古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。よろしくお願いします。

タグ:外交政策

  古村治彦です。

 

 今回は、外交政策の世界で使われる常套句の裏の意味についての記事をご紹介します。堅苦しくない記事ですので、気楽にお読みいただければと思います。

 

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ワシントンの住人のように外交政策を語るには(How to Speak Foreign Policy Like a Beltway Native

―「地上軍の派遣」から「ご尽力に感謝します」まで、ワシントンでよく使われる外交政策の言い回しを翻訳してみる

 

ローザ・ブルックス(Rosa Brooks)筆

2015年7月10日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/07/10/how-to-speak-foreign-policy-like-a-beltway-native/?utm_content=buffer4b643&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

 夏がやって来た。ビーチでリラックスし、色々と考えてみる時だ。そこで、あなたが二度と使うべきではない言い回しについて考えてみるというのはどうだろう?

 

 私は国家安全保障や外交政策の専門家たち数十人に、彼らが好む(もしくはもっとも好まない)言い回しや表現を挙げてもらった。そして、それらの本当の意味を翻訳してもらった。これらの言い回しや表現は各種文書によく使われているが、より意味のある言葉に置き換えられるべきだが、そうなってはいない。これらの言葉は意味を明確にするよりも、曖昧にするようにできている。これらの言い回しや表現は私たちの語彙から除外されるべきだ。

 

ここからは、彼らが挙げてくれた表現とその翻訳(本音)を掲載していく。読者の皆さんには、コメント欄にお好きな言葉を書いてこのリストを豊かにして欲しい。

 

「恐怖に対する戦争」「テロリズムに対する戦争」

・翻訳:「私たちは彼らが何者なのか知らないし、彼らの動機も分からない。しかし、彼らのことは大嫌いだということははっきりしている」

 

「我々にとっての重要な国益が脅威にさらされている」

・翻訳:「私は何が脅威にさらされているのかをはっきりさせることはできないが、何かをやるためには理由が必要なんだ」

 

「私たちは所有しているすべての手段を使用する必要がある」

・翻訳:「これは本当に骨の折れる仕事になるだろう。恐らく完結することはできないだろう」(これとよく似た表現:国力が許す全ての手段→これもまた使うべきではない)

 

「この問題については、政府全体の努力が必要だ」

・翻訳:「この問題の解決には奇跡が起きねばならない。私たちの力ではどうしようもない」。この翻訳の前には「これは他の誰かに任せるべきだ」とつく。

 

「こうした前進は微妙ですぐに逆戻りしてしまう」

・翻訳:「もしそうした前進がきれいさっぱり消えてしまっても、俺を責めるなよ」

 

「軍隊を投入しての解決はない」

・翻訳:「えっ、軍隊を投入してそれがうまくいくと思っていたの?」

 

「私たちは歴史の正しい面にいる」

・翻訳:「そこまで考えてくれて、ありがとう」

 

「地上軍は出さない」

翻訳:「破壊力抜群だが、効果の薄い空爆を行うようにしよう。そうすれば特殊部隊や“軍事顧問”を戦闘地域に派遣しなくて済む。しかし、彼らが本当にそこにいないということを皆で装いましょうよ」

 

「私たちはこの問題の解決を地元のパートナーによって、もしくは一緒に行う」

・翻訳:「地上軍は派遣しない」

 

「穏健派(シリア人、スンニ派などなど)」

・翻訳:「彼らは私たちと協力することにやぶさかではないだろう。彼らは中東にいる人々のような恐ろしい人たちではない」

 

「民兵」

・翻訳:「私たちは彼らが何者なのか知らないが、何か怪しく見えるから、彼らを殺しても良いんだ」

 

「思想間の戦争だ」

・翻訳:「私の会社に、不格好な、下手な翻訳をされたリーフレットとニュースストーリーを出すためのお金をください。これらを配れば外国の人たちをイライラさせるでしょう。私たちは語り口を確立しなくてはいけない」

 

「ここから変化していく」

・翻訳:「何も起きない。誰もそれが何を意味するか知らない」

 

「これからの6カ月が重要になる」

・翻訳:「これまで何の進展もなかった」

 

IS、アルカイーダ、タリバンなどは、驚くべき程の復元力を持つことを証明した敵対勢力だ」

・翻訳:「私たちの計算は間違っていた」

 

「これは受け入れがたい」

・翻訳:「そうだな、どうでもいいや」

 

「私たちはこれを許さない」

・翻訳:「不快なことを言いますけどね、心配しないで。私たちは何もしないから」

 

「ここが重要な分裂線(レッドライン)だ」

・翻訳:「私はレッドラインとは言っていない。私は、“あの立派なアカマツを見てごらんよ”と言ったのだ」

 

「前進させる、私たちは事態を次のレヴェルに進めるだろう」

・翻訳:「私たちは失敗が続くのを何とか止めようとしている」

 

「私たちは指導力と決意を示すことになる」

・翻訳:「私たちは指導力と決意についてもっと語ることになる」

 

「オフショア・バランシング戦略に移行しなければならない」

・翻訳:「私たちはこれをやってくれる人を探さないといけない」

 

「同盟諸国とパートナーたち」

・翻訳:「俺たちではなく、あんたたちがそれをやるべきだぜ」

 

「高官」

・翻訳:「ホワイトハウスにいる誰か」

 

「マスコミに話すことを許されていない匿名の誰か」

・翻訳:「情報漏洩者」

 

「スノーデンのような人物」

・翻訳:「私たちが大嫌いな情報漏洩者」

 

「少ない労力で多くの成果を」

・翻訳:「おはよう。予算を減らすよ。泣くんじゃない」

 

「軍隊を支持する」

・翻訳:「私は実際に軍人に会ったことはない。しかし、そんなことを少しも気にしない」

 

「ご尽力に感謝します」

・翻訳:「お前イカレてるな、バカ野郎が」

 

「私は軍服に身を包んだ勇敢な男女の犠牲と英雄的行為を心に留めておきたい」

・翻訳:「私は選挙に出ます」

 

「私たちは国土を防衛しなければならない」

・翻訳:「私はファシズムの時代に思い焦がれている」

 

「人間地勢学」

・翻訳:「私たちがよく知らないし、殺害すべきかもしれない人々」

 

「彼らの好意を勝ち取らねばならない」

・翻訳:「彼らを殺してはいけない」

 

「私たちはアジアに軸足を移す必要がある」

・翻訳:「中東全体が機能不全に陥っている」

 

「私たちには政策がある」

・翻訳:「私たちには戦略などない」

 

「私たちはまだ戦略を構築していない」

・翻訳:「私たちはまだ戦略を構築していない」

 

(終わり)





 

 古村治彦です。

 

 今回は、トランプの外交政策について書かれた記事をご紹介します。トランプについては過激な発言が注目されますが、彼の考えの本質をうまくつかまえた記事になっています。是非お読みください。

 


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ドナルド・トランプは首尾一貫した、リアリズムに基づいた外交政策を主張している(Donald Trump Has a Coherent, Realist Foreign Policy

―ドナルド・トランプは過激な発言を繰り返しているが、トランプは世界におけるアメリカの役割に関して大胆な考えを明確に発信している。トランプの外交政策についての考えについては、ワシントンのエリートたちをバカにするだけではなく、真剣に反応しなければならない。

 

ローザ・ブルックス筆

2016年4月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/04/12/donald-trump-has-a-coherent-realist-foreign-policy/

 

ああ、ドナルド、なんてことなの。あなたは口汚い言葉で、狂ったようなことを言い続けている。マスコミはあなたをバカにしている。あなたは吠え続けている。この素晴らしい国アメリカはあなたに感謝している。もしあなたがいなければ、私たちはテッド・クルーズについて話さねばならなかっただろう。何とつまらないことになったことだろう。

 

 しかし、『フォーリン・ポリシー』誌の私の編集担当者たちは、ホワイトハウスの表札に「トランプ」と掲げられた場合のアメリカの外交政策について真剣に書いて欲しいと依頼してきた。この依頼は簡単なものではない。それは、トランプがあらゆる外交政策の立場を取ることが出来るからだ。

 

 何から話を始めよう?

 

 もしドナルド・トランプが大統領になったら、核戦争が起きるかもしれないし、そうならないかもしれない。トランプは、「核兵器が世界中に拡散しているこの世界は恐ろしい。私にとってこの世界が抱える最大の問題は、核兵器とその拡散だ」と語っている。他方、「もし日本と韓国が核兵器を開発し、保有すると決断するならば、それはそれでよい。私たちにとって都合がよい」とも発言している。更に言えば、アメリカの先制攻撃における核兵器行使の話になった時には、「核兵器を選択肢から排除すべきだ」とも述べている。加えて、これは知られていないが次のような発言をしている。「私たちはヨーロッパの地域内で核兵器を使う必要が出てくるだろう。それはそこまで悲しいことではない。何故なら、ヨーロッパは広いし、いくつかの小国が放射能汚染でなくなってもそこまで大したことではない」。

 

 とにかく、NATOについて議論しよう。NATOはそんなに面白い話題ではない。トランプは「NATOを支持する」と述べている。しかし、彼はNATOについて面白くないと感じているので、ウクライナがNATOに加盟するかしないかに関して、「どうでも良い」と発言している。トランプは、「私はNATOのことなんて気にしない。NATOは“時代遅れ”であり、“アメリカに頼りきりの”タダ乗りの国々に溢れている」と発言している。しかし、「そんなことは気にしない!タダ乗りの国々を排除することでNATOが壊れるのなら、壊れてしまえ」と発言している。北大西洋条約機構は「再構成」し、「近代化」することが可能だ。トランプは、「そのためには恐怖感が必要だ。もしくは加盟諸国が一致団結できる何かが必要だ」と述べている。私は、トランプが、「火を消すのに火を用いる」という原理を基にして、NATOをテロリストと戦うためのテロリスト組織にすべきだと考えているとは思わない。しかし、そうではないと言いきれないとも考えている。

 

 更に話を進める。トランプ大統領の下では、アメリカは、テロリストたちに「誰がお前たちよりも上なのか」を示すために水責めのような拷問を行うし、「もっと残酷なこと」をすることになるだろう。彼はイスラミック・ステイトに対して空爆を行うだろうが、それでも効果がない場合には、イスラミック・ステイト参加者たちの妻や子供を捕まえるだろう。彼は「テロリストを倒すためには、彼らの家族を倒さねばならない」と述べている。アメリカ軍に拷問を行うように命じることや非戦闘員を攻撃対象にすることはもちろん違法である。しかし、アメリカ軍はトランプ大統領から出される命令に喜んで従うだろう。トランプは次のように発言している。「私がリーダーだ。私はいつもリーダーであった。私がやれと言えば、彼らはそれをやるんだ」。しかし、トランプはまた全く別のことを言った。彼は、「私は全てのアメリカ人と同じく、法律によって行動を制限されることになるだろう」とも述べた。

 

 とにかく、トランプ大統領の下では、アメリカ軍は強力であるだろうが、今現在軍が派遣されていない状況では、彼が大統領になっても軍が派遣されることはないだろう。トランプは、アメリカ軍が「酷い状況」にあり、破壊され、弱体化していると述べている。ホワイトハウスが世界で最も小さいトランプタワーとなった場合、このような状況は放置されることはないであろう。彼らはトランプ印の魔法の杖を振り回して、予算を削りながら、軍の規模を拡大するという矛盾することを同時にやってのける。その結果、アメリカ軍は「大規模になり、強力になり」、どの国の軍隊も立ち向かうことが出来ない存在になるだろう。しかし、アメリカ軍は、国内でだけで大規模になり、強力になることで満足しなければならないだろう。それは、日本や韓国のようなアメリカ軍を受け入れている国々が駐留経費を更に支払わねば撤退することになるからだ。トランプ大統領は、アメリカ軍を海外の基地から撤退させることになるだろう。

 

 だからと言って、何か問題があるだろうか?トランプは、ヴェトナムからイラクまで、アメリカが行ってきた軍事介入は全て、失敗に終わったと述べている。トランプは「ヴェトナム?あれは酷かった」、「イラク戦争?あれは大変な間違いだった」「リビア?全くもって酷かった」と述べている。イスラミック・ステイトに関してトランプは、「アメリカ軍の幕僚は、2万から3万の正規軍がいれば、イスラミック・ステイトを叩きのめすことはできるが、それがアメリカ軍である必要はないと言っている。中東の国々こそがイスラミック・ステイトを倒すために軍を出さねばならない。私が大統領になっても、米軍を2万から3万派遣するようなことなどしない」と述べている。

 

 ここら辺で十分だろう。私は次のように言いたい。トランプはこれまでメディアにとって格好の嘲りのための材料をこれでもかと提供してきた。しかし、私は共和党の最有力候補トランプをバカにし続けたいとは思わない。

 

 一つには、それはあまりにも簡単で陳腐なことであるからだ。ジョージ・W・ブッシュの「彼らは私のリーダーとしての私を間違って理解している」という見当違いなコトバをバカにするようなものだ。あまりにも陳腐なことなのだ。

 

 もう一つには、マスコミには、反トランプの言葉が溢れかえっている。NBCのアンドレア・ミッチェルは「トランプは世界のことを何も知らない」と述べた。『ワシントン・ポスト』紙のユージーン・ロビンソンは、「トランプの政策に対する無知ぶりにはため息が出るばかりだ」と書いた。CNNのタラ・セトマイヤーは、「トランプは大統領になる資質を少しも持っていない」と述べた。『ニューヨーク・タイムズ』紙の論説委員たちは、トランプは、「言葉遣いが酷く、攻撃的」で、「衝撃を受けるほどに無知」だと書いている。

 

 マスコミからこうした批判を受けても、トランプには全く影響がない。マスコミがドナルド・トランプを笑いものにするたびに、6人の平均的な怒れるアメリカ人たちが彼に投票しているのだ。マスコミのエリートたちがトランプの無知と傲慢さ、愚行を非難するたびに、怒れるトランプ支持者を17人ずつ生み出しているのだ。トランプが大統領になったら、マスコミの人々にこそその責任があるということになる。

 

 最後に、あまり言いたくはないことだが、ドナルド・トランプは狐のように抜け目のない人物なのだ。トランプは、大ぼらを吹き、暴言を吐き、ハッタリを仕掛けているし、矛盾、言い間違い、事実無根の主張を繰り返している。しかし、トランプは国際関係と世界におけるアメリカの役割に関して首尾一貫した考えを持っているのだ。

 

 デイヴィッド・サンガーとマギー・ハーバーマンは、トランプが『ニューヨーク・タイムズ』紙と行ったインタヴューをまとめた記事を書いたが、その中で、トランプの考えをよく描き出している。彼らは次のように書いている。「トランプ氏の世界観では、アメリカは衰退しつつある大国ということになる。そして、アメリカが世界における中心的な役割を再び果たすようになるためには、実利的な交渉が必要だ、としている。 トランプ氏は、戦略的な目標について正確に述べていないが、国際的な争いのほぼ全てを、交渉を通じて解決するとしている。トランプ氏は、アメリカが長年にわたり、より賢く、より洞察力に溢れ、より粘り強い人々によって、バカにされ、嘲りを受け、カネを奪い取られてきたと確信している。アメリカは力の強いいじめっ子のようになっているが、うまく導かれていないと考えている。アメリカはバカないじめっ子になっており、周りの人々から体系的に金を奪い取られていると感じているのだ」。

 

 トランプは暴れん坊だという認識を持たれることを全く意に介していない。しかし、彼は、人々から期待外れだ、騙されたと思われなくないと考えている。だから、トランプは、「サウジアラビアがイスラミック・ステイトと真剣に戦わないのなら、我々はサウジアラビアから石油を買うことを止めるだろう」「中国政府が南シナ海での拡張政策を続けるのは、中国のアメリカ市場へのアクセスを制限する」「NATOや太平洋地域のアメリカの昔からの同盟諸国が負担を引き受けないのなら、同盟関係を解消する」などという過激な発言を繰り返している。

 

 トランプの主張の矛盾、トランプの究極的な戦略的目標が何なのかがはっきりしないこと、そして人々に対して脅威を訴えていることを批判する人々に対して、トランプは、単純明快な、そしてマキャヴェリ的な返事をする。それが「私たちに必要なのは、予測されないということだ」というものだ。トランプにとって、成功する交渉というのは、自分の領域で交渉をするということだ。トランプは、相手に対して、自分が譲っても良い最低線を知らせることはない。そして、常に効果的なはったりを仕掛ける能力を持っている。彼が『ニューヨーク・タイムズ』紙と行ったインタヴューの記録からその一例を見てみる。「もし私が大統領になったら、軍事力を使って特定の紛争を解決すると言うか、言わないか、そんな状況にならないようにするね。私は何も言わないだろう。私は相手に対して自分が何を考えているかを知らせようとは思わないから」

 

トランプはネオコンやリベラル介入主義者たちを全く評価していない。トランプは、「彼らは、アメリカの価値観への盲信のために、アメリカの国益とアメリカの国力の限界に目を向けていない」と考えている。トランプは更に多極主義的な外交官も批判している。彼らは、アメリカの国益を犠牲にして、外国からの友好と協力を得ようとして妥協や取引をしがちである。そして、長年にわたるアメリカの同盟諸国を神聖な存在であると考えている人たちを評価していない。トランプにとって、アメリカの同盟諸国に対しては、不動産の分野における取引相手と同じように、常に次のように問い続けなければならない存在なのだ。「それであなたは私のために一体何をしてくれるというんです?」

 

トランプは彼にしかできないやり方で、ワシントンの民主、共和両党の外交政策にかかわるエリートたちが当たり前だとしてきた大前提に対して、強力な挑戦を行っている。そして、共和党と民主党それぞれの主流派がトランプの主張に対抗しようとするならば、彼の世界観がどうして適切ではないのかを説明することに真剣にならねばならない。そして、そうした説明をする際には、人々が聞き飽きた決まり文句ばかりにならないようにする必要がある。

 

決まり文句はすぐに口を突いて出てくる。アメリカの同盟諸国と同盟関係は大変重要だ。NATOは、アメリカの安全保障の重要な要素である。日本と韓国に駐留する前方展開可能兵力は同盟諸国への安全保障の提供と抑止にとって極めて重要な存在だ。私たちはサウジアラビアとは良い関係を維持しなければならない。どうしてこうしたことが重要なのであろうか?それは、ワシントンにいるすべての人々にとってこれらのことは共同了解事項であるからだ。

 

 しかし、これは学問的、そしてイデオロギー的な怠惰を示している。特殊な言葉遣いを取り除いてみれば、ワシントンの外交政策に関わるエリートたちの間の共通理解は陳腐なものだ。日本、アメリカ、クウェートに米軍を駐留させている理由は何なのか?アメリカが前方展開可能兵力を削減したら、空が落ちてくるような大変なことが起きるのだろうか?私たちはどのような緊急事態について備えていることになっているんだろうか?私たちはどんな人たちやどんな勢力を抑止しているんだろうか、そしてその抑止は機能しているとどのようにしたら分かるんだろうか?私たちはどんな人たちを安心させているんだろうか?財政上と機会の上でのコストはどんなものだろうか?第二次世界大戦後に結ばれた防衛条約と海外基地は今でもアメリカの国益に奉仕する存在であろうか?どんな国益に?どのようにして?サウジアラビアとの同盟からの利益はコストを上回っているか?アメリカにそこまで利益をもたらさない「同盟諸国」に対してそこまで妥協的に接しないなどこれまでのやり方を変えたら、どんな悪いことが起きるのだろうか?

 

 これらの疑問は自然なものであり、かつ重要なものだ。政治家や専門家たちがこれらの疑問に対してきちんと答えようとしないことに対して、一般のアメリカ国民が不満を募らせているのは当然のことだ。

 

 トランプの世界観と国家統治の概念は、私のものとはほとんど一致しない。しかし、トランプの世界観は、国際関係論のある首尾一貫した理論を反映している。それは、リアリズムであり、相互の交渉を重視し、マキャヴェリ的なものである。そして、トランプの世界観は、真剣な、良く考えられた、あけっぴろげなものである。

 

 もし私たちのような外交政策専門家が疑問に答えることが出来なければ、ホワイトハウスの表札に掲げられた「トランプ」という文字が、私たちの経験や知識など陵駕してしまうということになるだろう。

 

(終わり)






 

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 古村治彦です。

 

 今回はアメリカ大統領選挙に絡んで、アメリカ民主党の党政策綱領草稿の中で、特に国際関係に絡む部分を読んでいきたいと思います。党綱領は大統領選挙が行われる4年に1度の民主党全国大会で採択されるもので、民主党候補が大統領になった場合の施政方針となるものです。

 

 今回のアメリカ大統領選挙民主党予備選挙では、ヒラリー・クリントン前国務長官とバーニー・サンダース連邦上院議員が激突し、ヒラリー・クリントンが何とか勝利を収めました。しかし、バーニー・サンダースも多くの代議員を獲得したことで、来たる民主党大会でも大きな発言力を持っています。

 

 今回の党大会では、党綱領(Platform)が採択されるのですが、この党綱領作成委員会にはバーニー・サンダース支持の人々も半数近くを占め、バーニー・サンダースの主張が多く反映されるものとなりそうです。最低賃金の引き上げや学生の債務などに関しては、サンダースの主張が採用されています。また、アメリカの中央銀行である連邦準備制度(Federal Reserve SystemFRS)に関しては、金融業界(ウォール街)への規制を強めることが盛り込まれました。

 

 しかし、環太平洋経済協力協定(TPP)に関しては、バーニー・サンダースは反対していたのですが、反対ということは盛り込まれず、「アメリカの労働者の雇用と労働環境を守る」という内容になりました。

 

 以下のアドレスで民主党の党綱領草稿を見ることが出来ます。

 

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2016 Democratic

Party Platform

DRAFT

July 1, 2016

 

https://demconvention.com/wp-content/uploads/2016/07/2016-DEMOCRATIC-PARTY-PLATFORM-DRAFT-7.1.16.pdf#page=1&zoom=auto,-265,798

 

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 今回は、国際関係に関する部分を見ていきたいと思います。

 

目についたのは、党綱領の中で、「原理原則に則った、信念のある指導者像(Principled Leadership)」というセクションを設け、この中で民主党オバマ政権下での業績を強調し、ドナルド・トランプを批判している部分です。

 

 まずここで、民主党は、「アメリカの経済を成長させ、国益を守り、安全で繁栄した国にするために」、アメリカは世界をリードしていかねばならないと規定しています。これは、トランプのアイソレーショニズム(国内問題解決優先主義)と真っ向から対立する、グローバリズムを掲げています。そして、同盟諸国のネットワークは、アメリカにとっての重荷ではなく、戦略的に大きな利益をもたらす存在であるとしています。そして、アメリカの軍事力を使うのは最後の手段であって、そのためには軍の派遣のための条件が明確に整っていなければならないと述べています。

 

 ここで、過去8年間のバラク・オバマ政権ではこれらの原理原則に則って、重要な前進を遂げたと述べています。オサマ・ビン・ラディンに正義の鉄槌を下し、アルカイーダの中核となる指導部を殲滅し、どん底だった経済を建て直し、各国との同盟関係を改善し、キューバとの国交回復、イランとの核開発を巡る合意も実現したと述べています。これらの成果は上の段に挙げた原理原則に則って実現されたとしています。

 

 そして、これからの課題として、テロとの戦い、気候変動への対処、中国の台頭への対処、インターネット上の安全保障の強化を挙げています。

 

 民主党は、党綱領で、ドナルド・トランプを「民主、共和党両党の歴史の中で、最も大統領に適さない候補者」と非難しています。その理由として、「①もっと多くの国に核兵器を持たせる(日本と韓国の核兵器保有を認める発言がありました)、②アメリカ軍に戦争犯罪に関与させる(テロリストの家族の殺害や拷問を擁護する発言がありました)、③人種、宗教、出身に基づいて人々をアメリカに入国させないようにするために壁を作る(メキシコ国境に壁を作れ、イスラム教徒を入国禁止にしろという発言がありました)、④気候変動やISのような脅威に対処する戦略を持っていない、⑤同盟諸国を見捨て、敵を強化しようとしている」といったことが挙げられています。

 

 更に、ドナルド・トランプは、アメリカが弱く、情けない状態になっていると考えていると指弾し、アメリカは世界で最も大きな経済を持ち、軍隊を持ち、独自性を持つ国で、アメリカの価値観が世界の秩序を作っているとしています。そして、「私たちは壁の後ろに隠れているような国ではない」とトランプを揶揄しています。

 

 全体としては、民主党は、トランプに対して、「無責任で、行き当りばったり、原理原則のない人物」であって、「とうてい大統領にはふさわしくない」と批判しています。

 

 国際関係については、「世界規模の脅威に対峙する(Confront  Global  Threats)」と「世界のリーダーとして(A Leader in the World)」という2つのセクションを設けています。

 

 現在の世界規模の脅威として、テロ、イラン、北朝鮮、ロシア、インターネット公益からの安全対策、核拡散、気候変動を挙げています。アメリカと同盟諸国の平和を守るために、外交と発展援助計画を中心とするアメリカの国力をすべて利用する、戦争は最終的な手段だと述べています。

 

 テロに関し、まずISやアルカイーダを挙げ、これらを打ち破り、これ以上テロ組織が出てこないようにすると述べています。そのために、ISがシリアとイラクで支配している地域を奪還することを目的に、同盟諸国、特にペルシア湾岸諸国の地上軍派遣を求めています。また、2001年に認められた「アメリカ議会軍事力使用権威の承認(Congressional Authorization for Use of Military Force)」(緊急時には大統領がアメリカ軍を派遣することを決定できる権限を議会が与えるもの)の更新をするとも述べています。これは、最終的にはアメリカ軍の派遣も視野に入れた内容です。

 

 シリアについては、ISを打倒し、シリアの反体制勢力、国際社会、地域の同盟諸国をまとめ、交渉によってアサド政権の終焉に向かうようにすると述べています。そして、シリアとイラクの戦いで苦しんでいる市民たちへの援助を行うために国際社会をリードするとしています。

 

 アフガニスタンには、NATO主導の同盟諸国と一緒に、民主的に選ばれた政府の成立の手助けし、その政府がテロと戦えるようにすると述べています。パキスタンにも圧力をかけ、パキスタン国内にテロリストを匿わないようにさせるとしています。

 

 民主党は、テロとの戦いを進めるが、自分たちに害をもたらすような戦術は使わないとしています。ドナルド・トランプのイスラム教徒への中傷を否定するとしています。トランプの中傷は、アメリカの基礎となっている宗教の自由を侵害し、ISの極悪な主張を助長し、テロを打ち破るために重要な人物や国家を孤立させると述べています。

 

「トランプは、テロリストと疑わしい人物の家族を殺し、捕虜を拷問せよと提案し、アメリカ軍に戦争犯罪に加担するように求めているが、我々はこれを拒絶する」と述べています。その理由として、トランプの提案は、アメリカの諸原理に反し、道徳を低下させ、無実の人々の生命を失わせ、アメリカ国民を危険に晒すといったことを挙げています。また、ドナルド・トランプは、中東において間違った指導の下で行われる戦争で多くのアメリカの将兵の命を無駄にしようとしているがそれも拒絶すると述べています。

 

 オバマ政権はイランとの核開発を巡る合意を達成しました。これについては支持し、その実施を強く求めています。トランプはこの合意を破棄すると述べていますが、これについては否定しています。同時に、イランに対しては、テロ支援、人権侵害、ホロコーストの否定、イスラエル打倒といった問題があるために、経済制裁を含む断固たる措置を取ることもあると表明しています。

 

北朝鮮に関しては「地球上でもっとも抑圧的な体制」であろうと述べています。トランプが金正恩委員長は若くして政権の座につき、政敵を粛清してきたことを肯定的に述べ、彼と会っても良いと述べたことを捉え、「トランプは北朝鮮の独裁者を称賛し、日本と韓国、2つの同盟諸国を見捨て、アジアに核兵器の拡散をさせようとしている」と批判しています。そして、党綱領では、中国に圧力をかけて、北朝鮮に核開発とミサイル開発を止めさせるとしています。

 

 ロシアは、近隣諸国に対して状況を不安定にさせる行動を取っているとしています。ウクライナの主権を侵害し、アメリカの国益を損なうような影響圏の再構築を行っていると述べています。また、シリアのアサド政権を援助していると批判しています。そして、ここでもトランプを批判していて、「トランプは毎日テロと戦っているNATOを見捨て、ロシアのプーティン大統領と協力することで、50年以上続けられてきたアメリカの外交政策を転換しようとしている」と述べています。しかし、同時に、プーティンと協力して、米ロの核兵器の削減、イランの核開発プログラムの廃棄、北朝鮮への経済制裁、アフガニスタンへの米軍の再派遣と言った問題を解決する用意があるともしています。「ロシアが周辺に拡大することは認めないが、私たちに協力せよ」ということのようです。

 

 核不拡散について、ドナルド・トランプを批判しています。「ドナルド・トランプはアジアと中東における核兵器の拡散を促進し、核不拡散条約を弱め、ISに対する核兵器使用を排除していない」と述べています。そして、核兵器、化学兵器、生物兵器と運搬手段の世界への拡散を防止したいと述べています。

 

 気候変動に関しては国家安全保障にとっての喫緊の課題であるとしています。北極圏地域における環境保護に力を入れると述べています。ここでもトランプを批判しており、「トランプは気候変動を“ウソ”で中国人のためにこのようなことを言っているのだと述べているが、それは正しくない」と述べています。

 

最後に、民主党綱領では、世界をいくつかの地域に分けて、アメリカがどのような役割を果たすかということを述べています。

 

まず出てくるのは、アジア太平洋地域です。ここが最初に出てくるのは、ヒラリー政権が最も重視する地域であることを示しています。

 

まず、太平洋からインド洋にかけて、オーストラリア、日本、ニュージーランド、フィリピン、韓国、タイ(アルファベット順)といった同盟諸国との関係を強化すると述べています。インドとは長期にわたる戦略的関係を築いていくとも述べています。これはアメリカの対中政策にとって重要な事と言えます。

 

この地域の問題として、南シナ海の自由航行権をも待むこと、北朝鮮の攻撃的姿勢に対抗すること、中国がルールに従って行動するようにさせることを挙げています。中国に対しては、不公平な貿易慣習、通貨操作、インターネット上の攻撃に対処し、中国の人権状況、特にチベット人の人権状況を改善するようにするとしています。

 

 民主党は、「一つの中国」政策と台湾関係法を守り、台湾海峡問題の平和的解決を目指すとしています。その際に、台湾の人々の希望と最大の利益を一貫して考慮すると述べています。

 

 アジア太平洋に関しては、同盟諸国との関係を深めながら、中国に対峙するという姿勢を鮮明にしています。中国軍には直接的な言及はありませんが、経済や人権の面で、中国に対して、中国がおいそれと受け入れることのできないことを求めています。

 

 中東に関しては、イラクとシリアのISの支配地域を奪還すること、難民を迎え入れているレバノンとヨルダンに支援を与えること、湾岸諸国との間で安全保障面での協力関係を維持すること、経済的機会と自由を求める人々を支援することを課題としています。

 

 イスラエルは、戦略的な利益と民主政治体制、平等、寛容、多元主義といった価値観を共有しているので、アメリカにとって重要な国だと述べています。そして、イスラエルの自衛権を常に支持するとしています。

 

 イスラエル・パレスチナ紛争の二国共存による解決のために二国間の直接交渉を進めるとしています。二国共存によって、イスラエルは、確定した国境を持つ安全な、そして民主的なユダヤ国家としての将来を保証し、パレスチナの人々に独立した、主権を持つ、尊厳を持つ国家を与えると述べています。イェルサレムは交渉の最大の難関とし、イェルサレムはイスラエルの首都であるべきで、全ての宗教の聖地だと述べています。

 

 中東に関しては、まずISとの戦いを掲げ、そのために中東地域の湾岸諸国の関与を強く求めています。そして、オバマ政権下で、関係が悪化したイスラエルを重視する姿勢を鮮明に打ち出しています。

 

ヨーロッパはアメリカにとってかけがえのないパートナーであり、世界の安全保障の礎石であるとしています。民主党は、ロシアの進攻、ヨーロッパ南部の安全保障の脅威、経済的・社会的変化への対応のために、ヨーロッパの同盟諸国を援助すると述べています。トランプは、「ヨーロッパとNATOの同盟諸国を見捨てると言い、同時にロシアのプーティン大統領を賞賛している」と批判しています。

 

 NATO同盟諸国は、2001年9月11日の同時多発テロ発生後、北大西洋条約第5項(1カ国に対する攻撃は加盟国すべてへの攻撃と見なす)を史上初めて発効させた。アメリカは、NATOの集団安全保障を維持すると述べています。

 

 ヨーロッパに関してはNATOの枠組みを崩さないことを明確にしています。イギリスがEUからの脱退を表明し、ヨーロッパの連帯が揺れている状況ですが、アメリカが率いるNATOの枠組みで集団安全保障を維持していくとしています。

 

 南北アメリカ大陸については、「アメリカにとっては戦略的、経済的、文化的に重要な地域」としています。民主政治体制の促進、経済の発展、麻薬、犯罪、汚職への対処といった問題を挙げ、これらへの対処を謳っています。キューバに関しては、国交を回復したが、これからも民主政治体制と人権擁護を求めていくとしています。また、ヴェネズエラについても同様のことを述べています。「私たちは、ドナルド・トランプが述べているような南の国境に壁を作ることはしない」と述べています。

 

 民主党綱領は、アフリカを「世界で最も経済成長が速い国が多くある」と述べています。そして、アフリカ連合(AU)と協力しながら、オバマ政権時代と同様に、貿易関係を強化し、経済発展や投資、開発や健康などで協力していくとしています。更には地域のテロ組織の壊滅への努力を継続すると述べています。

 

 世界経済については、「ドナルド・トランプは我が国の債務を支払い停止(デフォルト)にして、世界経済を危険に晒し、危機を引き起こすことになる」と批判し、民主党は、パートナーと協力して、金融危機が起きないように努力すると述べています。

 

 民主党綱領では、国際機関や多国籍組織がアメリカの強さと影響力を高める存在であるとしています。これらの機関や組織には改革が必要であるが、ドナルド・トランプが述べているように、これらの機関を放棄することはないと述べています。

 

 民主党はアメリカが戦後に作った国際政治の枠組みを維持するという姿勢を明確にしています。国際機関や地域の多元的な枠組みを重視し、それらを使いながら、アメリカの国益を追求するということになります。日本に関して言えば、中国の台頭に対処するための同盟諸国のネットワークの鎖の輪のひとつとして役割を果たすことが求められています。

 

 アメリカからの要求もあって、日本は安保法制を成立させ、改憲に向かって進んでいます。世界の大きな流れからこうした動きが出てきているという理解をすることが重要であると思います。

 

(終わり)







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 古村治彦です。

 

 今回は後半部をご紹介します。

 

=====

 

オバマ大統領:最後の年と彼が残すものパート2

 

 国家安全保障会議を整理する、そして米軍から冷戦のままの時代遅れの考えを除去する。オバマ大統領には大統領在任最終年でやるべき重要な仕事がいくつか残っている。

 

ローザ・ブルックス筆

2016年2月25日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/02/25/obama-the-last-year-and-the-legacy-part-ii/

 

 私は前回のコラムで、バラク・オバマ大統領が彼の残すものをはっきりとさせ、それが続くようにするために、政権最後の1年でやるべきことについて書いた。私の関心は、シリアの平和や気候変動の解決などの短期的には実現不可能なことにはない。私は、大統領自身が持つ力で解決できるものに焦点を絞っている。それは、不明確な収容の停止と秘密の戦争と法律の廃止ということである。オバマ大統領は、このような改善点をそのままにして大統領の任期を終えれば、ヒラリー・クリントンは苦労することになるだろう。そして、オバマ大統領が敵だと見なした人間を秘密裏に収容したり、殺したりする力をドナルド・トランプに渡すことになったら、世界の為にはならないだろう。

 

 しかし、これでオバマ大統領のやるべきことリストが終わり、ということではない。彼がホワイトハウスを去る前、大統領として、破綻したアメリカの安全保障政策とアメリカ政府内部の破壊された構造と組織を改善する努力をすべきだ。特に、アメリカ軍、情報部門、ホワイトハウスの安全保障担当スタッフに関しては、改善すべき時期に来ている。

 

(1)破綻したアメリカの安全保障政策を改善する。

 

昨年12月に私が書いたように、平均的な1年でテロリストたちに殺害されるアメリカ人の数は、牛に殺害されるアメリカ人の数よりも少ない。しかし、世論調査と人々のヒステリーが示しているように、かつてのアドルフ・ヒトラーとヨシフ・スターリンの脅威を合わせたものよりも、現在のイスラム過激派グループのテロの脅威の方が大きくなっていると感じている人は多いだろう。この根拠のない脅威の認識によってアメリカ政治、政策、予算は捻じ曲げられている。そして、テロ攻撃よりも深刻な長期的な脅威に目を向けないようになっている。私たちは戦略的に一貫しない軍事介入を中東やその他の地域で行ってきている。それはまさにこのような馬鹿げたことの為なのだ。

 

 アメリカが優柔不断の国になったことはオバマ大統領の失政のせいではない。しかし、彼は優柔不断さを何とかしようとはしなかった。オバマ大統領はアメリカ人がイスラム教とテロリズムを同一視するという間違いを気付かせるために良い仕事をしている。彼はまた、シリアに対する全面的な介入を伴うイスラミック・ステイトへの対応を求める馬鹿げた要求を一貫して拒絶してきた。オバマ大統領はアメリカ人たちにいくつかの重要な事実を思い起こさせている。それは「911以降にテロリズムによって殺害されたアメリカ国民の数は100名以下だ。同時期に銃を使った暴力で亡くなったアメリカ国民の数は数万を下らない」というものだ。しかし、オバマ大統領もまた政治的な圧力に負けて、テロリズムを黙示録的なおどろおどろしい言葉を使って表現している。「憎しみに満ちた見方」対「全人類」というものであって、これは、現在続く「テロリストたちとの戦争」にとって利益となるものだ。

 

 オバマ大統領が「永続的に続く戦争」を真剣に望まないのなら、テロリズムを人類の進化にとっての深刻な脅威として扱うことを辞めるべきだ。テロリズムは数千年にわたり、数千もの組織によって採用されてきた戦術のひとつだ。テロリズムは野蛮で、不快で、違法な戦術だ。しかし、テロリズムによって西洋文明が崩壊させられる訳ではない。私たちは深刻なテロリストからの攻撃のリスクを最小限にすることが可能だし、そうすべきだ。しかし、アメリカのその他の重要な国益や課題を犠牲にしてまでそれをする必要はない。

 

(2)軍を立て直す

 

オバマ大統領は「私たちは歴史上最強の軍隊を持っている」と述べている。軍事力を他の国の軍隊よりもより速やかに人や建物や物を吹き飛ばす能力だけで測定するならば、オバマ大統領の発言は正しい。しかし、物を吹き飛ばすという行為において重要なことは、それが政治的な目的を実現するということである。そして、アメリカが破壊力を戦略的な成功に結びつけているかということは、どっちとも言えないのだ。

 

 多くの点で、アメリカ軍(と国防に携わるその他の機関)は、現在においても冷戦世界に対応するように構成されている。現在、私たちが直面している世界規模の複雑な問題に対応するようには出来ていない。軍隊の指令責任は地理上の線でいくつかに区分されている。その結果、いくつかの地域をまたがるような脅威に対処することが難しくなっている。アメリカ軍内部の陸海空海兵、そして安全保障に携わる諸機関の間にはライヴァル関係が存在する。そのために、必要のない非効率が生まれ、資源が無駄遣いされてしまう。一方、時代遅れの武器システムは、予算のかなりの部分を食いつぶしてしまう。

 

 募集、訓練、人材についての政策もまた時代遅れなままだ。装備と技術は20世紀中盤の戦争に対応するようになっており、インターネット上の諸問題、気候変動、伝染性の高い疾病、政治的な不安定から派生する脅威に対応することは難しい。軍の幹部は一人の例外もなく、アメリカ軍はより即応性と順応性を高める必要があると認めている。軍の構造に関するすべてが即応性とは真逆となっているのだ。

 

 良く考えられた、そして大胆な内容の改革案は既にたくさん発表されている。議会の協力を必要とするものもあるし、行政府内の対応だけで実現するものもある。こうした改革に関しては基本的に予算の増額は必要ではない。国防予算が大きくなったからと言って、そのお金のほとんどが組織の現状維持や更なる利権のために使われるなら、軍隊の効率性を高めることにはならない。逆に、国防予算が小さくなっても、正しい行動が最優先されるなら、軍隊の効率性を損なうことにはならない。

 

オバマ大統領が残された任期内で軍の改革と再構築を完成させることは不可能だ。しかし、彼は最後の1年で改革案を明確にすることはできる。そして、国防総省の官僚組織と連邦上下両院の軍事員会の議員たちに危機感を持たせることは可能だ。軍の改革は党派の絡む問題ではない。そして、オバマ大統領は連邦議員たちの中で味方を見つけることが出来るだろう。

 

(3)情報・諜報部門の改善

 

 「情報・諜報共同体(the intelligence community)」という言葉に私は違和感を持っている。共同体という言葉から、私はアメリカにある17の情報・諜報機関の職員たちが一緒になってお祭りをやったり、バーベキューをやったりしている、そんな姿を連想してしまうのだ。実際には、17の機関はそれぞれ別の方向性で仕事を行っている。911事件の後に国家情報局が創設された。しかし、各機関の協力と情報共有は進まず、官僚的なままとなっている。

 

 アメリカの情報・諜報機関は多額の予算を食いつぶしている。アメリカの情報・諜報部門の諸機関が持つ技術的な能力の卓越性は疑いようがない。世界の通信を傍受することができる。世界各地で行われる秘密のミサイル発射テストの種類を全て分類することが出来る。またその他様々な能力を持っている。こうした卓越性を持つので、アメリカ国民は、アメリカの情報・諜報部門にはこれもまた素晴らしい予測能力を持つはずだと考えている。しかし、情報・諜報部門は911事件、アラブの春の発生、イスラミック・ステイトの台頭を予測することが出来なかった。また、ロシアのウクライナ侵攻、パリでのテロ攻撃なども予測できなかった。彼らは居心地の悪さを感じているだろう。

 

ニューヨーク・ヤンキースの名捕手だったヨギ・ベラはかつて、「予測をすることは難しい、特に将来に関する予測は」と語った。それはその通りだ。しかし、情報・諜報部門の予測に関するこれまでの記録は失望するものだ。特に、多くのNGOとジャーナリストたちと比べるとその酷さは際立つ。

 

そんなことがどうして起きるのか?ひとつには、官僚制の中で見失ってしまう重要な証拠をNGOやジャーナリストたちが手に入れることは簡単なことなのだ。情報を収集するためのプログラムは存在するのだが、問題は改善されておらず、更にひどくなっている。データが多くなれば多くなるほど、より雑音が多くなる。分析をすればするほど、点と点を結び付けづらくなり、予測が難しくなる。

 

 一方、CIAが対テロリズムのための準軍事的な作戦実行を行うようになり、エネルギーと物理的な資源が分析と長期的な戦略立案・遂行から奪われてしまっている。また、冗長・諜報部門の人材に関して、必須の言語能力を備えている職員は払底している。2013年の報告によると、アメリカの情報・諜報部門全体で中国語を話せる人材はわずか903名であり、アラビア語を話せる人材は1191名に留まった。アメリカは国内に多様性を持つ数少ない国のひとつだ。国内には世界各国からの移民がやって来て、活動的な移民共同体を形成している。家ではアラビア語を話す人たちは100万人以上いるし、中国語を話す人々は300万人もいるのだ。しかし、情報・諜報部門に在籍する職員の大多数は白人男性のままだ。世界人口の約4分の3が非白人で、約半数は女性であるのに、そんなことで世界を理解することはできない。

 

 アメリカ軍の改革と同様、情報・諜報機関の中身のある改革には数十年という時間を要するだろう。それにもかかわらず、オバマ大統領は最低限、現在の諸問題に関する明確な分析結果と変革のための具体的な青写真を残しておくべきだ。青写真には、重複する部門の廃止が含まれるべきだ。具体的には、CIAの準軍事部門の廃止(軍部門がうまくやっているのにCIAがそれをやる理由はどこにある?)、テロリズム対策プログラムの再構成、優先順位の明確化(情報・諜報に関する優先順位を決定する際の政治的な影響を小さくする)、外部からの監視の改善、政策立案者へ少数派の考えを伝達する方策の改善と最新化、そして言語的、文化的に多様な人材の採用のための新しい試み、が挙げられる。

 

(4)ホワイトハウスの国家安全保障会議の改革。

 

 民主、共和両党の国家安全保障問題の専門家たちを団結させる問題があるとすれば、それは、オバマ政権の国家安全保障担当スタッフに対する不満の共有ということになる。国家安全保障会議は規模が大きくなりすぎており、政治家と経験不足の選挙スタッフばかりが入っており、低いレヴェルのマネイジメントばかりやっている。各政府機関から大統領への政策案を伝達するよりも、政策立案にばかり集中している。ロバート・ゲイツ元国防長官が回顧録の中で述べているように、「私、クリントン国務長官(当時)、パネッタCIA長官(当時)や他の人々は、オバマ大統領のホワイトハウスが国家安全保障問題に関する全ての政策とその実施を厳しくコントロールするという決心を思い知らされた。オバマ大統領は、国家安全保障に関してホワイトハウスに集中させ、コントロールした。これはリチャード・ニクソンとヘンリー・キッシンジャー以来のことであった」。当然のことだが、国家安全保障会議に関しては超党派で合意できる実質的な解決策がある。それは、国家安全保障会議をより小さく、風通しを良くし、硬直性と情報の集中を緩和させ、更に現場に近いレヴェルで効率的な問題解決を行うようにすべきだ。ホワイトハウスに何でも集中させるのではなく、行政府の各政府機関に任せるところは任せるべきだ。

 

 軍と情報機関の実効性のある改革には、議会による関与も必要となるであろうが、大統領自身でこの改革をしっかりと進めることが可能だ。確かに、こうした改革を次の大統領に押し付けてもよいだろうが(もちろん次の大統領もすぐに改革をしなくてはならないと気付くだろうが)、今からでもすぐに国家安全保障会議の改革をスタートさせ、次の大統領の負担を少しでも減らすべきではないか?

 

これまでに挙げた「やるべきことリスト」に載せるべきものの中で、派手なものはないし、オバマ大統領の支持率を上昇させるようなものもない。しかし、彼はこれからどんな公職にも立候補して選挙戦を戦うということはない。だから、大統領、残された仕事をどんどん片付けていきましょう。

 

 

※ローザ・ブルックス:ジョージタウン大学法科大学院教授、ニューアメリカ財団シュワーツ記念上級研究員。2009年から2011年にかけて政策担当米国防次官顧問を務めた。また、米国務省の上級顧問も歴任した。

 

(終わり)






 
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 古村治彦です。

 

 今回は、オバマ大統領の外交についてそれを評価し、改善点を明確にする記事をご紹介します。オバマ大統領の外交については、消極的(リビアやシリアにアメリカの地上軍を派遣しなかった)という評価で、評判が悪いですが、この記事の著者ローザ・ブルックスはオバマ大統領を評価しています。

 

 2つの記事がありますので、2回に分けてご紹介します。

 

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オバマ大統領:最後の年と彼の残すものパート1(Obama: The Last Year and the Legacy, Part 1

 

7年経って、オバマ大統領は今こそアメリカの外交政策を秘密の影から明るい場所に持ち出すべきだ

 

 

ローザ・ブルックス筆

2016年1月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/01/13/obama-the-last-year-legacy-guantanamo-drones/

 

 一般教主演説が終わった。しかし、オバマ大統領の人気は終わっていない。バラク・オバマ大統領の任期は1年残っている。この1年でまだ終わっていない仕事を済ませ、誤りを正し、2008年に彼をホワイトハウスに送り込んだ数千万のアメリカ国民の希望に従うことが出来る。専門家たちは、この1年はオバマ大統領が残せるものを確立するための時間であると述べている。彼らの主張は正しい。

 

 オバマ大統領の残り1年は厳しいものとなるだろう。イランとの核開発を巡る合意と気候変動に関するパリ合意のような成功があったにもかかわらず、アメリカ国民の過半数はオバマ大統領の仕事を支持しておらず、それよりも大きい割合のアメリカ国民はオバマ大統領の外交政策を支持していない。直接的な介入をしないで、中東に平和をもたらし、ロシアと中国にきちんとした民主政治体制をもたらすには1年では短い。

 

 しかし、数は少ないが彼にはできることがまだ残されている。彼がそれらに集中したらではあるが。オバマ大統領が2016年にやるべきことリストには4つの自公が書かれている。

 

①グアンタナモ基地の閉鎖。これは本当のことだ。オバマ大統領は大統領就任以来、グアンタナモ基地の収容施設を閉鎖したいとずっと望んできた。しかし、連邦議会がそれを許さなかった。これは悲劇的なことだ。連邦議会はグアンタナモ基地の収容者をアメリカ国内に移送する際に公的な予算を使うことを禁じる法案を通過させた。グレゴリー・クレイグとクリフ・スローンが昨年11月に『ワシントン・ポスト』紙に掲載した論説の中で指摘しているように、「この制限は憲法違反」なのである。

 

 移民制度改革や銃規制などの問題について、オバマ大統領は、連邦議会の妨害行動に直面する中で、大統領令で乗り切ってきた。彼がグアンタナモ基地を閉鎖したいと本気で臨むなら、彼は大統領令を発してそれを行うべきだ。現在のグアンタナモ基地の収容者数は少なくなっているが、その象徴的な効果は大きなものとなるだろう。グアンタナモ基地を閉鎖すると決め、収容者たちを軍用機に乗せてアメリカ国内に連れてくれば良い。それですべて終わりだ。

 

 連邦議会の共和党所属議員たちは大きな声で批判や非難をするだろうが、思い出して欲しい。彼らはジョージ・W・ブッシュ政権時代には、連邦議会は大統領の軍最高司令官としての力を制限すべきではないと主張した人々なのだ。

 

 ②根拠のない収容の停止。その象徴性は置いておいて、グアンタナモ基地の抱える真の問題は国外にあるという、地理の問題ではなく、収容されている人々のほとんどは14年も収容されているのに、彼らは裁判を受けておらず、判決も受けていないということだ。彼らの多くは犯罪容疑で起訴されてもいないのだ。オバマ政権の説明によると、収容者たちは法的な根拠に基づいて収容されていないのだが、彼らはアルカイーダとその周辺の勢力との戦闘においてアメリカ軍と戦った戦闘員だったので収容されたということである。しかし、収容者の多くにとってこのような収容の正当性の説明は法的な詭弁以上のものではない。同時多発テロ事件が起きてもう14年も過ぎて、アルカイーダの「中核」は除去されている。現在の状況下でこのような正当化の詭弁はもう通らない。将来の「危険性」のために人間を有無を言わさずに監禁すること、公開されない証拠に基づいて閉ざされた空間に収容することは、長い目で見て道徳的に受け入れられるものではない。

 

 グアンタナモ基地に収容されている収容者のうち、45名の人間はアメリカ軍からも国家安全保障上の脅威とは既に見なされていない。彼らは即座に開放され、生活再建の支援を受けられるようにすべきだ。また、それ以外の人々は裁判を受けられるようにすべきだ。そして、彼らが有罪であることを証明されなければ、彼らもまた釈放されるべきだ。連邦議会にこうしたことを止める憲法上の権限はない。そして、オバマ大統領にはこれを行う権限がある。だから、彼らは今すぐにこれをやるべきなのだ。

 

 オバマ大統領が今これをやらなければ、次の大統領に頭痛のタネを残すことになる。そして、アメリカの中核的な原理である法の支配と相反する前例を残すことになる。

 

 2001年の軍事力行使容認決議を巡るくだらない駆け引きを止めること。オバマ政権は2001年の軍事力行使容認決議を根拠にして、シリアのイスラミック・ステイトやその他の地域の悪者たちに対して軍事力を行使できると主張している。しかし、オバマ大統領はこれが決議内容を逸脱していることを分かっている。2001年の軍事力行使容認決議は911の同時多発テロ事件について責任を持っている人物や組織に対して軍事力の行使を認めている。こうした人物や組織が再び「アメリカに対して国際規模でのテロリズム攻撃を行うことを阻止する」ために軍事力行使を容認している。この決議は、永遠に変化し続ける悪者リストに掲載される人物や組織に対して永久に戦争を行うことを意図して作られたものではない。

 

 オバマ大統領は繰り返し、2001年の軍事力行使容認決議には欠陥があり、それを無効にしたいと述べてきた。もし彼がそれを真剣に望むなら、彼は政権内の法律家たちに対して2001年の軍事力行使容認決議を根拠とすることを止めるように求める必要がある。そして、連邦議会に対してアメリカ国民そして無数の外国人の命を危険に晒すことになる決定について責任を取るように求めるようにすべきだ。オバマ大統領はイスラミック・ステイトに対するアメリカ軍の空爆をすべて停止すべきである。そして、連邦議会が明確な内容の軍事力行使容認決議を行うまで、アメリカに対する窮迫な脅威を除いてアメリカの軍事力を行使しないと宣言すべきだ。そうすることで連邦議会も目を覚まして動き出すことだろう。

 

②秘密の戦争と秘密の法律を廃止すること。大統領に就任以来、オバマは「対象を絞った攻撃」を数百回にわたり許可した。そのほとんどはドローンと呼ばれる無人の飛行装置を使ったものだ。これらの攻撃によって6カ国で数千人の命が失われたと言われている。しかし、政権幹部たちは、これらの攻撃のほとんどが特定の個人を対象にしていたものであると公の場で説明すること、そして、死者の多くが巻き添えで殺害された無辜の人々であったことを認め責任を取ることを拒否している。こうした攻撃の基礎となる法的根拠ははっきりしていない。

 

 これがグアンタナモ基地の法的な手続きを経ない収用問題である。これをできるだけ簡潔に言えば、アメリカ政府は秘密のうちに多くの人間(数百の単位ではなく、数千の単位で)を殺害したということだ。アメリカ政府は、秘密の理由で、匿名の人間が秘密のプロセスで評価された秘密の証拠に基づいて、秘密のうちに人々を殺害してきたのだ。

 

これはアメリカ大統領ならば誰も残したいとは思わない遺産である。

 

 オバマ大統領も繰り返し監督機能の強化と透明性と説明責任の工場を実現したいと述べてきた。少なくとも、彼が真剣にそれを望むのならば、実現することは可能だ。アメリカがどれだけの地点で、どれだけの人々と組織を標的に攻撃して殺害したか、そしてどれだけの民間人を殺害したかを公表できない理由は存在しない。

 

 現在のアメリカ国内法と国際法の下で、テロリストを標的にして殺害することに関して、政権には法的な正統性があることを説明するための詳細な報告書を公表することが出来ない理由も存在しない。法の支配にとってこの報告書は最低限必要なことだ。人間を殺害する場合に、その殺害についての法的な理由を公にすることは最低限必要なことだ。このような対象を絞った攻撃の監視を改善するための道理にかなった、現実的な提案を行うことが不可能だとする理由は存在しない。連邦議会の協力があろうがなかろうが、オバマはこれらの改革を実行することが出来る。しかし、どちらにしても、改革は実行されねばならない。

 

 オバマ大統領が改革を実行しなければ、彼は次の大統領に対して頭痛の種を残すことになる。対象を絞った攻撃に対する規制がほぼない状況をそのままにすることになる。

 

 オバマ大統領が2016年にやるべきことリストはこれで終わりではない。次回のコラムでは、オバマ大統領の最後の1年で取り組むべき問題の残りについて書きたいと思う。残りの2つは、国家安全保障、リスク、脅威に関する論説を変えること、そして国家安全保障会議(NSC)と情報機関の改革、である。

 

(終わり)





 
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