古村治彦です。
いよいよ本日2019年2月27日から明日にかけて、ヴェトナムのハノイでドナルド・トランプ米大統領と金正恩北朝鮮国務委員会委員長との2度目の首脳会談が行われます。何か具体的な成果、非核化に向けたロードマップが出るのかどうか不明ですが、期待は低いものです。ただ、こうして首脳会談が継続されているということは、その間は何事も起きない、というだけのことですが、それが重要なのでしょう。
北朝鮮の後ろには中国、更にはロシアがいるのですから、北朝鮮としては強気で出られますし、できるだけたくさんの好条件を獲得しようと駆け引きをしてくる、アメリカは攻撃をしないということを言ってしまっているので、なかなかうまくいかないということになります。トランプ大統領はWTOやNAFTAに関して、アメリカの交渉者たちが全くダメだったと批判してきましたが、アメリカは超大国であるがゆえに、交渉がうまくいかないということもあるのでしょう。
トランプ大統領は中国との交渉と同意の期限を3月1日にまでとし、それ以降は中国からの輸入品にかける関税率を10%から25%に引き上げるとしていましたが、この期限を延長しました。関税率を引き上げれば必然的に、中国からの輸入品を使ったアメリカで販売される物品の価格は上がります。そうなれば企業の売り上げは落ちるでしょうし、人々の不満が大きくなります。物価が上がらずに給料だけが上がる、物価上昇率よりも狭量の増加率の方が高い、というのが理想ですが、そうはうまくはいきません。
中国との貿易戦争は、1980年代の日本との貿易戦争の時のようにはうまくいきません。アメリカの属国である日本との貿易戦争は言ってみれば、最後は恫喝で解決が出来るものでしたが、中国に対しては、恫喝など効果はありません。
そうなると、アメリカにとって麻薬のような奥の手が出てきます。それは、独裁者に苦しむ人々を助ける、というものです。その対象が現在はヴェネズエラということになります。ヴェネズエラに対して強硬な姿勢を取り続けるとそれだけで称賛される、という状態で、アメリカは全く変わらない、学ばない、進歩がないと思わせられます。ここに社会主義に対する言葉を入れると完璧で、社会主義は20世紀に人々の支持を失い、アメリカ型のデモクラシーと資本主義が勝利したはずなのに、やっぱり困ったら社会主義攻撃を行うのです。今年の一般教書演説でも唐突に社会主義という言葉がトランプ大統領の口から出て来て、批判が展開されましたが、これがかえって、アメリカはよほど困っているんだろう、アメリカ国内に社会主義を求める声(その内容は他の先進諸国で既に導入されているもの)が大きくなっているんだろうということを印象付けてしまうものでした。
トランプ大統領は国内政治でうまくいっていないので、外交面で成果を出す、中国との交渉がうまくいけば経済も上向くということになります。しかし、それは逆に見れば、中国に譲ってもらって成立するもので、アメリカの国力と威信の低下を印象付けるものです。
(貼り付けはじめ)
トランプ大統領は外交政策に目を向けさせようと新たな動きを起こしている(Trump
seeks new momentum with pivot to foreign policy)
ブレット・サミュエルズ筆
2019年2月21日
『ザ・ヒル』誌
トランプ大統領は自身の任期の中で最も厳しい状況に陥っているが、これからの数週間で外交政策の面で新たな動きを起こし、好意的な報道がなされるように仕向けるための機会がやってくる。
トランプ大統領は来週北朝鮮の最高指導者金正恩と会談を持つ予定となっている。これは昨年6月にシンガポールで開催された金委員長との歴史的な会談に続くもので、シンガポールでの米朝首脳会談はトランプ大統領にとって大統領在任中のハイライトとなるものだ。
それとは別に、トランプは中国との貿易交渉で合意するための期限である3月1日に直面している。これがうまくいかなければ中国からの輸入にかける関税を大幅に引き上げることになる。現在、米中間の緊張は高まるという危険な状態が続いている。別の局面では、ヴェネズエラ政府が西側からの支援物資の国内受け入れを禁止しているが、トランプ大統領はこれを止めさせようと圧力をかけている。ホワイトハウスは国際舞台でヴェネズエラに対する攻勢を強めている。
報道の対象が変化することはトランプ大統領にとっては歓迎すべきことである。国内状況に目を向けてみれば、2019年という年は政府機能の一部閉鎖が続いている状況で始まり、そのために一般教書演説の実施も遅れ、大統領に対する支持率も低下してしまった。
一週間前、トランプ大統領は国境地帯に関する非常事態宣言をめぐる争いを終結させたが、それは政治的な後代を印象付け、共和党内の分裂をもたらした。トランプは国境の壁建設のために連邦議会に要求していた予算額の一部しか獲得できなかった。そこで更に予算を獲得するために非常事態宣言を行った。非常事態宣言をめぐる争いは法廷に持ち込まれようとしている。
トランプ大統領は連邦議会、特に民主党が過半数を握っている連邦下院によって動きを封じられてしまっている。そうした中で、外交政策に関してはより自由にできる行動範囲が遺されている。まずは2019年2月27日と28日にヴェトナムのハノイで金委員長との2度目の首脳会談がそれである。
トランプ大統領は首脳会談について自信を示しているが、何が期待できるかを具体的に述べている訳ではない。昨年のシンガポールでの首脳会談の後に具体的な進展はほぼなかった。トランプ大統領は、今回の会談の成功について昨年の会談の時と同じ内容を挙げている。
水曜日、トランプ大統領はオーストリア首相との会談を行い、その中で記者団に対して次のように述べた。「私たちは金委員長と2日間にわたって会談を持つ。私たちは多くの成果を上げることが出来ると考えている。私たちは最初の会談をうまくスタートさせることが出来た。その線に沿って会談を継続させることが出来ると思う。今回が最後の会談になるということはないし、私たちの間の関係は強固だと考えている」。
この前日、トランプ大統領は記者団に対して、最終目標は朝鮮半島の非核化であるが、その実現を「急がない」と述べた。
「アームズ・コントロール・アソシエーション」の上級部長ダリル・キンボールは、来週の会談で非核化に向けたより具体的なロードマップが出てくるようにする必要があると述べている。
キンボールは次のように述べた。「北朝鮮のミサイル開発プログラムの停止と放棄のための外交的な合意が形成される機会は永遠に存在し続ける訳ではない。今回の会談は、トランプ大統領が二国間の進む方向を正しいものへと設定するための最後のそして最良の機会となるだろう」。
朝鮮半島の非核化というトランプ大統領の目標は彼の政権第一期目の中間で具体的に姿を現したもので、貿易に関する合意内容を改善するという公約は選挙戦の時期に既に発表していたものであった。
米中両国は3月1日までに包括的な貿易に関する合意に達しなければ、中国からアメリカへの輸入品に欠ける関税を10%から25%に引き上げることになる。しかし、多くのことをなすためには残された時間が少なすぎる。特に、トランプ大統領は合意に署名する段階になる前に中国の習近平国家主席と会談を行いたいという主張を行っているが、これは難しい。
トランプ大統領はここ数週間、最終的な合意に達するという楽観的な姿勢を保ってきた。両国の交渉者たちは木曜日にワシントンDCで会談を持つ予定になっている。大統領はまた、交渉の期限を延長しても良いという考えも示唆している。火曜日には3月1日の期限は「絶対的なものではない」と発言した。
トランプ大統領の非公式の経済アドヴァイザーであり、ヘリテージ財団の上級研究員も務めているスティーヴン・ムーアは本誌の取材に対して、中国との合意に成功することは、トランプ大統領が選挙公約を果たすことであり、それによって経済に対する人々の信頼を高め、結果として2020年の米大統領選挙での勝利をもたらすだろうと述べた。
本誌に論説を寄稿しているムーアは「中国との貿易交渉はトランプ大統領が大統領になるにあたって最もこだわっているものだ」と述べた。
ムーアは更に、「中国との貿易交渉をうまく行い、合意に達したら、それ以外のこともうまくいくと思う」とも述べている。
トランプ大統領は中国と北朝鮮については注意深く待ち、観察をしなければならない。一方、ヴェネズエラに対する姿勢に関しては超党派の称賛を集めている。トランプ大統領は、反政府派の指導者フアン・グアイドをヴェネズエラの正統な指導者だと認め、ニコラス・マドゥロ大統領を辞任させようと圧力をかけている。
トランプ大統領は月曜日、舞網市内で演説を行い、その中で社会主義を非難し、マドゥロに対して権力に拘泥しないようにと警告を発した。
トランプ大統領は「私たちは権力の平和的な移行を求めているが、全ての手段を有している」と述べた。
マドゥロが国境を閉鎖している状況で、いつ、どのようにして食料や医薬品をヴェネズエラ国内に運び入れることが出来るのかは明確になっていない。しかし、トランプ大統領の強硬な姿勢は国内外で多くの支持を集めている。
コロンビア大統領イヴァン・ドゥケは、ヴェネズエラ国内でグアイドを支持する諸勢力の結集が進んでいることを称賛し、アメリカをはじめとする諸外国がヴェネズエラに対して人道援助をする際に、コロンビアがそうした援助物資を受け取り、ヴェネズエラに仲介、つなぐことを約束した。
ドゥケ大統領は先週ホワイトハウスを訪問し、その際、次のように述べた。「ヴェネズエラ国民に悪影響を及ぼしている暴力的な独裁政治を終わらせるために協力したいと思う。外交上の封鎖策はこれまでにないほどの成果を上げていることを嬉しく思う。ヴェネズエラの独裁政治の残された日はほぼないと私は考えている」。
(貼り付け終わり)
(終わり)
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