古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:半導体

 古村治彦です。

 21世紀に入り、2030年頃に中国は経済成長を続け、アメリカを逆転するという予測がなされるようになった。1820年当時、当時の清朝が支配した中国は世界のGDPの3分の1を占める世界最大の経済大国であった。現在は16%ほどを占め、25%ほどを占めるアメリカを追いかけている。中国の経済成長率がアメリカの経済成長率を上回り続ければ、GDPで中国がアメリカに追いつき、追い越すということになる。

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 日本は経済成長がない状態が約30年間も続き、1968年に当時の西ドイツを抜いて世界第2位の経済大国になったものが、2011年に中国に追い抜かれて、42年ぶりに世界第3位に後退した。世界第3位でも大したものではあるが、世界のGDPに占める割合は5%ほどであり、アメリカと中国に置いて行かれている現状だ。ここから奇跡の経済成長を起こして上位2カ国に追いつくということは絶望的だ。日本は衰退国家である、ということを前提にして議論を行うことが建設的であると思う。

 中国の近現代史、特に1949年の中華人民共和国成立後の大きな流れとしては、大躍進運動(Great Leap Forward、1958-1962年)とプロレタリア文化大革命(Great Proletarian Cultural Revolution、1966-1976年)である。中国建国から1978年からの鄧小平が主導する改革開放(reform and opening-up)までの約30年のうち、半分以上の期間は動乱状況にあったが、それを起こしたのが建国の父である毛沢東であったことは皮肉なことであった。大躍進運動は、第二次五か年計画(five-year plan)の中での農産物の大増産と鉄鋼の生産量の急激な拡大を目指し、無残に失敗した。ソヴィエト連邦に依存せずに、急激な経済成長でイギリスを抜いてやろうという野心的な政策であったが、無残な失敗に終わった。鉄鋼生産に関しては、農村に粘土で釜を築いて鉄を溶かして鋼鉄を造るという「土法高炉」が用いられた。しかし、これでは実際には粗悪な鉄しか製造できなかった。農民たちはこの作業に熱狂して、自分たちの鍋や鎌を溶かして「鋼鉄」を製造した。

 中国は半導体製造で「大躍進運動」に比する動きをしていると下の論稿の著者は述べている。半導体の国産化を目指すあまりに無理をして失敗するだろうというのが結論だ。半導体製造の国産化はしかしながら重要な政策である。ウクライナ戦争勃発後、半導体不足が世界規模で発生し、日本国内ではエアコン、冷蔵庫や洗濯機など半導体を使用する家電の品不足が続いたことは記憶に新しい。半導体は現代世界においては産業の米である。半導体がなければ生活が立ち行かないということになる。更に言えば、高度な武器にも使われることを考えると、安定供給は国家安全保障にとっても重要である。世界の現状は不安定化しており、第三次世界大戦の可能性が高まっている。

 中国はこれまでの歴史の失敗を教訓にして、半導体の確保を進めるだろう。それは経済問題というよりも国家安全保障上の政治問題ということになる。

(貼り付けはじめ)

習近平の産業面での大きな野心は失敗するだろう(Xi’s Grand Industrial Ambitions Are Likely to Flop

-疑念の遺産が中国の指導者の意思決定を妨げている。

クリストファー・マーキス筆

2022年10月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/10/14/xi-mao-campaigns-chips-industry/

習近平は、間近に迫った第20回中国共産党大会で中国の最高指導者の3期目を担当することを目指して、共産主義中国の革命家だった毛沢東の悲惨な在任期間の後、数十年にわたる指導者たちを縛ってきた規範を破っている。習近平の動きを毛沢東の再来(second coming)に譬える人は多い。毛沢東の革命スローガンを頻繁に引用して自らの戦略を正当化し、演説では毛沢東の真似をし、毛沢東の記念碑を訪れる。

しかし、毛沢東の遺産は、習近平と彼の中国統治へのアプローチを理解する上で、どのように役立つのだろうか?

毛沢東の統治の強力な側面は、政治運動と産業界の野心を組み合わせたものであった。1950年代後半、毛沢東は中国が工業化においてソヴィエト連邦の成功に早く追いつくことを望んでいた。毛沢東が主導した大躍進政策(Great Leap Forward)では、農業の労働力を工業に振り向け、鉄鋼生産の失敗から、農民たちに金属製の調理器具を溶かすことが命じられた。その結果、3年にわたり大飢饉が発生し、少なくとも3000万人が餓死した。そして、1960年代から1970年代にかけて、毛沢東が開始した文化大革命(Cultural Revolution)は敵を排除し、民衆を革命に動員し続けた。この10年間、中国は制度上の激変と混乱に見舞われた。

習近平は毛沢東のように、「力を結集して大きなことをやる(Concentrate strength to do big things)」という毛沢東スローガンで推進する産業重視のキャンペーンに執着している。習近平が最高指導者として3期目に入る中で、これらはより一般的になる可能性がある。しかし、大躍進運動の時と同様、習近平の計画は経済の現実を把握できていないように見える。その最大の例が、「メイド・イン・チャイナ2025(Made in China 2025)」プログラムで打ち出された、半導体分野で世界的リーダーを目指す中国の動きである。

10年前、私は中国を代表する半導体メーカーであるSMIC(中芯国際集成電路製造有限公司、Semiconductor Manufacturing International Corp)の社内に5カ月間滞在し、創業者のリチャード・チャンをはじめSMIC幹部たちと何度も話し合いした。彼らは、半導体生産の複雑さとグローバルな相互接続性(globally interconnected nature)を考えると、中国が低付加価値アプリケーションで使用される数世代前のチップを提供する低コストサプライヤー以外の何者でもあり得ないと認識していることを明確に示していた。中国は、グローバルな知識や供給チェイン、特に工作機械へのアクセスが限られており、これが永続的な障害となっていた。

今日、半導体製造の専門知識は、これまで以上に世界の様々な地域に拡散し、それぞれが数十年にわたる研究開発の上に、独自の長所と比較優位性(comparative advantage)を持っている。しかし、中国の半導体開発は独自性があり、自給自足(self-sufficiency)を目指しており、経済的動機よりも政治的動機、特に台湾の半導体産業の優位性によって形成されており、その指針は大きく異なっている。例えば、SMICの上海工場では、地元政府を満足させるために4000人を雇用しているが、台湾の同種の工場では1000人しか雇用していないと聞いたことがある。

最近になって、このような中国のやり方には根本的な問題があることが分かってきた。2014年に発足し、通称「ビッグファンド(Big Fund)」と呼ばれる中国集積回路産業投資ファンド(China Integrated Circuit Industry Investment Fund)は、2回の資金調達で400億ドル以上を集めた後、その大部分が失敗に終わったことが判明した。最近行われた一連の粛清では、汚職の横行が非難される中、ビッグファンドに携わった様々な金融・技術関係者たちが逮捕された。また、数十億ドルの資金を誇った多くのチップ企業が、1つもチップを製造することなく倒産している。政府の補助金や助成金が実質的に無制限である以上、資源の方向性を誤り、効果のない目標に向かったとしても不思議はない。

2015年に発表された「メイド・イン・チャイナ2025」計画では、中国は2020年までに国産化率を40%にするはずだったが、実際にはわずか16%にとどまっているのが現状だ。私が滞在していた頃、SMICは「中国トップ5の特許保有企業」と喧伝していた。しかし、特許の質ではなく量にこだわったため、10年後の現在でも、最先端メーカーから2世代(約4年の開発期間)も遅れており、私がSMICのキャンパスに住んでいた頃とほぼ同じ状態である。

習近平の半導体への取り組みは、1950年代の毛沢東の製鉄への取り組みの2020年代版だと私は考える。表向きは賢明な開発優先策だが、トップダウン式のキャンペーンの論理に導かれ、経済的現実との関連性を欠くため、失敗に終わるだろう。それでもさすがに大飢饉を引き起こすことはないだろう。アメリカをはじめとする世界各国は、中国のこの分野での成長を制限するためのチップ政策を実施する際に、中国のキャンペーン戦略の失敗を念頭に置くべきである。最終的に達成できない目標に慌てるのではなく、アメリカの指導者は多国間アプローチに焦点を当て、いかなる金銭的インセンティヴも中国での観察可能な生産と密接に関連することを確認する必要がある。

習近平が毛沢東的な人格崇拝を復活させたことはよく知られているが、それが権力への渇望によるものである以上に、なぜ彼が毛沢東以後の指導者の規範を覆す必要を感じているのかについては、あまり合意が得られていない。毛沢東のもう1つの主要な政治運動が、いくつかのヒントを与えてくれる。

学者たちは、文化大革命として知られる10年にわたる国家公認の暴力が、中国の民衆に永続的な悪影響を与えたことを明らかにしている。政治学や経済学の研究によると、文化大革命を経験して、一般市民の間の信頼感が著しく低下し、制度、特に政治指導者に対する尊敬の念が薄れることが明らかになっている。

クンユアン・チャオとの共同研究で、企業経営者にも同じようなパターンがあることが分かった。文化大革命の経験者たちは、賄賂などの犯罪に手を染め、借金を踏み倒し、海外に移住して中国からの脱出を目指す傾向が強い。カリフォルニア大学ロサンゼルス校のヨンイ・ソンは、「文化大革命は人を獣に変えてしまった」と述べている。不動産開発業者のフアン・ヌーボーは、「文化大革命は、それを経験した人々を "悪魔(鬼)"にした」と述懐している。

習近平の国内・国際規範に対する姿勢には、こうした信頼の欠如が見て取れる。習近平は文化大革命の産物である。革命家一族の子孫で、1962年に粛清された父親は文化大革命で何年も獄中にいたが、習近平は地方に追放された。陝西省の農村で7年間暮らし、15歳で正規の教育を受けた後、1975年から1979年まで北京に戻って清華大学に「労働者・農民・学生」として通うまで、事実上、教育を受けることはなかった。中国のプロパガンダは、彼がこの時期に学んだとされる一般労働者への共感を強調するが、真実はもっと暗いのかもしれない。習近平は2000年、中国人ジャーナリストのチェン・ペンとの対談で、そのことをほのめかしている。彼は次のように語った。「権力とのつながりがない人々は常にこれらのことを神秘的で新奇なものであるとみている。しかし、私が見ているのは、権力、花、栄光、喝采といった表面的なものだけではない。私は、牛舎(紅衛兵が使用した即席の牢獄の呼称)や、人々がいかに熱くなったり冷たくなったりするかを見ている」。

従って、彼が継承に関する事前の中国の規範や法律を無視したことは驚くことではないのだろうか? 中国が世界貿易機関から香港の統治に至るまで、国際的な合意を無視するのは当然だろうか? そして、中国は習近平に逆らうと他国の国民を拉致して投獄するのか?

第20回党大会後、前例のない3期目に突入した習近平は、その地位を確保し、新型コロナウイルス感染拡大対策をはじめとする強硬な政策手法も和らぐのではないかと予想するアナリストたちもいる。しかし、文化大革命の影響の深さを考えると、一般的には逆で、党大会後、習近平は更に奮起し、これまで明らかに習近平が志向してきた毛沢東戦略をさらに強化する可能性がある。

横断的歴史比較(cross-historical comparisons)には、常に何事も鵜吞みにせず、疑いの目を持つことが重要だ。しかし、毛沢東のキャンペーンが習近平の政治とガヴァナンスに与えた影響から学ぶべきことは多いし、それは中国が経済的な問題を抱え続け、それに伴って西側諸国との緊張がますます高まることを予感させる。

※クリストファー・マーキス:ケンブリッジ大学ジャッジ・ビジネススクール中国経営学担当シンイ記念教授。著書に『毛沢東と市場:中国企業の共産主義的ルーツ(Mao and Markets: The Communist Roots of Chinese Enterprise)』がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 今回は現在の日韓関係の悪化はアメリカの弱体化の兆候だという内容の記事をご紹介します。記事の内容は日韓関係の悪化を概観しながら(徴用工問題と慰安婦問題を混同している点は誤りがあります)、アメリカの存在感と影響力が以前のように大きければ、更なる悪化を防ぐことが出来るのだが、それはもう望むべくもない、ということを主張しています。

 

 著者のスティーヴ・クレモンスは北東アジアの国際関係の専門家ですが、日中韓それぞれが行き過ぎた行動をとっていると述べています。

 

 韓国の最高裁が徴用工問題に関して、韓国で経済活動を行っている日本企業に対して賠償金支払い、もしくは財産の没収という判決を出しました。サンフランシスコ講和条約で日米両政府は相互に請求権を放棄しました。これに対して被爆者がアメリカに被害の補償を請求できなくなったとして日本政府を提訴しました。これに対して、日本政府は、「外交保護権(自国民の被害に対して政府が外国政府に補償を求める権利)」は放棄したが、被爆者個人が請求する権利は放棄していない、という立場を取りました。

 

日本では被爆者がアメリカに対して個人的に被害の保証を請求することを否定できない立場から、韓国の徴用工や慰安婦についても個人請求権は否定しないという立場でした。しかし、その後は日本の裁判所では個人の請求権を認めないという判決が出て、韓国や中国の元徴用工や慰安婦、戦時中に被害を受けた人たちが日本の裁判所で訴えても、請求が認められないということになりました。

 

 韓国の最高裁の判決によって、元徴用工の訴えが認められたことが発端となりました。日本政府は当然、そのような判決は認められないという立場です。韓国政府も日韓国交正常化(1965年)の際に請求権問題は解決している、日本が韓国に支払った経済協力金(実質的な賠償金)には徴用工の保証の資金も含まれている、という立場ですから、最高裁の判決には当惑したものと思われます。しかし、三権分立(日本も韓国もそうです)で、司法の独立が尊重されるとなると、韓国政府が最高裁の判決を変更することはできません。

 

 私は大人の態度というのは、ここで態度を硬化させるのではなく、それでは話し合い、交渉をしてお互いに納得が出来る点を見つけましょう、というものだと思います。しかし、このような状況下、日本政府は軍事転用可能な物資や技術の最終輸出先に不安があるという立場(北朝鮮に渡り各開発プログラムに使われる危険性がある)から、半導体製造の原材料の韓国への輸出規制を強化し、韓国を輸出規制に関して優遇措置が受けられるホワイト国から除外しました。

 

 韓国内では徴用工問題の報復として、韓国の主要産業となっている半導体製造などに影響を与える行為として反発が起きました。そして、韓国からは日本の韓国におけるホワイト国認定の解除と日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)の破棄という反撃が起きました。韓国からの安全保障上重要な情報やデータが日本に入ってこないということになると、一番の懸念は北朝鮮に関する情報やデータが直接入ってこないということです。アメリカは両国と協定を結んでいますから、日本の安全保障に関連するということになれば、韓国から提供された北朝鮮の情報やデータを日本に提供するでしょうから、大きな影響はないかもしれませんが、アメリカを介しての安全保障関係を結んでいたはずだった韓国からの「手切れ」は大きな衝撃となりました。

 

 日本側は貿易問題と安全保障問題は全くの別物だという立場で、韓国政府の行動を非難していますが、そもそも日本側の貿易管理強化は、対北朝鮮の懸念という安全保障上の理由から起きたもので、日本政府の行動こそは安全保障と貿易問題を一緒にしています。

 

 今回ご紹介する記事の著者クレモンスは、アメリカの存在感と影響力がしっかりとしていて、安全保障に関与していたならば、今回のような日韓関係の悪化はなかっただろうという立場です。そして、日韓両国政府は、対立がもたらす大きなリスクを認識し、対立を激化させないようにすべきだと主張しています。

 

 北朝鮮に関しては、アメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長のトップ会談がシンガポールとヴェトナムのハノイで2回、更に今年6月30日には大阪でのG20の後にトランプ大統領が38度線を訪問、板門店で、「トランプ大統領のツイッターでの呼びかけを読んだ」とする金委員長と会い、話し合いを行いました。

 

 このように北朝鮮をめぐる情勢は、外見上は華やかですが、実質的には何も進んでいません。核兵器放棄も行われる兆候は見られません。そのうち、アメリカは中国との貿易戦争を開始し、今も続いています。クレモンスは、「1930年代のスムート・ホーリー関税法時代の悪夢」と表現しています。日韓貿易戦争もまたこの小型版と言えるでしょう。米中貿易戦争の主眼はホアウェイ(ファーウェイ、為華技術)の5Gをめぐる争いという面もあり、日韓貿易戦争にはファーウェイとアメリカの間で板挟みになるサムソンに対する日本からの圧力(アメリカからの依頼[命令]でしょう)という面もあると思います。


 「交渉の達人」ということで、アメリカ大統領になったドナルド・トランプ大統領ですが、国際政治や国内政治の舞台では、全くうまくいっていません。トランプ大統領が行ってきた交渉術は脅しと開き直りであって、国際舞台では通用しない、という批判も出ています。

 

 北東アジア地域を一気に不安定にさせている米中貿易戦争と日韓貿易戦争は、とどのつまり、アメリカの衰退の兆候であり、国際関係の構造が大きく変わる、終わりの始まりということが言えるでしょう。そうした中で、日本はあまり大きな被害を受けないように、いきり立って対応するのではなく、「柳に風」と受け流すというくらいが良いのだろうと思います。

  

(貼り付けはじめ)

 

韓国と日本との間の争いはアメリカの弱体化を示す兆候(South Korea-Japan spitting contest is a sign of US weakness

 

スティーヴ・クレモンス筆

2019年8月26日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/international/458763-south-korea-japan-spitting-contest-is-a-sign-of-us-weakness

 

現在、各地で緊張状態が発生しているが、アメリカがそれらを土壇場で救うことが出来ると考えている人たちはほぼいない。

 

アメリカの同盟国であるサウジアラビアとアラブ首長国連邦はカタールに対して禁輸措置を実施している。カタールには中東地域最大規模のアメリカ軍基地が置かれている。イギリスはヨーロッパから離脱しようとしている。トルコはロシアから防空システムを購入し、アメリカとNATOを拒絶している。香港ではデモが激化している。香港の民主政治体制は危機に瀕している。中国とアメリカはお互いに関税引き上げを激化させている。スムート・ホーリー関税法時代の悪夢を復活させようと夢中になっているかのようだ。

 

現在、アメリカの同盟国である日本と韓国はお互いに非難合戦を激化させ、日米韓3か国の防衛同盟の枠組みに脅威を与えるような状況になっている。3か国の枠組みによって、北朝鮮は封じ込められてきたし、枠組みの存在は北東アジアにおけるロシアと中国の冒険主義に対する堤防となってきた。

 

こうした状況に加え、トランプ大統領はグリーンランドをめぐる発言でデンマーク国民を怒らせている。また、アマゾンの密林の20%が焼失しようとしている。混乱状況はこれまでにない高みにまで到達しつつある。

 

過去を振り返ってみると、アメリカが安全保障を与えることで、世界の各地域は、お互いに敵意を持つ国々で構成されていながらモラルハザードに陥らないで済んできたと私は考えている。アメリカが地域の平和を守り、地域の近隣諸国間の角逐を和らげる役割を果たした。これで地域の近隣諸国は無謀な、ナショナリスティックな主張をお互いに繰り返しながらも、地域の状況が不安定化する、もしくは戦争が起きるというところまではいかなかった。

 

日本の政治指導者たちは靖国神社に参拝することで、第二次世界大戦前の価値観を復活させようとし、ナショナリスティックな感情を弄んできた。靖国神社には戦時中の日本の戦争指導者たちの霊魂が祀られている。また、日本の政治指導者たちは、日本が戦時中に行った大量殺人、性的暴行、日本が支配した中国と朝鮮半島の人々からの収奪について、ごまかし、正当化しようとしている。

 

韓国の政治指導者たちは、悪意に満ちた日本に敵対する言動を行っている。このような言動を行うのは、かつて日本が植民地化した際に行った犯罪について繰り返すことで、自分たちの正統性を明確にしようという狙いがあるからだ。

 

中国でも状況は同じだ。中国の教科書のほぼ全ては歴史において日本を怪物のような悪者に仕立て上げようという熱意に満ちている。 物事をはっきりさせたいのだが、日本は戦時中にアジアで残酷なことを行った。そして、歴史に対して記憶喪失のようになっている。しかし、中国の教科書やテレビ番組は日本に対する歪められた固定観念に溢れている。

 

地域内の争いの激化を克服するために、アメリカは日本の攻撃的な軍事力の復活を止めるボトルのコルクに役割を果たしたし、日本と韓国にとっての安全保障上の重要なパートナーとなった。その結果、日韓両国は、歴史における恨みはありながらも、情報・諜報関係と安全保障上のパートナーとなった。

 

日本と韓国との間の協力関係は重要だ。特にアメリカの安全保障、そして両国の安全保障にとって大変に重要だ。北朝鮮が脅威であるという認識から出てくる両国の違いと争いと北東アジア地域においてアメリカが地域の安定の基盤となるものを提供することが出来なくなっていることが明らかになることで、日韓の協力関係は弱くなっている。

 

先週、日本側の行為が韓国側の更なる行為にとっての引き金となった。韓国側は日本との情報共有協定を破棄した。この協定は軍事情報に関する包括的保全協定(GSOMIA)と呼ばれるものだ。その引き金となったのは、日本が韓国に対する輸出管理格付けを変更したことであった。日本側は韓国から重要な技術や物資が北朝鮮に密輸されるのではないかという恐怖感を持っており、そうした行為を行った。

 

韓国の文在寅大統領は北朝鮮の金正恩に対して媚びへつらっている。これはトランプ政権が北朝鮮の指導者に寒い場所あら出てくるようにと温かく働きかけていることに対する反応である。日本側は、核技術にとって重要な技術や戦略的物資が韓国企業から北朝鮮に輸出される可能性があるという恐怖感を持った。日本はこれらの技術や物資の韓国に対する売却を差し止めなかった。しかし、日本は貿易に関する韓国の格付けを変更した。結果として、北朝鮮に対する輸出が懸念される物資などは、北朝鮮の核開発プログラムに使用されないことを確実にするために、項目別の許可制の対象となり、より厳しく監視されることになった。

 

日本側の措置は韓国の指導者たちを激怒させた。そして、両国間の争いを激化させた。韓国最高裁はそれまでの国際的な合意を無視し、現在韓国で活動中の日本企業の一部に対して第二次世界大戦中のこうした企業の「慰安婦」に対する取り扱いに対して賠償金を支払うように命令を下した。慰安婦は日本の占領軍の将兵のために売春行為を強要された女性たちだ。そして、実施しないようにというアメリカと日本からの要請があったにもかかわらず、韓国は日曜日に自動延長が予定されていたGSOMIA情報共有枠組を停止した。

 

ある日本政府高官は韓国側の行動を「無謀」で「錯乱」したものだと断じた。複数のアメリカ政府高官は、GSOMIAの停止は日米韓の同盟関係を損なうものとなるであろうし、その結果として地域の安定を失い、北朝鮮を勇気づけ大胆な行動をとらせることにつながるだろう、そうなれば分裂はさらに深まると繰り返し発言した。

 

日本の河野太郎外相は「大韓民国政府による決定は現在の北東アジア地域の安全保障環境について完全に誤った判断をしているものであり、従って大変遺憾であると言わざるを得ない」と発言した。河野外相は更に続けて、「大韓民国政府は、大韓民国に向けた輸出管理の日本の見直しをめぐる合意を拡大するのではなく、安全保障の面でこのような決定を行った。輸出管理と安全保障は全く次元の違うものだ。従って、大韓民国政府の主張は全く受け入れられないものであり、私たちは大韓民国政府に対して強く抗議するものである」と述べた。

 

今回の件が起きる前にも日本と韓国の指導者たちは仲たがいをしていた。そして、日本の公式の認識と慰安婦に対する犯罪に対する悔恨などの諸問題で争いを続けていた。しかし、両者の争いはアセアンやG20の場でも展開され、両者は同じステージに立つことを拒絶した。一度は日本の安倍晋三首相と韓国の文在寅大統領が同じにステージに立つことを拒絶した。しかし、重要な情報交換協定を破棄するまでには至らなかった。

 

明らかになりつつあるのは、このようないら立ちが募る状況下におけるアメリカの影響力は減退しつつあるということだ。そして、世界におけるアメリカの戦略的縮小がもたらす現実は、お互いに敵意を持つ国々の間を取り持つ緩衝材という役割が小さくなっていくというものだ。アメリカが安全保障を提供することで、地域を構成する国々の指導者たちは、無謀な、ナショナリスティックな、地域に危険をもたらす発言をしながらも実際に地域に不安定がもたらされることも、戦争がもたらされることもなかった。アメリカによる安全保障は子供たちが寝るときにしっかりと抱き締める毛布のようなものであった。しかし、そのようなことは現在では全く期待できない。

 

現在、発言や行動が更に重要になっていくであろうし、アジア地域における実際の紛争をもたらす可能性が高まっている。歴史は繰り返す。アジア諸国の指導者と国民は、同盟感懐を犠牲にし、安定的な安全保障関係の合意を破棄することがどれほど高くつくかということを認識する前に、まず争いがどれほどコストをもたらすものかについて認識する必要があるのだ。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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