古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:北朝鮮

 今回は現在の日韓関係の悪化はアメリカの弱体化の兆候だという内容の記事をご紹介します。記事の内容は日韓関係の悪化を概観しながら(徴用工問題と慰安婦問題を混同している点は誤りがあります)、アメリカの存在感と影響力が以前のように大きければ、更なる悪化を防ぐことが出来るのだが、それはもう望むべくもない、ということを主張しています。

 

 著者のスティーヴ・クレモンスは北東アジアの国際関係の専門家ですが、日中韓それぞれが行き過ぎた行動をとっていると述べています。

 

 韓国の最高裁が徴用工問題に関して、韓国で経済活動を行っている日本企業に対して賠償金支払い、もしくは財産の没収という判決を出しました。サンフランシスコ講和条約で日米両政府は相互に請求権を放棄しました。これに対して被爆者がアメリカに被害の補償を請求できなくなったとして日本政府を提訴しました。これに対して、日本政府は、「外交保護権(自国民の被害に対して政府が外国政府に補償を求める権利)」は放棄したが、被爆者個人が請求する権利は放棄していない、という立場を取りました。

 

日本では被爆者がアメリカに対して個人的に被害の保証を請求することを否定できない立場から、韓国の徴用工や慰安婦についても個人請求権は否定しないという立場でした。しかし、その後は日本の裁判所では個人の請求権を認めないという判決が出て、韓国や中国の元徴用工や慰安婦、戦時中に被害を受けた人たちが日本の裁判所で訴えても、請求が認められないということになりました。

 

 韓国の最高裁の判決によって、元徴用工の訴えが認められたことが発端となりました。日本政府は当然、そのような判決は認められないという立場です。韓国政府も日韓国交正常化(1965年)の際に請求権問題は解決している、日本が韓国に支払った経済協力金(実質的な賠償金)には徴用工の保証の資金も含まれている、という立場ですから、最高裁の判決には当惑したものと思われます。しかし、三権分立(日本も韓国もそうです)で、司法の独立が尊重されるとなると、韓国政府が最高裁の判決を変更することはできません。

 

 私は大人の態度というのは、ここで態度を硬化させるのではなく、それでは話し合い、交渉をしてお互いに納得が出来る点を見つけましょう、というものだと思います。しかし、このような状況下、日本政府は軍事転用可能な物資や技術の最終輸出先に不安があるという立場(北朝鮮に渡り各開発プログラムに使われる危険性がある)から、半導体製造の原材料の韓国への輸出規制を強化し、韓国を輸出規制に関して優遇措置が受けられるホワイト国から除外しました。

 

 韓国内では徴用工問題の報復として、韓国の主要産業となっている半導体製造などに影響を与える行為として反発が起きました。そして、韓国からは日本の韓国におけるホワイト国認定の解除と日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)の破棄という反撃が起きました。韓国からの安全保障上重要な情報やデータが日本に入ってこないということになると、一番の懸念は北朝鮮に関する情報やデータが直接入ってこないということです。アメリカは両国と協定を結んでいますから、日本の安全保障に関連するということになれば、韓国から提供された北朝鮮の情報やデータを日本に提供するでしょうから、大きな影響はないかもしれませんが、アメリカを介しての安全保障関係を結んでいたはずだった韓国からの「手切れ」は大きな衝撃となりました。

 

 日本側は貿易問題と安全保障問題は全くの別物だという立場で、韓国政府の行動を非難していますが、そもそも日本側の貿易管理強化は、対北朝鮮の懸念という安全保障上の理由から起きたもので、日本政府の行動こそは安全保障と貿易問題を一緒にしています。

 

 今回ご紹介する記事の著者クレモンスは、アメリカの存在感と影響力がしっかりとしていて、安全保障に関与していたならば、今回のような日韓関係の悪化はなかっただろうという立場です。そして、日韓両国政府は、対立がもたらす大きなリスクを認識し、対立を激化させないようにすべきだと主張しています。

 

 北朝鮮に関しては、アメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長のトップ会談がシンガポールとヴェトナムのハノイで2回、更に今年6月30日には大阪でのG20の後にトランプ大統領が38度線を訪問、板門店で、「トランプ大統領のツイッターでの呼びかけを読んだ」とする金委員長と会い、話し合いを行いました。

 

 このように北朝鮮をめぐる情勢は、外見上は華やかですが、実質的には何も進んでいません。核兵器放棄も行われる兆候は見られません。そのうち、アメリカは中国との貿易戦争を開始し、今も続いています。クレモンスは、「1930年代のスムート・ホーリー関税法時代の悪夢」と表現しています。日韓貿易戦争もまたこの小型版と言えるでしょう。米中貿易戦争の主眼はホアウェイ(ファーウェイ、為華技術)の5Gをめぐる争いという面もあり、日韓貿易戦争にはファーウェイとアメリカの間で板挟みになるサムソンに対する日本からの圧力(アメリカからの依頼[命令]でしょう)という面もあると思います。


 「交渉の達人」ということで、アメリカ大統領になったドナルド・トランプ大統領ですが、国際政治や国内政治の舞台では、全くうまくいっていません。トランプ大統領が行ってきた交渉術は脅しと開き直りであって、国際舞台では通用しない、という批判も出ています。

 

 北東アジア地域を一気に不安定にさせている米中貿易戦争と日韓貿易戦争は、とどのつまり、アメリカの衰退の兆候であり、国際関係の構造が大きく変わる、終わりの始まりということが言えるでしょう。そうした中で、日本はあまり大きな被害を受けないように、いきり立って対応するのではなく、「柳に風」と受け流すというくらいが良いのだろうと思います。

  

(貼り付けはじめ)

 

韓国と日本との間の争いはアメリカの弱体化を示す兆候(South Korea-Japan spitting contest is a sign of US weakness

 

スティーヴ・クレモンス筆

2019年8月26日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/international/458763-south-korea-japan-spitting-contest-is-a-sign-of-us-weakness

 

現在、各地で緊張状態が発生しているが、アメリカがそれらを土壇場で救うことが出来ると考えている人たちはほぼいない。

 

アメリカの同盟国であるサウジアラビアとアラブ首長国連邦はカタールに対して禁輸措置を実施している。カタールには中東地域最大規模のアメリカ軍基地が置かれている。イギリスはヨーロッパから離脱しようとしている。トルコはロシアから防空システムを購入し、アメリカとNATOを拒絶している。香港ではデモが激化している。香港の民主政治体制は危機に瀕している。中国とアメリカはお互いに関税引き上げを激化させている。スムート・ホーリー関税法時代の悪夢を復活させようと夢中になっているかのようだ。

 

現在、アメリカの同盟国である日本と韓国はお互いに非難合戦を激化させ、日米韓3か国の防衛同盟の枠組みに脅威を与えるような状況になっている。3か国の枠組みによって、北朝鮮は封じ込められてきたし、枠組みの存在は北東アジアにおけるロシアと中国の冒険主義に対する堤防となってきた。

 

こうした状況に加え、トランプ大統領はグリーンランドをめぐる発言でデンマーク国民を怒らせている。また、アマゾンの密林の20%が焼失しようとしている。混乱状況はこれまでにない高みにまで到達しつつある。

 

過去を振り返ってみると、アメリカが安全保障を与えることで、世界の各地域は、お互いに敵意を持つ国々で構成されていながらモラルハザードに陥らないで済んできたと私は考えている。アメリカが地域の平和を守り、地域の近隣諸国間の角逐を和らげる役割を果たした。これで地域の近隣諸国は無謀な、ナショナリスティックな主張をお互いに繰り返しながらも、地域の状況が不安定化する、もしくは戦争が起きるというところまではいかなかった。

 

日本の政治指導者たちは靖国神社に参拝することで、第二次世界大戦前の価値観を復活させようとし、ナショナリスティックな感情を弄んできた。靖国神社には戦時中の日本の戦争指導者たちの霊魂が祀られている。また、日本の政治指導者たちは、日本が戦時中に行った大量殺人、性的暴行、日本が支配した中国と朝鮮半島の人々からの収奪について、ごまかし、正当化しようとしている。

 

韓国の政治指導者たちは、悪意に満ちた日本に敵対する言動を行っている。このような言動を行うのは、かつて日本が植民地化した際に行った犯罪について繰り返すことで、自分たちの正統性を明確にしようという狙いがあるからだ。

 

中国でも状況は同じだ。中国の教科書のほぼ全ては歴史において日本を怪物のような悪者に仕立て上げようという熱意に満ちている。 物事をはっきりさせたいのだが、日本は戦時中にアジアで残酷なことを行った。そして、歴史に対して記憶喪失のようになっている。しかし、中国の教科書やテレビ番組は日本に対する歪められた固定観念に溢れている。

 

地域内の争いの激化を克服するために、アメリカは日本の攻撃的な軍事力の復活を止めるボトルのコルクに役割を果たしたし、日本と韓国にとっての安全保障上の重要なパートナーとなった。その結果、日韓両国は、歴史における恨みはありながらも、情報・諜報関係と安全保障上のパートナーとなった。

 

日本と韓国との間の協力関係は重要だ。特にアメリカの安全保障、そして両国の安全保障にとって大変に重要だ。北朝鮮が脅威であるという認識から出てくる両国の違いと争いと北東アジア地域においてアメリカが地域の安定の基盤となるものを提供することが出来なくなっていることが明らかになることで、日韓の協力関係は弱くなっている。

 

先週、日本側の行為が韓国側の更なる行為にとっての引き金となった。韓国側は日本との情報共有協定を破棄した。この協定は軍事情報に関する包括的保全協定(GSOMIA)と呼ばれるものだ。その引き金となったのは、日本が韓国に対する輸出管理格付けを変更したことであった。日本側は韓国から重要な技術や物資が北朝鮮に密輸されるのではないかという恐怖感を持っており、そうした行為を行った。

 

韓国の文在寅大統領は北朝鮮の金正恩に対して媚びへつらっている。これはトランプ政権が北朝鮮の指導者に寒い場所あら出てくるようにと温かく働きかけていることに対する反応である。日本側は、核技術にとって重要な技術や戦略的物資が韓国企業から北朝鮮に輸出される可能性があるという恐怖感を持った。日本はこれらの技術や物資の韓国に対する売却を差し止めなかった。しかし、日本は貿易に関する韓国の格付けを変更した。結果として、北朝鮮に対する輸出が懸念される物資などは、北朝鮮の核開発プログラムに使用されないことを確実にするために、項目別の許可制の対象となり、より厳しく監視されることになった。

 

日本側の措置は韓国の指導者たちを激怒させた。そして、両国間の争いを激化させた。韓国最高裁はそれまでの国際的な合意を無視し、現在韓国で活動中の日本企業の一部に対して第二次世界大戦中のこうした企業の「慰安婦」に対する取り扱いに対して賠償金を支払うように命令を下した。慰安婦は日本の占領軍の将兵のために売春行為を強要された女性たちだ。そして、実施しないようにというアメリカと日本からの要請があったにもかかわらず、韓国は日曜日に自動延長が予定されていたGSOMIA情報共有枠組を停止した。

 

ある日本政府高官は韓国側の行動を「無謀」で「錯乱」したものだと断じた。複数のアメリカ政府高官は、GSOMIAの停止は日米韓の同盟関係を損なうものとなるであろうし、その結果として地域の安定を失い、北朝鮮を勇気づけ大胆な行動をとらせることにつながるだろう、そうなれば分裂はさらに深まると繰り返し発言した。

 

日本の河野太郎外相は「大韓民国政府による決定は現在の北東アジア地域の安全保障環境について完全に誤った判断をしているものであり、従って大変遺憾であると言わざるを得ない」と発言した。河野外相は更に続けて、「大韓民国政府は、大韓民国に向けた輸出管理の日本の見直しをめぐる合意を拡大するのではなく、安全保障の面でこのような決定を行った。輸出管理と安全保障は全く次元の違うものだ。従って、大韓民国政府の主張は全く受け入れられないものであり、私たちは大韓民国政府に対して強く抗議するものである」と述べた。

 

今回の件が起きる前にも日本と韓国の指導者たちは仲たがいをしていた。そして、日本の公式の認識と慰安婦に対する犯罪に対する悔恨などの諸問題で争いを続けていた。しかし、両者の争いはアセアンやG20の場でも展開され、両者は同じステージに立つことを拒絶した。一度は日本の安倍晋三首相と韓国の文在寅大統領が同じにステージに立つことを拒絶した。しかし、重要な情報交換協定を破棄するまでには至らなかった。

 

明らかになりつつあるのは、このようないら立ちが募る状況下におけるアメリカの影響力は減退しつつあるということだ。そして、世界におけるアメリカの戦略的縮小がもたらす現実は、お互いに敵意を持つ国々の間を取り持つ緩衝材という役割が小さくなっていくというものだ。アメリカが安全保障を提供することで、地域を構成する国々の指導者たちは、無謀な、ナショナリスティックな、地域に危険をもたらす発言をしながらも実際に地域に不安定がもたらされることも、戦争がもたらされることもなかった。アメリカによる安全保障は子供たちが寝るときにしっかりと抱き締める毛布のようなものであった。しかし、そのようなことは現在では全く期待できない。

 

現在、発言や行動が更に重要になっていくであろうし、アジア地域における実際の紛争をもたらす可能性が高まっている。歴史は繰り返す。アジア諸国の指導者と国民は、同盟感懐を犠牲にし、安定的な安全保障関係の合意を破棄することがどれほど高くつくかということを認識する前に、まず争いがどれほどコストをもたらすものかについて認識する必要があるのだ。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 このブログでも以前にご紹介しました、北朝鮮に対する反体制グループ「千里馬民間防衛(Cheollima Civil DefenseCDI)=フリー・チョソン」が2019年2月に起きたマドリッドの北朝鮮大使館襲撃事件の裏にいた、という報道が出ました。

 

 このグループは、故金正日総書記の長男で、マレーシアのクアラルンプールで殺害された金正男氏の息子である金漢率(キムハンソル、Kim Han-Sol、1995年―氏を保護しているグループとされています。このグループは金漢率氏を保護した際の声明の中で、アメリカ、中国、オランダに謝意を表明しました。

 
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金漢率

 今年2月22日に、スペインのマドリッドにある北朝鮮大使館に正体不明の男たちが押し入り、大使館員たちを縛り上げ、数時間後にコンピューターと電話を持ち去って自動車で退去したという事件が起きました。北朝鮮はスペイン警察に被害届を出さなかったようです。

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マドリッドにある北朝鮮大使館の入り口
 

この襲撃事件の目的は、米朝の実務者レヴェル協議で、北朝鮮側を率いている外交官の金赫哲(キムヒョクチョル、Kim Hyok Chol)の情報を得ようとしてのことではないかと言われています。金赫哲は2017年まで駐スペイン北朝鮮大使を務めていたそうです。

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金赫哲

 

 そして、CDIに詳しいある人物は、『ワシントン・ポスト』紙の取材に対して、2月22日の大使館襲撃事件にはアメリカやその他の国々の情報機関は絡んでいない、特にアメリカはその後に2回目の米朝首脳会談を控えており、そんな時期の襲撃に躊躇したはずだ、と述べています。

 

 しかし、多くの人々は、アメリカのCIAが絡んでいるのではないかという疑いを捨ててはいません。CIAが必ずしもドナルド・トランプ大統領の意向通りに動いているとは言えません。また、CIAの前長官は、現在の国務長官マイク・ポンぺオであり、ポンぺオとジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官、マイク・ペンス副大統領が北朝鮮に対する強硬姿勢を主張していることを考えると、アメリカ政府の一部にいるネオコン派、人道的介入主義派が何かしら関わっていることが考えられます。

 

 金漢率氏を手元で保護しておいて、北朝鮮の現体制を崩壊させた後に、北朝鮮に送って、正統性のある指導者であるとする、そのための手駒にするというシナリオも実行されるかどうかは分かりませんが、準備されているでしょう。もちろん、このシナリオが実行されないこともまた十分に可能性があります。CDIはそのために利用されているということでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

金委員長の転覆を目指す組織がスペインで起きた北朝鮮大使館襲撃の裏にいた:ワシントン・ポスト紙(Group seeking to overthrow Kim behind North Korea embassy raid in Spain: Washington Post

 

2019年3月16日

ロイター通信

https://www.reuters.com/article/us-northkorea-dissidents/group-seeking-to-overthrow-kim-behind-north-korea-embassy-raid-in-spain-washington-post-idUSKCN1QW2ZL

 

ワシントン発(ロイター通信)。『ワシントン・ポスト』紙は金曜日、北朝鮮の最高指導者金正恩を倒すことを目標としている反体制派組織が、先月のスペインにある北朝鮮大使館襲撃の背後にいた、と報じた。ワシントン・ポスト紙は、襲撃の計画と実行に詳しいある人物を取材した。

 

ワシントン・ポスト紙は取材源の素性について詳しく報じなかったが、「千里馬民間防衛(Cheollima Civil DefenseCDI)」、別名「フリー・チョソン(Free Joseon)」という名前を出している。ワシントン・ポスト紙は、2017年に金正恩の甥にあたる男性が命の危険を感じマカオから脱出した後に、CDIの存在が知られるようになったと報じた。

 

ワシントン・ポスト紙の取材に応じたCDIに詳しいある人物は、千里馬民間防衛はどの国の政府、アメリカの情報機関と協力して行動したのではないと述べた。また、アメリカの情報機関は今回の襲撃のことを知っていても、関与することを特に躊躇したに違いない、それは2019年2月27日から28日にハノイで開催される金委員長とドナルド・トランプ大統領との二度目の首脳会談の前という微妙な時期であったからだ。

 

スペインのメディアでは、スペイン外務省関係者が認めた話として、2019年2月22日にマドリッドにある北朝鮮大使館に複数の正体不明の男性たちが侵入し、大使館員たちを猿ぐつわを噛ませて縛り上げ、数時間後にコンピューターを持ち出して自動車で立ち去った、と報じられている。

 

今回の襲撃に関して犯行声明を出した存在はない。

 

ワシントン・ポスト紙が報じた反体制グループにコメントを求めることは出来ず、グループのウェブサイトには襲撃事件への関与について言及はなかった。

 

2019年2月25日、グループのウェブサイトに声明が掲載された。この声明によると、グループは、「ある西側の国にいる同志から救援要請を受け取った。私たちも極めて危険な状況にあるが、自分たちはこの要請に応えた」ということであった。このグループはその週のうちに重要な声明を発表するとしたが、いかなる行動に関する詳細について発表は今までのところなされていない。

 

マドリッドの北朝鮮大使館は、アメリカとの実務レヴェル協議の北朝鮮側の責任者である金赫哲(キムヒョクチョル、Kim Hyok Chol)が2017年まで大使を務めていた場所だ。

 

情報・張宝分野の専門家たちは、襲撃の際に持ち去られたコンピューターと電話機は外国の複数の情報機関が入手したいと考えていたもので、それらの中に含まれているであろう金赫哲の情報を入手しようとしたと考えられると発言している。

 

ワシントン・ポスト紙の報道に関して質問したところ、国務省はスペイン当局に問い合わせ中だと答えた。CIAはコメントを拒否した。

 

=====

 

●「北朝鮮の反体制団体関与か 大使館襲撃事件」

 

産経新聞 2019.3.16 21:38国際米州

https://www.sankei.com/world/news/190316/wor1903160031-n1.html

https://www.sankei.com/world/news/190316/wor1903160031-n2.html

 

 【ワシントン=黒瀬悦成】米紙ワシントン・ポスト(電子版)は15日、関係筋の話として、スペインのマドリードで2月22日に起きた北朝鮮大使館襲撃事件に「千里馬民防衛」を名乗る反体制団体が関与していたと報じた。

 

 この団体は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄で、2017年2月にマレーシアで暗殺された金正男(キム・ジョンナム)氏の息子、金ハンソル氏らの身柄を保護したとされ、今月1日には「自由朝鮮」と改称し、金正恩体制打倒のための「臨時政府」の発足を宣言した。

 

 同紙がスペインからの報道を紹介したところでは、事件はハングルを話すアジア系とみられる複数の人物が白昼、北朝鮮大使館に侵入し、館員らを縄で縛り上げて尋問したほか、館内のコンピューターや携帯電話を奪い、大使館所有の高級車2台に乗って逃走した。大使館は現地警察に被害を届けなかったという。

 

 複数の専門家は同紙に対し、奪われたコンピューターや携帯電話には、北朝鮮による制裁逃れや欧州からの高級品密輸に関連する連絡先や文書が含まれている可能性があると指摘。これらの活動には最近まで駐スペイン大使を務めた国務委員会の金革哲(キム・ヒョクチョル)対米特別代表が関わっていたとみられるとしている。

 

 関係筋は同紙に、襲撃犯らが事件当時の様子を撮影したビデオを近く公開する可能性があるとの見通しを明らかにしたという。

 

スペイン紙パイスは13日、捜査当局が襲撃犯と米中央情報局(CIA)との関連を調べていると報道。関係筋はポスト紙に、同団体は事件に関しどこの政府とも連携していないと語ったが、記事の筆者はツイッターで、「強奪品には金革哲氏に関する貴重な情報が含まれているとみられ、襲撃犯らが一流の各国情報機関にもてはやされるのはほぼ確実だ」と指摘した。

 

 この団体は、今月11日にクアラルンプールの在マレーシア北朝鮮大使館の外壁にハングルで「金正恩打倒」などと書かれた落書きが見つかった件への関与を主張している。

 

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 古村治彦です。

 

 先週のヴェトナム・ハノイでの2回目の米朝首脳会談については既にこのブログでも書きました。ワーキングランチが取り止めになり、共同宣言発表もなくなり、何の成果もないままで終了ということになりました。金正恩委員長は不機嫌な態度で会場を後にし、その後、ヴェトナム政府が主催の公式行事には出席しましたが、その他の経済視察などは行いませんでした。前回は、夜のシンガポールに出て、トランプ大統領の支持者である、シェルドン・アデルソンが経営するマリーナベイ・サンズを訪問しましたが、今回そのようなことはありませんでした。

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 こうした中、北朝鮮政府の神経を逆なでする出来事がいくつか起きました。まず、2019年2月22日に、スペインの首都マドリードにある北朝鮮大使館に賊が侵入し、館員を一時監禁し、コンピューターなど情報機器が盗まれるという事件が起きました。

 

 諜報やスパイといった世界での暗闘の一部なのだろうと思いますが、大使館に賊が侵入するというのはよほどのことです。コンピューターなど情報機器が盗まれたということですが、これでは北朝鮮が在外公館で構築している情報ネットワークや使用している暗号などが流出したということになります。

 

 スペインは第二次世界大戦では中立国となり、マドリードでは各国の大使館が情報戦を戦っていた場所です。日本も須磨弥吉郎公使を中心とする東機関(とうきかん)を設立し、アメリカの情報を日本に送っていました。アンヘル・べラスコというスペイン人が日本のスパイとなっていました。マドリードという場所は今でもスパイ戦、諜報戦の第一線なのかもしれません。

 

 更に、1919年の三一運動から100年の今年3月1日、金正恩委員長の兄で、金委員長の移行で殺害されたとされる金正男(故金正日国防委員長の長男)の息子である金漢率(キム・ハンソル)氏を保護していると主張しているグループ「千里馬民間防衛(CCD)」が名前を「自由朝鮮」に変え、朝鮮臨時政府の設立を宣言しました。金漢率氏が首班にはなっていないようですが、外国に北朝鮮の亡命政府というか、臨時政府を設立すると宣言しました。


 

 2回目の米朝首脳会談の直後のタイミングというのが気になるところです。この自由朝鮮というグループの実態ははっきりしていません。しかし、故金日成国家主席の曾孫、故金正日国防委員長の孫であり、長男の長男である金漢率を擁しているということは重要なことです。血筋で見れば、金漢率氏の方が故金日成主席に近いということになります。




 この自由朝鮮の動きの裏に、アメリカ、特にアメリカのネオコン派がいるとするならば、この動きは北朝鮮政府にとっては神経を逆なでするものであり、金正恩委員長が外出を控えるようになったというのも、暗殺の危険を避けるためということになるのだろうと思います。

 

 米朝首脳会談の不調と朝鮮臨時政府の発足ということを結び付けて考えると、この先、米朝交渉が決裂せずに、だらだらとでも続いていくことは重要である、成果を急いで出そうとすると交渉が決裂し、最悪の場合にはアメリカによる北朝鮮攻撃という可能性が息を吹き返してくるということになります。

 

(貼り付けはじめ)

 

スペインの北朝鮮大使館、襲撃受ける=職員一時監禁

 

201902280941

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019022800368&g=int

 

 【ソウル時事】28日付の韓国紙・朝鮮日報などは、スペインのマドリードにある北朝鮮大使館が22日、何者かの襲撃を受け、職員が数時間、監禁されたと報じた。職員3人が軽いけがをしたほか、コンピューターなど情報機器が盗まれたという。地元メディアなどを引用して伝えた。AFP通信によると、スペイン内務省スポークスマンは27日、「(事件を)捜査中だ」と述べた。

 

 朝鮮日報は、脱北者支援団体とみられる「チョルリマ・シビル・ディフェンス(千里馬民防衛)」が事件に関与したかどうかが注目されると指摘。同団体は金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄で、2017年2月にマレーシアで殺害された金正男氏の息子ハンソル氏の安全確保のために活動しているといわれる。(2019/02/28-09:41

 

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正恩氏一転、不機嫌に去る=トランプ氏「関係継続」

 

2/28() 17:08配信 時事通信

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190228-00000082-jij-kr

 

 【ハノイ時事】第2回米朝首脳会談は合意に達することができないまま幕を下ろし、わずか数時間で両首脳は劇的に表情を変えた。

 

日本「悪夢のような状況懸念」=米朝再会談で韓国TV

 

 会談2日目の28日午前、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は「私の直感では良い結果が出ると信じている」とトランプ米大統領に語り掛け、余裕すらうかがわせた。しかし、午後に会場のホテルを後にする際は一転、不機嫌そうな様子を隠さなかった。一方のトランプ氏は、会談後の記者会見で「正恩氏との関係を継続したい」と未練をのぞかせた。

 

 28日午後、会談が行われたホテルを出発し、走り去る専用車では、後部座席に座る正恩氏の「仏頂面」が確認された。午前中、トランプ氏とホテルの中庭を散策しながら見せた柔和な表情とリラックスした雰囲気は消え、両国に依然大きな隔たりがあることを無言のまま世界に知らせた。

 

 中国を経由し専用列車でベトナム入りした26日、正恩氏は対中国境の越北部ドンダン駅前で、歓迎する地元の人々に専用車から手を振る気配りを見せていた。しかし、会場を後にした際の表情は、事実上物別れに終わった会談の雰囲気を反映して厳しかった。ベトナムで高まっていた正恩氏への好印象を吹き飛ばすように去って行った。 

 

=====

 

記事入力 : 2019/03/02 09:09

 

金正男氏息子救援団体「自由朝鮮」、臨時政府発足を宣言

 

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/03/02/2019030280008.html

 

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の腹違いの兄である故・金正男(キム・ジョンナム)氏の息子キム・ハンソル氏を支援する団体「千里馬民防衛」が1日「自由朝鮮の建立を宣言する」とした上で「この政府が北朝鮮人民を代表する単一かつ正当な組織だ」と主張した。団体名も「自由朝鮮」に変更し、自分たちを「臨時政府」と名乗った。この団体について一部では「北朝鮮の元政府高官だった脱北者を中心に組織されたのでは」との見方も出ている。

 

 「千里馬民防衛」はこの日ホームページを通じ「光復(植民地支配からの解放)という明るい光が平壌に届くまで、人民を苦しめる者たちに対抗してたたかう」などとする「自由朝鮮のための宣言文」を韓国語と英語で公表した。ソウル市内のタプコル公園とみられる場所で、白の韓服に黒いチマを着た女性がこの宣言文を読み上げる735秒の動画も公開された。この日が三・一節から100周年だったことを意識したようだ。団体は「過去数十年間、人道主義に反する莫大な犯罪を行ってきた北の権力に対抗するため立ち上がった」とも主張し、北朝鮮住民や国際社会などに賛同と連帯を呼びかけた。

 

 この団体は先月25日「今週中に重大発表を行う」と予告していた。時期的に考えると、この重大発表とは今回の宣言を意味するものと思われる。亡命政府の設立には北朝鮮住民と国際社会の後押しが必要となるため、団体は今後キム・ハンソル氏ら北朝鮮出身者を前面に出すとの見方もある。

 

 団体はこの日ソウル市内で撮影された動画を公開することで、関係者の一部が韓国国内にいることを暗に示した。元北朝鮮政府高官の脱北者は「金正恩体制に反旗を翻した元工作員たちの団体のようだ」との見方を示し「彼らは情報力も資金力もあるので、海外の情報機関と連携した反体制活動も可能だ」と指摘した。この脱北者はさらに「北朝鮮が工作機関を偵察総局に統廃合した2009年と、張成沢(チャン・ソンテク)氏が処刑された13年を前後した頃、複数の元北朝鮮工作員が亡命したと聞いている」とも伝えた。

 

 一方で韓国の中道系野党・正しい未来党の李彦周(イ・オンジュ)議員は1日「北朝鮮内の反独裁運動に関する特別法(仮称)」を国会に提出する方針を明らかにした。李議員は「北朝鮮の臨時政府や亡命政府を名乗る団体への支援策について議論すべき時だ」とコメントした。

 

キム・ミョンソン記者 , ユン・ヒョンジュン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

 

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North Korea’s ‘government in exile’: who is the group dedicated to ‘restoring light to Pyongyang’?

 

    Little is known about CCD and it is unclear who is behind the organisation – although some have speculated it has links to South Korea’s spy agency

    The group emerged in 2017 when it said it had guaranteed the safety of Kim Han-sol, the son of Kim Jong-nam, who was murdered

 

 

Agence France-Presse 

Updated: Friday, 1 Mar, 2019 1:09pm

https://www.scmp.com/news/asia/east-asia/article/2188191/north-koreas-government-exile-who-group-dedicated-restoring

 

A shadowy group believed to be protecting the son of North Korean leader Kim Jong-un’s assassinated brother declared the formation of a government-in-exile on Friday, dedicating itself to the abolition of the “great evil”.

 

The Cheollima Civil Defence (CCD) organisation – which offers to assist people attempting to defect from North Korea emerged in 2017 when it posted an online video of Kim Han-sol, saying it had guaranteed his safety after his father was killed

by two women who smeared him with nerve agent.

 

In a lengthy statement posted on its website in both Korean and English on Friday – the 100th anniversary of a Korean movement against Japanese colonial rule – the group announced itself as a provisional government for the North called “Free Joseon”. Joseon is an old name for Korea.

South Korea’s Moon Jae-in may be the biggest loser of the Trump-Kim summit flop

 

We dedicate ourselves completely to the abolition of this great evil, a stain on the very soul of humanity,” it said in a statement, saying it will continue its campaign until “the day that light is truly restored to Pyongyang”.

 

It claimed to be “the sole legitimate representative of the Korean people of the north”, adding: “Joseon must and shall be free. Arise! Arise, ye who refuse to be slaves!”

 

The group posted a video of a woman – dressed in an old-fashioned black and white hanbok and her face blurred or only showing her back – reading out the statement in front of a traditional Korean pavilion in a field.

 

Little is known about CCD and it is unclear who is behind the organisation – although some have speculated it has links to South Korea’s

spy agency. It is named after a mythical winged horse.

 

CCD uses South Korean transliteration for its name, while some of the Korean text on its website reads as if it could have been a translation from English.

 

In the past the group has said it responded to urgent requests for protection from “compatriots” and has thanked countries including the Netherlands, China and the United States for their help.

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 少し古い記事ですが、2回目の米朝首脳会談直前の首脳会談に関する分析記事をご紹介します。

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 記事の内容は、トランプ政権内に北朝鮮に対する姿勢で2つの流れがあり、北朝鮮に対して融和姿勢を取る派(トランプ大統領とスティーヴン・ビーガン特別代表)と強硬姿勢を取る派(ジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官やマイク・ポンぺオ国務長官)があり、強硬姿勢派が影響力を強めている、というものです。また、北朝鮮は本当に非核化を進める意図はないのだということも主張しています。核兵器を持ちつつ、経済発展の道を進む、ということが北朝鮮にとっては最善の道である、ということを述べています。

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 李英哲、マイク・ポンぺオ、スティーヴン・ビーガン

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手前からジョン・ボルトン、ポンぺオ、トランプ

 「朝鮮半島の非核化(denuclearization of Korean Peninsula)」という言葉は、受け取り方でどうとでも解釈できるものです。このブログでも以前に書きましたが、朝鮮半島の非核化となると、多くの人々は、北朝鮮が核兵器を廃棄すること、と解釈します。しかし、この言葉は朝鮮半島であって、北朝鮮(North Korea)ではなく、朝鮮民主主義人民共和国(Democratic People’s Republic of KoreaDPRK)の非核化とは書いていません。北朝鮮からすれば、自国が非核化するならば、韓国の非核化、韓国は核兵器を保有していませんから、韓国に対するアメリカの核の傘を取り去ること、これが朝鮮半島の非核化ということになります。こうなると、まず言葉の定義から問題になって、先に進むことが難しくなります。

 

 2回目の首脳会談はワーキングランチが取りやめになり、共同宣言が出ず、金正恩北朝鮮国務委員会委員長は不機嫌な態度で会場を後にしました。北朝鮮としては、アメリカから何かしらの譲歩があるのではないかと期待したところがあったのかもしれません。トランプ大統領は交渉を継続すると明言しましたが、それ以外に何の成果もありませんでした。決裂しなかったということが唯一の救いということになりました。

 

 下に紹介している記事は、首脳会談直前に発表されたものですが、この記事は今回の首脳会談の結果を言い当てています。そうなると、今回の首脳会談に関しては、ジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官とマイク・ポンぺオ国務長官の影響がかなり強く出ており、何も決めないで先送りするということになったのだろうと思います。ボルトンやポンぺオが北朝鮮に対して強硬姿勢を取ることをトランプ大統領に助言し、トランプ大統領がこのような意見が政権内にあり、かつ、国内問題で大変な時期なので、と金正恩委員長に説明し、金委員長もまぁしぶしぶ受け入れたというところではないかと思います。

 

 気になるのは、この首脳会談に前後して、スペインの首都マドリードにある北朝鮮大使館に賊が侵入し、一時館員を捕まえ、コンピューターなどを盗んだという事件、金正恩委員長の兄で、金委員長が殺害命令を出して殺害したと言われる金正男氏の長男金漢率(キムハンソル)氏を保護しているという団体「千里馬民間防衛(CCD)」が団体名を「自由朝鮮」と変更し、併せて朝鮮臨時政府発足を発表したという出来事です。

 

 こうした動きの裏にアメリカがいるのではないか、諜報戦、情報戦が水面下で激しく戦われているのではないかと思われます。CCD(自由朝鮮)の動きは北朝鮮政府にとって神経を逆なでされる出来事です。この裏にアメリカ、特にアメリカ政府内の高官、具体的にはジョン・ボルトンやマイク・ポンぺオがいるのではないかと私は考えています。

 

 シンガポールでの1回目の首脳会談で出された共同宣言が有効である以上、北朝鮮もアメリカもお互いに安全を保証する(攻撃をしない、ミサイルを飛ばさない)ということになりますが、この共同宣言を無効化するような動きが出てくると危険だと考えられます。

 

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本当の北朝鮮に関する頂上会談はトランプ政権内部で起きている(The Real North Korea Summit Is Inside the Trump Administration

―現在までに、北朝鮮が核交渉の中で提示したいと望んでいることは明らかになっている。アメリカはそれにどう対処するかについて疑問が出ている。

 

ジェフリー・ルイス筆

2019年2月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2019/02/26/the-real-north-korea-summit-is-inside-the-trump-administration/

 

一方の側にはアメリカ特使のスティーヴン・ビーガンと恐らく大統領自身が立っている。こうした人々は何十年も続いたアメリカの北朝鮮関与政策を退けたいと望んでいる。彼らの望む政策は、サンシャイン・ポリシー(太陽政策)と呼ばれるものの流れに沿っている。このアプローチは金大中から文在寅まで続く韓国の進歩主義派によって採用されてきた。考えは極めてシンプルだ。敵意をもって接すれば金正恩は核兵器に固執する。それは北風によって人々は来ているコートの襟を固く掴み、自分の片田に引き寄せるようなものだ。しかし、暖かい日の光が当たれば、人々はコートを脱ぎたいと思うようになる。太陽政策はこれと同じく、金正恩に核兵器を放棄させる、もしくは少なくとも近隣諸国に対しての敵意を放棄させるというものだ。

 

北風を代表しているのは、アメリカ政府の官僚たちの大部分ということになる。国家安全保障問題担当大統領補佐官ジョン・ボルトンは特に北風を吹き付け続けることに熱意を持っているように見える。こうした政府高官たちはアメリカと北朝鮮との間の緊張を緩和するには、北朝鮮がまず武装を解くことが必要だという確信を持ち続けている。ボルトンに対して公平な評価をすると、この姿勢はこれまでの歴代政権が一貫して採用してきた考えであり、交渉における厳格さの度合いはそれぞれの政権で違いが存在した。

 

これまでの数週間、ハノイでの首脳会談に先立ち、北朝鮮の核兵器の放棄に向かってはほぼ進展はないのではないか、北朝鮮がどれほど強硬に要求をしてくるかということについて、アメリカ政府高官の大部分が懸念を持っている様子を伝える報道が多くなされた。『ポリティコ』誌は、アメリカ政府高官たちは「国際舞台で勝利宣言をしたいために、トランプ大統領は非核化の空約束と引き換えに大幅な譲歩を行うのではないか」と懸念している、と報じた。アメリカ側による譲歩が選択肢の中に入っているかどうかは明確ではない。しかし、朝鮮戦争は終了したという宣言、外交関係の構築、経済制裁の解除が行われる可能性は存在する。

 

情報のリークはビーガン特別代表にも向けられている。2019年2月25日、フォックスニュースのジョン・ロバーツはツイッター上で、「ある政権幹部はフォックスニュースに対して、ホワイトハウス、国務省、国防省、財務相、エネルギー省では、トランプ大統領が任命した対北朝鮮特別代表スティーヴン・ビーガンが北朝鮮との交渉で“彼に与えられた権限から大きく逸脱している”という懸念が存在している、と語った」と書いている。

 

ビーガンが彼に与えられた権限から大きく逸脱している。この表現は、ジョージ・W・ブッシュ(子)政権の一年目に、1994年に結ばれた米朝合意が崩壊した時のことを思い出させるものだ。当時のコリン・パウエル国務長官は、ブッシュ大統領は、ビル・クリントンが放置した北朝鮮と対話を行うと公式の場で発言した。それに対しては反撃が起こり、パウエルはテレビ放送の中で、自身を否定する発言をしなければならなくなった。パウエルは、対話するかどうかは大統領自身が決定することで、その決定はまだなされていないと発表した。パウエルはCNNのアンドレア・コッペルに対して、「私は自分に与えられた権限から逸脱した」と述べた。それから2年もしないうちに、米朝合意の枠組みは無力化され、北朝鮮は核開発の道筋をたどり、2006年に初めての核実験を実施するまでになった。(ボルトンは、パウエルが恥をかいたことについて、回想録の中で大きな喜びを込めてわざわざ書き残している。)

 

こうした動きに私たちは驚いている。ボルトンと側近たちは北朝鮮政策では敗北を喫したので、中東での政策的な勝利に集中するのだろうと私たちの多くは考えていた。(イランが自滅するような動きはないだろうと私は考えている。)しかし、最近になってマスコミが報じているリーク情報から見るとボルトンは、北朝鮮との関与についてもう一つの方向に進めようと活発に動き回っていることが考えられる。そして、驚くべきことに、マイク・ポンペオ国務長官は、ビーガンに対して一切擁護していないように見える。

 

北朝鮮の非武装化がアメリカの関与の主要な目的だとするならば、トランプ大統領は側近たちにうまくあしらわれているということになる。ここで、ある一つのことを明確に理解することが重要だ。それは、北朝鮮は非武装化を提示してはいないということだ。北朝鮮は「朝鮮半島の非核化(denuclearization of the Korean Peninsula)」という特別な言葉を使用している。この言葉が意味するところは、北朝鮮が非核化するならば同程度にアメリカも非核化せよということなのだ。金正恩委員長が非核化について言及する際、彼の父親と祖父と同様に、彼の声明もまた大いなる希望を述べる内容になっている。これと対比すべきなのは、プラハでのバラク・オバマ大統領(当時)の演説だ。この演説でオバマは、核兵器が廃絶された平和と安全保障を目指すと訴えた。これについて、誰も、オバマ大統領に対する的外れな批判をするような人たちでも、アメリカだけが一方的に非核化を進めることなどないと考えるはずだ。

 

北朝鮮が現在提示しているのは、見せかけの非武装化のジェスチャーである。アメリカとの新しい関係を築きたいという見せかけのステップである。例えば、北朝鮮は核実験施設を閉鎖し、ロケットエンジンの実験施設を一部破壊し、寧辺の核施設の閉鎖を提案している。これらのステップでは、朝鮮人民軍に既に配備されている北朝鮮の核兵器の脅威を減少させることにつながらない。また、北朝鮮が核兵器と、アメリカにまで達する長距離ミサイル を製造し続けることを止めることも出来ない。

 

言い換えると、北朝鮮が要求しているのはイスラエルが享受している立場に似たものなのである。イスラエルが核兵器を保有していることは誰もが知っている。しかし、イスラエルは公式には核兵器の所有を認めていない。私の言い換えは完璧なものではない。私の同僚であるヴィパン・ナランはインドとの方がより正確な類似を示す比較となると考えている。しかし、基本的な考えは理解しやすいものだ。2017年の北朝鮮による一連の核実験とミサイル実験は、トランプ政権の神経を逆なでし、トランプ大統領個人に屈辱感を与えるものであった。朝鮮戦争の終結を宣言し、外交関係を樹立し、アメリカと国際社会による経済制裁を解除することの引き換えに、北朝鮮は国際社会とうまく付き合い、核実験やミサイル実験をすべて中止し、実験施設などを閉鎖することで北朝鮮が世界にとって良いニュースの主人公となりたいと北朝鮮は述べている。

 

私は、これは試してみる価値があると考えるが、このアプローチの限界について正直に目を向けねばならないとも思っている。結局のところ、これが意味するところは、金正恩が自身の統治を維持するために暴力的な政治手法を使うことを容認し、共存することに慣れるということなのだ。もし北朝鮮が思い通りに行動できないとなると、北朝鮮は多くの場合、挑発行為を行い、その結果としてアメリカや韓国の軍隊から犠牲者が出るということが続いてきたという酷い事実もまた存在する。40名以上の韓国海軍将兵が死亡した天安の撃沈事件から10年も経っていないのだ。この攻撃の主謀者が金英哲だったことは明白であり、この金英哲がアメリカを訪問し、ドナルド・トランプ大統領に対する親書を手渡したのだ。しかし、ここに明白な事実がある。北朝鮮は核兵器を保有している。これは、核抑止余力がいかに機能するかということを私たちに教えてくれている。サダム・フセインやムアンマール・カダフィがもし核兵器を保有していたら、両者ともにまだ健在だった可能性は極めて高い。

 

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 古村治彦です。

 

 2019年2月27日から28日にかけてヴェトナムの首都ハノイでアメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩国務委員会員長の首脳会談が開催されました。昨年6月12日のシンガポールでの首脳会談に続く第2回目の会談でした。


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 今回の首脳会談では共同宣言に署名されることもなく、成果のないままに終了ということになりました。トランプ大統領は記者会見に応じ、これからも交渉を続けていくと述べました。それでもマスコミでは「物別れ」「決裂」という言葉が躍っています。

 

 前回の一回目の首脳会談では、共同宣言が出されました。その中には「トランプ大統領は朝鮮民主主義人民共和国に安全の保証を与えると約束し、金正恩委員長は朝鮮半島の完全な非核化に向けた断固とした揺るぎない決意を確認した」という一節があり、これでアメリカは北朝鮮を攻撃しないとし、北朝鮮は非核化に向かって進むということになりました。

 

 アメリカとしては、攻撃しないという保証を与えたのだから、アメリカの意向通りの非核化を行うべきだと考えている一方で、北朝鮮は安全の保証だけではなく、経済発展に向けた動きもついでに確保しよう、非核化をできるだけ高く売りつけようという考えのようです。中国とロシアの後ろ盾もあり、経済制裁も効果を上げていない(密輸などで)中で、北朝鮮は焦る必要はない状況です。そうした中で、アメリカの意向通りには物事は進まなかったということでしょう。

 

 それでも交渉は続けるということですし、交渉が続いている状況で、一回目の共同宣言の効力があるうちは、アメリカにとってはミサイルが飛んでこないということであり、北朝鮮にとってはアメリカから攻撃されないということで、この宙ぶらりんの状態はお互いに望ましいということになります。

 

 金正恩委員長が不機嫌なままで会場を去ったという報道が少しに気になります。笑顔がなくて外見上が不機嫌に見えたという印象論の報道ならまだ良いのですが、会談の席上でのトランプ大統領の発言のために不機嫌になったということなら問題です。私が懸念しているのは、現在の外交、安全保障を司っているアメリカの政府高官がそろいもそろってネオコン派であるという点です。

 

 そうした中で、トランプ大統領がアメリカによる北朝鮮攻撃、体制転換、政権交代などについて口を滑らせてぽろっとでも発言すれば、北朝鮮にしてみれば到底受け入れがたいことになります。

 

 日本政府について考えてみると、今回紹介している記事の内容から考えると、何も合意が出来なくてホッとしているということになるでしょう。日本が置き去りにされて、米朝が何か氏からの合意や進展をしてしまうということは、日本にとっては困ってしまう事態です。日本はアメリカとの関係に依存し過ぎているのに、アメリカは気まぐれで日本の利益を考えない行動をするということになったら、日本は損ばかりをしてしまうということになります。


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 また、日本が過度にアメリカ依存をしているということで、対中、対露、対北朝鮮についてはフリーハンドで動くことはできません。一方でアメリカはいざとなれば日本のことなど考慮しないということは可能です。日本は東アジア地域の大国ではありますが、北朝鮮をめぐる問題に関してはサイドラインに立たされたまま、ということになっています。

 

 北朝鮮も日本に関しては重視していないので、日本からの働き掛けもうまくいっていないのが現状です。

 

 こうして見ると、下に紹介した記事にあるように、日本政府にとっては今回の会談で何も成果が出なかったということは、「日本にとって何も悪いことが起きなかった」ということになり、胸をなでおろしているということになるでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

ハノイでの首脳会談で日本政府ははじき出されたと感じている(Hanoi Summit Has Tokyo Feeling Left Out

―日本はアメリカと北朝鮮が合意に至る中で、日本の利益が無視されるのではないかと懸念を持っている

 

ロビー・グラマー筆

2019年2月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2019/02/26/hanoi-summit-has-tokyo-feeling-left-out-japan-north-korea-shinzo-abe-kim-jong-un-nuclear-deal-trump-asia-security-denuclearization/

 

2018年9月、国連総会の席上、日本の安倍晋三首相は、北朝鮮との「相互不信の硬い殻を打ち破る」用意があり、北朝鮮の最高指導者金正恩国務委員会委員長との首脳会談を行う用意があると宣言した。

 

しかしそれ以降、アメリカと北朝鮮、韓国と北朝鮮、中国と北朝鮮といくつもの首脳会談が次々と開催される中で、日本はサイドラインから眺めることしかできず、ドナルド・トランプ米大統領が日本政府に相談することなく、北朝鮮と合意を結ぶのではないかという懸念を持ち続けている。

 

長年にわたり北朝鮮に対して強硬姿勢を保持してきた当の安倍首相は北朝鮮の金委員長との首脳会談を開くことができないままでいる。これはトランプ大統領が今週金委員長との2度目の会談を準備している中で、日本が不安定な立場に立っており、日本政府もそのことを認識していると専門家や日本政府高官たちは述べている。

 

ある日本政府高官は匿名で取材に応じ、「日本では、何か良いことが起きることを希望するよりも、何も悪いことが起きないことを人々は望んでいる」と発言した。

 

ヴェトナムでの首脳会談において、トランプ大統領と金委員長は非核化について北朝鮮による譲歩の可能性について議論することになるだろう。アメリカの同盟諸国は、金委員長がうまく立ち回り、トランプ大統領を出し抜き、政治上のまたPR上の勝利を勝ち取るのではないかという懸念を持っている。アメリカのマイク・ポンぺオ国務長官もまたこうした懸念を持っていると報じられている。大きな懸念としては、北朝鮮政府が非核化のための真のステップから外れるために自分たちの主張に固執するのではないかというものだ。アメリカの各情報機関のトップたちは、北朝鮮が核兵器プログラムを放棄したくないと考え、昨年シンガポールで開催されたトランプ・金会談以降の複数回の実務者協議は中断し、停滞しているのが現状だと発言している。

 

韓国では文在寅大統領は、南北関係を修復するために、金委員長の関係をこれまでになく強めている。文大統領と金委員長との間の一対一の会談は複数回開かれ、多くの場合、最後は両者が抱き合い、笑い合う様子を写真撮影することで終了している。

 

一方、北朝鮮政府は日本政府からの外交的な接触に対して反応をしていない状況下で、日本は韓国政府かアメリカ政府を通じて、トップレヴェルの関与を確保しなければならない。そのために、安倍首相は気まぐれな北朝鮮の最高指導者と向こう見ずで自由気ままなアメリカ大統領の間に挟まれ、身動きが出来ないようになっている。現在のアメリカ大統領は原稿通りに発言しないことと補佐官たちの助言を無視することを好む。

 

専門家の中には、北朝鮮は安倍首相と関与することを拒絶しているが、安倍首相がトランプ大統領と個人的な関係を持っているので、日本は外交上、強い立場にあると主張している人々もいる。しかし、安倍首相はハノイの首脳会談をサイドラインから眺めることを強いられている。

 

ヘリテージ財団研究員でCIA韓国部の副部長を務めたブルース・クリングナーは、「日本政府の高官たちと話をすると、彼らは懸念を感じ、孤立感を持っていることが分かる」と述べた。クリングナーは更に、トランプ大統領について、「日本政府高官たちは良くないサプライズが起きることを憂慮している」とも述べた。

 

トランプ大統領に対して日本政府高官が懸念を持つのはそれだけの理由があるからだ。

 

2018年の第一回目の米朝首脳会談の後、トランプ大統領は一方的に韓国との共同軍事演習の一部を修了すると発表した。これは同盟諸国と国防省内部に大きな衝撃を与えた。

 

2018年12月、トランプ大統領は、アメリカ軍のシリアからの完全撤退とアフガニスタンからの大幅な撤退を決断したと発表して、アメリカの同盟諸国を再び驚かせた。シリアからアメリカ軍を全員引き揚げさせるという決断(これは現在再考中ではある)によって、国防長官だったジェイムズ・マティスと対イスラム国特使だったブレット・マガークは辞任した。

 

ブルッキングス研究所の朝鮮半島研究部門の責任者ジュン・パクは、シリアとアフガニスタンに関する予想外の発表は東アジア全域を駆け巡り、アメリカの同盟諸国の神経を逆なでした、と述べている。パクは、東アジア地域のアメリカの同盟諸国に残されたものは、「不安定と不信感、不平不満の複雑に絡んだ状態である。これらはトランプ大統領の予測不可能性が原因の一部であると思う」と述べている。

 

中国の軍事的脅威が高まり、北朝鮮が核兵器とミサイル開発を放棄しない状況下で、それらに対処するために、日本はアメリカとの同盟関係に大きくい依存し続けている。日本の平和主義憲法は第二次世界大戦後に制定されたが、これは、純粋な防衛行動のみに軍事力を使用すると制限している。安倍政権は憲法の改定と日本の自衛隊を完全な軍隊にすることを推進中だ。

 

アメリカとの同盟に大きく依存しているということは、日本はアメリカ大統領の気まぐれの影響を受けてしまうということになる。現在のトランプ大統領は伝統的な同盟諸国との関係性の構造をはねつけ、これまでのアメリカの国際問題へのかかわりに疑問を呈している。

 

トランプ大統領が金委員長と合意に達することで、アメリカに対する脅威をなくす一方で、東アジア地位の同盟諸国を見捨てるのではないかというのが日本政府内に広がっている恐怖感だ、と日経新聞コメンテイターの秋田浩之と述べている。考えられる合意内容として、北朝鮮の長距離大陸間弾頭ミサイル開発に制限を加えながら、完全な非核化を行わず、アメリカ本土には脅威ではないが日本にとっては脅威となる短距離、中距離ミサイル開発も阻止しないというものがある。秋田は「これは日本にとって悪夢のようなシナリオだ」と述べている。

 

ランド研究所の研究員ナオト・アオキはハノイでの合意内容によって、日本の置かれている不安定な立場はより厳しいものとなるだろう、と述べている。トランプ・金会談の結果の一つの可能性として考えられる内容は、アメリカの交渉担当者たちが外交関係正常化に向けたステップの中で北朝鮮に、完全な大使館機能を備えてはいない連絡事務所を設置することを提案するということだ。東アジア地域の他の主要なプレイヤーであるロシアと中国は平壌に大使館を置いている。韓国は昨年9月に北朝鮮に連絡事務所を設置している。

 

青木は「アメリカが連絡事務所を設置するとなると、日本は東アジア地域で北朝鮮との間に、二国間で利用される存在もしくは外交チャンネルを持たない唯一の主要国となる」と発言している。

 

日本政府高官や専門家たちによれば、日本は複数回にわたり北朝鮮に接触を図った。2018年の国連総会の非公式な場面での接触や、2018年8月の東南アジア諸国連合の会合での日本の河野太郎外相と北朝鮮の李容浩外相との会談が 行われた。また、両国の情報機関の間で交渉が行われたとも報じられている。

 

青木は、これらの交渉や会談では「何も実質的な」ことには結びつかなかったようだ、と述べている。

 

外交評議会(CFR)のシーラ・スミスをはじめとする一部の専門家たちは、ハノイでのトランプ・金会談に至る過程で日本は孤立しているという考えに反論している。スミスは、トランプとポンぺオが東京を訪問したこと、北朝鮮との交渉について調整を行うために両者が安倍首相や河野外相と電話会談を行っていることを指摘している。

 

別の日本政府高官は匿名で、「非核化問題について私たちはアメリカと全面的に協調している」と述べている。

 

スミスは、2017年に北朝鮮が日本を飛び越えるミサイル実験を行った後、安倍政権は国連を含む、国際的な反応を引き出すために効果的に活動した、と述べている。スミスは「日本は国際的な舞台で活発な活動を続けている」と述べている。

 

しかし、トランプ大統領と安倍首相との個人的な友情がハノイでトランプが行う交渉に影響を及ぼすかどうかは不明確だ。秋田は、「(安倍首相の)個人的な関係が、日本にとって好ましくない妥協をトランプ氏が行わないようにするだけの効力を持つのかどうかは分からない」と述べている。

 

安倍首相は金委員長との直接の会談の際には、1970年代から1980年代にかけて拉致された日本国民について話をしなければならないと一貫して主張している。北朝鮮は17名の日本国民を拉致したことを正式に認めた。しかし、実際の数は不明確だ。日本人拉致問題は日本の外交問題の中で政治的に最も重要でかつ感情的に緊張をはらんでいるものだ。この問題に対する最後の大きな進展は2002年に起きた。この時、北朝鮮は拉致を認め、5名の拉致被害者を解放した。残る12名の運命については不明確なままであった。この人々が生存しているのかどうかも含めて不明確なままであった。しかし、拉致問題解決に向けて進展することは、北朝鮮国内で唯一求められている経済発展への道を開くことでもあるのだ。

 

安倍首相は日本史上4番目に長い在任期間を誇る首相である。彼は自身の政治キャリアを通じて拉致問題を主眼にしてきた。安倍首相は自身の外交政策上の成果を確固としたものにするために拉致問題を一気に全面解決したいと表明している。しかし、複数の日本政府高官たちは、アメリカ政府か韓国政府の仲介があっても問題解決は難しいと諦めている。

 

戦略国際問題研究所(CSIS)の北東アジア担当研究員のスー・ミー・テリーは、北朝鮮から見れば、拉致問題は、韓国やアメリカとの関係改善と比べて、取るに足らないものであると述べている。彼女は「関係改善に向かっている中で、拉致問題は現在のところ、金委員長にとって重要度の高い問題ではない」と述べている。

 

CFRのスミスは、安倍首相と金委員長との会談が行われる場合には、これらの実質的な諸問題についても話し合われなければならない、と述べた。

 

スミスは「そうでなければ首脳会談とは言えない。また、単なる写真撮影の機会でもいけない」と述べた。

 

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