

中国が新帝国主義時代の勝者となる             93

北朝鮮空爆回避から見えたアメリカの終焉   93

中国の弱点はどこにあるのか          96

ロシアは中国の怖さを一番知っている          98

オバマ前政権はステルス的な帝国主義だった             102

衰退する日本は中国と韓国に呑み込まれる   104

日韓関係悪化の本当の理由           104

最先端技術はほとんど中国に盗まれた          107

中国の宇宙開発は急速に進んでいる             111

 

3章 安倍政権と忍び寄るファシズム

 

終わりが見えてきた安倍独裁政権   114

官邸は2019年にダブル選挙を仕掛ける   114

ポスト安倍政権は大混乱になる      116

ヘラヘラした柔構造でできている安倍政権   118

『政権奪取論』に見え隠れする橋下徹の野望             120

野党再編で政権交代の可能性もある             122

公明党が憲法を守る勢力の最後の防波堤になる          125

世界政治の背後で蠢く統一教会      128

現代によみがえるファシズムの亡霊             130

ファシズム思想の先鞭をつけた高畠素之とムッソリーニ          130

ムッソリーニはマルクス主義者だった          133

「1人は万人のため、万人は1人のため」   136

反グローバリズム運動にもファシズムの影   142

国家社会主義を体現している橋下徹は素晴らしい      145

「維新八策」から消えた「相続税の100%課税」   149

「寛容」の精神こそがファシズムを乗り越える          153

生理的な次元から生まれる不寛容性             153

徹底的な殺し合いから寛容という思想が生まれた      155

寛容とは一種の棲み分けである      157

 

4章 平成から新時代へ 天皇と近代日本の実像

 

天皇の生前退位と新たな易姓革命の予兆      162

いまの日本を覆う〝穢れ〟の思想   162

秋篠宮発言から見えてきた官邸と皇室の対立             165

天皇は、いまなお現人神か             169

『愚管抄』と『神皇正統記』の思想             171

「譲位」が歴史の分節を変えてしまった      174

啓典(キャノン)がない神道          177

世界政治に騙された昭和天皇と大日本帝国   181

最後まで戦争の指揮をしていた昭和天皇      181

独ソ開戦で真っ青になった松岡洋右外相      184

四国同盟案は米英に筒抜けになっていた      190

現代ロシアの地政学にも通じる四国同盟論   192

やがて歴史は繰り返す      195

 

5章 これからの世界潮流を読み解く

 

ついに資本主義の崩壊が始まった   200

ソフトバンク「二重評価」のインチキ          200

あと2年でアマゾン時価総額は半分に落ちる             205

資本主義社会では誰もが拝金教を信じている             208

ロシアの仮想通貨はどうなるか      211

国家を超える権力を作ろうとしているエリート層      215

現代の労働者階級に未来はあるのか             218

『資本論』は資本家見習いのための本          218

企業経営も国家戦略の中で動かされる          222

現在の労働者はプロレタリアート以下の存在             226

サラリーマンは洗脳された現代の奴隷          230

黄色いベスト運動にも公安が潜り込んでいる             233

ヨーロッパでは生きているアナーキズム      236

人権宣言以来、人類を支えた理念が壊れ始めた          240

『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』は人種主義の復興か   240

権力分立を信じていなかったモンテスキュー             244

人間の「工場化」が進行している   247

ベジタリアンとビーガンという思想の本質   249

猫は人間を裏切らない      252

 

おわりにこの世のすべての虚偽を手加減せずに暴く 副島隆彦          256

 

=====

 

おわりに──この世のすべての虚偽を手加減せずに暴く_副島隆彦

 

 本書、『激変する世界を先読みする 沸き起こるファシズム』は、佐藤優氏と私の5冊目の対談本である。

 

 最初の1冊は『暴走する国家 恐慌化する世界』(2008年12月、日本文芸社刊)で、鳩山由紀夫(友紀夫)の民主党政権が出来る(2009年9月)前年だった。2冊目が、『小沢革命政権で日本を救え』(2010年6月刊)だった。あのとき、これで日本の政治が変わる、と皆が期待した。

 

 だが、アメリカと旧態依然の日本国内の現実主義の勢力によってガラガラと壊されていった。私は、現実政治にキレイごとは通用しない、という政治という悪の本態をまざまざと見せつけられた。あれから10年が経った。

 

 佐藤氏が、本書の「はじめに」で「預言とは神から預かった言葉を述べることだ……副島氏は自らを預言者と呼んでいる」とあるが、これは誤解である。いくら私でも自分を預言者とまでは自称していない。

 

 私はこれまで慎重に、自分は予言者(近未来の予言をする者)ではあるが、預言者だと言ったことはない。私は、自分を預言者だとそこまで懼れ多いことを言わない。

 

 佐藤氏はこのことを十分に承知している。それなのに佐藤氏は私を買い被って、わざと私を預言者に祀り上げてくださった。

 

 予言者〔プレ(前もって)ディクター(言う人)〕というコトバでさえ、当今でも十分に誤解を招き、いささか奇矯に見られる。このことを十分に承知のうえで、私は、言論商売人としての自分自身に、厳しい試練を与えようとして、この言論予言者を自称している。

 

 それは、千年の昔から日本にもいた、占い師(これが予言者だ)と、呪い師(悪霊を祓う職業)の列に、私は連なりたいからだ。

 

 だが私は、宗教は嫌いだ。この地上のすべての宗教を疎んじる。なぜなら私は、新左翼思想という政治イデオロギーに若い頃から囚われて、ずいぶんと苦しんだからだ。そういう人は私の世代にたくさんいる。

 

 イデオロギーideologyなどと、荘厳そうに(元)ドイツ語(さらにはギリシア語)で言えばいいかと思っている。これも本当は、宗教(人類救済の信念、願望)の一種でしかなかった。

 

 自分たちはインテリ(ゲンツィア)だから、宗教という低レベルの確信ではない、などと思い上がった左翼、リベラル派全体への、私からの厳しい視点である。

 

 イデオロギーも宗教である。さらには、社会主義どころか、資本主義もまた、宗教である。このことが、どうもはっきりしつつある。

 

 資本主義だって滅ぶかもしれないのだ。さらには科学(現代学問)でさえ、宗教の一種だろう。人間(人類)が確実にわかったことはほんのわずかだ。宇宙についても生命についても物質についてもいくらも解明されていない。

 

 もう一つ奇怪な現代宗教がある。それは「自分は(生まれながらの、強固な信念の)反共産主義(者)だ」という信念である。この反共主義もまた、まさしく歪んだ宗教である。

 

 反共(反ロシア、反中国)をブツブツ毎日唱えてさえいれば、自分は正義の人で、愛国者だなどと信じ込める。その偏屈な神経もまた宗教である。私は彼らから斬りかかられたら必ず斬り返す。

 

 佐藤優は、驚くべきことに、「創価学会の池田大作名誉会長(まだ存命なのだろう)は本当の宗教家であって、自分も池田先生のようになりたい」(引用は不詳)というようなことを言った(書いた)。宗教者、信仰を持つ者というのは、いつかこのような相当な深い境地に到達するものらしい。佐藤氏は篤い新教徒のキリスト者である。

 

 佐藤氏は、本書の中で、「創価学会・公明党のような中間団体がいてくれることが、憲法改正(戦争ができる体制に変わること)を食い止める。副島さんの『学問道場』も、この中間団体です」と言ってくれた。私はこの言葉をありがたく受け止めた。こうやって私も佐藤優の戦略図式の中に組み込まれる。

 

 それでも、私が宗教団体もどきを作るときは、「真実暴き教と名乗る」と、20年昔から決めている。教義(ドグマではない)は、「この世にあるすべての虚偽を、気づき次第、手加減せずにすべて暴くべきである」のたったこの一条である。このことを私は弟子たちに言い聞かせている。

 

 天皇、皇后(もうすぐ譲位する)は、昭和天皇の遺志を堅く受け継いで、いまの平和憲法を擁護している。特に、美智子皇后は、仄聞するところでは、安倍首相に向かって、「あなたたちは、憲法を改正して、また戦争をする気ですか」と厳しく問い詰めたらしい。

 

 私は、いまの皇室(次の天皇、皇后も)の、この堅い憲法擁護(護憲)の立場はきわめて正しく、立派であると思う。天皇制(皇室伝統)が、いまも生きながらえているのは、時の今上天皇の、真面目な不断の行ないへの、国民の信頼が有るからである。

 

 人はそれぞれ、何ものかに囚われて生きる愚かな生き物である。ある年齢に達すると、自分(己)の過去の愚かさに恥じ入りながら生きるようになる。

 

 佐藤氏が、私に対して忝なくも、「預言が……重要なのは、現状に対する抑制と人類に対する悔い改めの要請だ。……私は副島氏の預言を虚心坦懐に受け止めて、悔い改めている」と書いてくださった。このときハッと思って自分のこの国における役割、責務、天命を思い知る。

 

 佐藤氏と私は、2人でこんなエールの交歓のようなホメっこをして遊んでいるのではない。私たちの、この国における生来のサヴァン症候群savant syndromeの保有者としてのズバ抜けた頭脳が、他の、もっと若い知識人、有能の士、優れた読書人たちへの嚮導となることを願っているのである。螺子曲がった精神で知識や言論などするべきでない。

 

 私と佐藤氏(私より6歳下)は、やり(語り)残した仕事がある。それは、前記した宗教(キリスト教、ユダヤ教、仏教、イスラム教)についての論究と、マルクス主義(共産主義、『資本論』、左翼思想全般)についての論究である。それと猫ちゃん(動物)論だ。次作で屹度やります。

 

 この対談本を編んでくれたおふたりには、先に佐藤優氏がお礼を書いたので、私も同感とする。

 

2019年3月 副島隆彦 

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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