古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:台湾

 古村治彦です。

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 アメリカ連邦下院議長(the Speaker of the U.S. House of Representatives)ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)の台湾訪問はアジア歴訪の一つであった。アメリカ政治における最重要人物の一人の台湾訪問は中国を苛立たせた。ペロシには「前科」があったようだ。1989年の天安門事件の後、1991年にアメリカ連邦議会の代表団の一人として北京を訪問したペロシは、公式のルートから抜け出して天安門事件で喧嘩をし、横断幕を掲げるというパフォーマンスを行い、その様子をマスコミに取材させていた。そのことで、中国当局は激怒し、ペロシたちを咎めることができずに、取材したマスコミの人間を拘束したそうだ。ペロシは重責を担う政治家としては不適格な、軽々しい人物である。下に当時の様子を写した写真があるが、漢字が繁字体であることから、ペロシはもともと台湾系、チャイナ・ロビー系と関係が深いということが分かる。

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 ペロシの今回の台湾訪問は日本の小中高生が行く修学旅行よりも何の成果もない、夏休み(連邦議会休会中)の旅行で会った。修学旅行で何かいたずらやルール違反をしても、それはそれで当事者たちにとっては大変なことで、先生が見回りで寝られなかったり、生徒たちが正座をさせられたり、くらいのことだが、ペロシの軽はずみな行動は数億人規模で人々の生命や財産、穏やかな日常を危険にさらす。経済活動に対する悪影響も考えられる。

 米中両国政府が自制的であるので、火遊び程度で住んでいるが、火遊びから思いがけない大火事になることもある。

 そもそも今回のペロシの台湾訪問の目的がはっきりしなかった。アメリカ政府全体はペロシの台湾訪問に懸念を持っていた。アメリカによる台湾防衛の確約ということも改めて発表された訳ではない。また、台湾を独立国として扱うということもできない。アメリカ政府は「一つの中国」政策(One China Policy)を堅持する姿勢を崩していない。ペロシの台湾訪問は、「アメリカの防衛産業が製造する武器をもっとたくさん買ってね」ということだろうと私は思う。連邦下院議員たちは2年おきに選挙がある。選挙に追いまくられていると言ってよい。そうした中で、地元への利益誘導に動く。

 今回のウクライナ戦争におけるアメリカの援助が巨額になっているのは、連邦下院で、地元に防衛産業がある議員たちが「その金額では足りないのではないか」「国防総省の要求には入っていないがこの武器も必要ではないか」とこれでもかとばかりにお手盛りでどんどんと付け加えたからだ。

 ペロシの軽率な夏休みの海外旅行、武器はいらんかねとの太平洋をまたいだ行商はアジア地域に危険をもたらした。そして結局何の成果もなかった。挑発行為は迷惑行為そのものだ。

(貼り付けはじめ)

ペロシの台湾訪問は台湾に勝算のない状況を設定する(Pelosi Visit Sets Up No-Win Situation on Taiwan

-行けば呪われ、行かなければ呪われる。

ジャック・デッチ筆

2022年7月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/07/29/pelosi-visit-taiwan-no-win-pentagon/

ナンシー・ペロシ米連邦下院議長は慌ただしいアジア歴訪に出発する予定であり、彼女が台湾に立ち寄る可能性が高く、物議をかもすことになる。この地域の米中間の緊張は既に煮えたぎっているが、この動きはそれを更に燃え上がらせている。

大統領に次ぐ地位にある連邦下院議長が台湾を訪れるのは初めてではなく、ニュート・ギングリッチが四半世紀以上前に訪れたことがある。しかし、中国はペロシが台湾を訪問する可能性に対して、通常、中国大使館から厳しい言葉で書かれた書簡が届くような一回限りの連邦議員の台湾訪問のように扱うのではなく、アメリカの当局者たちを繰り返し非難し、ジョー・バイデン政権に、北京が本気でペロシ議長の到着を理由に台湾海峡の危機を再び引き起こすつもりなのかと疑わせるような反応を示している。

そして、複数の専門家と議会スタッフは『フォーリン・ポリシー』誌に語ったところでは、8月1日の中国人民解放軍の95回目の創設記念日の前夜に、ペロシが訪問する可能性があり、深刻な危機を引き起こさないとしても、ジョー・バイデン米大統領ティームは勝ち目のない状況に置かれていると懸念している。

トランプ政権時代に東アジア担当国防次官補を務めたハイノ・クリンクは次のように述べている。「習近平国家主席は、ペロシ議長の台湾訪問は自分に対する侮辱だと見なすだろう。新型コロナウイルス封じ込め、住宅ローン危機、人々が街頭に立って抗議活動を行っているという事実など、彼が既に戦っている全ての国内問題に加えて、実はこれは常に中国共産党の注目を集めるもので、火に油を注ぐことになり、彼はこれを意図的な戦略の一部と解釈するだろう」。

『ブルームバーグ』誌が最初に報じたところによると、ペロシは金曜日に出発し、日本、インドネシア、シンガポールに立ち寄り、その後、台湾を訪問する可能性があるが、出発が決まった時点では未確認であった。また、連邦下院外交委員会のトップ2である民主党のグレゴリー・ミークス連邦下院議員、共和党のマイケル・マコール連邦下院議員も招待されている。ミークス議員は安全保障上の理由から、マッコール議員は日程の都合から、それぞれ同行を辞退した。国防総省の職員たちは、アジア歴訪の計画中に、ペロシのスタッフたちに訪米の影響を懸念していることを伝えた。そして、その批判の一部は連邦議会でも共有されている。

ある民主党議員のスタッフは、匿名を条件に、『フォーリン・ポリシー』誌に「何を達成するのか、それが私の疑問だ。より大きな懸念は、常に右派を利するタカ派的なアプローチに私たちを閉じ込め、将来の外交のための政治的空間を縮小してしまうことだ」と述べた。

連邦議員たちによる台湾訪問について言えば、1997年のギングリッチ議長の訪問の際、中国からほとんど反発を受けなかったという歴史的経緯がある。しかし、連邦議会では、ペロシ議長が北京からの反発の可能性について間違った計算をしていると考える人々もいる。

大きな問題はそのタイミングだ。習近平が率いる中国共産党の第20回党大会(トップリーダーの承認)を前に、バイデンは長年にわたるアメリカの戦略的曖昧さの政策に反して、台湾を軍事侵攻から守ることを短絡的に繰り返し公言した。中国が縮小しつつある経済成長目標を達成できない可能性もあり、ペロシの台湾訪問のタイミングで中国が特に強気に出ているのではないかという懸念もある。

「私の感覚では、このタイミングについては議長のオフィスに誤算があったように思う」と匿名を条件に共和党のある議会補佐官は語った。この人物は続けて「中国国内で起きているいくつかのことを考えれば、この特別なタイミングが特に挑発的なものになることは明らかだった。今すぐ危機を引き起こすことがアメリカの利益になるわけではないという程度のことがうまく選択されなかったということになるだろう」。

アメリカの高い地位の人物による台湾訪問に対して中国が拒否権を得るべきだと思っている人物は民主、共和両党に穂ほとんど存在しない。しかし、専門家や議会補佐官たちは、中国の軍事演習が活発化し、北京が2年以上続けている台湾の防空識別圏を侵犯したり、自国の防空圏を拡大しようとしたりすることを懸念していると述べた。国防総省は、中国軍は海峡両岸への侵攻(水陸両岸での上陸作戦が必要)に十分対応できていないと考えているが、専門家や議会関係者たちは、今回の訪問がこの地域の温度をさらに上昇させる可能性があると警告している。数週間前から、米政府関係者は中国軍との安全でない戦闘の危険性が増大していると警告を発している。

台湾は、1972年にニクソン政権が毛沢東と合意した外交関係再開に端を発する「一つの中国」政策の一部として、アメリカに公式に独立国として認められていないが、トランプ政権の末期、当時のアレックス・アザー米保健福祉長官が現職閣僚レベルとして初めて台湾を訪問してから、水面下で訪問のペースを上げてきている。国防総省の元職員であるクリンクは、訪問を計画する人々はリークの可能性にもっと気を配るべきだとし、議会関係者は典通常移動手段として軍用機を利用するが、今回のペロシの台湾訪問では軍用機の使用を行わずに、米政権の黙認と見られるようなことをすべきだったと述べている。

米国防総省は軍事的緊張を考慮して、通常は日本に駐留する空母ロナルド・レーガンとその関連打撃部隊を南シナ海に派遣している。

もしペロシが中国の間接的な圧力に屈して台湾に行かなかった場合、日本、オーストラリア、韓国がこの地域でより強固な軍事態勢を取ろうとしている時に、地域的に有害な影響を与えかねないと懸念を持つ人々がいる。今月初めに暗殺される前、日本の安倍晋三元首相は、自民党をよりあからさまな台湾支援政策に向かわせようとしていた。

トランプ政権時代の国家安全保障会議の主要スタッフを務め、現在は米外交政策評議会(American Foreign Policy Council)の上級フェローであるアレキサンダー・グレイは次のように述べている。「ペロシが台北に現れれば、それは素晴らしいことだ。そうすれば、ボールが前進することになるだろう。米台関係を前進させることができるだろう。抑止力を高めることができるだろう。今、政権は自らの思惑か偶然か、身動きができない状態になってしまった」。

※ジャック・デッチ:『フォーリン・ポリシー』誌国防総省・国家安全保障分野特派員。ツイッターアカウントは@JackDetsch

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ナンシー・ペロシは台湾で一体何をしようと考えているのだろうか?(What Does Nancy Pelosi Think She’s Doing in Taiwan?

-リスクの高い訪問は実際の支援というよりも劇的なジェスチャーに見える。

マイク・チョニー筆

2022年7月26日

『ザ・ヒル』誌

https://foreignpolicy.com/2022/07/26/nancy-pelosi-taiwan-china-relations/

1991年9月、私はCNNの中国総支局長だった。当時、一階の連邦下院議員だったナンシー・ペロシに私の関心は集まった。米連邦議会代表団として北京を訪れた際、ペロシと他の議員2名が公式エスコートから離れて、天安門広場に行く計画を立てている、と彼女の同僚議員が私に教えてくれたのだ。しかし私は、彼女の計画が、報道カメラが回る中、2年前に中国人民解放軍が民主化デモ隊を鎮圧した際に亡くなった学生たちを追悼する横断幕を掲げ、花を供えることだったとは知らなかった。

ペロシと2名の議員は、このジェスチャーを行った後、車で去っていった。訪問中の外国要人をターゲットにできない中国警察は、私と他の記者を数時間にわたって手荒く拘束した。私は、ペロシが中国の共産主義者を狙い撃ちするために、結果がどうなるかは関係なく、注目を集めるようなジェスチャーをする傾向があることを初めて経験した。

今、ペロシは、より危険な瞬間に、手荒に扱われた記者ということよりもはるかに多くの問題を抱えながら、今年の8月にもっと挑発的な行動、つまり台湾訪問を行おうとしているようだ。中国が台湾を武力で奪おうとするのではないかという懸念が高まる中、米中関係はここ数十年で最低の状態にある。激怒した中国政府は既に、ペロシが台湾訪問を行えば強硬に対応すると警告を発しており、今でも緊張状態にある状況を危険なまでにエスカレートさせる恐れが出てきている。

しかし、ワシントンでは、ペロシの台湾訪問をめぐる状況は極めて混沌としている。台湾訪問の情報は、『フィナンシャル・タイムズ』紙が匿名の情報源6名から得たもので、誰が何のためにこの計画を公表したのかは疑問だ。最初のリークは、ペロシのスタッフが宣伝効果を狙ったのか? それとも、政府内の誰かがこの旅を台無しにしようとしたのか? それとも単なる不手際か? ジョー・バイデン米大統領は記者団の取材に対し、「米軍部が今は良くないと考えている(military thinks it’s not a good idea right now)」と述べただけだったが、ペロシは台湾への支持を示すことの重要性を強調しながらも、自らの意思を明確にすることを拒んだ。

しかし、この情報が流れた今、アメリカはジレンマに直面している。もしペロシが行かないのであれば、アメリカは中国政府がアメリカの台湾への関与のあり方について制限を設けることを容認しているように見えるだろう。そうなれば、アメリカは衰退しつつあり、中国の国際的な主張の強い行動が功を奏しているという、強い信念が北京の中で強まることになりかねない。確かに、中国の国際的なイメージは崩壊し、投資家は逃げ出しているが、その政策を決定する指導者に対して、不快な事実を指摘する意欲は、中国共産党内にはほとんどない。さらに、バイデンに対する共和党の批判者たちが、バイデンが中国に甘いということを非難する材料にもなる。

しかし、もしペロシが北京の警告を無視すれば、台湾をめぐる危険な新たな危機の引き金になりかねない。中国人民解放軍は、過去1年間に台湾の防空識別圏(ADIZair defense identification zone)への大胆な侵入を繰り返しており、ペロシが搭乗するアメリカ軍機の着陸を阻止しようとするかもしれない、あるいは台湾に独自のADIZを宣言するかもしれないという憶測が広まっている。ある中国研究者は、北京は「前例のない対抗措置、それは台湾海峡危機以来、最も強力な措置」で対応するだろうと警告している。

確かに、中国の台湾に関するレトリックは、実現性の極めて低い大仰な脅しばかりだ。しかし、米中関係がより険悪になった今、互いにエスカレートする危険性は否定できない。しかし、ペロシの台湾訪問の見通しが立った中で、アメリカの対中・対台湾政策への戸惑いは増すばかりだ。バイデンはここ数ヶ月の間に3度、台湾が攻撃された場合、アメリカは台湾を防衛すると宣言し、ホワイトハウスの側近がその発言を撤回したこともある。多くの問題で緊密に協力しているバイデンとペロシが、なぜこのように考えが一致していないように見えるのか、想像するのは難しい。また、国防総省がペロシに訪問の潜在的リスクについて、事前に慎重な計画プロセスの一環としてではなく、フィナンシャル・タイムズによるリーク後にしか説明しなかったのはなぜだろうか?

更に言えば、このタイミングは挑発的に見える。また、戦略的な計画というよりも、8月の連邦議会休会と連動しているようにも考えられる。北京にはアメリカの政治家にどのように振舞うかを指示する権利はない。習近平は前任者2名の前例にとらわれず、3期目の政権を獲得し、党国家に対する支配力を強化することになる。このような政治的に敏感な時期にペロシの台湾訪問を阻止できなかったことで、習近平の面目がつぶれる可能性があるため、中国が強い反応を示す可能性は高いが、この問題に関して中国がますます攻撃的 なレトリックを使用しているので、この訪問に対して これ以上融和的になるとは考え難い。

ここで不快な質問が浮かんでくる。ペロシは一体何を目指しているのだろうか? 台湾への支持を示したいという意図は明らかだ。しなしながら、中国の脅威に対処するために、アジア地域のアメリカの同盟諸国をより緊密に連携させる、ロシアのウクライナ侵攻を教訓に台湾の防衛力を向上させる、などのより幅広いアメリカの戦略とは全く関係がないように見えるのだ。ホワイトハウスからのメッセージの乱れが示すように、ここでのコミュニケーションや調整はほとんど行われていないと考えられる。

むしろ、8月に予定されている台湾訪問は、実質よりも象徴的なものであり、ペロシが過去に行ったように、北京を苛立たせるための写真撮影に過ぎないように見える。しかし、1991年の天安門訪問では、数人の記者が暴行を受け、拘束された。今、事態がエスカレートすれば、台湾の人々、そして、彼女の訪問のために動いているアメリカ軍将兵がその結果に直面することになる。

マイク・チョニー:台湾を拠点に活動。南カリフォルニア大学米中研究所非常勤上級研究員。『中国への取り組み:中華人民共和国で活動するアメリカ人ジャーナリストたちのオーラルヒストリー(Assignment China: An Oral History of American Journalists in the People’s Republic)』が間もなく発刊。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 アメリカは冷戦期以降、世界において、2つの大きな地域的非常事態(two major regional contingencytwo-MRC)に即応できるようにする戦略を採用している。簡単に言えば、世界のどこかで2つの大きな戦争が起きてもそれらに対応し、2つの戦争を同時に戦って勝つことができるようにするというものだ。下記の論稿では、「アメリカ軍は連戦気においては、2つの大きな戦争と1つの小さな戦争を同時に戦って勝てると主張していた」ということだ。そのためにアメリカ軍の能力を常に世界最大、最強にしていくということがこれまで当たり前だった。

 しかし、ドナルド・トランプ前大統領が当選して風向きが変わった。世界各地に駐留するアメリカ軍の撤退とNATOをはじめとする同盟諸国の防衛費の引き上げを求める流れになった。「もうアメリカはそこまでのことはできない」ということになった。日本の防衛予算をGDP2%まで上昇させよ(これまでは1%以内ということになってきた)という動きはこのアメリカの動きに連動している。トランプ政権がこうした要求を出して、バイデン政権になっても継続している。アメリカにしてみれば、軍需産業の売上が上がることだし、結構なことだということになる。

 アメリカ軍は既に2つの大きな戦争を同時に戦うことはできない。第二次世界大戦の時のようにヨーロッパとアジアで物量と大量の兵員で押し込んで敵を屈服させるということはできない。1つの戦争だけならばまだ戦えるが、それも厳しいということになる。現在のウクライナ戦争は、アメリカの戦費と武器によって戦われているものであり、アメリカ・ウクライナ連合軍と言っても良いだろうが、国土が荒廃し、将兵がどんどん死んでいくというのはウクライナばかりだ。武器がどんどん消費され儲かるのは軍需産業ということになる。ただ、アメリカ軍は自軍の貯蔵から武器を供与しているが、その補充が間に合っていないということが起きているようだ。

 アメリカ軍が懸念すべき地域としては、東アジア(中国と台湾、朝鮮半島)、中東(イランとイスラエル)、ウクライナ(対ロシア)がある。これらの地域で危機が起きた場合に、アメリカ軍は即応することはできないと下記論稿で述べられている。そのため、同盟諸国に対し防衛費の増額を求めている。そうした中で、ウクライナ戦争が起きた。これを「渡りに船」と各国は防衛費を増額している。防衛費ということになると、不思議なことにジャンジャンお手盛り、「財源は?」などと言う質問ができないようになっている。これは多くの国でも起きている。

 これだけでもアメリカ一極集中の時代は終わりということになる。他の国を巻き込むということになる。日本はどこまでお付き合いするかを決めておかねば、いつの間にか最前線でアメリカの武器を持って、日本の防衛以外の外国での戦争を戦わされることになっている可能性もある。そうした馬鹿げたことにならないように願うばかりだが、どうも雲行きは怪しい。

(貼り付けはじめ)

アメリカは4正面戦争を戦うことが可能なのだろうか? それは現在では不可能だ(Could the US fight a four-front war? Not today

レオナード・ホックバーグ、マイケル・ホックバーグ筆

2021年6月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/national-security/556666-could-the-us-fight-a-four-front-war-not-today/

ジョー・バイデン大統領がイラン核合意の再交渉を模索する一方で、イランのテロリストの代理人であるハマスが、アメリカの同盟国であるイスラエルに戦争を仕掛けてきた。民主党の一部の進歩主義的な人々が、政治的正しさという祭壇の上でイスラエルを犠牲にすることを主張しても、外交政策の専門家たちは、アメリカが信頼性を保つために同盟諸国を守る必要があることを認識している。ハマスの抑制と引き換えに核交渉でイランをなだめる試みは、チグリス・ユーフラテス川流域からシリア、レバノン、ガザを通る三日月地帯の支配を目指すイランの長期戦略に資することになる。

地政学的分析の祖といわれるハルフォード・マッキンダーは、『民主政治体制の理想と現実』(1919年)の中で、スエズ運河を支配するイギリスにとって聖なる土地が重要であることを強調した。また、地政学的な観点から、シベリアに鉄道を敷設すれば、ランドパワーが単独または同盟を組んでユーラシア大陸に資源を動員し、シーパワーの覇権に対抗することができることを強調した。2度の世界大戦とその後の冷戦は、マッキンダーの言う「ハートランド」を支配しようとする勢力が、ユーラシア大陸沿岸の国民国家を支配することを阻止するために行われたのである。

今日、マッキンダーの地政学的悪夢が現実のものとなりつつあるように思われる。ロシア、中国、イランという3つの独裁政権が北朝鮮などと連携してマッキンダーのハートランドを占め、ヨーロッパ、インド、極東の自由主義的民主制体制諸国家に大きな影響力を行使している。中国は、「一帯一路」構想の一環として、ユーラシア大陸を経済的、文化的、軍事的に結びつけている。この脅威の領土的範囲は、西はバルト海と黒海から、南シナ海、台湾海峡、東シナ海、ベーリング海にまで及んでいる。

アメリカと同盟諸国は、ユーラシア大陸の環太平洋地域周辺にある複数の紛争地点に直面している。ロシアはクリミア征服を強化するため、ウクライナに脅威を与え続けている。アメリカはウクライナが核兵器を放棄した際、1994年のブダペスト・メモランダムでウクライナの領土保全を保証した。ロシアはその保証の価値の低さを雄弁に物語っている。一方、ロシアはNATO加盟国であるバルト3国(エストニア、ラトヴィア、リトアニア)にも脅威を与えている。NATO加盟国への侵攻が成功すればアメリカの信用は失墜する。

中国は、香港が独立を保ってきた「一国二制度」の原則を否定し、習近平指導者は、必要なら武力で台湾を中国に編入すると宣言している。中国は、台湾を侵略または封鎖する能力を構築しており、先端エレクトロニクスや半導体を台湾に依存し、太平洋における中国の野心を封じ込める港としてアメリカを脅かしている。東シナ海では、中国は日本の尖閣諸島の領有権を主張し、南シナ海では、重要な航路の主権を主張するために人工島を建設している。中国は現在、全ての海洋近隣諸国を脅かしており、ブータンやインドなど陸地の近隣諸国への侵略を始めている。チベットと香港は征服され、占領された領土である。

ならず者的な独裁体制諸国家は脅威を増している。イランはイエメンの反政府勢力フーシを支援し、ペルシア湾岸諸国とイラクのシーア派の不満を煽り、ヒズボラを通じてレバノンとシリアを支配し、ホルムズ湾を通る船舶を脅している。北朝鮮は韓国に対して通常兵器の脅威を与え、その核開発計画はアメリカを標的としている。

上海協力機構(SCO)は、中国が主導し、ロシアが追随する同盟であり、マッキンダーのハートランドを占める独裁的な大国の多くを結び付けている。アメリカはこの30年ほどで初めて、中国という独裁的な競争者と敵対することになった。中国の軍事費は指数関数的な上昇を続けているが、NATOの防衛費は横ばいである。敵の裏庭で戦争をして勝つには、敵が最も強く、私たちが最も弱いところで戦うことが必要である。

冷戦の最盛期、アメリカは2つの大きな戦争と1つの小さな戦争を戦うことができると主張していた。しかし、その軍事力は、敵対国の軍事力に比べ、徐々に低下している。軍事力の低下を示す一つの重要な指標は、アメリカの海軍艦隊の規模である。レーガン政権時代、米国は600隻の海軍を維持することを目指した。レーガン政権時代、アメリカは600隻の海軍を維持しようとしたが、それ以来、アメリカの海軍艦隊の規模は劇的に縮小している。セス・クロプシーによれば、今日、「アメリカ海軍は101隻の艦船を世界中に展開している。アメリカ海軍の艦隊全体では297隻に過ぎない」という。中国沿岸の課題に対応するための艦艇はもちろん、ユーラシア大陸の複数の紛争地点での侵略を抑止するための艦艇も十分ではない。近い将来、中国が台湾への侵攻を表明しているにもかかわらず、アメリカはアジア太平洋地域の第7艦隊の一部として配備された空母を持たなくなるだろう。

アメリカが直面する危機を評価する上で、国家安全保障の専門家たちはアメリカに敵対する国々が協調して行動する可能性を考慮しなければならない。もしアメリカと同盟諸国が、ウクライナ、台湾、イスラエルに対する4正面同時戦争に直面し、さらに北朝鮮が韓国を攻撃し、核抑止力を活用し、イランがホルムズ海峡を封鎖したらどうだろう。このような攻撃は、おそらくアメリカの金融・物理インフラへのサイバー攻撃と組み合わされるだろう。

アメリカはこのような同時多発的な挑戦に対応する軍事能力を有しているのだろうか? 同盟諸国を守り、条約上の約束を守るために核兵器を使用する準備はできているのだろうか? 厳しい選択を迫られた場合、アメリカはこれらの紛争のどれを優先させるか? 多面戦争を回避するためには、アメリカは同時に複数の場所で通常兵器を使った紛争を戦い、勝利する準備を整え、同盟国の自衛能力を強化するために投資しなければならない。

アメリカの国家安全保障分野のアナリストたちは、あまりにも長い間、マッキンダーの悪夢を生み出してきた地政学を無視してきた。権威主義的な諸大国は、共通の大義を見出し、行動を調整するという強い歴史を持っている。独裁者たちは、立法府の議論なしに決定を下すという贅沢さと呪いを持っている。もしアメリカが、中国、ロシア、イラン、北朝鮮という独裁諸国家枢軸による協調行動を抑止できなければ、これらの大国は必ずや共通の原因を見つけ、多面的な戦争に発展するだろう。

※レオナード・ホックバーグ:「マッキンダー・フォーラム・US」のコーディネイター。外交政策研究所上級研究員。スタンフォード大学をはじめ複数の高等教育機関で教鞭を執った退職教授。彼はまたフーヴァー研究所研究員に任命された。彼は、「ストラットフォー」の前身「ストラティジック・フォーキャスティング・Inc」を共同創設した。

※マイケル・ホックバーグ:物理学者。半導体製造分野と電気通信分野で4つの成功したスタートアップ企業を創設した元大学教授。それらの企業の中には2019年にシスコが買収したラクステラ、2020年にノキアに買収されたエレニオンがある。シンガポール(NRF Fellowship) aとアメリカ(PECASE)で若手科学者にとっての最高賞を受賞。

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(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 先ごろのジョー・バイデン米大統領のアジア諸国歴訪において、バイデン大統領は「中国が台湾に侵攻した場合にはアメリカが台湾を守るのか」という質問に対して、「イエス」と答えた。その後、アメリカ国務省は「一つの中国」政策から逸脱しないと発表した。「一つの中国」政策とは、簡単に言えば、「中国が台湾を削の一部であるという主張を行っているがアメリカはそれには反対しない」ということである。しかし、同時にアメリカは台湾関係法(1981年)を成立させ、台湾支援も行っている。非常に曖昧な立場を取っているということになる。バイデン大統領の発言はアメリカの「一つの中国」政策からの逸脱を意味する可能性を持つ内容で、国務省は火消しを行った。

 ウクライナ戦争を敷衍して、「台湾は次のウクライナだ(中国が台湾に侵攻する)」という主張が今年の2月、3月に多く聞かれた。そのこともあって、アメリカ政府としては中国を刺激したくないと考えて(ただでさえ米中関係は厳しい状態にある)、火消しを行ったというところだろう。

 アメリカとしては中国と直接戦火を交えることはしたくない。アメリカ軍の攻撃力で中国人民解放軍に大きな打撃、損害を与えることはできるだろうが、同時に中国本土に近い戦いでは中国人民解放軍も地の利があり、アメリカ軍に対して相当な損害を与えることができるだろう。そうなれば、台湾や日本も戦闘に巻き込まれるということは十分に考えられる。日本国内のアメリカ軍基地が攻撃目標となるだろう。そうなれば日本の国土や国民に損害が出ることも考えられる。世界経済において第一位と第二位の経済力を持つ国々が戦火を交えるということになれば世界経済への影響は計り知れない。

 米中ともに、ウクライナ戦争が継続しているこの時期こそアジア地域の安定は望ましいことである。現状維持が最重要である。台湾は世界経済において確固とした地位を築いている。そのことを安易に犠牲にすることは得策ではないし、中国にとっても台湾の経済力や中国本土での台湾企業の展開は必要なことである。「本音と建て前」の両建てでいくということになる。台湾が国際社会から排除されているという点は人道的な分野においては排除されるべきではないと私は考えるが、経済などその他の分野では台湾はたくましく生き残っているし、これからも中国本土と協力しながら生き残っていくだろう。

 この曖昧さが分からない政治家たちが状況をさらに複雑化させ、悪化させる。バイデンがアジア歴訪においてきちんと「一つの中国」政策についてブリーフィングを受けたのか、そしてもしブリーフィングがあったのならその内容を理解していたのか、甚だ疑問だ。ホワイトハウスとしては「アメリカは中国の侵攻から台湾を守るのか」という質問が出ることくらいは織り込んで事前に準備をしていたはずだ。それなのに後で火消しをしなければならない状態になってしまったというのは、失態であったということになる。それがバイデン大統領個人の資質の問題なのかどうかはこれから検討が必要だ。

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ホワイトハウスの台湾をめぐる大失態(The White House’s Taiwan faux pas

ライレイ・ウォルターズ筆

2022年5月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/international/3503111-the-white-houses-taiwan-faux-pas/

先週末のホワイトハウスの大失態、それは、ジョー・バイデン大統領が「中国が侵略してきた場合、アメリカは台湾を守る」と発言したことではなく、新しいインド太平洋経済枠組(Indo-Pacific Economic Framework)から台湾を除外したことだ。

外交はバイデン政権の対外政策の中心である。ヨーロッパとの貿易関係の修復から、アジアでの新しい経済クラブ創設のためのパートナー集めまで、「外交の復活(diplomacy is back)」を宣言することがこの政権の数少ない目標の一つである。

これらの取り組みは、外交関係を再構築・拡大したいというホワイトハウスの意向が主導しており、貿易機会の拡大といった経済的な理由はあまり関係ない。ホワイトハウスは、「友人」のリストに加える国が増えれば増えるほど、バイデンが選挙公約を実現していることを有権者たちに大きくアピールできることになる。

だから、バイデンがインド太平洋経済枠組の初期参加国として、東南アジアの7カ国を含む13カ国を発表した際、ワシントンの多くの人々は直ちに外交的な成功を宣言したのである。どうやら、これは一部の人が予想していたよりも多い数字だったようだ。

残念ながら、少なくとも1つの重要な国がリストに入らなかった。それが台湾である。

台湾は、この枠組みへの参加を表明した数少ない国の一つであった。それにもかかわらず、ホワイトハウスは、当分の間、台湾を参加させないという決定をした。台湾を参加させないことで、台湾に接近しすぎて中国を怒らせることを懸念する東南アジアの参加者をより多く確保することができるというのがその理由である。ワシントンでは、このホワイトハウスの動きを「戦略的トレードオフ(strategic tradeoff)」と呼ぶ人もいるかもしれない。

外交的な安心材料にするため、国家安全保障問題担当大統領補佐官のジェイク・サリヴァンは、「台湾との経済的パートナーシップを深めることを視野に入れている」と述べた。アメリカは台湾と何度もハイレヴェルな対話を行っているが、ホワイトハウスが本当に台湾に補償をするために何を提供できるかは疑問である。

台湾は多くの点で国際的に仲間外れにされ続けている。世界貿易機関(WTO)やアジア太平洋経済協力会議(APEC)のメンバーであり、世界的な貿易大国であるにもかかわらず、台湾の公式貿易パートナーは世界中に数社しかない。長年、台北はアメリカとの貿易交渉を開始しようとしてきた。現在、台湾は貿易相手を拡大するために、環太平洋パートナーシップ(TPP)に参加するために中国と競争している。もし中国が先にTPPに加盟すれば、台湾の加盟は阻まれる可能性が高い。

中国は世界的な影響力を主張し続け、台湾が重要な国際協定や組織に参加するのを妨害している。例えば、世界保健総会(World Health Assembly)への台湾の参加を妨害し続けている。また、北京は新しいインド太平洋経済枠組に満足していないかもしれないが、少なくとも台湾がその枠組みに参加していないことは喜ばしいことである。

台湾の存在の有る無しにかかわらず、この枠組みが経済的な成功を収めるかどうかは、専門家である観察者たちによって厳しく判定される。インドやヴェトナムといった国々との関係を深めていくことは素晴らしいことだ。しかし、枠組み交渉はまだ始まってもいないのに、既にいくつかの問題が際立っている。一つは、この枠組みには、現在および将来の参加者を参加に向かわせる市場アクセスのようなインセンティヴが欠けていることだ。アジアの多くの人々は、外交の場を増やすだけでなく、有意義な貿易や経済的な関わりを望んでいる。しかし、台湾があまり有力ではない経済協定に参加するためには、アメリカの支援が必要だ。

台湾を枠組みに入れないことで、台湾経済は様々な意味で孤立し続ける。しかし、バイデンが政権の支持を申し出るのは今からでも遅くはない。

(貼り付け終わり)

(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 私が拙著『アメリカ政治の秘密』『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』で取り上げたジョー・バイデン政権のキーパーソンであるジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官が中国の楊潔篪外交部長とルクセンブルクで4時間以上にわたり会談を持ったというニューズが報道された。このブログでも繰り返し紹介しているが、「西側世界対それ以外の世界(the West vs. the Rest)」という二分された世界において、米中はそれぞれの勢力のリーダーということになる。米中両国が世界を管理する「G2Group of Two)」体制が当面の世界の安定にとって重要である。

 バイデン政権の高官が会談の様子を述べているが、ジェイク・サリヴァンからは「台湾問題について、アメリカは“一つの中国”政策を維持すると繰り返し述べながら、中国の台湾に対する姿勢やウクライナ戦争に関する姿勢を批判した」ということだ。中国側からのリアクションについて言及はないが、相当激しい応酬が行われたことが予想される。

ウクライナ戦争は対ロシア封じ込めのためのEUNATOの東方拡大が招いた悲劇であるが、それを敷衍するならば、クアッド(Quad)やAUKUS(アメリカ、イギリス、オーストラリアの軍事同盟、日本は参加拒否)といった対中封じ込めの動きもまた悲劇を招く可能性がある。従って、ここはアメリカとしても慎重に事を運ばねばならないし、その点は中国も同様だ。あくまでも「米中間競争を管理する」ということでいかねばならない。

 日本はこの二つの勢力のはざまに位置する。両方と良好な関係を維持する必要がある。どちらかに偏る必要はないし、それは不可能だ。戦後から現在までアメリカの属国であるが、この状態でいることを当然のことと考えずに常にその先はどうなるかということを考えねばならないが、戦後世界体制が変化していく中で、これから先のことをより真剣に考えばならなくなるだろう。

(貼り付けはじめ)

ルクセンブルクでバイデン政権高官が4時間以上にわたり中国のトップ高官と会談(Biden official meets with China’s top diplomat for four hours in Luxembourg

モーガン・チャルファント筆

2022年6月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/3521788-biden-official-meets-with-chinas-top-diplomat-for-four-hours-in-luxembourg/

国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンは月曜日、ルクセンブルクで4時間以上にわたって中国のトップ外交官である楊潔篪外交部長と会談を持った。バイデン政権のある幹部によると、両者は様々な議題について討論を行ったということだ。

バイデン政権幹部は会談について次のように語った。サリヴァンは、バイデン政権が「一つの中国」政策を堅持すると繰り返し述べた。また、中国の台湾海峡における「強制的かつ攻撃的な行動」についての懸念を表明した。更にはウクライナ戦争においてロシアを援助していることに対して警告を発した。

この高官は「両者は米中関係に対する評価を共有し、それぞれが両国の間の力学をどう見ているかについての意見交換も行った。この会談を率直で、深く、実質的で、生産的であった」と述べた。

サリヴァンはまた、最近のミサイル発射を受けて北朝鮮に新たな制裁を科すとした国連安全保障理事会でのアメリカの決議案に対して、中国が最近拒否権を行使したことについても懸念を表明した。

この高官は「ジェイクは北朝鮮に関しては米国と中国が協力すべき分野であることを明確にした」とも述べた。

今回の会談は、ロイド・オースティン国防長官がシンガポールで中国の魏鳳和国防部長と会談し、台湾に対する攻撃的な行動に対して北京に警告した数日後のことだった。

魏国防部長はその後、シンガポールで開催されたシャングリラ対話での公式発言でアメリカを批判し、アメリカが中国を「中傷」していると非難し、対立を避けるよう警告を発した。 

バイデン大統領は最近、大統領就任後初めてアジアを訪問し、インド太平洋地域におけるアメリカの経済的関与の指針となる新たな枠組を発表したが、これは中国の影響力拡大に対抗するための努力と広く受け止められている。

アジア諸国歴訪中、バイデンは台湾を軍事的に守ることを約束し、アメリカの政策転換を示唆した。しかし、ホワイトハウスはすぐにこれを明確に否定しようと躍起になった。

ホワイトハウスは、今回のサリヴァンと楊潔篪の会談を、米中間の競争を「責任を持って」管理するための政権の幅広い努力の一環と位置づけた。

ホワイトハウスは声明を発表し、その中で「サリヴァン氏は、米中間の競争を管理するために、開かれたコミュニケーションラインを維持することの重要性を強調した」と述べた。

サリヴァンが最後に楊潔篪と会談を持ったのは5月18日のことだった。両者は3月にもローマで会談し、サリヴァンは中国がウクライナ侵攻の初期にロシアと連携していることに懸念を示した。

3月の会談の前に、バイデン大統領と中国の習近平国家主席がヴェデオ会談を行い、アメリカ大統領は中国に対し、もしロシアを援助するようなことがあれば深刻な事態を招くことになると警告を発した。

ホワイトハウスが再びバイデン・習近平会談の計画を立てているかどうかは不明である。バイデン政権のある高官は、現時点では「具体的なことは何も計画していない」と答えたが、会談の可能性についてはドアを開けたままにしているとも語った。

ホワイトハウスのカリーヌ・ジャンピエール報道官はその後記者団に対し、バイデンと習近平の今後の会談は予定されていないと述べたが、バイデン政権は「中国との開かれたコミュニケーションラインを維持し続ける」とも述べた。

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※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 私が著書『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』を出してから1年が経過した。この本の1章で私は、バイデン政権の外交・安全保障関係の高官たちの分析を行った。特に重要な人物だと考えたのは、コンサルタント会社「ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社」の創設者であるミッシェル・フロノイ元国防次官だ。ウエストエグゼク社には、現在のジョー・バイデン政権の高官たちが多数在籍していた。アントニー・ブリンケン国務長官は共同創設者である。その他には、ロバート・O・ワーク国防副長官、アヴリル・ヘインズ国家情報長官、ホワイトハウス報道官ジェン・サキ、イーライ・ライトナー国防長官特別補佐官が在籍していた。
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 このウエストエグゼク社を広報会社テネオ社が買収するという話が出ており、合意間近だということだ。テネオ社は創業者が不祥事で辞任して先行き不透明と言いながら、利益は出ており、事業拡大のための買収ということだそうだ。ウエストエグゼク社に在籍していた人物たちがバイデン政権の高官になっているということも買収にとっては大きなポイントになっているということも考えられる。

 今年の3月にジョー・バイデン大統領が台湾に送った代表団の中に、ミッシェル・フロノイが入っていた。下の記事にある写真では右から2番目に写っている。フロノイの隣、右端に写っているのは、ジョージタウン大学教授マイケル・グリーンである。

 この2つの話から、ミッシェル・フロノイがバイデン政権においても重要な役割を果たしていること、更に言えば中間選挙後のバイデン政権1期目後半にはフロノイが政権入りするのではないか、具体的には国防次官もしくは国家安全保障会議に重要メンバーとして入るのではないかと考えている。

 フロノイと共にグリーンが台湾への代表団に入っていたのは気になるところだ。ホワイトハウスの国家安全保障会議でアジア担当上級部長を務めた経歴からの代表団入りだと考えられる。ウクライナ戦争勃発後に、グリーンは「台湾はウクライナだ」という主張を展開していた。フロノイとグリーンが台湾を訪問したということは、台湾への武器売り込みや対中強硬姿勢の確認ということもあったと考えられる。こうした人物たちの暗躍によって、アジア地域における安全環境が乱されるのはどの国にとっても利益とはならない。

 しかしながら、現状のアメリカではアジア地域で戦争が起きてもきちんとした対応はできない。2つの戦争を支えるだけの力はない。そう考えると、本気でぶつかるということではなく、武器を売り込んでアメリカの軍需産業の利益を少しでも上げようということになるのだろう。

 中間選挙後にバイデン政権がどのような動きをするかということを注視する必要がある。

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アドヴァイザリー企業テネオ社がウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社買収間近となっている(Advisory Firm Teneo Near Deal to Buy WestExec Advisors

-合意によってテネオ社は地政学的、政策的コンサルタント業務へ専門分野を拡大することになるだろう。

カラ・ロンバルド筆

2022年6月7日

『ウォールストリート・ジャーナル』紙

https://www.wsj.com/articles/advisory-firm-teneo-near-deal-to-buy-westexec-advisors-11654644028

テネオ・ホールディングス・LLCTeneo Holdings LLC)は地政学および政策分野でのコンサルティングの焦点を拡大するアドヴァイザー企業の買収合意間近となっている。有名な広報企業テネオ社がこうした分野に拡大することになる。

テネオ社は、ワシントンD.C.に本社を置くウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社(WestExec Advisors)の株式の過半数を購入する契約を、早ければ水曜日に締結する可能性がある。この問題に詳しい関係者はこのように述べている。

およそ1年前、テネオ社の創業者であるデクラン・ケリーが、チャリティーイヴェントでの泥酔による不品行が報じられ、最終的に辞任したことで、テネオ社の将来は不安定な状態に陥っていた。

テネオ社は2021年に5億ドル近い売上を計上し、今年も約10%の成長を見込んでいると同社の関係者たちは述べている。従業員数は約600人増の約1500人で、増加分の約半分はイギリス・デロイト社リストラクチャリング事業を買収したことによるものだ。

ウエストエグゼク社はオバマ政権高官だったミッシェル・フロノイ(Michèle Flournoy)、セルジオ・アグリア(Sergio Aguirre)、ナイティン・チャッダ(Nitin Chadda)によって創設された。ウエストエグゼク社には約40名のスタッフがおり、貿易などの政策や地政学的な諸問題について、顧客の企業が理解し、ビジネス上の意思決定に役立てることを専門としている。特に、安全保障・防衛産業を専門としている。

テネオ社は2021年にウエストエグゼク社に対してマイノリティ投資(過半数の株式を所有しない投資)を行った。ウエストエグゼク社の社名は「ウエスト・エグゼクティヴ・アヴェニュー」から来ている。同社のウェブサイトによると、この通りは、ホワイトハウスの大統領執務室(ウエストウィング)に向かうための一般には閉鎖されている通りである。

テネオ社とウエストエグゼク社のような企業は、アメリカや世界の各企業に対して、舞台裏で影響力を発揮し、取締役会や経営幹部に対して事業戦略やコミュニケーションに関する指導を行っている。中国との緊張の高まりやロシアによるウクライナ戦争など、世界規模で予測すべき、そして対応すべき不安定な政治情勢が絶えない状況下で、こうした企業のサーヴィスに対する需要は高まっている。

広報会社サード・ヴァービネン社は最近、ライヴァルのフィンスブリー・グローヴァー・はーリング社と合併し、FGSグローバル社という大企業になった。

テネオ社は2011年にケリーがクリントン大統領時代のホワイトハウスに勤務したダグ・バンド、元コンサルティング会社のポール・ケアリー(現在は最高経営責任者)と共同で設立し、PR業界に参入した。テネオは、ゼネラル・エレクトリック社やコカ・コーラ社などの顧客企業に助言を行い、リスク・アドバイザリーからエグゼクティヴ・サーチに至るまで、あらゆる分野に焦点を当てた様々な部門を持つまでに成長した。

テネオ社の急成長は、同社にとって長年の「顔」であり続け、最大の利益を生み出す存在であったケリーが、2021年5月に慈善団体「グローバル・シティズン」が主催した有名人が参加したイヴェントで不適切な行動をとり、辞職したことによって脅かされることになった。ケリーは持ち株を売却してテネオ社とは無関係になり、その後、アメリカン・フットボールのスター選手トム・ブレイディをパートナーに迎えた新会社「コンセロ・LLC社」を創設した。

プライヴェート・イクィティ企業であるCVCキャピタル・パートナーズ社は2019年からテネオ社の最大株主となっている。

=====

●「バイデン米大統領が派遣する代表団、台湾に到着」

発信日: 2022/03/02

『タイワン・トルディ』紙

https://jp.taiwantoday.tw/news.php?unit=148,149,150,151,152&post=215628

アメリカのバイデン大統領の指示を受けた代表団が1日、専用機で台湾に到着した。マイケル・マレン元統合参謀本部議長(右から3人目)が率いる代表団で、メンバーはほかに、ミシェル・フロノイ元国防次官(右から2人目)、メーガン・オサリバン元大統領副補佐官(中央)、国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長を務めたマイケル・グリーン氏(右)とエバン・メデイロス氏(左から4人目)。空港では外交部の呉釗燮部長(右から4人目)が一行を出迎えた。(外交部)

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アメリカのバイデン大統領が派遣する代表団が1日、専用機で台湾に到着した。マイケル・マレン元統合参謀本部議長が率いる代表団で、メンバーはほかに、ミシェル・フロノイ元国防次官、メーガン・オサリバン元大統領副補佐官(国家安全保障担当)、それに国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長を務めたマイケル・グリーン氏とエバン・メデイロス氏。

外交部の呉釗燮部長(=外相)は1日午後、中華民国政府を代表し、松山空港(台湾北部・台北市)で一行を出迎えた。訪問団一行は2日まで台湾に滞在し、蔡英文総統、頼清徳副総統、行政院の蘇貞昌院長(=首相)、国防部の邱国正部長(=国防相)などと会見する。また、外交部の呉釗燮部長が昼に、蔡英文総統が夜に設宴して一行をもてなす。双方は、台米関係に係る重要な議題について意見を交換するとしている。

マレン氏は2007年から2011年にかけて米統合参謀本部議長を務めるなど、豊富な軍事経験を持つ。フロノイ氏は2014年と2015年の2回にわたり、新アメリカ安全保障センター(CNAS)の「NextGenプログラム(Next Generation National Security Leaders Program)」の訪問団を率いて台湾を訪れたことがある。オサリバン氏は現在、ハーバード大学で教鞭をとっているが、2004年から2007年まで、ブッシュ政権の国家安全保障会議(NSC)でイラク及びアフガン問題を担当した。グリーン氏とメデイロス氏はそれぞれ、ブッシュ政権とオバマ政権下で、国家安全保障会議(NSC)上級アジア部長を務め、台湾問題を担当した。いずれも何度か台湾を訪問したことがある。バイデン政権が台湾に派遣したこの訪問団は、民主党及び共和党に属する政府元高官から構成されており、米国が与野党を問わず台湾問題に関して高いコンセンサスを持っていることと、台湾への揺るぎない支持を見て取ることができる。

バイデン政権が代表団を台湾に派遣するのは、昨年4月のクリス・ドッド元上院議員以来、2回目のこと。外交部は1日に発表したニュースリリースで、「ウクライナ情勢が緊迫する中、バイデン政権が再び重量級の代表団を台湾に派遣したことは、米国の台湾に対する一貫した支持と重視と、米国の台湾に対する約束が『盤石(rock-solid)』であることを改めて示すものだ。マレン氏の訪台を通して、米国政府と緊密な協力を維持する方法を模索し、台米の緊密なパートナーシップを一層強化したい」と述べている。

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