古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:大型支出

 古村治彦です。

 アメリカのインフレーション率は高いままだ。2021年10月で6.2%を記録したが、11月では6.8%を記録している。人々の給料が10%くらい上がらないと、このインフレーションの状態では生活は苦しくなるばかりだが、簡単に給料が10%も上がる人は少ないし、もともと低賃金の仕事で10%も上げてくれることはない。嫌なら辞めろということになる。それで人手不足ということになるが、低賃金の仕事にしか就けない非熟練労働者は多く、結局仕事は埋まってしまう。日本の規制改革、構造改革を進めた竹中平蔵一派(小泉純一郎からの)は、このような構造を日本に作り上げ、巨大な格差社会を構築することに成功した。私は以前に「日本に低賃金で働く人たちの“国”を作りたいのだろう」と書いたがまさにそうなった。
inflationrates20172021503

usinflationrate2021503
 アメリカ国民は現状に不満と不安を持っている。インフレーション、物価高を何とかしてくれということになっている。インフレーションを抑えるには市場で流通している貨幣量を減らすということになる。金融政策で言えば利上げをすること、財政政策で言えば緊縮財政にして、増税をするということになる。しかし、新型コロナウイルス感染拡大のために疲弊した経済状態で、利上げをすること、増税をすることは難しい。バイデン政権は大型公共支出をして経済を刺激しようとしているが、それがインフレーションを亢進させてしまう危険性もある。民主党の連邦上院議員ジョー・マンチン(ウエストヴァージニア州選出)は、インフレーションへの懸念からバイデンが進める大型支出に反対することを表明した。

 今が調整局面で、デマンドプル型インフレーションなのだという解釈であれば、その内に落ち着く。しかし、コストプッシュ型インフレーションであれば、外的な要因ということもあって厳しい。具体的には中国の経済回復のために、資源の取り合いになって資源の価格が高騰するということになれば、アメリカのインフレーション、物価高は続く。輸入品の価格を下げるためにはドル高にしなければならない。そうなれば日本は円安となり、日本にコストプッシュ型のインフレーション、物価高を「輸出」「押し付け」することになる。日本のインフレーション率はそこまで高くなく、アメリカ並みのインフレーション率にまで上がることは考えにくいが、給料が上がらない中で物価高が続くことは人々の生活を直撃することになる。

 2022年もしばらくは厳しい状態が続くことになるだろう。

(貼り付けはじめ)

最新の世論調査によるとアメリカ国民の3分の2が世帯支出は上昇していると回答Two-thirds of Americans in new poll report higher household expenses

キャロライン・ヴァキル筆

2021年12月9日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/finance/585141-two-thirds-of-americans-in-new-poll-report-higher-household-expenses

アメリカ国民の約3分の2が2020年3月の段階に比べて世帯支出(household expenses)がより高くなっていると報告している。これは賃金上昇がありながらも、インフレーションがアメリカ国民に直撃しているということを示唆している。火曜日に発表された最新の世論調査の結果、明らかになった。

今月、アソシエイティッド・プレスとNORCセンター・フォ・パブリック・アフェアーズ・リサーチの共同世論調査が実施された。アメリカ国民の67%が、世帯支出は2020年3月1日時点よりもより多くなっていると答えている。26%は横ばいだと答えた。

2020年3月1日時点よりも世帯支出が低くなったと答えたのは6%だった。

アメリカ国民の過半数がここ数カ月、物価が通常よりも高くなっていることを経験していると答えた。日用品については85%、ガソリンについては85%、電気料金については57%、休日のプレゼントについては58%、サーヴィス全体については62%が、価格が高くなっていると答えた。

家電製品の場合、ここ数ヶ月でそれらの製品の価格が通常より高くなったと回答した人は37%にとどまり、51%がそれらの製品を購入しなかったと回答している。

世帯収入について、世論調査を行ったアメリカ国民の50%が「2020年3月1日とほぼ同じだ」と答えたのに対し、「その時点より高くなった」と答えたのは24%だった。

今回の世論調査では、26%が2020年3月の時点よりも世帯収入が減少したと答えた。

水曜日に発表された労働省のデータによると、10月の賃金上昇は年率5%だった。労働者需要が最高潮に達し、同月に企業によって1100万件の求人広告が出され。

バイデン大統領の世論調査の数字が低いのはインフレーションが一因となった。こうした状況下で、労働省からデータが発表された。10月のインフレーション率は30年ぶりの高水準に達した。

消費者物価指数(CPI)は、主要な財・サーヴィスのインフレーション率を示すもので、10月だけで0.9%、同月までの12ヵ月間では6.2%の上昇となった。

APNORC社の共同世論調査では、アメリカ国民の57%がバイデンの経済への対応に不賛成であるのに対し、賛成は41%であった。

APNORC社の共同世論調査は、2021年12月2日から7日にかけて、1089名を対象に実施された。誤差は4.1ポイントで、信頼水準は95%だ。

=====

世論調査:アメリカ国民の69%がバイデンのインフレーション対応を不支持(Sixty-nine percent of Americans disapprove of Biden's handling of inflation: poll

ジョセフ・チョイ筆

2021年12月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/585486-sixty-nine-percent-of-americans-disapprove-of-bidens-handling-of

日曜日にABCニュースとイプソス社共同世論調査の最新結果が発表され、アメリカ国民の約70%がバイデン大統領のインフレーション対応に不支持と答えた。

世論調査の結果によると、アメリカ国民の69%がバイデン大統領のインフレーション対策を不支持と答えた。一方、28%が支持と答えた。支持政党別で見ると、共和党支持者の94%が不支持と答え、民主党支持者の54%が不支持と答えた。無党派の有権者の場合は、71%が不支持と答えた。

経済回復については、57%がバイデンの仕事ぶりを評価しないと答えた。

ABCニュースの世論調査の結果では、犯罪と銃犯罪に関してはバイデンの支持率は下がっている。それについて36%と32%が支持すると答えたが

しかし、バイデンはある分野に関しては大統領としての仕事ぶりで過半数を少し超える支持を維持している。それは新型コロナウイルス感染拡大対策だ。ABC・イプソス共同世論調査によると、53%がバイデンの新型コロナウイルス感染拡大対策を支持した。

ABCニュース・イプソス共同世論調査は2021年12月10、11日に実施された。ランダムに選ばれた524名の成人が対象となった。調査結果の誤差は5ポイントだ。

これらの支持率の数字はインフレーション率が急上昇し続けている中で発表された。今年11月までの1年間で消費者物価は6.8%も上昇した。これは1982年以降で最高の年間のインフレーション率だ。

先週、バイデンは、「アメリカは現在インフォメーション危機の“最高潮”の中にあるが、連邦上院で自分の最優先政策である“ビルド・バック・ベター”法案が可決すればインフレーションは下がるだろう」と述べた。

バイデンはCNNのカイトラン・コリンズに対して次のように語った。「これは実生活に置いての大きな問題です。日用品店に入って、何を買うにしても、より多くのお金を払うことになれば、家族に影響が出ます。これが問題です」。

バイデンは続けて次のように述べた。「ガソリン代が高くなることは、人々にとって重要なことです。いくつかの州では、1ガロン3ドルを切る価格まで下がりましたが、重要なのは、まだ十分に早く下がっていないことです。しかし、私はそうなると思っています」。

=====

民主党の政治家たちはインフレーションに打ち勝とうと苦闘している(Democrats race to get ahead of inflation

シルヴァン・レイン筆

2021年12月7日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/finance/584618-democrats-race-to-get-ahead-of-inflation?utm_source=thehill&utm_medium=widgets&utm_campaign=es_recommended_content

民主党の政治家たちは、物価の上昇がそれまでの好調な景気回復に水を差すことになるため、高インフレーションに打ち勝とうと苦闘している。

アメリカ経済は、新型コロナウイルス感染拡大で大きな被害を受けた他の全ての国に先駆けて、新たな感染拡大や感染拡大対策関連の制約を乗り越えて、急成長を遂げている。

2021年11月の失業率は4.2%にまで下落し、これは2020年2月以来の低水準である。先月、労働力は拡大し、賃金は年率で5%の上昇を記録した。個人消費と小売売上高も新型コロナウイルス感染拡大より前の最高水準を超えて急上昇しており、企業収益の上昇により株式市場は再び記録的な上昇を見せている。

しかし、景気回復のスピードが速いこともあり、インフレ率が着実に上昇しているため、民主党は景気回復をアピールすることが難しくなっている。

シェリ・ブストス連邦下院議員(イリノイ州選出)は木曜日、連邦議事堂で本紙の取材に応じ次のように述べた。ブストスはこの任期を最後にして議員を引退すると発表している。また、彼女の選挙区は民主、共和両党が激しく取り合う選挙区だ。彼女は「様々な経済指標を見れば、どれも素晴らしい数字を記録していることが分かる」と述べた。

彼女は続けて次のように述べた。「しかし、人々の生活問題について言うと、車を満タンにすれば前よりもお金がかかっている。日用品店に行ってベーコン1ポンドを買えば前よりもお金がかかる。人々はこのことを認識している」。

労働省が発表した消費者物価指数(CPI)によると、10月の消費者物価は、主に食品とエネルギー価格の高騰によって、前年同月比で6.2%上昇した。エコノミストたちは、金曜日に発表される11月の消費者物価指数のデータは、先月の消費者物価の年間上昇率がさらに大きく、6.7%になると予想している。

消費者物価の継続的な上昇は、資金繰りに苦しむ家計を圧迫し、中間選挙まで1年を切ったバイデン大統領と民主党に対する政治的圧力が高まっている。共和党は繰り返しコストの上昇を指摘し、バイデンや民主党が3月に民主党の票だけで可決した19000億ドル規模の「アメリカン・レスキュー・プラン」景気刺激策で経済を過熱させたと非難している。それでも回復の遅れた他の富裕国もインフレで苦しんでいるのが現状だ。

連邦下院財政委員会共和党側最高責任者パトリック・マクヘンリー連邦下院議員(ノースカロライナ州)は木曜日連邦議事堂において、「財政がインフレーションを増進させている。これは深刻な懸念となっている」と発言した。

マクヘンリー議員は「既に物価に関して問題が起きているのに、連邦議会は経済にジェット燃料を加えているようなものだ」と述べた。

アメリカン・レスキュー・プランがアメリカの景気回復に貢献した一方で、それが促進した支出の多くは、過負荷状態にある商品部門に殺到している。新型コロナウイルス感染拡大によって被害を受けた工場、サプライヤー、運送会社、小売業者が急増する需要に追いつくのに苦労しているので、様々な消費財の価格が急騰している。夏にはデルタ型ウイルスが出現し、サプライチェインの混乱はさらに深まり、新型コロナウイルス感染拡大前の状態に戻りつつあるサーヴィス産業からより多くの支出が流出することになった。

バイデン氏がサプライチェインの問題解決に奔走する中、大統領とホワイトハウス関係者は、インフレーションが国民の経済への支持やメディアの報道に与える悪影響について苦言を呈している。しかし、過激な進歩主義者から穏健派まで、様々な議員が、労働者階級が直面している物価の上昇を軽視してはならないと警告している。

木曜日、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は連邦議事堂で本紙の取材に対して、次のように述べた。「私たちが持っている疑問は、“インフレーションは問題なのか、そうではないのか?”というものではない。その答えは既に持っている。疑問に思っているのは、“私たちは本気になって解決しようとしているのか、それともただお喋りの材料にしているのか?”ということだ」。

オカシオ=コルテスや多くの民主党議員は、バイデンの「ビルド・バック・ベター」計画を、特に育児や処方薬など家族のコストを下げるための重要なステップであると評価している。彼女は木曜日に、1兆7500億ドルの社会サーヴィスおよび気候変動法案は、介護責任のためにパンデミックの発症中に去った数千人を含む、より多くの女性を労働力にするのにも役立つと述べた。

オカシオ=コルテスは、「物理的なサプライチェインには、港湾や海運の問題だけでなく、労働力不足という具体的な圧力要因がある。これらの分野に投資することで、ボトルネックを解消することができると考えている」と述べた。

ほとんどのエコノミストは、「ビルド・バック・ベター」計画は短期的には価格上昇にほとんど寄与しないと言っており、デフレーションの影響は数年どころか数ヶ月は発生しないと警告を発している。また、デルタウィルス変種の持続、オミクロン変種の出現、冬の到来なども、来年インフレーションが緩和し始める前に供給ラインを圧迫しそうだと、多くのアナリストは警告している。

オックスフォード大学経済学部のアメリカ経済専門家オレン・クラチキンは月曜日に発表した分析の中で次のように述べている。「バイデン政権は、サプライチェインの問題に取り組むためにビジネスリーダーと協力しているが、構造的なトラックドライヴァー不足と、基本的にフル稼働している倉庫という状況の中で、短期的にどれだけの進展が見られるかは不明だ」。

クラチキンは、港湾のボトルネック、重なり合う海外渡航制限による「頑強な物流課題」、数年来のトラックドライヴァー不足が重なり、価格への圧力がかかり続けていると指摘している。

クラチキンは「オミクロン株の発生によって、サプライチェインの問題解決スピードを低下させ、これまでの成果を台無しにする危険性がある」と書いている。

サプライチェインのより深刻な問題、特に自動車や家電製品から食品やエネルギーに至るまで価格上昇が広がれば、資金繰りに苦しむ家計やその支持を必要とする民主党候補者にとっての課題となる可能性がある。住宅価格や株価の急上昇は、物価上昇を乗り切ることができる裕福なアメリカ人にとっては恩恵だが、市場に資金がない人や、使える現金が十分にない人にとっては、どちらも冷たい慰めにしかならない。

ドン・ベイヤー連邦下院議員(ヴァージニア州選出、民主党)は木曜日、連邦議事堂で本紙の取材に対して次のように語った。「私たちの相手である共和党側にとっては幸先の良いメッセージということになる。特にガソリン価格や食料価格の点で、価格が上昇すれば人々はその上昇を、自分たちの手持ちのお金を数えながら実感することになる」。

ベイヤーは「私が希望しているのは今年の春の終わりまでにこれらの物価上昇の圧力が極力小さくなることだ。10月までに収束させることができれば選挙に間に合うなどとは考えていない」と述べた。

=====

民主党がバイデンの支出法案成立に邁進する中、マンチンはインフレーションに警告を発する(Manchin warns about inflation as Democrats pursue Biden spending bill

ジョーディン・カーニー筆

2021年12月7日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/senate/584830-manchin-warns-about-inflation-as-democrats-pursue-biden-spending-bill?utm_source=thehill&utm_medium=widgets&utm_campaign=es_recommended_content

ジョー・マンチン連邦上院議員(ウエストヴァージニア州選出、民主党)は火曜日、インフレーションに懸念を持っており、バイデン大統領の最重要政策である気候変動と社会に関する支出パッケージに前のめりになっている民主党に対して警告を発した。

マンチンは、『ウォールストリート・ジャーナル』紙CEO会議サミットにおいて、社会支出法案に対してまだ賛否を決めておらず、インフレーションンリスクに対して危険信号を出していると示唆した。

ウエストヴァージニア州選出の連邦上院議員であるマンチンは、インフレーションについて言及しながら、「今日我々が直面している未知の問題は、・・・この支出法案よりもはるかに大きい」と述べた。

マンチンは「私たちは、これを確実に実行しなければならない。このまま市場に資金を氾濫させ続けるわけにはいかない」と述べた。

連邦上院多数党(民主党)院内総務(Senate Majority Leader)のチャールズ・シューマー連邦議員(ニューヨーク州選出、民主党)がクリスマス前に歳出法案を通すという期限を守ろうとして民主党所属議員たちに圧力をかけている中で、マンチンは発言を行った。バイデン政権は、この法案がインフレーション下でのコスト上昇に対抗するのに役立つと主張している。

民主党は、法案が予算規則に適合しているかどうかを提示しているマンチンとの交渉、更には所属議員同士の交渉が続いている。マンチンに加え、カーステン・サイネマ連邦上院議員(アリゾナ州選出、民主党)も法案を支持するかどうか明言しておらず、他の民主党所属議員も州・地方税(SALT)控除の上限など法案の特定の部分について懸念を表明している。

マンチンは、クリスマスまでの期限について、スケジュールをコントロールすることはできないとし、言及を避けた。しかし、彼は今年初めに、『ウォールストリート・ジャーナル』紙の論説で、戦略的な一時停止を呼びかけたことがある。

「その時、私は懸念を持っていた。そこで戦略的に一時停止しようと言った。今でもそのことを強く感じている」とマンチンは語った。

民主党は、気候変動と社会支出に関する合意を成立させるために予算調停を行うため、50人の民主党会派所属議員全員の完全な結束が必要である。また、歳出法案の審議を開始するためには、完全な結束と、ハリス副大統領による賛成が必要である。

マンチンは、法案に有給休暇を含めることに反対し、企業のクリーンエネルギーへの移行を奨励するためのエネルギー条項を計画から削除させ、メタン排出料と労働組合に所属ずる労働者によって製造された自動車に多く適用される電気自動車税額控除について反発している。

マンチン議員は、両党が自党の最大の優先課題を可決させるために、予算プロセスを利用していることを非難した。

マンチンは「予算プロセスはそのような重大な政策変更のために使われるとは想定されていない」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 アメリカでは現在、インフレーション率の上昇が問題になっている。インフレーションとは簡単に言うと、物価が上昇することだ。物価が上昇するということは、需要が供給を上回っている状態のことだ。好景気となればインフレが進む。経済が激しく動くことで起きる摩擦熱のようなものだ。流通する貨幣量が増えるからインフレになる。

 ジョー・バイデン政権が進めようとしている社会支出法案が可決成立すると、巨大な政府支出によって貨幣量が増大して、インフレになるのではないかと考えてしまう。しかし、以下の記事にあるが、民主党系の経済学者たち、代表としてノーベル賞を受賞したポール・クルーグマンはそんなことはないと述べている。同じ民主党系の経済学者として知られる、こちらもノーベル賞受賞者のラリー・サマーズはインフレーションが信仰する懸念を表明している。

 同じ現象を見てもこのように、ノーベル賞を受賞したような世界的な経済学者たちが意見を異にしているというところに、社会科学の難しさ、社会科学の複雑さがあると思う。社会は非常に複雑であり、それを単純化して、一本貫く法則を見つけようとする営為が社会科学であるが、それはほぼ絶望的に困難、不可能であると思われる。

 インフレーションについて言えば、「政府が大規模支出をすればインフレーションが信仰するのか、しないのか」は極めて重要な問いだが、これに対する答えは確たるものはない。そして、これまでに起きたこととの類似点を探すことになる。以下の記事にあるように、戦後アメリカでインフレーション率が5%を超えた時期は6回ある。クルーグマンは終戦直後のインフレと今回のインフレはよく似ているとしている。これは供給側に問題があり、人々の需要を満たすだけの製品などを供給できないことで起きるインフレだということになる。従って、生産力、供給が調整できればインフレは収まるということになる。クルーグマンはこのように考えているようだ。

 インフレについては「コストプッシュ型」と「デマンド(需要)プル型」がある。コストプッシュ型とは、自然的な要因などで製品の価格が高騰することで起きるインフレであり、デマンドプル型とは、需要が高まることで供給が追い付かずに起きるインフレだ。クルーグマンは現在の状況をデマンドプル型と考えているようだ。しかし、供給サイドが限界に達している場合、それ以上は供給ができないということになる。そうなれば、需要が下がらない限り、物価上昇、インフレは収まらない。海外要因で言えば、中国の存在ということがある。中国の需要は凄まじい。新型コロナウイルス感染拡大を抑え込んだこともある。経済回復をいち早く進めようとしている。

 日本の場合は円安傾向もあり、海外からの食料品や石油、天然ガスの価格が上昇している。それがいろいろな製品の値上げにも結び付いてしまっている。賃金の上昇も見込めない中での物価上昇は最悪のシナリオである。スタグフレーションと言ってもよい。

 アメリカは来年中間選挙を控えている。インフレ退治はバイデン政権の最大の課題となるが、常識的に考えて、大型支出を行うことでインフレが進行するということになる。「現在は調整局面だ」ということで押し通すことになるだろうが、インフレが続けば、民主党にとって2022年の中間選挙は厳しい結果が待っていることになる。

(貼り付けはじめ)

リベラル派の経済学者たちがメモを発表:「ビルド・バック・ベター」法案はインフレーションを悪化させる可能性は小さい(Liberal economists got the memo: Build Back Better couldn't possibly worsen inflation

メリル・マシューズ筆

2021年11月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/finance/582805-liberal-economists-got-the-memo-build-back-better-couldnt-possibly-worsen

民主党は、「ビルド・バック・ベター(Build Back BetterBBB)法案」に盛り込まれた巨額の新たな政府支出が、数十年来の猛烈なインフレを起こさせるのではないかという考えを払拭しようとしている。『ニューヨークタイムズ』紙の寄稿者であるリベラル派の経済学者ポール・クルーグマンが、「歴史が述べているのは、“インフレーションについてパニックになるな”ということだ(History Says Don't Panic About Inflation)」の中で、それを裏付ける意見を述べている。

クルーグマンがつけたタイトルにはそうあるが、実際に歴史はそのようには言っていない。

しかし、これは押し売りだ。クルーグマンは、ホワイトハウス経済諮問委員会(White House Council of Economic Advisors)が2021年7月6日に発表した「今日のインフレに関する物語の歴史的比較(Historical Parallels to Today's Inflationary Episode)」という記事に基づいて主張している。

バイデン政権のホワイトハウスがこの記事を発表したのは4ヶ月以上前であり、当時はまだインフレが現実のものとはなっていなかったが、可能性はあるが統制されているように見えた。しかし、現在インフレ率は着実に上昇し、今後もさらに上昇していくだろう。

しかし、ビルド・バック・ベター法案は上院に送られ、修正されるか、あるいは否決されることになる。クルーグマンを含む大金持ちたちは、猛烈なインフレーションを当然懸念する層の人々、つまり上院議員と一般国民に対して、「獣はすぐに檻に戻される」と説得しようとしている。

しかし、クルーグマンとホワイトハウスが見逃している重要なポイントが少なくとも一つ存在する。

ホワイトハウス経済諮問委員会の報告書によると、第二次世界大戦以降、「消費者物価指数(CPIConsumer Price Index)で測定して、物価上昇率が5%以上を記録した時期が6つ存在している」。ホワイトハウス経済諮問委員会とクルーグマンは、現在のインフレーションと最もよく似ているのは終戦直後の1946年から1948年までのものだと主張している。

その理由は簡単だ。戦時中は配給制(rationing)と価格統制(price controls)で消費が抑制されたため、終戦時に潜在需要(pent-up demand)が高くなった。これは、新型コロナウイルス感染拡大から抜け出しつつある現在、潜在需要が高くなっていることとよく似ている。

しかし、戦後、製造業者たちが戦時中に必要な製品から消費者向けの製品に移行していく途中であったために供給が制限された。これは、現在のサプライチェインの問題が供給を制限しているのと似ている。

クルーグマンは私たちに次のように教えている。「しかし、インフレーションは長くは続かなかった。インフレーションは1948年に最高潮を迎えたが、1949年までにデフレーションに転換した。物価は下落し始めた。インフレーション率の急激な上昇に対して政治家たちが行った最大の過ちはその一過性の性質を評価分析しなかったことだ」。

クルーグマンの助言は以下の通りだ。「現在目撃している物価の急上昇については心配するな」。現在の物価の急上昇は、新型コロナウイルス感染拡大から抜け出しつつある現状の複雑な組み合わせの結果なのであって、バイデン大統領による浪費の結果ではないというものだ。現在のインフレーション問題は1948年の場合がそうだったように、早期に解決されるだろう。

民主党系の著名な経済学者の中にインフレーションについて懸念を表明している人たちがいることに注意する必要がある。ラリー・サマーズ元財務長官は今年2月から、つまりバイデンの1兆9000億ドルのアメリカ救済計画が可決される前から、ホワイトハウスがインフレーション圧力を無視しているとして警告を発してきた。

オバマ政権のエコノミストだったジェイソン・ファーマンは、AP通信とのインタヴューで、より率直な意見を述べた。「彼らは火に灯油を注いだのだ!」

しかし、最近になって、両者とも、ビルド・バック・ベター法案の全支出は今日のインフレーション圧力にほとんど、あるいはまったく影響を与えないと主張している。

クルーグマンの言う当時と現在の比較の違いの一つは、「富の効果(wealth effect)」である。これは、自宅や株価などの資産が上昇すると、人々は経済的な安心感を得て、より多くの支出をしようとするというものだ。

株式市場の下落は逆効果になることもある。ダウ平均株価は1946年4月にピークを迎え、急速に下降を始めた。1948年11月の不況の始まりまでに、ダウ平均株価はその価値の3分の1を失ってしまった。

ダウ平均株価の継続的な下落が、より多くの商品の需要を押し下げ、インフレーションの圧力を弱めたかもしれない。

今日は、その正反対のことが起こっている。株価指数は最高値を更新している。そして、国民の多くが市場に投資している。さらに、個人の貯蓄率はパンデミック中に過去最高を記録した。富の効果は、少なくとも今のところまだ影響を及ぼしており、人々は物価が上がっても、より多くの商品を購入するよう促すことになっているだろう。

バイデン大統領の進めるビルド・バック・ベター法案は巨大なそしてコストのかかる政治的、経済的ギャンブルである。バイデンによる大きな支出はインフレーションの唯一の原因ではないが、ファーマンが言っているように、「火に灯油を注いだ(poured kerosene on the fire)」のである。現在、バイデンはその支出をさらに増やしたいと考えている。

このままインフレーションが続けば、来年の選挙で民主党はさらに厳しい状況に追い込まれるかもしれない。政治家のキャリアにとって、猛烈なインフレーションよりも危険なのは、怒れる有権者たちだからだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ