古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。よろしくお願いします。

タグ:大統領選挙

 古村治彦です。

 

 ジョー・バイデン副大統領がヒラリー・クリントン敗北の理由として、「彼女自身がどうして選挙戦を戦っているのか分かっていなかった」ということを挙げています。大変ユニークな分析です。

 

 ヒラリーは女性で初めて大統領になるチャンスがある人物として大統領選挙に出馬する責務があると感じてはいたが、有権者に対して語りかけが足りなかった、有権者の声を聞くことが足りなかった、とバイデンは言っています。そして、人々の不満や恐怖心を聞く政党であった民主党がエリート主義になっていたと反省の弁を述べています。

 

 確かに、ヒラリーは能力が十分にあったでしょう。しかし、有権者のためではなく、自分のために選挙に出た、そして、有権者を向かないで、有権者の見ているものを見ないで選挙戦を戦ったということなのでしょう。上滑りする綺麗ごとばかりを、女性初の大統領になるという浮ついた気持ちで語ったところで、今本当に困っている人々には何のアピールにもならなかったのです。ヒラリーが勝利した州は民主党が強い州で、そこでは、誰が出ても民主党の候補者が勝利できたでしょう。しかし、それだけでは勝利はできません。トランプが勝利した州は共和党が自動的に勝つ州にプラスして、人々の不満や恐怖心が渦巻いていた州でした。

 

 政治家が選挙に通って権力を握る、ということは自己利益実現の最たるものです。しかし、それを露骨にやる、もしくは見えてしまうと、その自己利益実現はできないのです。ヒラリーは自分とだけ格闘し、周囲は見えていなかった、だから、自分というものを押し付けることで有権者は拒絶反応を示したということでしょう。

 

 トランプは「アメリカ・ファースト」というスローガンを掲げました。そして、「今苦境の中にいると不満や狂信を持っているアメリカ国民よ、このアメリカはあなた方のことだ」というメッセージを送ることに成功しました。トランプは非常に利己的で、自己中心的のように思われ、実際にそうなのでしょうが、選挙に勝つという自己利益実現に成功しました。見た目では、ヒラリーは謙虚・抑制的(トランプに比べて、ですが)、トランプは我儘・勝手なのに、人々はヒラリーに自己中心、押しつけ、独りよがり、自分たちのことを見ていないということを感じて忌避しました。

 

 こういうことは私たち自身にも置きかえて教訓として活かすことができると思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

バイデン:ヒラリー・クリントンはどうして選挙戦を戦っているのかを理解していなかった(Biden: Clinton never figured out why she was running

 

ジョーダン・ファビアン筆

2016年12月22日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/administration/311591-biden-clinton-never-figured-out-why-she-was-running

 

バイデン副大統領は、ヒラリー・クリントンは大統領選挙で敗れたが、その理由の1つは、ヒラリーが大統領選挙に出馬している理由を彼女自身が理解していなかったことが挙げられると確信していると述べた。

 

木曜日のロサンゼルス・タイムズ紙に掲載されたインタヴューの中で、バイデンは「私は彼女が本当に理解していたとは思えない。話は変わるが、彼女の出馬の決断は困難なことだったと思う」と述べた。

 

選挙期間中にウィキリークスによって公開されたハッキングされたEメールの中で、ヒラリーの側近や協力者たちも非公式に同じような懸念を表明していたということをバイデンは自分の考えを補強する証拠として挙げた。

 

しかし、バイデンはヒラリーを選挙に負けたということだけで非難するのは公正なことではないとも述べた。バイデンは、ヒラリーは選挙運動中に崇高な目的を見つめていた、そして、オバマ大統領がアフリカ系アメリカ人に行ったように、女性の政界での活躍への道を切り開く義務を負っていると感じていた、と述べた。

 

バイデンは次のように語った。「彼女は出馬する以外に選択肢はないと考えたのだ。つまり、大統領に当選するかもしれない機会を与えられた史上初めての女性だったのであり、彼女にとってそれは責務であったと思う」。

 

バイデンのコメントにはオバマ政権の幹部としての直接的な批判が若干含まれている。

 

バイデン副大統領は選挙期間中、十数回にわたり、ヒラリーのために遊説を行った。

 

しかし、バイデンは、ドナルド・トランプは自分の出身地であるペンシルヴァニア州スクラントンのような白人の労働者たちが多く住む地域の人々を熱狂させて、選挙に勝利したがそれはずるいことだと感じた、とも述べた。

 

バイデンはその時の心境を次のように語った。「しまった、私たちは選挙に負けるかもしれない、と感じた。トランプに熱狂している人々は私が一緒に生まれ育った人々だった。もしくはその子供たちだった。彼らは人種差別主義者ではないし、性差別主義者でもない。しかし、私たちは彼らに語りかけなかった」。

 

バイデンは民主党全体が選挙で低調であったが、それは、「私たち民主党が、高卒の大部分が白人であるが、非白人もいる、そういった多くの人々に対して、“民主党は自分たちの抱えている問題を理解している”と思ってもらえるようにしなかったから」だと語った。

 

バイデンは、民主党の志向の中に、エリート主義が入り込んでいた、と述べた。

 

同時に、バイデンは、トランプは、ヒラリーよりも労働者階級の人々に問題解決の方策を提示することに成功している訳ではないとも語った。

 

バイデンは「私は、彼が労働者階級や中流階級の人々を理解しているとは思わない。少なくとも彼は彼らの痛みは認識している。しかし、彼は偏見、恐怖心を利用した。自暴自棄の気持ちを利用したのだ」と語った。

 

トランプは更に「トランプが人々を熱狂させる時に語った言葉には何も積極的で+なものはなかったと確信している」と述べた。

 

バイデン副大統領は民主党予備選挙でヒラリーに挑戦することを検討した。彼が予備選挙に出ていたら、自分はエリートではないというアピールと共に中流階級の人々に向けたメッセージを次々と発したことだろう。

 

しかし、バイデンは最終的には選挙に出ないという選択をした。バイデンは息子ボウの逝去を悼みながら、選挙戦を行うことはできないと述べた。

 

74歳になるバイデンは、これまで複数回の機会を軽視してはきたが、将来の大統領選挙出馬の可能性を排除することを拒絶した。

 

バイデンは、妻ジル・バイデン博士がノーザン・ヴァージニア・コミュニティ・カレッジで教鞭を執っている間はワシントンにたまに居住する計画だと明かした。

 

バイデンは、副大統領退任後に仕事を続けるために、ペンシルヴァニア大学内にオフィスを構える可能性についても説明している。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22








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 古村治彦です。

 

 今回は昨年(2015年)の9月に『』誌に掲載された記事をご紹介します。記事の著者であるアダム・ゴプニックは、2011年にホワイトハウス担当記者協会が年1回開催する夕食会に出席し、そこで目撃した情景を大統領選挙に絡めて書いています。

 

 夕食会の席上、バラク・オバマ大統領は挨拶に立ちました。その挨拶の中で、出席者の一人であったドナルド・トランプを材料にしたジョークを長々と語りました。出席者たちは大笑いでしたが、ジョークの材料となったドナルド・トランプは笑いもできず、ただこわばっていた、ということです。

 

 当時、オバマ大統領には「ケニア生まれで、アメリカの市民権を持っていない」という批判がなされていました。ドナルド・トランプもその主張をしていました。そこで、オバマ大統領はハワイ州政府に対して、自分の詳しい出生記録を公表するように求め、実際に公表された後でした。オバマ大統領としては、自分の出生の疑惑を主張したトランプを笑いものにして、うっぷんを晴らそうとしたのでしょう。それに対して、トランプは、屈辱感でこわばるほどに怒りました。

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 2011年のホワイトハウスでの夕食会におけるドナルド・トランプ
 

ゴプニックは、トランプの大統領選挙出馬とトランプの台頭の原動力になったのは、ホワイトハウスでオバマ大統領から受けた侮辱と恥辱(屈辱感、humiliation)だろうと推測しています。トランプ当選が現実のものとなった今、トランプを大統領にまで押し上げたのは、オバマ大統領が気軽にトランプを笑いものにした行為が原因とも言うことができ、「オバマ大統領の自業自得」です。

 

 トランプはオバマ大統領から屈辱を受けましたが、南部とラストベルトのトランプを支持した人々(大学教育を受けていない白人男性の労働者たち)もまた、屈辱感を基礎にして動いていると論稿の著者ゴプニックは書いています。民主党、共和党両党のエスタブリッシュメントから無視されているという屈辱感やもちろん、自分たちの祖父母や両親の時代に比べて生活水準が下がっているという屈辱感、外国から侮られているという屈辱感を感じています。

 

 私が翻訳した本に『野望の中国近現代史 帝国は復活する』(オーヴィル・シェル、ジョン・デルリー著、ビジネス社、2014年)があります。これは、アヘン戦争以降の歴史を中国の近代化に貢献した人々を各省で1人ずつ取り上げたもの(列伝)です。この本の背骨(バックボーン)となるテーマは、「中国はアヘン戦争以降、恥辱の世紀(a century of humiliation)を過ごしてきた(これ以降、中国は外国に侵略され、富を奪われていきました)。近代化に貢献した人々(改革者)は、この恥辱をそそぎ、富強(wealth and power)の復活を目指してきた(アヘン戦争直前まで中国は力を落としつつありましたが世界最大の経済大国でした)」というものです。

 


 トランプを支持した人々は、トランプの掲げた「アメリカを再び偉大に(
Make America Great Again)」こそが、自分たちの主張そのものだと感じ、トランプを支持しました。逆に言うと、トランプが時代の「空気」を的確につかむことに成功しました。この「昔偉大だった我が国は今凋落している。それを再び偉大にするのだ」という思考は、中国近現代史と相通じるものがあります。

 

 今回の大統領選挙のキーワードは、「屈辱感」であったと言えると思います。トランプがオバマ大統領から与えられた屈辱感、戦後アメリカの輝ける中産階級(アメリカの勝利と帝国化の富の配分にあずかった人々)の子孫の抱えている屈辱感、これらが結びつき、トランプが大統領となりました。屈辱感は大きな物事をもたらす原動力となるということは、今回の事例でまた歴史上の教訓となりました。

 

 トランプは「改革者」としてワシントンに乗り込みます。『野望の中国近現代史』をお読みいただけると分かりますが、清朝末期には改革派と守旧派の間で、激しい権力闘争があり、近代化が中途半端になってしまいました。この点では日本の幕末から明治維新にかけては、ある意味であっさりすぎるほど、近代化(西洋化)がほぼ抵抗なく受け入れられていきました。ワシントンにも守旧派が手ぐすね引いて待っています。この人々を如何に御していくか、トランプの手腕に注目が集まります。

 

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TRUMP AND OBAMA: A NIGHT TO REMEMBER

 

By Adam Gopnik , SEPTEMBER 12, 2015

http://www.newyorker.com/news/daily-comment/trump-and-obama-a-night-to-remember

 

Once, and only once, in 2011, have I attended the annual White House Correspondents’ Association dinner in Washington, D.C., on the grounds, as I explained then, that Voltaire is said to have cited when he declined a second invitation to an orgy: once a philosopher, twice a pervert. Luckily for the philosopher in me, it turned out to be an auspicious night. Not only, as we did not know then, was President Obama in the midst of the operation that would lead shortly to Osama bin Laden’s killing; it was also the night when, despite that preoccupation, the President took apart Donald Trump, plastic piece by orange part, and then refused to put him back together again.

 

Trump was then at the height of his unimaginably ugly marketing of birther fantasies, and, just days before, the state of Hawaii had, at the President’s request, released Obama’s long-form birth certificate in order to end, or try to end, the nonsense.  Having referred to that act, he then gently but acutely mocked Trump’s Presidential ambitions: “I know that he’s taken some flack lately—no one is prouder to put this birth-certificate matter to rest than the Donald. And that’s because he can finally get back to the issues that matter, like: did we fake the moon landing? What really happened in Roswell? And—where are Biggie and Tupac?” The President went on, “We all know about your credentials and breadth of experience. For example—no, seriously—just recently, in an episode of Celebrity Apprentice”—there was laughter at the mention of the program’s name. Obama explained that, when a team did not impress, Trump “didn’t blame Lil Jon or Meatloaf—you fired Gary Busey. And these are the kinds of decisions that would keep me up at night.”

 

What was really memorable about the event, though, was Trump’s response. Seated a few tables away from us magazine scribes, Trump’s humiliation was as absolute, and as visible, as any I have ever seen: his head set in place, like a man in a pillory, he barely moved or altered his expression as wave after wave of laughter struck him. There was not a trace of feigning good humor about him, not an ounce of the normal politician’s, or American regular guy’s “Hey, good one on me!” attitude—that thick-skinned cheerfulness that almost all American public people learn, however painfully, to cultivate. No head bobbing or hand-clapping or chin-shaking or sheepish grinning—he sat perfectly still, chin tight, in locked, unmovable rage. If he had not just embarked on so ugly an exercise in pure racism, one might almost have felt sorry for him.

 

Some day someone may well write a kind of micro-history of that night, as historians now are wont to do, as a pivot in American life, both a triumph of Obama’s own particular and enveloping form of cool and as harbinger of—well, of what exactly? A lot depends on what happens next with the Donald and his followers. Certainly, the notion that Trump’s rise, however long it lasts, is a product of a special skill, or circumstance, or a new national “mood,” is absurd. Trumpism is a permanent part of American lifein one form or another, with one voice or another blaring it out. At any moment in our modern history, some form of populist nationalism has always held some significant share—whether five or ten per cent – of the population. Among embittered white men, Trump’s “base,” it has often held a share much larger than that. Trump is not offering anything that was not offered before him, often in identical language and with a similarly incoherent political program, by Pat Buchanan or Ross Perot, by George Wallace or Barry Goldwater, or way back when by Father Coughlin or Huey Long. Populist nationalism is not an eruptive response to a new condition of 2015—it is a perennial ideological position, deeply rooted in the nature of modernity: a social class sees its perceived displacement as the result of a double conspiracy of outsiders and élitists. The outsiders are swamping us, and the insiders are mocking us—this ideology alters its local color as circumstances change, but the essential core is always there. They look down on us and they have no right to look down on us. Indeed, the politics of Trump, far from being in any way new, are exactly the politics of Huck Finn’s drunken father in “Huckleberry Finn”: “Call this a govment! Just look at it and see what it’s like . . . . A man can’t get his rights in a govment like this.” Widespread dissatisfaction with all professional politicians, a certainty of having been “sold out,” a feeling of complete alienation from both political parties—“Not a dime’s worth of difference between them” was George Wallace’s formulation, a half century ago—these are permanent intuitions of the American aggrieved. The feelings may be somewhat aggravated by bad times, or alleviated by good ones, but at the height of the prosperous fifties a significant proportion of Americans were persuaded that the entire government was in the hands of saboteurs and traitors at the pay of a foreign power, while in the still more prosperous nineties a similar faction was persuaded that the liberal President was actually a coke dealer who had murdered a friend.

 

Nor is it at all surprising to find a billionaire businessman representing this ideology, because it is not really members of the economic élite who are its villains—it is the educated élite, and the uneducated outsiders, who are. It is, on the historical record, much more a response to the ceaseless anxieties of modern life than to any financial angst of the moment. Probably the best student of this modern ideology is the conservative historian John Lukacs, whose 2005 book “Democracy And Populism: Fear and Hatred” makes clear how different the nationalist formula is from patriotism properly so called: it rests not on a sense of pride in place or background but in an intense sense of victimization. The cry of the genuine patriot is “Leave us alone to be the people we have always been.” The populist nationalist cries, “We have been cheated of our birthright, and the Leader will give it back.”

 

The ideology is always available; it just changes its agents from time to time.

 

And this is where memories of the President’s performance come into play and take on a potency that one might not have understood at the time. For the politics of populist nationalism are almost entirely the politics of felt humiliation—the politics of shame. And one can’t help but suspect that, on that night, Trump’s own sense of public humiliation became so overwhelming that he decided, perhaps at first unconsciously, that he would, somehow, get his own back—perhaps even pursue the Presidency after all, no matter how nihilistically or absurdly, and redeem himself. Though he gave up the hunt for office in that campaign, it does not seem too far-fetched to imagine that the rage—Lukacs’s fear and hatred—implanted in him that night has fuelled him ever since. It was already easy to sense at the time that something very strange had happened – that the usual American ritual of the “roast” and the roasted had been weirdly and uniquely disrupted. But the consequences were hard to imagine. The micro-history of that night yet to be written might be devoted largely to the double life of Barack Obama as cool comedian and quiet commander—or it might be devoted to the moment when new life was fed into an old ideology, when Trump’s ambitions suddenly turned over to the potent politics of shame and vengeance. His even partial triumph in the primary still seems unlikely—but stranger jokes have been played on American philosophers over the centuries.

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)









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 古村治彦です。

 

 アメリカ大統領選挙について、大手メディアや大手メディアの情報に依存していた私のような存在は、ドナルド・トランプ当選を予測できませんでした。

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私は、どちらを支持するかと言われれば、ヒラリーではなく、トランプと答えていました。私の友人知人の中には、どうして?あんな酷い人なのに、と言う人もいました。私は、アメリカの外交政策の潮流である介入主義と現実主義で、ヒラリーの場合は、人道(女性の権利や子供たちの福祉)を旗印にして安易に外国に軍事介入をしてかえって問題をこじらせることになるから、反対だし、日本の自衛隊がそのお先棒を担がされるのは嫌なので、と答えていました。

 

 しかし、私が大統領選挙の動向を見る場合に、頼るのは世論調査の数字とメディアの記事です。たとえアメリカに滞在していたり、短期間に取材に行ったりしても、あんなに広くて、人口が多い中では、何か価値あることを知ろうとすることは、大海から砂粒を拾うようなものであったでしょう。「空気(直観)」を感じるというのは、私のように、無能、浅学菲才、無知蒙昧のちっぽけな人間にはできません。そこを責められるともうどうしようもありません。私という存在を消してリセットするしかありませんが、現在の技術では、私が一度死んで、私を非難する人々の期待に応えるようなスーパーマンや天才に生まれてくることに賭けるしかありません。

 

 愚痴はここまでにして、世論調査の数字は参考にするのは間違っていないように思います。統計学も間違っていません。統計学が分析するデータが人間から集められたものであると、時に人間の複雑さに追いつけずに、かなり少ない確率で起きるシナリオが起きてしまうことがあります。2008年のリーマンショックはそうであったと思います。世論調査で世論を反映しない数字が出てしまうというのは全く笑い話にもならないものですが、こういう失敗を重ねていくことで世論調査の方法は洗練されていくものと思います。

 

 さて、トランプ勝利(ヒラリー敗北)についての要因の分析がアメリカでも始まっています。以下のワシントン・ポストの記事では、白人有権者たちの動向が選挙の勝敗を決めた、と分析しています。大学教育を受けていない白人男性有権者が2012年に比べて活発に動き、トランプへと投票したことで、トランプが勝利したということになります。

 

 私も世論調査の数字とメディアの記事、更にはこれまでの歴史(この州は過去の大統領選挙でどちらの党が勝ったか)を参考にして、予測をしたのですが、大きく外したと思うのは、ミシガン州とウィスコンシン州、ペンシルヴァニア州です。これらの州は労働組合が強い州でしたので、民主党が強い州でした。しかし、その労組に入っている(入っていた)白人労働者たちがトランプの方が自分たちの代表だ、自分たちを救ってくれる、仕事金をくれると確信して行動して、トランプに勝利をもたらしました。フロリダ州とノースカロライナ州を譬え落としても、ラストベルトを押さえておけば勝利というのがヒラリー側の考えであったでしょうが、それは崩れてしまいました。

 

 今回の選挙で、2000年代に言われるようになった、レッド・ステイト(共和党が強い州)、ブルー・ステイト(民主党が強い州)の色分けの再考が求められるでしょう。そして、共和党、民主党の性格の変質、そしてアメリカ政治への変質へとつながるでしょう。その意味で今回の選挙はチェンジ・エレクションとして歴史に残るでしょう。

 

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5つのイメージで見るトランプ勝利の要因(How Donald Trump did it, in 5 images

 

フィリップ・バンプ筆

2016年11月9日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/news/the-fix/wp/2016/11/09/how-donald-trump-did-it-in-5-images/

 

ドナルド・トランプがヒラリー・クリントンを全く予期できなかった番狂わせをどのように起こしたのかを描写するための最速の方法は、全国の全カウンティ(郡)レヴェルで、今回のトランプの戦いぶりを、4年前のミット・ロムニーのオバマ大統領に対する戦いぶりと比べてみることだ。火曜日の午前2時までに集まって来た各カウンティ(郡)のデータを基にして、火曜日の朝、私たちは次のような地図を作り上げた。

 

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物語の内容は明確だ。トランプはロムニーに比べて、アメリカ北東部とラストベルトで成功した。南西部でだけロムニーよりも成功しなかった。『アトランティック』誌のロン・ブラウンスタインは火曜日にCNNの選挙後の特別番組に出演し、トランプの勝利は、ゆっくりと進んでいた投票パターンの出現を促進させたと語った。ブラウンスタインは、アメリカ北部に住む白人高齢者たちは共和党支持に動き、一方、南西部の非白人たちの大部分は民主党支持に動いた、と語った。

 

各カウンティ(郡)の白人とヒスパニックの人口密度の地図と上記の地図を比べてみると、この投票パターンは既に明確になっていることが分かる。

 
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しかし、この物語は白人有権者についてだけのものではない。私たちが選挙期間中に繰り返し言及してきたように、白人有権者の中の教育歴を巡る分裂についてのものであった。教育歴の分裂は、収入と経済的な階級の分裂に相関している。

 

この分裂は全国的に起きていることは出口調査でも明らかである。大学教育を受けていない白人は、大学教育を受けている白人に比べて、トランプを支持した。彼らは、非白人に比べてもトランプ支持の割合が大きかった。

 

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私たちはこの分裂が存在していることは予想していた。しかし、予備出口調査は、その程度が予想よりも大きいことを示していた。それは、大学教育を受けた白人有権者はトランプに強力に反対するというものであった。大学教育を受けている白人全体の動きと同じく、学士号を持っている白人女性は、共和党に対する反対に動いた。しかし、学士号を持っている白人男性はトランプ支持に動いた。しかし、2012年のロムニーに対する支持に比べて、その割合は少し小さいものとなった。学士号を持っていない白人男性間のトランプ支持と不支持の差は、大変大きかった。

 

地理的に見てもこの動きは明らかであった。人種、教育、収入、都市部と地方部の人口といった多くの要因の中で、2012年と比べて最も強く相関関係が出たのは、学士号を持つ白人有権者のパーセンテージであった。より正確に言うと、学士号を持っていない人の割合であった。大学教育を受けていない白人の人口密度が高ければ高いほど、2012年のロムニーに対する支持と比較して、トランプ支持へと移行した割合がより大きく出たのである。2012年にはロムニーを支持しなかった大学教育を受けていない白人有権者が、今回はトランプ支持に大きく動いたということになる。

 

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この大きな動きは、大学教育を受けていない白人男性が集中している地域で見られた。白人女性が多く住む地域よりもこの動きは顕著であった。

 

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この大きな動き(大学教育を受けていない白人男性のトランプ支持への移行)によって番狂わせが起きた理由の一つは、2012年に比べて投票率が全体的に下がったことが挙げられる。これは、ヒラリー・クリントンの支持基盤となるべき有権者たちが投票に行かなかったことを示している。しかし、選挙とは投票に行った有権者によって勝利をもたらされるものだ。そして、火曜日には、4年前にロムニーに投票した人たちよりも、今回トランプに投票した人々の方が寄り熱意を持って投票所に向かったのである。

 

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(終わり)









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 古村治彦です。

 

 2016年アメリカ大統領選挙が終わりました。共和党のドナルド・トランプが、民主党のヒラリー・クリントンを大差で破って当選となりました。まだ最終的な開票結果は出ていませんが、ヒラリーはトランプに敗北を認め、祝意を伝える電話をかけたということです。ヒラリー派選挙終盤、選挙が終わったら何をしたいかと質問され、テレビの米デイショーやドラマをたくさん録画しているので、それらを見たいと冗談半分に述べましたが、まさかそれらを見る時間がたっぷり用意されるとは思っていなかったでしょう。

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 選挙直前、PBSのニュース番組に、アメリカ連邦下院民主党院内総務であるナンシー・ペロシが出演していました。彼女は現在のアメリカ政治で最高位にある女性です。「あと数時間で、最高位にある女性という言われ方が終わります」と言っていましたが、彼女がこれからもしばらくはアメリカ政治の最高位にある女性ということになります。

 

 ヒラリー陣営が投開票後の集会を開くための会場にしていた場所はコンヴェンションセンターでした。そこは天井が高くてガラス張りでした。これは、「ガラスの天井(グラス・シーリング、女性は目に見えない壁に阻まれて社会的に上昇できない)を打ち壊す日」を意味するための会場選びだったそうです。しかし、それも今や幻のように消え去りました。アメリカの有権者は、「ヒラリーが女性だから」という理由で彼女を選ばなかったのではないし、女性は大統領にふさわしくないなどとも考えていないでしょう。ヒラリー個人がふさわしいかどうかの判断でありました。彼女の選対は約500億円の政治資金を集めました。トランプの倍です。それでも選挙に勝つことはできませんでした。

 

 私は選挙速報を見ながら、ヒラリー側は関ヶ原の西軍側、石田光成のような気持だったのではないかと思います。軍勢の数や布陣で言えば圧倒的に有利(明治時代に関ヶ原の戦いの布陣図を見たドイツ軍参謀本部の将校は西軍勝利と言ったそうです)だったのに、負けてしまった、それに近いものがあると思います。また、私はトランプを応援していましたから、何となく2009年の日本の政権交代、民主党勝利を思い出していました。

 

 私は2016年11月7日付のブログで、ヒラリーが316、トランプが222で、ヒラリーが当選すると予測しました。これは見事に外れました。現在の情勢では、この数字がほぼ逆で、トランプが勝利ということになるでしょう。私の未熟さと無能さのために、このような恥ずかしいことになったと反省しています。そして、どうしてこうも大きな外し方をしたのか、ということを考えたいと思います。

 

 まず、私の判断材料は世論調査の数字とアメリカのメディアの記事だけでしたが、世論調査が「世論」を反映していなかったということが挙げられます。現実を反映しない世論調査の数字は役に立たないどころか害悪です。世論調査をはじめとする統計調査ではどうしても誤差が出てきますし、今回の場合は激戦州での世論調査で1、2ポイントの差、もしくは引き分けということもあって読みづらいものでした。更には、日本でも一部報道されたそうですが、「隠れトランプ支持者」と呼ばれる、世論調査には出てこないトランプ支持者が多かったということがあるようです。

 

 次に中途半端な経験から、五大湖周辺のラスト・ベルト、ペンシルヴァニア、オハイオ、ミシガン、ウィスコンシンは民主党が連勝しているし、ヒラリーが世論調査の数字で数ポイント分リードしているから、ヒラリーだろうと安易に判断してしまいました。オハイオは最後の方はトランプがヒラリーを追い抜いていましたから、トランプが取るだろうと思っていました。私が7日付のブログで書いた、「こうなったら面白いシナリオ」は、フロリダとノースカロライナをトランプが取ったら、ヒラリーとは接戦になるというものでした。しかし、ヒラリーがペンシルヴァニア、ミシガン、ウィスコンシンを落としたために、接戦とはならず、トランプが300以上を取る結果になりそうです。ラスト・ベルトの大学教育を受けていない白人労働者たちがヒラリーではなく、トランプを支持した、「トランプは俺たちの仲間だ」ということになりました。

 

 ラスト・ベルトが決戦場だということは分かっていましたが、別の点では安易に考えていたために、失敗を犯しました。反省しています。

 

 トランプはポピュリズムのリーダーとして、初めてワシントンに行きます。ウィリアム・ジェニングス・ブライアンやヒューイ・ロングが果たせなかったことを果たしました。映画「スミス都に行く」をもじると「トランプ都に行く」となります。彼はまず連邦政府と共和党の変革を強く求めるでしょう。もちろん、妥協するところも出てくるでしょうが、オバマの「チェンジ」とは異なるポピュリズムによる「革命」をおこすことになるでしょう。外交・防衛政策分野ではネオコン系や人道的介入主義派は一掃されるでしょう。

 

 経済政策は保護主義的になるでしょうし、ポピュリズムですから弱者保護(福祉)も行うでしょう。そうなると、これまでの「共和党=金持ちのための党、民主党=貧乏人のための党」という単純な図式は崩れていくでしょう。私が忘れられないのは、第3回目の討論会で、司会者が「両候補の政策を実行すると、国債のGDP比で言うと、クリントン候補が●●%、トランプ候補が▲▲%になりますね」と言ったことです。この時、ヒラリーよりもトランプの方の数字が大きかったのです。これは、トランプが言葉は悪いですが、ばらまき政策をやることになるということです。この点で、共和党伝統の「国債を減らして、均衡財政を行う」という考えとは全く異なりますから、共和党がトランプという指導者の出現で、変質していく可能性があります。

 

 今回の選挙では私は予測を外すという恥ずかしい失態をしました。人間は失敗をすることで学ぶことができるということもありますが、やはり失敗はできればしない方が良いものです。このことを糧にして精進してまいりたいと思います。

 


(終わり)









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 古村治彦です。

 

 アメリカの歴史学者で、トランプ勝利をずっと唱えている人がいます。ワシントンにあるアメリカン大学の歴史学教授アラン・リクトマンです。リクトマンは予測のために、13カ条からなるポイントフォームを作り、そのうちの6個以上で不利となれば、現職大統領(現職大統領が属している政党の候補者)が負ける(相手が勝つ)と予測しています。

 

 リクトマンによると、「オバマ大統領が現職大統領として選挙に出られないこと、2014年の中間選挙では共和党が勝利したこと、オバマ政権2期目で外交政策と軍事政策で大きな成功がなかったこと、ヒラリー・クリントンにカリスマと国家的ヒーローの資格が欠如していること」で民主党のヒラリー・クリントンに不利な状況にあり、更に、民主党に対する不満がリバータリアン党への支持に向かっていると述べています。

 

 このような状況下、ヒラリーの側近フーマ・アベディンと別居中の夫アンソニー・ウェイナー元連邦下院議員のパソコンから機密情報を含む可能性があるEメールが押収されました。ウェイナーは未成年にわいせつな写真をスマートフォンから送り、その中に幼児である息子が写りこんでいたということで、捜査を受けています。その捜査の過程で、彼のパソコンが押収され、そこに妻アベディンのEメールもあったということのようです。

 

 これによってFBIが再捜査ということになり、ヒラリーにとっては大きなダメージとなります。これによってリクトマン教授の予測も変更されることなく、「トランプ勝利」で固定化されるのではないかと思います。

  

(貼り付けはじめ)

 

30年に渡って選挙を正確に予測した大学教授:トランプが勝つだろう(Prof correct on 30 years of elections: Trump will win

 

マーク・ヘンシュ筆

2016年10月28日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/303239-prof-correct-on-30-years-of-elections-trump-will-win

 

1984年の大統領選挙から30年に渡って、アメリカ大統領選挙の結果を正確に予測してきた大学教授がいる。この大学教授は、今年の選挙はドナルド・トランプが勝利するという予測から撤退していない。

 

アメリカン大学の歴史学教授アラン・J・リクトマンは金曜日の『ワシントン・ポスト』紙に掲載されたインタヴューの中で、「接戦にはなるであろうが、いくつかの重要な要素はまだトランプ勝利を示している」と語っている。

 

リクトマンはワシントン・ポスト紙に対して、現在ホワイトハウスを押さえている民主党について13カ条の文言について「真偽」を決めるシステムで結果を予測していると述べた。

 

リクトマンは、この13カ条の内6カ条以上が偽になった場合、現職の方の政党が選挙に負けることになると語った。

 

リクトマンは2016年の選挙について、「早い段階では私が考える要素は民主党にとって決定的ものではなかったのですが、選挙が近づくにつれて6番目の要素が民主党に偽となり、不利になったのです」と語った。

 

リクトマンは、この決定的な要素とは、第三党の候補者の強さであると述べている。リバータリアン党のゲーリー・ジョンソンは、現在の世論調査の結果を基にすると、5%以上の得票率を見込める。

 

リクトマンは、「この数字は現在ホワイトハウスを押さえている民主党に対する人々の不満を明確に表しているものです。予測はとても難しいのですが、現職大統領が所属する民主党に不利となる6つの重要な要素があるのです」と語った。

 

リクトマンのシステムで、民主党に不利になっている要素は他に次のようなものがある。オバマ大統領が現職大統領として選挙に出られないこと、2014年の中間選挙では共和党が勝利したこと、オバマ政権2期目で外交政策と軍事政策で大きな成功がなかったこと、ヒラリー・クリントンにカリスマと国家的ヒーローの資格が欠如していること、である。

 

リクトマンは、先月の別のインタヴューでもトランプ勝利を予言していた。そして、彼は最近になっても彼の作ったシステムによって、トランプ勝利と予測している。しかし、この予測も2つの要素によって変更されることもある。

 

リクトマンはリバータリアンのジョンソンの世論調査の数字について、「ジョンソンの得票率が5%以下となるようなら、予測を変更することになるでしょう」と述べた。ジョンソンの得票率が低下することは、民主党にとって不利となる要素が除去されることになるのだ。

 

「2つ目の要素はドナルド・トランプです。私はトランプほどの歴史上他に類を見ない、あしき前例となり得る、危険な候補者を見たことがありません。彼は歴史のパターンを変化させる可能性があります。彼は1860年のエイブラム・リンカーン大統領当選以来の選挙のパターンを変えてしまうかもしれません」とリクトマンは述べた。

 

投開票日まで2週間を切った段階で、全国規模と各州での最近の世論調査の結果では、ヒラリーとトランプとの間の差は縮まっている。それでもヒラリーはほとんどの激戦州でリードを保っている。

 

(貼り付け終わり)




(終わり)







 
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