古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:国民投票

 古村治彦です。

 

 今回は、Unionという言葉の意味について考えてみたいと思います。Unionを辞書で調べてみれば、結合、団結、連合といった意味が書かれています。

 

 私たちが知っている使い方では、労働組合はlabor unionがあります。これは労働者が団結して、労働に関する権利を守り、団体交渉を行うためのものです。最近、イギリスで国民投票が行われ、イギリスが脱退することが決まったのが、ヨーロッパ連合ですが、これはEuropean UnionEU)です。

 

Unionの動詞がUniteです。団結する、連合するという意味になります。50ある州(state)が連合している国です。イギリスは、United KingdomUK)です。イギリスの正式名称は「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」です。ブリテン島にあるイングランド、ウェールズ、スコットランド、そして、アイルランド島の北部が連合して王国を形成しています。私はラグビーが好きですが、古くはファイヴ・ネイションズ、今はシックス・ネイションズという、ラグビーの6カ国対抗戦があります。これに「イギリス」ティームは参加していません。イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、フランス、イタリアが参加して、ホームアンドアウェイ方式で戦います。

 

イギリスの国民投票で興味深かったのは、投票の結果に地域差があって、スコットランド、北アイルランド、大都市ロンドンではEU残留が大勢を占め、ロンドンを除くイングランドとウェールズはEU脱退が大勢を占めたことです。そして、スコットランドでは、スコットランドだけはEUに残留できるようにしたいという動きになっています。「イギリスって昔連合王国って習ったけど、実際にそうなんだなぁ」と改めて思いました。

 

 国際連合はUnited Nationsです。これは中国では「聯合國」となります。第二次世界大戦時に、枢軸国(Axis)と戦った連合国(Allied Powers)が戦後の枠組みとして、自分たちを常任理事国として作った組織ですから、「連合国」と訳すべきですが、今は世界のほとんどの国々が参加していますから、諸国連合ということになります。

 

 アメリカ合衆国はUnited States of AmericaUSA)です。これは全米50州(state)が連合した国ということです。独立した時は13州でしたが、それがどんどん拡大していきました。Stateという言葉は、国家を意味することもあります。全米各州には外交権と通貨発行権はありませんが、州兵(national guard)はいますし、ほぼ国のような機能があります。カリフォルニア州の州旗には、「Republic of California」と書かれています。

 

 アメリカ合衆国のUnionが崩れそうになったことがあります。それが1861年から1865年にかけて起きた南北戦争です。南北戦争といいますが、英語では、The Civil Warで、「内戦」という意味になります。Theがつきますので、特別な、これからもないであろうというくらいのことになります。アメリカが、北部各州のアメリカ合衆国と南部各州のアメリカ連邦(Confederate States of America)に分かれて戦いました。

 

 アメリカ史上最高の大統領は誰か、という質問があると、いつも一番になるのが、エイブラハム・リンカーンです。日本でも奴隷解放を行い、「人民の、人民による、人民のための政府」という言葉を残した人物として有名です。しかし、彼がアメリカ史上最高の大統領と言われているのは、アメリカの分裂を阻止することが出来たからです。これは、故小室直樹博士の著作に繰り返し書かれていたことです。

 

 アメリカで毎年1月に大統領がアメリカ連邦議会で演説を行いますが、これを一般教書演説と言いますが、英語では、State of the Union Addressと言います。State of the Unionというのは、「連邦国家(United States)であるアメリカの現状(state)」を述べるものであり、The Unionとはアメリカを示す言葉です。元々は大統領が演説をするということはありませんでした。アメリカ大統領は連邦議会への出席は認められていません。ですから、教書(message)を議会に送付して、アメリカの現状を報告するということになっていました。それが20世紀になって連邦上院と下院の議員たちと行政府、立法府の最高幹部たちが集まって、その前で演説するという一大イヴェントになっています。この時は、全米のテレビやラジオはほぼ全て生中継します。

 

 私がなぜこんなにUnionという言葉にこだわって文章を始めたかというと、United KingdomEuropean UnionUnited Statesで、Unionが崩れていく状況になっているからです。簡単に言うと、分離や反目、亀裂に敵対が蔓延する状況になっています。EUは、「20世紀前半に2度もヨーロッパを破壊し尽くした戦争を再び起こさないためにも、ヨーロッパが1つになるべき」という理念のもとに20世紀後半をかけて作られたものです。

 理念と裏腹にある現実は、「何かあれば対外膨張主義に陥りやすいドイツを抑える」というものでしたが、今や
EUはドイツを中心に回っています。イギリスはEUの主要なメンバーですが、ドイツやフランスほどの存在感がありません。そうした中で、「EUなんかにいてもいいことないし、かえっておカネを取られて、嫌なこと(移民の流入)はやらされる」という感情がイギリス国内にあり、大接戦ではありましたが、イギリスはEuropean Unionから脱退することになりました。


 もっと言えば、ナチス時代に既にドイツは「ひとつのヨーロッパ」という構想を立てていました。EUはその現代版ですが、ナチスの考えたヨーロッパ連合は、ヨーロッパ諸国がドイツに奉仕するための構造(日本の大東亜共栄圏とよく似ています)ですが、今は、名目上はそうではありませんが、現実はドイツを盟主にしている構造になっています。
 

 先ほども書きましたが、興味深いことに、イギリスの国民投票では、地域差がはっきり出ました。スコットランド、北アイルランド、ロンドン大都市部ではEU残留が多く、ウェールズとロンドンを除くイングランドはEU脱退が多くなりました。そして、スコットランドはEU残留を求めて独自に動こうという動きが出ています。ここでUnionが崩れそうな動きになっています。スコットランドでは以前に、連合王国から脱退するかどうかで住民投票があって僅差で否決されていますが、こうした動きも再び活発化するでしょう。連合王国の一部が脱落するということになります。Unionが壊れるかもしれないということです。

 

 アメリカではこのように州で分離独立の動きはありませんが、以前、このブログでもご紹介しましたが、カリフォルニア州南部、ロサンゼルスからさらに50キロほど南にあり、ディズニーワールドがあるアナハイムを中心とした地域で、「カリフォルニア州から離れて、アリゾナ州に入りたい」という動きが起きて、住民投票がありました。カリフォルニア州から離れたいと主張した人々の理由は、「カリフォルニア州はリベラルな政策ばかりだ。そのために税金が高い。自分たちは保守的な考えを持っている。年収も高い分、税金をたくさん取られて嫌だ。だから、保守的なアリゾナ州に入りたい」というものでした。

 

 アメリカでは、共和党と民主党が強い、レッド・ステイトとブルー・ステイトと呼ばれる州に分かれています。レッド・ステイトは共和党(イメージカラーが赤)、ブルー・ステイトは民主党(イメージカラーが青)が強いです。これが顕著に出るのが大統領選挙です。アメリカ南部から中西部にかけてはレッド・ステイト、西海岸、東海岸の大都市がある州はブルー・ステイトとなっています。もちろんそれぞれには反対の考えを持つ人々も多く住んでいますが、大勢ではこのようになっており、「アメリカの(イデオロギー上の)分裂」が語られます。ですから、2000年以降のアメリカの大統領選挙では、勝者も敗者も「分裂ではなく、団結を」という演説を行っています。また、オバマ大統領が無名の存在から飛び出してきたのは、「アメリカは、アフリカ系、アジア系、などに分裂しているのではなく、United States of Americaなのだ」という演説をして注目されるようになってからです。

 

 しかし、アメリカの政治家たちがアメリカ国民のUnionを強調するのは、現実では様々な亀裂が入っていることを示しています。著名な政治学者であった故サミュエル・ハンティントンは、最後の著書『分断されるアメリカ』の中で、「アメリカはホワイト・アングロサクソン・プロテスタント(White Anglo-Saxon Protestant)の国なのだ」ということを書きました。そして、文化相対主義(移民してきた人々の元々の文化や伝統を尊重する)を批判しました。それは、「アメリカがアメリカではなくなる」という危機感でした。アメリカで人口が増えているのは、ヒスパニック系やアジア系です。白人(白人の中でも区別があって、イタリア系やアイルランド系、ポーランド系はカトリック教徒が多いということあって非WASPということで差別されました)の人口に占める割合はどんどん小さくなっています。恐らく過半数を割っているでしょう。

 

 私が小さい頃は、アメリカは「人種のるつぼ(melting pot)だ」と習いました。これは、どんな人種の人でも、アメリカ人になるのだということでしたが、今は、アメリカは「サラダボウル(salad bowl)だ」ということになっています。レタス、トマト、きゅうりとそれぞれ違う野菜が一つのサラダを形成するので、それらが溶け合って姿を消してスープになるのではなく、個性を主張するのだということになっています。

 

非白人の人たちが身体的に肌の色を変えることはできませんし、そんなことは全くもって何も要求しないが、アングロサクソン・プロテスタントの文化やそれを基礎にした制度(今のアメリカの政治や経済、社会制度)を受け入れることを、アメリカ白人は求めています。ですが、良く考えてみると、非白人の人たちは何もアメリカの政治、経済、社会制度を乱そうとしている人などほとんどいません。それどころか、デモクラシーや三権分立は素晴らしいし、世界に誇れることだと思っています。

 

 だから、「制度や文化を身に着けてほしいだけ」という綺麗ごとをはぎ取ると、「自分たちの分からない言葉で書かれた看板が街中にあることや、自分たちの分からない言葉で、大声で会話することを止めて欲しい、それはとても恐いことだから」ということになります。フランス語やドイツ語、スペイン語であればまだアルファベットですし、同じ単語を使っていたり、類推できる言葉があったりで、まだ許容できるが、アラビア語や漢字、ハングルで書かれたものが街中にあるのは怖いことです。自分たちが理解できないものが身近にあることで誰でも違和感を持ちます。それは当然のことです。

 

 そして、そういう自分たちの分からない言葉を使い、身近ではない文化を持っていて、それを手放そうとしない人たち、に対する反感が出てきます。それがアメリカとイギリスで起きていることの原因です。「分かり合いましょう」といくら口で言っても、あまり意味はありません。怖いと思っている方がわざわざ近づこうとはしませんし、思われている方は、思われている方同士で固まってしまいます。そして、敵対してしまう、分裂してしまうということになります。

 

 国家という枠組みが近代から現代にかけて出来ました。国家は国民がいて、国境線があって(国土があって)、政府があって成立します。そうした国家同士が戦争をしないようということで、20世紀には国際連盟(League of Nations)が作られ、戦後は国際連合が作られました。また、地域的な結合で言えば、ヨーロッパ連合ということになります。

 

 近代は、ナショナリズム(Nationalism)を基盤とした国民国家を生み出しました。そして、国家を超えるためのグローバリズム(Globalism)を基礎にして国際機関を生み出し、かつ人間や資本の移動の自由を追求しました。EUはその中間にあるリージョナリズム(Regionalism)の産物と言えるでしょう。

 

 ナショナリズムは加熱すすると他国との摩擦を生み出し、それが戦争にまで結びつくという考えから、国家を超える機関の存在が考えられるようになりました。

 

 現在、アメリカとイギリスで起きていることは、国民国家に大きな亀裂を生み出しています。保守とリベラルというイデオロギー上の亀裂はこれまでもありましたが、ナショナリズムと排外主義・差別主義が結びつくことで、ナショナリズムが変質してしまい、攻撃的・後ろ向きの面が強調されることで、それを支持する人とそうではない人で国が分裂しかねない状況になっています。アメリカで言えば、レッド・ステイトとブルー・ステイトの存在、イギリスで言えば、連合王国からの脱退を考えるスコットランドといった存在です。

 

 そして、こうしたナショナリズムの変質をもたらしたのは、グローバリズムとリージョナリズムの深化です。グローバリズムとリージョナリズムによって、人の資本の移動は自由になり、活発になることで利益を得られる人とそうではない人が出てきます。パナマ文書事件が起き、「大金持ちは支払うべき税金を逃れる手段を色々と持っており、それを利用してずるい、不公平だ」ということになりました。また、移民がやってきて、安い賃金できつい労働をやることで、自分たちに仕事が回ってこないという不満も高まりました。

 

 このような社会・経済・政治不安から、既存の枠組みに対する不信が出てくる、そういう時に、歯切れの良い言葉で自分たちの「敵」を教えてくれる人を指導者に仰ぎたくなる、その人に任せて自分たちの不安を解消したいという思いが出てきます。それを掴んだのがヒトラー(彼はユダヤ人が元凶だと言いました)であり、イギリスのEU脱退派のリーダーたち(彼らはEUと移民が悪いと言いました)であり、トランプ(不法移民とイスラム過激派とヒラリーこそが彼の言う敵です)です。

 自由主義の考えからすると、国家とは構成する個人の利益を追求するためのものですが、同時に、相互扶助ということも重要な要素となります。人間社会においては、どうしても能力の差(いわゆる頭がいいとか悪いとか、体の機能の差)が出ます。それを全て埋めて平等にすることはできません。しかし、最低限の生存(日本国憲法にある「健康で文化的な最低限度の生活」)は保障することが近代の成果です。そして、そのための機能として国家がリヴァイアサンではあるが、その必要悪として受け入れて、出来るだけ悪いことをさせずに構成する個人の利益に資するようにすることが政治家の役目です。その枠組みが崩れそうになっているのが世界各地で見られる現象から分かる現状であると思います。

 強いリーダーたちに任せてみたい、そして大きな変革をして欲しいというのはこれまでも起きたことですし、これからも起きるでしょう。しかし、実際には、何も大きな変革、革命などは起きません。革命が起きれば新たな抑圧と不満が出てくるだけです。ですから、今ある枠組みを、まるで古ぼけた、故障がちのエンジンを修理しながら車をのろのろと走らせながら、道を進んでいくことしかありません。毎日、ぶつぶつと愚痴を言いながら進んでいくしかありません。その最低限の枠組みが、現在は国家であり、民主的な政治制度ということになります。そして、これらを担保するunionを何とか保っていけるようにするしかありません。 

 

(終わり)





 
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ダニエル・シュルマン
講談社
2015-09-09


アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




 

 古村治彦です。

 

 2015年7月5日の日曜日、ギリシアで国民投票が行われました。EUなどの債権者側がギリシアに緊縮財政(年金のカットと増税、国防費の削減)を求め、これに対して、債務者側のギリシアのツィプラス首相が交渉を打ち切り、この債権者側の要求に「イエス」か、「ノー」かを国民に選んでもらうことになりました。結果は「ノー」が多数を占めました。ギリシア国民は債権者側からの要求を拒否しました。ツィプラス首相はこの民意を後ろ盾にして、再交渉をする意向です。

 

 この国民投票の結果を受けて、ギリシアの各銀行に対する支援が打ち切られて経済が麻痺してしまうという懸念から、ギリシアのユーロからの離脱、更にはEUの崩壊という話まで飛び出しています。ツィプラス首相はギリシアがユーロからもEUからも離脱することはなく、債務に関する交渉とそういった問題とは全く別だとしています。

 

 個人と国家とは違うと言われるかもしれませんが、個人が借金をして返せなくなったら、裁判所に行って自己破産をします。債権者側と話し合いをして、「ここまでなら返せる」とか「こんな仕事をしてどれだけの収入を得るので、返済にはこれだけ回せる」という話をして、何とか重たい借金から逃れることになります。その代り、信用はないのですから、新たに借金をすることはできませんし、他にも制限がかかることがあります。信用を失うことは個人として最大のペナルティとなります。

 

 ギリシア側の言い分は、「ドイツは調子が良い時はホイホイとギリシアの身の丈に合わないほどの金額を貸したではないか」「ギリシアがオリンピックの準備で財政を拡大(借金を重ねた)した時、ドイツの製品を色々と買ってやって、それでドイツは潤ったではないか」ということです。ドイツ人たちは「ギリシア人は働きもせずに苦労もせず、借金をしてもあっけらかんとしている」と馬鹿にしつつ非難しています。

 

 2020年に東京でオリンピック・パラリンピック、その前年の2019年には同じく東京でラグビーのワールドカップを開催する日本としては、新国立競技場やスポーツ施設のその後の使われ方と管理費が心配です。ギリシアのようにはならないと思いますが、一時の好景気の後に来る不況でそうした負担が重くのしかかってくることは、今から気分を重くさせる課題です。

 

 ギリシアは人口1000万程度(首都アテネに300万人が住んでいる)で、大した産業(製造業)はありません。輸入が輸出よりも多く、その足りない分は、観光と出稼ぎに行ったギリシア人の送金で埋めているという感じです。お金になりそうな海運と石油・化学製品の輸出も世界的な景気後退でそこまで儲からないようです。ですから、「ギリシア人は昼寝ばかりしている」といくら言ってみても、もともと産業と呼べるようなものはなく、海運と観光で食べていくだけの小さな国であったのに、身の丈に合わない借金を「してしまった」いや、「させられてしまった」と言うことが出来るでしょう。

 

 現在、EUでは頭文字でPIGSと呼ばれる国々が債務危機に陥る危険性を持っていると言われています。ポルトガル、イタリア、ギリシア、スペインです。これにアイルランド(Ireland)を入れる場合もあります。これらの国々はまた、「ヨーロッパ周縁諸国(European Periphery)」とも呼ばれています。このperipheryは、「周縁」とか「辺境」などと訳されます。これに対置する言葉がcoreで「中心」とか「中核」と訳されます。こうした言葉づかいを見ると、私はイマニュエル・ウォーラスティンの「世界システム論」を思い出します。ウォーラスティンについては拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)でも書きましたが、世界経済の分析では今でも有効性を持っていると思います。もちろん、西洋中心主義的であり、現在のグローバル・ヒストリー(世界史)の流れからは批判は多いと思いますが。

 

 EU(ヨーロッパ連合)はヨーロッパを1つにまとめ、ヨーロッパ人を生み出すことを理想としました。しかし、現実は経済力(工業生産力や資本力)が高い国々がそうではない国々に国内の資本を「輸出」し、実は支配・被支配関係、従属関係になっているのではないかと思います。今回のギリシア危機はそうした矛盾が露わになったのではないかと思います。こうした観点からみると、ウラジミール・レーニンの『帝国主義』もまた分析の一助になるのではないかと思います。

 

 ギリシア国民の債権者からの提案に対する「ノー」は、EU中核であるドイツの「帝国主義」に対する大きな反発だったのだろうと思います。

 

 EUの目的は1つのヨーロッパを作ることで、その根幹にあるのは「ヨーロッパ全土を焦土とする大戦争は二度と起こさせない」という考えであり、「ドイツ問題(近代のヨーロッパの大戦争はドイツの膨張に伴って起きた)を解決しなければならない」という考えでもあります。この根幹があるために、EU運動の中心となったフランスなどの国々は、EUを崩す訳にはいきません。ですから、こうした国々は、ギリシアに対しても、ドイツに比べて温和な態度を取ることになります。

 

 ギリシアがユーロから離脱し、EUが崩れていくという予想もあるとは思いますが、「お金で解決できることはお金で解決」というのが世間の知恵です。市場の動きなどを見ていても、そこまで大事にはならないで、ある程度の所で収まるのだろうと思われているようです。EUもユーロも何とかこのまま続いていくのでしょう。しかし、今のままではどん詰まりのジリ貧です。そこで、ユーラシア連合でユーラシアの端にある中国とアジアにつながって経済成長の恩恵、おこぼれをあずかろうとするでしょう。昔であればアメリカが助けたでしょうが、アメリカ自身もアジアのおこぼれにあずかろうとし、太平洋をブロック化しようとしています。何か大きな変動が起きている、そのように感じています。

 

(終わり)








野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


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ダニエル・シュルマン
講談社
2015-09-09



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




ギリシアの国民投票に対する投資家のためのガイド(An Investor’s Guide to the Greek Referendum

―ギリシア救済

 

アシュリー・キンダーガン筆

2015年6月30日

『ザ・ファイナンシャリスト』誌

https://www.thefinancialist.com/an-investors-guide-to-the-greek-referendum/?utm_source=taboola&utm_term=foreignpolicy&utm_campaign=Global

 

 ギリシアとヨーロッパ通貨連合の未来について知りたい人たちにとって、2015年7月5日のギリシアの国民投票が最も明確なヒントとなる。7月5日の日曜日、ギリシアの有権者たちは、ギリシア救済プログラムの延長のためにヨーロッパ各国のそして世界中の債権者たちが示した最新の提案について賛成もしくは反対の投票をすることになる。クレディ・スイス銀行の複数のアナリストたちの分析によると、国民投票は、ギリシアがユーロ圏に留まるかどうかを決める投票となる、ということだ。

 

 ギリシア首相アレクシス・ツィプラスは、年金の削減と増税を含む最新の提案を拒絶した。その結果、ギリシアとヨーロッパ各国政府の幹部たちの交渉はここ数週間開かれないことになった。ギリシア議会はツィプラスの提案を受け入れて、債権者たちからの提案についての国民投票を行うことを認めた。ギリシア政府は、有権者たちに対して「ノー」に投票するように訴えている。

 

 ヨーロッパ中央銀行は、現在ギリシアの各銀行に行っている1日900億ユーロの緊急融資に対して制限をかけると発表した。この資本注入によって、ギリシアの各銀行はここ数週間の間に預金者たちが預金の引き出しに殺到してきても何とか対応し、業務を続けることができた。預金引き出しの要求が高まっていく中で、ギリシアの各銀行は6月29日に業務を停止し、国民投票が終わるまで閉店するということになった。

 

 金融市場は、市場参加者たちがギリシアは2015年6月30日の国債通貨基金(IMF)からの借り入れ15億ユーロの償還期限までに支払いをできないだろうと考えて行動しているこの動きを反映している。月曜日、ユーロ・ストックス・50・エクイティ・インデックスは約4.3%の下落を記録した。確定利付き債券投資を行っている投資家たちは安全な投資先へ殺到した。10年物のドイツ国債の金利は0.09%下落して0.92%になり、10年物のアメリカ国債の金利は0.16%下落して2.33%になった。スペイン国債の金利は0.24%上昇して2.35%になった。ギリシア問題がヨーロッパの別の辺境に広がることを投資家たちは懸念している。

 

 ギリシア政府の訴えにもかかわらず、国民投票の結果は「イエス」となるだろう、とクレディ・スイス銀行プライヴェートバンキング・アンド・ウェルスマネイジメント部門は分析している。その1つの証拠として世論調査の結果がある。国民投票が行われると正式発表が行われる前に実施されたある世論調査では、57%のギリシア人が救済計画提案を支持していた。クレディ・スイス銀行のアナリストたちは、1日60ユーロの引き出しのために長い列を作っている人々は、何が自分たちの利益となるかを良く分かっていると見ている。

 

 しかし、2015年7月5日まではギリシアに対する救済計画は有効であって、これが意味するところは、それ以降はギリシアは債権者たちと全く新しい合意を結ばねばならないということだ。ツィプラスは国民投票で救済計画に対してイエスが多数を占めた場合は辞任すると明言している。クレディ・スイス銀行のアナリストたちは、ユーロ圏維持派が連立を組んで、政権を握ることになると見ている。そして、彼らがヨーロッパ各国の高官たちとIMFと新たに交渉を始め、救済計画の2年から3年の延長に合意し、ツィプラスが拒絶した諸改革を実行することになるだろうと見ている。

 

 しかし、ギリシアの有権者たちが、自分たちが選挙で選んだ指導者たちの言うことを聞いて、「ノー」と答えたらどうなるだろうか?そうなると、ギリシアがヨーロッパ中央銀行に対して債務の借り替えを行うことも再交渉を行うことも大変困難になる。2015年7月20日が、ヨーロッパ中央銀行が持つ35億ユーロ分のギリシア国債の償還期限だ。この国債が支払い不履行に陥ると、ヨーロッパ中央銀行はギリシアの各銀行に行ってきた緊急支援を全て打ち切ることになり、ギリシアは債務超過状態になる。ギリシアを何とか動かしていたヨーロッパからの支援と国際債券市場から切り離された場合、ギリシアは自国で通過を発行しなくてはならなくなり、それはユーロからの離脱の決定的な一歩となる。

 

 ギリシアの経済規模はユーロ圏の2%を占めるほどの小ささではある。しかし、通貨連合からの離脱によってヨーロッパは長期にわたるリスクを抱え込むことになるとクレディ・スイス銀行のアナリストは見ている。「一国のユーロから離脱を“終わりの始まり”だと市場は受け取るだろう」とクレディ・スイス銀行のアナリストたちは2015年6月28日に発表した報告書の中で書いている。しかし、彼らはまた、ヨーロッパ中央銀行が追加的な量的緩和か各銀行に対する低金利の貸付を行うことで、イタリアやスペインのような辺境国家に十分な流動性を保証する手段を取るだろうとも述べている。

 

 決定が先送りされることで、市場はリスクから脱した雰囲気になる。クレディ・スイス銀行は、確定利付き債券投資を行っている投資家たちは政府債券、国債、スイス政府債券に群れを成して向かい、通貨に投資している人々は、米ドル、英ポンド、日本円に向かうだろうと見ている。ドイツ債券とヨーロッパ辺境各国の債券との間の差はこれまでになく大きくなる。

 

 何はともあれ、アナリストたちは、投資家たちはヨーロッパ各国の株価は下落するものと考えているだろうと見ている。ギリシアの国民投票で救済プランへの支持が多数を占めた場合、ギリシア各国の株価、特にギリシアとヨーロッパ辺境各国の株価は急上昇するとクレディ・スイス銀行は見ている。もし「ノー」となっても、ヨーロッパ中央銀行がその影響が拡大しないように素早く動いたら株価が暴落することはないとクレディ・スイス銀行は見ている。ユーロは弱くなり、それによってドイツの輸出業者たちは利益を得る。投資家たちはギリシアの動向を注視している。彼らは心配をしながらも、機会をうまく利用して利益を出すようにする必要がある。

 

(終わり)





野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23



 

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