古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。よろしくお願いします。

タグ:国際決済銀行








 

 古村治彦です。

 

 2015年12月、そして2016年1月に出版した、『アメリカの真の支配者 コーク一族』(ダニエル・シュルマン著、古村治彦訳、講談社、2015年12月)と『BIS国際決済銀行 隠された歴史』(アダム・レボー著、副島隆彦監訳・解説、古村治彦訳、成甲書房、2016年)が評判をいただいております。

 
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 『アメリカの真の支配者 コーク一族』に関しては、2016年アメリカ大統領選挙が本格化するにつれて、多くの方々からご注目をいただけるようになりました。朝日新聞でも書評ページで取り上げていただきました。以下に、書評などをまとめてご紹介します。

 

・2015年12月22日:「『アメリカの真の支配者 コーク一族』 石油から思想までを操る華麗過ぎる一族」(書評サイトHonz 評者:村上浩)

http://honz.jp/articles/-/42223

※ページへはこちらからどうぞ

 

・2016年2月7日:「アメリカの真の支配者―コーク一族 [著]ダニエル・シュルマン ■富豪兄弟、大統領選にも存在感」(朝日新聞朝刊 評者:諸富徹・京都大学教授)

http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2016020700006.html?ref=rss2

 ※ページへはこちらからどうぞ。

 ・2016年2月8日:「アメリカの真の支配者 コーク一族 ダニエル・シュルマン著/古村治彦訳」(週刊東洋経済2016年2月13日号 評者:中岡望・東洋英和女学院大学教授)


・2016年1月14日:「賢者の知恵 「コーク一族」米大統領選の命運を握る大富豪ファミリーの正体」(現代ビジネス 著者:古村治彦)

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47359

※ページへはこちらからどうぞ

 

・2016年2月11日:「ノンフィクション アメリカの大富豪集団が「トランプ阻止」に動き始めた 白熱! 米大統領選2016」(現代ビジネス 著者:古村治彦)

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47846

※ページへはこちらからどうぞ

 

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 『BIS国際決済銀行 隠された歴史』に関しては、アベノミクスの失敗、日銀によるマイナス金利などという訳の分からない政策の実行によって日本経済は大変な状況になって以降、ご注目をいただいているようです。こうした経済政策は、世界の中央銀行総裁や幹部たちが話し合って決めている訳ですが、BISはその拠点の一つとなっています。こうした動きを歴史的に理解する上で最良の一冊となっています。

 

 今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

(終わり)

野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23









 

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 古村治彦です。

 

 今回も、2016年1月22日に発売された『BIS(ビーアイエス)国際決済銀行 隠された歴史』(アダム・レボー著、副島隆彦監訳・解説、古村治彦訳、成甲書房、2016年)の海外での書評を皆様にご紹介します。


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 是非、これらの書評を参考にしていただいて、お買い上げいただけましたら幸いです。宜しくお願い申し上げます。

 

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ニューヨーク・タイムズ紙2013年7月19日

 

http://www.nytimes.com/2013/07/21/books/review/tower-of-basel-by-adam-lebor.html?pagewanted=all

 

「彼らにはある秘密があるのだ:アダム・レボー著『バーゼルの塔』」

 

マイケル・フィアーシュ(Michael Hirsh)筆

 

アダム・レボーは最新刊『バーゼルの塔』で国際決済銀行(BIS)の歴史について書いている。この『バーゼルの塔』は、トム・ストッパードの戯曲『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』に似ているところがある。『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』では、『ハムレット』にほんの少しだけ登場する脇役ローゼンクランツとギルデンスターンが主役になり、『ハムレット』の劇中で起きる重要な出来事は背景の役割を果たしている。レボーは、BISはスイスのバーゼルに本拠を置く「中央銀行のための銀行」という曖昧な存在だと書いている。BISは1930年に創設され、ドイツの第一次世界大戦に関する賠償金支払いをスムーズに進めることをその使命とした。そして、BISは、80年以上にわたって、世界経済において重要ではあるが、秘密の役割を果たしてきた、とレボーは主張している。レボーは、「BISは現在、世界で最も重要な銀行となっている。説明責任を全く果たしていないのに、資金、力、隠然たる影響力の世界的なネットワークの中心に君臨している」と書いている。

 

BISは、大恐慌、第二次世界大戦、欧州通貨同盟の創設といった大きな出来事に関して、その裏面に深く関わった。BISには興味深い、そして秘密の歴史を有している。しかし、実際には、BISは歴史の創造者と言うよりは歴史の目撃者であり、スーパーマンと言うよりはフォレスト・ガンプのような存在なのである。レボーは、本書の副題に、陰謀論で出てきそうな「世界を動かす秘密銀行」とつけている。しかし、現在のBISは、そのような存在ではなく、中央銀行関係者たちの会談場所、クラブのような役割を果たしている。国際金融の世界は、今や世界規模で活動する巨大銀行、連邦準備制度、欧州中央銀行、その他の各国中央銀行によって動かされている。そして、各国中央銀行はBISのメンバーなのである。たいていの場合、各国中央銀行は各国の利益、もしくは地域の利益を最優先にして政策を立案する。

 

このような状況であるからこそ、BISについて詳しく書かれた本が必要なのである。ブタペストを本拠として活躍しているジャーナリスト、アダム・レボーはBISについて大変素晴らしい本を出版した。この本を読むと、金融は非道徳的な面を持っており、BISはそうした非道徳的なことを行ってきたこと、そして、国際的な資本移動に関してBISはより説明責任を果たす必要があることを教えてくれる。ウォール街の金融機関の重役たちがサブプライムローンの証券化を行い、それがもたらした厄災に対する責任を回避している現代にとってBISが教えてくれる教訓は重要なものである。

 

BISは1930年に秘密裏に創設された。そして多くの罪を犯しながら存続してきた。BISは、大恐慌時代のイングランド銀行総裁モンタギュー・ノーマンのアイディアから生まれた。ノーマンはメフィストフェレスのような外見であり、肩マントを着用し、ヴァンダイク髭を蓄えていた。また、2009年にピューリッツァ賞を受賞したライアカット・アハメドの『世界恐慌(上・下) 経済を破綻させた4人の中央銀行総裁』(吉田利子訳、筑摩書房、2013年)にもモンタギュー・ノーマンは出てきて、重要な(そして不幸をもたらす)役割を果たしている。ノーマンは「世界初の国際的な金融機関」として機能する新銀行の創設を望んだ、と書いている。そして続けて次のように書いている。「新銀行は、中央銀行総裁たちの会談場所となる予定であった。そこでは政治家からの要求や鵜の目鷹の目のジャーナルリストたちの詮索から自由になって、銀行家たちは世界金融システムが必要としている秩序と協調をもたらすべく話ができることになっていた」

 

ノーマンの提案を熱心に支持したのがヒャルマー・シャハトであった。シャハトもまた20世紀の金融の世界に出現したファウストのような人物であった。ドイツ帝国銀行総裁シャハトは新銀行をドイツの第一次世界大戦の賠償金の支払い負担の過酷さを緩和する役割を果たすものだと考えた。その後、ナチスが権力を掌握した時、戦勝国側をうまく出し抜いてドイツの賠償金支払いを完全に停止するのにBISが利用できると考えた。1930年代、シャハトは魔法のような手法を用いてドイツの財政を立て直した。これによってアドルフ・ヒトラーは戦争を行うことができるようになった。ずる賢いが、聡明な総統ヒトラーは、彼のために働く銀行家シャハトについて、「生き馬の目を抜く金融の世界でも、知性溢れるアーリア人がユダヤ人よりも優秀であることを示している」と称賛していた。

 

第二次世界大戦が始まった。この時期、BISは最も暗い時代を過ごさねばならなかったし、金融の歴史における最も恥ずべき出来事の一つがこの時期に発生した。スイスが中立であったために、バーゼルは「国際的なオアシス」のような存在となった。しかし、BISは中立などではなく、連合国側に対してよりもナチスに対してより協力的であった。チャールズ・ハイアムの『国際金融同盟―ナチスとアメリカ企業の陰謀』(青木洋一、マルジュ社、2003年)をはじめとする既刊の様々な本で描かれているように、BISの理事たちは、ナチスが占領した国々で略奪したり、強制収容所で殺害された犠牲者たちの遺体から取り出した金歯を溶かしたりして集めた金の売却を手助けした。そして、理事たちは、ドイツ第三帝国が金の売却で現金を得られるようにし、その現金で戦争遂行に必要な天然資源を購入する手助けも行った。BISはドイツを外の世界とつなぐ配水管のような役割を果たした。ドイツ帝国銀行副総裁エミール・プールはBISをドイツ帝国銀行の「唯一機能している海外支店」と評した。プールの友人トーマス・マッキトリックはアメリカ人で、戦時中BISの総裁を務めた。レボーはマッキトリックについて、「戦時中、ドイツ帝国銀行首脳部に経済面の、そして金融上の重要情報を繰り返し提供していた」と書いている。レボーは、マッキトリックが「ヒトラーのために活動したアメリカ人銀行家」と言う役割を果たしたにもかかわらず、それが問題にならなかったと書いている。確かに、マッキトリックは戦後、チェース・ナショナル銀行の副頭取に収まっている。

 

BISは戦時中、道徳に反した行為を行った。これに対して、1944年にアメリカのニューハンプシャー州ブレトンウッズで開催された会議の席上、米財務長官ヘンリー・モーゲンソーとアメリカ代表団を率いていた財務次官ハリー・デクスター・ホワイトはBISの解散と、新設の世界銀行と国際通貨基金による戦後の国際システムの構築を主張した。しかし、ジョン・メイナード・ケインズをはじめとするBISの後援者たちは有力者が多く、彼らの介入によってBISの存続が決まった。

 

BISは、顧客である中央銀行間の金と外貨準備の売買を仲介し、各国の中央銀行に対しての短期融資と資産管理サービスを提供するように設計されていた。しかし、現在、このような業務は必要ではなくなっている。BISはその変化に富んだ歴史や存在理由を2回も喪失するという経験を乗り越えて存続してきた。BISの存在理由はドイツの賠償金支払いとブレトンウッズ体制下での金本位制の維持であったが、これらは消失してしまった。1960年代以降、BISは欧州通貨同盟発足の準備を行ってきた。そして、続いてより重要な欧州通貨機関と欧州中央銀行の創設の準備に取り掛かった。

 

現在、BISは、啓蒙的な役割を果たすようになっている。BISは、銀行業監視のためのバーゼル委員会の開催場所となっている。バーゼル委員会は、国際業務を行う民間銀行が自発的に守る自己資本比率を決定することを目的にしている。そして、BISは金融に関する専門知識をも提供している。BISの経済調査・研究に従事しているスタッフたちは、1990年代後半に発生したアジア通貨危機やそれから10年後のサブプライムローン危機に対して警告を発していた。彼らは先見の明がある予言者のような役割を果たした。BISは2008年に発生した金融危機に向かう数年間に警告を発していた数少ない金融機関の一つであった。しかし、レボーが主張しているように、「BISは問題があることは知っていたが、各国の政策立案者たちが金融危機の発生を防ぐ方策を採る、もしくは衝撃を和らげる方策を採るように説得することはできなかった」のである。実際のところ、BISには動揺はなく、BISはただバーゼル委員会の開催場所でしかない。BISは各国の中央銀行の総裁たちが運営している。そして、BISは大きな影響力を持っている。

 

現在においても、BISは、理事会のメンバーとなっている18の中央銀行よりも情報公開が遅れている状態だ。BISの資産は差し押さえられることはない。民間銀行の自己資本比率の決定過程は曖昧である。そして、多くの批評家が述べているように、BISが行う勧告の内容は甘すぎるものだ。BISは国際機関を創設することは容易なことであるが、廃止することは困難という事実を示している。レボーは、結論として、「BISは21世紀を通じて信頼を醸成するだろう。しかし、BISの存在にとって信頼など必要なものではないのだが」と書いている。

 

(終わり)

 

=====

 

ウォールストリート・ジャーナル紙 2013年6月24日

 

http://online.wsj.com/article/SB10001424127887324577904578555670685396736.html

 

「本棚:テクノクラートたちのクラブハウス(A Clubhouse for Technocrats)」

 

国際決済銀行(Bank for International Settlements)は、中央銀行関係者たちのために用意された議論の場という存在以上に、ある種の非民主的な倫理を体現した存在である。

 

フィリップ・デルヴェス・ブロウトン(Philip Delves Broughton)筆

 

中央銀行総裁たちに対しては、聡明で影響力はあるが、説明責任を果たしていないという批判がなされる。彼らはワシントン、ロンドン、そしてフランクフルトから出てくると、名言を口にし、頭の良さを私たちに示す。彼らのやることを調査することはできない。その結果、彼らのやることは魔法のように感じられる。ただ投票するしかできない有権者たちが、中央銀行の総裁たちが駆使する魔法を理解できるだろうか?そんなことは放っておくのがより良いことだと多くの人たちは考えるだろう。

 

アダム・レボーの新刊『バーゼルの塔:世界を動かす秘密銀行の隠された歴史』は、彼ら金融界の神官たちに対する挑戦というような内容になっている。レボーは、彼ら中央銀行総裁たちは 彼らは民主政体が最も恐れなければならない存在である。彼らは金融分野におけるルールを利用する暴君たちである。彼らは文民が統制する軍隊や議会がコントロールできる存在などよりも危険なのである。

 

国際決済銀行は、その何の面白味もない名前とは裏腹に、特別な存在であり、強力な野獣のような存在である。BISは1930年に創設された。ドイツが賠償金支払いの負担を何とか軽減しようと努力していた時、ヨーロッパ各国の中央銀行総裁たちが集まって協議して創設が決定されたのである。長年にわたり、BISはバーゼル駅の近くのホテルであった小さな建物に本部を置いていた。世界中の中央銀行の総裁たちは毎月BISに集まり、BISが提供する素晴らしい雰囲気の中で、最新の問題について私的に話し合い、夕食を楽しむ。BISは中央銀行の総裁たちのクラブハウスなのだ。

 

しかし、BISはただのクラブハウス以上の存在である。BISには600名の職員がおり、彼らはスイスに居住している限りにおいて外交特権を享受している。BISは中央銀行間の取引の決済を行う清算機関であり、同時に融資も行うし、資産管理に関するサービスも提供する。BISはまた研究機関でもあり、BISのアイディアからユーロが実現し、銀行業に対する規制も生み出された。BISの銀行業監視バーゼル委員会には法的な強制力は存在しないが、道徳的、そして知的な権威によって民間銀行の資本と流動性に関して必要な条件を設定している。BISは年間10億ドル以上の売り上げを記録している。この売り上げには税金がかからない。そして、彼らは株主である各国の中央銀行に配当を支払っている。

 

これこそが権力者共同謀議論を信奉する人々(陰謀論者とも呼ぶ)の抱く夢なのだ。

 

レボーが述べているように、BISは、「世界を最もうまく運営できるのはテクノクラートだ」という考えを象徴している存在だ。BISを政治家に任せてしまえば自分たちの権威づけのために利用するだろうし、そもそも一般の人々はBISになど興味を持たない。そこで、経済学の博士号を持っていて、何でもよく知っている人々に、秘密のうちに仕事をさせることになる。これがBISの現実なのだ。『バーゼルの塔』の説得力のある書籍だ。それは、彼がBISに対して異議申し立てを行うことを目的にして書いているからだ。この本からは、レボーがアイダホの片田舎の小さな家でこの本の原稿を書いていて、彼の子供を誘拐するために国連やゴールドマンサックスの職員がその家に侵入してくるのを待っている、そんなある種の気迫が感じられる。

 

レボーはBISの創設から欧州統一通貨ユーロの導入で果たした役割、その結果としてもたらされた現在のヨーロッパ経済の混乱を一つの線で結んでいる。また、BISがドイツ第三帝国と行った非難すべき取引についても多くのページを割いて書いている。レボーは、BISは金融の分野で重要な役割を果たしてきたが非道徳的であり、この非道徳性は大変に危険だと考えているようだ。

 

BISが背負っている恥ずべき原罪、それは、BISがドイツ第三帝国を他国と区別なく取り扱ったことだ。1939年、ナチス・ドイツはプラハに侵攻した。その直後、BISはチェコスロヴァキアの保有していた金をベルリンに移すことを手助けした。第二次世界大戦中、BISの幹部たちはナチスとIGファルベンのような企業群と深い関係を維持していた。IGファルベンのような企業群はナチスに協力し、ホロコーストが効率的に実行される手助けをした。BISの理事を務め、ナチス政権下でドイツ帝国銀行副総裁を務めたエミール・プールは、BISのことを「ドイツ帝国銀行の唯一の海外支店」と評した。

 

戦後、BISは、ハンナ・アーレントが「机上の殺人者たち」と呼んだドイツの銀行家と産業資本家たちのために経歴や評価のロンダリングサービスを提供した。彼らは、経済的に統合された新生ヨーロッパの柱石として再び表舞台に登場した。1946年までBIS総裁を務めたアメリカ人のトーマス・マッキトリックは、IGファルベンの重役たちが逮捕され起訴されて有罪になっても、短い刑期になるように行動した。ナチス政権下、ナチスと深い協力関係にあったIGファルベンのCEOだったヘルマン・シュミッツはその恩恵を受けた一人だ。シュミッツは戦後、ドイツ銀行の取締役となった。カール・ブレッシングは1930年代、BISに勤務していた。そして戦時中、ドイツのコンチネンタル石油の財務担当取締役を務めていた。コンチネンタル石油は、ドイツ第三帝国の強制収容所の収容者たちの重労働を頻繁に利用した企業の一つである。戦後、ブレッシングは逮捕され投獄されたのだが、国際銀行業の分野の古い友人たちの助けもあって、ドイツ連邦銀行総裁として表舞台に復帰した。

 

「不愉快な、そして人々が話したがらない真実は、戦後ヨーロッパ経済に関するナチスの考えていた計画と実際のヨーロッパにおける通貨と経済統合計画が全く同じ内容だということだ。BISはこの2つをつなぐ糸のようなものだ」とレボーは書いている。

 

レボーは、BISの非道徳的、非民主的な思考様式はいまだに残っていると書いている。レボーは、BISとBISに所属している経済学者やエコノミストたちは「国家主権の消失」についての知的な土台とモデルを提示した。その結実がユーロ導入であった。レボーは次のように書いている。「ヨーロッパ統合プロジェクトとBISの使命両方にとって重要なのは、現在行われている決定、政策、行動が『技術的で非政治的』なもので、一般の人々は何も懸念する必要なないという主張である。しかし、実際のところ、その反対が本当のところだ。選挙で選ばれない人間たちが運営する国家を超える機関に国家主権を明け渡すこと以上に政治的な動きというものは存在しない。バーゼルにある秘密主義で説明責任を負わない銀行によって、国家を超える機関が必要とする財政に関するメカニズムが調整され、運営されるようになった」

 

同じことが金融危機についてでも言える。BISは、発表した2007年から2008年にかけての年度の年次報告書において、過度のレバレッジの危険性に対して警告を発した。しかし、BISは金融危機を阻止することはできず、発生後の状況を少しでも改善することしかできなかった。BISがより民主的な機関であれば、義務を放棄したことについてきちんと説明責任を果たしたことだろう。しかし、BISは説明責任を果たすことなく、特権的な権力を有する、官僚にとって理想郷のような存在なのである。私たちは、各国の中央銀行を通じてではあるが、BISの顧客なのである。しかし、BISに私たちの意見を反映させる手段は存在しない。現在、ギリシアの失業者たちは自分たちの家具を燃やして暖を取っているような状況だ。一方、民間銀行は大きな利益を上げ、中央銀行の総裁たちは緊縮財政を私たちに押し付けながら、自分たちはバーゼルで豪華な食事を楽しんでいる。これは醜い状況だ。そして、レボーはこうした状況をうまく描写して、私たちに伝えている。

 

(終わり)

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野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


メルトダウン 金融溶解
トーマス・ウッズ
成甲書房
2009-07-31

 
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  古村治彦です。

 

 今年1月11日付の『ニューヨーク・タイズム』紙に以下のような記事が出ました。タイトルは「ある本によると、コーク兄弟の父親はナチス・ドイツの石油精製施設建設に協力した」となります。内容は、共和党や保守的なグループに多額の献金を行っているアメリカの超富豪たちは元々後ろ黒いやり方で金儲けを行ったと主張する本が出て、その中で、コーク一族が取り上げられており、コーク兄弟の父親フレッドがナチスに協力した、というものです。

 

 記事が取り上げている本は、ジェイン・メイヤーというジャーナリストの『ダーク・マネー』という本で、2016年1月19日にアメリカで発売になります。ジェイン・メイヤーは、『ニューヨーカー』誌の記者で、コーク兄弟についての詳しい記事を全米初めて書いた人物です。

 

 私が翻訳しました『アメリカの真の支配者 コーク一族』でも、メイヤーの話が出てきます。しかし、メイヤーの本に出てくる、フレッド・コークがナチスの協力者であったという話は出てきません。メイヤーは何か新発見の文書などの証拠を見つけて書いたものと思われます。
 


 また、アメリカの富豪たちがナチスに協力した過去を持っているという話ですが、こちらは、私が翻訳しました『BIS国際決済銀行 隠された歴史』にはたくさん出てきます。フォード・モータースやスタンダード石油などの製造業や銀行がナチスの戦争遂行に協力しました。詳しい内容は是非本を手に取ってお読みいただければと思います。

 


 ジェイン・メイヤーの本がこの時期に出るというのは、アメリカ大統領選挙とも関係があると言えます。彼女がターゲットにしているコーク兄弟はこれまで共和党の政治家たちを応援してきました。彼らは父親から会社を受け継いで、それを自分たちの力で大きくしたのですが、その大本である父の会社がナチスに協力したということになると、法的には何もないにしても、道義的な責任を問われます。そして、そうした人たちからお金を受け取っていたとなると、批判や攻撃の対象になります。

 

 コーク兄弟と関係を持たなかった共和党系の政治家はほぼいないと言って良いでしょう。現在の大統領選挙で言えば、自己資金でやっているドナルド・トランプ以外は何かしらの関係があります。そうなると、これは大きな痛手となります。

 

 ここからは妄想になりますが、これはヒラリーを勝たせるための援護射撃ということになります。ドナルド・トランプ以外の政治家たちに打撃となると、共和党の大統領選挙候補者がトランプになる可能性が高まります。しかし、「さすがにトランプを大統領にできない」ということになると、ヒラリーに投票が流れるということになります。

 

 ジェイン・メイヤーが『ニューヨーカー』誌の記者であることを考えると、ニューヨークを拠点としている勢力がバックアップしているのではないかということも考えられます。

 

(貼り付けはじめ)

 

 

POLITICS

 

Father of Koch Brothers Helped Build Nazi Oil Refinery, Book Says

 

By NICHOLAS CONFESSOREJAN. 11, 2016

http://www.nytimes.com/2016/01/12/us/politics/father-of-koch-brothers-helped-build-nazi-oil-refinery-book-says.html?_r=1

 

The father of the billionaires Charles G. and David H. Koch helped construct a major oil refinery in Nazi Germany that was personally approved by Adolf Hitler, according to a new history of the Kochs and other wealthy families.

 

The book, “Dark Money,” by Jane Mayer, traces the rise of the modern conservative movement through the activism and money of a handful of rich donors: among them Richard Mellon Scaife, an heir to the Mellon banking fortune, and Harry and Lynde Bradley, brothers who became wealthy in part from military contracts but poured millions into anti-government philanthropy.

 

But the book is largely focused on the Koch family, stretching back to its involvement in the far-right John Birch Society and the political and business activities of the father, Fred C. Koch, who found some of his earliest business success overseas in the years leading up to World War II. One venture was a partnership with the American Nazi sympathizer William Rhodes Davis, who, according to Ms. Mayer, hired Mr. Koch to help build the third-largest oil refinery in the Third Reich, a critical industrial cog in Hitler’s war machine.

 

David H. Koch, left, and Charles G. Koch. Credit Paul Vernon/Associated Press; Bo Rader/The Wichita Eagle, via Associated Press

The episode is not mentioned in an online history published by Koch Industries, the company that Mr. Koch later founded and passed on to his sons.

 

Ken Spain, a spokesman for Koch Industries, said company officials had declined to participate in Ms. Mayer’s book and had not yet read it.

 

If the content of the book is reflective of Ms. Mayer’s previous reporting of the Koch family, Koch Industries or Charles’s and David’s political involvement, then we expect to have deep disagreements and strong objections to her interpretation of the facts and their sourcing,” Mr. Spain said.

 

Ms. Mayer, a staff writer at The New Yorker, presents the Kochs and other families as the hidden and self-interested hands behind the rise and growth of the modern conservative movement. Philanthropists and political donors who poured hundreds of millions of dollars into think tanks, political organizations and scholarships, they helped win acceptance for anti-government and anti-tax policies that would protect their businesses and personal fortunes, she writes, all under the guise of promoting the public interest.

 

The Kochs, the Scaifes, the Bradleys and the DeVos family of Michigan “were among a small, rarefied group of hugely wealthy, archconservative families that for decades poured money, often with little public disclosure, into influencing how the Americans thought and voted,” the book says.

 

Many of the families owned businesses that clashed with environmental or workplace regulators, come under federal or state investigation, or waged battles over their tax bills with the Internal Revenue Service, Ms. Mayer reports. The Kochs’ vast political network, a major force in Republican politics today, was “originally designed as a means of off-loading the costs of the Koch Industries environmental and regulatory fights onto others” by persuading other rich business owners to contribute to Koch-controlled political groups, Ms. Mayer writes, citing an associate of the two brothers.

 

Mr. Scaife, who died in 2014, donated upward of a billion dollars to conservative causes, according to “Dark Money,” which cites his own unpublished memoirs. Mr. Scaife was driven in part, Ms. Mayer writes, by a tax loophole that granted him his inheritance tax free through a trust, so long as the trust donated its net income to charity for 20 years. “Isn’t it grand how tax law gets written?” Mr. Scaife wrote.

 

In Ms. Mayer’s telling, the Kochs helped bankroll — through a skein of nonprofit organizations with minimal public disclosure — decades of victories in state capitals and in Washington, often leaving no fingerprints. She credits groups financed by the Kochs and their allies with providing support for the Tea Party movement, along with the public relations strategies used to shrink public support for the Affordable Care Act and for President Obama’s proposals to mitigate climate change.

 

The Koch network also provided funding to fine-tune budget proposals from Representative Paul D. Ryan, such as cuts to Social Security, so they would be more palatable to voters, according to the book. The Kochs were so influential among conservative lawmakers, Ms. Mayer reports, that in 2011, Representative John A. Boehner, then the House speaker, visited David Koch to ask for his help in resolving a debt ceiling stalemate.

 

Dark Money” also contains revelations from a private history of the Kochs commissioned by David’s twin brother, William, during a lengthy legal battle with Charles and David over control of Koch Industries.

 

Ms. Mayer describes a sealed 1982 deposition in which William Koch recalled participating in an attempt by Charles and David to blackmail their fourth and eldest brother, Frederick, into relinquishing any claim to the family business by threatening to tell their father that he was gay.

 

David Koch has since described himself as socially liberal and as a supporter of same-sex marriage.

 

Correction: January 12, 2016

An earlier version of a capsule summary for this article misspelled the surname of the author of a new book about the history of the Koch family. She is Jane Mayer, not Meyer.

 

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

古村治彦です。

 

 今回は、2016年1月22日に発売となります、『BIS(ビーアイエス)国際決済銀行 隠された歴史』(アダム・レボー著、副島隆彦監訳・解説、古村治彦訳、成甲書房、2016年)を皆様にご紹介いたします。

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 以下に海外のメディアで紹介された書評を掲載します。参考にしていただき、ご購入いただけましたら幸いです。

 

 宜しくお願い申し上げます。

 

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ブルームバーグ電子版 2013年6月10日

  

http://www.bloomberg.com/news/2013-06-09/shadowy-bank-in-basel-funded-nazis-pushed-euro-books.html

 

「バーゼルにある秘密銀行がナチスに資金提供をし、ユーロ導入を推進した」

 

ダニエル・アクスト(Daniel Akst)筆

 

もしあなたが国際決済銀行(BIS)をただの地味な国際機関だと考えておられるなら、アダム・レボーの新刊はあなたのそのような考えが間違いであることを気づかせてくれるものになる。

 

『バーゼルの塔』はスイスに本部を置くBISを全面的に攻撃する内容である。しかし、BIS側から著者に対して何の抗議も回答も寄せられてはいない。

 

レボーは、ナチス・ドイツの侵略にBISが資金を提供した様子を克明に描いている。これはBISの歴史における汚点として良く知られている。レボーは更に、テクノクラートたちが主導する戦後ヨーロッパの復興にもBISが関わったと批判的に書いている。BISは現在危機的状況を呈しているユーロの産婆役を務めたといことである。レボーは、BISの閉鎖、もしそれが不可能ならより透明性を高めることを求めている。

 

レボーはきちんとした調査を行っている。しかし、それはあくまでもきちんとしているだけのことだ。BISは1930年に創設された。それには二人の伝説的な中央銀行総裁が中心的な役割を果たした。イングランド銀行総裁のモンタギュー・ノーマンとドイツ帝国銀行総裁のヒャルマー・シャハトである。BISはドイツの第一次世界大戦に関する賠償金支払いを管理するために創設された。ケインズやその他の有識者たちは、国家経済を傾けるような過度の賠償金支払いを課すことは間違った考えだと主張した。そして、BISが創設されてすぐに、ドイツは賠償金支払いを停止してしまった。

 

しかし、BISはその後も存続し続けた。各国間の同意に基づいて大きな自律性も認められている。スイスに存在する安全な避難所となっている。中央銀行間の取引を仲介することで得られる手数料で大きな収入を得ている。それだけではなく、国際金融における取引と中央銀行関係者たちの協調を促進する役割を果たしている。ナチスにとって、国際金融で大きな存在感を持つBISはとても使い勝手の良い機関となった。

 

●ナチスが略奪した金

 

第二次世界大戦中、BIS総裁はアメリカ人であった。それにもかかわらず、BISは厳格なまでに中立にこだわった。戦争当事諸国全てとの取引を継続できるように、政治的な側面には全く関わらないようにし、技術的な側面にこだわった。しかし、これが不幸にして、ナチの恐るべき行為を助長する結果となってしまった。

 

BISはナチスが略奪した金を受け入れた。この金を元にしてドイツは必要な戦時物資を購入し続けた。ドイツはチェコスロヴァキアに侵攻後、チェコスロヴァキアの保有する金を横取りしようとした際、BISはそれに許可を与えた。

 

第二次世界大戦中、BISは恥ずべき行為を行った。そのため、BISはアメリカやその他の国々の中にいたBISに対する敵対者たちによって「解散すべきだ」という攻撃を受けた。しかし、BISはこうした攻撃に負けず、戦後世界で新たな役割を果たすことになった。アメリカはヨーロッパ再建に力を注ぐことになったが、BISはそれを金融面で支えることになった。また、ヨーロッパ統合プロジェクトを促進するという役割を果たすことになった。

 

●現代ヨーロッパ

 

ユーロの実現に至るまでの過程もまたレボーの批判の対象となっている。レボーは、現代ヨーロッパの国家を超える統合というアイディアはブリュッセルとバーゼルにいる官僚たちによって主導されたものだと主張している。そして彼らのヨーロッパ統合というアイディアは、ナチスのヨーロッパ統合というアイディアとほぼ同じであり、各国の有権者たちの承認を得たものではないとも書いている。

 

BISは世界各国の中央銀行によって所有され、運営されている。そして、現在のBISは 2カ月に1度、中央銀行の総裁たちはBISに集まり、高級な食事を楽しみ、完全に秘密が守られた状態で、議論を行っている。BISはまた、国際金融に関して精度の高い調査・研究も行っている。

 

これがそこまで悪いことなのだろうか?レボーは悪いことだと考えている。そして、「BISは秘密主義、エリート主義、反民主的な機関であって、二十一世紀という時代には全くふさわしくない存在だ」と非難している。

 

たぶん彼が正しいのだろう。しかし、本書の副題にあるような「世界を動かす秘密銀行」という、BISに対するレボーの非難はいささか誇張が過ぎていると私は思う。レボーがBISの業務についてもっと詳しく調べていれば、そこまでの非難はできなかったのではないかと思う。BISの業務が重要かどうか、彼らの仕事を他の機関が簡単に肩代わりできるかどうかを判断するのは彼にとってもたやすいことであったであろう。

 

不幸なことに、レボーはBISの機能をぞんざいにしか扱っていない。BISが秘密主義であるのは議論の余地がない。しかし、BISの融資がどのようなものであるかはレボーも書いているし、BISの資本と利益がどのようにして生み出されているかについても書いている。BISは2011年から2012年にかけての年度だけで10億ドル以上の税金のかからない売り上げを上げている。

 

BISは廃止されないようにするために、改革を行う必要がある。レボーはいくつかの改革案を示し、その中には透明性を高めることと利益の一部を社会慈善事業に回すことというものがある。しかし、このような改革を行う前に、バーゼルの塔(BISの本部がある円形のタワービル)にいる人々は、最善の行動を取るようにすべきなのだ。

 

(終わり)

 

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フィナンシャル・アンド・ディヴェロップメント誌(IMFが発行している雑誌) 第50号第2巻2013年6月

 

http://www.imf.org/external/pubs/ft/fandd/2013/06/books.htm

 

「書評:BISの歴史を網羅した書」

 

ペーター・アコス・ボッド(Peter Akos Bod、ブダペスト・コルヴィヌス大学教授)筆

 

●過ちを隠蔽し続けた歴史

 

BISは銀行関係者以外にとっては曖昧な存在でしかない。BISが何の省略形なのか分からない人も多い。しかし、新聞の金融面を読むような人にとってはスイスにある都市バーゼルはお馴染みの名前である。それは、銀行業監視に関するバーゼル委員会が定める銀行の自己資本比率とその他の勧告が良く報道されるからだ。そして、このバーゼル委員会の実務を取り仕切っているのが国際決済銀行(Bank for International Settlements)、略称BISなのである。現代ヨーロッパの様々な問題をテーマにしているジャーナリストであり作家のアダム・レボーは、BISという、バーゼルにある近代的なタワービルに本部を置く、一般にあまりよく知られていない国際銀行についての300ページを超える著作を発表した。彼の調査は行き届いたものである。

 

この本の背表紙には「世界で最も秘密主義の国際機関の歴史についての初めて調査の結果を記した本」と記載されている。私は、本書は示唆に富んでおり、数多くの情報も含まれている。しかし、著者レボーの感情が色濃く反映した内容の本となっている。レボーは多くの書籍を読み込み、多くの人々に話を聞き、多くの文書を渉猟してこの本を完成させた。

 

しかし、これは退屈な歴史書などではない。本書の言いたいことは題名に表現されている。それは、「世界を動かす秘密銀行の隠された歴史」ということである。

 

レボーは調査をする価値のある問題を見つける能力を持っている。今回、彼が取り組んだBISはまさにそのようなテーマである。1930年の創設以来、BISの歴史は波乱万丈であった。このBISという興味をそそる機関について徹底的な調査がなされ、その結果を広く知らしめるために本にして発表されることは長年待ち望まれてきた。BISの存在意義と現在の機能を平易な言葉で書くことさえ難しいのである。BISは第一次世界大戦後、実行が困難な使命を実行するために創設された。その使命とは、ヴェルサイユ条約によって決定された敗戦国ドイツに対する賠償金支払いを円滑に進めるということであった。資金調達、事務手続き、実際の支払いといった技術的なことを円滑に進めるには専門の金融機関が必要であった。

 

従って、BIS(ドイツ語ではBIZ)は、第一次世界大戦の戦勝国(ベルギー、フランス、イタリア、そしてイギリス)の中央銀行だけでなく、ドイツ、日本、連邦準備制度に代わってアメリカを代表した三つの銀行代表団が創設した。その後すぐにオーストリア、チェコスロヴァキア、ハンガリーやその他のヨーロッパの小国がBISに加盟した。それは、中央銀行間、もしくは民間銀行との金融取引における隙間を埋めることを目的としていた。しかし、歴史はすぐに大きな転換点を迎えた。ドイツの賠償金支払いは停止されたのだ。しかし、BISは活動を継続した。BISの株主たちには交戦国同士の中央銀行が存在したが、戦時中においてもその機能を停止させることはなかった。

 

レボーは、BISが第二次世界大戦前、そして戦時中において中立ではなかったと確信している。レボーは、BISの総裁や主要な地位の人々がドイツ人ではなかったにもかかわらず、実質的にドイツにコントロールされる銀行になっていたと考えている。レボーは、BISに関わる主要な人々の人生やその活動について詳しく書いている。その主要な人々とは、ドイツ帝国銀行総裁ヒャルマー・シャハト、イングランド銀行総裁モンタギュー・ノーマン、戦時中のBIS総裁でアメリカ人のトーマス・マッキトリックだ。レボーは、ノーマンとマッキトリックが裏切り行為を拡大させたとして非難している。レボーは、第二次世界大戦中に重要な役割を果たした人々の人生を描くことで、第二次世界大戦が外交面、金融経済面、そして政治面で複雑に錯綜していることを読者に示している。

 

彼が取り上げている人物には米国戦時情報局(OSS)スイス支部長アレン・ダレス、米財務長官ヘンリー・モーゲンソー、米財務次官ハリー・デクスター・ホワイト、西ドイツの「経済的奇跡」の設計者と言われているルードビッヒ・エアハルトがいる。それぞれの人生が生き生きとしたエッセイ風の文体で描かれている。そしてそれらには説得力がある。しかし、私は、これらの短いエッセイでは主要な人々に対して十分に正当な評価を加えることはできないと考えている。また、本書は、BISが第二次世界大戦後から現在のような成功を収めるに至った理由とその原動力について全く書いていない。1990年代はじめ、私はハンガリー中央銀行総裁を務めていた。私は毎月BISで開催される総裁会議に出席していた。私の個人的な経験から言えば、BISの役割は重要だし、その存在は必要不可欠である。レボーが「BISは曖昧な存在であるが、エリート主義で、反民主的な存在でもある。そして21世紀にふさわしくない機関である」と結論付けているが、私はこれは厳しすぎるし、正当化できない主張だと思う。

 

BISは、激しく変化を続ける国際環境において新たな役割を見つけねばならない国際機関である。BISが行っている銀行業に関するデータの収集、高度な調査・研究、有効な助言の提供は、現代の金融が正しく機能する上で重要な貢献となっているのだ。ヨーロッパ統一通貨ユーロの導入と欧州中央銀行の創設は、BISに対する新たな挑戦となった。現在、いわゆるBRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)やその他の新興諸国はその重要性を増し、各国の中央銀行はBISに対して意見が反映され、考慮されることを望むようになっている。BISは、国際金融の要求に対して、その全存在を賭けて革新的に、かつ効果的に対応ができる限り、存続し、繁栄し続けることができるだろう。

 

(終わり)

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野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


 
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