古村治彦です。

 

 新年あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。


 この度、私の仲間であり、先輩である、下條竜夫博士の著書が発売となります。私は高校1年生で数学と理科で赤点を取り始めて以来、理科系に関しては並以下の知識しかありません。今回の本は下條さんが世の中で起きた自然科学に関する事件を分かりやすく説明されています。私は下條さんに何度も会ってお酒を飲んだり、話をしたりしていますが、いつも穏やかに、笑顔を湛えながら、私(たち)の馬鹿な質問にも答えてくれる方です。

 今回の本では、福島第一原発事故や福知山線脱線事故、小保方晴子氏の「STAP細胞」騒動、和歌山カレーヒ素混入事件などが取り上げられています。数字や数式、化学物質の名前などは、文科系の私(高校1年生の早い段階で理系科目は赤点の常連になりました)には難しく感じましたが、それでも書いてある内容は刺激的です。小保方さんの騒動やカレーヒ素混入事件は、物理学者(自然科学の訓練を受けた人)から見たら、そう見えて、世間の「常識」とは大きく違うことが「確かなこと」、もしくは「確からしい」のだということが分かります。


 そして、自然科学の研究や分析の結果は得てして、「文科系」の最たるものである政治や経済に捻じ曲げられたり、すり替えられたりして、うまく利用されるのだということも分かります。そして、「自然科学のお墨付き」を使って、私たちは騙されてしまうこともあるということも分かります。


 「すべてを疑え」とはよく言われることですが、日本で生まれ育ち、暗記型の学校教育を受けてしまっては、どうやっていいか分かりません。その時に、下條さんが提唱している「批判的思考(critical thinking、クリティカル・シンキング)」が役に立ちます。是非、手に取ってお読みください。宜しくお願い申し上げます。


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 是非、手に取ってお読みください。

 ※ウェブサイト「副島隆彦の学問道場」内の「今日のぼやき」でも宣伝をしております。こちらもお読みいただければ幸いです。http://snsi.jp/tops/kouhou/1872

 

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推薦文

                            副島隆彦

 

 下條竜夫(げじょうたつお)氏は、気鋭の物理学者(1964年生まれ)であり、大変優れた人である。私が主宰する副島国家戦略研究所(通称SNSI エスエヌエスアイ)の研究員を10年前からやってくださっている。私たちは政治評論や歴史研究をする、いわゆる文科系知識人の集まりである。その中にあって最先端の物理学を専攻している、純粋に理科系の下條氏に加わっていただいて大変感謝している。


 彼は私たちの発表している論文集に、すでに数多く寄稿している。地球温暖化という虚偽を暴いた本『エコロジーという洗脳 地球温暖化サギ、エコ利権を暴く』(成甲書房、2008年)で、二酸化炭素の増加は地球温暖化にはほとんど寄与していないことを証明した。


 下條君は公立大学の若手の准教授で、大学では「物理化学」なる高度な学問を教えている。彼は私たち文科系人間には理解できない難しい物理公式や数式が、すらすらと理解できる。しかも、この本で証明するとおり、彼は政治や思想などの文科系の知識と学問までも習得した。だから下條竜夫氏(現在51歳)は、この科学(サイエン)と政治(ポリティクス)の2つの学問を両輪にして大きな真実に迫ることができている。


 このことが、はっきりわかるのは第1、2章の「福島第一原発事故」の解明である。


 2011年3月11日に東日本大地震が起き、翌日から(正確には25時間後)福島で原発の爆発と放射能漏れが起きた。現地に行きもせず、遠くのほうから知ったかぶりをして、「放射能はコワイ」「子供たちが危ない」と騒いだ人々がたくさん出た。原子力工学と放射能医学の専門家の中にも、ごく少数であるが自然科学(ナチュラル・サイエンス)の正確な知識のふりをして、「危険だ、危険だ」と多くの虚偽を書いた人々がいる。


 私は、事故直後から弟子たちと現地(原発正門前)に入って放射線量を測定した。だから、あのとき放出された放射線量がどれくらい低いものであるかをはっきり知った。私は、あの後の国民的集団狂躁状態に、あきれ返った。その後も続いた怖いコワイの国民的、世界的な馬鹿騒ぎのことも腹の底から苦々しく思っている。


 福島の現地では、事故からやがて5年が経つが、赤ちゃん一人作業員一人誰も事故後の放射能のせいで発病している者はいない。「福島第1原発の事故の結果、日本でおよそ1600人が死亡した。この圧倒的大多数は避難がうまく行われなかったことと、ストレスに起因しており放射能が死因ではない」とニューヨーク・タイムズ紙(2015年9月21日付)は報じた。放射能をコワイコワイと煽(あお)って現地の人々を過剰に避難させたことで、人々にストレスがたまって死に至ったということだ。冷静に事実を現地で見て自分の脳(頭)で考えるということをすべきなのだ。

 

 原発事故のあのとき、日本で〝ショック・ドクトリン〟という政策が実行されたのである。『ショック・ドクトリン』とは、カナダ人の女性評論家のナオミ・クラインが書いた本の書名だ。2011年に岩波書店から日本語訳も出た。大災害や戦争、テロ事件などによって、国民大衆を、一瞬のうちに大きな恐怖に陥(おとしい)れ、ショックとパニックで、正常な判断力を国民から奪い取る。権力者、為政(いせい)者たちによる計画的な悪辣(あくらつ)なやり方だ。このことを、著者のナオミ・クラインは徹底的に暴いた。そのために原子力発電を過剰にコワがる言論と風潮が生まれる。そのことで電力(電気)をつくるコスト(費用)が異常に高くなった。


 これがショック・ドクトリンだ。大惨事を利用して一気に大量に政府が問題を解決するという戦略である。


 この「恐怖と扇動で国民を支配せよ」という手法の恐ろしい実験場が、福島原発の放射能漏れ事故を利用して日本でも実行されたのである。〝ショック・ドクトリン〟のために動転した日本国民は、コワイ、コワイと大騒ぎして、冷静な思考と判断力を失った。


 東大と東工大の原子力工学の専門学者たちは、日本の国策(こくさく)(国家政策)として育てられた人材だ。彼らは原発の製造から運転まで自分たちが行ってきたので、こんな微量の放射線量では誰にも被害が出ないし発病しない、とわかっていた。このことを早い時期に私は知った。ところが、その後、放射線医学の専門医師と、原子力工学の専門工学者たちのほとんどは、政府の命令で黙らされて鬱屈させられている。国民に真実を伝える術(すべ)を奪われた。


 だから、下條竜夫氏のような原発の製造管理の専門家ではないが、原子力工学も放射線物理も十分にわかっていて、しかも文科系の知識人としても話ができる人間が日本に出現したことを私たちは大きな喜びとする。理科系の本物の学者たちが、徹底的にわかりやすく事件や事故について説明しなければならない。そうでなければ福島の原発事故の真実はこれからも見えてこない。ここにこの本の価値がある。

 

 この本で特筆すべきは、第8章の仁科芳雄(にしなよしお)を扱った評伝だ。


 今こそ、〝日本の原爆の生みの親(まだだけど)〟の仁科芳雄(陸軍省委託。戦後のサイクロトロン実験も彼が主導した)の偉大さに日本国民の理解を求めなければいけない。下條氏は、ここに貴重な灯をともしてくれた。本当に頭脳明晰の日本人の理科系の人々であるならば、このことに気づいているはずだ。この仁科芳雄の復活、復権は今後、下條氏の功績となるだろう。


 敗戦後ひどい目にあった仁科芳雄(1951年死去)に私は非常に共感し同情した。仁科芳雄が、隼(はやぶさ)戦闘機を設計した日本ロケットの父、糸川英雄(いとかわひでお)と二人して、日本で一番頭がよかった科学者(ああ、科学者! という不思議なコトバ)だとずっと考えてきた。


 下條氏の仁科芳雄理解の土台は、「湯川秀樹と朝永振一郎は、仁科芳雄が、手塩にかけて育てた彼の忠実な弟子だ」である。彼ら二人は、戦後、アメリカ・ロックフェラー財団に尻尾を振って、パグウオッシュ会議に参加した。ここでアインシュタインという神格化された、相対性理論(そうたいせいりろん)という、何を言っているのか今も誰にも本当はわからない数式の山の理科系という宗教の大神官(グランド・マジシャン)の教徒になった。この二人の本当の先生は仁科芳雄だ。


 朝永振一郎も、湯川秀樹も、恩師である仁科芳雄のことを、戦後まったく書かなかった。自分の先生であり、自分たち二人を育てた仁科芳雄に対して、「戦争期の不都合なことは話さない」として。仁科が死んだときも追悼もしなかった。朝永振一郎と湯川秀樹は、パグウォッシュ会議で、アインシュタインとバートランド・ラッセルの子分になって、ぬくぬくと戦後世界で、「平和のための物理学」という、血塗られた過去を消し去る作業に加担した。


 仁科芳雄は本当に偉大だった。1925年に、コペンハーゲン大学で、ニールス・ボーアが、量子力学(クオンタム・フィジックス)を生み出し誕生させた。その記念すべき現場に若き理論物理学者として立ち会っている。デンマーク、ドイツ人物理学者たちの興奮の渦の中にいて、その激論の中に、たった一人、日本から仁科芳雄がいたのだ。


 今は、〝理研のワカメちゃん〟になってしまってお騒がせ事件を起こしたりしている。この理研(理化学研究所 りかがくけんきゅうじょ)という日本国の理科系の最高級の研究機関の闇の部分にも、そのうち、下條氏がきっと鋭く迫ってくれるだろう。理研は、アメリカからの監視がきついので、今はアメリカ様(さま)に屈服しているように見える。だが本当は、今でも、第三帝国(ダス・ドゥリテ・ラヒ! 嗚呼、偉大なるドイツ民族!)に、密かに忠誠を誓っているだろう。それは日本で最も優れた頭脳をもって生まれた理科系の人間たちの自然な運命である。

 

 宇宙物理学(スペイス・フィジックス)の分野にも、世界宇宙物理学界の体制派(アインシュタイン信奉者。その流れから出たビッグバン宇宙モデルの信奉者たち)に異議をとなえた優れた学者たちが世界中にたくさんいる。コンノケンイチ(1936〜2014)という人がいて、この国の基準では何の学歴もない人だったが、世界中の反アインシュタインや、反ビッグバン理論家たちの文献を懸命に丁寧に日本に紹介した。それを徳間書店が、「スピリチュアル本の中の一冊として」本にした。『ビッグバン理論は間違っていた』(1993年刊)という本である(現在は2011年にヒカルランドから文庫版で出ている)。90年代にものすごくよく売れた本だ。


 それに対する防御として、日本の宇宙物理学の体制派である佐藤勝彦(さとうかつひこ)氏や池内了(いけうちさとる)氏が反撃に出た。彼らは、体制、権力の側の学者であり、民衆、大衆を、「私たちが、おまえたちに教育と試験問題を与えるのだから、私たちが教えるとおりの答えを書きなさい。それ以外は、許しません」と強圧し威圧の態度をとる。池内了氏は『疑似(ぎじ)科学入門』(岩波新書、2008年)という本を出している。「私たちに逆らう者は、理科系の学者、研究者としてはろくな生活はおくらせない」という態度だ。それが支配、体制、権力というものだ。国民教育とか、メディア(報道機関)というのも国民洗脳の一種だ。これに反抗して大きな真実の指摘をする者たちは、何十年も何百年も抑えつけられ、苦しい思いをする。


 それでも大きな真実は、時間の経過とともに塗り壁の後ろから剥がれ落ちるように次第に明らかになる。権力(パウア)、支配(コントロール)、秩序(オーダー)よりも、事実(ファクト)と真実(トルース)そして、それを勇気を持って書いて、書物にして残す者たちのほうが、時間と時代の波に耐えて勝つ。下條竜夫氏は、第7章の「現代物理学は正しいのか」という文章で、このことにも風穴を開けてくれた。みなさん、読んでください。


 私が下條氏と話していて心底ビックリしたのは、「ビッグバン理論(宇宙膨張説)は、数学的には証明されているのです。だから私たち物理学者はそれに従うしかない。しかし天文学者(てんもんがくしゃ)たちによる観測(かんそく)と、実験からは何の証明もされていません」とのことだった。

 

 日本国で大切なのは、彼ら理科系の人々だ。ところがちっとも恵まれていない。


 理科系の中でも本当に大切なのは、理科系の学者たちではなく、理科系の技術者たちだ。理科系の技術者たちこそが日本の宝である。日本の製造業の大企業に、そういう優秀な技術者が、500万人くらいいるだろう。日本の繁栄はこの理科系の技術者たちのおかげだ。もっとハッキリ書くと、日本の先端技術は、工業高校や高専、そして聞いたこともないような地方の工業大学を卒業した技術屋(エンジニア、テクニシャン)たちがつくりあげたのだ。しかし、彼ら理科系の技術者たちも属国(ぞっこく)技術屋の集団でしかない。ほとんどが計算ロボットのようにされているかわいそうな人たちなのだと、最近、私は本当によくわかる。


 下條竜夫氏は、理科系の物理学者だが、技術屋(エンジニア)だ。実験屋(じっけんや)というらしい。その彼がなんとか、文科系の世界までもわかろうとして、こうして侵入、侵略してきて、文科系の世界にも風穴を開けようとしている。稀有な人である。世によくある本だが、理科系の学者が取り澄まして、文科系が主である一般書籍の読み手に向かって、高みからムズカしいことを講釈している本ではない。


 理科系と文科系という二つの世界をガッシリと繋ぐ人が、こうして出現して、文科系の人々の文の書き方までも必死で習得して書きあげた。この一点がこの本の本当のすばらしさだ。


 「理科系の世界の真実」がもっともっと、明らかにされなければならない。下條氏は、手始めにこの本でそれをやってくれた。しかし、まだまだ、もっと多くの隠された真実がある。彼が、私たちのために今後それらを明らかにしてくれることを、私は強く望みます。

 

  2015年12月                          副島隆彦

 

 

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目次

 

推薦文……… 副島隆彦

はじめに 

第1章 理科系の目からみた福島第一原発事故⑴

    福島第一原発事故の放射性物質放出量の過大評価とそのねらい

      日本がチェルノブイリと同じようになるという恐怖

      風評被害を拡大させた政府の発表

      報告されている数値から予測される放射性物質放出量

      実際に起きなかった健康被害

      高レベル放射性廃棄物最終処分場という原子力村の夢

第2章 理科系の目からみた福島第一原発事故⑵

    マスコミが伝えない原発事故の真実

      福島第一原発の1号機は電源車の電源をつないだために水素爆発を起こした

      3月15日に大量の放射性物質が放出されたのは

        班目委員長の指示によるものだろう

      官邸がSPEEDIの情報を出さなかった理由

      放射性廃棄物の最終処分場を探す

        行政法人NUMO(ニューモ)によってつくられた土壌汚染地図

      地上のセシウム量からがん罹患率を求めたトンデル氏は、

        すでに自分の論文が間違いであったことを認めている

第3章 福知山線脱線(尼崎JR脱線)事故は車両の軽量化が原因である

    理系の目から事件の真相を解明する

      カーブで転倒して脱線した電車は過去にない

      事件の概要と原因が特定されていった過程を追う

      〝なぜ転倒したか〟が書いてある本がある

      揺れて倒れやすかった事故車両

      情報が出てこないJRという会社

第4章 STAP細胞と小保方晴子氏について

    緑色に光る小さな細胞は本当に存在する

      リケジョの星の失墜

      理化学研究所という国の独立行政法人

      30歳の研究者は、ひとりでは、まともな英語論文は書けない

      確かに存在する緑に光る小さな細胞

      小保方晴子氏は天才実験家である

      STAP細胞の捏造は、小保方氏個人ではなく、若山研究室の問題である

      「常温核融合問題」と同じになるだろう論

第5章 和歌山毒カレー事件の犯人を林眞須美被告と特定した証拠は本物か?

    理科系の「科学的に証明された」ということばが、いつも正しいとは限らない

      事件の経緯

      蛍光X線分析法で何がわかったのか?

      鑑定結果に対する疑問点

      鑑定に異議をとなえた京都大学・河合潤教授

      【ふたりの論争内容その1】鑑定結果が意味するもの

      【ふたりの論争内容その2】犯人ではないことを証明した蛍光X線分析測定

      【ふたりの論争内容その3】谷口・早川鑑定について

      犯罪者である証明責任は、観察側にある

第6章 排出権取引に利用された地球温暖化問題

    科学では地球の未来はわからない

      地球温暖化や寒冷化は本当に起きているのか?

      クライメートゲート事件とホッケースティック曲線の捏造

      地球の二酸化炭素濃度が2倍になると気温は何度あがるか?

      では地球は寒冷化するのか?

      コンセンサスという名の世論誘導

      政治的には終わってしまった地球温暖化議論

第7章 現代物理学は本当に正しいのか?

    正しさの判定基準は、物理学の体系との整合性にある

      世に出回る数々の現代物理「否定」本

      マッハの科学哲学

      マッハの哲学を思想の歴史からひもといてみる

      現代物理学は、観測不可能のものを、実際に存在しているとみなしている

      数学的にだけ証明されている現代物理

第8章 仁科芳雄(にしなよしお)こそが「日本物理学の父」である

    政治的に葬られた日本の物理学の英雄をここに復活させる

      新庄尋常小学校の神童

      理化学研究所

      コペンハーゲン大学理論物理学研究所

      日本でただひとり量子力学を理解していた仁科芳雄

      サイクロトロンの建設と宇宙線の観測

      日本の原爆開発

      東京湾に捨てられた仁科芳雄のサイクロトロン

      戦後の仁科芳雄

      仁科芳雄の弟子たち




(終わり)


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