古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:塚本幼稚園

 古村治彦です。

 

 今回はワシントン・ポスト紙が報じた森友学園を巡るスキャンダルの記事をご紹介します。このスキャンダルは籠池氏が宣誓証言をしたことで、彼の発言の重要性が増し、終息には向かわないであろうと書かれています。

 

 また稲田大臣の森本学園とのかかわりを巡る発言の混乱で、辞任を求める声が広がっていることが紹介されています。

 

 このスキャンダルは、今週末にどのような動きを見せるか、具体的には、日本維新の会の党内(大阪ウイングとそれ以外)と党外(対自民党、対公明党)でどのような動きを見せるかで来週に色々と動きが出ることが予想されます。そうなれば、ワシントン・ポスト紙の記事でフィールド記者が書いているように、この問題はすぐには終息しないということになります。

 

(貼り付けはじめ)

 

日本の安倍首相は極右の学校に秘密の寄付をしたと追及される(Japanese Prime Minister Abe accused of giving secret donation to far-right school

 

アンナ・フィールド筆

2017年3月23日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/japanese-nationalist-school-boss-says-prime-minister-gave-him-a-secret-donation/2017/03/23/5d8f5322-0fdc-11e7-ab07-07d9f521f6b5_story.html?utm_term=.97d7be43983d

 

東京発。日本の首相を巡る政治論争は終息の兆しを見せない。国家主義的な学校の理事長が木曜日、宣誓をした上で、安倍晋三首相が彼に対して9000ドルの寄付をしたと述べた。

 

この嫌疑について安倍首相は強く否定しているが、これまで無敵だと見られてきた首相にダメージを与えている。今回のスキャンダルによって支持率が低下し、来月に解散総選挙をするのではないかという噂話が流れている。

 

今回の論争の中心にいるのは大阪の学校法人である森友学園である。森友学園は幼稚園を運営している。この幼稚園では、園児たちに、日本の近隣諸国に対して強硬な姿勢を撮っている安倍首相を応援させ、「邪悪な」韓国人と中国人と書いた文書を送った。

 

森友学園は小学校開設を計画していた。この小学校はもともと「安倍晋三記念小学校(Shinzo Abe Memorial Elementary School)」という名前を付けられていた。そして、安倍昭恵首相夫人を名誉校長に就任してもらっていた。

 

しかし、今年初め、森友学園が学校用地の土地を大幅な値引きを受けて購入していたことが発覚した。土地の価格は評価額の14%にまで引き下げられた。

 

格安の国有地売却によって、首相のイデオロギー上の同盟者のために好待遇をしたのではないかという疑いが広がった。

 

森友学園理事長籠池泰典氏は木曜日、国会の2つの委員会に出席し、安倍昭恵夫人が夫の代理で自分に寄付をくれたという主張を繰り返した。しかし、今回は籠池氏は宣誓をして発言をした。

 

籠池氏は参議院予算委員会で「安倍夫人は私どもの幼稚園に三回お越しになりました」と述べた。2015年9月の訪問で、籠池氏は安倍夫人と延長室で会ったと述べた。

 

籠池氏は「お付の方に席を外すように言われた後、部屋には私ども2人だけになりました。そこで、夫人は、“どうぞ、これをお取りください。安倍晋三からです”と私に仰って、100万円の入った封筒を寄付として私に下さいました」と述べた。この金額は現在の為替レートでは約9000ドルに相当する。

 

籠池氏は「安倍夫人は寄付を渡したことを否定され、全く覚えがないと仰っているとお聞きしましたが、私どもにとっては大変名誉なことですから、私ははっきりと覚えております」と述べた。

 

安倍首相の最側近である菅義偉官房長官は再び、疑いを否定した。そして、木曜日、安倍夫人に付いていた2人の政府職員は両方とも夫人の側を離れたことはないと否定した。もし2人が離れていれば籠池氏は安倍夫人とだけ会うことができたがそうではないということだ。

 

この問題について安倍昭恵夫人は木曜日夜に沈黙を破り、疑いに対する否定をフェイスブックに反論を掲載した。

 

スキャンダルの渦中、来月開講予定であった小学校開設認可申請は取り下げられ、森友学園は土地の返還を強制される。

 

しかし、籠池氏の証人喚問はいくつかのテレビチャンネルで放送され、疑いが再び明確にされた。これによって今回の論争がすぐに終息するということはなくなったと言える。

 

今回のスキャンダルでは安倍昭恵首相夫人が渦中の人物となっているが、これに加えて、安倍内閣の防衛大臣で超保守派の政治家稲田朋美もスキャンダルに巻き込まれている。

 

稲田朋美大臣は、彼女が弁護士時代、森友学園の代理人であったことを否定した。しかし、先週になって、2004年になって森友学園のために働いていたことを認めさせられることになった。稲田大臣はこのことを忘れていたと述べ、謝罪した。しかし、発言の撤回によって、稲田大臣の辞任を求める声が広がっている。

 

今回のスキャンダルは、安倍政権の支持率の引き下げに重要な影響を与えた。安倍政権の支持率はここ数週間で10ポイント下がった。2012年末に首相になってから最大の下げ幅になった。しかし、保守的な読売新聞の最新の世論調査では、支持率自体は56%と依然高いままだ。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)








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 古村治彦です。

 

 今回は、2017年3月23日の籠池泰典の国会での証人喚問と外国特派員協会での会見を受けての、イギリスの『ザ・ガーディアン』紙の記事の内容をご紹介します。

 

 記事の内容は、籠池氏が国会の証人喚問でも述べた、2015年9月に安倍昭恵首相夫人に塚本幼稚園で講演をしてもらった際に、夫人が封筒に入った100万円を「安倍晋三からです」と言って籠池氏に渡したという主張をしており、政府側はそれを否定しているというものです。

 

 欧米では、宣誓証言を重要視します。彼らはキリスト教文化で、「内面で神と向き合う」ということを重視し、神に対して嘘をつくかどうかということをとても気にします。ですから、宣誓をしての証言で嘘をついてはいけない、だから嘘をつく可能性は低いと考えます。この記事でも、「籠池氏は宣誓をした上で証言をしており、彼の発言内容が重要性を増す可能性が高まる」と書いています。宣誓証言というのはそれほど重いものです。

 

 ですから、宣誓をした上での証言とそれ以外では重みが全く違うということを理解しなければなりません。

 

 政府は3月24日の参考人招致で幕引きをしたいと考えているようですが、そう簡単なことではありません。登場人物がどんどん増えてしまっている今、重要な人物たちには是非、国会で宣誓をして証言をしていただきたいと思います。私が一番話をしてもらいたいのは、森友学園の代理人をしていた酒井康生弁護士です。籠池氏の話を聞きながら、今回の森友学園の土地取引や学校建設で一種のスキームを作ったのは財務省近畿財務局とこの酒井弁護士ではないかというのが個人的な感想です。

 

(貼り付けはじめ)

 

安倍晋三首相と首相夫人が超国家主義を標榜する学校に現金を渡したと追及された(Shinzo Abe and wife accused of giving cash to ultra-nationalist school

 

幼稚園の運営者が、「安倍昭恵夫人がこれは夫からだと言いながら100万円を手渡した」と証言

 

ダニエル・ハースト(東京)筆

『ザ・ガーディアン』紙

2017年3月23日

https://www.theguardian.com/world/2017/mar/23/shinzo-abe-wife-akie-accused-giving-cash-ultra-nationalist-school?CMP=share_btn_tw

 

日本の首相と夫人は超国家主義の教育方針を採用している幼稚園を巡るスキャンダルの渦中にいる。このスキャンダルの中心人物が宣誓した上で、首相夫妻から秘密の寄付を受けたと主張した。

 

幼稚園の運営者は国会で安倍昭恵総理大臣夫人から、100万円(7100ユーロ)が入った封筒を渡され、これは安倍晋三からですと首相夫人は言ったと証言した。日本政府はこの証言内容を否定している。

 

森友学園理事長籠池泰典氏はまた、学校を開設しようとした大阪の国有地が大幅な値引きをされたことに関しては「おそらく」政治的な影響力が働いたと語った。

 

今回のスキャンダルは既に安倍政権の支持率にも影響を与えているが、そもそも始まったのは、森友学園が評価額の7分の1の価格で土地を購入したことが明らかになったことからであった。

 

安倍首相は土地取引には一切関与していないし、もし個人的にかかわっていることが明らかになったら首相を辞任すると述べた。昭恵夫人はもともと開校予定の学校の名誉校長に予定されていた。しかし、今回の論争が始まって辞任した。

 

籠池氏は次のように主張している。2015年9月に安倍昭恵夫人が幼稚園で講演を行った時、籠池氏は封筒を受け取った。伝えられるところでは、籠池氏と昭恵夫人は部屋の中で2人だけになったということだ。

 

籠池氏は木曜日の国会の委員会で次のように語った。「奥様は、“どうぞ、これは安倍晋三からです”と仰いました。そして、100万円が入った封筒をくださいました。安倍夫人はこのことについて全く覚えていないと言っておられますが、これは私たちにとって大変名誉なことですから、私はこのことをきわめてはっきりと覚えております」。

 

先週、安倍首相は寄付をしたという話をきっぱりと否定した。しかし、籠池氏は、国会で宣誓した上で、寄付を受けたという話を繰り返した。そのため彼の発言は重みを増す可能性が高い。籠池氏は偽証をした場合には罪に問われることになる証人喚問を受けた。これは5年ぶりのことであった。

 

菅義偉官房長官は木曜日、再び寄付をしたという話を否定した。そして、主張の食い違いを解消するために安倍昭恵夫人が証言を行うことを求める可能性はないと断言した。

 

菅官房長官は記者団に対して「法的な問題とはならない行動についてある人物を喚問することには慎重でなければならない」と語った。

 

籠池氏は日本会議と関係を持っている。日本会議は愛国主義を標榜するロビー団体で、彼らはアメリカが起草した平和主義的な日本国憲法の改定を主張している。日本会議には、安倍晋三首相と安倍内閣の大臣10人以上がメンバーとして参加している。

 

木曜日の夕方、外国特派員協会で行った会見の中で、「素晴らしい仕事をしている」と確信していた首相に対して、厳しい発言をする決意をしたのはどうしてか、その理由について次のような示唆を与えた。

 

籠池氏は、自分は土地の確約売却を巡るスキャンダルで「スケープゴートとして使われ」たくないし、安倍夫妻が森友学園の教育哲学を支持する旨のメッセージから離れたことを怒っていると述べた。

 

籠池氏が経営する幼稚園は、園児たちに皇室の人々の写真の前でお辞儀をすること、毎日国歌を歌うこと、1890年に出された国家のために自身を犠牲にすることを強調した教育勅語を学ぶことを必修としていることで、人々の関心を集めている。この幼稚園の元園児の保護者たちは大阪府に対して、虐待と人種差別があったとし調査をするように求めている。

 

麻生太郎財務大臣は、土地の値段が9億5600万円から1億3400万円に引き下げられたことについて、これは土地に含まれていた産業廃棄物を除去するコストを除いたものだと述べた。しかし、建設コストに関する論争が起きている中で、学校の開校計画は撤回された。そして、財務省は土地の買い戻しを計画している。

 

防衛大臣稲田朋美は、弁護士時代の2004年に行われたある訴訟で森友学園の代理人をしていたことを国会で否定していたが、先週、それが誤りであったことを認め謝罪した。稲田大臣はこのために騒動の渦の中に巻き込まれている。

 

今月になって各社が発表した世論調査の結果では、内閣の支持率は3%から10%の間で下落した。しかし、それでも約50%は維持している。衆議院議員の任期(総選挙)は来年である。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)








 

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 古村治彦です。

 

 このブログでも書きましたが、「教育勅語は現在の教育現場に出てきてはいけない文書」だと私は主張しています。それは私の勝手な考えではなく、国権の最高機関である国会が、衆議院では「教育勅語等排除に関する決議」、参議院では「教育勅語等の失効確認に関する決議」として、教育勅語には何の効力も効果もないということを決議しているからです。日本国憲法が最高法規であり、それに反する法律は日本には存在できません。そして、参議院の決議は、教育現場に関する指導的な法律である教育基本法(日本国憲法に反しない)に反するという理由で教育勅語は失効しているのだと述べています。

 

 今年2月から問題になっている森友学園に対する国有地の格安払下げ、瑞穂の國記念小學院開校認可に関する疑惑の中で、森友学園の教育方針にも注目が集まりました。森友学園が運営する塚本幼稚園では約15年前から教育勅語を園児たちに暗唱させるという教育を行ってきました。教育現場に教育勅語がふさわしいのかどうかについて、松野文科相は、「教育勅語を教育の源泉として扱うことは適切でない」と国会で答えていました。

 

 しかし、今週になって、しれっと次のように語るようになりました。下に貼り付けた記事をまずはお読みください。

 

(貼りつけはじめ)

 

●「教育勅語巡り、松野文科相「教材、配慮あれば問題ない」」

 

水沢健一

朝日新聞

20173141406

http://www.asahi.com/articles/ASK3G3DYFK3GUTIL00L.html

 

 松野博一文部科学相は14日、戦前・戦中の教育勅語について、憲法や教育基本法に反しないような配慮があれば「教材として用いることは問題としない」との見解を示した。配慮が適切かどうかの判断は「(都道府県などの)所轄庁が判断するものだ」とした。

 

 教育勅語は、明治天皇が1890年に教育の根本理念として授けた「教え」。両親への孝行など一般的な道徳を表す項目がある一方、国民は「臣民」とされ、国家の一大事には「皇室国家」のために尽くすと書かれている。

 

 松野文科相は14日の記者会見で、教育勅語が「日本国憲法と教育基本法の制定によって法制上の効力を喪失した」としたうえで、「憲法や教育基本法に反しないように配慮して授業に活用することは一義的にはその学校の教育方針、教育内容に関するものであり、教師に一定の裁量が認められるのは当然」と述べた。(水沢健一)

 

(貼りつけ終わり)

 

 松野文科相は、「憲法や教育基本法に反しないように配慮して」授業に活用することは学校の教育方針に関するもので、教師が決めることだとしています。松野文科相は、法律違反、憲法違反の危険を学校の先生方、特に公立学校の先生方(公務員)に冒させようとしています。また、教育基本法に則りながら運営されるべき学校現場に法律違反の危険を冒させようとしています。

 

 日本史の授業で1890年に教育勅語が制定された、という事実を教えることは問題ないでしょう。また、大学などで教育勅語を研究対象とすることは当然の行為でしょう。しかし、教育勅語を道徳の授業で使うことは教育基本法違反になる可能性があります。そんな危険を冒さなくても、親子や兄弟姉妹、友人や皆が互いを傷つけあわずに仲良くというようなことは別の教材でも十分に教えることは可能です。また、そのような道徳は個人的な良心の問題であって、天皇の言葉だからと身につけることではありません。

 

今回の発言で松野大臣が念頭に置いているのは、森友学園が開校しようとしていた瑞穂の國記念小學院(認可申請取り下げ)のことだと思いますが、この学校のウェブサイトには「道徳(教育勅語)」としてありました。認可申請が取り下げられたので、この学校での道徳の授業は行われませんが、もし道徳として教育勅語が教えられていたら問題になっていたと考えます。ですから、教育勅語についてはっきりと否定ができないと述べることができない松野文科相は問題です。松野博一文科省は、日本会議国会議員懇談会の一員です。ですから、教育勅語についてはっきりと否定できないのだと思いますが、教育勅語について擁護したければ少なくとも文科相を辞任されてからなさるべきでしょう。いや、公務員の憲法遵守義務違反にも該当するかもしれませんから、国会議員も辞めて、擁護活動をなさるべきかもしれません。

 

 「教育勅語には良いことがたくさん書いてある」という主張があります。そのように考えることは構いませんし、教育勅語を復活、つまり教育基本法に代わる日本の脅威の指導原理にしようと訴えることは自由です。しかし、そのためには日本国憲法を全面的に改正しなければなりません。教育勅語の内容と日本国憲法の理念は合わないものだと衆参両院の決議は述べています。そして、日本国憲法に反する法律や勅語は存在できませんし、天皇をはじめ全ての公務員には憲法遵守義務があります。ですから、日本国憲法を全面的に改定、もしくは破棄して大日本帝国憲法を復活させねばなりません。そうなると、主権者は天皇ということになります。現在は国民主権ですが、天皇主権ということになります。教育勅語の中で徳目が続いて最後に「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」という一節をどう訳すかが問題です。試訳では、「ひとたび天皇が主権者の大日本帝国にとって重大なことが起きたら、勇ましく奉公し、これまで栄え続けてきた天皇家のますますの発展に貢献せよ」ということになります。この一節は、やはり天皇大権が前提になっていると考えますから、この一節が入っている教育勅語は日本国憲法下の日本では復活できません。また、曲がりなりにも国民主権と基本的人権の尊重、民主政治体制が前進してきた日本が後進してしまうことも許されません。

 戦前の日本ではしかしながら、「天皇主権説」と「天皇機関説」が併存していました。顕教と密教という言葉で表現されていましたが、表向きは天皇が大権を統べるとなっていましたが、裏では主権は国家に属すると考えられてきました。天皇機関説によって議会は重要な役割を果たすことが出来ました。しかし、1935年から天皇機関説排撃が始まり、天皇を絶対視する勢力が軍部と結託し、亡国の道を進みました。ですから、大日本帝国憲法を復活させることは、いつ天皇絶対勢力が出現し、民主的な制度を窒息死させるか分からない危険なものですから、大日本帝国憲法の復活もまた歴史の進歩に反するものと言えます。 

 

 私個人の見解では、「教育勅語」をアホダラ経のように暗唱させたところで効果は薄いと考えています。戦前には「陸海軍軍に賜る勅諭」、通称「軍人勅諭」というものがありました。これは、旧日本帝国陸海軍の上は元帥から下は二等兵、新兵までに与えられた天皇からの「お諭しの言葉」です。陸軍は全員がこれを暗唱することが義務とされ、海軍ではその精神を理解しておくことが必要とされました。昔の陸軍士官学校の様子を収めた映像では、毎朝生徒たちは故郷に向かって遥拝し、その時に軍人勅諭を大声で暗唱していました。軍人勅諭の中身は軍人の心構えとして必要な内容が書かれていましたが、特に「政治にかかわってはいけない」と書かれていました。終戦の時の鈴木貫太郎首相は海軍大将でしたが、首相に推挙された際に、「私は明治大帝から軍人は政治にかかわるなというお教えを受けたので、できない」といったんは断ったところ、侍従長として仕え、大きな信任を受けていた昭和天皇から「頼むから」と言われて、ようやく引き受けました。一方、陸軍は中堅将校たちが政治に関心を持ってしまったがために満州建国や中国侵略を行ってしまいました。勅諭という「ありがたい」言葉をただの言葉にしてしまったのです。言葉をただ唱えているだけでは意味がないと思うのです。

 

 教育勅語が素晴らしいと考えることは自由ですが、それを「復活」させる、つまり教育の指導理念とすることは今のままではできませんし、私はそのような復活には強く反対します。それにつながるような動きにも強く反対します。

 

(終わり)









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 古村治彦です。

 

 今回の森友学園・塚本幼稚園、瑞穂の國記念小學院(認可取り下げ)を巡るスキャンダルが大きな注目を集めていますが、その理由の一つが安倍昭恵夫人の存在です。安倍昭恵さんが園児たちに教育勅語を暗唱させ、天皇皇后の写真に最敬礼をさせる教育方針に感動し、講演を引き受け、園児たちの激励に涙を流して喜び、小学校の名誉校長になっていたということで大きな関心を集めました。

 

 安倍昭恵さんの存在は、安倍首相にとっては、批判を和らげる、物分かりの良い配偶者という姿を演出するのに役立つ存在でした。昭恵さんの予測不可能な行動は人々の注目を集め、男女問わず、賞賛を集めていました。

 

 しかし、昭恵さんの実像が明らかになるにつれて、「なんだ、結局、安倍さんと同じじゃないか」という失望と共に、賞賛されていた奔放さがただの無責任な行動ということになりました。

 

 昭恵さんの存在のお蔭で、首相夫人の取り扱いはどうあるべきか、「公人」か「私人」かということについて議論がなされるようになりました。これまで控え目で表に出ないのが首相夫人の姿でしたが、昭恵さんがこれをより「ファーストレディ」の方に近づけてきたことは事実です。しかし、諸外国のファーストレディのように、国民的にコンセンサスが得られる分野や問題での活動ではなく、昭恵さんは自分の嗅覚だけを頼りにフラフラとうろついてしまったために、今回のような問題が起きてしまいました。

 

 私たちは、日本にもファーストレディ執務室を作るべきなのかどうかを考えねばなりません。そうしなければ個人の嗅覚だけで行動して、今回のような問題を引き起こすことになります。その点で、問題提起をしてくれた昭恵さんには敬意を表するべきでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

人気のある日本の首相夫人はスキャンダルを巡り、教育的指導を受けている(Japanese PM’s popular wife gets schooled over scandal

 

アンナ・フィールド筆

2017年3月13日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/news/worldviews/wp/2017/03/13/japanese-pms-popular-wife-gets-schooled-over-scandal/?utm_term=.442e1c72da92

 

東京発。安倍昭恵氏は日本の首相の秘密兵器だと長い間考えられてきた。

 

温かい人柄、品がよく、社会問題ではリベラルな考えを持ち、ソーシャル・メディアを活用している。これらが安倍昭恵夫人の特徴であり、安倍晋三首相にはないものばかりだ。昭恵夫人は安倍首相のカリスマ的な性格の裏にある、あまり知られていない人間的な側面を人々に知らせることに貢献してきた。

 

安倍晋三首相が愛犬ロイと遊んでいる写真が昭恵夫人のインスタグラムで見られる。また、2人が笑顔で、フォロワーたちにメリークリスマス、素晴らしいクリスマスになりますようにと願っている写真も見られる。昭恵夫人は公の場で夫の手を握る。これは日本ではかなり珍しい光景である。

 

2014年に『ワシントン・ポスト』紙は昭江夫人について次のようなプロフィールを紹介した。

 

「日本では妻が夫に従うというステレオタイプがあったが、安倍昭恵夫人はこのステレオタイプを否定している。明恵夫人は夫の政策に反対していることを公表している。安倍首相は日本のエネルギーにとって原子力は必要だと熱心に訴えているが、昭恵夫人は原子力に反対している。昭恵夫人は防潮堤計画に反対し、夫が韓国政府と戦っている時に韓国文化を楽しんでいる。安倍首相は昭恵夫人を「家庭内野党(“domestic opposition party”)」と呼んでいる」。

 

「今年の初め、昭恵夫人はゲイプライドパレードに参加した。日本ではLGBTに関する諸問題を議論しない国だと考えられてきた。また、自分たちが不妊治療を受けたことを公表し、一度は養子を迎えることも考えたと述べた。これは日本ではほとんど例のない振舞いである」。

 

これ以降、昭恵夫人はアメリカ軍のヘリパッド建設に反対する人々が集まる場所を訪問した。このヘリパッドは安倍首相率いる日本政府は建設が必要だと主張しているものだ。昨年夏にはパールハーバーを訪問した。それから数カ月後の12月、夫の安倍晋三首相は当時のバラク・オバマ米大統領と共に歴史的なパールハーバー訪問を行った。

 

しかし、現在、安倍昭恵夫人に関して、日本のマスコミと日本の人々は彼女の不適切な行動に注目している。昭恵夫人は、ヘイトスピーチとうさんくさい土地取引を巡る政治スキャンダルの中心にいる。そして、昭恵夫人の役割と影響力について疑問が出ている。スキャンダルは終息していない。

 

安倍首相は今月初め、国会で昭恵夫人を擁護して次のように述べた。「私の妻は私人(private figure)です。私の妻を犯罪者のように取り扱うことについては大変不愉快です」。

 

今回の疑惑は大阪府にある幼稚園が出した手紙とヴィデオ映像が発端となった。手紙には、2つのグループ、中国人と日本に住む韓国人が「邪悪な考え」を持っていると描写され、ヴィデオ映像では、子供たちが、安倍首相が中国人と韓国人を「改悛」させようとしている試みを行っており、それを支持していると述べている姿が映っている。

 

この幼稚園を運営する学校法人は現在小学校の建設を進めていて、その名前を一度は「安倍晋三記念小學院(Shinzo Abe Memorial Elementary School)」にしたいとしていた。 昭恵夫人は名誉校長に就任する予定であった。また、実際に小学校の場所を訪問した。

 

安倍昭恵夫人は2014年12月と2015年9月の2度、この幼稚園で講演を行った。2度目の講演では、聴衆に対して、「私の夫もこの幼稚園の教育方針は素晴らしいと考えています」と述べた。

 

この学校法人が大幅に値引きされた価格で土地と購入したことが明らかになった。土地の価格は評価額の14%という破格のものであった。小学校開校の認可は取り下げられ、政府当局は土地の返還を求めている。しかし、議論は終息していない。

 

安倍首相は、自分自身もしくは妻が間違ったことに関与していないと強く否定している。明恵夫人はスキャンダルが発覚後に名誉校長を辞任した。安倍首相は繰り返し、昭恵夫人は私人、民間人だと述べている。

 

昭恵夫人は今回の論争について一度だけ公にコメントした。彼女は現在マスコミの注目を浴びていることに戸惑っていると述べた。

 

昭恵夫人は先週、世界女性デーを祈念する討論会に出席し、「私がどうして現在の状況に置かれて、多くの注目を浴びているのかを考えると、ただただ当惑してしまうだけなんです」と述べた。昭恵夫人は、学校を巡るスキャンダルに直接言及しなかったが、「再びファーストレディになってから、私の活動範囲は拡大しました。私はたくさんの場所を訪問しました。様々な事柄について様々な人々から頼みごとをされます」と語った。

 

「ファーストレディ」という概念は、日本では比較的新しいものだ。8年前まで、日本の首相夫人のほとんどはスポットライトの外にいた。2006年から2007年にかけての安倍首相の第一次政権期、昭恵夫人は現在よりも目立ってはいなかった。

 

しかし、昭恵夫人は、安倍首相の第一次政権期にワシントンを訪問した際にローラ・ブッシュ大統領夫人(当時)に感銘を受けたとこれまで何度か語っている。2007年、ローラ夫人は昭恵夫人と一緒にマウント・ヴァーノンにあるジョージ・ワシントンの邸宅を訪問した。安倍昭恵夫人は、ミッシェル・オバマ大統領夫人(当時)と日本語プログラムを実施しているヴァージニア州北部の小学校を訪問した。

 

コメンテイターのフィリップ・ブレイザーは『ザ・ジャパン・タイムズ』紙で、「ファーストレディという役割が日本では比較的新しいものであるので、昭恵夫人と政府との関係を見ていくことは大事なことだ」と書いている。更に続けて次のように書いている。「昭恵夫人はこれまでの日本の首相夫人よりも、英語の単語である“ファーストレディ(first lady)”に近い行動をしてきた。そして、首相夫人(prime minister’s wife)に関する人々の受け止め方を変化させてきた」。

 

政治評論家の小林吉弥は、安倍昭恵夫人はこれまで、夫である安倍晋三首相に大きな利益をもたらしてきたと指摘する。小林は朝日新聞の取材に対して、昭恵夫人の影響力は「大きい」と述べ、「外国訪問中に外側に向けて話ができる人がいることは外交上大きな利点となる」と語った。

 

現在、安倍昭恵夫人は違った理由で注目を集めている。国会議員たちは、今回の問題に関して昭恵夫人を国会に招致して質問することを要求している。

 

今月初め、野党第一党の民進党所属の榛葉賀津也参議院議員は記者たちを前にして次のように語った。「昭恵夫人は公人(public figure)です。彼女には、どうして名誉校長の依頼を受け入れたのか、どうして講演を引き受けたのかについて説明する責任があります」。

 

ファーストレディという役割が日本ではまだ新しいもので、また、日本版「イースト・ウィング(訳者註:アメリカ大統領夫人執務室)」について議論されてこなかった。野党の国会議員は、内閣府に対して昭恵夫人がどのようなサポートを受けてきたのかを明らかにするように求めた。

 

首相の広報担当は、安倍昭恵夫人には2人の常勤、3人の非常勤のスタッフが中央官庁から派遣されている、また公務の時には政府の自動車を使っていると答えた。

 

左派の新聞である朝日新聞は今月初め、社説の中で次のように書いている。「たとえ安倍昭恵夫人が個人の能力の範囲内で活動しているとしても、首相夫人は慎重さを示し、責任感を持たねばならない」。

 

社説には「公的な立場にある個人として、安倍昭恵さんにはこの問題について人々が納得するような説明をする責任がある。“民間人”として彼女自身を隠すようなことをしてはいけない」と書かれていた。

 

匿名のある野党議員は、今回のスキャンダルは切り抜ける方法がないと述べている。この議員は『東京スポーツ』紙の取材に対して、首相の最側近の名前を出しながら次のように語った。「菅官房長官は安倍政権内にいてこれまでいくつかのスキャンダルのダメージコントロールをしてきました。その方法は基本的にトラブルを起こした大臣を更迭するというものでした。しかし、菅官房長官は昭恵さんを首相夫人から引きずりおろすことはできませんし、離婚するように言うこともできません。この問題は尾を引きますよ」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)









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 古村治彦です。

 

 今回は、『ブルームバーグ』誌の森友学園・塚本幼稚園を巡るスキャンダルに関する記事をご紹介します。そして、この記事を書いた記者が昨年に行った安倍昭恵さんへのインタヴューを基にした記事を併せてご紹介します。

 

 イザベル・レイノルズ記者は、安倍昭恵さんにインタヴューを行い、それが記事になったのが昨年の12月、そして、先週の金曜日に、森友学園スキャンダルについて記事を書いています。これまでご紹介した他の欧米の新聞や雑誌に比べて、ややトーンがやわらかく感じるのは、やはり記者自身が安倍昭恵さんと直接会って話をしているということが影響しているのだろうと思います。安倍昭恵さんは直接話せば、魅了されてしまうような魅力を持っている人なのだろうと推察されます。しかし、綺麗なバラにはとげがあるとも言います。

 

 安倍昭恵さんのインタヴューを読むと、彼女の中に、「アメリカに占領されてしまって、アメリカ文化が入ってきたために、日本の良い部分が失われた」という考えが確固としてあることが分かります。明恵さんが大麻解禁に熱心なのは、戦後に大麻の栽培がアメリカによって禁止されて、それで神道の儀式で使う麻繊維が日本製ではなく、中国からの輸入に頼るようになったからだということが分かりますし、彼女が開いたレストランでは、日本で採れた食材のみを使っているのもその延長でしょう。彼女の中で、大麻解禁と瑞穂の國記念小學院の名誉校長になることは矛盾しないのはそのせいです。この点では、結局安倍昭恵さんと安倍晋三さんはぴったりのご夫婦であり、このご夫婦が分業して、「アメとムチ」をやって、人々の支持を惹きつけてきたことが現在の状況を生み出しています。ですから、「アメ」である昭恵さんの存在は厄介なものです。今回のスキャンダルでしかし、この危険性が明らかになっていくと思います。

 

 彼女のインタヴュー記事を読んだ後で、スキャンダルをめぐる記事を読むと、やや擁護している感じがするなという印象を持ちます。

 

レイノルズ記者は、「安倍首相は今週、国会で「私は公人ですが、妻は民間人です。妻を犯罪者化のように取り扱うことは極めて不愉快です」と発言した」と書いています。これは確かにそのような発言はありましたが、質問者は誰も安倍昭恵さんを犯罪者であると発言していません。それどころか被害者ではないのかという懸念を示唆している人たちもいます。これは阿部首相自身の変な印象操作による、答弁逃れでしかありません。そうした文脈を無視して、この発言を特別に取り上げている点で、少し擁護しているんだろうと思われます。

 

 安倍首相の支持率が高いこと、自民党の党大会で総裁任期が3年、3期までということで、戦後では最長の10年の首相在任と言うことも視野に入ってきました。安倍首相の人気を支えてきた一つの要素として、昭恵さんの行動と存在があるのは間違いないところです。しかし、森友学園の報道が続いていく中で、安倍首相の在任期間が10年に届くかどうか、少し心許なくなってきていると言えるでしょう。

 

(貼りつけはじめ)

 

●「党大会を前に幼稚園を巡るスキャンダルが安倍首相に付きまとう(Kindergarten Scandal Dogs Abe Ahead of Party Meeting)」

 

イザベル・レイノルズ筆

ブルームバーグ

2017年3月3日

https://www.bloomberg.com/politics/articles/2017-03-02/nationalist-kindergarten-scandal-dogs-abe-ahead-of-party-meeting

 

●安倍首相は妻の学校との関係、更に土地取引の件で厳しく追及されている

●トランプとの会談で上がったが支持率が6ポイント下落と日経新聞が報道

 

日本の歴史上、最長の在任期間を誇る首相になるための段階に進む前のこの数日間、安倍晋三首相は妻と国家主義的な教育を行う幼稚園を巡るスキャンダルに対峙している。

 

安倍氏が首相になって4年間が過ぎた。この週末、与党である自由民主党の党員たちは、安倍首相が党の総裁に3期連続在任することができるようにするための規則の改定に無条件の賛成を示そうとしている。これによって、安倍氏の首相在任が10年に及ぶ可能性も出てきた。

 

安倍首相の支持率は概して安定している。世論調査の数字では、彼の支持率の李悠馬は良く分からないが、安倍首相の政権担当期間中に失業率が1990年代中盤の数字にまで下がっていること、野党第一党の民進党が2012年の総選挙での惨敗の後で再建に苦闘していることが考えられる。

 

それでも、今週末の彼の大勝利の瞬間が森友学園を巡るスキャンダルで怪我される危険が出てきている。森友学園は大阪で幼稚園を運営しており、この幼稚園は戦前の国家主義的な要素を含むカリキュラムでの教育を行い、安倍首相を支持しているということが明らかになった。

 

森友学園が、野党側が述べているように評価額よりもかなり低い値段で土地を購入できたことについて、いくつも疑問が浮上している。この土地取引は、森友学園が小学校を開校して業務を拡大しようとした計画の一部である。

 

●ゴミのある土地(Waste Site

 

安倍首相や昭恵夫人(学校の名誉校長に就任させられた)が土地取引に関与したことを示す証拠は出てきていない。そして、学園の理事長である籠池泰典氏は土地の価格について政治家に働きかけを行ったことはないと述べた。籠池氏は産経新聞の取材に対して、敷地内から実際にゴミが見つかったと答えた。

 

安倍首相はこの問題から距離を取ろうと努めている。そして、土地取引に関して、自身もしくは昭恵夫人が関わっていることを示す証拠が出たら辞職すると述べた。そして、木曜日、いかなる調査にも協力すると表明した。野党の山本太郎議員は、証拠を出してもらうために、昭恵夫人に国会に出席してもらって質問を受けてもらうように求めた。

 

今回の問題は国家審議の多くの時間を占め、マスコミにとっては格好のテーマとなっている。月曜日に発表された日経新聞による世論調査では、安倍首相に対する支持率は6ポイント下がり、60%であった。2月に行われたドナルド・トランプ米大統領との首脳会談の後に上昇した支持率は少し低下した。それでも、政治アナリストであるスティーヴン・リードは、安倍首相は「各種のスキャンダルに上手に対処している」と述べている。

 

●中国の反応(China Reacts

 

政治腐敗に関する著書もある東京にある中央大学の政治学教授スティーヴン・リードは、「大事なことは人々を素早く切り捨てること、そして、何も嘘はないと明らかにすることです。しかし、安倍首相は妻を切り捨てることはできませんし、野党側は、このことをニュースにすることに成功しています」と述べた。

 

中国の国営メディアもこの騒ぎを報道している。日中両国は現在、領土と安倍首相の軍隊の役割を拡大させようという努力を巡って緊張関係にある。新華社通信は木曜日、記事の中で、「火のないところに煙は立たないものだ」と書いた。

 

塚本幼稚園は、子供たちに天皇の写真に頭を下げさせること、19世紀に出された教育勅語を暗唱刺させることで知られている。こうした行為は第二次世界大戦での日本の敗戦後、行われなくなったものだ。先月、幼稚園は、「外国人の間で誤解を引き起こす可能性」を持つ表現を使ったことについて謝罪した。共同通信によると、籠池園長は韓国人と中国人に対する差別的な発言を行った疑いで調査が行われた。

 

昭恵夫人は予定されていた役職から身を引いたが、森友学園との妻との関係を巡って国会では安倍首相への追及が続いている。今週、フジテレビで放映された映像の中で、昭恵夫人が幼稚園を訪問し、園児たちが「日本と日本人のために働いている安倍晋三内閣総理大臣を献身的に支えている」ことに感謝するという言葉を大きな声で一斉に述べた時に、涙を流した様子が映っている。

 

安倍首相は今週、国会で「私は公人ですが、妻は民間人です。妻を犯罪者化のように取り扱うことは極めて不愉快です」と発言した。

 

昭恵夫人は昨年にブルームバーグが行ったインタヴューの中で、日本は、西洋文化を取り入れたことで、アイデンティティのいくつかの要素を失ったように感じていると述べた。

 

自民党所属の参議院議員で元防災大臣の鴻池祥肇は記者たちに、森友学園から献金は受けたが、土地取引に関しての助力を求められたが拒否したと述べた、と水曜日に読売新聞が報じた。

 

テンプル大学日本校の非常勤研究員であるマイケル・キューセクは、YouTubeにアップした動画の中で、幼稚園のカリキュラムよりも、学園を巡るお金の動きの方が安倍首相を傷つける可能性があると述べた。

 

今回の自民党大会は、「安倍氏にとっての戴冠式となるはずであったが、にわかに彼がこれまで経験したことのないスキャンダルが起きた」と、キューセクは述べている。

 

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●「日本のファースト・レディーは安倍氏への家庭内ホットラインで批判を行う(Japan’s First Lady Offers Critics a Household Hotline to Abe)」

 

イザベル・レイノルズ、エミ・ノブヒロ筆

ブルームバーグ

2016年12月5日

https://www.bloomberg.com/news/articles/2016-12-04/japan-s-first-lady-offers-critics-a-household-hotline-to-abe

 

●安倍昭恵夫人は貿易、原子力発電、国防政策に反対している

●総理大臣夫人のフェイスブックのタイムラインには平和への願いがつづられる

 

高い支持率を誇る安倍晋三氏は、現代史において最長の在任期間を誇る首相となる可能性も囁かれている。そのような安倍首相にはひとりよがりになるリスクがある。そこで、29年間、安倍首相の妻をしている安倍昭恵氏の出番だ。

 

日本の大製菓会社の家に生まれ、現在54歳になる昭恵氏は、日本では、「家庭内野党(the household opposition)」として有名だ。これは、昭恵氏が、TPP貿易協定、原子力技術の輸出の拡大、沖縄における米軍基地の拡大といった安倍氏の政策に反対を表明しているからだ。

 

先週、東京の中心部で4年前に彼女が開店したレストランでインタヴューを行った。昭恵氏は、「私の夫や近い人々には届かないような考えを取り上げて、伝えたいのです。これが野党のようだと思われたんだと思います」と語った。

 

昭恵氏は伝統的な首相夫人のイメージから離れようとしている。伝統的なイメージは、妻は夫に従い、裏で色々と助けるというものだ。更に驚くべきことは、安倍首相の政策に対する批判を表に出すことが、62歳の保守派の論客にとってアピールとなっているということだ。

 

元経済産業省の官僚で、現在は明治大学国際総合研究所客員研究員の奥村準は次のように語っている。「昭恵氏はこれまでの首相夫人の枠では捉えきれません。日本国内の誰も、アメリカのファースト・レディーでも、あの方のようには行動できないでしょうね。興味深いことは、昭恵氏の行動や言動が安倍首相を傷つけていないということです。実際には、安倍首相のイメージを和らげています。安倍首相は全く異なる考えや視点を許容できているという風にです」。

 

●ソーシャル・メディア(Social Media

 

Uzu」という名前のオーガニック食材を使う小さなレストランでインタヴューは続いた。昭恵氏は、人々から聞いた批判的な意見を夫に伝える時にはそれに適した時間とタイミングに行うようにしようとしていると述べた。

 

昭恵氏は、「毎日、野党の方々が批判されていて、私が家に帰ってきて批判を始めたら、夫は止めてくれと言うでしょうね」と語る。続けて、「妻として、夫をあまり攻撃したくないと思うときももちろんありますが、時には、どうしても言わなければならないことがあると思うときもありますよ」とも述べる。

 

昭恵氏は日本の総理大臣夫人では初めて積極的にソーシャル・メディアを活用している。彼女のフェイスブックのページには彼女の考えについて、多くの賞賛と批判の声が寄せられる。フェイスブックでは10万以上のフォロワーを持っている。彼女は口汚い書き込みをするフォロワー以外にはブロックすることはない。

 

彼女は今年11月にフェイスブックに書き込みを行いその中で、「世界平和について語る前に、私自身のタイムライン内での平和を達成したいのです」と書いた。

 

昼食をともにしながらのインタヴューの中で、「中には、私に大きな期待を寄せて下さる方もいます。夫とは逆の意見を持つ方で、私に対して夫にもっと強く言うようにと批判する方もいます。私たち夫婦の間で意見が異なるのにどうして一緒にいられるのかと質問する方や離婚しなさいと言う方までいるんですよ」と言って、昭恵氏は笑った。「ほっといてください、ですよね」。

 

●メディアの注目(Media Storms

 

昭恵氏は、幼稚園から高校まで、上流の過程の子女が通うカトリック系の学校に通った。そして、女性だけの専門学校に進学した。彼女は卒業後、日本最大の広告会社である電通に入社した。電通の上司が安倍氏を紹介する算段をした。今年初めのある雑誌のインタヴューの中で、子供を授からなかったことについてあれこれ言われることに対して、苦言を呈した。

 

昭恵氏の行動はしばしば彼女の言葉よりも雄弁だ。今年8月、彼女は、警察による警備や秘書の同行もなく(without a police escort or secretaries)、予告なく沖縄を訪れた。彼女は沖縄本島北部のアメリカ軍のヘリパッド建設反対の人々の許を訪れた。彼女は、夫には反対される恐れがあったので、相談しないで訪問したと述べた。

 

メディアが注目したもう1つの行動が、8月の後半にハワイのパールハーバーで祈りをささげる姿であった。パールハーバーは日本が奇襲をかけた場所で、この攻撃によって、アメリカは第二次世界大戦に引きずり込まれることになった。彼女の弧の行動が、安倍首相の日本首相初のパールハーバー訪問を促したという見方も出たが、公式訪問がこのように急に決まるということはない。

 

安倍夫妻は合わないようで合っているカップルだ。そんな2人は1945年から1952年まで続いたアメリカの占領時代よりも前の日本の様々な側面を称賛する点では一致している。安倍首相はたびたび、「戦後レジーム」を批判し、軍隊の役割を拡大するためにアメリカが草案を作った憲法を書きなおそうという熱意を持っていることで知られている。昭恵氏は文化面に興味を持っており、言語と自然により集中している。

 

昭恵氏は自身でオーガニックの米を作っている。そして、日本で取れた食材だけを使った食事を提供する彼女のレストランでその米を出している。彼女はまた、首相公邸に設置しているミツバチの巣箱では日本のミツバチを飼っていると述べた。ヨーロッパのミツバチの方がより多くのハチミツを作るがそれでも日本のミツバチを飼っていると述べた。

 

「戦後、ヨーロッパとアメリカの文化が入ってきて、日本はもともと持っていたものを弱められてしまったと考えています」と昭恵は述べた。

 

昭恵氏は西洋においては自然をコントロールしようと試みると述べる。そして、これは、2011年の大震災の時に起きたレヴェルの大津波から地域を守るために東北地方で進められている巨大な堤防作りもそれと同じだと述べている。

 

●大麻関連産業(Hemp Industry

 

昭恵氏はまた日本の大麻関連産業が失われたことを残念に思っている。アメリカが占領するまで、日本では大麻関連産業が栄えていたが、現在では、33の農家に栽培許可が与えられているだけだ。1954年には3万7000の農家が栽培していた。昭恵氏は、長い間、日本独自の宗教である神道の儀式で麻繊維が使われてきたが、今はその大部分を中国からの輸入に頼っていると語った。

 

昭恵氏は精神に作用しない大麻の栽培と医療目的でのマリファナの使用を主張している。医療用マリファナを支持した参議院議員が辞職したことから、ここ数か月、始まったばかりの医療用マリファナの合法化を目指す運動に対する批判が起こっている。

 

「私はこれまで大麻を吸ったことはありませんし、大麻吸引には賛成ではありません」と述べたが、大麻の産業目的、医療目的での使用まで全て禁止するのは正しくないと考えているとも述べた。

 

安倍氏は2006年に1年だけ首相を務めた。それ以降、昭恵氏はスポットライトを浴びる生活を送るようになった。昭恵氏は夫である安倍晋三氏が3期連続で自民党の総裁に留任し、首相を続けることは素晴らしいことだと考えている。特に、ドナルド・トランプが大統領選挙に当選して、アメリカの政策ははっきりしない時に、世界に強力な指導者として安倍晋三氏が存在することは素晴らしいことだと考えている。

 

昭恵氏は、「私の夫が再び総理大臣になれたのは、努力のせいではなく、運命というべきものです。日本は今、大きな役割を果たす時です」と語った。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)









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